説明

紡績機、巻取装置、及び繊維機械

【課題】回転体の周期的な異常を検出することができ、検出精度の向上を図ることが可能な紡績機、巻取装置、及び繊維機械を提供すること。
【解決手段】ドラフトする又は巻き取るための回転体を駆動するモータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視し、この監視結果に基づいて、回転体の周期的な異常の有無を判定する構成とする。例えば、回転体の回転に伴って移動する繊維束に、周期的に太さが異なるなどの異常がある場合には、モータに作用する負荷トルクが変動したり、モータの回転速度が変動したりする。そのため、モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視することで、回転体の周期的な異常の有無を判定し、回転体によってドラフト又は巻き取られる繊維束の周期的な異常を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機、巻取装置、及び繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特許文献1に記載の繊維機械が知られている。特許文献1に記載の技術では、精紡機などの繊維機械に取り付けた糸斑検出器(例えば、クリアラ)から取り出した糸斑電気信号をデジタル化し、当該デジタル化した信号を計算器によって解析することで、糸斑を検出しようとしている。
【0003】
また、紡機のドラフト装置の異常検出方法として、特許文献2に記載の技術が知られている。この技術では、ドラフトローラを駆動する駆動モータに作用する負荷トルクの変化の有無を監視し、負荷トルクが所定の割合以上変化した場合に異常と判断して、ドラフト装置の運転を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】昭58−62511号公報
【特許文献2】特開2003−166135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、斑検出器自体の検出精度が不足していると、比較的長い周期の周期斑を検出できない場合がある。また、特許文献2に記載の技術では、モータの負荷トルクの変化の有無を監視しているものの、周期的な異常を検出するものではなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、ドラフトローラの周期的な異常を検出することができ、検出精度の向上を図ることが可能な紡績機を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、回転ドラムの周期的な異常を検出することができ、検出精度の向上を図ることが可能な巻取装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、回転体の周期的な異常を検出することができ、検出精度の向上を図ることが可能な繊維機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による紡績機は、繊維束をドラフトするドラフトローラと、ドラフトローラを回転駆動するモータと、モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部と、監視部による監視の結果に基づいて、繊維束に周期斑として発生するドラフトローラの周期的な異常を判定する周期斑判定部とを備えていることを特徴としている。
【0010】
この紡績機によれば、繊維束をドラフトするドラフトローラを駆動するモータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視し、この監視結果に基づいて、ドラフトローラの周期的な異常の有無を判定することができる。これにより、繊維束に周期斑として発生するドラフトローラの周期的な異常を検出して、ドラフトされた繊維束の周期的な異常を検出することができる。従来、紡績機に一般的に設置されている斑検出器(クリアラ)を用いて、長周期斑を検出しようとすると、検出できない場合があった。クリアラと比較して、モータのトルク及び/又は回転速度の値(モニタ値)は、精度良く検出可能であるため、モータの監視によるモニタ値に基づいて判定することで、周期斑判定部は繊維束の周期的な異常を正確に判定することができる。
【0011】
周期斑判定部は、監視部による監視の結果であるトルク及び回転速度の少なくとも一方に関する値を周波数分析することにより、ドラフトローラの周期的な異常を判定してもよい。周波数分析は、周期的な異常を判定する場合に有効な手段であるため、ドラフトローラの周期的な異常を精度良く検出することができる。
【0012】
紡績機は、繊維束の搬送方向に沿って配置された複数のドラフトローラと、複数のドラフトローラを個別に駆動する複数のモータとを備え、周期斑判定部は、監視部による監視の結果に基づいて、複数のモータの何れに周期的な異常があるかを判定する構成としてもよい。この構成によれば、周期斑判定部は、複数のドラフトローラの何れに周期斑の要因があるかを確実に特定することができる。従来のクリアラを用いた斑検出では、複数の周期斑が重なって発生している場合には、周期斑が何れのドラフトローラに起因するものかを判定することが難しかった。
【0013】
紡績機は、ドラフトローラの下流側に配置され、ドラフトローラによってドラフトされた繊維束の斑を検出する周期斑検出部を更に備え、周期斑判定部は、監視部による監視の結果、及び斑検出部による検出の結果に基づいて、ドラフトローラの周期的な異常を判定し、当該判定の結果に基づいて、繊維束の周期斑を検出する構成としてもよい。この構成によれば、ドラフトローラを駆動するモータの監視結果と、斑検出部による繊維束の斑の検出結果との両方の結果に基づいて、周期斑判定部は、ドラフトローラの周期的な異常を精度良く検出することできる。
【0014】
紡績機は、監視部による監視の結果に関する情報を報知する報知部を更に備えている構成としてもよい。この構成によれば、作業員は、報知部によって報知された情報に基づいて、ドラフトローラの周期的な異常を容易に確認することができ、適切な対処を迅速に行うことが可能となる。例えば、報知部としては、表示部及び音声出力部などが挙げられ、報知部が表示部である場合には、作業員は、表示部を見て、周期的な異常を簡単に確認することができる。
【0015】
紡績機は、ドラフトローラでドラフトされた繊維束を旋回流による紡績する空気紡績装置と、当該空気紡績装置から紡出された繊維束をパッケージへと巻き取る巻取装置と、を備え、周期斑判定部は、巻取装置によるパッケージへの巻取り中に、ドラフトローラの周期的な異常を判定する構成とすることができる。
【0016】
この構成によれば、周期斑判定部は、パッケージの巻取り中であってもドラフトローラの周期的な異常を判定することができる。そのため、紡績機の運転効率の低下を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の巻取装置は、巻取パッケージに接触して回転し、巻取りパッケージに糸を巻き取らせるための回転ドラムと、当該回転ドラムを回転駆動するモータと、当該モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部と、当該監視部による監視の結果に基づいて、回転ドラムの周期的な異常を判定する判定部とを備えていることを特徴としている。
