説明

細胞内ヌクレオチドアデニリルに基づく細胞数の検知及び計量のためのATP法、特に無ATP菌の決定のための利用及び方法

【解決手段】本発明は、所与の種の試料液中に存在し得る生きた細胞数の検知及び計量のための反応式(1)ルシフェリン+ATP+O2 +Mg2++ルシフェラーゼ→オキシルシフェリン+光子による生物発光の利用に関するもので、本利用は、所与の非ウィルス種の生きた細胞のATPの形で表される細胞内の自由ヌクレオチドアデニリル(AN)の全含有量の測定が、(i) ATPの添加無しと(ii)既知量のATPの添加後とに行われ、前記族の細胞内の自由なATP、ADP及びAMPの総計が、ミオキナーゼ及びピルビル酸キナーゼによって細胞内自由ADP及びAMPがATPに転換した後、関係式(2)[AN]=[ATP]+[ADP]+[AMP]=Cteにより一定であるという点が利用されることが特徴である。また、ATP法による細胞数の検知及び計量の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞数の検知及び計量のための細胞内自由ヌクレオチドアデニリル(AN)をもとにしたATP法の新技術に関する。また、この新技術の利用及び菌、特にATPの全く無い菌の数の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応式
(1)ルシフェリン+ATP+O2 +Mg2++ルシフェラーゼ→オキシルシフェリン+光子
を基礎にしているATP法により、培地のATP含有量を効率的に測定することが可能であることは知られている。ルシフェリン(基質)/ルシフェラーゼ(酵素)が利用される方式が何であれこの反応はATPに特有なものである。これによりATP含有時の生きた細胞と死んだ細胞(無ATP)との区別が可能となる。
【0003】
過去には、同一種の菌の溶解から生まれる細胞内ATP含有量の識別により、前記菌の個体群の検知及び計量(すなわち単位体積当たりの株数)が可能になると(無駄にも)信じられていた。この点では米国特許第6200767号明細書、欧州特許第1333097号明細書、米国特許第6465201号明細書、ステンダー エイチ(Stender H.)等による「微生物学法ジャーナル(Journal of Microbilogical Methods)」,2001年,第46号,P.69−75、リー ジェイ−ワイ(Lee J-Y.)等による「ルミネッセンス(Luminescence)」,2004年,第19号,P.31−36の公表文献を参照されたい。
【特許文献1】米国特許第6200767号明細書
【特許文献2】欧州特許第1333097号明細書
【特許文献3】米国特許第6465201号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの出版物で説明された方法は、同一の集団培養から生じると同時にすべて同一の発達状態にある(すなわち、停止していないと同時に同一のATP全含有量を含む)菌の調査には有効である。これに対して、これらは、実際上、特に自然において遭遇するその他すべての菌、すなわち、特に(i) ATPを含まない菌(これは胞子の形態にあるつまりは停止している菌の場合である)及び(ii)様々な発達状態にあると同時にこの点でATP含有量が全く同一でない菌に対しては有効でない。
【0005】
更に、細胞の同一種又は変種の内部においては、細胞内自由AN全含有量が関係式(2)
(2) [AN]=[ATP]+[ADP]+[AMP]=Cte
を考慮して一定であることが知られている。これについては、一方で、ピルビル酸キナーゼ、ミオキナーゼをそれぞれ用いたAMP、ADPそれぞれのATPへの転換が、他方で、ATPの添加無しで次いで10μlのATPの追加添加後の放出光の(RLU、すなわち、光に関する単位での)測定が提案されているシャンピアット ディー(Champiat D)等による「ルミネッセンス(Luminescence)」,2001年,第16号,P.193−198の論文を参照されたい。
