説明

紫外線発生用ターゲットおよび電子線励起紫外光源

【課題】紫外線発生効率を向上可能な紫外線発生用ターゲットおよび電子線励起紫外光源を提供する。
【解決手段】紫外線発生用ターゲット10は、電子線EBを受けて紫外線UVを発生する発光層3を備える。発光層3は、Al、Ga及びNを組成中に含んでおり、発光層3にはSi等の不純物がドープされている。発光層3におけるキャリア密度は、6×1016(cm−3)以上2×1018(cm−3)以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線を受けて紫外線を発生する紫外線発生用ターゲット、および電子線励起紫外光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光源として、水銀キセノンランプや重水素ランプ等の電子管が用いられてきたが、発光効率が低く、大型であり、また安定性や寿命の点で課題が残っている。
【0003】
一方、電子線励起紫外光源は、高い安定性を生かした光計測分野や、低消費電力性を生かした殺菌や消毒用、あるいは高い波長選択性を利用した医療用光源やバイオ化学用光源として期待されている。電子線励起紫外光源は、紫外線発生用ターゲットおよび電子源を備えており、電子源から出射された電子がターゲットに照射されると、ターゲット内部で紫外線が励起するものである。
【0004】
電子線励起紫外光源は、水銀ランプなどよりも低消費電力であるため、ランニングコストの低減も可能となる。更に、従来の発光ダイオード等では、深紫外波長領域の紫外線が得られていないが、電子線励起紫外光源では、かかる領域、特に、主に300nmよりも短波長側の紫外線発光が期待されている。
【0005】
そして、AlGaN層を紫外線発生用ターゲットとした電子線励起紫外光源では、ターゲットのAlとGaの組成比を変更することで、紫外線波長を200〜360nmの範囲で変更することができる。単一組成の化合物によって励起される紫外線の帯域は狭いため、電子線励起紫外光源では、必要な波長をフィルター無しに得ることも可能であり、電子線励起紫外光源から大面積で均一な発光出力を得ることも可能である。
【0006】
なお、特許文献1には、上記のような電子線励起発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−321955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電子線励起紫外光源においても、紫外線発生効率の更なる向上が求められる。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、紫外線発生効率を向上可能な紫外線発生用ターゲットおよび電子線励起紫外光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明による第1の紫外線発生用ターゲットは、電子線を受けて紫外線を発生する化合物半導体層を備え、化合物半導体層がAl、Ga及びNを組成中に含んでおり、化合物半導体層には不純物がドープされていることを特徴とする。
【0010】
本発明者らの研究によって、Al、Ga及びNを含む化合物半導体層に不純物をドープすると、不純物をドープしない場合と比較して発光強度が格段に向上することがわかった。すなわち、この第1の紫外線発生用ターゲットによれば、従来のものと比較して紫外線発生効率を更に向上させることができる。
【0011】
また、第1の紫外線発生用ターゲットは、不純物が、Be、Mg、Ca、Zn、Cd、C、Si、Ge、及びOからなる元素群の中から選択される少なくとも一つの元素であることを特徴としてもよい。これにより、紫外線発生効率を効果的に向上させることができる。
【0012】
また、第1の紫外線発生用ターゲットは、化合物半導体層におけるキャリア密度が6×1016(cm−3)以上2×1018(cm−3)以下であることを特徴としてもよい。キャリア密度がこの範囲内であることによって、紫外線発生効率を効果的に向上させることができる。
【0013】
また、本発明による第2の紫外線発生用ターゲットは、電子線を受けて紫外線を発生する化合物半導体層を備え、化合物半導体層がAl、Ga及びNを組成中に含んでおり、化合物半導体層にはSiがドープされていることを特徴とする。
【0014】
本発明者らの研究によって、Al、Ga及びNを含む化合物半導体層にSiをドープすると、Siをドープしない場合と比較して発光強度が格段に向上することがわかった。すなわち、この第2の紫外線発生用ターゲットによれば、従来のものと比較して紫外線発生効率を更に向上させることができる。
【0015】
