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細胞と生体適合性高分子を含む組成物
説明

細胞と生体適合性高分子を含む組成物

【課題】移植後の細胞の流出を抑制でき、かつ細胞の生存率を向上できるような、細胞含有組成物を提供すること。
【解決手段】 骨髄間質細胞由来神経前駆細胞、骨髄間質細胞由来シュワン細胞及び骨髄間質細胞由来骨格筋細胞の何れかの細胞、及び生体適合性高分子とを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄間質細胞由来神経前駆細胞、骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞、又は骨髄間質細胞由来骨格筋細胞の何れかと体適合性高分子とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系組織の損傷は様々な疾患の原因となっている。例えば、脳梗塞は虚血により脳組織が壊死することにより引き起こされる。パーキンソン病は、中脳黒質に存在するドーパミン産生細胞の変性が原因となる神経変性疾患である。脊髄損傷は、主として強い外力により脊髄を損傷する疾患である。
【0003】
中枢神経系組織の欠失により、運動機能、感覚機能、及び認知機能の障害が発生する。しかし、中枢神経系組織は再生力が非常に乏しいことが知られており、一度損傷を受けると基本的に治療が難しい。現在、リハビリテーションなどによって、損なわれた機能を回復させることが行われているが、効果が現れるまでに長時間がかかるうえ、一旦、障害が生じた機能の回復は非常に難しい。
【0004】
しかし、近年、外来性の細胞(骨髄幹細胞、神経幹細胞、ES細胞、脂肪組織由来幹細胞など神経系細胞へ分化が可能な細胞)の移植により、損傷した中枢神経系組織の再生が試みられている(Nat Med 10 : S42-S50, 2004)。
【0005】
米国特許第7,682,825号には、Notch遺伝子の導入によって骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化させる方法が記載されている。その発明者らは、骨髄間質細胞の形態形成の初期の段階において中心的役割を担う遺伝子を導入することによる骨髄間質細胞の刺激を調べ、骨髄間質細胞の分化誘導に対する上記刺激の効果を調べた。特に、神経系の発生分化において重要な役割を担い、前駆細胞が神経細胞又はグリア細胞に分かれる際の細胞の運命の決定において機能を担っているNotch遺伝子又はNotchシグナル伝達遺伝子の導入によって骨髄間質細胞をリセットすることが可能かもしれないという可能性が期待された。細胞分化の誘導を抑制する機構におけるNotch遺伝子又はNotchシグナル伝達関連遺伝子の関与にも関わらず、Notch遺伝子又はNotchシグナル伝達関連遺伝子の導入と、他の分化誘導刺激とを組み合わせることによって、(Notch遺伝子又はNotchシグナル伝達関連遺伝子が導入された細胞と接触している細胞ではなく)Notch遺伝子又はNotchシグナル伝達関連遺伝子が導入された細胞自体の分化を誘導できるということは全く予想外の知見であったことに注目に値する。上記の発明の分化誘導方法におけるNotch遺伝子又はNotchシグナル伝達関連遺伝子の導入により、骨髄間質細胞の発生上の分化をリセットされることは確認されていない。しかしながら、上記発明による遺伝子導入と他の分化誘導工程との組み合わせによって、骨髄間質細胞と神経細胞又は骨格筋細胞に効率的に分化誘導する方法を提供することが結果として可能であった。
【0006】
US2006/0216276では、中枢神経系組織を損傷した患者、特に脳梗塞の患者に対して、Notch細胞内ドメイン遺伝子の導入によって骨髄接着性幹細胞から分化転換された神経前駆細胞を投与する方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,682,825号
【特許文献2】米国特許出願公開US2006/0216276
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nat Med 10 : S42-S50, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
US2006/0216276に記載の方法は、移植後に細胞が流出する、移植細胞の生存率が低いといった問題がある。移植した細胞のうち、中枢神経組織として生着する細胞は非常に少ない。本発明は、移植後の細胞の流出を抑制でき、かつ細胞の生存率を向上できるような、細胞含有組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、移植細胞として使用するNotch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を導入した骨髄間質細胞を生体適合性高分子に接着させた細胞含有組成物を調製することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)以下の(a)、(b)及び(c)の何れかの細胞、及び(B)生体適合性高分子とを含む組成物。
(a)(1)Notch配列を含む核酸(ここで、Notch配列はNotch細胞内ドメインをコードする配列からなる)を骨髄間質細胞に導入し、(2)上記骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化するように培養することによって得られる(ここで得られる分化細胞は、上記核酸が導入された骨髄間質細胞の子孫である)、骨髄間質細胞由来神経前駆細胞;
(b)(1)骨髄から骨髄間質細胞を回収し、上記細胞を血清を補充した標準必須培地で培養し、(2)還元剤を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(3)レチノイン酸を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(4)ホルスコリン、及び/又は神経及びグリア細胞に作用する分化・生存及び増殖刺激因子を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養して骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞を得ることによって得られる、骨髄間質細胞由来シュワン細胞;及び
(c)(1)(i)サイクリックAMP(cAMP)増加剤又はcAMPアナログ、及び(ii)bFGF、 PDGF-AA、及びニューレグリンを含む細胞分化刺激因子を、骨髄間質細胞の培養物に添加し(ここで、上記骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない)、上記細胞を培養し、(2)(1)で得られた細胞にNotch遺伝子を導入し、細胞を培養して筋芽細胞の培養物を取得し(但し、上記培養物は、遺伝子を導入された細胞と遺伝子が導入されていない細胞との共培養物を含まない)、そして(3)Notchリガンドを(2)で得た筋芽細胞の培養物に添加し、骨格筋細胞が誘導されるように上記細胞を培養することによって得られる骨髄間質細胞由来骨格筋細胞:
【0012】
[2] 生体適合性高分子が、ゼラチンである、[1]に記載の組成物。
[3] 生体適合性高分子が、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンである、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が2 KDa以上100 KDa以下である、[3]に記載の組成物。
[5] 遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が10 KDa以上90 KDa以下である、[3]又は[4]に記載の組成物。
【0013】
[6] 遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含む、[3]から[5]の何れか1項に記載の組成物。
[7] 細胞接着シグナルがArg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列である、[6]に記載の組成物。
[8] 遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン及びスレオニンを含まない、[3]から[7]の何れか1項に記載の組成物。
[9] 遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、及びシステインを含まない、[3]から[8]の何れか1項に記載の組成物。
[10] 遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、Asp-Arg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列を含まない、[3]から[9]の何れか1項に記載の組成物。
【0014】
[11] 遺伝子組み換えゼラチンが、
式:A−[(Gly−X−Y)−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、[3]から[10]の何れか1項に記載の組成物。
[12] 遺伝子組み換えゼラチンが、
式:Gly-Ala-Pro-[(Gly−X−Y)63−Gly
(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で示される、[3]から[11]の何れか1項に記載の組成物。
【0015】
[13] 遺伝子組み換えゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、神経細胞または神経細胞へ分化可能な細胞と接着性を有するアミノ酸配列を有する、[3]から[12]の何れか1項に記載の組成物。
[14] 遺伝子組み換えゼラチンが架橋されている、[3]から[13]の何れか1項に記載の組成物。
[15] 架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施される、[14]に記載の組成物。
【0016】
[16] (A)以下の(a)及び(b)の何れかの細胞、及び(B)生体適合性高分子とを含む組成物を含む、神経疾患の治療剤。
(a)(1)Notch配列を含む核酸(ここで、Notch配列はNotch細胞内ドメインをコードする配列からなる)を骨髄間質細胞に導入し、(2)上記骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化するように培養することによって得られる(ここで得られる分化細胞は、上記核酸が導入された骨髄間質細胞の子孫である)、骨髄間質細胞由来神経前駆細胞;
