説明

細胞培養用中空糸モジュールおよび細胞培養方法

【課題】中空糸モジュールを用いた細胞培養において、培養細胞の回収を効率的に行い、細胞培養の生産性を高めることが可能となる中空糸モジュールおよびこれを用いた細胞培養方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、細胞を培養するための中空糸モジュールであって、半透膜機能を有する材料からなり、中空糸内部空間に培養液を循環させることにより中空糸外部空間(ECS)に存在する細胞に生育必須成分を供給するための中空糸束と、中空糸束を格納するためのハウジングとを有し、且つ、ハウジングが、胴体部分の任意の位置で2つ以上に分離できるものであるとともに、培養細胞の回収のために中空糸束の少なくとも一部が外部に露出できる構造であることを特徴とする細胞培養用中空糸モジュールおよびこれを用いた細胞培養方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を培養するために用いる中空糸モジュール、および当該細胞培養用中空糸モジュールを用いた細胞の培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、慢性的臓器機能不全疾患に対する有用な治療方法として、臓器移植や人工臓器埋設が行われているが、臓器移植は、拒絶反応や免疫抑制剤の投与が必要といった医学的問題、および深刻なドナー不足といった社会的問題を伴う。また、人工臓器は、生体適合性、および機能性あるいは利便性といった生体機能代替性という点で、満足できる治療手段とは言えない。
【0003】
このような問題を解決する方法として、再生医療が注目されている。再生医療は、機能不全に陥った臓器等の生体組織を再生する方法として有用であり、既に、皮膚や骨の分野においては実用化され、世界的にも臨床への応用が開始されている。しかし、臓器に関しては、未だ臨床応用には至っていない。臓器の形成には、大量の生体組織細胞を必要とするが、現在のところ、生体組織細胞の大量培養技術が確立されていないためである。従って、再生医療が、広く臨床に応用可能となるためには、細胞の大量培養技術の開発が必要となる。
【0004】
近年、遺伝子組換え、あるいはハイブリドーマの技術開発に伴い、インターフェロン、エリスロポエチン等の種々のヒト由来生理活性タンパクを製造するための大量細胞培養方法が開発されている。かかる細胞培養法は、好気的条件下で増殖する動物細胞を用いるものであり、一般にジャーファーメンター法によって細胞培養を行う技術である。しかし、このような技術は、医薬品原料の生産手段としての細胞培養技術であり、細胞固有の生理特性あるいは機能を発現、維持した細胞を利用する方法ではない。
【0005】
一方、細胞固有の機能を発現させるための生体組織細胞培養法としては、三次元培養法が提案されている。かかる技術は、コラーゲン等による細胞付着マトリックスを核として三次元的に細胞を増殖させるものであり、そのためには、細胞が増殖するための空間と、マトリックスを介して付着した細胞が増殖するための担体を提供することが必要である。
【0006】
このような培養方法に、上記ジャーファーメンター法を応用することも考えられる。しかし、ジャーファーメンター法では、撹拌による細胞の物理的損傷が発生するおそれがあることに加え、交差汚染の防止を十分に図ることが困難なため、各個人に応じた個別識別細胞培養が必要とされる再生医療に適した方法とはいえない。
【0007】
そこで、細胞付着担体を有し、培養細胞の物理的損傷および交差汚染を抑制した大量細胞培養法として、中空糸モジュールを用いた細胞培養技術が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、半透過性管状膜(キャピラリ)束をガラス製の殻に内封して細胞培養ユニットとし、キャピラリに栄養素媒質を循環することによってキャピラリ表面に付着した細胞を増殖させる技術が開示されている。
【0009】
しかし特許文献1の実施例では、キャピラリ束から細胞を分離することは行われておらず、細胞の成長は主に顕微鏡や肉眼により確認されている。唯一、細胞成長を染色により確認するために、媒質をアガロースで置換した後に細胞を固化したアガロースごと取り出している例が記載されているが、斯かる取り出しは細胞培養ユニットの両端部を壊すことにより行われている。
【0010】
また、特許文献2には、中空糸膜モジュールを用いた細胞培養において、一定温度で相転移を起こす重合体を中空糸膜表面に保持させ、中空糸膜表面から培養細胞の剥離を容易にすることによって、培養細胞の回収を容易にする技術が開示されている。しかし、当該技術では中空糸表面の処理工程が必要となる。また、当該技術は温度変化により中空糸表面に付着した細胞を剥離するものであるため、モジュール内の中空糸全てを短時間で一様に温度変化することは困難であり、培養細胞の回収率が変動するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭49−41579号公報
