説明

細胞分離の組成物、キット、および方法

【課題】細胞分離のための組成物、キットおよび方法の提供。
【解決手段】約0.1%〜約10%の濃度で存在する、少なくとも約0.05%のポリラクタム(例えば、ポリビニルピロリドン)を含むシラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体からなる細胞分離における使用のための組成物であって、好ましい実施態様において、分離媒体は、有機シラン処理コロイド状シリカ粒子の懸濁液から構成され、その利点が、後にその中で分離された細胞に対して傷害性効果を与えることなしに、組成物がオートクレーブによってまたは電離放射線によって、滅菌され得ることである、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、細胞分離のための組成物、キットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞および細胞成分の分離は、基礎研究および診断適用において重要な道具を必要とし、臨床の環境において、ますます重要になっている。ヒトの治療における細胞移植方法の使用(例えば、骨髄移植)は、迅速であり、かつ再現性があるだけでなく生存可能で、安全で、非傷害性の細胞組成物もまた生成する細胞分離手順が必要とされてきた。このような単離手順は、大量の細胞の中で比較的少ない細胞を単離することに適切であることが、さらに望ましい。例えば、ある型のガンための化学療法の後に、現在多くの患者が、様々な組織(例えば、骨髄、末梢血、または臍帯血から単離した造血始原細胞(hematopoietic progenitor cell)の富化画分からなる「幹細胞移植」を受けている。このような始原細胞は、これらの組織に存在する細胞の総数の約1%のみを構成する。
【0003】
密度勾配遠心分離は、細胞および細胞成分を分離し、そして単離する一般的な技術である。この方法は、限定された密度媒体中で細胞の浮遊密度によって細胞が分離する現象を利用する。このような媒体は、溶液または微粒子の懸濁液であり得る。密度勾配分離において通常使用される媒体の例は、スクロース、デキストラン、ウシ血清アルブミン(BSA)、FICOLLジアトリゾエート(Pharmacia)、FICOLLメトリゾエート(Nycomed)、PERCOLL(Pharmacia)、メトリザミド、および、重塩(例えば、塩化セシウム)を含む。多くのこれらの媒体への細胞の曝露は、細胞の損なわれた生物学的機能および/または傷害性(toxic)成分による調製物の汚染をもたらす。例えば、BSAおよびFICOLLは、生理学的なpHで所望でない細胞凝集を起こすことが知られている。さらに、これらの媒体は、「最終形態」−すなわち、特定の細胞型を単離することにおいて使用することが容易である濃縮、イオン性溶液、および容器において、オートクレーブまたは照射による滅菌に一般的に耐えられない。
【0004】
血球画分の調製において広く使用されてきた一つの細胞分離媒体は、PERCOLL(Pharmacia Fine Chemicalsの登録商標)である。PERCOLLは、各粒子へのポリビニルピロリドン被覆を形成する硬化プロセスによって処理されたコロイド状シリカ粒子である。PERCOLLは、生理学的なpHでかなり安定であるが、治療目的で細胞を単離することにおいて、その一般的な有用性に対していくらか限界が存在する。例えば、媒体は、生理学的食塩溶液に希釈された後、オートクレーブまたは電離放射線に安定ではないので、媒体は滅菌することは困難である。これらの特性は、分離した細胞の、ヒトまたは最終的に滅菌された物質が要求される任意の部位への再導入を包含する臨床的適用のための生成物の有用性を制限する。
【0005】
米国特許第4,927,749号は、先に議論された問題のいくつかを解消する密度勾配分離のための有機シラン処理コロイド状シリカ(OCS)粒子(OCSP)の調製を提供する。生理学的食塩溶液中で希釈する場合、OCSは、加熱および電離放射線による滅菌に対して安定である一方、電離放射線によって滅菌する場合、OSC粒子調製物は、特定の希な細胞型(例えば、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルサプレッサー細胞、細胞傷害性T細胞、および特に造血前駆(CD34+)細胞)に対して傷害性である。電離放射線による最終的な滅菌は、ある種の適用、(特にプラスッチク製の消耗可能な容器中の物質の封じ込めを含む)に好ましくあり得るので、臨床的適用のためのこの物質の使用は、制限され得る。さらに、その物質は、細胞の凝集または集合を誘導することが見出されており、これは、機能的な形態におけるこのような希な細胞の有意に減少した収量をもたらす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、「希な」細胞画分(例えば、細胞集団中で全細胞数の約1%未満を構成する細胞型)の単離のために特に適切である組成物および方法を提供する。特に、本発明は、細胞凝集および細胞傷害性を減少させることによって細胞の収量および機能的な可能性を改善するコロイド状シリカ細胞分離媒体を含む。ポリラクタム(例えば、γポリラクタムポリビニルピロリドン(PVP))の包含が、コロイド状シリカ密度勾配物質が懸濁している溶液において、希な血球の凝集を顕著に減少し、改善された収量をもたらすことが、本発明の知見である。媒体へのポリラクタムの添加が、OCS溶液の照射誘導性傷害性を減少させることによって、特定の血液始原細胞の密度勾配単離の間のクローン原性可能性の消失を防ぐことが本発明のさらなる知見である。
【0007】
本発明はまた、診断および治療方法において重要な特定の細胞型−例えば、骨髄由来の造血始原(CD34+)細胞、選択された腫瘍細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、およびナチュラルサプレッサー細胞−の単離のための方法を提供する。本発明はまた、特定の臨床的結果に干渉し得る細胞型(例えば、CTL)の涸渇を提供する。
【0008】
本発明の要旨
1つの局面において、本発明は、約0.1%〜約10%の濃度で存在する、少なくとも約0.05%のポリラクタム(例えば、ポリビニルピロリドン)を含むシラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体からなる細胞分離における使用のための組成物を含む。好ましい実施態様において、分離媒体は、有機シラン処理コロイド状シリカ粒子の懸濁液から構成される。この組成物の利点は、後にその中で分離された細胞に対して傷害性効果を与えることなしに、組成物がオートクレーブによってまたは電離放射線によって、滅菌され得ることである。
【0009】
本発明の媒体を含む粒子は、約0.003〜50ミクロンの範囲であり得るが、コロイド状シリカ粒子は、通常、平均直径10〜50nmである。
【0010】
本発明の組成物は、特に細胞混合物から選択された希な血球を単離することにおける使用のために適切である。本明細書中に記載される方法によれば、このような場合において、媒体は、粒子懸濁液が上記の選択された細胞の約0.0005gr/ml内の比密度(specific density)を有するように調製される。例示的な希な細胞型は、造血始原CD34+細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルサプレッサー細胞、細胞傷害性T細胞、腫瘍細胞、および有核胎児細胞を含む。
【0011】
造血始原CD34+細胞は、末梢血単核細胞から単離され得、その場合において、好ましい有機シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液は1.0605gr/mlの比密度を有する。造血始原CD34+細胞が骨髄細胞から単離される場合、有機シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液は1.0685gr/mlの比密度を有する。
【0012】
樹状細胞もまた、上記の組成物を使用して単離される。この場合において、1.0770gr/ml、1.0720gr/ml、1.0650gr/ml、1.0610gr/ml、および1.0565gr/mlの密度を有する懸濁液が利用され得る。
【0013】
本発明はまた、細胞分離キットを含む。キットは、遠心可能な容器、および上記のようなシラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離懸濁液からなる。
【0014】
また、シラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体を滅菌する方法を包含し、ここで分離媒体は、少なくとも約0.05パーセント、および好ましくは約0.1〜10%のポリラクタムの存在下におけるオートクレーブまたは電離放射線に供される。
【0015】
より一般的には、本発明は、細胞混合物から選択された希な血球を単離する方法を含み、ここで混合物が、選択された細胞の約0.0005gr/ml内の比密度を有するシラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体上にまず重層される。次いで混合物が遠心分離される。好ましい実施態様によれば、遠心分離は、いわゆる「細胞トラップ」チューブ中で行われ、そのチューブは、以下を含む:(i)側壁および閉鎖した底、および(ii)チューブ内で処理された狭窄部材(constriction member)、ここで狭窄部材は、チューブを逆さまにした場合、狭窄部材の下のチューブの底部分に液体を保持するように位置付けられそして構築される。さらに、この構成において、遠心分離前に、チューブは、上記狭窄部材の上方で、上記狭窄部材によって形成される開口部材の上方のレベルに至るレベルまで分離媒体で満たされ、その結果、細胞−分離媒体および低密度媒体間の界面に捕捉された細胞は、遠心分離後、チューブを逆さまにした場合、低密度媒体と共に排出される。チューブはまた閉鎖した頂部、頂部の第1のポート(液体物質が、そのポートを通してチューブに導入され得る)、頂部の第2のポート、および第2のポートを狭窄部材の下のチューブの底部に連絡する閉鎖した液体通路を含む。
【0016】
この構成は、1.0605gr/ml(末梢血細胞混合物から)および1.0685gr/ml(骨髄から)の分離媒体濃度で機能的な造血始原細胞を単離するために使用される。腫瘍細胞は、1.0490〜1.0580gr/mlの範囲から選択される比密度の細胞分離媒体を使用するこの方法によって単離され得る。同様に、樹状細胞もまた、1.0770gr/ml、1.0720gr/ml、1.0650gr/ml、1.0610gr/ml、および1.0565gr/mlの比密度を有する分離媒体を使用して単離され得る。
【0017】
細胞傷害性Tリンパ細胞は、1.0720gr/ml、1.0610gr/ml、または1.0565gr/mlの比密度を使用して単離され得る。
【0018】
前述の分離方法は、細胞抗原−特異的結合分子に付着されるシラン処理シリカ粒子を含む懸濁液を添加することによって増強され得る。このような添加は、所望でない細胞型(例えば、Tリンパ細胞)を調製物から涸渇させるために使用され得る。
本発明によって、以下が提供される:
(1)細胞分離のための組成物であって、
少なくとも約0.05%ポリラクタムを含むシラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体を含む、組成物。
(2)前記コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体が、有機シラン処理シリカ粒子から構成される、項目1に記載の組成物。
(3)前記ポリラクタムを含む前記分離媒体が滅菌される、項目1または2のいずれかに記載の組成物。
(4)前記組成物が、オートクレーブまたは電離放射線によって滅菌される、項目3に記載の組成物。
(5)前記電離放射線がγ線照射およびE−ビーム照射より選択される、項目4に記載の組成物。
(6)前記ポリラクタムが、約0.1〜約10パーセントの濃度で存在するポリビニルピロリドンである、項目1〜5のいずれかに記載の組成物。
(7)前記粒子が、約0.003〜50ミクロンの直径を有する微粒子である、項目1〜6のいずれかに記載の組成物。
(8)細胞混合物から選択された希な血球の単離における使用のための組成物であって、前記シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液が、該選択された細胞の約0.0005gr/ml以内の比密度を有する、項目1〜7のいずれかに記載の組成物。
(9)前記希な血球が造血始原CD34+細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルサプレッサー細胞、細胞傷害性T細胞、腫瘍細胞、および有核胎児細胞からなる群より選択される、項目8に記載の組成物。
(10)前記希な血球が、造血始原CD34+細胞、末梢血単核細胞を含む前記細胞混合物であって、かつ前記有機シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液が、1.0605gr/mlの比密度を有する、項目9に記載の組成物。
(11)前記希な血球が、造血始原CD34+細胞、骨髄細胞からなる前記細胞混合物であって、かつ前記有機シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液が、1.0685gr/mlの比密度を有する、項目9に記載の組成物。
(12)前記希な血球が、樹状細胞であり、前記細胞混合物が末梢血単核細胞を含み、かつ前記有機シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液が、1.0770gr/ml、1.0720gr/ml、1.0650gr/ml、1.0610gr/ml、および1.0565gr/mlからなる群より選択される比密度を有する、項目9に記載の組成物。
(13)細胞分離のためのキットであって、
遠心分離可能な容器、および項目1〜12のいずれかに記載のシラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離懸濁液を含む、キット。
(14)シラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体を滅菌する方法であって、前記細胞分離媒体を少なくとも約0.05のパーセントポリラクタムの存在下においてオートクレーブまたは電離放射線に供する工程を包含する、方法。
(15)前記ポリラクタムが、約0.1〜10パーセントの濃度で存在するポリビニルピロリドンである、項目14に記載の方法。
(16)前記シリカ粒子が、有機シラン処理コロイド状シリカ粒子である、項目14または15のいずれかに記載の方法。
(17)細胞混合物から選択された希な血球を単離する方法であって、
該希な造血始原細胞を含む該混合物を、項目1〜7のいずれかに記載のシラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離媒体に重層する工程、および
該混合物を、該選択された細胞の比密度より大きい比密度を有する細胞をペレットにするのに充分な遠心力で遠心分離する工程、
を包含する、方法。
