説明

細胞内修飾の分析

タンパク質の細胞内での状態およびタンパク質修飾を測定するための改善された方法を、酵素断片相補性複合体および標的タンパク質のメンバーからなる代用融合タンパク質を導入することによって提供する。代用融合タンパク質を形質転換された細胞を、環境の変化(たとえば候補薬剤)にさらした後に、細胞を溶解し、好都合にはゲル電気泳動法によって溶解物を分画またはバンドへと分離し、そしてウエスタンブロット法によってタンパク質をメンブレンへとトランスファーする。メンブレン上のバンドを、もう一方の酵素断片相補性複合体および検出可能なシグナルを発する基質を用いて発色させる。本方法は、高い感度を有することと、標的タンパク質の修飾を観察する能力があることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年6月30日に出願された米国仮出願第60/584,709号の優先権を主張しており、その全体は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列リストの参照
出願人は、配列リストの紙媒体のコピーは、添付のコンピュータ・ディスク上でコンピュータに読み取り可能な配列リストと同一であることを主張する。出願人は、参照することにより配列リストの内容の全体を組み込む。
【0003】
本発明の分野は、プロテオミクスアッセイである。
【背景技術】
【0004】
細胞内経路、微生物と哺乳動物との相互作用、原核生物および真核生物両者の成長および発達などについてより多くのことが知られるにつれて、この様な多様なプロセスに関与するタンパク質のメンバーを同定する改良された手法の必要性が高まっている。また、タンパク質とその機能が同定されるに従い、病的状態に関連するタンパク質の活性を調節できるということに対する関心が高まってきている。活性を調節する活性化合物をスクリーニングすることによって、標的タンパク質に対する該化合物の効果を同定するだけでなく、細胞内や媒質に存在する他のタンパク質に対して該化合物が与える任意の効果を同定することに対しても関心が高まる。
【0005】
質量、質量電荷比、立体構造などの違いを基に複合体混合物の構成要素を分離する方法は多数ある。ゲル電気泳動法はタンパク質の混合物を解析する主要な方法として機能してきた。天然のタンパク質および変性タンパク質はその移動度によって直ちに分離されるが、移動度は多くの場合その分子量に関連する。分離されたタンパク質のバンドを同定するために数多くの技術が開発されてきた。ウエスタンブロット法はタンパク質を同定するために開発された。ウエスタンブロット法の一過程では、タンパク質をゲル中で電気泳動により分離し、続いてタンパク質のバンドをメンブレンへ転写する。次いでこれらのバンドを、標識抗体や非特異タンパク質色素などの様々な技術によって現像する。他にも分離法として、例えばHPLC、FPLCなどのクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法がある。
【0006】
ウエスタンブロット法は、混合物中のタンパク質を同定するための多くの望ましい特性を持つ。しかしながら、溶解物やこれに相当する混合物を扱う2Dプロトコルをもってしても、タンパク質のオーバーラップ、少量の構成要素を検出する困難、不正確な分離、タンパク質修飾の検出不能などの問題が起こりうる。
【0007】
今日、細胞内でのタンパク質の一生に関する多くの特徴、とりわけ環境の変化(例えば薬剤としての候補化合物)に対する特徴を測定することに対する関心が高い。タンパク質は、部分的または完全な分解、糖鎖付加、ユビキチン化、リン酸化または脱リン酸化、アセチル化、アシル化、プレニル化などの多数の修飾を受ける可能性がある。同じタンパク質に異なる特徴が存在することを認識できることが、経路を理解するにあたって重要である。すなわち、例えば親タンパク質および修飾タンパク質の、主要な状態および主要でない状態を同定することによって、候補化合物の効果を分析することができる。また、タンパク質の類似体や部分的な分解産物のバリエーションにおけるパターンを観察する能力があれば、細胞内経路および他のタンパク質との相互作用を同定することができる。
【0008】
従って、細胞内タンパク質や、細胞環境の変化がタンパク質に及ぼす影響について効率的に研究することを可能にする技術であって、類似の移動能を持つ他のタンパク質が多量に存在する中で、低濃度で存在する関心タンパク質を検出することが可能な技術を開発することに対する関心はかなり高い。
【0009】
関連文献
米国特許第6,680,208号、第6,677,128号およびWO94/29725は、様々なウエスタンブロット技術について記載している。PCT/US02/27497は、細胞内での融合タンパク質の状態を測定するための、酵素断片化複合体を利用した融合タンパク質の使用について記載している。
【発明の開示】
【0010】
細胞内タンパク質の運命は、酵素断片相補(enzyme fragment complementation ”EFC”)対の一方のメンバーであるフラグメントと融合した1つまたは複数の関心タンパク質を発現する、遺伝的に修飾を受けた細胞を使用することで測定される。細胞の溶解物は、好都合にはウエスタンブロット法を利用することによって分離され、そして分画またはバンドは、EFC対のもう一方のメンバーおよび基質を用いることによって現像される。観察される分画またはバンドは、融合したフラグメントを含むタンパク質に限定され、フラグメントを保持する任意の形態の関心タンパク質を検出することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
酵素断片相補(”EFC”)対を用いることによって細胞内タンパク質の状態を測定するための方法および組成物を提供する。EFC対の一方のメンバーおよび関心タンパク質から構成される融合タンパク質を含む、遺伝的に修飾を受けた細胞を利用する。 細胞を溶解し、異なるタンパク質構成要素のフラグメントが、EFC対の一方のメンバーを保持することを可能にするような任意の分離法を用いて、タンパク質構成要素を分離する。ゲル電気泳動法とウエスタンブロット法は、他の分離法や単離法に比べて、適用範囲が広く有利であることが分かってきた。好都合にはウエスタンブロット法を用いて、融合タンパク質、修飾された融合タンパク質、およびフラグメントを含む分解産物から成るバンドを同定し、EFC対の他方のメンバーとその酵素の基質を使用してメンブレン上で発色させる。
【0012】
主題となっている方法は、細胞経路について解析することと、関心タンパク質を含む細胞経路に対して環境の変化が及ぼす影響を評価することに関して、とりわけ関心を持っている。主題となっている方法は、環境の変化が及ぼす影響を評価する際にとりわけ有効であり、例えば、特定の標的に対する候補薬剤を評価したり、特定の標的以外のタンパク質への影響を評価したりする際に有効である。本方法は、研究、ハイスループットスクリーニング、臨床研究、ADMEなどに応用可能であることが分かっている。
【0013】
主題となっているシステムは、細胞内イベントを究明するために代用融合タンパク質を用いるが、代用タンパク質は関心タンパク質の指標として機能する。本システムは、例えば関心タンパク質の状態などといった細胞内イベントを究明するために、様々な方法および化合物を用いる。融合タンパク質を発現させるために、遺伝子コンストラクトを標的細胞に導入するための、遺伝子発現コンストラクトを提供する。本方法はEFC対の使用に依存しており、融合タンパク質またはそのフラグメントをEFCの相補的なメンバーと結合させることによって、ホロ酵素が形成される。
【0014】
種々の分画を同時に観察したりそれらの強度を比較したりできるという点でゲル電気泳動法とウエスタンブロット法は利便性が高いため、ウエスタンブロット法は好適な検出システムである。ウエスタンブロット法のメンブレンでは、添加した試薬の濃度を比較可能にするために、融合タンパク質およびそのフラグメントに対して必要な試薬を同時に添加することが可能である。さらに、ネイティブのタンパク質と融合タンパク質またはそのフラグメントとを比較するために、抗体検出を用いることも可能である。従って、ゲル電気泳動法は他の分離法や単離法のパラグラムであると言えるだろう。
【0015】
本発明で使用するように、EFC対が酵素供与体(”ED”)および酵素受容体(“EA”)とから成ることを強調する時には、ゲル電気泳動法とウエスタンブロット法をイースタン(EAstern)システムと呼ぶ。EDとEAが複合体を形成すると活性化物あるいはホロ酵素ができる。(1)融合タンパク質の発現、または(2)EDの移動度の変化を伴う融合タンパク質の修飾、を結果としてもたらすイベントを、細胞内の融合タンパク質に何らかの変化が起こったことを示す指標として測定することができる。
【0016】
どんなに小さなEDであっても、検出目的でEAと共に用いることができ、アッセイの条件下では安定である。たいていβ‐ガラクトシダーゼのEDが用いられるが、他にもRNaseなどから得られるS−ペプチドなどの他のEDも有用である。一般にEDは少なくとも35個、最大で100個のアミノ酸からなり、一般には36個〜90個の範囲であり、好ましくは約75個未満のアミノ酸からなる。
【0017】
いくつかの例では、標的タンパク質の一部分があれば十分なため、標的タンパク質全部が必ずしも必要ではない可能性がある。多くの場合、タンパク質の少なくとも約25%の連続したアミノ酸を用いる。生理的活性を持つ、より小さなフラグメントへとタンパク質が処理されているようないくつかの例では、そのより小さなフラグメントのみをコードしてもよい。他の例では、タンパク質の機能的な部分、例えばレセプターの細胞内部分だけを使用するためにタンパク質の一部を切り取ってもよい。
【0018】
評価すべき何らかの環境の変化を引き起こした後には、細胞を溶解し、その構成要素を一次元または二次元電気泳動法を用いて分離し、続いてウエスタンブロット法を行う。ウエスタンブロット法のバンドにEAおよび検出可能な基質を接触させ、基質の酵素反応の結果として生じるシグナルから、酵素活性を測定する。産生された酵素産物の量はEAに結合する際のEDの活性に相関する。メンブレン上で異なる位置にバンドが存在することは、細胞内の融合タンパク質が変化したことを示唆する。例えば候補薬剤を加えるなどによって環境を変化させた場合には、その変化は薬剤の存在に関連する可能性がある。酵素活性は、融合タンパク質の分解、関心タンパク質と複合体を形成する化合物と融合タンパク質との結合、融合タンパク質の修飾などに影響される。融合タンパク質の状態は様々な細胞経路の活動レベルに関連するが、測定しているタンパク質代用物は経路と関係する。この様に、経路の活性化または抑制を測定することができるが、経路の状態におけるこうした変化が、融合タンパク質の活性および/または性質を変化させる。
【0019】
ゲル電気泳動法では、タンパク質の天然の性質を維持することもできるし、ドデシル硫酸ナトリウム(”SDS”)を用いてタンパク質を変性することもできる。前者の場合、移動度はサイズおよび電荷のみに依存するのではなく、例えば融合タンパク質と他のタンパク質との複合体形成のように、立体構造や他のタンパク質との相互作用にもある程度依存する。対照的に、SDS存在下で分離を行うと、ほとんどのタンパク質は同じ質量電荷比を持ち、主としてサイズをもとに分離される。解析により得たいと思う情報次第で、どちらの技術を用いてもよい。
【0020】
タンパク質の移動度はサイズと電荷に依存するため、サイズおよび電荷のうち一方あるいは両方に変化が起こるとタンパク質の移動度は変化する。このようにして、分解、複合体形成、抱合体形成(例えばグルコシル化、ユビキチン化、プレニル化、イソアミド形成(isoamide formation)など)によるサイズの変化、リン酸化または脱リン酸化、同様に硫酸化、アミド化(amidification)、アシル化などの結果として生じる電荷の変化、または基が除去されるような正反対の変化をモニターすることができる。もしもバンドの性質が未知の場合にはバンドを解析することが可能であるし、既知の場合には、既知のタンパク質と比較することによって、タンパク質の様々な変化を容易に測定することができる。
【0021】
タンパク質の移動度の変化は、サイズの変化をもたらす数々のプロセスのうちのいくつかの結果として生じる可能性がある。こうした変化のうちのいくつかは、EAと活性複合体を形成する際のED活性の変化をももたらしうる。ポリユビキチン化を用いた分解のプロセスにおいては、プロテアソームによる分解に先立って一連のタンパク質産物が形成される。主題となっている方法によって、これらのユビキチン化された産物の解析と、これらの産物のそれぞれの量を推定することが可能となる。このようにして、分解のプロセスおよびその進行の様子を知ることができる。代わりに、融合タンパク質に代表されるような関心タンパク質と他のタンパク質との間の複合体形成、融合タンパク質の修飾、融合タンパク質の部分的な分解などの結果として、移動度および活性は修飾を受ける可能性がある。
【0022】
例えばクロマトグラフィーなどの、サイズおよび/または電荷による他の分離法を用いることもできる。クロマトグラフィーのカラムから個々の分画を採取し、必要な試薬を加えることで、存在するEDのいくつかを測定することができる。個々の分画に、カラム中での既知の移動度がない場合には、EDを含む構成要素を解析してよい。移動度が既知の場合には、分画中の構成要素の量と特定の形態の融合タンパク質とを直接関連付けることができる。カラムのパッキングおよび分画の溶出に関しては、FPLCの使用が良く確立されている。
【0023】
