説明

紡機のニューマ装置

【課題】吸引ダクト内の流速や圧力を検出するセンサを設けることなく、ニューマ装置の信頼性を確保した状態でモータ駆動の省エネルギーを達成する。
【解決手段】ニューマ装置は、紡機で発生する風綿や繊維屑を吸引する吸引ダクトが、送風機の駆動により吸引気流を発生するフィルタボックスに接続されている。送風機を駆動するモータ16は、インバータ21から電力を供給されてインバータ21により駆動制御される。制御装置22は、インバータ21の出力電力を計測するとともに、その計測値が目標値となるようにインバータ21に周波数を指示するCPU23を備えている。CPU23はモータ16に供給される電流を検出する電流検出器25の検出信号に基づいてインバータ21の出力電力を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機のニューマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に精紡機や練条機等の紡機には、糸切れ時にドラフトパートから送出されるフリースが糸切れ錘以外の錘に悪影響を及ぼすのを防止するため、糸切れ時にフリースを吸引したり、ドラフトパートで発生する風綿等を吸引する作用をなしたりするニューマチッククリヤラ(ニューマ装置)が装備されている。精紡機のニューマ装置は、精紡機の機台の長手方向に沿って延びるように配設された吸引ダクトと、吸引ダクトに接続された吸引ノズルとを備えており、吸引ダクトは機台の一端に配設されたフィルタボックスに接続されている。フィルタボックスはフィルタ及びモータにより駆動されるファンを備えており、モータの駆動により吸引ダクトに負圧が作用し、その負圧の作用によって吸引ノズルに吸引作用が発生する。そして、吸引ノズルから吸引されたフリースや風綿等の繊維屑が吸引ダクト内をフィルタボックスまで搬送されてフィルタに捕捉され、フィルタで区画された収容部内に貯留される。フィルタボックス内にある程度繊維屑が貯留されたときに、作業者がドアを開けて収容部内の繊維屑を適宜回収するようになっている。
【0003】
従来、フィルタボックス内からの繊維屑の回収等の作業の遅れにより、糸切れ時に正常に機能しない状態になるのを防止するようにしたニューマ装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1のニューマ装置は、フィルタボックスから最も離れた吸引ノズルの吸引力に対応する吸引ダクト内の圧力又は流速を検出する検出手段を備えている。また、ニューマ装置は、検出手段による検出値が設定範囲を外れたか否かを判断するとともに、検出値が設定範囲を外れたときにそれを知らせる報知信号を出力する判断手段と、判断手段の報知信号に基づいて送風機を増速駆動する制御手段とを備えている。したがって、吸引ダクト内の圧力又は流速が設定範囲を外れると、送風機が増速されて吸引力低下が防止される。
【0004】
また、特許文献2には、換気モータの回転数変更によって吸引通風を制御する装置において、換気モータと接続された制御装置を備え、設定基準回転数にて負圧を達成し、調整された負圧で回転を制御する糸屑吸引装置が提案されている。負圧を検出するセンサは吸引装置(吸引ダクト)のフィルタボックス(濾過箱)が接続された側と反対側の端部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−302931号公報
【特許文献2】特開2003−96628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の装置では、吸引力低下を防止するように送風機が増速されるが、吸引力をフィルタボックス内の繊維屑の堆積量に合わせて適切な吸引力に制御すること、即ち必要以上に吸引力を大きくすることなく無駄な動力消費を避けるといった配慮はなされていない。また、特許文献1及び特許文献2の装置では、吸引ダクト内の流速又は圧力をセンサで検出して、その検出結果に基づいて送風機や換気モータの制御を行っている。しかし、吸引ダクト内に設けた一つのセンサの検出信号からフィルタボックスの実際の吸引量を正確に推定するのは技術的に難しい。特に、精紡機の吸引ダクトのように長大な吸引ダクトの場合はより難しい。