説明

紡糸法

熱可塑性材料から成るマルチフィラメントを紡糸する方法であって、溶融材料を、紡糸ノズルを通って押し出して、複数のフィラメントを有するフィラメント束を形成し、固化したあとでマルチフィラメントヤーンとして巻き取るステップを有し、紡糸ノズルは、複数のノズル孔を備えており、フィラメントが流出する孔の端部が、ノズル孔出口平面を成しており、フィラメント束を、紡糸ノズルの下方で第1冷却域において先ず少なくとも1つの横方向送風部で横方向に送風することによって、ガス状の冷媒によって冷却し、ガス状の冷媒を、横方向送風とは反対側で吸い込むことによって冷却し、そのあとで第1冷却域の下方に位置する第2冷却域において、フィラメント束の周辺に存在するガス状の冷媒をフィラメント束が自己吸引することによってフィラメント束を冷却する方法において、第1冷却域において、長さLの送風区間ACにわたってガス状の冷媒を少なくとも1つの横方向送風部で横方向に送風し、該送風区間ACは、ノズル孔に向いた側の上位の始端部Aと、ノズル孔とは離間する側の下位の終端部Cとを備えており、送風区間ACとは反対側に、区間BDが配置されており、該区間BDは、ノズル孔に向いた側の始端部Bと、ノズル孔から離間する側の終端部Dとを備えており、始端部Aと始端部Bとの間の仮想延伸部ABが、ノズル孔出口平面に対して平行に延びており、区間BDは、長さLを有しており、区間BDは、ガス状の冷媒が吸い込まれる長さLBXの開いた吸込区間BXと、長さLXDの閉じた区間XDとに分けられており、LBX:LXDの比は、0.15:1〜0.5:1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料からマルチフィラメントヤーンを紡糸する方法であって、融解材料を、紡糸ノズル(口金)の多数のノズル孔を通って押し出して、多数のフィラメントを有するフィラメント束を形成し、固化したあとでマルチフィラメントヤーンとして巻き取り、フィラメント束を紡糸ノズルの下方で冷却するステップを有している方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、マルチフィラメントヤーン、特にポリエステルマルチフィラメントヤーン、ならびにそのようなポリエステルフィラメントヤーンを有するコードに関する。
【0003】
前述の方法は、国際公開第2004/005594号パンフレットにおいて公知である。ここではフィラメント束は、紡糸ノズルの下方で、2ステップで冷却され、この場合フィラメント束は、紡糸ノズルの下方で第1冷却域において先ず横方向送風によってガス状の冷媒によって、また横方向送風とは反対側におけるガス状の冷媒の吸込によって冷却され、そのあとで第1冷却域の下方に位置する第2冷却域において、フィラメント束は、主にフィラメント束の周辺に存在するガス状の冷媒の自己吸引によって追加的に冷却される。確かに国際公開第2004/005594号パンフレットに記載の方法は、押し出されたフィラメントの効果的な冷却をもたらす。
【0004】
しかしながら高い総繊度と、国際公開第2004/005594号パンフレットの方法から得られるヤーンの寸法安定性に対して少なくとも同等に良好な寸法安定性と、許容可能な走行特性とを有するマルチフィラメントヤーンを紡糸する要求が存在する。
【0005】
ここでは以下にDsと短縮して記載する概念「寸法安定性(Dimensionsstabilitaet)」は、410mN/texの固有の力を加えたあとのヤーンの伸度EAST(elongation at specific tension)%と、180°C、5mN/texの荷重で2分間の測定時間にわたる熱風縮率HAS(hot air shrinkage)%との和、つまりDs=EAST+HASであり、ここではHASは、熱風収縮の絶対値を表す。
【0006】
さらに概念「走行特性(Laufverfahren)」は、ヤーン10kgあたりの毛羽数とヤーン1000kgあたりの糸切れ数を含んでいる。
【0007】
したがって本願発明の課題は、熱可塑性材料からマルチフィラメントヤーンを紡糸する方法を改良して、高い総繊度と、国際公開第2004/005594号パンフレットに記載した方法から得られるヤーンの寸法安定性と少なくとも同等に良好な寸法安定性と、許容可能な走行特性とを有する方法を提供することである。
【0008】
この課題を解決するために、本発明では、熱可塑性材料から成るマルチフィラメントを紡糸する方法であって、溶融材料を、紡糸ノズルを通って押し出して、複数のフィラメントを有するフィラメント束を形成し、固化したあとでマルチフィラメントヤーンとして巻き取るステップを有し、紡糸ノズルは、複数のノズル孔を備えており、フィラメントが流出する孔の端部が、ノズル孔出口平面を成しており、フィラメント束を、紡糸ノズルの下方で第1冷却域において先ず少なくとも1つの横方向送風部で横方向に送風することによって、ガス状の冷媒によって冷却し、ガス状の冷媒を、横方向送風とは反対側で吸い込むことによって冷却し、そのあとで第1冷却域の下方に位置する第2冷却域において、フィラメント束の周囲に存在するガス状の冷媒をフィラメント束が自己吸引することによってフィラメント束を冷却する方法において、第1冷却域において、長さLの送風区間ACにわたってガス状の冷媒を少なくとも1つの横方向送風部で横方向に送風し、該送風区間ACは、ノズル孔に向いた側の上位の始端部Cと、ノズル孔とは離間する側の下位の終端部Cとを備えており、送風区間ACとは反対側に、区間BDが配置されており、該区間BDは、ノズル孔に向いた側の始端部Bと、ノズル孔から離間する側の終端部Dとを備えており、始端部Aと始端部Bとの間の仮想延伸部ABが、ノズル孔出口平面に対して平行に延びており、区間BDは、長さLを有しており、区間BDは、ガス状の冷媒が吸い込まれる長さLBXの開いた吸込区間BXと、長さLXDの閉じた区間XDとに分けられており、LBX:LXDの比は、0.15:1〜0.5:1である。
【0009】