細胞を溶解し、ウエスタンブロット用にゲル電気泳動法によりタンパク質を分離した後、従来の手順に従ってタンパク質のバンドをメンブレンに転写する。転写を行うためには様々なバッファーの利用が可能であり、バンドを受け取るために様々なメンブレンを使ってもよい。従来のメンブレンには、ニトロセルロース、ナイロン、及びPVDF製のメンブレンがある。関心タンパク質の性質やアッセイへの影響により、選択される特定のメンブレンは変化しうる。バンドは、ゲルからメンブレンへと互いの位置関係を保ったまま転写される。転写が完了したら、EA及び形成可能な酵素複合体を含む適切なアッセイバッファー中にメンブレンを入れる。
【0024】
バッファーは複合体形成およびアッセイに関して従来型であり、一般には、従来型のバッファー(例えば、PIPES, MOPS, HEPESなど)を、約50〜250mMの範囲の濃度、NaClを約250〜500mMの範囲、金属キレート剤(例えばEGTA)を約2〜20mM、非イオン型界面活性剤(例えばTween)を5〜25mMマグネシウム塩、および安定剤(例えばアジ化ナトリウム)を約10〜20mMの範囲の濃度で含む。pHは約6.5〜7.5の範囲となるであろう。従来型のバッファーの組成は以下の通りである:すなわち、100mM PIPES, 400mM NaCl, 10mM EGTA, 0.005% Tween, 150mM NaOH, 10mM Mgアセテート, 14.6mM NaN3, pH6.9。EAとのインキュベーションに続いて、基質を加えるが、商品として入手可能な便利な蛍光及び化学発光性基質は数多く存在する。検出可能な産物が形成されるのに十分な時間を置いたのち、バンドの位置は視覚化され、解析可能になる。
【0025】
アッセイの感度は、1つのタンパク質バンドにつき少なくとも約0.1ng又はそれ以下であり、0.09ngのバンドも観測されている。このように、極少量の修飾タンパク質を検出することも可能であるし、同様に極少量の融合タンパク質を検出することも可能である。融合タンパク質が様々な修飾、例えばポリユビキチン化、ポリリン酸化、または脱リン酸化などを受ける場合には、融合タンパク質の異なる形態を観察し、それぞれの実物の量を測定する機会を得られる。
【0026】
融合タンパク質の遺伝子発現コンストラクトは、挿入しようとする遺伝子が天然のタンパク質の代用物として役立つ生物学的活性を有する融合タンパク質を生じるかどうかを決定するために、最初に使用される可能性がある。融合タンパク質が代用物として機能することが一旦示されれば、次に関心を持っている条件下でタンパク質を解析する際にこのコンストラクトを用いることができる。
【0027】
主題となっている発明の最初のコンポーネントは融合タンパク質とその発現コンストラクトである。EDは融合タンパク質のC末端、N末端、あるいは内部のいずれにあってもよい。融合タンパク質内におけるEDの特定の部位は、関心タンパク質の天然の活性を有意に減少させることなくコードシークエンス中にEDを含む能力、タンパク質修飾にその部位が及ぼす影響、分解の性質、及びEDがEAと複合体を形成し活性酵素をつくる能力に依存する。従って、関心タンパク質、その構造、他のエンティティへの結合部位、ループ構造、βシートおよびαへリックスに関する折りたたみのパターン、ED活性が調節される様式(例えば分解、EAとの結合の他のエンティティによる立体的な干渉、立体構造や電荷に変化を及ぼす修飾など)についてどの程度分かっているかかに依存して、EDが最適な応答を提供する位置に位置するであろう。分解に関しては、EDがどの部位に位置するかは重要である可能性も重要でない可能性もあり、このことは、融合タンパク質が天然の立体構造および分解感受性を保持する限りは、立体干渉に関わる多くのケースにおいても正しい。しかしながら、例えばリン酸化や脱リン酸化、成熟過程のタンパク質分解的切断などの、局所的な修飾においては、たいていは調節に影響を与えないような位置にEDを有することが望ましい。タンパク質の構造を知ることによって、EDの挿入部位を決定するために、ループ、αへリックス、βシート、結合部位などを選択することができる。
【0028】
様々な方法でEDをコード領域に挿入することができる。cDNA遺伝子においては、塩基配列を挿入するのに適切な制限酵素認識部位を選ぶことができ、制限酵素認識部位の塩基突出(オーバーハング)を利用することで、正確な向きの方向性が提供される。あるいは、標的遺伝子と相同な配列を持つコンストラクトを用いて相同組み換えを起こすことが可能であり、このコンストラクト中では標的遺伝子の隣に位置する相同配列がEDによって分離される。cDNA遺伝子を持つ酵母菌中でプラスミドを用いることによって、適切な転写制御領域と転写制御領域を持つ場合でも持たない場合でも、EDコンストラクトをcDNA遺伝子の適切な部位に直ちに挿入することが可能である。あるいは、EDコード領域を、関心タンパク質をコードする遺伝子のイントロンまたはエキソン内の、適切なスプライシング部位に挿入してもよい。この様にして、タンパク質内の任意の部位で導入部位を選択することができる。いくつかのケースでは、EDがイントロン中に導入されている多数のコンストラクトをつくり、結果として生じたタンパク質について、ED活性およびタンパク質機能の保持について検査するのも有用であろう。コード配列を遺伝子に挿入する他の様々な従来の方法を用いてもよい。発現コンストラクト及び他の従来の操作処理についての記述は、例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (以下、「Sambrook氏ら、1989年」と称する); "DNA Cloning: A Practical Approach," Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985); "Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait ed. 1984); "Nucleic Acid Hybridization" [B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1985)]; "Transcription And Translation" [B. D. Hames & S. J. Higgins, eds. (1984) ]; "Animal Cell Culture" [R. I. Freshney, ed. (1986)]; "Immobilized Cells And Enzymes" [IRL Press, (1986)]; B. Perbal, "A Practical Guide To Molecular Cloning" (1984)を参照されたい。
【0029】
融合タンパク質をコードする遺伝子は発現コンストラクトの一部分となるであろう。この遺伝子は、宿主細胞中で機能する転写制御領域および翻訳制御領域の下流に配置される。制御領域はエンハンサを含みうるが、このことによって、融合タンパク質が発現される細胞の種類を制限したり、発現のための特別な条件を必要としたり、関心タンパク質と共に自然に発現したりするなどの利点がもたらされうる。多くの例では、融合タンパク質が天然の遺伝子に置き換わる場合、特に融合タンパク質が天然のタンパク質として機能する場合には、制御領域を関心タンパク質をコードする遺伝子の天然の制御領域としてよいのであって、天然のタンパク質に加えて、宿主細胞のゲノム中に組み込まれるか、組み込まれないか(例えば染色体外の要素上に存在する)のいずれかであればよい。
【0030】
アッセイの開発の最初の段階では、融合タンパク質の一部としてセカンドマーカーを有することを希望するかもしれない。セカンドマーカーは、EDとは独立に検出を可能とするのなら、どんなマーカーであってもよい。このようなマーカーには、ニッケル試薬で検出できるポリヒスチジンなどの、標識化された抗体によって認識される抗原性エピトープが含まれる。
【0031】
天然のタンパク質が存在し発現する細胞の中では、融合タンパク質は発現に関する転写因子について天然のタンパク質と競合するだろう。染色体外の要素内あるいは染色体内における遺伝子の部位は、転写レベルに応じて変化しうる。従って、多くの例では、転写開始領域を宿主細胞中で機能するように選ぶが、天然の転写制御領域と有意に競合しないウイルスや他のソースから選んでもよいし、あるいは、関心タンパク質の遺伝子とは異なる遺伝子、すなわち融合タンパク質の転写を有意に妨害しない遺伝子と関連していてもよい。
【0032】
発現コンストラクトを組み込む位置は転写の効率に影響を与え、故に融合タンパク質の発現に影響を与えることを理解すべきである。転写速度の速い細胞を選ぶことで発現の効率を最適な状態にしてもよいし、増幅させることが可能で、発現コンストラクトを共増幅する遺伝子(例えばメトトレキセート存在下でのDHFR)に発現コンストラクトを結合させることによって、発現コンストラクトを修飾することもできるし、あるいは組み込んだ部位において効率的な転写がおこることを保証するために相同組み換えを用いてもよい。このようにして、自然に生じるタンパク質の発現を圧倒するので、融合タンパク質が標的タンパク質の機能および細胞内修飾に対する主要な決定因子となる。例えばCre-Loxなどの挿入要素を効率的な転写部位に挿入することによって、発現コンストラクトを同じ部位に導くことができる。いずれにしても、たいていは、予め決められた環境での細胞に由来する酵素活性と、評価中の環境での細胞に由来する酵素活性とを比較する。自然に生じるタンパク質がなお保持される場合もあるが、これは、自然に生じる蛋白質の修飾を融合タンパク質と比較するための標識抗体を用いることで解析可能である。
【0033】
分析の目的に依存して、試験管内であっても生体内であっても、 本質的に同質な細胞組成を分析したり異質な細胞組成を分析したりする場合がある。すなわち、融合タンパク質を含まない細胞と融合タンパク質を含む細胞の混合物を得ることがありうる。上記に示したように、自然に生じる標的タンパク質の修飾を融合タンパク質と比較して分析したいと願うかもしれない。融合タンパク質の、自然に生じるタンパク質に対する影響との関連性を一旦確立してしまえば、比較を繰り返す必要はない。
【0034】
市販されている使用可能な転写制御領域はたくさんあり、一般には、特別な選択をすることが主題となっている発明の成功にとって不可欠であるというわけではない。また、融合遺伝子コンストラクトを宿主細胞に導入する方法は、融合遺伝子の使用目的によって変化するだろう。コンストラクトの導入は、in vitroでもin vivoでも行うことが可能であり、培地中で形質転換された細胞を次に宿主の哺乳動物に導入するという状況をも含むであろう。転写制御領域は、構成的であるか誘導的でありうる。前者の場合、宿主中で定常状態の濃度の融合タンパク質を有することができるが、後者の場合、実質的に全く存在しない状態(漏出の可能性がある)に始まり定常状態に達するまでの、逓増的な量の融合タンパク質を提供することができる。誘導的転写の場合、融合タンパク質が存在しない状態から、定常状態の濃度の融合タンパク質存在するまで、細胞を循環することができる。
【0035】
コンストラクト導入用ベクターには、弱毒化DNAウイルス又は欠損性DNAウイルスが含まれ、例として単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)などが挙げられるがこれらに限定されない。欠損性ウイルスは、適切にパックされており、ウイルス遺伝子の全域あるいはほぼ全域を欠損しているものが好ましい。欠損性ウイルスは、細胞に導入後は非感染性である。欠損性ウイルスベクターを使用すれば、とりわけ特定の細胞型に親和性がある場合には、ベクターが他の細胞に感染するという心配なく、細胞内の特定の局所的な領域に投与することが可能となる。従って、特定の遺伝子座をベクターを用いて明確に標的にできる。具体的なウイルスベクターには、欠損性ヘルペスウイルス1(HSV1) ベクター (Kaplitt et al., 1991, Molec. Cell. Neurosci. 2:320-330);例えばStratford-Perricaudet氏らによって記載されたベクター(1992, J. Clin. Invest. 90:626-630)などの弱毒化アデノウイルスベクター;欠損性アデノ随伴ウイルスベクター(Samulski et al., 1987, J. Virol. 61:3096-3101;Samulski et al., 1989, J. Virol. 63:3822-3828) が含まれる。
【0036】
ベクターはin vitroおよび in vivoでリポフェクション法によって導入することができる。過去10年でカプセル化やin vitroでの核酸のトランスフェクションのためリポソームの使用が増加してきた。in vivoでのトランスフェクションのためのリポソームを調整するために、リポソームを介するトランスフェクションに伴う困難および危険を制限するために設計された合成カチオン性脂質を用いることができる (Felgner, et. al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413-7417;Mackey, et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:8027-8031を参照されたい)。カチオン性脂質を使用することで、負に帯電した核酸のカプセル化が促進され、負に帯電した細胞膜との融合も促進される可能性がある (Felgner and Ringold, 1989, Science 337:387-388)。in vivoでの神経系へのリポフェクション法が近年達成された。(Holt, et. al., 1990, Neuron 4:203-214)。外因性遺伝子をin vivoにおいて神経系へ導入するためにリポフェクション法を用いるのは、一定の実用上の利点がある。ターゲッティングを目的として脂質を他の分子へ化学的に結合させることも可能である (Mackey, et. Al., 1988(前掲)を参照されたい)。標的ペプチドまたは非ペプチド分子をリポソームに化学的に結合させることができる。
