説明

細胞周期フェーズマーカー

【課題】動的な読み取りをもたらす非破壊的なプロセスで、個々の生細胞について細胞周期の状態を決定する新規の手段を提供すること。
【解決手段】本発明は、哺乳類細胞の細胞周期の状態を決定するために有用なポリペプチド及び核酸構築物に関する。これら核酸構築物にトランスフェクトされた宿主細胞は、試薬が哺乳類細胞周期に与える影響を決定するために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞周期に特異的なマーカー、及び哺乳類細胞における細胞周期の異なる期間の移行を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真核細胞分裂は、G1、S、G2及びMと呼ばれる連続期を含む、高度に調節された細胞周期に沿って進行する。細胞周期又は細胞周期制御の破壊の結果、増殖制限細胞を、増殖の正常な制御に対して非応答性である高浸潤性細胞へと形質転換する複数の遺伝的変化から生じる、癌のような病態又は細胞異常が引き起こされうる。正常細胞の癌細胞への移行は、DNA複製及びDNA修復機構における正しい機能の喪失によって惹起されうる。分裂中の細胞はすべて、細胞周期チェックポイントとして知られる多くの制御機構の支配下にあり、これらが異常細胞を停止させるか又は破壊を誘発することによって遺伝的な完全性を維持する。細胞周期の進行及び制御の研究は、結果的に抗癌剤の設計に非常に重要なものである(Flatt PM and Pietenpol JA 2000 Drug Metab Rev 32(3−4):283−305; Buolamwini JK 2000 Current Pharmaceutical Design 6, 379−392)。
【0003】
細胞周期の進行は、細胞周期の間に高度に動的な挙動を呈する多くの細胞周期調節因子の、確定的な一時的で空間的な発現、局在、及び破壊によって厳密に調節されている(Pines, J., Nature Cell Biology, (1999), , E73−E79)。例えば、特定の細胞周期段階で、タンパク質のあるものは核から細胞質に、又はその逆に転位置し、またあるものは急速に分解する。既知の細胞周期制御成分及び相互作用の詳細については、Kohn, Molecular Biology of the Cell (1999), 10, 2703−2734を参照されたい。
【0004】
細胞周期の状態の正確な決定は、細胞周期に影響するか又は細胞周期位置に依存する細胞プロセスを研究するための重要な要件である。このような測定は、以下のような薬物スクリーニング用途で特に重要である。
i)例えば、潜在性のある抗癌治療薬としての研究のために、直接若しくは間接的に細胞周期の進行を修飾する物質が望まれる場合;
ii)薬物候補が、細胞周期の進行に対する望ましくない効果についてチェックされるべき場合;及び/又は
iii)ある薬剤が、細胞周期の特定の期にある細胞に対して活性か若しくは不活性であると推測される場合。
【0005】
従来、細胞集団に対する細胞周期の状態は、細胞核のDNA含量を染色する蛍光染料を用い、フローサイトメトリーによって決定されている(Barlogie B et al. Cancer Res. 1983 43(9):3982−97)。フローサイトメトリーは、細胞のDNA含量に対する定量的な情報をもたらし、従って細胞周期のG1、S及びG2+M期にある細胞の相対数の決定が可能になる。しかし、本分析は、破壊的な非動的プロセスであり、経時的に細胞周期の状態を決定するには集団を連続的にサンプリングする必要がある。フローサイトメトリー技術のさらなる不都合は、DNA含有量に基づく、細胞の細胞周期位置の間接的及び推定的な割り当てに関するものである。細胞核のDNA含有量は、妥当に予測可能な様式にて細胞周期を通じて変動する(すなわち、G2又はMの細胞はG1の細胞のDNA含有量の2倍であり、またS期にDNA合成を行っている細胞はその中間のDNA量を有する)ので、細胞周期の異なる期間で細胞の相対的な分布をモニターすることが可能である。しかし、G2又はM期に細胞を割り当てる際の曖昧さや、細胞周期の隣接期間の境界に近い細胞同士を正確に識別することを妨げる可能性がある集団内での細胞ごとのDNA含有量の固有な変動から生じるさらなる不正確さのために、この技術で個々のいずれの細胞の細胞周期位置でも決定するような精度は得られない。さらに、異なる組織又は生物体由来の異なる細胞型の間でのDNA含有量及びDNA染色の変動のために、この技術が各細胞型に対して至適化される必要があり、細胞型間又は実験間のデータを直接比較することが困難になりうる(Herman, Cancer (1992), 69(6), 1553−1556)。フローサイトメトリーは従って、一集団内の細胞の全体的な細胞周期分布を調べるのには好適であるが、経時的に個々の細胞の正確な細胞周期の状態をモニターするのに使用することはできない。
【0006】
欧州特許出願公開第798386号には、異種細胞試料中に存在する細胞亜集団の細胞周期を分析するための方法が記載されている。この方法では、蛍光標識したモノクローナル抗体と試料との逐次インキュベーションを用い、特異的な細胞型、及び核酸に特異的に結合する蛍光色素を同定する。これにより、試料中に存在する細胞の亜集団の細胞周期分布の決定が可能となる。しかし、この方法はフローサイトメトリーを利用するので非動的データしか得られず、細胞周期の進行に対する効果についての検討対象の薬剤に曝した後に経時的に細胞集団の細胞周期の状態の変化を決定するため、細胞の別々の試料に対して連続的に測定を行う必要がある。
【0007】
多くの研究者が、細胞の固定または溶解を必要とする旧来のレポーター酵素を使用して、細胞周期を研究している。例えば、Hauser及びBauer(Plant and Soil, (2000), 226, 1−10) は、植物成長点における細胞分裂を調研究するのにβ−グルクロニダーゼ(GUS)を用い、そしてBrandeis及びHunt(EMBO J., (1996), 15, 5280−5289)は、サイクリンレベルの変動を研究するのにクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)融合タンパク質を使用した。米国特許第6048693号には、細胞周期調節タンパク質に影響を及ぼす化合物をスクリーニングするための方法が記載されており、この方法では、レポーター遺伝子の発現が、サイクリン又はその他の細胞周期制御タンパク質による作用を受ける制御エレメントに結び付けられる。この方法において、レポーター遺伝子産物の一時的な発現が細胞周期特異的に駆動され、1以上の細胞周期制御成分に作用する化合物が発現レベルを増減しうる。
【0008】
米国特許第6159691号は、細胞周期に特異的な転写因子DP−3及びE2F−1に由来する核局在化シグナル(NLS)を記載しており、細胞周期の進行の推定調節因子について分析するための方法を請求している。この方法において、細胞周期に特異的な転写因子DP−3及びE2F−1に由来する核局在化シグナル(NLS)は、検出可能なマーカーに融合したDP−3及びE2F−1由来の特異的なNLS配列の核局在化の増減に作用する化合物の活性を分析するのに使用されうる。
【0009】
Jones他 (Nat Biotech., (2004), 23, 306−312) は、血漿膜標的化シグナル及びEYFPに融合したSV40ラージT抗原NLSに基づく、有糸分裂の蛍光バイオセンサーを記載している。細胞周期の全体にわたり、レポーターは核内に存在しているが、有糸分裂の際、核エンベロープの崩壊と再構成との間には、血漿膜へ転位置する。
【0010】
国際公開第03/031612号には、細胞周期に特異的な発現制御エレメント及び破壊制御エレメントによる哺乳類生細胞の細胞周期位置を決定するためのDNAレポーター構築物、及び方法が記載されている。
【0011】
Gu他(Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332)は最近、ヒトDNAヘリカーゼB(HDHB)の機能を精査して、G1期には主に核に、そしてS及びG2期には細胞質にあること、それがDNA損傷によって誘発される核点状構造(nuclear foci)内に存在していること、点状構造パターンがHDHB活性を要求すること、及びHDHBの局在化はCDKリン酸化によって調節されていることを示している。
【0012】
以上の方法のいずれも、ゲノムに安定的に一体化されえ、細胞周期のG1、S及びG2の期を示すのに使用されうるセンサを具体的に記載するものではない。従って、細胞周期のこれらの期を単一の哺乳類生細胞において非破壊的に決定し、同じ細胞を経時的に繰り返して調べることを可能とし、また細胞周期に対して望ましいか又は望ましくない効果を潜在的に有する薬剤の効果を研究することを可能とする方法が必要とされている。また、複数の薬剤に対するこれらの効果を平行に評価することができるようになる方法も必要とされている。
【特許文献1】欧州特許出願公開第798386号明細書
【特許文献2】米国特許第6048693号明細書
【特許文献3】米国特許第6159691号明細書
【特許文献4】国際公開第03/031612号パンフレット
【非特許文献1】Flatt PM and Pietenpol JA 2000 Drug Metab Rev 32(3−4):283−305
【非特許文献2】Buolamwini JK 2000 Current Pharmaceutical Design 6, 379−392
【非特許文献3】Pines, J., Nature Cell Biology, (1999), 1, E73−E79
【非特許文献4】Kohn, Molecular Biology of the Cell (1999), 10, 2703−2734
【非特許文献5】Barlogie B et al. Cancer Res. 1983 43(9):3982−97
【非特許文献6】Herman, Cancer (1992), 69(6), 1553−1556
【非特許文献7】Hauser and Bauer, Plant and Soil, (2000), 226, 1−10
【非特許文献8】Brandeis and Hunt, EMBO J., (1996), 15, 5280−5289
【非特許文献9】Jones et al, Nat Biotech., (2004), 23, 306−312
【非特許文献10】Gu et al., Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明に記載するのは、動的な読み取りをもたらす非破壊的なプロセスで、個々の生細胞について細胞周期の状態を決定する新規の手段を提供する、規定の組み合わせにおける細胞周期調節機構の主要な成分を利用する方法である。
【0014】
本発明はさらに、タンパク質、DNA構築物、ベクター、及びかかるタンパク質を安定に発現する細胞であって、G1/S細胞周期依存性の位置制御配列へのレポーターシグナルの直接的な結合により、細胞周期に特異的に検出可能なレポーター分子の転位置を呈するものを提供する。これによって、細胞周期状態の決定の精度が大幅に改善され、個々の細胞における細胞周期の進行を継続的にモニターすることが可能になる。さらに、細胞周期制御機構の機能性エレメントから主要な制御エレメントを単離及び抽出でき、動的に調節され、しかも内在性細胞周期制御成分と連携するものの独立して作用する細胞周期レポーターの設計が許容されることが見出されており、これにより、細胞周期の自然な進行に影響したり妨害したりすることなく細胞周期位置をモニターするための手段が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の特徴によれば、112000ダルトン未満の分子量を有する基を介して、1以上の細胞周期依存性の位置制御エレメントと連結した検出可能な生細胞レポーター分子を含むポリペプチド構築物であって、前記エレメントの位置はG1及びS期に変化し、哺乳類細胞内での前記構築物の転位置が細胞周期位置を示すものであるポリペプチド構築物が提供される。
【0016】
転位置とは、細胞内のある位置から別の位置への、典型的には核から細胞質への、又はその逆の、レポーターの検出可能な移動と定義されることは理解されよう。さらに、「生細胞」の用語で、レポーター分子に関連して、生細胞において検出可能なシグナルを生じるレポーター分子、又は抗原性タグなどの、生細胞で発現され、免疫学的方法にて固定した後に検出されえ、このためINセルアナライザ(GEヘルスケア)のような画像化システムでの使用に好適であるレポーターを定義することが理解されよう。
【0017】
好適には、上記基は100000ダルトン未満の分子量を有する。
【0018】
好適には、この基は50000ダルトン未満の分子量を有する。
【0019】
好適には、この基は25000ダルトン未満の分子量を有する。
【0020】
好適には、この基は10000ダルトン未満の分子量を有する。
【0021】