本発明による方法によって、その都度生じる粘着がなく、フィラメント束を熱可塑性材料から直に紡糸ノズルから紡糸する(direct spinning)ことができ、その総繊度は1800dtex以上であり、走行特性、つまりヤーン10kgあたりの毛羽数およびヤーン1000kgあたりの糸切れ数は、国際公開第2004/005594号パンフレットに記載した製造方法におけるマルチフィラメントヤーンよりも極めて小さくなっており、国際公開第2004/005594号パンフレットに記載の製造方法は、本願発明による方法とは、第1冷却域においてガス状の冷媒の吸込が全長BD=Lにわたって行われる点で異なっている。さらに得られるマルチフィラメントヤーンの寸法安定性Ds=EAST+HASは、国際公開第2004/005594号パンフレットに記載した方法で得られるヤーンのDsと同等に良好である。
【0010】
1800dtexより小さな総繊度でマルチフィラメントヤーンを紡糸する際にも、本発明による方法によって、国際公開第2004/005594号パンフレットに記載の方法と比べて、紡糸プロセスの品質が改善され、少なくとも同等に良好な寸法安定性で、ヤーン10kgあたりの毛羽数が大幅に低減され、ヤーン1000kgあたりの糸切れ数も同様である。
【0011】
本発明による方法の記載の良好な効果を実現するために、区間BDは、ガス状の冷媒が吸い込まれる長さLBXの開いた吸込区間BXと、長さLXDの閉じた区間XDとに分けられており、LBX:LXDの比は、0.15:1〜0.5:1である。
【0012】
区間BDが、長さLBXの開いた吸込区間BXと長さLXDの閉じた区間XDとに分けられず、したがって第1冷却域において全長BD=Lにわたる吸込が行われると、その他の方法条件が同じ場合、
−フィラメントの集中的な粘着が生じ、フィラメントヤーンを1800dtexまたはそれ以上の総繊度で紡糸することは全く不可能であり(ブラック−アンド−ホワイト−効果:Schwarz-weiss-Effekt、1800dtexを下回る場合紡糸可能であり=ホワイト、1800dtex以上になると紡糸不可能になる=ブラック)、
−または1800dtexまたはそれ以上の総繊度でのマルチフィラメントヤーンの紡糸は延伸比を低減することによって実現されるが、ヤーン10kgあたりの毛羽数およびヤーン1000kgあたりの糸切れ数の許容できない高い値でしか実現されない。さらにヤーンは、過度に小さな寸法安定性、つまりDs=EAST+HASの大きすぎる値を有している。
【0013】
1800dtexより小さな総繊度では、全長BD=Lにわたって開いた吸込区間でもフィラメント束を紡糸することができる。しかし本発明による方法とその他の点では同様の条件下において、毛羽数および糸切れ数は、本発明による方法に対して極めて高くなっている。
【0014】
本発明によれば、LBX:LXDの比は、0.15:1〜0.5:1の範囲である。比LBX:LXDが、0.15:1よりも小さな場合、フィラメントに及ぼされる冷却効果は十分でなく、フィラメントが粘着するようになる。LBX:LXDの比が、0.5:1よりも大きな場合、十分に安定した走行特性が得られない。
【0015】
本発明による有利な方法では、LBX:LXDの比が、0.2:1〜0.4:1の範囲であり、特に有利には0.25:1〜0.35:1の範囲であり、特に有利には0.27:1〜0.33:1の範囲である。
【0016】
吸込区間BXの絶対長さLBXおよび閉じた区間XDの閉じた区間の絶対長さLXDは、形成される比LBX:LXDの比が本発明の範囲内である限り、広範囲で調節可能である。本発明による方法の前述の有利な効果を、特に明確に得るために、有利には、LBXは、5cm〜50cmの範囲の長さを有しており、LXDは、20cm〜150cmの範囲の長さを有している。特に有利には、本発明による方法は、10cm〜25cmの範囲のLBXの値および35cm〜75cmの範囲のLXDの値で実施される。特に有利には、本発明による方法は、12cm〜21cmの範囲のLBXの値および49cm〜58cmの範囲のLXDの値で実施される。
【0017】
本発明によれば、AとBとの間の仮想区間は、ノズル孔出口平面に対して平行に延びている。仮想区間ABに対して、送風区間ACは、角度αを成し、吸込区間BXは、角度βを成し、この場合αおよびβの値は、同じかあるいは異なっていてよい。本発明による有利な方法では、送風区間ACが、仮想区間ABに対して60°〜90°の角度αを有しており、吸込区間BXが、仮想区間ABに対して60°〜90°の角度βを有している。
【0018】
本発明による特に有利な方法によれば、送風区間ACが、仮想区間ABに対して90°の角度αを有しており、吸込区間BXが、仮想区間ABに対して90°の角度βを有している。
【0019】
本発明による特に有利な別の方法によれば、送風区間ACが、仮想区間ABに対して60°から90°未満の角度αを有しており、吸込区間BXが、仮想区間ABに対して90°の角度βを有している。
【0020】
原則として、本発明による方法を実施する際に、仮想区間ABに対して吸込区間BXの成す角度βは、仮想区間ABに対して区間XDの成す角度β’と異なるようにすることができる。しかし有利には、本発明による方法では、角度βと角度β’とは同じである。
【0021】
本発明による方法では、フィラメント束に、第1冷却域においてガス状の冷媒が横向きに吹き付けられ、フィラメント束は、吸込区間BXを通る、横方向送風とは反対側の吸込によって、冷却される。このことは、フィラメント束が長さLの送風区間ACと長さLBXの吸込区間BXとの間を通ってガイドされることによって行われる。別の構成では、フィラメント流が分けられ、たとえば第1の冷却域において2つのフィラメント流の間の中央で分けられ、たとえば長さLの多孔筒として、長さLの送風区間ACが設けられる。この構成では、ガス状の冷媒は、長さLの送風区間にわたってフィラメント束の中央から、フィラメント束を通って外向きに送風され、長さLBXの吸込区間BXを通って吸い込まれる。さらに本発明による方法によれば、フィラメント流の中央で延びる多孔筒が、長さLBXの吸込区間BXとして機能し、長さLの送風区間ACにわたって外側から内側へ横方向に送風されるガス状の冷媒を吸い込むようにすることもできる。
