説明

細径ケーブルハーネス

【課題】良好な防水性を確保しつつ、薄型化された細径ケーブルハーネスを提供する。
【解決手段】複数群の束に分割された複数本の細径ケーブル12と、各群の束の細径ケーブル12がそれぞれ挿通された複数本の防水チューブ21と、複数本の防水チューブ21の両端がそれぞれ接続された一対の防水キャップ14とを備え、防水キャップ14は、複数本の防水チューブ21に対応する複数の挿通孔16を有し、複数本の防水チューブ21は、それぞれの端部が挿通孔16へ圧入されることのみによって防水キャップ14に水密的に接続され、各群の束の細径ケーブル12は、防水チューブ21に挿通されて互いの位置関係が変化し得る程度に束ねられてなり、防水チューブ21を防水キャップ14の挿通孔16に圧入して防水キャップ14に300kPaの圧力を付与した際の防水チューブ21の偏平率が30%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の細径ケーブルを束ねた細径ケーブルハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や小型ビデオカメラなどの精密小型機器は、互いにスライド可能あるいは回動可能に連結された筐体内の回路基板を配線材によって接続している。精密小型機器の配線構造の一例として、2つの筐体と、2つの筐体を連結したヒンジ構造と、ヒンジ構造の内部に配索された防水チューブと、防水チューブに通され、防水チューブの端部から延出し、一方の筐体の内部から他方の筐体の内部に配索された電気信号用ケーブルと、電気信号用ケーブルに巻装されるとともに防水チューブの端部に取り付けられたシールと、シールに巻装された弾性材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−263285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筐体間に配線されるケーブルは、可撓性及び屈曲性を有する防水チューブに通されて防水されているが、近年では、機器のさらなる小型化、薄型化に伴い、配線スペースをさらに小さくするために、良好な防水性を確保しつつ、薄型化されたケーブルハーネスが要求されている。
【0005】
本発明の目的は、良好な防水性を確保しつつ、薄型化された細径ケーブルハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の細径ケーブルハーネスは、複数群の束に分割された複数本の細径ケーブルと、各群の束の前記細径ケーブルが挿通された防水チューブと、前記防水チューブの両端が接続された一対の防水キャップとを備え、
前記防水キャップは、前記防水チューブに対応する挿通孔を有し、
前記防水チューブは、その端部が前記挿通孔へ圧入されることのみによって前記防水キャップに水密的に接続され、
各群の束の前記細径ケーブルは、前記防水チューブに挿通されて互いの位置関係が変化し得る程度に束ねられてなり、
前記防水チューブを前記防水キャップの前記挿通孔に圧入して前記防水キャップに300kPaの圧力を付与した際の前記防水チューブの偏平率が30%以下であることを特徴とする。
なお、扁平率は、「扁平率(%)=(加圧後の直径/加圧前の直径)×100」により計算される。
【0007】
本発明の細径ケーブルハーネスにおいて、前記防水キャップの硬度がショアA硬度で50度から70度の間の値であり、前記防水チューブは、外径が1.3mm以下、肉厚が0.1mm以上0.2mm以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の細径ケーブルハーネスにおいて、前記防水チューブを複数本備え、
各前記防水チューブには各群の束の前記細径ケーブルがそれぞれ挿通され、
前記防水キャップには、前記挿通孔が各前記防水チューブに対応して複数設けられ、
少なくとも1本の前記防水チューブは、他の前記防水チューブと非等長であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防水チューブを防水キャップの挿通孔に挿入して防水キャップに300kPaの圧力を付与した際の防水チューブの偏平率が30%以下であり、防水キャップの挿通孔へ防水チューブの端部を圧入した接続構造であっても、防水キャップと防水チューブとの良好な防水性を確保することができる。これにより、防水チューブ内に金属管を圧入して防水チューブを金属管と防水キャップとで挟持して接続するような構造と比較して、防水チューブの外径を小さくして全体を薄型化することができる。また、金属管を用いないのでコストアップを抑えることができるとともに、金属管による防水チューブの損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の細径ケーブルハーネスで接続された携帯電話の斜視図であり、(a)は携帯電話の筺体同士を開いた状態、(b)は携帯電話端末の筺体同士を閉じた状態である。