好適には、この基は1000ダルトン未満の分子量を有する。
【0022】
好適には、この基は700ダルトン未満の分子量を有する。
【0023】
好適には、この基は500ダルトン未満の分子量を有する。
【0024】
好ましくは、この基はポリペプチドである。かかるポリペプチド基は比較的小さいものであるとよく、柔軟性及び/又は細胞周期依存性の位置制御エレメントに対するレポーター分子の回転を許容するアミノ酸を含んでいるとよい。さらに好ましくは、ポリペプチド基はヘプタペプチドである。最も好ましくは、前記ヘプタペプチド基は、グリシン−アスパラギン−グリシン−グリシン−アスパラギン−アラニン−セリン(GNGGNAS)である。上述の通り、柔軟性及び/又は位置制御エレメントに対するレポーター分子の回転を許容するものであればいかなるアミノ酸でも、ポリペプチドで使用してよい。
【0025】
好適には、細胞周期特異的な依存性位置制御エレメントは、Rag2、Chaf1B、Fen1、PPP1R2、ヘリカーゼB、sgk、CDC6、又はヘリカーゼBのC末端の特殊な制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)などといった、それらの中のモチーフからなるペプチドの群から選択される。ヘリカーゼBは、非制御のDNAライセンシングを引き起こすことが知られており、過剰に発現された場合には細胞の生存に有害になることがある。従って、細胞周期依存性の位置制御エレメントは、好ましくはヘリカーゼBのC末端特殊制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)である。
【0026】
ヒトヘリカーゼB相同体が報告されて、特徴付けがなされており(Tanejaら、J.Biol.Chem.、(2002)、277、40853−40861)、核酸配列(NM 033647)、並びに対応するタンパク質配列はそれぞれ配列番号:1及び配列番号:2に示されている。この報告では、G1/S移行を促進するにはG1の間にヘリカーゼ活性が必要であることが示されている。Guら(Mol.Biol.Cell.、(2004)、15、3320−3332)は、リン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)と命名されたヘリカーゼB遺伝子の小さなC末端領域が、Cdk2/サイクリンEによってリン酸化され、NLS及びNES配列を含むことを示している。Guら(Mol.Biol.Cell.、(2004)、15、3320−3332)は、CMVプロモーターから発現されるEGFP−βGal−PSLD融合体(融合タンパク質全体のサイズが完全体のヘリカーゼBと同様になるよう、ベータ−ガラクトシダーゼ(βGal)が不活性基として構築物に含められたもの)をコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトされた細胞の研究を行った。G1の細胞は、主に核でEGFPシグナルを呈したが、細胞周期の他の期の細胞は、主に細胞質のEGFPシグナルを呈した。これらの研究者らは、PSLDが細胞周期のG1/S期移行のあたりで、核から細胞質へとレポーターの転位置を指向すると結論付けた。
【0027】
好適には、生細胞レポーター分子は、蛍光タンパク質、酵素及び抗原性タグからなる群から選択される。好ましくは、蛍光タンパク質はAequoria Victoria、Renilla reniformis、又はHydrozoa及びAnthozoa類に属するその他のものに由来する(Labasら、Proc.Natl.Acad.Sci、(2002)、99、4256−4261)。さらに好ましくは、蛍光タンパク質はEGFP(BDクロンテック)、Emerald(Tsien、Annu.Revs.Biochem.、(1998)、67、509−544)又はJ−Red(Evrogen)である。最も好ましくは、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Emerald及びJ−Redからなる群から選択される。
【0028】
好適には、レポーターはハロ−タグ(Promega社)のような酵素レポーターである。
【0029】
好適には、レポーター分子はEGFP又はJ−Redであり、また細胞周期依存性の位置制御エレメントはPSLDである。
【0030】
好適には、レポーター分子はタンデム化されている(すなわち、タンデムリピートとして存在している)。
【0031】
配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド構築物。
【0032】
本発明の第二の特徴によれば、上述のポリペプチド構築物のいずれかをコードする核酸構築物が提供される。
【0033】
好適には、前記核酸構築物はさらに、1以上の細胞周期非依存性の発現制御エレメントを含み、それに作動可能に連結され、その制御下にある。
【0034】
「作動可能に連結される」の用語は、エレメントが意図された目的のために連携して機能するように、例えば、転写がプラスミドで開始して、本発明のレポーター分子をコードするDNA配列を進行するように、それらが位置されることを示している。
【0035】
好適には、発現制御エレメントは、細胞周期の間中、転写のレベルの変動を限定しつつ、長期間にわたって転写を制御する。好ましくは、発現制御エレメントは、安定細胞系の生産のために必要な長期間にわたって転写をもたらす、ユビキチンC又はCMV I/Eプロモーターである。
【0036】
好ましくは、核酸構築物は、ユビキチンCプロモーター、並びにPSLD及びEGFP又はJ−Redをコードする配列を含む。
【0037】
場合によっては、核酸構築物は、CMVプロモーター、並びにPSLD及びEGFP又はJ−Redをコードする配列を含む。
【0038】
本発明の第三の特徴において、上述の核酸構築物のいずれかを含むベクターが提供される。好適には、前記ベクターはウイルスベクター、又はプラスミドのいずれかである。好適には、前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。
【0039】
任意に、ベクターは真核細胞で機性を有する薬物抵抗性遺伝子、好ましくは哺乳類細胞で機能性を有する薬物抵抗性遺伝子をさらに含む。
【0040】
発現ベクターはまた、ポリアデニル化シグナル、スプライスドナー/スプライスアクセプターシグナル、介在配列、転写エンハンサー配列、翻訳エンハンサー配列のような他の核酸配列も含みうる。任意に、薬物抵抗性遺伝子とレポーター遺伝子は、これらの2つの遺伝子が別々のプロモーターによって駆動されるよりもむしろ、配列内リボソーム進入部位(IRES)(Jangら、J.Virology、(1988)、62、2636−2643)によって作動可能に連結されるとよい。クロンテックより市販されているpIRES−neo及びpIRESベクターを使用しうる。
【0041】
本発明の第四の特徴において、上述の核酸構築物でトランスフェクトされた宿主細胞が提供される。当該構築物、又はこのような構築物を含む発現ベクターが導入される宿主細胞は、この構築物を発現することができるいずれの哺乳類細胞であってもよい。
【0042】
調製したDNAレポーター構築物は、当業者によって良く知られた技術を用いて宿主細胞にトランスフェクトされうる。これらの技術には、エレクトロポレーション(Tur−Kaspaら、Mol.Cell Biol.(1986)、6、716−718)、リン酸カルシウム法(例えば、Graham及びVan der Eb、Virology、(1973)、52、456−467)、直接マイクロインジェクション、陽イオン性脂質法(例えば、Superfect(キアゲン)又はFugene6(Roche社)、及びガンによる遺伝子移入の使用(Jiaoら、Biotechnology、(1993)、11、497−502)が含まれうる。細胞にDNA構築物をトランスフェクトするためのさらなる代替法では、ウイルスが細胞に進入する自然の能力が利用される。かかる方法では、例えば、単純ヘルペスウイルス(米国特許第5288641号)、サイトメガロウイルス(Miller、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、(1992)、158、1)、ワクシニアウイルス(Baichwal及びSugden、1986、Gene Transfer、R.Kucherlapati編、New York、Plenum Press、第117−148頁)、並びにアデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス(Muzyczka、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、(1992)、158、97−129)に基づいた、ベクター及びトランスフェクションプロトコルが包含される。
【0043】
好適な組換え宿主細胞の例としては、HeLa細胞、Vero細胞、チャーニーズハムスター卵巣(CHO)、U2OS、COS、BHK、HepG2、NIH3T3 MDCK、RIN、HEK293及びインビトロで生育するその他の哺乳類細胞系が挙げられる。好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。かかる細胞系は、アメリカン・ティッシュ・カルチャー・コレクション(ATCC、ベセズダ、メリーランド、米国)より入手可能である。哺乳類から細胞を取り出した後に樹立され、その後所定期間細胞培養されている初代細胞系由来の細胞もまた、本発明に含まれることが意図される。
【0044】
好ましい実施形態において、細胞系は第四の特徴にかかる複数の宿主細胞を含む安定細胞系である。
【0045】
細胞周期位置レポーターの安定な発現を呈する細胞系もまた、標準法を用い、宿主動物において操作された細胞の異種移植片を樹立するのに使用されうる(Krasagakis,K.Jら、Cell Physiol.、(2001)、187(3)、386−91;Paris,S.ら、Clin.Exp.Metastasis、(1999)、17(10)、817−22)。細胞周期位置レポーターを発現するように操作された腫瘍細胞系の異種移植片によって、腫瘍細胞分裂、鬱血及び転移を研究するモデル系を確立すること、並びに新しい抗癌剤をスクリーニングすることが可能になるであろう。
【0046】
本発明の第五の特徴によれば、哺乳類細胞の細胞周期位置を決定するための、上述のポリペプチドの使用が提供される。
【0047】
宿主動物における同種移植片としての、細胞周期位置レポーターを発現している操作された細胞系又はトランスジェニック組織の使用によって、組織移植片の寛容性又は拒絶に影響する機構を研究できるようになるであろう(Pye及びWatt,J.Anat.、(2001)、198(Pt2)、163−73;Brod,S.A.ら、Transplantation(2000)、69(10)、2162−6)。
【0048】
本発明の第六の特徴によれば、哺乳類細胞の細胞周期位置を決定するための方法が提供され、この方法は、
a)細胞中で上述の核酸構築物を発現させ;
b)レポーター分子によって発生するシグナルをモニターすることにより細胞周期位置を決定する工程を含む。
【0049】
第六の特徴による、細胞の細胞周期位置を決定するための方法を実施するには、DNAレポーター構築物がトランスフェクトされた細胞を、細胞周期の特定の段階でレポーター分子を発現させるのに充分な条件下、時間で培養するとよい。典型的には、レポーター分子の発現は、トランスフェクション後16〜72時間の間に起こるはずであるが、培養条件によって異なりうる。レポーター分子が緑色蛍光タンパク質配列を基にしたものである場合、レポーターが蛍光性たる高次構造へと折り畳まれるのに規定時間かかることがある。この時間は、使用される緑色蛍光タンパク質誘導体の一次配列に依存するものである。蛍光レポータータンパク質はまた、経時的に変色しえ(例えば、Terskikh、Science、(2000)、290、1585−8を参照されたい)この場合、トランスフェクション後、所定時間間隔で画像化する必要がある。
【0050】
第六の特徴にかかる方法で、レポーター分子が蛍光シグナルを生じる場合、発せられたシグナルをモニターするのに、従来の蛍光顕微鏡、又は共焦点蛍光顕微鏡のいずれかを使用するとよい。これらの技術を使用して、レポーター分子を発現している細胞の比率や、レポーターの位置を決定することができる。本発明にかかる方法において、DNA構築物で形質転換またはトランスフェクトされた細胞の蛍光は、例えば、分光光度計、蛍光光度計、蛍光顕微鏡、冷却電荷結合素子(CCD)イメージャ(走査イメージャ若しくはエリアイメージャなど)、蛍光標示式細胞分取器、共焦点顕微鏡、又は走査共焦点装置で、培養中の細胞の分光特性が光の励起及び発光の走査として決定しうるものでの光学的手段によって好適に測定しうる。
【0051】