【0037】
リン酸カルシウム沈殿法もしくは他の周知の作用物質を用いて、ベクターをin vitroおよびin vivoでネイキッドプラスミドDNAとして導入することも可能である。あるいは、DNAベクタートランスポータを介して、融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターを導入することができる (例えば、Wu et al., 1992, J. Biol. Chem. 267:963-967;Wu and Wu, 1988, J. Biol. Chem. 263:14621-14624; Hartmut 氏らの カナダ特許出願第2,012,311号,出願日1990年5月15日を参照されたい)。
【0038】
例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法(リソソームの融合)、遺伝子銃の使用、DNAベクタートランスポータと共にウイルスベクターを使用、などの当技術分野において周知の方法によって、ベクターをin vitroで望ましい宿主細胞に導入する。
【0039】
融合タンパク質発現コンストラクトをin vivoで導入することに関する利点は、細胞の状態に通常関与する因子が存在する自然の環境において融合タンパク質を発現できることである。例えば、関心タンパク質に関連して、ある薬物がある細胞型に対しどのように作用するかを知りたい場合、in vivoで薬物を試験すれば、自然条件下での関心タンパク質の反応を解明できる。実験動物を使用して、関心対象の器官や部位から細胞を単離し、融合タンパク質コンストラクトで形質転換された細胞と形質転換されていない細胞との混合細胞を得ることができる。既に述べたように、天然で生じる標的タンパク質と融合タンパク質とを比較することも可能である。標的宿主細胞で融合タンパク質を特異的に発現させるために、標的宿主細胞中では活性を持ち他の細胞では活性を持たない転写制御領域を使用することが可能であり、例として、前立腺がん細胞において使用するには前立腺特異抗原制御領域が挙げられる。
【0040】
短時間の活性を持つプロモータ、例えば初期遺伝子のウイルスプロモーター(例えばヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター)を使用してもよい。他のウイルスプロモーターとして、例えばサイトメガロウイルスプロモーター(CMV)、SRαプロモーター(Takebe et al., Mole. Cell. Biol. 8:466 (1988))、SV40プロモーター、呼吸器多核体ウイルスプロモーター(RSV)、チミンキナーゼ(TK)、βグロビンなどの強力なプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。あるいは、誘導プロモーターを使用できる。
【0041】
様々な状況、様々な目的、様々な宿主に応じた多数のプロモーターを使用できることが分かっている。今日では多くのプロモータは商業的に入手できる。当技術分野では周知の、任意のプロモーター/エンハンサ因子によって融合タンパク質の発現を制御してもよいが、これらの制御因子は発現用に選んだ宿主あるいは宿主細胞中で機能しなければならない。融合遺伝子発現の制御に使用してよいプロモーターには、SV40初期プロモーター領域 (Benoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’末端の長い末端反復配列(3’LTR)に含まれるプロモータ(Yamamoto, et al., 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター (Wagner et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の制御配列 (Brinster et al., 1982, Nature 296:39-42);および組織特異性を示しトランスジェニック動物で利用されてきた、以下の動物転写調節遺伝子:すなわち、膵臓の腺房細胞中で活性を持つエラスターゼI遺伝子制御領域 (Swift et al., 1984, Cell 38:639-646; Ornitz et al., 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409; MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515);膵臓β細胞中で活性を持つインスリン遺伝子制御領域 (Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、リンパ球内で活性を持つ免疫グロブリン遺伝子制御領域 (Grosschedl et al., 1984, Cell 38:647-658; Adames et al., 1985, Nature 318:533-538; Alexander et al., 1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣細胞、乳房細胞、リンパ球および肥満細胞で活性を持つマウス乳癌ウイルス制御領域 (Leder et al., 1986, Cell 45:485-495)、肝で活性を持つアルブミン遺伝子制御領域 (Pinkert et al., 1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝で活性を持つαフェトプロテイン遺伝子制御領域 (Krumlauf et al., 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648; Hammer et al., 1987, Science 235:53-58)、 肝で活性を持つα1アンチトリプシン遺伝子制御領域 (Kelsey et al., 1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄細胞中で活性を持つβグロビン遺伝子制御領域 (Mogram et al., 1985, Nature 315:338-340; Kollias et al., 1986, Cell 46:89-94)、脳内の希突起膠細胞で活性を有するミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域 (Readhead et al., 1987; Cell 48:703-712)、骨格筋中で活性を有するミオシン軽鎖2遺伝子制御領域 (Sani, 1985, Nature 314:283-286)、前立腺細胞中で活性を有する前立腺特異抗原制御領域 (米国特許第6,197,293号および第6,136,792号)、および視床下部で活性を有する性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域 (Mason et al., 1986, Science 234:1372-1378)などが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、融合タンパク質遺伝子の発現を、例えば重金属への曝露によって誘発されるメタロチオニンプロモーターや、テトラサイクリンに応答を示すプロモーター(テトラサイクリン応答プロモーター)などの誘導プロモーターによる制御下におくことができる。グルココルチコイドは脳血管関門を通過できるので、特定の脳細胞に導入した遺伝子を制御するためにグルココルチコイド誘導プロモーターを使用できる。あるいは、視床下部や他のエストロゲン感受性部位で活性を有するであろうエストロゲン誘導プロモーターを使用できる。本発明は、膜を通過でき、神経細胞の場合には脳血管関門を通過でき、かつ転写に影響を及ぼす薬剤によって誘導される任意のプロモーターの用途について熟考している。
【0042】
以下のタンパク質をコードするDNAを含むベクターは、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション (ATCC),Rockville, MDに寄託されており、第VIII因子(pSP64-VIII, ATCC寄託番号39812);第VIII因子のアナログで581アミノ酸を欠く“LA” (pDGR-2, ATCC寄託番号53100);組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)とそのアナログ(同時係属出願である米国特許出願第882,051号参照);VWF (pMT2-VWF, ATCC寄託番号67122);EPO (pRK1-4, ATCC寄託番号39940;pdBPVMMTneo 342-12 (BPV-type vector) ATCC寄託番号37224);および GM-CSF (pCSF-1, ATCC寄託番号39754) が挙げられる。
【0043】
上述したように、ベクターは、プロモーター(たいていはプロモーター/エンハンサ領域)による転写および翻訳の制御下にある融合遺伝子を含み、任意で複製可能な複製開始領域、選択マーカーを含み、そして制限部位、PCR開始部位、EAの構成的あるいは誘導的発現をもたらす発現コンストラクトなどの付加的な特徴を含むことも可能である。上述したように、宿主中で融合タンパク質を発現させるための数多くの異なったアプローチを可能にする多数のベクターが入手可能である。
【0044】
関心対象のタンパク質カテゴリーの内、転写因子、インヒビター、制御因子、酵素、膜タンパク質、構造タンパク質、およびこれらのタンパク質のいずれかと複合体を形成するタンパク質は関心の対象である。具体的なタンパク質には、以下に挙げる酵素が含まれる。すなわち、アミド切断ペプチダーゼを例とする加水分解酵素、その例としてカスパーゼ、トロンビン、プラスミノゲン、組織型プラスミノゲンアクチベータ、カテプシン、ジペプチジルペプチダーゼ、前立腺特異抗原、エラスターゼ、コラゲナーゼ、エキソペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、メタロプロテイナーゼがあり、セリン/スレオニンプロテアーゼおよびチロシンプロテアーゼを共に含む;アセチルコリンエステラーゼ、糖類分解酵素、リパーゼ、アシラーゼ、ATPシクロヒドロラーゼ、セレブロシダーゼ、ATP分解酵素、スフィンゴミエリナーゼ、脱リン酸酵素、ホスホジエステラーゼ、ヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼなどの加水分解酵素;シトクロムタンパク質などの酸化還元酵素、NAD依存性デヒドロゲナーゼ、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ジヒドロオロテート・デヒドロゲナーゼ、アルデヒドおよびアルコール・デヒドロゲナーゼ、アロマターゼなどの脱水素酵素;例えばアルドース還元酵素、HMG-CoA還元酵素、トリパノチオン還元酵素などの還元酵素、例えばミエロペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼなどの他の酸化還元酵素、例えばモノアミンオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼなどの酸化酵素、および例えばNO合成酵素、チオレドキシン還元酵素、ドパミンβ−ヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、nox-1オキシゲナーゼなどのクラス内の他の酵素;例えばGABAトランスアミナーゼなどのトランスアミナーゼ、合成酵素であるβ−ケトアシル担体タンパク質合成酵素、チミジル酸合成酵素、アミノ酸tRNA合成酵素などの合成酵素、またはエノールピルビル(enolpyruvyl)トランスフェラーゼ、グリシンアミドリボヌクレオチド・トランスフォーミラーゼ、COX−1および2、アデノシンジアミナーゼなどの転移酵素などの、他のクラスに属する他の酵素である。
【0045】
例えばチロシンキナーゼ、MAPキナーゼ、サイクリン依存性キナーゼ、GTPキナーゼ、セリン/スレオニンキナーゼ、Chk1および2などのキナーゼ類は非常に重要である。
【0046】
例えばa1-アンチトリプシン、アンチトロンビン、サイクロフィリン阻害剤、プロテアソーム阻害剤などの酵素阻害剤に対する関心も高い。
【0047】
関心の高い他のタンパク質は、例えばSrc、Ras、Neu、Erb、Fos、Kit、Jun、Myc、Myb、Abl、Bclなどの癌遺伝子、サイトカイン(インターフェロンのαからγ、インターロイキンの1〜19など)、インテグリン、アドヘシン、TNF、レセプター、ホルモン、コロニー刺激因子、成長因子(上皮細胞成長因子、繊維芽細胞成長因子など)、骨形成タンパク質、Hoxタンパク質などの発生に関するタンパク質、あるいはホメオボックスに結合する他のタンパク質や制御タンパク質(例えばヘッジホッグタンパク質)、基底膜タンパク質、熱ショックタンパク質、KruppleおよびKringle構造のシャペロニンを含むタンパク質、カルシウム関連タンパク質(例えばカルモジュリン、カルシニュリンなど)、膜チャネル、輸送体タンパク質などがある。
【0048】
例えばサイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、p53、RBなどの、増殖に関連するタンパク質も関心が高い。
【0049】
神経細胞のタンパク質として、例えばβ−アミロイド、TNF、プリオン、APP、ドパミン輸送体などの輸送体、NMDA受容体、AMDA受容体、ドパミン受容体などの受容体、チャネルなどがある。
【0050】
