説明

紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体

【課題】可視光透過率よりも低い近赤外光透過率を有し、紫外線の吸収能を有し、可視光透過率を制御して意匠性・実用性のある彩度の低いブロンズ色を発色する紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体を提供する。
【解決手段】一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示される複合タングステン酸化物微粒子と、酸化鉄微粒子とが、媒体中に混合分散し、前記複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子との混合分散が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体に関し、可視光領域の光は透過し、近赤外線領域に吸収を持つ近赤外線遮蔽材料と、紫外線領域に吸収を持つ紫外線遮蔽材料とを用い、色調調整が可能であるブロンズ色系の紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱線としての近赤外線を遮蔽し、保温及び断熱の性能を付与するために、ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透明基材に近赤外線吸収能を付与することが求められている。
従来、透明基材に近赤外線吸収能を付与する方法として、透明基材自体に近赤外線吸収剤を混入配合する方法がある。
また、他の方法として、スパッタリング等の物理気相成膜法で近赤外線吸収性薄膜を透明基材表面に直接形成する方法がある。
さらに、近赤外線吸収剤を溶解した樹脂を透明基材にコーティングしたり、積層したりする方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、黒色系の自動車窓ガラス用遮光フィルムとして、マトリックスとしてのシリカ中にCuO−Fe−Mn系からなる黒色系顔料が分散された着色膜を、ガラス表面に被覆した濃色着色遮光ガラスを提案している。上記シリカは、アルコキシシランの加水分解物もしくは部分加水分解物並びにコロイダルシリカより構成され、そのアルコキシシランの加水分解物もしくは部分加水分解物の固形分に対するコロイダルシリカの重量比が60:40〜40:60である。また、上記黒色系顔料は、シリカ固形分との合計重量の5〜10重量%を含有することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2は、ガラス基板上に少なくともCuO−Fe−Mn系からなる無機顔料と、シリカゾルでなした薄膜層とを備えた遮光膜付きガラスが提案している。上記薄膜層は、膜厚が50nm以上1500nm以下であり、しかも可視光反射率が2%以上10%以下、かつヘーズ値が5.0%以下であり、グレー色系もしくは黒色系の色調を呈することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−351651号公報
【特許文献2】特開平9−030836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、建築物や輸送機器等の窓等での断熱用途を考慮した場合、地表に到達する太陽光線は200nmから2600nm程度の波長分布を持っており、このうち、380nmから780nmの可視光線を除く波長領域の光を効率よく遮蔽することで、太陽光線の熱エネルギーを制御し、窓等に断熱効果をもたらすことが可能となる。
【0007】
そこで本発明者らは、窓等の断熱用途を想定した材料に要求される特性は、380nmから780nmの可視光線を透過することで人の目には透明であり、その一方で、780nm以上の目に見えない近赤外線を効率よく遮蔽し、太陽光線等の熱をカットする機能を持つことであることに想到した。
【0008】
一方、上述した従来の技術について本発明者らが検討した結果、以下の問題点が見出さ
れた。
まず、透明基材自体に近赤外線吸収剤を混入配合する方法は、近赤外線吸収剤の混入時に高い加工温度を必要とするため、使用し得る近赤外線吸収剤の種類が著しく限定される問題がある。
スパッタリング等の、物理気相成膜法により近赤外線吸収性薄膜を透明基材表面に直接形成する方法は、薄膜製造のために高額の大型設備の導入が必要となる。そして当該大掛かりな薄膜製造装置が必要な為、多品種生産には適合せず、また薄膜の種類によっては耐湿性、耐薬品性、耐久性等が充分ではないという問題がある。
近赤外線吸収剤を溶解した樹脂を透明基材にコーティングしたり、積層したりする方法は、大量の近赤外線吸収剤の添加に伴う樹脂層の可塑化が起こり、耐擦傷性が不十分になるという問題がある。
【0009】
一方、近赤外線吸収能を有する基材は、上記近赤外線吸収特性と同時に、実用的には色調も重要である。当該色調の中で彩度の低いのは黒色系やブロンズ系である。そして、意匠性や実用性の面から、彩度の低い黒色系やブロンズ系の色調が好まれることが多い。従って、窓等に使用される近赤外線遮蔽材料には、可視光領域に吸収がある黒色系の顔料が使用されることが多い。
【0010】
しかし、近赤外線の吸収を保持したまま、可視光透過率を制御して色調調整しようとすると、数種類の色素を混合する必要がある。しかしながら、本発明者らの検討によると、近赤外域に特性吸収を有する色素の中には、他の色素と混在すると特性が変化するものがあるという問題が見出された。
【0011】
そして、特許文献1で説明した近赤外線遮蔽材料は、可視光領域に大きな吸収があるため暗くなることに加え、近赤外線領域の吸収が少ないため、有効な近赤外線遮蔽材とはいえないことが見出された。
さらに、特許文献2で説明した遮光膜付きガラスは、可視光反射率は比較的低いものの、遮光性能が劣化する等経時変化するという問題があることが見出された。
一方、優れた近赤外線遮蔽特性を有したまま色調調整が可能であり、意匠性に優れたブロンズ系の色調を呈す材料は未だ見出されていない。
【0012】
本発明は、上述の状況の下で成されたものであり、近赤外線の吸収能を保持したまま、可視光透過率を制御して、意匠性に優れた彩度の低いブロンズ色調を発色し、耐久性に優れ、透明基材に設置する際にも大掛かりな装置を必要としない、紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、耐熱性に優れた各種無機酸化物材料、近赤外線遮蔽特性を有する材料を検討した結果、可視光領域の光に対して透過性があり、近赤外線領域に吸収があり青色または緑色の透光性を有する複合タングステン酸化物微粒子と、紫外線領域に吸収がある酸化鉄微粒子とを一定の割合で併用する(尚、本明細書において、「併用」とは「混合」の
意味を含むものとする。)ことで、上記目的を達成できることに想到した。即ち、複合タ
ングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを一定の割合で併用することで、所定の可視光透過性を有しながら、近赤外線遮蔽特性と同時に紫外線遮蔽特性とを有し、意匠性に優れ彩度の低いブロンズ色調を有する紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体を得るに至り本発明を完成した。
【0014】
上述の課題を解決するための第1の手段は、
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択され
る1種類以上の元素)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、酸化鉄微粒子とが、媒体中に混合分散し、前記複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子との混合分散が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180であることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0015】
