説明

紫外光照射装置

【課題】照射対象物に正確な強度にて紫外光を照射することが容易な紫外光照射装置を提供すること。
【解決手段】前板(11a)と前板の背面下部に接続された底板(11b)とを有する引き出し(11)を備える筐体(12)、筐体の内部上方に配設された紫外光発生手段(21)、および上記引き出しの底板上に設置され、引き出しを閉じた状態にて紫外光発生手段の下方に配置される、紫外光の照射対象物を支持する昇降装置(31)を備える紫外光照射装置であって、上記の引き出しの前板を貫通して上記昇降装置に接続している昇降操作手段(51)を更に備えることを特徴とする紫外光照射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種物品の表面の光洗浄あるいは改質に用いられる紫外光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外光を照射して各種物品の表面の光洗浄が行なわれている。紫外光は、有機化合物の化学結合(例、C−H結合)を切断すると共に、空気中の酸素から酸化作用の強いオゾン(更には活性酸素)を生成させる。このため、紫外光の照射により、物品表面に汚染物として付着した有機化合物が酸化分解されて除去される。また、紫外光を樹脂材料製の物品に照射した場合には、上記の洗浄と同時に、物品表面の樹脂材料の化学結合(例、C−H結合)が切断され、この表面にオゾン(あるいは活性酸素)の酸化作用により官能基(例、カルボニル基、カルボキシル基)が生成される。このため、紫外光の照射により、樹脂材料製の物品の表面が改質(例、親水化)される。これにより、例えば、樹脂材料製の物品とその表面に形成される膜(例、メッキ膜、塗膜)との密着性が良好になる。
【0003】
特許文献1には、筐体、筐体の内部上方に配設された紫外光発生手段、および紫外光発生手段の下方に配置されている、紫外光の照射対象物を支持する試料台を備える紫外光照射装置が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、紫外光照射装置の筐体に引き出しを設けること、引き出しの底板の上に、紫外光照射対象物を支持する昇降装置(手動式ラボジャッキ)を配置することが記載されている。昇降装置は、引き出しを閉じた状態にて紫外光発生手段の下方に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−178777号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“卓上型表面処理装置”、[online]、[平成22年7月21日検索]、インターネット<URL:http://www.senlights.co.jp/seihin/PL16/pl17.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、照射対象物に正確な強度にて紫外光を照射することが容易な紫外光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前板と前板の背面下部に接続された底板とを有する引き出しを備える筐体、筐体の内部上方に配設された紫外光発生手段、および上記引き出しの底板上に設置され、引き出しを閉じた状態にて紫外光発生手段の下方に配置される、紫外光の照射対象物を支持する昇降装置を備える紫外光照射装置であって、上記の引き出しの前板を貫通して上記昇降装置に接続している昇降操作手段を更に備えることを特徴とする紫外光照射装置にある。
【0009】
本発明の紫外光照射装置の好ましい態様は、次の通りである。
(1)上記昇降装置が、テーブル板、テーブル板を昇降可能に支持するリンク機構、およびリンク機構に一方の端部が接続されている、リンク機構を介してテーブル板の昇降を駆動するねじ軸からなり、そして上記の昇降操作手段が昇降装置のねじ軸の他方の端部に接続されている。
(2)上記筐体が、上面に開口部を有する容器状本体と前記の開口部に開閉可能に備えられた蓋体とからなり、上記紫外光発生手段が、両端部の間で奇数回にて折り返された発光管を備える低圧水銀ランプであり、そして水銀ランプを発光管の各端部にて支持する支持板が、水銀ランプと共に着脱可能に上記容器状本体の内壁に固定されている。