他のクラスのタンパク質には、転写因子およびそれらの阻害物質あるいは制御タンパク質、例としてAdr, Ace, Amt, AP, Atf, Att, Baf, Brn, Btf, C Ebp, C Jun, C Ets, CREB, CF, Chop, DP, E2F, Elk, Gata, Hnf, Iii A-H, Irf, NY Y, Otf, NFκB, NF-AT, Oct-1, Pea, Pit, PU, S, SP, Stat, Tef, TFIII, TFIIII, UbfおよびUsfなどが挙げられ、一方で、阻害物質には、Erk, IκB, LIF, Smad, RANTES, Tdgなど、及び、転写因子の合成、活性化あるいは阻害を引き起こす経路に関連する他のタンパク質が含まれる。
【0051】
関心対象の別のクラスのタンパク質として細胞表面の膜タンパク質があるが、このようなタンパク質の多くは、例えばGタンパク質共役受容体、ホルモン受容体、インターロイキン受容体、ステロイド受容体、輸送体などの受容体である。これらの受容体には、インスリン受容体、グルコース輸送体、IL-2, 4など、およびCRXC4、PPARなどの受容体が含まれる。また、MHCタンパク質も関心タンパク質となりうる。
【0052】
いくつかの例では、例えばTCA回路、クレブス回路、グリコーゲン合成などに関与するタンパク質などの、ハウスキーピングタンパク質への関心が高いであろう。
【0053】
既に述べたように、これらのタンパク質の各々の遺伝子を多数の方法で操作し、タンパク質およびEDの生物学的活性を維持しながらEDをタンパク質と融合させることもできる。
【0054】
種々のタンパク質と関連する様々な経路への関心も高いであろう。したがって、細胞表面の膜タンパク質受容体へのリガンド結合の結果として生じるシグナル伝達、小胞の形成および輸送、細胞内構成要素の多段階合成、プロテアソーム、ペルオキシソーム、紡錘糸形成、チューブリン集合、消化された化合物(毒素や薬剤など)の処理、などを含む経路は関心の対象である。
【0055】
細胞内に存在するアンチセンスあるいはRNAiの有効性を測定するために本明細書の主題のシステムを使用することもできる。細胞内で発現し存在する融合タンパク質の量を測定することで、発現を抑制する際のアンチセンスあるいはRNAiの効率を測定できる。さらに、1つのタンパク質発現の減少が別のタンパク質(このタンパク質は融合タンパク質である)に与える効果を決定することができる。例えば、発現の欠損が経路に与える効果について関心があり、阻害されたタンパク質の下流に融合タンパク質がある場合、融合タンパク質を発現するような代わりの経路が存在するかどうかを究明できる。あるいは、ある経路でのシグナル伝達の変化が、融合タンパク質を含む代わりの経路に与える効果や、融合タンパク質の修飾に与える効果を調査することもできる。一方のタンパク質の発現レベルや修飾を測定している間に他方のタンパク質の阻害を組み合わせることは、細胞内の活動、異なる経路同士の相互作用、およびこうした細胞内活動に対する環境変化の影響を理解するための強力なツールである。
【0056】
本発明の主題となっているコンストラクトを含む細胞を、関心経路に関連するタンパク質、例えば薬剤や候補薬剤の存在といった環境の変化が細胞内の関心タンパク質の存在に与える効果、発現制御の変化、タンパク質の発現を阻害する効果、細胞内経路の受容体による制御、受容体によるシグナル形質導入に対して影響を与える化合物、複合体の形成あるいは融合タンパク質の分解に対して影響を与える細胞内経路の活性化又は非活性化、生成率や分解率に関連するタンパク質の発現レベル、などを同定するために使用してもよい。
【0057】
分泌されるタンパク質は、細胞内にある間に究明できる。ゴルジ体から表面膜に輸送される前に多くの段階が起こっているはずで、細胞内のこうした分子の数と、それらが他のタンパク質(ドッキングタンパク質など)と複合体を形成しているかどうかを究明することができる。
【0058】
究明の目的のためには、融合タンパク質および他の構成要素を発現するために必要な転写因子を供給するような宿主細胞が選択されるだろう。また、シミュレートされている環境に類似した環境を供給するような宿主細胞が選択されるだろう。多くのケースでは初代細胞を使用することができ、培地で維持された初代細胞であっても、患者から直接得られた初代細胞であってもよい。しかしながら、多くの他のケースでは、樹立細胞系を用いるが、これはこの細胞系は望ましい環境を提供し、研究間の直接の比較を可能にするからであり、患者から得た初代細胞系を用いた場合にはこのような比較はできない可能性がある。
【0059】
形質転換細胞系を含む、樹立細胞系は宿主として適している。通常の二倍体細胞、すなわち一次組織の生体外培養に由来する細胞系や、同様に初代移植片(造血幹細胞などの比較的未分化の細胞を含む)も適している。例えば造血幹細胞、神経幹細胞、筋幹細胞などの幹細胞は、胚細胞と同様に有効である。選択遺伝子が支配的に機能している限り、候補細胞の選択遺伝子の遺伝子型が欠損している必要はない。宿主細胞は、好適には樹立哺乳類細胞系である。従来的な方法によって、染色体DNAにベクターDNAを安定して組み入れ、そして組み入れられたベクターDNAを引き続き増殖させるためには、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞が便利である。あるいは、ベクターDNAはウシパピローマウイルスゲノムの全体または一部を含んでもよく(Lusky et al., 1984, Cell 36:391-401)、C127マウス細胞のような細胞系へ、安定なエピソーム因子として運ばれる。他にも利用可能な哺乳類細胞系としてHeLa細胞, サルのCOS-1細胞、Bowes細胞などのメラノーマ細胞系、マウスL−929細胞、マウス乳癌細胞、Swiss,Balb-cあるいはNIHマウス由来の3T3細胞系、BHKあるいはHAKハムスター細胞系などがある。
【0060】
特定の遺伝子をノックアウトし、特定の遺伝子を導入し、タンパク質の発現を増強あるいは減弱させることなどによって細胞系を修飾してもよい。修飾は、アンチセンスDNA、RNAiまたはdsRNAを導入する場合のように一時的であってもよいし、もしくは、遺伝子を消去したり、標的タンパク質のアンチセンスmRNAをコードする遺伝子を導入したり、優性劣性遺伝子を加えたりといった操作により永久的であってもよい。様々な系統の研究動物を利用することができ、この系統は自然発生の突然変異や交配、あるいは、胚細胞や他の細胞の遺伝子修飾の結果遺伝的修飾を受けた宿主を用いることの結果として生じるものであり、系統は、例えば哺乳類、魚類、昆虫などの脊椎動物、または例えば線虫などの無脊椎動物などが可能である。ノックアウトマウスについては文献により詳細に記されている。本発明の目的のために、インタクト宿主、インタクト宿主の組織あるいはインタクト宿主の細胞を使用することができる。ノックアウト及びノックインマウスの開発に関する説明は、Nozawa, et al., Transplantation 2001, 72:147-55; Ferreira, et al., Blood 2001 98:525-32; Kotani, et al., Biochem. J. 2001, 357:827-34;Zhou, et al., Int. J. Radiat. Biol. 2001, 77:763-72;およびChang, et al., Mol. Cell. Endocrinol. 2001, 180:39-46に記述されており、その中で引用された参考文献は、遺伝子修飾マウスに関する膨大な文献のうちわずかを提供する。さらに、所望の遺伝子を持つ第1の細胞が、第1の細胞の染色体が安定的に維持されるという条件の下で不死化細胞と融合することで生じた、ハイブリドーマを使用することができる。遺伝子は転写因子、関心タンパク質(例えばヒト以外の宿主細胞中のヒトタンパク質)であってもよいし、あるいは増強されたタンパク質発現を提供する。
【0061】
β−ガラクトシダーゼのEDについては、米国特許文献第4,378,428号;第4,708,929号;第5,037,735号;第5,106,950号;第5,362,625号;第5,464,747号;第5,604,091号;第5,643,734号;に詳細に記載されており、PCT出願番号WO96/19732;およびWO98/06648は、酵素断片相補(EFC)を用いたアッセイについて記載している。一般にEDは少なくとも約35アミノ酸、たいていの場合少なくとも約37アミノ酸、多くの場合少なくとも約40アミノ酸以上のアミノ酸からなり、通常は100アミノ酸を超えず、ほとんどの場合75アミノ酸を超えることはない。その上限は、究明の施行や目的にEDのサイズが与える影響、EAとの相補性に与える影響、より大きなコンストラクトの不都合さ、などにより決定される。使用できる最小のサイズは、細胞内イベントの産物と共に観察でき、適切な感度で認識できるシグナルを提供しなければならない。実験のセクションに記載の実施例では、アッセイに望ましい感度で融合タンパク質を得る方法についてのガイドラインを提供する。
【0062】
全てのタンパク質は何らかの調節(例えば分解)を受けるので、全ての細胞内タンパク質の状態を、融合タンパク質が関心タンパク質の代用として機能できる程度にまで、本発明に従って究明できる。たいてい、関心タンパク質は、例えば感染病の影響、遺伝的欠損、変異、薬剤への反応、腫瘍形成、炎症反応などの健康機能と関連している。したがって、融合タンパク質の移動度の変化は生理学的機能と相関があり、経路の調査などの他の目的もありうるが、たいていは哺乳動物宿主の診断及び治療に関連している。
【0063】
β−ガラクトシダーゼの多くの基質は既知であり、その産物は蛍光物質である。一般的な基質は、フルオレセイン、一及び二置換o―ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド、β‐メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシド、X-gal、レゾルフィン−β−D−ガラクトシドなどのβ−D−ガラクトピラノシルフェノール類、例えばGalacto-Light Plus(商標登録)キット(化学発光性物質)などの商業的に入手可能なジオキセタン、およびクロロフェノールレッドである。ジ−β−D−ガラクトピラノシルフルオレセイン、およびクロロフェノールレッド−β−D−ガラクトピラノシド、あるいは類似の基質であり、特に細胞から反応産物が漏出するのが妨げられている場合、これらを細胞内マーカーとして使用できる。
【0064】
分析の間は、細胞は生存状態に維持されており、細胞は分裂していても、分裂していなくてもよい。生存している状態を「成長している」と呼ぶこともできる。
【0065】
記載すべき最も簡単な手順は、培地中での細胞の利用および溶解物の分析である。この場合、細胞を培地中で培養する。融合タンパク質と他のコンストラクトは、必要に応じて、ゲノム中に組み込まれた形で細胞内に存在する場合もあるし、機能的翻訳のために細胞内にDNAを導入する様々な方法によって一過性に添加される場合もある。細胞は培地中に存在しても、試験管内に存在してもよい。既に述べたように、これらの方法は文献に十分に例示されている。コンストラクトを含む細胞を選択するために融合タンパク質にマーカー(例えば抗生物質耐性や検出可能シグナルの開発など)を利用することによって、融合タンパク質を含む培地中に存在する細胞を、このコンストラクトの存在しない細胞から分離することができる。融合タンパク質が一度発現したあとは、所望ならば細胞の環境を調節してもよい。候補化合物を加えたり、レセプター、細胞膜、核に対するリガンド、あるいはこれらの内2つの組み合わせを加えたり、培地に変化を加えたり、因子の分泌や形質変換した細胞への結合のために他の細胞を加えたり、ウイルスを加えたりなどしてよい。環境に効き目が現れるのに必要な十分な時間が経過したならば、および/あるいは異なる時間間隔をおいて培地の一定量を採取したならば、細胞をlysis cocktailによって溶解し、このlysis cocktailを電気泳動法により分離してウエスタンブロット法を行い、引き続いてEAと酵素基質を加えて、タンパク質産物からのシグナルを読み取る。その後、とりわけ溶解物に異なる量の融合タンパク質が混入している場合の基準を用いることによって、この結果を融合タンパク質の存在量と関連づけることができ、さらに活性融合タンパク質の量、および融合タンパク質産物の修飾について、修飾された産物に関する基準を用いて決定する。次いで、溶解物中の融合タンパク質の各産物に対するシグナルと関連するグラフを得ることができる。
【0066】
細胞が生存能力のある宿主中に存在する場合には、通常は細胞または組織を宿主から回収して溶解し、培養のために使用する方法が同一となるようにする。所望ならば、コンストラクトを有する細胞を選択することは、コンストラクトの一部に抗生物質耐性遺伝子を有することにより達成可能であり、その結果として、コンストラクトを持たない細胞によってサンプルが希釈されることを防ぐために抗生物質を用いて細胞を選択することができる。
【0067】
便宜のために、アッセイの主要な構成成分を全てまたは一部含みうるキットを提供することができる。例えば、キットは発現コンストラクトを、単独でまたはベクター(例えば、通常は弱毒化されたプラスミドやウイルス)の一部として含むことが可能で、発現コンストラクトは、マーカー、組み込みのためのタンパク質をコードする遺伝子、複製開始部位などを含むことが可能である。コンストラクトは、細胞外に存在してもよいし、細胞のゲノムに組み込まれて提供されてもよい。発現コンストラクトに加えて、キットは、EA、β−ガラクトシダーゼの基質、1つまたは複数の細胞系または初代細胞、存在するEDの量に対する反応のグラフ、バッファー、分離ゲル、ウエスタンブロッティング用のメンブレン、ろ紙などを含みうる。ある場合には、例えば関心対象の経路に関与するタンパク質(例えば細胞表面膜受容体、GPCR、ステロイド受容体や転写因子などの核受容体など)の高発現量というような、所望の環境を提供するために細胞を巧みに操作することができるし、あるいは、融合タンパク質の発現に影響を及ぼすような発現のレベルを減少させるために細胞を変異させることができるのであり、発現のレベルを高めることに対する関心は高い。
