説明

細胞培養支持体、その製造方法及び該支持体を用いた細胞培養方法

【課題】低コストで、安全かつ大量に目的とする細胞を増殖することが可能であり、移植や人工臓器などの生物学的な代替物の材料に用いることが可能な細胞培養支持体を提供することにある。
【解決手段】本発明の細胞培養支持体は、三次元担体と、該三次元担体に固定化され、化学処理によって細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させた支持細胞とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養支持体、その製造方法及び該支持体を用いた細胞培養方法に関し、特に、細胞培養のための材料、細胞移植治療に用いられる生体材料、並びに人工骨髄及び人工臓器などの生物学的な代替物として好適に使用することが可能な細胞培養支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生医療の分野において、損傷したり、失われたりした生体組織や臓器、さらにはその機能を何らかの生物学的な代替物を用いて再建することが試みられている。一般的にはスポンジ状の担体上で細胞を生体外で三次元培養することによって組織代替物を作製し、治療や移植に用いている。培養する細胞としては、主として、様々な細胞への分化能を有する胚性幹細胞(ES細胞)や、成体の組織由来の幹細胞(成体幹細胞)などが用いられている(非特許文献1〜4参照)。
【0003】
また、白血病や再生不良性貧血をはじめとする重篤な血液疾患に対する有効な治療法として、骨髄、末梢血や臍帯血を用いる造血幹細胞移植法が確立されつつある。しかし、ドナー不足、ヒト白血球抗原(human lymphocyte antigens; HLA)の不一致や、一度に採取できる造血幹細胞数が少ないなどの問題が依然として残されている。一方、造血幹細胞移植や遺伝子治療への応用を目的として、生体外の培養系において造血幹細胞を含めた造血系細胞を増幅するための研究が近年活発に行われている(非特許文献5〜7参照)。
【0004】
一般に、上述したES細胞や、造血系細胞の培養には、細胞増殖を支持する支持細胞との共培養が必要であり、例えばES細胞では繊維芽細胞が、造血系細胞ではストローマ細胞が支持細胞として用いられている(非特許文献5、6参照)。
【0005】
しかしながら、これらの細胞をそれぞれの支持細胞と共培養させた際に、支持細胞ばかりが増殖し、目的とする細胞があまり増殖しないことが多い。そこで、従来では、支持細胞をディッシュ等の培養容器上に先に培養した後に、放射線を照射したり、DNA合成阻害剤によって薬剤処理したりするなどして、支持細胞の増殖を抑制して、目的の細胞の増殖率を向上させている(非特許文献8、9参照)。
【0006】
【非特許文献1】Langer R. and Vacanti J. P., Science Vol. 260, p. 920-926, 1993.
【非特許文献2】Aung T. et al., J. Biomed. Mater. Res. Vol. 61, p. 75-82, 2002.
【非特許文献3】Baharvand H. et al., Int. J. Dev. Biol. Vol. 50, p. 645-652, 2006.
【非特許文献4】Lees J. G. et al., Regen. Med. Vol. 2, p. 289-300, 2007.
【非特許文献5】Dexter T. M. et al., J. Cell. Physiol. Vol. 91, p. 335-344, 1977.
【非特許文献6】Ando K. et al., Blood Vol. 107, p. 3371-3377, 2006.
【非特許文献7】Hofmeister C. C. et al., Bone Marrow Transplant. Vol. 39, p. 11-23, 2007.
【非特許文献8】Ohneda O. et al., Blood Vol. 92, p. 908-919, 1998.
