説明

細胞毒化合物および単離法

本発明は、シノイカム(Synoicum)種の被嚢類に由来する化合物群、ならびにこれらの化合物を含む薬学的組成物、およびそれらの使用に関する。被嚢類からの抽出物は、NCI 60細胞株パネル中のいくつかの異なる癌細胞株に対し選択毒性を示す。これらの化合物は、癌、特に悪性メラノーマ、結腸癌、および腎癌細胞株の効果的治療に有用である。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、表、図表または図面を含むその全体が本明細書に参照として組入れられている、2005年9月16日に出願された、米国特許仮出願第60/717,598号の恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は、米国国立科学財団の支援の基で、グラント番号OPP-9901076およびOPP-0125152で開発されたものであり;従って米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
現代医学の最大の尽力の一つは、癌のような、細胞増殖性障害を制御または根絶することである。特定の癌に対する新規の生物学的活性化合物、およびこれらの化合物を産生する生物を探すために、かなりの研究が行われている。例えば、ある種の海洋性軟質サンゴは、生物学的活性のある細胞毒の給源であることが示されている。同じく海綿由来の化合物も、ヒトのリポキシゲナーゼが媒介した状態に対し有効であることが証明されている(米国特許第6,750,247号(特許文献1)を参照のこと)。
【0004】
被嚢類は、生体活性のある天然産物の重要な供給源であることが証明されている。とりわけ癌治療として有利である海洋性天然産物の中で、エクテイナシジンおよびジデムニンは、被嚢類に由来し、ならびにユーディストシンは強力な抗ウイルス活性を有する。本発明者らは、南極地方の海洋無脊椎動物の間で現在進行中の生体活性の研究の一部として、被嚢類シノイカム・アダレアナム(Synoicum adareanum)を研究する機会を得た。
【0005】
S.アダレアナムは、南極半島のアンベルス島(南緯64度46分、西経64度03分)周囲の水深15〜796mの浅瀬によく見られる極付近の被嚢類である。S.アダレアナムのコロニーは、皺がありかつ革のように堅く頭部よりもわずかに細い下部の柄(bottom stalk)を伴う、大きい丸形のまたは棒(club)状の頭部からなる。S.アダレアナムコロニーは、高さ18cm、直径12cmまでなることができる。S.アダレアナムコロニーは、1個の頭部を含むことができるか、または最大6個の頭部が1個の柄から生じることができる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,750,247号
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、パルメロリド(Palmerolide)A、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、および/またはパルメロリドKを含有する、S.アダレアナムからの抽出物、ならびにそれらの使用に関する。本発明の化合物は、フィールドベースの摂食抑制(field-based feeding-deterrent)アッセイにおいて、生体活性を示す。新規の単離されたポリケチドである、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKを、S.アダレアナムの抽出物由来の主要な天然産物として示す。これらのポリケチドは、米国立癌研究所(NCI)60細胞株パネルにおいて、選択的細胞傷害性を示し、とりわけメラノーマ(UACC-64、LC50 0.018μM)を、他の被験細胞株に比べ3桁より大きい感度で阻害する。
【0008】
本発明は、シノイカム種の抽出物から得られた少なくとも1種の単離された化合物の治療的有効量を対象へ投与することを含む、癌を有する対象の治療法にも関する。一つの態様において、シノイカム種は、S.アダレアナムであり、および単離された化合物は、パルメロリドである。特定の態様において、パルメロリドは、パルメロリドA1、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKから選択される。
【0009】
発明の詳細な開示
本発明は、本明細書においてパルメロリドと称される化合物を含有するS.アダレアナムからの抽出物、ならびにそれらの使用に関する。本明細書において具体的に例示されたパルメロリドは、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKを含む。本発明の化合物は、フィールドベースの摂食抑制アッセイにおいて、生体活性を示す。本化合物は、米国立癌研究所(NCI)60細胞株パネルにおいて、選択的細胞傷害性を示し、とりわけメラノーマ細胞株を阻害する。
【0010】
本発明の化合物は、式(I)に示された化学構造を有する化合物、および、それらの異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは結晶型を含む:

