説明

細粒化土壌の製造方法、吹き付け基盤材、培養土および転動ミル装置

【課題】粘土分を多く含む土塊の細粒化、土壌と添加物との混合、細粒物と粗粒物との分別を効率よく行うことのできる細粒化土壌の製造方法、吹き付け基盤材および培養土、並びに転動ミル装置およびこの転動ミル装置を搭載した車両を提供すること。
【解決手段】転動ミル装置1は、処理対象物が投入される円筒状のポット3を備えており、ポット3の内部には、複数の粉砕体50として、ボール状粉砕体51と丸棒状粉砕体53とが装填されている。ポット3の胴部にはメッシュ部35が形成されており、土塊を含む処理対象物をポット3で粉砕した際に得られた細粒化土壌については、メッシュ部35を介してポット3の外に排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細粒化土壌の製造方法、この方法で得た細粒化土壌を用いた吹き付け基盤材および培養土、並びに転動ミル装置、この転動ミル装置を搭載した車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面への吹き付け基盤材や培養土を作成するのに用いられる土壌は、粘土分を多く含んでいる場合や、薬剤などにより改質されている場合が多く、このような場合、土壌は塊(土塊)を形成していることが多い。また、土壌には石や礫などの粗粒物が含まれていることがある。粗粒物を含んでいる土壌で吹き付け基盤材を作成すると、吹き付け工事などを行う際、機械施工が困難である。また、粗粒物を含んでいる土壌で培養土を作成すると、植物が良好に生育しないという問題点がある。
【0003】
一方、処理対象物の粉砕や磨砕には、従来、軸線周りに回転する筒状のポット内にボール状粉砕体を装填したボールミル装置や、軸線周りに回転する筒状のポット内に棒状粉砕体を装填したロッドミル装置が用いられており、かかるボールミル装置やロッドミル装置では、ポットの回転により、粉砕体をポット内において上昇、落下させ、その際の衝撃や摩擦によりポット内の処理対象物を粉砕する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−226439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、吹き付け基盤材や培養土を作成するための土壌についても、軸線周りに回転する筒状のポット内にボール状粉砕体が装填されたボールミル装置で土塊をほぐして細粒化した後、混入している石などを除去する方法が考えられる。しかしながら、粘土分を多量に含む土塊を処理対象物が含んでいる場合、同一形状のボール状粉砕体を用いると、処理対象物に略同一の衝撃や摩擦が繰り返し加わるだけであるため、処理時間や粉砕体の数を増やしても、粘土分を多く含む土塊を効率よく細粒化できないという問題点がある。また、ボールミル装置では、細粒化した土壌に対して、有機廃棄物、土壌改良剤、セメントなどの添加物を混入しようとした場合、ボール状粉砕体のサイズを種々、変えても、添加物を均一に分散させることができないという問題点がある。このような問題点は、粉砕体として棒状粉砕体を用いた場合も、処理対象物に略同一の衝撃や摩擦が繰り返し加わるだけであるため、同様に発生する。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、粘土分を多く含む土塊の細粒化や、土壌と添加物との混合を効率よく行うことのできる細粒化土壌の製造方法、この方法で得た細粒化土壌を用いた吹き付け基盤材および培養土、並びに転動ミル装置およびこの転動ミル装置を搭載した車両を提供することにある。
【0006】
また、本発明の課題は、粘土分を多く含む土塊の細粒化、土壌と添加物との混合、細粒物と粗粒物との分別を効率よく行うことのできる細粒化土壌の製造方法、この方法で得た細粒化土壌を用いた吹き付け基盤材および培養土、並びに転動ミル装置、この転動ミル装置を搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る細粒化土壌の製造方法では、転動ミル装置のポット内に形状の異なる複数種類の粉砕体を装填するとともに、当該ポット内に土塊を含む処理対象物を投入した状態で、前記ポットを回転させて前記処理対象物の細粒物を得ることを特徴とする。
【0008】
本発明では、粉砕体を装填した筒状のポットを軸線周りに回転させて粉砕体をポット内において上昇、落下させ、その際の衝撃や摩擦により、処理対象物を粉砕する際、ポット内には、粉砕体として、形状の異なる複数種類の粉砕体が装填されているため、粉砕体は、種々の衝撃や摩擦を起こす。このため、粘土分を多量に含む土塊を処理対象物が含んでいる場合でも、土塊は、効率よく細粒化される。また、細粒化した土壌と、有機廃棄物、土壌改良剤、セメントなどの添加物とを混合する場合でも、効率よく、かつ、均一に細粒化した土壌と添加物とを混合することができる。