【非特許文献9】Kang S. K. et al., Brain Res. Dev. Brain Res. Vol. 145, p. 141-149, 2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した放射線照射やDNA合成阻害剤を用いる方法では、高価な装置を必要とするなどによって培養コストが高くなり、また、残存する薬剤が支持細胞と共培養させる目的の細胞に悪影響を与える可能性がある。さらに、例えばヒトへの移植を目的として細胞を担体に固定化した支持細胞と共培養させた場合、担体には細胞の他にも支持細胞が含まれるため、安全性の点から、ヒトではない異種の支持細胞を使用することが困難であり、さらに支持細胞が移植する部位の周辺に混入するのを防ぐ必要がある。また、予め支持細胞を担体上で培養する期間が必要なため、必要時にすぐに目的とする細胞を培養できない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、低コストで、安全かつ大量に目的とする細胞を増殖することが可能であり、移植や人工臓器などの生物学的な代替物の材料に用いることが可能な細胞培養支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、支持細胞を三次元担体に固定化して培養した後、該支持細胞が固定化された担体を化学処理することによって支持細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させたものでも、目的の細胞を増殖させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の細胞培養支持体は、三次元担体と、該三次元担体に固定化され、化学処理によって細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させた支持細胞とを備えることを特徴とする細胞培養支持体。
【0011】
本発明の細胞培養支持体の好適例において、前記三次元担体が多孔質構造を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の細胞培養支持体の他の好適例において、前記三次元担体が、ポリビニルフォルマール樹脂からなることを特徴とする。
【0013】
本発明の細胞培養支持体の他の好適例において、前記化学処理が、アルデヒドによる処理であることを特徴とする。
【0014】
本発明の細胞培養支持体の他の好適例において、前記化学処理が、有機溶媒による処理であることを特徴とする。なお、前記有機溶媒としては、炭素数1〜3のアルコール又はケトンが好ましい。
【0015】
本発明の細胞培養支持体の他の好適例において、前記支持細胞がストローマ細胞であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の上記細胞培養支持体の製造方法は、三次元担体に支持細胞を固定化する工程と、
前記三次元担体上の前記支持細胞を培養する工程と、
化学処理によって前記支持細胞内のタンパク質を変性させ、前記支持細胞を死滅させる工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の細胞培養方法は、上記細胞培養支持体に細胞を播種して培養することを特徴とする。前記細胞としては、造血系細胞、胚性幹細胞及び成体幹細胞等が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストで、安全かつ大量に目的の細胞を増殖することができ、人工臓器などの生物学的な代替物の材料として好適な細胞培養支持体を簡便に得ることができるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の細胞培養支持体について詳細に説明する。本発明の細胞培養支持体は、三次元担体と、該三次元担体に固定化され、化学処理によって細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させた支持細胞とを備えることを特徴とする。本発明の細胞培養支持体においては、三次元担体を用いているため、ディッシュなどの二次元での培養と比較して、大量かつ効率的に目的とする細胞を増殖させることができる。さらに、上記三次元担体に固定化された支持細胞が化学処理によって死滅し、滅菌されているため、例えば本発明の細胞培養支持体上で目的とする細胞を増殖させたものを生体内へ移植した際に、生きている支持細胞が移植部位の周辺に混入することがなく、安全性が高い。また、支持細胞が死滅しているため、保管のコストが低い上、必要時にすぐに使用することが可能である。加えて、支持細胞を死滅させることから、例えば本発明の細胞培養支持体をヒトの体内へ移植させる際に、ヒト以外の異種の支持細胞も用いることができ、それ故に量産が可能である。
【0020】
本発明の細胞培養支持体を構成する三次元担体としては、支持細胞が前記三次元担体中に保持されて、生体適合性を有し、外部に流出せず、支持細胞の付着および生育がスムーズに行われる限り、特に限定されるものではない。ここで、前記三次元担体に支持細胞を多く付着させるためには、単位面積当たりの表面積が広いことが好ましいことから、前記三次元担体が多孔質構造を有することが好ましく、微孔性の立体網状多孔質構造を有する三次元担体がより好ましい。
【0021】
