説明

紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料および塗膜

【課題】 可視光透過率が高く、高湿度下あるいは水膨潤条件下にあっても、形成した塗膜から微細な白粉が浮き出てガラスが曇るという問題や、施工から数年間以上を経ると塗膜の透明性が損なわれて窓ガラスを通して外が霞んで見えるという問題を解決することを目的とする。
【解決手段】 次の構造を有する塗膜とその塗膜を形成しうる塗料である。「重合体(a) のエマルジョン粒子(A) は乾燥により相互凝着粒子層(A")の状態で対象物(O) 上に成膜されており、架橋性重合体(C) はその層(A")の各粒子の表層部および粒子間に存在しており、コロイダルシリカ粒子(D) はその層(A")の各粒子の表層部および粒子間に存在しており、紫外線吸収剤(E) はその層(A")の各粒子の内部に存在している。」

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を有効にカットすることができると共に可視光線透過率が高い紫外線
カット機能を有するエマルジョン塗料、およびそのエマルジョン塗料をガラス等の対象物
に塗布することにより成層された紫外線カット機能を有する塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の透明ガラスは、波長領域280〜320nmの紫外線B(UV−B)の一部を透
過しかつ320〜400nmの紫外線A(UV−A)を透過する。そのため、建築物、シ
ョーウインドウ、自動車などの窓ガラスの近くに置いた物品や内装品は太陽紫外線に曝さ
れて、色が褪せたり、物性が低下したりしやすい。また、室内や車内にいる人は、顔面や
手の甲などの太陽光に当たる部分に日焼けやしみや皺を生ずることになる。
【0003】
このような事情から、窓ガラスに対して、可視光線の高透過率を維持しつつ紫外線をカ
ットする手段を講ずることが行われている。窓ガラスに対して可視光線の透過度を維持し
て紫外線カット対策を施すことによる効果としては、上述のような物品や内装品の褪色や
物性低下を防止する効果および人の皮膚に対する有害作用抑制効果のほかに、省エネルギ
ー効果(夏場の冷房負荷の低減、冬場の暖房負荷の低減)や防虫効果などが知られている

【0004】
[紫外線吸収剤内添フィルムの貼着法(M1法)]
上述の紫外線カット対策の一つとして、紫外線吸収剤を内部添加して成形したフィルム
を窓ガラスに貼着することが行われている。
【0005】
しかしながら、このフィルム貼着法(M1法とする)は、次のような問題点ないし限界
がある。
1.ガラス面へのフィルムの貼着操作時に気泡を噛み込みやすく、しかもその気泡が長
期間抜けないこと。
2.ガラス面にフィルムを貼着してあることが容易にわかるので、外観的に問題点があ
ること。
3.フィルムの大きさに制限があるので、ガラスの大きさによっては1枚のガラス面で
あっても張り継ぎをしなければならないこと。
4.フィルム自体やフィルムをガラスに貼着する際に使用する接着剤層などが時間の経
過と共に酸化分解や加水分解により劣化し、脆化・不透明化すること。
【0006】
[紫外線吸収剤を内部添加した樹脂の有機溶剤溶液のコーティング法(M2法)]
上述の紫外線カット対策の他の一つとして、特開平5−113665号公報(特許文献
1)には、紫外線吸収剤を内部添加した樹脂の有機溶剤溶液をガラス板やプラスチック板
の表面にコーティングした後、乾燥して被膜を形成することが提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法(M2法とする)は、次のような問題点ないし限界がある。
1.有機溶剤は引火による火災の問題や、塗装時や乾燥時に蒸発した有機溶剤が建築物
内に充満し、人や環境に悪影響を招くこと。
2.有機溶剤は水に比較して表面エネルギーが小さいため、被膜の厚みが通常1〜10
μm となり、水系コーティング法の被膜厚みの10〜30μm に比較して薄い。このため
、溶剤系では水系に比較して被膜中の紫外線吸収剤量を高めることが本来的に困難であり
、紫外線カット機能が不充分なものになること。
3.充分な紫外線吸収機能を付与しようとして被膜中の紫外線吸収剤量を増加させよう
とすると被膜強度が低下し、被膜中にマイクロクラックが発生し、ガラス板やプラスチッ
ク板の透明性が低下すること。
【0008】
[コロイダルシリカ共存下の乳化重合エマルジョンの塗布法(M3法)]
さらに、特開平7−325390号公報(特許文献2)や特開2001- 149845
号公報(特許文献3)には、上述の「フィルムの貼着法(M1法)」や「樹脂の有機溶剤
溶液のコーティング法(M2法)」の問題点を解消しようとして、紫外線吸収剤とコロイ
ダルシリカのような無機質微粒子とを含有するアクリル系合成樹脂水性エマルジョンをガ
ラス板やプラスチック板の表面にコーティングして被膜を形成することが開示されている

【0009】
この方法(M3法とする)によれば、ガラス板やプラスチック板の表面に、可視光線の
透過率が高く、紫外線を有効にカットし、かつ耐候性、耐水性、機材密着性、透明性、硬
度の高い被膜が形成され、上記の[フィルム貼着法(M1法)]や[樹脂の有機溶剤溶液
コーティング法(M2法)]の問題点が解消されると共に、物品や内装品の褪色や物性低
下を防止する効果、皮膚に対する有害作用を抑制する効果、さらには省エネルギー効果(
夏場の冷房負荷、冬場の暖房負荷の低減)、防虫効果などの優れた機能性とその耐久性を
得ることができる。ここで「耐候性」とは、太陽光、気温、風雨などの屋外条件下に曝露
したときの耐久性を言う。
【0010】
しかしながら、このM3法においては、ガラス等の対象物に対して耐候性、耐水性、基
材密着性、透明性、硬度の高い被膜を得るために、合成樹脂エマルジョンとしてコロイダ
ルシリカの共存下にアクリル系単量体成分を乳化重合して得たものを用いる必要があると
ころ、このような特殊な反応工程を経て製造される合成樹脂エマルジョンを主原料とする
ため、製造コストが高くなり、また品質管理や生産管理も煩雑なものとならざるをえない
。そのため、このM3法は特殊コーティング法の範疇に止まり、一般汎用化することが困
難であった。とりわけ、このM3法の問題点として、高湿度あるいは結露などの水湿潤条
件下において被膜表面に微細な白粉が浮き出て窓ガラスが曇るという問題や、施工から数
年間以上を経ると塗膜の透明性が損なわれ、窓ガラスを通して外が霞んで見えるようにな
る場合があることが判明した。
【0011】
[カルボキシル基含有樹脂とオキサゾリン基含有樹脂とを用いた水性樹脂組成物(M4法
)]
化粧シートの製造にかかるものであるが、特開2009- 84446号公報(特許文献
4)には、カルボキシル基含有樹脂とオキサゾリン基含有樹脂とを用いて架橋構造を形成
させた一液型水性樹脂組成物からなる化粧シート製造用組成物が示されており、その作用
効果として、耐汚染性、耐アルカリ性、耐アルコール性、接着力、保持力、粘着性、基材
密着性、凝集力、可塑剤移行防止を改善する効果が記載されている。
【0012】
この特許文献4は、基材(原反となる樹脂シートのこと)上に樹脂含有層を形成した化
粧シート(壁紙のこと)を製造するときにその樹脂含有層を「180℃以上という高温条
件下」に熱処理する技術の改良にかかるものである。この特許文献4の発明にあっては、
その基材上に樹脂含有層を形成するための樹脂組成物としてカルボキシル基含有樹脂とオ
キサゾリン基含有樹脂とを含有する一液型水性組成物を用いるという工夫を講じているも
のの、コロイダルシリカ粒子の使用については何の言及もなく、まして、そのコロイダル
シリカ粒子とカルボキシル基含有樹脂のエマルジョン粒子との相互作用、そのコロイダル
シリカ粒子とオキサゾリン基含有樹脂との相互作用については考えられてもいない。従っ
て、特許文献4には、樹脂エマルジョン、コロイダルシリカおよび紫外線吸収剤を含有し
てなる紫外線カット塗料における高湿度条件下での塗膜表面に微細な白粉が浮き出て窓ガ
ラスが曇る問題や施工から数年間以上を経ると窓ガラスを通して外が霞んで見えるように
なる問題の解決については、当然ながら何ら示唆されていない。
【0013】
[塗料用の水系分散体(M5法)]
特開2002−348431号公報(特許文献5)には、
・(1) オルガノシランまたはその加水分解物またはその加水分解物の部分縮合物、(2)
ラジカル重合性モノマー、(3) 乳化剤、(4) 水、(5) 上記(1) の加水分解触媒および(6)
ラジカル重合開始剤の各成分を混合乳化して成分(1) の加水分解・縮合反応および成分(2
) の重合反応を進行させることにより得られた複合重合体粒子の水系エマルジョン(イ)
と、
・(メタ)アクリル系重合体とオルガノポリシロキサンとの複合粒子の水系エマルジョ
ン(ロ)および/または(メタ)アクリル系重合体粒子の水系エマルジョン(ハ)
とを含有する水系分散体が示されている。この文献5には、必要に応じ有機溶剤を用いる
ことができる旨の記載もあり、またその他の添加剤として、オキサゾリン系やヒドラジド
系の架橋剤、紫外線吸収剤、無機化合物のゾルまたはコロイドをはじめとする多種の添加
剤につき言及がある。
【0014】
しかしながら、特許文献5は、耐候性、耐汚染性、基材密着性に優れた水系分散体を提
供することを目的とするものであって、そのために上記のように特定の複合重合体粒子の
水系エマルジョン(イ)を用いると共に、それを他の水系エマルジョン(ロ)、(ハ)と
併用することを特徴としており、本願発明とはもともとの目的や構成が相違するものであ
る。
【0015】
【特許文献1】特開平5−113665号公報
【特許文献2】特開平7−325390号公報
【特許文献3】特開2001- 149845号公報
【特許文献4】特開2009−84446号公報
【特許文献5】特開2002−348431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような背景下において、上述の従来技術では解決しえなかった問題点を
解決することを課題とするものであって、すぐれた紫外線カット機能を有することはもと
より、耐候性、耐水性、基材密着性、透明性、高硬度の塗膜が形成される塗料を提供する
こと、およびその塗料を用いてガラス等の対象物に形成させた塗膜を提供することを目的
とするものである。特に、可視光線透過率が高く(対象物がガラスである場合、塗膜形成
前のガラスよりも塗膜形成後の塗膜付きのガラスの方がむしろ可視光線透過率が高い)、
高湿度下あるいは水湿潤条件下にあっても、形成した塗膜から微細な白粉が浮き出てガラ
スが曇るという問題や、施工から数年間以上を経ると塗膜の透明性が損なわれて窓ガラス
を通して外が霞んで見えるという問題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の「紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料」は、
重合体(a) のエマルジョン粒子(A) 、水性媒体(B) 、水溶性でかつカルボキシル基と反
応しうる基を有する架橋性重合体(C) 、コロイダルシリカ粒子(D) および紫外線吸収剤(E
) からなる紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料であって、
・前記の重合体(a) が、カルボキシル基含有重合体であること、
・前記の水性媒体(B) が、水(b1)および水と相溶性を有する中沸点有機溶剤(b2)からな
る混合媒体であること、
・前記のエマルジョン粒子(A) は、前記の水性媒体(B) 中に、単独でまたは会合体の状
態で分散していること、
・前記の架橋性重合体(C) は、主として前記の水性媒体(B) 中に存在していること、
・前記のコロイダルシリカ粒子(D) は、主として前記のエマルジョン粒子(A) の表層部
に存在していること、
・前記の中沸点有機溶剤(b2)は、前記のエマルジョン粒子(A) の内部に浸入しているこ
と、および、
・前記の紫外線吸収剤(E) は、前記のエマルジョン粒子(A) の内部に存在していること