【図2】本発明に係る細径ケーブルハーネスの実施形態の一例を示す平面図である。
【図3】防水チューブが接続された防水キャップの斜視図である。
【図4】防水チューブが接続された防水キャップの断面図である。
【図5】細径ケーブルハーネスを筐体に取り付けた状態を示す断面図である。
【図6】気密評価方法を示す概略断面図である。
【図7】加圧装置によって加圧される防水キャップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る細径ケーブルハーネスの実施形態の例について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の細径ケーブルハーネスは、例えば、図1に示すような携帯電話1などの機器の相対的にスライドする筐体2,3内の基板に接続されている。この携帯電話1では、一方の筺体2にディスプレイが設けられ、他方の筺体3にキー操作部が設けられている。
【0012】
図2に示すように、細径ケーブルハーネス11は、複数本(本実施形態では40本)の細径ケーブル12を有するもので、これらを複数の群に分けることにより、複数本(本実施形態では10本)ずつに束ねた複数(本実施形態では4つ)の束部10が設けられている。細径ケーブルハーネス11の両端の端末部分では、各束部10の細径ケーブル12が平面状に配列され、携帯電話1の筐体2,3内の配線基板への接続のためのコネクタ13が取り付けられて成端処理されている。
【0013】
細径ケーブル12は、中心軸に直交する径方向の断面において、中心から外側に向かって、中心導体、内部絶縁体、外部導体、外被を有する同軸ケーブルであり、それぞれの端部では、端末処理が施されて、外部導体、内部絶縁体、中心導体が段階的に所定長さに露出され、コネクタ13に接続されている。また、細径ケーブルハーネス11には、複数本の同軸ケーブルの他に、外部導体のない絶縁ケーブルが含まれていても良い。なお、図面では、細径ケーブル12の本数を少なく示して簡略化している。
【0014】
本発明でいう細径ケーブル12は、AWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG40よりも細い同軸ケーブルであり、その外径は、約0.2mm程度とされている。AWG44よりも細い極細同軸ケーブルを用いるのが望ましい。これにより、細径ケーブルハーネス11は、曲がり易く、筐体2,3がスライドするときの抵抗を小さくすることができる。また、複数本の細径ケーブル12を束ねて複数の束部10を形成したときに、束部10の厚さを薄くすることができ、限られた配線スペースでの高密度配線を可能とする。
【0015】
細径ケーブルハーネス11の各束部10では、防水チューブ21に、各群の複数本の細径ケーブル12がそれぞれ挿通され、各群の各細径ケーブル12同士の位置関係が変化し得る程度に束ねられている。したがって、この細径ケーブルハーネス11を屈曲した際に、防水チューブ21内で細径ケーブル12が円滑に移動するため、各細径ケーブル12への引張力や側圧等の付与が極力抑えられる。
また、細径ケーブルハーネス11が筺体2,3間で屈曲される場合は、その屈曲の径方向の最も外側の防水チューブ21が長くされる。図2では外側へ向かって防水チューブ21の長さが少しずつ長くされている。つまり、図2の細径ケーブルハーネス11は、互いに非等長の防水チューブ21を備えている。
【0016】
防水チューブ21は、防水性に優れ、可撓性及び屈曲性を有するものであり、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン及びフッ化ビニリデンの三元重合体ポリマー(THV)から形成することにより、高い耐久性を有している。この防水チューブ21を構成する三元重合体ポリマーは、融点が100℃以上140℃以下、MFR(メルトフローレート、265℃/5kg)が1.5g/分以上2.5g/分以下、ガラス転位点が0℃以上10℃以下、伸びが600%以上700%以下、曲げ弾性率が0.05GPa以上0.10GPa以下であることが好ましい。
【0017】
防水チューブ21は、外径が1.3mm以下、肉厚が0.1mm以上0.2mm以下とされている。本実施形態の防水チューブ21では、外径が1.3mm、内径が1.1mm、肉厚が0.1mmとされている。
【0018】