【特許文献2】特開平6−169755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、中空糸モジュールを用いた細胞培養において、培養細胞の回収を、従来より一層効率的に行い、培養細胞の生産性を高めることが可能となる細胞培養用中空糸モジュール、および当該細胞培養用中空糸モジュールを用いた細胞培養方法を提供することを目的とし、特に再生医療分野において細胞を大量に得る手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の細胞培養用中空糸モジュールは、細胞を培養するための中空糸モジュールであって、半透膜機能を有する材料からなり、中空糸内部空間(以下、「ルーメン」という)に培養液を循環させることにより中空糸外部空間(以下、「ECS」(Extracapillary Space)という)に存在する細胞に生育必須成分を供給するための中空糸束と、中空糸束を格納するためのハウジングとを有し、且つ、ハウジングが、胴体部分の任意の位置で2つ以上に分離できるものであるとともに、培養細胞の回収のために中空糸束の少なくとも一部が外部に露出できる構造であることを特徴とする。細胞培養後、ハウジングを破壊することなく、培養細胞が付着した中空糸束を容易に外部環境に露出させることができるため、中空糸表面および間隙その他ECSからの培養細胞の回収が容易になり、かつ、培養細胞の物理的損傷、あるいは落下等の損失を招くことなく高い回収率で回収可能となる。
【0014】
上記中空糸モジュールは、ハウジング内に挿入されるスリーブと芯棒を有し、当該スリーブは、中空糸束を覆うことにより中空糸束を保持するためのものであり、当該芯棒は、中空糸束と共に両端部がスリーブ内に固定されることにより中空糸束を保持するためのものであることが好ましい。細胞培養後、培養細胞が付着した中空糸束を、スリーブおよび芯棒で保持された状態で取り出すことができるため、培養細胞の物理的損傷、損失を一層抑制することができる。
【0015】
また、上記中空糸モジュールは、ハウジング内に挿入され、中空糸束を格納するためのものであり、ハウジングと分離することができ、且つ、中空糸に付着した細胞を直接回収するための開口部を有する内部ハウジングを、上記ハウジング内にさらに有することが好ましい。細胞培養後、培養細胞が付着した中空糸束を、内部ハウジングで保護された状態で取り出すことができるため、培養細胞の物理的損傷、損失を一層抑制することができる。また、中空糸束が内部ハウジングに保護されているため、モジュール形成のためにハウジング内に収納する際、中空糸束の損傷を回避することができる。さらに、ECSの培養細胞を、塊としてほぼ全量確実にハウジング外に取り出すことができるため、簡便かつ確実に細胞を回収することが可能となる。
【0016】
本発明の中空糸モジュールは、中空糸束に対するECSの体積比率が、1以上20以下であることが好ましい。当該空間部分の体積を適切なものとすることによって、細胞培養を効率的なものとすることができ、かつ、培養後のECSからの回収をより容易なものとすることができるからである。
【0017】
本発明の中空糸モジュールで用いる中空糸は、再生セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルあるいはポリカーボネートよりなる群から選択される1種、または2種以上の混合物からなるものが好ましい。
【0018】
また、上記中空糸が、表面を親水化処理されたものであることが好ましい。細胞親和性が増すと共に、培養液の膜透過性も向上するからである。
【0019】
また、本発明の細胞培養方法は、上記細胞培養用中空糸モジュールを使用して細胞を培養した後に、ハウジングを2つ以上に分離し、培養細胞の回収のために中空糸束の少なくとも一部を外部に露出し、中空糸に付着した細胞を直接回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の細胞培養用中空糸モジュールおよび細胞培養方法により、中空糸モジュール内で培養した細胞が付着した中空糸束を、物理的損傷あるいは損失を回避しつつ、容易に外部環境に露出させることができるため、極めて効率的に培養細胞を回収することが可能となる。従って、培養細胞の生産性は向上し、生体組織細胞等の有用な細胞を再生医療等へ提供することが可能となることから、本発明は産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図7】本発明の細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図8】実施例の細胞数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
従来、細胞培養に用いられている中空糸モジュールを図1に示す。このように、従来の中空糸モジュールは、円筒形ハウジングの内側に中空糸束が封止材を用いて一体不可分となって固定され、さらにハウジングの両端部分にキャップが施された形のものが使用されている。このように、ハウジングを封止材およびキャップで密閉することにより、中空糸内の空間部分(ルーメン)と、中空糸外側とハウジングによって形成される空間部分(ECS)とが隔離されて形成される。ルーメンには、培養液を循環させるためのチューブ接続用導管(以下、「培養液用導管」という)が、ECSには、細胞を投入するためのチューブ接続用導管(以下、「細胞投入用導管」という)が設けられ、モジュール内に細胞を投入し、培養液を循環させることによって、細胞培養を行うことができる。これら空間は、お互いに隔離されているため、細胞は循環培養液中に流出することはない。一方、細胞は、中空糸膜を介して十分な栄養成分および酸素の供給を受けるので、高密度に増殖することができる。ECS内で高密度化した培養細胞は、中空糸表面に直接、あるいは細胞付着担体を介して間接的に中空糸表面に付着する。