また、センサを吸引ダクトのフィルタボックスが接続された側と反対側の端部に設けた場合は、センサと制御装置とを接続する配線の長さが長くなり、配線作業に手間がかかったり、ノイズが乗り易くなったりするといった問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸引ダクト内の流速や圧力を検出するセンサを設けることなく、ニューマ装置の信頼性を確保した状態でモータの省エネルギーを達成することができる紡機のニューマ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、紡機で発生する風綿や繊維屑を吸引する吸引ダクトが、送風機の駆動により吸引気流を発生するフィルタボックスに接続され、前記送風機を駆動するモータと、前記モータに電力を供給する可変周波数電源とを有する紡機のニューマ装置において、前記可変周波数電源の出力電力を計測する出力電力計測部と、前記出力電力計測部の計測値が目標値となるように前記可変周波数電源に周波数を指示する制御部とを備えている。ここで、「可変周波数電源」とは直流電力を交流電力に変換して出力するインバータや3相交流電力を別の周波数、電圧の交流電力に直接変換するサイクロコンバータのように、周波数及び電圧を変換して交流電力を出力可能な装置を意味する。
【0009】
この発明は、送風機の駆動によりフィルタボックスに向かう吸引気流の吸引流量は、送風機を駆動するモータの消費電力にほぼ比例することに着目してなされた。厳密には、例えばフィルタボックス内の繊維屑等の量が変化する場合は、そこでの仕事のロス分があるが、それは相対的に小さい。送風機を駆動するモータには可変周波数電源から電力が供給される。可変周波数電源は制御部から指示される周波数となるように制御される。制御部は、可変周波数電源の出力電力を計測する出力電力計測部により計測された出力電力の計測値が目標値となるように可変周波数電源に周波数を指示する。即ち、従来技術と異なり、吸引ダクト内の圧力や流速をセンサで検出しなくても、フィルタボックスに向かう吸引気流の吸引流量が、無駄なエネルギー消費を抑制した状態で適切な値に保持される。したがって、吸引ダクト内の流速や圧力を検出するセンサを設けることなく、ニューマ装置の信頼性を確保した状態でモータの省エネルギーを達成することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記出力電力計測部は、前記可変周波数電源から前記モータに供給される電流を検出する電流検出器の検出信号に基づいて前記出力電力を演算する。インバータやサイクロコンバータ等の可変周波数電源には、一般にモータを制御する際に、モータに過電流が流れるのを防止するため、可変周波数電源から出力される電流を検出する電流検出器が装備されている。したがって、その電流検出器の検出信号に基づいて可変周波数電源の出力電力を演算すれば、新たに電力計測のためにセンサを設けずに可変周波数電源の出力電力を計測することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記目標値は、前記フィルタボックスの吸引流量と関係づけて設定されている。したがって、この発明では、可変周波数電源の出力電力から吸引流量が適切な状態か否かを把握し易く、省エネルギーを適切に実施し易い。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記紡機は精紡機であり、前記制御部は精紡機の錘数と紡出糸重量から前記吸引流量を演算する。
精紡機においては、錘数と紡出糸重量(紡出糸の単位長さ当たりの重量)によって、適切な吸引作用を為すために必要な吸引流量が決まる。この発明では、制御部は精紡機の錘数と紡出糸重量から吸引流量を演算するため、省エネルギーを図るのに必要な適切な吸引流量に基づいて制御が行われる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記制御部は、前記フィルタボックスのフィルタに詰まりがなく、平均的な大気圧の状態で前記可変周波数電源に指示する周波数を基本周波数として、前記可変周波数電源の制御を基本周波数で開始する。
【0014】
基本周波数は、必ずしもフィルタボックスのフィルタに詰まりがなく、平均的な大気圧の状態において必要な吸引流量を確保するために可変周波数電源に出力する周波数でなくてもよい。しかし、この発明では、フィルタボックスのフィルタに詰まりがなく、平均的な大気圧の状態において可変周波数電源に指示する周波数を基本周波数とすることにより、モータを駆動するためのエネルギー消費を最大限に達成することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記制御部は、前記可変周波数電源に指示する周波数の値が、前記基本周波数より高い状態が継続すると、警報手段を駆動する指令信号を出力する。
【0016】
