説明

細胞イメージング法に基づく、HBVカプシドタンパク質と表面タンパク質との間の相互作用を用いたHBV増殖抑制物質のスクリーニング方法

本発明は、HBV(Hepatitis B Virus)増殖に必要なカプシドタンパク質と表面タンパク質間の相互作用(結合度)を細胞イメージングで測定してHBVの増殖抑制物質をスクリーニングする方法で、詳細には、HBVの表面タンパク質のPreSドメインと細胞膜標的化機能のPH(Pleckstrin homology)ドメインの配列を含む融合タンパク質、該融合タンパク質と相互作用するカプシドタンパク質と蛍光タンパク質(GFP)を含む融合タンパク質間の相互作用によって細胞イメージングの変化を測定する方法に関するものである。本発明のHBV増殖に必要なタンパク質間の相互作用を細胞レベルでスクリーニングする方法を使用して、新しいHBVの増殖抑制物質を細胞レベルでのスクリーニングに有効に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HBV(Hepatitis B Virus)の増殖に必要なカプシドタンパク質と表面タンパク質との間の相互作用(結合度)を細胞イメージングで測定して、HBVの増殖抑制物質をスクリーニングする方法であり、より詳細には、HBVの表面タンパク質のPreSドメインと細胞膜標的化機能のPH(Pleckstrin homology)ドメインの配列を含む融合タンパク質と、該融合タンパク質と相互作用するカプシドタンパク質と蛍光タンパク質(GFP)を含む融合タンパク質との間の相互作用による細胞イメージングの変化を測定して、HBV増殖を抑制する物質をスクリーニングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
HBVは、B型肝炎を誘発するヘパドナウイルス科系統のウイルスであり、世界中の約2億人に達する人々がHBV保有者である。HBVに対するワクチンは、すでに開発されて広く普及しているが、すでに感染した人を治療するための治療剤としては、ラミブジン(lamivudine)とインターフェロン(interferon)のみが使用されている。この中でラミブジンは、HBVのDNAポリメラーゼの活性を抑制する特性があるが、長期投与すると耐性のあるウイルスが発生するため、その適用が制限されている。したがって、より多様なHBV治療剤の開発が求められている。
【0003】
今まで、B型肝炎ウイルスの抑制物質として、インターフェロン、核酸誘導体または免疫調節物質などが開発されてきたが、満足に値する効能を有したものは、ほとんどないのが実情であり、B型肝炎ウイルスの増殖を抑制する物質として、ウイルスが受容体に付着することを阻害したり、ウイルスの活性タンパク質やポリメラーゼを特異的に阻害したりする物質を探索する研究が行なわれてきた。最近、HBVタンパク質の多様な活性を抑制する物質の開発が試みられている。HBVが感染した細胞において、HBVの組み立てのためには、HBVのカプシド(capsid)タンパク質と表面タンパク質との相互作用が必要である。HBVのカプシドタンパク質は、HBV核酸と結合して、直径30nmの大きさのヌクレオカプシド粒子を構成する。HBVの表面タンパク質として、一つの遺伝子(S gene)から三種類のL、M、Sタンパク質が生合成された後、細胞内ER脂質膜で発現し、前記ヌクレオカプシドと特異的結合をし、同時にERの脂質膜がHBVヌクレオカプシドを取り囲みながら、完成した形態のHBV粒子を形成するようになる(Volker B&Don G、PNAS USA,1991年,第88巻,1059−1063頁)。このような過程で、HBVヌクレオカプシドの表面に存在するカプシドタンパク質と表面タンパク質、特にPreSと命名されたLタンパク質のN−末端のアミノ酸残基1−163に該当するドメインとの間の選択的な結合が、HBV粒子の形成を誘発するようになり、このような二つのタンパク質間の相互作用は、HBVの増殖を抑制する物質の開発の標的となり得る。このようなHBVのカプシドタンパク質と表面タンパク質との間の相互作用をスクリーニングするために、組換えタンパク質を使用した免疫アッセイが開発された(Asif−Ullah M等,Antiviral Res,2006年,第70巻,85−90頁)。前記方法は、大腸菌で発現した組換えタンパク質を使用することによって特徴付けられる。
【0004】
しかし、最近の新薬開発過程において、化合物の生理活性を測定する方法として、精製された標的タンパク質の活性を測定する方法以外に、細胞を対象に標的タンパク質の活性を測定する方法が活発に模索されている。標的細胞における化合物の生理活性を測定する方法は、目的とする生理活性を測定すると同時に、化合物の細胞透過性と毒性を同時に検出することができる長所があり、より効果的なスクリーニング方法として認識されている。
【0005】
