説明

細胞のDNAに核酸を導入するためのDNA系トランスポゾンシステム

【課題】核酸を細胞のDNAに導入するためのシステムを提供する。
【解決手段】少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、ここで当該逆方向反復配列がSBタンパク質に結合することができ、そして当該核酸フラグメントが細胞内のDNAに組込まれることができる、核酸フラグメント。このシステムはトランスポザーゼのSBファミリーの構成員(SB)又はトランスポザーゼをコードする核酸、及び隣接逆方向反復配列を有する核酸配列を含む核酸フラグメントの利用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子発現、遺伝子マッピング、突然変異誘発の方法、宿主染色体へのDNAの導入のための方法、並びにトランスポゾン及びトランスポザーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポゾン又は転位可能な要素は反復配列の並んだ核酸小断片を含む。活性なトランスポゾンはDNA配列への核酸の挿入を促進する酵素をコードする。
【0003】
脊椎動物においては、DNA中間体を介して移動する可動要素DNA−トランスポゾンの発見は比較的新しい(Radice,A.D.ら、1994.Mol.Gen.Genet.244,606-612)。それ以来、Tc1/マリナー(mariner)及び真核系トランスポゾンのhAT(hobo/Ac/Tam)超科の高度に突然変異した構成員が様々な魚類科、キセノプス(Xenopus)及びヒトゲノムから単離されている(Oosumiら、1995.Nature 378,873;Ivicsら1995.Mol.Gen.Genet.247,312-322;Kogaら、1996.Nature 383,30;Lamら、1996.J.Mol.Biol.257,359-366及びLam,W.L.,らProc.Natl.Acad.Sci.USA 93,10870-10875)。
【0004】
このような転位可能な要素はセット−アンド−ペーストメカニズムを介して転位する。当該要素によりコードされるトランスポザーゼはトランスポゾンのその本来の位置からの切除を触媒し、そしてゲノムのどこかでのその再組込みを促進する(Plasterk,1996 Curr.Top.Microbiol.Immunol.204,125-143)。トランスポゾンファミリーの自律(autonomous)構成員は転位のためにtrans作用性因子である活性トランスポザーゼを発現でき、それ故それ自身で転位可能である。非自律要素は突然変異したトランスポザーゼ遺伝子を有するが、cis作用性DNA配列を保持していることがある。このようなcis作用性DNA配列は逆方向末端反復配列とも呼ばれている。一部の逆方向反復配列は1又は複数の直列反復配列を含む。このような配列は通常当該要素の末端逆方向反復配列(IRs)の中に埋没しており、相補性トランスポアーゼの存在下での別の要素からの移動のために必要とされる。
【0005】
脊椎動物からは一つの自律要素も単離されていない;トランスポゾン様配列は全て、「垂直不活性化(vertical inactivation)」と呼ばれる過程の結果明らかな通り、無能である(Loheら、1995 Mol.Biol.Evol.12,62-72)。一の系統分類モデルに従うと(Hartlら、1997 Trends Genet.13,197-201)、真核ゲノム内の非自律、対、自律要素の比は、trans−相補性的性質の転位の結果高まる。この過程は、ゲノム内の活性なトランスポザーゼ産生コピーの究極的な消失が避けられない状態を招く。その結果、DNA−トランスポゾンはゲノムの一過性成分として認められ、それは消失を避けるため、それ自身を新たな宿主の中で樹立する手段を見つけねばならない。事実、種間での水平遺伝子伝達はトランスポゾンの進化の重要な過程の一つと考えられている(Loheら、1995前掲及びKidwell,1992.Curr.Opin.Genet.Dev.2,868-873)。
【0006】
水平遺伝子導入の自然な過程は実験室条件下で模倣できうる。植物においては、Ac/Ds及びSpm科の転位可能要素は異種の種にルーチン的に導入されている(Osborne and Baker,1995 Curr.Opin.Cell Biol.7,406-413)。しかしながら、動物においては、一の種から別の種への活性トランスポゾンシステムの移動の最大の障害は、自然宿主により産生される因子に関する要件を原因とする転位の種特異性にある。このため、非ショウジョウバエ昆虫ゼブラダニオ(zebra fish)及び哺乳動物細胞の遺伝子形質転換のためのドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)のP要素トランスポゾンの利用の試みは失敗に終わっている(Gibbsら、1994 Mol.Mar.Biol.Biotech.3,317-326;Handlerら、1993.Arch.Insect Biochem.Physiol.22,373-384;及びRioら、1988 J.Mol.Biol.200,411-415)。P要素とは対照的に、転位可能な要素のTc1/マリナー超科の構成員はその転位のために種特異性因子を要求しないことがある。このような要素は天然に幅広くあり、単細胞生物からヒトに及んでいる(Plasterk,1996、前掲)。更に、E.コリ(E.coli)において発現される組換Tc1及びマリナートランスポザーゼはin vitroでの転位を触媒するのに十分である(Vosら、1996 Genes.Dev.10,755-761及びLampeら、1996.EMBO J.15,5470-5479及びPCT国際公開No.WO 97/29202 Plasterkら)。更に、ミノス(Minos)を基礎とする遺伝子ベクター、ドロソフィラ・ヒデイ(Drosophila hydei)の内因性のTc1−様要素(TcE)がハエ・セラチチス・カピタタ(Ceratitis capitata)の生殖系形質転換のために有効に利用されている(Loukerisら、1995 Science 270,2002-2005)。
【0007】
分子系統分類分析は魚類TcEの大半が3つの主要タイプ、即ち、ゼブラダニオ、サケ及びキセノプスTXr−型要素に分類できることを示し、そのうちのサケサブファミリーがおそらく最も若く、それ故現在最も活発である(Ivicsら、1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,5008-5013)。更に、サケTcE及びその宿主の系統分類の調査は、この特定のサブファミリーの要素が比較的大きな進化的距離を超えさえもする水平移動を介してナイーブゲノムに侵入し、且つ永存を確立する能力についての重要な糸口を供する。
【0008】
真骨魚類由来のTcE(Goodier and Davidson,1994 J.Mol.Biol.241,26-34及びIzsvakら、1995.Mol.Gen.Genet.247,312-322)、例えばゼブラダニオのTdrl(Izsvakら、1995前掲)及びその他の9種類の別の魚種由来の近縁TcE(Ivicsら、1996.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,5008-5013)は脊椎動物の中で知られる全てのDNAトランスポゾンのうちで最も良く特性決定されている。魚類の要素及び一般のその他のTcEは逆方向反復配列と並んだトランスポザーゼ酵素をコードする単一の遺伝子を特徴とする。残念ながら、今までに単離された魚類要素は全てトランスポザーゼ遺伝子内の1又は複数の突然変異により不活性となっている。
【0009】
DNAを細胞に導入するための方法は公知である。これらには、限定することなく、DNA凝縮試薬(例えばリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール等)、脂質含有試薬、例えばリポソーム、多重層小胞体、等、及びウィルス媒介戦略が挙げられる。これらの方法は全てそれ自身の制約をもつ。例えば、DNA凝縮試薬及びウィルス媒介戦略に係るサイズ拘束がある。更に、細胞に導入できる核酸の量はウィルス戦略において制約される。全ての方法が細胞核酸への導入核酸の組込みを促進するわけではなく、そしてDNA凝縮方法及び脂質含有試薬が比較的用意しやすいが、ウィルスベクターへの核酸の組込みは大変である。更に、ウィルス媒介戦略は細胞タイプ又は組織タイプ特異性であり、そしてウィルス媒介戦略の利用はin vivoで用いたときに免疫学的な問題をもたらしうる。
【0010】
細胞にDNAを導入するための新しい方法、特に細胞の核酸の中への様々なサイズの核酸フラグメントの効率的な組込み、特に細胞のゲノムへのDNAの組込みを促進する方法のニーズが残っている。
【発明の開示】
【0011】
我々は脊椎動物におけるゲノム操作のためのDNA系トランスポゾンシステムを開発した、トランスポゾンのTc1/マリナー超科の構成員は真骨魚類並びにその他の様々な脊椎動物のゲノムの普遍な成分である。しかしながら、自然から単離された要素は全て転位的に不活性である。分子系統分類データーを利用して合成サケ型Tc1様トランスポザーゼ(SB)の科を転位を促進するその認識部位と共に特定した。推定トランスポザーゼ遺伝子の共通配列はまず8種類の魚由来のサケサブファミリー要素の不活性要素から誘導し、そしてこのような要素を不活性にする突然変異を排除することにより操作した。トランスポザーゼを構築し、その機能性ドメインを同定し、そして生化学的機能を個別に及び全長トランスポザーゼの観点から試験した。トランスポザーゼはサケ要素の逆方向反復配列内の2つの結合部位に結合し、そして基質特異性のようであり、そのことは近縁な魚類要素サブファミリー間での交差移動を阻止できうる。SBトランスポザーゼは魚類のみでなく、マウス及びヒト細胞における操作トランスポゾンの染色体組込みを有意に高める。トランスポザーゼにおける特異的なモチーフのための要件及び標的トランスポゾン内の特異的な配列は、魚類及び哺乳動物細胞等における活性と共に、SBトランスポザーゼを脊椎動物における生殖系形質転換及び挿入式突然変異誘発のための最初の活性DNAトランスポゾンシステムとして確立する。本発明の一の観点において、本発明は核酸フラグメントであって:少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、その逆方向反復配列がSBタンパク質に結合でき、そしてその核酸フラグメントが細胞中のDNAは組込まれることのできる核酸フラグメントに関連する。一の態様において、核酸フラグメントはプラスミドの一部であり、そして好ましくはオープンリーディングフレームの少なくとも一部及び好ましくは少なくとも一の遺伝子発現コントロール領域も含んで成る核酸配列である。一の態様において、この発現コントロール領域はプロモーター、エンハンサー又はサイレンサーから成る群より選ばれる。好ましくは、この核酸配列はオープンリーディングフレームの少なくとも一部に作用可能式に連結されたプロモーターを含んで成る。
【0012】
一の態様において、細胞は動物、例えば無脊椎動物又は脊椎動物から入手する。好適な無脊椎動物には甲殻類又は軟体動物、例えば限定することなく、エビ、ホタテ、ロブスター、ハマグリ又はカキが含まれる。好適な脊椎動物の態様には魚類、鳥類、並びに哺乳動物、例えばマウス、有蹄類、ヒツジ、ブタ及びヒトから成る群より選ばれるものが挙げられる。細胞のDNAは細胞ゲノム又は染色体外DNA、例えばエピソーム又はプラスミドであってよい。
【0013】
本発明のかかる観点の一の態様において、当該逆方向反復配列の少なくとも一つはSEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:5を含んで成り、それに好ましくはSBタンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。更に好ましくは、当該逆方向反復配列の少なくとも一つは少なくとも一の直列反復配列を含んで成り、ここで当該少なくとも一の直列反復配列はSEQ ID NO:6,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:9を含んで成る。好適な直列反復配列はSEQ ID NO:10である。更に好ましくは、当該核酸フラグメントはSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有する直列反復配列を含む。
【0014】
本発明の別の観点において、本発明は細胞のDNAにDNAを導入するための遺伝子導入システムであって:少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成る核酸フラグメント(ここで当該逆方向反復配列はSBタンパク質に結合することができ、そしてここで当該核酸フラグメントは細胞のDNAの中に組込まれることができる);及びトランスポザーゼ又はトランスポザーゼをコードする核酸(ここで、当該トランスポザーゼはSEQ ID NO:1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列をもつSBタンパク質である);を含んで成るシステムに関連する。一の態様において、当該SBタンパク質はSEQ ID NO:1を含んで成る。他方、このSBタンパク質はストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件下でSEQ ID NO:1にハイブリダイズできるDNAによりコードされる。一の態様において、当該トランスポザーゼを細胞にタンパク質として供与し、そして別の態様においては当該トランスポザーゼを細胞に核酸として供与する。一の態様において、この核酸はRNAであり、そして別の態様においては、この核酸はDNAである。更なる別の態様において、トランスポザーゼをコードする核酸を細胞のゲノムの中に組込む。この核酸フラグメント又はプラスミド又は組換ウィルスベクターの一部であってよい。好ましくは、この核酸配列はオープンリーディングフレームの少なくとも一部、そして好ましくは少なくとも一の遺伝子調節領域を含んで成る核酸配列をも含んで成る。一の態様において、この調節領域は転写調節領域であり、そしてこの調節領域はプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、座コントロール領域及び境界要素から成る群より選ばれる。別の態様において、当該核酸配列はオープンリーディングフレームの少なくとも一部に作用可能式に連結されたプロモーターを含んで成る。
【0015】
本発明のこの観点において利用する細胞は様々な起源、例えば細菌、真菌、植物及び動物から入手できる。一の好適な態様において、この細胞は動物、即ち、脊椎動物又は無脊椎動物から入手する。好適な無脊椎動物には甲殻類及び軟体動物が挙げられる。好適な脊椎動物には魚類、鳥類、並びに哺乳動物、例えばげっ歯類、有蹄類、ヒツジ、ブタ及びヒトが挙げられる。
【0016】
核酸フラグメントを受容する細胞のDNAは細胞ゲノム又は染色体外DNAの一部であってよい。好ましくは、当該遺伝子導入システムの逆方向反復配列はSEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:5を含んで成る。更に、好ましくは、当該SBタンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%の同一性を有し、そして好ましくは当該逆方向反復配列の少なくとも一つは少なくとも一の直列反復配列を含んで成り、そしてここで当該少なくとも一の直列反復配列はSEQ ID NO:6,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:9を含んで成る。一の態様において、この直列反復配列はSEQ ID NO:10の共通配列を有する。特に好適な態様において、当該核酸配列は組換配列のライブラリーの一部であり、そしてこの核酸配列は粒子ボンバードメント、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸フラグメントと脂質含有小胞体又はDNA凝縮試薬との組合せ、並びにウィルスベクターに核酸フラグメントを組込み、そしてそのウィルスベクターを細胞と接触させることから成る群より選ばれる方法を利用して細胞に導入する。
【0017】
本発明の別の観点において、本発明はSBタンパク質をコードする核酸に関連し、ここで当該核酸はSEQ ID NO:1を含んで成るタンパク質又はSEQ ID NO:1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るタンパク質をコードする。当該SBタンパク質をコードする核酸は核酸ベクター、例えば遺伝子発現ベクターにウィルスベクター又はプラスミドとして組込むことができる。この核酸は環状でも線形でもよい。本発明は更にSBタンパク質を発現する細胞にも関連する。
【0018】
一の態様において、当該SBタンパク質を含む細胞は脊椎動物又は無脊椎動物のいずれかの動物から入手する。好適な脊椎動物には魚類、鳥類及び哺乳動物が含まれる。これらの細胞は様々な組織、例えば多能性細胞及び全能性細胞、例えば卵母細胞、1又は複数の胚細胞、又は卵から入手できる。一の態様において、この細胞は組織又は器官の一部である。一の態様において、当該SBタンパク質をコードする核酸は細胞のゲノムの中に組込まれる。
【0019】
本発明は更にSEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含んで成るSBタンパク質に関する。
【0020】
更に、本発明は遺伝子導入動物を作製するための方法であって、核酸フラグメント及びトランスポザーゼを多能性又は全能性細胞に導入する(ここで、当該核酸フラグメントは少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、ここで当該逆方向反復配列はSBタンパク質に結合でき、そして当該核酸フラグメントは細胞中のDNAに組込まれることができ、そして当該トランスポザーゼはSEQ ID NO:1と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する);そして当該細胞を動物の中で増殖させる工程を含んで成る方法に関する。好適な多能性又は全能性細胞には卵母細胞、胚細胞、卵及び幹細胞が含まれる。一の態様において、この導入工程はマイクロインジェクション、核酸フラグメントと陽イオン脂質小胞体又はDNA凝縮試薬との組合せ;並びに核酸フラグメントをウィルスベクターに導入し、そしてこのウィルスベクターを細胞と接触させること、並びに粒子ボンバードメント及びエレクトロポレーションから成る群より選ばれる方法を含んで成る。別の好適な態様において、当該ウィルスベクターはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター、ヘルペスウィルス又はアデノ関連ウィルスベクターから成る群より選ばれる。本方法において利用する好適なベクターにはマウス、魚類、有蹄類、鳥類又はヒツジが挙げられる。