【0068】
このシステムは、挿入しようとする遺伝子が、天然のタンパク質の活性をもたらすか、または天然のタンパク質に対する修飾に対して同じように反応するかのいずれかによって、天然のタンパク質の代用物として役立つ生物学的活性を有する融合タンパク質をもたらすかどうかを追求するために、最初に使用される。融合タンパク質の活性は、天然のタンパク質が発現していない宿主細胞を用いて測定することが可能である。このことは、天然のタンパク質の両方のコピーがノックアウトされた細胞の結果として生じうるのであって、このためには天然タンパク質を阻害するが融合タンパク質を阻害しない(例えば非コード3'領域)か、または5'-メチオニンコドンを含むアンチセンスRNAまたはRNAiが宿主細胞に添加されていて、そしてアンチセンスRNAまたはRNAiは天然タンパク質の発現に必要な転写因子を阻害し、さらに融合タンパク質は異なる転写制御領域を有する。
【0069】
融合タンパク質の用途を発展させる際には、所望の研究へ応用するための遺伝子コンストラクトをスクリーニングすることが可能なシステムを考案することが可能である。システムのユーザーは、システムにおいて提供される遺伝子コンストラクトへ、関心遺伝子を導入する。複数のクローニング部位を有することによって、複数のクローニング部位へと正しい方向で、かつED配列とリーディングフレームを合わせて挿入するために遺伝子は操作される。通常、ED配列および関心遺伝子の間に残留する複数のクローニング部位中に存在するヌクレオチドの結果として、3コドン以内のリンカー、好適には約2コドン以内のリンカーが存在することになるだろう。説明したように、提供されるベクターは、転写および/または翻訳終止配列、ポリアデニル化配列、または例えばファルネシル化、ゲラニル化などの機能をコードする他の配列を含みうる。一旦融合タンパク質のコンストラクトが完成したら、次にコンストラクトを宿主細胞中へ導入することが可能である。
【0070】
主題となっている発明で使用されるステップは、(1)システムの一部として提供される遺伝子コンストラクトの複数のクローニング部位中へ、関心遺伝子を挿入することによって、融合タンパク質遺伝子および発現コンストラクトを調製するステップ;(2)システムが提供するか又はユーザーが選択する選択された宿主細胞中へ、融合タンパク質を含む発現コンストラクトを導入するステップ;(3)形質転換された宿主細胞を、発現および細胞の生存能力を可能にするような条件の下でインキュベートするステップ;(4)細胞を溶解するステップ;(5)ゲル電気泳動法を用いてタンパク質を分離するステップ;(6)分離されたタンパク質バンドをウェスタブロッティング法によって転写するステップ;(7)EAおよび基質を、通常は2段階でゲルへと添加するステップ;および、(8)検出可能な基質の産物によって発色した、メンブレン上のバンドを同定するステップ;から構成される。EAをゲルに添加するときには、たいていはEDに対して過剰量のEAが添加されるが、少なくとも約2倍過剰であり、たいていは少なくとも約5倍過剰であり、そして20倍以上過剰なこともある。
【0071】
上述した様々な構成要素を本発明の用途のために使用することによって、宿主および発現コンストラクトは適合するのかどうか、一時的発現、拡張発現、または恒久的発現のいずれを使用すべきかどうか、初代細胞、不死化細胞またはその中間の性質を有する細胞のいずれを使用すべきかどうか、そして既知の薬剤に対する反応性を測定するためにシステムを使用することができる。このようにして、特定の物質に対する感度を増強させるために、特定のシステムを最適化することが可能である。
【0072】
このシステムには、データの蓄積および記憶の能力があり、システムに由来するデータは収集され、分析され、他の測定結果と比較される。このようにして、融合タンパク質のヒストリーにたいして様々な薬剤が与える効果についてのデータを蓄積することができ、その結果、遺伝的に修飾を受けた細胞が単独または複数の候補薬剤を添加したときにどのように反応するのか、変化の速度のバリエーション、様々な経路に対する影響などを測定することができる。効果が立証された化合物に対する周知の反応性についてのデータベースを有すれば、予想される生理的影響の評価に関して、新しい候補物質を前述の結果と比較することが可能である。こうした候補物質の標的に対する影響を研究することが可能なだけでなく、培地中にこうした標的が存在することに起因する副作用をも研究することが可能である。
【0073】
前述の通り、主題となっている方法を様々な状況において使用して重要な効果をうみだすことが可能であるが、これはEDが、関心タンパク質がEDと共に融合タンパク質として機能することを可能にするのに十分小さく、一方で機能的な酵素を供給するためにEDがEAと複合体を形成することが可能であるためである。
【0074】
以下の実施例を実例として提供するが、何ら限定をするものではない。
【実施例】
【0075】
第一の実験例は、細胞溶解物全体中に存在する特定のタンパク質を提供するための、イースタン法とウエスタンブロット法の比較を提供する。本実験中の特定のタンパク質は、ProLabel(ED; WO 03/021265を参照;配列番号1を参照)およびc-mycエピトープタグの両者で標識された融合タンパク質であって、それぞれ、EFCおよび抗体検出方法を可能にする。タンパク質は、一時的にトランスフェクトされたCHO-K1細胞中のプラスミドから発現される。プラスミドpPL-myc-βarr2は、CMVプロモータからa PL-myc-β-arrestin2融合タンパク質を発現し、2つのステップによって作成された。第一に、myc-βarr2DNAフラグメントを、BglII部位およびc-myc エピトープタグ(アミノ酸 EQKLISEEDL; 配列番号5)をコードするヌクレオチドをβarr2スタートコドンの位置に導入したフォワードプライマーと、βarr2ストップコドンの下流にEcoRI部位を導入したリバースプライマーを使って、ヒトβ-arrestin2 cDNAクローン(MGC: 3754, IMAGE: 3028154, Invitrogen)からPCR増幅によって得た。第二に、増幅されたDNAをBglIIおよびEcoRIを用いて切断し、同一の酵素を用いた切断により準備したベクターpCMV-PL-N1中に挿入した。プラスミドpbarr2-myc-PLはCMVプロモータからβ-arrestin2-myc-PL融合タンパク質を発現し、同一の方法で作成した。第一に、βarr2-myc DNAフラグメントを、BglII部位をβarr2スタートコドンの上流に導入したフォワードプライマーと、βarr2ストップコドンの位置にc-myc エピトープタグをコードするヌクレオチドを、その下流にEcoRI部位を導入したリバースプライマーを使って、β-arrestin2 cDNAクローンからPCR増幅によって得た。第二に、増幅したDNAをBglIIおよびEcoRIを用いて切断し、同一の酵素を用いた切断により準備したベクターpCMV-PL-C1中に挿入した。クローニングベクターpCMV-PL-N1およびpCMV-PL-C1のDNA配列を配列番号1および配列番号2にそれぞれ示す。PL-myc-βarr2およびβarr2-myc-PL融合タンパク質の翻訳について、配列番号3および配列番号4にそれぞれ示す。本実験において用いる第3のプラスミドはpEGFP-C1(BD Clontech)であって、このプラスミドはCMVプロモータからタグの付いていない緑色の蛍光タンパク質を発現し、ネガティブコントロールとして機能した。
【0076】
タンパク質のブロットは、標準的な技術を用いて細胞溶解物から準備した。密集するまで培養されたCHO-K1細胞の10cmディッシュをトリプシン処理し、3つの新たな10cmディッシュへ10分の1希釈で接種した。その後、細胞を上述した3つのプラスミドの10cmディッシュに、FuGENE6試薬(Roche社)を用いて5μgずつ一時的にトランスフェクトした。トランスフェクションした2日後に、成長培地を除去し、細胞を10mlのPBSで1回洗浄した。その後1mlの氷冷CLB(Cell Lysis Buffer: PBS中にCHAPS0.5%)を添加し、プレート表面から細胞残屑を削り取ることによって細胞を溶解した。溶解物を氷上のマイクロチューブへ写し、30分にわたって定期的にボルテックスした。ゲル電気泳動のためのサンプルを、0.65倍容量の細胞溶解物/0.25倍容量の4×LDS バッファ/0.1倍容量の10×還元薬剤 (後者2つの成分はInvitrogen社から入手した)を組み合わせることによって調整し、その後70℃で10分間加熱した。変性NuPAGE4〜12%ビストリスゲル上でのタンパク質サンプルの電気泳動およびニトロセルロースメンブレンへのトランスファーを、メーカーの使用説明書(Invitrogen社)の通りに行った。同時に、複数のレプリカのブロットを調整した。
【0077】
イースタンブロット法による1つのブロット上のPLタグ付きタンパク質の検出を、発色性β‐ガラクトシダーゼ基質X-Galを用いて行った。ゲルからのトランスファーに続いて、ブロットをEACB(EA Core Buffer, DiscoveRx社)中で室温で5分間平衡化し、その後EA試薬(〜0.14ml/cm2メンブレン、DiscoveRx社)と共に37℃で1時間インキュベートした。洗浄せずに、メンブレンをペトリ皿中にタンパク質側を表にして静置し、3MMブロッティング紙のうち上にある2枚のシートを基質溶液(0.33mg/ml X-Gal, EACB中に3.5mMβ-メルカプトエタノール)で飽和させた。ディッシュをパラフィルムで密閉し、着色させるために室温で静置した。着色の様々な時刻におけるイースタンブロットの代表的な写真を図1の上方のパネルに示す。特異的なシグナルは、数日間にわたって発現し続けた。pEGFP-C1コントロールのレーンには、検出不可能な非特異的なシグナルは存在せず、ブロット自身のバックグランドの染色も存在しなかった(図1)。
【0078】
mycエピトープのタグ付きのタンパク質を検出するためにウエスタンブロット法を行った。始めに、ブロットをブロッキングバッファー(TTBS/3% 無脂肪ミルクパウダー; TTBSの組成は100mM Tris(pH 7.5), 0.9% w/v NaCl, 0.1% v/v Tween 20)中で30分間浸透しながらインキュベートした。その後、ブロットを、ブロッキングバッファー中で以下のように希釈した抗体〈すなわち、抗mycモノクローナル抗体(clone 9E10, Abcams社、カタログ番号:ab32)を1対5000、抗mycラビットクローナル抗体(Abcam社、カタログ番号:ab9106)を1対1000〉と共に45分間インキュベートした。ブロットをTTBS中で5分間ずつ4回洗浄し、TTBS/3%NFM中で1対10,000(v/v)に希釈された、対応するアルカリホスファターゼ共役二次抗体(Applied Biosystems カタログ番号:AC32MLおよびAC31RL) と共に30分間インキュベートした。メンブレンを上記の通りに洗浄し、続いてCSB(CDP-Star Buffer: 100mM 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール pH 9.5, 0.8mM MgCl2)中で最終の洗浄を行った。発色のために、メンブレンを基質溶液(50μM CDP-Star, 0.5mg/ml Sapphire II, 共にApplied Biosystems製,CSB中で希釈)中で37℃で10分間インキュベートし、透明なプラスチックシートの間にはさみこみ、これらの発光を様々な露光時間でCCDカメラを用いて検出した。抗mycモノクローナルおよびポリクローナルウエスタンブロット法における代表的な発色を、図1の下方のパネルに示す。
【0079】
第二の実験例は、PLタグ付き細胞内タンパク質であるIκB-PLの調節された分解について理解することによって、イースタンブロット法の感度について例示する。ほとんどの細胞においては、インヒビタータンパク質IκBが結合すると、転写制御因子NF-κBは不活性型に保たれる。TNF-αなどのサイトカインによる細胞の刺激によって、リン酸化、ユビキチン結合およびIκBの二次的な分解が活性化され、これによって今度はNF-κBの放出および活性化が促進される。従って、IκBの分解を制御することが、NF-κB 経路の活性化の指標となる。
【0080】
イースタンブロット分析用の細胞溶解物のサンプルを、時間周期を増やすためにTNF-αと共に培養して活性化されたHeLa/IκB-PLの安定細胞系列(WO 03/021265, 2002年8月27日出願を参照されたい)から調整した。各々の溶解物の分画を、TNF-αによって誘導されたIκB-PLシグナルの時間依存的分解を確認するために、同種EFCアッセイによって試験した(図2)。各々の別の分画はゲル電気泳動のために使用し、上述の通りにPVDFブロットへ転写した。IκB-PLを検出するために、イースタンブロットのプロトコールを化学発光性基質Beta-Glo(Promega Corp社、カタログ番号:E4720)と共に使用するために調整した。とりわけ、EA試薬と共にインキュベートした後に、ブロットをBeta-Glo:EACB(1:1, v/v)の溶液中で室温で10分間インキュベートし、透明なプラスチックシートの間にはさみこみ、その後発光をCCDカメラを用いて検出した。サンプル調製における変動を制御するために、ウエスタンブロット用にレプリカのブロットを上記の通りに抗アクチンモノクローナル抗体で標識した(Abcam社、カタログ番号:ab6276を参照);ただし、アクチンの濃度はTNF-αによって有意には影響を受けなかった。