式中、

R1は、カルボキシアルデヒド、-CHCHNHC(O)-アルキル、-OC-アルキル、-OC-アリール、-OC-アミノ、アリール、アミノ、-ビニルアミド、アリールアミド、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、または-CHOであり、そのいずれも、H、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、または-CH3により置換されてもよく;
R2は、独立して、OH、O-アシル、カルバメート、H、O-アルキル、アミノ、-OSO3H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、および/またはオキソであり;
R3は、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル; アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよく;
R4は、独立して、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよい。
【0011】
一つの態様において、少なくとも1個のR2は、-OC(NH2)Oである。
【0012】
一つの態様において、R3は、メチルである。
【0013】
一つの態様において、少なくとも1個のR4は、メチルである。更なる態様において、両方のR4は、メチルである。
【0014】
一つの態様において、R1は、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)2である。
【0015】
一つの態様において、R1は、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)CH2C(CH3)CH2である。
【0016】
一つの態様において、R1は、-CHCH-NHC(O)CH2C(CH3)CH2である。
【0017】
一つの態様において、R1は、-CH=Oである。
【0018】
一つの態様において、少なくとも1個のR2は、-OHである。
【0019】
一つの態様において、少なくとも1個のR2は、-OSO3Hである。
【0020】
一つの態様において、少なくとも2個のR2は、-OHであり、および少なくとも1個のR2は、-OC(NH2)Oであり、ならびにR3およびR4は、任意で-CH3である。
【0021】
本発明の化合物は、式(II)に示された化学構造を有する化合物、および、それらの異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは結晶型を含む:

式中、

R1は、カルボキシアルデヒド、-CHCHNHC(O)-アルキル、-OC-アルキル、-OC-アリール、-OC-アミノ、アリール、アミノ、-ビニルアミド、アリールアミド、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、または-CHOであり、そのいずれも、H、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、または-CH3により置換されてもよく;
R2は、独立して、OH、O-アシル、カルバメート、H、O-アルキル、アミノ、-OSO3H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、および/またはオキソであり;
R3は、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよく;
R4は、独立して、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよい。
【0022】
一つの態様において、少なくとも1個のR2は、-OC(NH2)Oである。
【0023】
一つの態様において、R3は、メチルである。
【0024】
一つの態様において、少なくとも1個のR4は、メチルである。更なる態様において、両方のR4は、メチルである。
【0025】
一つの態様において、R1は、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)2である。
【0026】
一つの態様において、R1は、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)CH2C(CH3)CH2である。
【0027】
一つの態様において、R1は、-CHCH-NHC(O)CH2C(CH3)CH2である。
【0028】
一つの態様において、R1は、-CH=Oである。
【0029】
一つの態様において、少なくとも1個のR2は、-OHである。
【0030】
一つの態様において、少なくとも1個のR2は、-OSO3Hである。
【0031】
一つの態様において、少なくとも2個のR2は、-OHであり、および少なくとも1個のR2は、-OC(NH2)Oであり、ならびにR3およびR4は、任意で-CH3である。
【0032】
一つの態様において、式(III)の単離されたパルメロリドA化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)が提供される:

【0033】
更に別の態様において、本発明は、式(IV)の単離されたパルメロリドC化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)を提供する:

【0034】
追加の態様において、本発明は、式(V)の単離されたパルメロリドD化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)を提供する:

【0035】
本発明は、式VIの単離されたパルメロリドE化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)も提供する:

【0036】
本発明は、式(VII)の単離されたパルメロリドB化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)も提供する:

【0037】
本発明は、式(VIII)の単離されたパルメロリドF化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)も提供する:

【0038】
本発明は、式(IX)の単離されたパルメロリドG化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)も提供する:

【0039】
本発明は、式(X)の単離されたパルメロリドH化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)も提供する:

【0040】
本発明は、式(XI)の単離されたパルメロリドK化合物を含む組成物(またはその異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型)も提供する:

【0041】
本発明の好ましい態様において、新規化合物は、実質的に純粋である。確立された分析法により測定された化合物を少なくとも95%含有することが理想的であり、所望の化合物を少なくとも90%含有することが容認され、化合物を少なくとも75%含有することが許容される。
【0042】
組成物の総質量をベースに約0.01質量%〜60質量%、好ましくは0.1質量%〜50質量%、およびより好ましくは1質量%〜35質量%の間の本発明の新規化合物の一つまたはそのような化合物の2種以上の混合物、ならびに1種または複数の薬学的に許容される担体または希釈剤の新規薬学的組成物も、本発明の発見により提供される。
【0043】
当業者は、本明細書に開示されたパルメロリド化合物は、いくつかの互変異性体型で存在することができることを認めると考えられる。そのような互変異性体型は全て、本発明の一部と見なされる。
【0044】
本明細書において使用されるアルキルは、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の、飽和または一価もしくは多価不飽和の炭化水素基を意味し、ならびにC1-Xアルキルは、1個から最大X個の炭素原子を含む、直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味し、アルキル、アルケニル、およびアルキニルを含む。例えば、C1-6アルキルは、1個から最大6個の炭素原子を含む、直鎖または分枝鎖のアルキル基を意味する。アルコキシは、アルキル基が先に説明されている通りである、アルキル-O-基を意味する。シクロアルキルは、約3〜約10個の炭素原子の、縮合環およびスピロ環を含む、非芳香族単環式または多環式の環系を意味する。環式アルキルは、任意に部分的に不飽和であってよい。シクロアルコキシは、シクロアルキルが本明細書において規定されている通りである、シクロアルキル-O-基を意味する。アリールは、約6〜約14個の炭素原子を含む、縮合環およびスピロ環を含む、芳香族単環式または多環式炭素環系を意味する。アリールオキシは、アリール基が本明細書において説明されている通りである、アリール-O-基を意味する。アルキルカルボニルは、Rが先に説明されたアルキル基である、RC(O)-基を意味する。アルコキシカルボニルは、Rが先に説明されたアルキル基である、ROC(O)-基を意味する。シクロアルキルカルボニルは、Rが先に説明されたシクロアルキル基である、RC(O)-基を意味する。シクロアルコキシカルボニルは、Rが先に説明されたシクロアルキル基である、ROC(O)-基を意味する。
【0045】
ヘテロアルキルは、窒素およびイオウ原子が任意に酸化されてもよい、すなわちN-酸化物またはS-酸化物の形であってよい、1〜20個の炭素原子、および窒素、酸素、またはイオウから選択された1個または複数のヘテロ原子を有する、直鎖または分枝鎖を意味する。ヘテロシクロアルキルは、環系内の1個または複数の元素は、炭素以外の元素であり、かつ窒素、酸素、ケイ素、またはイオウ原子から選択される、約5〜約10個の元素の、縮合環およびスピロ環を含む、単環式または多環式の環系(飽和または部分的に不飽和であり得る)を意味する。ヘテロアリールは、環系内の1個または複数の元素は、炭素以外の元素であり、かつ窒素、酸素、ケイ素、またはイオウ原子から選択され、およびN原子は、N-酸化物の形であってよい、縮合環およびスピロ環を含む、5〜約14員の芳香族単環式または多環式炭化水素環系を意味する。アリールカルボニルは、アリール基が本明細書において説明されている通りである、アリール-CO-基を意味する。ヘテロアリールカルボニルは、ヘテロアリール基が本明細書に説明されている通りである、ヘテロアリール-CO-基を意味し、ならびにヘテロシクロアルキルカルボニルは、ヘテロシクロアルキル基が本明細書に説明されている通りである、ヘテロシクロアルキル-CO-基を意味する。アリールオキシカルボニルは、Rが先に説明されたアリール基である、ROC(O)-基を意味する。ヘテロアリールオキシカルボニルは、Rが先に説明されたヘテロアリール基である、ROC(O)-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシは、ヘテロシクロアルキル基が先に説明されている通りである、ヘテロシクロアルキル-O-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシカルボニルは、Rが先に説明されたヘテロシクロアルキル基である、ROC(O)-基を意味する。
【0046】
飽和アルキル基の例は、メチル、エチル、N-プロピル、イソプロピル、N-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、N-ペンチル、N-ヘキシル、N-ヘプチル、およびN-オクチルを含むが、これらに限定されるものではない。不飽和アルキル基は、1個または複数の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、ビニル、2-プロピニル、2-イソペンテニル、2-ブタジエニル、エチニル、1-プロピニル、3-プロピニル、および3-ブチニルを含む。シクロアルキル基は、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、およびシクロヘプチルを含む。ヘテロシクロアルキル基は、例えば、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、3-モルホリニル、4-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、および1,4-ジアザビシクロオクタンを含む。アリール基は、例えば、フェニル、インデニル、ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントラセニル、およびフェナントラセニルを含む。ヘテロアリール基は、例えば、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾキノリニル、カルバゾリル、およびジアザフェナントレニルを含む。
