説明

紫外線カット透明樹脂フィルムとその製造方法、ならびにこれを用いた包装材と包装材の使用方法

【課題】安価で、紫外線カット性の高い紫外線カット透明樹脂フィルムを提供すること。また、その紫外線カット透明樹脂フィルムの製造方法、ならびにこれを用いた包装材と包装材の使用方法を提供すること。
【解決手段】紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材12、12の間に紫外線吸収剤を含有する中間層14が介在された紫外線カット透明樹脂フィルム10とする。中間層14には、一対の透明樹脂フィルム基材12、12間を接着する溶着剤を含んでいても良い。透明樹脂フィルム基材12は、2軸延伸ポリプロピレンからなることが好ましい。また、前記溶着剤を用いてドライラミネートにより紫外線カット透明樹脂フィルム10を製造する方法とする。さらに、紫外線カット透明樹脂フィルム10を用いた包装材とし、この包装材を用いてCD等の紫外線による劣化や退色しやすい物品を包装する包装材の使用方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線カット透明樹脂フィルムとその製造方法、ならびにこれを用いた包装材と包装材の使用方法に関し、さらに詳しくは、CD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の包装に好適に用いられる紫外線カット透明樹脂フィルムとその製造方法、ならびにこれを用いた包装材と包装材の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CD(Compact Disc)やDVD(Degital Versatile Disc)、LP(Long-Playing record)、LD(Laser Disc)、ブランドバック、服などの物品を包装して保護するフィルム材として、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料が一般的に用いられている。
【0003】
このようなフィルム材で包装して保護された上記CD等の物品は、太陽光や蛍光灯などからの紫外線が当たることによって焼けが発生し、色あせが起きることがあった。そしてこれにより、物品の価値を低下させることがあった。そのため、これらの物品を包装して保護するフィルム等の包装材には、紫外線の透過を低減させるような、紫外線カット性(耐候性)が要求されるようになってきている。
【0004】
このような要求を満足させるものとして、例えば特許文献1には、紫外線吸収効果を有するナフタレン化合物を所定量含むポリエステルフィルムが開示されている。また特許文献2には、PETフィルムに紫外線吸収剤を添加してなる紫外線カットPETフィルムが開示されている。さらに特許文献3には、図4に示されるように、PPフィルム62に紫外線吸収剤64を添加してなる紫外線カットPPフィルム60が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−12371号公報
【特許文献2】実開平5−3502号公報
【特許文献3】特開2004−122503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含む(PEN成分を含む)ため、コストが高くなり、限られた用途でしか用いることができない。また、その紫外線カット性も充分ではなかった。
【0007】
そして、特許文献2および特許文献3では、フィルムを形成する樹脂に紫外線吸収剤を添加しているが、このようにフィルムを形成する樹脂に紫外線吸収剤を練り込んだものは、時間の経過に伴って紫外線吸収剤がフィルム表面に析出してくる、いわゆるブルーミングを起こすことがある。このため、紫外線吸収剤の添加量を多くすることができない。また、フィルムを形成する樹脂と紫外線吸収剤との相溶性が低いと、所望の性能を発揮させる量を添加することができない。その結果、充分な紫外線カット性を確保することができないという問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、安価で、紫外線カット性の高い紫外線カット透明樹脂フィルムを提供することにある。また、その紫外線カット透明樹脂フィルムの製造方法、ならびにこれを用いた包装材と包装材の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る紫外線カット透明樹脂フィルムは、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材の間に紫外線吸収剤を含有する中間層が介在されていることを要旨とする。
【0010】
この場合、前記中間層には、溶着剤が含有されていることが望ましい。
【0011】
また、前記透明樹脂フィルム基材は、2軸延伸ポリプロピレンからなることが望ましい。
【0012】
本発明に係る製造方法は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材の、一の透明樹脂フィルム基材表面に紫外線吸収剤を溶かした液を塗布し、この一または他の透明樹脂フィルム基材表面に所定量の溶着剤を供給した後、一の透明樹脂フィルム基材と他の透明樹脂フィルム基材とを加圧接着してドライラミネートすることを要旨とする。
【0013】
本発明に係る包装材は、請求項1から3のいずれかに記載の紫外線カット透明樹脂フィルムからなることを要旨とする。
【0014】