【0023】
しかし、従来の中空糸モジュールは、モジュール内で細胞を培養することは可能であるが、細胞が産出する化合物の回収を主な目的としており、細胞自体の回収を考慮した構造ではないため、多少とも付着性を有する培養細胞についての回収率は低く、得られた培養細胞を有効に利用することは困難であった。例えば、従来の中空糸モジュールから細胞を回収するには、トリプシンなど細胞を中空糸表面や細胞付着担体から剥離するための試薬を細胞投入用導管から導入した後、剥離された細胞を細胞投入用導管から培養液と共に洗い出す方法が用いられていた。しかし、斯かる方法は異種蛋白である剥離用試薬を使用する必要がある上に、細胞が中空糸表面あるいは間隙に残留するため、細胞回収率は全く満足できるものではない。回収率を高めるためにトリプシン等の濃度を上げたり、処理時間を延長すれば、細胞にダメージが生じてしまう。また、従来の中空糸モジュールにおいて細胞を中空糸表面から直接回収するとすれば、ハウジングを破壊する必要があるが、破壊操作を行うと、細胞に衝撃を与える危険が伴う。また、破片が細胞塊中に混入する危険および無菌操作を損なう危険も伴う。
【0024】
そこで、本発明者らは、中空糸モジュールからの培養細胞の回収について鋭意検討し、本発明を見出した。
【0025】
すなわち、本発明の細胞培養用中空糸モジュールは、細胞を培養するための中空糸モジュールであって、半透膜機能を有する材料からなり、ルーメンに培養液を循環させることによりECSに存在する細胞に生育必須成分を供給するための中空糸束と、中空糸を格納するためのハウジングとを有し、且つ、ハウジングの任意の部分が脱着できるとともに、中空糸束の少なくとも一部が外部に露出できる構造であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の細胞培養方法は、上記本発明の中空糸モジュールを用いた細胞培養方法を具現化する方法であり、細胞培養用中空糸モジュールを使用して細胞を培養した後に、中空糸束とハウジングとを分離し、中空糸に付着した細胞を直接回収することを特徴とする。
【0027】
以下、本発明の細胞培養用中空糸モジュールおよび細胞培養方法について説明する。
【0028】
尚、本発明において、「中空糸に付着」とは、培養細胞が中空糸表面に直接付着、または細胞付着担体を介して間接的に付着することを表すものであり、中空糸間隙あるいは中空糸とハウジングとの間隙に存在することも含む。
【0029】
本発明の中空糸束とは、1本または2本以上の中空糸がハウジング内で長さ方向に固定されたものを意味する。
【0030】
本発明で用いられる中空糸束は、半透膜機能を有する材料からなり、ルーメンに培養液を循環させることによりECSに存在する細胞に生育必須成分を提供するためのものである。このような中空糸束であれば、当業者に公知ないかなる中空糸束も用いることができ、特に限定されない。
【0031】
上記半透膜機能とは、溶液や分散系中の一部の成分は通すが、他の成分は通さないような膜としての機能を有する材料を意味する。例えば、孔径によって通す成分を変化させることができる多孔質膜、または、濃度勾配による通過のみならず様々な膜通過機能を有する生体膜と同様の機能を有するもの等を挙げることができ、培養しようとする細胞の種類、あるいは培養液等に応じて適宜選択して用いることができる。
【0032】
このような中空糸は、細胞との親和性を考慮し、例えば材質として、再生セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルあるいはポリカーボネートよりなる群から選択される1種、または2種以上の混合物からなることが好ましい。かかる例示において、中空糸が1種のポリマーからなるとは、各中空糸すべてが当該ポリマーからなることを意味する。また、混合物からなるとは、中空糸が、結果として複数のポリマーを有していればよい。すなわち、各中空糸それぞれがすべて当該混合物からなる場合でもよく、あるいは、一部の中空糸は混合物のうち任意の1種のポリマーからなり、別の中空糸は別の任意のポリマーからなり、束を形成したときに複数のポリマーを含有する場合も含まれ、特に限定されるものではない。本発明の中空糸は、これらポリマーのうち、再生セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンからなるものであることがより好ましい。細胞の培養においては、予め中空糸モジュールを滅菌しておくことが必要である。従って、熱に対する耐久性が高い再生セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンを用いることによって、高圧蒸気滅菌が可能となり、滅菌処理を効率的に行うことができる。
【0033】
