説明

細胞の酸化的損傷に関連した病変を治療するためのDHA、EPAまたはDHA由来のEPAの使用

本発明は、酸化的損傷に関連した過程の治療を目的とする薬剤を製造するためのドコサヘキサエン酸(DHA)またはエイコサペンタエン酸(EPA)またはDHA由来のEPAを強化した酸の使用に関する。詳細には、本発明は、神経変性、眼、虚血性および炎症性病変、アテローム性動脈硬化症、DNAに対する酸化的損傷、および運動に関連した過程の治療を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、酸化的損傷に関連した過程の治療を目的とする薬剤を製造するための、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)またはDHA由来のEPAの濃縮された酸の使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
ω−3脂肪酸は細胞機能を完全に保持する上で必要であり、一般に人間の健康に必要である。魚油や海藻の重要なω−3成分であるドコサヘキサエン酸(22:6 n−3,DHA)は、脳、光受容体および網膜のシナプスで濃縮される。DHA強化食は最初に肝臓で代謝された後、リポタンパク質を介して血中に分布され、様々な臓器の要求を満たす。DHAを投与すると、組織レベルでのその濃度が増加し、代謝的に関連しているω−3エイコサペンタエン酸(EPA)の濃度の増加も誘発するが、EPAを投与すると、その濃度だけが増加し、細胞レベルでのDHAの濃度は減少する。
【0003】
一般に、DHAは細胞膜のリン脂質に組込まれ、リン脂質の組成および機能性、反応性酸素種(ROS)の生成、膜脂質酸化、転写調節、エイコサノイドの生合成、および細胞内シグナル導入に影響を及ぼす。更に、中枢神経系では、DHAは、記憶に関係した学習能力の開発、膜の興奮性機能、光受容体細胞の生物発生、およびキナーゼタンパク質に依存するシグナルの導入に関与している。可能性のある食事療法は、ω−3脂肪酸の最適レベルを補正して炎症性病変、腫瘍過程、循環器疾患、鬱病および神経障害のようなある種の病変が生じまたは進行するのを防止することに基づいている。
【0004】
中枢神経系では、脳および網膜はいずれも極めて長期間のω−3脂肪酸の食事による欠乏症の状況下であってもDHAを保持する珍しい能力を示す。幾つかの研究では、DHAのニューロンに対する保護作用があり、ニューロンにはDHAが極めて高濃度で含まれていることが報告されている。例えば、それはニューロン細胞をアポトーシスによる死から保護することに関与している。最近、高齢ラットの海馬に少量見出されたDHAが、上記細胞の一次培養物をグルタミン酸塩によって誘発される細胞毒性から保護することができることが示された。
【0005】
網膜の光受容体では、Bcl−2ファミリーのアポトーシス誘発および防止タンパク質の濃度を調節することも示されている。網膜の光受容体の外側部分には、ロドプシン並びに任意の他の種類の細胞よりも高含量のDHAが含まれている。DHAは、光受容体部分のディスク外膜のリン脂質で濃縮される。網膜機能障害が、最適DHA濃度の現象の条件下で観察されている。網膜色素上皮細胞(RPE)は、DHA吸収、保存および輸送に極めて積極的役割を果たしている。光受容体およびRPE細胞におけるDHA含量が高いことは、主に受容体、イオンチャンネル、キャリヤーなどの調節に寄与する物理的特徴を有する膜における領域と関連しているが、これはホスファチジルセリンの濃度を調節しているとも思われる。
【0006】
これらの作用が専らDHA自体によって伝達されるかまたは任意の代謝誘導体によって伝達されるかは今日まで不明である。DHAのある種の誘導体は、網膜で同定されている。上記誘導体の合成に関与する酵素は正確には同定されていないが、幾つかの最近の研究成果は、Aホスホリパーゼ(PLA)に続いてリポキシゲナーゼ(LOX)の関与を示唆している。PLAは膜リン脂質からDHAを放出し、LOXはこれをその代謝活性誘導体に変換する。
【0007】
反応性酸素種(ROS)は、通常の細胞機能中に産生される。ROSとしては、スーパーオキシドアニオン、過酸化水素およびオキシドリルラジカルが挙げられる。それらの化学的反応性が高いことによって、タンパク質、DNAまたは脂質が酸化される。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)およびグルタチオン(glutation)ペルオキシダーゼ(GPx)は、ROSの存在によって引き起こされる分子および細胞損傷から保護する主要な酸化防止酵素である。酸化的ストレスによって多数の代謝チャンネルが活性化され、幾つかは細胞を保護するものであるが、他のものは細胞死を生じる。最近の研究では、ROS生成と崩壊の不均衡は多くの病気の病因における重要な危険因子であり、幾つかの場合には、酸化防止系の劣化に関係していることが示されている。
【0008】
DHAは、光受容体の細胞およびRPEに損傷を生じるROSのターゲットとして提示されている。光によって誘発される網膜変性は、光受容体におけるDHAの喪失を助長する。例えば、RPE細胞が損傷したり死亡すると、光受容体の機能は低下するのであり、RPE細胞がその生存に本質的であるからである。従って、酸化的ストレスの影響下でのRPE細胞の死は、特に斑細胞が冒されているときにはそれが視力に取って重要であるので、視力の低下を生じる。多くの網膜変性(例えば、加齢やシュタルガルト病に関係した黄斑変性)の病態生理学はRPE細胞のアポトーシスを生じる酸化的ストレスを伴う。実際に、RPE細胞のアポトーシスは、老齢で見られる黄斑変性の主要な因子であると思われる。このような研究は、上記細胞が極めて効果的な酸化防止機構を発達させて、細胞自身をその高DHA含量から保護しかつ顕著な適応可能な能力を示すことを示唆している。
【0009】
更に、フリーラジカルと老化との関係は、有気呼吸によって生成するフリーラジカルが蓄積してホメオスタシス機構を徐々に喪失させ、遺伝子発現パターンに干渉し、細胞の機能的能力を喪失させ、老化と死へと至らしめる酸化的損傷を引き起こす徴候に基づいて完全に十分に認められている。酸化剤の生成、酸化防止的保護および酸化的損傷の修復の間には、相互関係が存在する。酸化防止的防御が年齢と共に衰えるかどうかを測定する目的で、多くの研究が行われてきた。これらの研究は、その主成分、すなわちSOD、CAT、GPx酵素、グルタチオンレダクターゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼの活性または発現、および酸化防止特性を有する低分子化合物の濃度の分析を含んでいた。例えば、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)におけるSODおよびCATの過剰発現は平均余命を30%だけ増加させ、タンパク質酸化による損傷を減少させる。これに関連して、皮膚組織のUV線へのイン・ビトロおよびイン・ビボでの露出によりフリーラジカルおよび他の反応性酸素種が生成し、老化に有意に寄与すると報告されている細胞の酸化的ストレスを生じる。皮膚を紫外線に過度に露出すると、急性または慢性損傷を生じる可能性がある。急性条件下では、紅斑や火傷を生じる可能性があり、慢性的過剰露出では、皮膚癌や老化の危険性が増加する。更に、皮膚細胞は、細胞の完全性および酸化的損傷に対する耐性の保持に関与する酵素などの様々なタンパク質の発現を増加させることによって急性または慢性の酸化的ストレスに応答することができることが知られている。
【0010】
当該技術分野では、テロメアは真核生物染色体の末端に位置した非コードDNA領域であることは周知である。これらは高度に保存されたDNA配列、縦列反復配列(TTAGG)および関連タンパク質によって構成され、他の染色体の末端への連結を妨げる特殊構造を有し、テロメア融合を防止する。それらは、染色体の完全性の保存、酵素作用およびその分解からコードDNAの保護、染色体安定性の保持への寄与に本質的な役割を有する。
【0011】
コード配列半保存的複製とは対照的に、テロメアは、連続的細胞分裂中にその反復配列を漸進的に喪失する。今日では、テロメア機能を保持するにはテロメアの長さを最小にする必要があり、テロメアが決定的な大きさに達すると、有糸分裂における分裂が困難になり、テロメア会合(TAS)と染色体の不安定性を生じると考えられている。上記染色体の不安定性は、有意な遺伝子変化を生じる可能性がある過誤を生じる見込みが増加することと関連している。
【0012】
ω−3脂肪酸は、多数の二重結合があるため、過酸化脂質の生成に関係した酸化的ストレス過程中にフリーラジカルの生成および増殖の分子ターゲットであると考えられている。しかしながら、ω−3脂肪酸の食事補給による酸化的ストレスの受けやすさの様々な研究では、矛盾する結果が得られている。ヒトでの幾つか研究では、LDLの酸化が増加することが示されているが、他の研究ではそのような効果は認められていない。動物を用いる研究では、ω−3脂肪酸を投与すると、LDLの酸化の受けやすさが増加または減少することが認められている。一方、酸化防止剤の防御系に関与する遺伝子の過剰発現が、魚油を強化した食餌を3ヶ月間投与したマウスの肝臓で見られている。
【0013】
更に、グリア(glyal)起源の細胞系を用いる様々なイン・ビトロ研究では、ω−3脂肪酸に富む膜の方が酸化的損傷を受けやすいことを示している。これらの細胞に高濃度のDHAを長期間補足すると、培地の過酸化脂質レベルが増加し、過酸化水素に暴露することによって誘発されるアポトーシスにより細胞死が高比率で生じた。しかしながら、ドコサヘキサエン酸エチルを羊膜内に投与すると、ラット胎児脳の脂質の過酸化が減少することも示されている。この反応は、酸化防止剤酵素の活性化によるフリーラジカル封鎖作用によるものであることが示唆されている。脳の酸化防止剤容量の増加は酸化的ストレスに対する一次内因性防御にとって重要であり、脳は多不飽和脂肪酸が比較的多くかつ酸化防止剤酵素が比較的少ないからである。
【0014】
これらの矛盾する結果は、二重結合がROSによる攻撃を受けにくくする膜の脂質およびリポタンパク質におけるω−3脂肪酸の三次元構造、PLAのような酸化促進酵素の阻害、または酸化防止剤酵素のより一層の発現のような他の可能性のある機構が酸化的損傷を減少させるように作用することがあるので、脂肪酸の酸化が二重結合の数と共に増加するという前提に基づく仮定はイン・ビボでの妥当性がないことを示している。
【0015】
一方、運動をフリーラジカルの生成と関連付ける考え方は、低酸素性組織における虚血−再灌流事象の際の膜脂質における損傷の観察により80年代初頭から生まれている(Lovlin et al., Eur. J. Appl. Physiol. Occup. Physiol. 1981, 56 (3) 313-6参照)。同時に、GSSH/GSH比の増加が、ラット筋細胞(Lew H. et al. FEBS Lett, 1985; 185(2):262-6, Sen CK et al., J. Appl. Physiol. 1994; 77(5):2177-87参照)並びにヒト血液(MacPhail Db et al., Free Radic Res Commun 1993; 18(3):177-81, Gohil K. et al. J. Appl. Physiol. 1988 Jan; 64(1):115-9参照)で観察された。フリーラジカルはDNAにも影響を与え、急性運動は8−OxodGの増加によって明らかなようにDNAの損傷を増加する。疲労の大きいスポーツ活動(マラソン競走)は、試験後の幾日間も明らかなDNAの損傷を引き起こし、免疫担当細胞にも損傷を引き起こす(これは、そのような試験の後に運動選手に見られる免疫の低下と関連している可能性がある)。
【0016】
しかしながら、他の研究者らは、90分間の水泳、60分間のランニングまたは漕艇による疲労の大きい運動後に、何らの影響(小さな損傷を除く)も観察しなかった。同時に、鍛えられたまたは鍛えられていない運動選手についての研究では、8−oxo−dGの尿中排泄には何ら差異は見られず、それらの研究が上記のような損傷を見出したとしても、努力に対するその後の反応にとって二次的であり急性的にDNAに対する運動の作用にとってではないと考えられている。
【0017】
酸化的ストレスを生じる激しい運動の事象は当該技術分野で周知であるが、その起源は未だに詳しくは確定されていない。
【0018】
運動性能に関してn−3脂肪酸を用いて行った研究は消炎作用に集中しており、実際に最初の分析は激しい運動によって誘発される気管支収縮を少なくすることにより肺胞−毛細管吸収を改善するこれらの栄養素の作用となり得るものを見出そうとした。それに関して、Mickleboroughは、EPA 3.2gおよびDHA 2.2gの投与後には、炎症性(proinflammatory)サイトカインは優秀な運動選手におけるTNF−αおよびIL−1βの存在量を少なくすることによって減衰し、同時に気管支収縮も減少することを明らかにした。Walserは、n−3脂肪酸の脈管作用を運動に不耐性を示す人々における正の効果と結びつけた。これに関して、van Houten et al.は、n−3脂肪酸の高摂取が冠動脈症候群後の心臓のリハビリテーションを行っている患者における回復が一層良好であることと関連していることを研究した。