ここで、前記三次元担体が有する立体網状多孔質構造とは、その三次元担体を構成する物質が立体的にかつランダムな方向に網目状構造を形成した結果、その三次元担体内に複雑に入り組んだ細孔が生じたものであって、この細孔は連続細孔、すなわちすべての細孔がつながって連続しており、その孔径が均一で、細孔の配列に方向性がなく、かつ空隙率が高いものが好ましい。さらに、前記立体網状多孔質構造は、使用する支持細胞や目的とする細胞、三次元担体を入れる培養器の形状、大きさによって用いる三次元担体の細孔径も異なるが、支持細胞を担持する際や目的とする細胞を担持した支持細胞と共に培養する際の効率、細胞の保持能、及び三次元担体内における細胞の生育状態を考慮すると、平均孔径が1〜1000μm、好ましくは5〜600μmであることが好ましい。同様に、空孔率が50〜98%であることが好ましく、75〜95%がより好ましい。これによって、所定の培地中に浮遊した支持細胞及び目的とする細胞をより効率よく、高密度に前記三次元担体に多量に固定化することができる。
【0022】
上記三次元担体の形状は、特に限定されるものではなく、球形、ブロック形の粒子状、シート状、ハニカム状など如何なる形状のものを用いることができる。特に、ハンドリングが容易であるとともに、表面積の割合が大きく、したがって、支持細胞や目的とする細胞の固定化量をより増大することができるという観点より、粒子状のものを用いるのが好ましい。
【0023】
なお、粒子状の三次元担体を用いる場合、上記と同様の理由から、直径あるいは一辺の大きさが0.1〜20mmの大きさであることが好ましい。また、シート状あるいはハニカム状の三次元担体を用いる場合は、一辺が0.1〜20mmの大きさであることが好ましい。
【0024】
上記三次元担体の材料としては、水および培地中で変質せず、弱酸、アルカリおよび多くの有機溶媒等の有機物質に対して耐薬品性を示し、化学的に安定なものであって、高圧蒸気による滅菌に耐えられるものが好ましい。このような三次元担体であれば、支持細胞を培養する前に三次元担体を高圧蒸気などにより適宜選択した容器内で容易に滅菌することができ、また、支持細胞を固定化した三次元担体を化学処理するのが可能となる上、目的とする細胞を培養し終えた後に、三次元担体を回収し、加熱処理や、弱酸、アルカリ、または溶剤処理することにより細胞を溶解し離脱させ、洗浄後三次元担体を再使用することが可能となり、好都合である。
【0025】
具体的には、上記三次元担体の材料としては、濾過材として市販されている、立体網状連続多孔質構造を有するポリビニルフォルマール樹脂、ポリウレタンフォームや公知の高分子材料(特に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、およびこれらの共重合体など)を発泡又は多孔質化させたもの、ステンレススティール製の焼結金属担体、多孔性のガラスやセラミック、さらに、キトサン、セルロース、デキストランなどの天然由来の高分子物質で多孔質構造を有するものなどが挙げられる。これらの中でも、細胞の保持能や担体の物理化学的特性またはコスト面の観点から、ポリビニルフォルマール樹脂のうちフォルマール化度が60〜90%のもので、平均孔径が約20〜600μmの範囲のものが好ましい。
【0026】
また、上記三次元担体を、支持細胞の付着を促進する物質、例えばコラーゲン、ポリリジン、フィブロネクチン、ラミニン、ヒストン、ゼラチンなどの物質でコーティングしたり、架橋などの処理をして使用したり、また担体表面の荷電状態などの表面特性を変化させて使用することもできる。
【0027】
本発明に用いる支持細胞は、本発明の細胞培養支持体を用いて増殖させる目的の細胞自体を増殖させるための細胞である。このような支持細胞としては、ストローマ細胞が挙げられる。ここで、ストローマ細胞とは、基質細胞や支質細胞とも呼ばれ、器官においてその機能を担う細胞や組織を取り巻き、器官・組織間を埋め、これらを支持する細胞の総称であり、細胞同士の相互作用により相手の細胞に何らかの作用を及ぼす機能を有するものもある。このようなストローマ細胞には、繊維芽細胞、上皮細胞、細網細胞、脂肪細胞、血管系細胞、神経細胞、マクロファージ等の様々な種類の細胞が含まれる。本発明においては、生体より単離されたストローマ細胞に加えて、当該細胞を継代培養したり、場合によっては遺伝子組み換えを行うなどして樹立されたストローマ細胞株も使用することができ、このような細胞株も、本明細書で用いる「ストローマ細胞」という用語に含まれるものとする。
【0028】
本発明において使用する支持細胞は、増殖する目的の細胞に応じて選択することができ、例えば目的の細胞がES細胞である場合には支持細胞として繊維芽細胞を使用することができ、目的の細胞が造血系細胞、骨細胞や軟骨細胞である場合には骨髄、胎盤、臍帯血由来のもの等のストローマ細胞を使用することができる。なお、目的の細胞が未分化の細胞である場合には、支持細胞は目的の細胞の分化を抑制するものであるのが好ましい。また、支持細胞は目的の細胞とは異種のものであってもよい。
【0029】
上記支持細胞の上記三次元担体への固定化は、所定の容器内で上記三次元担体に支持細胞を注入して播種し、所定の培地にて所定の期間培養することによって上記三次元担体の内部や表面上に支持細胞の層を形成させるか、又は所定の容器内に支持細胞を含有する培地と三次元担体を入れ、当該容器に対して遠心処理し、所定の期間培養することによって行うことができる。三次元担体内に固定化することができる細胞数を増大させ、より強固な固定化を行うという観点から、遠心処理によって固定化するのが好ましい。遠心処理は、100G以上、さらには200G以上の遠心力を印加して行うことが好ましい。これによって、前記所定の培地中に浮遊した動物細胞をより効率よく固定化することができる。遠心力の上限については特に限定はされないが、500Gであることが好ましい。これによって、遠心処理中に固定化すべき動物細胞を傷害する恐れがなくなる。なお、遠心処理時間は、好ましくは1〜10分間である。そして、この範囲内の時間において連続して行う遠心処理を1タームとして、好ましくは1〜10ターム行う。