(b)(1)骨髄から骨髄間質細胞を回収し、上記細胞を血清を補充した標準必須培地で培養し、(2)還元剤を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(3)レチノイン酸を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(4)ホルスコリン、及び/又は神経及びグリア細胞に作用する分化・生存及び増殖刺激因子を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養して骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞を得ることによって得られる、骨髄間質細胞由来シュワン細胞;
[17] 局所的に投与される、[16]に記載の神経疾患の治療剤。
[18] 患者の中枢神経系に投与される、[16]又は[17]に記載の神経疾患の治療剤。
【0017】
[19] (A)以下の(c)の細胞、及び(B)生体適合性高分子とを含む組成物を含む、筋肉疾患の治療剤。
(c)(1)(i)サイクリックAMP(cAMP)増加剤又はcAMPアナログ、及び(ii)bFGF、 PDGF-AA、及びニューレグリンを含む細胞分化刺激因子を、骨髄間質細胞の培養物に添加し(ここで、上記骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない)、上記細胞を培養し、(2)(1)で得られた細胞にNotch遺伝子を導入し、細胞を培養して筋芽細胞の培養物を取得し(但し、上記培養物は、遺伝子を導入された細胞と遺伝子が導入されていない細胞との共培養物を含まない)、そして(3)Notchリガンドを(2)で得た筋芽細胞の培養物に添加し、骨格筋細胞が誘導されるように上記細胞を培養することによって得られる骨髄間質細胞由来骨格筋細胞:
[20] 局所的に投与される、[19]に記載の筋肉疾患の治療剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移植細胞は生体適合性高分子に固定されているため、移植後の細胞の流出が抑えられる。また、細胞にとって、適切な足場に接着していることが生存に不可欠である。この点においても、本発明においては、移植細胞は生体適合性高分子に接着させた組成物として提供されることから、移植細胞の生存率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、CBE3粒子 (乾燥状態)のSEM 像を示す。
【図2】図2は、ラット海馬切片上での細胞生存率の促進を示す。
【図3】図3は、超低接着培養プレート上での細胞生存率の促進を示す。
【図4】図4は、細胞を接着させたCBE3粒子をCellStain Calsein AM(Invitrogen社)で染色し、染色された粒子を蛍光顕微鏡で観察することによって得た結果を示す。
【図5】図5は、CBE3粒子上の細胞数を示す。
【図6】図6は、CBE3粒子によるラット脳における移植細胞の生存率の促進を示す。
【図7】図7は、宿主ニューロンを計測するための領域を示す。
【図8】図8は、宿主ニューロンの保護を示す(1月post-TP)
【図9】図9は、ミエリンの保護を示す(1月post-TP)
【図10】図10は、CBE3 又はPDLでコートしたガラス上でのSB168の細胞生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
(I)本発明で使用する細胞
(a)骨髄間質細胞由来神経前駆細胞;
本発明で使用する骨髄間質細胞由来神経前駆細胞は、米国特許第7,682,825号に記載の通り、(1)Notch配列を含む核酸(ここで、Notch配列はNotch細胞内ドメインをコードする配列からなる)を骨髄間質細胞に導入し、(2)上記骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化するように培養することによって得られる(ここで得られる分化細胞は、上記核酸が導入された骨髄間質細胞の子孫である)ものである。米国特許第7,682,825号の記載内容は引用により本明細書書中に取り込むものとする。
【0021】
Notch遺伝子又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を骨髄間質細胞に導入することによって、神経分化の促進に関与すると考えられる各種因子及びサイトカインを投与することによって、そして分化開始のための一般的な誘因と考えられる細胞内cAMPを増加させることによって、インビトロ培養条件下で骨髄間質細胞を神経細胞に上手く分化誘導することができる。神経細胞の分化誘導は、神経細胞に特異的なMAP-2及びニューロフィラメントの発現だけでなく、神経伝達物質シンテターゼチロシンヒドロキシラーゼの発現、及びアセチルコリン、神経ペプチドY及びP物質(substance P)等の神経伝達物質の産生によっても確認される。
【0022】
(1)Notch配列を含む核酸(ここで、Notch配列はNotch細胞内ドメインをコードする配列からなる)を導入し、(2)上記骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化するように培養することによって得られる(ここで得られる分化細胞は、上記核酸が導入された骨髄間質細胞の子孫である)神経前駆細胞を、中枢神経損傷の治療のために使用することも可能である。上記のような神経前駆細胞を用意し、これらの神経前駆細胞を、中枢神経損傷を罹患する患者に、患者の機能回復を促進するのに十分な量で投与することが可能である。上記については、例えば、米国特許出願2006/0216276などに記載されている。米国特許出願2006/0216276の記載内容は引用により本明細書書中に取り込むものとする。
【0023】
米国特許第7,682,825号に記載の通り、骨髄間質細胞は、Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を細胞内に導入することによって、神経細胞、ドーパミン作動性ニューロン、アセチルコリン作動性ニューロン又は骨格筋細胞にインビトロで分化誘導することができる(ここで、得られる分化細胞は、Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子が導入された骨髄間質細胞の細胞分裂の子孫である)。
【0024】
さらに、骨髄間質細胞は、
(1)骨髄から骨髄間質細胞を単離し、この細胞を血清を補充した標準必須培地中で培養する工程;及び
(2)Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を細胞に導入し、この細胞を培養して神経前駆細胞を製造する工程:
によってインビトロで神経前駆細胞に分化誘導することができる。
【0025】
単離された骨髄間質細胞は、ヒト細胞でもよい。
上記方法により製造された神経前駆細胞は、本発明において使用することができる。
本発明においては、神経前駆細胞マーカーであるGLAST、3PGDH及びネスチンを発現する神経前駆細胞を使用してもよい。
【0026】
さらに、骨髄間質細胞は、
(1)骨髄から骨髄間質細胞を単離し、この細胞を血清を補充した標準必須培地中で培養する工程;
(2)Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を細胞に導入し、この細胞を培養する工程;及び
(3)サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログ、及び/又は細胞分化刺激因子を培地に添加し、細胞をさらに培養して神経細胞を製造する工程(ここで、得られる分化細胞は、Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子が導入された骨髄間質細胞の細胞分裂の子孫である):
によってインビトロで神経細胞に分化誘導することができる。
【0027】
標準必須培地は、Eagleのα改変最小必須培地でもよく、血清は胎児ウシ血清でもよい。
Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子の導入は、哺乳動物用発現ベクターを用いてリポフェクションにより行うことができる。
上記の方法は、工程(2)と(3)の間に、所定の期間、遺伝子が導入された細胞を選択する工程を含んでいてもよい。
サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログとしては、ホルスコリンを挙げることができ、その濃度は0.001 nM から100 μMとすることができる。
【0028】
細胞分化刺激因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。細胞分化刺激因子の濃度は、0.001 ng/mlから100 μg/mlの間である。
単離された骨髄間質細胞は、好ましくはヒト細胞である。
上記方法により製造された神経細胞は、本発明において使用することができる。
本発明においては、神経細胞マーカーであるβ−チューブリンアイソタイプ3及びTuJ-1を発現する神経細胞を使用してもよい。
【0029】
更に、骨髄間質細胞は、
(1)骨髄から骨髄間質細胞を単離し、この細胞を血清を補充した標準必須培地中で培養する工程;
(2)Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を細胞に導入し、この細胞を培養する工程;
(3)サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログ、及び/又は細胞分化刺激因子を培地に添加し、細胞をさらに培養して神経細胞を製造する工程;
(4)工程(3)で得た神経細胞を血清を補充した標準必須培地中で培養する工程;及び
(5)グリア由来神経栄養因子(GDNF)、及びサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログ、及び/又はグリア由来神経栄養因子以外の細胞分化刺激因子を培地に添加し、細胞をさらに培養してドーパミン作動性ニューロンを得る工程(ここで得られるドーパミン作動性細胞は、Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子が導入された骨髄間質細胞の子孫である):
によってインビトロでドーパミン作動性ニューロンに分化誘導することができる。
【0030】
工程(4)における標準必須培地は、Eagleのα改変最小必須培地でもよい。工程(4)における血清は胎児ウシ血清でもよい。
工程(5)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログとしては、ホルスコリンを挙げることができる。工程(5)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログの濃度は、0.001 nM から100 μMとすることができる。
【0031】
工程(5)におけるグリア由来神経栄養因子以外の細胞分化刺激因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子−AA(PDGF-AA)及びそれらの混合物からなる群から選択してもよい。