HBVが感染した細胞内で、HBVのカプシドタンパク質とHBV核酸を含むヌクレオカプシド粒子は、細胞の小胞体膜に発現したHBVの表面タンパク質と特異的結合をしながら活性を有する完成したHBV粒子を形成するようになる。このようなHBVタンパク質間の結合は、HBVのカプシドタンパク質と表面タンパク質のPreSドメインとの間の選択的な相互作用によって決定される。したがって、HBVのカプシドタンパク質と表面タンパク質のPreSドメインとの間の結合を細胞レベルで測定することができれば、前記測定方法を細胞スクリーニング方法に使用して、これらタンパク質間の結合を抑制する化合物を効果的にスクリーニングすることができる。このような活性を有する化合物は、HBV増殖を抑制することができる機能を有するものであり、したがって、HBVによって誘発される肝炎治療剤として用いることができる。
【0006】
本発明は、HBVの表面タンパク質のPreSドメインと細胞膜標的化(targeting)機能のPH配列を含む融合タンパク質、前記タンパク質と相互作用するカプシドタンパク質と蛍光タンパク質(GFP)を含む融合タンパク質を使用して、これらタンパク質の相互作用によって蛍光シグナルの細胞分布が変化するようになり、これを蛍光顕微鏡で測定する方法に関するものである。本発明は、HBV増殖に必要なタンパク質間の相互作用を細胞レベルでスクリーニングする方法であり、新しいHBVの増殖抑制物質を細胞レベルでスクリーニングするのに有効に用いることができる。
【0007】
したがって、本発明者等は、HBVのカプシドタンパク質と表面タンパク質との相互作用を細胞レベルで測定することができる方法を開発して、HBVのカプシドタンパク質と表面タンパク質との間の相互作用を阻害してウイルス増殖を抑制することができる物質をスクリーニングするのに有効に用いることができることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、細胞レベルでHBVカプシドタンパク質と表面タンパク質との間の相互作用を測定して、効果的にHBVの増殖を抑制することができる物質をスクリーニングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、HBVのカプシドタンパク質に蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および、HBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるあるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質をコードする他のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0010】
また本発明は、前記発現ベクターまたはHBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるあるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む第1発現ベクター、および、前記融合タンパク質と相互作用するHBVのカプシドタンパク質に蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む第2発現ベクターが共に形質導入された動物細胞を提供する。
【0011】
さらに本発明は、1)培養中に前記動物細胞に候補物質を処理する工程、2)蛍光顕微鏡を使用して、工程1)で発現した蛍光タンパク質の蛍光イメージを得る工程、および、3)細胞質の蛍光イメージに位置付けられた候補物質を選別する工程を含む、HBVの増殖を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0012】
併せて、本発明は、前記動物細胞を含むHBVの増殖を抑制する物質のスクリーニングキットを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のHBV増殖に必要なタンパク質間の相互作用をスクリーニングする方法は、新しいHBVの増殖抑制物質を細胞レベルでスクリーニングするのに有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、HBVの表面タンパク質のPreSドメインが細胞膜を標的化するPHドメインのN−末端に連結された融合タンパク質(PreS−PH)とカプシドタンパク質(HBcAg)が緑色蛍光タンパク質(GFP)のN−末端に連結された融合タンパク質(カプシド−GFP)の構造を示した模式図である。
【図2】図2は、PreS−PH、カプシド−GFP、変異体PreS−PHタンパク質の同時発現ベクターの開裂地図を示した模式図である:a:pHBsPH−HBcGFP;b:pHBc−GFP;及び、c:pΔHBsPH−HBcGFP。
【図3】図3は、カプシド−GFPタンパク質がPreS−PHタンパク質との相互作用によって細胞質から細胞膜に移動する原理を示した模式図である。