【0021】
本発明の更なる別の観点において、本発明は細胞の中のDNAに核酸を導入するための方法であって:少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成る核酸フラグメントを細胞に導入する(ここで、当該逆方向反復配列はSBタンパク質に結合でき、そして当該核酸フラグメントはSBタンパク質の存在下で細胞の中のDNAに組込まれることができる)工程を含んで成る方法に関する。好適な態様において、当該方法はSBタンパク質を細胞の中に導入することを更に含んで成る。一の態様において、当該SBタンパク質はSEQ ID NO:1と少なくとも80%の同一性を含んで成るアミノ酸配列を有する。当該SBタンパク質はタンパク質として、又は核酸(RNAもしくはDNAを含む)として細胞に導入されうる。当該核酸フラグメントを受容する細胞は既にSBタンパク質をコードする核酸を含み、そして既にタンパク質を発現するものであってよい。一の態様において、当該SBタンパク質は細胞ゲノムの中に組込まれる。当該SBタンパク質は細胞の中で安定的に発現されるか、又は一過性的に発現され、そしてこのSBタンパク質をコードする核酸は誘導プロモーターのコントロール下で、又は構成プロモーターのコントロール下であってよい。本方法の一の観点において、この導入工程はマイクロインジェクション;核酸フラグメントと陽イオン脂質小胞体又はDNA凝縮試薬との組合せ;並びに核酸フラグメントをウィルスベクターに導入し、そしてそのウィルスベクターを細胞と接触させることから成る群より選ばれる細胞への核酸の導入方法を含んで成る。好適なウィルスベクターはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター又はアデノ関連ウィルスベクターから成る群より選ばれる。本方法の別の観点において、この方法はSBタンパク質又はSBタンパク質をコードするRNAを細胞に導入する工程を含む。本方法に利用する細胞は多能性又は全能性細胞であってよく、そして本発明はこの方法により作られる遺伝子導入動物にも関連する。遺伝子導入動物を作る場合、当該核酸は好ましくはタンパク質、そして好ましくは遺伝子導入動物から回収されるタンパク質、又はマーカータンパク質をコードする。本発明は更に当該核酸配列によりコードされるタンパク質を発現する遺伝子導入動物の細胞にも関連する。
【0022】
本発明は更にSBタンパク質にも関連する。一の態様において、当該タンパク質は下記の特徴を有する:細胞のDNAへの核酸の組込みを触媒する能力;SEQ ID NO:4又は5の逆方向反復配列に結合する能力;及びSEQ ID NO:1に対する80%のアミノ酸配列同一性。別の態様において、当該タンパク質は下記の特徴を有する:トランスポザーゼ活性;約10%のSDS−ポリアクリルアミドゲルで約35kD〜約40kDの分子量幅;並びにNLS配列、DNA結合ドメイン及び触媒ドメイン。ここで当該タンパク質は非相同組換により得られるレベルと比べ、細胞の核酸に核酸フラグメントを導入する率において少なくとも約5倍向上している。核酸フラグメントの組込み率を試験するための好適な方法は実施例の中で紹介する。
【0023】
更なる別の観点において、本発明は細胞の中の核酸配列を移動するための方法であって:本発明のタンパク質を本発明の核酸フラグメントを含むDNAを収容するDNAの中に導入する工程を含んで成る方法に関連し、ここで当該タンパク質は当該核酸フラグメントを細胞のDNA内の第一位置からこの細胞のDNA内の第二位置にまで移動させる。一の態様において、当該細胞のDNAはゲノムDNAである。別の態様において、当該細胞のDNA内の第一位置は染色体外DNAであり、そして更なる別の態様において、当該細胞のDNA内の第二位置が染色体外DNAである。好適な態様において、このタンパク質はRNAとして細胞に導入する。
【0024】
本発明は更に細胞のゲノムの中の遺伝子を同定するための方法に関連し、この方法は:核酸フラグメント及びSBタンパク質を細胞に導入する(ここで当該核酸フラグメントは少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、そして当該逆方向反復配列はSBタンパク質に結合でき、そして当該核酸フラグメントはSBタンパク質の存在下で細胞の中のDNAを組込まれることができる);この細胞のDNAを核酸配列を切断できる制限エンドヌクレアーゼで消化する;当該逆方向反復配列を同定する;当該逆方向反復配列に近い核酸を配列決定してオープンリーディングフレームからDNA配列を得る;そしてこのDNA配列をコンピューターデーターベース中の配列情報と比較する;工程を含んで成る。一の態様において、当該制限エンドヌクレアーゼは6塩基認識配列を認識する。別の態様において、この消化工程は更に消化フラグメントのクローニング及び消化フラグメントのPCR増幅を含んで成る。
【0025】
本発明は更に安定な遺伝子導入脊椎動物系であって、プロモーターに作用可能式に連結された遺伝子を含んで成り、ここでこの遺伝子及びプロモーターには逆方向反復配列が並んでおり、この逆方向反復配列がSBタンパク質に結合できるものに関連する。一の態様において、当該SBタンパク質はSEQ ID NO:1を含んで成るか、又はSEQ ID NO:1と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含んで成る。一の態様において、この脊椎動物は魚類、例えばゼブラダニオであり、そして別の態様において、この脊椎動物はマウスである。
【0026】
更に、本発明は1又は複数の下記の配列に結合できるトランスポザーゼ活性を有するタンパク質にも関連する:SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:5,SEQ ID NO:6,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9及びSEQ ID NO:10。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は細胞のDNAの中に核酸配列を導入するために用いる新規のトランスポザーゼ及びトランスポゾンに関する。トランスポザーゼは逆方向反復配列と称されるDNAの領域においてDNAに結合できる酵素である。トランスポゾンは典型的には、介在核酸配列の隣接する少なくとも一つの、好ましくは二つの逆方向反復配列を含む。トランスポザーゼは逆方向反復配列内の認識部位に結合し、そしてDNAへのトランスポゾンの組込みを触媒する。SBトランスポゾンの逆方向反復配列は2つの直列反復配列を含んでよく、そして少なくとも一の直列反復配列を含む。
【0028】
トランスポゾンはトランスポザーゼの存在下でDNA上の一の位置から第二の位置へと移動できる点で可動性である。任意の可動カット−アンド−ペースト型トランスポゾンには2つの基本的な成分であり、それは活性トランスポザーゼの起源と、トランスポザーゼにより認識され、且つ移動するDNA配列である。DNA配列の移動は認識されたDNA配列の間の介在核酸も移動することを可能にする。
【0029】
Tc1/マリナー超科の構成員を含むDNAトランスポゾンは脊椎動物ゲノムの祖始居住物である(Radiceら、1994;Smit and Riggs,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93,1443-1448)。しかしながら、このクラスのトランスポゾンの自律コピーも、TcE挿入により生ずる自発突然変異のいずれのケースも脊椎動物において証明されていない。これは脊椎動物における突然変異する遺伝子の系統分類歴が発表されているレトロトランスポゾンとは対照的である(Izsvakら、1997)。脊椎動物から活性TcEトランスポゾンを単離できなかったことは、生殖系形質転換及び挿入突然変異のためのベクターとしてのこれらの要素の開発の野望を大いにくじけさせた。しかしながら、真骨魚類目間での水平伝達についてのサケTcEの見かけ上の能力(Ivicsら、1996)は魚類トランスポゾンのこの特定のサブファミリーが、より大きな進化的距離でさえも転移しうることを示唆する。
【0030】
最節約分析を利用する祖始原型遺伝子の再構築が報告されている(Jermannら、1995,Nature 374,57-59;Unnikrishnanら、1996,Stewart,1995 Nature 374,12-13)。しかしながら、かかる戦略は根底の配列まで系統分類学的に逆及追跡するための進化を通じての遺伝子の垂直伝達を必要とする。最節約分析はサケTcE間での系統分類関係を解決できないため、我々は同一のトランスポゾンサブファミリーに属する不活性要素から共通配列を再構築する試みをとった。マウスにおけるL1レトロトランスポゾンの機能性プロモーターの復活が過去に報告されている(Adeyら、1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,1569-1573)。
【0031】
活性遺伝子を得るための戦略に危険は伴わない。単一生物からのトランスポゾン偽似遺伝子の共通配列は、突然変異要素の増幅の結果としてゲノムの中でその後固定された垂直不活性化の際に生じた突然変異を単純に反映しうる。例えば、ゼブラダニオから単離されたほとんどのTdr1要素がトランスポザーゼ遺伝子の中に保存された350bpの欠失を含む(Izsvakら、1995)。従って、その共通部分が不活性要素をコードすると予測される。対照的に、別の種の中の同じ突然変異の個々の固定が似ていないことを理由に、我々はいくつかの生物に由来する同じサブファミリーのトランスポゾンの不活性化要素から共通部分を誘導し、活性トランスポゾンについての配列を提供する。
【0032】
サケ型TcEのトランスポゾンコード領域及び逆方向反復配列(IR)は共に点突然変異、欠失及び挿入等のいくつかの突然変異を有し、そして約5%の平均対合偏差を示す(Ivicsら、1996、前掲)。実施例1は蓄積された系統分類データーを利用して魚類要素のサケサブファミリーのトランスポゾン遺伝子を再構築するのに用いた方法を述べている。この分析はEMBLデーターベースの中でFTP.EBI.AC.AK由来のDS 300 90として、directory/pub/databases/embl/alignとして供され、そしてこの分析の結果が不活性SBタンパク質の共通配列である。調べた要素全てが欠失及びその他の突然変異に基づき不活性であった。SBトランスポゾンファミリーのサケトランスポザーゼ遺伝子を図1に示し且つ実施例1で説明する10種の構築体の構築を通じるPCR突然変異誘発を利用して構築した。
【0033】
この配列を次に、ここに記載の通りに更に改変させ、SBタンパク質ファミリーの活性構成員を作ることができる。
【0034】
当該SBタンパク質は核酸フラグメント上の逆方向反復配列を認識し、そして各逆方向反復配列は少なくとも一の直列反復配列を含む。本発明の遺伝子導入システムは従って、トランスポザーゼと、クローニングされた非自律(即ち、自己挿入性でない)サケ型要素又はトランスポゾン(本明細書では少なくとも2つ逆方向反復配列を有する核酸フラグメントと呼ぶ)であってトランスポゾン基質DNAの逆方向反復配列を担持するものの2つの成分を含んで成る。これら2つの成分を一緒にすると活性トランスポゾン活性体となる。使用の際、トランスポザーゼは逆方向反復配列内の直列反復配列と結合し、そして魚類及び哺乳動物細胞の染色体及び染色体外DNAを含む細胞のDNAへの介在核酸配列の組込みを促進する。このトランスポゾンシステムは自然には存在しないようである。
【0035】
実施例1の方法を利用して再構築したトランスポザーゼはDNA、好ましくは細胞内のDNAへの介在核酸配列の組込みを及ぼすようトランスポゾンの逆方向反復領域に結合できるタンパク質のファミリーの一の構成員である。本発明のタンパク質のファミリーの一例をSEQ ID NO:1として供する(図2参照)。このタンパク質のファミリーをここではSBタンパク質と呼ぶ。本発明のタンパク質を図1に模式する。このタンパク質は、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて、ロイシンジッパーを有する対合様ドメイン、1又は複数の核移行ドメイン(NLS)、並びに図2における一例において詳細の通りDD(34)E枠及びグリシンリッチ枠を含む触媒ドメインを含む。このタンパク質のSBファミリーはSEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有するタンパク質を含み、そして更にはSEQ ID NO:1と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列をもつタンパク質を含む。即ち、SBファミリーのタンパク質をアライニングさせると、このアミノ酸配列の少なくとも80%は同一である。SBファミリーのタンパク質はトランスポザーゼ、即ちそれらは細胞のDNAへの核酸の組込みを触媒できる。更に、本発明のタンパク質はSEQ ID NO:4〜5の逆方向反復配列及びトランスポゾン由来の直列反復配列(SEQ ID NO:6〜9)並びに共通直列反復配列(SEQ ID NO:10)に結合できる。このSBタンパク質は好ましくは約10%のSDS−ポリアクリルアミドゲル上で約30kD〜約40kDの分子量幅を有する。
【0036】
更なる修飾のために適当な活性SBタンパク質を構築するため、いくつかの染色体フラグメントを配列決定し、そして11種の魚種由来のゼブラダニオトランスポゾン様配列Tdr1に対するその相同性により同定した(Ivicsら、1996)。次に、これら及びその他の相同性配列をコンパイルし、そしてアライニングした。これらの配列をGenBank又はEMBLデーターベースのいずれかにおいて同定した。その他は共通配列に到達する最節約分析の利用を提唱しているが、本ケースでは最節約分析はコンパイルしたサケ型TcE間での系統分類関係を解決できなかった。共通トランスポゾンをコドン中の選定ヌクレオチドを変えることにより操作し、その位置にあるようであるアミノ酸を復活させた。この戦略は所定の位置にあるほとんどの一般アミノ酸がおそらくはその位置にもとからある(活性)アミノ酸であることを仮定している。この共通配列を、5mC残基の脱アミノ化が起こるときにC→T突然変異(これはCのTへの変換、その結果誤対合G残基のAへの「修復」を供しうる)が固定されていると思われる部位について調べた。このような状況において、「主要基準」(majority rule)共通配列は常に使用したわけではない。次に復活トランスポザーゼの様々な予測の活性を操作の精度を確保するために試験した。
【0037】
本明細書に記載のアミノ酸残基は1文字アミノ酸記号又は3文字略語のいづれかを利用する。本明細書において用いる略語は標準のポリペプチド命名法、J.Biol.Chem.,(1969),243,3552-3559を守っている。全てのアミノ酸残基配列はアミノ末端からカルボキシ末端に至る慣用の方向で左及び右方向により式に示している。
【0038】
本発明のトランスポザーゼをコードする特定のアミノ酸配列を述べてきたが、SB活性を改変することなくSBタンパク質のアミノ酸配列に施すことのできる様々な保存変更がある。このような変更は保存型突然変異と呼び、即ち、例えば特に触媒活性又はDNA結合活性とは関係のないタンパク質領域内の特定のサイズ又は特性を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸の別のアミノ酸による置換である。SBタンパク質のその他のアミノ酸配列には、得られるタンパク質の活性又は結合特性を有意に改変しない保存変更を含むアミノ酸配列が含まれる。アミノ酸配列についての置換はそのアミノ酸が属するクラスのその他の構成員から選ばれうる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンが含まれる。極性中性アミノ酸にはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。負に帯電した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。かかる変更はポリアクリルアミドゲル電気泳動又は等電点により決定される見かけ上の分子量に実質的な影響を与えないと予測される。特に好適な保存置換には、限定することなく、正電荷を維持するためのLysによるArg、及びその逆;負電荷を維持するためのGluによるAsp、及びその逆;遊離−OHを維持するためのSerによるThr;遊離NH2を維持するためのGlnによるAsnの置換が挙げられる。
【0039】
SBタンパク質は細胞内に触媒活性を有するが、このタンパク質はタンパク質として、又は核酸として細胞に導入できる。SBタンパク質はmRNA等のリボ核酸として、染色体外DNAとして、細胞に存在するDNAとして、例えば限定することなく、エピソームDNAとして、プラスミドDNAとして、又はウィルス核酸として細胞に導入されうる。更に、SBタンパク質をコードするDNAは構成又は誘導性発現のために細胞のゲノムの中に安定的に組込まれうる。SBタンパク質は細胞の中に核酸として導入される場合、このSBコード配列は好ましくはプロモーターに作用可能式に連結されている。利用できる様々なプロモーターがあり、それには限定することなく、構成プロモーター、組織特異性プロモーター、誘導性プロモーター等が挙げられる。
【0040】
プロモーターは細胞内のRNAポリメラーゼに結合して下流(3’方向)コード配列の転写を開始する調節シグナルである。DNA配列は発現コントロール配列がDNA配列の転写及び翻訳をコントロール及び調節するとき、この発現コントロール配列、例えばプロモーターに作用可能式に連結されている。「作用可能式に連結」とは、発現すべきDNA配列の前に適当な開始シグナル(例えばATG)があり、そして所望のタンパク質生成物の生産を供するよう発現コントロール配列のコントロール下でDNA配列の発現を可能にする適正なリーディングフレームを維持していることを意味する。
【0041】
SBタンパク質をコードする一の核酸配列はSEQ ID NO:3として供する。SBコード核酸配列を必然的に改変するであろう上記の保存変更に加えて、SBタンパク質と同じアミノ酸配列を有するSBタンパク質をコードするが、特殊なアミノ酸を特定するのに用いる3文字コドンの縮重性の利点を有するその他のDNA又はRNA配列がある。例えば、下記のRNAコドン(それ故、対応のDNAコドンではTがUに置き代わる)が各特定のアミノ酸をコードするのに交換可能式に利用できることが当業界において周知である:
【0042】
【表1】