【0009】
本発明において、前記ポットは多重あるいは一重のいずれであってもよく、前記ポットが多重の場合、少なくとも一つのポットに対して形状の異なる複数種類の粉砕体を装填すればよい。
【0010】
本発明においては、前記ポットに形状の異なる複数種類の粉砕体を装填するため、土塊を効率よく細粒化でき、かつ、添加物の混合も効率よく行うことができる。従って、前記ポットは一重でよく、ポットが一重であれば、転動ミル装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、本発明において、前記ポットが一重の場合、当該ポットの胴部には、前記処理対象物の細粒物を排出可能なメッシュ部を形成することが好ましく、このように構成すると、細粒化された土壌はメッシュ部から排出されるので、土塊の細粒化、および細粒物と粗粒物との分別を効率よく同時に行うことができる。
【0012】
本発明において、前記複数種類の粉砕体には、ボール状粉砕体と棒状粉砕体とが含まれている構成を採用することができる。ボール状粉砕体では、細粒化という面では効率がよいが、細粒物をさらに微細粒化してしまう分、損失が多いのに対して、棒状粉砕体では、過粉砕が発生しにくいが、細粒化という面での効率が低いので、ボール状粉砕体と棒状粉砕体とを併用すれば、過粉砕を抑えながら、効率よく細粒化を行うことができる。
【0013】
本発明において、前記土塊の水分含有量を調整した状態で前記処理対象物を前記ポット内に投入することが好ましい。このように構成すると、土塊の細粒化を効率よく行うことができる。
【0014】
本発明において、前記処理対象物は、前記土塊とともに、有機廃棄物、土壌改良剤およびセメントのうちの少なくとも1つを添加物として含んでおり、細粒化土壌に前記添加物を混入させた状態で前記処理対象物の粗粒物から分別することが好ましい。
【0015】
ここで、有機廃棄物は、伐採木や抜根木などの木材を粉砕した木質チップ、かんな屑、籾殻などの農業廃棄物、雑誌や新聞紙などの紙を裁断したもの、堆肥(バーク堆肥、生ごみ堆肥、家畜糞尿堆肥など)、生ごみなどである。土壌改良剤は、保水剤、凝集剤、石灰などである。
【0016】
本発明に係る方法により得た細粒化土壌は、吹き付け基盤材や培養土などに用いることができる。
【0017】
本発明において、軸線周りに回転する筒状のポットと、該ポット内に装填された粉砕体とを有する転動ミル装置において、前記ポットは一重であり、前記ポット内には、前記粉砕体として、形状の異なる複数種類の粉砕体が装填されていることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記ポットの胴部には、処理対象物の細粒物を排出可能なメッシュ部が形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る転動ミル装置は、作業場などに設置して使用できる他、車両に搭載することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、粉砕体を装填した筒状のポットを軸線周りに回転させて粉砕体をポット内において上昇、落下させ、その際の衝撃や摩擦により、処理対象物を粉砕する際、ポット内には、粉砕体として、形状の異なる複数種類の粉砕体が装填されているため、粉砕体は、種々の衝撃や摩擦を起こす。このため、粘土分を多量に含む土塊を処理対象物が含んでいる場合でも、土塊は、効率よく細粒化される。また、細粒化した土壌と、有機廃棄物、土壌改良剤、セメントなどの添加物とを混合する場合でも、効率よく、かつ、均一に細粒化した土壌と添加物とを混合することができる。それ故、吹き付け基盤材や培養土を作成するのに適した土壌を効率よく作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、転動ミル装置を用いて、土塊を含む処理対象物の細粒化、および細粒物と粗粒物との分別を行う場合を中心に説明する。
【0022】
図1(a)、(b)は、本発明に係る転動ミル装置のポットの縦断面図、および粉砕体(粉砕媒体)の説明図である。図1(a)に示す転動ミル装置1は、処理対象物が投入される円筒状のポット3を備えており、ポット3の内部には、複数の粉砕体50が装填されている。転動ミル装置1において、ポット3は、内周側ポットおよび外周側ポットからなる2重のポットなどとして構成される場合があるが、本形態では、1重に構成されている。ポット3は、例えば4本のゴムタイヤで回転可能に支持されており、ポット3に掛けられたワイヤやチェーン(図示せず)などによって軸線周りに回転駆動される。