【0019】
分析した研究における身体性能に正の結果が見られないことは、健常人ではなく患者の評価によるものであり、検討を行ったものは脈管および炎症作用である。
【0020】
同時に、下記の理論的コンセプトに基づいて研究が行われてきた:血漿中の遊離脂肪酸が1ミリモル/lを上回って増加(グリコーゲンが消費されてしまったときに起こる)、トリプトファン輸送による受容能によりこれを増加させた後、長時間の運動におけるいわゆる「中枢性疲労」に関する神経伝達物質であるセロトニンを増加させる。これに関して、n−3脂肪酸は、恐らくは転写核因子PPARαを活性化することにより脂肪酸酸化をアップレギュレーションして血漿中の遊離脂肪酸の量を減少させることが知られている。しかしながら、Huffman(2004)は、n−3脂肪酸4g(EPA 300mgおよびDHA 200mgを含む500gカプセル)の用量を用いることによって男女走者で検討を行ったが、遊離TRPの減少も活動の認知低下も認められず、n−3脂肪酸を投与した被験者ではパフォーマンスを向上する統計学的傾向がみられたが、行動における統計学的なパフォーマンス増加も見られず、この研究の統計学的能力を減少させる原因は検討した被験者の数が少ない(男性5名および女性5名)という可能性を著者らに残してはいたが、これらの分析は成功しなかった。
【0021】
パフォーマンスに関するn−3酸の有効性を評価した別のその後の研究では、トウモロコシ油をプラシーボとして用いる場合には有意差は認められなかった。Raastadは、1日当たりEPA 1.60gおよびDHA 1.04gを数週間投与したが、フットボール選手では何ら改善は見られなかった(Raastad et al. Scand J. Med Sci Sports 1997; 7(1): 25-31参照)。
【0022】
一方、遊離脂肪酸は筋肉におけるグルコースの使用を妨げることが知られており、ミトコンドリアにおける細胞内レベルでのその類似体であるアシル−CoAはピルベートデヒドロゲナーゼを阻害し(生成物による阻害)、更に、グリコーゲン分解および糖新生を促進し、空腹時の平滑筋高血糖(smooth hyperglycemia)を引き起こすからであり、実際に、空腹時に多不飽和脂肪酸を連続投与すると、恐らくは肝臓レベルでのグルコース−6−ホスファターゼが活性化されることによって血糖の保持を促進するからである。筋肉における脂肪酸の組成物はインスリン感受性を変化させることも知られており、血漿膜に多不飽和脂肪酸が高含量で含まれているとインスリン感受性が向上し、高含量の飽和脂肪酸は逆効果を生じることを示している。
【0023】
運動は、グルコース摂取、毛細管灌流、グリコーゲン合成速度およびインスリン感受性を増加させる。筋肉収縮の際には、温度、細胞内pH、ATP/ADP比、並びに細胞内Ca++濃度、および運動と共に細胞の機能調節における伝達物質として作用することができる他の代謝物で変化が見られる。これに関して、Ca++は、細胞内シグナル伝達における重要な中間体であるカルモジュリンキナーゼ、プロテインキナーゼC(PKC)およびカルシニューリンなど多量の細胞内タンパク質を調節する。有酸素運動の際に、アセチル−CoAカルボキシラーゼはAMPキナーゼ(AMPK)によって失活してマロニル−CoAレベルに低下し、カルニチンパルミトールトランスフェラーゼが脱阻害され、ミトコンドリア内に脂肪酸輸送体が層化する(ことによって脂肪酸酸化が促進される)。
【0024】
AMPK活性化作用としては、恐らくGLUT4およびヘキソキナーゼ発現、並びにミトコンドリア酵素の刺激が挙げられる。しかしながら、意外なことには、AMPK活性化は、運動が骨格筋のグルコースに対する応答を増加させる唯一の方法(インスリンとは独立)ではない。Mora and Pessin, J. Biol. Chem. 2000; 275 (21):16323-16328を参照されたい。この文献には、筋肉におけるグルコース応答の増加が示されており、実際に、GLUT4を活性化するMEF2AおよびMEF2Dのような幾つかの転写因子があり、これらの因子は運動によって活性化されることが示されていた。
【0025】
筋肉内脂質の増加は肥満状態および肉体訓練で共通しているが、肥満者にとってはインスリン耐性と関連した結果であり、一方、スポーツマンではカルニチンパルミトールトランスフェラーゼの大きな活性により脂肪酸がβ酸化を受ける結果である。n−3脂肪酸に富む食事は、血糖およびインスリン血症(インスリン耐性のシグナル)を増加させるが、GLUT−4タンパク質のトランスロケーションのレベルを維持するインスリン受容体レベルで作用し、これは特にDHAで示されているという有力な証拠がある(Jaescchke H. Proc. Soc Exp Biol. Med 1995; 209: 104-11参照)。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、取り分けドコサヘキサエン酸(本明細書ではDHAとも表す)、エイコサペンタエン酸(EPA)またはDHA由来のEPAであって、遊離形態またはトリグリセリドに組込まれたものを投与すると、細胞の酸化防止剤として作用するという意外な発見に関するものである。
【0027】
この方法では、DHAおよびEPAの代謝関係(DHAのEPAへの逆転換)を考慮すれば、DHAの投与について以前に観察され、開示された総ての作用は、混合系DHA/EPAまたは一成分系EPAに適用できるものでなければならないが、EPAは具体的には示されていない。
【0028】
従って、本発明の目的は、細胞の酸化的損傷の治療を目的とする医薬組成物を製造するためのドコサヘキサエン酸の使用である。
【0029】
本発明のもう一つの目的は、グリセロール主鎖の特定の位置におけるドコサヘキサエン酸(DHA)の使用であって、グリセリドの残りの2つの位置も細胞の酸化的損傷を治療するためにその組成物で特定されている。
【0030】
本発明の更にもう一つの目的は、DNAレベルでの細胞の酸化的損傷の治療を目的とする組成物を製造するためのドコサヘキサエン酸(DHA)の使用である。詳細には、ドコサヘキサエン酸の使用は、テロメア短縮の自然過程における保護剤および細胞の酸化的損傷の治療における早期老化の抑制剤としての実用性を有する。
【0031】
本発明のもう一つの目的は、細胞の老化およびミトコンドリア呼吸鎖の疾患と関連した遺伝病の治療用の組成物、並びにダウン症候群の治療用の組成物を製造するためのドコサヘキサエン酸の使用である。
【0032】
本発明のもう一つの目的は、運動に関連した細胞の酸化的損傷を治療するための組成物を製造するためのドコサヘキサエン酸(DHA)の使用である。詳細には、ドコサヘキサエン酸の使用は、スポーツ能力の向上剤およびスポーツ活動中の血中グルコース濃度の調節剤としての実用性を有する。
【0033】
本発明のもう一つの目的は、運動能力を高める組成物,並びに主として食物、乳製品または運動するときに人々によって典型的に用いられる任意の適当な投与形態の投与によって運動後の血中グルコースレベルを維持する組成物を製造するためのドコサヘキサエン酸の使用である。
【0034】
本発明において、「細胞の酸化的損傷」という表現は、内因性または外因性起源の細胞の酸化剤種の生成および分解の不均衡を含む任意の過程を意味する。
【0035】
意外なことには、本発明の発明者らは、DHAが過酸化物またはスーパーオキシドの従属的誘導に関する反応性酸素種(ROS)の生成を抑制することができることを見出した。更に具体的には、DHAは、スーパーオキシドアニオンの生成を減少させると共に、例えば脂質過酸化の極めて有意な減少のような酸化的カスケードで生成する総ての誘導種の生成を減少させる。更に、酸化防止剤酵素活性の増加が認められ、これは酸化防止剤、基本的には酵素の発現を誘発し、Aホスホリパーゼのような酸化促進剤(pro-oxidant agents)の発現を抑制することによる細胞の適応を示唆している。
【0036】
本発明の一態様では、上記ドコサヘキサエン酸がモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、エチルエステルまたは遊離脂肪酸に組込まれる。好ましくは、上記ドコサヘキサエン酸は、トリグリセリドに組込まれたものである。
【0037】
本発明において、「グリセリドに組込まれたドコサヘキサエン酸」とは、3個の位置の少なくとも1個がドコサヘキサエン酸でエステル化されかつ、必要に応じて残りの位置の少なくとも1個が短鎖、中鎖または長鎖脂肪酸およびリン酸から選択される1個の酸で更にエステル化されているモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質を意味するものと考えられる。好ましくは、上記グリセロールはトリグリセリドである。
【0038】
DHAの化学構造としてのトリグリセリドの選択は、経口投与後のエチルエステル、リン脂質、遊離脂肪酸およびトリグリセリドの形態の4種類のω−3酸濃縮物のバイオアベイラビリティーを比較した検討から採用されるデータに基づいており、再エステル化されたトリグリセリドは他の調製物より高いバイオアベイラビリティーを示した。
【0039】
本発明の好ましい態様では、上記ドコサヘキサエン酸は総脂肪酸に対して20−100重量%で、好ましくは総脂肪酸に対して40−100重量%で見出され、更に好ましくは上記ドコサヘキサエン酸は総脂肪酸に対して66−100重量%である。
【0040】
もう一つの好ましい態様では、上記ドコサヘキサエン酸は、エステル結合を介してグリセロールの少なくとも1個の特定の位置に組込まれ、構造脂質として、細胞の酸化的損傷の治療のための医薬組成物を製造する。
【0041】
このようなグリセロールは更に少なくとも1種類の脂肪酸および/または1個のリン酸を含んでなり、上記ドコサヘキサエン酸はsn−1、sn−2およびsn−3から選択される位置に組込まれており、更に必要に応じて、短鎖および/または中鎖脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を含んでなり、sn−2の位置に組込まれるときには、更に必要に応じて脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を含んでなることがある。
【0042】
これに関して、用語を指すときには、必要に応じて、sn−1、sn−2およびsn−3から選択される位置に組込まれた上記ドコサヘキサエン酸は、短鎖および/または中鎖脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を更に含んでなることもまたは含まないこともあり、あるいはsn−2位置に組込まれた上記ドコサヘキサエン酸は長鎖脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を更に含んでなることもまたは含まないこともあることを理解すべきである。
【0043】
意外なことには、本発明の発明者らは、ドコサヘキサエン酸の位置が選択されている構造グリセロールおよびグリセロールに結合した化合物の残りの組成により、細胞の酸化的損傷の治療を目的とする医薬組成物を製造するためのドコサヘキサエン酸の使用の治療効率が少なくとも2倍または3倍にまで予想外に増加することを見出した。
【0044】
この共通定義は、グリセロール主鎖の特定の位置に配置された脂肪酸を含む脂肪に関するものである。イン・ビボでの脂肪酸生体内分布と同様に、長鎖の多不飽和脂肪酸(PUFA)は好ましくはグリセロールのsn−2位置に配置され、腸吸収過程を考慮すれば、トリグリセリドはリパーゼによって遊離脂肪酸、ジおよびモノグリセリドに加水分解され、これから遊離脂肪酸とsn−2モノグリセリドは腸細胞と呼ばれる腸の上皮細胞によって直接吸収される。
【0045】
エステル結合を介してグリセロール主鎖の特定位置に組込まれたドコサヘキサエン酸を用いることによって、バイオアクティビティーが増加し、含まれる脂肪酸の総量に関して同一モル割合での酸化防止保護が増加し、グリセリドにおけるドコサヘキサエン酸の酸化防止剤作用に関して投薬量への依存が減少する。
【0046】
好都合には、本発明の発明者らは、sn−1、sn−2およびsn−3から選択されるグリセロールの位置であって、必要に応じて短鎖および/または中鎖脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を更に含んでなる上記グリセロールの位置に組込まれたドコサヘキサエン酸を用いることによって、バイオアクティビティーが増加し、含まれる脂肪酸の総量に関して同一モル割合での酸化防止保護が増加し、グリセロールにおけるドコサヘキサエン酸の酸化防止剤作用に関して投薬量への依存が減少することを見出した。
【0047】