(18)前記希な細胞および前記細胞分離媒体を含む前記混合物は、
側壁および閉鎖した底を、有する遠心分離チューブに収容され、
該チューブ内に配置された狭窄部材、該狭窄部材は、チューブが逆さまになった場合、該狭窄部材の下方の該チューブの底部に液体を保持するように位置付けられそして構成され、そして
ここで、該細胞分離媒体は、前記選択された細胞型の比密度の±0.0005gr/ml以内である比密度を有し、そして該媒体は、該チューブの底部に含まれ、そして該狭窄部材の上方で、該狭窄部材によって形成される開口部の上方のレベルに至るレベルまで満たされ、その結果、細胞−分離媒体および低密度媒体間の界面に捕捉された細胞は、遠心分離後、チューブを逆さまにした場合、低密度媒体と共に排出される、項目17に記載の方法。
(19)前記チューブが、閉鎖した頂部、液体物質が該チューブに導入され得る該頂部の第1のポート、該頂部の第2のポート、および該第2のポートを前記狭窄部材の下方の該チューブの前記底部に連絡する閉鎖した液体チャンネルを含む、項目18に記載の方法。
(20)前記選択された希な細胞が、機能的な造血始原細胞であり、前記細胞混合物が、末梢血単核細胞混合物であり、ここで、前記細胞分離密度勾配懸濁液の比密度が、1.0605gr/mlである、項目17に記載の方法。
(21)前記選択された希な細胞が、機能的な造血始原細胞であり、前記細胞混合物が、骨髄細胞混合物であり、ここで、前記細胞分離密度勾配懸濁液の比密度が、1.0685gr/mlである、項目17に記載の方法。
(22)前記選択された希な血球が、腫瘍細胞であり、前記細胞混合物が、血液または骨髄由来であり、かつ細胞分離媒体が1.0490〜1.0580gr/mlの範囲より選択される比密度を有する、項目17に記載の方法。
(23)前記選択された希な血球が、樹状細胞であり、かつ前記細胞分離媒体が、1.0770gr/ml、1.0720gr/ml、1.0650gr/ml、1.0610gr/ml、および1.0565gr/mlからなる群より選択される比密度を有する、項目17に記載の方法。
(24)前記選択された希な血球が、細胞傷害性Tリンパ細胞であり、かつ前記細胞分離媒体が、1.0720gr/ml、1.0610gr/ml、および1.0565gr/mlからなる群より選択される特定の細胞密度を有する、項目17に記載の方法。
(25)前記細胞混合物を、細胞抗原特異的結合分子を付着したシラン処理シリカ粒子を含む懸濁液を添加する工程をさらに包含する、項目17〜24のいずれかを含む方法。
(26)T細胞リンパ球を涸渇することにおける使用のためであって、前記細胞抗原特異的結合分子が、該T細胞リンパ球上に存在する抗原に結合する、項目25に記載の方法。
(27)前記細胞抗原特異的結合分子が、抗CD3、抗CD4、および抗CD8マウスモノクローナル抗体からなる群より選択される、項目26に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、細胞の分離、特にヒトに移植される細胞の分離または単離に適切な細胞密度分離媒体を含む。本発明はまた、好ましくは、新規の媒体組成物を用いて、特定の細胞型を単離するための方法を含む。
【0020】
以下の節に記載されるように、本発明の媒体は、γポリラクタム(例えば、ポリビニルピロリドン)が、細胞の密度勾配分離に使用される有機シラン処理コロイド状シリカ(OCS)粒子の懸濁液に添加される場合に、細胞傷害性が著しく低減されるという出願人の発見により開発された。
【0021】
特に、ポリラクタムの含有は、造血始原細胞が滅菌シラン処理シリカ粒子の懸濁液に懸濁された場合に起こる、このような細胞の希な集団におけるクローン原性能力の損失を妨げる。さらに、本発明は、密度勾配媒体におけるポリラクタム(例えば、ポリビニルピロリドン)の含有がまた、電離放射線を用いないで起こる造血始原細胞の凝集およびクローン原性能力の損失を低減するという発見を含む。
【0022】
I.定義
「コロイド状シリカ」とは、水に溶解したSiO2由来のモノケイ酸の重合により形成されたコロイド状粒子の水性懸濁液をいう。
【0023】
「シラン処理シリカ粒子」とは、シラン被覆を共有結合した粒子性のシリカ組成物をいう。「有機シラン処理コロイド状シリカ(OCS)粒子」とは、有機シラン被覆を共有結合したコロイド状シリカ組成物をいう。米国特許第4,927,749号は、このような組成物の調製方法を記載する。
【0024】
「希な細胞集団」とは、健常な固体の血液中の全白血球(WBC)数の約1%未満を構成する細胞をいう。希な血球の例として、CD34+造血始原細胞が挙げられ、これはWBC(ナチュラルキラー細胞、ナチュラルサプレッサー細胞、樹状細胞、および細胞傷害性T細胞)の約1%未満を構成する。外因性供給源由来の細胞(哺乳動物の血液の循環胎児細胞を含む)もまたこの定義に含まれる。
【0025】
「細胞傷害性」、「細胞に対する傷害性」、および本明細書中の類似の句とは、細胞集団において測定可能な細胞生存性または生物学的機能の任意の減少をいう。本明細書中に記載される造血始原細胞に関して、この用語は、造血コロニー(CFU)を形成し得る細胞の収率の減少により証明されるように、最も通常には、クローン原性能力の減少をいう。
【0026】
「ポリラクタム」は、ポリマー骨格に結合したペンダントラクタム(環状アミド)基を含むポリマーである。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。ペンダントラクタム基は、一般的に、3〜6炭素原子を含む環状サイズを有する。本発明の使用のための1つの好ましい型のポリラクタムは、4炭素環を有する、ポリビニルラクタム(例えば、ポリビニルピロリドン)である。
【0027】
「樹状細胞」または「DC」は、CD3、CD4、CD8、CD14、CD16、およびCD20の発現についてはネガティブであり、そしてHLA-DR(すなわち、クラスIIMHC)の発現についてはポジティブである免疫細胞である。樹状細胞は特有の形態を示し、すなわちインビトロで培養された場合、樹状を伸長する大きなベール細胞である。
【0028】
「腫瘍細胞抗原」は、分子、一般的にタンパク質であり、特定の腫瘍細胞の表面に曝露される。腫瘍細胞抗原の例として、B細胞リンパ球に存在するCD9、CD10、CD19、およびCD20が挙げられ;特定の乳房腫瘍に特異的な腫瘍細胞抗原として、Her2/Neuおよびエストロゲンレセプターが挙げられる。
【0029】
本発明の状況において、用語「等張性」とは、細胞型および供給源に依存して、細胞により許容される範囲内の浸透圧(通常は約280〜340 mOsm/kg H2O、および好ましくは、ヒト細胞について約280 mOsm/kg H2O)を有することを意味する。
【0030】
II.細胞分離媒体
この節は、細胞混合物から、細胞を単離するために使用され得る種々の細胞分離媒体を記載する。細胞分離の好ましい方法は、細胞分離物質(例えば、密度勾配物質の使用を以下に含む節に記載した。この密度勾配物質は、1.0000gr/ml〜2.0000gr/ml、好ましくは1.0300gr/ml〜1.2000gr/mlの比重を有し、それは、所望の細胞の比重の±0.0005gr/ml以内、好ましくは±0.0002gr/ml以内の精度である。
【0031】
A.密度勾配媒体
好ましい密度勾配媒体は、0.002〜50ミクロンの範囲粒子を有するコロイド状シリカ懸濁液である。1つの有用な媒体は、PERCOLL(シラン処理されておらず、そしてPharmaciaFine Chemicals(Piscataway, N.Y.)から入手可能なコロイド状シリカ粒子懸濁液)である。米国特許第4,927,749号に記載された有機シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液がより好ましく、そして以下に記載されるようにPVPで処理される。
【0032】
本発明の重要な特性によれば、密度勾配溶液が、予め決定された密度に調製および調整されるべきである。さらに、浸透圧は、細胞の完全性(integrity)を保存するために280〜320 mOsm/kg H2Oの範囲に調整されるべきであり、そしてpHは、使用前の、生理学的等張密度勾配を維持するために、好ましくは6.8〜7.8の範囲、最も好ましくはpH7.4であるべきである。浸透圧およびpHは、密度勾配分離法が行われる特定の条件に依存して変化し得る。例えば、サンプルが維持または遠心分離される温度は、適切な密度を維持するために、密度勾配物質の浸透圧および/またはpHに対する改変を必要とし得る。浸透圧およびpHのこのような改変は、当業者には明らかである。
【0033】
本発明による細胞の分離に使用するために好ましい密度勾配物質は、本明細書中に参考として援用される、Dornの米国特許第4,927,749号に開示された有機シラン処理コロイド状シリカ(OCS)粒子懸濁液である。
【0034】
好ましい実施態様において、OCS密度勾配物質は、ポリビニルピロリドン(PVP)(例えば、Sigma Chemical Co. (St.Louis, MO)から入手可能なPVP-10)を補充された生理学的塩溶液中に適切な比密度に希釈される。以下に記載される重要な特性によれば、少なくとも0.5%PVPの含有は、機能的な希な血球型の収率を改善することが見出されている。さらに、このようなPVPの濃度は、電離放射線(例えば、Eビームまたはγ照射)によりOCS密度勾配物質の滅菌を容易にする。PVPの非存在下で、媒体に曝露された細胞は、コロニーを形成する能力の損失により証明されるように、CD34+の場合、機能的能力の損失(CFUの減少)を経験する。一般的に、OCS細胞分離懸濁液に添加されるPVPの量は、引き続く目的および調製の処理に依存する。相対的に短い期間でOCS調製物に曝露される細胞の機能的活性を保存するために、一般的に、0.5%(wt/wt)PVPの濃度が十分である。より長い曝露および電離放射線への曝露のために、より高い濃度のPVP(約3〜8%(wt/wt)ほど)が必要とされ得る。
【0035】
B.シラン処理シリカ粒子
本明細書中に記載の方法および組成物は、細胞懸濁液を伴うシラン処理シリカ粒子の多数の使用に適用可能である。粒子は、当該分野で公知の任意の多くの方法によりシラン処理され得る。本明細書中に参考として援用される、米国特許第4,927,749号は、本発明において使用される組成物の調製に特に有用なOCS粒子の調製を記載する。1つの実施態様において、サイズが3〜22nm、特に13〜18nmの範囲のOCS粒子は、浮遊密度に基づいて細胞の不均一な混合物を分離するための密度勾配媒体として作用する安定な懸濁液を形成する。
【0036】
密度勾配物質の形成に加えて、シラン処理シリカ粒子はまた、細胞分離の他の局面において使用され得る。例えば、特定のポジティブまたはネガティブな選択工程に使用される粒子は、本明細書中に記載される方法に従って処理され得る。このような粒子は、代表的には、約50ミクロンまでの範囲、従来的には約1〜5ミクロンの範囲内の直径を有する、シラン処理シリカマイクロスフェアまたはビーズである。このような粒子は、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-ヨードプロピル)トリメトキシシラン、[1-9トリメトキシシリル)-2(m-(またはp)クロロメチル)フェニル]エタン、あるいは3-グリシジル-オキシプロピルトリメトキシシラン(GPMS)を用いて、当該分野で周知の方法に従ってシラン処理される。代表的には、これらの粒子は、共有結合物として特定の抗原結合分子(例えば、抗体、レクチン、または他の細胞結合薬剤)を有する。細胞混合物に添加された場合、マイクロスフェアは、特定の標的抗原(単数または複数)に結合し、そして細胞の密度を改変(増加または減少)する。
【0037】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、シラン処理されていないコロイド状シリカ粒子の懸濁液に添加されている(Pertoftら、Exp.Cell Res. 46:621-623 (1966); Pertoftら、Exp.Cell Res. 50: 355-368 (1968);Wolffら、J.Cell.Biol.,55: 579-585 (1972);Pertoftら、Exp.Cell Res. 110: 449-457(1977)。しかし、溶液中の遊離のPVPは、いくつかの細胞型に対して所望でない効果を有すると報告している(Pertoft、Exp.CellRes. 50: 355-368 (1968))。これは、コロイド状シリカ粒子に吸着されたPVP被覆を生じ、そして実質的に遊離のPVPを含まない熱硬化(curing)プロセスの開発に導く(Pertoft、Anal.Biochem.88: 271-282 (1978))。この組成物は、PERCOLLとして市販されている。
【0038】
しかし、PERCOLLは、細胞分離に適切な最終濃度で生理学的塩溶液に希釈された場合、従来の方法(オートクレーブまたは電離放射線)により滅菌され得ない。これは、最終的に滅菌された生理学的媒体中の密度勾配物質を必要とする適用において、その有用性を制限する。
【0039】
上記のように、共有結合性有機シラン被覆を有するコロイド状シリカ粒子ベースの調製物は、種々の血球の分離において有用性を有することが見出されている(米国特許第4,927,749号)。有機シラン被覆は、細胞傷害性を低減し、そして生理学的塩およびタンパク質の存在下で、コロイド状シリカ粒子自身の凝集を排除する。しかし、有機シラン被覆コロイド状シリカ(OCS)粒子は、血液および他の供給源由来の特定の希な血球を分離または精製するために使用される場合に、特定の不利を有する。このような粒子の使用は、このような希な細胞の回収の減少をもたらし得る。これは、抗原的にCD34+として特徴づけられた重要な造血始原細胞(これは血液または骨髄から単離され得る)の単離と共に以下に例示される。詳細には、これらの希な血液始原細胞は、OCS粒子ベースの密度物質に懸濁される場合、凝集するか、さもなければ密度が増大する。さらに、OCS粒子ベースの懸濁液の電離放射線による滅菌は、これらの細胞に対して傷害性である組成物をもたらす。これらの結果をを証明する実験および本発明の発見により提供された改善は、以下の節に示される。
【0040】
C.シラン処理シリカ粒子の放射線誘導傷害性に対するポリラクタムによる保護
密度勾配物質を滅菌する多くの方法が存在する。シリカ粒子ベースの密度勾配物質は、当該分野で公知の方法に従って、オートクレーブまたは濾過により滅菌され得る。特に有用な1つの方法は、電離放射線による滅菌である。この方法は、好ましい密度勾配物質が、プラスチックの消耗容器(例えば、臨床分離用の予め充填された遠心管、バック、またはシリンジなど)に分散される場合、または任意の感熱性容器(例えば、プラスチックボトル)に分散される場合に好ましくあり得る。滅菌の他の方法とは異なり、放射線に基づく滅菌方法は、1工程プロセスのような最終産物容器に行われ得る。すなわち、容器および容器中の液体または懸濁液の両方を滅菌する必要がある場合、濾過法が使用される場合に必要とするように、容器自身を別々に滅菌する必要はなく、そして加熱滅菌(オートクレーブ)を用いて通常に生じるように、滅菌バットから個々の容器に物質を移す必要はない。
【0041】