【0018】
この巻取装置によれば、回転ドラムを駆動するモータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視し、この監視結果に基づいて、回転ドラムの周期的な異常の有無を判定することができる。これにより、回転ドラムの周期的な異常を検出して、巻取りパッケージの偏心などを確実に検出することができ、巻取装置の信頼性の向上を図ることができる。この巻取装置としては、紡績機の巻取装置、自動ワインダーなどが挙げられる。
【0019】
判定部は、監視部による監視の結果であるトルク及び回転速度の少なくとも一方に関する値を周波数分析することにより、回転ドラムの周期的な異常を判定してもよい。周波数分析は、周期的な異常を判定する場合に有効な手段であるため、回転ドラムの周期的な異常を精度良く検出することができる。
【0020】
巻取装置は、監視部による監視の結果に関する情報を報知する報知部を更に備えている構成としてもよい。この構成によれば、作業員は、報知部によって報知された情報に基づいて、回転ドラムの周期的な異常を容易に確認することができ、適切な対処を迅速に行うことが可能となる。例えば、報知部としては、表示部及び音声出力部などが挙げられ、報知部が表示部である場合には、作業員は、表示部を見て、周期的な異常を簡単に確認することができる。
【0021】
また、本発明の繊維機械は、繊維束を搬送するための回転体と、当該回転体を回転駆動するモータと、当該モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部と、当該監視部による監視の結果に基づいて、回転体の周期的な異常を判定する判定部とを備えていることを特徴としている。
【0022】
この繊維機械によれば、繊維束を搬送するための回転体を駆動するモータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視し、この監視結果に基づいて、回転体の周期的な異常の有無を判定することができる。なお、「繊維束を搬送する回転体」とは、繊維束を搬送するもののほか、例えば、「スライバをドラフトする」、「糸を巻き取る」など、回転体の回転に伴って所定の処理を実施可能なものを含む。
【0023】
例えば、回転体の回転に伴って移動する繊維束など(スライバ、糸などを含む)に、周期的に太さが異なるなどの異常がある場合には、モータに作用する負荷トルクが変動したり、モータの回転速度が変動したりする。そのため、モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視することで、回転体の周期的な異常の有無を判定し、回転体によって処理される繊維束の周期的な異常を検出することができる。また、従来の斑検出器(クリアラ)で検出することが困難であった長周期の周期斑を検出ことができる。
【0024】
判定部は、監視部による監視の結果であるトルク及び回転速度の少なくとも一方に関する値を周波数分析することにより、回転体の周期的な異常を判定してもよい。周波数分析は、周期的な異常を判定する場合に有効な手段であるため、回転体の周期的な異常を精度良く検出することができる。
【0025】
繊維機械は、監視部による監視の結果に関する情報を報知する報知部を更に備えている構成としてもよい。この構成によれば、作業員は、報知部によって報知された情報に基づいて、回転体の周期的な異常を容易に確認することができ、適切な対処を迅速に行うことが可能となる。例えば、報知部としては、表示部及び音声出力部などが挙げられ、報知部が表示部である場合には、作業員は、表示部を見て、周期的な異常を簡単に確認することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の紡績機によれば、ドラフトローラの周期的な異常を検出することが可能であり、検出精度の向上を図ることができる。
【0027】
また、本発明の巻取装置は、回転ドラムの周期的な異常を検出することが可能であり、検出精度の向上を図ることができる。
【0028】
また、本発明の繊維機械によれば、回転体の周期的な異常を検出することが可能であり、検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の正面図である。
【図2】図1に示す精紡機の縦断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る紡績ユニットのユニットコントローラを示すブロック構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る紡績ユニットのユニットコントローラを示すブロック構成図である。
【図5】周期斑検出処理で実行される手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態に係る自動ワインダーのワインダーユニットを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。
【0031】
図1及び図2に示す精紡機1は、並設された複数の紡績ユニット2を備えている。精紡機1は、紡績ユニット2が並べられている方向に沿って走行自在に設けられた糸継台車3と、原動機ボックス5と、この精紡機1の制御を司る不図示の中央制御部と、紡績ユニット2の制御を司るユニットコントローラ60(図3,図4参照)と、を備えている。
【0032】
中央制御部は、例えば原動機ボックス5の内部に配置されている。中央制御部は、複数のユニットコントローラ60と電気的に接続され、複数のユニットコントローラ60を統括して制御する。ユニットコントローラ60は、各紡績ユニット2に設けられ、各紡績ユニット2を個別に制御する(詳しくは後述する)。
【0033】
各紡績ユニット2(紡績機)は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7、紡績部9(空気紡績装置)、ヤーンクリアラ52、糸弛み取り装置12(糸貯留装置)、及び巻取装置13を主要な構成として備えている。紡績ユニット2では、ドラフト装置7が精紡機1の筐体6の上端近傍に設けられ、ドラフト装置7から送り出される繊維束8が紡績部9に導入され紡績されるように構成されている。紡績部9で紡績された紡績糸10はヤーンクリアラ52を通過した後、糸弛み取り装置12で送られて巻取装置13によって巻き取られ、これによりパッケージ45が形成される。
【0034】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。ドラフト装置7は、繊維束8の送り方向(搬送方向)に沿って配置された複数対のドラフトローラ16,17,19,20(回転体)を有し、これらのドラフトローラ16,17,19,20を用いて繊維束8をドラフトする。ドラフト装置7は、複数のドラフトローラ16,17,19,20として、図2に示すように、バックローラ16、サードローラ17、エプロンベルト18が巻回されたセカンドローラ19、及びフロントローラ20を備えている。ドラフトローラ16,17,19,20は、それぞれ一対のトップローラ及びボトムローラを有し、トップローラ及びボトムローラはスライバ15を挟むように配置されている。