また、好都合には、本発明の発明者らは、グリセロールのsn−2位置であって、必要に応じて長鎖脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を更に含んでなる上記グリセロールの位置に組込まれたドコサヘキサエン酸を用いることによって、バイオアクティビティーが増加し、含まれる脂肪酸の総量に関して同一モル割合での酸化防止保護が増加し、グリセロールにおけるドコサヘキサエン酸の酸化防止剤作用に関して投薬量への依存が減少することを見出した。
【0048】
好ましくは、ドコサヘキサエン酸と共にグリセロールにも含まれる酸は、強力な活性のみを除き機能活性を持たないので、短鎖脂肪酸(C1−C8)または中鎖脂肪酸(C9−C14)またはリン酸であり、従ってドコサヘキサエン酸と競合しない。
【0049】
従って、更に一層好ましくは、本発明は、位置sn−1およびsn−3の一つが遊離であるかまたは中鎖脂肪酸(C9−C14)または短鎖脂肪酸(C1−C8)またはリン酸によって占められておりsn−2位が機能的DHAによって占められているグリセロールに組込まれたドコサヘキサエン酸の使用に関する。従って、DHAは更に効率的に腸細胞から吸収されるので、DHAは更に高く増加する。
【0050】
従って、ドコサヘキサエン酸が他の脂肪酸と競合しないときにドコサヘキサエン酸がグリセロールの任意の位置に組込まれておりかつDHAが少なくとも1種類の脂肪酸と競合するときにグリセリドのsn−2位に組込まれている構造グリセリドの合成は、酸化防止作用が向上し、従って、これは、酸化的細胞損傷の治療を目的とする組成物の製造にとって好ましい方法である。
【0051】
本発明の発明者らは、本発明によりDHAを含む組成物を強化した細胞は更に良好に調製され、酸化的ストレスの新たな状況を認識し、それに由来する可能性のある有害作用を最小限にすることを見出した。すなわち、生体膜にDHAが含まれていると、酸化的ストレスに対して細胞適応性のある応答が誘導される。適応性のある応答は、(致死下濃度の)毒性薬剤へ暴露することによって細胞応答が誘発され、これが次に致死濃度の同じ毒性薬剤の有害効果から細胞を保護する細胞現象であり、あるいは、高濃度では有害な薬剤へ低濃度で暴露することによって確定されていない(unleashed)有益な作用である。
【0052】
DHAの投与は、
a) 細胞の酸化防止活性の増加、
b) 投与した投薬量では、細胞傷害性がない、
c) 投与した投薬量では、細胞の酸化状態に対する有意な変化がない、
d) 適応性のある細胞の酸化防止活性
という実質的な利点を有する。
【0053】
上記の総てにより、好ましい態様では、本発明は、細胞の酸化的損傷に関連した病変を治療する医薬組成物を製造する目的でのドコサヘキサエン酸の使用に関し、上記病変は神経変性的病変であり、好ましくは特に多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症および筋ジストロフィーを含んでなる群から選択される病変である。
【0054】
本発明のもう一つの態様では、酸化的損傷に関連した病変は眼の病変であり、好ましくは特に色素性網膜炎、黄斑変性および白内障を含んでなる群から選択される病変である。
【0055】
更にもう一つの態様では、酸化的損傷に関連した病変は虚血性病変、特に心筋梗塞、脳梗塞などである。
【0056】
本発明の更にもう一つの態様では、酸化的損傷に関連した病変は炎症性過程であり、好ましくは特に関節炎、脈管炎、糸球体腎炎およびエリテマトーデスを含んでなる群から選択される病変である。
【0057】
もう一つの好ましい態様では、酸化的損傷に関連した病変はアテローム性動脈硬化症である。
【0058】
本発明のもう一つの態様は、テロメア短縮の自然過程における保護剤および早期老化の抑制剤としてのDHAの使用である。
【0059】
テロメア会合(TAS)を生じる機構は未だ知られていないが、本発明者らは、これがテロメアに特徴的なDNAの反復配列を合成する酵素テロメラーゼの活性における欠陥と関連している可能性があり、それによって長さが安定化されることを示唆している。
【0060】
テロメラーゼ胎児細胞では活性が極めて高いが、成熟組織細胞では活性は高くない。TASは正常細胞では滅多に見られないが、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞で見られている。
【0061】
イン・ビトロでのテロメア反復の数並びにイン・ビボでの細胞老化の機能には漸進的減少があり、これは老化におけるテロメラーゼ活性の阻害と関連していることが観察されている。同様に、本発明者らは、100名の健常人からの繊維芽細胞およびリンパ球のテロメアの長さを研究し、繊維芽細胞のイン・ビトロ増殖の際のテロメア短縮並びにテロメア長とドナーの年齢との間の逆相関を見出した。
【0062】
テロメア短縮は細胞の複製と共に自然に起こるが、DNAで酸化的損傷が誘発されるときには早期老化とテロメア破損が観察されている。テロメアは、ゲノムの他の部分よりも酸化的損傷に対して感受性が高くかつその破損は余り効率的に修復されない。この結果、テロメア損傷が蓄積され、DNA複製の際に一層速やかに短縮され、細胞の平均複製余命が減少する。反応性酸素種(ROS)、特にスーパーオキシドアニオン、過酸化水素およびオキシドリルラジカル(oxidrilラジカル)はまたテロメア短縮とは関係なしに早期老化を誘発するが、幾つかの細胞型の複製の際にテロメアの喪失を促進する可能性がある。
【0063】
意外なことには、本発明者らは、DNAレベルでの細胞の酸化的損傷を治療するためにドコサヘキサエン酸を用いることによって、テロメアの短縮速度を減少させることができ、従って細胞の老化を抑制することができることを見出した。
【0064】
本発明者らは、20を上回るヒト繊維芽細胞株におけるテロメアの短縮速度と細胞の酸化防止能の間の逆相関を見出した。これらの早期老化繊維芽細胞の細胞パラメーターのほとんどは、これらの細胞の正常老化と同じである(形態学、リポフスチンおよび遺伝子発現の変化)。酸化防止防御の低い繊維芽細胞は、そのテロメアを一層速やかに短縮し、その逆も成り立つ。テロメアの短縮速度は、低めの酸化防止防御を有する細胞では速い。更に、フリーラジカル封鎖剤は、テロメアの短縮速度を減少させる。
【0065】
これらのデータは、ヒト繊維芽細胞におけるテロメアの短縮速度において酸化防止剤酵素、グルタチオンペルオキシダーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼの重要な役割を示すものと一致している。これらのデータは、テロメアの長さが、主として酸化的ストレスと細胞の酸化防止防御能との間の関係によって決定されることを明らかにしている。従って、年齢依存性テロメアの長さは、細胞がその一生に受けた酸化的損傷の履歴を累積的測定である。
【0066】
酸化的ストレスとテロメアの短縮速度の相関は、ミトコンドリア呼吸鎖の疾患と関連した遺伝病およびダウン症候群について示されている。
【0067】
従って、DNAの酸化的細胞損傷と細胞老化におけるテロメア短縮およびその効果との間に存在する関係により、ドコサヘキサエン酸をテロメア短縮の自然過程における強力な保護剤および早期老化の抑制剤として用いることができる。
【0068】
一方、ω−3脂肪酸強化油の生成に酵素を使用することには、化学合成に基づく他の方法およびその後の精製過程(クロマトグラフィー分離、分子蒸留など)に関して幾つかの利点がある。後者では、極端なpH条件および高温が必要であり、これによりω−3PUFAの総てシスの総ての二重結合が酸化、シス−トランス異性化または二重結合の移動によって部分的に破壊される可能性がある。酵素合成で用いられる穏やかな条件(50℃を下回る温度、pH6−8および化学試薬は少ない)では、ω−3PUFAの元の構造が保存され、アシルグリセリドにおける構造的選択性が高まる代替合成法が提供され、栄養の観点から最も好ましい化学構造と考えられる。
【0069】
DHAを含んでなる医薬組成物は油状生成物またはエマルションの形態で見出されることがあり、経口、舌下、静脈内、筋肉内、局所、皮下または直腸経路によって、または液体または蒸気の形態で本発明のマイクロエマルションの活性成分を気道の入口に位置した嗅覚器官と接触させるだけによっても投与することができる。従って、マイクロエマルションは、スプレー、噴霧または霧吹きによって、または吸入によって投与することができる。
【0070】
必要に応じて、上記医薬組成物は、第二の活性成分を含んでなることもある。
【0071】
同様に、DHAを含んでなる医薬組成物は、食料品(例えば、ヨーグルト、ミルクなどの乳製品)にDHAのような天然の酸化防止剤を強化する目的で食品産業で用いることができる。
【0072】
従って、本発明のもう一つの態様では、上記医薬組成物は、酸化的損傷に関連した病変の治療を既に受けている患者に投与される。
【0073】
本発明のもう一つの目的は、スポーツ能力の向上剤およびスポーツ活動中の血中グルコース濃度の調節剤としてのDHAの使用である。
【0074】
この方法では、本発明者らは、運動中に上記ドコサヘキサエン酸を使用すると、(炭水化物を投与することなしに)このような運動の後に血中グルコースレベル(血糖)を維持する運動能力が増加することを意外にも見出した。
【0075】
本発明のこの文脈に関して、「アマチュア」または「非競技選手」とは、時折非職業的に運動を行う任意の人を意味すると考えられる。また、「競技選手」または「トレーニングを受けた運動選手」とは、標準的方法でおよび/またはプロレベルで運動を行う任意の人を意味すると考えられる。同様に、「運動」および「肉体的行動」は、同等かつ互換的に用いられ、また「運動選手」は男性および女性について用いられる。
【0076】
運動能力
運動能力(sports performance)を評価するには、その運動能力の向上を評価することができる幾つかのパラメーターがある。
【0077】
有酸素運動を行う運動選手では、VO2maxは競技シーズン中十分にトレーニングを積んだ運動選手ではほとんど増加しないので、UV2(無酸素性閾値)における最大酸素消費率%VO2maxが増加するときには、能力の増加が考えられる。閾値におけるVO2maxの比率がほとんど変化しないことは、性能増加のデータと直接関係している。
【0078】
本発明者らは、基礎三角活動試験(basal triangular effort trials)をDHAを4ヶ月間投与した後に行ったものと比較したとき、換気閾値2における酸素消費量(VO)は絶対値(p<0.019)および相対値(p<0.036)のいずれでも統計学的に有意に増加することを示した。このパラメーターの増加は、自転車競技選手(p<0.047)および非自転車競技選手の両方について示されているが、後者の差は統計学的に有意ではない(図24)。
【0079】
心拍数が嫌気性閾値で増加する場合には、運動選手は有酸素代謝を更に高い強度に保持する能力を若干増加させることができると考えられるので、運動能力の増加に関するもう一つのパラメーターは、活動試験(effort trial)のUV2が設定されている心拍数の増加である。本発明者らは、基礎試験で得られた上記パラメーターをDHAを4ヶ月間消費した後の三角試験で得られたものと比較するときのp=0.082についてのUV2における心拍数の増加を観察した。これらのデータは、特に高レベルの自転車競技選手のサブグループでの(p<0.017)を示している(図25)。
【0080】
これに関して、統計学的に有意なUV2に達するのに要する時間は増加する(図26)。
【0081】
最後に、運動選手が有酸素トレーニングを行っているときには、同一活動レベルに対する心拍数は低くなる。本発明者らは、運動選手が2000ml O/分を消費した時点での両試験についてのこれらのデータを比較すると、DHAを投与されている自転車選手では、心拍数が統計学的に有意に減少することを見出した(p<0.043)(図27)。
【0082】
これらの研究から、DHAを4ヶ月間摂取した運動選手では、UV2における酸素の絶対および相対消費量の増加(それぞれ、p<0.008およびp<0.015)、UV2に対応する供給量の増加(p<0.063)および運動選手が2000ml/分の酸素消費量を示すときの心拍数の減少(p<0.062)が観察されたと結論することができる。これら総ては、2.1g DHA/24時間(70重量%の500mgカプセル6個)を1日3回4ヶ月間接種した後の運動能力の増加を示すパラメーターである。上記量は、本発明の非制限的な例として表している。
【0083】
酸化的損傷に関する幾つかの生化学変数も、活動試験の後に分析した。
【0084】
1. 血漿中の総酸化防止能(PTAC)
矩形試験(rectangular trials)を行うと、PTAAが総体的かつ有意に統計学的に増加する(p<0.05)。これらは、DHAを3週間投与された運動選手では、全体としてもまたは自転車競技選手としても高くなるが、アマチュア運動選手の基礎試験およびDHAを3週間消費した後に得られる試験の間には何ら差は認められない(図28)。
【0085】
2. マロニルアルデヒド(MDA)