核酸レポーター構築物が薬物抵抗性遺伝子を含む本発明の実施形態において、薬物抵抗性遺伝子のトランスフェクション及び発現後(通常、1〜2日)、選択可能なマーカー遺伝子の存在のために、トランスフェクトされた細胞が耐性となる対象の抗生物質の存在下での細胞の生育によって、修飾されたレポーター遺伝子を発現している細胞を選択するとよい。抗生物質を添加する目的は、レポーター遺伝子を発現し、そして場合によってはその細胞系のゲノム内にレポーター遺伝子をその関連プロモーターと共に組み込んでいる細胞を選択することにある。選択の後、構築物を発現しているクローン細胞系は、標準技術を用いて単離することができる。クローン細胞系は次いで、標準的な条件下に生育されるとよく、そうすればレポーター分子を発現して細胞周期の特定の点で検出可能なシグナルを生じることになるであろう。
【0052】
本発明の核酸レポーター構築物をトランスフェクトした細胞は、検討を加えるべきであって細胞の細胞周期に対するその効果を決定すべき被検薬剤の非存在下及び/又は存在下に生育させるとよい。レポーター分子を発現している細胞の比率、及び細胞内でのシグナルの局在を決定することによって、細胞の細胞周期に対する被検薬剤の効果、例えば、細胞周期の特定の段階で被検システムが細胞を停止させるか、又はその効果が細胞分裂を加速若しくは減速するものであるのかなどを決定することができる。
【0053】
従って、本発明の第七の特徴によれば、哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、
a)上述の核酸レポーター構築物を、被検薬剤の非存在下及び存在下に細胞中で発現させ;並びに
b)レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定する工程を含み、ここで、被検薬剤の非存在下と存在下に測定された発生シグナル間の差が、細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果の指標となる。
【0054】
「被検薬剤」なる用語は、電磁放射線の形態として、又は化学成分として解釈されるべきである。好ましくは、被検薬剤は、薬物、核酸、ホルモン、タンパク質及びペプチドからなる群から選択される化学成分である。被検薬剤は、細胞に外因的に適用されてもよいし、又は研究対象の細胞において発現されるペプチド若しくはタンパク質であってもよい。
【0055】
本発明の第八の特徴において、哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、
a)当該被検薬剤の存在下に、上述の核酸レポーター構築物を当該細胞中で発現させ;
b)レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定し;並びに
c)被検薬剤の存在下に発生するシグナルを、被検薬剤の非存在下に発生するシグナルに対する既知の数値と比較する工程を含み、
ここで、被検薬剤の存在下に測定された発生シグナルと、被検薬剤の非存在下での既知の数値との差が、細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果の指標となる。
【0056】
本発明の第九の特徴において、哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、
a)上述の核酸レポーター構築物を含む細胞を用意し;
b)細胞の第一及び第二集団を、被検薬剤の存在下及び非存在下、核酸レポーター構築物の発現を許容する条件下にそれぞれ培養し;並びに
c)第一及び第二細胞集団において、レポーター分子が発生するシグナルを測定する工程を含み、
ここで、第一及び第二細胞集団で測定された発生シグナル間の差が、細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果の指標となる。
【0057】
本発明の第十の特徴において、被検薬剤に応答して変動することが知られている第一の検出可能なレポーターによって測定できる細胞プロセスに対する哺乳類細胞周期の効果を決定する方法が提供され、この方法は、
a)被検薬剤の存在下に、上述の第二核酸レポーター構築物を、細胞中で発現させ;
b)第二レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定し;並びに
c)第一の検出可能なレポーターが発生するシグナルをモニターする工程を含み、
ここで、工程b)によって決定された細胞周期位置と第一の検出可能なレポーターが発生するシグナルとの関係が、当該細胞プロセスが細胞周期依存性であるか否かの指標となる。
【0058】
本発明の第十一の特徴において、細胞中のCDK2活性を測定するための、上述のポリペプチドの使用が提供される。
【0059】
本発明の第十二の特徴によれば、細胞中のCDK2活性を測定するための方法が提供され、この方法は、
a)上述の細胞中で核酸構築物を発現させ;及び
b)レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによってCDK2活性を決定する工程を含む。
【0060】
本発明の第十三の特徴によれば、哺乳類細胞のCDK2活性に対する被検薬剤の効果を決定するための方法が提供され、この方法は、
a)当該被検薬剤の非存在下及び存在下に、上述の核酸構築物を当該細胞中で発現させ;並びに
b)レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによってCDK2活性を決定する工程を含み、ここで、当該被検薬剤の非存在下及び存在下で測定された発生シグナル間の差が、CDK2活性に対する被検薬剤の効果の指標となる。
【0061】
本発明の第十四の特徴において、哺乳類細胞のCDK2活性に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、
a)当該被検薬剤の存在下に、上述の核酸構築物を当該細胞中で発現させ;及び
b)レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定し;
c)被検薬剤の存在下に発生するシグナルを、被検薬剤の非存在下に発生するシグナルに対する既知の数値と比較する工程を含み、
ここで、被検薬剤の存在下に測定された発生シグナルと、被検薬剤の非存在下での当該既知の数値との差が、細胞のCDK2活性に対する被検薬剤の効果の指標となる。
【0062】
図面の簡単な説明
図1は、核又は細胞質におけるHDHBの局在を示す図である。
(A)U2OS細胞の細胞質及び核抽出物を、変性ゲル電気泳動、並びに組換えHDHB、α−チューブリン、及びPCNAに対する抗体を用いたウェスタンブロッティングによって分析した。免疫反応性タンパク質は、化学発光によって検出した。
(B)U2OS細胞に微量注入して一過性に発現されたGFPタグ付きHDHBを、蛍光顕微鏡によって可視化した。核は、ヘキスト染料で染色した。棒:10μm。
(C)U2OS細胞に微量注入して一過性に発現されたFLAGタグ付きHDHBを、蛍光顕微鏡によって可視化した。
【0063】
図2は、GFP−HDHBの細胞内局在化は、細胞周期依存性であることを示す図である。
(A)非同調性、G1、及びS期のU2OS細胞における、一過性に発現されたGFPタグ付きHDHBの細胞内局在化を数量化した。所定の分布パターンを備えたGFP陽性細胞の数を、GFP陽性細胞の総数(>100個細胞)の百分率として表した。
(B)同調性U2OS細胞(G1及びS期)の細胞質及び核抽出物を、変性ゲル電気泳動、並びに組換えHDHB、α−チューブリン、及びPCNAに対する抗体を用いたウェスタンブロッティングによって分析した。免疫反応性タンパク質は、化学発光によって検出した。
【0064】
図3は、HDHBの核局在化に必要なドメインの同定を示す図である。
(A)CDK(SP又はTP)に対する7つの潜在的リン酸化部位、推定細胞内局在化ドメイン(SLD)及びリン酸化SLD(PSLD)、ウォーカーA及びウォーカーBヘリカーゼモチーフを示す、HDHBタンパク質の模式図。アミノ酸残基数を、タンパク質の下に示す。
(B)研究にて作製した、GFP−及びFLAG−タグ付きHDHB、並びにC末端切欠変異体。HDHB SLD(残基1040〜1087)及びPSLD(残基957〜1087)のC末端を、GFP−βGalレポーターに融合させて、それぞれGFP−βGal−SLD及びGFP−βGal−PSLDを作出した。
(C)非同調性、G1、及びS期U2OS細胞における、一過性に発現されたGFP−HDHB−ΔSLDの細胞内局在化を数量化して、GFP陽性細胞の総数の百分率として表した。
【0065】
図4は、GFP−βGal−PSLD細胞内局在化パターンは、細胞周期で変動することを示す図である。
(A)非同調性、G1、及びS期U2OS細胞で一過性に発現されたGFP−βGal、GFP−βGal−SLD、及びGFP−βGal−PSLDの細胞内局在化を数量化して、GFP陽性細胞の総数の百分率として表した。
【0066】
図5は、HDHBのSLDにおける機能性rev型核外移出シグナル(NES)の同定を示す図である。
(A)HDHB内推定NESの、他の細胞周期関連タンパク質で同定されたもの(Henderson及びEleftheriou、2000;Fabbro及びHenderson、2003)とのアラインメント。アミノ酸配列の上方の上付き添字は、残基数を示す。太矢印は、NESの保存された脂肪族残基を指し示す。HDHB内推定NESの二対の残基を、細矢印によって示すようにアラニンに変異させてMut1及びMut2を作出した。
(B)GFP−及びFLAG−タグ付きHDHBを、CRM1によって媒介される核外移出を阻害するLMBを、添加して(+)又は添加せずに(−)、非同調的に成長しているU2OS細胞で一過性に発現させた。非同調性、G1、及びS期細胞における、GFP−HDHB及びFLAG−HDHBの細胞内局在化を数量化して、その試料中のGFP陽性細胞の総数の百分率として表した。
【0067】
(C)非同調性U2OS細胞での野生型、並びに変異型GFP−HDHB及びGFP−βGal−PSLDの細胞内局在化を数量化して、その試料中のGFP陽性細胞の総数の百分率として表した。
【0068】
図6は、インビボでのFLAG−HDHBの細胞周期依存的なリン酸化を示す図である。
(A)FLAG−HDHB(レーン1)、並びにその切欠変異体1−1039(レーン2)及び1−874(レーン3)を一過性に発現しているU2OS細胞を、[32P]オルソ−ホスフェートで標識化した。細胞抽出物を抗FLAGレジンで免疫沈降させた。沈降したタンパク質は、7.5%SDS−PAGEで分離し、PVDF膜に転写して、オートラジオグラフィー(上方)又はウェスタンブロッティング(下方)によって検出した。既知分子量のマーカータンパク質の位置を、左側に示す。
(B)U2OS細胞で発現させたFLAG−HDHBを抗FLAGレジンで免疫沈降させ、示した通りにホスファターゼインヒビターの存在下(+)又は非存在下(−)に、λ−ホスファターゼ(λ−PPase)を添加して(+)又は添加せずに(−)インキュベートして、SDS−PAGE及び抗HDHB抗体を用いたイムノブロッティングによって分析した。
(C)FLAG−HDHBを発現しているU2OS細胞を、G1/S(上方)又はG2/M(下方)で停止させて、その後遮断から復帰させた。表示の時点でFLAG−HDHBを回収し、抗FLAGレジンで免疫沈降させ、λ−PPaseを添加して(+)又は添加せずに(−)処理して、(B)におけると同様に分析した。
【0069】
図7は、HDHB内インビボ主要リン酸化部位としてのS967の同定を示す図である。
(A)ホスホアミノ酸マーカー(左側)、及びインビボで32Pにて標識化したFLAG−HDHBからのホスホアミノ酸(右側)を、二次元で分離し、オートラジオグラフィーによって可視化した。加水分解が不完全であったホスホペプチドのあるものは、起点の近傍に残っていた(+)。
(B)野生型及び変異型FLAG−HDHBタンパク質を、インビボでオルトホスフェートにて放射標識化し、免疫沈降させ、SDS−PAGEによって分離して、オートラジオグラフィー(上方)及び抗HDHBを用いたイムノブロッティング(下方)により分析した。
(C)32Pにて標識化した野生型及びS967A変異型FLAG−HDHBのトリプシンで生じたホスホペプチドを二次元に分離して、オートラジオグラフィーによって可視化した。
【0070】
図8は、HDHB S967の潜在的G1/SキナーゼとしてのサイクリンE/CDK2の同定を示す図である。
(A)図7Cにおけると同様にインビボでリン酸化したFLAG−HDHB、又は精製したサイクリンE/CDK2若しくはサイクリンA/CDK2によってインビトロでリン酸化した組換えHDHB由来の、トリプシンで生じたホスホペプチドを、別個に、又は混合物としてのいずれかで二次元に分離して、オートラジオグラフィーによって可視化した。
(B)FLAGベクターを用いて共免疫沈降させたタンパク質(レーン1、4)、又はU2OS細胞において発現させたFLAG−HDHB(レーン2、5)を、HDHB(レーン1〜6)、サイクリンE(レーン1〜3)、又はサイクリンA(レーン4〜6)に対する抗体を用いてイムノブロッティングによって分析した。免疫沈降のために使用した細胞溶解液の10分の1を、陽性コントロールとして平行して分析した(レーン3、6)。