また、上記中空糸は、表面を親水化処理されたものであることがより好ましい。親水化処理を行うことによって、細胞親和性が増すと共に、培養液の膜透過性も向上するからである。親水化処理方法として、例えば、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アルコールなどによる処理が挙げられ、アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。このうち、ポリビニルピロリドン処理が好ましい。中空糸表面により安定的な親水性を付与することができるからである。尚、このような親水化処理を施すことによって、ポリプロピレン、ポリエチレン等の疎水性中空糸も用いることが可能となる。
【0034】
上記中空糸の半透膜としての孔径(以下、「膜孔径」という)は、培養液を中空から外部に通過させることができ、培養しようとする細胞を通過させないものであれば特に限定されるものではない。膜孔径が小さくなれば膜強度は強くなるが、物質交換率は小さくなり、一方、膜孔径が大きくなれば膜強度は弱くなるが、物質交換率は大きくなる。これらを考慮すれば、中空糸の平均膜孔径は、0.001〜2μmが好ましく、0.005〜0.2μmがより好ましい。また、種々の細胞増殖因子、分化誘導因子を添加する必要がある場合、これら因子をECS内に封入することができ、コストを大きく削減することができることも考慮すれば、孔径は、0.005〜0.01μmであることがより好ましい。
【0035】
上記中空糸の内径としては、培養液を循環させることができる太さであれば、特に限定されないが、高い膜透過性を確保する観点から、細い中空糸が好ましく、0.1〜3mmとすることができる。また、加工が容易であること、培養液中に生じた不溶成分による目詰まりを抑制する観点も考慮に入れ、0.5〜1mmがより好ましい。
【0036】
また、上記中空糸の本数、膜厚は、本発明の細胞培養を可能とするものであれば特に限定されないが、後述する様に、必要とする細胞数、培養細胞の栄養、酸素要求性、中空糸モジュール内のECSの体積との関係等で適宜調整することが好ましい。
【0037】
上記中空糸束は、一般に使用される封止材を用いて中空糸間隙を封鎖し、糊付け固定することができる。中空糸束を固定した封止材は、封止材ブロックという。当該封止材としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂など当業者に公知な樹脂を挙げることができる。
【0038】
このような半透膜機能を有する本発明の中空糸は、ルーメンに培養液を循環させることによりECSに存在する細胞に生育必須成分を供給し、代謝成分を拡散除去するためのものである。
【0039】
上記培養液は、培養しようとする細胞の生育必須成分を含有するものであれば、従来公知のいかなる培養液も用いることができ、特に限定されない。また、細胞の生育必須成分とは、培養しようとする細胞が増殖するうえで必要不可欠な成分であり、種々の有機物、無機物で構成され、酸素等を供給するための溶存ガスも含まれる。生育必須成分としては、例えば、ダルベッコMEM、RPMI1640、ハムF12等の汎用培地に、血清あるいは各種増殖因子、分化誘導因子を添加して作成した培地等が用いられる。
【0040】
尚、培養に際して培養液は、適当な容器に収納し、ポンプにて繰り返しルーメン内を循環させるが、一過性の培養液の供給を排除するものではない。本発明において、培養液の「循環」には、一過性の供給が含まれる。
【0041】
<ハウジング>
本発明の中空糸モジュールは、上記中空糸束と、中空糸束を格納するためのハウジングとを有し、且つ、ハウジングの任意の部分が脱着できるとともに、中空糸束の少なくとも一部が外部に露出できる構造を有する。
【0042】
上記ハウジングは、中空糸束を格納するためのものであり、中空糸とハウジングとで形成された空間部分で細胞培養を行うことができるものである。すなわち、ハウジングは密閉可能なものであり、密閉することにより、ルーメンとECSが形成される。ルーメンには培養液用導管が、ECSには細胞投入用導管が設けられ、モジュールのECS内に細胞を投入し、培養液を循環させることによって、細胞培養を行うことができる。これら空間は、お互いに隔離されているため、培養液と細胞は直接接触せず、半透膜機能を有する中空糸の膜孔を通過した培養液中の成分のみが細胞と接触する。
【0043】
上記ハウジングの材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、アクリル樹脂などを挙げることができる。このうち、ポリカーボネート、ポリスルホンが好ましい。これら材質は、熱に対する耐久性が高いため、高圧蒸気滅菌が可能となり、効率的な滅菌処理を行うことができる。また、透明性が高いため、肉眼により細胞の培養状態を容易に確認することができる。
【0044】
上記「ハウジングの任意の部分が脱着できる」とは、ハウジングの任意の部分がハウジングから分離可能であり、かつ、当該分離した任意の部分は、ハウジングに装着可能であることを意味する。「脱着」には、上記任意部分を、他の部分と接触させたまま開閉すること、あるいは他の部分と完全に分離するよう取り外すことが含まれる。
【0045】