【図4】図4は、細胞で発現したカプシド−GFPタンパク質の蛍光イメージが、細胞質に存在したあと、PreS−PHタンパク質と同時に発現する場合、PreSとの相互作用によって細胞膜でイメージシグナルが変化することを示した写真である:a:pHBc−GFP;b:pHBsPH−HBcGFP;及び、c:pΔHBsPH−HBcGFP。
【図5】図5は、PreS由来のペプチドがカプシドタンパク質とPreSタンパク質との相互作用を抑制することを示したグラフである。
【図6】図6は、細胞で発現したカプシド−GFPの蛍光イメージが、PreS由来のペプチドによって細胞質に位置することを示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0016】
本発明は、HBVのカプシドタンパク質に蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および、HBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクターを提供する。
【0017】
前記発現ベクターは、骨格ベクターにHBVのカプシドタンパク質に蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、および、HBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが連結して含まれる。本発明の方法で使用できる骨格ベクターは、動物細胞形質導入に使用可能な任意のベクターを使用することができ、特に制限されるものではないが、pBud−CE4.1、pcDNA3.1、pcDNA4およびpEF6からなる群から選択されるものが好ましい。本発明の好ましい態様において、pBud−CE4.1を使用した。
【0018】
前記カプシドタンパク質は、カプシドタンパク質全長または表面タンパク質と相互作用することができるフラグメントであり得る。本発明の好ましい態様において、配列番号19のアミノ酸配列のHBVのカプシドタンパク質の中で、pro配列(pro sequence)を除外した部位(アミノ酸30−214)を使用した。
【0019】
前記蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)および強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)などを例示することができるが、これらに制限されず、本発明の好ましい態様では、GFPを使用した。
【0020】
前記表面タンパク質は、表面タンパク質のPreSドメインの全長または、カプシドタンパク質と相互作用することができるPreSドメインのフラグメント若しくはコアタンパク質と相互作用することができる93番アミノ酸から117番アミノ酸の範囲のドメインが欠失したHBVの表面タンパク質のPreSドメインのフラグメントであることができる。本発明の好ましい態様では、カプシドタンパク質と相互作用することができる表面タンパク質の配列番号20で表されるアミノ酸配列を有するPreSドメインを使用した。また、他の好ましい態様では、前記PreSドメインから、コアタンパク質と相互作用する93番アミノ酸から117番アミノ酸のドメインが欠失したドメインを使用した。
【0021】
前記細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインは、PLC−δ(phospholipase C delta)のPH(Pleckstrin homology)ドメイン(Genebank ID:241276、アミノ酸2−175)、EEA1(early endosome antigene1)のFYVE(No full name)ドメイン(Genebank ID:L40157、アミノ酸1352−1410)、ING2(Inhibitor of growth2)のPHD(Prolyl−hydroxylase)ドメイン(Genebank ID:NM_001564、アミノ酸212−261)、タンパク質キナーゼCのC2(calcium/lipid−binding)ドメイン(Genebank ID:NM002737、アミノ酸172−260)およびグアニンヌクレオチド交換因子DBS(Guanine nucleotide exchange factor DBS)のSEC14(S.cerevisiae phosphatidylinositol transfer protein homology)ドメイン(Genenbank ID:AB_116074、アミノ酸90−236)などを例示することができるが、これに制限されず、本発明の好ましい態様では、PLC−δのPHドメインを使用した。
【0022】
前記HBVのカプシドタンパク質に蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質は、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有する(図2b参照)。前記配列番号4で表されるアミノ酸配列は、配列番号3で表される塩基配列によってコードされることを特徴とする。