【0035】
ドラフト装置7は、図示しないドラフトクレードルを備えている。ドラフトクレードルは、トップローラを支持し、所定の支軸を介して揺動し開閉する。ドラフトクレードルが閉じられた状態で、トップローラとボトムローラとが当接して、ドラフト装置7は繊維束8をドラフトする。ドラフトクレードルが正規の位置に閉じられていない場合には、繊維束8に周期斑が発生するおそれがある。
【0036】
また、ドラフト装置7は、複数のドラフトローラ16,17,19,20のボトムローラを駆動するためのモータ31〜34を備えている。モータ31は、バックローラ16を回転駆動する。モータ32は、サードローラ17を回転駆動する。モータ33は、セカンドローラ19を回転駆動する。モータ34は、フロントローラ20を回転駆動する。なお、本実施形態では、1つのモータで1つのドラフトローラを回転駆動しているが、1つのモータで複数のドラフトローラを回転駆動させてもよい。例えば、低速側のドラフトローラであるバックローラ16とサードローラ17との両方を、一つのモータで回転駆動させてもよい。
【0037】
複数のドラフトローラ16,17,19,20のトップローラは、モータ31〜34により回転駆動されるボトムローラにより従動回転するように設けられている。
【0038】
紡績ユニット2は、各モータ31〜34の回転を制御するモータ制御部30を備えている。モータ制御部30は、各モータ31〜34と電気的に接続されている。モータ制御部30では、各モータ31〜34に作用する負荷トルクを検出することができる。また、モータ制御部30では、各モータ31〜34の出力軸の回転速度を検出することができる。なお、モータ制御部30は、トルク及び回転速度の少なくとも一方を検出可能であればよい。モータ制御部30は、各モータ31〜34のトルク及び/又は回転速度に関するデータをユニットコントローラ60に出力する。
【0039】
紡績部9の詳細な構成は図示しないが、本実施形態では、旋回する空気流(旋回流)を利用して繊維束8に撚りを与え、紡績糸10を生成する空気式のものが採用されている。
【0040】
糸弛み取り装置12は、紡績糸10に所定の張力を与えて紡績部9から紡績糸10を引き出す。また、糸弛み取り装置12は、糸継台車3による糸継ぎ時などに紡績部9から送出される紡績糸10を滞留させて紡績糸10の弛みを防止する。さらに、糸弛み取り装置12は、巻取装置13側の紡績糸10の張力の変動が紡績部9に伝わらないように張力を調整する。
【0041】
糸弛み取り装置12は、弛み取りローラ(糸貯留ローラ)21、糸掛け部材22、上流側ガイド23、電動モータ25、下流ガイド26、及び糸貯留量センサ27を備えている。
【0042】
糸掛け部材22は、紡績糸10に係合可能な構成とされ、紡績糸10に係合した状態で弛み取りローラ21と一体回転することにより、当該弛み取りローラ21の外周面に紡績糸10を巻き付ける。
【0043】
弛み取りローラ21は、その外周面に紡績糸10を一定量巻き付けて貯留する。また、弛み取りローラ21は、電動モータ25によって回転駆動される。この構成では、弛み取りローラ21の外周に巻き付けられた紡績糸10は、弛み取りローラ21が回転することにより当該弛み取りローラ21を締め付けるようにして巻かれ、糸弛み取り装置12よりも上流側の紡績糸10を引っ張る。即ち、外周に紡績糸10を巻き付けた状態の弛み取りローラ21を所定の回転速度で回転させることで、紡績糸10に所定の張力を与えて紡績部9から所定の速度で引き出し、所定の速度で下流側に搬送する。
【0044】
弛み取りローラ21の外周に所定量の紡績糸10を巻き付けることで、弛み取りローラ21と紡績糸10との間で所定の接触面積を確保することができる。これにより、弛み取りローラ21が十分な力で紡績糸10を保持して引っ張ることが可能となり、スリップ等を発生させることなく紡績部9から安定した速度で紡績糸10を引き出すことができる。また、図2に示すように、紡績部9と糸弛み取り装置12との間には紡績糸10に張力を与えるための他の構成(従来のデリベリローラなど)がないので、紡績部9からの紡績糸10の引出し速度は、弛み取りローラ21の回転速度によって決定される。従って、本実施形態の精紡機1では、糸弛み取り装置12によって紡績糸10に対して張力を与え、バラツキが少なく正確な速度で当該紡績糸10を紡績部9から引き出すことができる。
【0045】
糸貯留量センサ27は、弛み取りローラ21上に貯留されている紡績糸10の貯留量を非接触式で検出し、ユニットコントローラ60に送信する。
【0046】
上流側ガイド23は弛み取りローラ21のやや上流側に配置される。上流側ガイド23は、弛み取りローラ21の外周面に対して紡績糸10を適切に案内する案内部材であるとともに、紡績部9から伝播してくる紡績糸10の撚りが当該上流側ガイド23よりも下流側に伝わることを防止する撚り止めの役割を兼ねている。
【0047】
精紡機1の筐体6の前面側であって紡績部9と糸弛み取り装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ52が設けられている。紡績部9で紡出された紡績糸10は、糸弛み取り装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ52を通過する。ヤーンクリアラ52は、走行する紡績糸10の太さを監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、糸欠点検出信号をユニットコントローラ60(制御部)へ送信する。ヤーンクリアラ52は、ドラフト装置7の下流側に配置され、ドラフト装置7によってドラフトされた繊維束の斑を検出する斑検出部として機能する。
【0048】
糸欠陥が検出されて糸継ぎを行う場合には、ユニットコントローラ60は、所定のタイミングでドラフト装置7や紡績部9等を停止させる。このとき、ユニットコントローラ60は、紡績部9の旋回気流を発生させるノズルからの圧空の噴出を停止することで紡績糸10を切断する。
【0049】
ユニットコントローラ60は糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させる。その後、紡績部9等を再び駆動し、糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取りを再開させる。このとき、糸弛み取り装置12は、紡績部9が紡績を再開してから巻取りが再開されるまでの間、紡績部9から連続的に送出される紡績糸10を弛み取りローラ21に滞留させて紡績糸10の弛みを取る。
【0050】
糸継台車3は、スプライサ(糸継装置)43、サクションパイプ44、及びサクションマウス46を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、レール41上を当該紡績ユニット2まで走行し、停止する。サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績部9から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。スプライサ43は、案内された糸端同士の糸継ぎを行う。
【0051】