本発明に係る包装材の使用方法は、請求項5に記載の包装材を用いてCD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の紫外線による劣化や退色しやすい物品を包装することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る紫外線カット透明樹脂フィルムによれば、透明樹脂フィルム基材を構成する成分にナフタレンジカルボン酸(PEN成分)を含まず、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの比較的安価な樹脂を用いるため、安価なものとすることができる。また、透明樹脂フィルム基材の樹脂に紫外線吸収剤を練り込むものではなく、一対の透明樹脂フィルム基材間に紫外線吸収剤を含有する中間層を介在させるものであるため、ブルーミングや相溶性の問題を考慮することなく、所望の性能を発揮させる量の紫外線吸収剤を用いることができる。これにより、充分な紫外線カット性を確保して、紫外線カット性の高いものとすることができる。
【0016】
この場合、前記中間層に溶着剤が含有されていれば、一対の透明樹脂フィルム基材は強固に貼り合わされ、耐久性の高いフィルムとすることができる。
【0017】
また、透明樹脂フィルム基材が2軸延伸ポリプロピレンからなると、透明性の非常に良いものとすることができる。また、2軸延伸ポリプロピレンは、例えば、CD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の物品を包装するのに通常用いられているものであるため、既存の2軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは既存の製造装置から製造される2軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて安価に製造することができる。
【0018】
本発明に係る製造方法によれば、紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材の、一の透明樹脂フィルム基材表面に紫外線吸収剤を溶かした液を塗布することにより、紫外線吸収性を有する中間層を薄く形成することができる。これにより、製造した紫外線カット透明樹脂フィルムが厚くなりすぎないので、取り扱いの良いものとなる。また、塗布するという簡便な操作で連続的に紫外線カット機能を付与でき、その後、溶着剤の供給と他の透明樹脂フィルム基材の加圧接着とを連続して行なって紫外線カット透明樹脂フィルムを製造することができるので、生産性の高いものとなる。
【0019】
本発明に係る包装材によれば、紫外線カット性の高い包装材とすることができる。
【0020】
本発明に係る包装材の使用方法によれば、例えばCD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の紫外線による劣化や退色しやすい物品を紫外線カット透明樹脂フィルムからなる包装材で包装するので、これらの物品に太陽光や蛍光灯などからの光が当たっても、紫外線がカットされ、焼けの発生とそれに伴う物品の色あせなどが起こりにくくなる。これにより、その物品価値の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る紫外線カット透明樹脂フィルム10の拡大断面図である。紫外線カット透明樹脂フィルム10は、透明樹脂フィルム基材12、12が外側に配置され、これらの間に介在された紫外線吸収剤および溶着剤からなる中間層14とから構成される。
【0023】
透明樹脂フィルム基材12を構成する樹脂は、透明で紫外線カット機能のない樹脂である。熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のエンプラ系樹脂などを例示することができる。
【0024】
好適なものとしては、加工温度が低いポリオレフィン系樹脂を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂のうち、ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体や、エチレンを主成分とした、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンなどのエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体などを例示することができる。同様に、ポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体や共重合体などを例示することができる。
【0025】
そして、ポリオレフィン系樹脂のうち、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のポリプロピレンがさらに好適である。また、これらポリプロピレンの耐寒性、柔軟性等を改善するために、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ポリプロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体およびその水添化合物等を添加した組成物、および無水マレイン酸等により変性されたポリプロピレンやポリエチレン系の各種樹脂を添加したものとしても良い。これらポリプロピレンは、2軸延伸したものが特に好適である。
【0026】