【0006】
シャンピアット ディー(Champiat D)の前記論文に加えて、海水、飲み物の水分、又は食物を元とする水性試料中の微小有機物(特に菌)の感染物質の存在の評価技術が知られている。この技術には、ATPの追加添加が一方では無く、他方で有る、ADP、AMPのATPへの転換が利用されており、ADP及び/又はAMPからATPが放出される微小有機物の存在状態における前述の反応式(1)による放散光(すなわち、光子生成物の増幅を使った測定)の測定のためにルシフェリン+ルシフェラーゼ集合を伴う試験試料との接触が含まれる。前記論文ではこの技術が3つのANのうちの1つが含まれる細胞数の検知及び計量に応用可能である点が説明も示唆もされていない。実は、この論文は、得られる値を細胞内自由AN全含有量に次いで前記細胞内全自由ANを供給した細胞数に相関させ得る点の考慮も、この相関の示唆もせずに、放出光のRLUの測定しか目的としていない。
【0007】
細胞、特に菌類、黴類、微小藻類の数の迅速、効率的なだけでなく、現在推奨されているEIA、RIA、FIA及びPCR法よりも明らかに多大な手間を必要としない検知及び計量を可能にする技術に関するニーズが存在する。
【0008】
このニーズは無ATP微小有機物数又はANの計量を試みたい場合に高まる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、このニーズを満たすために、ATPの形で示される細胞内全自由AN集合を対象とするATP法を利用した新たな技術的解決策の提供が提案される。
【0010】
本発明によりATPを含まないウィルス(事実、ANを持たないウィルスにより感染する細胞のATPが発達に利用される)を除く全細胞に関して前記ニーズが満足され得る。
【0011】
本発明の第1発明によると、試料液中に存在し得る、所与の種の生きた細胞数の検知及び計量のために反応式(1)
(1)ルシフェリン+ATP+O2 +Mg2++ルシフェラーゼ→オキシルシフェリン+光子
による生物発光の利用が提供され、この利用は、所与の非ウィルス種の生きた細胞のATPの形で表される細胞内自由ヌクレオチドアデニリル(AN)の含有量の測定が、(i) ATPの添加無しと(ii)既知量のATPの添加後とに行われて、細胞内自由ADP及びAMPがピルビル酸キナーゼ及びミオキナーゼによりATPに転換した後、前記族の細胞内自由ATP、ADP、及びAMPの総計が関係式(2)
(2) [AN]=[ATP]+[ADP]+[AMP]=Cte
により一定である点が利用されることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2発明によると、所与の非ウィルス種の生きた細胞に関して、細胞内ヌクレオチドアデニリル(AN)の総量が関係式(2)
(2)[AN]=[ATP]+[ADP]+[AMP]=Cte
により一定である点に基づく反応式(1)
(1)ルシフェリン+ATP+O2 +Mg2++ルシフェラーゼ→オキシルシフェリン+光子
による生物発光の方法を通じて試料液(E)中に存在し得る、所与の非ウィルス種の細胞、特に菌の数の検知及び計量のための方法が提供され、以下の連続する段階が含まれる点を特徴とする。すなわち、
(1°)前記試料中に存在し得る細胞外ANの除去後に試料(E)中に存在し得る前記所与の種の細胞の分離及び濃縮
(2°)細胞壁の溶解
(3°)培地に含まれると同時に前記細胞を起源とする細胞内ADP及びAMPのATPへの転換を生じさせる処理
(4°)段階(3°)から生ずる培地への最初は(i) ATP添加無しに、次いで(ii)既知量のATPの添加後のルシフェリン及びルシフェラーゼの導入
(5°)ATPの添加無し及び既知量のATPの添加後の反応式(1)による放出光の増幅信号の測定