MDAは、酸化的ストレスによって生成した過酸化脂質チオバルビツール酸と反応させた後に主として得られる生成物である。総ての活動試験を行いながら、血漿脂質に対する酸化的損傷の有意な増加が示される(p<0.035)。DHAを3週間摂取した後、活動試験を行いながらの脂質に対する酸化的損傷は開始時より低くなる(p<0.05)。この差は、アマチュア運動選手よりもトレーニングを受けた運動選手にとって重要である(図29)。
【0086】
3. 8−オキソ−7,8−ジヒドロ−2−’ −デオキシグアノシン(8−oxodG)
8−oxodGは酸化的ストレスバイオマーカーである。矩形活動試験を行いながらのDNAに対する酸化的損傷が増加する(p<0.011)。この酸化的損傷は、DHAを3週間投与した後には減少する(p<0.035)。この酸化的ストレスの減少は、自転車競技選手よりも非自転車競技選手で重要であるが、この差は統計学的に有意ではない(図30)。
【0087】
血糖研究
血中グルコースレベルを検討するため、矩形活動試験を自転車ローラー上でスロープ定数を2%の値に保持した最大三角活動試験に対して計算したVO2maxの75%に対応する速度と同等に保持した最大供給量で行った。試験の時間は90分間であり、試験中の水の消費は自由に行う。
【0088】
炭水化物を含む飲料は摂取しなかったので、低血糖が予想された。第二の抽出(開始20分前に得られる出発試料に対して、試験終了20分後)のこの低血糖は、予想されたように第一の活動試験で見られた。しかしながら、DHAを4ヶ月間投与した後に得られたデータは統計学的に有意な血糖の維持を示しており、これは以前には観察されなかったものであり、このことは実現された研究における意外な知見を表している。
【0089】
一般に、矩形活動試験中には、血清グルコースレベルの統計学的に有意な減少(p<0.0009)が観察される。しかしながら、分析を受ける運動選手の種類によって反応は変化し(p<0.003)、通常の自転車競技選手の場合には、試験中の血糖の減少には有意な変動は見られないが、アマチュアサイクリストの場合には、基礎試験中の血糖減少は通常の自転車競技選手より大きく、DHAを3週間または4ヶ月間摂取した後には、上記減少は実質的に消失する(図31、32および33)。
【0090】
炭水化物を含む飲料を飲まずにVO2maxの75%での90分間の活動試験中の血糖が正常であることは、スポーツ活動中のDHAの挙動をインスリン感受性の増加に関して観察されかつ上記したものと結びつける知見を表している。これに関して、Goodyear and Kahn (1998)は、インスリンまたは運動による骨格筋のグルコースに対する反応に内在する分子機構は、1997年(Winder and Hardie)にAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)がアセチル−CoAカルボキシラーゼを阻害しかつグルコース輸送を取り分け促進する多面発現作用を有することを考慮して、AMPKは運動中の繊維で高いという事実について公表した後は、異なっていると結論した。恐らく、これにより、運動選手では挫業者で行った研究に準じて予想されるものとは異なる血糖反応についての知見を説明することができる。
【0091】
運動能力および血糖に対するDHAの作用についてのこれらの研究から、下記のように結論することができる。
【0092】
1) DHAを3週間を上回る期間連続摂取すると、自転車競技選手およびアマチュアサイクリストのいずれでも総体的かつ統計学的に有意に(p<0.05)血漿総酸化防止能(PTAC)が増加することが明らかにされている。また、脂質に対する酸化的損傷は低くなる(p<0.05)(この差は、アマチュアサイクリストよりもトレーニングを受けた運動選手について一層重要である)。最後に、尿中マーカー(8−oxodG)によって測定されたDNAに対する損傷は、DHAを3週間摂取することにより減少することが示されている(p<0.035)。
【0093】
2) DHAを4ヶ月間連続摂取した後、運動能力は高くなる(供給量および心拍数並びにUV2におけるVO2maxの比率の増加)ことが明らかにされた。また、VO2max 75%で90分間の活動試験においてDHAを4ヶ月間消費した後には、統計学的に有意な正常血糖が観察された。
【0094】
両作用の結合(長期運動の際の運動能力の増強と正常血糖)は、当該技術分野で予想されずまた知られていない結果である。
【0095】
更に、この作用の結合は望ましいものであり、未だ知られていない疲労回復促進剤(ergogenical aids)となり得ることが結論された。
【0096】
本発明のもう一つの目的は、任意の適当な手段によって投与される運動能力を高めかつ運動後の血中グルコースレベルを維持する組成物を製造するためのドコサヘキサエン酸の使用である。
【0097】
食に関する欧州連合科学委員会(European Union Scientific Committee on Food)は、運動中には飲料組成物の下記の成分を摂取することを推奨していることを考慮すべきである(http://ec.europa.eu/food/fs/sc/scf/out64_en.pdf参照)。
【0098】
【表1】

【0099】
これに関して、炭水化物を含むことは、血糖を維持して筋および肝グリコーゲンの速やかな消費の回避を目的とする。空腹の欠点は、多くの運動選手にとって望ましくない満腹感と関連した炭水化物濃度の存在を生じる浸透圧の増加によって減少することを考慮すべきである。従って、DHAを加えることによる低濃度の炭水化物を含む飲料の製造は、運動能力における疲労回復という明確な利益となり得るものである。
【0100】
従って、本発明のもう一つの態様は、食料品(例えば、ヨーグルト、ミルクなどの乳製品)にDHAのような天然の酸化防止剤を強化する目的で食品産業で用いることができるDHAを含んでなる医薬組成物、または運動の前、中および後のそのあらゆる特徴における飲料、エネルギー供給バー(energy-giving bar)、疲労回復性バー(ergogenical bars)、(例えば、カプセル、錠剤、丸薬、凍結乾燥形態、または投与に適当な任意の手段の形態での)栄養補給物およびポリビタミン製剤、疲労回復促進剤(ergogenical aids)、皮膚吸収用ナノカプセルを有する織物および任意の他の適当な投与手段を提供するための固形物および製剤を含んでなる群から選択される適当な投与形態に組込まれたものに関する。
【0101】
下記の実施例は、本発明の実例および非制限的実施例として包含される。
【実施例】
【0102】
酸化防止活性を評価するための材料および方法
細胞培養物
用いた細胞モデルは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手した包皮細胞(未分化表皮繊維芽細胞、CRL−2076)およびARPE−19細胞(網膜色素上皮細胞、CRL−2302)であった。細胞培養物を、この目的のために特別にデザインしたインキュベーターで温度(37℃)、CO濃度(5%)および湿度(95%)の適当な生長条件に保持した。ARPE−19細胞は、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン抗生物質(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)およびグルタミン(Biological Industries)を補足したDMEM−F12培地(Biological Industries)を含む培養フラスコ中で0.3x10個/cmのコンフルエンスになるまで増殖させた。CRL−2076繊維芽細胞は、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン抗生物質(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)およびグルタミン(Biological Industries)を補足したイスコブの改良ダルベッコ培地の培養フラスコで増殖させた。細胞は、37℃で基質に24時間付着させるために、75mlフラスコから6、12または96穴プレートに移し、実験を行うことができるようにした(10個/ml)。
【0103】
細胞へのDHAの組込み
DHA−TGは、油をエタノールに溶解して保存溶液(1:100)とし、血清で調製した培地で使用溶液を調製することによって作製した20、50および70%(油密度0.92g/ml)で濃縮したDHA−TGから開始して様々な濃度(0.5−50μM)で加えた。細胞は、補足DHA−TG培地で37℃にて3日間培養した。
【0104】
酸化的ストレスの誘導
様々なインデューサー細胞を用いて、細胞に酸化的ストレスを加えた。
a) ヒポキサンチンとキサンチンの尿酸への酸化、およびOのO・−2およびHへの還元を触媒するキサンチン/キサンチンオキシダーゼ系 0.8mM/10−2U/ml。
b) 脂質およびタンパク質過酸化を誘導することによってフリーラジカルの親水性開始剤として広汎に用いられる2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)1−100mM。AAPHは、形成されたペルオキシルラジカルの作用によってDNA、タンパク質および脂質を酸化する。これは、重要な酵素であるSODを失活させることによってCATおよびGPxの保護能を失うので、内因性防御系にも作用する。
【0105】
反応性酸素種(ROS)の生成
ROSは、レベルヒト皮膚CRL−2076繊維芽細胞の一次培養物およびARPE−19網膜上皮細胞で、30分毎に180分まで測定する連続系でジヒドロローダミン123(DHR123, Molecular Probes)および2,7−ジクロロフルオレセインジアセテート(H2DCFDA, Molecular Probes)を蛍光プローブとして用いる蛍光測定法を用いて測定した。いずれの場合にも、これは、ROS生成の非特異的測定である。蛍光プローブは、10μMの最終濃度で細胞(1x10個/ml)に加えた。酸化プローブ(2,7−ジクロロフルオレセインおよびローダミン123)の蛍光を、Mithras蛍光リーダーで励起波長488nmおよび発光波長525nmにて経時的に測定した。得られた蛍光を、下記に概説したMTT分光光度法による細胞生育力測定で調節する。
【0106】
細胞生育力
細胞生育力は、様々な試料の細胞傷害作用を評価する目的で検討した。この方法は、水性培地に可溶性のMTT試薬(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾイルブロミド,Sigma)をインキュベーション培地に加えることからなっている。生育可能な細胞はこの化合物を代謝し、これはホルマザン塩に転換される。この塩は、水性媒質に不溶性で、DMSOに可溶性であり、細胞の生育力の測定に用いることができる比色化合物である。この方法は、7.5mg/ml(過剰量)MTT溶液を20μl/ウェル加えることからなる。これを37℃で1時間インキュベーションし、生育可能な細胞が化合物を代謝してホルマザン塩を生成し、生育力のない細胞は化合物を代謝しないようにする。インキュベーションを1時間行った後、細胞を沈澱させ、DMSO 100μlを加えて、ホルマザン塩を溶解する。最後に、550nmでの吸光度を、プレートリーダーで読み取る。生育力の結果は、100%生育力を有するとした対照に対する光学濃度の割合として表される。細胞生育力曲線を、(細胞の増殖比に関して適当数の細胞を分析した後)約200μl培地/ウェルの容積で約20,000個/ウェルを播種することによって96穴プレート上で作製した。IC50の値を見出すため十分に広範囲の濃度で細胞を生成物に72時間暴露した後に、生成物の効率を検討する。実験結果をSigma Plot 8.0を用いてHill方程式に適合させ、培養物の生育力を対照に対して50%まで減少させるのに必要なDHA濃度として定義されるIC50を決定する。
【0107】
タンパク質の測定
測定は、0.5−20μg/mlの濃度範囲の希釈試料で測定することができる最適化したジジンコニン酸(dizinconinic acid)処方物を用いるタンパク質の比色検出および総定量に基づいている。この方法は、アルカリ性媒質中でタンパク質によってCu+2に還元されるCu+1の検出器を用いている。紫色反応生成物は、BCA 2分子の第一銅イオンによるキレート化によって形成される。水溶性錯体は、562nmに吸収を有する。キャリブレーション曲線によって、方程式を得ることができ、結果はタンパク質のμg/ml数によって表される。用いる市販キットは、Pierce製のMicroBCA(No.23235)である。
【0108】
ROS生成の直接分析
脂質のヒドロペルオキシドの生成の測定