(3)上記支持板に固定されている、上記発光管の端部の下側部分を収容する溝を表面に備える金属製の平板と、この平板に一方の端部にて固定されている、上記発光管の端部の上側部分に沿って延びる金属製の湾曲板とを更に備え、そして上記平板の支持板への固定位置の調節が可能とされている。
(4)上記湾曲板がリン青銅又はベリリウム銅からなる。
(5)上記蓋体が容器状本体から取り外し可能とされている。
(6)上記蓋体の紫外光発生手段の上方の位置に反射板が備えられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の紫外光照射装置は、筐体の引き出しを閉じた状態で、紫外光照射対象物を支持する昇降装置を昇降操作手段を用いて昇降させることができる。従って、紫外光照射対象物に紫外光を照射する前に、引き出しを閉じた状態で昇降装置を昇降させながら、昇降装置の高さと昇降装置の上面の紫外光の強度(紫外光照射対象物の上面の紫外光の強度に相関する)との関係を、引き出しを開閉したり、紫外光発生手段の作動を停止したりすることなく、極めて安定した条件にて正確に且つ短時間で測定することができる。このため、本発明の紫外光照射装置は、紫外光照射対象物に紫外光を正確な強度にて照射することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の紫外光照射装置の構成例を示す正面図である。
【図2】図1の紫外光照射装置10の平面図である。ただし、図2の紫外光照射装置10は、図1に示す蓋体12bが筐体12から取り外され、そして筐体12の引き出し11が開けられた状態で記入されている。また、図1に示す蓋体12bの固定具14は記入していない。
【図3】図1の紫外光照射装置10の一部切り欠き左側面図である。ただし、図3の紫外光照射装置10は、筐体12の引き出し11が開けられた状態で記入されている。また、図1に示す蓋体12bの固定具14は記入していない。
【図4】図3に示す昇降装置31の近傍の部位の拡大図である。ただし、図3に示すスケール15は記入していない。
【図5】図4に記入した切断線V−V線に沿って切断した昇降装置31の近傍の部位の断面図である。
【図6】図4の昇降装置31のテーブル板32を下降させた状態にて示す図である。
【図7】図2の紫外光照射装置10の図にて上側に配置された平板26の近傍の部位を、切断線VII−VII線に沿って切断した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の紫外光照射装置を、添付の図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の紫外光照射装置の構成例を示す正面図であり、図2は、図1の紫外光照射装置10の平面図であり、そして図3は、図1の紫外光照射装置の一部切り欠き左側面図である。なお、図2及び図3のそれぞれには、引き出し11を閉じることにより筐体12の内部に配置された昇降装置31を二点鎖線で示した。また、図3には、筐体12の内部に配設された紫外光発生手段21を二点鎖線で示した。
【0014】
図1〜図3に示す紫外光照射装置10は、前板11aと前板11aの背面下部に接続された底板11bとを有する引き出し11を備える筐体12、筐体12の内部上方に配設された紫外光発生手段21、および引き出し11の底板11bの上に設置され、引き出し11を閉じた状態にて紫外光発生手段21の下方に配置される、紫外光の照射対象物を支持する昇降装置31を備えている。そして、紫外光照射装置10は、上記の引き出し11の前板11aを貫通して昇降装置31に接続している昇降操作手段51を更に備えていることに主な特徴がある。
【0015】
紫外光照射装置10を用いて紫外光照射対象物の表面を安定した条件にて洗浄あるいは改質するためには、紫外光発生手段21にて発生する紫外光を紫外光照射対象物の表面に正確な強度にて照射する必要がある。従って、紫外光発生手段21と紫外光照射対象物が支持される昇降装置31の上面との距離を精密に設定する必要がある。このため、紫外光照射対象物に紫外光を照射する前に、予め昇降装置31の高さと昇降装置31の上面の紫外光の強度(紫外光照射対象物の上面の紫外光の強度に相関する)との関係を測定し、この測定の結果に基づいて、昇降装置31の高さが、紫外光照射対象物に所定の強度(例えば、30〜90mW/cm2の範囲内の強度)の紫外光が照射される高さに設定される。