を特徴とするものである。
【0018】
本発明の「紫外線カット機能を有する塗膜」は、
重合体(a) のエマルジョン粒子(A) 、水性媒体(B) 、水溶性でかつカルボキシル基と反
応しうる基を有する架橋性重合体(C) 、コロイダルシリカ粒子(D) および紫外線吸収剤(E
) からなる紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料を対象物(O) に塗布することによ
り形成された塗膜であって、
前記のエマルジョン粒子(A) は、乾燥により相互凝着粒子層(A")の状態で対象物(O) 上
に成膜されていること、
前記の架橋性重合体(C) は、前記の相互凝着粒子層(A")の各粒子の表層部および粒子間
に存在していること、
前記のコロイダルシリカ粒子(D) は、前記の相互凝着粒子層(A")の各粒子の表層部およ
び粒子間に存在していること、および、
前記の紫外線吸収剤(E) は、前記の相互凝着粒子層(A")の各粒子の内部に存在している
こと、
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
[作用および機構]
−図の説明−
図1は、本発明のエマルジョン塗料の状態を模式的に示したイメージ図である。
図2は、図1のエマルジョン塗料から形成された塗膜の構造を模式的に示したイメージ
図である。
図3は、後述の比較例1により形成された塗膜の構造を模式的に示したイメージ図であ
る。
【0020】
−エマルジョン塗料の調製−
1.本発明のエマルジョン塗料を調製するにあたっては、まず、常法によりモノマーを
水中で乳化重合することにより得たエマルジョンを準備する。このエマルジョンは、重合
体(a) のエマルジョン粒子(A) が水(b1)に分散しているものであり、必要に応じてpH調
節がなされる。
【0021】
2.そして、このエマルジョンに、水と相溶性を有する中沸点有機溶剤(b2)、水溶性で
かつカルボキシル基と反応しうる基を有する架橋性重合体(C) (典型的にはオキサゾリン
基含有重合体(C) )、コロイダルシリカ粒子(D) および紫外線吸収剤(E) を添加して、攪
拌混合する。この場合、架橋性重合体(C) は水溶液の状態で、コロイダルシリカ粒子(D)
は水または水溶性有機溶剤を媒体とする分散液の状態で、紫外線吸収剤(E) は水と相溶性
を有する中沸点有機溶剤(b2)に溶解した溶液状態で、上記のエマルジョンに添加するのが
通常である。必要に応じ、上記1、2の適宜の段階において、種々の助剤(pH調節剤、
消泡剤、造膜助剤、界面活性剤など)を添加し、また上述の水(b1)や中沸点有機溶剤(b2)
で濃度調節する。
【0022】
3.調製直後のエマルジョン塗料は、模式的には図1(A)のようになっており、水(b
1)および水と相溶性を有する中沸点有機溶剤(b2)からなる水性媒体(B) の海に、重合体(a
) のエマルジョン粒子(A) が島状に分散した形となっている。そして、水性媒体(B) の海
にはコロイダルシリカ粒子(D) が分散している。架橋性重合体(C) は水溶性ポリマーであ
るのでその水性媒体(B) の水(b1)に溶解しており、紫外線吸収剤(E) はその水性媒体(B)
の中沸点有機溶剤(b2)に溶解している。
【0023】
4.上記の各成分の添加直後あるいは上記の調製直後のエマルジョン塗料の状態は、次
のように変化していく。
4a.すなわち、紫外線吸収剤(E) を中沸点有機溶剤(b2)に溶解した溶液を上記1のエマ
ルジョンに添加すると粘度上昇が起こるが、この粘度上昇は、重合体(a) のエマルジョン
粒子(A) 中に油性である中沸点有機溶剤(b2)が(その(b2)に溶解している紫外線吸収剤(E
) と共に)浸入して、エマルジョン粒子(A) が膨潤することに起因している。エマルジョ
ン粒子(A) に関し、図1(A)に比し図1(B)の方を大径に描いているのは、後者の方
が膨潤していることを示している。ちなみに、中沸点有機溶剤(b2)の添加量が過剰になる
と、エマルジョン粒子(A) が膨張しすぎてエマルジョンの破壊が起こることがある。
4b.また、上記1のエマルジョンにコロイダルシリカ粒子(D) のコロイド液を添加して
から、予め調製しておいた紫外線吸収剤(E) の中沸点有機溶剤(b2)溶液を添加すると、粘
度の上昇幅が上記4aの場合よりも大きくなる。
4c.上記4aおよび4bのいずれの場合も、中沸点有機溶剤(b2)の浸入によるエマルジョン
粒子(A) の膨張時に、紫外線吸収剤(E) がエマルジョン粒子(A) 中に浸入する。
4d.そして、上記4bにおいては粘度の上昇幅が大きくなるという事実からも、この過程
においてコロイダルシリカ粒子(D) もエマルジョン粒子(A) 中に浸入するものの、コロイ
ダルシリカ粒子(D) は10〜20nm程度の大きさを有するため、エマルジョン粒子(A)
の内部深くにまでは浸入できず、エマルジョン粒子(A) の表層部に偏在化するものと考え
られる。そして、膨張したエマルジョン粒子(A) の表層部に存在するコロイダルシリカ粒
子(D) の存在により、膨張エマルジョン粒子(A) の粒子間に凝集力が働き、膨張+凝集力
によって系(エマルジョン)の大きな粘度上昇が発現するものと考えられる。
4e.調製直後から一定期間を経過したときのエマルジョン塗料は、模式的には図1(B
)のようになっているものと思われる。
【0024】
−塗膜構造−
1.上記のエマルジョン塗料をガラス等の対象物(O) に塗布すると、その乾燥過程にお
いてエマルジョン塗料中の水性媒体(B) の構成成分である水(b1)と中沸点有機溶剤(b2)と
が揮散していく。
2.さらに乾燥が進んでいくと、水分の蒸発と共に残存水分により生ずる表面張力によ
り、エマルジョン粒子(A) はガラス等の対象物(O) に向かって最密充填化し、粒子間の接
触点や接触面において、重合体(a) のガラス転移温度以上の温度条件においてポリマーの
モビリティ−により粒子間の凝着が進行していく。
3.そして、この乾燥過程において架橋性重合体(C) の架橋反応(典型的にはオキサゾ
リン基含有重合体(C) の開環による架橋反応)が「作動」するため、その架橋性重合体(C
) が相互凝着粒子層(A")を構成する重合体(a) のカルボキシル基と架橋反応し、またその
架橋性重合体(C) がコロイダルシリカ粒子(D) とも架橋反応し、さらには対象物(O) がガ
ラスであるときはその架橋性重合体(C) はそのガラスとも架橋反応する。その結果、ガラ
スと相互凝着粒子層(A")との界面密度および塗膜である相互凝着粒子層(A")の粒子間の凝
集密度が高まり、外部から塗膜内部を通してガラス/塗膜界面に至る水の浸透が抑制され
るようになる。このように水の浸透が抑制されることによって、高湿度あるいは水湿潤下
における塗膜成分のブリードアウトが防止され、微細な白粉が塗膜表面に浮き出る問題が
解消される。この状態が図2(A)である。
4.この図2(A)状態は経時的にさらに進行し、図2(B)のような状態になってい
き、相互凝着粒子層(A")を構成する粒子間の密着力がさらに高まり、かつ相互凝着粒子層
(A")と対象物(O) との間の密着力もさらに高まっていくため、塗膜性能が優れたものとな
るのである。すなわち、通常の塗料を用いた場合には、施工から数年以上を経ると塗膜の
透明性が損なわれ、窓ガラスを通して外が霞んで見えるようになり、その原因は塗膜中に
マイクロクラックが発生することにあると見られるが、本発明の塗膜における架橋構造は
適度のフレキシビリティーを持つため、気温変化や車の振動などに伴うガラス/塗膜の膨
張・収縮・変形の繰り返しに対して応力緩和作用を有するが故に、マイクロクラックの発
生が防止されるものと考えられる。
5.ちなみに、後述の比較例1は、先の[背景技術]の箇所においてM3法として示し
た特許文献3(本出願人の出願にかかる特開2001−149845号公報)にかかるも
のであるが、図3にイメージ図を示したように、上記の図2(A)とは塗膜構造が本質的
に相違している。
6.図2(A)、(B)においては、紫外線吸収剤(E) は相互凝着粒子層(A")を構成す
る各粒子の内部および各粒子間の界面に存在している。図3においては、エマルジョン粒
子(A) が中沸点有機溶剤(b2)によって膨潤する際、該エマルジョン粒子(A) の内部に含有
されるコロイダルシリカ粒子(D) の作用によってその膨潤度が図2の場合に比べて小さく
、そのためエマルジョン粒子(A) 内に浸入し損ねた紫外線吸収剤(E) が相互凝着粒子層(A
")を構成する各粒子間の界面にも存在している。
【0025】
[発明の効果]
1.発明によれば、可視光線の透過率が高く、かつUV―AおよびUV−Bの全波長域
に亘って紫外線の透過率が極めて低い塗膜を形成することができるので、本発明の紫外線
カット機能を有するエマルジョン塗料を住宅、店舗、オフィスビルなどの建築物、ショー
ウインドウ、自動車、電車、バス、飛行機、船などの乗り物の窓ガラス等にコーティング
して塗膜を形成することにより、太陽光による室内や車内の明るさを維持したまま、有害
な太陽紫外線による物品や内装品の褪色や物性低下を防止し、太陽光に暴露による人の顔
面や腕や手の甲などの剥き出しの部分の日焼け、しみ、シワ等の発生を防止することがで
きる。また、極めて興味深いことに、夏場の冷房負荷や冬場の暖房負荷を大きく低減する
効果を持つことが確認され、電気代削減、省エネルギー、二酸化炭素削減、さらには地球
温暖化防止に貢献するものとして注目される。さらに、コンビニエンスストア、スーパー
ストア、駅舎などのガラスや蛍光灯に塗布することにより、昆虫の飛来数を低減すること
ができる。
【0026】
2.本発明の紫外線カット塗料を用いてガラス板やプラスチック板の表面に形成された
塗膜は、耐候性、耐水性、基材密着性、透明性、硬度などが高く、長期耐久性にすぐれる