【0023】
本形態において、ポット3の胴部にはメッシュ部35が形成されており、処理対象物をポット3で粉砕した際に得られた細粒物は、メッシュ部35の開口を介してポット3の外に排出される。なお、処理対象物の粗粒物はポット3の内部に残るが、ポット3の排出口に設けられた蓋体37は開閉可能であるため、粗粒物をポット3から排出することができる。
【0024】
図1(a)(b)に示すように、本形態では、ポット3内には形状が異なる複数種類の粉砕体50が装填されている。例えば、本形態では、複数種類の粉砕体50として、複数個のボール状粉砕体51と、複数本の丸棒状粉砕体53とがポット3内に装填されている。かかる粉砕体50のうち、ボール状粉砕体51は、例えば、重量が1kg〜5kgの鉄球であり、丸棒状粉砕体53は、例えば、外径が16φ〜32φの鉄棒である。
【0025】
このように構成した転動ミル装置1を用いて、法面への吹き付け基盤材や培養土に用いられる細粒化土壌を製造するにあたっては、ポット3内に、土塊や石などを含む処理対象物(土砂)を投入した状態で、ポット3を軸線周りに回転させる。すると、ポット3内では、複数個のボール状粉砕体51、および複数本の丸棒状粉砕体53が各々、上昇、落下を繰り返し、その際の衝撃や摩擦により、処理対象物を粉砕する。その結果、処理対象物に、粘土や薬剤などに起因する土塊が含まれている場合でも、土塊は、ポット3内で細粒化された後、細粒化土壌としてポット3のメッシュ部35からポット3外に自重で落下する。これに対して、処理対象物に含まれていた石などの粗粒物は、ポット3の内部に残留するので、所定のタイミングでポット3の端部から排出される。
【0026】
ここで、粉砕体50としては、複数個の鉄製のボール状粉砕体51と、複数本の丸棒状粉砕体53とが用いられている。このため、単一形状の粉砕体50を用いた場合と違って、ボール状粉砕体51および丸棒状粉砕体53は、種々の衝撃や摩擦を起こす。このため、粘土分を多量に含む土塊を処理対象物が含んでいる場合でも、土塊は、効率よく細粒化される。それ故、吹き付け基盤材や培養土を作成するのに適した土壌を効率よく作成することができる。
【0027】
[その他の実施の形態]
上記形態において、土塊を含む処理対象物(土砂)をポット3に投入する際、あるいは投入した後、処理対象物に水を添加して、土塊の水分含有量を調整した状態で処理対象物をポット3内に投入することが好ましい。このように構成すると、土塊の細粒化を効率よく行うことができる。
【0028】
上記形態においては、土塊を含む処理対象物(土砂)をポット3に投入したが、培養土を製造する場合には、処理対象物としては、土塊とともに、有機廃棄物や土壌改良剤などの添加物を含んでいるものをポット3に投入してもよい。ここで、有機廃棄物は、伐採木や抜根木などの木材を粉砕した木質チップ、かんな屑、籾殻などの農業廃棄物、雑誌や新聞紙などの紙を裁断したもの、堆肥(バーク堆肥、生ごみ堆肥、家畜糞尿堆肥など)、生ごみなどである。土壌改良剤は、保水剤、凝集剤、石灰などである。このような処理対象物を用いると、細粒化土壌は、添加物が十分、分散した状態で石などの粗粒物から分別され、そのまま、培養土として用いることができる。また、培養土は、細粒化した状態のまま用いてもよいし、土ブロックに成形された状態で用いてもよい。
【0029】
また、吹き付け基盤材を製造する場合にも、有機廃棄物、セメントや土壌改良剤などの添加物を含んでいるものをポット3に投入してもよい。この場合も、有機廃棄物は、伐採木や抜根木などの木材を粉砕した木質チップ、かんな屑、籾殻などの農業廃棄物、雑誌や新聞紙などの紙を裁断したもの、堆肥(バーク堆肥、生ごみ堆肥、家畜糞尿堆肥など)、生ごみなどである。土壌改良剤は、保水剤、凝集剤、石灰などである。このような処理対象物を用いると、細粒化土壌は、添加物が十分、分散した状態で石などの粗粒物から分別され、そのまま、埴生用の吹き付け基盤材などとして用いることができる。
【0030】
なお、培養土および吹き付け基盤材を製造するにあたっては、そのまま、用いてもよいが、堆肥や生ごみなどを添加した場合には、所定の期間、定期的に水をかけながら放置し、その間に好気性微生物によって発酵させることにより、汚物感や悪臭を解消することが好ましい。その際、発酵熱により60℃以上にまで発熱するため、病原菌や寄生虫、雑草の種子などが死滅するので、良好な培養土および吹き付け基盤材を得ることができる。とりわけ、生ごみとしておから(大豆油粕)を添加した場合、栄養素がバランスよく含まれているので、植物の育成に好適な堆肥を作ることができる。