【0081】
イースタンブロットを30分間露光すると、溶解物中にはIκB-PL (42.1 kD)と予期される分子量の位置に移動した単一のバンドが生じTNF-αの時間経過を通してバンドの存在量は同種アッセイ中のEFCシグナルと平行していた(図3および図4を比較されたい)。CCDカメラの露光時間を増やすにつれて、感度を増加させることができた(図4)。露光時間が長くなるにつれて複数の高分子量のバンドが出現したが(図4の10分、15分、30分の露光を参照)、このバンドはポリユビキチン化によって修飾されたIκB-PLを示しており、TNF-αの刺激およびIκB-PLの分解に関連して出現するタイミングに基づいている。ポリユビキチン化は、サイトカイン刺激に反応して生じる既知の翻訳後修飾であり、IκB 分解のための必要条件である。複数の抗IκB抗体の市販製剤を用いたウエスタンブロット法による類似の実験においては、これらのバンドは明瞭には観察されなかった。従って、イースタンブロット技術の高い特異度および感度は、従来のウエスタンブロッティングの特異度および感度を超える検出レベルを可能にする。
【0082】
以下、最適な結果を生ずるであろう状況を同定するために、イースタンプロトコールのパラメータを変えて一連の実験を行った。
【0083】
実験の次のシリーズにおいて、細胞溶解物の生成、タンパク質ブロットのトランスファーおよびPLタグ付きタンパク質のイースタン分析を、上述の通りに以下の修正を加えて行った。第一に、12ウェルプレート内で、異なるProLabelを発現しているプラスミドDNA(0.5μg)および/またはsiRNAを有するHeLa細胞を、STAT1 (GenBank登録番号:NM_032612)、サイクリンD1(GenBank登録番号:NM_003210)、p53 (GenBank登録番号:NM_001641)およびIκβ(GenBank登録番号:NM_010546)へとトランスフェクションした。第二に、リポフェクタミン2000(Invitrogen社)を用いたトランスフェクションを16時間行い、その後細胞をトリプシン処理し、微量遠心管中で遠心分離することによって回収した。第三に、細胞のペレットをPBSで1回洗浄し、再び遠心分離して、DiscoveRx細胞溶解バッファ(PBS中0.5% CHAP+1X COMPLETE protease inhibitor cocktail {Roche社、カタログ番号:1873580})400ml中に再懸濁した。37℃での30分間の連続的なボルテックスによって細胞を溶解した。SDS−PAGE用のサンプルの調製を、上記の通りに行った。NuPAGE4〜12%ビストリスゲル上で変性状態の下でサンプルを泳動し、メーカーの使用説明書(Invitrogen社)に概説されたプロトコールに従ってニトロセルロースメンブレンへトランスファーした。メンブレンをプラスチック性ディッシュにトランスファーし、EAコアバッファー(DiscoveRx社)中で5分間2回洗浄した。その後、ブロットを4mlのEA溶液(DiscoveRx社)と共に、ロッキングプラットフォーム上でさまざまな濃度(0.1x, 0.5x, 1x, 2xおよび5x)で室温で2時間インキュベートした。この培養期間が完了するまでに、プラスチック性ディッシュに20 mg/mLのX-gal (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル β-D-ガラクトピラノシド)のストック液を100μl添加し、EA/基質の混合溶液をバンドが検出されるまで室温でインキュベートした。発色性基質の代わりに発光性基質を用いた場合には、ブロット上でのインキュベーション時間は室温で15分間であり、その後結果を得るために5〜30分間、UVP EpiChem II 暗室撮影装置上にブロットを露光した。
【0084】
反応中に使用したEAの量およびEFC生成シグナルの間の相関を証明するために、EA量の滴定を行った。HeLa細胞、またはSTAT-PL又はサイクリンD1-PLをトランスフェクトされたHeLa細胞のいずれかからの全細胞溶解物を、4〜12%のビストリスゲル上で泳動した。サンプルをニトロセルロースへトランスファーし、その後様々な濃度のEA(5X, 2X, 1X, 0.5X および 0.1X)と共に2時間別々に培養した。その後、発色シグナルを生成するためにブロットをX-gal基質と共にオーバーナイトでインキュベートした。EFCシグナルを、0.5Xという低濃度のEAを用いて検出した。ProLabelタグ付きの生成物のみがメンブレン上にシグナルを生成するというように、非常に低いバックグランドシグナルしか存在しなかった。2つの異なるProLabelタグ付き遺伝子(STAT1およびサイクリンD1)を、HeLa細胞へのトランスフェクトのために使用した。各条件において使用したコントロールレーンは、pCMV-PLプラスミドのみをトランスフェクトしたHeLa細胞であった。哺乳類細胞中で発現されたProLabelは独りでに分解され、一方でタンパク質をタグとして付けているProLabelは、EFCにより検出可能な安定した生成物となった。
【0085】
等量の全タンパク質を、4〜12%のビストリスゲル上で3通り泳動した。ウエスタントランスファーを、上述の通りに行った。ニトロセルロースメンブレンを、様々な濃度のEA溶液と共に室温で2時間インキュベートし、その後X-gal基質を添加してブロットをオーバーナイトでインキュベートした。
【0086】
RNA干渉(RNAi)技術は、様々な細胞のタイプにおいて特定の遺伝子サイレンシングを調べるためによく使用される方法になってきている。このプロセスは、プラスミド発現ベクターによって生成された小さなヘアピンRNA(shRNA)、またはトランスフェクションによって細胞に導入された標的化遺伝子に対する化学的に合成されたアンチセンスオリゴのいずれかを含む。干渉RNAは、発現された関心遺伝子の相補配列に結合し、その結果、標的化mRNAの最終的な分解および遺伝子発現のサイレンシングにつながるイベントのカスケードが生じる。細胞内に導入されたRNAiの効果を分析するために、2つの方法が一般に使用されている:すなわち、mRNA濃度を計測するためのPCR法、または標準的なウエスタン分析および抗体検出である。両者ともよく確立された手順であるが、それぞれに弱点がある。PCR法はmRNA濃度をモニターするにすぎず、関心遺伝子の発現および機能に影響を与えうる翻訳修飾については明らかにできない。ウエスタン分析は、関心タンパク質を検出するための抗体の特異性に限定されてしまう。以下の一連の実験は、RNAiテクノロジーを適用している様々なProLabelタグ付き遺伝子の発現を測定するための、イースタン分析の利用を例証する。イースタンおよびウエスタン分析によって得られた結果の比較を示す。
【0087】
第一の実験では、p53およびp53-PLプラスミドDNA(DiscoveRx社)に特異的なsiRNAプールを、HeLa細胞を共トランスフェクトするために使用した。このp53siRNAプールは、p53のRNA配列(Dharmacon社、カタログ番号:Q-003946-00-09)に特異的かつ相補的な4つのオリゴの等量の混合物を含んでいた。ネガティブコントロールのsiRNAは、ナンセンススクランブルオリゴ配列(Dharmacon社、カタログ番号:D-001206-13-05)であり、これについても同様の濃度(11nMおよび0.11nM)で試験した。細胞をトランスフェクションした16時間後に回収し、500μLの細胞溶解バッファー(DiscoveRx社)に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。様々な条件のEFC活性をテストするために、各テスト条件で得られた細胞溶解物の1対10希釈物30μLを、 2X EA20μLと共に室温で15分間、384ウェルプレートの中でインキュベートした。この反応液に、化学発光性基質(DiscoveRx/ABI, Galacton starおよびEmerald IIエンハンサーを供給業者のプロトコールに従って混合した溶液)30μl を加え、室温で30分インキュベーションした後にプレートを読み取った。図5に示した結果によると、細胞内に導入するp53 siRNAの濃度が上昇するにつれて、p53-PLのEFC活性は減少することがわかる(最高の濃度の場合には98%も減少した)。ネガティブコントロールのsiRNAは、EFC活性により計測したp53-PLの発現に対して最小限度の影響しか与えなかった。
【0088】
図5に示すように、Hela細胞をp53-PL (0.5 μg/ウェル)および漸増する量のsiRNAプールと共に、上述したp53(0.01-11 nM/ウェル)へと共トランスフェクトした。上述の通りに手順を実行した。(A)EFC活性は、siRNAはProLabelタグ付きp53遺伝子の発現を減少させる効果を有することを示していた。(B)p53 siRNAプールの量を滴定した後に発現されたp53-PLタンパク質の濃度をモニターするために、ウエスタン分析およびイースタン分析を行った。イースタンおよびウエスタンの結果はEFCデータに一致していた。イースタンの結果は、EA/X-gal基質によって検出される非常に特異的なバンドを有したが、ウエスタン分析ではブロット上の非特異的な結合およびバックグランドの濃度がより高かった。
【0089】
表1は図5のデータを要約したものである。
【0090】
【表1】

【0091】
次の実験は、siRNAプールをサイクリンD1(Genbank 登録番号:NM_053056)へと試験した。Hela細胞を、サイクリンD1-PLプラスミド(0.5μg/ウェル)および漸増する量のsiRNA(1.11-100 nM/ウェル)と共に、サイクリンD1(Dharmacon社、カタログ番号:M-003210)へトランスフェクトした。細胞をトランスフェクトし、回収し、検定する手順を上述の通りに実行した。図6に示したように、siRNAプールをサイクリンD1へ1.11nMの濃度で導入すると、EFCシグナルはほぼ90%減少した。ネガティブコントロールのsiRNA(前の実験で使用したのと同じsiRNA)は、サイクリンD1-PLのEFC活性を劇的には減少させなかった。α-サイクリンD1 (Upstate社、カタログ番号:60-068)でブロットを探索し、β‐アクチン抗体(AbCam社、カタログ番号:AB6276-100)をタンパク質負荷のコントロールとして用いることによって、溶解物中の物質上でウエスタン分析を行った。ウエスタン分析によって、検出されるサイクリンD1-PLバンドの消失が示された。サイクリンD1 siRNAによって検出されるシグナル力価は、ウエスタン分析ほど明瞭ではなかった。しかし、イースタン分析では、明瞭なサイクリンD1-PLバンドが観察され、11nM/ウェルにいたるまでこのシグナルの力価が観察された。
【0092】
図6に示すように、SHela細胞を、C末端にProLabelタグの付いたサイクリンD1および漸増する量のsiRNAプールと共に、リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen社)を用いてサイクリンD1(Dharmacon社、カタログ番号:M-003210)へと共トランスフェクトした。溶解物の1対10希釈物を試験することによって、EFC活性を測定した。サイクリンD1 siRNAプールの量を滴定した後に発現したサイクリンD1-PLタンパク質の濃度をモニターするために、ウエスタン分析およびイースタン分析を行った。イースタンおよびウエスタンのデータは、EFCの結果を支持する。イースタンの結果は、EA/X-gal基質によって検出される、サイクリンD1-PLの予期されるサイズに非常に特異的なバンドを有し、試験したsiRNAの濃度を滴定した。ウエスタンブロットは関心対象のバンドを生じたが、検出されたバンドの強度および力価は、siRNA処理およびイースタンの力価にかなうものではなかった。
【0093】
表2は図6のデータを要約したものである。
【0094】
【表2】

【0095】
次に行った実験は、Iκβ (GenBank登録番号:NM_010546)に特異的なsiRNAプールを試験した。前の実験で行ったように、Iκβ-PLプラスミド(0.5μg/ウェル) をIκβ(Dharmacon社,カタログ番号:M-004765)に特異的なsiRNAプールを漸増する濃度で共トランスフェクトすると共に、ネガティブコントロールプールsiRNA(Dharmacon社、カタログ番号:D-001206-13-01)をも共トランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞溶解物の一部のEFC活性を試験した。Iκβに特異的なsiRNAプールに対する用量依存的な反応を観察した。データによると、siRNAの濃度が最高の時でさえ、EFC活性は62%しか減少しなかった(図7)。これは、トランスフェクション後にsiRNAと共に16時間もインキュベーションしたことに起因する可能性があり、長い時間インキュベーションするほどIκβ mRNAのサイレンシングはより長くなるのかもしれない。ウエスタンおよびイースタンブロットは両者とも、Iκβ-PLの検出されるシグナルが減少することを示しているが、これはEFCのデータで見られた結果と類似している。イースタンは、Iκβ-PLの2つのバンドを検出したが、これは構成的に発現されたタンパク質およびリン酸化型のタンパク質を表している可能性がある。ウエスタン分析では、内因性のIκβもProLabelのタグが付いた型のIκβも共に検出された。ウエスタンブロット上のバックグランドシグナルは、イースタン分析で観察されたシグナルよりも高かった。
【0096】
図7の結果は以下の表3に要約されている。