【0016】
ところが、上記昇降操作手段を備えていない紫外光照射装置の場合には、先ずは紫外光発生手段の作動を停止させた状態にて筐体の引き出しを開け、次いで昇降装置を所定の高さに設定してから引き出しを閉じ、そして紫外光発生手段を作動させてから紫外光の強度が安定するまで、概ね5〜10分の時間を経過してから昇降装置の上面の紫外光の強度の測定を開始することが必要である。従って、昇降装置の高さを変える度に、紫外光の強度が安定するのを待ってから昇降装置の上面の紫外光の強度の測定を開始する必要があるため、測定に長い時間を必要とする。
【0017】
そこで、本発明者は、紫外光から身体を保護する眼鏡及び手袋を着用した上で、紫外光発生手段の作動を停止することなく引き出しを開け、次いで昇降装置を所定の高さに設定してから引き出しを閉じ、速やかに昇降装置の上面の紫外光の強度を測定した。しかしながら、昇降装置の上面の紫外光の強度の変動は十分に低減しなかった。そして、本発明者が更に検討を進めると、昇降装置の上面の紫外光の強度の変動は、紫外光発生手段の作動を開始したのちの紫外光の強度の変動によっても生じるが、引き出しを開閉した際に筐体内部のオゾン濃度が急減に減少するため、引き出しを閉じてから筐体内部のオゾン濃度が安定するまでは、比較的に多くの量の紫外光がオゾンの生成に利用されること(昇降装置の上面に到達しないこと)によっても生じることが判明した。
【0018】
また、紫外光発生手段として低圧水銀ランプを用いると、引き出しを開閉する際に筐体の内部に流入した外気との接触により低圧水銀ランプが備える発光管の端部の温度が変動し、これにより発光管に収容されているガスの蒸気圧が変動するため、昇降装置の上面に照射される紫外光の強度が変動し易いことも判明した。
【0019】
上記のような本発明者が新たに見出した知見に基づき、本発明の紫外光照射装置10は、昇降操作手段51が採用されているため、筐体12の引き出し11を閉じた状態で、紫外光照射対象物を支持する昇降装置31を昇降操作手段51を用いて昇降させることができる。従って、紫外光照射対象物に紫外光を照射する前に、引き出し11を閉じた状態で昇降装置31を昇降させながら、昇降装置31の高さと昇降装置31の上面の紫外光の強度(紫外光照射対象物の上面の紫外光の強度に相関する)との関係を、引き出し11を開閉したり、紫外光発生手段21の作動を停止したりすることなく、極めて安定した条件にて正確に且つ短時間で測定することができる。このため、本発明の紫外光照射装置10は、紫外光照射対象物に紫外光を正確な強度にて照射することが容易である。
【0020】
また、紫外光発生手段21として低圧水銀ランプを用いた場合であっても、上記測定の際に筐体12の引き出し11を開閉する必要はなく、発光管22の端部22aの温度が極めて安定するため、昇降装置31の上面に照射される紫外光の強度の変動を抑制することができる。
【0021】
図4は、図3に示す昇降装置31の近傍の部位の拡大図であり、そして図5は、図4に記入した切断線V−V線に沿って切断した昇降装置31の近傍の部位の断面図である。
【0022】
図4及び図5に示すように、昇降装置31としては、テーブル板32、テーブル板32を昇降可能に支持するリンク機構33、およびリンク機構33に一方の端部が接続されている、リンク機構33を介してテーブル板32の昇降を駆動するねじ軸34を備える公知のねじジャッキが用いられている。
【0023】
リンク機構33は、図5においてテーブル板32の左側を支持する四本のロッド35a、35b、35c、35dの組体35とテーブル板32の右側を支持する四本のロッド36a、36b、36c、36dの組体36とを備えている。ロッドの組体35、36の構成は互いに同一である。
【0024】
ロッドの組体35は、上端部と下端部との間にて軸棒37aを介して互いに回転可能に接続されたロッド35a、35bと、同様に上端部と下端部との間にて軸棒37bを介して互いに回転可能に接続されたロッド35c、35dとから構成されている。
【0025】