【0043】
更に、特定のDNA配列を修飾して特定の細胞タイプは好適なコドンを採用することができる。例えば、E.コリのための好適なコドン用法は、動物及びヒトにとっての好適なコドン用法と同じように公知である。このような変更は当業者に周知であり、それ故本発明の一部と考える。
【0044】
本発明において更に考慮されるのは本発明のSBタンパク質に特異的な抗体である。本発明の目的にとって「抗体」とは任意のイムノグロブリン、例えば抗体及びSBタンパク質に特異的に結合するそのフラグメントである。抗体はポリクローナル、モノクローナル及びキメラ抗体であってよい。SBタンパク質に対するポリクローナル又はモノクローナル抗体の製造のために使用できる様々な方法が当業界において公知である。(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane、編、Cold Spring Harbor Iaboratory Press:Cold Spring Harbor,New York,1988を参照のこと)。
【0045】
SBタンパク質をコードする核酸は細胞に核酸ベクターとして、例えばプラスミドとして、又は遺伝子発現ベクター、例えばウィルスベクターとして導入できる。DNA及びタンパク質を操作するための方法は当業界において公知であり、そして例えば次の論文の中に詳細に説明されているSambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory,Manual.,Cold Spring Harbor Laboratory Press or Ausubel,R.M.,編(1994).Current Protocols in Molecular Biology。本明細書でいうベクターはSBタンパク質をコードする核酸又は本発明の核酸フラグメントを組込むことのできるプラスミド、ウィルスベクター又はコスミドをいう。「コード配列」又は「オープンリーディングフレーム」とは、適当な調節配列のコントロール下に置かれたときにポリペプチドへの転写及び/又は翻訳されうる核酸の領域をいう。
【0046】
本発明の別の観点は少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含む時折りトランスポゾン又はトランスポゾン要素と称する核酸フラグメントに関する。各逆方向反復配列は好ましくは少なくとも一の直列反復配列を含む(それ故、IR/DRと命名する)。トランスポゾン要素は線形フラグメントとして利用できる線形核酸フラグメント(便宜上、5’末端から3’末端に至る)、又は例えばプラスミドの中で環状のものであってよい。好適な態様において、各逆方向反復配列の中には2つの直列反復配列がある。SBに結合する好適な直列配列には以下のものが挙げられる:
5’外部反復配列:(SEQ ID NO:6)
5'-GTTCAAGTCGGAAGTTTACATACACTTAG-3'
5’内部反復配列:(SEQ ID NO:7)
5'-CAGTGGGTCAGAAGTTTACATACACTAAGG-3'
3’内部反復配列:(SEQ ID NO:8)
5'-CAGTGGGTCAGAAGTTAACATACACTCAATT-3'
3’外部反復配列:(SEQ ID NO:9)
5'-AGTTGAATCGGAAGTTTACATACACCTTAG-3'
好適な共通直列配列は次の通りである(SEQ ID NO:10)
5'-CA(GT)TG(AG)GTC(AG)GAAGTTTACATACACTTAAG-3'
一の態様において、この直列反復配列は少なくとも下記の配列を含む:
ACATACAC(SEQ ID NO:11)
本発明の好適な逆方向反復配列はSEQ ID NO:4である。
【0047】
【表2】

