説明

紙製物品の製造方法

【課題】紙製構成部材の端部を封着するに際し、封着層の気泡の発生の防止が図られた紙製物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂により表面がコーティングされてなる紙製物品の端部をホットメルト系接着剤によって防水処理するに際して、前記紙製製品の端部を、高温度の空気によって加熱するホットエア処理をしたのち、該端部をホットメルト系接着剤によって封着処理する工程を含むことを特徴とする紙製物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器などの紙製物品に関し、特に成形された紙の端部露出部に防水処理が施された紙製物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
清涼飲料等の液体を内容物とする金属缶やプラスチック容器の代替品として、近年、環境保護の観点から紙缶などの紙容器が開発され実用化されるに至っている。
【0003】
従来の金属缶代替紙容器は、図1にその一例を示すように、容器本体が紙積層材料からなり、両端が開口した胴部1と、底材2により閉鎖されるとともに他方の開口が蓋材3により閉塞されてなるものが知られている。そして、蓋材3には飲み口4が穿設されており、この飲み口4は予めイージーピール性シール材5により閉鎖されている。また、一般に、従来の金属缶代替紙容器においては、バリヤー材としてアルミ箔が用いられており、蓋材3に予め穿設されている飲み口4を閉鎖するイージーピール性シール材5にはたとえば合成樹脂がラミネートされたアルミシートが用いられている。
【0004】
図2は、上記図1に示すような紙容器の典型的な断面構造を例示するものであり、この例に示すように、紙容器は胴部1と該胴部1の開口部を閉鎖する底材2および蓋材3とからなる容器本体が図示の用に容器構造を形成し、蓋材3には内容物を排出する開口構造として内面フィルム5aと外部から閉鎖するプルタブ5bによってイージーピール性シール材が形成されている。
【0005】
さらに、図2に示すように、蓋材3と胴部1とが係合固定される胴部の折り返し端部には全周にわたって樹脂組成物などによる封着部10が形成され、これによって防水処理が施されている。このような封着部10は、容器の底部にも図示のように形成することができる。
【0006】
通常、紙容器の外部環境に接する最外層および内容物が接する最内層はポリエチレン樹脂層等のコーティング層によって被覆されているため防水効果にすぐれているが、胴部の端部や底材、蓋材の端部においては、紙製素材の断面が露出していることから、端部から吸水して容器の強度低下やカビ発生等の原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の紙容器の製造においては、封着部10の形成はホットメルト係接着剤を用いるホットメルト塗工によって行われている。しかしながら、従来のホットメルト塗工方法においては、塗工後に紙の端部より気泡が発生し、このため端部を完全に封着することができず、非封着部から水分が浸入したり、封着部に気泡が残留したまま固化し、このため容器品質を低下させるという問題があった。本発明者の知見によれば、上述したような気泡発生の問題は、ホットメルト塗工の際の高温条件に起因するものと推定される。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、紙製物品の端部に防水処理を施すに際して、気泡の発生の防止された封着工程を含む製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明による紙製物品の製造方法は、樹脂により表面がコーティングされてなる紙製物品の端部をホットメルト系接着剤によって防水処理するに際して、前記紙製製品の端部を、高温度の空気によって加熱するホットエア処理をしたのち、該端部をホットメルト系接着剤によって封着処理する工程を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明による紙製物品の製造方法の好ましい態様においては、上記ホットエア処理による空気の温度は、60〜600℃、好ましくは200〜500℃、さらに好ましくは250〜450℃の範囲であることが望ましい。
【0011】
本発明の方法の好ましい態様においては、上記ホットメルト系接着剤が、EVA系樹脂組成物、ポリオレフィン系樹脂組成物およびゴム系組成物からなる群から選ばれた少なくとも1種からなり、この場合において、上記封着処理におけるホットメルト系接着剤の塗工温度は、80〜300℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは100〜130℃の範囲であることが望ましい。
【0012】
上記のような方法によって封着処理されたホットメルト系接着剤層の気孔率を、50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは数%以下にすることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明は、上記の方法によって製造された紙容器を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による紙製物品の製造方法は、樹脂により表面がコーティングされてなる紙製物品の端部をホットメルト系接着剤によって防水処理するに際して、前記紙製製品の端部を、高温度の空気によって加熱するホットエア処理をしたのち、該端部をホットメルト系接着剤によって封着処理する工程を含むことを特徴とするものである。
【0015】
前述した図2に例示された紙容器を参照して本発明の方法を説明すると、この例に示すように、紙容器は胴部1と該胴部1の開口部を閉鎖する底材2および蓋材3とからなる容器本体が図示の用に容器構造を形成し、蓋材3には内容物を排出する開口構造として内面フィルム5aと外部から閉鎖するプルタブ5bによってイージーピール性シール材が形成されている。そして、蓋材3と胴部1とが係合固定される胴部の折り返し端部には全周にわたってホットメルト系接着剤によって封着部10が形成され、これによって防水処理が施されている。このような封着部10は、容器の底部にも図示のように形成することができる。
【0016】
本発明者の知見によれば、上記のようにホットメルト系接着剤によって封着部10を全周にわたって形成する場合、ホットメルト塗工の温度条件が特定の温度を超えると紙材料の端部断面からの気泡の発生が著しく増大することが判明している。本発明においては、このような気泡の異常発生を防止するために、ホットメルト塗工に先立って、あらかじめ封着されるべき紙製製品の端部を、高温度の空気によって加熱するホットエア処理をし、しかるのちに該端部をホットメルト系接着剤によって封着処理する工程を採用することによって、ホットメルト塗工の温度が、従来法においては気泡が発生する程度の高温度条件であっても、気泡の発生を効果的に防止することができることを見出した。また、このような工程を採用することによって、同時に封着層の接着強度を十分良好なものにすることができるのである。