第2の手段は、
可視光透過率が20〜90%であり、近赤外光透過率が10〜80%であり、ブロンズ色を有することを特徴とする第1の手段に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0016】
第3の手段は、
上記複合タングステン酸化物微粒子の粉体色が、L表色系において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15であり、上記酸化鉄微粒子の粉体色が、L表色系において、Lが20〜80、aが−5〜15、bが−10〜25であることを特徴とする第1または第2の手段に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0017】
第4の手段は、
上記複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子との粒子径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする第1乃至第3の手段のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0018】
第5の手段は、
上記複合タングステン酸化物微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムを1種類以上含む酸化物で被覆されていることを特徴とする第1乃至第4の手段のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0019】
第6の手段は、
上記媒体が、樹脂もしくはガラスであることを特徴とする第1乃至第5の手段のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0020】
第7の手段は、
上記媒体が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のうちの1種類以上であることを特徴とする第6の手段に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0021】
第8の手段は、
上記媒体が、板状、フィルム状、薄膜状であることを特徴とする第6または第7の手段に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体である。
【0022】
第9の手段は、
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示される複合タングステン酸化物微粒子と、酸化鉄微粒子とが、媒体中に混合分散し、前記複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子との混合分散が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが4
5〜95、aが−20〜90、bが0〜180である紫外・近赤外光遮蔽分散体が、基材の片面または両面に設けられていることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽体である。
【0023】
第10の手段は、
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示される複合タングステン酸化物微粒子が媒体中に分散した分散体と、酸化鉄微粒子が媒体中に分散した分散体とが、
酸化鉄微粒子が媒体内に分散された酸化鉄微粒子分散体の片面または両面に、複合タングステン酸化物微粒子を有する分散体を配するか、あるいは、複合タングステン酸化物微粒子が媒体内に分散された複合タングステン酸化物微粒子分散体の片面または両面に、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体を配されており、
前記複合タングステン酸化物微粒子が分散した分散体中の複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子が分散した分散体中の酸化鉄微粒子との比率が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、
酸化鉄微粒子が媒体内に分散された酸化鉄微粒子分散体の片面または両面に、複合タングステン酸化物微粒子を有する分散体を配するか、あるいは、複合タングステン酸化物微粒子が媒体内に分散された複合タングステン酸化物微粒子分散体の片面または両面に、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体を配する紫外・近赤外光遮蔽体において、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180であることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽体である。
【0024】
第11の手段は、
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示される複合タングステン酸化物微粒子が媒体中に分散した分散体と、酸化鉄微粒子が媒体中に分散した分散体とが、
基体の片面に設けられ、または、基体の両面にそれぞれ設けられており、
前記複合タングステン酸化物微粒子が分散した分散体中の複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子が分散した分散体中の酸化鉄微粒子との比率が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、
前記複合タングステン酸化物微粒子が媒体中に分散した分散体と、酸化鉄微粒子が媒体中に分散した分散体とが、基体の片面に設けられ、または、基体の両面にそれぞれ設けられた紫外・近赤外光遮蔽体において、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180であることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽体である。
【0025】
第12の手段は、
可視光透過率が20〜90%であり、近赤外光透過率が10〜80%であり、ブロンズ色を有することを特徴とする第9乃至第11の手段に記載の紫外・近赤外光遮蔽体である。
【0026】
第13の手段は、
上記媒体が、板状、フィルム状、薄膜状であることを特徴とする第9乃至第12の手段のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽体である。
【0027】
第14の手段は、
上記基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする第9乃至第13の手段のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽体である。
【0028】
第15の手段は、
上記基材が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のうちの1種類以上であることを特徴とする第14の手段に記載の紫外・近赤外光遮蔽体である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体は、近赤外線の吸収能を保持したまま、可視光透過率を制御して、意匠性に優れた彩度の低いブロンズ色調を発色し、同時に紫外線遮蔽特性を発現し、耐久性に優れ、透明基材に設置する際にも大掛かりな装置を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、この実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である。