【0097】
【表3】

【0098】
HeLa細胞を、Iκβ-PL(0.5μg/ウェル)および漸増する量のsiRNAプールと共にIκβ(0.01-100 nM/ウェル)へと共トランスフェクトした。上述の通りに手順を実行した。EFC活性は、siRNAのProLabelタグ付きIκβ遺伝子の発現を減少させる効果を実証した(A)。ウエスタン分析およびイースタン分析を、IκβsiRNAプールの量を滴定した後に発現されたIκβ-PLタンパク質の濃度をモニターするために行った。イースタンおよびウエスタンのデータは、Iκβ-PLの検出される濃度が減少することを示すEFCの結果を支持する。
【0099】
本実験では、STAT1遺伝子(GenBank登録番号:NM_032612)にProLabelのタグをつけた。STAT1(Dharmacon社、カタログ番号:M-004718-00-50)に対する4つの異なる特異的なsiRNAをそれぞれ同等の濃度で含むプール、またはSTAT1に対する同一の濃度の個々のsiRNAのいずれかの量を滴定するために、このプラスミドコンストラクト(0.5μg/ウェル)をHeLa細胞へ共トランスフェクトした。ネガティブコントロールのsiRNAは、ナンセンススクランブルオリゴ配列(Dharmacon社、カタログ番号:D-001206-13-05)であり、これについても同様の濃度(11nM、1.11nMおよび0.11nM)で試験した。細胞をトランスフェクションした16時間後に回収し、500μlの細胞溶解バッファー(DiscoveRx社)中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。図8に示すように、STAT1-PLプラスミドDNAを共トランスフェクトすると、プールおよび個々のSTAT1 siRNAの濃度が増加するにつれて(siRNA #3という例外を除けば)、STAT1-PL活性をモニターすることによって測定したEFC活性は90%以上減少するという結果になった。ネガティブコントロールのスクランブルsiRNAは、STAT1-PLのEFCを25%以上減少させることは一度もなかった。これらの結果は、α‐STAT1抗体(Cell Signaling Technologies社、カタログ番号:9176)およびイースタン分析を用いたウエスタン分析によっても確認された。ウエスタン分析では、内因性のSTAT1もProLabelタグ付きのSTAT1も共に検出された。イースタン分析は、STAT1-PLに対する単一の明瞭なバンドを検出した。個々のsiRNAによる処理に基づき、STAT1-PLの検出が減少したり消失したりするという傾向が示された。0.11nM/ウェルの時点でEFC活性が70%以上減少したほかのsiRNAと比較すると、個々のSTAT1 siRNA#3は発現に影響を与えなかった。このことは、ウエスタン分析およびイースタン分析によっても示された。
【0100】
STAT1-PL、そして3つの異なる濃度のプールおよび個々のSTAT1 siRNAないしはネガティブコントロールsiRNAを共トランスフェクトされたHeLa細胞由来の溶解物に関して、上述のプロトコールに続いて、384ウェルプレートのフォーマットにおいてEFC活性を分析した。溶解物の一部についても4〜12%のビストリスゲル上で泳動し、ウエスタンおよびイースタン分析にかけ、再び上記に掲載した手順を行った。
【0101】
図8の結果は以下の表4に要約されている。
【0102】
【表4】

【0103】
以下の実験を、細菌で発現された型およびカラムで精製された型のグルタチオ-S-トランスフェラーゼタグ付きProLabel(GST-PL)を用いて行った。GST-PLをCoomassie Brilliant Blue染色により決定する均質性を80%を超えるレベルまで精製し、物質の濃度を分光光度計でA280の吸光度を読み取ることによって測定した。すべての実験においてGST-PLおよびGST単独(コントロール)をCHO-K1哺乳類細胞5x106細胞/mLより単離した全細胞溶解物中に希釈した。
【0104】
第一の実施例では、細菌性GST融合発現コンストラクト:pGEX-6P1(Amersham社)およびpGEX-6P-1+ProLabelを37℃で対数増殖期(OD600値を読み取ることによって決定する)まで成長させ、その後37℃でオーバーナイトで0.5 mMのIPTG(最終濃度)を導入した。細胞を回収して超音波処理によって溶解し、遠心分離によって浄化して上澄みを保持した。この物質をα-GST-セファロース樹脂200μlと共に、4℃で1時間振動させながらインキュベートした。樹脂をペレット化し、PBS+1Xプロテアーゼインヒビター・カクテルと共に3回洗浄した。GST融合タンパク質を10mMの還元グルタチオン(50 mM Tris-pH8.0中に作成されている)を用いて樹脂から溶出した。約5ngのGSTまたはGST-PL融合タンパク質を、3個の4〜12%ビストリスアクリルアミドゲル上で泳動した。1つのゲルをCoomassie Brilliant Blueによって染色した。他の2つのゲルは、ニトロセルロースメンブレンへエレクトロトランスファーした。1つのゲルは、抗GSTポリクローナル抗体‐ウエスタン分析によって調査した。ウエスタン分析を、抗GSTポリクローナル抗体(Amersham社、カタログ番号:27-4577-01)の1対7500希釈物を用いて行い、4℃でオーバーナイトでインキュベートした。次の日、ブロットをPBS+0.01% Tween 20中で3回洗浄し、二次抗体(Donkey anti-Goat IgG-HRP, 1:10000希釈, Promega社 カタログ番号:V805A)を用いて分析を行い、PBS+0.01% Tween 20溶液で3回洗浄し、Pierce Supersignal West dura extended duration substrate(Pierce社、カタログ番号:34075)のプロトコールに従って発色させた。もう1つのブロットをイースタン分析のために使用した。イースタンを5X EAと共に1時間インキュベーションし、その後X-galの20mg/mlストック液をブロットに100μl追加して、振盪機の上で室温でインキュベートした。X-gal基質を添加した3時間以内にGST-PLバンドを検出した。
【0105】
GST単独のみならずGST-PL生成物の全長、および分解産物をα-GSTウエスタン分析によって検出した。イースタン分析は、GST-PLの正確なサイズの単一のバンド(〜33kDa)を検出した。
【0106】
精製GSTおよびGST-PL(5 ng)をCHO-K1細胞溶解物中に希釈し、SDS−PAGE上で泳動した。ゲルは、Coomassie brilliant blueで染色するか(A)、ウエスタン分析のためにニトロセルロースメンブレンにトランスファーするか(B)、イースタン分析のためにニトロセルロースメンブレンにトランスファーした(C)。イースタンはGST-PLの場合には38kDの位置に明瞭な単一のバンドを有し、GSTの場合にはバンドを有さなかったが、ウエスタン分析のGST-PLの場合には たくさんのびまん性のバンドを有し、Coomassie brilliant blue染色ではGST-PLの場合には38kDの位置に、GSTの場合には28kDの位置にバンドを示した。ブロットを、優先権仮出願中で指示したパネル中に示す。
【0107】
イースタン検出の感度を上昇させるために、化学発光性基質のPromega Beta-Glo (カタログ番号:E4740)を試験した。EFC活性の増幅可能な酵素反応を利用するために、アッセイプロトコル中でX-galの代わりに発光性基質を用いて、検出感度を増加させ、そしてシグナルを検出するために必要な時間をできる限り減少させた(4〜24時間の露光時間)。Promega基質は、ルシフェリン‐ガラクトシド基質(6-O-β-ガラクトピラノシル-ルシフェリン)を利用している。ProLabelおよびEAは、活性β‐ガラクトシダーゼ複合体を形成するやいなや、基質を分解してルシフェリンおよびガラクトースを形成する。次に、光を生成するために、ルシフェリンをホタルルシフェラーゼ反応において利用する。SDS-PAGE上でGSTまたはGST-PLを泳動させると、PLタグ付きの関心遺伝子を明瞭なバンドとして検出することが可能であるという点で、Promega基質はイースタンプロトコールにおいて効果がある。GSTおよびGST-PLの量は2.5〜0.09ng/レーンと滴定された。ニトロセルロースメンブレンにトランスファーされたタンパク質を5mlまでの5X EA溶液(DiscoveRx社) と共に2時間または4時間インキュベーションし、その後3mlのPromega基質と共に15分間インキュベーションした。GST-PLサンプルのレーンでは、UVP撮影装置上での30分間の露光時間によってバンドが明瞭に検出された。5X EA溶液と共に2時間または4時間予めインキュベーションして60分間の露光すると、発光性基質を用いた場合にはGST-PLタンパク質の検出レベルは0.09ngであった。
【0108】
GSTまたはGST-PL(0.09 ng〜2.5 ng/レーン)のいずれかの様々な濃度を4〜12%のビストリスゲル上にロードした。標準的なウエスタントランスファーを施行し、サンプルを5X EAと共に2時間または4時間インキュベ−トし、その後PromegaプロトタイプのBeta-Glo基質と共に15分間インキュベーションした。ゲル撮影装置上で30分および60分の露光を行った。EAと共に4時間インキュベートし、その後Beta-Glo基質と共に60分露光することによって、GST-PLタンパク質の0.28ngのレーンを明瞭に検出することができ、かすかに0.09ngのレーンを検出することができた。
【0109】
次の実験は、EAおよび発光性基質を共に混合することによって、各要素を別々に添加することによって検出されるシグナルと同様のシグナルが検出されるかどうか、という疑問を対象にしている。このことにより1回のインキュベーション期間が短縮され、プロトコールは1〜2時間短くなるであろう。GSTおよびGST-PLをSDS-PAGE上で泳動し、5X EAおよびPromega 発光性基質の4対1混合物と共に1または2時間探索し、その後ゲル撮影装置上で30分または60分間露光した。60分の露光によって、2.5〜0.09ngのGST-PLの力価を検出できる。
【0110】
GSTまたはGST-PL(0.09 ng〜2.5 ng/レーン)のサンプルを4〜12%のビストリスゲル上にロードした。標準的なウエスタントランスファーを施行し、サンプルを5X EAおよびPromegaプロトタイプのBeta-Glo基質の4対1混合物と共に1時間または2時間インキュベ−トした。ゲル撮影装置上で30分および60分の露光を行った。EA/基質を1時間および2時間インキュベーションし、60分露光することによって、1レーンあたり0.09ngの場合にもGST-PLが検出された。出現した非特異的なバンドは非常に少なかった。GST単独またはCHO-K1単独(CHO)の溶解物中には、非特異的なバックグランドのバンドは観察されなかった。
【0111】
イースタンシグナルの検出は使用するメンブレンの種類に依存しているのかどうかを調べるために、ニトロセルロースおよびポリフッ化ビニリデン(PVDF)のメンブレンの比較を行った。漸増する濃度のGSTおよびGST-PLをSDS-PAGE上で泳動し、各々のメンブレンタイプへウエスタントランスファーを行った。4つの別々のブロットを5X EAと共に1時間予めインキュベートし、その後Promega基質と共に15分間インキュベートした。または、EAおよび基質の4対1の混合液を作製し、ブロット上で1時間インキュベートした。10分間露光することにより、両メンブレンは強いバンドを示し、検出されるシグナルはタンパク質泳動の濃度に相関して漸増していた。ニトロセルロースメンブレンと対比して、PVDFメンブレン上にはバックグランドのより少ないより明瞭なシグナルが存在することが分かった。
【0112】
EAおよび基質を用いた2つの異なるインキュベーション時間を試験した。また、2つの異なる種類のメンブレン、ニトロセルロースおよびPVDFを比較した。最初に、5X EAを発光性基質と混合し(4:1)、2つの異なる種類のメンブレンへと1時間添加し、結果を時間と共に測定した。溶解物から生成される非特異的な生成物が存在しないことを実証するために、GSTおよびGST−PLタンパク質を希釈するために使用するCHO−K1溶解物をもゲル上で泳動した。撮影装置上で10分間露光した。次に、2セットのメンブレンを5X EAと共に1時間予めインキュベーションし、その後発光性基質とともに10分間インキュベートし、その後撮影装置上で10分間の露光を行った。データは、EAおよび基質を混合した場合にも、EAと共に予めインキュベーションを行ってから基質を短期間添加した場合にも、同様の結果が観察されることを示している。しかし、ニトロセルロースメンブレンと対比して、PVDFメンブレン上にはバックグランドのより少ないより明瞭なシグナルが存在することが分かった。
【0113】
イースタン分析によって検出可能なタンパク質の最低のレベルを実証するために、GSTおよびGST−PLタンパク質の別の力価(0.28〜0.01ng)をSDS-PAGE上で泳動した。ゲルのウエスタントランスファーをニトロセルロースメンブレン上へと行った。ブロットを2X EAまたは5X EAのいずれか3mlと共に1時間インキュベートし、2mlのPromega Beta-Glo基質と共に15分間インキュベーションした。ブロットを5分間または10分間露光した。データは、2X EAまたは5X EAのいずれかを用いると、最低で0.03ngの濃度において明瞭なGST-PLのバンドが検出されることを示している。
【0114】