また、第2の紫外線発生用ターゲットは、化合物半導体層におけるキャリア密度が6×1016(cm−3)以上2×1018(cm−3)以下であることを特徴としてもよい。キャリア密度がこの範囲内であることによって、紫外線発生効率を効果的に向上させることができる。
【0016】
また、第2の紫外線発生用ターゲットは、化合物半導体層におけるSiドープ濃度が6×1016(cm−3)以上1.3×1018(cm−3)以下であることを特徴としてもよい。Siドープ濃度がこの範囲内であることによって、紫外線発生効率を効果的に向上させることができる。
【0017】
また、本発明による電子線励起紫外光源は、上記したいずれかの紫外線発生用ターゲットと、紫外線発生用ターゲットに電子線を与える電子源とを備えることを特徴とする。この電子線励起紫外光源によれば、上記したいずれかの紫外線発生用ターゲットを備えることによって、紫外線発生効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による紫外線発生用ターゲットおよび電子線励起紫外光源によれば、紫外線発生効率を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】紫外線発生用ターゲットの積層構造を示す図である。
【図2】電子線励起紫外光源の概略構成を示す図である。
【図3】発光層を製造する際のタイムチャートを示すグラフである。
【図4】発光層にSiがドープされた紫外線発生用ターゲット、および比較例として、発光層にSiがドープされていない紫外線発生用ターゲットそれぞれの深紫外発光スペクトルの評価結果を示すグラフである。
【図5】AlGaN発光層の成長時にCHSiHの流量を様々な値に設定した場合における、深紫外発光スペクトルの評価結果を示すグラフである。
【図6】CHSiHの流量と、深紫外発光スペクトルのピーク強度との関係をプロットしたグラフである。
【図7】深紫外発光スペクトルの評価に使用した紫外線発生用ターゲットのホール測定結果より導出されたキャリア密度とCHSiH流量との関係、および移動度とCHSiH流量との関係を示すグラフである。
【図8】図6および図7から得られる、深紫外発光スペクトルのピーク強度とキャリア密度との関係をプロットしたグラフである。
【図9】深紫外発光スペクトルのピーク強度とSiドープ濃度との関係をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明による紫外線発生用ターゲットおよび電子線励起紫外光源の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、一実施形態に係る紫外線発生用ターゲットの縦断面図である。この紫外線発生用ターゲット10は、基板1上に、順次成長したバッファ層2及び発光層3を備えており、発光層3上にはメタルバック電極4が形成されている。なお、発光層3は本実施形態における化合物半導体層である。バッファ層2は、窒化物系の化合物半導体、例えばAlGa1−XN(但し0<X≦1)からなる。発光層3は、Al、Ga及びNを組成中に含む化合物半導体、例えばAlGa1−YN(但し0<Y<1,X>Y)からなる。Al組成比Yの好適な値は、例えば0.6(組成比60%)である。基板1は、バッファ層2及び発光層3をエピタキシャル成長させ得るものであればよく、例えばサファイア基板が好適である。メタルバック電極4は、例えばAlからなる。基板1の厚さは例えば430(μm)であり、バッファ層2及び発光層3の厚さは例えばそれぞれ1(μm)である。
【0022】
発光層3には、不純物が実質的にドープされている。この不純物は、Be、Mg、Ca、Zn、Cd、C、Si、Ge、及びOからなる元素群の中から選択される少なくとも一つの元素であり、好ましくはSiである。発光層3の不純物ドープによるキャリア密度は、後述する実施例のように、6×1016(cm−3)以上2×1018(cm−3)以下であることが好ましい。また、不純物がSiである場合、発光層3のSiドープ濃度は、後述する実施例のように、6×1016(cm−3)以上1.3×1018(cm−3)以下であることが好ましい。
【0023】
メタルバック電極4を透過して、発光層3に電子線EBが入射すると、発光層3内で紫外線が発生する。発光層3のAl組成比Yの値が0.6(組成比60%)である場合、中心波長250(nm)、波長半値幅10(nm)の紫外線が発生する。発生した紫外線UVは、バッファ層2及び基板1を順次介して、紫外線発生用ターゲット10の外部へ出射される。電子線EBの加速エネルギーは、例えば10(keV)に設定される。なお、メタルバック電極4の厚さは、電子が十分に透過できる厚さより薄いことが好ましく、加速電圧にもよるが、例えば100(nm)以下(本例では20(nm))である。また、発光層3は、好適にはメタルバック電極4を透過して侵入する電子線を完全に吸収できる厚さ(厚さは電子線の加速電圧に依存)に設定される。