【0022】
本発明による方法によれば、有利には、第1冷却域におけるガス状の冷媒の流速が、0.1m/s〜1m/sである。この速度では、実質的に乱流の形成および結晶化における表面/芯部−差の形成のない均等な冷却が得られる。
【0023】
本発明による別の有利な方法では、ガス状の冷媒が第1冷却域において少なくとも1つの横方向送風部に供給されるまえに、ガス状の冷媒は、第1調温装置によって温度調整、つまり冷却または加熱される。この方法によって、周辺温度とは無関係なプロセスガイドが得られ、このことはたとえば昼夜もしくは夏冬差に関して紡糸方法の長期安定性に有利に働く。
【0024】
冷却の第2ステップは、本発明による方法では、自己吸引(self suction yarn cooling)によって行われる。ここではフィラメント束は、周辺に存在するガス状の冷媒、たとえば周辺空気を連行して、そこで追加的に冷却される。この場合ガス状の冷媒の、フィラメント束の走行方向に概ね平行である通流が得られる。ここではガス状の冷媒は、少なくとも2方向からフィラメント束に近づく。
【0025】
このことは、本発明による方法によれば、自己吸引ユニットが、孔の形成された、フィラメント束に対して平行に延びる2つの材料、たとえば多孔プレートによって形成されると達成することができる。プレートの長さは、少なくとも10cmであり、拡大方向では数メートルまでの値を占めることができる。一般的には自己吸引区間の長さは、30cm〜150cmであり、この長さは本発明による方法にも適切である。
【0026】
上述したように本発明による有利な方法を実施することができ、ここでは第2冷却域において、フィラメント束は、ガス状の冷媒がフィラメント束のフィラメントの2方向からの自己吸引によってフィラメントに当接するように、孔の形成された材料、たとえば多孔プレートの間を通ってガイドされる。
【0027】
本発明による別の有利な方法では、第2冷却域において、フィラメント束は、孔の形成された筒を通ってガイドされる。そのような「自己吸引筒(Self -suction-Rohre)は、専門家には既知である。自己吸引筒は、フィラメント束によるガス状の冷媒の連行を実現し、しかも実質的に乱流形成が回避されている。この場合多孔筒は、0.1〜0.9の範囲、特に有利には0.30〜0.85の範囲の多孔性PRohr=F0/Fを有しており、この場合F0は、筒の開いた周面であり、Fは、筒の周面全体を表す。
【0028】
第2冷却域は、「自己吸引域(Self-suction-Zone)」として、四辺形または矩形の底面を有するシャフトが形成されるように、形成することができ、この場合シャフトの壁は、対向する閉じた2つのプレートと、対向する2つの多孔プレートとから形成される。多孔プレートは、多孔性P1=F01/F1を有しており、この場合F01は、プレートの開いた面積を表し、F1はプレートの全体面積を表している。さらに別の多孔プレートが、多孔性P2=F02/F2を有しており、この場合F02は、プレートの開いた面積を表し、F2はプレートの全体面積を表している。プレートP1の多孔性は、別のプレートP2の多孔性P2と同じかまたは異なってもよい。P1およびP2の値は、有利には0.1〜0.9の範囲であり、特に有利には0.2〜0.85の範囲である。
【0029】
第2冷却域においてフィラメント束によって吸引される冷媒は、たとえば熱交換器を用いることによって調温することができる。このような構成によって、周辺温度とは無関係なプロセスガイドが許容され、このことはたとえば昼夜もしくは夏冬差に関して紡糸法の長期安定性に有利に働く。
【0030】
紡糸ノズルまたはノズルプレートと第1冷却域の開始部分との間に、通常、加熱筒が設けられている。フィラメント種に応じて、専門家には一般的なこの構成要素は、10cm〜40cmである。
【0031】
既に説明したように、本発明による方法は、第1冷却域に、ガス状の冷媒による少なくとも1つの横方向送風部を備えている。要するに、第1冷却域は、第1横方向送風部だけでなく、第2、第3横方向送風部などを有することができ、横方向送風部は、送風区間ACに沿って直に前後に配置されていて、全体で長さLを有している。ここでは原則として、各横方向送風部は、別の横方向送風部が運転するガス状の冷媒の送風量とは無関係に調節可能なガス状の冷媒の送風量で運転することができる。さらに原則として、各横方向送風部は、別の横方向送風部が運転するガス状の冷媒の温度とは無関係に調節可能なガス状の冷媒の温度で運転することができる。
【0032】
本発明の有利な方法によれば、第1冷却域が、送風区間ACにおいて、第1横方向送風部と、該第1横方向送風部に直に続く第2横方向送風部とを備えており、第1横方向送風部と第2横方向送風部とが、全体で、長さLを有しており、第1横方向送風部を、ガス状の冷媒の速度v11で運転し、第2横方向送風部を、ガス状の冷媒の速度v12で運転し、速度v11は、速度v12とは異なる。
【0033】
本発明の有利な別の方法によれば、第1冷却域が、送風区間ACにおいて、第1横方向送風部と、該第1横方向送風部に直に続く第2横方向送風部とを備えており、第1横方向送風部と第2横方向送風部とが、全体で、長さLを有しており、第1横方向送風部を、ガス状の冷媒の温度T11で運転し、第2横方向送風部を、ガス状の冷媒の温度T12で運転し、温度T11は、温度T12とは異なる。
【0034】
このような両構成では、第1の冷却域における冷却条件を極めて正確に冷却要求に適合させることができる。
【0035】
本発明の別の方法によれば、フィラメント束を、第2冷却域において、フィラメント束の周囲に存在するガス状の冷媒を自己吸引することによって追加的に冷却し、この際に、ガス状の冷媒を、第2冷却域に進入するまえに、温度調整する。
【0036】