巻取装置13は、支軸70まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備えている。クレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持する。
【0052】
巻取装置13は、巻取ドラム72(回転ドラム)、及びトラバース装置75を備えている。巻取ドラム72は、ボビン48やそれに紡績糸10を巻回して形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。巻取装置13は、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を電動モータ(不図示)によって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取る。なお、図1では、巻取装置13は、チーズ形状のパッケージ45を巻き取るように図示されている。しかし、巻取装置13は、コーン形状のパッケージを巻き取るように構成されていてもよい。
【0053】
精紡機1は、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム72を共通の電動モータで回転駆動する構成でもよいし、各紡績ユニット2に個別の電動モータを備え、各巻取ドラム72を単独で回転駆動する構成でもよい。
【0054】
ここで、ユニットコントローラ60は、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常を検出可能な構成とされている。図3は、本発明の第1実施形態に係る紡績ユニット2のユニットコントローラ60を示すブロック構成図である。ユニットコントローラ(制御部)60は、演算処理を行うCPU、記憶部として機能するROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。ユニットコントローラ60では、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、糸斑信号検出部61、糸斑周期斑判定部62、モータモニタ部63(監視部)、モータ周期斑判定部64が構築される。
【0055】
糸斑信号検出部61は、ヤーンクリアラ52と電気的に接続され、ヤーンクリアラ52から出力された糸斑に関する情報を取得する。糸斑周期斑判定部62は、糸斑信号検出部61から出力された情報を取得して、紡績糸10に周期的な糸斑(周期斑)が形成されているか否かを判定する。
【0056】
モータモニタ部63は、モータ制御部30と電気的に接続され、モータ制御部30から出力されたモータ31〜34のトルクに関する情報(モニタ値)、及び/又はモータ31〜34の回転速度に関する情報(モニタ値)を取得する。モータモニタ部63は、モータ31〜34のトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部として機能する。モータのトルクに関する情報とは、モータの出力軸に作用する負荷トルクに関する情報のほか、このトルクを算出可能な情報も含む。モータの回転速度に関する情報とは、モータの出力軸の回転速度に関する情報のほか、この回転速度を算出可能な情報も含む。
【0057】
モータ周期斑判定部64は、モータモニタ部63から出力されたモータ31〜34のトルクに関する情報(モニタ値)、及び/又はモータ31〜34の回転速度に関する情報(モニタ値)を取得して、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常の有無を判定する。モータ周期斑判定部64は、ドラフトローラ16,17,19,20の少なくとも何れかに周期的な異常を検出した場合に、紡績糸10に周期斑が有ると判定する。
【0058】
モータ周期斑判定部64は、複数のドラフトローラ16,17,19,20のうち何れのドラフトローラに周期的な異常があるのかを特定する。モータ周期斑判定部64は、モータ31のモニタ値に周期的な異常があると判定した場合には、バックローラ16に周期的な異常があると判定する。モータ周期斑判定部64は、モータ32のモニタ値に周期的な異常があると判定した場合には、サードローラ17に周期的な異常があると判定する。モータ周期斑判定部64は、モータ33のモニタ値に周期的な異常があると判定した場合には、セカンドローラ19(又はエプロンベルト18)に周期的な異常があると判定する。モータ周期斑判定部64は、モータ34のモニタ値に周期的な異常があると判定した場合には、フロントローラ20に周期的な異常があると判定する。
【0059】
モータ周期斑判定部64は、モータ31〜34のトルク及び回転速度の少なくとも一方に関する値(モニタ値)を周波数分析することにより、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常の有無を判定する。モータ周期斑判定部64は、周波数分析として例えば高速フーリエ変換(FFT)演算を行い、時間軸を周波数に変換する。なお、モニタ周期斑判定部64は、その他の手法を用いて、トルク及び/又は回転速度を分析して、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常を判定する構成でもよい。
【0060】
また、精紡機1は、図3に示すユニットコントローラ60に代えて、図4に示すユニットコントローラ60Bを備える構成でもよい。図4は、本発明の第2実施形態に係る紡績ユニット2のユニットコントローラ60Bを示すブロック構成図である。図4に示すユニットコントローラ60Bが、図3に示すユニットコントローラ60と違う点は、糸斑周期斑判定部62及びモータ周期斑判定部63に代えて、周期斑判定部65を備えている点である。
【0061】
周期斑判定部65は、糸斑信号検出部61から出力された検出結果に関する情報を取得すると共に、モータモニタ部63から出力されたモータ31〜34のトルクに関する情報(モニタ値)、及び/又はモータ31〜34の回転速度に関する情報(モニタ値)を取得する。周期斑判定部65は、モータモニタ部63による監視結果(モニタ値)と、糸斑信号検出部61による検出結果とに基づいて、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常を検出する。周期斑判定部65は、ドラフトローラ16,17,19,20の少なくとも何れかに周期的な異常を検出した場合に、紡績糸10に周期斑が有ると判定する。周期斑判定部65は、糸斑周期斑判定部62の機能とモータ周期斑判定部63の機能の両方を兼ね備えている。
【0062】
また、精紡機1は、モータ周期斑判定部64(又は周期斑判定部65)による判定結果を表示する表示部66(報知部)を備えている。表示部66は、例えば、精紡機1の原動機ボックス5の筐体に設けられている。表示部66として、例えば液晶表示装置を用いることができる。表示部66は、ユニットコントローラ60と電気的に接続され、ユニットコントローラ60からの信号に従って、周期的な異常の有無に関する情報を表示することができる。作業員は、表示部66の表示内容を見ることにより、周期的な異常の有無を容易に確認することができる。表示部66は、ドラフトローラ16,17,19,20の異常に関する表示内容以外にも、その他の情報の表示も可能である。
【0063】