工程(5)におけるグリア由来神経栄養因子の濃度は、0.001 ng/ml から100 μg/mlの間とすることができ、好ましくは1 ng/mlから 100 ng/mlの間である。工程(5)におけるグリア由来神経栄養因子以外の細胞分化刺激因子の濃度は、0.001 ng/mlから100 μg/mlの間とすることができる。
【0032】
単離された骨髄間質細胞は、好ましくはヒト細胞である。
上記方法により製造されたドーパミン作動性ニューロンは、本発明において使用することができる。
【0033】
さらに、骨髄間質細胞は、
(1)骨髄から骨髄間質細胞を単離し、この細胞を血清を補充した標準必須培地中で培養する工程;
(2)Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を細胞に導入し、この細胞を培養する工程;
(3)サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログ、及び/又は細胞分化刺激因子を培地に添加し、細胞をさらに培養して神経細胞を製造する工程;
(4)工程(3)で得た神経細胞を血清を補充した標準必須培地中で培養する工程;及び
(5)神経成長因子(NGF)、及びサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログ、及び/又は神経成長因子以外の細胞分化刺激因子を培地に添加し、細胞をさらに培養してアセチルコリン作動性ニューロンを得る工程(ここで、得られるアセチルコリン作動性細胞は、Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子が導入された骨髄間質細胞の子孫である):
によってインビトロでアセチルコリン作動性ニューロンに分化誘導することができる。
【0034】
工程(4)における標準必須培地は、Eagleのα改変最小必須培地でもよい。工程(4)における血清は胎児ウシ血清でもよい。
工程(5)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログとしては、ホルスコリンを挙げることができる。工程(5)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログの濃度は、0.001 nM から100 μMとすることができる。
【0035】
工程(5)における神経成長因子以外の細胞分化刺激因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子−AA(PDGF-AA)及びそれらの混合物からなる群から選択してもよい。
工程(5)における神経成長因子の濃度は、0.001 ng/ml から100 μg/mlの間とすることができ、好ましくは1 ng/mlから 100 ng/mlの間である。工程(5)における神経成長因子以外の細胞分化刺激因子の濃度は、0.001 ng/mlから100 μg/mlの間とすることができる。
【0036】
単離された骨髄間質細胞は、好ましくはヒト細胞である。
上記方法により製造されたアセチルコリン作動性ニューロンは、本発明において使用することができる。
【0037】
さらに、骨髄間質細胞は、
(1)骨髄から骨髄間質細胞を単離し、この細胞を血清を補充した標準必須培地中で培養する工程;
(2)脱メチル化剤を培地に添加し、細胞をさらに培養する工程;
(3)サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログ、及び/又は細胞分化刺激因子を培地に添加し、細胞をさらに培養する工程;
(4)Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子を細胞に導入し、この細胞を培養する工程;
(5)遺伝子を導入した細胞を、遺伝子を導入していない未処理の骨髄間質細胞と一緒に共培養する工程;及び
(6)サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログを培地に添加し、細胞をさらに培養して骨格筋細胞を得る工程(ここで得られる分化細胞は、Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子が導入された骨髄間質細胞の子孫である);
によってインビトロで骨格筋細胞に分化誘導することができる。
【0038】
標準必須培地は、Eagleのα改変最小必須培地でもよく、血清は胎児ウシ血清でもよい。
脱メチル化剤は、5−アザシチジンでもよく、その濃度は30 nmol/lから300 μmol/lの間とすることができる。
工程(3)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログとしては、ホルスコリンを挙げることができる。工程(3)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログの濃度は、0.001 nM から100 μMとすることができる。
【0039】
細胞分化刺激因子は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子−AA(PDGF-AA)、ヘレグリン及びそれらの混合物からなる群から選択してもよく、その濃度は0.001 ng/ml から100 μg/mlの間とすることができる。Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子の導入は、哺乳動物用ベクターを用いてリポフェクションにより行うことができる。
【0040】
上記の方法は、工程(4)と(5)の間に、所定の期間、遺伝子が導入された細胞を選択する工程を含んでいてもよい。
工程(5)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログとしては、ホルスコリンを挙げることができる。工程(5)におけるサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログの濃度は0.001 nM から100 μMとすることができる。
【0041】
単離された骨髄間質細胞は、好ましくはヒト細胞である。
上記方法により製造された骨格筋細胞は、本発明において使用することができる。
【0042】
(b)骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞
本発明で使用する骨髄間質細胞由来シュワン細胞は、米国特許第6,989,271号に記載の通り、(1)骨髄から骨髄間質細胞を回収し、上記細胞を血清を補充した標準必須培地で培養し、(2)還元剤を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(3)レチノイン酸を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(4)ホルスコリン、及び/又は神経及びグリア細胞に作用する分化・生存及び増殖刺激因子を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養して骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞を得ることによって得られるものである。米国特許第6,989,271号の記載内容は引用により本明細書中に取り込まれるものとする。
【0043】
工程(1)における細胞密度は50%コンフルエントでもよく、細胞は好ましくは4回まで継代される。
標準必須培地は、Eagleのα改変最小必須培地(M4526, Sigma)でもよく、血清は胎児ウシ血清(14-501F, Lot #61-1012, BioWhittaker Co.)でもよい。血清は、20%濃度まで添加することができる。還元剤はSH試薬であり、SH試薬は好ましくは、β-メルカプトエタノール(214-18, Lot# MOM7582, Nacalai Tesque)である。還元剤の濃度は、1 nMから10 mMとすることができ、好ましくは10 nMから5 mM であり、更に好ましくは100μM から2 mMである。工程(2)の培養時間は1時間〜5日間でもよく、好ましくは12〜48時間であり、更に好ましくは18〜30時間である。上記した試薬濃度は、細胞同士が直接接触できるような培地中濃度である(以下に記載する試薬についても同様である)。
【0044】
分化誘導剤は、レチノイン酸(全トランス)(R-2625, Sigma)でもよい。分化誘導剤の濃度は、0.001 ng/mlから1μg/mlとすることができ、好ましくは1 ng/mlから200 ng/mlであり、より好ましくは10 ng/mlから60 ng/mlである。工程(3)において、工程(2)で使用した培地を、工程(2)が完了した後に、新しい分化誘導剤含有培地に交換してもよい。新しい培地は、分化誘導剤を含有するという点を除けば、工程(1)で使用した培地と同一である。工程(3)の培養時間は、1時間から30日間とすることができ、好ましくは12時間〜7日間であり、より好ましくは2〜4日間である。
【0045】
サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログとしては、ホルスコリン(344273, Calbiochem)を挙げることができる。サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログの濃度は0.001 ng/mlから100 μg/mlとすることができ、好ましくは100 ng/ml から50μg/mlとすることができ、より好ましくは1 μg/ml から10μg/mlとすることができる。
【0046】
グリア細胞の分化・生存刺激因子としては、ニューレグリン、血小板由来増殖因子-AA (396-HB, Peprotech EC, Ltd.)、塩基性線維芽細胞増殖因子(100-18B, Peprotech EC, Ltd.)又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。ニューレグリンは、Heregulin.TM.(396-HB, R&D Corp.)として入手可能である。グリア細胞の分化・生存刺激因子の濃度は、0.001 ng/mlから100μg/mlとすることができ、血小板由来増殖因子-AA については濃度は好ましくは0.1 ng/mlから100 ng/mlであり、より好ましくは1 ng/mlから10 ng/mlであり、塩基性線維芽細胞増殖因子については濃度は好ましくは10 ng/mlから1μg/mlであり、より好ましくは100 ng/mlから300 ng/mlである。工程(4)における培養時間は、1時間から30日間であり、好ましくは4から10日間である。
【0047】
「骨髄間質細胞」とは、造血系のものではなく、骨、軟骨などに分化できると考えられる骨髄中の細胞のことを言う。骨髄間質細胞は、Thy1.2及びβ1-インテグリンが陽性であり、CD34が陰性であり、S-100(カルシウム結合タンパク質)は陽性でも陰性でもよい。Thy1.2、β1-インテグリン及びCD34の抗体を使用した。