【0031】
<1.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体>
本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体は、一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、酸化鉄微粒子とが、所定の媒体中に混合分散している。
前記複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子との混合分散は、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にある。これは、前記複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子との混合分散が当該範囲にあることで、可視光透過率よりも低い近赤外光透過率を有し、紫外線の吸収能を有し、意匠性に優れた彩度の低い色調であるブロンズ色を有する紫外・近赤外光遮蔽分散体を得ることが出来るからである。
【0032】
本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体においては、可視光透過率よりも近赤外光透過率が低く、可視光透過率が20〜90%の範囲であり、近赤外光透過率が10〜80%の範囲である。そして、国際証明委員会(CIE)が推奨しているL表色系(JISZ8729)によって、当該分散体を評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180となる。
【0033】
さらに、本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体は、上記複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子の粒子径が、1nm以上800nm以下である。当該複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子との粒子径が800nm以下であれば、光を遮蔽することが少なく、可視光領域の透明性を保持したまま効率よく近赤外線を遮蔽することが可能となる。特に可視光領域の透明性を重視する場合には、粒子径は200nm以下がよく、好ましくは100nm以下がよい。微粒子の粒子径が小さいと、幾何学散乱もしくは回折散乱によって400〜780nmの可視光領域の光を散乱して曇りガラスのようにはならず、鮮明な透明性が得られる。
【0034】
<2.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽体>
また、本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽体は、上記紫外・近赤外光遮蔽分散体が、後述する適宜な基材の片面あるいは両面に形成されたものである。
【0035】
本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽体においても、可視光透過率よりも近赤外光透過
率が低く、可視光透過率が20〜90%の範囲であり、近赤外光透過率が10〜80%の範囲である。そして、L表色系によって、当該遮蔽体を評価したとき、L表色系で、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180である。
【0036】
<3.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体を構成する材料>
以下、本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体を構成する材料について材料毎に説明する。
【0037】
(1)複合タングステン酸化物微粒子
近赤外線遮蔽機能を有する微粒子として、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.0<z/y<3.0)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、または、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)のうちの少なくとも1種類で表記される複合タングステン酸化物の微粒子が挙げられる。
【0038】
本実施形態に用いられる近赤外線遮蔽機能を有する微粒子は、上記複合タングステン酸化物の微粒子の中でも、一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子である。上記複合タングステン酸化物の微粒子は、各種分散体に適用された場合、近赤外線吸収成分として有効に機能する。
【0039】
上記一般式MWO(0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子としては、例えば、M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上を含むような複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる。
【0040】
また、当該複合タングステン酸化物微粒子は、L表色系にて評価した粉体色において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15を有している。
【0041】
添加元素Mの添加量Yは、0.001≦Y≦1.0であれば良いが、0.1≦Y≦0.5が好ましく、更に好ましくは0.33である。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。酸素の添加量Zは、2.2≦Z≦3.0が好ましい。
この結果、好ましい複合タングステン酸化物の典型的な例としては、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができるが、上記Y及びZが上記範囲に収まるものであれば、良好な赤外線吸収特性を得ることができる。
【0042】
当該複合タングステン酸化物微粒子は、波長400nm〜500nm付近に透過率のピークを持ち、近赤外線領域、特に900〜2200nm付近の光を大きく吸収する。この材料は、可視光領域である380nm〜780nmの光の一部を選択的に透過するために着色が生じ、その透過色調は青色または緑色となるものが多い。
【0043】
該複合タングステン酸化物微粒子の透過率のピーク位置は、分散粒子径の減少に伴い短波長側へシフトする。これは、主に光散乱による現象であるが、透過色調は、分散粒子径
の減少に伴い緑色から青色へと変化する。
【0044】
また、本実施形態の赤外線遮蔽材料を構成する複合タングステン酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する酸化物で被覆されていると、当該複合タングステン酸化物微粒子における耐候性向上の観点から好ましい。これらの被覆酸化物は基本的に透明であり、添加されたことで可視光透過率を低下させることはない。
被覆方法は特に限定されないが、当該複合タングステン酸化物微粒子を分散した溶液中に、上記金属のアルコキシドを添加することで、複合タングステン酸化物微粒子の表面を被覆することが可能である。
【0045】
(2)酸化鉄微粒子
本実施形態に用いられる酸化鉄微粒子は、粒子径が小さい方が、隠蔽力が強くなり、また分散性も向上し、光透過性が高くなるため好ましい。このため、酸化鉄の粒子径は300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0046】