【0023】
前記HBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質は、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する(図2a参照)。前記配列番号2で表されるアミノ酸配列は、配列番号1で表される塩基配列によってコードされることを特徴とする。
【0024】
また、他の本発明の好ましい態様では、HBVの表面タンパク質のPreSドメインは、前記PreSドメインの、コアタンパク質と相互作用する93番アミノ酸から117番アミノ酸までを除去したドメインと代替して使用可能である。すなわち、コア領域と相互作用するPreSドメインの93番アミノ酸から117番アミノ酸までを除去したタンパク質ドメインに、細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質は、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有する(図2c参照)。前記配列番号6で表されるアミノ酸配列は、配列番号5で表される塩基配列によってコードされることを特徴とする。
【0025】
HBVのカプシドタンパク質ドメインに蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質およびHBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質を同時に発現することができる発現ベクター(pHBsPH−HBcGFP、図4b参照)を使用したものより、HBVのカプシドタンパク質ドメインに蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質およびPreSドメインのコアタンパク質と相互作用する93番アミノ酸から117番アミノ酸までを除去したタンパク質ドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質を発現することができる発現ベクター(pΔHBsPH−HBcGFP、図4c参照)を使用した場合、コアタンパク質と表面タンパク質の相互作用を排除することで、さらに特異的にカプシドタンパク質と表面タンパク質の相互作用を観察することができる(図4参照)。
【0026】
本発明のカプシドタンパク質ドメインは、蛍光タンパク質と連結して使用することができ、前記表面タンパク質のPreSドメインは、細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインと連結して使用することができる(図1参照)。前記蛍光タンパク質と連結されたカプシドタンパク質ドメインが、細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインと連結された表面タンパク質のPreSドメインと結合することで、蛍光タンパク質と連結されたカプシドタンパク質ドメインは、細胞質から細胞膜に移動することができる(図3参照)。PreS由来のペプチドによってカプシドタンパク質ドメインとPreSドメインの相互作用が抑制されて、カプシドタンパク質に連結された蛍光タンパク質の蛍光イメージが、細胞膜ではなく細胞質に位置することを確認することで(図5および図6参照)、本発明の蛍光タンパク質と連結されたカプシドタンパク質ドメインと細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインと連結された表面タンパク質のPreSドメインの結合が、特異的であることを確認した。
【0027】
また、本発明は、前記発現ベクターに形質導入された動物細胞を提供する。
前記動物細胞は、HEK293T、COS7、HeLaおよびCHOなどを例示することができるが、これらに制限されず、本発明の好ましい態様では、HEK293T細胞を使用した。
【0028】
また、本発明は、HBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質(以下、PreS−PH)をコードするポリヌクレオチドを含む第1発現ベクター、および前記融合タンパク質と相互作用するHBVのカプシドタンパク質ドメインに蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質(以下、カプシド−GFP)をコードするポリヌクレオチドを含む第2発現ベクターが共に形質導入された動物細胞を提供する。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、PreS−PHとカプシド−GFPは、起源が異なるベクターに各々クローニングされて一つの動物細胞に共同形質導入することで、共同発現することができる。
【0030】