【0048】
(C)骨髄間質細胞由来骨格筋細胞
本発明で使用する骨髄間質細胞由来骨格筋細胞は、米国特許第7,718,429号に記載の通り、(1)(i)サイクリックAMP(cAMP)増加剤又はcAMPアナログ、及び(ii)bFGF、 PDGF-AA、及びニューレグリンを含む細胞分化刺激因子を、骨髄間質細胞の培養物に添加し(ここで、上記骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない)、上記細胞を培養し、(2)(1)で得られた細胞にNotch遺伝子を導入し、細胞を培養して筋芽細胞の培養物を取得し(但し、上記培養物は、遺伝子を導入された細胞と遺伝子が導入されていない細胞との共培養物を含まない)、そして(3)Notchリガンドを(2)で得た筋芽細胞の培養物に添加し、骨格筋細胞が誘導されるように上記細胞を培養することによって得られるものである。米国特許第7,718,429号の記載内容は、引用により本明細書中に取り込まれるものとする。
【0049】
本発明で使用する骨髄間質細胞とは、骨髄中に存在する細胞で、造血系細胞以外の細胞であり、それらは骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などに分化できる能力を有すると考えられている。骨髄間質細胞は、Thy1及び2が陽性(+)、β1-インテグリンが陽性(+)、CD34が陰性(−)であることによって同定される。骨髄間質細胞の製造方法は、特開2003−144155号公報に具体的に詳述されており、当業者は骨髄間質細胞を容易に入手することができる。例えば、骨髄間質細胞の培養物は、骨髄から骨髄間質細胞を抽出し、血清を補充した標準基礎培地で細胞を培養することによって調製することができる。例えば、骨髄間質細胞を3から4回継代し、例えば、約1700細胞/cm2の細胞密度に調整した培養物を調製することが望ましい。標準基礎培地としては、Eagleのα改変最小必須培地などを使用することができ、血清としては、胎児ウシ血清、又はヒトの場合にはヒト血清を使用することができる。骨髄間質細胞は、脱メチル化剤で処理する必要はない。
【0050】
サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログとしては、例えば、ホルスコリンを使用することができるが、これに限定はされない。1種以上のサイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログを適宜使用することができる。サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログの濃度は特に限定されないが、濃度は、例えば0.001 nM から100 μMとすることができ、好ましくは500 nM から50μMとすることができる。細胞分化刺激因子としては、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子-AA (PDGF-AA)、ニューレグリン(商品名: Heregulin)などを使用することができ、2種類以上のこれらの物質を組み合わせて使用することもできる。細胞分化刺激因子の濃度は特に限定されないが、濃度は、例えば、約0.001 ng/mlから100μg/mlとすることができ、好ましくは約0.5 ng/mlから 2μg/mlである。細胞分化刺激因子は、サイクリックAMP増強剤又はサイクリックAMPアナログと組み合わせて使用することも好ましい。例えば、ホルスコリン (5μM)、bFGF (10 ng/ml)、PDGF-AA (5 ng/ml)及びニューレグリン(200 ng/ml)を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するMEM(Eagle改変培地)に添加し、骨髄間質細胞をその中で培養する。この段階で、骨格筋幹細胞のマーカーであるPax7が発現するようになり、このマーカーを指標として、上記試薬の添加と培養を行うことができる。
【0051】
Notch遺伝子及び/又はNotchシグナル伝達関連遺伝子の導入は、哺乳動物細胞用の発現ベクターを用いて、例えば、リポフェクションにより行うことができる。しかしながら、方法は上記方法に限定されず、好適な遺伝子導入手段を使用することができる。例えば、 Notch 細胞質ドメイン(NICD) cDNAを含むpCI-neo-NICDプラスミド(特開2003−144155号公報の実施例1に記載のプラスミド)を導入することができる。上記の遺伝子導入後、遺伝子を導入した細胞を好ましくは選択することができる。この選択は、例えば、G418硫酸塩を添加し、ネオマイシン耐性に基づいて行うことができ、通常は約10〜14日間で完了する。選択した細胞は望ましくは、100%コンフルエントになるまで培養する。上記のようにして得た細胞は筋芽細胞を構成しており、これらの細胞は、MyoD及びミオゲニンなどの骨格筋マーカーとしての転写因子を検出できるように形質転換されている。遺伝子導入または上記した選択の後、特開2003−144155号公報に記載した方法では、遺伝子導入後の細胞と遺伝子導入していない細胞とを共培養する工程を採用している。しかし、上記した共培養は、本発明の方法では行われない。
【0052】
次いで、生じた筋芽細胞から成熟した骨格筋細胞を誘導するための融合誘導を、工程(3)に従って行う。この工程は、筋芽細胞の培養物にNotchリガンドを添加し、細胞を培養することによって行うことができる。Notchリガンドとしては、例えば、Jagged 1タンパク質(Lindsell, C. E. et al., Cell, 80, pp. 909-917, 1995)を使用することができる。Jagged 1タンパク質の濃度は特に限定されないが、濃度は例えば、約1から20 μg/mlとすることができ、好ましくは約5μg/mlである。培地の種類は特に限定されず、通常の基礎培地、例えば、MEM(Eagle改変培地)などを使用することができる。FBSなどの血清約10%を培地に添加することもできるが、血清を含まない培地を好ましくは使用することができる。例えば、TTS-血清フリー培地(Yoshida, N. et al., J. Cell Sci., 111, pp. 769-779, 1998)などの血清を含まない培地を用いることによって、臨床応用に好適な骨格筋細胞を調製することができる。上記した融合誘導の結果、Myf6/MRF4などの成熟マーカーを発現し、ミオシン重鎖及び骨格ミオシンが陽性である多核骨格筋細胞が誘導される。これらの骨格筋細胞は、培養中、自発的な収縮移動を示す。特開2003−144155号公報に記載された方法においては、遺伝子導入後の細胞と、遺伝子を導入していない細胞とを共培養し、次いでcAMP 増強剤又はcAMPアナログを培地に添加して、成熟骨格筋細胞に分化誘導する。しかしながら、本発明の方法においては、cAMP 増強剤又はcAMPアナログを培地に添加する必要はない。
【0053】
次いで、得られた骨格筋細胞の培養物を1ウエル当たり1細胞の密度まで限界希釈することによって、骨格筋細胞をクローニングすることができ、収縮能を有する多核骨格筋細胞の集団を、生存クローンから再度取得することができ、これらは通常約90%の割合で取得される。得られた細胞集団は、筋肉細胞から実質的に純粋に構成され、他の要素を含まない集団であり、特に筋肉疾患などの治療目的のために、好ましくは使用することができる。さらに、得られた細胞集団は、骨格筋幹細胞を含んでおり、数回の継代後においても、上記から筋肉細胞を安定的に調製することができる。
【0054】
(II)生体適合性高分子
本発明で用いる生体適合性高分子は、タンパク質、ポリアミノ酸、糖質、又は生体適合性合成高分子でもよい。
タンパク質の種類は特に限定されないが、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパクが好ましく、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。コラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、カゼインナトリウム、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。また、タンパク質の由来は特に限定するものではなく、ヒト、牛、豚、魚、および遺伝子組み換え体のいずれも用いることができる。本発明でカゼインを用いる場合、カゼインの由来は特に限定されず、乳由来であっても、豆由来であってもよく、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインおよびそれらの混合物を使用することができる。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に用いられるタンパク質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
ポリアミノ酸の例としては、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、及びポリリジンが挙げられる。
糖質の例としては、ポリガラクツロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン、硫酸デキストラン、硫酸セルロース、アルギン酸、デキストラン、カルボキシメチルキチン、ガラクトマンナン、アラビア・ゴム、トラガカント・ゴム、ジェランガム、硫酸化ジェラン、カラヤゴム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、カードラン、プルラン、セルロース、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、グルコマンナン、キチン、キトサン、キシログルカン、及びレンチナンが挙げられる。
【0056】
合成高分子の例としては、脂肪族エステル類[例えば、ポリグリコール酸、ポリ酢酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ポリ(コハク酸ブチレン)、ポリ(コハク酸エチレン)、及びそれらのコポリマー]、脂肪族ポリカーボネート類[例えば、ポリ(ブチレンカーボネート)、及びポリ(エチレンカーボネート)]、並びにビニルポリマー化ポリマー類[例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、及びポリビニルアルコール]が挙げられる。
【0057】
本発明においては、コラーゲンのアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有するゼラチンを使用することができる。任意の天然由来コラーゲンを使用することができる。好ましくは、I型、II型、III型、IV型及びV型コラーゲンを使用することができる。より好ましくは、I型、II型及びIII型コラーゲンを使用することができる。別の側面によれば、コラーゲンの由来は、好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス又はラットである。より好ましくは、ヒト由来である。