本発明による方法によれば、フィラメント束を冷却するために、ガス状の冷却媒体が用いられる。ガス状の冷媒とは、本発明の枠内では、フィラメント束を冷却するのに適した、たとえばガス状の冷媒と形成されるマルチフィラメントヤーンとから不都合な反応生成物が形成されることによって、形成されるマルチフィラメントヤーンの特性に不都合な影響を及ぼさないあらゆるガス状の媒体と解される。本発明による方法によれば、有利には、ガス状の冷媒として、空気および/または不活性ガス、たとえば窒素またはアルゴンが用いられ、この場合第1および第2冷却域に、同じかあるいは異なるガス状の冷媒を用いることができる。
【0037】
本発明による有利な方法によれば、第2冷却域においてフィラメント束を冷却したあとで、巻き取るまえに、フィラメントの単数または複数のステップの延伸が行われる。したがって本発明による方法は、有利には、連続紡糸延伸巻取法(spinning-drawing-winding-process)である。延伸とは、ここではフィラメントを延伸する一般的で専門家に広く知られたあらゆる方法と解される。ここで言及しておくと、延伸は、1よりも大きな延伸比でも、1より小さな延伸比でもよい。後者は、専門家には緩和(Relaxation)として既知である。この場合本発明による方法では、延伸比は、全く同時に1を大小して生じる。
【0038】
総延伸比は、通常、フィラメントの紡糸速度、つまりフィラメントが冷却域から離間し、延伸装置の第1ゴデット対で定着される速度に対する延伸速度の比から求められる。典型的な組み合わせは、たとえば2760m/minの紡糸速度、6000m/minの延伸速度、0.5%の延伸に関連する緩和の加算、つまり最後位のゴデットの5970m/minの速度である。その結果として2.17の総延伸比が得られる。
【0039】
したがって本発明によれば、巻取に関して、少なくとも2000m/minの速度が有利である。原則的に、技術的実現の範囲内で、プロセスに、速度に関する上限は設定されない。一般的に、巻取に際する高い速度範囲に関して、約8000m/minが有利であり、特に有利には6500m/minである。1.5〜3.0の一般的な総延伸比では、紡糸速度に関して約500m/min〜約4000m/min、有利には2000m/min〜3500m/minの範囲が得られ、特に有利には2500m/min〜3500m/minである。
【0040】
延伸装置の上流側で、冷却域の下流側には、公知の冷却筒が設けられている。
【0041】
本発明による方法は、原則的に、あらゆる熱可塑性材料からマルチフィラメントヤーンを紡糸するのに適していて、したがって特定の熱可塑性材料に制限されるものではない。むしろ本発明による方法は、押出可能でフィラメントを形成するあらゆる熱可塑性材料を紡糸する、特に熱可塑性ポリマーからマルチフィラメントヤーンを紡糸するのに用いることができる。したがって本発明による方法に用いられる熱可塑性材料は、有利には、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンまたはこれらのポリマーの混合物もしくはコポリマーを有する、熱可塑性ポリマーを含有する群から熱可塑性材料が選択される。
【0042】
特に有利には、本発明による方法で用いられる熱可塑性材料は、主にポリエチレンテレフタレートから成っている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による紡糸法を実施する装置の1形態の概略横断面図である。
【0044】
紡糸ノズル1から、多数のノズル孔(ノズル孔の端部はノズル孔出口平面を形成する)を通って、マルチフィラメント、つまりフィラメント束2が紡糸される。フィラメント束2に、横方向に送風する(横方向送風部)Iのための装置によって、ガス状の冷媒が吹き込まれる。横方向送風は、長さLを有する送風区間ACにわたって行われ、ここではAは、送風区間ACの、ノズル孔に向いた側の始端部Aを成し、Cは、ノズル孔から離間する側の終端部を成す。点AもしくはCは、第1冷却域の上位端部もしくは下位端部を表す。送風区間ACとは反対側に、区間BDが配置されており、区間BDは、ノズル孔に向いた側の始端部Bとノズル孔から離間する側の端部Dとを有している。AおよびBは、AとBとの間の仮想区間ABが、ノズル孔出口平面に対して平行に延びるように配置されている。
【0045】
仮想区間ABと送風区間ACとの間の角度は90°である。仮想区間ABと区間BDとの間の角度βも同様に90°である。区間BDは、長さLBXを有する開いた吸込区間BX(吸込区間BXにわたってガス状の冷媒が吸込装置IIによって吸い込まれる)と、長さLXDを有する閉じた区間XDとに分けられ、この場合LBX:LXDの比は、0.15:1〜0.5:1の範囲にある。
【0046】
第1冷却域(第1冷却域の左側の終端部はCで表し、右側の終端部はDで表した)の下方に、直に第2冷却域が続いている。したがってCもしくはDは、第2冷却域の左右の始端部を表す。第2冷却域は、左側で多孔プレートによって規定され、多孔プレートは、長さLCEを有する自己吸引区間CEを形成し、自己吸引区間CEにわたって、フィラメント束2は、専らフィラメント束2の運動によってガス状の冷媒を吸引する。第2冷却域は、右側で、別の多孔プレートによって規定され、別の多孔プレートは、長さLDFを有する自己吸引区間DFを形成し、自己吸引区間DFにわたって、フィラメント束2は、同様に専らフィラメント束2の運動によってガス状の冷媒を吸引する。第2冷却域に続く、紡糸されたマルチフィラメントの延伸および巻取は図示していない。
【0047】
既に述べたように、本発明による方法によって、連続紡糸延伸巻取プロセスで、少なくとも1800dtexの総繊度と、最高11.0%の寸法安定性Ds=EAST+HASと、LBX:LXD=1であること以外は同一条件下で紡糸されたポリエステルフィラメントヤーンの毛羽数よりも少なくとも5%小さな毛羽数とを有する、マルチフィラメントヤーン、特にポリエステルマルチフィラメントヤーンを製造することができる。
【0048】