また、「中空糸の少なくとも一部が外部に露出できる」とは、上記中空糸モジュール内に密閉され、外部環境から遮断された中空糸束が、上記ハウジングの任意の部分を分離することによって、少なくとも一部が外部環境に露出できることを意味する。中空糸束が外部環境に露出されるのは、少なくとも一部であれば特に限定されるものではなく、中空糸束の全てが露出されてもよい。かかる態様は、必要に応じて適宜設定されるべきものである。
【0046】
このように中空糸束を外部環境に露出させることができることによって、培養細胞の回収を容易にすることができる。
【0047】
本発明において、培養細胞を回収するとは、中空糸表面に直接、あるいは細胞付着担体を介して間接的に付着した細胞を回収することを表し、中空糸間隙に存在する細胞あるいは中空糸とハウジングとの間隙に存在する細胞を回収することも含む。
【0048】
すなわち、本発明の中空糸モジュールは、上記ハウジング構造を有することにより、中空糸に付着した培養細胞を、掻き出し等の物理的回収に十分な程度に外部環境に露出するため、培養細胞の損傷を誘発することなく極めて容易に物理的手段によって回収することができる。さらに、かかるハウジング構造により、ハウジングから流出させて回収することができる細胞が含まれている場合にも、このような細胞を極めて容易に流出させて回収することができる。
【0049】
また、細胞回収に際して、酵素処理等の化学的処理を付加することにより、回収率を更に向上することができる。しかし、かかる化学的処理に通常使用される酵素は、豚等動物由来の酵素であり、生体にとっては異物である。そのため、再生医療に適用する際には、培養細胞中に混入して生体内に移植されると危険であり、極力回避したい。本発明の場合、このような化学的処理はあくまで補助的手段であり、従来の中空糸モジュールで行われたような強い処理条件は必要としないため、培養細胞にダメージを与えない程度の軽い処理で細胞回収率を向上することができる。
【0050】
上記ハウジングは、上記要件を満足するものであれば、形状、大きさ等について、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定することができるが、モジュール内のデッドスペース、細胞の培養し易さ等を考慮すれば、円筒形のハウジングが好ましい。
【0051】
以下、上記ハウジングの好ましい態様として、中空糸束をハウジングから分離する態様を(1)、(2)に、中空糸束をハウジングから分離しない態様を(3)、(4)に例示する。
【0052】
尚、(1)、(2)の態様においては、ハウジングの両端部にキャップを有することが好ましい。ハウジング両端部に取り外し可能なキャップを装着することによって、ルーメンを形成することができ、細胞培養後、キャップを取り外すことによって、培養細胞が付着した中空糸束をハウジングから取り出すことが可能となり、中空糸束を完全に外部環境へ露出させることができる。その結果、中空糸束から、培養細胞を容易に回収することができる。上記キャップは、ハウジング両端部に脱着可能なものであれば当業者に公知ないかなるキャップも用いることができ、特に限定されないが、例えば、スクリュー式キャップ、はめ込み式キャップ等を挙げることができる。当該キャップの材質は、特に限定されないが、例えば、上記ハウジングと同様の材質を挙げることができる。
【0053】
(1)ハウジング内に挿入されるスリーブと芯棒を有し、当該スリーブは、中空糸束を覆うことにより中空糸束を保持するためのものであり、当該芯棒は、中空糸束と共に両端部がスリーブ内に固定されることにより中空糸束を保持するためのものである態様である(図2)。
【0054】
上記「保持」とは、中空糸束が一定の形状に維持されることを意味する。上記ハウジング内に、スリーブと芯棒により保持された中空糸束を挿入し、キャップをすることによって、ルーメンおよびECSを容易に形成することができる。また、細胞培養後、キャップを取り外した後、培養細胞が付着した中空糸束を、上記スリーブと芯棒によって保持された状態で上記ハウジングから取り出し、中空糸束を外部に露出させることが可能となり、中空糸に付着した培養細胞を容易に回収することができる。その結果、スリーブと芯棒によって保護され、中空糸束の形態安定性を維持した状態で中空糸束を取り出すことが可能となり、培養細胞の物理的損傷あるいは落下等による損失を回避することができる。
【0055】
スリーブとは、図2に示すように、ハウジング形状に応じた形状であり、両端部の一方を封止材および中空糸束と面一にし、もう一方側は、封止材を覆うことができる大きさに任意の長さに切り取ったものである。かかるスリーブの両端部において、中空糸束の両端は、封止材と共に糊付け固定され、一体に形成される。このように中空糸束は、スリーブによって保持される。かかるスリーブの外径は、出し入れが可能なよう上記ハウジングの内径より少し小さいものである。スリーブとハウジングの隙間は、O−リングあるいはガスケットといったパッキンを介して閉塞され、ECSが形成される。
【0056】
また、芯棒とは、図2に示すように、中空糸の間に挿入され、中空糸束両端とともに封止材を用いてスリーブに糊付け固定され、スリーブと一体に成形された中空糸束両端を固定するためのものである。そして、このように中空糸束は、芯棒によって保持される。かかる芯棒の材質としては、上記ハウジングの材質と同様のもの、あるいはステンレス等の金属といったものを挙げることができる。また、芯棒の位置および数は、中央部に1本としてもよく、中空糸束間に複数挿入することもできる。