細胞溶解物についてのマロニルジアルデヒド(MDA)を、UV−可視分光光度法による脂質過酸化のマーカーとして用いた。MDAと4−ヒドロキシアルケナール(HAE)は、多不飽和脂肪酸および関連エステルの過酸化から誘導される生成物である。これらのアルデヒドの直接測定は、脂質過酸化の好都合な指標を構成する。MDAと45℃で反応する発色試薬(N−メチル−2−フェニル−インドール/アセトニトリル)として、Calbiochem製の市販の脂質過酸化キット(No.437634)を用いた。MDA 1分子と発色試薬2分子の縮合により、586nmに最大吸光度を有し、検出限界は0.1μMである安定発色体が得られる。誘導は40mM AAPHで6時間行い、潜伏期間は24時間であった。細胞(10個/ml)を、液体窒素中での凍結−融解のサイクルによってリーシスした。試料を分画化して、MDAとタンパク質を測定した。結果は、MDA/mgタンパク質のμM数として表した。
【0109】
スーパーオキシドアニオンの生成の測定
スーパーオキシドアニオンの直接測定は、ルミノール(Calbiochem,No.574590)によって測定されるマイクロプレート上での化学発光によって行われる。スーパーオキシドアニオンを検出する化学発光は、ルミノールとの反応が極めて特異的であり、細胞内傷害性が極めて小さく、他の化学的方法と比較して感度が高いことにより、スーパーオキシド生成の総ての細胞内部位へ接近することができることによって用いられる手法である。これは、標準的照度計で迅速に測定される光子を生じる反応におけるルミノールを酸化するスーパーオキシドアニオンに基づいている。本発明者らの試験では、ELISAからのマイクロプレート上の化学発光リーダーMITHRASを用い、更に、ラジカルの半減期が短いことを考慮して、エンハンサーを用いて試験の感度を増加させ、応答を増幅した。この試薬は毒性がなくかつ亜細胞系成分を変性しないので、生細胞で用いることができる。スーパーオキシドアニオンの生成を抑制する能力も、ROS生成のイン・ビトロでのブロック分析に頻繁に用いられ細胞膜を透過可能な特異的スーパーオキシドアニオン封鎖剤Tyron(4,5−ジヒドロキシ−l,3−ベンゼンジスルホン酸,Sigma)を用いて検討し、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD,Sigma)を内因性酸化防止防御の最も重要な酵素を構成する酵素遮断剤として用いた。AAPH酸化的ストレス誘導処理を受けた細胞の化学発光は、60秒毎に4100秒の総時間、120秒/サイクルの頻度で測定した。結果は、化学発光/mgタンパク質のUAとして表した。
【0110】
酸化防止酵素活性の測定
グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性の測定
GPxはヒドロペルオキシドの還元型グルタチオンへの還元を触媒し、その機能は細胞を酸化的損傷から保護することである。これは、グルタチオンを最終的電子供与体として用い、還元型のセレノシステインを再生する。GPxは、グルタチオンレダクターゼとの共役反応(coupled reaction)によって間接測定される。GPxの作用によるヒドロペルオキシドとの反応によって生成した酸化型グルタチオン(GSSG)は、NADPHを補酵素として用いるグルタチオンレダクターゼによってその還元状態へリサイクルされる。NADPHからNADPへの酸化は、340nmにおけるその吸光度の減少を伴う。340nmの吸光度の減少速度は、試料のGPx活性に直接比例している。Cayman製のELISAマイクロプレート分光光度法キット(No.703102)を用いて、一次培養物の細胞溶解物におけるGPxを検出した。細胞は、37℃で24時間基質へ付着させることによって培養した。細胞溶解物は、50mM Tris pH7.5、5mM EDTAおよび1mM DTT中で音波処理を行うことによって得た。GPxの活性は、NADPH/分/mg試料からのタンパク質のナノモル数として表されるA340nm/分(ΔA340)の変化を測定することによって得る。
【0111】
スーパーオキシドジスムターゼ活性(SOD)の測定
この化学発光法は、SODの正の対照(Calbiochem No.574590)に対する細胞上清におけるSOD活性の分析に基づいている。キサンチンオキシダーゼ−キサンチン−ルミノール系にSODが含まれていると、SOD活性に比例するスーパーオキシドアニオンの不均化反応の減少として生じる化学発光が減少する。分析は、MITHRAS照度計上で50ミリ秒の間隔で520秒の最終反応時間まで行う。
【0112】
キサンチンオキシダーゼ/ヒポキサンチン系によって生成したスーパーオキシドラジカルを検出するためテトラゾリウム塩を用いる反応による細胞溶解物でのスーパーオキシドジスムターゼ活性(SOD)も測定した。分光光度法による方法をマイクロプレート上で用いて、3種類のSOD(Cu−Zn−SOD、Mn−SODおよびFe−SOD、すなわちサイトゾル性およびミトコンドリア性)を測定する。SOD 1単位は、生成したスーパーオキシドアニオンの50%を不均化するのに要する酵素の量として定義される。一次培養物からの細胞溶解物のSODを検出するため、Caymanキット(No.706002)を、製造業者が最適化したプロトコルに従って用いた。この分析法のダイナミックレンジは、0.025−0.25 SOD単位/mlである。
【0113】
細胞内内因性酸化防止剤濃度の測定
還元型グルタチオンの細胞内濃度(GSH)の測定
細胞溶解物の還元型グルタチオン(GSH)の直接速度論的測定法。グルタチオンは、細胞内に主として還元型形態(総グルタチオンの90−95%)で見出すことができ、組織の主要な酸化防止剤である。その役割は、生体異物の解毒およびヒドロペルオキシドを除去して細胞の酸化還元状態を保持することである。用いる手法では、スルホサリチル酸(Sigma−Aldrich CS0260キット)で予め脱タンパク質した生物学的試料(細胞溶解物)の総グルタチオン(GSSG+GSH)を測定する。GSHは5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)から5−チオ(2−ニトロ安息香酸)(TNB)への連続還元を引き起こし、生成したGSSGはグルタチオンレダクターゼとNADPHによってリサイクルされる。TNBを、412nmで分光光度法によって測定する。γ−グルタミルシステインシンテターゼを特異的に阻害するブチオニンスルホキシミン(BSO)を、合成阻害剤として用いた。
【0114】
ヒト皮膚モデルにおけるDHAの抗酸化剤活性の評価
このイン・ビトロ分析法では、包皮細胞(未分化表皮繊維芽細胞,ATCC CRL−2076)を細胞モデルとして用い、正常な栄養要件および培養条件を有する一次培養物であることに加えて、様々な酸化剤インデューサーに対するイン・ビトロ応答が良好であり、DHAの潜在的な化粧品への応用を目的としてイン・ビボ応答に外挿できる良好なイン・ビトロモデルを構成している。
【0115】
結果
最初に、総ての検討条件下で活性細胞モデルを得る条件を設定した。これは、得られた結果が代謝的に活性な細胞を指すことを意味している。従来の研究は、包皮細胞では1000μM未満の濃度のDHAは3日間の検討において細胞の生育力に影響しないことを既に示していた。キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系またはAAPHによる酸化的ストレスの研究についても、細胞の生育力は影響されなかった。包皮細胞の3日間の培養物にDHAを50μMの濃度まで組込んでも、それぞれスーパーオキシドアニオンおよびヒドロペルオキシドの検出に一層特異的なジヒドロローダミン(DHR 123)および2,7−ジクロロフルオレセイン(H2DCFDA)の2種類のプローブに関連した細胞蛍光として測定される細胞の酸化レベルは有意に増加しないことも示されている。これらの条件が確立されてしまったならば、包皮細胞の膜に組込まれたDHAの総体的酸化防止能をキサンチン/キサンチンオキシダーゼまたはAAPHによって誘導される酸化的ストレスに対して評価した。
【0116】
40mM AAPHにより中程度の酸化的ストレスを誘導し、ROS検出器としてDHR123を用いると、DHAは0.5μM(59%保護)および5μM(33%保護)のいずれの濃度でも反応性酸素種の生成に対して阻害作用を示すが、10μMでは効果は低下し(26%保護)、または50μMのDHAでは効果は見られない(図1A)。細胞を60mM AAPHにより過酷な誘導に暴露すると、DHAは0.5μM濃度(40%保護)および5μM(29%保護)のいずれでもROSの生成に対して保護作用を示すが、更に高濃度のDHAでは保護作用は失われる(図1A)。
【0117】
0.5μM DHAは、キサンチン/キサンチンオキシダーゼによって誘導される酸化的ストレスに対しても作用し(図1B)、酸化過程で生じた酸素反応性種であるスーパーオキシドアニオンおよびヒドロペルオキシドのいずれに対しても封鎖作用を示すという保護にも注目することができる。ビタミンEのような親油性酸化防止剤に対する酸化防止能を比較すると(図1B)、それらは同様な保護速度論(DHAは細胞の酸化を33.46%だけ抑制し、ビタミンEは30%だけ抑制する)を示すことが認められる。
【0118】
DHAの保護の速度論的応答は、常に誘導の60−120分後に最大酸化防止剤効果を示し、従ってDHAのヒドロペルオキシドおよびスーパーオキシドアニオン封鎖能は飽和する。酸化防止剤作用は、その濃度が増加するとROS封鎖能が失われ、0.5μM濃度が最も効果的な酸化防止能を有するので、決定的に用量依存性である。これに関して、系の効率の最適化に関するもう一つの重要なパラメーターは、総脂肪酸に対するDHAの割合である。図2に示されるように、同一濃度のトリグリセリドでは、DHAの割合が50または20%に減少すると細胞の酸化防止能が大幅に減少し、低または中濃度では酸化促進性を回復する。これらの結果は、DHAの細胞酸化防止作用はその濃度に依存するだけでなく、決定的因子であるその分子局在化、この場合には、トリグリセリドの構造におけるその分布によっても変化することを示していると思われる。
【0119】
ROS生成の特異的抑制に関して、過酸化脂質(TBARS)およびスーパーオキシドアニオンの生成を分析した。得られた結果は、AAPHで処理した細胞が非誘導細胞と比較してチオバルビツール酸(TBARS)に反応性の高濃度の基質を生成することを示し、MDA/mgタンパク質のμM数として表される(図3)。予想されるように、DHAを包皮細胞の膜に組込むことにより、基礎細胞脂質過酸化が用量依存的に若干増加した(0.5、5および50μM)(図3)。40mM AAPHにより酸化的誘導を行った細胞では、DHAは、繊維芽細胞を膜脂質ヒドロペルオキシドの生成から保護する酸化防止活性を示し、その作用は濃度に反比例する。DHAによる保護は、0.5μM DHAでは87%であり、5μMでは85%であり、50μM DHA−TGでは48%であった(図3)。
【0120】
次に、スーパーオキシドアニオンの生成を分析した。40mM AAPHにより酸化的ストレスを加えた包皮細胞は、一定のスーパーオキシドアニオンレベルに保持した非誘導細胞より2.5倍のスーパーオキシドアニオンを生成した(図4)。酸化的誘導の非存在下では、DHAを組込んだ細胞は対照と比較して高レベルの細胞間スーパーオキシドアニオンを示さない(図4)。酸化的ストレス条件下では(図4)、DHAは、スーパーオキシドアニオンの生成を0.5μMの濃度では16.5%、5μMの濃度では10%、および50μMの濃度では9%だけ抑制する。この方法の特異性は、Tyron (4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、細胞内スーパーオキシドアニオンの極めて特異的な封鎖剤として作用する細胞膜に対して透過性の化合物)または細胞外SOD(細胞内スーパーオキシドアニオンの不均化反応を介する内因性酸化防止防御における最も重要な酵素遮断剤)の添加によって確認した。DHAを予め組込んだまたは組込んでいない、外因性SODまたはTyronの存在下でAAPHでストレスを加えた細胞におけるスーパーオキシドアニオンの生成は、完全に抑制され、基礎値となった(図4)。
【0121】