ロッド35aの下端部とロッド35cの上端部とは、軸棒38bを介して互いに接続されている。これによりロッド35a、35cは、それぞれ軸棒38bを中心として回転可能とされている。同様にロッド35bの下端部とロッド35dの上端部とは、軸棒38aを介して互いに接続されている。これによりロッド35b、35dは、それぞれ軸棒38aを中心として回転可能とされている。
【0026】
また、ロッド35aの上端部とロッド36aの上端部とは、軸棒39aを介して互いに接続されている。軸棒39aの両端部はそれぞれ、テーブル板32の下面に備えられた上側支持部材41の長孔41aに挿入された状態にて支持されている。これにより、ロッド35a、36aは、それぞれ上端部を中心とする回転が可能とされ、かつ上端部が長孔41aに沿ってスライド可能とされている。
【0027】
同様に、ロッド35cの下端部とロッド36cの下端部とは、軸棒39bを介して互いに接続されている。軸棒39bの両端部はそれぞれ、引き出し11の底板11bに設置された下側支持部材42の長孔42aに挿入された状態にて支持されている。これにより、ロッド35c、36cは、それぞれ下端部を中心とする回転が可能とされ、かつ下端部が長孔42aに沿ってスライド可能とされている。
【0028】
そして、ロッド35bの上端部とロッド36bの上端部とは、軸棒39cを介して互いに接続されている。軸棒39cの両端はそれぞれ、上側支持部材41の円孔41bに挿入された状態にて支持されている。これにより、ロッド35b、36bは、それぞれ上端部を中心とする回転が可能とされている。
【0029】
同様に、ロッド35dの下端部とロッド36dの下端部とは、軸棒39dを介して互いに接続されている。軸棒39dの両端はそれぞれ、下側支持部材42の円孔42bに挿入された状態にて支持されている。これにより、ロッド35d、36dは、それぞれ下端部を中心とする回転が可能とされている。
【0030】
そして、前記のねじ軸34の一方の端部は、外周面に右ねじ34aが形成されていて、軸棒38aの長さ方向の中央部に形成されたねじ孔(図示していない)に嵌め合わされている。
【0031】
従って、昇降装置31のねじ軸34を、例えば、図4の右側から見て時計回りに回転させると、軸棒38aに前方側(図4にて右側)に向かう駆動力が付与される。その結果、軸棒38aと共に、軸棒37a、37b、そして軸棒39a、39bが前方側に移動し、これと同時に軸棒37a、37b、軸棒38a、38b、そして軸棒39a、39cが上昇する。従って、軸棒39a、39cに上側支持部材41を介して支持されているテーブル板32が上昇する。これとは逆に、昇降装置31のねじ軸34を、例えば、図4の右側から見て反時計回りに回転させると、テーブル板32が下降する。
【0032】
なお、昇降装置31のねじ軸34の他方の端部は、外周面に左ねじ34bが形成されていて、軸棒38bの長さ方向の中央部に形成されたねじ孔40に嵌め合わされている。これにより、ねじ軸34が、軸棒38bのねじ孔40の内部に緊密に嵌め合わされた状態で支持される。このため、テーブル板32を高精度にて昇降させることができる。
【0033】
昇降装置としては、紫外光照射装置の構成が簡単になることから、公知のねじジャッキ、油圧ジャッキ、あるいはエアジャッキを用いることが好ましく、リンク機構とリンク機構を駆動するねじ軸とを備えるねじジャッキを用いることが特に好ましい。
【0034】
昇降装置に用いるリンク機構は、テーブル板を昇降させることができれば、その構成に特に制限はない。例えば、図4に示すテーブル板32を大きく昇降させる必要がなければ、ロッド35c、35dを用いることなく、下側支持部材42の長孔42aにてロッド35bの下端部に接続された軸棒38aを支持し、そして円孔42bにてロッド35aの下端部に接続された軸棒38bを支持することができる。また、例えば、図5に示すテーブル板32の左右の中央を、一組のロッドの組体で支持して、テーブル板32の左右のそれぞれを、公知のリニアガイドを用いて昇降可能に支持することもできる。この場合、ねじ軸34は、ロッドの組体の何れかのロッドに接続すればよい。ねじ軸34は、ロッドにねじ孔を形成し、このねじ孔に挿入して直接的にロッドに接続することもできるし、ねじ軸34の周囲にナットを嵌め合わせ、このナットを介して間接的にロッドに接続することもできる。