【0024】
なお、AlGaNにおいては、Al組成比が増加するほど、エネルギーバンドギャップは大きくなる。すなわち、バッファ層2は、発光層3のエネルギーバンドギャップ以上の大きさのエネルギーバンドギャップを有している。また、サファイアのエネルギーバンドギャップは上記要素の中で最も大きい。この構造の場合、発光層3で発生した紫外線は、バッファ層2および基板1においては殆ど吸収されないため、紫外線が減衰することなく外部に出力される。
【0025】
また、好適にはAlNからなるバッファ層2は、結晶欠陥の少ない高品質なAlGaN層を基板1上に成長させるために設けられる。なお、予め形成されたバッファ層2上に、その結晶性の改善を目的として、同一組成の化合物半導体層(例えばAlN)をエピタキシャル成長させ、これを新たなバッファ層2としてもよい。この場合には、さらに良好な結晶性を有する発光層3をバッファ層2上に成長させることができる。
【0026】
サファイアからなる基板1は、バッファ層2および発光層3の支持基板として機能し、且つ、紫外線UVを透過させる機能を有している。本実施形態では基板1をサファイアとしたが、基板1は、その上部にAlNまたはAlGaNを形成でき、当該紫外線の波長に対して透過特性を有する他の種類の基板であっても良いし、基板1およびバッファ層2に代えてAlN基板やAlGaN基板を用いることもできる。
【0027】
メタルバック電極4は、好適にはAlを発光層3の表面に蒸着して形成される薄膜であり、チャージアップを抑制するための導電性の薄膜として機能する。また、メタルバック電極4は、発光層3内で発生した紫外発光成分で電子線入射側に伝播する成分を反射するという機能を併せ持っている。
【0028】
図2は、上述した紫外線発生用ターゲット10を備えた電子線励起紫外光源20の構成を示す図である。この電子線励起紫外光源20においては、真空排気されたガラス容器(電子管)11の中に、電子源12およびグリッド状引き出し電極13が配置されている。容器11の電子源12が配置されていない側の面には、紫外線発生用ターゲット10が配置されている。紫外線発生用ターゲット10のメタルバック電極4を接地し、負の高電圧を電源15から電子源12に印加し、電子源12とグリッド状引き出し電極13との間に、可変電源14から適当な引き出し電圧を印加することで、電子源12から、高電圧で加速された電子線EBを、紫外線発生用ターゲット10に照射することができる。
電子線EBは、メタルバック電極4を透過して、発光層3に到達する。電子線照射の際に発光層3で発生する紫外線UVは、バッファ層2およびサファイア基板1を介して外部へ出射される。電子源12は、大面積の電子線を出射する電子源(例えばカーボンナノチューブ等の冷陰極、或いは熱陰極)を用いることができる。
【0029】
本実施形態の紫外線発生用ターゲット10は、基板1上に、バッファ層2および発光層3を例えば減圧MOVPE法を用いて順次成長させ、その後、メタルバック電極4を発光層3上に形成することによって製造することができる。なお、AlGaNのMOVPE法は確立されており、成長チャンバ内に基板を配置し、基板温度を反応が生じる温度まで昇温し、キャリアガス(H又はN)と共に原料ガスTMA、TMGおよびNHを成長チャンバ内に供給する。また、このとき、ドーパントであるSiの原料となるメチルシラン(CHSiH)を成長チャンバ内に同時に供給する。原料ガスTMA、TMG、NHおよびCHSiHは、基板表面に供給されるので、表面上にSiドープAlGaN層が成長する。
【0030】
発光層3の具体的な成長方法について説明する。図3は、実施例に係る発光層3を製造する際のタイムチャートを示すグラフである。
【0031】
まず、AlN層付サファイア基板を用意する。このAlN層付サファイア基板は、AlNからなるバッファ層2が予め形成された基板1であり、AlN層の表面は(0001)面であることが望ましい。このAlN層付サファイア基板を成長チャンバ内で1190℃に加熱し、原料ガスを供給する。原料ガスを供給する際、原料ガスのTMG流量は、目的とするAl組成比が60%となるように、25sccm(60.22μmol/min)一定とする。TMAの流量は15sccm(9.09μmol/min)、CHSiHの流量は0〜5sccm(0〜2.25nmol/min)、NHの流量は1500sccmとする。なお、sccmは、1気圧、室温(25℃)下で規格化された流量(cm/min)である。
【0032】
製造条件は、以下の通りである。
・成長温度:1190℃