透明樹脂フィルム基材12のフィルム厚みは、5μmから50μmの範囲とすることが好ましく、さらには、10μmから30μmの範囲とすることが好ましい。この透明樹脂フィルム基材12は、単層としても、複層としても良い。
【0027】
透明樹脂フィルム基材12を構成する樹脂には、必要に応じて公知の添加剤、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤等を添加することができる。この場合、成形して得られるフィルムの透明性を損なわないことが好ましい。
【0028】
透明樹脂フィルム基材12は、紫外線吸収剤および溶着剤を塗布する前に、この中間層14との初期および長期密着性を満足させるために、その基材表面に易接着処理を施しても良い。易接着処理としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理等、公知の処理方法を例示することができる。その処理条件は、透明樹脂フィルム基材12の種類等を考慮して適宜定めることができる。
【0029】
中間層14は、紫外線吸収剤および溶着剤で構成される。紫外線吸収剤は、この紫外線カット透明樹脂フィルム10に太陽光や蛍光灯などからの光が当ったときに、その光の紫外線を吸収して紫外線カット透明樹脂フィルム10を通過する紫外線量を低減させるものである。そして、例えば紫外線カット透明樹脂フィルム10を包装材として用いたときに、包装された内容物の変質を防止したり、その内容物に耐光性の乏しい着色剤が用いられていたときにその着色剤の退色を防ぐなどの作用をするものである。溶着剤は、一対の透明樹脂フィルム基材12、12間を接着して積層材とするためのものであり、一対の透明樹脂フィルム基材12、12間に紫外線吸収剤等を挟んで積層体にすることができる。
【0030】
中間層14の構成成分である紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリチル酸系化合物などを例示することができる。これらは単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0031】
紫外線吸収剤は、紫外線カット透明樹脂フィルム10において、300nmから400nmの範囲の紫外線透過率が30%以下となるものが好ましい。より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下となるものである。
【0032】
この紫外線吸収剤は、例えばトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)などの有機溶媒に溶かして液状にしたものを透明樹脂フィルム基材12に塗布することができる。この有機溶剤は特に限定されるものではない。なお、紫外線吸収剤は、透明樹脂フィルム基材12に直接添加するものではないので、透明樹脂フィルム基材12への相溶性や分散性などを考慮しなくても良い。
【0033】
紫外線吸収剤としてのベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等を例示することができる。
【0034】
ベンゾエート系化合物としては、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等を例示することができる。
【0035】
トリアジン系化合物としては、例えば2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等を例示することができる。
【0036】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等を例示することができる。
【0037】
ベンゾオキサジノン系化合物としては、例えば2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベンゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等を例示することができる。
【0038】
シアノアクリレート系化合物としては、例えば2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどを例示することができる。
【0039】
サリチル酸系化合物としては、例えばサリチル酸フェニル、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−t−オクチルフェニルサリシレートなどを例示することができる。
【0040】
中間層14の構成成分である溶着剤としては、例えばドライラミネート法における積層フィルムの溶着剤として市販され通常用いられているものを使用することができる。例えば水性型接着剤、溶剤型接着剤、無溶剤型接着剤等を例示することができる。安価で一般的に良く用いられているものとして、例えばエーテル系溶剤型接着剤等を例示することができる。エーテル系溶剤型接着剤としては、例えばディックドライLX−450AL(大日本インキ社製)などがあり、無溶剤型接着剤としては、例えばディックドライWS−321A(大日本インキ社製)などがある。
【0041】
この中間層14には、紫外線吸収剤と溶着剤以外に、各種添加剤を添加しても良い。添加可能なものとして、例えば光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等を例示することができる。
【0042】