また、本発明は、1)前記動物細胞を培養しながら候補物質を処理する工程と、2)蛍光顕微鏡を使用して工程1)で発現した蛍光タンパク質の蛍光イメージを撮影する工程、および、3)蛍光イメージが細胞質に位置するようにする候補物質を選別する工程とを含む、HBVの増殖を抑制する物質をスクリーニングする方法を提供する。
【0031】
同時に、本発明は、前記動物細胞を含むHBVの増殖を抑制する物質のスクリーニングキットを提供する。
【0032】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
<実施例1>発現ベクター製造
<1−1>pCapsid−GFP遺伝子の製造
HBVカプシドタンパク質の中でpro配列を除外したドメイン(アミノ酸30−214)(配列番号19)を含むpHBcAg(Choi KJ等,Biochem Biophys Res Commun,2004年,第319巻,959−66頁)を鋳型にして、配列番号7と配列番号8のプライマー対を使用してDNA重合連鎖反応法(PCR)で、95℃、1分;55℃、30秒;72℃、1分の条件で25回反復して合成した後、SalIとKpnIのDNA制限酵素で切断した後、同じ制限酵素で切断したpEGFP−N1(Clontech)ベクターに、T4 DNAリガーゼを使用して挿入して、カプシド−GFPが含まれたプラスミドであるpCapsid−GFPを製造した。このDNAを鋳型に、配列番号9と配列番号10のプライマー対を使用してDNA重合連鎖反応法でNotIとXhoIのDNA制限酵素を含んだカプシド−GFP DNA断片を作った。合成されたカプシド−GFPとpBud−CE4.1(Stratagene,米国)をNotIとXhoIのDNA制限酵素で切断した後、T4 DNAリガーゼを使用して連結してpHBc−GFP(図2b)を製造し、DNA塩基配列を分析して配列番号4で表されるアミノ酸を暗号化する配列番号3のカプシド−GFP DNAが適切に挿入されたことを確認した。
【0034】
<1−2>PreS−PH遺伝子の製造
マウスcDNAを鋳型に、配列番号11と配列番号12のプライマー対を使用してPLC−δ(phospholipase C delta)のPHドメイン(Genebank ID:241276,アミノ酸2−175)をDNA重合連鎖反応法(PCR)で、95℃、1分;55℃、30秒;72℃、1分の条件で25回反復して合成した。pTrx−PreS(Choi KJ等,Biochem Biophys Res Commun,2004年,第319巻,959−66頁)を鋳型に、配列番号13と配列番号14のプライマー対を使用してHBV表面タンパク質の中でPreSドメイン(アミノ酸1−163)(配列番号20)を有するDNAをDNA重合連鎖反応法(PCR)で、95℃、1分;55℃、30秒;72℃、1分の条件で25回反復して合成した。前記方法で得たPreSをコードするDNAとPHをコードするDNAを鋳型に、配列番号15と配列番号16のプライマー対を使用してDNA重合連鎖反応法(PCR)で、95℃、1分;55℃、30秒;72℃、1分の条件で25回反復してPreS−PH DNAを合成した。ここで、前記二つの鋳型DNAがオーバーラップしてPCRが遂行された。増幅されたDNAをHindIIIとXbaIのDNA制限酵素で切断した後、同じ制限酵素で切断したpHBc−GFPにT4 DNAリガーゼを使用して連結して、配列番号2で表されるアミノ酸を暗号化する配列番号1の塩基配列を有するDNAを含むpHBsPH−HBcGFP(図2b)を製造し、DNA塩基配列を分析して増幅されたDNAが適切に挿入されたことを確認した。
【0035】
PreSドメインの中でコアタンパク質と相互作用する93番アミノ酸から117番アミノ酸の欠失したドメインは、pHBsPH−HBcGFPを鋳型に、DNA重合連鎖反応法(PCR)で、95℃、30秒;55℃、1分;68℃、7分の条件で18回反復して、配列番号17と配列番号18のプライマーを使用して、配列番号6で表されるアミノ酸を暗号化する配列番号5の塩基配列を有するDNAを合成した。メチル化されたアデニンを認識して切断するDpnI制限酵素を処理して、PCR方法で合成してメチル化されないDNAを除外した部分を除去し、塩基配列分析を通じてpΔHBsPH−HBcGFP(図2c)を確認した。
【0036】
<実施例2>動物細胞での形質転換
<2−1>動物細胞の培養
HEK293T細胞は、5%COと37℃の条件下で、10%FBSが供給されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;Gibco,米国)で培養した。細胞は、90%の密度で継代培養して、25%密度を維持しながら形質転換のために準備した。
【0037】
<2−2>動物細胞の形質転換
実施例2−1の方法で培養されたHEK293T細胞を継代培養して、カバーガラスが入っている6ウェルプレートで培養した。密度条件が40〜60%になるように育てた後、リポフェクタミン(Invitrogen,米国)とPLUS試薬(Invitrogen,米国)を使用して、pHBc−GFP、pHBsPH−HBcGFPまたはpΔHBsPH−HBcGFPを前記動物細胞に感染させた。前記形質導入した細胞を48時間培養してタンパク質を生成するようにした。