最後に、DHAは、最も重要な細胞の酸化防止剤酵素の活性を変更することによってその酸化防止剤活性を保持するかどうかを検討した。DHAを組込んだまたは組込んでいない包皮細胞におけるSODおよびGPxの活性を分析した。第一の場合には、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系を、スーパーオキシドアニオンの瞬間生成剤として用いた(50ミリ秒毎に測定し、全体で520秒間測定)。得られた結果は、速やかな反応速度による良好な酸化的誘導を示し、スーパーオキシドアニオンの不均化反応および非生成が直接観察された。酸化的誘導の15秒後に得られた最大化学発光は、SOD活性の間接的な定性測定と解釈された(図5A)。DHAを組込んでいない場合には、U.A.の化学発光/10個の細胞の値は310となったが、0.5μM DHAと予備インキュベーションした系ではU.A.化学発光/10個の細胞は150に低下した(52%酸化防止保護)(図5A)。酸化防止剤効率は、5および50μMのDHAで処理した細胞では、それぞれ52%および42%保護に保持された(図5A)。更に、AAPHが、生成したペルオキシルラジカルの核酸によってDNA、タンパク質および脂質を酸化することが知られているので、酸化防止剤としてのDHAはスーパーオキシドアニオンの不均化反応を委ねたSODの失活を防止し、カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼの内因性酸化防止剤の防御を細胞で保持することができる。この局面は図5Bで確かめられ、SOD活性はDHAが含まれている基礎状態では増加しないことが示されているが(−10/−15%)、酸化的ストレス過程に固有のSOD活性の喪失は含まれているDHAによって抑制され、SOD活性を保持または増加までもする(10/20%)。GPx活性(図6)については、中濃度のDHAでは基礎状態の細胞では増加するが(5μMで17%まで)高濃度では低下する(50μMで−20%)ことが分かっている。この作用は、酸化的ストレス状態では元のままに保持される(図6)。これらの結果は、DHAは、試験した全濃度範囲にわたってSODを生成することによってスーパーオキシドアニオンの不均化反応に関係しているので、内因性酸化防止剤防御系と協同し、またGPx活性を増加するので、中濃度でヒドロペルオキシドの生成を制御することもできることを示唆している。
【0122】
網膜細胞モデルにおけるDHAの酸化防止活性の評価
このイン・ビトロでの研究では、細胞モデルはARPE−19細胞(色素性網膜上皮細胞,ATCC CRL−2302)に基づいており、様々な酸化剤インデューサーに対してイン・ビトロ応答が良好であるため適当な種類の細胞であり、同時に正常な栄養要件と培養条件を有する一次培養物である。これは、網膜色素上皮細胞の生物学的および機能的特性を保持しているので、良好な眼のモデルをも構成する。
【0123】
結果
この細胞系を用いて行ったアッセイは、前節で包皮細胞について記載したアッセイと同じである。基本的要件は、総ての作業条件下での細胞生育力の保持に関するものと同じであった(DHA、酸化的ストレスの効果)。分析を行った用量でのDHAの組込みは、基礎細胞の酸化的状態の有意な変更を伴わなかった。
【0124】
40mM AAPHを用いて中程度の酸化的ストレスを誘導し、DHR123をROS検出器として用いると、DHAは0.5μM(43%保護)および5μM(32%保護)の濃度で反応性酸素種の生成を抑制する効果を示すが、50μMのDHAでは効果は低くなる(4%保護)(図7A)。細胞に60mM AAPHを用いて過酷な誘導を行うと、DHAは0.5μM濃度でROS生成に対して保護効果(13%保護)を示すが、更に高濃度のDHAでは効果は低くなる(図7A)。これらの結果は包皮細胞を用いて得たものと同様であるが、1つの顕著な他と異なる効果は過酷な酸化的誘導に対してみられる保護の低下である。ROS検出するために過酸化物に更に特異的なCDCFDAを用いることによって、DHAがAAPHによって誘導される酸化的ストレスに対して働くことが保護であることも明らかになる(図7B)。
【0125】
DHAの保護反応速度は、常に誘導を行う60−120分後に最大酸化防止剤効果を示し、DHAのヒドロペルオキシドおよびスーパーオキシドアニオン封鎖能の飽和を示す。定量的には、DHA濃度が増加すると、ROS封鎖能が失われ、0.5μM濃度がその酸化防止能で最も効果的であるので、酸化防止能は決定的に用量依存性である(図7Aおよび7B)。これに関して、系の効率の最適化に関してもう一つの重要なパラメーターは、DHA対総脂肪酸の比である。総脂肪酸に対するDHAの割合を70%から50−20%に減少すると、最適濃度(0.5−5μM)におけるその細胞酸化防止能が有意かつ非比例的に減少し、高濃度と等しくなるが(図8Aおよび8B)、包皮細胞とは異なり、どのような比でもDHAは酸化促進性とはならない。これらの結果から、DHAの細胞酸化防止効果はその濃度にのみ依存するものではなく、決定的因子はその分子局在化、この場合には、トリグリセリドの構造におけるその分布であることが確かめられる。
【0126】
ROS生成の特異的抑制について、過酸化脂質(TBARS)(図9)およびスーパーオキシドアニオン(図10)の生成について分析を行った。得られた結果は、包皮細胞で得られたものに極似している。AAPHで処理した細胞は、非誘導細胞と比較して、チオバルビツール酸(TBARS)に反応性の物質とスーパーオキシドアニオンを高濃度で生成する。DHAをARPE−19細胞の膜に組込むと、細胞の基礎脂質過酸化が若干かつ用量依存的に(0.5、5および50μM)増加するが、酸化的誘導を行った細胞では、DHAは細胞の酸化防止活性を示し、それらの濃度と逆比で膜脂質ヒドロペルオキシドの生成を抑制する。DHAによる保護は、0.5μM DHAについては64%、5μMについては58%であり、50μM DHAについては42%であった(図9)。次に、スーパーオキシドアニオンの生成を分析した。酸化的誘導の非存在下では、DHAを組込んだ細胞は、対照と比較して高レベルの細胞内スーパーオキシドアニオンを示さない(図10A)。40mM AAPHによる酸化的ストレスでは、スーパーオキシドアニオンを生成し、これはDHAによって部分的に抑制される(0.5−50μMの濃度で20−16%)。この抑制は、含まれているDHAによるSOD活性と一致する(図10B)。SOD活性は、含まれているDHAを用いる基礎状態では増加は見られないが(−10/15%)、包皮細胞と同様に、酸化的ストレス過程に固有のSOD活性の喪失は含まれているDHAによって抑制され、基礎SOD活性は保持される。
【0127】
最後に、DHAが、最も重要な細胞の酸化防止剤としてのGPx酵素の活性を変化させるかどうかを見出す目的で分析を行った(図11)。GPx活性は、試験したDHAの総ての濃度で基礎状態の細胞で増加し(12−40%)、この作用は酸化的誘導状態では完全に保持され、2.5倍のGPx活性も示す(図11)。包皮細胞の場合と同様に、これらの結果は、DHAが、内因性細胞酵素系の酸化防止防御の活性を調節することによってその酸化防止作用の役割を行うことを示唆している。
【0128】
トリグリセリドに組込まれたDHAの酸化防止活性における合成法の影響
このイン・ビトロ分析では、ARPE−19細胞(網膜色素上皮細胞,ATCC CRL−2302)および包皮細胞(未分化表皮繊維芽細胞,ATCC CRL−2076)を細胞モデルとして用い、様々な酸化剤インデューサーに対するイン・ビトロ応答が良好であることにより適当な細胞系である。化学的方法(CHEM)または酵素法(ENZ)によって得たマグロ油トリグリセリド(DHA 20%−TG,20%モル/DHA)またはDHAを50または70モル%強化した油誘導体(DHA50%−TGおよびDHA70%−TG)を、活性成分として用いた。
【0129】
結果
ARPE−19細胞において40mM AAPHによる中程度の酸化的ストレスを誘導し、DHR123またはH2DCFDAをROS細胞内検出器として用いると、天然DHA(DHA20%−TG)および化学的に得られたトリグリセリドに組込まれたもの(DHA50%−TG−CHEMおよびDHA70%−TG−CHEM)は、0.5μMおよび5μMのいずれの濃度でも反応性酸素種の生成に抑制作用を示すが50μMでは作用は低くなる(図13A)。この作用はDHAの含量によって変化し、DHA70%−TG−CHEM>DHA50%−TG−CHEM>DHA20%−TGである。同一濃度では(0.5、5および50μM)、酵素的に得られた油は、総てのDHA含量で高活性を示す(DHA70%−TG−ENZおよびDHA50%−TG−ENZ)(図13B)。包皮細胞を用いる同様の研究では、結果は一層意外なものであった。高用量のDHA70%−TG−CHEMおよびDHA50%−TG−CHEMで示される酸化促進活性(図13C)は、酵素起源の油では総ての濃度で酸化防止性となる(DHA70%−TG−ENZおよびDHA50%−TG−ENZ)(図13D)。化学的に得た油の固有のポリマーをクロマトグラフィー法によって除去すると(DHA70%−Tg−BPM)、ARPE−19細胞における酸化防止活性が大幅に減少し、高濃度(5および50μM)では酸化促進性となる(図14)。酵素合成によって得られたトリグリセリドに組込まれたDHAの酸化防止活性も、エチルエステル、遊離脂肪酸または血清アルブミンに結合した脂肪酸のような他の化学構造に組込まれたDHAによって示される活性より(少なくとも2倍)高い(図15)。
【0130】
DHAの組込みによって示される細胞の酸化防止活性は、SODおよびGPX酵素活性の保持のような上記で考察した総ての態様に関係しているが、グルタチオン細胞内濃度(GSH)の増加にも関係している。ARPE−19細胞では(図16)、BSO(GSH合成の特異的阻害剤)の添加により、GSH細胞内濃度の減少(図15)と直接関係しているDHAの保護作用が減少するので(図17)、DHAはGSHデ・ノボ合成に直接関係したGSH細胞内濃度の増加を誘導する。同様な作用は、包皮細胞について示される(図18)。
【0131】
酵素合成によるDHAの酸化防止活性で得られる改良点は、エイコサペンタエン酸(EPA)のような別のω−3脂肪酸にも適用できる。ARPE−19細胞を用いる研究では、酵素的に得られるEPA(EPA70%−TG−ENZ)は酸化防止活性を有することが示されており、DHA(DHA70%−TG−ENZ)で見られるような極めて低いものであるが、化学的に得られかつポリマーを含まないEPA(EPA−70%−TG−BPM)は極めて酸化促進性であることが示されている(図19)。更に、酵素的に得られるEPA(EPA70%−Tg−ENZ)は、包皮細胞ではDHAについてのようにGSH細胞内濃度の増加(図21)に関係したDHA(DHA70%−TG−ENZ)より高い顕著な酸化防止活性を示す(図20)。
【0132】
網膜細胞モデルの構造トリグリセリドに組込まれたDHAの酸化防止活性の評価
このイン・ビトロアッセイでは、ARPE−19細胞(網膜色素上皮細胞,ATCC CRL−2302)を細胞モデルとして用い、様々な酸化剤インデューサーに対してイン・ビトロ応答が良好であるため適当な種類の細胞であり、同時に正常な栄養要件と培養条件を有する一次培養物である。更に、これは網膜色素上皮細胞の生物学的および機能的特性を保持しているので、良好な眼のモデルである。活性成分として、マグロ油(DHA20%−TG,20モル%/DHA)または70% DHA強化油(DHA70%−TG,70モル%/DHA)由来の構造トリグリセリドであって、酵素法によってsn−1およびsn−3位の脂肪酸がオクタン酸で置換されているものが用いられてきた。これらの新規化合物では、DHAのモル含量はDHA20%−TGでは7%であり、DHA70%−TGでは22%である。
【0133】
結果(図22参照)
40mM AAPHにより中程度の酸化的ストレスを誘導し、DHR123をROS検出器として用いると、通常のトリグリセリドに組込まれたDHA(DHA20%−TGおよびDHA70%−TG)は、0.5μMおよび5μMのいずれの濃度でも反応性酸素種の生成に抑制作用を示すが、50μMでは作用は低くなる(図22)。この作用はDHAの含量によって変化し、DHA70%−TG>DHA20%である。同一濃度では、真のDHA濃度が2−3分の1である構造油は、DHA20%−TGの場合に同じか(0.5μM濃度)または一層高い活性(5μMおよび50μM濃度)を示す。DHA70%−TGの場合には、構造トリグリセリドの効率は最適濃度より若干低いが(0.5μMおよび5μM)、高濃度での作用は逆転し(50μM)、総体的に一層安定でかつ余り用量に依存しない作用を示す。
【0134】
ヒト皮膚モデルにおける加齢に関連したテロメアの長さの保護剤としてのDHA活性の評価
このイン・ビトロアッセイでは、包皮細胞(未分化表皮繊維芽細胞,ATCC CRL−2076)を細胞モデルとして用い、正常な栄養要件および培養条件を有する一次培養物であることに加えて、様々な酸化剤インデューサーに対するイン・ビトロ応答が良好であり、DHAの潜在的な化粧品への応用を目的としてイン・ビボ応答に外挿できる良好なイン・ビトロモデルを構成している。
【0135】
方法
細胞培養物
用いた細胞モデルは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から入手した包皮細胞(未分化表皮繊維芽細胞、CRL−2076)であった。細胞培養物を、この目的のために特別にデザインしたインキュベーターで温度(37℃)、CO濃度(5%)および湿度(95%)の適当な生長条件に保持した。CRL−2076繊維芽細胞は、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン抗生物質(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)およびグルタミン(Biological Industries)を補足したイスコブの改良ダルベッコ培地の培養フラスコで増殖させた。
【0136】
細胞へのDHAの組込み