なお、表示部66に代えて、音声出力部を備える構成としてもよい。これにより、精紡機1は、音声や、警告音などを用いて、異常の有無を報知することができる。また、表示部として、警報ランプなどを用いてもよい。
【0064】
次に、図5を参照して、周期斑検出処理について説明する。図5は、周期斑検出処理で実行される手順を示すフローチャートである。なお、ステップを「S」と略記することもある。この周期斑検出処理は、例えば、通常の精紡運転時に実行される。図5に示すように、ユニットコントローラ60は、ステップ11〜14、ステップ21〜24、ステップ31〜34、及びステップ41〜44を並行して処理する。これらの処理は、繰り返し実行される。また、ステップ11〜14、ステップ21〜24、ステップ31〜34、及びステップ41〜44の処理をこの順に実施してもよく、その他の順序で実施してもよい。
【0065】
ステップ11〜14の処理について説明する。まず、ユニットコントローラ60のモータモニタ部63は、フロントローラ20のボトムローラを回転駆動するモータ34を監視して、モータ34のモニタ値(トルク、回転速度など)を取得する(S11)。次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部54は、モータモニタ部63からモータ34のモニタ値を取得して、取得したモニタ値についてFFT演算を実行する(S12)。
【0066】
次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部64は、FFT演算による分析結果に基づいて、周期的な異常が存在するか否かを判定する(S13)。例えば、周期的にデータが変動している場合には、周期的な異常が存在すると判定する(S13:YES)。ユニットコントローラ60は、周期的な異常が存在すると判定した場合には、ステップ14に進み、周期的な異常が存在しないと判定した場合(S13:NO)には、ここでの処理を終了する。ステップ14では、モータ周期斑判定部64は、フロントローラ20が原因である周期斑が紡績糸10に発生していると判定する。
【0067】
ステップ21〜24の処理について説明する。ユニットコントローラ60のモータモニタ部63は、セカンドローラ19のボトムローラを回転駆動するモータ33を監視して、モータ33のモニタ値(トルク、回転速度など)を取得する(S21)。次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部54は、モータモニタ部63からモータ33のモニタ値を取得して、取得したモニタ値についてFFT演算を実行する(S22)。
【0068】
次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部64は、FFT演算による分析結果に基づいて、周期的な異常が存在するか否かを判定する(S23)。例えば、値が突出する部分が周期的に認められる場合には、周期的な異常が存在すると判定する(S23:YES)。ユニットコントローラ60は、周期的な異常が存在すると判定した場合には、ステップ24に進み、周期的な異常が存在しないと判定した場合(S23:NO)には、ここでの処理を終了する。ステップ24では、モータ周期斑判定部64は、セカンドローラ19(エプロンベルト18)が原因である周期斑が紡績糸10に発生していると判定する。
【0069】
ステップ31〜34の処理について説明する。ユニットコントローラ60のモータモニタ部63は、サードローラ17のボトムローラを回転駆動するモータ32を監視して、モータ32のモニタ値(トルク、回転速度など)を取得する(S31)。次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部54は、モータモニタ部63からモータ32のモニタ値を取得して、取得したモニタ値についてFFT演算を実行する(S32)。
【0070】
次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部64は、FFT演算による分析結果に基づいて、周期的な異常が存在するか否かを判定する(S33)。例えば、値が突出する部分が周期的に認められる場合には、周期的な異常が存在すると判定する(S33:YES)。ユニットコントローラ60は、周期的な異常が存在すると判定した場合(S33:NO)には、ここでの処理を終了する。ステップ34では、モータ周期斑判定部64は、サードローラ17が原因である周期斑が紡績糸10に発生していると判定する。
【0071】
ステップ41〜44の処理について説明する。ユニットコントローラ60のモータモニタ部63は、バックローラ16のボトムローラを回転駆動するモータ31を監視して、モータ31のモニタ値(トルク、回転速度など)を取得する(S41)。次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部54は、モータモニタ部63からモータ31のモニタ値を取得して、取得したモニタ値についてFFT演算を実行する(S42)。
【0072】
次に、ユニットコントローラ60のモータ周期斑判定部64は、FFT演算による分析結果に基づいて、周期的な異常が存在するか否かを判定する(S43)。例えば、値が突出する部分が周期的に認められる場合には、周期的な異常が存在すると判定する(S43:YES)。ユニットコントローラ60は、周期的な異常が存在すると判定した場合には、ステップ44に進み、周期的な異常が存在しないと判定した場合には、ここでの処理を終了する。ステップ44では、モータ周期斑判定部64は、バックローラ16が原因である周期斑が紡績糸10に発生していると判定する。
【0073】
ユニットコントローラ60は、ステップ14,24,34,44の後、これらの判定の結果を表示部66に表示する(S15)。表示部66は、ユニットコントローラ60から出力された信号に基づいて、判定の結果に関する情報を表示する。例えば、表示部66は、紡績糸10に発生している周期斑の原因がフロントローラ20であることを表示する。表示部66は、文字情報として、周期斑の原因であるドラフトローラ16,17,19,20を表示してもよい。例えば、表示部66は、ドラフトローラ16,17,19,20の配置図を表示して、原因であるドラフトローラのみを強調表示(例えば、赤く表示、点滅表示など)してもよい。また、表示部66は、各ドラフトローラ16,17,19,20のモニタ値のグラフ等を表示することにより、判定結果を表示してもよい。
【0074】
ドラフトローラ16,17,19,20に周期的な異常があると判断された場合において、ステップ15による結果表示に代えて、或いは結果表示に加えて、ユニットコントローラ60(制御部)が紡績ユニット2の運転を停止させてもよい。このように、ユニットコントローラ60が紡績ユニット2の運転を停止させる場合、ユニットコントローラ60は、ドラフトクレードルが正規の位置に閉じられていないこと、ドラフトローラ16,17,19,20の交換時期であることを表示部66に表示させてもよい。なお、ドラフトクレードルが正規の位置に閉じられていない状態であり、ドラフトローラ16,17,19,20が正規の位置からずれている場合に、ユニットコントローラ60は、ドラフトローラ16,17,19,20に周期的な異常が存在すると判定することができる。
【0075】