したがってそのようなポリエステルマルチフィラメントヤーンもまた本発明の一部を成すものとする。この場合総繊度の上限は、原則として任意の値を占めることができ、以下に説明する。前述のノズル孔出口平面は、長さと幅とを有する紡糸ノズルプレートの一部として形成することができる。幅方向の紡糸ノズルプレートの延在によって、原則として、本発明による方法によって、任意の大きさの総繊度で紡糸を行うことができる。しかし専門家は、実際の設計から、ポリエステルマルチフィラメントヤーンの総繊度の上限を選択し、上限は、1800dtex〜5000dtexの範囲にあり、有利には2000dtex〜3600dtexの範囲にある。
【0049】
有利な形態では、ポリエステルマルチフィラメントヤーンは、最高10.5%の寸法安定性Ds=EAST+HASを有している。
【0050】
別の有利な形態では、ポリエステルマルチフィラメントヤーンは、60cN/texを超える破断強度、特に有利には65cN/texを超える破断強度を有している。
【0051】
別の有利な形態では、ポリエステルマルチフィラメントヤーンは、LBX:LXD=1であること以外は同一条件下で紡糸されたポリエステルフィラメントヤーンの毛羽数よりも少なくとも50%、特に有利には少なくとも60%小さな毛羽数を有している。たとえば毛羽数は、ヤーン10kgあたり500より小さく、特に有利には、ヤーン10kgあたり250より小さい。
【0052】
別の有利な形態では、ポリエステルマルチフィラメントヤーンは、ヤーン1000kgあたり25よりも小さな糸切れ数を有しており、特に有利には、ヤーン1000kgあたり10よりも小さい。
【0053】
本発明によるポリエステルマルチフィラメントヤーンの特徴によれば、有利には、ヤーンが破断強度T(mN/tex)と、破断伸度E(%)とを有し、破断強度Tと、破断伸度Eの3条根T・E1/3との積は、少なくとも1600mN%1/3/texであり、有利には1600mN%1/3tex〜1800mN%1/3texである。
【0054】
パラメータT・E1/3を特定するための破断強度Tならびに破断伸度Eの測定は、ASTM885に従って行われ、専門家には広く知られている。
【0055】
ヤーン10kgあたりの毛羽数の特定は、機器ENKA Tecnica FR V.を用いて行われる。
【0056】
ヤーン1000kgあたりの糸切れの特定は、カウントすることによって行われる。
【0057】
EASTの測定は、ASTM885に従って行われ、HASの特定もまたASTMに従って行われ、それも、180°C、5mN/texで、2分の測定長さにわたる測定の条件下で行われる。
【0058】
前述のポリエステルマルチフィラメントヤーンは、技術利用、特にタイヤコードに使用するのに特に良好に適している。
【0059】
本発明によるポリエステルマルチフィラメントヤーンから製造される、ディッピングされないコードは、積T・E1/3に関して、少なくとも1375mN%1/3/tex、有利には1800mN%1/3/texまでの値を有している。したがってそのようなディッピングされないコードもまた本発明の範疇である。
【0060】
さらに本発明に、本発明による方法に従って製造されるポリエステルマルチフィラメントヤーンを有する、ディッピングされたコードも含まれており、この場合コードは、保持能力(Retentionsvermoegen)Rtを有し、その特徴によれば、品質ファクタQf、つまりポリエステルマルチフィラメントヤーンのT・E1/3とコードのRtとの積が、1350mN%1/3/texよりも大きく、有利には1800mN%1/3/texまでの値を占める。
【0061】
保持能力とは、ディッピングのあとのコードの破断強度および糸の破断強度から成る無次元の係数と解される。
【0062】
さらに本発明の方法は、テクニカルヤーンの製造にも良好に適している。テクニカルヤーンの紡糸に必要な調節、特にノズルの選択ならびに加熱筒の長さは、専門家には公知である。
【0063】
本発明を、以下の実施例に基づいて詳しく説明する。実施例は、本発明を制限するものではない。
【0064】
実施例1:2220dtexのヤーン繊度を有するポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンの製造
2.04の相対粘度を有するポリエチレンテレフタレート粒体(ウベローデ(DIN51562)粘度計において、25°C、2,4,6−トリクロロフェノールとフェノールとから成る混合物(TCF:F,m/m)125g中のポリマー1gの溶液で測定される)が紡糸され、この場合α=β=90°が選択され、冷却される。紡糸されたフィラメント束は、先ず加熱筒を通って、次いで加熱筒に直に続く第1冷却域と、第1冷却域に直に続く第2冷却域とを通って走行する。
【0065】
第1冷却域は、送風区間を備えており、送風区間は、第1横方向送風部と、第1横方向送風部に続く第2横方向送風部とに分けられ、横方向送風部によって、フィラメント束に、それぞれ異なる温度および通流速度の空気が横方向に吹き込まれる。第1横方向送風部とは反対側で、加熱筒に直に続いて、特定長さの開いた吸込区間が設けられており、吸込区間を通って、横方向に吹き込まれた空気が特定の吸込能力で吸い込まれる。吸込区間に直に続いて、特定長さの閉じた区間が設けられている。
【0066】
第1冷却域の第2横方向送風部に、第2冷却域が直に続いており、第2冷却域は、シャフトによって形成され、シャフトは、異なる通気性を有する、対向する多孔の2枚のプレートを備えており、この場合第1プレートは、第1冷却域の送風区間の下方に配置されており、第2プレートは、第1冷却域の吸込区間の下方に配置されている。第2冷却域では、フィラメント束は、フィラメント束の走行に基づいて多孔のプレートを通って自己吸引される空気によって冷却される。表1には、紡糸条件および冷却条件をまとめた。
【0067】
ここでは:
L 第1冷却域の送風区間の長さ
11 第1冷却域の第1横方向送風部においてフィラメント束に横方向に送風される空気の温度、
11 第1冷却域の第1横方向送風部においてフィラメント束に横方向に送風される空気の流速、
11 第1冷却域の第1横方向送風部の長さ、