【0031】
さらに、上記形態では、形状の異なる粉砕体50として、ボール状粉砕体51と丸棒状粉砕体53とを用いたが、ボール状粉砕体と角棒状粉砕体との組み合わせ、丸棒状粉砕体と角棒状粉砕体との組み合わせ、ボール状粉砕体と直方体形状の粉砕体との組み合わせ、棒状粉砕体と直方体形状の粉砕体との組み合わせなどを採用してもよい。
【0032】
さらにまた、上記形態では、ポット3の胴部にはメッシュ部35を形成した構成を採用したが、形状の異なる複数種類の粉砕体50を用いるのであれば、転動ミル装置1の基本的な構成について、ポット3において排出口が胴部の端部にあるオーバーフロー型転動ミル装置、ポット3において排出口が胴部の一方端近傍にあるエンドペリフェラルディスチャージ型転動ミル装置、ポット3の軸線方向の略中央に排出口がセンターペリフェラルディスチャージ型転動ミル装置を採用してもよく、これらのいずれのタイプの転動ミル装置に対して本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)、(b)は、本発明に係る転動ミル装置のポットの縦断面図、および粉砕体の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1・・転動ミル装置
3・・ポット
35・・メッシュ部
50・・粉砕体
51・・ボール状粉砕体
53・・丸棒状粉砕体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動ミル装置のポット内に形状の異なる複数種類の粉砕体を装填するとともに、当該ポット内に土塊を含む処理対象物を投入した状態で、前記ポットを回転させて前記処理対象物の細粒物を得ることを特徴とする細粒化土壌の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ポットは一重であり、
当該ポットの胴部には、前記処理対象物の細粒物を排出可能なメッシュ部が形成されていることを特徴とする細粒化土壌の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数種類の粉砕体には、ボール状粉砕体と棒状粉砕体とが含まれていることを特徴とする細粒化土壌の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記土塊の水分含有量を調整した状態で前記処理対象物を前記ポット内に投入することを特徴とする細粒化土壌の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記処理対象物は、前記土塊とともに、有機廃棄物、土壌改良剤およびセメントのうちの少なくとも1つを添加物として含んでおり、
細粒化土壌に前記添加物を混入させた状態で前記処理対象物の粗粒物から分別することを特徴とする細粒化土壌の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法により得た細粒化土壌を用いたことを特徴とする吹き付け基盤材。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法により得た細粒化土壌を用いたことを特徴とする培養土。
【請求項8】
軸線周りに回転する筒状のポットと、該ポット内に装填された粉砕体とを有する転動ミル装置において、
前記ポットは一重であり、
前記ポット内には、前記粉砕体として、形状の異なる複数種類の粉砕体が装填されていることを特徴とする転動ミル装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記ポットの胴部には、処理対象物の細粒物を排出可能なメッシュ部が形成されていることを特徴とする転動ミル装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の転動ミル装置を搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
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【公開番号】特開2008−126120(P2008−126120A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312444(P2006−312444)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(506388299)株式会社犀栄エンジニア (1)
【Fターム(参考)】