また、本実施形態に用いられる酸化鉄微粒子は、L表色系にて評価した粉体色において、Lが20〜80、aが−5〜15、bが−10〜25を有していることが好ましい。また、光透過性を一層高くするためには、微粒子の形状は球形であるよりも針状である方が好ましい。
【0047】
(3)媒体及び基材
本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体を構成する媒体、および、紫外・近赤外光遮蔽体を構成する基材としては、例えば、フィルム、樹脂、またはガラス等が挙げられる。但し、これらの材料を基材として用いる場合は、それぞれの使用状況に応じた機械的強度を有することが求められる。
【0048】
上記媒体や基材に用いる樹脂としては、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂などを目的に応じて選択することができる。
【0049】
樹脂であれば、一般的に、可視光に透過性があり散乱の少ない、無色透明の樹脂が適しており、用途に適した樹脂を選択すればよい。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられるが、中でもポリエチレンテレフタレート樹脂が好適である。
【0050】
また、これら樹脂のボードまたはフィルムを用いる場合、その表面は、樹脂バインダーとの結着性向上を目的とした表面処理が施されていることも好ましい構成である。その代表的な処理方法は、コロナ表面処理、プラズマ処理、スパッタリング処理等の放電処理、火炎処理、金属ナトリウム処理、プライマー層コート処理等が挙げられる。
【0051】
さらに、これら樹脂のボードまたはフィルムの意匠性を重視する場合には、あらかじめ、着色されたものや型どりされたものを使用することもできる。
【0052】
また、分散体の媒体として金属アルコキシドを用いることも可能である。当該金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zrなどのアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを媒体として用いた分散体は加水分解して、加熱することで酸化膜を形成することが可能である。
【0053】
<4.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体の形態>
本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体の好ましい形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜4は、本実施形態の紫外・近赤外光遮蔽分散体、紫外・近赤外光遮蔽体の模式的な断面図である。尚、図1〜4において、○は複合タングステン酸化物微粒子を示し、●は酸化鉄微粒子を示し、無地の部分は媒体を示し、斜線の部分は基材を示す。
【0054】
(1)媒体に複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを分散させた紫外・近赤外光遮蔽分散体
ブロンズ色系紫外・近赤外光遮蔽分散体の第一の形態は、複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とが、共に媒体内に分散して含有されているものである。
当該形態例を図1(A)に示す。尚、当該形態において、媒体に機械的強度のあるものを用い、基材を用いることなく自立した紫外・近赤外光遮蔽体として使用することも勿論可能である。
【0055】
(2)複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを共に含有する分散体とを、適宜な基材の片面または両面に配する紫外・近赤外光遮蔽体
ブロンズ色系紫外・近赤外光遮蔽体の第一の形態に係る他の形態は、複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを共に含有する分散体を、後述する適宜な基材の片面あるいは両面に配するものである。
当該複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを共に含有する分散体基材の片面に配する形態例を図2(A)に、両面に配する形態例を図2(B)に示す。尚、当該形態においても、媒体に機械的強度のあるものを用いることで基材の機械的強度には依存せず、基材には例えば緩衝材としての機能など他の機能を具備させ、自立した紫外・近赤外光遮蔽体として使用することも勿論可能である。
【0056】
(3)酸化鉄微粒子が媒体内に分散された酸化鉄微粒子分散体の片面または両面に、複合タングステン酸化物微粒子を有する分散体を配する紫外・近赤外光遮蔽分散体、並びに、複合タングステン酸化物微粒子が媒体内に分散された複合タングステン酸化物微粒子分散体の片面または両面に、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体を配する紫外・近赤外光遮蔽分散体
ブロンズ色系紫外・近赤外光遮蔽分散体の第二の形態は、酸化鉄微粒子が媒体内に分散された酸化鉄微粒子分散体の片面もしくは両面に、複合タングステン酸化物微粒子を含有する複合タングステン酸化物微粒子分散体を配するものである。または、複合タングステン酸化物微粒子が媒体内に分散された複合タングステン酸化物微粒子分散体の片面もしくは両面に、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体を配するものである。
酸化鉄微粒子分散体の片面に、複合タングステン酸化物微粒子分散体を配する形態例を図3(A)に、酸化鉄微粒子分散体の両面に、複合タングステン酸化物微粒子分散体を配する形態例を図3(B)に示し、複合タングステン酸化物微粒子分散体の両面に、酸化鉄微粒子分散体を配する形態例を図3(C)に示す。
【0057】
(4)複合タングステン酸化物微粒子を含有する複合タングステン酸化物微粒子分散体と、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体とを、適宜な基材の片面または両面に配する紫外・近赤外光遮蔽体
ブロンズ色系紫外・近赤外光遮蔽体の第三の形態は、複合タングステン酸化物微粒子を含有する複合タングステン酸化物微粒子分散体と、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体とを、後述する適宜な基材の片面に配する。または、複合タングステン酸化物微粒子分散体を当該基材の片面に配し、且つ、この基材の他方の片面に酸化鉄微粒子分散体を配するものである。
複合タングステン酸化物微粒子分散体と酸化鉄微粒子分散体とを、基材の片面に配する
形態例を図4(A)(B)に、両面にそれぞれ分散体を配する形態例を図4(C)に示す。尚、当該形態においても、媒体に機械的強度のあるものを用いることで基材の機械的強度に依存せず、基材には例えば緩衝材としての機能など他の機能を具備させ、自立した紫外・近赤外光遮蔽体として使用することも勿論可能である。
【0058】
<5.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体の形成方法>
上記4.で説明した本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体の形成方法について説明する。
(1)媒体の内部に、複合タングステン酸化物微粒子や酸化鉄微粒子が分散した紫外・近赤外光遮蔽分散体の形成方法
図1〜4に示すように、複合タングステン酸化物微粒子や酸化鉄微粒子を媒体の内部に分散させる場合には、媒体を溶融温度以上に加熱して溶融させた後、当該微粒子の単独物または混合物と混合すればよい。また、予め、原料樹脂中へ、複合タングステン酸化物微粒子、酸化鉄微粒子該微粒子とを高濃度に分散せしめたマスターバッチを製造し、これを溶融温度以上に加熱して溶融した媒体と混合することで、所定の濃度に希釈調整して用いることも可能である。また、当該微粒子の単独物または混合物を、媒体の表面から分散浸透させることも可能である。このようにして得られた複合タングステン酸化物微粒子および/または酸化鉄微粒子を含有する媒体は、所定の方法で、板状、フィルム状、薄膜状に成形することができる。