【0035】
図4に示すように、昇降装置31のねじ軸34の他方の端部には、昇降操作手段51が接続されている。昇降操作手段51は、ねじ軸34に接続された第一の自在継ぎ手(ユニバーサルジョイント)52aと、第一の自在継ぎ手52aに連結具53を介して接続された第二の自在継ぎ手52bと、第二の自在継ぎ手52bに引き出し11の前板11aを貫通する軸体54を介して接続された摘み55とから構成されている。
【0036】
昇降操作手段51が接続されるねじ軸34は、軸棒38a、38bと共に昇降(上下方向に移動)する。このため、昇降操作手段51は、自在継ぎ手52a、52bを利用して、ねじ軸34が昇降した場合であっても、ねじ軸34を回転可能な構成とされている。
【0037】
昇降操作手段51の摘み55を、例えば、図4の右側から見て時計回りに回転させることにより、テーブル板32を上昇させることができる。これとは逆に、昇降操作手段51の摘み55を、図4の右側から見て反時計回りに回転させることにより、図6に示すようにテーブル板32を下降させることができる。
【0038】
昇降操作手段51は、昇降装置31を手動で昇降させるため、その構成が極めて簡単である。このため、昇降操作手段51を用いると、紫外光照射装置の構成が極めて簡単になり、また装置の小型化も容易になる。
【0039】
なお、昇降操作手段51の連結具53は、角柱状の補助軸53aと補助軸53aの周囲に嵌め合わされた筒体53bとから構成されていて、これにより補助軸53aが長さ方向に微動可能とされている。また、軸体54は、軸体54を回転可能に且つ長さ方向に微動可能に支持する軸受(リニアロータリーベアリング)56に支持されている。補助軸53a及び/又は軸体54を微動可能とすることにより、昇降装置31を昇降させる際の摘み55の回転が円滑になる。
【0040】
昇降操作手段は、筐体の引き出しを閉じた状態にて昇降装置を昇降させることができれば、その構成に特に制限はない。例えば、図4に示す昇降装置31のねじ軸が、仮にリンク機構33の軸棒39bに接続されているのであれば、ねじ軸が上下方向に移動(昇降)することはない。従って、昇降操作手段として、ねじ軸に接続されて引き出し11の前板11aを貫通する棒材を用いることができる。この棒材は、ねじ軸を延長して形成することもできる。
【0041】
図1に示すように、引き出し11の前板11aに窓部11cを形成し、そして図3に示すように引き出し11aの底板11bにスケール15を立設することもできる。この窓部11cを通してスケール15の目盛りを確認しながら昇降操作手段51を操作することにより、昇降装置31の高さを簡単に調節することができる。
【0042】
本発明の紫外光照射装置の紫外光発生手段としては、例えば、エキシマランプ(例、Xeエキシマランプ)、あるいは水銀ランプ(例、低圧水銀ランプ)を用いることができ、特に低圧水銀ランプを用いることが好ましい。
【0043】
図1〜図3に示すように、紫外光照射装置10の筐体12が、上面に開口部を有する容器状本体12aと前記の開口部に開閉可能に備えられた蓋体12bとからなり、紫外光発生手段21が、両端部の間で奇数回(例えば、7回)にて折り返された発光管22を備える低圧水銀ランプであり、そして水銀ランプを発光管の各端部22aにて支持する支持板23が、水銀ランプと共に着脱可能に上記容器状本体12aの内壁に固定されていることが好ましい。
【0044】
水銀ランプ(紫外光発生手段)21は、発光管22が両端部の間にて折り返されているため、昇降装置31に支持された紫外光照射対象物の表面に均一な強度にて紫外光を照射することができ、また複数個の水銀ランプを並べて使用する場合と比較して、水銀ランプ21に電気エネルギーを供給する電気回路(図示していない)の構成が簡単であるという利点を有している。
【0045】
その一方で、水銀ランプ21の発光管22は、例えば、石英ガラス(特に好ましくは合成石英ガラス)から形成され、製造の際に熱処理により複雑な形状に折り曲げ加工する必要がある。このため、複数個の発光管を互いに同一の形状にて製造することが極めて難しい。従って、水銀ランプ21を交換する際に、筐体12の内部に支持固定されている水銀ランプ21を取り外し、この水銀ランプ21を支持固定していた位置と同じ位置に別の水銀ランプを支持固定しようとすると、水銀ランプの発光管が破損することがある。