電離放射線により医療デバイスを滅菌するための技術は、当該分野で公知である。本発明に適用可能な共通に使用される方法として、γ線照射および電子線(Eビーム)放射が挙げられる。これらの方法のそれぞれは、異なる型のエネルギー源を含む一方で、両方の方法は、特定の放射線用量をデバイスへ達成するために、デバイスを照射場(radiation field)に通すことを包含する。代表的には、医療デバイスの滅菌は、10〜30キログレイ(kGy)の用量を必要とする。しかし、下記のように、これらの方法のいずれかが、有機シラン処理コロイド状シリカを滅菌するために使用される場合、この物質は、ポリラクタム(例えば、PVP)が、放射の間に粒子懸濁液に存在しない限り、造血細胞に対して傷害性になる。
【0042】
本発明に使用されるポリラクタムは、好ましくは可溶性のポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン(BASF, Ludwigshafen, Germany)のKOLLIDONシリーズ)である。これらのポリマーは、一般的に、2000〜350,000の範囲のポリマー分子量で利用可能であり、そしてそれらの固有粘度または「K値」により評価される。本発明の支持において行われる実験において、約10,000の平均分子量を有する調製物が使用された。
【0043】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、γ線に感受性であることが知られる。一般的に、ポリマーの平均分子量の増加は、PVP溶液が10〜50kGyのγ線に曝露される場合に観察される。従って、製造者は、物質が、滅菌の目的のために電離放射線に曝露されることを推奨しない(KOLLIDON:BASF Aktiengesellschaft, Feinchemie, D67056 Ludwigshafenの医薬品産業用のポリビニルピロリドン)。
【0044】
本発明の支持において行われる実験において、濾過(0.2μm)または加熱滅菌(オートクレーブ、120℃で15分)により滅菌されたOCS粒子ベースの密度勾配物質中での末梢血単核細胞(PBPC)のインキュベーションは、機能的細胞アッセイ(コロニー形成単位(CFU)アッセイ)(これは、このような細胞の造血コロニーを形成する能力を測定する)により評価されるように、生存造血始原細胞の回収に著しく影響しないことが見い出されている。しかし、OCS粒子ベースの密度勾配物質が、標準的な方法に従って、γ線(2.5〜3.5megaRad)に対する曝露により滅菌された場合、実施例4の方法2に記載されたプロトコル(OCS+0.5%PVPでの30分間のインキュベーションおよび10分間の遠心分離時間)に従ってこの媒体中にインキュベートされた細胞は、(添加されたCFU活性の約25%までの)機能的活性の低下を示した。結果は、培養工程が含まれない実施例4の方法4に記載されたプロトコルに従って処理された細胞にさらにより顕著であった。ここで、細胞は、OCS粒子ベースの密度勾配物質、OCS粒子+0.5%PVPまたは緩衝液+0.5%PVP中での30分間インキュベートし、続いて10分間の遠心分離を行い、続いて10%胎児血清を補充したISCOVES媒体中での24時間のインキュベーションを行った。準備滅菌の間のOCS粒子懸濁液中の0.5%PVPの含有は、添加されたCFUの約65%の回収をもたらしたが(図1)、一方、OCS粒子ベースの密度勾配物質単独中でインキュベートされたそれらの細胞は、元の機能的活性の約1%のみを示した。この実験はPBMC由来の細胞を使用したが、一方、骨髄由来細胞および臍帯血由来細胞も同じ感受性を示す。
【0045】
細胞に対する保護を提供するために必要とされるポリラクタム量は、本発明の支持で行われたさらなる実験において調べられた。図2は、γ線(2.5〜3.5megaRad)前に種々の濃度のPVPを補充されたOCS粒子ベースの密度勾配物質の結果を示す。この研究において、PBPC細胞は、実施例4の方法6(24時間、室温での密度勾配懸濁液および10%ウシ胎児血清の存在下でのインキュベーション)として同定されるプロトコルに従ってプロセスされた。密度勾配媒体中の3%最終濃度の過剰なPVPは、適用された放射線の用量(2.5〜3.5megaRad)で、照射誘導傷害性に対する著しい保護を提供した。媒体の滅菌のPVPの添加は、同様の保護効果を提供しなかった。
【0046】
前述から、本発明が、希な血球の分離における使用のための改善された細胞密度勾配組成物を含むことは明らかである。産物組成物は、少なくとも0.05%ポリラクタム、より詳細には、約0.1〜10%ポリビニルピロリドンの存在下での電離放射線のプロセスにより処理されたシラン処理シリカ粒子である。このような組成物は、希な血球(例えば、造血始原(CD34+)細胞)の単離に特に良好に適切であり、照射された有機シラン処理コロイド状シリカに対する曝露に感受性である。
【0047】
D.希な血球の密度勾配からの回収のポリラクタム改善
本発明の別の局面によれば、有機シラン処理シリカ粒子懸濁液の0.05%(wt/vol)ポリラクタムでの補充は、機能的形態の希な血球の改善された回収をもたらすことが発見されている。より詳細には、ポリラクタムの含有は、細胞の凝集または集合を防止して、より均一な密度プロフィールおよび改善された機能的特性を有する細胞組成物を提供する。ポリラクタム非存在下でのOCS密度勾配物質中で単離された細胞との比較において、このような組成物は、富化画分中の希な細胞の回収の増大、およびクローン原性能力を有する希な細胞の回収の増大により特徴づけられる。
【0048】
図3および4は、標準的な方法に従って単離されたPBPCが、有機シラン処理コロイド状シリカ密度勾配(OCS粒子ベースの密度勾配物質、1.0605g/ml、280 mOsm/kg H2O、pH7.4)上でロードされ、そして実施例3に詳述されるプロトコルに従って遠心分離された実験の結果を示す。図3は、PVPの非存在下で、開始物質中に存在するほとんどの細胞がペレットから取り出されたことを示す。視覚的な検査は、この細胞のペレット化は、細胞の凝集または集合の結果らしいことを明らかにした。対照的に、COS密度物質が0.5%PVPで補充された場合、より高い割合の細胞は、これらの細胞の予め決定された密度に基づいて予測されたように界面に残存した。
【0049】
この観察は、同じ細胞調製物が、実施例5および6に詳述される方法(FACSおよびCFU分析)に従って造血始原細胞(CD34+細胞)の存在について分析された場合、より明白である。図4に示された結果は、PVPの非存在下において、約90%のCD34+細胞がペレットに移動したことを示す。密度勾配懸濁液中の0.5%PVPの存在は、このパターンを逆転した。ここで、ほとんどのCD34+細胞は、移植および他の臨床目的のためのこのような細胞の単離および富化の目的に所望なように界面に残存した。
【0050】
III.特定の細胞型の単離法
前述を考慮して、本発明は、希な血球の回収を改善する密度勾配組成物だけでなく、機能的な希な血球(特に、例えば、造血始原細胞(例えば、CD34+細胞)、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルサプレッサー細胞、および細胞混合物からの類似物)を単離する方法も包含することが評価され得る。
【0051】
一般に、造血始原細胞は、骨髄、臍帯血、または被験体(特にヒト被験体)由来の末梢血サンプルから単離され得る。最初に、当該分野で周知のプロトコルに従って、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、VP-16、または2つの因子の組合せのような薬剤を投与することにより被験体中の細胞を動員させることが所望される。このような処理の後、患者は、PBPCを収集するためのアフェレーシス、または骨髄を収集するための骨髄吸引に供される。
【0052】
本発明の方法に従って、収集された細胞は、単離される細胞の密度とほぼ等しい比密度を有する、密度勾配物質、好ましくは、有機シラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの細胞分離密度勾配懸濁液に重層される。好ましくは、媒体は、少なくとも約0.05%のPVP、およびより好ましくは、少なくとも約0.5%のPVPを含む。次いで、懸濁液は、選択された造血細胞の比密度より大きな比密度を有する細胞をペレット化するために遠心分離される。このような密度勾配組成物はまた、上記の方法により滅菌され得るという利点を有する。
【0053】
前述の方法はまた、最初の細胞混合物に、ネガティブまたはポジティブな選択のための細胞抗原特異的結合分子が結合した有機シラン処理シリカ粒子を含む懸濁液を添加することにより増強され得る。ネガティブな選択の例として、抗原特異的結合分子は、細胞をペレットに移動させる細胞混合物中の所望でない細胞型に結合する。例として、時々、選択された細胞を体内に導入する前に、T細胞リンパ球を細胞混合物(例えば、造血幹細胞混合物)から涸渇させることが所望される。このようなT細胞リンパ球は、例えば、細胞混合物をTリンパ球特異的抗原が結合するビーズを用いて処理することにより、涸渇され得る。次いで、ビーズは、所望の細胞混合物から遠心分離により分離される。ビーズに結合し得るT細胞リンパ球特異的抗原結合試薬の例として、抗CD-3、抗CD-4、および抗CD-8マウスモノクローナル抗体が挙げられる。
【0054】
遠心分離における使用に適切な任意のチューブが、本発明の実施のために使用され得る。本発明の好ましい実施態様において、WO 96/07097に記載される細胞トラップ(cell-trap)遠心分離装置が、CD34+細胞の密度分離のために使用される。
【0055】
A.造血始原CD34+細胞の単離
参考として本明細書中に援用される共同所有(co-owned)PCT出願PCT/95/11169公報、WO/96/07097は、「PERCOLL」が、アフェレーシスした血液からCD34+細胞を単離するために、密度勾配物質として280±10mOsm/kg H2OおよびpH 7.4の生理学的浸透圧で使用された研究を記載する。本明細書中に記載される発明に従って、CD34+細胞回収は、この浸透圧で、1.0605gr/mlの比密度で最適であった。
【0056】
本発明の支持で行われる研究において、骨髄細胞は、標準的な臨床手順に従って、健常なドナーから吸引により収集され、Bone Marrow Transplantaion Laboratory of the Stanford University School of Medicine, Palo Alto, CAから得られた。CD34+細胞は、実施例10に記載の本発明の方法に従って調製および形成された、280mOsm/kg H2O、pH 7.4で1.0685gr/mlの比密度を有するOCS勾配上での遠心分離により骨髄細胞画分から富化された。
【0057】
図8および9は、1.0685gr/mlのOCS懸濁液でプロセスされた骨髄細胞に対する単離研究の結果を要約する。図8は、全勾配(界面+ペレット)からの全細胞(CD34+細胞、Tリンパ球、および赤血球(RBC))の回収%を示す。図18は、遠心分離後の勾配の界面からの同じ細胞画分の回収%を示す。両方の図に示されたデータは、各画分を、最初に勾配上にロードされた細胞の総数で割ることにより算出された。
【0058】
図8から、最初に勾配上にロードされた細胞の90%以上が、界面およびペレットから回収されたことを示し得る。CD34+細胞の損失は、全細胞の適切な損失(10%)に匹敵するので、これらの細胞の優先的な損失ではない。
【0059】
図9は、界面から全細胞の26±10%のみが回収された一方、この画分は、91±9%のCD34+細胞、10%のTリンパ球を含み、本質的に赤血球は含まなかった。これらの研究は、本発明の密度勾配手順による、Tリンパ球の涸渇を伴う実質的なCD34+細胞の富化を証明する。以下の節に記載されるように、これらの特徴は、同種異系間幹細胞移植における使用のための調製を推奨する。
【0060】
B.ナチュラルサプレッサー細胞
インビトロ研究は、ヒト骨髄が、混合リンパ球反応(MLR)におけるインビトロ同種異系反応をブロックする低密度細胞を含むことを示している。この抑制活性が、HLAにより制限されない事実に基づいて、ナチュラルサプレッサー(NS)活性として文献に言及される。「PERCOLL」密度勾配は、NS活性を有する細胞を富化するその能力について試験するために、1.0605±0.0005gr/mlの密度に調整された。リンパ腫患者由来のおよびG-CSF処置を受けた正常固体由来のアフェレーシスした血液サンプルは、不連続的な5層の勾配上で遠心分離され、そして界面およびペレットは、混合リンパ球培養物を抑制するそれらの能力についてスクリーニングされた。図10は、NS活性を有する細胞が、1.0605gr/mlと等しいかまたはそれ未満の密度を有したことを示す。結果として、90%を超えるNS活性が、1.0605gr/ml勾配上での遠心分離の後の最終細胞調製物に存在した。
【0061】
C.ナチュラルキラー細胞
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自己腫瘍細胞を殺傷することが示されている。臨床的展望から、腫瘍再発を低減するために移植片中に増加した数のNK細胞を有することは有益であり得る。本発明の支持で行われた実験において、NK細胞の密度は、不連続的な5層の「PERCOLL」勾配上で決定された。NK細胞はまた、1.0605gr/mlと等しいかまたはそれ未満の密度を示した。結果として、90%を超えるNK細胞が、図11に示すように、1.0605gr/ml勾配上での遠心分離の後の最終細胞調製物に存在した。
【0062】
D.樹状細胞および細胞傷害性Tリンパ球の富化
樹状細胞(抗原提示細胞)は、血液画分由来の細胞である。これらの細胞は、一次細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導するために、Tリンパ球に抗原を提示するようにインビボで作用する。これらの細胞は、細胞性免疫応答の誘導または増強における使用のために臨床的有用性を有する。
【0063】
本発明の別の局面に従って、樹状細胞および細胞傷害性リンパ球は、3つの工程プロセスにおいて、規定された密度勾配を用いて単離される。このプロセスは、実施例12に詳述されるように、3つの異なる密度勾配溶液を通す遠心分離を包含する。本発明によれば、1.0770、1.0720および1.0610、または1.0720、1.0610、ならびに1.0565gr/mlの密度を有するOCS密度勾配物質は、それぞれpH7.4および280 mOsm/kg H2Oで、3つの工程で使用される。これらは、細胞トラップチューブ内で好都合に行われるが、必ずしも細胞トラップチューブ内で行われる必要はない。従業者は、等価な密度の他の媒体が同様に使用され得ることを認識する。例えば、工程1は、Lymphoprep(Nycomed Laboratories, Oslo, Norway)またはFicoll等価PERCOLL(密度1.0770、310 mOsm/kg H2O、pH7.4)で行われ得;工程2は、PERCOLL溶液(密度1.0650、pH7.4、300mOsm/kg H2O)で行われ得;そして工程3は、密度1.0800gr/ml、pH7.4、540 mOsm/kg H2Oを有するPERCOLL溶液、または密度1.0550gr/ml、290mOsm/kg H2O、pH7.4、を有するPERCOLL溶液で行われ得る。しかし、本発明のOCS粒子ベースの細胞分離液を用いて決定された前述の密度および富化方法は、以前に報告された高浸透圧条件下よりむしろ、生理学的浸透圧で行われる点で有利である。