なお、ステップ13,23,33,43の後に、ユニットコントローラ60は、ヤーンクリアラ52からの糸欠点検出信号に基づいて、周期的な異常が発生しているか否かを判定してもよい。例えば、ユニットコントローラ60は、FFT演算による上記の判定結果と、ヤーンクリアラ52からの信号とを比較して、同じ周期長さで、周期斑が発生していると判断できる場合には、周期斑検出を精度良く行うことができる。
【0076】
このように本実施形態の精紡機1によれば、繊維束をドラフトするドラフトローラ16,17,19,20を駆動するモータ31〜34のトルク及び/又は回転速度を監視し、この監視結果に基づいて、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常の有無を判定することができる。これにより、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常を検出して、紡績糸10の周期斑を検出することができる。従来のクリアラのみでの周期斑の検出と比較して、精紡機1は、高精度で紡績糸10の周期斑を検出することができる。
【0077】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0078】
上記実施形態では、精紡機1(空気紡績機)において、デリベリローラとニップローラとを備えていない構成であるが、本発明の紡績機は、これに限定されず、デリベリローラとニップローラとを備えているものでもよい。デリベリローラとニップローラは、例えば、紡績部9の下流側に配置される。紡績部9から紡出された紡績糸10は、デリベリローラとニップローラとの間に挟まれて搬送されて、巻取装置13で巻き取られる。なお、デリベリローラを回転駆動するモータのトルク及び/又は回転速度を監視して、デリベリローラ及び/又はニップローラの周期的な異常を判定してもよい。
【0079】
紡績機は、空気紡績機に限定されず、ドラフト装置を備えたその他の紡績機でもよい。紡績機としては、リング精紡機や、練条機が挙げられる。
【0080】
モータモニタ部(監視部)は、モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視すればよい。例えば、モータがブラシレスモータである場合には、一般的にトルクを監視するための電流検出は実施しておらず、速度検出しかしていないため、この場合には、回転速度を監視する。
【0081】
上記実施形態では、周期斑の検出において、モータモニタ部63による監視の結果とヤーンクリアラ52による検出結果の両方を用いて、判定を行っているが、モータモニタ部63による監視の結果のみに基づいて、周期斑の検出を行ってもよい。
【0082】
上記実施形態では、糸欠陥が検出されて糸継ぎを行う場合に、紡績部9の旋回気流発生ノズルからの圧空の噴射を停止することで、紡績糸10の切断を行っているが、その他の方法により紡績糸10の切断を行ってもよい。例えば、紡績部9とヤーンクリアラ52との間に配置されたカッタを用いて、紡績糸10の切断することができる。
【0083】
上記の空気紡績機では、機台高さ方向において、糸道が上方から下方に向けて配置されているが、これに限定されず、下方から上方に向けて糸道が配置される構成でもよい。
【0084】
紡績部9は、内部の撚りがフロントローラ20へ伝播するのを防止するためのニードル(針状部材)が設けられている構成が好ましいが、ニードルを備えていない紡績部9でもよい。
【0085】
空気紡績機は、ドラフト装置のボトムローラや巻取装置のトラバース機構が、複数の紡績ユニット2で共通で駆動される構成(ラインシャフト)としてもよい。空気紡績機は、ドラフト装置、及び/又は巻取装置が、各巻取ユニットで独立して設けられている構成でもよい。
【0086】
上記実施形態の精紡機1は、モータ31〜34の制御を行うモータ制御部30と、紡績ユニット2の制御を司るユニットコントローラ60とを別々に備える構成としているが、ユニットコントローラ60において、モータの制御を実施してもよい。また、モータ制御部30が、本発明の判定部として、周期的な異常を判定してもよい。
【0087】
上記実施形態の精紡機1は、各紡績ユニット2を個別に制御するユニットコントローラ60を備える構成としているが、所定数の紡績ユニット2を制御するユニットコントローラ60が、所定数の紡績ユニット2毎に設けられている構成でもよい。
【0088】
上記実施形態では、ユニットコントローラ60は、パッケージ45の巻取り中にモータ31〜34のトルク及び回転速度の少なくとも一方を常時監視しているが、特定の時間だけ監視し、この監視の結果に基づいて、ドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常を判定するように構成されていてもよい。また、精紡機1は、試紡モードを備え、当該試紡モードの実行中にモータ31〜34のトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視し、この監視の結果に基づいてドラフトローラ16,17,19,20の周期的な異常を判定するように構成されていてもよい。但し、精紡機1の稼動効率を維持するためには、パッケージ45の巻取り中に監視を行うことが望ましい。
【0089】
上記実施形態では、ユニットコントローラ60は、ドラフトローラ16,17,19,20を駆動するモータ31〜34の全てトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視して、全てのモータ31〜34について関連する周期斑の有無を判定している。しかし、当該実施形態に限らず、ユニットコントローラ60は、例えば、モータ31〜34のうち特定のモータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視して、特定のモータの周期的な異常が原因である周期斑の有無を判定してもよい。
【0090】
上記実施形態の精紡機1は、複数のユニットコントローラ60を備え、ユニットコントローラ60において各紡績ユニット2の制御を実施しているが、複数の紡績ユニット2の制御を中央制御部に集約して実施してもよい。
【0091】
本発明は、上記の精紡機1と同様、巻取装置に適用可能である。本発明の巻取装置としては、例えば、紡績機の巻取装置や、自動ワインダーの巻取装置が挙げられる。
【0092】
次に、本発明の第3実施形態に係る自動ワインダーについて、図面を参照して説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る自動ワインダーのワインダーユニットを示す概略構成図である。本実施形態の自動ワインダーは、複数のワインダーユニット110と、自動ワインダーの制御を司る不図示の中央制御部とを備えている。なお、上記実施形態と同様の説明は省略する。
【0093】
ワインダーユニット110は、給糸ボビン121から解舒される紡績糸120をトラバースさせながら巻取ボビン122に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ130を形成する。
【0094】
ワインダーユニット110は、巻取ユニット本体116と、ユニットコントローラ160とを備えている。巻取ユニット本体116は、糸走行方向に沿って以下の順に配置された、給糸部112と、テンション付与装置113と、スプライサ装置114(糸継装置)と、ヤーンクリアラ115と、巻取装置117と、を備えている。