【0057】
(2)上記ハウジング内に挿入され、中空糸束を格納するためのものであり、ハウジングと分離することができ、且つ、中空糸に付着した細胞を直接回収するための開口部を有する内部ハウジングを、上記ハウジング内にさらに有する態様である(図3、図4)。
【0058】
上記ハウジング(以下、本態様の説明において「外部ハウジング」とする)内に、上記内部ハウジングを挿入してキャップをすることによって、ルーメンおよびECSを容易に形成することができる。また、細胞培養後、キャップを取り外した後、培養細胞が付着した中空糸束を、上記内部ハウジングによって保護された状態で外部ハウジングから取り出すことができる。その結果、内部ハウジングの開口部を通して、中空糸束を外部に露出させることが可能となり、中空糸に付着した培養細胞を容易に回収することができる。さらに、細胞培養後、培養細胞が付着した中空糸束を、内部ハウジングで保護された状態で取り出すことができるため、培養細胞の物理的損傷、損失を一層抑制することができる。また、中空糸束が内部ハウジングに保護されているため、モジュール形成のためにハウジング内に収納する際、中空糸の損傷を回避することができる。そして、ECSの培養細胞を、塊としてほぼ全量確実にハウジング外に取り出すことができるため、簡便かつ確実に細胞を回収することが可能となる。
【0059】
上記内部ハウジングは、胴体側面部分に開口部を有するものであり、上記外部ハウジングと同様の形状であり、上記外部ハウジング内に挿入され、ルーメンおよびECSを形成できるものであればよい。
【0060】
上記内部ハウジングの長さは、ルーメンおよびECSを形成するため、上記外部ハウジングの長さと同一あるいは外部ハウジングより短いものである。上記内部ハウジングの材質としては、上記外部ハウジングと同様の材質が挙げられる。また、上記内部ハウジングの外径は、上記外部ハウジングの内径より少し小さく内部ハウジングの出し入れが可能なサイズであることが好ましい。上記内部ハウジングと外部ハウジングの隙間は、O−リングあるいはガスケットといったパッキンを介して閉塞される。
【0061】
上記内部ハウジングの側面開口部は、細胞を回収するためには広い程良いが、外部ハウジング内に中空糸束を出し入れする際に内部ハウジングの構造を十分に保持するために最低限の窓枠フレーム構造を残す必要がある。このような観点から、内部ハウジング側面表面積の1/2〜3/4とすることが好ましい。
【0062】
上記開口部の形状および数は、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定することができるが、操作性及び構造強度を考慮して、2面あるいは4面に分割して設けることが望ましい。
【0063】
また、上記内部ハウジングは、両端の封止材ブロックにフックが取り付けたものであることがより好ましい(図4)。内部ハウジングの取り出しが一層容易になるからである。当該フックの材質は、内部ハウジングを取り出す力に耐え得るものであれば、いかなる材質のものでもよい。また、大きさは、外部ハウジングの密閉を妨げることがなければ、いかなる大きさでもよい。また、封止材ブロックの一部に、引出し用カギ棒を引っ掛けられるような陥没口を設けることもできる。
【0064】
(3)上記ハウジングが、胴体部分に、中空糸に付着した細胞を直接回収するための開閉または取り外し可能な窓部分を有するものである態様である(図5)。
【0065】
すなわち、ハウジングの胴体部分の任意の位置に窓穴を開け、当該窓穴を塞ぐための窓部分を有するものである。窓部分を閉じる、または装着することによって、ルーメンおよびECSを容易に形成することができる。また、窓部分を開ける、または分離することによって、中空糸束を外部空間に容易に露出させることができる。その結果、細胞を取り出す際、中空糸束をハウジング内から移動させることがないため、中空糸に付着した培養細胞の物理的損傷あるいは落下等による損失を一層回避することができる。
【0066】
上記窓部分の材質は、特に限定されないが、例えば、上記ハウジングと同様の材質を挙げることができる。
【0067】
上記窓部分は、取り付け可能なものとして、例えば、ボルト、ネジ止め、フック、ベルトによる締め付け等により上記ハウジングに装着したものを挙げることができる。また、開閉可能なものとして、蝶番等を用いて上記ハウジングに装着したものを挙げることができる。
【0068】
上記窓部分の大きさは、細胞を回収することが可能であれば、いかなる大きさでもよく、特に限定されないが、ハウジングの構造強度及び密閉性を維持する上で、ハウジング側面表面積の1/2以下であることが好ましく、操作性の面からは1/5以上であることが好ましい。
【0069】
(4)上記ハウジングが、胴体部分の任意の位置で2つ以上に分離でき、中空糸束の少なくとも一部が外部に露出することができる構造を有するものである態様である(図6、図7)。
【0070】