【0064】
E.密度調整細胞選別(DACS)
本発明はまた、混入している腫瘍細胞または他の望ましくない細胞を骨髄細胞または他の始原細胞供給源から浄化することを提供する。浄化の目的のために、所定の腫瘍細胞の密度は、腫瘍を含有するサンプルを1.0490〜1.0640gr/mlの範囲の不連続密度勾配で遠心分離することにより決定される。望ましくない非腫瘍細胞の大部分は、免疫系および造血系の細胞を示し、そして1.0610〜1.0770の範囲の密度を有する。腫瘍細胞の密度は、一般に、1.0490〜1.0580gr/mlの密度範囲内にある。細胞分離媒体の密度は、所望の細胞の比重の±0.0005gr/ml、好ましくは±0.0002gr/ml内の精度で決定される。腫瘍浄化は、2工程プロセスにより達成され得る。このプロセスでは、所望の細胞をまず、腫瘍細胞を保持し得る細胞分離媒体を通してペレット化させる。あるいは、浄化技術を用いて、1工程プロセスにおいて、下記の方法に従って腫瘍細胞を除去し得る。
【0065】
本発明に支持されて実施される実験は、本発明の密度方法に関連してDACS手順を用いて、重いキャリア(例えば、磁気ビーズまたはアミノプロピルガラスビーズ)に結合した抗CD45 mAbを用いて混入している細胞を除去することにより、CD34細胞が富化されたことを実証した。全細胞数は、82%減少し、そしてCD34の収量は、ほぼ40%であった。CD34の純度は、2%から約20%に増加した。抗CD45抗体はまた、いくつかのCD34細胞を除去したので、この方法は、非幹細胞を涸渇させるために他の抗体の混合物を使用することにより改良され得ることが認識される。
【0066】
DACSの間の非特異的細胞の損失を調べるために、モノクローナル抗体の非存在下で軟膜末梢血単核細胞(PBM)およびDACSビーズを用いる実験を行った。実施例10に詳述するように、DACSビーズを、インタクトなGAM-IgGまたはF(ab)GAM-IgGのいずれかを用いて作製し、IgGで被覆したDACSビーズへの細胞のFcレセプター媒介結合が非特異的涸渇に寄与するという仮説を試験した。図5における結果は、GAM-IgGF(ab)で被覆したDACSビーズを使用した場合、インタクトなGAM-IgGを用いるDACSビーズと比較して、細胞の非特異的涸渇は存在しないことを実証する。Fc領域上のグリコシル化部位を介して結合した、GAM-IgGで被覆したDACSビーズはまた、ランダムな方向でGAM-IgGを有するDACSビーズと比較した場合、細胞の非特異的涸渇の減少を実証した。これらの結果は、GAM-IgGのFc領域を除去またはブロックすることにより、細胞の非特異的涸渇の減少が導かれることを実証する。
【0067】
先述の結果は、DACSビーズへの細胞のFcレセプター(FcR)媒介結合が、DACS処理の間に観察されるいくつかのCD34細胞の非特異的涸渇の原因であり得ることを示す。これはさらに、上記のように、免疫グロブリン分子のFc部分のグリコシル化領域のブロッキングに起因した細胞の非特異的損失の減少をもたらす部位特異的結合により示される。しかし、BSAで被覆したDACSビーズの使用は、FcR媒介結合が必ずしも細胞のすべての非特異的涸渇の原因であるとは限らないことを実証した。細胞とビーズ表面との間のイオン性相互作用もまた、関与するようである。この可能性を調査するために、ビーズ表面とGAM-IgGとの間に挟んだPEGで被覆したDACSビーズを作製した。これは、タンパク質と荷電表面との間のイオン性相互作用を減少させるPEGの能力を活用するために行なった。PEG-GAM-IgGで被覆したDACSビーズと、PEGの非存在下でGAM-IgGを有するDACSビーズとを比較する実験において、PEGの使用が細胞の非特異的涸渇の減少に関連することが見出された。
【0068】
DACSビーズ被覆の改変による非特異的涸渇の減少は、稀な細胞(例えば、CD34細胞、NK細胞、ナチュラルサプレッサー細胞、樹状細胞、胎児有核細胞など)のネガティブ富化の状況において特に重要である。ここでは、細胞の収量を最大にすることが重要である。例えば、CD34細胞の非特異的損失を規定するための実験は、F(ab)で被覆したDACSビーズの使用がCD34細胞の非特異的損失の減少を導くことを実証した(図6)。同様に、Fc領域のグリコシル化部位を介して結合したGAM-IgG1で被覆したDACSビーズを用いるとまた、ランダムな方向でGAM-IgGを有するDACSビーズと比較した場合、CD34細胞の非特異的涸渇が減少した(図7)。
【0069】
E.T細胞リンパ球の涸渇
対宿主性移植片病(GvHD)は、ドナー同種移植片中に存在するTリンパ球により誘導される。だが、このような細胞の完全な除去はまた、移植片の不全および腫瘍の再発をもたらす。従って、制限された数のTリンパ球の存在は、好結果の同種異系移植のために必要とされ得る。本発明に支持されて実施される実験において、DACSビーズを用いて、G-CSF動員ドナー由来のアフェレーシスしたPBSC調製物からTリンパ球を涸渇させた。調製物に抗CD3、抗CD4、および抗CD8マウスモノクローナル抗体の混合物、続いてヤギ抗マウスIgGDACSビーズを添加し、そして1.0605gr/mlの密度を有するOSC勾配を通して280mOsmでpH7.4にて遠心分離することにより、動員PBSC調製物からTリンパ球を涸渇させた。Tリンパ球を、分化抗原上の同じエピトープを認識する抗体を用いることに関連する、起き得る人工産物を避けるために抗CD2モノクローナル抗体と反応させることにより、モニターした。
【0070】
先述のDACS Tリンパ球涸渇方法は、CD34細胞の収量におけるほんの70%の減少と供に、Tリンパ球の97%減少をもたらした。CD34細胞の60%を、DACS処理の後に界面に保持した。結果は、組み合わされた細胞の富化およびDACS方法は、CD34細胞の損失は40%未満で、同種移植片物質のTリンパ球含有量を特異的に97%減少させることを実証する。このような調製物は、移植物質におけるGVHDを予防するために適切である。
【0071】
F.腫瘍細胞の富化および浄化
1.診断のための腫瘍細胞の富化
乳ガン細胞を用いて、本発明の富化方法を例示する。このような細胞を富化するために、乳ガン細胞の特定の型、270〜290mOsm/kg H2Oの生理学的浸透圧、および生理学的pH6.8〜7.8に依存して、勾配を1.0490〜1.0580±0.0005gr/mlの密度に調整するべきである。特定の実施態様において、例証として、乳ガン細胞は、適切な細胞分離媒体(例えば、狭窄部材よりも上のレベルに満たされた、OCS粒子に基づく細胞分離媒体または「PERCOLL」溶液)を含有する細胞トラップ遠心管中に直接ロードされる。
【0072】
本明細書中に記載の特定の実施例において、腫瘍細胞の好都合な富化は、乳ガン細胞の特定の型、280mOsm/kg H2Oの浸透圧、およびpH7.4に依存して、1.0490〜1.0580±0.0002gr/mlの特定の密度に調整された「PERCOLL」密度勾配物質で実施された。「PERCOLL」溶液の密度は、その精度を正確に規定するために濃度計で調整され得る。
【0073】
上記の方法により富化された細胞は、続いて、乳ガン細胞の存在について検査され得る。本発明の細胞分離方法から単離または富化された細胞の得られた収量は、診断目的(例えば、形態学的、分子的、生化学的、または免疫表現型的なアッセイ)のために用いられ得る。例えば、DNAは、下記の腫瘍細胞浄化の節に記載のように、収集された細胞から調製され得、そしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供され得るか、または収集された細胞は形態学的に評価され得、それにより、以前はこのような決定をあてにした侵襲的かつ高価な手術的手順の使用が避けられる。
【0074】
種々の乳ガン抗原および乳ガンマーカーは、当業者に公知であるか、または市販されている。これらは、カテプシンD、EGF-R、エストロゲンレセプター、Ki-67、プロゲステロンレセプター、およびTGF-αを含むがこれらに限定されない。これらの抗原またはマーカーに対する抗体は、収集された細胞の腫瘍型を評価するために用いられ得る。
【0075】
本明細書中に記載の方法の主要な利点は、大容量の全血を密度勾配に直接配置し得ることである。末梢血は、抗凝血剤含有チューブに収集され得るか、またはアフェレーシスもしくは白血球除去(leukopheresis)により収集され得る。全血は、遠心分離の前に処理または希釈される必要はない。しかし、この方法は乳ガン細胞の特定の浮遊密度に基づいて乳ガン細胞を富化するので、この細胞を、インビボ供給源からのそれらの収集後の比較的短時間の内に分離に供することが重要である。なぜなら、細胞の密度はそれらの培養または保存条件に従って変化するからである。従って、血液から腫瘍細胞の最適な富化を得るためには、血液サンプルをそれらの収集後48時間以内に用いることが好ましい。最も好ましくは、血液サンプルは、収集の数時間以内に密度勾配遠心に供されるべきである。
【0076】
2.腫瘍細胞の浄化
腫瘍細胞の浄化は、上記の腫瘍細胞富化方法、またはより好ましくは上記のDACS増加細胞分離方法を用いて好都合に実施される。例証として、放射能標識した乳ガン細胞を末梢血軟膜と混合した場合、その80%までが、1.0580gr/mlの特定の密度および280mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する勾配で混合物を遠心分離することにより保持された。さらに、非腫瘍細胞の小さな画分(最初の細胞数の10%未満)のみが、収集された腫瘍画分において見出された。
【0077】
共有に係るPCT出願PCT/95/11169公開WO96/07097は、本発明の方法による乳ガン細胞の富化を記載する。本方法はまた、本明細書中に記載のDACS手順に関連して用いられ得る。例えば、全血は、ほとんどの白血球と反応する抗CD45抗体で被覆したキャリア粒子ともに直接インキュベートされ得る。乳ガン細胞は、何らかの有意な程度でも抗CD45と反応しないので、非赤血球、白血球、および他の細胞のほぼ大部分は、密度物質よりも重くなり、そして遠心分離の間にペレット化するが、一方、乳ガン細胞は上の区画に残る。種々の他の細胞型特異的結合剤は、前の節に議論されるように、血液中の特定の細胞型を標的化するために用いられ得る。
【0078】
あるいは、好ましい浄化手順に従って、ポジティブ選択DACS手順は、腫瘍細胞をそれらの正常な密度よりも重くして、これらが遠心分離の間にペレット化するように用いられ得る。ポジティブ選択手順に有用である細胞型特異的結合剤は、乳ガン抗原に対する抗体および乳ガンマーカーに対する抗体(例えば、HER2/Neu、CA15-3、CA 549、カテプシンD、EGF-R、エストロゲンレセプター、Ki-67、プロゲステロンレセプター、およびTGF-α)を含むが、これらに限定されない。これらの抗体の多くは市販されている。
【0079】
本明細書中に記載の方法により富化された細胞は、続いて、乳ガン細胞の存在について検査され得る。本発明の細胞分離方法から単離または富化された細胞の得られる収量は、診断目的(例えば、形態学的、分子的、生化学的、または免疫表現型的なアッセイ)のために用いられ得る。例えば、DNAは、収集された細胞から調製され得、そしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供され得るか、または収集された細胞は形態学的に評価され得、それにより、以前はこのような決定をあてにした侵襲的かつ高価な手術的手順の使用が避けられる。あるいは、腫瘍細胞は、上記のように、当業者に公知の腫瘍細胞マーカーの存在により同定され得る。これらの抗原またはマーカーに対する抗体は、収集された細胞の腫瘍型を評価するために用いられ得る。
【0080】
3.末梢血サンプルの腫瘍浄化
幹細胞移植片中の腫瘍細胞の存在および非Hodgkinsリンパ腫患者の骨髄から腫瘍細胞を特異的に涸渇することが不可能であることは、自己移植後の疾患再発を予測する際の重要な指標であるかもしれない。本発明による細胞分離方法は、末梢血産物を患者に再導入する前に、このような産物から腫瘍細胞を除去するために適用され得る。
【0081】
本発明の支持において実施される研究において、ヒトB細胞リンパ腫細胞株SU-DHL4を用いて、末梢血の腫瘍細胞混入をモデル化した。この細胞株は、ヒト第14および第18染色体の長腕間の相互転座を含む。この転座は、免疫グロブリン(Ig)重鎖遺伝子の接合領域へのbcl-2プロトオンコジーンの並列をもたらす。この転座(これは、bcl-2遺伝子産物レベルの上昇を導く)は、濾胞性核切れ込み小細胞型リンパ腫(follicular small cleaved cell lymphoma)の85%およびびまん性大細胞型リンパ腫(diffuse large cell lymphoma)の25%に見出される。bcl-2遺伝子の転座切断点は、bcl-2遺伝子の3'非翻訳領域(UTR)中の約150bpにわたる主要な切断点領域(MBR)またはbcl-2遺伝子の約20kb下流に位置する500bpマイナークラスター領域(MCR)のいずれかに位置する。転座特異的プライマー対および当該分野で公知の限界希釈分析技術による定量的PCRを用いて、DACS浄化実験におけるSU-DHL4細胞の涸渇をモニターした。
【0082】
同様に、ヒトSK-BR3腺ガン細胞株を用いて、末梢血の乳ガン細胞侵入をモデル化する。この細胞株は、マウス抗ヒトHer2/Neuモノクローナル抗体と反応する。正常な軟膜へスパイクする前に、SK-BR3細胞を、蛍光発生基質であるカルセインAMとともに予備ロードし、それによりそれらがFACS分析により計数され得る。腫瘍浄化実験を実施する際に用いられる実験方法の詳細を、実施例に提供する。
【0083】
PCRアッセイを用いて、血球混合物中の腫瘍細胞レベルをモニターした。最初に、SU-DHL4および(14;18)転座ネガティブヒト細胞株(K562)からのゲノムDNAの混合物を開始テンプレートとして用いて、PCRアッセイの感度のレベルを評価した。アガロースゲル電気泳動を用いて、示すように、1回または2回の増幅のいずれかからのPCR産物を分離した。SU-DHL4 DNAに特異的に由来するPCR産物は、ゲル上で同定された。これらの予備試験の結果は、ネスティッドPCRアッセイが150,000細胞あたり約1個のSU-DHL4細胞を検出し得ることを示した。
【0084】
さらに、ゲノムDNAを、当該分野で公知の標準法に従って化学療法およびG-CSFを受けた24人のNHL患者のアフェレーシスした血液の凍結アリコートから調製した。主要な切断点領域(MBR)転座に特異的なプライマー対を用いるネスティッドPCR産物が4人の患者に見出された。このことは、このアッセイが転座を有する細胞を信頼できる臨床サンプルから検出し得ることを実証する。
【0085】