(6°)前記細胞から分かる個体群の(1°)から(5°)までの段階の繁殖との比較によるATPの形の細胞内自由全AN含有量の決定
【0013】
本発明の別の発明によると、一方では、ATPの全く無い胞子の形態での菌数計量のための前記方法の利用が、他方では前記方法に用いる定量決定要素が提供される。
【0014】
前記定量決定要素は、ルシオール、添加用ATP、ピルビル酸キナーゼ及びミオキナーゼ等のルシフェラーゼ/ルシフェリンの集合並びに必要に応じてピルビル酸オルトリン酸塩ジキナーゼ及び/又はアデノシンリン酸塩デアミナーゼを含むことを特徴とする。
【0015】
略号
便宜により本発明に使用される略語及び頭字語の一覧表を以下に示す。
ADP:アデノシン二リン酸塩
AMP:アデノシン一リン酸塩
AN:ヌクレオチドアデニリル(別の用語すなわちアデノシンヌクレオチドが使用可能)、ここでは、ATP、ADP及びAMPが含まれるANの集合
ATP:アデノシン三リン酸塩
cAMP:アデノシン一リン酸塩環式化合物
GDP:グアノシン二リン酸塩
GTP:グアノシン三リン酸塩
RLU:光の関連単位
【0016】
水性又は有機性の液体組成である試料(E)は、水性組成である方が都合良いと同時に試験細胞が菌であるのが都合良い。この試料(E)は、水性の液体により、ガス(特に洗浄を通じて)、固体(特に接触、溶解若しくは分散を通じて)又は液体(特に抽出、溶解若しくは乳化を通じて)から採取される。
【0017】
前述の反応式(1)によりオキシルシフェリン、光子、AMP、1種及び/又は複数種のリン酸塩、主としてピロリン酸塩が供給される。この反応は、反応する培地中に放出される細胞内ATPの生存期間が長くない限り生きている物の特徴である。この反応はATPに特有のものであり、最適濃度にあるルシフェリン及びルシフェラーゼ、これらの三物質が存在するようになるとすぐ放出される光子の数はATP量に直接比例する。有機物及び前述の反応する培地内では、細胞外ATPは、再循環により、又は主たる分解により比較的急速に消える。
【0018】
細胞内自由ANとは、細胞内に自由状態で存在するAN、更に正確には細胞形質と理解される。従って、本発明は細胞内にあると同時にDNA又はRNAのレベルで結合される非自由ANには関係しない。
【0019】
ATPは、エネルギー源(機械エネルギー、浸透エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギー、光エネルギー)として、リン酸塩ドナー、ピロリン酸塩ドナー、AMPドナー及びアデノシンドナーを細胞内に介在する。
【0020】
同一種の細胞中のATP含有量は物理的状態に応じて大きく変動し、検知閾値は一般的に103 個の菌数に限られる。本発明によると、ATPが1アトモル(放出光信号の安定化無しで)から0.5 アトモル(前記信号の安定化有りで)まで最上の感度が達成され、これは菌1個の全細胞内自由ANの平均含有量にほぼ相当する。
【0021】
関係式(2)を考慮すると、(i) この生成物の細胞内濃度は比較的低く、なかでも(ii)はるかに前に提案された技術はADPのAMPへ次いでAMPのATPへの転換を意味するので、ここでは、AMPの合成中に介在する前駆物質である自由アデノシン一リン酸塩環式化合物(cAMP)の細胞内含有量は無視され、この点により前記cAMP含有量が減る。
【0022】
本発明によると、酵素(ルシフェラーゼ)、光胞子基質(ルシフェリン)、及び補酵素(ATPの場合に)と共に機能するルシオール(フォチナス・ピラリス)から良く知られた原理が利用される。結果は、光度計(又は輝度計)にRLUで表示され、ATP量に比例するにもかかわらず、これによって試料の本当のATP濃度決定は可能ではない。
【0023】
この問題を改善するために、最初の読み取り(ATPの提供無しで実施)後に、既知量(例えば、102 から10ピコモルまでのATP)の提供が推奨される。しかしながら、前記細胞内のATP含有量は、生理学的状態に応じた急速な「逆転」があって一定に留まらないので、提供される技術では定量的な数量決定が可能ではない。