【0059】
上記マスターバッチの製造方法は、特に限定されないが、例えば、複合タングステン酸化物微粒子の分散液と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、分散媒を除去しながら均一に溶融混合することで、熱可塑性樹脂に微粒子が均一に分散した混合物として調整することができる。
その際の混合には、リボブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機、あるいは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機などの混練機を使用することができる。
【0060】
また、当該複合タングステン酸化物微粒子と、酸化鉄微粒子とを含む微粒子分散液を製造し、当該微粒子分散液の分散媒を公知の方法で除去して微粒子混合物を得る。得られた当該微粒子混合物と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを均一に溶融混合し熱可塑性樹脂に微粒子が均一に分散した混合物を製造することも出来る。
【0061】
そのほか、当該複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを、熱可塑性樹脂に直接添加し、均一に溶融混合する方法で混合物を製造することも出来る。当該微粒子を樹脂に分散させる方法は、特に限定されないが、例えば、超音波分散、媒体攪拌ミル、ボールミル、サンドミルなどを使用することができる。
【0062】
上述の微粒子の分散媒は、特に限定されるものではなく、配合する樹脂に合わせて選択することが可能である。例えば、水、あるいは、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物など、一般的な溶媒の使用が可能である。また、必要に応じて、酸やアルカリを添加してpHを調整してもよい。さらに、微粒子の分散安定性を一層向上させるために、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加することも可能である。
【0063】
上述の方法により得られた混合物は、更にペント式一軸または二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工することによって、樹脂中に複合タングステン酸化物微粒子および/または酸化鉄微粒子を高濃度に分散させたマスターバッチを得ることができる。
【0064】
(2)溶媒中に、複合タングステン酸化物微粒子や酸化鉄微粒子が分散した紫外・近赤外光遮蔽分散体の形成方法
コーティングにより、複合タングステン酸化物微粒子や酸化鉄微粒子を含有する紫外・近赤外光遮蔽分散体を、後述する適宜な基材上に形成する場合には、複合タングステン酸化物微粒子、酸化鉄微粒子を個別に、あるいは、混合して、溶媒中に分散させて分散体とする。当該分散体に樹脂バインダーを添加した後、媒体表面にコーティングし、溶媒を蒸発させ、所定の方法で樹脂を硬化させることにより、複合タングステン酸化物微粒子および/または酸化鉄微粒子を含む分散体を形成することができる。また、複合タングステン酸化物微粒子および/または酸化鉄微粒子を樹脂バインダー中に直接分散したものは、基材表面にコーティングした後、溶媒を蒸発させる必要がないため、環境的にも工業的にも好ましい。
【0065】
上述の溶媒は、特に限定されるものではなく、配合する樹脂に合わせて選択することが可能である。例えば、水、あるいは、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物など、一般的な溶媒の使用が可能である。また、必要に応じて、酸やアルカリを添加してpHを調整してもよい。更に、微粒子の分散安定性を一層向上させるために、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加することも可能である。
【0066】
尚、所望により、上記(1)(2)の媒体中へ着色顔料や染料を添加してもよい。
【0067】
<6.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽体の形成方法>
上記<5.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体の形成方法>の(1)、(2)で説明した分散体を、基材の片面または両面に塗布することにより、紫外・近赤外光遮蔽体が形成される。
【0068】
後述する適宜な基材表面へ分散体を配する方法としては、均一なコートを実施可能である方法であれば特に制限はなく、例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ブレードコート法などを用いることができる。これらのコーティング方法により形成した複合タングステン酸化物微粒子を含有する層は、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法および化学気相法(CVD法)などの乾式法や、スプレー法で作製した場合に比べて、光の干渉効果を用いなくても、特に近赤外線領域の光を効率よく吸収し、同時に可視光領域の光を透過させることができる。
【0069】
フィルム状等の形状の分散体をガラス等の基材に貼り付けるため、両者の間の接着面に接着層と離型フィルム層とを積層してもよい。また、基材が自動車のバックウィンドウのように曲面の場合、貼り付け易いように、分散体を、少量の熱量、例えばドライヤーの熱で簡単に軟化するフィルムとしてもよい。さらに、接着剤中に紫外線吸収剤を添加すれば、フィルムや樹脂の紫外線劣化を防止できる。紫外線吸収剤には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や、CeO、TiO、ZnO等が挙げられる。勿論、酸化鉄微粒子も紫外線吸収剤として機能する。
【0070】
<7.本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体及び遮蔽体の効果>
以上のように製造された本実施の形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体は、次の効果を奏する。
【0071】
本実施の形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体を製造する場合、複合タングステン酸化物微粒子または酸化鉄微粒子を含む組成物を媒体上にコーティングすること、あるいは上記微粒子を媒体中に練り込んで分散させることが出来る。
【0072】
これらのコーティングや分散には、通常のコーティング方法や分散方法を用いることができる。これらの方法は、樹脂等の耐熱温度の低い材料へも応用が可能であり、且つ、製造の際に、大型の装置を必要とせず安価である。
【0073】
ここで、複合タングステン酸化物微粒子は導電性材料であるため、当該微粒子が連接して連続的な膜となっている場合には、携帯電話等の電波を吸収反射して妨害する恐れがある。しかし、この複合タングステン酸化物微粒子を、例えば、ビーズミルを用いて分散することで、微粒子としてマトリックス中に分散させることが出来る。複合タングステン酸化物微粒子を微粒子としてマトリックス中に分散させた場合には、粒子一つ一つが孤立した状態で分散しているため、電波透過性を発揮させることができ、汎用性を有している。
【0074】
また、本実施の形態に係る複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを混合することで、近赤外線及び紫外線の吸収を保持したまま、色調調整が可能となる。