上記ハウジングが、胴体部分の任意の位置で2つ以上に分割されたものを用い、この2つ以上のハウジングが、組み合わされ、固定されることによって、ルーメンおよびECSを形成する。また、細胞培養後、当該固定を解除することによって、ハウジングを2つ以上に分割し、中空糸束の一部を外部環境に露出させることができる。その結果、分割によって形成された空間部分から、各ハウジング内の中空糸に付着した培養細胞を回収することができる。また、中空糸束をハウジング内から移動させることがないため、中空糸に付着した培養細胞の物理的損傷あるいは落下等による損失を一層回避することができる。
【0071】
上記2つ以上のハウジングとしては、ハウジングの長さ方向と垂直に分割されたもの、あるいは、斜め方向に分割されたものを挙げることができる。尚、図6および図7には、2つに分割され、かつハウジング長さ方向に垂直に分割される態様を示した。
【0072】
上記2つ以上のハウジングを固定するための固定具は、当業者に公知ないかなる方法も用いることができ、特に限定されないが、例えば、クランプバンド(図6)、ユニオンナット(図7)等が挙げられる。また、両ハウジングがO−リング、サニタリーガスケット等のパッキンを介して固定されることが好ましい。より完全に密閉することができるからである。
【0073】
<中空糸モジュール>
本発明の中空糸モジュールは、上記中空糸束とハウジングから形成されるものであり、ECSにおいて細胞を培養するためのものである。
【0074】
上記中空糸束に対する、ECSの体積比率は、細胞の種類、培養細胞密度等必要に応じて適宜設定することができるが、1以上20以下が好ましい。1以上とすることにより、モジュール内に投入する細胞量を多くすることができ、細胞が増殖する空間も十分に供給することができる。また、20以下とすることにより、モジュール内の細胞への生育必須成分の供給不足を回避することが可能となる。最も好適に細胞培養を行うには、2以上6以下が好ましい。尚、上記体積比率における中空糸束の体積は、各中空糸のうち、モジュール内でECSと接触する部分の体積であり、中空糸断面外周によって形成される断面積(中空部分も含む)と中空糸長さの積の総和で表すことができる。
【0075】
このような体積比率となるよう、上記中空糸束の本数などを適宜設定することが好ましい。
【0076】
<細胞培養方法>
本発明の中空糸モジュールを用いた細胞培養法としては、当業者に公知な細胞培養法であればいかなる細胞培養法を用いることもでき、特に限定されるものではないが、生体組織細胞を立体的に培養し、再生医療に適用する観点から、三次元培養法が好ましい。
【0077】
三次元培養法としては、マイクロキャリア法、ゲル包埋法などが挙げられる。マイクロキャリア法は、ガラス、ゼラチン、セルロースなどでできたビーズに細胞を付着させて培養する方法である。また、ゲル包埋培養法は、コラーゲンあるいはアガロース中で細胞を三次元的に培養する方法である。
【0078】
これらの細胞培養法では、細胞とともにマイクロキャリアあるいはゲルを、上記細胞投入用導管から投入し、上述した培養液をルーメンに循環させることによって細胞を培養することができる。また、培養液循環速度、培地交換の有無、酸素添加方法といった培養条件は、細胞の種類、細胞濃度等に応じて適宜設定する。細胞培養後、上述したような方法で、培養細胞を回収することができる。
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0080】
実験例1
材質混合セルロースエステル、内径0.6mm、孔径0.1μmの中空糸束(Spectrum社製)、ポリカーボネート製の円筒形ハウジングおよび内部ハウジング、およびポリカーボネート製ねじ込み式キャップを用い、ウレタン樹脂を封止材として図3に示す中空糸モジュールを作成した。
【0081】
上記中空糸モジュールのルーメンに、5%FBS(Fetal Bovine Serum)、FGF−2(Fibroblast Growth Facter−2)、IGF−I(Insulin−like Growth Facter−I)、インスリン、トランスフェリン及びセレン酸等を含む軟骨細胞増殖培地(Bullet kit Chondrocyte Growth Medium、Cambrex社製)300mLを、培養液用導管を通して還流した。
【0082】
次に、軟骨細胞(ヒト耳介軟骨由来、20万細胞)を、0.3%ウシアテロペプチドコラーゲン10mL中に包埋し、細胞投入用導管を通してECSに添加した。添加後、導管を密封し、培養した。
【0083】
培養は、37℃に設定した恒温槽中で行い、培養液のpHを7、酸素分圧を20%に保持して行った。
【0084】
6週間後、細胞投入用導管からコラゲナーゼを添加し、中空糸への付着力を弱めるためのコラゲナーゼ処理を行った。処理後、モジュールのキャップを外し、内部ハウジングを取り出し、開口部から、中空糸に付着した培養細胞を掻き取って回収した。回収後、モジュール内に残存する細胞はほとんど認められなかった。
【0085】
実験例2
実験例1と同様の中空糸束を用い、予め中空糸束がハウジングと一体成形された、図1に示すような従来型の中空糸モジュール(CellMax、Spectrum社製)を用い、実験例1と同様の条件で細胞培養を行った。
【0086】