・成長チャンバ内圧力:50Torr(6.7×10Pa)
・昇温時のキャリアガス:N
・昇温時に供給される原料ガス:NH
・成長開始時刻:昇温完了時
・成長時間:136分
・成長時に供給されるキャリアガス:H
・成長時に供給される原料ガス:NH、TMG、TMA、CHSiH
・成長終了時刻:降温開始時
・降温初期(基板温度300℃以上の期間)のキャリアガス:N
・降温初期に供給される原料ガス:NH
・降温後期(基板温度が300℃未満になった場合)のキャリアガス:H
【0033】
図4は、この製造方法においてCHSiHの流量を0.67(nmol/min)として製造された紫外線発生用ターゲット10、および比較例として、上記製造方法においてSiをドープしない場合それぞれの深紫外発光スペクトルの評価結果を示すグラフである。なお、図4において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は相対強度(任意単位)である。グラフG11はAlGaN発光層にSiをドープした場合を示しており、グラフG12はAlGaN発光層にSiをドープしない場合を示している。図4に示すように、AlGaN発光層にSiをドープすると(グラフG11)、Siをドープしない場合(グラフG12)と比較して深紫外発光強度が約一桁(10倍)向上する。
【0034】
図5は、AlGaN発光層の成長時にCHSiHの流量を様々な値に設定した場合における、深紫外発光スペクトルの評価結果を示すグラフである。図5において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は相対強度(任意単位)である。図5のグラフG21〜G27それぞれのCHSiHの流量は以下の通りである(単位は全てnmol/min)。
グラフG21:0.22
グラフG22:0.45
グラフG23:0.67(図4のグラフG11と同じ)
グラフG24:0.89
グラフG25:1.35
グラフG26:2.25
グラフG27:ノンドープ(図4のグラフG12と同じ)
【0035】
また、図6は、これらのCHSiHの流量と、深紫外発光スペクトルのピーク強度との関係をプロットしたグラフである。図6において、横軸はCHSiHの流量(単位:nmol/min)であり、縦軸はピーク強度(任意単位)である。
【0036】
図5および図6から明らかなように、CHSiHの流量すなわちSiのドーパント濃度が変化すると、深紫外発光強度も変化する。そして、0.4(nmol/min)以上0.75(nmol/min)以下の範囲で深紫外発光強度が格段に高くなり、これよりCHSiHの流量を増すと深紫外発光強度は逆に低下する結果となった。
【0037】
図7は、上述した深紫外発光スペクトルの評価に使用した紫外線発生用ターゲット10のホール測定結果より導出されたキャリア密度とCHSiH流量との関係、および移動度とCHSiH流量との関係を示すグラフである。図7において、横軸はCHSiHの流量(単位:nmol/min)を示しており、左側の縦軸はキャリア密度(単位:cm−3)を示しており、右側の縦軸は移動度(単位:cm/V/sec)を示している。また、グラフG31はキャリア密度とCHSiH流量との関係(左側の縦軸)を示しており、グラフG32は移動度とCHSiH流量との関係(右側の縦軸)を示している。
【0038】
また、図8は、図6および図7から得られる、深紫外発光スペクトルのピーク強度とキャリア密度との関係をプロットしたグラフである。図8において、横軸はキャリア密度(単位:cm−3)であり、縦軸はピーク強度(任意単位)である。図8から明らかなように、キャリア密度が6×1016(cm−3)以上2×1018(cm−3)以下の範囲(図中の範囲A)においては、深紫外発光スペクトルのピーク強度がSiをドープしない場合より高くなる。この効果は、AlGaN発光層にSiをドープすることにより得られたものである。
【0039】
図7に示すキャリア密度と移動度の積は導電率に比例し、導電率がピークとなるCHSiHの流量は深紫外発光スペクトルのピーク強度が得られるCHSiHの流量がほぼ一致するため、Siドープにより、AlGaN発光層の導電率が向上し、AlGaN発光層内部のチャージアップを抑制し、深紫外発光スペクトルのピーク強度が向上したと思われる。
【0040】
図9は、上述した深紫外発光スペクトルの評価に使用した紫外線発生用ターゲット10のSIMS測定結果より導出されたSiドープ濃度と深紫外発光スペクトルのピーク強度との関係を示すグラフである。図9において、横軸はSiドープ濃度(単位:cm−3)であり、縦軸はピーク強度(任意単位)である。図9から明らかなように、Siドープ濃度が6×1016(cm−3)以上1.3×1018(cm−3)以下の範囲(図中の範囲C)においては、深紫外発光スペクトルのピーク強度がSiをドープしない場合より高くなる。この効果は、AlGaN発光層にSiをドープすることにより得られたものである。