12 第1冷却域の第2横方向送風部においてフィラメント束に横方向に吹き込まれる空気の温度、
12 第1冷却域の第2横方向送風部においてフィラメント束に横方向に吹き込まれる空気の流速、
12 第1冷却域の第2横方向送風部の長さ、
BX 第1冷却域における開いた吸込区間BXの長さ、
XD 第1冷却域における閉じた区間XDの長さ、
V/t 第1冷却域において長さLBXの開いた吸込区間BXを通って空気を吸い込む吸込能力、
1 送風区間の下方の第2冷却域における多孔プレートの通気性、
2 吸込区間の下方の第2冷却域に設けられた多孔プレートの通気性、
2 フィラメント束によって第2冷却域において自己吸引される空気の温度、
CE 第2冷却域における自己吸引区間の長さ、
【0068】
表1:紡糸および冷却条件
【表1】

【0069】
第2冷却域の通過直後に、マルチフィラメントは束ねられ、筒を通って延伸装置に走入し、これによってマルチフィラメントは、表2に示した延伸特性で、600m/minの延伸速度で延伸され、巻き取られ、これによって2200dtexのヤーン繊度を有する、1ステップで製造されるポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンが得られ、その毛羽数および破断強度T・E1/3値および寸法安定性Dsも同様に表2に示した(ヤーンNr.1〜8参照)。
【0070】
比較例1:
比較のために、ポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.V1〜V6を実施例1と同様に製造した。その相違点によれば、第1冷却域において吸込が全長BD=L=700mmにわたって行われる。
【0071】
表2:本発明によるポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.1−8と比較−ポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.V1−V6との延伸比、延伸速度Vs、破断強度T、T・E1/3値、毛羽数およびDs値
【表2】

【0072】
比較ヤーンの毛羽数と本発明によって製造されるヤーン1−6との毛羽数との比較が示すように、本発明による方法によって、著しく小さな毛羽数を有するヤーンが得られ、ひいてはマルチフィラメントの大幅に改善された走行特性が得られる。毛羽数の減少は、本実施例では7%(比較ヤーンV1とヤーン1との比較)〜86%(比較ヤーンV5とヤーン5との比較)である。ここでは本発明によって製造されるヤーンの寸法安定性Dsは、最大で11.0%であり、その他は同じ条件下において同程度に良好であるか、または比較ヤーンV1−V6のDsよりも良好である。さらに本発明によって製造されるヤーン7,8の示すところによれば、本発明による方法によって、2200dtexのヤーン繊度と、比較的高い安定性と、連続的な紡糸を許容する毛羽数とを有するヤーンを製造することができる。これに対して比較例の条件下において6000m/minの延伸速度で2.150の延伸比に調節する試みでは、フィラメントの集中的な粘着が生じ、連続紡糸は不可能であった。このことはとりわけ前述の条件において2.175の延伸比に調節する試みに当てはまる。最後に本発明によって製造されるヤーン6,8の示すところによれば、本発明による方法では、適当な延伸比を選択して、T・E1/3値を少なくとも1600mN%1/3/texの有利な範囲にもたらすことができる。
【0073】
実施例2:1670dtexのヤーン繊度を有するポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンの製造
2.04の相対粘度を有するポリエチレンテレフタレート粒体(ウベローデ(DIN51562)粘度計において、25°C、2,4,6−トリクロロフェノールとフェノールとから成る混合物(TCF/F,7:10m/m)125g中のポリマー1gの溶液で測定される)が紡糸され、この場合α=β=90°が選択される。紡糸されたフィラメント束は、第1実施例と同様に、先ず加熱筒を通って、次いで加熱筒に直に続く第1冷却域と、第1冷却域に直に続く第2冷却域とを通って走行する。表3には、紡糸および冷却条件をまとめた。ここでは:紡糸および冷却パラメータは、第1実施例と同様である。
【0074】
表3:紡糸および冷却条件
【表3】

【0075】
第2冷却域を通過した直後に、マルチフィラメントは束ねられ、筒を通って延伸装置に走入し、したがってマルチフィラメントは、6000m/minの延伸速度で、表4に示した延伸比に巻き取られ、これによって1670dtexのヤーン繊度を有する、1ステップで製造されるポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンが得られる。その毛羽数、破断強度、T・E1/3値および寸法安定性Dsも同様に表4に示した(ヤーンNr.1−9参照)。
【0076】
比較例2:
比較のために、ポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.V1−V9が実施例2と同様に製造され、その相違点によれば、第1冷却域において、全長BD=L=700mmにわたって吸込が行われる。
【0077】
表4:本発明によるポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.1−9と比較−ポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.V1−V9との延伸比、延伸速度Vs、破断強度T、T・E1/3値、毛羽数およびDs値
【表4】

【0078】
本発明に従って製造されるヤーン1−9の毛羽数と比較ヤーンV1−V9の毛羽数との比較が示すように、本発明による方法では、常に、極めて小さな毛羽数ひいては大幅に改善されたマルチフィラメントの走行特性を有するヤーンが得られる。ここでは寸法安定性Dsは、その他の点では同じ条件で、ほとんどの場合において比較ヤーンV1−V9の寸法安定性Dsよりも良好である。