【0030】
また、三次元担体に固定化させる支持細胞の固定化密度を増大させ、三次元担体1個当たりの支持細胞の固定化量を増大させるためには、培地中における支持細胞の播種細胞数が1×10個/cm以上であることが好ましく、さらには5×10個/cm以上であることが好ましい。なお、遠心処理をする場合において、遠心処理前の培地中に浮遊させた細胞の播種細胞数を上記のように高くした場合においては、400Gまでの遠心力を印加すれば、前記多孔質体中に前記動物細胞を傷害せずに効率よく固定化することができる。
【0031】
支持細胞の三次元担体への固定化に用いる容器としては、有機溶剤に対して耐性を示すとともに、遠心処理を用いる場合においては、これに耐え得るような機械的強度を有していることが必要である。具体的には、ポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチック製の容器を用いることが好ましい。そして、支持細胞を含む培地を前記容器内に入れるのに先立ち、必要に応じて121〜150℃で、20分間高圧蒸気滅菌する。
【0032】
また、支持細胞の培養に用いる培地は、細胞の種類に応じて適宜に選択することができ、目的に応じて血清を加えることもできる。また、本発明の細胞培養支持体を臍帯血移植などに用いる場合は、血液から分離した血漿や血液そのものを用いることができる。なお、支持細胞を培養する期間は、支持細胞の層が三次元担体上に充分に形成される期間であればよく、特に限定されないが、例えば2〜7日間であればよい。
【0033】
本発明において、上記三次元担体上に固定化した上記支持細胞を、化学処理によって細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させることを要する。ここで、「化学処理によって細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させる」とは、化学処理によって細胞内の酵素等のタンパク質を変性させて、生きているときの該細胞の構造および形態をできる限り保つようにし、細胞の自己融解等の変化を防ぐと同時に、細胞を死滅させることを指し、組織学における生物の組織等の標本の作製のための細胞の固定と同義である。
【0034】
本発明において、支持細胞の細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させる化学処理としては、いわゆる組織学における組織や細胞等の固定において用いられているものが挙げられ、具体的には、ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド、又はメタノール、エタノール等の炭素数1〜3のアルコールもしくはアセトン等の炭素数1〜3のケトン等の有機溶媒等の組織や細胞の固定に通常用いられる固定剤による処理が挙げられる。
【0035】
アルデヒド又は有機溶媒等の固定剤による処理は、例えば、上記支持細胞を固定化した三次元担体を入れた容器に適宜濃度を調製した固定剤を添加することによって行うことができる。なお、アルデヒドによる処理の場合、アルデヒドを適宜選択した緩衝液に溶解した水溶液を一般に用いる。アルデヒド水溶液中のアルデヒドの濃度は、アルデヒドの種類によっても異なるが、組織標本作製のための固定において通常用いられている濃度であればよく、ホルムアルデヒドの場合には、10〜20%(容積/容積)、グルタールアルデヒドの場合には、その毒性も考慮した上で、0.2〜10%(容積/容積)であればよい。処理時間も、アルデヒドの場合にはタンパク質の架橋が、有機溶媒の場合には細胞の脱水が充分に行われるような時間であればよく、特に制限されない。なお、アルデヒドの水溶液による処理を行ったときには緩衝液等の水溶液で支持細胞を有する三次元担体を洗浄することが望ましいが、有機溶媒による処理の場合には、有機溶媒が揮発するため、洗浄処理は特に必要としない。
【0036】
アルデヒドによる処理を行った後の支持細胞を含む三次元担体の洗浄処理は、適宜選択した緩衝液等の洗浄液で濯ぐか、又は洗浄液に浸漬することによって行うことができ、濯ぐ回数及び浸漬する時間は使用したアルデヒドの種類やアルデヒド溶液中のアルデヒドの濃度に応じて選択することができる。例えば、支持細胞を形成してアルデヒドとして10%ホルマリン緩衝液で処理した担体の場合、該担体を洗浄液で3回以上すすぎ、安全のため洗浄液中に24時間以上浸漬することによって、該担体を洗浄できる。
【0037】
本発明の細胞培養支持体は、特に支持細胞との共培養が必要な細胞、具体的には、ES細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、成体性幹細胞、造血幹細胞等の幹細胞、造血幹細胞以外の造血系細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、神経細胞、繊維芽細胞、血管系細胞、肝由来細胞、膵臓由来細胞や腎臓由来細胞の培養に適している。本発明の細胞培養支持体を用いたこのような細胞の培養は、例えば、適宜選択した培地を入れた所定の容器中で細胞培養支持体に目的の細胞を播種し、培養することによって行うことができ、目的の細胞を大量に増殖させることが可能である。なお、培地は培養する目的の細胞に応じて適宜選択でき、目的に応じて血清を加えることもできる。また、本発明の細胞培養支持体を造血幹細胞の移植等に用いる場合には、血液から分離した血漿や血液そのものを使用することができる。