図3及び図4に示すように、各束部10の両端部では、それぞれの防水チューブ21の端部に共通の一対の防水キャップ14が水密的に一括して接続されている。防水キャップ14には、複数の防水チューブ21に対応した複数の挿通孔16が形成されており、これらの挿通孔16に防水チューブ21が取り付けられている。また、防水チューブ21に挿通された各束部10の細径ケーブル12も、防水キャップ14の挿通孔16に挿通されている。
【0019】
防水キャップ14は、シリコーンゴム等の弾性樹脂材料からなり、その硬度(ショアA硬度)は、50度以上70度以下である。本実施形態では、防水キャップ14の硬度が60度とされている。防水チューブ21の外径を1.3mmとした場合、防水キャップ14の挿通孔16の内径は0.95〜1.05mmとする(挿通孔の内径に対する防水チューブの外径は1.2倍から1.4倍となる)のが好ましい。例えば、挿通孔16の内径1.0mmよりも大きい外径1.3mmの防水チューブ21を圧入することにより、防水キャップ14に対して防水チューブ21が水密的に接続される。
【0020】
このとき、防水チューブ21を防水キャップ14の挿通孔16に圧入して、防水キャップに300kPaの圧力を付与した際の偏平率が30%以下のチューブを用いているので、防水キャップ14を筐体の壁で取り囲まれた嵌合部へ圧入する際に防水チューブ21の内部に金属管などの支持部材を入れなくても防水チューブ21が潰れて挿通孔16と防水キャップ14の間に隙間ができるようなことはない。よって、防水キャップ14の挿通孔16の内周面に防水チューブ21の外周面が密着し、良好な水密状態が確保される。なお、防水キャップ14の挿通孔16と防水チューブ21との間に接着材(紫外線硬化型、湿気硬化型など)を塗布し、防水キャップ14と防水チューブ21とを接着しても良い。このようにすると、防水キャップ14と防水チューブ21とをより確実に水密的に接続することができる。
【0021】
細径ケーブルハーネス11は、4つの束部10の両端に一つずつ防水キャップ14が接続されている。防水キャップ14より端部側では、4つの束部10の防水チューブ21から延びた複数本の細径ケーブル12が露出されてまとめて平面状に並列され、一端につき一つのコネクタ13が接続されている。
【0022】
また、防水キャップ14の断面外形は長円形状であり、防水キャップ14の外周には、挿通孔16の軸方向でみて両端の部分に、挿通孔16の軸方向と直交する方向に突出した一対の突条15が周方向に連続して形成されている。
【0023】
上記の細径ケーブルハーネス11を携帯電話1やカメラを構成する筐体2,3に装着するには、まず、コネクタ13を細径ケーブル12に取り付ける前に、複数本の細径ケーブル12を防水チューブ21及び防水キャップ14の挿通孔16に通して組み付けておく。そして、コネクタ13を細径ケーブル12に取り付ける。
次いで、図5に示すように、防水チューブ21より端部側で露出した細径ケーブル12およびコネクタ13を筐体2の挿通孔2bと筐体3の挿通孔3bにそれぞれ通し、筐体2の嵌合部2aと筐体3の嵌合部3aに、それぞれ束部10の端部の防水キャップ14を嵌め込む。嵌合部2a,3aは、筐体2,3に防水キャップ14が収まるように周囲を壁で囲まれた部分である。嵌合部2a,3aより防水キャップ14の方がやや大きく、防水キャップ14は嵌合部2a,3aに押し込まれて嵌め込まれる。
【0024】
筐体2,3に防水キャップ14が取り付けられる箇所は、防水キャップ14を取り囲む壁面に囲まれた平面視長円形状の嵌合部2a,3aである。嵌合部2a,3aの断面は防水キャップ14の断面よりやや小さく、嵌合部2a,3aに防水キャップ14が圧入されて細径ケーブルハーネス11が筐体2,3に取り付けられる。なお、図5は、筐体2,3の一部を幅方向(図1の矢印A方向)に断面視したものであり、複数の束部10のうち一つのみが示されているが、この図面の奥行き方向には他の束部10が存在している。
【0025】
防水キャップ14の突条15は、防水キャップ14が取り付けられるときに筐体2,3の嵌合部2a,3aに圧接されて潰れる。この潰れは突条間の窪んだ箇所に逃げる。突条15は反発力(弾性力)で常に嵌合部2a,3aの壁を押しつけて密着する。これにより、防水キャップ14と筐体2,3とが確実に水密的に接続される。突条15は、防水キャップ14に一体的に成型されているので、別途Oリングを使用する場合よりもコストを抑えることができる。
そして、防水キャップ14と防水チューブ21は水密的に接続されているので、筺体2,3に防水キャップ14が上述のように水密的に取り付けられることにより、細径ケーブルハーネス11を伝って筐体2または筐体3の内部(コネクタ13側)に水が浸入することがない。