【0027】
3.従来の「紫外線吸収剤内添フィルムの貼着法」、従来の「紫外線吸収剤を内部添加
した樹脂の有機溶剤溶液のコーティング法」および従来の「コロイダルシリカ共存下の乳
化重合エマルジョンの塗布法」においては、施工から数年間を経て塗膜の透明性が損なわ
れ、窓ガラスから外が霞んで見えるようになる問題点が発生するが、本発明のエマルジョ
ン塗料を用いて塗膜を形成すれば、このような問題点を回避することができるので、本発
明は実用的に極めて有用である。
【0028】
4.従来の「コロイダルシリカ共存下の乳化重合エマルジョンの塗布法」においては、
高湿度条件下あるいは結露などの高湿潤条件下において塗膜表面に微細な白粉が浮き出る
という問題点があったが、そのような問題点が解消する。
【0029】
5.従来の「コロイダルシリカ共存下の乳化重合エマルジョンの塗布法」は、特殊な反
応工程を経て製造される樹脂エマルジョンを主原料とすることに起因して製造コストが高
くなりかつ品質管理や生産管理も煩雑なものとなるため、特殊コーティング法の範疇にと
どまり、一般汎用化することが困難であった。これに対し、本発明のエマルジョン塗料は
容易に製造可能である上、一般的かつ汎用性の高い主原料を使用するため、低コストでの
製造が可能になり、一般汎用化が可能になるので、極めて有用である。
【0030】
6.本発明のエマルジョン塗料は、水性媒体を用いるものであるため、有機溶剤による
VOC環境負荷が低く、火災安全性、作業安全性等の安全・安心の面でも優れている。
【0031】
7.本発明のエマルジョン塗料は、実質的に垂直姿勢にあるガラス等の対象物の上部の
ところに塗布液を供給し、その液を対象物表面に沿って流下させ、対象物の下側で過剰の
液を回収するフローコーティング法により、自然乾燥のみで紫外線カット機能を有する塗
膜を形成することができるので、現場施工に極めて適している。
【0032】
8.本発明の紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料をたとえば窓ガラスに塗布し
、自然乾燥させて形成した塗膜の可視光線透過率は、塗布前の窓ガラスよりも高くなるの
で、窓ガラスを通して建築物内に入る可視光の入射光量が増加し、建築物内の明るさが増
す効果が奏される。また、窓ガラスを通して見る景観や物体が塗布後は塗布前に比べて明
るくかつ鮮明なものになるので、タワービル、庭園美術館(窓ガラスを通して庭を眺望す
る美術館)、博物館、水族館などの施設の窓ガラスに適用する塗料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料]
本発明の紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料は、重合体(a) のエマルジョン粒
子(A) 、水性媒体(B) 、水溶性でかつカルボキシル基と反応しうる基を有する架橋性重合
体(C) 、コロイダルシリカ粒子(D) および紫外線吸収剤(E) からなる。
【0034】
[重合体(a) のエマルジョン粒子(A) ]
本発明においては、重合体(a) のエマルジョン粒子(A) における重合体(a) として、カ
ルボキシル基含有重合体を用いる。カルボキシル基含有重合体としては種々の重合体が使
用可能であるが、特に好適なものは、カルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)とカ
ルボキシル基を有するウレタン系重合体(a2)である。前者のカルボキシル基を有するアク
リル系重合体(a1)については、それ単独で用いることが多く、他のカルボキシル基含有重
合体と併用する態様も有用である。後者のカルボキシル基を有するウレタン系重合体(a2)
は、それ単独で用いることもできるが、後述のように物性バランスの観点から、前者のカ
ルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)と併用する方が実用的である。以下において
は、まずカルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)について述べ、ついでカルボキシ
ル基を有するウレタン系重合体(a2)について述べることにする。なお、上記のカルボキシ
ル基含有重合体に対し30重量%程度以内(特に20重量%程度以内、さらには15重量
%程度以内)の少量であれば、重合体(a) の一部としてカルボキシル基を含まない重合体
(アクリル系重合体、ウレタン系重合体、その他の重合体)を併用することも許容される