【0058】
本発明で用いるゼラチンの種類は、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含む限り、特に限定されない。好ましくは、ゼラチンはコラーゲンに特徴的なGXY領域を含む。コラーゲンに特徴的なGXY領域とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成および配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。このGXY領域においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X及びYであらわされるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、イミノ酸は全体の10%〜45%を占める。
【0059】
本発明で用いるゼラチンは、天然の動物に由来するゼラチンでもよいし、遺伝子組み換えゼラチンでもよい。天然の動物に由来するゼラチンを使用する場合、ゼラチンの由来は特に限定されない。由来は、魚、ウシ、ブタまたはヤギなどの任意の動物のものを使用することができる。
【0060】
上記の中でも、遺伝子組み換えゼラチンは、生体適合性高分子として特に好ましく使用される。遺伝子組み換えゼラチンは動物に由来するものではなく、人工的なゼラチンであるため、外因性感染を回避できる生体適合性が高い材料である。
【0061】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとしては、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンを用いることができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとして好ましいものは、以下の態様の遺伝子組み換えゼラチンである。
【0062】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは天然のゼラチン本来の性能から、生体適合性に優れ、且つ天然由来ではないことでBSEなどの懸念がなく、非感染性に優れている。また、本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは天然のものに比して均一であり、配列が決定されているので、強度、分解性においても後述の架橋等によってブレを少なく精密に設計することが可能である。
【0063】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンの分子量は2 KDa以上100 KDa以下であることが好ましい。より好ましくは2.5 KDa以上95KDa以下である。より好ましくは5 KDa以上90 KDa以下である。最も好ましくは、10 KDa以上90KDa以下である。
【0064】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、好ましくはコラーゲンに特徴的なGly−X−Yで示される配列の繰り返しを有する。GXYにおいて、Gはグリシン、X及びYは、任意のアミノ酸(好ましくは、グリシン以外の任意のアミノ酸)を表す。コラーゲンに特徴的なGly−X−Y配列とは、ゼラチン・コラーゲンのアミノ酸組成および配列における、他のタンパク質と比較して非常に特異的な部分構造である。この部分においてはグリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっている。グリシンは最も簡単なアミノ酸であり、分子鎖の配置への束縛も少なく、ゲル化に際してのヘリックス構造の再生に大きく寄与している。X,Yであらわされるアミノ酸はイミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が多く含まれ、全体の10%〜45%を占めることが好ましい。好ましくはその配列の80%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸がGXYの繰り返し構造であることが好ましい。
【0065】
一般的なゼラチンは極性アミノ酸のうち、電荷を持つものと無電荷のものが1:1で存在する。ここで、極性アミノ酸とは具体的にシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン及びアルギニンを指し、このうち極性無電荷アミノ酸とはシステイン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシンを指す。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおいては、構成する全アミノ酸のうち、極性アミノ酸の割合が10〜40%であり、好ましくは20〜30%である。且つ該極性アミノ酸中の無電荷アミノ酸の割合が5%以上20%未満、好ましくは10%未満であることが好ましい。さらに、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、システインのうちいずれか1アミノ酸、好ましくは2以上のアミノ酸を配列上に含まないことが好ましい。
【0066】
一般にポリペプチドにおいて、細胞接着シグナルとして働く最小アミノ酸配列が知られている(例えば、株式会社永井出版発行「病態生理」Vol.9、No.7(1990年)527頁)。本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、これらの細胞接着シグナルを一分子中に2以上有することが好ましい。具体的な配列としては、接着する細胞の種類が多い配列が好ましい。具体的には、RGD配列、LDV配列、REDV配列、YIGSR配列、PDSGR配列、RYVVLPR配列、LGTIPG配列、RNIAEIIKDI配列、IKVAV配列、LRE配列、DGEA配列、及びHAV配列の配列が好ましく、さらに好ましくはRGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列が使用され、特に好ましくはRGD配列が使用される。RGD配列のうち、好ましくはERGD配列である。上記の配列は、アミノ酸を一文字表記で示している。
【0067】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおけるRGD配列の配置として、RGD間のアミノ酸数が0〜100の間、好ましくは25〜60の間で均一でないことが好ましい。
【0068】
この最小アミノ酸配列の含有量は、細胞接着・増殖性の観点から、タンパク質1分子中3〜50個が好ましく、さらに好ましくは4〜30個、特に好ましくは5〜20個である。最も好ましくは12個である。
【0069】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンにおいて、アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は少なくとも0.4%であることが好ましく、遺伝子組み換えゼラチンが350以上のアミノ酸を含む場合に、350のアミノ酸の各ストレッチが少なくとも1つのRGDモチーフを含むことが好ましい。アミノ酸総数に対するRGDモチーフの割合は、更に好ましくは少なくとも0.6%であり、更に好ましくは少なくとも0.8%であり、更に好ましくは少なくとも1.0%であり、更に好ましくは少なくとも1.2%であり、最も好ましくは少なくとも1.5%である。遺伝子組み換えゼラチン内のRGDモチーフの数は、250のアミノ酸あたり、好ましくは少なくとも4、更に好ましくは6、更に好ましくは8、更に好ましくは12以上16以下である。RGDモチーフの0.4%という割合は、250のアミノ酸あたり、少なくとも1つのRGD配列に対応する。RGDモチーフの数は整数であるので、0.4%の特徴を満たすには、251のアミノ酸からなるゼラチンは、少なくとも2つのRGD配列を含まなければならない。好ましくは、本発明の遺伝子組み換えゼラチンは、250のアミノ酸あたり、少なくとも2つのRGD配列を含み、より好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも3つのRGD配列を含み、さらに好ましくは250のアミノ酸あたり、少なくとも4つのRGD配列を含む。本発明の遺伝子組み換えゼラチンのさらなる態様としては、少なくとも4つのRGDモチーフ、好ましくは6つ、より好ましくは8つ、さらに好ましくは12以上16以下のRGDモチーフを含む。
また、遺伝子組み換えゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。
【0070】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、A[(Gly−X−Y )Bの繰り返し構造を有することが好ましい。mとして好ましくは2〜10、好ましくは3〜5である。nは3〜100が好ましく、15〜70がさらに好ましく、50〜65が最も好ましい。
【0071】
繰り返し単位には天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。
ここで言う天然に存在するコラーゲンとは天然に存在するものであればいずれであっても構わないが、好ましくはI型、II型、III型、IV型、およびV型である。より好ましくは、I型、II型、III型である。別の形態によると、該コラーゲンの由来は好ましくは、ヒト、ウシ、ブタ、マウス、ラットである。より好ましくはヒトである。
【0072】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンの等電点は、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜10であり、さらに好ましくは7〜9.5である。
【0073】
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは脱アミン化されていない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンはプロコラーゲンを有さない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンはテロペプタイドを有さない。
好ましくは、遺伝子組み換えゼラチンは天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン用材料である。
【0074】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンとして特に好ましくは、