【0038】
また、本発明の細胞培養支持体上で目的の細胞を培養し、目的の細胞を含む細胞培養支持体ごと生体内に移植することもできる。さらに、そのような目的の細胞を含む細胞培養支持体を用いて、人工臓器や人工骨髄等の生物学的な代替物を製造することができる。本発明の細胞培養支持体に含まれる支持細胞は目的の細胞とは異種のものを使用できる上、上述した化学処理によって支持細胞が死滅し、滅菌されているため、本発明の細胞培養支持体は安全性が高く、そのまま生体内へ移植することができ、また、人工臓器等の生物学的な代替物の材料として使用することもできる。
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
本実施例では、例として本発明の細胞培養支持体を用いて増幅する細胞として造血系細胞を用い、支持細胞としてストローマ細胞を用いて、様々な化学処理を施したストローマ細胞層が造血系細胞の増幅に及ぼす影響について検討した。
【0041】
<実験方法>
(培養に用いた細胞)
本実施例では、造血系細胞として胎生14日目のC57BL/6 Cr Slcマウス(日本エスエルシー、静岡)より採取した胎仔肝臓細胞を用いた(Miyoshi H. et al., ASAIO J. Vol. 46, p. 397-402, 2000)。マウスを頸椎脱臼して安楽死させたのち、開腹して子宮を摘出し、胎盤を分離して羊膜中の胎仔を取り出した。肝臓は、これらの胎仔から実体顕微鏡下に単離し、後述のHAVA medium中で22G注射針を取り付けたシリンジを用いてピペッティングすることにより細胞を分散させた。細胞懸濁液を孔径70μmのセルストレイナー(Falcon 352350; Becton Dickinson Labware、NJ、USA)に通し、不純物や細胞塊を除去した。取得した細胞数および細胞生存率は、trypan blue exclusion法で測定した。
【0042】
ストローマ細胞には、胎生11日目のマウス背側大動脈血管内皮細胞由来の細胞株であるDAS(dorsal aorta derived-stromal)104-8を用いた(Ohneda O. et al., Blood Vol. 92, p. 908-919, 1998)。このDAS 104-8細胞株の継代培養は、75cm2のフラスコ(Falcon 353135)を用いて行った。細胞密度が約2.0×105 cells/cm2に達した時点で0.05%trypsin-EDTA(Gibco BRL、NY、USA)を用いて細胞を剥離し、継代、あるいは実験に用いた。
【0043】
(培地および三次元培養担体)
すべての培養実験で、DMEM-H(high glucose Dulbecco's modified Eagle's medium; Gibco BRL)を基本培地とするHAVA mediumを用いた。この培地は、DMEM-Hに添加物として10%FBS(fetal bovine serum characterized; Sigma、MO、USA)、MEM nonessential amino acid(0.1mmol/L;Gibco BRL)、L-glutamine(2mmol/L;Gibco BRL)、2-mercaptoethanol(1×10-4mol/L;和光純薬工業、大阪)および抗生物質(0.5%penicillin/streptomycin;Gibco BRL)を加えたものである。
【0044】
細胞の三次元培養用担体として、本実施例では、多孔質樹脂であるpolyvinyl formal(PVF)樹脂(アイオン、大阪)を使用した(Ehashi T. et al., J. Biomed. Mater. Res. A Vol. 77, p. 90-96, 2006; Ehashi T. et al., J. Biomed. Mater. Res. A Vol. 82, p. 73-79, 2007)。平均孔径130μmのPVF樹脂を2×2×2mmの立方体状に細切し、遠心用ボトルに入れてオートクレーブ滅菌したのち、0.06%コラーゲン(Cellgen I-PC;高研、東京)に半日以上浸潤させることによりコラーゲンコートした。得られたPVF樹脂担体は、PBS(-)(phosphate buffered saline;日水製薬、東京)、Hank's溶液(Sigma)、およびHAVA mediumで段階的に洗浄して細胞を播種した。
【0045】
(細胞の三次元培養担体への播種)
三次元培養において、培養担体への細胞の播種は、遠心操作を利用するcentrifugal cell immobilization(CCI)法を用いた(Yang T.H. et al., J. Biomed. Mater. Res. Vol. 55, p. 379-386, 2001)。まず、コラーゲンコートした担体100個を遠心ボトルに入れ、このボトルに所定量の細胞を含んだ細胞懸濁液を4.0mlくわえたのち、300×gで1分間遠心して細胞を担体に付着させた。担体に付着せずボトルの底に沈んだ細胞は、ボトルを軽く攪拌することにより再び浮遊させ、再度遠心操作を行った。これらの操作を6回繰り返すことによって細胞を担体に播種した。
【0046】
(培養実験)