フィルタボックスに繊維屑が溜まった状態を放置すると、必要な吸引流量を確保するために可変周波数電源への指示周波数が基本周波数より高くなる。この状態が継続するとモータを駆動するためのエネルギー消費が多くなる。この発明では、可変周波数電源に指示する周波数の値が、基本周波数より高い状態が継続すると、警報手段が駆動されるため、作業者はフィルタボックスに溜まった繊維屑の除去が必要な状態である可能性が高いことを認識でき、必要な処置をとることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸引ダクト内の流速や圧力を検出するセンサを設けることなく、ニューマ装置の信頼性を確保した状態でモータの省エネルギーを達成することができる紡機のニューマ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)はフィルタボックス部付近の模式図、(b)は吸引ダクトの部分模式平面図。
【図2】電気的構成を示すブロック図。
【図3】周波数と吸引流量及び使用電力との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を精紡機のシングルノズルタイプのニューマ装置に具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、精紡機11のアウトエンド側の端部にはニューマ装置12のフィルタボックス13が配設されている。フィルタボックス13はフィルタ14により繊維屑等が貯留される収容部13aと、ファン15aを備えた送風機15が収容された室13bとに区画されている。フィルタボックス13には送風機15の駆動により吸引気流が発生する。送風機15のモータ16には3相交流モータが使用されている。フィルタボックス13の収容部13aと対応する位置には、フィルタ14で捕捉された風綿等の繊維屑を収容部13aから取り出すための取出し口が形成され、取出し口は開閉可能に支持されたドア17により覆われている。
【0020】
ニューマ装置12の吸引ダクト18は精紡機11の長手方向に沿って延設され、その第1端部がフィルタボックス13に接続されている。図1(b)に示すように、吸引ダクト18には吸引口19aを一つ有する、シングルタイプの吸引ノズル19が所定ピッチで接続されている。吸引ダクト18のフィルタボックス13に接続された側の端部と反対側の端部には、糸切れ時に吸引ノズル19から吸引されたフリースをフィルタボックス13まで搬送する空気流量を確保するための孔(図示せず)が形成されている。また、精紡機11のアウトエンド側(図1(a)の右側)には警報手段としての警告灯20が設けられている。
【0021】
図2に示すように、モータ16は可変周波数電源としてのインバータ21から電力を供給され、インバータ21は制御部としての制御装置22により制御される。なお、制御装置22はインバータ21の制御だけでなく、精紡機の制御も行うようになっている。制御装置22はCPU23及びメモリ24を備えている。メモリ24にはモータ16を駆動するのに必要な各種制御プログラム及びその実行に必要な各種データやマップあるいは関係式が記憶されている。
【0022】
制御プログラムとして、モータ16に供給される電力、即ちインバータ21の出力電力が目標値となるようにインバータ21に周波数を指示する制御プログラムがある。また、制御プログラムとして、インバータ21の出力電力を計測する制御プログラムがある。CPU23は、インバータ21の出力電力を計測する出力電力計測部として機能する。また、CPU23は出力電力計測部の計測値が目標値となるようにインバータ21に出力周波数を指示する制御部としても機能する。この実施形態では、CPU23はインバータ21からモータ16に供給される電流を検出する電流検出器25の検出信号に基づいて前記出力電力を演算する。電流検出器25はインバータ21とモータ16との間に設けられており、電流検出器25はモータ16に供給される3相の電流Iu,Iv,Iwのうちの2相(この実施形態ではU相及びW相)の電流Iu,Iwの電流を検出する。
【0023】
メモリ24に記憶された関係式には精紡機11の錘数と紡出糸重量(紡出糸の単位長さ当たりの重量)から必要とされるフィルタボックス13の吸引流量(以下、ニューマ流量と称す場合もある。)を演算する関係式がある。また、関係式にはニューマ流量とモータ16の消費電力との関係式やニューマ流量と基本周波数との関係式がある。この実施形態では、フィルタボックス13がきれいな状態、即ちフィルタボックス13のフィルタ14に詰まりがなく、平均的な大気圧の状態でインバータ21に指示する周波数を基本周波数としている。平均的な大気圧の状態とは、例えば、精紡機11が設置された環境の気圧の平均を採った状態を意味する。
【0024】