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上(さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)の相同性を有し、神経細胞または神経細胞へ分化可能な細胞と接着性を有するアミノ酸配列;
を有する遺伝子組換えゼラチンである。
【0075】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組み換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004-85473、WO2008/103041等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定の遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、遺伝子組み換えゼラチンが産生されるので、培養物から産生された遺伝子組み換えゼラチンを回収することにより、本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンを調製することができる。
【0076】
本発明で用いる遺伝子組み換えゼラチンは用途に応じて、化学的に修飾することができる。化学的な修飾としては、遺伝子組み換えゼラチンの側鎖のカルボキシル基やアミノ基への低分子化合物あるいは各種高分子(生体高分子(糖、タンパク質)、合成高分子、ポリアミド)の導入や、遺伝子組み換えゼラチン間の架橋が挙げられる。該遺伝子組み換えゼラチンへの低分子化合物の導入としては、例えばカルボジイミド系の縮合剤が挙げられる。
【0077】
本発明で用いる架橋剤は本発明を実施可能である限りは特に限定はなく、化学架橋剤でも酵素でもよい。化学架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、シアナミドなどが挙げられる。好ましくは、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドである。さらに、遺伝子組み換えゼラチンの架橋としては、光反応性基を導入したゼラチンへの光照射、あるいは光増感剤の存在化での光照射によるものが挙げられる。光反応性基としては、例えば、シンナミル基、クマリン基、ジチオカルバミル基、キサンテン色素、カンファキノンが挙げられる。
【0078】
酵素による架橋を行う場合、酵素としては、遺伝子組み換えゼラチン鎖間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼおよびラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。トランスグルタミナーゼで酵素架橋するタンパク質の具体例としては、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパク質であれば特に制限されない。トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼなど、ヒト由来の血液凝固因子(Factor XIIIa、Haematologic Technologies, Inc.社)などが挙げられる。
【0079】
遺伝子組み換えゼラチンの架橋には、遺伝子組み換えゼラチンの溶液と架橋剤を混合する過程とそれらの均一溶液の反応する過程の2つの過程を有する。
【0080】
本発明において遺伝子組み換えゼラチンを架橋剤で処理する際の混合温度は、溶液を均一に攪拌できる限り特に限定されないが、好ましくは0℃〜40℃であり、より好ましくは0℃〜30℃であり、より好ましくは3℃〜25℃であり、より好ましくは3℃〜15℃であり、さらに好ましくは3℃〜10℃であり、特に好ましくは3℃〜7℃である。
【0081】
遺伝子組み換えゼラチンと架橋剤を攪拌した後は温度を上昇させることができる。反応温度としては架橋が進行する限りは特に限定はないが、遺伝子組み換えゼラチンの変性や分解を考慮すると実質的には0℃〜60℃であり、より好ましくは0℃〜40℃であり、より好ましくは3℃〜25℃であり、より好ましくは3℃から15℃であり、さらに好ましくは3℃〜10℃であり、特に好ましくは3℃〜7℃である。
【0082】
本発明においては、上記した生体適合性高分子(好ましくは、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチン)は、神経細胞または神経細胞へ分化可能な細胞と組み合わせた組成物として、上記の神経細胞または神経細胞へ分化可能な細胞の移植を必要とする対象(例えばヒト、好ましくは神経疾患患者)に投与することができる。
【0083】
(3)本発明の組成物の使用
本発明の組成物は、骨髄間質細胞由来神経前駆細胞、骨髄間質細胞由来シュワン細胞、又は骨髄間質細胞由来骨格筋細胞の何れかと、生体適合性高分子とを含む組成物を含む。上記以外にも必要に応じて、本発明の組成物には、薬学的に許容可能な担体を含めてもよい。薬学的に許容可能な担体としては、滅菌等張緩衝液、FRS、イソライト、滅菌希釈液、例えば水、通常生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、またはその他の合成溶媒;抗細菌または抗真菌薬、例えばアスコルビン酸、チメロサール、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール、ナリジクス酸、馬尿酸メセナミンまたはニトロフラントインマクロクリスタル等;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばEDTA;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;ならびに張性の調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースなどを挙げることができるが、薬学的に許容可能な担体はこれらに限定されるものではない。本発明の組成物のpHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調整することができる。
【0084】
本発明の組成物の形態は好ましくは粒子である。
本発明の組成物を静脈内投与する場合に適切な薬学的に許容可能な担体としては、生理食塩溶液、ノルマゾル(normasol)、イソライト、プラズマライトまたはリン酸塩緩衝生理食塩溶液(PBS)が挙げられる。本発明の組成物を静脈内投与する場合、本発明の組成物は滅菌されていることが好ましく、そして注射が容易となる程度に流動性である必要がある。
【0085】
本発明の組成物における細胞数は、所望の治療効果が生じるよう算定された細胞数に設定することができる。本発明の組成物における1回の投与当たりの細胞数は、好ましくは約1000細胞から約10億細胞、好ましくは約10,000細胞から約1億細胞、さらに好ましくは約50,000細胞から約5000万細胞である。本発明の組成物における細胞の濃度は、好ましくは約100細胞/μL〜約100,000細胞/μL、さらに好ましくは約1,000細胞/μL〜約50,000細胞/μLである。
【0086】
本発明の組成物の投与経路とは特に限定されず、局所投与(例えば、治療部位への移植など)でもよいし、全身投与(例えば、静脈注射など)でもよい。局所投与(例えば、本発明の組成物の治療部位への移植など)でもよい。本発明の組成物の移植は、種々の方法により、例えば注射カニューレ、針またはシャントを介した注入により行うことができるが、これらに限定されない。本発明の組成物を全身投与する場合は、非経口投与、例えば静脈内または動脈内投与が好ましい。好ましくは、本発明の組成物は、治療部位(疾患部位、例えば、中枢神経系病変部位など)に局所投与することができる。患者の中枢神経系病変に本発明の組成物を局所的に投与することは、患者の免疫系が血液‐脳関門の内側ではあまり活性でないという点において有利である。即ち、移植される神経細胞に対する宿主の免疫拒絶の機会が低減され、そして免疫抑制薬が依然として必要となる場合でも、移植片生存の機会が増大する。局所投与の別の利点は、中枢神経系病変へ移植細胞をより精確にターゲッティングできるということである。
【0087】
本発明の組成物を中枢神経系病変に移植する場合、移植は、定位的外科手術を用いて実行することができる。この場合、患者は麻酔される。患者の頭部はMRI適合性定位枠中に置かれ、そしてマイクロインジェクターを有するマイクロポジショナーは頭蓋上に配置される。標的部位の真上の硬膜の領域を露出するために、歯科用ドリルまたはその他の適切な器具を用いて、患者の頭蓋骨にバー・ホール(burr hole)を作る。
【0088】
鎮痛薬(例えばブプレノルフィン)および抗生物質(例えばセファゾリン、50 mg/kg、IM、1日2回×5日)は、必要に応じて、外科手術/術後の手順の一部として投与することができる。抗生物質治療は、術後、長期間、好ましくは術後30日まで継続されて、日和見感染を抑制することができる。
【0089】
さらに必要に応じて、免疫抑制薬を、本発明の組成物と一緒に投与してもよい。免疫抑制薬は、特に本発明の組成物を全身投与する場合、患者の免疫系による移植細胞の拒絶を抑制することができる。免疫抑制薬の具体例としては、抗代謝物質、例えばアザチオプリン、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキセートまたはメルカプトプリン(6‐MP)、ミコフェノレート(CellCept)、シクロスポリン‐Aおよびタクロリムス(FK‐506)が挙げられるが、これらに限定されない。免疫抑制薬は、種々の経路により、例えば経口的、腹腔内および静脈内により投与することができる。免疫抑制薬の用量投与は、免疫抑制薬の性質および患者により変動する。例えば、免疫抑制薬は、移植当日に開始し(処置後約4時間)、その後24時間間隔で継続して用量投与することができる。投薬量は、好ましくは約0.5 mg/kg/日から約100 mg/kg/日、さらに好ましくは約5 mg/kg/日から約50 mg/kg/日である。静脈内注射の場合は、好ましくは約0.005〜約0.100 μL/分、さらに好ましくは約0.050 μL/分の範囲の流量で、ボーラスとして投与することができる。
【実施例】
【0090】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例1−8においては、Sanbio社製のSB623 (http://www.san-bio.com/product/pipeline.php)を、(1)Notch配列を含む核酸(ここで、Notch配列はNotch細胞内ドメインをコードする配列からなる)を骨髄間質細胞に導入し、(2)上記骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化するように培養することによって得られる(ここで得られる分化細胞は、上記核酸が導入された骨髄間質細胞の子孫である)、骨髄間質細胞由来神経前駆細胞のモデルとして使用した。
【0091】