本実施例では、PVF樹脂を担体とする三次元培養と、通常の培養方法であるディッシュによる単層培養を行った。各培養とも、まずストローマ細胞を播種・培養してストローマ層を形成したのち、化学処理して保存した。このストローマ細胞に、マウス胎仔肝臓細胞を再播種して培養を行った。培養実験のおおかまな流れを図1に示す。
【0047】
三次元培養では、担体上に1×107cells/cm3のストローマ細胞を播種して2日、もしくは7日間培養することによってストローマ層をまず形成した。この培養では、担体を30個ずつ60-mmペトリディッシュに移し、7.5mlのHAVA mediumを加えて静置培養を行った。次に、ストローマ層を形成したPVF樹脂を担体ごと化学処理し、一定時間後にこれらを洗浄して胎仔肝臓細胞を再播種する実験を行った。
【0048】
胎仔肝臓細胞の培養では、ストローマ層を形成した担体に1×108cells/cm3のマウス胎仔肝臓細胞を播種してさらに2週間培養した。この際、担体を10個ずつ35-mmペトリディッシュに移し、2.5mlの培地中で静置培養した。
【0049】
単層培養では、コラーゲンコートした35-mmペトリディッシュに5×105cells/dishのストローマ細胞を播種し、2日間培養してストローマ層を形成したのち化学処理を施した。このディッシュに5×106cells/dishのマウス胎仔肝臓細胞を再播種し、2週間培養した。なお、単層培養、三次元培養ともに培地交換は1日おきに行った。
【0050】
(ストローマ細胞の化学処理)
ストローマ細胞株の化学処理は、細胞の固定液として一般的に使用されている10%中性緩衝ホルマリン溶液、0.2%グルタールアルデヒド含有リン酸バッファー(pH7.3)、またはアセトンを用いて行った。ストローマ層を形成した担体をPBSですすいで担体内の培地を除去したのち、担体を50ml遠心管に移し、担体10個に対して1mlの固定液を加えて4℃で1〜7日間化学処理を行った。化学処理を終えた担体は、内部の固定液をPBSで洗浄したのち、培養実験に用いる、あるいはPBSを加えた遠心管内で4℃で保存した。なお、アセトンによる化学処理では、ガラスの遠心管を使用して-20℃で化学処理した。化学処理は3〜7日間行い、胎仔肝臓細胞を再播種する前に脱気処理し、担体からアセトンを取り除いたのち培養実験に用いた。
【0051】
(細胞数の測定)
本実施例では、マウス胎仔肝臓細胞の培養における細胞数の経持的変化を、以下に説明するDNA法またはMTT法を用いて計測した。
【0052】
(1)DNA測定法
担体に固定化された細胞数は、蛍光色素Hoechst 33342を用いてDNA量を測定する方法で測定した(Lydon M.J. et al., J. Cell. Physiol. Vol. 102, p. 175-181, 1980;Sriram M. et al., Biochemistry Vol. 31, p. 11823-11834, 1992)。Hoechst 33342はDNAのAT配列に特異的に結合する蛍光色素であり、その蛍光強度を測定することにより全細胞のDNA量を求めることができる。
【0053】
まず、細胞が付着した担体を10個ずつ試験管に入れ、この試験管に0.05 U/mlのプロナーゼ液(Sigma)を2ml加えて37℃で一晩静置した。次に、この試験管を超音波破砕機にかけて細胞を破壊した。得られたプロナーゼ液200μlを、1mMのHoechst 33342溶液(同仁化学研究所)1.8mlに加え、DNAに蛍光色素を結合させた。この溶液の蛍光強度を分光蛍光光度計で計測(励起光352nm、入射光461nm;FP-6300 日本分光株式会社、東京)することによりDNA量を求めた。なお、検量線は、既知量のニシン精子のDNA(Sigma)と既知量の細胞を用いて作製した。
【0054】
(2)MTT法
MTT(3-[4,5-dimethyl-2-thiazolyl]-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)法を用いて培養生細胞数を測定した(Mossman T., J. Immunol. Methods Vol. 65, p. 55-63, 1983;Yamaji H. and Fukuda H., Appl. Microbiol. Biotechnol. Vol. 37, p. 244-251, 1992)。この方法は、細胞内のミトコンドリアに含まれる酵素によってMTTがMTT formazanに変換されることを利用して、水に不溶なMTT formazanの生成量を測定することにより生細胞を計測する方法である。
【0055】
測定に用いたMTT溶液は、MTT(同仁科学研究所、熊本)をPBS(-)に0.5g/Lの濃度で溶解することにより調製した。単層培養の場合には、培地を除去したディッシュに2mlのMTT溶液を加えた。三次元培養では、細胞が付着した担体10個を15mlの遠心管に移して2mlのMTT溶液を加えた。これらのディッシュや遠心管を37℃で3時間インキュベートしたのち、ディッシュを用いた場合には付着細胞をピペッティングにより剥離して15mlの遠心管に移した。得られた遠心管を1500rpmで3分間遠心分離することにより、生成したMTT formazanを沈殿させた。遠心管から上清のMTT溶液を除去し、2mlのイソプロピルアルコールを加えてMTT formazanを溶解したのち、不要物を取り除くためにさらに遠心を行い、得られた上清の吸光度を分光光度計を用いて測定した。このとき、560nm(測定波長)と700nm(対照波長)の吸光度を測定して両者の差(OD560-700)を求めた。なお、培養された固定化細胞数は、あらかじめ既知量の細胞を用いて作製した検量線から算出した。