【0041】
このようにSiドープの場合には深紫外発光スペクトルピーク強度のキャリア密度依存性(図8)とSiドープ濃度依存性(図9)は良好な一致を示し、これはSiドープ濃度に対応したキャリアが形成されていることを示している。
【0042】
ここではSiをした場合について説明したが、AlGaN発光層にはSi以外の他の不純物(Be、Mg、Ca、Zn、Cd、C、Ge、O等、またはそれらの組み合わせ)をドープして導電性を向上させてもよい。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態の紫外線発生用ターゲット10によれば、発光層3がAl、Ga及びNを組成中に含み、且つ発光層3にSi等の不純物がドープされていることによって、Si等の不純物をドープしない場合と比較して発光強度が格段に向上する。すなわち、この紫外線発生用ターゲット10によれば、従来のものと比較して紫外線発生効率を更に向上させることができる。また、図2に示した電子線励起紫外光源20は、この紫外線発生用ターゲット10を備えることによって、紫外線発生効率を向上できる。
【0044】
本発明による紫外線発生用ターゲットおよび電子線励起紫外光源は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、発光層3がAlGaNからなる場合を例示したが、本発明における化合物半導体層は、Al、Ga及びNを組成中に含んでいれば他の元素を更に含んでもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…基板、2…バッファ層、3…発光層、4…メタルバック電極、10…紫外線発生用ターゲット、11…容器、12…電子源、13…電極、14…可変電源、15…電源、20…電子線励起紫外光源、EB…電子線、UV…紫外線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を受けて紫外線を発生する化合物半導体層を備え、
前記化合物半導体層がAl、Ga及びNを組成中に含んでおり、
前記化合物半導体層には不純物がドープされている
ことを特徴とする、紫外線発生用ターゲット。
【請求項2】
前記不純物は、Be、Mg、Ca、Zn、Cd、C、Si、Ge、及びOからなる元素群の中から選択される少なくとも一つの元素であることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線発生用ターゲット。
【請求項3】
前記化合物半導体層におけるキャリア密度が6×1016(cm−3)以上2×1018(cm−3)以下である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の紫外線発生用ターゲット。
【請求項4】
電子線を受けて紫外線を発生する化合物半導体層を備え、
前記化合物半導体層がAl、Ga及びNを組成中に含んでおり、
前記化合物半導体層にはSiがドープされている
ことを特徴とする、紫外線発生用ターゲット。
【請求項5】
前記化合物半導体層におけるキャリア密度が6×1016(cm−3)以上2×1018(cm−3)以下である
ことを特徴とする、請求項4に記載の紫外線発生用ターゲット。
【請求項6】
前記化合物半導体層におけるSiドープ濃度が6×1016(cm−3)以上1.3×1018(cm−3)以下である
ことを特徴とする、請求項4に記載の紫外線発生用ターゲット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の紫外線発生用ターゲットと、
前記紫外線発生用ターゲットに電子線を与える電子源とを備える
ことを特徴とする、電子線励起紫外光源。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178928(P2011−178928A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45741(P2010−45741)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名 電子情報通信学会技術研究報告(IEICE Technical Report)Vol.109 No.288 発行日 2009年11月12日 発行所 社団法人 電子情報通信学会
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】