【0038】
<実施例3>PreS由来のペプチドによるカプシドタンパク質とPreSタンパク質の相互作用の抑制
PreS由来のペプチド(ΔL4bペプチド;配列番号21:RQPTPISPPLRDSHPQAMQWNS;ペブトロン、韓国)が、PreSタンパク質とカプシドタンパク質の相互作用を抑制できることを確認した。
【0039】
pTrx−PreS(Choi KJ等,Biochem Biophys Res Commun,2004年,第319巻,959−66頁)が、形質導入された大腸菌から精製されたチオレドキシンが融合したPreSタンパク質を緩衝溶液−A(50mM sodium phosphate,0.15M NaCl,pH8.0)に10g/mlの濃度で溶解した後、前記混合溶液100μlを96ウェルプレート(CoStar,米国)に入れて、一時間室温でインキュベートして固定化させた。5%(w/v)のスキムミルクを含む緩衝溶液−Aで前記プレートをブロッキングした後、色々な濃度にシリアル希釈したΔL4bペプチドとpHBcAg(Choi KJ等,Biochem Biophys Res Commun,2004年,第319巻,959−66頁)が形質導入された大腸菌から精製されたカプシドタンパク質(最終濃度0.4mM)を添加した。さらに、60分間室温でインキュベートしてPBS−T緩衝溶液(50mM sodium phosphate,0.15M NaCl,pH7.4および0.1%ツイーン20)で6回洗浄した後(300μl/ウェル)、抗−HBcAg抗体(1:2000,Cat.No.K0112162,KOMA biotechnology,韓国)100μlで一時間培養して、HRPが標識された抗ウサギ2次抗体(1:2000,Sigma,米国)で、さらに一時間培養した。前記プレートをPBS−T緩衝溶液で6回洗浄した後、OPD溶液(ペロキシド基質緩衝溶液に1mg/mlの濃度で溶解し;Pierce,米国)100μlを添加して発色反応を遂行した。2.5M硫酸100μlを添加して反応を終了させて、マイクロプレートリーダーSpectra Max340スペクトロメーター(Molecular Devices Corp.,米国)を使用して、490nmで吸光度を測定した。
【0040】
その結果、PreS由来のペプチドが濃度によってカプシドタンパク質とPreSタンパク質の相互作用を抑制することを確認した(図5)。
【0041】
<実施例4>蛍光顕微鏡を使用した細胞イメージング測定
<4−1>相互結合の測定
pHBc−GFP、pHBsPH−HBcGFPまたはpΔHBsPH−HBcGFPで形質導入されたHEK293T細胞が育ったプレートからカバーガラスを回収して、氷冷したPBSで洗浄した後、顕微鏡観察のためのスライドガラスに付けた。蛍光顕微鏡を使用してGFPを観察することができる490±20/528±38nm(励起/放射)波長のフィルターを通じて細胞を観察した。
【0042】
その結果、pHBc−GFPで形質導入した細胞では、GFPの蛍光イメージが細胞質に位置して、pHBsPH−HBcGFPまたはpΔHBsPH−HBcGFPで形質導入した細胞で、GFPの蛍光イメージが細胞膜に位置することを確認した(図4)。また、pΔHBsPH−HBcGFPで形質導入した細胞での蛍光イメージの面積が、pHBsPH−HBcGFPで形質導入した細胞より狭いことを確認した。
【0043】
<4−2>相互結合抑制の測定
pHBc−GFP、pHBsPH−HBcGFPまたはpΔHBsPH−HBcGFPで形質導入したHEK293T細胞の培養期間の間、PreSとカプシド間の相互作用を抑制するPreS由来のペプチド(ΔL4bペプチド;配列番号21)を50μMの濃度で一日の間、60%癒着細胞に処理した。形質導入したHEK293T細胞が育ったプレートからカバーガラスを回収して、氷冷したPBSで洗浄した後、顕微鏡観察のためのスライドガラスに付けた。蛍光顕微鏡を使用して、GFPを観察することができる490±20/528±38nm(励起/放射)波長のフィルターを通じて細胞を観察した。
【0044】
その結果、前記抑制によって細胞内で発現されたGFPの蛍光イメージが、細胞膜ではなく細胞質に位置することを確認した(図6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HBVのカプシドタンパク質ドメインに蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびHBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項2】