サンプル中の腫瘍細胞頻度の定量のための限界希釈の条件下でのPCR分析の使用を確証するために、さらなる実験を実施した。複製PCR反応を、既知量のインプットSU-DHL4ゲノムDNAを用いて行った。t(14;18)(SU-DHL4細胞あたり1回存在する標的配列)およびp53(SU-DHL4細胞あたり2回存在する標的配列)に対するネスティッドPCRプライマー対を用いた。ポジティブPCR反応の観察頻度は、実験的頻度がPoisson統計に基づいて期待される頻度と類似することを実証した。従って、限界希釈分析を用いるPCRは、腫瘍細胞をモニターするための正確で定量的な方法を提供することが実証された。
【0086】
PBPCの腫瘍細胞混入をモデル化するために、G-CSF動員患者からのアフェレーシスした血液のサンプルを、既知数のSU-DHL4細胞とともに播種した。このスパイクした物質を用いて、DACSによる腫瘍細胞除去を評価した。この方法は、標的細胞上に発現される表面抗原(CD9、CD10、CD19、CD20)に特異的なマウスモノクローナル抗体との血液のインキュベーションを含む。次いで、この工程の後に、ヤギ抗マウスIgで被覆した高密度マイクロスフェア(DACSビーズ)とのインキュベーションを行う。次いで、これらの微粒子に結合した細胞の部分集団を、1.0605gr/mlの特定の密度で0.5%PVPを補充し、そしてγ線照射により滅菌したOCS懸濁液を通しての遠心分離により結合していない細胞から分離した。細胞を、勾配遠心の後に界面(IF)およびペレット(PT)から回収し、そして実施例5に詳述するようにゲル電気泳動により定量した。代表的な浄化実験の結果を図12および図13に示す。
【0087】
図12は、A)非分画サンプル(肉眼での計数により決定)、B)非分画サンプル、C)DACSを有さない界面、D)GAM-IgG DACSビーズを用いた後の界面、およびE)GAM-IgG DACSビーズおよび抗B細胞mAbのカクテルを用いた後の界面における、スパイクされたSU-DHL4細胞の数を示す。B、C、D、およびE中のSU-DHL4細胞の数を、定量的PCRにより決定した。
【0088】
図13は、C、D、およびEの界面(IF)およびペレット(PT)中のCD34細胞の回収を示す。腫瘍細胞涸渇を、例示したようにサンプルB〜EについてのPCR限界希釈分析により定量した。CD34造血幹細胞の回収を、3色フローサイトメトリーによりモニターした。全細胞および幹細胞の回収を、界面からの細胞の回収に対して示す。抗体カクテルを用いる1回の浄化サイクルは、SU-DHL4細胞の特異的な2〜3logの涸渇をもたらした。DACS後のCD34細胞の回収は、70%より大きく、そしてDACSの非存在下で界面から回収したCD34細胞の数に匹敵した。末梢血単核細胞は、DACSを有するかまたは有さない密度遠心分離により70〜80%減少する。
【0089】
腫瘍細胞混入についての別のモデルにおいて、SK-BR3細胞を、正常軟膜中に2%の頻度で播種した。カルセインAMで標識した細胞腫瘍細胞を、抗ヒトHer-2/Neu Mabを用いるDACSとともに1.0605gr/mlの特定の密度を有するOCS密度懸濁液での遠心分離により、細胞懸濁液から除去した。涸渇を、FACS分析により決定した。カルセインAMで標識した細胞を入れ、そしてそれらの%をLYSYS IIプログラムを用いて決定した。SK-BR3細胞は、DACSビーズの存在下または非存在下でのOCS懸濁液で処理した後の軟膜から涸渇されなかったが、これらは、乳ガン特異的抗Her2/NeumAbと組み合わせてDACSビーズを用いた場合、細胞混合物からほぼ完全に除去された。これらのデータは、サンプル中にスパイクされた最初の腫瘍細胞数に対してFACS%を逆算した場合、DACS処理が腫瘍細胞混入を1〜2log(10〜100倍)減少させることを示す。
【0090】
まとめると、ヒトB細胞リンパ腫細胞および定量的PCRを用いる先述の例示的モデル実験は、腫瘍細胞における2〜3logの減少が1回のDACSで達成され得るが、一方、大部分のCD34造血幹細胞は保持されることを実証する。ヒト腺ガン細胞株SK-BR3およびFACS分析を用いて、腫瘍細胞における1〜2logの減少が達成された。より一般的には、本発明の知見は、この方法が血液または治療用富化細胞集団から所望でない腫瘍細胞を浄化するために使用され得ることである。
【0091】
IV.滅菌された細胞分離キット
本発明の知見の重要な適用は、細胞分離のための滅菌キットである。このようなキットは、臨床的細胞分離のために特に有用である。このようなキットは、通常、細胞を分離するための遠心分離可能な容器および密度勾配物質を含む。これは、電離放射線に曝すことにより満たされたユニットとして滅菌されている。遠心分離可能な容器は、通常、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン、ポリエチレン、ポリアロマー、ポリスチレンなど)から形成された消耗品の使い捨てのユニットである。しかし、下記のように、予め満たされたユニットとしてのキットを滅菌する利点はまた、他の物質から形成された管を含むキットについてこの手順を望ましくする。好ましい実施態様において、容器は、以下に例示されるように、閉鎖されて開始物質の無菌的収集、ならびに滅菌条件での物質の保存および操作を容易にする。
【0092】
図14は、本発明に従って形成されたキット10を例示する。例示されるように、キット10は、密度勾配物質14を満たした本明細書に示す遠心管12を含む。密度勾配物質は、有機シラン処理されたシリカ粒子(例えば、粒子16)の懸濁液により形成される。密度勾配物質にはまた、キット中の単離された稀な血球に対する傷害性を減少させ、従って、キットにおけるこのような細胞の収量を改良するために、少なくとも0.05%のPVP、そして好ましくは約0.1%〜10%のPVPが含まれる。
【0093】
中に含まれる容器および密度勾配は、電離放射線(例えば、γ線またはEビーム)により滅菌される。得られるキットはまた、滅菌後の混入から管の内容物を保護するための保護カバー(例えば、キャップ18)を含み得る。キットはまた、輸送および保存の間の管内容物の置き換えを防ぐためのスタンド(例えば、管ホルダー20)を含み得る。
【0094】
上記のキットは、多くの細胞型の分離のために必要とされる詳細に従って調製され得る。使用される管のサイズ、ならびにその構造的および化学的弾性は、超遠心分離ならびに本明細書中に記載されるような比較的低速の遠心分離適用において使用するための本発明の範囲内で変化し得る。このような改変は、当業者には明らかである。
【0095】
同様に、キットは、密度勾配物質の組成を変化させることにより、異なる細胞型について設計され得る。実施例9は、PBPCからのCD34造血始原細胞の単離のために特に処方されたキットを記載する。記載された実施態様において、OCS粒子密度勾配懸濁液は、1.0605g/mlの特定の密度および280mOsm/kg H2Oの浸透圧に調整される。この密度は、所望のCD34細胞の密度にほぼ等しく、それゆえ、遠心分離の際に、これらの細胞は、管中に存在するローディング物質と密度物質との間の界面に「浮遊」する。
【0096】
他の稀な血球型(例えば、樹状細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルサプレッサー細胞、および胎児有核細胞)の富化が、密度勾配物質の特定の密度および浸透圧を調整することにより達成され得ることが認識される。このような調整が行われて、その結果、次いで、所望の細胞が、細胞が単離されるべき細胞混合物中に存在する所望の細胞の密度と所望でない細胞の相対的な密度の密度に従って、浮遊またはペレット化のいずれかをし得る。
【0097】
本発明のキットおよび方法における使用のための好ましい遠心管の配置は、「細胞トラップ」を形成する管内に配置された狭窄部材を有するものである。このような管は、共有に係るPCT出願PCT/95/11169(公開番号WO96/07097)に記載される。これは、その全体が本明細書中に参考として援用される。この管の改変された形態は、本明細書中下記の図14における閉鎖系の一部として例示される。
【0098】
細胞トラップ管において、狭窄部材は、管が倒置される場合に狭窄部材よりも下の管の底部に液体を保持するために配置および構築される。管はまた、管の底部に含有され、そして狭窄部材を超えて、狭窄部材により形成される開口部よりも上のレベルに広がる細胞分離媒体を含む。遠心分離後に細胞分離媒体と低密度媒体との間の界面でトラップされる細胞は、管を倒置した場合により低い密度の媒体とともに流出する。この細胞の収集が容易な手段は、細胞の最小の操作が望ましい、本発明の状況では特に便利である。
【0099】
臨床適用のために、キットは本明細書中に記載のように、生物学的物質の外部病原体への接近を制限するために、「閉鎖系」として配置され得ることもまた、認識される。
【0100】
図14は、閉鎖系に組み込まれた狭窄部材を有する遠心分離可能な容器を示す。例示するように、閉鎖系70は、公知の技術により既に収集された血液72を含有する、滅菌袋として示す貯蔵部71を含み、これは、滅菌接続チューブ74により、閉鎖頂部77を有するある様式の遠心管として示される遠心容器76に接続される。閉鎖頂部は、下記のように、サンプルの導入および除去、ならびに換気に有用な、少なくとも1つの、そして好ましくは少なくとも2つの入口を有する。示された実施態様において、閉鎖頂部77から上方へ突出している固体外縁79は、入口に対する保護障壁を形成するように、そして輸送および保存の間に起き得る混入を減少させるように作用する装置の保護的な除去可能な蓋のための接点として含まれる。
【0101】
図14をさらに参照すると、チューブ74は、容器76へ入口78を通って取り付けられ、付属品80が適合される。付属品は、滅菌的接続に適合された任意の型の固定チップ(例えば、Luer-LockTMシリンジコネクター)であり得る。あるいは、付属品80は、滅菌液体袋および管との接続のために適合された滅菌隔壁(例えば、逆流弁およびBurron Medical Inc.,Bethlehem, Pennsylvaniaから入手可能なSpin-LockTMアダプターを有するSAFSITETM小ワイア伸長セット)であり得る。遠心管76への液体の流れを促進するために、バケツは通気入口82を含む。示すように、空気フィルター84は、入口82に取り付けられて混入を防ぐ。
【0102】
本発明の好ましい実施態様によれば、容器76は狭窄部材88を含む。多くの配置が可能であるが、例示のように、狭窄部材88はその頂部表面が漏斗型である。例示するように、狭窄部材88は、管の外表面上の欠刻89を形成する容器76とともに完全に形成される。狭窄部材は、支持体90により支持されて遠心分離の間の狭窄を防止する。容器はまた、狭窄部材88の上および下の両方の管に配置されたOCS粒子密度勾配物質91を含む。例示されるように系全体は、標準的な方法に従ってγ線またはEビームにより滅菌される。
【0103】
容器76の加えられた特徴は、入口92である。この入口は、閉鎖された液体チャンネル94を介して容器76の底部95と連絡する。入口およびチャンネルは、例えば、滅菌の前に密度勾配細胞分離媒体で、管95の低部を満たすために用いられる。あるいは、口およびチャンネルを用いて、細胞ペレット物質を含む物質を、遠心分離の後に管の底から除去し得る。管のこの特徴は、例示される閉鎖系の状況に必ずしも必要とされず、かつこれに制限されない。
【0104】
貯蔵部70から容器76への液体の流れは、通気入口82で吸引を適用することにより開始され得るか、または重量を含む、当該分野で公知の他の手段により開始され得る。流速は、2つの容器の間の圧力水頭を変化させることにより、または管中にもしくは貯蔵部70と入口78との間の1点での入口に配置した弁を調節することのいずれかにより調整される。流速は、密度勾配溶液のレベルより上に容器76の頂部部分を満たすため、または部分的に満たすために、最適に調節される。十分な液体サンプルが管中に入った場合、流れは、当該分野で公知の任意の多くの手段(例えば、弁によるまたは圧力水頭の低下による調節)により終了し得る。次いで、チューブがバケツから取り出され、口78が封鎖され、そして閉鎖容器が上記のように遠心分離にかけられる。
【0105】
本発明の方法を実施する際に特に有用である別の好ましい実施態様において、狭窄管は、遠心分離可能なシリンジ(例えば、共有に係るPCT出願PCT/US95/11162(WO96/06679)(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載される遠心シリンジ)の形態をとり得る。この実施態様は、上記のような閉鎖系における使用に十分に適している。
【0106】
本発明の使用に適切である装置の別の配置は、遠心分離可能な袋である。このような配置は、袋に直接収集され得る臨床血液サンプルを処理する際の使用のために特に適切である。
【0107】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明を制限する意図は全くない。
【実施例】
【0108】
物質
A.密度勾配物質
以下の実施例で使用した有機シラン処理コロイド状シリカ粒子(サイズ範囲:15〜30 nm)を、γグリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GPMS)を使用する米国特許第4,927,749号に記載の方法に従って調製した。ポリビニルピロリドン(PVP-10)をSigma(St.Louis, MO)から得た。
【0109】
B.モノクローナル抗体
造血始原細胞(抗CD34;抗HPCA-2)および白血球(抗CD45; 抗HLE-1)に特異的な表面抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)を、Becton Dickinson,Inc.(San Jose, CA)から得た。異なるモノクローナル抗体を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリシリンPEで直接標識した。PEで標識したイソタイプコントロールIgG1ポリクローナル抗体を、Becton Dickinson, Inc.(San Jose)から得た。
【0110】
実施例1
密度勾配溶液の調製
上記の「物質」に記載のように調製したOCS粒子ベースの密度勾配物質を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で希釈し、示したようにpH7.4で規定の重量オスモル濃度および比密度を有する懸濁液を得た。
【0111】
OCS粒子ベースの密度勾配物質を、必要とされるおおよその比密度まで水で希釈した。固体の塩を添加し、最終生理学的塩溶液(生理学的生理食塩水またはDulbeccoリン酸緩衝化生理食塩水;Gibco)を得た。最終懸濁液の密度について調整された固体粉を添加することよって、異なる最終濃度(0%〜10%w/w)のポリビニルピロリドン(PVP-10)で懸濁液を補充した。当該分野で公知の標準的な方法に従い、電離放射線(γ照射およびE-ビーム、2.5〜3.5megaRad;Isomedix,Morton, Grove,IL)、オートクレーブ(120℃で15分間)、または0.2ミクロンのフィルターによる濾過によって、希釈した懸濁液を最終的に滅菌し、そして室温で使用した。
【0112】
実施例2
造血始原細胞の調整
A.血球混合物