得られた紫外・近赤外光遮蔽材の色調は、両材料の組成比により、彩度の低いブロンズ色の色調を得ることができる。具体的には、本実施の形態に係る紫外・近赤外光遮蔽材において、L表色系におけるLが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180の範囲にあるブロンズ色の色調が得られる。
【0075】
ここで、酸化鉄微粒子は、その単位重量あたりの紫外線遮蔽能力が非常に高いため、その使用量が少なくて済む。また、複合タングステン酸化物微粒子は、酸化鉄微粒子と併用してもその近赤外線吸収機能が保持される。
【0076】
当該複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを、同一の媒体に分散させる場合も、複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを、別々の媒体に分配して分散させる場合も、紫外・近赤外光遮蔽分散体全体または紫外・近赤外光遮蔽体全体としては、複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子との固形分重量比が、(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあるとき、さらに好ましくは(0.5:1)〜(5:1)の範囲にあるとき、両微粒子を合わせた効果が顕著に表れて、色調はブロンズ系を呈し、近赤外線遮蔽特性も高い。これは、太陽光線等からの近赤外線の吸収を保持し、紫外線遮蔽効果を有したまま、ブロンズ色へ色調調整できることを示している。従って、複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子との固形分重量比が当該範囲にあるとき、紫外・近赤外線遮蔽効果が保持され、且つ意匠性の高い色調調整を行うことができる。
【0077】
上記固形分重量比の範囲であれば、複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを、共に媒体中あるいは分散体に混合分散している場合、または、それぞれの分散体に分配して分散している場合も含めて、可視光透過率よりも低い近赤外光透過率を有し、可視光透過率を20〜90%とし、かつ、近赤外光透過率を10〜80%とすることができる。可視光透過率が20%よりも高ければ、遮光性が強くて視界が暗くなりすぎることを防止でき、近赤外光透過率が80%よりも低ければ十分な近赤外光遮蔽性能が得られる。このため、上記光学特性を有することは近赤外線遮蔽効果として優れている。上記のように特性自体は酸化鉄とタングステン化合物の混合比で決定されるが、可視光透過率、近赤外光透過率は、媒体の膜厚や成形体の厚さに依存するので、膜厚が薄い場合には高濃度に調整し、膜厚が厚い場合には低濃度に調整することで、所望の光学特性となるよう適宜制御することができる。
【0078】
上記化合物における微粒子の粒子径が200nm以下になると、上記散乱が低減してミー散乱もしくはレイリー散乱領域になる。特に、レイリー散乱領域まで粒子径が減少すると、散乱光は分散粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上する。更に100nm以下になると散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましく、粒子径が1nm以上で
あれば工業的な製造は容易である。
【0079】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体は、複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子とを、共に媒体中に混合分散しているか、または、別々に媒体中に分散した紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体であり、同時に紫外線も遮蔽でき、簡便な方法で製造できるうえ、耐候性が良く、低コストである。しかも、本実施形態に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体および紫外・近赤外光遮蔽体は、光学特性を保持したまま、彩度が低く意匠性の高いブロンズ色の色調を発色させることができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、以下の各実施例及び比較例において用いている微粒子の粉体色(標準光源D65、10°視野)は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。
【0081】
(実施例1)
粉体色が、Lが37.9481、aが−0.1209、bが−6.0232のCs0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を10重量部、トルエン80重量部、微粒子分散用分散剤10重量部を混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのCs0.33WO微粒子の分散液を作製した(A液)。
粉体色が、Lが37.5774、aが6.4793、bが4.2244のFe微粒子を使用し、同様の方法で、平均分散粒子径80nmのFe微粒子の分散液を作製した(B液)。
このA液とB液とを、Cs0.33WO微粒子とFe微粒子との固形分重量比が0.5:1となるように混合し、さらに、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)を加えてトルエンで希釈して十分混合し塗布液とした。当該塗布液中のハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)の割は20wt%とした。
【0082】
当該塗布液を、バーコーターを用いて50μmPETフィルム上に塗布、成膜した。この膜を70℃で1分乾燥し溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプ(UV光)で硬化させ、目的とする膜を得た。
作製された膜の光学特性を、日立製作所製の分光光度計を用いて波長200〜2100nmの光の透過率により測定し、JIS A 5759に従って可視光透過率、近赤外光透過率、色調(L、a、b表色系)を算出した。
この結果を表1に示す。また、表1には下記の実施例2〜7、比較例1で得られた結果についても併せて示す。
【0083】
(実施例2)
粉体色が、Lが37.4562、aが−0.3485、bが−4.6939のRb0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を10重量部、トルエン80重量部、微粒子分散用分散剤10重量部を混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのRb0.33WO微粒子の分散液を作製した(C液)。
実施例1と同様の方法で、平均分散粒子径80nmのFe微粒子の分散液を作製した(B液)。
このC液とB液とを、Rb0.33WO微粒子とFe微粒子との固形分重量比が1:1となるように混合し、さらに、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)を加えてトルエンで希釈して十分混合し塗布液とした。当該塗布液中のハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)の割合は20wt%とした。
【0084】
当該塗布液を、実施例1と同様に成膜し、この膜の光学特性を実施例1と同様の方法で
測定し、可視光透過率、近赤外光透過率、色調(L、a、b表色系)を算出した。
【0085】
(実施例3)