【0026】
ところで、防水チューブ21の肉厚を厚くすれば、防水チューブ21の変形を抑えて防水性を容易に確保することができるが、防水チューブ21の肉厚を厚くすると防水チューブ21の外径が大きくなり、細径ケーブルハーネス11の薄型化を図ることができない。つまり、防水チューブ21としては、肉厚を薄くして極力小径としつつ、潰れて変形することがないものを用いることが好ましい。このため、本実施形態では、外径が1.3mm以下、肉厚が0.1mm以上0.2mm以下の防水チューブ21を用いて細径ケーブルハーネス11の薄型化を図る。防水チューブ21をこの寸法とし、かつ硬度がショアA硬度で50度〜70度の間のものである防水キャップ14を使用すると、防水チューブ21を防水キャップ14の挿通孔16に圧入して防水キャップ14に圧力を加えたときに防水チューブ21の扁平率が30%以下となり、金属管を使用せずとも防水チューブ21が潰れて挿通孔16との間に隙間ができることがない。ここで、「扁平率(%)=(加圧後の直径/加圧前の直径)×100」である。
【0027】
防水チューブ21内に金属管を圧入して防水チューブ21を金属管と防水キャップ14とで挟持して接続するような構造と比較して、本発明は、防水チューブ21の外径を小さくして全体を薄型にすることができる。これにより、良好な防水性を確保しながら狭隘な配線スペースにも配線することができ、筐体2,3の薄型にすることができる。また、金属管を用いないのでコストアップを抑えることができるとともに、金属管による防水チューブ21の損傷を抑えることができる。
【0028】
なお、防水チューブ21の外径を小さくすると、1本の防水チューブ21に対する細径ケーブル12の挿入可能本数が少なくなるが、防水チューブ21の本数を増やして必要本数の細径ケーブル12を複数の群に分けてそれぞれ防水チューブ21によって防水する。
【0029】
また、細径ケーブルハーネス11は、両端のコネクタ13によって筐体2,3内の配線基板などに容易に接続することができる。また、細径ケーブル12はシールド性が良好でありノイズ特性に優れているため、安定した信号伝送を行うことができる。
【0030】
また、本実施形態は、コネクタ13を装着せずに、細径ケーブルハーネス11の細径ケーブル12を配線基板へ直接またはFPC(Flexible Printed Circuits)等を介して接続する場合にも適用可能である。
【0031】
細径ケーブル12を配線基板に直付けする場合には、並列させた細径ケーブル12の端末を配線基板に対してフィルムなどで仮止めし、細径ケーブル12の端末の中心導体を配線基板の接続端子に半田付けで接続すればよい。また、端末部分で露出された外部導体は、グランドバーに接続する。このようにすると、細径ケーブル12の各外部導体をグランドバーによってまとめて容易に接地させ、良好なシールド効果を得ることができる。また、各細径ケーブル12の配列ピッチを良好に固定することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、細径ケーブルハーネス11の端部において、4つの群の束部10の防水チューブ21から延びた複数本の細径ケーブル12を平面状に並列させて一つのコネクタ13に接続したが、複数のコネクタ13に分けて接続しても良い。また、各束部10毎に、防水チューブ21の長さを非等長としたが、細径ケーブルハーネス11が配索されるときにあまり屈曲されないのであればこれらの防水チューブ21の長さは等長であっても良い。このように、筐体2,3内での細径ケーブルハーネス11の配線の要求に応じて細径ケーブル12の端末処理の仕方や各防水チューブ21の長さを適宜調整することとなる。
【実施例】
【0033】
(気密性試験)
図6に示すように、一つの面が疑似金属膜41aからなる密閉された加圧カプセル41を用意し、この加圧カプセル41の底面に防水キャップ14を圧入するように壁部で取り囲まれた凹部42を形成し、これらの凹部42に、細径ケーブルハーネス11の両端の防水キャップ14をそれぞれ嵌合させた。防水キャップ14の挿通孔16には、防水チューブ21の端部を圧入して接続した。
この状態で、加圧カプセル41のエア導入口41bからエアを注入した後にエア導入口41bを密封し、変位センサ43によって疑似金属膜41aの変位を測定し、加圧カプセル41からの空気のリークの有無を調べた。なお、加圧カプセル41へのエアの注入後、10秒間で0.5cc以上の空気が減少した場合は空気のリーク有りと判定した。
【0034】