【0024】
これに対して、所与の種の細胞はすべて同一のAN含有量を示す。本発明によれば、ATPの形で示されるAN含有量が決定されながら、ウィルスの様々な細胞の数の定量的決定の実現が可能になる。
【0025】
有利な方法では、分離及び濃縮に関する本発明の方法の段階(1°)は、
・薄膜の濾過、
・特に、真空かつ雰囲気温度(15〜25℃)下の蒸発・遠心分離、及び/又は
・免疫捕捉
により行われる。
【0026】
免疫捕捉技術は好ましい。この技術により、不動化された抗体によりこの細胞の固定による細胞の濃縮及び純化が可能となる。実用的な方法では、これらの抗体は前記細胞を傷めることなくこの細胞表面の抗原体に向けられ得る。また同様に実用的な方法では、これらの抗体は磁場内における細胞−抗体−球タイプの接合生成物の濃縮及び純化並びに前記接合生成物の回収のための磁気乳液球に不動化される。変型例では、細胞が固定される抗体に結合される非磁気又は非磁化の球により、また、上澄みの移し取りにより細胞の濃縮及び純化が可能となる。また変型例では、濃縮/純化の段階は親和性の柱上で行われ得る。
【0027】
前記接合生成物は、引き続き必要な場合には、抗体にもはや結合されない細胞の濃縮された液体組成を処理するために特に溶離により分離される。必要に応じて、感度が下がる希釈が制限されるよう、生成物のロス無しに数分間で大量の試料の乾燥を可能にする蒸発−遠心分離装置(2,000 〜10,000回転/15分から2,000 〜10,000回転/分までの運転)により前記液体組成を濃縮することが賢明である。屋内温度での蒸気−遠心分離により細胞が含まれる培地の水分の大部分が除去可能となる利点がある。
【0028】
同じく有利な方法では、細胞壁の溶解に関する段階(2°)は、
(i) TrisプラスEDTA、及び/又は、
(ii) DMSO
が含まれる水性緩衝剤の追加、次いで、(a) 細胞を開くためのマイクロ波処理(約1分間)、(b) 急速冷却(特に、冷蔵庫における)、及び必要な場合には、(c) 生ずる液体培地を回収するための遠心分離により段階(1°)から生ずる培地で行われる。
【0029】
溶解は細胞内自由ANへの接近、ADP及びAMPのATPへの転換並びに前記溶解及び/又は前記転換から生じるATPの基質(ルシフェリン)及び酵素(ルシフェラーゼ)との接触が可能となるために必要である。
【0030】
これまで示したように、ADP及びAMPのATPへの転換に関する段階(3°)は、ミオキナーゼ及びピルビル酸キナーゼを用いて行われる。反応機構を以下に示す。
【0031】
【数1】

【0032】
時間が節約されるよう、ADP及びAMPのATPへの転換に関する本発明の方法の段階(3°)は段階(2°)と同時に行われ得る。
【0033】
都合の良い方法では、本発明の方法の段階(4°)はルシオール(フォチナス・ピラリス)のルシフェリン及びルシフェラーゼを使用して行われる。基質及び酵素はルシオールから一緒に抽出され得る。
【0034】
実用的な方法では、少なくとも10分間ほぼ一定値の光子の放出を安定化させる物質の存在状態において反応式(1)により放出される光の測定に関する段階(5°)が行われることが推奨される。このために相応しい物質の中には、以下のものが挙げられる。すなわち、
・前述の反応式(1)の最中に生成され、AMP及びピロリン酸をATPに転換させるピルビル酸オルトリン酸塩ジキナーゼ(PPDK)
・反応する培地に存在し得る残留ADP及び/又はAMPを分解させるアデノシンリン酸塩ジアミナーゼ
【0035】
最初の酵素はほぼ連続してATPを発生させながら安定した信号をもたらす。第2の酵素により、光エネルギー源としてのATPの利用方法が攪乱されずに、ADP及び/又はAMPの残留物の存在による少量の液体からの雑音を小さくすることが可能となる。