末梢血単核細胞(PBPC)を、Bone Marrow Transplantation Laboratory at the Stanford University School of Medicine, Palo Alto, California, USAにおける非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、および乳ガン患者由来のアフェレーシスによって採取した。PBPCを、シクロホスファミド(4g/m2、静脈内)その後顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(10μg/kg、静脈内、毎日)を用いる処置によってNHL患者から動員(mobilize)した。エトポシド(VP-16;2g/m2、静脈内)その後G-CSF(10μg/kg、静脈内、毎日)で処置することによってPBPCを乳ガン患者において動員した。PBPCを、G-CSF単独で処置することによってHL患者に動員した。使用した動員プロトコルは、当該分野で公知の標準的なプロトコルである。
【0113】
最後の注射の24時間後、各患者をアフェレーシスに供した。PBPCを、標準的な方法に従ってアフェレーシスした血液から回収した。
【0114】
B.骨髄細胞混合物
骨髄吸引細胞を、上記のように、280 mOsm/kg H2Oの重量オスモル濃度で、1.0685 gr/mlの密度で調製したOCS懸濁液上でゆっくり重層した。遠心管あたり最高で2×109の細胞を重層し、そして処理した。チューブを、850×gで30分間室温にて遠心分離した。界面およびペレット由来の細胞を、本発明に従って、細胞トラップ管(cell-trap tube)から別々に回収した。細胞画分を、Becton Diskinson, Inc.(San Jose, CA)から得たFITC-およびPE-結合抗CD34(抗HPCA-2)抗体、抗CD45(抗HLe-1)抗体、抗CD3(Leu-4)抗体、およびIgG1抗体を用いたFACS分析によって特徴づけた。分析のために、細胞を、核染色LDS751(Exciton, Inc., Dayton, OH)を用いて標識した。LYSYS IIプログラムを備えたFACSCANシステムを用いる104フロー事象(flow event)(Beckton Dickinson, Inc. (San Jose, CA))で統計学的分析を行った。
【0115】
実施例3
PBPCの密度勾配分離
PBPC細胞(0.25ml)(実施例2により回収し、そして約5×107細胞/mlの濃度でPBSを希釈した)を、OCS粒子ベースの密度勾配懸濁液(50mlの遠心管中15 ml)上で重層した。この懸濁液は、1.0605 gr/mlの比密度、280 mOsm/kg H2Oのの重量オスモル濃度および7.4のpHを有した。サンプルと溶液との混合を回避するために、重層をゆっくり行った。チューブあたり最高2×109細胞を重層した。遠心分離を、850×gで、室温で30分間行った。細胞および密度勾配溶液の混合を回避するために、遠心分離をブレーキ力なしで停止した。
【0116】
遠心分離後、細胞を界面に位置する低密度画分およびペレットを形成している高密度画分に分離した。各細胞画分を回収し、そして別の50 mlポリプロピレン遠心管に移した。細胞を1回洗浄し、そしてさらなる操作までCa++およびMg++を含まないDulbeccoリン酸緩衝化生理食塩水(D-PBS)中、室温で保存した。造血始原細胞(CD34細胞)の数および機能性を以下の実施例5および6に詳述されるFACS分析およびクローン原性アッセイ(CFU)によって、両方の細胞画分を決定した。
【0117】
実施例4
シラン処理コロイド状シリカ粒子との混合の細胞に対する効果
シラン処理コロイド状シリカ粒子ベースの密度勾配溶液におけるヒト末梢血の混合および続くインキュベーションの効果の評価を、以下に記載する1つ以上の方法によって行った。
【0118】
以下に詳細するような各インキュベーションの後、細胞を回収し、そしてPBSで1回洗浄した。造血コロニー(CFU-E、BFU-E、CFU-GM、およびCFU-GEMM)を形成するそれらの能力を、当該分野で公知の方法に従って、そして以下の実施例6に記載のように、各方法の終わりにスクリーニングした。実験の実行において、方法1、3、および5は、それぞれ方法2、4、および6のためのコントロールのインキュベーション条件である。
【0119】
方法1:5mlの1×D-PBS(Ca++、Mg++なし)中の107〜108細胞を含むアリコートを、15mlのポリプロピレン遠心管に添加した。最初の細胞数を書き留めた。細胞を、15分間隔で穏やかに混合しながら、室温で30分間インキュベートした。
【0120】
方法2:5mlのOCS密度勾配懸濁液中の107〜108細胞を含むアリコートを、15mlのポリプロピレン遠心管に添加した。最初の細胞数を書き留めた。細胞を、15分間隔で穏やかに混合しながら、室温で30分間インキュベートした。
【0121】
方法3:5mlの1×D-PBS(Ca++、Mg++なし)中の107〜108細胞を含むアリコートを、15mlのポリプロピレン遠心管に入れた。最初の細胞数を書き留めた。細胞を、15分間隔で穏やかに混合しながら、室温で30分間インキュベートした。次いで、細胞混合物を、550×gで10分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、そして細胞ペレットを、10%ウシ胎児血清を補充した5mlのIscove培地に再懸濁した。次いで、細胞混合物を、室温で24時間インキュベートした。
【0122】
方法4:5mlのOCS密度勾配懸濁液中の107〜108細胞を含むアリコートを、15mlのポリプロピレン遠心管に入れた。最初の細胞数を書き留めた。細胞を、15分間隔で穏やかに混合しながら、室温で30分間インキュベートした。次いで、細胞混合物を、550×gで10分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、そして細胞ペレットを、10%ウシ胎児血清を補充した5mlのIscove培地に再懸濁した。次いで、細胞混合物を、室温で24時間インキュベートした。
【0123】
方法5:10%ウシ胎児血清を補充した5mlの1×D-PBS(Ca++、Mg++なし)中の107〜108細胞を含むアリコートを、15mlのポリプロピレン遠心管に添加した。最初の細胞数を書き留めた。次いで、細胞混合物を、室温で24時間インキュベートした。
【0124】
方法6:10%ウシ胎児血清を補充した5mlのOCS密度勾配懸濁液中の107〜108細胞を含むアリコートを、15mlのポリプロピレン遠心管に添加した。最初の細胞数を書き留めた。次いで、細胞混合物を、室温で24時間インキュベートした。
【0125】
実施例5
FACSによるCD34+細胞の染色および定量
細胞を核染料およびCD34およびCD45に指向するmAbsで標識後、CD34+細胞の量を蛍光活性化細胞選別(FACS)によって決定した。存在するCD34の百分率を、有核細胞のゲートにおいて決定した。FACSにおけるCD34細胞分析の精度を有する非有核粒子物質の干渉を回避するために、このアプローチを選択した。
【0126】
Ca++およびMg++を含まないのD-PBSを希釈剤として使用して、2×107細胞/mlの懸濁液を作製した。1×106細胞を含む細胞懸濁液の50μlを、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。50μlの20%熱不活化ウサギ血清/D-PBS溶液およびD-PBS溶液中の10μlの10μg/ml LDS 751(核染色染料)をまた各ウェルに添加し、その後混合した。プレートをホイルで覆い、そして室温で30分間インキュベートした。各コントロールウェルに、10μlのIgG1-PEを添加した。各試験ウェルに10μlの抗CD34-PEを添加し、その後、混合した。プレートをホイルで覆い、そして4℃で15分間インキュベートした。次いで、プレートを850×gで5分間、4℃で遠心分離した。次いで、上清を振り払う(flicking)によって除去した。
【0127】
各細胞ペレットを200μlの冷(4℃)1×DPBS(Ca++およびMg++なし)中で再懸濁した。次いで、プレートを、850×gで5分間、4℃にて遠心分離し、そして得られた上清をプレートの迅速な振り払いによって除去した。各細胞ペレットを、50μlの20%熱不活化ウサギ血清溶液中に再懸濁した。各コントロールウェルおよび試験ウェルに抗CD-45-FITC(10μl)を添加し、そして混合した。プレートをホイルで覆い、そして4℃にて30分間インキュベートした。次いで、全てのコントロールウェルおよび試験ウェルに100μlの冷(4℃)1×D-PBS(Ca++およびMg++なし)を添加し、そしてプレートを850×gで5分間4℃にて遠心分離した。プレートを迅速に振り払って上清を除去し、そして各細胞ペレットを200μlの冷(4℃)1×D-PBS(Ca++およびMg++なし)に再懸濁した。プレートを850×gで5分間4℃にて遠心分離し、次いで、迅速に振り払って上清を除去した。次いで、各細胞ペレットを、200mlの1%パラホルムアルデヒド(4℃)に再懸濁した。次いで、プレートをホイルで覆い、そしてサンプルのFACS分析まで4℃にて保存した。
【0128】
LYSYS 11統計学的分析プログラムを装備したFACSStar Plusシステム(Becton Dickinson, Inc.)を用いて、104フロー事象でFACS分析を行った。分析の目的のために、ゲート(領域1)を、赤血球、血小板、およびデブリをゲートから出すために、FL3におけるLDS751染色によって決定される有核細胞の周りに置いた。FL1およびFL2を、領域1を用いてドットプロットとして表示した。ゲート(領域2)を、抗CD45および抗CD34モノクローナル抗体の両方で染色した細胞集団の周りに置いた。分析のために、抗CD34(FL2)および抗CD45(FL1)モノクローナル抗体で染色する細胞の百分率を、領域2において決定した。これは、有核細胞の総数の百分率としてのCD34陽性細胞の数を表す。CD34陽性細胞の総数を、未処理サンプルおよび密度勾配溶液におけるPBPCサンプルの処理後の界面およびペレットから得られた細胞画分において決定した。
【0129】
実施例6
コロニー形成(CFU)アッセイ
細胞サンプルにおけるCD34+細胞の機能的特徴を、コロニー形成(CFU)アッセイによって決定した。このアッセイは、細胞溶液中の委ねられた造血始原細胞の数の定量化を提供する。
【0130】
種々のコロニー刺激因子およびエリトロポエチンを含有する2mlの市販用に調製された半固体メチルセルロース(MethoCultTMH4433培地、Terry Fox Laboratories, Vancouver)中で、細胞を105細胞の濃度まで希釈した。
【0131】
37℃での培養の14日後、赤血球(CFU-E、BFU-E)、顆粒球/マクロファージ(CFU-GM)、および混合(CFU-GEMM)コロニーを、標準的な方法に従って倒立顕微鏡(40×)下で計数した。細胞混合物中に存在するCFUの総数を、計数した異なる型のコロニーの合計によって定義した。
【0132】
実施例7
全細胞回収の決定
細胞回収%を、以下の式によって決定した:
回収%= 100 × 操作後の細胞数
開始時の細胞数
CD34細胞の回収%を以下の式によって決定した:
回収%= 100 × 操作後のCD34+細胞の数
開始時のCD34細胞の数
コロニー形成細胞の回収%を以下の式によって決定した:
回収%= 100 × 操作後のコロニー形成細胞(CFU)の数
開始時のコロニー形成細胞(CFU)の数
【0133】
実施例8
造血細胞回収に対する照射の効果
造血細胞の完全性(integrity)に対する照射された有機シラン処理コロイド状シリカ粒子の効果を、実施例4の「方法3および方法4」に記載のプロトコルを用いて試験した。OCS粒子、0.5%PVPを補充したOCS粒子、または0.5%PVPを補充したPBS(全容量5ml)を、50mlのコニカル遠心管中で、1用量のγ照射(2.5〜3.5megaRad)によって照射した。これらの実験において、チューブ中に存在する細胞の引き続くペレット化および定量化を促進するために使用したOCS粒子懸濁液の密度は、1.0605gr/ml(単離された細胞の密度よりも低い密度)であった。
【0134】
実施例1において記載されるように単離された3×107 PBPC細胞を含有するアリコートを、各チューブに添加し、そして最初の細胞数を書き留めた。細胞を、15分間隔で穏やかに撹拌しながら室温で30分間インキュベートした。次いで、細胞混合物を、550×gで10分間遠心分離した。遠心分離後、上清を捨て、そして細胞ペレットを、10%ウシ胎児血清を補充した5mlのIscove’s培地に再懸濁した。次いで、細胞混合物を、室温で24時間インキュベートし、次いで、実施例6に記載のCFUアッセイにおいて試験した。この実験の結果を、図1に示す。
【0135】
実施例9
滅菌遠心分離キット
以下のように末梢血単核細胞(PBPC)由来のCD34+造血始原細胞を分離するために、滅菌遠心分離キットを調製した:OCS粒子ベースの密度粒子密度勾配懸濁液を、実施例1に記載のように調製した。ストック溶液を、12部のOCS粒子懸濁液に1部の10×カルシウムおよびマグネシウムなしのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)および濃縮したPVP(PVP-10,Sigma)を混合することによって調製し、1.0605±0.0005 gr/ml(pH 7.4)の密度、重量オスモル濃度280 mOsm/Kg H2O、および4%PVPの濃度を有する培地を調製した。少なくとも小数点第4位までその精度を正確に規定するために、密度計でOCS粒子溶液の密度を調整し得る。
【0136】
15mlのこの懸濁液を、ポリプロピレン製の50mlコニカル遠心管(Baxter)に添加した。チューブを、チューブと共に供給される標準的なスクリューキャップで栓をした。次いで、チューブおよびその内容物を、2.5〜3.5megaRadのγ照射にチャンバーに置くことによって曝露した。本明細書中の実施例4に記載のように、PBPC由来のCD34+細胞の分離において、得られた滅菌遠心分離キットを使用した。
【0137】
実施例10
細胞混合物由来のCD34+細胞の富化
A. 密度勾配の調製
A.1. PERCOLL密度勾配
「PERCOLL」溶液を、Pharmacia Biotech(Uppsala, Sweden)から購入し、そして販売者の推奨に従って4℃で保存した。12部の「PERCOLL」と1部の10×カルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)との混合によって、ストック溶液を調製した。溶液のpHを7.4に調整し、そして重量オスモル濃度を280mOsm/Kg H2Oに調整した。細胞混合物中のCD34+細胞の分離における使用のために、ストック溶液をカルシウムおよびマグネシウムを含まないPBSで1.0605±0.0005gr/mlの密度までさらに希釈し、そして室温で使用した。再現性および細胞分離の精度を確実にするために、1.0605 gr/mlから±0.0005 gr/ml以内の精度に勾配の密度を調整することが重要である。DMA48(Anton PAAR USA, Ashland, VA)のような高精度のデジタル密度計で、これを行った。全手順を、滅菌状態および室温で行った。