中間層14に添加可能な光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤等を例示することができる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシルエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、ポリ{[6−モルフォリノ−2,4−ジイル][4−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノヘキサメチレン][4−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等を例示することができる。
【0043】
以上のように構成される紫外線カット透明樹脂フィルム10によれば、透明樹脂フィルム基材12を構成する成分にナフタレンジカルボン酸(PEN成分)を含まず、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの比較的安価な樹脂を用いるため、安価なものとすることができる。また、透明樹脂フィルム基材12の樹脂に紫外線吸収剤を練り込むものではなく、一対の透明樹脂フィルム基材12、12間に紫外線吸収剤を含有する中間層14を介在させるものであるため、ブルーミングや相溶性の問題を考慮することなく、所望の性能を発揮させる量の紫外線吸収剤を用いることができる。これにより、充分な紫外線カット性を確保して、紫外線カット性の高いものとすることができる。
【0044】
この場合、中間層14に溶着剤が含有されていれば、一対の透明樹脂フィルム基材12、12は強固に貼り合わされ、耐久性の高い紫外線カット透明樹脂フィルム10とすることができる。
【0045】
また、透明樹脂フィルム基材12が2軸延伸ポリプロピレンからなると、透明性の非常に良いものとすることができる。また、2軸延伸ポリプロピレンは、例えば、CD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の物品を包装するのに通常用いられているものであるため、既存の2軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは既存の製造装置から製造される2軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて安価に製造することができる。
【0046】
次に、本発明に係る紫外線カット透明樹脂フィルムの製造方法(以下、本製造方法という)について説明する。
【0047】
本製造方法は、紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材の、一の透明樹脂フィルム基材表面に紫外線吸収剤を溶かした液を塗布し、この一または他の透明樹脂フィルム基材表面に所定量の溶着剤を供給した後、一の透明樹脂フィルム基材と他の透明樹脂フィルム基材とを加圧接着してドライラミネートすることからなる。
【0048】
透明樹脂フィルム基材は、押出成形法、インフレーション成形法、カレンダ成形法等の通常行なわれるフィルム成形法によりフィルム状に成形することができる。そして、このようなフィルム成形において、2軸延伸を行なうことが好ましい。
【0049】
2軸延伸方法としては、例えば、Tダイより溶融押出した未延伸のシートをロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する方法(逐次2軸延伸方法)、未延伸のシートをテンター式同時2軸延伸機で縦方向と横方向とを同時に延伸する方法(同時2軸延伸方法)、チューブ状に溶融押出したシートを気体の圧力で膨張させ延伸する方法(インフレーション法)などを例示することができる。2軸延伸における延伸温度および延伸倍率は、樹脂の種類、延伸方法に応じて、通常行なわれている条件に適宜設定すれば良い。
【0050】
こうして得られた2軸延伸された透明樹脂フィルム基材の表面に、上述した紫外線吸収剤を上述した有機溶剤に溶かした液をその片面に塗布する。この塗布方法は、樹脂フィルムへインクを印刷するときのように、ナイフコータ、グラビアコータ、ロールコータ、リップコータ、ダイコータ等の種々公知の塗工機を用いて行なうことができる。例えば紫外線吸収剤を溶かした液を入れた容器にロールコータのロール表面を浸した後、ロール表面に塗布された液をフィルムに転写することにより行なうことができる。
【0051】
その後、紫外線吸収剤が塗布された透明樹脂フィルム基材のその塗布面か、または他の透明樹脂フィルム基材表面に、上述した溶着剤を供給した後、紫外線吸収剤が塗布された透明樹脂フィルム基材と他の透明樹脂フィルム基材を加圧接着する。この操作は、既存(市販)の溶剤型グラビア方式のドライラミネータ等を用いて行なうことができる。なお、塗布した紫外線吸収剤を含む液や塗布した溶着剤は、各々、熱風乾燥機等を用いて、50℃から150℃程度の温度で加圧前に乾燥すれば良い。以上のようにして、紫外線カット透明樹脂フィルムを製造することができる。
【0052】
以上のように構成される本製造方法によれば、紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材の、一の透明樹脂フィルム基材表面に紫外線吸収剤を溶かした液を塗布することにより、紫外線吸収性を有する中間層を薄く形成することができる。これにより、製造した紫外線カット透明樹脂フィルムが厚くなりすぎないので、取り扱いの良いものとなる。また、塗布するという簡便な操作で連続的に紫外線カット機能を付与でき、その後、溶着剤の供給と他の透明樹脂フィルム基材の加圧接着とを連続して行なって紫外線カット透明樹脂フィルムを製造することができるので、生産性の高いものとなる。