【0048】
そして本発明の第二の逆方向反復配列はSEQ ID NO:5である。
【0049】
【表3】

【0050】
好ましくは、この直列反復配列は細胞への核酸フラグメントの挿入及び組込みを可能にするようSBタンパク質に結合する逆方向反復配列の一部である。SBタンパク質についてのDNA組込み部位はTA塩基対にある(図7B参照)。
【0051】
逆方向反復配列は細胞内のDNAの中に挿入される核酸配列の隣りにある。この核酸配列は遺伝子のオープンリーディングフレームの全部又は一部(即ち、タンパク質コード遺伝子の一部)、1又は複数の発現コントロール配列(即ち、核酸中の調節領域)を単独で又はオープンリーディングフレームの全部又は一部と共に含むことができる。好適な発現コントロール配列には、限定することなく、プロモーター、エンハンサー、境界コントロール要素、座コントロール領域又はサイレンサーが挙げられる。好適な態様において、当該核酸配列はオープンリーディングフレームの少なくとも一部に作用可能式に連結されたプロモーターを含んで成る。
【0052】
実施例において例示の通り、本発明の核酸フラグメントの組合せであって少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、その逆方向反復配列がSBタンパク質に結合でき、そしてその核酸フラグメントが細胞内のDNAにSBタンパク質(又は細胞にSBタンパク質を導入するようにSBタンパク質をコードする核酸)との組合せにおいて組込まれることのできる核酸フラグメントの組合せは細胞への当該核酸配列の組込みをもたらす。他方、本発明の核酸フラグメントは様々な未特定の、しかしながら再現性のあるメカニズムを介して非相同組換を通じて細胞内のDNAに組込まれることが可能である。いずれにせよ、当該核酸フラグメントは遺伝子導入のために利用できる。
【0053】
本実施例に説明の通り、SBタンパク質ファミリーは様々な細胞タイプ及び様々な種における組込みを媒介する。SBタンパク質は逆方向反復配列による本発明の核酸フラグメントの多能性細胞(即ち、その子孫がいくつかの限定細胞タイプ、例えば造血幹細胞又はその他の幹細胞へと分化できる細胞)及び全能性細胞(即ち、その子孫が生体の中で任意の細胞タイプ、例えば胎芽幹細胞となることのできる細胞)の双方への組込みを促進する。本発明の遺伝子導入システムは様々な細胞、例えば動物細胞、細菌、真菌(例えば酵母)又は植物細胞において利用できる。動物細胞は脊椎又は無脊椎動物でありうる。細胞、例えば卵母細胞、卵、及び胚の1又は複数の細胞も本発明において考慮される。様々な器官又は組織由来の成熟細胞は本発明の核酸フラグメントを独立に、単独で、又はSBタンパク質もしくはSBタンパク質をコードする核酸と共に受容できる。核酸フラグメント又はSBタンパク質を受容し、そしてその細胞のDNAの中にこの核酸フラグメントを受容できる細胞には、限定することなく、リンパ球、造血細胞、神経細胞、筋細胞、様々な血液細胞、及び様々な器官の細胞が含まれる。実施例4は特定の細胞が本発明を利用して遺伝子を移入できるかを決定するための方法を供する。これらの細胞は脊椎又は無脊椎動物から得ることができる。好適な無脊椎動物には甲殻類又は軟体動物、例えばエビ、ホタテ、ロブスター、ハマグリ又はカキが含まれる。
【0054】
脊椎動物細胞はSBタンパク質の存在下で本発明の核酸フラグメントを組込むことができる。魚類、鳥類及びその他の動物の細胞が、哺乳動物、例えば限定することなく、げっ歯類、例えばラット又はマウス、有蹄類、例えばウシ又はヤギ、ヒツジ、ブタ由来の細胞、又はヒト由来の細胞と同様に利用できる。
【0055】
本発明の核酸フラグメントの受容体として働く細胞のDNAにはSBタンパク質の存在下で本発明の核酸フラグメントと接触する任意のDNAが含まれる。例えば、このDNAは細胞ゲノムの一部であってよく、又は染色体外DNA、例えばエピソーム、プラスミド、環状又は線形DNAフラグメントであってよい。組込みのための標的は二本鎖DNAである。
【0056】
本発明の核酸フラグメントの組合せであって少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含み、その逆方向反復配列がSBタンパク質に結合でき、そしてその核酸フラグメントが細胞DNAの中にトランスポザーゼ又はトランスポザーゼをコードする核酸との組合せにおいて組込まれることができ、そのトランスポザーゼがSBタンパク質、例えばSEQ ID NO:1と80%の同一性であるアミノ酸配列を含むSBタンパク質である核酸フラグメントの組合せは、細胞のDNAの中にDNAを導入するための遺伝子導入システムとして有用である。好適な態様において、このSBタンパク質はSEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含んで成り、そして別の好適な態様において、このトランスポザーゼをコードするDNAは0.5×のSSC中の30%(v/v)のホルムアミド;0.1%(w/v)のSDS中で42℃で7時間のハイブリダイゼーション条件下でSEQ ID NO:3のDNAにハイブリダイズすることができる。
【0057】
遺伝子治療のための遺伝子導入ベクターはウィルスベクター又は非ウィルスベクターとして幅広く分類できる。SBタンパク質と組合せたトランスポゾンとしての本発明の核酸フラグメントの利用は非ウィルスDNA媒介遺伝子導入の改良である。今まで、ウィルスベクターは細胞の中に遺伝子を導入及び発現するのに効率的であるとされていた。新しい遺伝子治療の開発のためになぜ非ウィルス遺伝子導入がウィルス媒介遺伝子導入より優れているかにはいくつかの理由がある。例えば、遺伝子治療のための薬剤としてのウィルスの適用はサイズ、構造及び発現の調節の点で、そのウィルスゲノムを封じ込めるための遺伝子デザインを制約する。非ウィルスベクターはたいていは合成出発材料から作製され、それ故ウィルスベクターよりも製造し易い。非ウィルス試薬はウィルス試薬ほど免疫原性でなく、反復投与が可能である。非ウィルスベクターはウィルスベクターよりも安定であり、それ故ウィルスベクターよりも薬理製剤及び服用に合う。
【0058】
現在の非ウィルス遺伝子導入システムは細胞のDNA、例えば宿主染色体への核酸の組込みを促進するようには装備されていない。その結果、非ウィルスシステムを利用する安定な遺伝子導入頻度は非常に低い;組織培養細胞では0.1%が最高であり、そして一次細胞及び組織でははるかに低い。本システムは組込みを助長し、そして安定な遺伝子導入の頻度を著しく高める。
【0059】
本発明の遺伝子導入システムにおいて、SBタンパク質は細胞の中にタンパク質として、又はこのタンパク質をコードする核酸として導入できる。一の態様において、このタンパク質をコードする核酸はRNAであり、そして別の態様においては、この核酸はDNAである。更に、SBタンパク質をコードする核酸はウィルスベクター、陽イオン脂質、又はその他の標準のトランスフェクションメカニズム、例えば真核細胞のために用いられているエレクトロポレーション又は粒子ボンバードメントを通じて細胞に組込むことができる。SBをコードする核酸の導入に続いて、本発明の核酸フラグメントは同細胞の中に導入されうる。
【0060】
同様に、当該核酸フラグメントは細胞の中に線形フラグメントとして、又は環状フラグメントとして、好ましくはプラスミド又は組換ウィルスベクターとして導入されうる。好ましくは、この核酸配列はアミノ酸含有生成物を生成するオープンリーディングフレームの少なくとも一部を含んで成る。好適な態様において、この核酸配列は少なくとも一種のタンパク質をコードし、そしてオープンリーディングフレーム又は核酸配列のコード領域の発現を指令するように選ばれた少なくとも一のプロモーターを含む。核酸配列によりコードされるタンパク質は当業界において新規の又は公知の様々な組換タンパク質のいずれでもよい。一の態様において、当該核酸配列によりコードされるタンパク質はマーカータンパク質、例えばグリーンフルオレセントタンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、成長ホルモン、例えば遺伝子導入動物の成長を促進するもの、β−ガラクトシダーゼ(lacZ)、ルシフェラーゼ(LUC)、及びインスリン様成長因子(IGF)である。
【0061】
遺伝子導入動物の一の態様において、タンパク質は細胞からの単離のための生成物である。バイオリアクターとしての遺伝子導入動物は公知である。タンパク質は乳、尿、血液又は卵の中で大量に生産される。乳、尿、血液又は卵の中での発現を促進するプロモーターが知られ、そしてこれらには、限定することなく、カゼインプロモーター、マウス尿性タンパク質プロモーター、β−グロビンプロモーター及びオバルブミンプロモーターのそれぞれが挙げられる。組換成長ホルモン、組換インスリン及び様々なその他の組換タンパク質が細胞内でタンパク質を製造するためのその他の方法を利用して製造されている。これら又はその他のタンパク質をコードする核酸を本発明の核酸フラグメントの中に組込み、そして細胞に導入できる。細胞のDNAの核酸フラグメントの効率的な組込みはSBタンパク質が存在するときに起きる。細胞が遺伝子導入動物の組織又は器官の一部であるとき、大量の組換タンパク質が得られうる。研究又はタンパク質製造のために遺伝子導入動物を作り出すための様々な方法は、例えばHackettら(1993).The molecular biology of transgenic fish.In Biochemistry and Molecular Biology of Fishes(Hochachka & Mommsen,eds)Vo1.2,pp.207-240に記載されている。遺伝子導入動物を作るためのその他の方法にはM.Markkulaら、Rev.Reprod.,1,97-106(1996);R.T.WallらJ.Dairy Sci.,80,2213-2224(1997);J.C.Dalton、ら、Adv.Exp.Med.Biol.,411,419-428(1997);及びH.Lubonら、Transfus.Med.Rev.,10,131-143(1996)の教示が含まれる。遺伝子導入ゼブラダニオは実施例6に記載の通りに作った。このシステムはマウス胎芽幹細胞(ES)へのマーカータンパク質を伴う核酸の導入を通じても試験し、そしてこれらの細胞は遺伝子導入マウスを作るために利用できることが公知である(A.Bradleyら、Nature,309,255-256(1984))。
【0062】
一般に、商業的に重要な動物の改善されたストックを達成するために2通りの方法がある。第一は伝統的な繁殖であり、それは陸上動物のために有効であったが、顕著な変化を得るには何10年もかかる。Hackettら(1997)の論文によれば、コントロール繁殖により、コホ・サケ(coho salmon)(オンコリンカス・キスッチュ:Oncorhynchus kisutch)の成長速度は4世代で60%増大し、そして2品種のチャネル・キャットフィシュ(channel catfish)(イクタルルス・パンクタトゥス:Ictalurus punctatus)の体重は3世代で21〜29%増大した。第2の方法は遺伝子操作であり、遺伝子を動物又は植物の染色体に導入し、成長の向上又は病気に対する強まった耐性の如き新しい性質又は特徴をこれらの生物に与える選択的な工程である。遺伝子操作の結果は時折り繁殖の結果に勝っている。一世代で、追加のニジマス成長ホルモンI遺伝子により一般コイ(commoncarp)(シプリヌス・カルピオ:Cyprinus carpio)の体重は58%増加し、追加のサケ成長ホルモン遺伝子によりサケの体重は1000%増加し、そしてマスではそれほどでもなかった。例えば、魚類における遺伝子操作の利点は、適当な遺伝子が特定できたら生物を非常に短期間で直接改変できることにある(Hackett,1997参照)。魚類における遺伝子操作の欠点は、数多くの遺伝子の中で成長及び開発に関与するものがわずかしか同定されておらず、従ってそれらのタンパク質生成物の相互作用があまり理解されていないことにある。多くの経済的に重要な動物についての遺伝子操作のための手順はない。本発明は挿入式突然変異誘発(遺伝子タギング)を実施するための効率的なシステム及び遺伝子導入動物を作るための効率的な手順を提供する。本発明以前には、遺伝子導入DNAは染色体の中に効率的に組込まれていなかった。百万個の外来DNA分子のうち約1個しか細胞ゲノムの中に組込まれず、一般に発育までに複数の切段サイクルがかかる。従って、ほとんどの遺伝子導入動物はモザイクである(Hackett,1993)。その結果、遺伝子導入DNAの導入された胚から発生した動物は組込まれた外来DNAの存在について配偶子をアッセイすることができるまで培養しなくてはならない。多くの遺伝子導入動物は位置効果に基づき導入遺伝子を発現できない。一細胞段階で動物の染色体への外性DNAの早期組込みを誘導する簡単で信頼できる手順が必要である。本システムはこのニーズを満足させることを助ける。
【0063】
本発明のトランスポゾンシステムはバイオテクノロジーの様々な分野に応用できる。動物におけるベクターのための転位可能要素の開発は以下を可能にする:1)本願において提供する方法を利用しての動物染色体への遺伝子材料の効率的な挿入。2)挿入突然変異因子としてのトランスポゾンの利用を通じての成長及び発育に関わる遺伝子の同定、単離及び特性決定(例えば、Kaiserら、1995「Eukeryotic transposable,elements as tools to study gene structure and function」Mobile Genetic Elements,IRL Press,pp.69-100)。3)成長及び発育を調節する転写調節配列の同定、単離及び特性決定。4)定量的な特徴座(QTL)分析のためのマーカー構築体の利用。5)成長及び発育以外の経済的に重要な特徴、即ち病気耐性の遺伝子座の同定(例えば、Andersonら、1996,Mol.Mar.Biol.Biotech.,5,105-113)。一例において、本発明のシステムは無菌遺伝子導入魚を作るために利用できる。活性化遺伝子を有する同腹群を交配させ、生物的封じ込め又は養殖魚の成長率を最大にするために無菌子孫を作ることができる。
【0064】
本発明の遺伝子導入システムの更なる別の用途において、当該核酸フラグメントを修飾して細胞に遺伝子治療を施す遺伝子を組込む。遺伝子は組織特異的プロモーターのコントロール下、又は汎存プロモーター、又はその遺伝子を必要とする細胞における遺伝子の発現のための1もしくは複数のその他の発現コントロール領域のコントロール下に置く。様々な遺伝子治療のために様々な遺伝子、例えば限定することなく、嚢胞性線維症のためのCFTR遺伝子、免疫系疾患のためのアデノシンデアミナーゼ(ADA)、血液細胞疾患のための1×因子及びインターロイキン−2(IL−2)、肺疾患のためのアルファ−1−アンチトリプシン、並びに癌治療のための腫瘍壊死因子(TNF)及び多発性薬剤耐性(MDR)タンパク質について試験されている。
【0065】
マーカータンパク質をコードする遺伝子配列及び様々な組換タンパク質を含むこれら及び様々なヒト又は動物特異的遺伝子配列は公知のデーターベース、例えばGenBank等において入手できる。
【0066】
更に、本発明の遺伝子導入システムは組換配列のライブラリーで作業する又はそれをスクリーニングするための工程の一部として、配列の機能を評価するため、又はタンパク質発現をスクリーニングするため、又は特定の細胞タイプに対する特定のタンパク質又は特定の発現コントロール領域に対する効果を評価するために利用することができる。本例においては、組換配列のライブラリー、例えば組合せ(combinatorial)ライブラリー又は遺伝子シャフリングの産物(両技術とも当業界において周知であり、そして本発明の焦点ではない)を本発明の核酸フラグメントの中に組込んで、一定の逆方向反復配列の間に配置された様々な核酸配列を有する核酸フラグメントのライブラリーを作る。次いでこのライブラリーを前述の通りSBタンパク質と一緒に細胞の中に導入する。
【0067】
本システムの利点は、それが逆方向反復配列の間に配置される介在核酸配列のサイズを著しく制約しないことにある。このSBタンパク質は1.3キロベース(kb)〜約5.0kbのトランスポゾンを組込むのに利用され、そしてマリナートランスポザーゼは約13kbまでのトランスポゾンを移動させた。SBタンパク質を用いて細胞のDNAの中に組込むことのできる核酸配列のサイズにわかっている制限はない。
【0068】
むしろ、何が制約になるかというと、本発明の遺伝子導入システムを細胞に導入する方法でありうる。例えば、マイクロインジェクションを利用するとき、本発明の核酸フラグメントの介在配列のサイズについての制約はほとんどない。同様に、脂質媒介戦略は実質的にサイズ制約がない。しかしながら、細胞に遺伝子導入システムを導入するためのその他の戦略、例えばウィルス媒介戦略は、本発明に従うと、逆方向反復配列の間に位置する核酸配列の長さを制約しうる。
【0069】
当該二成分SBトランスポゾンシステムはウィルス、例えばレトロウィルス(レンチウィルスを含む)、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、ヘルペスウィルス等を介して細胞に導入されうる。逆方向末端反復配列(IRs)及びトランスポザーゼをコードする遺伝子が並んだ注目の導入遺伝子を含むトランスポゾン部分のためのいくつかの潜在的な導入メカニズムの組合せがある。例えば、トランスポゾン及びトランスポザーゼ遺伝子の双方は同一の組換ウィルスゲノム上に一緒に含まれていてよい;一回の感染は双方のSBシステム成分を導入し、かくしてトランスポザーゼの発現は細胞染色体へのその後の組込みのための組換ウィルスゲノムからのトランスポゾンの切断を誘導する。別の例において、このトランスポザーゼ及びトランスポゾンは別々に、ウィルス及び/又は非ウィルスシステム、例えば脂質含有試薬の組合せにより導入されうる。このような場合、トランスポゾン及び/又はトランスポザーゼはいずれも組換ウィルスにより導入できうる。いずれにせよ、発現したトランスポザーゼ遺伝子は染色体DNAへの組込みのために担体DNA(ウィルスゲノム)からのトランスポゾンの遊離を誘導する。
【0070】
本発明は更に本発明の遺伝子導入システムを利用するための方法にも関連する。一の方法において、本発明は細胞への、少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成る核酸フラグメントの導入に関連する。好適な態様において、細胞のDNAへの核酸フラグメントの効率的な導入は細胞がSBタンパク質をも含むときに起こる。前述の通り、SBタンパク質は細胞にSBタンパク質として、又はSBタンパク質をコードする核酸として供与できる。SBタンパク質をコードする核酸はRNA又はDNAの形態をとりうる。このタンパク質は細胞の中に単独で、又はベクター、例えばプラスミド又はウィルスベクターにおいて導入できうる。更に、SBタンパク質をコードする核酸は細胞内でのSBタンパク質の一過性又は長期間発現を促進するよう細胞のゲノムの中に安定的に又は一過性的に組込まれうる。更に、プロモーター又はその他の発現コントロール領域が、タンパク質の発現を定量的に、又は組織特異的に調節するようSBタンパク質をコードする核酸と作用可能式に連結されていてよい。前述の通り、このSBタンパク質はSBタンパク質ファミリーの構成員であり、好ましくはSEQ ID NO:1と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、そしてより好ましくはSEQ ID NO:1と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。更に、このSBタンパク質はDNA結合ドメイン、触媒ドメイン(トランスポザーゼ活性を有する)及びNLSシグナルを含む。
【0071】
本発明の核酸フラグメントは当業界において公知の任意の様々な技術、例えば限定することなく、マイクロインジェクション、核酸フラグメントと脂質小胞体、例えば陽イオン脂質小胞体との組合せ、粒子ボンバードメント、エレクトロポレーション、DNA凝縮剤(例えばリン酸カルシウム、ポリリジン又はポリエチレンイミン)、又はウィルスベクターに核酸フラグメントを組込み、そしてそのウィルスベクターを細胞と接触させることを利用して、1又は複数の細胞の中に導入する。ウィルスベクターを利用する場合、ウィルスベクターには当業界において公知の任意の様々なウィルスベクター、例えばレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター又はアデノ関連ウィルスベクターから成る群より選ばれるウィルスベクターが挙げられる。
【0072】
本発明の遺伝子導入システムは特定のマーカーを担持する遺伝子導入動物を作るため、又は1又は複数の動物細胞の中で特定のタンパク質を発現するために容易に利用できる。遺伝子導入動物を作るための方法は当業界において公知であり、そして本発明の遺伝子導入システムのこれらの技術への組込みはめんどうな実験を要しない。以下に供与する実施例は魚の胚細胞の中に遺伝子導入システムをマイクロインジェクションすることにより遺伝子導入魚を構築するための方法を教示する。更に、これらの実施例はマウス胚芽幹細胞への遺伝子導入システムの導入のための方法を述べている。胚芽幹細胞から遺伝子導入マウスを作るための方法は当業界において周知である。更に、遺伝子導入酪農動物の乳における生物薬理タンパク質の製造(Youngら、BIO PHARM(1997),10,34-38)及びその中の引用文献は乳中の組換タンパク質の製造のための方法及び戦略を詳細している。本発明の方法及び遺伝子導入システムはめんどうな実験をすることなくこのような遺伝子導入技術の中に容易に組込むことができる。
【0073】
SBタンパク質又はSBタンパク質をコードする核酸と組合さった本発明の核酸フラグメントは、生殖系形質転換、遺伝子導入動物の生産、細胞のDNAに核酸を導入するための方法、挿入突然変異誘発、及び様々な物質の遺伝子標識のための強力な手段である。2つの戦略を図9にまとめる。
【0074】
一の染色体位置からゲノム内且つその間の別の位置へと移動するその固有の能力により、転位可能要素はいくつかの生物における遺伝子操作のための遺伝子ベクターとして開発されている。トランスポゾンタギングはトランスポゾンを遺伝子の中に「ホップ」させ、それ故それを挿入突然変異誘発により不活性化させる技術である。このような方法はEvansら、TIG 1997 13,370-374に記載されている。この工程において、不活性化遺伝子は転位可能な要素により「タグ」され、突然変異アレルを回復するのに利用されうる。遺伝子配列データーを獲得するためのヒト及びその他のゲノムプロジェクトの能力は、生物学的機能が新しい遺伝子に帰することを発見する科学者の能力を追い越してしまった。従って、本発明は細胞のゲノムにタグを導入するための効率的な方法を提供する。タグが特定の表現型に関連するタンパク質の発現を妨害する細胞内の位置に挿入されると、本発明の核酸を含む細胞における改変した表現型の発現は本発明の核酸フラグメントにより中断する特定の遺伝子との特定の表現型の結合を可能にする。ここで、核酸フラグメントがタグとして機能する。本発明の核酸フラグメントに隣接するゲノムDNAを配列決定するためにデザインされたプライマーは中断した遺伝子についての配列情報を得るために利用されうる。
【0075】
当該核酸フラグメントは遺伝子の発見のためにも利用できうる。一例において、SBタンパク質又はSBタンパク質をコードする核酸と組合さった当該核酸フラグメントを細胞に導入する。この核酸フラグメントは好ましくは少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、ここでこの逆方向反復配列はSBタンパク質に結合し、そしてここでこの核酸フラグメントはSBタンパク質の存在下で細胞のDNAの中に組込まれる。好適な態様において、当該核酸配列はマーカータンパク質、例えばGFP及び制限エンドヌクレアーゼ認識部位、好ましくは6塩基認識配列を含む。組込みの後、細胞DNAを単離し、そして制限エンドヌクレアーゼで消化する。6塩基認識配列を利用する制限エンドヌクレアーゼを用いるとき、細胞DNAを平均して約4000bpのフラグメントに切断する。これらのフラグメントはクローニングするか、又はPCRプライマーのための相補性配列を供するよう消化フラグメントの先端にリンカーを付加してよい。リンカーを付加する場合、このリンカーに由来するプライマー及び核酸フラグメントの中の逆方向反復配列の直列反復配列に結合するプライマーを用いてフラグメントを増幅するためにPCR反応を利用する。増幅フラグメントを次に配列決定し、そして直列反復配列に並んだDNAをコンピューターデーターベース、例えばGenBankを探索するために用いる。
【0076】
本発明の別の用途において、本発明は細胞内で核酸配列を移動させるための方法を提供する。この方法において、本発明の核酸フラグメントを細胞中のDNAの中に、上記の通りに組込む。更にSBタンパク質又はSBタンパク質をコードする核酸を細胞に導入し、そしてそのタンパク質はこの核酸フラグメントを細胞のDNA内の第一の位置から細胞のDNA内の第二の位置にまで移動(即ち、運動)させることができる。細胞のDNAはゲノムDNA又は染色体外DNAであってよい。この方法は当該核酸フラグメントのゲノム内の一の位置からゲノム内の別の位置、例えば細胞内のプラスミドからその細胞のゲノムへの移動を可能にする。
【0077】
本発明を以下の限定でない実施例において説明する。
【実施例】
【0078】
実施例1
SBトランスポザーゼの再構築
組換DNA
遺伝子再構築−段階1:トランスポザーゼオープンリーディングフレームの再構築
アトランタ産サケ由来のTssl.1要素(GenBank受託番号L12206)を欠陥トランスポザーゼ遺伝子と並んだプライマーペアー、FTC−Start及びFTC−Stopを利用してPCR増幅し、生成物SB1を得た。次に、Tss1.2要素の欠陥トランスポザーゼ遺伝子のセグメント(L12207)をPCRプライマーFTC−3及びFTC−4を用いてPCR増幅し、次いでFTC−3及びFTC−5で更に増幅させた。PCR生成物を(プライマー配列において下線を付した)制限酵素NcoI及びBlpIで消化し、そしてクローニングしてSB1内の対応のフラグメントを置換してSB2を得た。次にニジマス由来のTsg1要素の欠陥トランスポザーゼ遺伝子の約250bpのHindIIIフラグメント(L12209)を単離し、そしてSB2内の対応の部位にクローニングしてSB3を得た。このTss1及びTsg1要素は発表されており(Radiceら、1994)、そしてS.W.Emmons氏の贈呈品である。
【0079】
【表4】