酵素的に合成したDHA−TG 70%は、油をエタノールに溶解して保存溶液(1:100)とし、血清で調製した培地で使用溶液を調製することによって作製したものを0.5μM濃度で加えた。細胞は、補足DHA−TG培地で37℃にて3日間培養した。
【0137】
酸化的ストレスの誘導
脂質およびタンパク質過酸化を誘導することによってフリーラジカルの親水性開始剤として広汎に用いられる2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)を40mMの濃度で用いて、細胞に酸化的ストレスを加えた。AAPHは、形成したペルオキシルラジカルの作用によってDNA、タンパク質および脂質を酸化する。これは、重要な酵素であるSODを失活させることによってCATおよびGPxの保護能を失うので、内因性防御系にも作用する。
【0138】
テロメアの長さの測定
高反復DNAによって構成されるテロメア領域は、イン・シテューハイブリダイゼーション法によって評価することができる。テロメア配列に相補性のプローブを用いる蛍光によるイン・シテューハイブリダイゼーション法(FISH)によって、テロメアの存在または非存在を検出し、同時に細胞当たりのまたは染色体群当たりのテロメアを定量することができる。フローFISHと呼ばれるこの方法は、フローサイトメトリーを汎テロメアPNA(ペプチド核酸)をプローブとして用いるFISH法と組み合わせて用い、個々の細胞の染色体末端の平均テロメア長を蛍光強度を用いて測定することができる。本発明の目的のため、PNAの蛍光強度を中期の染色体で標識した。結果は、テロメア蛍光単位(TFU)として表され、それぞれのTFUは反復テロメア1kbに対応している。
【0139】
結果
DHAを組込んだまたは組込んでいない酸化的ストレス条件下で培養したヒト繊維芽細胞におけるテロメアの平均長の変化を、フロー−FISHによって分析した(図23)。線形回帰を用いて、テロメア長と細胞個体群のパス番号(pass number)との関係を分析した。分析した総ての培養物について、回帰直線の傾きはテロメア短縮インデックスと直接的に理解することができる。ヒト繊維芽細胞では、過剰な細胞内フリーラジカルを誘導するAAPHで処理することによって、テロメア短縮インデックスは顕著に増進される。一方、細胞の酸化防止防御を増加することが明らかにされているDHAを0.5μMの濃度で組込むと、上記インデックスはDHAなしでの値と比較して50%だけ減少する。更に、DHAの組込みにより、正常な対照の繊維芽細胞と比較してもテロメア短縮インデックスを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1A】ROSの細胞内生成に対する包皮細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAと共にトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験を行った。(A)ROSは、40または60mM AAPHで180分間処理した細胞についてDHR 123で検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。(B)ROSは、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系で180分間処理した細胞についてCDCFDAで検出した。比較のため、100μMビタミンE(対照)で得たデータを組込んでいる。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。
【図1B】ROSの細胞内生成に対する包皮細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAと共にトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験を行った。(A)ROSは、40または60mM AAPHで180分間処理した細胞についてDHR 123で検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。(B)ROSは、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ系で180分間処理した細胞についてCDCFDAで検出した。比較のため、100μMビタミンE(対照)で得たデータを組込んでいる。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。
【図2A】ROSの細胞内生成に対する包皮細胞培地におけるトリグリセリドのDHAの比率の比較効果。(A)細胞を、それぞれのトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。x軸上の濃度は、DHA含量が70重量%のトリグリセリドで得られるものと同等である。ROSは、40mM AAPHで180分間処理した細胞についてDHR 123で検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。(B)油中の20、50および70%のDHA濃度に対する酸化防止保護を表したもの。
【図2B】ROSの細胞内生成に対する包皮細胞培地におけるトリグリセリドのDHAの比率の比較効果。(A)細胞を、それぞれのトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。x軸上の濃度は、DHA含量が70重量%のトリグリセリドで得られるものと同等である。ROSは、40mM AAPHで180分間処理した細胞についてDHR 123で検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。(B)油中の20、50および70%のDHA濃度に対する酸化防止保護を表したもの。
【図3】包皮細胞でのTBARSの産生に対するDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、指示された濃度で実験に供した。酸化的ストレスは、40mMのAAPHを用いて6時間および24時間の潜伏期間で誘導した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。
【図4】スーパーオキシドアニオンの生成に対する包皮細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。スーパーオキシドアニオンは、40mM AAPHを用いる細胞の酸化的誘導の直後に、幾つかの実験では10mM Tyronまたは外因性SOD0.1875UA/μlの存在下にて化学発光によって検出した。データは、3つの独立した実験の典型的なものである。
【図5A】SOD活性に対する包皮細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、0.5(A)、5(B)および50μM(C)のDHA濃度で実験に供した。SOD活性は、内因性SOD活性の結果としてのルミノールによって生じる化学発光の減少を分析することによって間接的に分析した。酸化的誘導は、スーパーオキシドアニオンを直接生成する0.1mMキサンチン/0.005U/mlキサンチンオキシダーゼ系を用いて行った。データは、3つの独立した実験の典型的なものである。
【図5B】SOD活性に対する包皮細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。SOD活性は、誘導されない細胞系または40mM AAPHで誘導される系について評価した。データは、3つの独立した実験の典型的なものである。
【図6】GPx活性に対する包皮細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。 GPx活性は、誘導されない細胞系または40mM AAPHで誘導される系について評価した。データは、3つの独立した実験の典型的なものである。
【図7A】ROSの細胞内生成に対するARPE−19細胞の培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。(A)ROSは、40または60mMのAAPHで180分間処理した細胞でDHR123(A)またはCDCFDA(B)を用いて検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。
【図7B】ROSの細胞内生成に対するARPE−19細胞の培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。(A)ROSは、40または60mMのAAPHで180分間処理した細胞でDHR123(A)またはCDCFDA(B)を用いて検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。
【図8A】ROSの細胞内生成に対するARPE−19細胞の培地におけるトリグリセリドのDHA濃度の比較効果。細胞は、それぞれのトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。x軸上の濃度は、DHAの割合が70重量%であるトリグリセリドを用いて得られるものと同等である。ROSは、40mMのAAPHで180分間処理した細胞についてDHR 123を用いて検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。(B)油中の20、50および70%のDHA濃度に対する酸化防止保護を表したもの。
【図8B】ROSの細胞内生成に対するARPE−19細胞の培地におけるトリグリセリドのDHA濃度の比較効果。細胞は、それぞれのトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。x軸上の濃度は、DHAの割合が70重量%であるトリグリセリドを用いて得られるものと同等である。ROSは、40mMのAAPHで180分間処理した細胞についてDHR 123を用いて検出した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。(B)油中の20、50および70%のDHA濃度に対する酸化防止保護を表したもの。
【図9】ARPE−19細胞におけるTBARSの生成に対するDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、指示した濃度で実験に供した。酸化的ストレスは、40mM AAPHを用いて6時間および24時間の潜伏期間で誘導した。データは、3つの独立した実験の平均値を示す。
【図10】スーパーオキシドアニオンの生成に対するARPE−19細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。スーパーオキシドアニオンは、40mM AAPHによる細胞の酸化的誘導の直後に化学発光によって検出した。データは、3つの独立した実験の典型的なものである。
【図11】GPx活性に対するARPE−19細胞培地でのDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。GPx活性は、誘導されない細胞系または40mM AAPHで誘導した細胞系について評価した。データは、3つの独立した実験の典型的なものである。
【図12】SOD活性に対するARPE−19細胞培地におけるDHA濃度の効果。細胞は、総脂肪酸に対して70重量%のDHAを用いてトリグリセリドの存在下にて3日間培養した後、実験に供した。SOD活性は、誘導されない細胞系または40mM AAPHで誘導される細胞系について評価した。データは、3つの独立した実験の典型的なものである。
【図13】ARPE−19細胞(AおよびB)または包皮細胞(CおよびD)における細胞保護対酸化的ストレスの比に対する化学合成(AおよびC)または酵素合成(BおよびD)によって得たDHA濃度の効果。
【図14】ARPE−19細胞における細胞保護対DHAによって誘導される酸化的ストレスの比に対する化学合成によって得た油状生成物の精製度の影響。
【図15】細胞保護対ARPE−19細胞でDHAによって誘導される酸化的ストレスの比に対する化学構造の影響。
【図16】ARPE−19細胞におけるグルタチオンの細胞内濃度に対するDHA濃度の効果。BSOの存在の影響。
【図17】ARPE−19細胞における細胞保護対DHAによって誘導される酸化的ストレスの比に対するグルタチオンデ・ノボ合成の影響。
【図18】包皮細胞におけるグルタチオンの細胞内濃度に対するDHA濃度の効果。BSOの存在の影響。
【図19】ARPE−19細胞における細胞保護対EPAによって誘導される酸化的ストレスの比に対する化学合成によって得た油状生成物の精製度の影響。DHAを用いる比較研究。
【図20】包皮細胞における細胞保護対酸化的ストレスの比に対するEPA濃度の効果。DHAを用いる比較研究。
【図21】包皮細胞におけるグルタチオンの細胞内濃度に対するEPA濃度の効果。BSOの存在の影響。