【0036】
前記第2の酵素、アデノシンリン酸塩ジアミナーゼは更に都合良いことに、反応する培地内のヌクレオチド残留物の除去のためだけでなく、特に、場合に応じて前述の段階(1°)時に存在する試料に存在する細胞外ヌクレオチド残留物を消滅させながら排除するために利用される。
【0037】
実際には、反応式(1)による光子の放出を安定化させるために、特に段階(5°)におけるPPDKの利用が推奨される。
【0038】
本発明の方法は、特に、(i) 炭疽菌といった胞子形成された菌、及び、(ii)レジオネラ菌、サルモネラ菌、アメーバといったその他の単一細胞有機物の検知及び計量に適用される。
【0039】
本発明のその他の利点及び特徴は実施例に沿った説明を読めば更に良く理解される。勿論、これらの要素は限定的なものではなく、例示として提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(実施例1)
炭疽菌数の計量
計量すべき炭疽菌株が含まれる空気1lを採取して、洗浄により水性試料が得られる。多柱状抗体、不動化された抗(炭疽菌)が含まれる柱状に存在する株の免疫捕捉が行われる。減少した水性緩衝剤の容積にこうして純化されかつ濃縮された炭疽菌株が集められる。更に、室温の真空下での蒸気遠心分離により濃縮される。次に非活性化されるアデノシンリン酸塩ジアミナーゼにより生ずる水性培地中に存在し得るANといったヌクレオチドの残留物が除去される。
【0041】
Tris及びEDTAの添加により炭疽菌の株壁の溶解、次いでマイクロ波による処理が行われる。遠心分離により細胞内ANが含まれる液体培地が集められる。ADP及びAMPをATPに転換させるためにミオキナーゼ及びピルビル酸キナーゼが添加される。ルシオールのルシフェリン及びルシオールのルシフラーゼが光子の放出を安定化させるためのPPDKと一緒に添加される。
【0042】
RLU単位の既知の装置により増加された光子が測定される。2μl のATPが添加されると同時に増加した光子がRLU単位で再測定される。
【0043】
同一操作が炭疽菌の既知量(50株)をもとに繰り返されると同時に開始時の空気1リットルに炭疽菌65株が含まれていたことが測定される。
【0044】
(実施例2)
大便連鎖球菌
大便連鎖球菌に感染したと思われる羊小屋の土壌をもとにして実施例1に示されたものと同様に行われた。
【0045】
土壌に大便連鎖球菌が260 CFU/l 含まれることが観察された。
【0046】
(実施例3)
レジオネラ菌を特定するための手順の開発
I.純粋培養状態の菌に関するNA/細胞相関の入手
A−レジオネラ菌の信号/数の相関強さの作成
目的は培養による計数及び最適操作条件の選択が行われるための細胞当たりの生きたレジオネラ菌・ニューモフィラ菌のANの平均値が得られることにある。
調査パラメータは以下の通り。
温度:室温
緩衝剤の条件:Tris
pH:7.75
溶解条件又は反応容積:100 μl DMSO、次いで、500 μl Tris pH7.75 600 μl 沸騰Tris(マイクロ波3分)、1UIピルビル酸キナーゼ及び1UIアデノシンキナーゼ+PEP(時間10分間)を伴う200 μl 試料
10μl LLの添加剤(ルシオールのルシフェリン/ルシフェラーゼの複合材)
信号の入手時間:10秒間(RLU NA)
10μl ATPの添加(100 ピコモル):10秒間(RLU NA+ATPs)
免疫分離後:最終結果は少なくとも15分間で得られた。
【0047】
B−磁気球に不動化された菌での試験
検討パラメータは以下の通り。
磁気球の性質
捕獲緩衝剤の条件
超微粉での溶解条件
感度の調査
目的
−信号の様々な性質(シリカ、ポリスチレン、磁性流体)の磁気球との干渉評価
−測定(溶離)以前の超微粉のレジオネラ菌からの分離の必要・不必要
【0048】
II.自然条件での菌に関する信号の入手及び最適化
A−試料の少量の液体からの雑音レベルの評価