GSTおよびGST-PLを4〜12%のビストリスゲル上で泳動し、ウエスタントランスファーを行い、イースタン分析を施行した。メンブレンを2X EAまたは5X EA試薬3mlと共に1時間インキュベートし、その後2mlのPromega Beta-Glo基質と共にインキュベーションした。ブロットを5分間または10分間露光した。2X EAを用いると、最低で0.03ngの濃度において明瞭なGST-PLのバンドが検出された。5X EAを用いたときには、よりサンプルのスミアリングが存在した。
【0115】
イースタン分析およびウエスタン分析の直接の比較を行った。異なる量(0.03〜0.71 ng)のGSTおよびGST-PLと共に二重のゲルを泳動した。イースタン分析を、1時間インキュベートした後に15分間発光性基質と共にインキュベートし、10分間露光した5X EAを用いて行った。正確なサイズの明瞭なGST-PLのバンドが、イースタン分析によって各々の異なる濃度において検出された。ウエスタン法も、各々の濃度においてGSTおよびGST-PLを検出することができた。しかし、ブロット上にはより高濃度の非特異的なバックグランドが存在した。これは、使用した一次抗体および二次抗体の濃度に起因する可能性があり、さらなる分析を行う必要があるだろう。
【0116】
GSTおよびGST-PLをSDS-PAGE上で泳動し、ニトロセルロース上へウエスタントランスファーした。イースタン分析およびウエスタン分析を、上述のとおりに行った。イースタン分析の場合には、メンブレンをUVP撮影装置の下で3分間露光した。ウエスタントランスファーに関しては、UVP撮影装置の下で1分間露光した。イースタン分析は単一のバンドのみを示したが、ウエスタン分析の場合にはたくさんのバンドが観察され、28kDおよび38kDのバンドが共に含まれていた。
【0117】
上述の結果からは、主題とされるシステムは、天然の代謝の一部としてのタンパク質の運命、別のタンパク質の発現の変化によって影響される場合のタンパク質の運命、または外的ないし内的環境の変化によって影響される場合のタンパク質の運命をたどることが可能であることは明らかである。本システムは、イースタン法と連携して使用したときに特に強力であり、簡潔なプロトコールを可能にしたり、同一の条件下で評価された多くの異なる結果を容易に比較したりすることを可能にする。主題とされるシステムは、タンパク質が細胞内で修飾を受けうる様々な様式を分析することを可能とし、細胞の進化の過程におけるタンパク質の状態についてのスナップショットを提供する。全ての細胞が同一の状態にある場合には、分析の時点でタンパク質のプロファイルが得られる。細胞が異なる状態にある場合には、細胞の一生の間に、タンパク質の変遷についての描写が得られる。
【0118】
環境の変化が細胞内タンパク質の状態に与える影響を検出するためのイースタン法は、非常に感度が高く、従来のウエスタン分析に比べて多くの利点をもたらす。この手法はEDラベルを担持する細胞内タンパク質をごくわずかな量でも検出することを可能にし、その結果、たとえば、ユビキチン化およびポリユビキチン化、部分分解産物、リン酸塩やアセチル基などの小さな官能基の追加や除去などといった、さまざまな種類の修飾を受けた標的タンパク質を観察することができる。本方法はハイスループットスクリーニングへ容易に応用することが可能で、ウエスタン法と実質的に類似するステップを提供する。融合タンパク質コンストラクトによって細胞を形質転換するさらなるステップは商業的に実行することが可能であり、こうした細胞を個々のタンパク質に利用することもできるし、当業者ならば容易に実行可能である。主題方法は、細胞内プロセス、環境の変化に対する細胞の反応性、および生理作用について化合物を迅速にスクリーニングする能力について理解しようとする努力に対して、重要な進歩および利点をもたらし、時間に伴う変化をモニターする機会を提供する。
【0119】
個々の出版物または特許出願について参照することにより本書に組み込まれることをあたかも具体的および個別に示したかのごとく、本明細書において引用した全ての出版物および特許出願は参照することにより本書に組み込まれる。
【0120】
前述の発明について、理解しやすくする目的で説明図および具体例を用いて詳細に記載してきたが、本発明の教示を考慮に入れて、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、一定の変化および修正を加えてもよいことが当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】ProLabelとc-mycエピトープの両方のタグ付きのβ−アレスチン2融合タンパク質のブロットの検出を示す。イースタンブロット(上段のパネル)を、発色性基質であるX−Galを必要時間インキュベーションした後、白色光下で撮影した。1Aは一晩インキュベーションしたイースタンブロットである;1Bは2日間インキュベーションしたイースタンブロットである。ウエスタンブロット(下段のパネル)を、化学発光性基質のCDP−Starにより発色し、必要露光時間を用いてCCDカメラにより検出した。レーン1は、予め着色されたMWマーカー(Invitrogen社、カタログ番号:LC5925)である。レーン2〜4は、それぞれ、プラスミドpPL-myc-barr2, pbarr2-myc-PL, およびpEGFP-C1を一過性に発現させたCHO-K1細胞の溶解物である。1Cは、ポリクローナル抗体と共に6分間インキュベーションしたウエスタンブロットである;1Dは12分間インキュベーションしたウエスタンブロットである。
【図2】HeLa Iκβ−PL安定細胞をTNF-αで必要時間処理した後に溶解物中に存在するIκβ-PLタンパク質の量を表すグラフである。EFC値を、未処理のコントロールの細胞(“0”時点の細胞)に対する百分率として表現する。
【図3】化学発光性基質Beta-Gloを使用し、CCDカメラにより3分間露光した際の、Iκβ−PLのイースタンブロットによる検出(上段A)を示す。分子量マーカーのサイズ(kD)は左側に示してある。抗アクチンウエスタンブロット(下段パネルB)は、ローディングコントロールとしての機能を果たす。サンプルは図2において記述したものと同一である。
【図4】図3に示したイースタンブロットのCCDカメラ露光時間を増やした場合のイースタンブロットである(分単位で各パネルの右下隅に記してあり、4Aは5分、4Bは10分、4Cは15分、4Dは30分である)。Dのアスタリスク(*)は、露光時間をより長くしたときに高分子量のバンドが出現するブロットの領域をマークしている。
【図5】種々の量のsiRNA(明細書参照)の存在下における、p53-PLの発現に関する棒グラフである。
【図6】サイクリンD1-PLの発現に対するsiRNAの影響を示す棒グラフである(明細書参照)。
【図7】IκB-PLの発現に対するsiRNAの影響を示す棒グラフである(明細書参照)。
【図8】STAT-1-PLの発現に対するsiRNAの影響を示す棒グラフである(明細書参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内標的タンパク質の状態を、前記標的タンパク質の少なくとも実質的な部分およびEDとの融合タンパク質から構成される代用タンパク質を用いて測定する方法であって、前記EDは相補的な断片EAと活性酵素を形成する酵素断片相補対の一方のメンバーであることを特徴とし、前記方法は、
前記融合タンパク質の発現コンストラクトを形質転換させた細胞を溶解して、前記融合タンパク質の細胞内での発現をもたらすステップと、
前記EDを含む前記融合タンパク質およびその修飾物を、サイズおよび質量対電荷比の少なくとも1つによって分離するように前記溶解物を複数の分画に分離するステップと、および、
前記分画の中に前記融合タンパク質およびその修飾物が存在することを、前記活性酵素の基質の存在下で前記EDの前記EAへの結合を用いて測定するステップとから構成される、上記方法。
【請求項2】
前記酵素はβ-ガラクトシダーゼである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EDは約100アミノ酸未満である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記EDは前記標的タンパク質のC末端に位置する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞を溶解する前に、前記細胞を薬剤と接触させて、前記細胞内の前記標的タンパク質の状態に対する前記薬剤の効果を測定する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤は前記標的タンパク質以外のタンパク質に対するRNAiである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
細胞内標的タンパク質の状態を、前記標的タンパク質の少なくとも実質的な部分およびEDとの融合タンパク質から構成される代用タンパク質を用いて測定する方法であって、前記EDは相補的な断片EAと活性酵素を形成する酵素断片相補対の一方のメンバーであることを特徴とし、前記方法は、
前記融合タンパク質の発現コンストラクトを形質転換させた細胞を溶解して、前記融合タンパク質の細胞内での発現をもたらすステップと、
ウエスタンブロットを提供するためにゲル電気泳動法およびウエスタンブロット法を用いて前記溶解物を分離するステップと、および、
前記ウエスタンブロットを前記EAおよび検出可能な基質を用いて発色させ、この結果として前記EDを含む任意の融合タンパク質および修飾された融合タンパク質とを検出するステップとから構成される、上記方法。
【請求項8】
前記酵素はβ-ガラクトシダーゼである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記EDは約100アミノ酸未満である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記EDは前記標的タンパク質のC末端に位置する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞を溶解する前に、前記細胞と薬剤とを接触させて、前記細胞内における前記標的タンパク質の状態に対する前記薬剤の影響を測定する請求項7に記載。
【請求項12】
前記薬剤は前記標的タンパク質以外のタンパク質に対するRNAiである請求項7に記載の方法。
【請求項13】
細胞内標的タンパク質の状態を、前記標的タンパク質の少なくとも実質的な部分およびEDとの融合タンパク質から構成される代用タンパク質を用いて測定する方法であって、前記EDは相補的な断片EAと活性酵素を形成するβ‐ガラクトシダーゼの一方のメンバーであることを特徴とし、前記方法は、
前記融合タンパク質の発現コンストラクトを形質転換させた哺乳類細胞を溶解して、前記融合タンパク質の細胞内での発現をもたらすステップと、
ウエスタンブロットを提供するためにゲル電気泳動法およびウエスタンブロット法を用いて前記溶解物を分離するステップと、および、
前記ウエスタンブロットを前記EAおよび検出可能な基質を用いて発色させ、この結果として前記EDを含む任意の融合タンパク質および修飾された融合タンパク質とを検出するステップとから構成される、上記方法。
【請求項14】
前記ゲル上で天然の標的タンパク質を決定するさらなるステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ウエスタンブロットはPVDFメンブレンを使用する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ウエスタンブロットはニトロセルロースメンブレンを使用する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記EDは35乃至100アミノ酸からなる請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞を溶解する前に、前記細胞を薬剤と接触させて、前記細胞内の前記標的タンパク質の状態に対する前記薬剤の効果を測定する請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤は候補薬剤である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤はRNAiである請求項18に記載の方法。
【請求項21】
標的タンパク質およびEDとから構成される融合タンパク質をコードする核酸配列、EA、前記EDおよびEAの複合体によって形成される酵素の基質、および少なくとも1つのゲル、メンブレン、ウエスタンブロット法に用いるバッファー、およびブロッティング用ろ紙とから構成されるキット。
【請求項22】
前記酵素はβ-ガラクトシダーゼである請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記基質は蛍光生成物を産生する請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記基質は化学発光性生成物を産生する請求項22に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−504820(P2008−504820A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519435(P2007−519435)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/023287
【国際公開番号】WO2006/004936
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504058215)ディスカヴァーエックス インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】