【0046】
上記のように水銀ランプ21が支持板23と共に着脱可能とされていると、水銀ランプ21を支持板23と共に容器状本体12aから取り外し、そして予め発光管の形状に応じた適切な位置にて支持板に支持させた別の水銀ランプを前記支持板と共に容器状本体12aに取り付けることにより、水銀ランプの破損の発生を効果的に抑制することができる。
【0047】
なお、水銀ランプ21及び支持板23を容器状本体12aの内壁から取り外すためには、発光管22の各端部22aに備えられた電極端子22bを端子台28から取り外し、そして容器状本体12aに備えられた支持部材29と支持板23とを固定している合計で4本のボルト30aを取り外せばよい。
【0048】
容器状本体12aからの水銀ランプ21及び支持板23の取り出しが容易となるよう、蓋体12bは容器状本体12aから取り外し可能とされていることが好ましい。
【0049】
なお、図3に示すように、蓋体12bの紫外光発生手段21の上方の位置に反射板13が備えられていると、水銀ランプ(紫外光発生手段)21の紫外光を反射板13で反射させ、紫外光照射対象物に効率良く照射することができる。また、反射板13が備えられた蓋体12bを開ければ、直ちに水銀ランプ21の交換の作業を開始することができる。
【0050】
蓋体12bと反射板13との間には、水銀ランプ21により加温された気体(空気あるいはオゾンなど)の接触による蓋体12bの温度上昇を抑制するため、遮熱用の壁体16が備えられている。
【0051】
図1〜図3に示すように、筐体12の引き出し11の前板11a、容器状本体12aの側壁、そして蓋体12bの前方側の壁体には、筐体12の内部にオゾンの原料となる空気を導入する吸気口17が備えられている。容器状本体12aの後端部には、筐体12の内部の気体(空気あるいはオゾンなど)を排出するファン18が備えられている。ファン18により筐体12の内部の加温された気体が排出されるため、筐体12の内部が温度上昇を続けることなく一定の温度に保たれる。
【0052】
図7は、図2の紫外光照射装置10の図にて上側に配置された平板26の近傍の部位を、切断線VII−VII線に沿って切断した拡大断面図である。
【0053】
図7に示すように、本発明の紫外光照射装置は、支持板23に固定されている、発光管(図2:22)の端部22aの下側部分を収容する溝26aを表面に備える金属製の平板26と、平板26に一方の端部にて固定されている、発光管の端部22aの上側部分に沿って延びる金属製の湾曲板27とを更に備え、そして平板26の支持板23への固定位置の調節が可能とされていることが好ましい。
【0054】
上記の平板26には、例えば、上記溝26aの幅方向(すなわち発光管の端部22aの幅方向)に延びる長孔26bが形成されている。平板26の長孔26bにはボルト30cが挿入されていて、ボルト30cの先端部は支持板23のねじ孔23aに嵌め合われている。ボルト30cを締め付けることにより、平板26を支持板23に固定することができる。このボルト30cを締め付ける前に、平板26を長孔26bの長さ方向に移動させることにより、平板26の支持板23への固定位置を調節することができる。
【0055】
支持板23に平板26と湾曲板27とが備えられていると、平板26の支持板23への固定位置、すなわち発光管の各端部22aの配置を(例えば、発光管の端部22aの幅方向に)容易に調節することができる。従って、水銀ランプを支持板23に取り付ける際の発光管の破損の発生を抑制することができる。
【0056】
また、水銀ランプの発光管の端部の温度が上昇すると、水銀ランプにより照射される紫外光の強度が低下する。図2及び図7に示すように、発光管22の各端部22aは、金属製の平板26の溝26aの内面と金属製の湾曲板27の表面とのそれぞれに接触している。これにより、発光管22の各端部22aの温度上昇が十分に抑制される。従って、紫外光発生手段21により照射される紫外光の強度が安定する。
【0057】