【0071】
図9は、HDHBの細胞内局在化は、S967のリン酸化によって調節されることを示す図である。
(A)非同調性、G1、及びS期U2OS細胞において発現したGFP−HDHB S967A及びS967Dの細胞内局在化を数量化した。
【0072】
図10は、pCORON1002−EGFP−C1−PSLDベクターの安定な発現を呈する非同調性U2OS細胞でのEGFP−PSLDの局在化は細胞周期依存性であることを示す図である。
【0073】
細胞の同じ部分視野の蛍光顕微鏡で、(A)核をヘキスト染料で染色したもの、(B)EGFP−PSLDを可視化したもの、(C)固定する前に核を1時間、BrdUに曝露し、Cy−5で標識化した抗体を用いて検出してS期の細胞を示したもの。(D)視野全体に存在する個々の細胞についての、赤色(BrdUのCy−5免疫蛍光検出)及び緑色(EGFP−PSLD)双方における核の蛍光強度のグラフ。
【0074】
図11は、pCORON1002−EGFP−C1−PSLDのベクターマップを示す図である。
【0075】
図12は、pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLDのベクターマップを示す図である。
【0076】
図13は、pCORON1002−EGFP−C1−PSLD、pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLDを用いて発生させた代表的な安定細胞系、並びに親のU2OS細胞系に対するシグナルの輝度及び均一性を比較したフローサイトメトリーのデータを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
方法
プラスミド
BglII/NotI断片とした全長のHDHB cDNAを(Tanejaら、J.Biol.Chem.、(2002)277、40853−40861)を、pEGFP−C1ベクター(クロンテック、Palo Alto、CA)のNotI部位に挿入することにより、pGFP−HDHB、及び変異誘導体(図4及び6参照)を作出した。pFLAG−HDHBは、全長のHDHB cDNAを含むHindIII/NotI断片をpFlag−CMV2ベクター(イーストマンコダック社、Rochester、NY)のNotI部位に挿入することによって構築した。タグ付きHDHBプラスミドを、残基1034のコーディング配列の後をNruIで、及びポリリンカー内をNotIで切断し、そして残基1035〜1039、終止コドン、及び突出しているNotI−適合性5’端をコードする、平滑末端を持つ二重鎖アダプタオリゴヌクレオチドにより、小断片を置換することによって、タグ付きHDHB−SLD(1〜1039)を構築した。pFLAG−HDHB(1〜874)を作出するために、StuIで消化したpFLAG−HDHB DNAをクレノウポリメラーゼで処理して平滑末端を作り、pFLAG−CMV2ベクターに連結させた。pEGFP−βGalを作るために、大腸菌β−ガラクトシダーゼ(βGal)をコードするDNA断片をpβGal−コントロール(クロンテック)からのPCRによって増幅させて、pEGFP−C1内のGFPをコードする配列の3’端にHindIII部位を用いて挿入した。アミノ酸残基1040〜1087(SLD)及び957〜1087(PSLD)に対するHDHB配列をPCRで増幅して、pEGFP−βGal内のβGal cDNAの3’端で挿入して、pGFP−βGal−SLD及びpGFP−βGal−PSLDをそれぞれ作出した。NES変異体、及びリン酸化部位変異体は、HDHB cDNAで、部位特異的突然変異誘発(QuikChange、ストラタジーン、La Jolla、CA)によって作出した。
【0078】
pCORON1002−EGFP−C1−PSLDは、DNA構築物pGFP−CI−βGal−PSLDからの390塩基対のPSLD領域をPCRで増幅することによって構築した。PSLD断片への5’NheI及び3’SalI制限酵素部位の導入で、ベクターpCORON1002−EGFP−C1(GEヘルスケア、アマシャム、UK)へのサブクローニングが可能になった。この結果得られた6704塩基対のDNA構築物pCORON1002−EGFP−C1−PSLDは、ユビキチンCプロモーター、細菌アンピシリン抵抗性遺伝子、及び哺乳類ネオマイシン抵抗性遺伝子を含んでいる(図11)。このベクターの核酸配列を、配列番号:3に示す。このベクターのさらに3つのバージョンを、標準クローニング技術(Sambrook、J.ら(1989))を使用して作出した。すなわち、EGFP遺伝子を先ずJ−Red(Evrogen)で置換し、ネオマイシン耐性遺伝子をハイグロマイシン抵抗性遺伝子で置換し、そしてユビキチンCプロモーターをCMV I/Eプロモーターで置換した。
【0079】
pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLDは、pEGFP−CI−βGal−PSLDのNheI及びXmaI制限酵素消化、並びに4242塩基対のEGFP−βGal−PSLD断片のpCORON1002ベクター(GEヘルスケア)への挿入によって構築した。この結果得られた9937塩基対のDNA構築物pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLD(図12)は、ユビキチンCプロモーター、細菌アンピシリン抵抗性遺伝子、及び哺乳類ネオマイシン抵抗性遺伝子を含んでいる。このベクターの核酸配列を、配列番号:4に示す。
【0080】
EGFP−PSLD融合タンパク質に対するタンパク質及び核酸配列を、配列番号:5及び6にそれぞれ示す。
【0081】
すべての構築物及び置換変異体の正しいDNA配列は、DNA配列決定によって確認した。
【0082】
抗体
抗HDHB抗体は、精製した組換えHDHB(ベチルラボラトリーズ、Montgomery、TX)に対して作製して、固定化HDHBにてアフィニティ精製した(Harlow及びLane、抗体:実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー研究所)。
【0083】
細胞培養、同調、微量注入、エレクトロポレーション、トランスフェクション及び安定細胞系の作製
U2OS細胞を、10%胎児ウシ血清(FBS)(アトランタバイオロジーズ、Norcross、GA)を追加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(ギブコBRLライフテクノロジーズ、Carlsbad、CA)中で、指数関数的に生育する単層として37°Cにて培養した。指数関数的に成長しているU2OS細胞は、5mMチミジン(シグマ−アルドリッチ、St.Louis、MO)を含有するDMEM中でのインキュベーションによって24時間、G1/Sで停止させた。細胞をS期へと復帰させるために、培地を吸引し、10%FBSを含む暖かいDMEMで細胞を3回洗浄して、10%FBSを含む新鮮なDMEM中でインキュベートした。指数関数的に成長しているU2OS細胞を、30ng/mlのノコダゾール(シグマ−アルドリッチ)を含有するDMEM中で16時間、G2/Mで停止させた。G1へと細胞を復帰させるために、穏やかにシェイクオフすることによって有糸分裂細胞を集め、10%FBSを含むDMEMで3回洗浄し、次いで微量注入用のカバーガラス上、又はさらに操作するために培養ディッシュ内で平板培養した。
【0084】
細胞周期同調は、以前報告された通りに(Tanejaら、J.Biol.Chem.、(2002)277、40853−40861)フローサイトメトリーによって検証した。核タンパク質の移出を阻止する実験において、10ng/mlのレプトマイシンB(LMB)及び10μMのシクロヘキシミド(カルバイオケム、SanDiego、CA)を含有するDMEM中で3時間培養して、新しいタンパク質合成を阻止した。カバーガラス上に平板培養した細胞を、タンパク質でなくプラスミドDNAを注入したことを除いてはHerbigら、1999に記載された通りに微量注入した。
【0085】
エレクトロポレーションのために、非同調的に成長しているU2OS細胞(5×10)をトリプシン処理し、遠心分離によって集めて、800μlの20mM HEPES(pH7.4)、0.7mM NaHPO/NaHPO、137mM NaCl、5mM KCl、6mMグルコースに、最終pH7.4で再懸濁させた。10μgのDNAを添加し、0.4cmのエレクトロポレーションキュベット(バイオラッド、Hercules、CA)に移して、ジーンパルサーII装置(バイオラッド)を用いてエレクトロポレーションを行った。細胞を組織培養ディッシュ内で1時間、平板培養し、新鮮な培地で洗浄してさらに23時間培養した。
【0086】
一過性にトランスフェクトした細胞での作業は、トランスフェクション効率の低さ、発現の不均一性、及びこのようなデータのハイスループット分析により生じる問題のために、マルチウェルプレート形式では困難であることがわかった。従って、細胞周期に対する数多くのsiRNA又は薬剤の効果をスクリーニングするには、均一な安定細胞系の生産が必要であった。長期間過剰発現された場合のHDHBの毒性効果のゆえに、レポーターに連結したPSLD領域を用いて安定細胞系を作った。U−2OS細胞を、pCORON1002−EGFP−C1−PSLD(図11)、pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLD(図12)、又は前記ベクターのJ−Red誘導体で一過性にトランスフェクトした。組換え融合タンパク質を発現している安定なクローンを、1mg/mlのG418(シグマ)又はハイグロマイシンを適宜に用いて選択した。センサの発現のレベル及び均一性を確認するために、単離した初代クローン(構築物当たり〜60)を、フローサイトメトリーによって分析し、そして必要に応じ第二代のクローンを上記方法を使用して発生させた。
【0087】
蛍光顕微鏡
間接免疫蛍光染色のために、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドを含むPBSで20分間固定して、0.2%TritonX−100で5分間透過化処理をし、そして10%FBSを含むPBS中で45分間インキュベートした。FLAG−HDHBは、マウスモノクローナル抗FLAG抗体(シグマ−アルドリッチ、10%FBSを含むPBS中、1:100)を用いて2時間、室温で検出した。洗浄後、細胞をTexas Redが接合したヤギ抗マウス二次抗体(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ、West Grove、PA、10%FBSを含むPBS中、1:100)と、室温で1時間インキュベートした。3回洗浄した後、細胞をヘキスト33258(PBS中2μM)と10分間インキュベートした。カバーガラスをProLong Antifade(モレキュラープローブズ、Eugene、OR)に取り付けた。浜松デジタルカメラで、Openlab3.0ソフトウェア(インプロビジョン、Lexington、MA)を用い、Zeiss Axioplan2画像化システム(カールツァイス社)にて画像を得た。細胞内局在化の各パターンを示す細胞の数を計数して、評点した細胞の総数(各実験で100〜150細胞)の百分率として表した。各タンパク質の細胞内分布を、少なくとも二度の独立した実験で定量的に評価した。
【0088】
GFP蛍光については、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、2μMのヘキスト33258を含有する3.7%ホルムアルデヒドで20分間固定して、前記と同様に画像化及び評価した。
【0089】
TritonX−100での抽出については、細胞を冷細胞骨格緩衝液(CSK、10mM HEPES(pH7.4)、300mMスクロース、100mM NaCl、3mM MgCl)で2回洗浄して、0.5%TritonX−100を含むCSK緩衝液(1Xプロテアーゼインヒビターを追加したもの)で氷上にて5分間抽出し、その後前記と同様に固定した。
【0090】
必要であれば、ハイスループット画像化のために、動的画像化(24時間)、及び安定細胞系の蛍光顕微鏡のマルチウェルプレート形式での分析を、ハイスループット共焦点画像化システム(INセルアナライザー1000又はINセルアナライザー3000、GEヘルスケア、アマシャム、UK)を用い、pCORON1002−EGFP−C1−PSLD、pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLD又はこれらのベクターのredFP誘導体をトランスフェクトした細胞について行った。画像は、細胞周期フェーズマーカー・アルゴリズム(GEヘルスケア)を使用して分析した。
【0091】
代謝的ホスフェート標識化