【0080】
遺伝子再構築−段階2:共通アミノ酸を導入するためのSB3オープンリーディングフレームの部位特異的PCR突然変異誘発
PCR突然変異誘発のため、2通りの方法を利用した:工程SB4乃至SB6でのメガプライマーPCR(Sakar and Sommer,1990 Biotechniqnes 8,404-407)及び工程SB7乃至SB10のリガーゼ連鎖反応(Michael,1994 Bio Techniques 16,410-412)。
【0081】
生成物SB4のためのオリゴヌクレオチドプライマーは下記の通りとした:
FTC-7:5'-TTGCACTTTTCGCACCAA Gln->Arg(74)及びAsn->Lys(75)(SEQ ID NO:22);
FTC-13:5'GTACCTGTTTCCTCCAGCATC Ala->Glu(93)(SEQ ID NO:23);
FTC-8:5'-GAGCAGTGGCTTCTTCCT Leu->Pro(121)(SEQ ID NO:24);
FTC-9:5'-CCACAACATGATGCTGCC Leu->Met(193)(SEQ ID NO:25);
FTC-10:5'-TGGCCACTCCAATACCTTGAC Ala->Val(265)及びCys->Trp(268)(SEQ ID NO:26);
FTC-11:5'-ACACTCTAGACTAGTATTTGGTAGCATTGCC Ser->Ala(337)及びAsn->Lys(339)(SEQ ID NO:27)。
【0082】
生成物SB5のためのオリゴヌクレオチドプライマー:
B5-PTV:5'-GTGCTTCACGGTTGGGATGGTG Leu->Pro(183),Asn->Thr(184)及びMet->Val(185)(SEQ ID NO:28)。
【0083】
生成物SB6のためのオリゴヌクレオチドプライマー:
FTC-DDE:5'-ATTTTCTATAGGATTGAGGTCAGGGC Asp->Glu(279)(SEQ ID NO:29)。
【0084】
二工程における生成物SB7及びSB8のためのオリゴヌクレオチドプライマー:
PR-GAIS:5'-GTCTGGTTCATCCTTGGGAGCAATTTCCAAACGCC Asn->Ile(28),His->Arg(31)及びPhe->Ser(21)(SEQ ID NO:30)。
【0085】
生成物SB9のためのオリゴヌクレオチドプライマー:
KARL:5'-CAAAACCGACATAAGAAAGCCAGACTACGG Pro->Arg(126)(SEQ ID NO:31);
RA:5'-
ACCATCGTTATGTTTGGAGGAAGAAGGGGGAGGCTTGCAAGCCG Cys->Arg(166)及びThr->Ala(175)(SEQ ID NO:32);
EY:5'-GGCATCATGAGGAAGGAAAATTATGTGGATATATTG Lys->Glu(216)及びAsp->Tyr(218)(SEQ ID NO:33);
KRV:5'-CTGAAAAAGCGTGTGCGAGCAAGGAGGCC Cys->Arg(288)(SEQ ID NO:34)
VEGYP:5'-GTGGAAGGCTACCCGAAACGTTTGACC Leu->Pro(324)(SEQ ID NO:35)。
【0086】
生成物SB10のためのオリゴヌクレオチドプライマー:
FATAH:5'-GACAAAGATCGTACTTTTTGGAGAAATGTC Cys->Arg(143)(SEQ ID NO:36)。
【0087】
プラスミド:pSB10のため、SB10トランスポザーゼ遺伝子をEcoRI及びBamHIで切断し(その認識配列はプライマーFTC−Start及びFTC−Stopの中に組込まれ、そして上線を付してある)、クレノウで埋め、そしてCMV−βgal(Clontech)のクレノウ−補完NotI部位の中にクローニングし、このプラスミドの中に当初から存在するLacZ遺伝子を置換した。ブラント末端クローニングを理由に、遺伝子インサートの両方向を得ることが可能であり、そしてアンチセンス方向をトランスポザーゼのコントロールとして利用した。pSB10−ΔDDEについては、プラスミドpSB10をMscIで切断して322bpのトランスポザーゼコード領域を除去し、そして再環化させた。トランスポザーゼ遺伝子からのMscIフラグメントの除去は触媒DDEドメインのほとんどを除去し、そして早期翻訳終止コドンの導入によりリーディングフレームを中断した。
【0088】
8種類の魚において見い出された12部のサケ型TcE配列の配列アラインメント(EMBLデーターベースより、FTP.EBI.AC.AKからDS30090のもとでdirectory/pub/databases/embl/alignで入手可能)は、主要基準のサケ型共通配列の誘導、並びに保存タンパク質及び機能的重要性を有するようであるDNA配列モチーフの同定を可能にした(図1A)。
【0089】
突然変異トランスポザーゼオープンリーディングフレームの概念的な翻訳及びその他のタンパク質における機能性モチーフとの対比は、SBトランスポザーゼファミリーの中に高度に保存された5つの領域の同定を可能にした(図1A):i)N末端での対合枠/ロイシンジッパーモチーフ;ii)DNA結合ドメイン;iii)二分(bipartite)核移行シグナル(NLS);iv)任意の公知の機能のないトランスポザーゼの中心近くのグリシンリッチモチーフ;及びv)転位を触媒するDDEドメインを含んで成るC末端側の中の3つのセグメントから成る触媒ドメイン。DDEドメインはDoakらにより、Tc1マリナー配列において同定された(Doakら、1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,942-946)。多重配列アラインメントはトランスポザーゼコード配列における突然変異のかなりランダムな分布をも示した。72%がコドン内の非同義語位置にあった。最大の突然変異頻度は高度に突然変異可能であるCpGジヌクレオチド部位に認められた(Adeyら、1994、前掲)。アミノ酸置換はトランスポザーゼ全体に分布しているが、保存ドメイン間のタンパク質領域と比べ(コドン当り0.1の非同義語突然変異)、保存モチーフにて少なめの突然変異が検出された(コドン当り0.07の非同義語突然変異)。この観察は、いくつかの選択メカニズムが、宿主ゲノムの中でのトランスポゾンの不活性化が起こる前に機能ドメインを維持することを我々に示唆した。このような推定の機能ドメインの特定は再活性化手順の際の鍵となる。
【0090】
トランスポザーゼ遺伝子の再活性化の第一工程は、アトランタ産サケ(サーモ・サラー:Salmo salar)からのこの不活性TcEの小片及び断片並びにニジマス(オンコリンカス・マイキス:Oncorhynchus mykiss)由来の単一の要素(Radiceら、1994、前掲)からオープンリーディングフレーム(図1BのSB1乃至SB)を復帰されることにある。停止コドン及びフレームシフトの除去後の完全オープンリーディングフレームを有するSB3をHandlerら(1993)に記載と似た切断アッセイで試験したが、検出可能な活性は観察されなかった。非同義語ヌクレオチド置換により、SB3ポリペプチドは共通トランスポザーゼ配列とは24箇所で相違し(図1B)、それは2つの群に分類できる。9つの残基がおそらくはトランスポザーゼ活性のために必須であり、なぜならそれらは推定機能ドメインにあり及び/又は全Tc1ファミリーの中に保存されているからである。そしてその他の15の残基はその相対的な重要性が推定できなかった。従って、我々は二重遺伝子再構築戦略をとった。第一に、トランスポザーゼの推定機能タンパク質ドメインを、前者の突然変異群を訂正することにより一度に系統的に再構築した。生化学活性についての各ドメインを可能なら個別に試験した。第二に、第一アプローチと平行に、この再構築手順を推定トランスポザーゼにおける24個の突然変異アミノ酸全体に広げるひとにより合成した。
【0091】
従って、PCR突然変異誘発を利用し、コード配列を共通配列に一段づつ近づけるための一連の構築体を作った(図1BのSB4乃至SB10)。一般的なアプローチとして、主要基準共通配列により推定した配列情報は下記の通りとした。しかしながら、いくつかのコドンではCpG部位の5mC残基の脱アミノ化が起こり、そしてC→T突然変異が多くの要素の中で固定されていた。TpG's及びCpG'sがアライメントの中で等しい数であるR(288)ではCpG配列を選び、なぜならCpG→TpG変換はTpG→CpGよりも脊椎動物において一般的であるからである。この多大な遺伝子操作の結果は340個のアミノ酸をコードする合成トランスポザーゼ遺伝子である(図1B及び2のSB10)。
【0092】
再構築した機能性トランスポザーゼドメインを活性について試験した。第一に、NLS様タンパク質モチーフをコードするSB4トランスポザーゼ遺伝子(図1B)の短いセグメントをlacZ遺伝子に融合した。トランスポザーゼNLSは細胞質マーカー−タンパク質β−ガラクトシダーゼの培養マウス細胞の核への移入を媒介し(Ivicsら、1996、前掲)、二分NLSがSBの中の機能性モチーフであるという我々の推定を裏付けし、そして全長多機能酵素を復活させる我々のアプローチが生きていることを裏付ける。
実施例2
逆方向反復配列を有する核酸フラグメントの調製
トランスポザーゼ遺伝子に隣接する短い54bpの非直列反復配列(IR)を有するカエノルハブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)由来の原型Tc1トランスポゾンとは対照的に、魚類のほとんどのTcEはその末端にある長い210〜250bpのIR及び各IRの先端にある直列式反復したDNA配列モチーフ(DR)を有するTcEのIR/DRサブグループに属する(Ivicsら、1996;Izsvakら、1995、共に前掲)(図1A)。しかしながら、共通IR配列は完全な反復配列ではなく(即ち、類似ではあるが、同一ではない)、ほとんどTcEとは対照的に、これらの魚類要素は本来不完全な逆方向反復配列を有することが示唆される。その一致は、IRの中央では80%未満であるが、DRでは完全であり、この類似性の非ランダム分布が、IRの中に機能的に重要な配列モチーフを維持せしめたポジティブ選別の結果でありうることを示唆している(図3)。従って、我々はDRの周辺のDNA配列が転位のためのcis作用情報及びIR内の突然変異を保有しうるが、DRの外では、おそらくはこの要素の転位する能力が損われていることはないであろうと考える。モデル基質として、我々は配列がサケ型共通配列と3.8%しか異ならないインタクトDRモチーフを有するタニクシス・アルボヌベス(Tanichthys albonubes)(以降、Tと呼ぶ)から一本のサケ型TcE基質配列を選んだ。4種類のDNA配列のDNase−保護化領域における変動は約83%から約95%で変動した。SEQ ID NO:6〜9を参照のこと。
【0093】
タニクシス・アルボヌベス由来のTcE(L48685)をpUC19のSmaI部位にクローニングし、pTを得た。組込みアッセイのためのドナー構築体pT/neoを、クレノウ補完を経て、SV40プロモーター/エンハンサーネオマイシン耐性遺伝子及びSV40ポリ(A)シグナルを含むプラスミドpRc-CMV(Invitrogen,San Diego,CA)のEcoRI/BamHIフラグメントをPTのStuI/MscI部位の中にクローニングすることにより作った。TのStuI/MscI二重消化はトランスポゾンの左側に352bp、そして右側に372bpを残し、かくして末端逆方向反復配列を含む。pT/neoのEcoRI消化はトランスポゾンの左側逆方向反復配列を含む350bpのフラグメントを除去し、そしてpT/neo−ΔIRと命名するこのプラスミドをトランスポザーゼ媒介遺伝子導入組込みの基質−依存性のためのコントロールとして用いた(実施例4参照)。
実施例3
SBトランスポザーゼのDNA特異性
アトランタ産サケ及びゼブラダニオのゲノムの中には少なくとも2種類のTcEサブファミリー、即ちTss1/Tdr1及びTss2/Tdr2のそれぞれがある。同じサブファミリーに由来する要素は、たとえそれらが同じ種における2種類のサブファミリーの構成員ではなく、2種類の種に由来するときでさえも(例えば、Tss1及びTdr1)、約70%の核酸同一性を有するようである。例えば、Tdr1及びTdr2はそれらがコードするトランスポザーゼ及びそれらの逆方向反復配列において特徴的に異なり、そして約30%の核酸同一性しか有さない。所定のトランスポゾンサブファミリーは交差移動を避けるために互いと有意に相違し合わなくてはならない。主たる課題はトランスポザーゼの基質認識が近縁したサブファミリーのトランスポゾンの活性化を防ぐのに十分特異性であるかである。
【0094】
我々は、ゼブラダニオ型TcEのDRと同一のサケ型要素の12bpのDRがSBに対する結合部位の一部であることを示した。しかしながら、これらの結合部位は長さ30bpである。かくして、特異的なDNA結合は、魚類におけるTcEサブファミリー間で変動するDRのまわりのDNA配列をも包含する。かかるトランスポザーゼ結合部位の配列における相違はN123がゼブラダニオTdr1 IRに効率的に結合できないことの説明となり、そして近縁のTcEサブファミリーの間でさえものトランスポザーゼの区別を可能にしうる。事実、20bpのTc1結合部位における4つの塩基対の突然変異はトランスポザーゼの結合能を消失させうる(Vos and Plasterk,1994 EMBO J.13,6125-6132)。DRコアモチーフは主にトランスポザーゼ結合に関与するようであり、一方DRモチーフのまわりの配列はこの結合力に特異性を与えるようである。
【0095】
SBはそのトランスポゾン基質DNAにおいてIRの先端に位置する4つの結合部位を有する。これらの部位は約83%〜約95%の同一性を有する(SEQ ID NO:6〜9の対比により)。しかしながら、内部トランスポザーゼ結合部位を欠くゼブラダニオTdr1要素は転位できるようである。この所見は、操作されたTc3要素からの内部トランスポザーゼ結合部位の除去がそれらの転位する能力を損わないという発見(Collomsら、1994 Nucl.Acids Res,22,5548-5554)と一致し、内部トランスポザーゼ結合部位の存在が転位にとって必須でないことを示唆する。トランスポザーゼ等のタンパク質についての多重結合部位は往々にして調節機能に関与する(Gierlら、1988 EMBO J.7,4045-4053)。従って、TcEのIR/DRグループにおけるトランスポザーゼについての内部結合部位は転位及び/又は遺伝子発現に影響を及ぼす1又は複数の調節的な目的を担う。
【0096】
核の中に入ると、トランスポザーゼはトランスポゾン内のその認識配列に特異的に結合するにちがいない。Tc1及びTc3トランスポザーゼの双方の特異的なDNA結合ドメインはN末端領域にマッピングされている(Collomsら、1994、前掲;Vos and Plasterk,1994、前掲)。しかしながら、TcEトランスポザーゼのN末端領域の間にはごくわずかな配列保存性しかなく、これらの配列がこのようなタンパク質における特異的なDNA結合機能をコードするようであることを示唆する。他方、SBのN末端領域は、ロイシンジッパー様モチーフとの新規な組合せにおいて、転写因子のPaxファミリーに見い出される対合DNA結合ドメインに対する有意な構造及び配列類似性を有する(Ivicsら、1996、前掲)。おそらくは、特異的DNA結合についての必須情報を全て含み、且つNLSを含むSBの最初の123個のアミノ酸をコードする遺伝子セグメント(N123)を再構築し(図1BのSB8)、そしてE.コリの中で発現させた。N123はC末端ヒスチジンタグを介して16KDaのポリペプチドとして精製された(図3A)。
【0097】
N123の誘導はE.コリ株BL21(DE3)(Novagen)の中で、0.4mMのIPTGの添加により600nmにて0.5 O.D.で行い、そして30℃で2.5h続けた。細胞を25mMのHEPES,pH7.5,1MのNaCl,15%のグリセロール、0.25%のTween 20,2mMのβ−メルカプトエタノール、1mMのPMSFの中で音波処理し、そして10mMのイミダゾール(pH8.0)をその可溶性画分に加え、次いでそれをNi2+−NTA樹脂(Qiagen)とその製造者の推奨に従って混合した。その樹脂を25mMのHEPES(pH7.5)、1MのNaCl,30%のグリセロール、0.25%のTween 20,2mMのβ−メルカプトエタノール、1mMのPMSF及び50mMのイミダゾール(pH8.0)で洗い、そして結合タンパク質を300mMのイミダゾールを含む音波処理バッファーで溶出させ、そしてイミダゾール抜きの音波処理バッファーに対して4℃で一夜透析した。
【0098】
NLS機能に加えて、N123は移動度シフトアッセイにおいて試験した通り、SBの特異的DNA結合ドメインをも含む(図3B)。当該要素の左側逆方向反復配列を含んで成るpTの300bpのEcoRI/HindIIIフラグメントを〔α32P〕dCTP及びクレノウを用いて末端ラベルした。核タンパク質複合体を20mMのHEPES(pH7.5),0.1mMのEDTA,0.1mg/mlのBSA,150mMのNaCl,1mMのDTTの中で10μlの総容量で形成した。反応体は100pgのラベル化プローブ、2μgのポリ〔dI〕〔dC〕及び1.5μlのN123を含んだ。氷の上で15minインキュベーション後、50%のグリセロール及びブロモフェノールブルーを含む5μlの装填色素を加え、そしてそのサンプルを5%のポリアクリルアミドゲル(Ausubel)の上に装填した。DNaseIフットプリンティングをBRL由来のキットを用い、その製造者の推奨に従って実施した。Tの左側IRを含んで成るラジオラベル化された300bpのDNAフラグメントのインキュベーションによりデオキシリボ核タンパク質複合体が観察され(図3B、左パネル、レーン3)、発現ベクターのみ(レーン2)で形質転換した細菌の抽出物(レーン2)又はタンパク質を全く含まないプローブ(レーン1)を含むサンプルと比較した。競合DNAとして反応体に過剰量で添加したTの未ラベル化IR配列はプローブの結合を阻害し(レーン4)、一方ゼブラダニオ由来のクローン化Tdr1要素の類似の領域は有意に結合と競合しなかった(レーン5)。かくして、N123はサケ型及びゼブラダニオ型TcE基質とを区別できる。
【0099】
移動度シフトアッセイにより検出されるデオキシリボ抗タンパク質複合体の数は高いN123濃度でIR当り2つのタンパク質分子結合を示し(図3B、右パネル)、IR内のトランスポザーゼについての2つの結合部位又は単一部位に結合したトランスポザーゼダイマーと一致する。トランスポザーゼ結合部位を更に分析し、そしてDNaseIフットプリンティング実験においてマッピングした。上記と同じTのフラグメントを用い、IRプローブの先端に近い2つの保護化領域が観察された(図4)。この2つの30bpフットプリントはIR内のサブターミナルDRモチーフをカバーする。かくして、DRはN123によるDNA結合のためのコア配列である。DRモチーフはサケ型及びゼブラダニオ型TcE間でほぼ同一である(Ivicsら、1997)。しかしながら、30bpトランスポザーゼ結合部位はDRモチーフよりも長く、そして外部及び内部結合部位のそれぞれに8塩基対及び7塩基対を含み、それらはゼブラダニオ型及びサケ型IRとの間で異なっている(図4B)。