【0095】
給糸部111は、パッケージ130に巻き取られる紡績糸120を供給する。給糸部111は、解舒補助装置112を備えている。解舒補助装置112は、芯管に被さる規制部材140を給糸ボビン121からの紡績糸120の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン121からの紡績糸120の解舒を補助する。規制部材140は、給糸ボビン121から解舒された紡績糸120の回転と遠心力によって給糸ボビン121上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって紡績糸120の解舒を補助する。規制部材140の近傍には給糸ボビン121のチェース部を検出するための不図示のセンサが設けられている。このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して規制部材40が例えばエアシリンダ(不図示)によって駆動されて下降する。
【0096】
テンション付与装置113は、パッケージ130に巻き取られる紡績糸120に所定のテンションを付与する。テンション付与装置113としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、例えばロータリ式のソレノイドにより回動する。このテンション付与装置113によって、巻き取られる紡績糸120に一定のテンションを付与し、パッケージ130の品質を高めることができる。なお、テンション付与装置113には、上記ゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0097】
ヤーンクリアラ115は、パッケージ130に巻き取られる紡績糸120の品質を監視する。ヤーンクリアラ115が糸欠点を検出した場合、紡績糸120が切断され、糸欠点が除去される。ヤーンクリアラ115は、紡績糸120の太さを検出するためのセンサ(不図示)を有するクリアラヘッド149を備えている。ヤーンクリアラ115は、センサからの糸太さ信号を監視することにより糸欠陥を検出する。また、クリアラヘッド149の近傍には、ヤーンクリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに紡績糸120を切断するためのカッタ(不図示)が設けられている。
【0098】
スプライサ装置114は、ヤーンクリアラ115が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン121からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン121側の紡績糸120(下糸)と、パッケージ130側の紡績糸120(上糸)とを糸継ぎする。
【0099】
スプライサ装置114の下方(給糸ボビン121側)には、給糸ボビン121側の下糸を捕捉してスプライサ装置114に案内する下糸案内パイプ125が設けられている。スプライサ装置114の上方(パッケージ130側)には、パッケージ130側の上糸を捕捉してスプライサ装置114に案内する上糸案内パイプ126が設けられている。
【0100】
下糸案内パイプ125及び上糸案内パイプ126は、それぞれ軸133,135を中心にして回動可能に構成されている。下糸案内パイプ125の先端には吸引口132が形成され、上糸案内パイプ126の先端にはサクションマウス134が設けられている。下糸案内パイプ125及び上糸案内パイプ126には適宜の負圧源がそれぞれ接続されている。この負圧源によって吸引流を発生させ、吸引口132は上糸を吸引捕捉し、サクションマウス134は下糸を吸引捕捉する。
【0101】
巻取装置117は、パッケージ130を回転可能に保持するクレードル123と、パッケージ130に接触してパッケージ130を回転させる巻取ドラム124(回転ドラム、回転体)と、巻取ドラム124を回転駆動するモータ153と、このモータ153の回転を制御するモータ制御部154とを備えている。巻取ドラム124には、紡績糸120をパッケージ130に対してトラバースするトラバース溝127(綾振溝)が形成されている。これにより、ワインダーユニット110は、紡績糸120をトラバースしつつパッケージ130へと巻き返すことができる。
【0102】
モータ制御部154は、モータ153と電気的に接続されている。モータ制御部154は、モータ153に作用する負荷トルクを検出する。また、モータ制御部154は、モータ153の出力軸の回転速度を検出する。なお、モータ制御部154は、トルク及び回転速度の少なくとも一方を検出可能であればよい。モータ制御部154は、モータ154のトルク及び/又は回転速度に関するデータをユニットコントローラ160に出力する。
【0103】
ここで、ユニットコントローラ160は、巻取ドラム124の周期的な異常を検出可能な構成とされている。ユニットコントローラ(制御部)160は、演算処理を行うCPU、記憶部として機能するROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。ユニットコントローラ160では、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、モータモニタ部163(監視部)、判定部164が構築される。
【0104】
モータモニタ部163は、モータ制御部154と電気的に接続され、モータ制御部154から出力されたモータ153のトルクに関する情報(モニタ値)、及び/又はモータ153の回転速度に関する情報(モニタ値)を取得する。モータモニタ部163は、モータ153のトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部として機能する。
【0105】
判定部164は、モータ153のトルク及び回転速度の少なくとも一方に関する値(モニタ値)を周波数分析することにより、巻取ドラム124の周期的な異常の有無を判定する。判定部164は、周波数分析として例えば高速フーリエ変換(FFT)演算を行い、時間軸を周波数に変換する。なお、判定部164は、その他の手法を用いて、トルク及び/又は回転速度を分析して、巻取ドラム124の周期的な異常を判定する構成でもよい。
【0106】
また、自動ワインダーは、判定部164による判定結果を表示する表示部66(報知部)を備えている。表示部66は、ユニットコントローラ160と電気的に接続され、ユニットコントローラ160からの信号に従って、周期的な異常の有無に関する情報を表示することができる。作業員は、表示部66の表示内容を見ることにより、周期的な異常の有無を容易に確認することができる。表示部66は、巻取ドラム124の異常に関する表示内容以外にも、その他の情報の表示も可能である。
【0107】
この自動ワインダーの巻取装置117によれば、モータ153のトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視することで、モータ153の周期的な異常を判定し、巻取ドラム124の周期的な異常を検出することができる。これにより、例えば、パッケージ130の偏心などの異常を早期に検出することができる。
【0108】