U2OS細胞(2.5x10)を、野生型又は変異型FLAGHDHBで一過性にトランスフェクトした。24時間後に、ホスフェートが枯渇したDMEM(ギブコBRLライフテクノロジーズ)中で細胞を15分間インキュベートして、32P−HPO(0.35mCi/mlの培地;ICNファーマシューティカルズ社.、Costa Mesa、CA)で4時間放射標識化した。ホスフェートで標識化したFLAG−HDHBを抽出物から免疫沈降させ、7.5%SDS/PAGEによって分離して、下記の通りにポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に転写した。
【0092】
細胞抽出、免疫沈降、及びウェスタンブロッティング
トランスフェクションから24時間後に、免疫沈降及びイムノブロッティングによる分析を行う対象となる、FLAG−HDHBでトランスフェクトした培養物を、溶解用緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.5、10%グリセロール、0.1%NP−40、1mM DTT、25mM NaF、100μg/ml PMSF、1μg/mlアプロチニン、1μg/mlロイペプチン)(35mmディッシュ当たり0.5ml、又は60mmディッシュ若しくは75cmフラスコ当たり1ml)で溶解させた。抽出物をディッシュから掻き取り、氷上で5分間インキュベートして、14000gで10分間遠心分離した。上清の試料(0.5〜1mgのタンパク質)を、回転体の上で10μlの抗FLAGアガロース(シグマ)と4°Cにて2時間インキュベートした。アガロースビーズを、溶解緩衝液で3回洗浄した。免疫沈降したタンパク質をPVDF膜に転写して、抗HDHB−ペプチド血清(1:5000)、抗サイクリンE抗体(1:1000)、及び抗サイクリンA抗体(1:1000)(サンタクルーズバイオテクノロジー社、サンタクルーズ、CA)、並びに化学発光(スーパーシグナル、ピアスバイオテクノロジー社、Rockford、IL)を用いたウェスタンブロッティングによって分析した。
【0093】
選択的な核、及び細胞質タンパク質の抽出のためには、80〜90%集密のU2OS細胞をトリプシン処理によって収集して、PBSで洗浄した。細胞を10mMトリス−HCl(pH7.5)、10mM KCl、1.5mM MgCl、0.25Mスクロース、10%グリセロール、75μg/mlジギトニン、1mM DTT、10mM NaF、1mM NaVO、100μg/ml PMSF、1μg/mlアプロチニン、及び1μg/ml ロイペプチンに再懸濁し、氷上で10分間溶解させて、1000xgで5分間遠心分離した。上清画分を、細胞質ゾルの抽出物として集めた。ペレットを洗浄し、高塩緩衝液(10mMトリス−HCl(pH7.5)、400mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1mM DTT、1%NP−40、100μg/ml PMSF、1μg/mlアプロチニン、及び1μg/mlロイペプチン)に再懸濁して、4℃で10分間振動させた。音波処理後に、可溶性及びクロマチン結合性タンパク質の双方を含有する懸濁物を、核抽出物として分析した。核及び細胞質抽出物中のタンパク質を、8.5%SDS−PAGEの後、α−チューブリン、PCNA(双方ともサンタクルーズバイオテクノロジー)、及び組換えHDHBに対する抗体を用いたウェスタンブロッティングを行って分析した。
【0094】
タンパク質ホスファターゼ反応
抗FLAGビーズに結合したFLAG−HDHBを、100Uのλ−ホスファターゼ(ニューイングランドバイオラボズ、Beverly、MA)を含むホスファターゼ緩衝液(50mMトリス−HCl(pH7.5)、0.1mM EDTA、0.01%NP−40)と30℃で1時間インキュベートした。反応は、ホスファターゼインヒビター(5mM NaVO、50mM NaF)の存在下又は非存在下で行った。タンパク質を7.5%SDSPAGE(アクリルアミド−ビスアクリルアミド比、30:0.36)によって分離して、抗HDHB−ペプチド血清及び化学発光を用いたウェスタンブロッティングによってHDHBを検出した。
【0095】
トリプシン分解ペプチドマッピング及びホスホアミノ酸分析
トランスフェクション後24時間に、免疫沈降及びホスホアミノ酸又はホスホペプチドのマッピングに使用すべき放射標識化FLAG−HDHBをトランスフェクトした培養物を、溶解緩衝液をRIPA緩衝液(50mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸、1%SDS、50mM NaF、1mM EDTA、5mM NaVO、100μg/mlPMSF、1μg/mlアプロチニン、及び1μg/mlロイペプチン)に置き換えたことを除いては前記と同様に処理した。免疫沈降したタンパク質を、7.5%SDS−PAGEによって分離して、PVDF膜に転写した。放射標識化HDHBを含む膜を、脱イオン水で2回、よく濯いで、その後オートラジオグラフィーによってホスホタンパク質を可視化した。次いでホスホタンパク質を切り出して、膜片をメタノール、その後水で再度湿潤化した。膜を、0.1%Tween20(シグマ−アルドリッチ)を含有する50mM NHHCOで室温にて30分間ブロッキングして、50mM NHHCOで3回洗浄し、その後PVDFからのホスホタンパク質の酵素的切断を、L−(トシルアミド−2−フェニル)エチルクロロメチルケトンで処理したウシ膵臓トリプシン(ウォージントン、Lakewood、NJ)を用いて行った。ペプチドは次いで、他の文献(Boyleら、Meth.Enzymology、(1991)、201、110−149)で詳説されている二次元ホスホペプチドマッピング又はホスホアミノ酸分析に供した。
【0096】
インビトロでのサイクリン依存性キナーゼ反応
精製したサイクリン/CDK(200pmol/時)(R.Ott及びC.Voitenleitnerにより提供)、及び精製した組換えHDHB(Tanejaら、J.Biol.Chem.、(2002)277、40853−40861)を基質として使用し、以前に報告されたように(Voitenleitnerら、Mol.Cell.Biol.、(1999)、19、646−56)キナーゼ反応を実施した。
【0097】
BrdU標識化、化学的細胞周期遮断の同定、及び安定細胞系のRNAi実験
pCORON1002−EGFP−C1−PSLD構築物を発現している安定な細胞を、抗生物質不含の培地(100μl/ウェル)を使用し、96ウェルのグライナープレートに0.3x10/mlで播種して、16時間インキュベートした。
【0098】
S期のEGFP−PSLDの分布を調べるために、細胞増殖キット(アマシャムバイオサイエンシズ、GEヘルスケア)を用い、安定な細胞をBrdUで1時間マーキングした。細胞を2%ホルマリンで固定して、取り込まれたBrdUを、Cy−5で標識化した二次抗体システム(細胞増殖キット;GEヘルスケア)を用いた免疫蛍光によって検出した。核はヘキスト(2μM)で染色した。
【0099】
化学的遮断の研究(表1)には、安定な細胞をオロモウシン、ロスコビチン、ノコダゾール、ミモシン、コルセミド又はコルヒチン(シグマ)に曝した。細胞を2%ホルマリンで固定して、核をヘキスト(2μM)で染色した。
【0100】
siRNAの研究には、特定のサイクリン、MCMタンパク質、CDK、polo様キナーゼ(PLK)、及び無作為コントロール二重鎖(表2)に対するsiRNAプール(ダーマコン)を、リポフェクタミン/オプティメムI(インビトロジェン)中、25nMに希釈して、安定な細胞に4時間添加した。培地を交換して、プレートを48時間インキュベートした。細胞を2%ホルマリンで固定し、核をヘキスト(2μM)で染色した。
【0101】
INセルアナライザーシステム(GEHC)でのハイスループット画像化及び分析の後に、平均の核の強度及びN:C比(EGFPシグナル)、核サイズ(ヘキストシグナル)、並びに、必要に応じて核シグナル強度(BrdU)についての視野内の個々の細胞の総数に対するデータを、核マスクとしてヘキスト、及びINセルアナライザー3000細胞周期フェーズマーカーアルゴリズム(GEHC)を用いて得た。各ウェルにつき、視野当たりの細胞の総数を、G1期(主に核にEGFPが分布している;EGFP−PSLD核強度及びN:C比が高い)、S期(核のBrdUシグナル>3SDsがバックグラウンドを超える;EGFP−PSLD N:C比がおよそ1である)、並びにG2期(核サイズが大きい;EGFP−PSLD N:C比が低い)に分類した。M期細胞を(小さい核のサイズと非常に強いEGFPシグナルに基づき)区別することは可能であったが、このような細胞は洗浄及び固定のプロセスの間に除去されたため、ごくわずかしかホルマリンで固定したウェルに認められなかった。
【0102】
結果
HDHBは、核点状構造内又は細胞質内に存在する
内在性のHDHBの細胞内局在化を決定するために、核及び細胞質性のタンパク質をヒトU2OS細胞から選択的に抽出し、変性ゲル電気泳動によって分離して、ウェスタンブロッティングにより分析した(図1)。各抽出物中のPCNA及びα−チューブリンの存在を先ずモニターして、抽出手順を評価した。PCNAは細胞質画分でなく核抽出物に濃縮されており、一方α−チューブリンは主として細胞質画分に認められ、分画が確認された。HDHBは、核及び細胞質画分の双方に検出された(図1)。細胞質のHDHBは、核画分よりもゆっくりと移動し(図1)、翻訳後修飾の可能性が示唆された。
【0103】
これらの結果は、HDHBが細胞全体にわたって分布していることか、又は核若しくは細胞質のいずれかで細胞の混合集団がHDHBを含んでいることのどちらかを示しうるものであった。これらの選択肢を識別するために、HDHBを単一細胞において原位置で局在化させ;GFP−及びFLAG−のタグ付きHDHBを一過性のトランスフェクションによってヒトU2OS細胞で発現させた。タグ付き又はタグなしのHDHBの長期間過剰発現は細胞毒性があったので、すべての実験は可能な限り最短時間(通常、24時間)で行った。タグ付きHDHBの局在を、蛍光顕微鏡により個々の細胞において分析した。GFP−HDHB及びFLAG−HDHBの双方とも、核の分散した点状構造内か、又は細胞質内(図1)のいずれかという、局在の二種の主要パターンを呈した。初代ヒト線維芽細胞で一過性に発現されたGFP−HDHBもまた、核又は細胞質のいずれかで観察された。
【0104】
HDHBにおける細胞周期依存性の細胞内局在化ドメインの同定
U2OS細胞をノコダゾールでG2/Mにて停止させ、3時間G1に復帰させて、その後それらの核内にpGFP−HDHB DNAを微量注入した。GFP−HDHBの発現は、6時間後に容易に検出でき、この際およそ70%のG1期細胞が、主に核内に融合タンパク質を蓄積していた(図2)。一方、細胞をG1/Sでチミジンで同調させ、S期に復帰させて、その後pGFP−HDHB DNAを微量注入した場合、70%より多くのS期細胞が、主に細胞質に融合タンパク質を蓄積していた(図2)。G1及びS期のU2OS細胞の選択的な抽出で、内在性のHDHBは、G1ではほとんど核に、S期では細胞質にあることが明らかになった(図2b)。しかし、内在性のHDHBは、双方の細胞内画分で明らかに検出できた。S期のHDHBの移動性は、G1期タンパク質に比べてわずかに遅延していた。これらの結果から、HDHBの細胞内局在化は細胞周期において調節されており、またGFPタグ付きHDHBは内在性のタグなしヘリカーゼの局在を反映することが示唆される。
【0105】
ブルーム症候群ヘリカーゼ及びその他のRecQ−ファミリーのヘリカーゼのC末端核位置シグナルの同定(Hickson、Nature Rev.Cancer、(2003)3、169−178)による示唆を受けて、可能性のある細胞内局在化ドメイン(SLD)をHDHBのC末端の最端部で同定した(図3)。この推定SLDがHDHB局在化にとって重要であるか否かを決定するために、SLDを含むC末端の48残基を欠くHDHBの切欠変異体(GFP−HDHB−.SLD)を作製した(図3)。G1又はS期のU2OS細胞に発現ベクターを微量注入して、融合タンパク質の細胞内局在化を6時間後に蛍光顕微鏡によって調べた。HDHB発現の細胞周期でのタイミングに関わらず、95%を超える細胞が細胞質に融合タンパク質を蓄積していた(図3c)。この結果は、GFP−HDHB−ΔSLDにおけるC末端欠失によって損なわれるか又は喪失されるNLSをHDHBが担持しているかもしれないことを示唆している。
【0106】