【0100】
各IRの先端付近にトランスポザーゼのための2つの結合部位があるが、明らかに外部部位のみがDNA切断のため、それ故トランスポゾンの切除のために利用されている。配列対比は外部及び内部トランスポザーゼ結合部位間で組成において3−bpの相違、そして長さにおいて2−bpの相違があることを示した(図4C)。まとめると、我々の合成トランスポザーゼタンパク質はDNA結合活性を有し、そしてこの結合能はサケ型IR/DR配列に対して特異的なようである。
【0101】
SBトランスポザーゼのN末端誘導体の発現のため、SB8の遺伝子セグメントをプライマーFTC−Start及びFTC−8を用いてPCR増幅し、T4ポリヌクレオチドキナーゼにより5’リン酸化し、BamHIで消化し、クレノウで補完し、そしてクレノウ補完の後にNdeI/EcoRI消化発現ベクターpET21a(Novagen)の中にクローニングした。このプラスミドpET21a/N123はC末端ヒスチジンタグを有する最初の123個のアミノ酸のトランスポザーゼを発現する。
実施例4
SBトランスポザーゼによるDNAの転位
以下の実験は当該合成サケ型SBトランスポザーゼが転位の複雑な工程を全て実行することを実証する。即ち、DNA分子を認識し、基質DNAを切り出し、そしてそれを細胞のDNA、例えば細胞染色体に挿入する。これはSBトランスポザーゼを含まず、それ故組込みも非相同性認識を介して達成するコントロールサンプルとは対照的である。
【0102】
培養脊椎動物細胞への2成分SBトランスポゾンシステムの同時感染により、トランスポザーゼ活性はトランスポザーゼのDNA基質を担う導入遺伝子の高められた組込みを示した。ドナー構築体に対するトランスポザーゼの結合及びこのような核タンパク質複合体のトランスフェクション細胞の核への輸送は、SV40 NLSペプチドを利用する遺伝子導入ゼブラダニオ胚について観察されたように(Collasら、1996 Transgenic Res.5,451-458)高い組込み率をもたらしうる。しかしながら、DNA結合及び核照準活性のみでは、全長トランスポザーゼの存在下でしか起こらない形質転換頻度の上昇を起こさせなかった。十分ではないにしても、これらの機能はおそらくはトランスポザーゼ活性のために必要である。事実、マリナーのNLSにおける単一アミノ酸置換は全トランスポザーゼ機能にとって有害である(Loheら、1997 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,1293-1297)。トランスポザーゼの突然変異バージョンであるSB6が転位を触媒できないことは保存モチーフの配列の重要性を証明する。明らかに、SB6が含む11個のアミノ酸置換のうちの3つ、即ち、F(21)、N(28)及びH(31)は特異的DNA結合ドメイン内にある(図1及び2)。魚類TcEトランスポザーゼの対合様TcE結合ドメインの配列分析は、28位にあるイソロイシンが、トランスポザーゼとPaxタンパク質内の対応の位置との間で保存されていることを示唆する(Ivicsら、1996、前掲)。かくして、我々はこのモチーフがDNA結合活性のために重要であると推定する。SBは特異的認識及び組込みに関して基質特異性を発揮する。双方の末端逆方向反復配列を有するこのような操作されたトランスポゾンのみがSBにより転位されうる。同様に、ショウジョウバエにおけるP要素形質転換において、トランスポザーゼ産生ヘルパー構築体は往々にして、当該要素がジャンプすることを妨げるPの逆方向反復配列の一つを欠く「ウィングス−クリップド(wings-clipped)」トランスポザーゼ遺伝子である(Cooleyら、1988 Science 239,1121-1128)。我々の過渡的なアッセイにおいては、転位はSBシステムの両成分が同一の細胞の中に存在するときにのみ起こりうる。それが起こると、多重組込みが起こり、それはネオマイシン耐性細胞クローンにおける11個までの組込まれた導入遺伝子についての我々の発見により証明される(図7A)。単一のゲノム部位へのコンカテマー多量体の形態で往々にして起こる培養哺乳動物細胞内でのプラスミドDNAの自発組込みとは対照的に(Peruchoら、1980 Cell 22,309-317)、このような多重挿入は異なる染色体位置の中で起こるようである。
【0103】
我々の合成サケ型トランスポゾンの組込みは魚類、並びにマウス及びヒト細胞において観察された。更に、プラスミド間転位アッセイにおける遺伝子マーカーの組換え(Lampeら、1996、前掲)は、トランスポザーゼの存在下でマイクロインジェクションされたゼブラダニオ胚の中で有意に高まった。従って、SBは明らかにその本来の宿主に対するその活性を制約するであろう任意の自明な種特異性因子を必要としない。重要なことに、遺伝子組込みの約20倍の最も著しい向上がヒト細胞及び魚類胚細胞において観察された。
【0104】
SBの組込み活性
核の中に入り込み、そして逆方向反復配列内のその作用部位に特異的に結合する能力に加えて、完全に活性なトランスポザーゼはトランスポゾンを切り出し、そしてそれを組込むものと期待される。SBトランスポザーゼのC末端半分において、3つのタンパク質モチーフがDD(34)E触媒ドメインを構築する;2個の不変アスパラギン酸残基D(153)及びD(244)、並びにグルタミン酸残基E(279)。最後の2つは34個のアミノ酸で離れている(図2)。インタクトDD(34)E枠がTc1及びTc3トランスポザーゼの触媒機能のために必須である(van Luenenら、1994 Cell 79,293-301;Vos and Plasterk,1994、前掲)。
【0105】
2種類の組込みアッセイを利用した。第一アッセイは培養細胞の染色体への染色体組込み現象を検出するためにデザインした。このアッセイは2つの非自律転位可能要素、即ち、選択マーカー遺伝子を含む要素(ドナー)及びトランスポザーゼを発現する別の要素(ヘルパー)のtrans−相補に基づく(図5A)。ドナーpT/neoは、トランスポザーゼのための結合部位を含むトランスポゾンの末端IRが隣接するSV40プロモーター駆動neo遺伝子を含むTベース要素である。このヘルパー構築体はヒトサイトメガロウィルス(CMV)エンハンサー/プロモーターにより駆動する全長SB10トランスポザーゼ遺伝子を発現する。このアッセイにおいて、ドナープラスミドをヘルパー又はコントロール構築体と共に培養脊椎動物細胞に同時トランスフェクションし、そして染色体の組込み及びneo導入遺伝子の発現に基づきネオマイシン類似薬G418に対して耐性な細胞クローンの数は遺伝子導入の指標を担う。もしSBが厳格に宿主特異性でないなら、転位は系統分類学的に遠隔な脊椎動物種でも起こるであろう。図5Aに示すアッセイ系を利用して、高いレベルの導入遺伝子組込みがヘルパープラスミドの存在下で観察された;マウスLMTK細胞では5倍以上、そしてヒトHela細胞では20倍以上(図5B及び6)。従って、SBは導入遺伝子の組込みの効率を高めることができ、そしてこの活性は魚類細胞に限定されない。
【0106】
高い導入遺伝子組込みの要件を分析するため、更なる実験を行った。図5BはG−418選択下でプレート培養し、そしてトランスフェクションの2週間後にメチレンブルーで染色したトランスフェクション化Hela細胞の5枚のプレートを示す。染色パターンは、アンチセンス方向においてクローニングしたドナープラスミドとSBトランスポザーゼ遺伝子のコントロール同時トランスフェクションと比べ(pSB10-AS;プレート1)、SBトランスポザーゼ−発現ヘルパー構築体を同時トランスフェクションしたときにHela細胞へのneo−標識トランスポゾンの組込みを有意に高めることを明示した(プレート2)。この結果は、トランスポザーゼタンパク質の生産が導入遺伝子の高い染色体組込みのために必須であり、そしてトランスポザーゼがヒト細胞においてさえも正確であることを実証する。
【0107】
第二のアッセイにおいて、トランスポザーゼ認識配列及びマーカー遺伝子(アンピシリン耐性)を含むインジケータープラスミドをカナマイシン遺伝子及びSBトランスポザーゼを含む標的プラスミドと一緒に同時注入した。得られるプラスミドを単離し、そしてE.コリを形質転換させた。コロニーをアンピシリン及びカナマイシン耐性について選別した(図8参照)。SBトランスポザーゼをこれらのアッセイにおいて同時マイクロインジェクションしたが、SBトランスポザーゼをコードするmRNAもSBトランスポザーゼタンパク質の代わりに、又はそれに加えて同時マイクロインジェクションしてよい。
【0108】
細胞トランスフェクション
細胞を10%の胎児牛血清の添加したDMEMの中で培養し、トランスフェクションの1日前に6cmプレーン上に播種し、そしてBRL由来のリポフェクチンを用いて5μgのElutip(Schleicher and Schuell)−精製プラスミドDNAでトランスフェクションした。DNA脂質複合体との5時間のインキュベーション後、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)中の15%のグリセロールで30sec「グリセロールショック」にかけ、PBSで1回洗い、次いで血清含有培地を再供給した。トランスフェクションの2日後、トランスフェクション化細胞をトリプシン処理し、2mlの血清含有DMEMの中に再懸濁し、そしてこの細胞懸濁物のアリコート1ml又は0.1mlのいずれかを600μg/mlのG418(BRL)を含む培地の数枚の10cmプレートの上に播種した。2週間の選別後、細胞クローンを拾い、そして個々の培養物の中で増殖させるか又はPBS中の10%のホルムアルデヒドで固定し、PBS中のメチレンブルーで30min染色し、脱イオン水でよく洗い、風乾し、そして写真撮影した。
【0109】
これらのアッセイは染色体組込みのために必要なトランスポザーゼドメインをマッピングするためにも用いることができる。このアッセイのため、フレームシフト突然変異をSBトランスポザーゼ遺伝子の中に導入し、翻訳停止コドンをG(161)の後方に置いた。この構築体pSB10−ΔDDEは特異的なDNA結合及びNLSドメインを含むトランケーション化トランスポザーゼポリペプチドを発現するが、触媒ドメインを欠く。この構築体を利用して得られる形質転換率(図5Bのプレート3)は、アンチセンスコントロールにより得られるものと似ていた(図6)。この結果は、全長トランスポザーゼタンパク質の存在が必要であり、そしてDNA結合及び核輸送活性自体は観察される導入遺伝子組込みの向上のために十分でないことを示唆する。
【0110】
トランスポザーゼ要件の更なるコントロールとして、SBトランスポザーゼ遺伝子SB6(それはSB10とは11残基相違する、図1B)早期バージョンの組込み活性を同じアッセイを利用して試験した。SB6(図5Bのプレート4)を用いて観察される形質転換体の数はアンチセンスコントロール実験とほぼ同じであり(図6)、トランスポザーゼ遺伝子の中に我々が導入したアミノ酸置換がトランスポザーゼ機能にとって重要であることを示唆する。まとめると、図5Bのプレート1,3及び4に示す3つのコントロールは高SB媒介導入遺伝子組込みのtrans要件を樹立する。
【0111】
真性な転位はインタクトIR配列を有するトランスポゾンを要する。neo標識トランスポゾン基質の一つをIRを除去し、そしてこの構築体pT/neo−ΔIRの性能を組込みについて試験した。このプラスミドで観察された形質転換率(図5Bのプレート5)は全長ドナーによるものの7分の1であった(図6)。これらの結果はトランスポゾンに隣接する双方のIRが効率的な転位のために必要であることを示唆し、それ故2成分SBトランスポゾンシステムのcis要件の一部を樹立する。
【0112】
組込まれた導入遺伝子の構造を調べるため、図5Bのプレート2に示すものと類似の実験由来のG418選別下で増殖させた細胞の11のコロニーを拾い、そしてそのDNAをサザンハイブリダイゼーションを利用して分析した。細胞クローンのゲノムDNAサンプルを2233bpのT/neoマーカートランスポゾン内は切断しない5種類の制限酵素の組合せで消化し、そしてneo−特異的プローブとハイブリダイゼーションさせた(図7)。ハイブリダイゼーションパターンは分析したクローンの全てが形質転換体当り1(レーン4)〜11(レーン2)のコピーの範囲で組込み導入遺伝子を含むことを示した。更に、多くの多重挿入がヒトゲノム内の様々な箇所で起きたようである。
【0113】
組込まれたトランスポゾンに隣接する二本鎖TA配列の存在はTcE転位の証明である。かかる配列を示すため、組込まれたトランスポゾン及びヒトゲノムDNAの接合フラグメントをライゲーション媒介PCRアッセイを利用して単離した(Devonら、Nucl.Acids.Res.,23,1644-1645(1995))。我々は5種類の組込まれたトランスポゾンの接合フラグメントをクローニング及び配列決定し、それらは全てTAジヌクレオチドが続くIRの推定配列、並びに全ての接点において相違し、且つpT/neo中のトランスポゾンに本来隣接するプラスミドベクター配列と相違する配列を示す(図7B)。同じ結果がトランスポゾンの左側又は右側のRTのいずれかを含む9つの追加の接合点から得た(図示せず)。このような結果はマーカートランスポゾンがドナープラスミドから正確に切り出され、そしてその後ヒト染色体の中の様々な位置にスプライシングされることを示唆した。次に、接合配列を野生型Hela DNAからクローニングした対応の「空洞」染色体領域と比較した。図7Bに示す通り、これらの挿入は全てTA標的部位において認められ、それらをその後二本鎖とし、組込みトランスポゾンに隣接するTA’を得た。これらのデーターは、SBがTc1/マリナー超科のその他の構成員と同じカット−アンド−ペースト型の転位メカニズムを利用すること、及び反応の精度が異種細胞内で維持されていることを実証する。このようなデーターはSB媒介型転位の頻度がランダム組換よりも少なくとも15倍高いことも示唆する。配列決定した組換現象のいずれもSBトランスポザーゼにより媒介されなかったため、ランダム組換に対する転位の真の率は何倍も高いことがある。もし組込みがSBタンパク質により媒介されないランダム組込みの結果であるなら、挿入されたneo構築体の先端はプラスミドの先端と対応しないであろう;欠失IR配列及び/又はトランスポゾンに隣接する追加のプラスミド配列のいずれかがあるであろう。更に、組込み部位には二本鎖TA塩基対がないであろう。
【0114】
まとめると、全長トランスポザーゼ酵素による両端に逆方向反復配列を有する完全トランスポゾンの切除及び脊椎動物の染色体外プラスミドから染色体への組込みの依存性は、遺伝子導入システムが完全に機能的であることを示す。
実施例5
様々な種に由来する細胞内でのDNAの転位
トランスポザーゼ活性の宿主要件を、マウス由来のLMTK及びヒト由来のHela、並びにゼブラダニオ由来の胚細胞の3種類の脊椎動物細胞を用いて評価した。
【0115】
トランスポザーゼが機能中の一連の細胞(即ち、天然環境において分化及び増殖中の胚細胞)において機能することを実証するアッセイをデザインした。このアッセイは、一のプラスミドの中のトランスポゾンを取り出し、そして標的プラスミドに挿入し、次いでトランスポザーゼ構築体を第1細胞期ゼブラダニオ胚に注入するプラスミド間転位を包括する。これらの実験において、トランスポゾン切除及び/又は組込みをモニターするためのインジケーター(ドナー)プラスミドは:1)E.コリ又は魚類細胞の中に回収されたときに機能の低下又は上昇によりスクリーニングできるマーカー遺伝子、及び2)このマーカー遺伝子に隣接するIR内のトランスポザーゼ認識配列;を含む。標識化トランスポゾンの総サイズは約1.6kbに保ち、それは真骨魚類ゲノムに見い出せるTcEの自然なサイズである。しかしながら、約5kbのトランスポゾンを利用する遺伝子導入率は1.6kbのトランスポゾンとは有意に相違せず、転位が大型のトランスポゾンで起こりうることを示唆する。Ts1トランスポザーゼの転位活性はBluescript発現ベクター由来のT7 DNAポリメラーゼによりin vitroで作った200ng/μlのTs1 mRNAと250ng/μlづつの標的及びドナープラスミドとを第1細胞段階ゼブラダニオ胚の中に同時マイクロインジェクションすることにより評価した。低分子量DNAを胚から注射の約5hr後に調製し、E.コリ細胞に形質転換し、そしてコロニーを50μg/mlのカナマイシン及び/又はアンピシリン含有アガー上でレプリカプレートすることにより選別した。これらの研究において、標的プラスミドへの転位頻度は実験細胞では約0.041%、そしてコントロール細胞では0.002%であった。このレベルはゼブラダニオゲノムの中で認められる転位は含まない。これらの実験において、我々は胚の約40%〜50%が4日より長く生存しないことを見い出した。マウスにおける挿入突然変異誘発研究は劣性死亡率が約0.05であることを示唆した(即ち、平均して約20の挿入が致死的であろう)。この率がゼブラダニオに適用されると仮定して、この死亡率のおよそのレベルはこのような実験に用いるマイクロインジェクション条件により、死亡率はゲノム当り約20の挿入で換算できる。
実施例6
SBトランスポゾン由来の安定な遺伝子発現
トランスポゾンシステムは、例えば遺伝子治療、及びバイオリアクターシステムのための動物染色体への遺伝子導入の目的のために、その導入する遺伝子が確実に発現される限りにおいて、遺伝子導入のために機能的であろう。ねむれる美女(sleeping beauty)トランスポザーゼ媒介導入後の遺伝子発現の精度を決定するため、我々はSV40プロモーターの指令下にあるグリーンフルオレセントタンパク質(GFP)遺伝子を含むトランスポゾンとねむれる美女トランスポザーゼをコードするin vitro合成したmRNAとを第1ゼブラダニオ胚の中にマイクロインジェクションした。胚形成の際にGFPの多少の発現を示す注射した胚のうちの34個を成熟に至るまで増殖させ、そして野生型ゼブラダニオと交配させた。このような交配から、我々は34匹の魚のうち4匹がGFP遺伝子をその子孫に伝達できることを見い出した(表1)。A,B,C及びDと表示するこれらの4匹のFo魚の子孫におけるGFPの発現を評価し、そしてその魚を成長させた。この4匹のオリジナル始祖から、GFP遺伝子の伝達率は約2%〜12%(表1)に範囲し、平均約7%であった。これらの魚におけるGFPの発現は同じ組織タイプ中の全ての個体においてほぼ同一であり、GFP遺伝子の発現が卵及び精子を介する伝達を経て復活することを示唆する。これらのデーターは生殖系がGFP遺伝子の発現に関してモザイクであり、そして遺伝子の発現が安定であることを示唆する。魚DのF1子孫を互いと交配させた。この場合、我々は約75%の伝達を予測し、そして実際に69/70(77%)のF2魚が同じ組織において同等レベルでGFPタンパク質を発現することを見い出した。これは、SBトランスポゾンシステムが少なくとも2世代の動物を通じて確実に発現できる遺伝子を導入する能力の更なる証拠である。
【0116】
【表5】