検討パラメータ
試料の性質
試料内の捕獲条件
超微粉の洗浄条件
感度調査
目的
−試料の性質及び信号の干渉評価 給排温水、空冷循環水、河川水、脱イオン化水
−これらの干渉が取り除かれるための捕獲後の球の洗浄条件の開発
【0049】
B−天然試料での試験及び最適化
B1−濃度
生水の試料が予め濃縮される。(1〜5mlまで還元される容積50mlから1l )
この段階では感度が上がると同時に免疫分離(IMS)手段の節約が可能である。利用される試料は、従って、
−遠心分離を通じて、
−濾過により、
−ApoHを使った磁気分離により、及び/又は、
−シリカ球上の磁気分離により、
濃縮される。
【0050】
レジオネラ菌の場合には、球との結合からレジオネラ菌が放出されると同時に免疫捕獲IMSの最適化が可能であるので好ましいのはこの後者の濃縮技術である。
【0051】
球及びレジオネラ菌複合物の濃縮と回収とは当技術に関する既知の様々な技術により行われ得る。磁気球から放出されるレジオネラ菌は、後に続くように最適化されるIMSの手順を受けるために懸濁状態で放出される。
【0052】
B2−1ml中での捕獲後の手順の最適化
捕獲中に介在するパラメータは以下の通り。
−捕獲抗体:抗Lp1〜14、又は、抗Lp1
−IMS緩衝剤
−球表面における抗体状態の負荷
−球容積
−捕獲後の洗浄回数
−培養時間
【0053】
B3−1から5mlの容積による捕獲手順の適用
1mlの容積に関して最適化された手順が1から5mlまで増加する容積に適用される。
【0054】
得られた捕獲の効率に応じて球容積又は培養時間といったパラメータ類は開発が必要である。
【0055】
B4−定量化
−測定された免疫捕獲の段階が終わると、球が(磁力により)レジオネラニューモフィラ菌(死んでいるか又は生きている)とともに回収される。
−球は、30秒間攪拌され、次いでpH7.75のTris緩衝剤500μl が100 μl のDMSOに再添加され、マイクロ波で1から2分間沸騰される緩衝剤Tris EDTA600 μl である溶解液中に置かれる。
−冷却後、必要であれば、AMP及びADPをATPに転換させる酵素、1〜3UIの割合のPK及びAK、緩衝剤Tris(Mg及びK)の塩、フォスフォエノールピルビル酸塩が含まれる溶液10μl が再添加される。
−屋内温度(15〜25℃)で5分から10分間培養される。
−200 μl /チューブの割合で3チューブに分割される。
−ルシフェリン及びルシフェラーゼの複合剤(「Ste Controlife」)10μl
−光度計内へチューブが導入される。
−10秒間RLU=RLU NAが一体化される。
−直後に、ATP標準溶液10μl (10〜100 ピコモル)が直後に注入される。
−10秒間RLU=RLU NA+ATPsが一体化される。
−試料内のATP等価のピコモルのNA数量がこうして算定される。
−既知のAN/レジオネラ菌の濃度を使って生きているレジオネラ菌の数量(ATP分子量は551 である)が算定される。
【0056】
採取から最終結果までの操作継続時間は生きたレジオネラ菌10個の検知に関して60分を越えない。
【0057】
III.レジオネラ菌又は腸管出血性大腸菌と等価状態となったバイオマスの全体測定
これは迅速かつ経済的にスクリーニングすることを可能にする前述の実施例から派生する方法の問題である。つまり、例えば、
(a) 1回の空気冷却により1000レジオネラ菌/l 以上が提供されるかどうかの検査が望まれる。
・シリカの入った磁気球によりレジオネラ菌が濃縮される。
・球は100 μl のDMSO内に直接投入されると同時に定量決定が前述のように行われる。
・得られる値が1,000 個のレジオネラ菌と等価未満である場合には、個別の数量算出(時間と費用の節約)及び処置は必要としない。
・例えば、1,500 個レジオネラ菌等価菌が処置閾値として設定可能である。
【0058】