粉体色が、Lが37.9481、aが−0.1209、bが−6.0232のCs0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を10重量部、トルエン80重量部、微粒子分散用分散剤10重量部を混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのCs0.33WO微粒子の分散液を作製した(A液)。
実施例1と同様の方法で、平均分散粒子径80nmのFe微粒子の分散液を作製した(B液)。
このA液とB液とを、Cs0.33WO微粒子とFe微粒子との固形分重量比が2:1となるように混合し、さらに、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)を加えてトルエンで希釈して十分混合し塗布液とした。当該塗布液中のハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)の割合は20wt%とした。
【0086】
当該塗布液を、実施例1と同様に成膜し、この膜の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、可視光透過率、近赤外光透過率、色調(L、a、b表色系)を算出した。
【0087】
(実施例4)
粉体色が、Lが37.9481、aが−0.1209、bが−6.0232のCs0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を10重量部、トルエン80重量部、微粒子分散用分散剤10重量部を混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのCs0.33WO微粒子の分散液を作製した(A液)。
実施例1と同様の方法で、平均分散粒子径80nmのFe微粒子の分散液を作製した(B液)。
さらにスプレードライヤーを用いて(A液)および(B液)のトルエンを、それぞれ除去し、Cs0.33WO分散粉である(A粉)とFe分散粉である(B粉)を得た。
得られた(A粉)および(B粉)を、各々ポリエステル樹脂ペレットに添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、Cs0.33WOを含有するマスターバッチと、Feを含有するマスターバッチとを得た。
このCs0.33WOを含有するマスターバッチと、Feを含有するマスターバッチとの固形分重量比が5:1となるように、同じ方法で調製した無機微粒子を添加していないマスターバッチと混合した。
この混合マスターバッチを押出し成形して、厚さ50μmのフィルムを形成した。
【0088】
このフィルムの光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、可視光透過率、近赤外光透過率、色調(L、a、b表色系)を算出した。
【0089】
(実施例5)
粉体色が、Lが37.9481、aが−0.1209、bが−6.0232のCs0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を10重量部と、トルエン80重量部と、微粒子分散用分散剤10重量部とを混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのCs0.33WO微粒子の分散液を作製した(A液)。
このA液70重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)20重量部と、トルエン10重量部とを混合して、Cs0.33WO微粒子分散体液を得た。
同様に、Fe微粒子10重量部と、トルエン80重量部と、微粒子分散用分散剤10重量部とを混合し、平均分散粒子径80nmのFe微粒子の分散液を作製した(B液)。
このB液5重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)20重量部とト
ルエン75重量部とを混合して、Fe微粒子分散体液を得た。
【0090】
このCs0.33WO微粒子分散体液を、バーコーターを用いて50μmPETフィルム上に塗布、成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥し溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプ(UV光)で硬化させた。その後、当該PETフィルムのもう片面に、同様の方法で当該Fe微粒子分散体液を塗布、成膜し、硬化させた。このとき、Cs0.33WO微粒子とFe微粒子との固形分重量比が7.5:1となるように調整を行った。
この膜の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、可視光透過率、近赤外光透過率、色調(L、a、b表色系)を算出した。
【0091】
(実施例6)
粉体色が、Lが37.9481、aが−0.1209、bが−6.0232のCs0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を10重量部と、トルエン80重量部と、微粒子分散用分散剤10重量部とを混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのCs0.33WO微粒子の分散液を作製した(A液)。さらにスプレードライヤーを用いて(A液)のトルエンを除去し、Cs0.33WO分散粉である(A粉)を得た。
得られた(A粉)をポリエステル樹脂ペレットに添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、Cs0.33WOを含有するマスターバッチを得た。このCs0.33WOを含有するマスターバッチを、同じ方法であるが無機微粒子を添加しないで調製したマスターバッチと混合した。この混合マスターバッチを押出し成形して、厚さ50μmのフィルムを形成した。
同様に、Fe微粒子10重量部と、トルエン80重量部と、微粒子分散用分散剤10重量部とを混合し、平均分散粒子径80nmのFe微粒子3の分散液を作製した(B液)。
このB液5重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)20重量部とトルエン75重量部とを混合して、Fe微粒子分散体液を得た。
このFe微粒子分散体液をバーコーターを用いて、Cs0.33WO微粒子を含有している上記フィルム上に塗布、成膜し、硬化させ、Cs0.33WO微粒子とFe微粒子の固形分重量比が10:1となるような膜を得た。
【0092】
この膜の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、可視光透過率、近赤外光透過率、色調(L、a、b表色系)を算出した。
【0093】
(比較例1)
粉体色が、Lが37.5774、aが6.4793、bが4.2244のFe微粒子(比表面積100m/g)を10重量部と、トルエン80重量部と、微粒子分散用分散剤10重量部とを混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのFe微粒子3の分散液を得た(B液)。このB液5重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)20重量部と、トルエン75重量部とを混合して、Fe微粒子分散体液を得た。
このFe微粒子分散体液を、バーコーターを用いて50μmPETフィルム上に塗布、成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥し溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプ(UV光)で硬化させ、目的とする膜を得た。
【0094】
この膜の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、可視光透過率、近赤外光透過率、色調(L、a、b表色系)を算出した。
【0095】
実施例1〜6に係る膜は、複合タングステン酸化物微粒子とFe微粒子を併用す