外径1.3mm、内径1.1mm、肉厚0.1mmの防水チューブ21を用いたものを実施例1とし、外径1.6mm、内径1.4mm、肉厚0.1mmの防水チューブ21を用いたものを比較例1とした。なお、実施例1では、4つの挿通孔16を有する防水キャップ14のそれぞれの挿通孔16に4本の防水チューブ21を圧入し、比較例1では、2つの挿通孔16を有する防水キャップ14のそれぞれの挿通孔16に2本の防水チューブ21を圧入した。防水キャップ14のショアA硬度はいずれも60度とした。
また、加圧カプセル41の凹部42に防水キャップ14を嵌合させると、防水キャップ14が圧縮され、防水チューブ21には、径方向へ300kPaの圧力が付与されるようにした。
【0035】
その結果、実施例1では、空気のリークはなかった。これに対して、比較例1では、空気のリークが認められた。
【0036】
また、図7に示すように、固定ロッド51に対して進退する可動ロッド52を備えた加圧装置53を用いて防水チューブ21の偏平率を測定した。具体的には、外径が約1.3mmの防水チューブ21を挿通孔16に圧入した防水キャップ14を、固定ロッド51と可動ロッド52とで挟持して挿通孔16の配列方向と直交する方向である厚さ方向へ加圧し、防水チューブ21の偏平率を測定した。
【0037】
この測定の結果、実施例1の防水キャップと防水チューブの組み合わせでは防水チューブの扁平率が30%となった。比較例1の防水キャップと防水チューブの組み合わせでは30%を超えてしまう。
【0038】
上記の評価結果及び測定結果から、防水チューブ21に、300kPaの圧力が付与される際には、偏平率が30%以下であれば、防水キャップ14との気密状態が確実に確保され、確実な水密状態も得られることがわかった。
【0039】
つまり、防水チューブ21としては、外径が小さい方が圧力に対して偏平しづらく、よって、防水キャップ14との防水性が確実に確保できることがわかった。
【0040】
(引張強度試験)
防水キャップ14に接続した防水チューブ21に引張力を付与し、防水チューブ21が防水キャップ14から抜け始めたときの引張力を測定した。
実施形態に係る構造の細径ケーブルハーネス11を実施例2とした。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
細径ケーブルハーネスを実際に使用するときにかかる力を考慮して、1Nの引張力に耐えれば十分である。表1に示すように、実施例2は金属管を使用しなくても十分な耐引張性を有することがわかった。
【符号の説明】
【0043】
11:細径ケーブルハーネス、12:細径ケーブル、14:防水キャップ、16:挿通孔、21:防水チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数群の束に分割された複数本の細径ケーブルと、各群の束の前記細径ケーブルが挿通された防水チューブと、前記防水チューブの両端が接続された一対の防水キャップとを備え、
前記防水キャップは、前記防水チューブに対応する挿通孔を有し、
前記防水チューブは、その端部が前記挿通孔へ圧入されることのみによって前記防水キャップに水密的に接続され、
各群の束の前記細径ケーブルは、前記防水チューブに挿通されて互いの位置関係が変化し得る程度に束ねられてなり、
前記防水チューブを前記防水キャップの前記挿通孔に圧入して前記防水キャップに300kPaの圧力を付与した際の前記防水チューブの偏平率が30%以下であることを特徴とする細径ケーブルハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載の細径ケーブルハーネスであって、
前記防水キャップの硬度がショアA硬度で50度から70度の間の値であり、
前記防水チューブは、外径が1.3mm以下、肉厚が0.1mm以上0.2mm以下であることを特徴とする細径ケーブルハーネス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細径ケーブルハーネスであって、
前記防水チューブを複数本備え、
各前記防水チューブには各群の束の前記細径ケーブルがそれぞれ挿通され、
前記防水キャップには、前記挿通孔が各前記防水チューブに対応して複数設けられ、
少なくとも1本の前記防水チューブは、他の前記防水チューブと非等長であることを特徴とする細径ケーブルハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−164433(P2012−164433A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21872(P2011−21872)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】