【図22】細胞保護の比に対して様々な投薬量の構造および非構造トリグリセリドにおけるDHAの割合の効果を示す比較用棒グラフ。 上図22は、非構造グリセリド化学構造(トリグリセリド)を同一構造であって、sn−1およびsn−3位がカプリル酸(構造体)で置換されており、いずれもDHA含量が20および70%の2つの出発レベルを有する酵素供給源由来のものと比較するときには、本発明の目的の意外な結果を示している。 図から、同一濃度でグリセリド(構造)、特にトリグリセリドのsn−2位に組込まれたドコサヘキサエン酸の保護の比率は、非構造DHAを含むグリセリドより約3倍大きい効率を示すことが観察される。 このような図22では、保護比は、対照細胞および対照細胞に関してDHAで処理した細胞の反応性酸素種の細胞内濃度における差の関係を示しており、いずれも百分率で表された同一酸化的ストレスを受けている。換言すれば、保護比の存在は、処理した細胞において、対照に関して反応性酸素種の統計学的に有意な細胞内生成が少ない。
【図23】DHAを組込んでまたは組込まずに酸化的ストレス下で培養したヒト繊維芽細胞におけるテロメアの平均長と細胞個体のパス番号(pass number)を示す比較用グラフ。 上図23は、酸化的ストレス条件下におけるDHAの存在下では、テロメア短縮インデックスは対照またはDHAなしと比較して低いことを観察する本発明の目的の意外な結果を示している。
【図24】基礎レベルおよびDHAを4ヶ月間摂取した後の自転車競技選手、非自転車競技選手および総てのサイクリストについての「換気閾値2」(UV2)における絶対値酸素消費量を表すグラフ。
【図25】基礎レベルおよびDHAを4ヶ月間摂取した後の自転車競技選手、非自転車競技選手および総てのサイクリストについてのUV2における心拍数を表すグラフ。
【図26】基礎レベルおよびDHAを4ヶ月間摂取した後の自転車競技選手、非自転車競技選手および総てのサイクリストについてのUV2に達するのに要する時間を表すグラフ。
【図27】基礎レベルおよびDHAを4ヶ月間摂取した後の自転車競技選手、非自転車競技選手および総てのサイクリストについての換気閾値における2000 ml/分のOの消費中の心拍数を表すグラフ。
【図28】基礎レベルおよびDHAを3週間間摂取した後の競技選手、非競技選手および総ての運動選手についての血漿中の総酸化防止能を表すグラフ。それぞれの場合に、活動試験前の酸化防止能(左の棒線)および活動試験後の酸化防止能(右の棒線)が示されている。
【図29】基礎レベルおよびDHAを3週間間摂取した後の競技選手、非競技選手および総ての運動選手についてのMDA濃度を用いる血漿脂質に対する酸化的損傷を表すグラフ。それぞれの場合に、活動試験前の酸化的損傷(左の棒線)および活動試験後の酸化的損傷(右の棒線)が示されている。
【図30】基礎レベルおよびDHAを3週間間摂取した後の競技選手、非競技選手および総ての運動選手についての酸化的ストレスバイオマーカー8−oxodGを用いるDNAに対する酸化的損傷を表すグラフ。それぞれの場合に、活動試験前の酸化的損傷(左の棒線)および活動試験後の酸化的損傷(右の棒線)が示されている。
【図31】DNAを摂取しなかったまたは3週間または4ヶ月間摂取した競技運動選手のスポーツ活動中の血糖を表すグラフ。
【図32】DNAを摂取しなかったまたは3週間または4ヶ月間摂取した非競技運動選手のスポーツ活動中の血糖を表すグラフ。
【図33】DNAを摂取しなかったまたは3週間または4ヶ月間摂取した競技運動選手および非競技運動選手のスポーツ活動中の血糖を表すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の酸化的損傷に関連した病変の治療を目的とする医薬組成物を製造するための、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAの使用であって、
前記ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAをモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質またはエチルエステルに組込み、
総脂肪酸に対して20−100重量%とする
ことを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAが、総脂肪酸に対して40−100重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAが、総脂肪酸に対して66−100重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドに組込む、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを、トリグリセリドに組込む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを、特にエステル結合を介してグリセロールの少なくとも1個の位置に組込み、構造脂質とする、請求項1に記載の使用であって、細胞の酸化的損傷の治療のための医薬組成物を製造するための、使用。
【請求項7】
グリセロールが少なくとも1種類の脂肪酸および/またはリン酸を更に含んでなる、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを、sn−1、sn−2およびsn−3から選択される位置に組込み、かつ、必要に応じて前記グリセロールが短鎖および/または中鎖脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を更に含んでなる、請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを、sn−2位置に組込み、かつ、必要に応じて上記グリセロールが脂肪酸およびリン酸から選択される少なくとも1種類の酸を含んでなる、請求項6または7に記載の使用。
【請求項10】
短鎖脂肪酸がC1−C8脂肪酸である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
中鎖脂肪酸がC9−C14脂肪酸である、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAをトリグリセリドに組込む、請求項6に記載の使用。
【請求項13】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAが化学的に得られる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAが酵素的に得られる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
医薬組成物がもう一つの活性成分を更に含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
医薬組成物を細胞の酸化的損傷の治療を受けている患者に投与する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
酸化的損傷に関連した病変が神経変性的病変である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
酸化的損傷に関連した病変が眼の病変である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
酸化的損傷に関連した病変が虚血性病変である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
酸化的損傷に関連した病変が炎症性過程である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
酸化的損傷に関連した病変がアテローム性動脈硬化症である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
神経変性的病変が、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症および筋ジストロフィーを含んでなる群の一つである、請求項17に記載の使用。
【請求項23】
眼の病変が、色素性網膜炎、黄斑変性および白内障を含んでなる群の一つである、請求項18に記載の使用。
【請求項24】
虚血性病変が、心筋梗塞または脳梗塞である、請求項19に記載の使用。
【請求項25】
前記病変が、関節炎、脈管炎、糸球体腎炎およびエリテマトーデスを含んでなる群の一つである、請求項20に記載の使用。
【請求項26】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAの使用を、DNAにおける細胞の酸化的損傷を治療するための医薬組成物を製造する目的で行う、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAをテロメア短縮の自然過程における保護剤として用いる、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを早期老化の抑制剤として用いる、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
テロメア短縮がミトコンドリア呼吸鎖の疾患と関連した遺伝病と関係している、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
テロメア短縮がダウン症候群と関連している、請求項27に記載の使用。
【請求項31】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを食品産業で使用する、請求項1−30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
使用を乳製品で行う、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを、運動に関連した細胞の酸化的損傷を治療するための医薬組成物の製造に使用する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを運動能力の向上剤として用いる、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAをスポーツ活動中の血中グルコース濃度の調節剤として用いる、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
前記向上剤が嫌気性閾値における酸素の絶対的および相対的最大消費率を増加させる、請求項34に記載の使用。
【請求項37】
前記向上剤が嫌気性閾値に対応する供給量を増加させる、請求項34に記載の使用。
【請求項38】
前記向上剤が嫌気性閾値に到達するための時間を増加させる、請求項34に記載の使用。
【請求項39】
前記向上剤が同一活動レベルに対する心拍数を減少させる、請求項34に記載の使用。
【請求項40】
前記向上剤が血漿総酸化防止能(PTAC)を増加させる、請求項34に記載の使用。
【請求項41】
前記向上剤がDNAに対する酸化的損傷を減少させる、請求項34に記載の使用。
【請求項42】
前記向上剤が血漿脂質に対する酸化的損傷を減少させる、請求項34に記載の使用。
【請求項43】
前記調節剤が正常血糖を促進する、請求項35に記載の使用。
【請求項44】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを食品産業で用いる、請求項33に記載の使用。
【請求項45】
前記使用を乳製品で行う、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸またはDHA由来のEPAを、運動の前、中および後のその全ての特徴における飲料、エネルギー供給バー(energy-giving bar)、疲労回復性バー(ergogenical bars)、栄養補給物およびポリビタミン製剤、疲労回復促進剤(ergogenical aids)、皮膚吸収用ナノカプセルを有する織物、および任意の他の適当な投与手段を含んでなる群から選択される適当な手段を介して投与する、請求項33に記載の使用。
【請求項47】
栄養補給物およびポリビタミン製剤が、カプセル、錠剤、丸薬、凍結乾燥形態、または任意の適当な投与手段の形態である、請求項46に記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2009−523414(P2009−523414A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546448(P2008−546448)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070016
【国際公開番号】WO2007/071733
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508189016)ブルーディ、テクノロジー、ソシエダッド、リミターダ (1)
【氏名又は名称原語表記】BRUDY TECHNOLOGY,S.L.
【Fターム(参考)】