CPU23は、インバータ21に指示する周波数を基本周波数として、モータ16の運転を基本周波数で開始する。その後、CPU23はインバータ21の出力電力を計測しながら、出力電力が演算された必要ニューマ流量との関係から求まる目標電力となるようにインバータ21への指示周波数をフィードバック制御する。即ち、CPU23がインバータ21を制御する際の目標値は、ニューマ流量と関係づけて設定されている。
【0025】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
ニューマ装置12はフィルタ14の目詰まりがない状態から駆動が開始される。制御装置22には精紡機11の運転に先立って紡出条件が設定されており、この紡出条件で精紡機11の運転が行われる。CPU23は、精紡機11の錘数及び紡出糸重量から必要なニューマ流量を演算し、演算されたニューマ流量から基本周波数を求めて、基本周波数でインバータ21の制御、即ちモータ16の運転を開始する。そして、モータ16にはインバータ21から必要なニューマ流量を確保できる電力が供給される。
【0026】
モータ16が駆動されるとファン15aが回転され、フィルタボックス13内が負圧になり、吸引ダクト18からフィルタボックス13へ向かう吸引気流が生じる状態になる。その吸引気流の作用によって各吸引ノズル19に吸引作用が発生するとともに、孔からフィルタボックス13に向かう空気流が流入する状態となる。フリースに付着した風綿や、糸切れ時にドラフト装置から送り出されるフリースが吸引ノズル19で吸引されるとともに、吸引ダクト18内をフィルタボックス13に向かう気流に乗ってフィルタボックス13まで搬送される。そして、フィルタボックス13まで搬送された風綿等の繊維屑が、フィルタ14で捕捉されて収容部13aに貯留される。収容部13aにある程度繊維屑が貯留された状態になると、作業者がドア17を開けて収容部13a内の繊維屑を取り出す作業を行う。繊維屑の取り出し作業は精紡機11の運転中に行っても支障はない。
【0027】
CPU23はモータ16の運転開始後、所定周期で電流検出器25の検出信号を入力するとともに、その検出信号に基づいてインバータ21の出力電力を演算(計測)する。そして、この電力がニューマ流量との関係から求められる目標電力となるようにインバータ21へ指示する周波数を設定し、インバータ21に周波数を指示してインバータ21をフィードバック制御する。したがって、吸引ダクト18内の圧力や流速をセンサで検出しなくても、フィルタボックス13に向かう吸引気流の吸引流量(ニューマ流量)が、無駄なエネルギー消費を抑制した状態で適切な値に保持される。また、吸引ダクト18内の圧力や流速をセンサで検出してニューマ流量を推定する場合と異なり、綿屑の増加や大気圧変化などの外乱の影響を受け難い。
【0028】
インバータ21の周波数(Xで示す)と、ニューマ流量(Yで示す)あるいはモータ16の使用電力(Zで示す)との関係は、図3に示すようになる。図3において、実線はフィルタボックス13がきれいな状態の場合を示し、破線はフィルタボックス13に繊維屑が有る状態の場合を示す。目標流量がY,Y,Yのときに対応するフィルタボックス13がきれいな状態のインバータ21の周波数はX0−1,X1−1,X2−1となり、フィルタボックス13に繊維屑が有る状態のインバータ21の周波数はX0−2,X1−2,X2−2となる。
【0029】
例えば、目標流量をY2とした場合、その流量にするためのインバータ21の周波数は、フィルタボックス13がきれいな状態でX2−1、フィルタボックス13に繊維屑が有る状態でX2−2になる。そして、フィルタボックス13がきれいな状態で周波数X2−1及びX2−2とした時のモータ16の使用電力は、それぞれZ2−1、Z2−2になる。従来は、繊維屑がある状態であってもニューマ流量が目標流量Yを下回ることがないように、運転中は常に周波数X2−2でモータ16を駆動していた。これに対して本実施形態では、フィルタボックス13がきれいな状態での目標流量Yに対応する周波数X2−1でモータ16が駆動される。したがって、フィルタボックス13がきれいな状態を基準にして目標流量に対するインバータ21の周波数を設定して、その周波数でインバータ21を制御すれば、従来に比べて、エネルギー消費の削減量、即ち省エネ電力は(Z2−1)−(Z2−2)になる。
【0030】
フィルタボックス13に繊維屑が溜まった状態を放置すると、図3に点線で示すように同一周波数で駆動していてもニューマ流量の減少に伴って出力電力が低下する。制御装置22は出力電力計測値からこの低下を検出し、この出力電力低下を補うためにインバータ21へ基本周波数からの周波数増大を指示する。制御装置22は出力電力計測値が目標値に一致するまで周波数の増大制御を継続して行う。しかし、CPU23、即ち制御装置22は、インバータ21への指示周波数の増大制御が所定期間(例えば数分)継続すると、周波数の増大制御では必要なニューマ流量を確保できないほどに繊維屑が溜まっているものと推定し、警告灯20を点灯する指令信号を出力し、警告灯20が点灯される。作業者は警告灯20の点灯を確認すると、繊維屑の回収作業が必要な可能性が高いと認識して、フィルタボックス13の状態を確認し、繊維屑の回収が必要であれば回収作業を行う。