(b) 100 個未満の腸管出血性大腸菌の水浴水の場合に検査が望まれる。
・この場合には、既に有利であって、複数の微小有機物とともにその反応能力を更に高めるだけでなく、医療診断分野でこれが尚更貴重なものになるという特徴が示される蛋白ApoHを用いた磁気球による濃縮が好ましい。この蛋白は感染状態、つまり、繁殖の最中の病原菌だけを識別する。
・発達具合は前述のものと同様となる。
【0059】
全体的には、この発達具合は個々の数量算出と一致しない。しかしながら、この発達により操作継続時間及び費用の削減という利点がもたらされる。ここで興味がそそられる点は1個の細胞と等価な測定がもたらされるということである。
【0060】
(実施例4)
ANと細胞との相関
実施例3で作成された手順により、Arthrobacter NS48株を用いて、菌個体数が開始時に5×106 個細胞/ml及び3.5 ×108 個細胞/mlであるこの株の培養持続時間に応じたAN/細胞関係の発達が調査された。
【0061】
得られた結果は、NaClが存在しない場合(曲線1)及びNaClが7%(p/v)存在する場合(曲線2)における数時間の培養継続時間(横軸)に応じた菌細胞当たりのANのフェントグラム(1fg=10-15g)(縦軸)を示した図1に記録された。ANの変動値は曲線1及び曲線2間の細胞当たり2.2 から2.5 fgである点が認められる。これらの二曲線は実用上等しくかつほぼ平行である。
【0062】
(実施例5)
ATP/細胞及びAN/細胞の関係の相関
実施例3で作成された前記手順によると、ATP/細胞間の関係(ATPの含有量は時間につれて変動し得るもので、所与の菌種に関するAN全含有量だけの間の相関付けが前述の方程式(2)を考慮して一定である)が示された。
【0063】
得られた静的結果は続く表1に記録されている。これらによりATP/細胞関係に関するよりもAN/細胞関係の値に関する方がより良好な相関があることが明らかである。この相関は細胞及びその環境の生理学的状態がどんなものであってもANの場合には一定である。計算図表が作られる必要はなく、最初の近似でAN及び数多くの要望される有機物の培養後に得られる平均値のAN/細胞関係について考慮することで十分である。
【0064】
例えば、腸管出血性大腸菌に関する平均値は、同じ期間内にATPの含有量は0.1 から1.5 fg/細胞まで変動するが、増殖段階がどんなものであれNa/細胞で5.27fgである。
【0065】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】ANと細胞との相関を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液中に存在し得る、所与の種の生きた細胞数の検知及び計量のための、反応式(1)
(1)ルシフェリン+ATP+O2 +Mg2++ルシフェラーゼ→オキシルシフェリン+光子
による生物発光の利用において、
所与の非ウィルス種の生きた細胞の、ATPの形で表される細胞内自由ヌクレオチドアデニリル(AN)の全含有量の測定が、(i) ATPの添加無しで次いで(ii) 既知量のATPの添加後に行われ、前記族の細胞内自由ATP、ADP及びAMPの総量が、ミオキナーゼ及びピルビル酸キナーゼにより細胞内自由ADP及びAMPがATPに転換した後、関係式(2)
(2)[AN]=[ATP]+[ADP]+[AMP]=Cte
により一定である点が利用されることを特徴とする利用。
【請求項2】
所与の非ウィルス種の生きた細胞について、細胞内ヌクレオチドアデニリル(AN)の全含有量が関係式(2)
(2)[AN]=[ATP]+[ADP]+[AMP]=Cte
により一定であるという点に基づく、反応式(1)
(1)ルシフェリン+ATP+O2 +Mg2++ルシフェラーゼ→オキシルシフェリン+光子
による生物発光に関する方法による、所与の非ウィルス種の試料液(E)中に存在し得る細胞、特に菌の検知及び計量の方法において、