【0117】
魚A〜Dについての行の数値はGFPを発現する魚の数、それに続く調べた子孫の総数である。GFP発現子孫のパーセンテージをかっこに示す。
実施例7
挿入突然変異誘発及び遺伝子発現のためのSBトランスポゾン
ゲノム内及びゲノム間で一の染色体位置から別の位置へと移動するその固有の能力に基づき、転位可能な要素を以下の生物を含む所定の生物の遺伝子操作を変革した:細菌(Gonzalesら、1996 Vet.Microbiol.48,283-291;Lee and Henk,1996.Vet.Microbiol.50,143-148)、ショウジョウバエ(Ballinger and Benzer,1989 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,9402-9406;Bellenら、1989 Genes Dev.3,1288-1300;Spradlingら、1995 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,10824-10830)、C.エレガンス(Plasterk,1995.Meth.Cell.Biol.,Academic Press,Inc.pp.59-80)及び様々な植物種(Osborne and Baker,Curr.Opin.Cell Biol,7,406-413(1995))。トランスポゾンはトランスポゾンタギング、エンハンサートラッピング及び遺伝子導入のための有用なベクターとしての仕事をする。しかしながら、全てではないにしても大半の経済的に重要な動物はかかる道具を包いている。その簡潔性及び様々な生物において機能するその明白な能力のため、SBはDNAトランスポゾン技術が現在適用できない種のための効率的なベクターとしての有用性を発揮するであろう。
【0118】
SB型転位可能要素は、挿入突然変異誘発に基づき有害な作用を有しうる機能性DNA配列、又はあまり重要性のない非機能性クロマチンの2タイプのクロマチンのいずれかに組込まれうる(図9)。ひこの「トランスポゾンタギング」の力はほぼ20年かけてより簡単なモデルシステムにおいて開発された(Binghamら、Cell,25,697-704(1981);Bellenら、1989、前掲)。トランスポゾンタギングは旧式の技術であり、それは導入遺伝子DNAを細胞に導入し、それが遺伝子の中に組込まれるようにし、これにより挿入突然変異誘発を介して不活性化する。この工程においては、不活性化遺伝子を転位可能要素によりタギングし、それを突然変異アレルを復活させるために用いることができる。転位可能要素の挿入は遺伝子の機能を破綻し、それは特徴的な表現型に結びつきうる。図10に示す通り、挿入はほぼランダムであるため、挿入式機能低下突然変異体を作製する同じ手順は細胞に新たな表現型を授けるであろう遺伝子を導入するのに往々にして利用できる。機能上昇突然変異体は遺伝子生成物が増殖及び発育において果たす機能、並びにその調節の重要性を理解するために利用できる。
【0119】
タギング遺伝子を単離するにはいくつかの方法がある。どのケースでもゲノムDNAは慣用の技術により突然変異動物の1又は複数の組織由来の細胞から単離される(それは様々な組織及び動物で異なる)。DNAを制限エンドヌクレアーゼにより切断し、それはトランスポゾンタグを切断する又はしないことがある(往々にして、それは既知の部位は切断しない)。得られるフラグメントを、トランスポゾンに対するプローブを利用する同定のため、プラスミド又はファージベクターの中に直接クローニングすることができる(Kimら、1995,Mobile Genetics Elements,IRL Press,D.L.Sheratt編を参照のこと)。他方、DNAは任意の様々な方法でPCR増幅できる;我々はIzsvak及びIvics(1993、前掲)のLM−PCR手順及びDevorらの改良方法(1995、前掲)を利用し、そしてトランスポゾンプローブに対するそのハイブリダイゼーションにより同定した。別の方法は逆PCRである(例えば、Allendeら、Genes Dev.,10,3141-3155(1996))。クローニング方法とは関係なく、同定したクローンを配列決定した。トランスポゾン(又はその他の挿入DNA)に隣接する配列は挿入要素に対するその非同一性により同定できる。これらの配列を組合せ、そしてその他の既に特性決定された遺伝子との相同性、又は所定の機能をコードする遺伝子又は配列モチーフに対する部分相同性を探索するために利用できる。ある状況においては、この遺伝子は任意の既知のタンパク質に対する相同性を有しない。それは比較する他のものに対して新規の配列となる。コードされるタンパク質は、その回復を誘導する表現型を引き起こすうえでのその役割の更なる調査の中心となるであろう。
実施例8
遺伝子マッピングのためのマーカーとしてのSBトランスポゾン
導入遺伝子及びその他の遺伝子座をマッピングするための反復要素も同定した。DANAは、先祖SINE要素への短い配列の挿入により集成されたと思われる異なるカセットの異常なサブ構造を有するレトロポゾンである。DANAはダニオ(Danio)系の中で約4×105コピー/ゲノムで増幅した。DANAとほぼ同じくらいに豊富なAngel要素は魚類遺伝子付近に見い出せる逆方向反復配列である。DANA及びAngel要素は共にゲノムの中でランダムに分布され、そしてメデリアン(Medelian)状で分れているようである。DANA及びAngel要素に対して特異的なプライマーを利用するPCR増幅は魚類ストック間での多形態のスクリーニング及び遺伝子導入配列の移行のための遺伝子マーカーとして利用できる。相互的散在反復配列−PCR(IRS−PCR)は多形態DNAを検出するのに利用できる。IRS−PCRはメデリアン状で遺伝される多形態フラグメントを供する反復配列特異的プライマーを利用し、反復要素の隣接するゲノムDNAを増幅する(図10A)。多形態DNAフラグメントはIRS−PCRにおいてDANA又はAngel特異的プライマーにより作成でき、そして検出可能な多形態バンドの数は、SB様トランスポゾン等のゼブラダニオゲノム内の反復配列に対する様々なプライマーの組合せにより有意に増大しうる。
【0120】
多形態フラグメントはゲノムから回収でき、そしてクローニングして突然変異をマッピングするための配列タギング部位(STS)を供することができる。図10BはSTSを作製するためにIRS−PCRを利用するための一般原理及び制約を示す。我々はゼブラダニオゲノムの約0.1%が4つのプライマーだけを用いるIRS−PCRにより直接分析できると推定する。DANAの4つの保存(C1−4)領域はゼブラダニオゲノムの様々な保存度及び表現を有し、そしてこれをPCRプライマーのデザインにおいて考慮に入れた。
【0121】
同じ方法が魚類ストック及びその他の動物集団のフィンガープリンティングにおいて潜在的な用途を有する。この方法は酵母、細菌及びバクテリオファージP1誘導人工染色体(YACs,BACs及びPACsのそれぞれ)の中にクローニングした大型DNAのサブクローンを得ることを助長し、そして組込まれた導入遺伝子配列の検出のために利用できうる。
【0122】
【表6】