【0017】
上記のようなホットエアによる前処理工程によって気泡発生を防止することができる理由は必ずしも明確ではなく、また、本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、以下のように推定することができる。たとえば、予めホットエア処理を行うことなくホットメルト塗工を施すと、ヒットメルトの熱によって端面付近の紙材の繊維内部に含まれる気体や水蒸気などの成分が膨張や気化によって端面から大気中へ出ていこうとする。このとき、ホットメルト塗工を端面全周にわたって比較的短時間で行う場合、膨張ないし気化した気体成分は逃げ場を失って固化途中のホットメルト接着剤層内に気泡となって残留することとなる。そこで、予めホットメルト塗工される付近の紙材をホットエア処理によって加熱することによって紙材内の空気を強制的に膨張させて、さらに気化し得る成分を強制的に気化させて、これによってホットメルト塗工持の熱による紙材内部からの気体の発生を予め防止することができ、結果的にホットメルト接着剤層内での気体の発生や残留を効果的に防止することができものと考えられる。
【0018】
このようなホットエア処理において 封着部に噴射する空気の温度は、60〜600℃程度が好ましく、さらに好ましくは200〜500℃、特に好ましくは250〜450℃の範囲であることが望ましい。噴射空気の温度が60℃以下では気泡発生抑制効果が乏しく、一方、空気温度が600℃を超えると紙素材に対する熱負荷が過大となり、素材が変形する等の問題が生じるので好ましくない。
【0019】
上記ホットエア処理ののち、引き続いて常法にしたがってホットメルト塗工を行う。このホットメルト塗工は従来使用されているホットメルト塗工装置を使用することができる。
【0020】
本発明の方法の好ましい態様においては、上記ホットメルト系接着剤としては、EVA系樹脂組成物、ポリオレフィン系樹脂組成物およびゴム系組成物からなる群から選ばれた少なくとも1種などが好ましく用いられ得る。また、紙容器を構成する紙素材のコーティングに使用されている樹脂が、たとえばポリエチレン樹脂の場合にあっては、当該樹脂の融点は90〜140℃である。したがって、この場合において、上記封着処理におけるホットメルト系接着剤の塗工温度は、80〜300℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは100〜130℃の範囲で行うことが好ましい。
【0021】
本発明においては、上記のような方法を採用することによって、封着処理されたホットメルト系接着剤層の気孔率(気泡含有率)を、50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは数%以下(実質的に0%も含む)の範囲にすることが可能となる。
【0022】
さらに、本発明は、上記の方法によって製造された紙容器を包含するが、本発明の適用範囲は紙容器のみに限定されず、防水処理が要請される各種の紙製物品に広く適用され得る。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は、下記の実施例の態様に限定されるものではない。
【0024】
図2に示すような紙容器の端部をEVA系ホットメルト接着剤を用いてホットメルト塗工を行った。この紙容器のコーティング層はポリエチレン樹脂である。
【0025】
ホットエア処理の温度条件としては、200℃〜500℃の範囲で行った。また、ホットメルト塗工の際の温度条件120℃で実施し、封着層の気泡の発生ならびに容器表面に対する接着性を調べた結果、上記ホットエア処理を行ったものについては、気泡発生率の低下、容器表面のピンホール発生の防止ならびに接着性の向上のいずれにおいても良好な効果が得られた。特に、ホットエア温度250〜450℃の範囲において、気泡発生が実質的に認められない結果が得られた。
【0026】
一方、上記の例においてホットエア処理を行わなかったものについては、50%を超える気泡発生が認められ、また、容器表面のピンホール発生も認められた。さらに、ホットメルト塗工剤の接着性についても、上記実施例の場合と比べて劣るものであった。
【0027】
上記の実験例の結果からも明らかなように、本発明による方法によって形成される封着層は気泡(ピンホール)発生の抑制効果と接着性の双方においてすぐれている。
【0028】
発明の効果
本発明による紙製物品の端部の防水処理を施すに際して、封着部の気泡発生の抑制と接着性の向上効果の双方において調和的かつすぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】紙容器の構成の一具体例を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施例に係る紙容器の断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 胴部
2 底材
3 蓋材
4 飲み口
5 イージーピール性シール材
10 封着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂により表面がコーティングされてなる紙製物品の端部をホットメルト系接着剤によって防水処理するに際して、
前記紙製製品の端部を、高温度の空気によって加熱するホットエア処理をしたのち、該端部をホットメルト系接着剤によって封着処理する工程を含むことを特徴とする、紙製物品の製造方法。
【請求項2】
前記ホットエア処理による空気の温度が、60〜600℃、好ましくは200〜500℃、さらに好ましくは250〜450℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホットメルト系接着剤が、EVA系樹脂組成物、ポリオレフィン系樹脂組成物およびゴム系組成物からなる群から選ばれた少なくとも1種からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記封着処理におけるホットメルト系接着剤の塗工温度が、80〜300℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは100〜130℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記封着処理されたホットメルト系接着剤層の気孔率が、50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは数%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によって製造されたことを特徴とする、紙製容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−176063(P2007−176063A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378584(P2005−378584)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】