(1°)試料に含まれ得る細胞外ANの除去後の試料液(E)中に存在し得る、所与の種の細胞の分離及び濃縮、
(2°)細胞壁の溶解、
(3°)培地液に含まれる細胞内ADP及びAMPのATPへの転換のための前記培地液の処理、
(4°)段階(3°)から生ずる培地へのルシフェラーゼ及びルシフェリンの最初に(i) ATPの添加無しで次いで(ii) 既知量のATPの添加後の導入、
(5°)まずはATP添加無しで次いで既知量のATPの添加後の反応式(1)により放出される光の増幅信号の測定、及び
(6°)(1°)から(5°)までの段階の繁殖量と前記細胞の既知個体群量との比較によるATPの形の細胞内自由AN全含有量の決定、
からなる連続した段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
分離及び濃縮の段階(1°)が薄膜濾過、特に真空下及び/又は免疫捕獲下の蒸発・遠心分離により行われることを特徴とする特に菌(B)の数量検知に適用される請求項2記載の方法。
【請求項4】
細胞壁の溶解の段階(2°)が
(i) TrisプラスEDTA及び/又は
(ii)DMSO
が含まれる水性緩衝剤の追加、次いで(a) 細胞を開くためのマイクロ波処理、(b) 急速冷却、そして必要ならば、(c) 生ずる培地液の回収のための遠心分離により段階(1°)から生ずる培地中で行われることを特徴とする特に菌(B)の数量検知に適用される請求項2記載の方法。
【請求項5】
ADP及びAMPのATPへの転換の段階(3°)がミオキナーゼ及びピルビル酸キナーゼを用いて行われることを特徴とする特に菌(B)の数量検知に適用される請求項2記載の方法。
【請求項6】
段階(3°)が段階(2°)と同時に行われることを特徴とする特に菌(B)の数量検知に適用される請求項2記載の方法。
【請求項7】
段階(4°)がルシオールのルシフェラーゼ及びルシフェリン(フォチナス・ピラリス)により行われることを特徴とする特に菌(B)の数量検知に適用される請求項2記載の方法。
【請求項8】
反応式(1)により放出される光の測定の段階(5°)が少なくとも10分間ほぼ一定値の光子放出を安定化する物質が存在して行われることを特徴とする特に菌(B)の数量検知に適用される請求項2記載の方法。
【請求項9】
段階(6°)が、前記細胞群から既知の複数個体群数及びそれらのATPの形で表される細胞内自由ANの全含有量から作成される計算図表方式との比較により行われることを特徴とする特に菌(B)の数量検知に適用される請求項2記載の方法。
【請求項10】
感度閾値が0.5 から1アトモルのATPであることを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
胞子の形態での菌数を算出する請求項2乃至請求項10のいずれかに記載の方法の利用。
【請求項12】
ルシオール、添加用ATP、ミオキナーゼ、 ピルビル酸キナーゼ、及び必要に応じてピルビル酸オルトリン酸塩ジキナーゼ、ルシフェラーゼ/ルシフェリン混合物を含むことを特徴とする請求項2乃至請求項10のいずれかに記載の方法に用いる定量決定要素。

【図1】
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【公表番号】特表2008−516625(P2008−516625A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537333(P2007−537333)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002595
【国際公開番号】WO2006/042968
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507130440)テストライフ テクノロジーズ (2)
【Fターム(参考)】