【0123】
【表7】

【0124】
【表8】

【0125】
【表9】

【0126】
【表10】

【0127】
【表11】

【0128】
【表12】

【0129】
【表13】

【0130】
【表14】

【0131】
【表15】

【0132】
【表16】

【0133】
【表17】

【0134】
【表18】

【0135】
【表19】

【0136】
【表20】

【0137】
【表21】

【0138】
【表22】

【0139】
【表23】

【0140】
【表24】

【0141】
【表25】

【0142】
【表26】

【0143】
【表27】

【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】サケTc1様トランスポザーゼ遺伝子の分子再構築を示す。図1(A)はサケTcEの模式マップであり、保存ドメインはトランスポザーゼ及びIR/DR(逆方向反復配列/直列配列)隣接配列の中にある。図1(B)はサケトランスポザーゼのオープンリーディングフレームを構築し(SB1−SB3)、そしてこの遺伝子の中に代替アミノ酸を模式的に導入する(SB4−SB10)典型的な戦略を供する。アミノ酸残基は一文字コードで示し、共通のもの以外のときに太字にしている。部位特異的突然変異誘発により改変されたトランスポザーゼポリペプチド内の位置を矢印で示す。翻訳終止コドンには星印を付け、フレームシフト突然変異は#で示す。共通のものに変化した残基にはチェックマークを付け、そして細イタリック字体で示す。右縁において、種々の再構築段階において実施した様々な機能試験を表示する。
【図2A】はSBタンパク質をコードする核酸配列(SEQ ID NO:3)である。
【図2B】SBトランスポザーゼのアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)である。主要な機能ドメインを目立たせている。
【図3】SBトランスポザーゼのN末端誘導体のDNA結合活性を示す。図3(A)はN123の発現及び精製における工程を示すSDS−PAGE分析を供する。レーン:1)発現ベクターpET21aを含む細胞の抽出物;2)IPTGによる誘導前の発現ベクターpET21a/N123を含む細胞の抽出物;3)IPTGで誘導して2.5時間後の発現ベクターpET21a/N123を含む細胞の抽出物;4)Ni2+−NTA樹脂を用いて部分精製したN123。KDa表示の分子量を右側に示す。図3(B)はN123が魚類トランスポゾンの逆方向反復配列に結合するかどうかを決定するための移動度−シフト分析研究の結果を示す。レーン:1)プローブのみ;2)発現ベクターpET21aを含む細胞の抽出物;3)パネルAのレーン4に示すN123調製品の10,000倍希釈物;4)1,000倍モル過剰量の未ラベルプローブを競合DNAとして加えたレーン3と同一物;5)1,000倍モル過剰量のゼブラダニオTdr1要素の逆方向反復フラグメントを競合DNAとして加えたレーン3と同一物;6−13)パネルAのレーン4に示すN123調製品の200,000,100,000,50,000,20,000,10,000,5,000,2,500及び1,000倍希釈物。
【図4】N123により形成されるデオキシリボ核タンパク質複合体のDNase Iフットプリンティングを供する。図4(A)は図3Bと同じトランスポゾン逆方向反復配列DNAプローブを用いる図3Aのレーン4に示すN123調製品の500倍希釈物を含むDNase Iフットプリンティングゲルの写真である。反応はN123の非存在下(下レーン)又は存在下(中央レーン)において流した。同DNAのプリン塩基のMaxam−Gilbert配列決定をマーカーとして用いた(レーン1)。反応はN123の存在下(レーン2)又は非存在下(レーン3)において流した。図4(B)はパネルAに示すサケトランスポザーゼ結合部位とゼブラダニオTdr1要素の中の対応の配列との配列対比(SEQ ID NO:37−40)を示す。図4(C)はSBトランスポゾン内の外部及び内部トランスポザーゼ結合部位間での配列対比(SEQ ID NO:41−42)である。
【図5A】ヒトHela細胞中のSBの組込み活性を示す。図5(A)は培養細胞内でのSB媒介導入遺伝子組込みについての遺伝子アッセイ戦略の模式図である。
【図5B】図5Aのつづきである。はドナー及びヘルパープラスミドの様々な組合せでトランスフェクションしたG−418耐性Hela細胞の染色コロニーによるHela細胞のペトリ皿を用いるHela細胞組込みを示す。プレート:1)pT/neo+pSB10−AS;pT/neo+pSB10;3)pT/neo+pSB10−ΔDDE;4)pT/neo+pSB6;5)pTneo−ΔIR+pSB10。
【図6】ヒトHela細胞内での導入遺伝子組込みの結果をまとめる。組込みは活性SBトランスポザーゼの存在下及びトランスポゾン逆方向反復配列の隣接する導入遺伝子に依存する。表示のドナーとヘルパープラスミドとの様々な組合せを培養Hela細胞の中に同時トランスフェクションし、そして図5に示す実験と比べその細胞の10分の1を形質転換体を数えるために選択下でプレート培養した。導入遺伝子の組込みの効率を抗生物質選択を生き抜く形質転換体の数として採点した。右側の形質転換体の数は一枚の皿当りのG−418耐性細胞コロニーの数を表わす。各数値は3回のトランスフェクション実験から得た平均値を表わす。
【図7A】Hela細胞の染色体へのネオマイシン耐性標識化トランスポゾンの組込みを示す。図7(A)はpT/neo及びpSB10でトランスフェクションし、そしてG−418選択を生き抜いた8種のHela細胞クローン由来のネオマイシン特異性放射性ラベル化プローブによるHela細胞ゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーションの結果を示す。ゲノムDNAは制限酵素NheI,XhoI,BglII,SpeI及びXbaI,neo標識化トランスポゾン内で切断しない酵素により、アガロースゲル電気泳動及びブロッティングの前に消化した。
【図7B】図7のつづきである。図7(B)はヒトゲノムDNAに組込まれたT/neoトランスポゾンの接合配列(SEQ ID NO:43−63及びSEQ ID NO:2)のダイアグラムである。ドナー部位を頂部に、pT/neo内のトランスポゾンに本来隣接するプラスミドベクター配列と一緒に示す(黒矢印)。トランスポゾン挿入のための標的を但うヒトゲノムDNAを灰色枠で示す。IR配列は大文字、隣接配列を小文字で示す。
【図8】トランスポゾンの切除及び組込みのためのインタープラスミドアッセイを模式する。このアッセイはゼブラダニオの胚の中のトランスポザーゼ活性を評価するために用いた。2つのプラスミドとSBトランスポザーゼタンパク質をコードするRNAを一細胞のゼブラダニオ胚の中に同時注入した。プラスミドの一つは、SBトランスポザーゼにより認識可能なIR/DR配列の隣接するアンピシリン耐性遺伝子(Ap)を有していた。受精及び注入の5時間後、低分子量DNAを胚から単離し、そしてE.コリを形質転換するために使用した。その細菌をアンピシリン及びカナマイシン(Km)を含む培地上で増殖させ、Km及びAp抗生物質耐性マーカーの双方を含む単一プラスミドを保有する細菌を選択した。二重耐性細胞由来のプラスミドを、Ap−トランスポゾンが切除され、そしてKm標的プラスミドの中に再組込みされたかを確認するために調べた。別のインジケーターAp−プラスミド又はゼブラダニオゲノムの中へと移動したAp−トランスポゾンは採点しなかった。注入プラスミドの中のDNAの量はゲノムのそれとほぼ同じであるため、標的プラスミドへのAp−トランスポゾンの組込み数はゲノムへの組込み数と近似していた。
【図9】本発明の遺伝子導入システムを利用する二通りの好適な方法を示す。本発明の核酸フラグメントの組込み部位に依存して、その効果は機能低下又は機能上昇突然変異のいずれかでありうる。例えば遺伝子発見及び/又は機能性ゲノムのために双方のタイプの活性が開拓できる。
【図10】はIRS−PCR(散在反復配列ポリメラーゼ連鎖反応)を利用する好適なスクリーニング戦略を示す。図10AはレトロポゾンDANA(D)5'-GGCGACRCAGTGGCGCAGTRGG(SEQ ID NO:13) 及び 5'-GAAYRTGCAAACTCCACACAGA(SEQ ID NO:14);Tdr1トランスポゾン(T) 5'-TCCATCAGACCACAGGACAT(SEQ ID NO:15)及び5'- TGTCAGGAGGAATGGGCCAAAATTC(SEQ ID NO:16);並びにAngel(A)高度に反復した小型逆方向反復配列転位可能要素)5'- TTTCAGTTTTGGGTGAACTATCC(SEQ ID NO:12)配列を含むゼブラダニオゲノム内の染色体領域を示す。これらの要素の上にある矢印は特異的PCRプライマーを示す。
【0145】
中央DANA要素上に上書きしたXは別のゼブラダニオ系のゲノムにおける矢印要素又は突然変異したプライマー結合部位を示す。様々な増幅配列タギングした部位(STS)を、最長の検出可能PCR生成物から出発して小文字で特定する。Xで標識した生成物は欠陥「X−DNA」を有するゲノムを増幅させたときにはPCR反応において生成されない。3,000塩基対(bp)超で離れた要素及び互いに対して誤まった方向を有する要素は効率的に増幅されない。図10BはX'ed DANA要素を有する(レーン1)及び有さない(レーン2)ゲノム双方に由来する2組のDNA増幅生成物の模式である。バンド「a」及び「d」は標識化DANA配列がないときは欠落していることに注意。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸フラグメントであって:
少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、ここで当該逆方向反復配列がSBタンパク質に結合することができ、そして当該核酸フラグメントが細胞内のDNAに組込まれることができる、核酸フラグメント。
【請求項2】
前記核酸フラグメントがプラスミドの一部である、請求項1記載のフラグメント。
【請求項3】
前記核酸配列がオープンリーディングフレームの少なくとも一部を含んで成る、請求項1記載のフラグメント。
【請求項4】
前記核酸配列が少なくとも一の発現コントロール領域を含んで成る、請求項1記載のフラグメント。
【請求項5】
前記発現コントロール領域がプロモーター、エンハンサー又はサイレンサーから成る群から選ばれる、請求項4記載のフラグメント。
【請求項6】
前記核酸配列がオープンリーディングフレームの少なくとも一部に作用可能式に連結されている、請求項1記載のフラグメント。
【請求項7】
前記細胞が動物から得られたものである、請求項1記載のフラグメント。
【請求項8】
前記細胞が無脊椎動物から得られたものである、請求項7記載のフラグメント。
【請求項9】
前記無脊椎動物が甲殻類又は軟体動物である、請求項8記載のフラグメント。
【請求項10】
前記甲殻類又は軟体動物がエビ、ホタテ、ロブスター又はカキである、請求項7記載のフラグメント。
【請求項11】
前記細胞が脊椎動物から得られたものである、請求項7記載のフラグメント。
【請求項12】
前記細胞が魚類から得られたものである、請求項10記載のフラグメント。
【請求項13】
前記細胞が鳥類から得られたものである、請求項11記載のフラグメント。
【請求項14】
前記脊椎動物が哺乳動物である、請求項11記載のフラグメント。
【請求項15】
前記細胞がマウス、有蹄類、ヒツジ、ブタ及びヒトから成る群より選ばれる、請求項14記載のフラグメント。
【請求項16】
前記細胞のDNAが細胞ゲノムから成る群より選ばれる、又はエピソームもしくはプラスミドから成る群より更に選ばれる、請求項1記載のDNA。
【請求項17】
前記少なくとも一の逆方向反復配列がSEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:5を含んで成る、請求項1記載の核酸フラグメント。
【請求項18】
前記SBタンパク質のアミノ酸配列がSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する、請求項1記載の核酸フラグメント。
【請求項19】
前記少なくとも一の逆方向反復配列が少なくとも一の直列反復配列を含んで成り、そしてここで前記少なくとも一の直列反復配列がSEQ ID NO:6,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:9を含んで成る、請求項1記載の核酸フラグメント。
【請求項20】
前記直列反復配列がSEQ ID NO:10の共通配列を有する、請求項1記載の核酸フラグメント。
【請求項21】
前記直列反復配列がSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有する、請求項1記載の核酸フラグメント。
【請求項22】
細胞のDNAの中にDNAを導入するための遺伝子導入システムであって:
少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成る核酸フラグメント、ここで当該逆方向反復配列はSBタンパク質に結合することができ、そして当該核酸フラグメントは細胞のDNAの中に組込まれることができる;及び
トランスポザーゼ又はトランスポザーゼをコードする核酸、ここで当該トランスポザーゼはSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を有するSBタンパク質である;
を含んで成る遺伝子導入システム。
【請求項23】
前記SBタンパク質がSEQ ID NO:1を含んで成る、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項24】
前記トランスポザーゼをコードするDNAが0.5×のSSC中の30%(v/v)のホルムアミド、0.1%(w/v)のSDS中で42℃で7時間のハイブリダイゼーション及び洗浄条件下でSEQ ID NO:1にハイブリダイズできる、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項25】
前記トランスポザーゼがタンパク質として前記細胞に供与される、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項26】
前記トランスポザーゼがトランスポザーゼをコードする核酸として前記細胞に供与される、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項27】
前記トランスポザーゼをコードする核酸がRNAである、請求項26記載の遺伝子導入システム。
【請求項28】
前記トランスポザーゼをコードする核酸が細胞のゲノムの中に組込まれる、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項29】
前記核酸フラグメントがプラスミド又は組換ウィルスベクターの一部である、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項30】
前記核酸配列がオープンリーディングフレームの少なくとも一部を含んで成る、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項31】
前記核酸配列が少なくとも遺伝子調節領域を含んで成る、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項32】
前記調節領域が転写調節領域である、請求項31記載の遺伝子導入システム。
【請求項33】
前記調節領域がプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、座コントロール領域及び境界要素から成る群より選ばれる、請求項31記載の遺伝子導入システム。
【請求項34】
前記細胞が動物から得られたものである、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項35】
前記核酸配列がオープンリーディングフレームの少なくとも一部に作用可能式に連結されているプロモーターを含んで成る、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項36】
前記細胞が脊椎動物又は無脊椎動物細胞である、請求項34記載の遺伝子導入システム。
【請求項37】
前記無脊椎動物が甲殻類又は軟体動物から得られる、請求項36記載の遺伝子導入システム。
【請求項38】
前記細胞が魚類又は鳥類である、請求項36記載の遺伝子導入システム。
【請求項39】
前記脊椎動物が哺乳動物である、請求項36記載の遺伝子導入システム。
【請求項40】
前記細胞がげっ歯類、有蹄類、ヒツジ、ブタ及びヒトから成る群より得られるものである、請求項39記載の遺伝子導入システム。
【請求項41】
前記細胞のDNAが細胞ゲノム又は染色体外DNAから成る群より選ばれる、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項42】
前記少なくとも一の逆方向反復配列がSEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:5を含んで成る、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項43】
前記SBタンパク質のアミノ酸配列がSEQ ID NO:1と少なくとも80%の同一性を有する、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項44】
前記少なくとも一の逆方向反復配列が少なくとも一の直列反復配列を含んで成り、ここで当該少なくとも一の直列反復配列はSEQ ID NO:6,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:9を含んで成る、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項45】
前記直列反復配列がSEQ ID NO:10の共通配列を有する、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項46】
前記核酸配列が組換配列のライブラリーの一部である、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項47】
前記核酸配列が前記細胞の中に、
粒子ボンバードメント;
エレクトロポレーション;
マイクロインジェクション;
前記核酸フラグメントと脂質含有小胞体又はDNA凝縮試薬との組合せ;及び
当該核酸フラグメントをウィルスベクターに組込み、次いでそのウィルスベクターを前記細胞と接触させること;
から成る群より選ばれる方法を利用して導入される、請求項22記載の遺伝子導入システム。
【請求項48】
SBタンパク質をコードする核酸であって、SEQ ID NO:1を含んで成るタンパク質又はSEQ ID NO:1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成るタンパク質をコードする、核酸。
【請求項49】
核酸ベクター中の請求項48記載の核酸。
【請求項50】
前記ベクターが遺伝子発現ベクターである、請求項49記載の核酸。
【請求項51】
前記ベクターがプラスミドである、請求項50記載の核酸。
【請求項52】
前記核酸が線形核酸フラグメントである、請求項49記載の核酸。
【請求項53】
請求項48記載の核酸を含む細胞。
【請求項54】
前記細胞が動物から得られるものである、請求項53記載の核酸。
【請求項55】
前記細胞が脊椎動物又は無脊椎動物から得られる細胞である、請求項54記載の核酸。
【請求項56】
前記脊椎動物が魚類である、請求項55記載の核酸。
【請求項57】
前記脊椎動物が哺乳動物である、請求項55記載の核酸。
【請求項58】
前記細胞が卵母細胞又は卵である、請求項53記載の核酸。
【請求項59】
前記細胞が組織又は器官の一部である、請求項53記載の核酸。
【請求項60】
前記細胞が1又は複数の胚細胞を含んで成る、請求項53記載の核酸。
【請求項61】
細胞のゲノムの中に組込まれた、請求項48記載の核酸。
【請求項62】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含んで成る、SBタンパク質。
【請求項63】
遺伝子導入動物を生産するための方法であって:
核酸フラグメント及びトランスポザーゼを多能性又は全能性細胞に導入し、ここで当該核酸フラグメントは少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、ここで当該逆方向反復配列はSBタンパク質に結合し、そしてここで当該核酸フラグメントは細胞内のDNAの中に組込まれることができ、そしてここで当該トランスポザーゼはSEQ ID NO:1と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するSBタンパク質である;そして
前記細胞を動物へと成長させる;
工程を含んで成る方法。
【請求項64】
前記多能性又は全能性細胞が卵母細胞、胚細胞、卵及び幹細胞から成る群より選ばれる、請求項63記載の方法。
【請求項65】
前記導入工程が:
マイクロインジェクション;
エレクトロポレーション;
前記核酸フラグメントと陽イオン脂質小胞体又はDNA凝縮試薬との組合せ;及び
当該核酸フラグメントをウィルスベクターに組込み、次いでそのウィルスベクターを前記細胞と接触させること;
から成る群より選ばれる方法を含んで成る、請求項63記載の方法。
【請求項66】
前記ウィルスベクターがレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクターもしくはアデノ関連ウィルスベクター、又はヘルペスウィルスから成る群より選ばれる、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記動物がマウス、魚類、有蹄類、鳥類又はヒツジである、請求項63記載の方法。
【請求項68】
核酸を細胞内のDNAの中に導入するための方法であって:
少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成る核酸フラグメントを細胞に導入することを含んで成り、ここで当該逆方向反復配列はSBタンパク質に結合することができ、そして当該核酸フラグメントはSBタンパク質の存在下で細胞内のDNAの中に組込まれることができる、方法。
【請求項69】
前記方法がSBタンパク質を細胞に導入することを更に含んで成る、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記SBタンパク質がSEQ ID NO:1と少なくとも80%の同一性を含んで成るアミノ酸配列を有する、請求項68記載の方法。
【請求項71】
前記SBタンパク質を細胞にRNAとして導入する、請求項69記載の方法。
【請求項72】
前記細胞がSBタンパク質をコードする核酸を含んで成る、請求項68記載の方法。
【請求項73】
前記SBタンパク質をコードする核酸が細胞ゲノムの中に組込まれる、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記SBタンパク質が細胞の中で安定的に発現される、請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記SBタンパク質が誘導性プロモーターのコントロール下にある、請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記導入工程が、
マイクロインジェクション;
エレクトロポレーション;
前記核酸フラグメントと陽イオン脂質小胞体又はDNA凝縮試薬との組合せ;及び
当該核酸フラグメントをウィルスベクターの中に導入し、そしてこのウィルスベクターを前記細胞と接触させること;
から成る群より選ばれる細胞への核酸導入方法を含んで成る、請求項68記載の方法。
【請求項77】
前記ウィルスベクターがレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター又はアデノ関連ウィルスベクターから成る群より選ばれる、請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記方法がSBタンパク質又はSBタンパク質をコードするRNAを細胞に導入する工程を更に含んで成る、請求項68記載の方法。
【請求項79】
前記細胞が多能性又は全能性細胞である、請求項68記載の方法。
【請求項80】
請求項79記載の方法により生産した遺伝子導入動物。
【請求項81】
前記核酸配列がタンパク質をコードする、請求項68記載の方法。
【請求項82】
前記タンパク質がマーカータンパク質である、請求項68記載の方法。
【請求項83】
請求項81のタンパク質を生産する細胞。
【請求項84】
請求項81の方法により生産された組換タンパク質を生産する遺伝子導入動物。
【請求項85】
下記の特徴:
細胞のDNAへの核酸の組込みを触媒する能力;
SEQ ID NO:4又は5の逆方向反復配列に結合する能力;及び
SEQ ID NO:1に対する80%のアミノ酸配列同一性;
を含んで成るタンパク質。
【請求項86】
下記特徴:
トランスポザーゼ活性;
約10%のSDS−ポリアクリルアミドゲル上での約35kD〜約40kDの分子量幅;並びに
NLS配列、DNA結合ドメイン及び触媒ドメイン;
を含んで成るタンパク質であって、非相同性組換により得られるレベルと比べ、細胞の核酸に核酸フラグメントを導入する速度において少なくとも約5倍の向上を有する、タンパク質。
【請求項87】
細胞内の核酸配列を移動させるための方法であって:
請求項84又は85記載のタンパク質を請求項1記載の核酸フラグメントを含むDNAを有する細胞の中に導入する工程を含んで成り、ここで当該タンパク質は細胞のDNA内の第一位置から細胞のDNA内の第二位置へと当該核酸を移動させる、方法。
【請求項88】
前記細胞のDNAがゲノムDNAである、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記細胞DNA内の第一位置が染色体外DNAである、請求項87記載の方法。
【請求項90】
前記細胞DNA内の第二位置が染色体外DNAである、請求項87記載の方法。
【請求項91】
前記タンパク質を前記細胞の中に核酸として導入する、請求項87記載の方法。
【請求項92】
細胞のゲノム内の遺伝子を同定するための方法であって:
核酸フラグメント及びSBタンパク質を細胞に導入する、ここで当該核酸フラグメントは少なくとも2つの逆方向反復配列の間に位置する核酸配列を含んで成り、ここで当該逆方向反復配列は前記SBタンパク質に結合でき、そしてここで当該核酸フラグメントは当該SBタンパク質の存在下で細胞内のDNAの中に組込まれることができる;
当該細胞のDNAを前記核酸配列を切断することのできる制限エンドヌクレアーゼで消化する;
前記逆方向反復配列を同定する;
当該逆方向反復配列に近い核酸を配列決定し、オープンリーディングフレームからDNA配列を得る;そして
このDNA配列をコンピューターデーターベース内の配列情報と比較する;
工程を含んで成る方法。
【請求項93】
前記制限エンドヌクレアーゼが6塩基認識配列を認識する、請求項92記載の方法。
【請求項94】
前記消化工程が、消化したフラグメントのクローニング又は消化したフラグメントのPCR増幅を更に含んで成る、請求項93記載の方法。
【請求項95】
プロモーターに作用可能式に連結された遺伝子を含んで成る安定な遺伝子導入脊椎動物であって、当該遺伝子及びプロモーターに逆方向反復配列が隣接し、そしてこの逆方向反復配列がSBタンパク質に結合する、脊椎動物。
【請求項96】
前記SBタンパク質がSEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含んで成る、請求項95記載の安定な遺伝子導入脊椎動物。
【請求項97】
前記脊椎動物が魚類である、請求項96記載の安定な遺伝子導入脊椎動物。
【請求項98】
前記脊椎動物がゼブラダニオである、請求項97記載の安定な遺伝子導入脊椎動物。
【請求項99】
前記脊椎動物がマウスである、請求項96記載の安定な遺伝子導入脊椎動物。
【請求項100】
1又は複数の下記の配列と結合できるトランスポザーゼ活性を有するタンパク質:
SEQ ID NO:4,SEQ ID NO:5,SEQ ID NO:6,SEQ ID NO:7,SEQ ID NO:8,SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:10。
【請求項101】
SBタンパク質に特異的に結合できる抗体。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−271981(P2008−271981A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140004(P2008−140004)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【分割の表示】特願平10−539720の分割
【原出願日】平成10年3月11日(1998.3.11)
【出願人】(504466889)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (1)
【Fターム(参考)】