湾曲板27は、発光管22の破損を抑制するため十分な弾性を示すこと、そして発光管22の端部22aの温度上昇を抑制するため優れた熱伝導性を示すことが好ましい。このため、湾曲板27は、金属材料から形成され、特にリン青銅又はベリリウム銅から形成されていることが好ましい。
【0058】
なお、発光管の端部22aの支持位置を、図7にて上下方向に調節する場合には、例えば、平板26を別の厚みの平板と交換するか、あるいは平板26と支持板23との間に板状のスペーサを挿入すればよい。
【符号の説明】
【0059】
10 紫外光照射装置
11 引き出し
11a 前板
11b 底板
11c 窓部
12 筐体
12a 容器状本体
12b 蓋体
13 反射板
14 固定具
15 スケール
16 遮熱用の壁体
17 吸気口
18 ファン
21 紫外光発生手段(低圧水銀ランプ)
22 発光管
22a 発光管の端部
22b 電極端子
23 支持板
23a ねじ孔
26 平板
26a 溝
26b 長孔
27 湾曲板
28 端子台
29 支持部材
30a、30b、30c ボルト
31 昇降装置
32 テーブル板
33 リンク機構
34 ねじ軸
34a 右ねじ
34b 左ねじ
35 ロッドの組体
35a、35b、35c、35d ロッド
36 ロッドの組体
36a、36b、36c、36d ロッド
37a、37b 軸棒
38a、38b 軸棒
39a、39b、39c、39d 軸棒
40 ねじ孔
41 上側支持部材
41a 長孔
41b 円孔
42 下側支持部材
42a 長孔
42b 円孔
51 昇降操作手段
52a、52b 自在継ぎ手
53 連結具
53a 補助軸
53b 筒体
54 軸体
55 摘み
56 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板と該前板の背面下部に接続された底板とを有する引き出しを備える筐体、該筐体の内部上方に配設された紫外光発生手段、および上記引き出しの底板上に設置され、引き出しを閉じた状態にて紫外光発生手段の下方に配置される、紫外光の照射対象物を支持する昇降装置を備える紫外光照射装置であって、
上記の引き出しの前板を貫通して上記昇降装置に接続している昇降操作手段を更に備えることを特徴とする紫外光照射装置。
【請求項2】
上記昇降装置が、テーブル板、該テーブル板を昇降可能に支持するリンク機構、および該リンク機構に一方の端部が接続されている、該リンク機構を介してテーブル板の昇降を駆動するねじ軸からなり、そして上記の昇降操作手段が昇降装置のねじ軸の他方の端部に接続されている請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項3】
上記筐体が、上面に開口部を有する容器状本体と該開口部に開閉可能に備えられた蓋体とからなり、上記紫外光発生手段が、両端部の間で奇数回にて折り返された発光管を備える低圧水銀ランプであり、そして該水銀ランプを発光管の各端部にて支持する支持板が、該水銀ランプと共に着脱可能に上記容器状本体の内壁に固定されている請求項1もしくは2に記載の紫外光照射装置。
【請求項4】
上記支持板に固定されている、上記発光管の端部の下側部分を収容する溝を表面に備える金属製の平板と、該平板に一方の端部にて固定されている、上記発光管の端部の上側部分に沿って延びる金属製の湾曲板とを更に備え、そして該平板の支持板への固定位置の調節が可能とされている請求項3に記載の紫外光照射装置。
【請求項5】
上記湾曲板がリン青銅又はベリリウム銅からなる請求項4に記載の紫外光照射装置。
【請求項6】
上記蓋体が容器状本体から取り外し可能とされている請求項3乃至5のうちのいずれかの項に記載の紫外光照射装置。
【請求項7】
上記蓋体の紫外光発生手段の上方の位置に反射板が備えられている請求項3乃至6のうちのいずれかの項に記載の紫外光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148248(P2012−148248A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9593(P2011−9593)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000168078)江東電気株式会社 (11)
【Fターム(参考)】