以下の実施例9においては、Sanbio社製のSB618(http://www.san-bio.com/product/pipeline.php)を、(1)骨髄間質細胞(BMSC)を血清を補充した標準必須培地で培養し、(2)還元剤を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(3)レチノイン酸を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(4)ホルスコリン、及び/又は神経及びグリア細胞に作用する分化・生存及び増殖刺激因子を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養することによって得た骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞のモデルとして使用した。
【0092】
また、遺伝子組み換えゼラチンとして以下記載のCBE3を用意した(WO2008-103041に記載)。
CBE3
分子量:51.6kD
構造: Gly-Ala-Pro[(Gly−X−Y)63]3Gly
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGly−X−Y の繰り返し構造である。
CBE3のアミノ酸配列には、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン及びシステインは含まれていない。
CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34
アミノ酸配列(配列表の配列番号1)(WO2008/103041号公報の配列番号3と同じ。但し末尾のXは「P」に修正)
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G
【0093】
また、動物ゼラチンのモデルとして、ニッピ社製の「APAT」を使用した。
【0094】
実施例1:生体適合性高分子粒子の調製
3%グルタルアルデヒド溶液(18ml)を、10%(w/v)CBE3水性溶液(162ml)に添加した。混合物を4℃で18時間放置し、ヒドロゲルを作製した。ヒドロゲルを凍結乾燥し、粉砕してCBE3粒子の小片を製造した。得られたCBE3粒子の写真を図1に示す。
【0095】
実施例2:ラット海馬切片上でのインビトロ細胞生存率
10%(v/v)のCBE3粒子又は動物ゼラチン粒子を培地(α−MEM,10%FBS、1%PS)に懸濁した。その後、GFP標識Notch細胞内遺伝子を導入した骨髄由来細胞(Sanbio 社製のSB623)を各溶液に懸濁した。上記で製造した細胞懸濁液を、12ウエルプラスチックプレート上に置いたP9ラットの海馬切片上に添加した。
切片をCOインキュベーター中で37℃でインキュベートした。インキュベーションの開始から1日後、2日後、5日後、9日後及び14日後に、切片上でGFPを発現する細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、そのような細胞の数を計測した。GFPを発現する細胞は生存細胞であるとみなした。上記のようにして、細胞の生存率を、インキュベーション開始から1日後の細胞数に対する比率として評価した。結果を図2に示す。
細胞の生存率は、CBE粒子又は動物ゼラチンの作用により向上した。
【0096】
実施例3:超低接着培養プレートにおけるインビトロ細胞生存率
α−MEM(500μl)中のCBE3又は動物ゼラチン粒子(0.01cm3/ウエル)を超低接着培養プレート(Ultra Low Attachment Culture Dish (Corning製))に置いた。その後、50,000個のNotch細胞内遺伝子を導入した骨髄由来細胞 (Sanbio 社製SB623)を置き、COインキュベーター中で37℃でインキュベートした。インキュベーションの開始から2時間後、1日後、4日後、及び7日後に、試料を細胞濾過器(メッシュサイズ40μm)で濾過し、パパイン溶液(2.5mU/ml パパイン、5mM L-システイン、5mM EDTA)に60℃で一晩溶解することによってDNAを回収試料から抽出した。標準曲線を使用して、粒子上の細胞数を計測した。生存細胞は粒子に付着し、死細胞は付着しないので、細胞の生存率を、プレーティング後0日目(2時間後)の細胞数に対する比率として評価した。
図3に示すように、細胞の生存率は、CBE粒子又は動物ゼラチン粒子により向上した。
【0097】
実施例4:CBE3粒子上への細胞付着
5.8%のCBE粒子及び20,000細胞/μlの細胞をα−MEMに懸濁し、穏やかに攪拌しながらCOインキュベーター中で37℃で4時間インキュベートした。試料を6ウエル細胞培養プレートに移し、カルセイン-AM溶液(10mlPBS 中に5μlカルセイン-AM (Invitrogen社製))中で37℃で30分間染色した。試料の写真を蛍光顕微鏡で撮影した。
図4に示す通り、細胞はCBE粒子に明らかに付着した。
【0098】
実施例5:CBE3粒子上の細胞数
5.8%のCBE粒子及び20,000細胞/μlの細胞をα−MEMに懸濁し、穏やかに攪拌しながらCOインキュベーター中で37℃で4時間インキュベートした。混合物を細胞濾過器(メッシュサイズ40μm:Fisher Bioscience社製)に移した。細胞濾過器内に保持された試料を、15mlの円錐チューブに回収し、4mlのパパイン溶液(2.5mU/ml パパイン、5mM L-システイン、5mM EDTA)に60℃で一晩溶解して、DNAを細胞から抽出した。標準曲線を使用して、粒子上の細胞数を計測した。
図5に示す通り、57%の細胞(11,400細胞/μl)が粒子に付着した。
【0099】
実施例6:脳卒中モデルラット脳(移植後1か月)における移植細胞生存率
脳卒中モデルとして、一過性中大脳動脈閉塞(MCAo){ちゅう だいのう どうみゃく へいそく}モデルラットを使用した。脳卒中の1月後に、細胞とCBE粒子の組成物又は細胞懸濁液を、線条体に移植した。
細胞とCBE3粒子の組成物を得るために、5.8%のCBE粒子及び20,000細胞/μlの細胞をα−MEMに懸濁し、穏やかに攪拌しながらCOインキュベーター中で37℃で4時間インキュベートした。その後、組成物を、脳卒中モデルラットの脳に移植した。
【0100】
移植の1か月後、ラットを犠牲にし、脳を取り出した。脳を25μmの切片に切断した。
切片を、一次抗体として抗-HuNu ( Chemicon社製)で染色し、二次抗体としてAlexa 488-結合抗マウス抗体で染色した。HuNu陽性細胞の数を全ての動物について計測した。
【0101】
図6に示す通り、CBE粒子は、脳卒中モデルラットの脳に移植された細胞の生存率を向上させた(細胞のみ: n=6、細胞+粒子: n=6)。
【0102】
米国特許出願 2006/0216276に記載の通り、Notch導入細胞の移植による治療効果は、用量依存的である(米国特許出願 2006/0216276の図1から図28)。一方、細胞の生存率はいかなる細胞の用量についても実質的に同じである(米国特許出願 2006/0216276の図30)。その結果、脳内で生存する細胞の数は、非常に用量依存的である(米国特許出願 2006/0216276の図29)。これらの事実から、脳内で生存する細胞数は用量依存的であることから治療効果は用量依存的であるという考えが生まれる。従って、より多くの細胞が脳内で生存すれば治療効果は向上するものと考えられる。
【0103】
脳内で生存する細胞の数を向上させるための一つの方法は、より多くの細胞を脳に移植することである。しかしながら、細胞の濃度及び脳への注入量には制限がある。従って、脳への移植後の細胞生存率は常に低いことから、脳内で生存する細胞の数を向上させる最善の方法は、脳への移植後の細胞生存率を向上させることである。
上記の通り、脳への移植後の細胞生存率の向上は、治療効果の向上のための最善の方法である。
【0104】
実施例7:脳卒中モデルラット脳(移植後1か月)における宿主ニューロンの保護
実施例6に記載の通り取得した切片の一部を、クレシルバイオレットで染色した。これらの切片により、虚血線条体における宿主ニューロンの保護を評価した。クレシルバイオレットで染色されたニューロンを、虚血線条体の4か所の0.14mm2の領域、並びに無傷側の対応する4か所の領域において計測した(図7)。宿主ニューロン生存率は、無傷側の対応領域におけるニューロンの総数に対する虚血線条体におけるニューロンの総数の百分率として表示した。
【0105】
図8に示す通り、宿主ニューロン生存率は、細胞とCBEで処置した動物の方が、細胞のみで処理した場合よりも高かった。この結果は、CBE3粒子が宿主ニューロンの保護を向上させることを意味する(細胞のみ: n=6, 細胞+粒子: n=7)
【0106】
実施例8:脳卒中モデルラット脳(移植後1か月)におけるミエリンの保護
実施例6に記載の通り取得した切片の一部を、一次抗体として抗-MBP (Abcamの製品)で染色し、二次抗体としてAlexa 488-結合抗ラット抗体で染色した。MB陽性細胞の領域を測定した。
【0107】
図9に示す通り、CBE3粒子は、宿主脳卒中ラットの虚血線条体における神経組織のミエリンの保護を向上させた(細胞のみ: n=7, 細胞+粒子: n=6)。
【0108】
実施例7及び8の結果は、実施例6に記載の通り、移植細胞の生存率の向上により、治療効果の向上を導くという考えを裏付けるものである。
【0109】
実施例9:骨髄間質細胞由来のシュワン細胞のIn Vitro生存率の評価
Sanbio社製のSB618を、米国特許第6,989,271号に記載の通り、(1)骨髄間質細胞(BMSC)を血清を補充した標準必須培地で培養し、(2)還元剤を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(3)レチノイン酸を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(4)ホルスコリン、及び/又は神経及びグリア細胞に作用する分化・生存及び増殖刺激因子を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養することによって得た骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞のモデルとして使用した。
【0110】
PDL(poly-d-lysin)またはCBE3を塗布したガラス上でSB618細胞を培地(αMEM, 10% FBS, 1% PS)中で培養した。24時間後、トリプシン処理によりSB618細胞を回収し、トリパンブルー染色によりSB618細胞の死亡率を評価した。
【0111】
図10に示すように、CBE3をコートしたガラス上のSB618の死亡率(2.0%)は、SB618の標準的な培養表面であるPDLをコートしたガラス上での死亡率(3.4%)に比べて低かった。
【0112】