HDHBのC−末端ドメインが核局在化に充分なものであるか否かを決定するために、細菌のβ−ガラクトシダーゼ(βGal)がHDHBに近似した分子量(112kDa)を有しており、細胞内局在化シグナルを有していない(Kalderonら、Cell、(1984)、39、499−509)ので、これをレポータータンパク質として用いた。コントロールとして、GFP−βGal発現ベクター(図3)を作出して、発現ベクターをU2OS細胞へ微量注入した後に融合タンパク質の細胞内局在化をモニターした。予想通り、GFP−βGalタンパク質は主に細胞質に蓄積していた(図4)。これに対して、GFP−βGal−SLDは、非同調性又は同調性U2OS細胞の核及び細胞質の双方に認められ(図4)、SLDはNLSを含むものの、レポータータンパク質の核局在化に充分なものではないことが示唆された。ことによると隣接する潜在的CDKリン酸化部位が、細胞周期における細胞内局在化(図3)に影響を及ぼすかもしれないと類推して、GFP−βGal−PSLDを構築したが、これは、HDHBの推定SLD及び潜在的CDKリン酸化部位のクラスタを含むC末端131残基をGFP−βGalのC末端に付加したものであった(図3)。GFP−βGal−PSLDプラスミドDNAを、非同調性及び同調性U2OS細胞で一過性に発現させた場合、GFP−βGal−PSLDは、90%より多くのG1期細胞で核に認められ、また70%より多くのS期細胞で細胞質に認められた(図4)。G1の核内GFP−HDHBについて観察された限局的なパターンと対照的に、GFP−βGal−PSLD及びEGFP−PSLDタンパク質は、核小体のみ割愛して、G1の核全体に均一に分布していた。BrdUでマーク付けされているpCORON1002−EGFP−C1−PSLDを発現している安定細胞系の分析で、S期の細胞(非同調集団のおよそ60%に等しい)は、EGFP−PSLDシグナルの均等分布(equidistribution)、又は主に細胞質への分布を呈する(図10)ことが明示された。G1細胞に伴うEGFP−PSLDの主として核への分布を、S期の細胞は示さなかった。細胞によっては、EGFP−PSLDレポーターが絶対的に核で排除されていることを示すものも見られたが(図10)、これらの細胞はBrdUを取り込んでいなかった。我々は、核からのEGFP−PSLDの絶対的なクリアランスを示す細胞はG2にあるとの仮説を立てた。24時間にわたるEGFP−PSLDの安定細胞系の動的な画像化により、EGFP−PSLDは有糸分裂後、G1では主に核内にあり、G1/S移行期の頃(細胞質分裂後、3.5時間まで)に核から細胞質への迅速な移動を、さらにG1/SからG2の終点にわたって(およそ19時間)核から細胞質への累進的な転位置を呈すことが示され;この時点で再分裂の前に細胞のラウンディングが起こった。これらの観察により、G2細胞がEGFP−PSLDレポーターの絶対的な細胞質への分布を呈する可能性が確証されるものと考える。EGFP−PSLD融合体の安定な発現は、U2OS細胞又はG2M細胞周期フェーズマーカー細胞系(GEHC)と比較して、細胞周期全長(およそ24時間)で影響を及ぼすことは認められなかった。これらのデータをまとめると、HDHBの細胞内局在化は細胞周期に依存的であり、HDHBのC末端PSLDドメインは細胞周期依存的にタンパク質の細胞内局在化を調節する上で主要な役割を果たし、またHDHBはG1で核内にあるがS期の間と、おそらくはG2で細胞質に累進的に転位置することが示唆される。
【0107】
HDHBの機能性rev型NESの同定
核と細胞質との間を行き来する数多くのタンパク質は、HIVrevタンパク質のプロトタイプのNESに類似したNESを含むことが実証されている(図5)。rev型NESを含むタンパク質は、移出因子CRM1(エクスポーチン1とも称される)が結合して核から細胞質までタンパク質を輸送することを必要とする(Weisによる総説、Cell、(2003)、112、441−451)。レプトマイシンB(LMB)は、核タンパク質移出におけるCRM1活性を特異的に阻害する(Wolffら、Chem.Biol.、(1997)、4、139−147;Kudoら、Exp.Cell.Res.、(1998)、242、540−547)。HDHBのPSLD配列の検査によって、推定rev型NES(LxxxLxxLxL;図5)が明らかになった。HDHBの細胞質への局在化が機能性NESを必要とするか否かを決定するために、GFP−HDHB又はFLAG−HDHB DNAに対する発現プラスミドをLMBの存在下及び非存在下に、非同調性のG1、及びS期細胞へ微量注入した。融合タンパク質の局在化は、蛍光顕微鏡によって調べて数量化した。LMBの存在下では、双方の融合タンパク質が細胞周期と無関係に核内に蓄積し(図5)、これはCRM1を通じて機能するrev型NESをHDHBが含む可能性と符合している。しかし、HDHBはCRM1の直接的な積荷にならないかもしれず、またその移出はいくつかの他のタンパク質(単数又は複数)を通じて間接的に媒介されるかもしれないという可能性もある。HDHB内の推定NESが機能性であるかを評価するために、我々はNESモチーフのVal/Leu及びLeu/Leuをアラニンに変異誘発して、NES変異体1及び2(図5)を作出した。これらのNES変異を内包するGFP−HDHB及びGFP−βGal−PSLDを、非同調性又は同調性のいずれかのU2OS細胞で一過性に発現させた。双方のNES変異型融合タンパク質は、非同調性又は同調性細胞でいつ発現されても、80%を超える細胞で核に蓄積していた(図5)。この結果から、NESの変異がGFP−HDHB及びGFP−βGal−PSLDの双方の移出を特異的に損なったことが示され、HDHBのPSLD領域が機能性NESを含むと論じられる。
【0108】
FLAG−HDHBはインビボで細胞周期依存的にリン酸化される
HDHBのPSLDドメイン内の潜在的CDKリン酸化部位のクラスタ(図3)により、HDHBのリン酸化が細胞周期におけるその細胞内局在化を調節するかもしれないことが示唆された。そうであれば、HDHBのPSLD領域は細胞周期依存的にリン酸化されることが予想されよう。HDHBがPSLD内のリン酸化を行うかをどうか試験するために、FLAG−HDHBの野生型及びC末端切欠型に対する発現プラスミドでU2OS細胞を一過性にトランスフェクトし、ホスフェートで放射標識化して、その後細胞抽出物からFLAG−HDHBを免疫沈降させた。免疫沈降させたタンパク質を変性ゲル電気泳動、イムノブロッティング、及びオートラジオグラフィーによって分析した(図6)。FLAG−HDHBの放射標識化バンドは、免疫反応性のHDHBバンドと同じ位置に検出された(図6A、レーン1)。SLDを欠損した切欠FLAG−HDHBは、インビボでも確実にリン酸化されたが(レーン2)、一方PSLDを欠損した切欠FLAG−HDHB(1〜874)は、有意にリン酸化されなかった(レーン3)。これらの結果から、SLDはHDHBのリン酸化に必要でなく、PSLDが必要であることが実証され、リン酸化部位はおそらくPSLD内に存在することが示唆される。
【0109】
細胞周期におけるHDHBのリン酸化のタイミングを調べるには、放射標識を使用せずにリン酸化を検出するのが好都合であろう。リン酸化は変性ゲルでタンパク質の電気泳動度を低減することが多いので、一過性に発現されたFLAG−HDHBを免疫沈降させて、その移動度をλ−ホスファターゼ(λ−PPase)を用いた処理の前後に調べた(図6B)。λ−PPase処理をしない場合、FLAG−HDHBはウェスタンブロットで非常に近くに移動する2つのバンドに検出されたが(レーン1)、一方脱リン酸化したFLAG−HDHBは単一バンドとしてダブレットの高速の方のバンドの移動度にて移動していた(レーン2)。λ−PPaseインヒビターが反応中に存在する場合、FLAG−HDHBはモック処理タンパク質と同じダブレットとして移動していた(レーン3)。これらのデータは、FLAG−HDHBの電気泳動度がリン酸化によって低減すること、そしてこのアッセイは細胞周期におけるHDHBのリン酸化を追跡するのに好適でありうることを示唆するものである。
【0110】
HDHBが細胞周期依存的にリン酸化されるのかを決定するために、FLAG−HDHBを一過性に発現しているU2OS細胞を、培地にチミジンを添加することによりG1/Sで、又は培地にノコダゾールを添加することによりG2/Mで停止させた。細胞を、異なる時間で遮断から復帰させて、細胞抽出物からFLAG−HDHBを免疫沈降させた。
【0111】
免疫沈降させたものをλ−Ppase添加又は無添加でインキュベートし、次いで変性ゲル電気泳動及びウェスタンブロッティングによって分析した(図6C)。G1/Sで停止させた細胞由来のFLAG−HDHBの移動度はλ−PPase処理によって増大しており、このタンパク質はG1/Sでリン酸化されたことが示唆された(図6C、上方パネル)。類似の移動度の変化が、G1/Sの遮断から復帰した後少なくとも9時間FLAG−HDHBのホスファターゼ処理をした後に(上方パネル)、またG2/Mで停止した細胞でも(図6C、下方パネル)検出された。しかし、4時間及び8時間で細胞をG1に復帰させた後は、FLAG−HDHBはホスファターゼ処理による影響が随分小さい単一バンドとして移動した(図6C、下方パネル)。G2/M遮断から復帰後12時間までで、細胞のほとんどがS期に入っているときに(データは示さず)、FLAG−HDHBの移動度はやはりホスファターゼ処理によって増大し、ノコダゾールで停止した細胞で観察されたパターンに復元していた(下方パネル)。これらの結果は、FLAG−HDHBのリン酸化が細胞周期依存性であって、G1/SからG2/Mまででリン酸化が最大であり、G1の間はリン酸化が最小であることを強く示唆するものである。
【0112】
セリン967は、異所的に発現されるHDHBの主要リン酸化部位である
FLAG−HDHBにおけるリン酸化部位をマッピングするために、先ず、修飾されたアミノ酸残基が何であるかを決定したいと考えた。インビボで放射標識化したFLAG−HDHBのホスホアミノ酸分析により、インビボではFLAG−HDHBの主要なホスホアミノ酸がホスホセリン(単数又は複数)であることが明らかになった(図7A)。HDHBの細胞周期依存的性リン酸化部位がPSLD中、残基874と1039の間に位置しており(図3A)、これらの部位はCDKによって修飾され、ホスホセリンが主要な修飾アミノ酸である(図7A)と想定すると、7つの潜在的CDK部位のうち4つだけが、候補部位として残ることになるであろう。これらの部位の各々を個々に試験するために、対応するセリンのアラニンへの変異を施したFLAG−HDHB発現プラスミドを構築した。これらのプラスミドを一過性にトランスフェクトした細胞を、オルトホスフェートでインビボに放射標識化して、FLAG−HDHBを免疫沈降させ、オートラジオグラフィー及びウェスタンブロッティングによって分析した(図7B)。この結果、FLAG−HDHB及び変異型タンパク質の3つがほぼ同等にリン酸化されており、一方S967A変異タンパク質は弱くリン酸化されているだけであることが示された(図7B)。この結果は、S967がインビボでのHDHBリン酸化の主要な部位であるかもしれないことを示唆していた。この解釈と符合して、免疫沈降させたFLAG−HDHBのホスファターゼ処理後の電気泳動度の変化が、変異型タンパク質の3つで検出されたが、S967Aタンパク質では検出されなかった。
【0113】
S967がインビボでの主要なHDHB内リン酸化部位であることを確認するために、トリプシンで生じたホスホペプチドのマッピングを、オルトホスフェートを用いて代謝的に放射標識化しておいた、野生型及びS967A変異型FLAG−HDHBで実施した(図7C)。1つの優勢な放射標識化ペプチドと、弱く標識化されたペプチドが、野生型タンパク質(左側パネル)で観察された。優勢なホスホペプチドはS967Aタンパク質に存在していなかったが、弱く標識化されたペプチドは検出可能なままであった(図7C、右側パネル)。この結果は、セリン967がインビボで優勢なHDHB内リン酸化部位インビボであることのさらなる証拠をもたらすものである。
【0114】
G1/SにおいてHDHBを潜在的に修飾するキナーゼとしてのサイクリンE/CDK2の同定
細胞周期におけるHDHBのリン酸化のタイミングと、修飾の主要部位としてのS967の同定により示唆されるように、CDKが実際にHDHBを修飾することができるのかを試験するために、精製サイクリンE/CDK2又はサイクリンA/CDK2を、精製組換えHDHB及び放射標識化したATPとインビトロでインキュベートした。キナーゼ反応の後、タンパク質を変性ゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写して、オートラジオグラフィーにより検出した。この結果、組換えHDHBはサイクリンE/CDK2及びサイクリンA/CDK2の双方によって強くリン酸化されうることが明らかになった。放射標識化HDHBのバンドは、その後さらに、トリプシンで生じるホスホペプチドのマッピングのために処理した。各消化物由来のペプチドを、個々に、又はインビボでリン酸化したFLAG−HDHB由来の、トリプシンで生じたペプチドと混合した後に、のいずれかで二次元にて分離して、オートラジオグラフィーにより可視化した(図8A)。サイクリンE/CDK2及びサイクリンA/CDK2によってリン酸化されたHDHBペプチドでは、インビボで標識化したペプチドのマップで観察されるもの(1つの主要スポットと1つの微弱スポット)と本質的に同じパターンが得られた(図8A)。インビトロ及びインビボで標識化されたペプチドを混合して、1つのクロマトグラムで分離した場合、それらは共遊走した(図8A、右側)。これらのデータから、精製組換えHDHBにおいてインビトロでサイクリンE/CDK2及びサイクリンA/CDK2により修飾された主要なホスホペプチドは、FLAG−HDHBにおいてインビボで修飾された場合と同じものであったと論じることができる。