【0079】
実施例3:1440dtexのヤーン繊度を有するポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンの製造
2.04の相対粘度を有するポリエチレンテレフタレート粒体(ウベローデ(DIN51562)粘度計において、25°C、2,4,6−トリクロロフェノールとフェノールとから成る混合物(TCF/F,7:10m/m)125g中のポリマー1gの溶液で測定される)が紡糸され、この場合α=β=90°が選択され、冷却される。紡糸されたフィラメント束は、第1実施例と同様に、先ず加熱筒を通って、次いで加熱筒に直に続く第1冷却域と、第1冷却域に直に続く第2冷却域とを通って走行する。表5には、紡糸および冷却条件をまとめた。ここでは、紡糸および冷却パラメータは、第1実施例と同様である。
【0080】
表5:紡糸および冷却条件
【表5】

【0081】
第2冷却域を通過した直後に、マルチフィラメントは束ねられ、筒を通って延伸装置に走入し、したがってマルチフィラメントは、6000m/minの延伸速度で、表6に示した延伸比で巻き取られ、これによって1440dtexの繊度を有する、1ステップで製造されるポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンが得られる。その毛羽数、破断強度、T・E1/3値および寸法安定性Dsも同様に表6に示した(ヤーンNr.1−9参照)。
【0082】
比較例3:
比較のために、ポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.V1−V9が実施例3と同様に製造され、その相違点によれば、第1冷却域において、全長BD=L=700mmにわたって吸込が行われる。
【0083】
表6:本発明によるポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.1−9と比較ポリエチレンテレフタレート−マルチフィラメントヤーンNr.V1−V9との延伸比、延伸速度Vs、破断強度T、T・E1/3値、毛羽数およびDs値
【表6】

【0084】
本発明に従って製造されるヤーン1−9の毛羽数と比較ヤーンV1−V9の毛羽数との比較が示すように、本発明による方法では、ほとんどの場合に極めて小さな毛羽数ひいてはマルチフィラメントの大幅に改善された走行特性を有するヤーンが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料から成るマルチフィラメントを紡糸する方法であって、
溶融材料を、紡糸ノズルを通って押し出して、複数のフィラメントを有するフィラメント束を形成し、固化したあとでマルチフィラメントヤーンとして巻き取るステップを有し、
紡糸ノズルは、複数のノズル孔を備えており、フィラメントが流出する孔の端部が、ノズル孔出口平面を成しており、
フィラメント束を、紡糸ノズルの下方で第1冷却域において先ず少なくとも1つの横方向部で横方向に送風することによって、ガス状の冷媒によって冷却し、ガス状の冷媒を、横方向送風部とは反対側で吸い込むことによって冷却し、そのあとで第1冷却域の下方に位置する第2冷却域において、フィラメント束の周辺に存在するガス状の冷媒をフィラメント束が自己吸引することによってフィラメント束を冷却する方法において、
第1冷却域において、長さLの送風区間ACにわたってガス状の冷媒を少なくとも1つの横方向送風部で横方向に送風し、
該送風区間ACは、ノズル孔に向いた側の上位の始端部Aと、ノズル孔とは離間する側の下位の終端部Cとを備えており、送風区間ACとは反対側に、区間BDが配置されており、該区間BDは、ノズル孔に向いた側の始端部Bと、ノズル孔から離間する側の終端部Dとを備えており、始端部Aと始端部Bとの間の仮想延伸部ABが、ノズル孔出口平面に対して平行に延びており、区間BDは、長さLを有しており、区間BDは、ガス状の冷媒が吸い込まれる長さLBXの開いた吸込区間BXと、長さLXDの閉じた区間XDとに分けられており、LBX:LXDの比は、0.15:1〜0.5:1であることを特徴とする、熱可塑性材料から成るマルチフィラメントを紡糸する方法。
【請求項2】
BX:LXDの比が、0.2:1〜0.4:1である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
BXが、5cm〜50cmの範囲の長さを有しており、LXDが、20cm〜150cmの範囲の長さを有している、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
送風区間ACが、仮想区間ABに対して60°〜90°の角度αを有しており、吸込区間BXが、仮想区間ABに対して60°〜90°の角度βを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
送風区間ACが、仮想区間ABに対して90°の角度αを有しており、吸込区間BXが、仮想区間ABに対して90°の角度βを有している、請求項4記載の方法。
【請求項6】
送風区間ACが、仮想区間ABに対して60°から90°未満の角度αを有しており、吸込区間BXが、仮想区間ABに対して90°の角度βを有している、請求項4記載の方法。
【請求項7】
第1冷却域において横向きに送風されるガス状の冷媒が、0.1m/s〜1m/sの流速を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ガス状の冷媒が第1冷却域において少なくとも1つの横方向送風部に供給されるまえに、ガス状の冷媒を、第1調温装置によって温度調整する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
第2冷却域において、フィラメント束を、複数の孔の形成された材料、たとえば多孔プレートの間を通ってガイドし、ガス状の冷媒を、2方向からフィラメント束のフィラメントが自己吸引することによって、フィラメントに接触させる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