ることで、近赤外光透過率が低く保持され遮蔽効果が高いうえ、紫外線遮蔽効果もあった。特に、実施例1〜3では、紫外線を100%遮蔽していた。また、色調は彩度の低いブロンズ色であり意匠性が高かった。
これに対し、比較例1に係る膜は、可視光透過率よりも近赤外光透過率の方が高く、紫外線遮蔽効果は有するものの、近赤外光遮蔽体としては遮蔽効果が悪かった。
【0096】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体の一実施形態の模式的な断面図である。
【図2】本発明に係る紫外・近赤外光遮蔽体の一実施形態の模式的な断面図である。
【図3】本発明に係る紫外・近赤外光遮蔽分散体の一実施形態の模式的な断面図である。
【図4】本発明に係る紫外・近赤外光遮蔽体の一実施形態の模式的な断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、酸化鉄微粒子とが、媒体中に混合分散し、前記複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子との混合分散が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180であることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項2】
可視光透過率が20〜90%であり、近赤外光透過率が10〜80%であり、ブロンズ色を有することを特徴とする請求項1に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項3】
上記複合タングステン酸化物微粒子の粉体色が、L表色系において、Lが25〜80、aが−10〜10、bが−15〜15であり、上記酸化鉄微粒子の粉体色が、L表色系において、Lが20〜80、aが−5〜15、bが−10〜25であることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項4】
上記複合タングステン酸化物微粒子と酸化鉄微粒子との粒子径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項5】
上記複合タングステン酸化物微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムを1種類以上含む酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項6】
上記媒体が、樹脂もしくはガラスであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項7】
上記媒体が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のうちの1種類以上であることを特徴とする請求項6に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項8】
上記媒体が、板状、フィルム状、薄膜状であることを特徴とする請求項6または7に記載の紫外・近赤外光遮蔽分散体。
【請求項9】
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示される複合タングステン酸化物微粒子と、酸化鉄微粒子とが、
媒体中に混合分散し、前記複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子との混合分散が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180である紫外・近赤外光遮蔽分散体が、基材の片面または両面に設けられていることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽体。
【請求項10】
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択され
る1種類以上の元素)で示される複合タングステン酸化物微粒子が媒体中に分散した分散体と、酸化鉄微粒子が媒体中に分散した分散体とが、
酸化鉄微粒子が媒体内に分散された酸化鉄微粒子分散体の片面または両面に、複合タングステン酸化物微粒子を有する分散体を配するか、あるいは、複合タングステン酸化物微粒子が媒体内に分散された複合タングステン酸化物微粒子分散体の片面または両面に、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体を配されており、
前記複合タングステン酸化物微粒子が分散した分散体中の複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子が分散した分散体中の酸化鉄微粒子との比率が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、
酸化鉄微粒子が媒体内に分散された酸化鉄微粒子分散体の片面または両面に、複合タングステン酸化物微粒子を有する分散体を配するか、あるいは、複合タングステン酸化物微粒子が媒体内に分散された複合タングステン酸化物微粒子分散体の片面または両面に、酸化鉄微粒子を含有する酸化鉄微粒子分散体を配する紫外・近赤外光遮蔽体において、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180であることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽体。
【請求項11】
一般式MWO(但し、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、M元素は、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上の元素)で示される複合タングステン酸化物微粒子が媒体中に分散した分散体と、酸化鉄微粒子が媒体中に分散した分散体とが、
基体の片面に設けられ、または、基体の両面にそれぞれ設けられており、
前記複合タングステン酸化物微粒子が分散した分散体中の複合タングステン酸化物微粒子と、前記酸化鉄微粒子が分散した分散体中の酸化鉄微粒子との比率が、固形分重量比で(0.05:1)〜(10:1)の範囲にあり、
前記複合タングステン酸化物微粒子が媒体中に分散した分散体と、酸化鉄微粒子が媒体中に分散した分散体とが、基体の片面に設けられ、または、基体の両面にそれぞれ設けられた紫外・近赤外光遮蔽体において、可視光透過率の数値よりも近赤外光透過率の数値が低く、L表色系で評価したとき、Lが45〜95、aが−20〜90、bが0〜180であることを特徴とする紫外・近赤外光遮蔽体。
【請求項12】
可視光透過率が20〜90%であり、近赤外光透過率が10〜80%であり、ブロンズ色を有することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽体。
【請求項13】
上記媒体が、板状、フィルム状、薄膜状であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽体。
【請求項14】
上記基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載の紫外・近赤外光遮蔽体。
【請求項15】
上記基材が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂のうちの1種類以上であることを特徴とする請求項14に記載の紫外・近赤外光遮蔽体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−231164(P2008−231164A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69354(P2007−69354)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】