【0138】
A.2. 有機シラン処理コロイド状シリカ(OCS)密度勾配
OCS粒子懸濁液は、Dorn(米国特許第4,927,749号)によって記載されるように調製された有機シラン処理コロイド状シリカ粒子懸濁液である。3〜22nmのサイズ範囲のOCS粒子(特に、13〜18nm)は、浮遊密度に基づいた細胞の不均一の混合物を分離するための密度勾配媒体として作用する安定な懸濁液を形成する。他に示さないかぎり、OCS粒子懸濁液を、PBSCサンプル由来のCD34+細胞の富化のために規定したように、280mOsm/kg H2Oの重量オスモル濃度で1.0605 gr/mlの密度を有するように生理学的食塩水溶液で調製した。懸濁液をGMP条件で作製し、そして少なくとも0.05%のポリビニルピロリドン(PVP-10;Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)の存在下でγ照射によって滅菌する。 およそ所望の最終的な比密度まで予め調整したOCS粒子の懸濁液に、PVPを乾燥粉として添加した。少なくとも0.05%および10%までのPVP濃度が、本方法における使用、本発明の装置、およびキットに好ましい。
【0139】
B.血液および骨髄軟層の密度勾配遠心分離
アフェレーシスした末梢血を、密度勾配に直接適用した。しかし、他に示さない限り、密度勾配に適用する前に、標準的方法に従って、全血および骨髄吸引物を軟層処理(赤血球の除去)した。
【0140】
アフェレーシスした血液サンプルを、50 mlコニカル細胞トラップ管または市販のチューブ中で、1.0605±0.0005 gr/mlの密度、280 mOsm/kg H2Oの重量オスモル濃度、および7.4のpHに予め調整した「PERCOLL」勾配に重層した。約15mlの「PERCOLL」がより低い区画にあり、そして5mlの「PERCOLL」が狭窄の上にあるように、細胞トラップ管は、ある位置に狭窄を含んだ。気泡の形成を防止するために、「PERCOLL」で狭窄の下の容量を完全に満たすことが重要であった。一般に、20mlのアフェレーシスした血液サンプルを、この勾配の頂部に重層した。チューブを、850×gで30分間室温にて遠心分離した。勾配の界面(つまり、「PERCOLL」の頂部)に留まった細胞を、チューブの上側の区画の全内容物を別の50mlのチューブに注ぐことによって回収した。狭窄の下の領域中の細胞ペレットを、チューブを逆さにした時の流れ出し(pouring off)から回避させた。
【0141】
前のパラグラフに記載された細胞分離法と従来の分離法を比較するために、試験サンプルをまた、「FICOLL-HYPAQUE」(Pharmacia)上に重層した。販売者が公表したように、ストック「FICOLL」溶液の密度は、1.077±0.001gr/mlおよび320 mOsm/kg H2Oの重量オスモル濃度であった。
【0142】
骨髄細胞を、実施例2に記載のように調製した。
C.密度調整細胞選別(DACS)
C.1. キャリア粒子の調製
Bangs Laboratories, Carmel, INから得たシリカビーズ(1.4ミクロン)を、濃HClで室温で2時間洗浄し、そしてビーズの塊を分散させるために15分毎に激しくボルテックスした。洗浄後、ビーズを850gで5分間遠心分離した。HClを含有する上清をデカントし、そして塊を分散させるために、ビーズを激しくボルテックスしながら脱イオン化H2Oで洗浄した。
【0143】
マグネティックスターラーを用いて連続的に撹拌しながら、濃硝酸中で1晩室温にてビーズをインキュベートした。次いで、ビーズを、850gで5分間遠心分離し、そして各工程で50 mlの脱イオンH2Oを使用して、脱イオン水で3回洗浄した。ビーズの凝集を回避するために、ビーズを、各洗浄の間に激しくボルテックスした。微生物の混入を防止するために、ビーズをさらなる使用まで脱イオンH2O中で0〜4℃で保存した。
【0144】
ビーズをシラン処理するために、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-ヨードプロピル)トリメトキシシラン、または[1-9トリメトキシシリル-2(m-(またはp)クロロメチル)フェニル]エタンのいずれかを使用した。4grのビーズ当たり40mlのシラン溶液(95%エタノール/脱イオンH2O中10%溶液)を添加した。ビーズ混合物を、室温で1時間逆さまに(end overend)回転させた。ビーズを850 gで5分間遠心分離し、そして100 mlの容量の95%エタノール/脱イオンH2Oで過剰なシランを洗い出した。ビーズの凝集を回避するために、ビーズを各洗浄工程の間激しくボルテックスした。洗浄工程後、ビーズを乾燥し、そして保存し得る。あるいは、ビーズの凝集を回避する冷95%エタノール/脱イオンH2O中で保存し得る。
【0145】
シラン処理ビーズを、2.5%グルタルアルデヒド中、室温で1晩インキュベートした。翌日、ビーズを850 gで5分間遠心分離し、そして遊離のグルタルアルデヒドを、5grビーズあたり100mlの容量の脱イオンH2Oで洗い出した。ビーズの凝集を回避するために、各洗浄工程の間にビーズを激しくボルテックスした。
【0146】
アミノプロピルビーズに抗体を過剰に(少なくとも3mg/m2総ビーズ表面積)添加し、そして1晩室温で逆さまに回転させた。翌日、ビーズを850 gで5分間遠心分離し、そして遊離のタンパク質を100mlの脱イオンH2Oで洗い出した。ビーズの凝集を回避するために、各洗浄工程の間にビーズを激しくボルテックスした。ビーズを、0.1アジ化ナトリウムを含有する脱イオンH2O中、低温で保存した。最終的なビーズ懸濁液は、70〜90%の単一のビーズおよび10〜30%の主に2重および3重のビーズを含有すべきである。
【0147】
抗体に結合したビーズの結合効率(被覆されたビーズの%に関して)を、フローサイトメトリー分析およびカップリング抗体に指向するフルオレセイン染色した(fluoresceinate)抗体を用いて決定し得る。あるいは、抗体をグルタルアルデヒド結合を用いずに直接シラン処理ビーズに添加し得る。
【0148】
C.2. 抗CD45被覆ビーズ
アフェレーシスした血液産物を、抗CD45抗体(クローンALB-12、Biodesign International, Kennebunk, ME)を用いてグルタルアルデヒド被覆した1.4μアミノプロピルガラスビーズ(Bangs Laboratories Inc., Carmel, IN)とともに室温で45分間インキュベートした。総血球混合物を、50 mlのチューブ中、OCS+0.5%PVP(1.0605± 0.0005 gr/ml, 280 mOsm/Kg H2O, pH7.4)上に重層した。
【0149】
C.3. ヤギ抗マウスIgG(GAM-IgG)被覆ビーズ
PBSCサンプル由来の細胞を、トリパンブルー排除によって計数し、洗浄し、そして0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を107細胞/mlの濃度で補充したPBS中に再懸濁した。抗CD3、CD4、CD8 mAbを添加し、3〜10μg/mlの最終濃度を得た。細胞を、氷上で30分間インキュベートし、次いで、遠心分離した。細胞ペレットを、PBS中の0.1%BSAで107細胞/mlの細胞濃度で再懸濁した。ヤギ抗マウスIgG(GAM-IgG)被覆DACSビーズを計数し、そして細胞に添加して4:1と8:1の間のビーズ:細胞比を得た。ビーズおよび細胞を15分間インキュベートした。インキュベーションの間、細胞:ビーズ混合物を、5分毎に穏やかに再懸濁した。次いで、細胞−ビーズ混合物を、OCS密度勾配懸濁液上に重層し、そして850×gで30分間室温にて遠心分離した。界面の細胞を遠心管をデカントすることにより回収し、計数し、そしてFACS分析のために調製した。非特異的涸渇(depletion)を試験するために、類似の手順を使用したが、モノクローナル抗体とのインキュベーションは省略した。
【0150】
Tリンパ球除去のためのDACSの効率を試験するための実験を、動員されたPBSC調製物、ならびに抗CD3、CD4、およびCD8 mAbを用いて行った。分化抗原上の同一のエピトープを認識するmAbに関連する人工産物を回避するために、抗CD-2mAbを使用してTリンパ球の収率をモニターした。
【0151】
D.細胞付着分子のキャリア粒子への結合
D.1. モノクローナル抗体
フィコエリトリン結合(PE-CD34)抗CD34モノクローナル抗体(造血始原細胞マーカー)およびフルオレセインイソチオシアネート結合(FITC-CD45)抗CD45モノクローナル抗体(汎(pan)白血球マーカー)を、Becton Dickinson, Inc.(San Jose, CA)から得た。CD45、CD16(顆粒球、単核細胞)、CD3(Tリンパ球)、CD14(単核細胞)に対する結合していない抗体を、当該分野で周知の方法に従って研究所で調製した。
【0152】
抗CD3(クローンLeu4)、CD4、およびCD8mAbを、Stanford University Hospital Blood BankのE. Engleman博士から得た。さらに、FITC-CD2、PE-CD34、およびFITC-CD45を、同じ販売者から購入した。
【0153】
室温で1晩インキュベートすることによって、ヤギ抗マウス被覆磁性ビーズまたはヤギ抗マウス被覆アミノプロピルガラスビーズのいずれかに抗体を結合させた。あるいは、抗体を、これらのビーズにヤギ抗マウス架橋を用いずに直接結合させ得るか、またはアビジン−ビオチンカップリング反応を介して結合させ得る。さらに、抗体を、それらのFc部分を介するビーズへの細胞の非特異的結合を減少させるためにFab2フラグメントに切断し得る。
【0154】
D.2. ヤギ抗マウスIgG(GAM-IgG)
FITCまたはPEのいずれかと結合させたマウスIgG1をBecton Dickinson(San Jose, CA)から購入し、そしてイソタイプのコントロールとして使用した。
【0155】
いくつかの異なる手順を使用して、ヤギ抗マウスIgG(GAM-IgG)(Biodesign International)で被覆したDACSビーズを調製した。目的は、特定の涸渇を最大にし、そしてDACS中の非特異的涸渇を最小にすることであった。DACSビーズをGAM-IgGもしくはF(ab)2GAM-IgG(East Coast Biologicals)でランダムな方向で共有結合的に被覆するか、またはGAM-IgGで特定の方向で共有結合的に被覆して、抗原に付着するIg結合部位の利用可能性を最大にする。さらに、タンパク質または細胞に対するビーズの非特異的親和性を減少させるために、ビーズのいくつかの調製物を、ポリエチレングリコール(PEG)(Shearwater)で被覆した。異なる化学的性質を以下に概説する。
【0156】
ランダムなGAM-IgGまたはF(ab)2GAM-IgG
シリカビーズを、グルタルアルデヒド(Sigma)の-CHOに結合可能な-NH2基を有するアミノプロピルトリエトキシシラン(Sigma)で被覆した。次いで、使用した化学的性質に従って、グルタルアルデヒドは架橋を形成し、そして抗体およびグルタルアルデヒドの両方が調製物に添加される場合、GAM-IgGまたはF(ab)2GAM-IgG分子を通じてリジンの-NH2基に結合する。ビーズに関するタンパク質分子の方向は、-NH2側鎖を有する任意のリジンがグルタルアルデヒドの-CHOに潜在的に結合するということに基づきランダムであると考えられた。これは、ランダムな方向にIgGまたはIgG-F(ab)2を有するATES-GLUT-IgG鎖を与える。
【0157】
特定の方向におけるGAM-IgG
GAM-IgG分子のFc部分のグリコシル化領域に対する炭水化物の-CHO基に結合可能な-NH2基を有するアミノプロピルトリエトキシシランでシリカビーズを被覆した。Fc部分でGAM-IgG分子のみがグリコシル化し、その結果この領域を介するGAM-IgGのビーズ表面との架橋は、ビーズ表面に隣接するFc部分および表面から離れたIgG結合部位を有するIgG分子を配向する効果を有する。この処置は、抗原に結合可能な結合部位の数を理論的に増加させ、そしてFcレセプターへ結合するFC部分の利用可能性を減少させる。これは、特定の方向にIgGを有するATES-CHO-IgG鎖を提供する。
【0158】
PEG-アルデヒドランダムGAM-IgG
PEGが2つのアルデヒド残基の間に挟まれるアルデヒド-PEG-アルデヒド分子の1つの-CHO基に結合可能な-NH2基を有するアミノプロピルトリエトキシシランでシリカビーズを被覆した。次いで、GAM-IgGは、他の-CHO残基に結合して、ランダムな方向にIgGを有するATES-CHO-PEG-CHO-IGg鎖を提供する。
【0159】
E. 分析
抗体染色、FACS分析、およびCFアッセイを、実施例5および6に記載のように行った。
【0160】
F. 拘束されていないCD34+細胞の長期培養開始細胞(LTC-IC)アッセイ/機能的決定
細胞混合物中の拘束されていない造血始原細胞の数を、長期培養開始培養によって決定した。細胞を、照射のストロマフィーダー層に播種し、そしてCFUの決定を、時間の関数において行った。造血幹細胞は、自己再生(self-renew)可能であり、そして5週間を超えるある期間にこの系においてCFUを生じる。長期骨髄ストロマ培養を、12.5%ウマ血清、12.5%ウシ胎児血清、2mML-グルタミン、0.2mM i-イノシトール、20μM 葉酸、10-4M 2-メルカプトエタノールを補充したαMEM培地中96ウェルプレート(ウェル当たり200μl中106細胞)で開始し、そして加湿環境下で33℃に維持した。1週間間隔で、培地の半分を取り出し、そして同体積の新鮮な培地と交換した。培養の2週間後、コンフルエントなストロマ層をγ線照射(2000 rad)して、内因性造血細胞を死滅させた。分離後の非画分サンプルおよび細胞調整物を、10-6Mヒドロコルチゾンを補充した同一の培地において照射ストロマ層上に播種した。培養の5週間後、付着細胞および非付着細胞を回収し、そして上記のG部のように、CFUアッセイにおいてスクリーニングした。
【0161】
G.ナチュラルキラー(NK)細胞アッセイ
K562標的細胞を100μCi51Crで37℃にて1時間標識し、次いで、4回洗浄し、そして計数した。画分していないアフェレーシスした血液および細胞分離後の異なる画分由来の細胞とともにV底の96ウェルマルチウェルプレート中で、標的細胞を4時間同時培養した。エフェクター細胞および標的細胞を異なる比(100:1、50:1、25:1、および12:1)で混合した。例えば、100:1の比は、5×105のエフェクター細胞および5×103の標的細胞を含んでいた。インキュベーション期間後、100μlの上清を回収し、そしてシンチレーションカウンターで計数した。最大および自発的51Cr放出を、それぞれ50μlのストック標的溶液およびそれら自身のエフェクター由来の上清のいずれかを計数して測定した。細胞傷害性%を、以下の式に従って決定した:
細胞傷害性% = cpm実験値−cpm自発的放出
cpm最大放出−cpm自発的放出
【0162】
J.混合リンパ球培養および天然のサプレッサー細胞の活性