第2冷却域において、フィラメント束を、孔の形成された筒を通ってガイドする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
第1冷却域が、送風区間ACにおいて、第1横方向送風部と、該第1横方向送風部に直に続く第2横方向送風部とを備えており、第1横方向送風部と第2横方向送風部とが、全体で、長さLを有しており、第1横方向送風部を、ガス状の冷媒の速度v11で運転し、第2横方向送風部を、ガス状の冷媒の速度v12で運転し、速度v11は、速度v12とは異なる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
第1冷却域が、送風区間ACにおいて、第1横方向送風部と、該第1横方向送風部に直に続く第2横方向送風部とを備えており、第1横方向送風部と第2横方向送風部とが、全体で、長さLを有しており、第1横方向送風部を、ガス状の冷媒の温度T11で運転し、第2横方向送風部を、ガス状の冷媒の温度T12で運転し、温度T11は、温度T12とは異なる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
フィラメント束を、第2冷却域において、フィラメント束の周辺に存在するガス状の冷媒を自己吸引することによって追加的に冷却し、ガス状の冷媒を、第2冷却域に進入するまえに、温度調整する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ガス状の冷媒として、空気および/または不活性ガスを用いる、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第2冷却域においてフィラメント束を冷却したあとで、巻き取るまえに、フィラメントの単数または複数のステップの延伸を行う、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
巻取を、少なくとも2500m/minの速度で行う、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンまたはこれらのポリマーの混合物もしくはコポリマーを有する、熱可塑性ポリマーを含有する群から熱可塑性材料を選択する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性材料は、主にポリエチレンテレフタレートから成っている、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
最高11.0%の寸法安定性を有し、かつLBX=Lであること以外は同じ条件下で紡糸されたポリエステルフィラメントヤーンの毛羽数よりも少なくとも5%小さな毛羽数を有していることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法によって得られるポリエステルマルチフィラメントヤーン。
【請求項20】
最高10.5%の寸法安定性を有する、請求項19記載のポリエステルフィラメントヤーン。
【請求項21】
60cN/texよりも大きな破断強度を有する、請求項19または20記載のポリエステルフィラメントヤーン。
【請求項22】
65cN/texよりも大きな破断強度を有する、請求項21記載のポリエステルフィラメントヤーン。
【請求項23】
BX=Lであること以外は同じ条件下で紡糸されたポリエステルフィラメントヤーンの毛羽数よりも少なくとも50%小さな毛羽数を有している、請求項19から22までのいずれか1項記載のポリエステルマルチフィラメントヤーン。
【請求項24】
BX=Lであること以外は同じ条件下で紡糸されたポリエステルフィラメントヤーンの毛羽数よりも少なくとも60%小さな毛羽数を有している、請求項23記載のポリエステルマルチフィラメントヤーン。
【請求項25】
ヤーン1000kgあたり25よりも小さな糸切れ数を有している、請求項19から24までのいずれか1項記載のポリエステルフィラメントヤーン。
【請求項26】
ヤーン1000kgあたり10よりも小さな糸切れ数を有している、請求項25記載のポリエステルフィラメントヤーン。
【請求項27】
ヤーンが、破断強度TmN/texと破断伸度E%とを有しており、破断強度Tと、破断伸度Eの3条根T・E1/3との積は、少なくとも1600mN%1/3/texである、請求項19から26までのいずれか1項記載のポリエステルフィラメントヤーン。
【請求項28】
コードが、積T・E1/3に関して、少なくとも1375mN%1/3/texの値を有していることを特徴とする、請求項27記載のポリエステルフィラメントヤーンを有するディッピングされないコード。
【請求項29】
コードが、維持能力Rtを有しており、品質ファクタQf、つまりポリエステルフィラメントヤーンのT・E1/3とコードのRtとの積が、1350mN%1/3/texよりも大きくなっていることを特徴とする、請求項27記載のポリエステルフィラメントヤーンを有するディッピングされたコード。

【図1】
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【公表番号】特表2010−534283(P2010−534283A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517297(P2010−517297)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005783
【国際公開番号】WO2009/012916
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(505008246)
【氏名又は名称原語表記】Diolen Industrial Fibers B.V.
【住所又は居所原語表記】Westervoortsedijk 73, NL−6827 AV Arnhem, Netherlands
【Fターム(参考)】