【0115】
ヒト細胞におけるサイクリンE活性はG1後期に上昇し、一方サイクリンA活性はS期の開始に一致して、もっと後から上昇する(Pines、1999;Erlandssonら、2000)ので、これらのキナーゼのうち1つが優先的にHDHBを修飾するのかもしれないのか、識別してみることが重要であった。サイクリンサブユニットは、リン酸化の標的とする基質タンパク質と複合体を形成することが多い(Endicottら、1999;Takedaら、2001)。サイクリンE又はサイクリンAがDHBと会合しうるかを試験するために、FLAG−HDHB発現ベクター又はコントロールとしての空のFLAGベクターのいずれかをトランスフェクトした細胞の抽出物から、FLAG−HDHB及び会合タンパク質を免疫沈降させた。細胞抽出物と、免疫沈降させたものを、ウェスタンブロッティングによって分析した(図8B)。サイクリンEは明らかにFLAG−HDHBと共沈降したが、サイクリンAは共沈降せず(図8B、レーン2及び5)、FLAG−HDHBがインビボでサイクリンEと優先的に相互作用しうることを示唆していた。この相互作用はインビボでのサイクリンE/CDK2によるHDHBのリン酸化に必要とされるのかもしれないと考えられ、そうであるならば、サイクリンEとのその相互作用を妨げるようなHDHBにおける変異は、サイクリンE/CDK2によるリン酸化を抑止するはずである。サイクリンEに結合できないことに起因して、FLAG−HDHB変異型S967Aがインビボでリン酸化されなかった(図7B、C)可能性を試験するために、FLAG−HDHB−S967A及び会合タンパク質を、トランスフェクトした細胞の抽出物から免疫沈降させて、ウェスタンブロッティングによって分析した。変異タンパク質とのサイクリンEの共沈降は、野生型FLAG−HDHBの場合と同程度に強かった。
【0116】
セリン967のリン酸化はHDHB局在化の調節にとって重要である。
【0117】
上記のデータは、異所的に発現されたHDHBの細胞内局在化及びリン酸化が細胞周期依存的に調節され、G1/SからG2/Mまででリン酸化が最高であったことを示しており、これはHDHBが細胞質に蓄積していた期間と符合している。これらの結果は、インビボでの主要なHDHB内リン酸化部位としてのS967の同定と合わせて、S967のリン酸化がHDHBの細胞内局在化を調節しうることを示唆するものである。この着想を試験するために、野生型GFP−HDHB、並びに変異体S967A、S984A、S1005A、及びS1021Aに対する発現プラスミドを、同調性U2OS細胞へ微量注入した。予想通り、野生型GFP−HDHBは、G1で細胞の核点状構造内に蓄積したが、S期には細胞の細胞質に蓄積した。しかし、細胞周期のタイミングに関係なく、GFP−HDHB−S967Aは蛍光細胞の約70%で核点状構造に局在化していた(図9)。その他の3種の置換変異体は、野生型GFP−HDHBのように核又は細胞質のいずれかに局在化していた。S967のリン酸化を模倣しようとして、セリン967をアスパラギン酸に変異させ、GFP−HDHB−S967Dを非同調性及び同調性U2OS細胞で発現させて、変異型融合タンパク質の細胞内分布を調べた。
【0118】
GFP−HDHB−S967Dを発現している細胞の約60%が、非同調性、G1期、及びS期細胞において細胞質に蛍光を示し(図9A)、S967D突然変異は、リン酸化されたS967を模倣したことが立証された。このデータは、セリン967のリン酸化がHDHBの細胞内局在化を調節するのに重要であることを強く示唆している。
【0119】
HDHBのC末端ドメインは細胞周期依存性の局在化に関与する
131残基のドメイン、PSLDは、HDHB、EGFP又はβGalレポーターを、核又は細胞質のいずれかに細胞周期依存的に標的化するのに足るものである(図4及び10)。rev型NESがこのドメイン内に存在している(図5)が、G1/S移行において、核外移出の機構に対するその活性又は接触性はPSLD(主にセリン967)のリン酸化に依存している(図6〜9)。S967は、コンセンサスCDK基質認識モチーフ(S/T)PX(K/R)と完全に一致する。サイクリンE/CDK2及びサイクリンA/CDK2の双方は、インビトロでHDHBを修飾することができるが、細胞抽出物中のHDHBとのサイクリンE/CDK2の複合能から、それがG1/S移行にてHDHBを修飾する初期のキナーゼであるかもしれないことが示唆される(図8)。既知のCdk2インヒビターであるオロモウシン及びロスコビチン(表1)、又はサイクリンEに対するsiRNA(表2)の添加の結果、EGFP−PSLDの主に核への分布と、安定なEGFP−PSLD細胞系に対してG1の停止が引き起こされ、観察された細胞周期に基づくリン酸化依存性の細胞内局在化の制御に、Cdk2/サイクリンEが関与する可能性がさらに支持された。PSLDのリン酸化は、細胞周期の終盤に及ぶまで持続するようであり、これはS及びG2での主に細胞質へのHDHBの局在化に良く呼応していた。24時間にわたってオロモウシンで処理した安定細胞系の動的な画像化によって、G2で停止した細胞については、EGFP−PSLDシグナルが4時間を超え8時間にわたって細胞質から核に再分布する(細胞が有糸分裂を経ることなく)ことが示され、cdk2活性がなければEGFP−PSLDは脱リン酸化されて核に再び入るか、又は破壊されて新しく合成されたタンパク質がcdk2阻害のためにリン酸化されず、従って核に局在するか、のどちらかであることを示唆していた。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

HDHBがM/G1移行で脱リン酸化を行うのか(図6C)、又はおそらくはタンパク質分解の標的にされてG1初期に迅速に再合成され、この際に核に入るのか、どちらかを識別するのは可能でなかった。しかし、24時間にわたる安定細胞系の動的画像化によって、EGFP−PSLDシグナルはM期の間又はM/G1境界で大幅に低減しないものの、細胞質分裂後およそ30分間で主に核のシグナルになる(この状態はその後G1の間3時間まで持続する)ことが示され、これは核膜形成に符合していた。このことは、EGFP−PSLD構築物がM/G1境界近辺で著しい破壊を起こすのでなく脱リン酸化されることを示唆している。
【0122】
これらのデータにより、PSLDがタンパク質の関係性から独立した活性なターゲティングシグナルを含むこと(図2〜5、10)の強力な証拠がもたらされる。不活性化されたNESを備えた変異型HDHBは、S期の間にそれが発現され、従っておそらくはリン酸化されたとしても核内にある(図5)ので、NLSはリン酸化によって不活性化されず、CDKの調節の第一の標的はNESであろうと思われる。この推論を広げていくと、PSLD内のCDKモチーフが修飾されていない場合にNESはG1の間マスクされているかもしれず、またS967がリン酸化されるとNESが遊離されて、核外移出因子によるNES認識へと導かれることになる(図3〜5)。rev型NESの構造研究で、それが両親媒性のα−ヘリックスを形成している、すなわちヘリックスの片側にロイシンが並び、もう一方の側に荷電残基が並んでいることが示されている(Rittingerら、Mol.Cell.Biol.(1999)、4、153−166)。HDHBのSLDはrev型NES及びNLSの双方を含んでおり、NLSとしての機能を果たすらしき塩基性残基がNES全体に散在しているので、NESとNLSは、両親媒性のヘリックスの対向面に存在しているのかもしれない。PSLD内のさらなる配列は、NESを分子内でマスクしているはずであり、NLSのみが認識できるようになっている。S967のリン酸化により、PSLDでのマスクの高次構造が変化することになって、NLSの曝露に影響を及ぼすことなくNESが曝露される。
【0123】
EGFP−PSLD安定細胞系を用いた細胞周期のインヒビターに対するハイスループットスクリーニング
上述の通り、一過性にトランスフェクトした細胞での作業は、トランスフェクション効率の低さ、発現の不均一性、及びこのようなデータのハイスループット分析により生じる問題のために、マルチウェルプレート形式では困難であることがわかった。従って、細胞周期に対する数多くのsiRNA又は薬剤の効果をスクリーニングするには、均一な安定細胞系の生産が必要であった。適応性のある7つのアミノ酸リンカーを介して(pCORON1002−EGFP−C1−PSLDを使用)レポーター(EGFP)に連結したPSLD領域で、安定細胞系を作った。図13からわかるように、pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLDを用いて発生させた安定細胞系が発生する蛍光シグナルは、適応性のある7つのアミノ酸リンカーを有する細胞系により生成されるものよりもかなり小さかった(およそ10倍)。これはおそらく、細胞の転写及び翻訳機構に対して多大な要求を課している、βGalタンパク質のサイズに起因しているようである。
【0124】
pCORON1002−EGFP−C1−PSLDを用いて発生させた安定細胞系(図13参照)は、事実上均質であって(平均総細胞RFU:435、SD:58;n=271;図10参照)、細胞周期を研究するため、及びマルチウェルプレート形式で細胞周期に対する薬剤の効果を迅速にスクリーニングするための、好感度で、安定で均一なアッセイを提供した(表1及び2;及び図10)。
【0125】
以上に開示した本発明のいくつかの特徴は、モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・セル(15:3320−3332、2004年7月)に発表され、またMBC(近刊)10.1091/mbc.E04−03−0227として2004年5月14日に「DNA損傷点状構造に局在するヒトDNAヘリカーゼの細胞周期依存的な調節(“Cell Cycle−dependent Regulation of a Human DNA Helicase That Localizes in DNA Damage Foci”)」の表題で電子出版されており、その開示内容の全体を、引用することによって本明細書に援用する。
【0126】
以上に記載したのは本発明の例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の例証的ないくつかの実施形態を記載しているが、当業者であれば、本発明の新規教示及び利点を実質的に逸脱することなく、これら例証的な実施形態に多くの変更を施すことが可能であると容易に理解するであろう。よって、このような変更のすべてが、特許請求の範囲で定義した本発明の範囲に含まれることを意図する。従って、以上に記載したのは本発明の例示であり、開示された具体的な実施形態に限定されるものと解釈されるべきでなく、また開示された実施形態への変更や、その他の実施形態が、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれるように意図されることは、理解されるべきである。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物もその中に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】核又は細胞質におけるHDHBの局在を示す図。
【図2】GFP−HDHBの細胞内局在化は、細胞周期依存性であることを示す図。
【図3】HDHBの核局在化に必要なドメインの同定を示す図。
【図4】GFP−βGal−PSLD細胞内局在化パターンは、細胞周期で変動することを示す図。
【図5】HDHBのSLDにおける機能性rev型核外移出シグナル(NES)の同定を示す図。
【図6】インビボでのFLAG−HDHBの細胞周期依存的なリン酸化を示す図。
【図7】HDHB内インビボ主要リン酸化部位としてのS967の同定を示す図。
【図8】HDHB S967の潜在的G1/SキナーゼとしてのサイクリンE/CDK2の同定を示す図。
【図9】HDHBの細胞内局在化は、S967のリン酸化によって調節されることを示す図。
【図10】pCORON1002−EGFP−C1−PSLDベクターの安定な発現を呈する非同調性U2OS細胞でのEGFP−PSLDの局在化は細胞周期依存性であることを示す図。
【図11】pCORON1002−EGFP−C1−PSLDのベクターマップを示す図。
【図12】pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLDのベクターマップを示す図。
【図13】pCORON1002−EGFP−C1−PSLD、pCORON1002−EGFP−C1−βGal−PSLDを用いて発生させた代表的な安定細胞系、並びに親のU2OS細胞系に対するシグナルの輝度及び均一性を比較したフローサイトメトリーのデータを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