【0053】
また、所要の長さ(大きさ)の透明樹脂フィルム基材に所要の量の紫外線吸収剤や溶着剤などを供給して、必要な長さ(大きさ)だけ紫外線カット透明樹脂フィルムを製造することができるので、小ロット、小スケールに対応することができる。これにより、幅広い需要獲得のための市場開拓用サンプルの製造(小ロット製造)等にも適用することができる。
【0054】
この透明樹脂フィルム基材は、単層でも複層でも良いが、複層とする場合、その積層方法としては、成形した個々のフィルムを上記のようなラミネータを用いて貼り合わせる方法や、フィルム成形と同時に圧着ラミネートする方法などを用いることができる。フィルム成形と同時にラミネートを行なう場合、例えば上述のTダイ押出成形法によって成形と同時に積層フィルムを作製することができ、これにより工程数を減らせるメリットがある。
【0055】
この透明樹脂フィルム基材を2軸延伸により成形する場合、縦および横の延伸方向にフィルムの樹脂を分子配向させて両方向の引張り強さを増すことにより強靱性を増大させるとともに、フィルム強度の方向性なくして強度をバランスさせることができる。さらに、フィルムの透明性も良くすることができる。
【0056】
本発明に係る紫外線カット透明樹脂フィルムは、CD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の紫外線による劣化や退色しやすい物品を包装する包装材に好適に用いることができる。例えば、紫外線カット透明樹脂フィルムを打ち抜き加工、曲げ加工、折り曲げ加工、接着加工等を行なうことにより、袋状等、その物品に合わせた形に成形して種々の用途に適した形の包装材とすることができる。このとき、テープ付の袋や、二つ折りの袋等の形状にしても良い。
【0057】
上記物品は、例えば太陽光や蛍光灯などからの紫外線が当たることによって、焼けが発生し、色あせが起きることがある。CDやDVD、LP、LDなどにおいては、例えばCD等を収納している紙製等のジャケットなどが色あせを起こしたりする。また、CD等自体にも紫外線が当たると、CD等を劣化させ、再生等が行えなくなることもある。ブランドバックや服などは、その物品そのものに色あせが生じ、その価値を下げることになる。
【0058】
そして、本発明に係る包装材は、上述の色あせ等を低減させる目的で用いることができる。例えば店等において販売されるCD等の商品を包装する透明な包装材(フィルム)として用いることもできるし、商品購入後、購入者が個人的に保存・管理する場合において用いる透明な包装材(フィルム)として用いることもできる。前者の場合、販売時(展示時)にはあらかじめ商品に包装された状態のものを示すことができる。そして、後者の場合には、購入する商品とは別に、購入する形などで包装材(フィルム)自体を手に入れることができる。
【0059】
このように、店等に販売(展示)される商品に本発明に係る包装材をラッピングすることや、購入等して個人的に手に入れた品物などの物品を後からラッピングして、紫外線から保護し、色あせ等による物品の価値の低下を防ぐことができる。このようにして、これらの物品を紫外線から保護することができる。
【0060】
以上のように、本発明に係る紫外線カット透明樹脂フィルムを用いた包装材によれば、紫外線カット性の高い包装材とすることができる。そして、上記のような包装材の使用方法によれば、例えばCD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の紫外線による劣化や退色しやすい物品を本発明に係る紫外線カット透明樹脂フィルムからなる包装材で包装するので、これらの物品に太陽光や蛍光灯などからの光が当たっても、紫外線がカットされ、焼けの発生とそれに伴う物品の色あせなどが起こりにくくなる。これにより、その物品価値の低下を防ぐことができる。
【0061】
次に、実施例について説明する。
【実施例】
【0062】
融点160℃のホモポリプロピレンを押出成型機により未延伸ポリプロピレンフィルムに成形した。この未延伸ポリプロピレンフィルムを2軸延伸機で縦方向と横方向にそれぞれ5倍に延伸して、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を作製した。
【0063】
次に、図2に示される紫外線カット透明樹脂フィルム製造装置20により、紫外線カット透明樹脂フィルム(OPP積層フィルムC)を作製した。図2を用いてその製造工程を説明する。
【0064】
図示しない巻取機に巻取られているOPPフィルムAがロール22により図中右方に送られ、ロールコータ24により、塗工槽26内に貯められた紫外線吸収剤を含む溶液がOPPフィルムAの片面に塗布される。その後、ロール28によりさらに右方に送られるとともに、熱風乾燥機30により乾燥処理される。その後、ロールコータ32により、塗工槽34内に貯められたエーテル系溶剤型接着剤(溶着剤)が、OPPフィルムAの紫外線吸収剤を含む液が塗布された面に塗布される。その後、ロール36によりさらに右方に送られるとともに、熱風乾燥機38により乾燥処理される。一方、図示しない巻取機に巻取られているOPPフィルムBは、ロール40により図中右上方に送られる。その後、紫外線吸収剤と溶着剤とが塗布されたOPPフィルムAと、これらが塗布されていないOPPフィルムBとが加圧ロール42、42により加圧接着される。こうして、OPP積層フィルムCを製造した。