【0056】
(培養細胞中の血液系細胞の解析)
培養細胞中の造血系細胞の種類を同定するため、フローサイトメトリー(FACS)を用いた解析を行った。まず、細胞が付着した担体(10個)に、0.25%trypsin-EDTA/0.2%collagenase溶液(Gibco BRL)を1.0ml滴下して細胞を剥離したのち、2%FBSを含むPBSを2ml加えた。これらの細胞懸濁液は、孔径70μmのセルストレイナー(Falcon 352340)に通して細胞塊や不純物を除去し、さらにFBSを含んだPBSを用いて細胞を洗浄した。その後、2〜5×105cells/mlの細胞密度となるように染色用培地(2%FBSと0.1%アジ化ナトリウム(和光純薬工業)を添加したPBS)を加え、1.5mlサンプリングチューブに250μlずつ分注した。これらのチューブを4℃、1500rpmで3分間遠心して上清を除去し、染色用培地を再度50μlずつ加えた。
【0057】
フローサイトメトリーによる解析には、赤芽球細胞の指標である抗TER119抗体(PE標識)、B細胞の指標である抗CD45R/B220抗体(FITC標識)、造血前駆細胞の指標である抗c-Kit(CD117)抗体(PE標識)、および造血幹/前駆細胞の指標である抗CD34抗体(FITC標識)(すべてPharMingen International、CA、USA)を用いた。これらの抗体をサンプリングチューブにそれぞれ1.0μlずつ加え、氷上にて30分間インキュベートした。なお、抗体を加えないチューブをコントロールとして使用した。その後、染色用培地を500μlずつ加え、4℃、1500rpmで3分間遠心して上清を除去したのち、死細胞の染色色素であるpropidium iodide(PI;0.5mg/ml、Sigma)を染色用培地に2μl/ml添加した溶液を500μlずつ加えた。得られた細胞懸濁液は、それぞれ孔径35μmのセルストレイナーに通して細胞塊を取り除いてから5mlラウンドチューブ(Falcon 352235)に移した。染色した細胞は、488nmアルゴンレーザーと599nm色素レーザーを備えたFACSCalibur(Becton Dickinson Labware)を用いて計測した。各サンプルにおいて、10,000個の細胞から得られた結果をCell Quest Software(Becton Dickinson Labware)を用いて解析した。
【0058】
培養細胞中のそれぞれのlineageの細胞数は、MTT測定法またはDNA測定法により測定した生細胞数と、FACSの結果から得られたTER119陽性細胞、B220陽性細胞、c-Kit陽性細胞、あるいはCD34陽性細胞の比率から求めた。測定値はすべて平均値±標準偏差(mean±standard deviation)で示した。
【0059】
<実施例1>
(ホルマリン化学処理ストローマ細胞が造血系細胞に及ぼす影響)
まず、三次元担体上にストローマ層を形成し、ホルマリンを用いて担体上のストローマ細胞を化学処理し、得られた担体を洗浄液で3回以上すすぎ、安全のため洗浄液中に24時間以上浸漬した。このストローマ層にマウス胎仔肝臓細胞を再播種して培養を行った。再播種後の細胞増幅率の経持的変化を図2に示す。再播種した全細胞数は経持的に減少した(図2a)。造血系細胞の経持的変化については、TER 119陽性細胞は急激に減少(図2b)、またB220陽性細胞は増殖した(図2c)。一方、c-Kit陽性細胞(図2d)とCD34陽性細胞(図2e)は、細胞密度は減少した。
【0060】
以上の結果から、ホルマリン化学処理ストローマ層を用いて造血系細胞を培養した場合にはB220陽性細胞が増幅されたものの、未分化な造血系細胞(c-Kit陽性細胞とCD34陽性細胞)はあまり増幅されなかった。
【0061】
<実施例2>
(グルタールアルデヒド化学処理ストローマ細胞が造血系細胞に及ぼす影響)
グルタールアルデヒドで化学処理したストローマ層にマウス胎仔肝臓細胞を再播種して培養を行った際の、再播種後の細胞数の経持的変化を図3に示す。生細胞の細胞密度については(図3a)、三次元培養(黒丸)では培養期間を通じて生細胞数は増加し、単層培養(白丸)では一定の細胞数が維持された。造血系細胞の経持的変化(図3b〜e)では、まずTER119陽性細胞は三次元培養では細胞数はわずかに増加し、単層培養でも細胞数は維持された(図3b)。一方、B220陽性細胞については、三次元培養、単層培養ともに増殖した。また、c-Kit陽性細胞は、培養14日目での増幅率が高かった(図3d)。CD34陽性細胞は、三次元培養では培養7日目以降も増幅が認められた(図3e)。
【0062】
以上の結果から、グルタールアルデヒド化学処理ストローマ層を用いた造血系細胞の培養では、c-Kit陽性細胞やCD34陽性細胞といった未分化な細胞が増幅され、その効果は三次元培養において顕著であった。さらに、わずかながらもTER119陽性細胞を増幅できることが示された。
【0063】
<実施例3>
(アセトン化学処理ストローマ細胞が造血系細胞に及ぼす影響)
アセトン化学処理ストローマ層にマウス胎仔肝臓細胞を再播種して培養を行ったときの、再播種後の細胞増殖率の経時的変化を図4に示す。生細胞数は、三次元凍結保存ストローマ細胞層を使用した場合よりも良好に増加した(図4a)。再播種後の造血系細胞の経時的変化については、TER119陽性細胞は培養7日目まではわずかに増加したのに対して(図4b)、B220陽性細胞は培養7日目以降に増幅された(図4c)。また、c-Kit陽性細胞及びCD34陽性細胞についても培養期間を通して細胞は増幅された(図4c)。