112000ダルトン未満の分子量を有する基を介して、検出可能な生細胞レポーター分子を1以上の細胞周期依存性の位置制御エレメントに連結してなるポリペプチド構築物であって、前記エレメントの位置はG1及びS期に変化し、哺乳類細胞内での前記構築物の転位置は、細胞周期位置を示すものであるポリペプチド構築物。
【請求項2】
前記基は、100000ダルトン未満の分子量を有する請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項3】
前記基は、50000ダルトン未満の分子量を有する請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項4】
前記基は、25000ダルトン未満の分子量を有する請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項5】
前記基は、10000ダルトン未満の分子量を有する請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項6】
前記基は、1000ダルトン未満の分子量を有する請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項7】
前記基は、700ダルトン未満の分子量を有する請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項8】
前記基は、500ダルトン未満の分子量を有する請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項9】
前記基はポリペプチドである請求項1記載のポリペプチド構築物。
【請求項10】
前記ポリペプチドはヘプタペプチドである請求項9記載のポリペプチド構築物。
【請求項11】
前記ヘプタペプチドは、グリシン−アスパラギン−グリシン−グリシン−アスパラギン−アラニン−セリン(GNGGNAS)である請求項10記載のポリペプチド構築物。
【請求項12】
前記細胞周期特異的な依存性位置制御エレメントは、Rag2、Chaf1B、Fen1、PPP1R2、ヘリカーゼB、sgk、CDC6、又はヘリカーゼBのC末端の特殊な制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)のような、それらの中のモチーフからなるペプチドの群から選択される請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載のポリペプチド構築物。
【請求項13】
前記生細胞レポーター分子は、蛍光タンパク質、酵素、及び抗原性タグからなる群から選択される請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載のポリペプチド構築物。
【請求項14】
前記蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Emerald、及びJ−Redからなる群から選択される請求項13記載のポリペプチド構築物。
【請求項15】
前記酵素レポーターは、ハロ−タグ(Promega社)である請求項13記載のポリペプチド構築物。
【請求項16】
前記細胞周期依存性の位置制御エレメントは、PSLDである請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載のポリペプチド構築物。
【請求項17】
前記レポーター分子はEGFPであり、前記細胞周期依存性の位置制御エレメントは、PSLDである請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載のポリペプチド構築物。
【請求項18】
配列番号5のアミノ酸配列を備えるポリペプチド構築物。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載のポリペプチド構築物をコードする核酸構築物。
【請求項20】
前記核酸構築物は、更に、1以上の細胞周期非依存性の発現制御エレメントを含み、この発現制御エレメントに作動可能に連結され、その制御下にある請求項19記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記発現制御エレメントは、ユビキチンC又はCMVプロモーターである請求項20記載の核酸構築物。
【請求項22】
CMVプロモーターと、PSLD及びEGFP又はJ−Redをコードする配列とを備える請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載の核酸構築物。
【請求項23】
ユビキチンCプロモーターと、PSLD及びEGFP又はJ−Redをコードする配列とを備える請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載の核酸構築物。
【請求項24】
請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を備えるベクター。
【請求項25】
前記ベクターは、ウイルスベクター又はプラスミドである請求項24記載のベクター。
【請求項26】
前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである請求項25記載のベクター。
【請求項27】
請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物がトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項28】
前記細胞はヒト細胞である請求項27記載の宿主細胞。
【請求項29】
請求項27又は請求項28記載の宿主細胞の1又は複数を備える安定細胞系。
【請求項30】
請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載のポリペプチド構築物の、哺乳類細胞の細胞周期位置を決定するための使用。
【請求項31】
哺乳類細胞の細胞周期位置を決定する方法であって、
a)細胞中で請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を発現させ、
b)前記レポーター分子によって発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定する工程を含む方法。
【請求項32】
哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、
a)請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を、前記被検薬剤の非存在下及び存在下、前記細胞中で発現させ、
b)前記レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定する工程を含み、前記被検薬剤の非存在下及び存在下で測定された発生シグナル間の差が、前記細胞の細胞周期位置に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。
【請求項33】
哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、
a)請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を、前記被検薬剤の存在下、前記細胞中で発現させ、
b)前記レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定し、
c)前記被検薬剤の存在下で発生するシグナルを、前記被検薬剤の非存在下で発生するシグナルとして既知の数値と比較する工程を含み、
前記被検薬剤の存在下で測定された発生シグナルと、前記被検薬剤の非存在下での既知の数値との差が、前記細胞の細胞周期位置に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。
【請求項34】
哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、
a)請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を含む細胞を用意し、
b)前記被検薬剤の存在下及び非存在下、核酸レポーター構築物の発現を許容する条件下で、前記細胞の第一及び第二集団をそれぞれ培養し、
c)第一及び第二細胞集団において、前記レポーター分子が発生するシグナルを測定する工程を含み、
第一及び第二細胞集団で測定された発生シグナル間の差が、前記細胞の細胞周期位置に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。
【請求項35】
被検薬剤に応答して変動することが知られている第一の検出可能なレポーターによって測定できる細胞プロセスに対する哺乳類細胞周期の効果を決定する方法であって、
a)請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の第二の核酸レポーター構築物を、前記被検薬剤の存在下、前記細胞中で発現させ、
b)第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し、
c)第一の検出可能なレポーターが発生するシグナルをモニターする工程を含み、
工程b)で決定された細胞周期位置と、第一の検出可能なレポーターが発生するシグナルとの関係が、前記細胞プロセスが細胞周期依存性であるか否かの指標となる方法。
【請求項36】
細胞中のCDK2活性を測定するための、請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載のポリペプチド構築物の使用。
【請求項37】
細胞中のCDK2活性を測定するための方法であって、
a)細胞中で請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を発現させ、
b)前記レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、CDK2活性を決定する工程を含む方法。
【請求項38】
哺乳類細胞のCDK2活性に対する被検薬剤の効果を決定するための方法であって、
a)請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を、前記被検薬剤の非存在下及び存在下、前記細胞中で発現させ、
b)前記レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、CDK2活性を決定する工程を含み、前記被検薬剤の非存在下及び存在下で測定された発生シグナル間の差が、CDK2活性に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。
【請求項39】
哺乳類細胞のCDK2活性に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、
a)請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載の核酸構築物を、前記被検薬剤の存在下、前記細胞中で発現させ、
b)前記レポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し、
c)前記被検薬剤の存在下で発生するシグナルを、前記被検薬剤の非存在下で発生するシグナルの既知の数値と比較する工程を含み、
前記被検薬剤の存在下で測定された発生シグナルと、前記被検薬剤の非存在下での既知の数値との差が、前記細胞のCDK2活性に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。
【請求項40】
前記被検薬剤は、電磁放射線の形態又は化学成分である請求項37乃至請求項39のいずれか1項記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−511289(P2008−511289A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522030(P2007−522030)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002884
【国際公開番号】WO2006/008542
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(398048914)ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド (30)
【出願人】(591219773)ヴァンダービルト ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【Fターム(参考)】