6週間培養後、細胞投入用導管からコラゲナーゼを添加し、コラゲナーゼ処理を行い、細胞投入用導管から、遊離細胞の回収を試みたがあまり回収できなかった。その後、ハウジング胴体をハンマーで叩いて破壊し、破壊部分からの掻き取りにより培養細胞の回収を試みた。しかし、細胞を回収し易い形でのハウジング破壊は困難であり、モジュール内には培養細胞の残存が認められた。また、破壊操作によりハウジング破片が残存細胞に混入した。その後、残存培養細胞に対し、トリプシン処理を行い、培養細胞の付着力をさらに弱めて回収を試みたが、残存細胞の回収はほとんどできなかった。
【0087】
評価例
上記実験例1および2で回収した培養細胞の細胞数を測定した結果を図8に示す。併せて培養開始時の細胞数を点線で示す。
【0088】
図8より、従来のモジュールを用いた実験例2では、回収後の細胞数が約150万であったのに対し、本発明のモジュールを用いた実験例1では、細胞数は220万と有意に多く、本願発明のモジュールの方が、有意に回収率が高いことがわかった。
【0089】
また、実際には、モジュールから回収された培養細胞のみが有用な細胞として利用可能であることを考慮すれば、培養前に対する培養後の細胞数は、実質的には細胞培養系全体の増殖率と考えることができる。上記実験例より、培養開始時の細胞数20万に対する増殖率は、実験例2では約7倍であったのに対し、本発明の実験例1では約11倍であった。よって、本発明の中空糸モジュールを用いた方が、実質的な細胞増殖率は有意に高いことがわかった。
【0090】
以上のように、本発明の中空糸モジュールは、従来の中空糸モジュールより培養細胞の回収率が有意に高いことから、細胞培養系全体としての実質的な細胞増殖率も有意に高い。従って、本発明の細胞培養用中空糸モジュールを用いた細胞培養方法によって、再生医療で必要とされる種々体内組織の基質として有用な細胞を、従来と比較してより効率的に培養できることが確認された。
【符号の説明】
【0091】
1 中空糸
2 ハウジング
3 封止材
4 キャップ
5 培養液用導管
6 細胞投入用導管
7 O−リング
8 芯棒
9 スリーブ
10 内部ハウジング
11 開口部
12 フック
13 窓部分
14 ボルト
15 クランプバンド
16 ユニオンナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養するための中空糸モジュールであって、
半透膜機能を有する材料からなり、中空糸内部空間に培養液を循環させることにより中空糸外部空間(以下、「ECS」という)に存在する細胞に生育必須成分を供給するための中空糸束と、
中空糸束を格納するためのハウジングとを有し、且つ、
ハウジングが、胴体部分の任意の位置で2つ以上に分離できるものであるとともに、培養細胞の回収のために中空糸束の少なくとも一部が外部に露出できる構造であることを特徴とする細胞培養用中空糸モジュール。
【請求項2】
ハウジング内に挿入されるスリーブと芯棒を有し、
当該スリーブは、中空糸束を覆うことにより中空糸束を保持するためのものであり、
当該芯棒は、中空糸束と共に両端部がスリーブ内に固定されることにより中空糸束を保持するためのものである請求項1に記載の細胞培養用中空糸モジュール。
【請求項3】
ハウジング内に挿入され、中空糸束を格納するためのものであり、ハウジングと分離することができ、且つ、中空糸に付着した細胞を直接回収するための開口部を有する内部ハウジングを、上記ハウジング内にさらに有する請求項1または2に記載の細胞培養用中空糸モジュール。
【請求項4】
中空糸束に対するECSの体積比率が、1以上20以下である請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養用中空糸モジュール。
【請求項5】
上記中空糸が、再生セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルあるいはポリカーボネートよりなる群から選択される1種、または2種以上の混合物からなる請求項1〜4のいずれかに記載の細胞培養用中空糸モジュール。
【請求項6】
上記中空糸が、表面を親水化処理されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の細胞培養用中空糸モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の細胞培養用中空糸モジュールを使用して細胞を培養した後に、ハウジングを2つ以上に分離し、培養細胞の回収のために中空糸束の少なくとも一部を外部に露出し、中空糸に付着した細胞を直接回収することを特徴とする細胞培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−62216(P2011−62216A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−721(P2011−721)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【分割の表示】特願2005−176438(P2005−176438)の分割
【原出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(505227043)野村ユニソン株式会社 (25)
【出願人】(591101490)エイブル株式会社 (21)
【Fターム(参考)】