実施例9の結果は、(a)米国特許第6,989,271号に記載されている(1)骨髄間質細胞(BMSC)を血清入り培地で培養し、(2)還元剤を培地に加えてさらに培養し、(3)レチノイン酸を加えてさらに培養し、(4)フォルスコリン及び/または、神経系細胞に作用する分化、生存、増殖誘導剤を加えてさらに培養することで得られる骨髄間質細胞由来シュワン細胞(即ち、骨髄間質細胞に特定の操作を加えることで分化させた細胞である)、及び(b)生体適合性高分子を含む組成物を用いることによって、細胞単独に比べて細胞生存率を向上できることを裏付けるものである。
【0113】
米国特許第6,989,271号に記載されている(1)骨髄間質細胞(BMSC)を血清入り培地で培養し、(2)還元剤を培地に加えてさらに培養し、(3)レチノイン酸を加えてさらに培養し、(4)フォルスコリン及び/または、神経系細胞に作用する分化、生存、増殖誘導剤を加えてさらに培養することで得られる骨髄間質細胞由来のシュワン細胞、及び、米国特許第7,718,429号に記載されている(1)cAMP増強剤またはcAMP類似物、分化誘導剤(bFGF、PDGF-AA、neuregulin)を加えた培地で、脱メチル化剤で処理されていない骨髄間質細胞(BMSC)を培養し、(2)Notch遺伝子を導入してさらに培養し、(3)Notchリガンドを加えてさらに培養することで得られる骨髄間質細胞由来の骨格筋細胞も、骨髄間質細胞に特定の操作を加えることで分化させたSB623と同種の細胞であると言える。このため、実施例9は、米国特許第6,989,271号又は米国特許第7,718,429号に記載された細胞と生体適合性高分子からなる組成物が、細胞単独に比べて移植後の細胞生存率が向上できることを裏付けるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下の(a)、(b)及び(c)の何れかの細胞、及び(B)生体適合性高分子とを含む組成物。
(a)(1)Notch配列を含む核酸(ここで、Notch配列はNotch細胞内ドメインをコードする配列からなる)を骨髄間質細胞に導入し、(2)上記骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化するように培養することによって得られる(ここで得られる分化細胞は、上記核酸が導入された骨髄間質細胞の子孫である)、骨髄間質細胞由来神経前駆細胞;
(b)(1)骨髄から骨髄間質細胞を回収し、上記細胞を血清を補充した標準必須培地で培養し、(2)還元剤を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(3)レチノイン酸を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(4)ホルスコリン、及び/又は神経及びグリア細胞に作用する分化・生存及び増殖刺激因子を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養して骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞を得ることによって得られる、骨髄間質細胞由来シュワン細胞;及び
(c)(1)(i)サイクリックAMP(cAMP)増加剤又はcAMPアナログ、及び(ii)bFGF、 PDGF-AA、及びニューレグリンを含む細胞分化刺激因子を、骨髄間質細胞の培養物に添加し(ここで、上記骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない)、上記細胞を培養し、(2)(1)で得られた細胞にNotch遺伝子を導入し、細胞を培養して筋芽細胞の培養物を取得し(但し、上記培養物は、遺伝子を導入された細胞と遺伝子が導入されていない細胞との共培養物を含まない)、そして(3)Notchリガンドを(2)で得た筋芽細胞の培養物に添加し、骨格筋細胞が誘導されるように上記細胞を培養することによって得られる骨髄間質細胞由来骨格筋細胞:
【請求項2】
生体適合性高分子が、ゼラチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
生体適合性高分子が、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を有する遺伝子組み換えゼラチンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が2 KDa以上100 KDa以下である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、分子量が10 KDa以上90 KDa以下である、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
遺伝子組み換えゼラチンが、コラーゲンに特徴的なGly-X-Yで示される配列(X及びYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す)の繰り返しを有し(複数個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい)、細胞接着シグナルを一分子中に2配列以上含む、請求項3から5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
細胞接着シグナルがArg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン及びスレオニンを含まない、請求項3から7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、セリン、スレオニン、アスパラギン、チロシン、及びシステインを含まない、請求項3から8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
遺伝子組み換えゼラチンのアミノ酸配列が、Asp-Arg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列を含まない、請求項3から9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
遺伝子組み換えゼラチンが、
式:A−[(Gly−X−Y)−B
(式中、Aは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、Bは任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を示し、n個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、n個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、nは3〜100の整数を示し、mは2〜10の整数を示す。なお、n個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される、請求項3から10の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
遺伝子組み換えゼラチンが、
式:Gly-Ala-Pro-[(Gly−X−Y)63−Gly
(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸の何れかを示す。なお、63個のGly-X-Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で示される、請求項3から11の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
遺伝子組み換えゼラチンが、(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、神経細胞または神経細胞へ分化可能な細胞と接着性を有するアミノ酸配列を有する、請求項3から12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
遺伝子組み換えゼラチンが架橋されている、請求項3から13の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
架橋がアルデヒド類、縮合剤、又は酵素により施される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
(A)以下の(a)及び(b)の何れかの細胞、及び(B)生体適合性高分子とを含む組成物を含む、神経疾患の治療剤。
(a)(1)Notch配列を含む核酸(ここで、Notch配列はNotch細胞内ドメインをコードする配列からなる)を骨髄間質細胞に導入し、(2)上記骨髄間質細胞を神経前駆細胞に分化するように培養することによって得られる(ここで得られる分化細胞は、上記核酸が導入された骨髄間質細胞の子孫である)、骨髄間質細胞由来神経前駆細胞;
(b)(1)骨髄から骨髄間質細胞を回収し、上記細胞を血清を補充した標準必須培地で培養し、(2)還元剤を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(3)レチノイン酸を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養し、(4)ホルスコリン、及び/又は神経及びグリア細胞に作用する分化・生存及び増殖刺激因子を上記培地に添加し、更に上記細胞を培養して骨髄間質細胞由来シュワン(Schwann)細胞を得ることによって得られる、骨髄間質細胞由来シュワン細胞;
【請求項17】
局所的に投与される、請求項16に記載の神経疾患の治療剤。
【請求項18】
患者の中枢神経系に投与される、請求項16又は17に記載の神経疾患の治療剤。
【請求項19】
(A)以下の(c)の細胞、及び(B)生体適合性高分子とを含む組成物を含む、筋肉疾患の治療剤。
(c)(1)(i)サイクリックAMP(cAMP)増加剤又はcAMPアナログ、及び(ii)bFGF、 PDGF-AA、及びニューレグリンを含む細胞分化刺激因子を、骨髄間質細胞の培養物に添加し(ここで、上記骨髄間質細胞は脱メチル化剤で処理されていない)、上記細胞を培養し、(2)(1)で得られた細胞にNotch遺伝子を導入し、細胞を培養して筋芽細胞の培養物を取得し(但し、上記培養物は、遺伝子を導入された細胞と遺伝子が導入されていない細胞との共培養物を含まない)、そして(3)Notchリガンドを(2)で得た筋芽細胞の培養物に添加し、骨格筋細胞が誘導されるように上記細胞を培養することによって得られる骨髄間質細胞由来骨格筋細胞:
【請求項20】
局所的に投与される、請求項19に記載の筋肉疾患の治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−219100(P2012−219100A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89794(P2012−89794)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(510288714)サンバイオ,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】