【0035】
[カルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)]
カルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルに代表
されるラジカル重合性の(メタ)アクリレート単量体とカルボキシル基含有不飽和単量体
とを共重合することにより得られ、必要に応じこれらの単量体のほかに、これらの単量体
と共重合可能な他の単量体を共重合することもできる。(なお、本明細書においては、た
とえばアクリル酸とメタアクリル酸とを合わせて(メタ)アクリル酸と表記し、アクリル
酸エステルとメタアクリル酸エステルとを合わせて(メタ)アクリル酸エステルと表記す
ることがある。)
【0036】
((メタ)アクリレート単量体)
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば次のものがあげられる。これ
らの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
−1−
アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル。たとえば、(
メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、
(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2
−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエ
ステルなど。
−2−
エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アク
リレート。たとえば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリ
ル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)
アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メト
キシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールなど。
−3−
プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)
アクリレート。たとえば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)
アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキ
シ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレング
リコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコールなど。
−4−
アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル。た
とえば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ
プロピルなど。
−5−
エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリ
レート。たとえば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジ
エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリ
ル酸テトラエチレングリコールなど。
−6−
上記以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、ト
リメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0037】
(カルボキシル基含有不飽和単量体)
上記カルボキシル基含有不飽和単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、
クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、
マレイン酸、マレイン酸モノエステルなどがあげられ、特にアクリル酸またはメタクリル
酸の使用が好ましい。これらのカルボキシル基含有不飽和単量体は、単独で用いても2種
以上を併用してもよい。
【0038】
(他の単量体)
上に述べた(メタ)アクリレート単量体およびカルボキシル基含有不飽和単量体のほか
、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を用いることもできる。そのような他の単量
体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブ
トキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;酢酸ビニル
、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル系単量体;ビニルピロ
リドン等のN−ビニル誘導体系単量体;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン等のビ
ニルケトン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量
スチレン、ビニルトルエン(つまりα−メチルスチレン)等の芳香族単量体:などが
例示される。
【0039】
(カルボキシル基の濃度)
上記のカルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)のカルボキシル基の濃度は、酸価
換算で、1〜50mg−KOH/gの範囲内にあることが好ましい。より好ましい範囲は
5〜30mg−KOH/gである。このようなカルボキシル基濃度のアクリル系重合体(a
1)を用いることにより、後述のオキサゾリン基含有重合体(C) との間でカルボキシル基と
オキサゾリン基とが反応して塗膜中に三次元架橋構造が形成され、耐候性、耐水性、ガラ
ス等との密着性、透明性、硬度などの高い特性を持つ塗膜の形成が可能となり、本発明の
優れた効果が発現する。
【0040】
(乳化重合)
上記のカルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)のエマルジョンは、典型的には、
上述の(メタ)アクリレート単量体、カルボキシル基含有不飽和単量体および必要に応じ
てこれらの単量体と共重合可能な他の単量体を乳化重合すること、すなわち、水媒体中で
界面活性剤を用いて乳化した後、重合開始剤の存在下にラジカル重合することによって、
調製することができる。ここで界面活性剤としては、上記の各単量体成分を水媒体中に乳
化させ得る機能を持つものであれば特に限定されず、たとえば、イオン性または非イオン
性の反応性界面活性剤、イオン性または非イオン性の非反応性界面活性剤が単独または併
用して用いられるが、耐水性の面からは反応性界面活性剤を用いる方が好ましい。
【0041】
上記のカルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)のエマルジョンとしては、後述の
コロイダルシリカ粒子(D) の「非共存下」でエマルジョン重合して得られたもの(非共存
下での重合品)が用いられる。というのは、コロイダルシリカ粒子(D) の「共存下」でエ
マルジョン重合して得られたもの(共存下での重合品)を用いたときは、本発明の構造を
有する塗料および塗膜が得られないからである。ただし、上記の「非共存下での重合品」
に対する上記の「共存下での重合品」の配合量が本発明の趣旨を損なわない程度の少量で
あれば、「共存下での重合品」の併用は許容される。なお、上記の「共存下での重合品」
は、一般汎用化したエマルジョン重合法とは異なる特殊な重合法を採用するものであるた
め、製造コストが高くなり、また品質管理や生産管理も煩雑なものになるという不利もあ
る。
【0042】
[カルボキシル基を有するウレタン系重合体(a2)]
先にも述べたように、カルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)は、これをカルボ
キシル基を有するウレタン系重合体(a2)と併用することも好ましい。カルボキシル基を有
するウレタン系重合体(a2)の併用により、塗膜の強靭性が向上するからである。両者を併
用する場合は、前者のカルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)100重量部に対し
て後者のカルボキシル基を有するウレタン系重合体(a2)を20重量部以下用いることが多
い。というのは、カルボキシル基を有するウレタン系重合体(a2)を20重量部を超えて併
用すると、塗膜の硬度が低下する傾向があるからである。
【0043】
一般に安定なウレタン系重合体エマルジョンを製造するためには、
(1)ウレタン系重合体を界面活性剤を用いて強制乳化する方法、
(2)ウレタン系重合体の製造に際しオキシエチレン骨格を導入して自己乳化性を付与
する方法、あるいは、
(3)ウレタン系重合体の製造に際し分子中にカチオン性基またはアニオン性基を導入
し、それらのイオン性基を中和して自己乳化性を付与する方法、
などの方法が採用される。
【0044】
これらの中でも特に(3)の方法により得られるものが、耐水性などの物性が優れかつ
エマルジョンの保存安定性が優れるため好ましい。(3)の方法によりウレタン系重合体
(a2)のエマルジョンを取得するときは、有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B
)および分子中にカルボキシル基またはスルホン酸基を有するポリオールまたは分子中に
塩基性基を有するポリオール(C)を、反応系に不活性でかつ水との親和性の大きい溶媒
中でウレタン化反応させてプレポリマーとし、ついでそのプレポリマーを中和し、さらに
鎖延長し、次に水を加えてエマルジョン化すればよい。
【0045】
さて、本発明におけるカルボキシル基を有するウレタン系重合体(a2)のエマルジョンを
製造するにあたっては、たとえば、上記の一般的なウレタン系重合体エマルジョンの製造
方法において、上記の有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)およびポリオー
ル(C)に加えて、分子中にカルボキシル基を有するポリオール(D)を必須成分として
所定量用いればよい。このようなポリオール(D)の具体例としては、2,2−ジメチロ
ールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリ
シン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニンなどをあげることができる。
【0046】
上記のカルボキシル基を有するウレタン系重合体(a2)のカルボキシル基の濃度は、酸価
換算で、1〜50mg−KOH/gの範囲内にあるかことが好ましい。より好ましい範囲
は5〜30mg−KOH/gである。このようなカルボキシル基濃度のウレタン系重合体
(a2)を用いることにより、「そのウレタン系重合体(a2)のカルボキシル基」と「後述の水
溶性でかつカルボキシル基と反応しうる基を有する架橋性重合体(C) の反応基」とが反応
して、塗膜中に三次元架橋構造が形成される。その結果、耐候性、耐水性、ガラス等との
密着性、透明性、硬度などの点で高い特性を持つ塗膜の形成が可能となり、本発明の優れ
た効果が発現する。
【0047】
上記のウレタン系重合体(a2)のエマルジョンとしては、市販されているものをそのまま
使用することが可能であり、たとえば、旭電化工業株式会社製の「アデカボンタイター」
シリーズ、三井東圧化学株式会社製の「オレスター」シリーズ、大日本インキ化学工業株
式会社製の「ボンディック」シリーズや「ハイドラン」シリーズ、バイエル社製の「イン
プラニール」シリーズ、日本ソフラン株式会社製の「ソフラネート」シリーズ、花王株式
会社製の「ポイズ」シリーズ、三洋化成工業株式会社製の「サンプレン」シリーズ、保土
谷化学工業株式会社製の「アイゼラックス」シリーズ、第一工業製薬株式会社製の「スー
パーフレックス」シリーズ、ゼネカ株式会社製の「ネオレッツ」シリーズなどの中から、
所定のカルボキシル基含有ウレタン系重合体(a2)のエマルジョンを選んで用いることがで
きる。
【0048】
[水性媒体(B) ]
本発明における水性媒体(B) は、水(b1)および水(b1)と相溶性を有する中沸点有機溶剤
(b2)からなる。本発明の塗料における固形分濃度は、一般のエマルジョン塗料と同様に、
後述のように20〜50重量%程度に設定するのが通常であるので、塗料に占める水性媒
体(B) の割合は概ね50〜80重量%程度になる。
【0049】
[中沸点有機溶剤(b2)]
ここで、水性媒体(B) のうちの中沸点有機溶剤(b2)としては、沸点が150〜250℃
の水溶性有機溶剤が好適に用いられる。水(b1)と共に中沸点有機溶剤(b2)を用いることは
、先に述べた重合体(a) のエマルジョン粒子(A) の内部に後述の紫外線吸収剤(E) を含有
させることを可能にし、かつ塗膜に優れた紫外線カット機能とその紫外線カット機能の持
続性(耐久性)を付与する上で好ましいことである。沸点が150℃未満の水溶性有機溶
剤を用いるときは、塗料の開缶後の保存性フローコーティング法で塗料を回収再使用する
ときに蒸発しやすい。一方、沸点が250℃を越える水溶性有機溶剤を用いるときは、常
温乾燥の場合は塗膜からその有機溶剤が抜けにくく、乾燥するまでの間、塗膜表面が柔軟
になって汚れやすくなるという不利がある。しかしながら、少量割合であれば、沸点が1
50〜250℃の範囲の水溶性有機溶剤(中沸点有機溶剤(b2))と共に、沸点がその範囲
から外れる水溶性有機溶剤を併用しても大きな支障とはならない。
【0050】
上記の沸点が150〜250℃の水溶性中沸点有機溶剤(b2)の好ましい例は、
・エチレングリコールモノn−ブチルエーテル(つまりブチルセロソルブ、沸点171
℃)、
・エチレングリコールモノt−ブチルエーテル(沸点152℃)、
・3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(沸点174℃)、
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(つまりカルビトール、沸点195℃)、
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(つまりブチルカルビトール、沸点230
℃)、
・エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(つまりセロソルブアセテート、
沸点156℃)、
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(つまりブチルセロソルブアセテ
ート、沸点192℃)、
・ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(つまりカルビトールアセテー
ト、沸点217℃)、
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(つまりブチルカルビトールア
セテート、沸点247℃)、
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点230℃)、
・ダイアセトンアルコール(沸点169℃)、
・1−メチル−2−ピロリドン(つまりN−メチルピロリドン、沸点202℃)、
・γ−ブチロラクトン(沸点204℃)、
・シクロヘキサノン(つまりアノン、沸点156℃)、
・メチルシクロヘキサノン(沸点170℃)、
・イソホロン(沸点215℃)
などをあげることができる。
【0051】
[架橋性重合体(C) ]
本発明の紫外線カット機能を有する塗料には、水溶性でかつカルボキシル基と反応しう
る基を有する架橋性重合体(C) が含有されていることが必要である。そのような架橋性重
合体(C) としては、オキサゾリン基含有重合体、カルボジイミド基含有重合体、イソシア
ネート基含有重合体、エポキシ基含有重合体などがあげられるが、オキサゾリン基含有重
合体が最も重要である。このうちオキサゾリン基含有重合体としては、下記の一般式(1)
で示されるオキサゾリン基を有する重合体が用いられる。
【0052】
【化1】