【0064】
以上の結果から、アセトン化学処理ストローマ層を用いた造血系細胞の培養では、TER119陽性細胞以外の細胞を増幅することができた。
【0065】
<実施例4>
(化学処理法の比較)
化学処理ストローマ細胞層を用いた場合の、造血系細胞の増幅率を表1にまとめて示す。まず、TER119陽性細胞は、アセトン化学処理、あるいはグルタールアルデヒド化学処理ストローマ細胞を用いた場合に増幅されたものの、その増幅率はわずかであった。B220陽性細胞は、ホルマリン化学処理を用いた場合は7日目までしか増幅されなかったのに対して、グルタールアルデヒドやアセトン処理した細胞を用いると培養14日目まで増幅され、その増幅率も高かった。未分化な造血系細胞に関しては、c-Kit陽性細胞はグルタールアルデヒドやアセトン化学処理ストローマ細胞を用いることで2〜5倍に増幅された。一方、これらの条件下におけるCD34陽性細胞の増幅率は約2倍であり、c-Kit陽性細胞の増幅率より低値であった。
【0066】
以上の結果から、化学処理の違いによって増幅される造血系細胞が異なることが明らかとなった。
【0067】
【表1】

FA;三次元ホルマリン化学処理DAS 104-8細胞、GA(3-D);三次元グルタールアルデヒド化学処理DAS 104-8細胞、GA(2-D);グルタールアルデヒド化学処理DAS 104-8細胞(単層)、アセトン;三次元アセトン化学処理DAS 104-8細胞
【0068】
これらの結果から、化学処理ストローマ細胞層を用いた三次元培養によって造血系細胞を増殖することが可能であることが判明し、このような培養法は、生体外で造血系細胞を増幅するシステムを構築する上で有効な手段となりうると考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、培養実験のフローチャートを示す図である。
【図2】図2は、三次元ホルマリン化学処理ストローマ層を用いた造血系細胞の三次元培養における再播種後の細胞増殖率の経時変化(n=3)を示すグラフである(黒菱形;ホルマリン化学処理(FA)、a)全細胞密度、b)TER119陽性細胞、c)B220陽性細胞、d)c-Kit陽性細胞、e)CD34陽性細胞)。
【図3】図3は、グルタールアルデヒド化学処理ストローマ層を用いた造血系細胞の培養における再播種後の細胞増殖率の経時変化を示すグラフである(黒丸;グルタールアルデヒド化学処理(三次元培養),(GA(3-D),n=5)、白丸;グルタールアルデヒド化学処理(単層培養),(GA(2-D),n=3)、a)全細胞密度、b)TER119陽性細胞、c)B220陽性細胞、d)c-Kit陽性細胞、e)CD34陽性細胞)。
【図4】図4は、三次元アセトン化学処理ストローマ層を用いた造血系細胞の三次元培養における再播種後の細胞増殖率の経時変化(n=3)を示すグラフである(黒菱形;アセトン化学処理、a)全細胞密度、b)TER119陽性細胞、c)B220陽性細胞、d)c-Kit陽性細胞、e)CD34陽性細胞)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元担体と、該三次元担体に固定化され、化学処理によって細胞内のタンパク質を変性させ、死滅させた支持細胞とを備えることを特徴とする細胞培養支持体。
【請求項2】
前記三次元担体が多孔質構造を有することを特徴とする請求項1記載の細胞培養支持体。
【請求項3】
前記三次元担体が、ポリビニルフォルマール樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載の細胞培養支持体。
【請求項4】
前記化学処理が、アルデヒドによる処理であることを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の細胞培養支持体。
【請求項5】
前記化学処理が、有機溶媒による処理であることを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の細胞培養支持体。
【請求項6】
前記有機溶媒が、炭素数1〜3のアルコール又はケトンであることを特徴とする請求項5記載の細胞培養支持体。
【請求項7】
前記支持細胞がストローマ細胞であることを特徴とする請求項1〜6項のいずれか1項に記載の細胞培養支持体。
【請求項8】
三次元担体に支持細胞を固定化する工程と、
前記三次元担体上の前記支持細胞を培養する工程と、
化学処理によって前記支持細胞内のタンパク質を変性させ、前記支持細胞を死滅させる工程とを含むことを特徴とする請求項1〜7項のいずれか1項に記載の細胞培養支持体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7項のいずれか1項に記載の細胞培養支持体に細胞を播種して培養することを特徴とする細胞培養方法。
【請求項10】
前記細胞が造血系細胞であることを特徴とする請求項9記載の細胞培養方法。
【請求項11】
前記細胞が胚性幹細胞又は成体幹細胞であることを特徴とする請求項9記載の細胞培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−273444(P2009−273444A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130547(P2008−130547)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】