【0031】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)ニューマ装置12は、吸引ダクト18が、送風機15の駆動により吸引気流を発生するフィルタボックス13に接続されており、送風機15を駆動するモータ16にインバータ21から電力が供給される。モータ16は、制御装置22によりインバータ21を介して制御される。制御装置22は、インバータ21の出力電力を計測する出力電力計測部(CPU23)と、CPU23の計測値が目標値となるようにインバータ21に周波数を指示する。したがって、吸引ダクト18内の流速や圧力を検出するセンサを設けることなく、ニューマ装置12の信頼性を確保した状態でモータ16の省エネルギーを達成することができる。
【0032】
(2)出力電力計測部(CPU23)は、インバータ21からモータ16に供給される電流を検出する電流検出器25の検出信号に基づいてインバータ21の出力電力を演算する。インバータ21には、一般にモータ16を制御する際に、モータ16に過電流が流れるのを防止するため、インバータ21から出力される電流を検出する電流検出器25が装備されており、その電流検出器25の検出信号に基づいてインバータ21の出力電力を演算する。したがって、新たに電力計測のためにセンサを設けずにインバータ21の出力電力を計測することができる。
【0033】
(3)目標値は、フィルタボックス13の吸引流量(ニューマ流量)と関係づけて設定されている。したがって、インバータ21の出力電力からニューマ流量が適切な状態か否かを把握し易く、省エネルギーを適切に実施し易い。
【0034】
(4)精紡機11のニューマ装置12に適用され、CPU23は精紡機11の錘数と紡出糸重量(紡出糸の単位長さ当たりの重量)からニューマ流量を演算する。精紡機11においては、錘数と紡出糸重量によって、適切な吸引作用を為すために必要なニューマ流量が決まる。したがって、CPU23は省エネルギーを図るのに必要な適切な吸引流量に基づいて制御を行うことができる。
【0035】
(5)CPU23は、フィルタボックス13のフィルタ14に詰まりがなく、平均的な大気圧の状態でインバータ21に指示する周波数を基本周波数として、インバータ21の制御を基本周波数で開始する。基本周波数は、必ずしもフィルタボックス13のフィルタ14に詰まりがなく、平均的な大気圧の状態において必要な吸引流量を確保するためにインバータ21に出力する周波数でなくてもよい。しかし、フィルタボックス13のフィルタ14に詰まりがなく、平均的な大気圧の状態において可変周波数電源に指示する周波数を基本周波数とすることにより、モータ16を駆動するためのエネルギー消費を最大限に達成することができる。
【0036】
(6)CPU23は、インバータ21に指示する周波数の値が、基本周波数より高い状態が継続すると、警告灯20を駆動する指令信号を出力する。したがって、作業者は警告灯20の点灯を視認することにより、フィルタボックス13に溜まった繊維屑の除去が必要な状態である可能性が高いことを認識でき、必要な処置をとることができる。
【0037】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
○ 制御装置22、即ちCPU23は、フィルタ14に詰まりがなく、平均的な大気圧の状態でインバータ21に指示する周波数を基本周波数とする場合に限らない。例えば、フィルタ14に多少詰まりが存在する状態でインバータ21に指示する周波数を基本周波数としてモータ16の運転を開始し、その後、インバータ21の出力電力を計測しながら、この電力がニューマ流量を確保するための目標電力(目標値)となるようにインバータ21への指示周波数設定するようにしてもよい。この場合、フィルタ14に詰まりがなく、平均的な大気圧の状態でインバータ21に指示する周波数を基本周波数とした場合と異なり、モータ16を駆動するためのエネルギー消費を最大限に達成することはできないが、ニューマ装置12の信頼性を確保した状態でモータ16の省エネルギーを達成することができる。
【0038】
○ 出力電力計測部は、インバータ21からモータ16に供給される電流を検出する電流検出器25の検出信号に基づいてインバータ21の出力電力を計測(演算)するものに限らない。例えば、モータ16のトルクをセンサで測定して、その値に基づいてインバータ21の出力電力を計測(演算)するようにしてもよい。