【0053】
(ただし、R1 〜R4 は、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、フェニル基
または置換フェニル基を示す。R1 〜R4 のそれぞれは、互いに同一であってもよく、互
いに異なっていてもよい。R1 〜R4 が炭素原子を含むときは、その炭素数は1〜10で
ある。)
【0054】
このようなオキサゾリン基含有重合体は、公知または市販のものを使用することができ
、また公知の製法によって得られるものも使用することができる。たとえば、単量体とし
て付加重合性オキサゾリンを1種または2種以上含む原料を重合することによって得られ
る重合体を、オキサゾリン基含有重合体として用いることができる。
【0055】
上記の付加重合性オキサゾリンとしては、たとえば、下記一般式(2) で示される化合物
を用いることができる。
【0056】
【化2】

【0057】
(ただし、R1 〜R4 は、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アラルキル基、フェニル基
または置換フェニル基を示す。R1 〜R4 のそれぞれは、互いに同一であってもよく、互
いに異なっていてもよい。R1 〜R4 が炭素原子を含むときは、その炭素数は1〜10で
ある。R5 は、付加重合性不飽和結合を有する非環状有機基を示す。)
【0058】
上記の付加重合性オキサゾリンとしては、たとえば、2−ビニル−2−オキサゾリン、
2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリ
ン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オ
キサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどがあげられ、2種
以上を併用することもできる。
【0059】
このようなオキサゾリン基含有重合体は、水溶性タイプ、エマルジョンタイプ、固形タ
イプ等のいずれであってもよいが、特に水溶性タイプのものを好適に用いることができる
。このような水溶性タイプのオキサゾリン基含有重合体は、市販品を使用することができ
る。たとえば、日本触媒株式会社製の製品名「エポクロスWS−500、エポクロスWS
−700」などを用いることができる。
【0060】
紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料中の重合体(a) のエマルジョン粒子(A) に
対する上記の架橋性重合体(C) の含有量は、架橋性重合体(C) がオキサゾリン基含有重合
体であるときを例にとると、重合体(a) のカルボキシル基の一部または全部と反応する当
量またはそれ以上のオキサゾリン基を供給できる量であればよく、重合体(a) 100重量
部に対し1〜15重量部であることが好ましい。より好ましい範囲は2〜10重量部であ
る。オキサゾリン基含有重合体の含有量が余りに少ないときには、所期の塗膜特性の向上
効果が得られず、一方、オキサゾリン基含有重合体の含有量が余りに多いときには、塗膜
特性向上効果はもはや一定以上には上がらず、むしろ耐候性や耐水性が不十分になる傾向
があり、またコスト的にも不利になる。
【0061】
[コロイダルシリカ粒子(D) ]
本発明の紫外線カット機能を有する塗料には、コロイダルシリカ粒子(D) が配合されて
いることが必要である。コロイダルシリカとは、二酸化ケイ素を基本単位とするシリカの
水または水溶性溶媒の分散体である。本発明において用いるコロイダルシリカ粒子(D) の
平均粒子径は、好ましくは5〜120nm、より好ましくは10〜80nmである。粒子
径が5nm以上で組成物の貯蔵安定性が良く、120nm以下では耐水白化性(耐水性に
優れるので水による被膜の白化が起こりにくい)が良いからである。上記範囲の粒子径の
コロイダルシリカ粒子(D) は、水性分散液の状態で、酸性、塩基性のいずれであっても用
いることができる。
【0062】
水を分散媒体とする酸性のコロイダルシリカとしては、たとえば、市販品として日産化
学工業株式会社製の「スノーテックス−O、スノーテックス−OL」、旭電化工業株式会
社製の「アデライトAT−20Q」、クラリアントジャパン株式会社製の「クレボゾール
20H12、クレボゾール30CAL25」などを利用することができる。(「スノーテ
ックス」、「アデライト」、「クレボゾール」は登録商標である。)
【0063】
塩基性のコロイダルシリカとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミ
ンの添加で安定化したシリカがあり、たとえば、日産化学工業株式会社製の「スノーテッ
クス−20、スノーテックス−30、スノーテックス−C、スノーテックス−C30、ス
ノーテックス−CM40、スノーテックス−N、スノーテックス−N30、スノーテック
ス−K、スノーテックス−XL、スノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、スノー
テックスPS−M、スノーテックスPS−L」など、旭電化工業株式会社製の「アデライ
トAT−20、アデライトAT−30、アデライトAT−20N、アデライトAT−30
N、アデライトAT−20A、アデライトAT−30A、アデライトAT−40、アデラ
イトAT−50」など、クラリアントジャパン株式会社製の「クレボゾール30R9、ク
レボゾール30R50、クレボゾール50R50」など、デュポン社製の「ルドックス(
商標)HS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、ルドックスSM−30」な
どをあげることができる。(「スノーテックス」、「アデライト」、「クレボゾール」、
「ルドックス」は登録商標である。)
【0064】
また、水溶性溶剤を分散媒体とするコロイダルシリカとしては、たとえば、日産化学工
業株式会社製の「MA−ST−M(粒子径が20〜25nmのメタノール分散タイプ)、
IPA−ST(粒子径が10〜15nmのイソプロピルアルコール分散タイプ)、EG−
ST(粒子径が10〜15nmのエチレングリコール分散タイプ)、EG−ST−ZL(
粒子径が70〜100nmのエチレングリコール分散タイプ)、NPC−ST(粒子径が
10〜15nmのエチレングリコールモノプロピルエーテール分散タイプ)」などをあげ
ることができる。
【0065】
上記のコロイダルシリカの中では、耐水性、耐候性、密着性、透明性、硬度の点より、
「スノーテックスC」(「スノーテックス」は登録商標)を特に好ましいものとしてあげ
ることができる。
【0066】
上記のコロイダルシリカは、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。また、シリカ以外の少量成分として、アルミナ、アルミン酸ナトリウムなどを含んで
いてもよい。さらに、コロイダルシリカは、安定剤として無機塩基(水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなど)や有機塩基(テトラメチルアンモニ
ウム塩など)を含んでいてもよい。
【0067】
紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料中の重合体(a) のエマルジョン粒子(A) に
対するコロイダルシリカ粒子(D) 含有量は、重合体(a) 100重量部に対し5〜50重量
部であることが好ましい。より好ましい範囲は10〜40重量部である。コロイダルシリ
カ粒子(D) 含有量が余りに少ないときには、塗膜の耐水性、ガラス等の対象物(O) に対す
る塗膜の密着性、塗膜の硬度等が不十分になる。一方、コロイダルシリカ粒子(D) の含有
量が余りに多いときには、ガラス等の対象物(O) に対する塗膜の密着性、塗膜の透明性、
均一で表面平滑性に優れた塗膜の形成性などの点で不利になる。
【0068】
[紫外線吸収剤(E) ]
本発明の紫外線カット機能を有する塗料には、紫外線吸収剤(E) が含有されていること
も必要である。紫外線吸収剤(E) としては、波長280〜320nmの紫外線B(UV−
B) および波長320〜400nmの紫外線A(UV−A)を吸収するものであれば特に
限定されず、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤
の1種または2種以上を好ましく使用することができる。
【0069】
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、たとえば、2,4−ジヒドロキシベンゾフ
ェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ
ベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン
、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベン
ジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェ
ニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒ
ドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキ
シベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキ
シ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリル
オキシベンゾフェノンなどをあげることができる。
【0070】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、たとえば、2−(2’−ヒドロキシ−
5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert
−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t
ert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−
オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert
−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス
(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、3−〔3−tert
−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プ
ロピオン酸メチル/ポリエチレングリコール300の縮合物(チバ・スペシャルティ・ケ
ミカルズ株式会社製、製品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(
2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニ
ル〕プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、製品名:TINU
VIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾト
リアゾール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、製品名:TINUVIN5
71)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−
5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−
アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェ
ニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”
−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2
,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベン
ゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル
)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルテ
ィ・ケミカルズ株式会社製、製品名:TINUVIN900)などをあげることができる