2つの異なる軟層由来の細胞を、平底の96ウェルのマルチウェルプレート中で各105細胞で混合した。軟層の一方に3000 radを受けさせ、そして「スティミュレーター」と呼んだ。他方の軟層を未処理のまま用い、そして「レスポンダー」と呼んだ。画分されていないアフェレーシスした末梢血産物(APBL)または異なる密度画分由来の細胞を、これらの同時培養にウェル当たり105細胞で添加した。これらの細胞を「サプレッサー」と呼び、そしてMLRに添加する前に1500radを受けさせた。細胞を5日間培養し、次いで、[3H]-チミジン(1μCi/ウェル)でパルスした。18時間後、細胞を回収し、そして組み込まれたチミジンの量をシンチレーションカウンターにおいて決定した。サプレッサー細胞によって誘導された抑制%を以下の式によって決定した:
抑制% = cpmコントロール−cpm実験値
cpm実験値
【0163】
実施例11
末梢血からの腫瘍細胞の除去
ヒトB細胞リンパ腫細胞株SU-DHL4(Stanford University Blood Bank, Stanford, California)を末梢血の腫瘍細胞混入をモデリングするための標準的な実験モデルとして使用した。この細胞株は、免疫グロブリン(Ig)重鎖遺伝子の結合領域に対するbcl-2プロトオンコジーンの近位を生じるヒト第14染色体と第18染色体のロングアームとの間の相互転座を含む。上昇したレベルのbcl-2遺伝子産物を導くこの転座は、85%の濾胞性の小さな切断された細胞のリンパ腫および25%の散在性の大細胞リンパ腫で発見されている。bcl-2遺伝子における転座の切断点は、bcl-2遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)における約150bpにわたる主要切断点領域(MBR)またはbcl-2遺伝子の約20kb下流に位置する500bpの重要でないクラスター領域(MCR)のいずれかに位置する。転座特異的プライマー対および限界希釈分析による定量的PCRを使用して、DACS除去実験におけるSU-DHL4細胞の涸渇をモニターし得る。
【0164】
ヒトSK-BR3腺ガン細胞株(American Type Culture Collection(ATCC)、Rockville, MD)を、末梢血の乳ガン細胞浸潤をモデリングするための標準的な実験モデルとして使用した。これらの細胞は、マウス抗ヒトHer2/Neuモノクローナル抗体と応答し、これは、それらがHer2/Neu抗原を有することを示唆する。正常な軟層にスパイクする前に、FACS分析によって列挙され得るように、SK-BR3細胞を、カルセインAM(蛍光基質)で予めロードした。あるいはまたはさらに、乳ガン細胞はエストロゲンレセプターを含み、そしてそのようなレセプターおよび他のレセプター結合分子(例えば、エストロゲンおよびエストロゲンアゴニスト)に対する抗体と反応する。本発明の目的のために、このような細胞を、本明細書中に記載される腫瘍細胞除去法においてと同様に、このような腫瘍細胞抗原に対して十分な親和性で結合する任意の分子(抗体、エストロゲン、またはエストロゲンアゴニストを含むが、これらに限定されない)によって捕捉し得る。この状況において、結合の十分な親和性は、マウス抗ヒトHer2/Neuモノクローナル抗体(HB8694、520C9; ATCC, Rockvill, MD)の結合親和性とほぼ等しいかまたは2log結合親和性単位内の親和性である。
【0165】
PCR分析
高分子量のゲノムDNAを、QIAamp Blood Kit(Qiagen, Chatsworth, Ca.)を用いて調製し、そして260 nmでの光学密度によって定量した。PCR反応を、Perkin-Elmerモデル9600サーモサイクラーを用いて35サイクルで行った。各増幅サイクルは、94℃(15")、55℃(60")、および72℃(15")、最終サイクル後72℃(6分間)伸長からなる。ネストした(nest)反応のために、1mlの最初のラウンドの反応物をテンプレートとして使用した。以下のオリゴヌクレオチドを、サンプルの分析のために使用した:(i)5-CAGCCTTGAAACATTGATGG-3(MBR)(ii)5-ACCTGAGGAGACGGTGACC-3(JHコンセンサス)(iii)5-ATGCTGTGGTTGATATTTCG-3(MBRネスト)(iv)5-ACCTGAGGAGACGGTGACC-3(JHネストコンセンサス)。増幅産物を、アガロースゲル電気泳動によって視覚化した。
【0166】
FACS分析
SK-BR3細胞を、カルセインAMにインキュベートすることによって予めロードし、次いで、正常な末梢血単核細胞に2%の最終頻度で播種した。以下に記載のように、ヒトHer-2/Neuに対するマウスモノクローナル抗体を用いてDACSを行った。実験サンプルのアリコートを、LYSYS IIプログラムを用いるFACS分析によって分析した。分析のために、各サンプルにつき100,000事象を回収した。
【0167】
密度調整された細胞選別
末梢血始原細胞(PBPC)および軟層を、Bone Marrow Transplantation Laboratory at the Stanford University School ofMedicine, Palo Alto, CaおよびStanford University Blood Bank, Palo Alto, CAから得た。CD9、CD10、CD19、およびCD20に対するモノクローナル抗体を、Caltag Laboratories(So. San Francisco, CA)から得た。抗CD20 mAb(クローンIF5)および抗ヒトHer2/Neu mAb(HB8694, 520C9)ならびにSK-BR3腺ガン細胞株を、ATCC(Rockville, MD)から得た。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合マウスIgG1およびマウス抗ヒトCD45ならびにフィコエリトリン(PE)結合マウス抗IgG1およびマウス抗ヒトCD34抗体を、Becton Dikinson, Inc(San Jose, CA)から得た。FACS手順およびサンプルのフローサイトメトリー分析を、上記のように行った。
【0168】
末梢血細胞の除去および電気泳動分析
t(14;18)+B細胞リンパ腫細胞株SUDHL-4でスパイクした5%末梢血軟層を、CD9、CD10、CD19、およびCD20細胞に特異的な抗B細胞mAbカクテルとともにインキュベートした。洗浄後、細胞混合物を、GAM-IgG被覆DACSビーズとともに8:1のビーズ:細胞比でインキュベートし、次いで、OCS懸濁液に1.0605〜1.0720の範囲の密度でロードし、比較可能な結果を得た。850gで30分間の遠心分離後、DNAを界面で細胞から調整し、そしてt(14;18)特異的プライマーを用いるPCRの2ラウンドによる異なる濃度(1mg、0.1mg、0.01mg、0.001mg)での標準的なゲル電気泳動法によって分析した。t(14;18)転座の数を、限界希釈PCRによってさらに決定した。コントロールとして、同一のプロトコルを、スパイクしていない細胞、SUDHL-4スパイクサンプル、および抗B細胞mAbカクテルとの事前のインキュベーションなしでDACSビーズで処理したSUDHL-4スパイク細胞に対して使用した。
【0169】
OCS懸濁液の上の細胞混合物の遠心分離により、PCRシグナルの減少を生じなかった。DACSビーズ単独でPCRシグナルの小さな減少を誘導したが、PCRシグナルは、抗B細胞mAbカクテルおよびDACSビーズの両方で処理したSUDHL-4スパイクサンプル中に完全に不在であった。限界希釈PCRによるt(14;18)転座数の決定は、後者の実験群においてSUDHL-4細胞の数は、2〜3log(100〜1000倍)減少したことを示した。予備実験は、この状況におけるDACSのさらなるラウンドが、SUDHL-4細胞の数が追加の約1logでさらに減少することを示す。
【0170】
実施例12
樹状細胞の単離
HLA-A0201陽性のボランティアの健常なドナー由来の1単位の血液から調製した軟層を、Stanford University Blood Center(Stanford, CA)から得た。細胞を、ロイコパック(leukopacs)から回収し、Ca++およびMg++を含まないリン酸緩衝化生理食塩水(D-PBS;Gibco Laboratories, Grand Island, NY)を用いて60 mlに希釈し、そして50 mLの遠心管(好ましくは、細胞トラップチューブ)中、OCS分離媒体(密度1.0720gr/ml(pH 7.4)、280 mOsm/kg H2O)の2つの15 mLカラム上に重層した。チューブを1000×gで35分間、室温にて遠心分離する。遠心分離の運転を、ブレーキを用いずに停止させ、そして界面に存在する末梢血単核細胞(PBMC)を回収する。
【0171】
PBMCをD-PBSで再懸濁し、650×gで10分間遠心分離し、そして200×gで5分間さらに2回遠心分離し、血小板を除去した。血小板涸渇化PBMCを、60mlのD-PBSに再懸濁し、本発明の細胞トラップチューブ中、15 mLのOCS(密度1.0610 gr/ml, 280 mOsm/kg H2O)の2つのカラムの頂部に重層し、そしてブレーキを用いずに650×gで25分間4℃で遠心分離した。得られた界面(主に、単核細胞)およびペレット細胞(主に、リンパ球)を回収し、そしてD-PBSを用いる室温での遠心分離(650×gで10分間を1回、およびその後200×gで5分間を2回)によって洗浄した。
【0172】
それらの抗原提示機能を解明する目的のために、樹上細胞を使用して、ペプチド特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を生成する場合、界面の画分(ほとんどが単核細胞)を、プールした冷ヒトAB血清(Irvine Scientific, Santa,Ana, CA)に再懸濁し、それに同容量の80%のAB血清20%のジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma Chemical Company, St.Louis, MO)を滴下して添加する。得られた細胞懸濁液を、凍結バイアル(cryovial)に等分し、そして液体窒素中で凍結する。単核細胞を、拡大のためのCTLの再刺激のために使用し得る。
【0173】
ペレット画分を100mLのAB培養培地に再懸濁し、2つのT-75組織培養フラスコ中で接種し、そして湿潤化5%CO2インキュベーター中で40時間培養した。インキュベーション後、非付着細胞を適度なピペッティングで回収し、洗浄し、そしてAB培養培地中、2〜5×106細胞/mLの濃度に再懸濁する。細胞懸濁液を、AB培養培地中、4.0mL OCS分離媒体(密度1.0565 gr/ml(pH 7.4)、280 mOsm/kg H2O)の4つのカラム上に重層し、650×gで20分間室温にてブレーキをかけずに遠心分離する。
【0174】
界面およびペレットの細胞を回収し、そしてAB培養培地(Basal RPMI-1640 培地、Gibco Laboratories, Grand Island, NY)中、650×gで10分間を1回、およびその後200×gで5分間を2回それぞれ室温における遠心分離によって洗浄する。両方の細胞画分の収率および生存率を、トリパンブルー排除を用いる血球計で計数することによって評価する。
【0175】
界面画分における樹状細胞の純度を、続くフローサイトメター(FACS)分析で定量した。樹状細胞は、細胞表現型マーカーCD3(Tリンパ球)、CD14(単核細胞)、CD16(NK細胞)、およびCD20(B細胞)については陰性として、そしてHLA-DR(FITCチャンネルに対する)およびCD3、CD14、CD16、CD20のカクテル(PEチャンネルに対する)を用いる二重染色(dual staining)を用いるHLAクラスII発現において陽性として特徴づけられる。FITCおよびPEチャンネルの両方に対するIgG2aを用いる二重染色を、イソタイプコントロールとして使用し得る。
【0176】
細胞の形態学をまた、顕微鏡写真を用いて評価し得る。DC富化画分は、細胞表面から広がる細胞質の突起(DCの特徴的な特徴)を有する大きなサイズのベール細胞を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1は、PBS中のγ線照射0.5%PVP、γ線照射OCS粒子ベースの密度勾配物質(OCSP)または0.5% PVPを補充したγ線照射OCS粒子ベースの密度勾配物質(OCSP+0.5% PVP)でのインキュベーション後の機能的な造血始原細胞の回収(コロニー形成単位、CFU)を示す;
【図2】図2は、造血始原細胞機能(CFU)のγ線照射誘導制限に対するOCS粒子(OCSP)の滅菌の間に存在する様々な濃度のPVPの効果を示す;
【図3】図3は、0.5%PVPの非存在下(OCSP)および存在下(OCSP+PVP)におけるコロイド状シリカ粒子から形成される密度勾配の界面およびペレット画分におけるPBPC細胞の分布を示す;
【図4】図4は、0.5%PVPの非存在下(OCSP)および存在下(OCSP+PVP)におけるコロイド状シリカ粒子から形成される密度勾配の界面およびペレット画分における造血始原(CD34+)細胞の分布を示す;
【図5】図5は、2つの型のGAM-IgG調製物で被覆されたDACSビーズに会合したPBMCの非特異的な涸渇の比較を示す;
【図6】図6は、インタクトなGAM-IgGまたはF(ab)2GAM-IgGで被覆されたDACSを用いるCD34+細胞の非特異的消失を示す;
【図7】図7は、ランダムかまたは部位特異的配向のいずれかにおけるインタクトなGAM-IgGで被覆されたDACSビーズを用いるCD34+細胞の非特異的消失を示す;
【図8】図8は、OCS勾配上で骨髄細胞の遠心分離後の組合された界面+ペレットからの全細胞、CD34+細胞、CTL細胞、および赤血球(RBC)の回収%を示す。
【図9】図9は、遠心分離後の勾配の界面からの全細胞、CD34+細胞、CTL細胞、および赤血球(RBC)の回収割合を示す;
【図10】図10は、異なる密度画分におけるナチュラルサプレッサー細胞活性の分布を示す;
【図11】図11は、異なる密度画分におけるナチュラルキラー細胞の分布を示す;
【図12】図12は、末梢血軟層サンプルはDACSによるヒトBリンパ細胞を欠くという実験結果を示す;
【図13】図13は、図12の涸渇させた末梢血軟層サンプルにおけるCD34+細胞の回収を示す;
【図14】図14は、本発明に従って組み立てられた滅菌遠心キットを示す;そして
【図15】図15は、本発明のキットにおける含有物に適した閉鎖系遠心分離デバイスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−223313(P2006−223313A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117292(P2006−117292)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【分割の表示】特願平9−522180の分割
【原出願日】平成8年12月11日(1996.12.11)
【出願人】(506135534)デンドレオン コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】