なお、巻取装置117は、トラバース溝127が形成された巻取ドラム124を備える構成に代えて、上記の精紡機1の巻取装置13ように、巻取ドラム124とは独立したトラバース機構を備える構成でもよい。この構成の巻取装置の監視部は、トラバース溝の形成されていない巻取ドラムを回転駆動するモータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する。
【0109】
自動ワインダーがトラバース溝の形成されていない巻取ドラムを備えている場合、巻取ドラムではなく、パッケージ130を直接回転駆動するようにしても良い。この場合、監視部は、パッケージ130を直接回転駆動するモータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する。
【0110】
上記実施形態では、本発明の紡績機、又は巻取装置への適用について説明しているが、本発明はこれに限定されず、その他の繊維機械でもよい。要は、回転体を駆動するモータを備えた繊維機械において、モータに作用する負荷トルク及びモータの回転速度の少なくとも一方を監視することで、回転体の周期的な異常を判定可能な構成であればよい。
【0111】
このような繊維機械は、繊維束を搬送するための回転体と、当該回転体を回転駆動するモータと、当該モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部と、当該監視部による監視の結果に基づいて、回転体の周期的な異常を判定する判定部とを備える構成とする。繊維機械の判定部は、監視部による監視の結果であるトルク及び回転速度の少なくとも一方に関する値を周波数分析することにより、回転体の周期的な異常を判定してもよい。繊維機械は、監視部による監視の結果に関する情報を報知する報知部を更に備えている構成としてもよい。このような繊維機械によれば、モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視することで、回転体の周期的な異常の有無を判定し、回転体によって処理される繊維束の周期的な異常を検出することができる。
【符号の説明】
【0112】
1…精紡機(紡績装置、繊維機械)、2…紡績ユニット(紡績機)、7…ドラフト装置、8…繊維束、9…紡績部、10…紡績糸、16…バックローラ(ドラフトローラ)、17…サードローラ(ドラフトローラ)、18…エプロンベルト、19…セカンドローラ(ドラフトローラ)、20…フロントローラ、30,154…モータ制御部、31〜34…モータ、52…ヤーンクリアラ、60,60B,160…ユニットコントローラ、63,163…モータモニタ部(監視部)、64…モータ周期斑判定部(判定部)、65…周期斑判定部(判定部)、66…表示部(報知部)、110…自動ワインダー(繊維機械)、117…自動ワインダーの巻取装置、124…巻取ドラム(回転ドラム)、130…パッケージ、164…判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束をドラフトするドラフトローラと、
前記ドラフトローラを回転駆動するモータと、
前記モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部と、
前記監視部による監視の結果に基づいて、前記繊維束に周期斑として発生する前記ドラフトローラの周期的な異常を判定する周期斑判定部とを備えていることを特徴とする紡績機。
【請求項2】
前記周期斑判定部は、前記監視部による監視の結果である前記トルク及び前記回転速度の少なくとも一方に関する値を周波数分析することにより、前記ドラフトローラの周期的な異常を判定することを特徴とする請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記繊維束の搬送方向に沿って配置された複数の前記ドラフトローラと、
前記複数のドラフトローラを個別に駆動する複数の前記モータとを備え、
前記周期斑判定部は、前記監視部による監視の結果に基づいて、前記複数の前記モータの何れに周期的な異常があるかを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の紡績機。
【請求項4】
前記ドラフトローラの下流側に配置され、前記ドラフトローラによってドラフトされた前記繊維束の斑を検出する斑検出部を更に備え、
前記周期斑判定部は、前記監視部による監視の結果、及び前記斑検出部による検出の結果に基づいて、前記ドラフトローラの周期的な異常を判定し、当該判定の結果に基づいて、前記繊維束の周期斑を検出することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項5】
前記監視部による監視の結果に関する情報を報知する報知部を更に備えていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項6】
前記ドラフトローラでドラフトされた前記繊維束を旋回流により紡績する空気紡績装置と、
前記空気紡績装置から紡出された前記繊維束をパッケージへと巻き取る巻取装置と、を備え、
前記周期斑判定部は、前記巻取装置による前記パッケージへの巻取り中に、前記ドラフトローラの周期的な異常を判定する請求項1〜5の何れか一項に記載の紡績機。
【請求項7】
巻取パッケージに接触して回転し、巻取パッケージに糸を巻き取らせるための回転ドラムと、
前記回転ドラムを回転駆動するモータと、
前記モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部と、
前記監視部による監視の結果に基づいて、前記回転ドラムの周期的な異常を判定する判定部とを備えていることを特徴とする巻取装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記監視部による監視の結果である前記トルク及び前記回転速度の少なくとも一方に関する値を周波数分析することにより、前記回転ドラムの周期的な異常を判定することを特徴とする請求項7に記載の巻取装置。
【請求項9】
前記監視部による監視の結果に関する情報を報知する報知部を更に備えていることを特徴とする請求項7又は8に記載の巻取装置。
【請求項10】
繊維束を搬送するための回転体と、
前記回転体を回転駆動するモータと、
前記モータのトルク及び回転速度の少なくとも一方を監視する監視部と、
前記監視部による監視の結果に基づいて、前記回転体の周期的な異常を判定する判定部とを備えていることを特徴とする繊維機械。
【請求項11】
前記判定部は、前記監視部による監視の結果である前記トルク及び前記回転速度の少なくとも一方に関する値を周波数分析することにより、前記回転体の周期的な異常を判定することを特徴とする請求項10に記載の繊維機械。
【請求項12】
前記監視部による監視の結果に関する情報を報知する報知部を更に備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67916(P2013−67916A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207717(P2011−207717)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】