【0071】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、たとえば、TINUVIN400(製品名、チバ
・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)をあげることができる。
【0072】
上記した紫外線吸収剤(E) の中では、紫外線吸収性に優れると共に容易に水性エマルジ
ョン化ができる点で、3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−
2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオン酸メチル/ポリエチレングリコール3
00の縮合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、製品名:TINUVIN
1130)をなかでも特に好ましいものとしてあげることができる。
【0073】
紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料中の重合体(a) のエマルジョン粒子(A) に
対する紫外線吸収剤(E) の含有量は、重合体(a) 100重量部に対し5〜40重量部であ
ることが好ましい。より好ましい範囲は10〜30重量部である。紫外線吸収剤(E) の含
有量が余りに少ないときには、所期の紫外線カットの効果が得られない。一方、紫外線吸
収剤(E) の含有量が余りに多いときには、紫外線カット効果はもはや一定以上には上がら
ず、かえって表面平滑性に優れた均一な塗膜形成が困難になり、またコスト的に不利にな
る。
【0074】
[紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料]
紫外線カット機能を有する本発明のエマルジョン塗料は、すでに述べたように、重合体
(a) のエマルジョン粒子(A) 、水性媒体(B) 、水溶性でかつカルボキシル基と反応しうる
基を有する架橋性重合体(C) (特にオキサゾリン基含有重合体)、コロイダルシリカ粒子
(D) および紫外線吸収剤(E) からなる。
【0075】
上記エマルジョン塗料には、必要に応じ、増粘剤、低温安定剤、造膜助剤、垂れ防止剤
、界面活性剤、消泡剤、着色剤などの添加剤を含有させることができる。着色剤を含有さ
せるときは、透明性が低下しないように、有機系の着色剤(染料や有機顔料)を選択する
ことが望ましい。
【0076】
上記エマルジョン塗料中の固形分濃度は、塗料の全重量に対して、通常は20〜50重
量%、好ましくは25〜45重量%、殊に30〜40重量%に設定される。固形分濃度が
余りに低いときには、塗膜厚みが過度に薄くなるため十分な紫外線カット効果が得られな
くなり、またガラス等の対象物(O) の全面に塗り残しなく被覆することが困難になる。一
方、固形分濃度が余りに高いときには、液の流動性が悪化するため、均一で表面平滑な塗
膜の形成が困難になる。
【0077】
上記エマルジョン塗料の粘度は、流動性の良い範囲、たとえばアネスト岩田株式会社製
の粘度カップNK‐2を用いて25℃で測定した粘度が5〜15秒、殊に7〜11秒の範
囲になるように設定することが好ましい。
【0078】
上記エマルジョン塗料のpH値は、pHメーターを用いて25℃で測定した値が 8.5〜
9.0 の弱アルカリ性の範囲になるように調整されていることが、該塗料の保存安定性を確
保する上から好ましい。そのようなpHに調整することによって、先に述べたオキサゾリ
ン基含有重合体(C) の反応とエマルジョンの凝集破壊とが同時に抑制され、塗料液の長期
保存が可能になる。pH値の上記範囲への調整は、塗料中へのアンモニアおよび/または
アミン類の配合により行うことが好ましい。
【0079】
[塗布の対象物(O) ]
本発明の紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料を適用する対象物(O) は、主とし
て透視性を有する対象物である。透視性を有する対象物の代表例は、住宅、店舗、オフィ
スビルなどの建築物の窓ガラス等のガラス;ショーウインドウのガラス;自動車、電車、
バス、飛行機、船などの乗り物の窓ガラス等のガラスであり、そのほか、蛍光灯等のラン
プのガラス、ランプからの光を拡散させる乳白プラスチックス板、採光用の透明プラスチ
ックス建材、農業用ハウスのフィルムなどにも適用可能である。また、透視性を有する対
象物に限らず、すりガラス面に適用したり、塗装面、壁紙をはじめ、変褪色や老化の抑制
ないし防止が要求される各種の対象物に対しても適用できる。
【0080】
[塗装方法]
本発明のエマルジョン塗料の塗膜を対象物(O) の表面に形成するに際しては、フローコ
ーティング法が好適に採用され、そのほか、スプレー法、ハケ塗り法、ロール塗り法など
も採用される。このうちフローコーティング法とは、対象物(O) の表面の上部のところに
上記のエマルジョン塗料からなる塗布液を供給し、その液を対象物(O) の表面に沿って流
下させ、対象物(O) の下側で過剰の液を回収して、必要に応じ再度対象物(O) の上部に供
給する方法である。
【0081】
上記のフローコーティング法、スプレー法、ハケ塗り法、ロール塗り法等の方法で対象
物(O) の表面に塗布された上記のエマルジョン塗料は、その塗布膜を自然乾燥および/ま
たは強制乾燥させることによって、対象物(O) の表面に均一透明でかつ密着性に優れた塗
膜を容易に形成することができる。
【0082】
本発明によれば、フローコーティング法により、自然乾燥のみによっても塗膜を形成す
ることができるので、現場施工に極めて適している。このことは現場施工における強制乾
燥の実施を排除するものではなく、乾燥速度を速めたい場合などには赤外線ランプ照射等
による強制乾燥を必要に応じて実施することができる。塗膜の厚みは、特に限定はないも
のの、1〜50μm、殊に8〜30μmとすることが多い。
【実施例】
【0083】
次に、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。各測定値は以下の方法
によって測定される値である。
【0084】
1.エマルジョン塗料からなる塗布液の評価
(1)粘度
温度25℃に温度調節し、アネスト岩田株式会社製の粘度カップNK‐2を用いて測定
する。
(2)pH
温度25℃に温度調節し、pHメーターで測定する。
(3)固形分濃度
アルミ箔皿を精秤後、試料を約5g程度入れて精秤する。直ちに150℃の乾燥機に入
れ、1時間後に取り出してデシケーター中で5分間冷却後、デシケーターから取り出し、
速やかに精秤し、次式により固形分濃度を計算する。(W1は乾燥前のアルミ箔皿込みの重
量、W2は乾燥後のアルミ箔皿込みの重量、W0はアルミ箔皿の重量である。)
固形分濃度 (wt %) = 100 - 100×((W1-W0)-(W2-W0))/(W1-W0)
= 100 - 100×(W1-W2)/(W1-W0)
【0085】
2.塗膜の評価
(1)密着性
エマルジョン塗料からなる塗布液を清浄なスライドガラス上にフローコート後、自然乾
燥して形成した膜厚20μmの無色透明の塗膜を1mm幅で100目クロスカットし、そ
の上に透明感圧付着テープ(セロハン粘着テープ)を貼り付けた。その後、この透明感圧
付着テープを剥離し、その剥離度合いを調べることによって塗膜の密着性を評価した(ク
ロスカット試験)。JIS K5600−8−3試験結果の分類表により、クロスカット
部分の状態が分類1より良いものを「合格」とした。
(2)耐水性
清浄なスライドガラス上に膜厚20μmの無色透明被膜をコートしたサンプルを作製し
、24時間以上自然乾燥する。該サンプルの下半分を垂直に常温水中に1週間浸漬し、サ
ンプルの水面付近での白化、塗膜荒れ等によって耐水性の度合いを評価した。白化、被膜
荒れ等が認められない場合を「合格」とした。
(3)可視光透過率
塗膜付きのスライドガラスに対する可視光透過率を、JIS R3106 に従って分光測光器(
大塚電子株式会社製のMCPD- 2000)を用いて測定した分光透過率(波長範囲38
0〜780nm)から計算した。
(4)紫外線透過量
塗膜形成後のガラス面に対する紫外線透過量を、ミノルタ紫外線強度計「UM−36」
を用いて測定した。
(5)硬度
硬度は、JIS K5400に規定する鉛筆引っかき試験機法により測定した。
【0086】
実施例1
カルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)からなるエマルジョンとして、酸価10
mg−KOH/gのアクリル酸エステル共重合体からなるエマルジョン(ニチゴー・モビ
ニール株式会社製、製品名モビニール1711、pH8.5、固形分濃度47重量%、平
均粒子径200nm)50部を用い、28重量%アンモニア水0.1重量部を用い、粒子
径10〜20nmのコロイダルシリカ粒子(D) として日産化学株式会社製の製品名スノー
テックスC(SiO2 20重量%、pH8.8)32重量部を用い、紫外線吸収剤(E) と
してTINUVIN1130(製品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、
3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒド
ロキシフェニル〕プロピオン酸メチル/ポリエチレングリコール300の縮合物)4重量
部を用い、架橋性重合体(C) であるオキサゾリン基含有重合体として水溶性のエポクロス
WS−700(製品名、日本触媒株式会社製、25重量%濃度の水溶液、pH8、オキサ
ゾリン価220g solid/eq.) 4.5重量部(上記アクリル樹脂のカルボキシ
ル基に対して1.22倍当量に相当)を用い、水と相溶する中沸点有機溶剤(b2)としてエ
チレングリコールモノn−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ、沸点171℃)2.5重
量部を用い、および水(b1)3.8重量部を少量の消泡剤、造膜助剤および非イオン性界面
活性剤の存在下に、室温で攪拌混合した。このようにして得られた塗料の性状を表1に、
その塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した塗膜の評価結果を表2に示す。
【0087】
実施例2
実施例1において用いたカルボキシル基を有するアクリル重合体からなるエマルジョン
の使用量を42重量部に変更すると共に、新たに水系ウレタン樹脂エマルジョンとして酸
価10mg−KOH/gのアデカボンタイターHUX−401(アデカ株式会社製、pH
8.0、固形分濃度37重量%、平均粒子径200nm)9重量部を使用したほかは実施
例1と同様に行った。このようにして得られた塗料の性状を表1に、その塗料を用いて未
加工スライドガラス上に形成した塗膜の評価結果を表2に示す。
【0088】
比較例1
実施例1で用いたカルボキシル基を有するアクリル重合体からなるエマルジョンとコロ
イダルシリカ粒子とに代えて、アクリル共重合体エマルジョン製造のためのエマルジョン
重合時に粒子径10〜20nmのコロイダルシリカ粒子を共存させて製造した、コロイダ
ルシリカ粒子を含有するアクリル樹脂エマルジョン82重量部(アクリル重合体23.5
重量部とコロイダルシリカ粒子6.4重量部とを含有、固形分濃度36.5重量%)を使
用したほかは実施例1と同様に行った。このようにして得られた塗料の性状を表1に、そ
の塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した塗膜の評価結果を表2に示す。
【0089】
比較例2
実施例1において使用したコロイダルシリカ粒子を使用しないと共に水の使用量を5.
2重量部に変更したほかは実施例1と同様に行った。このようにして得られた塗料の性状
を表1に、その塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した塗膜の評価結果を表2に
示す。
【0090】
参考例
上記の実施例1、2および比較例1、2の塗膜評価用に使用した未加工スライドガラス
につき、その可視光透過率と紫外線透過率とを測定した。結果を表2に示す。
【0091】
[表1]