【0039】
○ 可変周波数電源としてインバータ21に代えて、3相交流電力を別の周波数、電圧の交流電力に直接変換するサイクロコンバータを使用してもよい。
○ フィルタボックス13として収容部13aに溜まった繊維屑を作業者が回収する構成に代えて、収容部13aを紡績工場に設けられた集中集綿装置に連結されたダクトに連結部を介して連結するとともに、連結部にその連通路を開閉する電磁式の開閉装置を設ける。そして、CPU23は、インバータ21に指示する周波数の値が、基本周波数より高い状態が継続すると、開閉装置を開放させる指令信号を出力するようにしてもよい。この場合、収容部13aに貯留された繊維屑等がダクトに吸引され、作業者による繊維屑の回収作業が不要になる。
【0040】
○ 警報手段として警告灯20の点灯制御を、インバータ21に指示する周波数の値が、基本周波数より高い状態が継続すると警告灯20を点灯するという単純なものではなく、基本周波数より高い状態の継続状態により警告灯20の点灯状態を変化させてもよい。例えば、高い状態の程度と継続時間とから、繊維屑の回収が早期に必要な場合には警告灯20を点滅させ、単に繊維屑の回収が必要な場合は警告灯20を連続点灯させるようにする。また、警報手段として警告灯20として点灯色の異なるものを2個設けて点灯状態を区別する構成にしてもよい。
【0041】
○ 警報手段を設けずに、作業者が定期的にフィルタボックス13の状態を確認して繊維屑の回収を行うようにしてもよい。
○ 吸引ノズル19として、複数の吸引口が錘のピッチと同じピッチで形成されたパイプを備えた所謂フルートタイプの吸引ノズルを備えたニューマ装置12に適用してもよい。
【0042】
○ 精紡機に限らず、例えば、紡出糸の太さが一定ではなく、太さが部分的に太く形成されたスラブ糸あるいは意匠糸と呼ばれる特殊糸を製造する紡績装置のニューマ装置に適用してもよい。この場合も吸引ダクト18は精紡機の場合と同様に長大になる。また、練条機のように吸引ダクトが短い紡機のニューマ装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
Iu,Iv,Iw…電流、12…ニューマ装置、13…フィルタボックス、14…フィルタ、15…送風機、16…モータ、18…吸引ダクト、20…警報手段としての警告灯、21…可変周波数電源としてのインバータ、22…制御部としての制御装置、23…出力電力計測部としてのCPU、25…電流検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡機で発生する風綿や繊維屑を吸引する吸引ダクトが、送風機の駆動により吸引気流を発生するフィルタボックスに接続され、前記送風機を駆動するモータと、前記モータに電力を供給する可変周波数電源とを有する紡機のニューマ装置において、
前記可変周波数電源の出力電力を計測する出力電力計測部と、
前記出力電力計測部の計測値が目標値となるように前記可変周波数電源に周波数を指示する制御部と
を備えている紡機のニューマ装置。
【請求項2】
前記出力電力計測部は、前記可変周波数電源から前記モータに供給される電流を検出する電流検出器の検出信号に基づいて前記出力電力を演算する請求項1に記載の紡機のニューマ装置。
【請求項3】
前記目標値は、前記フィルタボックスの吸引流量と関係づけて設定されている請求項1又は請求項2に記載の紡機のニューマ装置。
【請求項4】
前記紡機は精紡機であり、前記制御部は精紡機の錘数と紡出糸重量から前記吸引流量を演算する請求項3に記載の紡機のニューマ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記フィルタボックスのフィルタに詰まりがなく、平均的な大気圧の状態で前記可変周波数電源に指示する周波数を基本周波数として、前記可変周波数電源の制御を基本周波数で開始する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の紡機のニューマ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記可変周波数電源に指示する周波数の値が、前記基本周波数より高い状態が継続すると、警報手段を駆動する指令信号を出力する請求項5に記載の紡機のニューマ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−202988(P2010−202988A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47212(P2009−47212)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】