【0065】
次に、製造された紫外線カット透明樹脂フィルム(OPP積層フィルムC)の使用方法について説明する。
【0066】
図3(a)に示されるように、LPジャケット44を覆う寸法に積層OPPフィルムCを加工して包装材46とし、すっぽり覆うようにLPジャケット44を包装した。また、図3(b)に示されるように、ブランドバック48を覆う寸法に積層OPPフィルムCを加工して包装材50とし、すっぽり覆うようにブランドバック48を包装した。その結果、LPジャケット44やブランドバック48の色あせが防止され、その価値を低下させることはなかった。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0068】
例えば上記実施形態において、紫外線吸収剤は、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)などの有機溶媒に溶かした状態にしてから透明樹脂フィルム基材に塗布しているが、水などに分散させて塗布するようにしても良い。
【0069】
また、上記実施形態において、紫外線カット透明樹脂フィルム10は、一対の透明樹脂フィルム基材12、12の間に紫外線吸収剤と溶着剤とを含有する中間層14を有する構成としているが、この一対の透明樹脂フィルム基材12、12を接着する溶着剤を用いずに、紫外線吸収機能を有する置換基(ベンゾトリアゾール基やベンゾフェノン基など)を備えた接着性(例えばホットメルト性)を有する高分子材料を紫外線吸収剤として用いる形態であっても良い。
【0070】
そして、実施例では、紫外線吸収剤を含む液が塗布されたOPPフィルムA表面に溶着剤を塗布しているが、OPPフィルムBに溶着剤を塗布する形態であっても良い。図2に示される紫外線カット透明樹脂フィルム製造装置20は一例を示すものであって、これに限定されるものではない。
【0071】
また、実施例では、2軸延伸ポリプロピレンフィルムについてのみ示しているが、2軸延伸していないポリプロピレンフィルムであっても良い。また、ポリエチレンやポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなど、紫外線カット機能のない他の樹脂やその2軸延伸したものであっても良い。さらに、LPジャケット44、ブランドバック48以外の、紫外線による劣化や退色しやすい物品に本発明に係る包装材を適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る紫外線カット透明樹脂フィルムは、例えば、CD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の紫外線による劣化や退色しやすい物品を包装する包装材等として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係る紫外線カット透明樹脂フィルムの拡大断面図である。
【図2】紫外線カット透明樹脂フィルム製造装置の概略構成図である。
【図3】本発明に係る包装材の使用例を表す図である。
【図4】従来の紫外線カットPPフィルムの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10 紫外線カット透明樹脂フィルム
12 透明樹脂フィルム基材
14 中間層
20 紫外線カット透明樹脂フィルム製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材の間に紫外線吸収剤を含有する中間層が介在されていることを特徴とする紫外線カット透明樹脂フィルム。
【請求項2】
前記中間層には、溶着剤が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線カット透明樹脂フィルム。
【請求項3】
前記透明樹脂フィルム基材は、2軸延伸ポリプロピレンからなることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線カット透明樹脂フィルム。
【請求項4】
ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの紫外線カット機能のない一対の透明樹脂フィルム基材の、一の透明樹脂フィルム基材表面に紫外線吸収剤を溶かした液を塗布し、この一または他の透明樹脂フィルム基材表面に所定量の溶着剤を供給した後、一の透明樹脂フィルム基材と他の透明樹脂フィルム基材とを加圧接着してドライラミネートすることを特徴とする紫外線カット透明樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の紫外線カット透明樹脂フィルムからなることを特徴とする包装材。
【請求項6】
請求項5に記載の包装材を用いて、CD、DVD、LP、LD、ブランドバック、服等の紫外線による劣化や退色しやすい物品を包装することを特徴とする包装材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−160709(P2007−160709A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359936(P2005−359936)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(597095706)有限会社田口化成 (4)
【Fターム(参考)】