粘度(秒) pH 固形分濃度 (wt%)
実施例1 9.1 8.7 36.5
実施例2 8.9 8.8 35.8
比較例1 9.2 8.6 36.0
比較例2 9.6 8.4 34.3

【0092】
[表2]

密着度 耐水性 可視光透過率 紫外線透過率 硬度
実施例1 合格 合格 90.5 % 0.8 % 3H
実施例2 合格 合格 91.3 % 0.7 % 3H
比較例1 合格 合格 89.1 % 1.0 % 2H-3H
比較例2 不合格 不合格 89.2 % 0.9 % 2H
参考例 − − 89.4 % 56.4 % −

【0093】
表2の結果から、実施例1、2のエマルジョン塗料を用いて形成された塗膜付きのスラ
イドガラスの可視光透過率は、参考例の未加工スライドガラスの可視光透過率よりもむし
ろ高いことがわかる。これに対し、比較例1、2のエマルジョン塗料を用いて形成された
塗膜付きのスライドガラスの可視光透過率は、参考例の未加工スライドガラスの可視光透
過率よりも低いことがわかる。
【0094】
また、表2の結果から、実施例1、2のエマルジョン塗料を用いて形成された塗膜は、
密着度、耐水性、硬度、紫外線カット性の全てが良好であり、比較例1、2の塗膜に比し
確実に良好であることがわかる。
【0095】
[実施例3]
上記の実施例1,2および比較例1,2で調製した組成物からなる4種類の塗工液(エ
マルジョン塗料)を、出願人の事務所の1階の広場に面した南向きの窓ガラス4枚(各、
縦105cm、横77cm)の1枚ずつに室内側からフローコーティング法により塗布し
、自然乾燥して膜厚20μmの無色透明の塗膜を形成した。
【0096】
2008年4月から2009年3月までの1年間に、窓ガラスの室内側に形成してある
塗膜表面に白粉が発生したケースがあったため、水で湿めらせたワイピングクロスと乾い
たワイピングクロスとで拭き掃除した。上記の1年間における拭き掃除の回数は、実施例
1,2の塗工液で施工した窓ガラスについては0回であったのに対し、比較例1の塗工液
で施工した窓ガラスについては10回、比較例2の塗工液で施工した窓ガラスについては
7回の窓ガラス掃除作業が必要であった。
【0097】
[実施例4]
従来法の塗膜形成施工においては、施工後数年以上を経た建築物の窓ガラスの透明性が
損なわれ、その窓ガラスを通して外が霞んで見える現象を生ずる。この経時的な霞み進行
現象に着目し、乗用車の窓ガラスに薄い塗膜を形成して経過を見る試験を試みた。乗用車
の窓ガラスを利用すれば、建築物の窓ガラスに比し塗膜の劣化が促進されると考えたから
である。
【0098】
そこで、モニター10名を選び、乗用車の運転席側と助手席側の窓ガラスに対し、一方
の側の車内側には実施例1の塗工液、他方の側の車内側には比較例1の塗工液を、それぞ
れアットランダムにかつ膜厚が10μmになるように塗布して、塗膜を形成した。施工か
ら2年経過までの間に、10名のうち8名のモニターの乗用車においては、比較例1の塗
工液で施工した側の窓ガラスに霞み現象の発生が認められたが、実施例1の塗工液で施工
した側の窓ガラスにおける霞み現象の発生は皆無であった。なお、他の2名のモニターの
乗用車においてはどちらの側の窓ガラスにも霞み現象の発生が認められなかったが、これ
は車の使用頻度が少なかったためと思われる。
【0099】
紫外線透過率に関しては、上記のいずれの施工塗膜でも2年後の紫外線透過率が10%
以下(紫外線カット率90%以上)であって塗工当初の高紫外線カット機能が維持されて
おり、モニターのコメントでは日焼け防止効果と燃費削減効果とがあることが裏付けられ
た。
【0100】
[実施例5]
実施例1において紫外線吸収剤(E) として使用したTINUVIN1130に代えて同
じ重量部のSEESORB102(製品名、シプロ化成株式会社製、2−ヒドロキシ−4
−n−オクトキシベンゾフェノン)を用いたほかは実施例1と同様に行った。このように
して得られた塗料の性状を表3に、その塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した
塗膜の評価結果を表4に示す。
【0101】
[実施例6]
実施例1において水と相溶する中沸点有機溶剤(b2)として使用したエチレングリコール
モノ−n−ブチルエーテルに代えて同じ重量部の3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ
ール(沸点174℃)を用いたほかは実施例1と同様に行った。このようにして得られた
塗料の性状を表3に、その塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した塗膜の評価結
果を表4に示す。
【0102】
[実施例7]
実施例1において架橋性重合体(C) であるオキサゾリン基含有重合体として使用したエ
ポクロスWS−700に4.5重量部に代えてエポクロスWS−500(製品名、日本触
媒株式会社製、39重量%濃度の水/1−メトキシ−2−プロパノール溶液、pH8. 5
、オキサゾリン価220g solid/eq.) 2.9重量部(上記アクリル樹脂のカ
ルボキシル基に対して1.23倍当量に相当)を用いたほかは実施例1と同様に行った。
このようにして得られた塗料の性状を表3に、その塗料を用いて未加工スライドガラス上
に形成した塗膜の評価結果を表4に示す。
【0103】
[実施例8]
実施例2において紫外線吸収剤(E) として使用したTINUVIN1130に代えて同
じ重量部のSEESORB102(製品名、シプロ化成株式会社製、2−ヒドロキシ−4
−n−オクトキシベンゾフェノン)を用いたほかは実施例2と同様に行った。このように
して得られた塗料の性状を表3に、その塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した
塗膜の評価結果を表4に示す。
【0104】
[実施例9]
実施例2において水と相溶する中沸点有機溶剤(b2)として使用したエチレングリコール
モノ−n−ブチルエーテルに代えて同じ重量部の3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノ
ール(沸点174℃)を用いたほかは実施例2と同様に行った。このようにして得られた
塗料の性状を表3に、その塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した塗膜の評価結
果を表4に示す。
【0105】
[実施例10]
実施例2において架橋性重合体(C) であるオキサゾリン基含有重合体として使用したエ
ポクロスWS−700 4.5重量部に代えてエポクロスWS−500 2.9重量部を
用いたほかは実施例2と同様に行った。このようにして得られた塗料の性状を表3に、そ
の塗料を用いて未加工スライドガラス上に形成した塗膜の評価結果を表4に示す。
【0106】
[表3]