前記HBVのカプシドタンパク質ドメインが、配列番号19のアミノ酸配列のHBVのカプシドタンパク質の中でpro配列を除外したドメイン(アミノ酸30−214)であることを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記蛍光タンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)および強化された緑色蛍光タンパク質(EGFP)からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記HBVの表面タンパク質のPreSドメインが、配列番号20のアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記HBVの表面タンパク質のPreSドメインが、配列番号20のアミノ酸の93番アミノ酸〜117番アミノ酸が欠失したドメインであることを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが、PLC−δ(phospholipase C delta)のPH(Pleckstrin homology)ドメイン(Genebank ID:241276、アミノ酸2−175)、EEA1(early endosome antigene1)のFYVE(No full name)ドメイン(Genebank ID:L40157、アミノ酸1352−1410)、ING2(Inhibitor of growth2)のPHD(Prolyl−hydroxylase)ドメイン(Genebank ID:NM_001564、アミノ酸212−261)、タンパク質キナーゼCのC2(calcium/lipid−binding)ドメイン(Genebank ID:NM002737、アミノ酸172−260)およびグアニンヌクレオチド交換因子DBS(Guanine nucleotide exchange factor DBS)のSEC14(S.cerevisiae phosphatidylinositol transfer protein homology)ドメイン(Genenbank ID:AB_116074、アミノ酸90−236)からなる群から選択されたいずれかひとつであることを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記HBVのカプシドタンパク質ドメインに蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質が、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項8】
前記HBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記HBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質が、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項の発現ベクターまたはHBVの表面タンパク質のPreSドメインに細胞膜標的化機能を遂行することができるタンパク質ドメインが連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む第1発現ベクター、および前記融合タンパク質と相互作用するHBVのカプシドタンパク質ドメインに蛍光タンパク質が連結された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む第2発現ベクターが共に形質導入された動物細胞。
【請求項11】
前記動物細胞が、HHEK293T、COS7、HeLaおよびCHO細胞からなる群から選択されたいずれかひとつであることを特徴とする、請求項10に記載の動物細胞。
【請求項12】
1)請求項10または請求項11の形質導入された動物細胞を培養しながら候補物質を処理する工程と、
2)蛍光顕微鏡を使用して、工程1)で発現された蛍光タンパク質の蛍光イメージを撮影する工程、および、
3)蛍光イメージが細胞質に位置するようにする候補物質を選別する工程とを含むHBVの増殖を抑制する物質をスクリーニングする方法。
【請求項13】
請求項10または請求項11の動物細胞を含むHBV増殖を抑制する物質のスクリーニングキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−510812(P2010−510812A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542665(P2009−542665)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006893
【国際公開番号】WO2009/066964
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(304039548)コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (36)
【Fターム(参考)】