粘度(秒) pH 固形分濃度 (wt%)
実施例5 9.0 8.6 36.1
実施例6 8.8 8.8 35.3
実施例7 9.1 8.7 36.6
実施例8 8.9 8.7 36.9
実施例9 9.2 8.6 37.2
実施例10 9.1 8.6 35.9

【0107】
[表4]

密着度 耐水性 可視光透過率 紫外線透過率 硬度
実施例5 合格 合格 90.4 % 0.8 % 3H
実施例6 合格 合格 91.7 % 0.7 % 3H
実施例7 合格 合格 91.1 % 0.8 % 3H
実施例8 合格 合格 90.8 % 0.9 % 3H
実施例9 合格 合格 91.0 % 0.6 % 3H
実施例10 合格 合格 91.2 % 0.8 % 3H

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明にかかる紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料およびその塗料を用いて塗
布して形成した塗膜は、白粉が浮き出る問題や、窓ガラスを通して外が霞んで見える問題
、さらには、施工から数年間以上を経ると塗膜の透明性が損なわれるという問題を解消し
たものである。そのため、本発明の塗料を、住宅、店舗、オフィスビルなどの建築物、シ
ョーウインドウ、自動車、電車、バス、飛行機、船などの乗り物の窓ガラス等や蛍光灯、
ガラス瓶、透明なプラスチック用品等に塗布することにより、有害な太陽紫外線による物
品や内装品の褪色や物性低下を防止し、人の顔面や腕や手の甲などの剥き出しの部分の日
焼けやしみ、シワ等の発生を防止することができる。また、夏場の冷房負荷や冬場の暖房
負荷等を大きく低減する効果や防虫効果、二酸化炭素削減、地球温暖化防止に貢献するこ
とができる。よって、本発明の産業上の利用可能性は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明のエマルジョン塗料の状態を模式的に示したイメージ図である。
【図2】図1のエマルジョン塗料から形成された塗膜の構造を模式的に示したイメージ図である。
【図3】比較例1により形成された塗膜の構造を模式的に示したイメージ図である。
【符号の説明】
【0110】
(A) …重合体(a) のエマルジョン粒子、
(A")…相互凝着粒子層、
(B) …水性媒体、
(b1)…水、(b2)…水と相溶性を有する中沸点有機溶剤、
(C) …架橋性重合体、
(D) …コロイダルシリカ粒子、
(E) …紫外線吸収剤、
(O) …対象物(ガラス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(a) のエマルジョン粒子(A) 、水性媒体(B) 、水溶性でかつカルボキシル基と反
応しうる基を有する架橋性重合体(C) 、コロイダルシリカ粒子(D) および紫外線吸収剤(E
) からなる紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料であって、
・前記の重合体(a) が、カルボキシル基含有重合体であること、
・前記の水性媒体(B) が、水(b1)および水と相溶性を有する中沸点有機溶剤(b2)からな
る混合媒体であること、
・前記のエマルジョン粒子(A) は、前記の水性媒体(B) 中に、単独でまたは会合体の状
態で分散していること、
・前記の架橋性重合体(C) は、主として前記の水性媒体(B) 中に存在していること、
・前記のコロイダルシリカ粒子(D) は、主として前記のエマルジョン粒子(A) の表層部
に存在していること、
・前記の中沸点有機溶剤(b2)は、前記のエマルジョン粒子(A) の内部に浸入しているこ
と、および、
・前記の紫外線吸収剤(E) は、前記のエマルジョン粒子(A) の内部に存在していること

を特徴とする紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料。
【請求項2】
前記の重合体(a) が、カルボキシル基を有するアクリル系重合体(a1)からなるカルボキ
シル基含有重合体であること、または、該重合体(a1)とカルボキシル基を有するウレタン
系重合体(a2)とからなるカルボキシル基含有重合体であること、
を特徴とする請求項1記載のエマルジョン塗料。
【請求項3】
前記の架橋性重合体(C) がオキサゾリン基含有重合体である請求項1記載のエマルジョ
ン塗料。
【請求項4】
重合体(a) 100重量部に対する中沸点有機溶剤(b2)、架橋性重合体(C) 、コロイダル
シリカ粒子(D) および紫外線吸収剤(E) の割合が、この順に、5〜20重量部、1〜10
重量部、5〜50重量部、5〜40重量部であること、
を特徴とする請求項1記載のエマルジョン塗料。
【請求項5】
重合体(a) のエマルジョン粒子(A) 、水性媒体(B) 、水溶性でかつカルボキシル基と反
応しうる基を有する架橋性重合体(C) 、コロイダルシリカ粒子(D) および紫外線吸収剤(E
) からなる紫外線カット機能を有するエマルジョン塗料を対象物(O) に塗布することによ
り形成された塗膜であって、
前記のエマルジョン粒子(A) は、乾燥により相互凝着粒子層(A")の状態で対象物(O) 上
に成膜されていること、
前記の架橋性重合体(C) は、前記の相互凝着粒子層(A")の各粒子の表層部および粒子間
に存在していること、
前記のコロイダルシリカ粒子(D) は、前記の相互凝着粒子層(A")の各粒子の表層部およ
び粒子間に存在していること、および、
前記の紫外線吸収剤(E) は、前記の相互凝着粒子層(A")の各粒子の内部に存在している
こと、
を特徴とする紫外線カット機能を有する塗膜。
【請求項6】
JIS R3106 に従って測定した可視光透過率に関し、前記の塗膜を形成した塗膜付きの対
象物(O) の可視光透過率が、該塗膜を形成する前の対象物(O) そのものの可視光透過率よ
りも高いことを特徴とする請求項5記載の塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111516(P2011−111516A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268327(P2009−268327)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(594106874)JTS株式会社 (3)
【Fターム(参考)】