【0047】
本明細書において使用されるハロゲンは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)の元素を意味する。
【0048】
本明細書において使用されるオキソは、炭素または他の元素へ二重結合されている酸素原子、=0を含む化合物を意味する。この用語は、アルデヒド、カルボン酸、ケトン、スルホン酸、アミド、およびエステルを包含している。
【0049】
本発明は、1個または複数の容器内に、本発明の化合物または組成物を含む、キットにも関する。特定の態様において、本発明のキットは、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKの1種または複数を含む。一つの態様において、キットは、希釈剤のような、薬学的に許容される担体を更に含む。別の態様において、キットは、抗腫瘍化合物または抗癌化合物を更に含む。
【0050】
本発明は、液胞型アデノシン三リン酸分解(V-ATPase)酵素を阻害する方法であって、V-ATPaseの活性を阻害または機能を遮断するのに十分である有効量の本発明の化合物または組成物とV-ATPaseを接触させるかまたは曝露する段階を含む方法にも関する。一つの態様において、この化合物または組成物は、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKから選択された、1種または複数のパルメロリドを含む。
【0051】
本発明は、癌細胞を阻害または殺傷する方法であって、有効量の本発明の化合物または組成物と細胞を接触させる段階を含む方法にも関する。一つの態様において、この化合物または組成物は、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKから選択された、1種または複数のパルメロリドを含む。本発明に従い阻害または殺傷され得る癌細胞の種類は、骨、乳房、腎臓、口腔、喉頭、食道、胃、精巣、子宮頸部、頭部、頸部、結腸、卵巣、肺、膀胱、皮膚(例えばメラノーマ)、肝臓、筋肉、膵臓、前立腺、血液細胞(リンパ球を含む)、および脳の癌および/または腫瘍細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明は、V-ATPase酵素の異常な発現または過剰発現に関連した状態を治療する方法であって、有効量の本発明の化合物または組成物を、前記状態を有し、治療を必要とするヒトまたは動物へ投与する段階を含む方法にも関する。本発明に従い治療され得る状態は、癌のような、細胞増殖障害;糖尿病;膵炎;および、骨粗鬆症を含むが、これらに限定されるものではない。一つの態様において、化合物または組成物は、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKから選択された、1種または複数のパルメロリドを含む。
【0053】
本発明は、癌または腫瘍学的障害を有するヒトまたは動物を治療する方法も提供する。一つの態様において、方法は、シノイカム種の抽出物から得られた少なくとも1種の単離された化合物の治療的有効量を、ヒトまたは動物へ投与する段階を含む。動物は、腫瘍学的障害を有する、霊長類(サル、チンパンジー、類人猿など)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマなどの哺乳動物、または他の動物を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の方法は、癌または腫瘍学的障害であるかまたはそれらの治療が必要であるヒトまたは動物を確定することを任意に含むことができる。一つの態様において、シノイカム種はS.アダレアナムであり、および単離された化合物はパルメロリドである。特定の態様において、パルメロリドは、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、およびパルメロリドKから選択される。本発明に従い治療することができる癌の種類は、骨、乳房、腎臓、口腔、喉頭、食道、胃、精巣、子宮頸部、頭部、頸部、結腸、卵巣、肺、膀胱、皮膚(例えばメラノーマ)、肝臓、筋肉、膵臓、前立腺、血液細胞(リンパ球を含む)、および脳の癌および/または腫瘍を含むが、これらに限定されるものではない。腫瘍学的障害の治療に関して、本発明の化合物および組成物は、他の抗腫瘍物質もしくは抗癌物質と、または放射線療法および/もしくは光力学療法と、または腫瘍を摘出するための手術治療と組合せて、治療が必要である患者へ投与することができる。これらの他の物質または放射線治療は、本発明の化合物または組成物と同時または異なる時点で施与されてよい。例えば本発明の化合物または組成物は、タキソールまたはビンブラスチンなどの有糸分裂阻害剤、シクロホスアミドまたはイホスファミドなどのアルキル化剤、5-フルオロウラシルまたはヒドロキシ尿素などの代謝拮抗薬、アドリアマイシンまたはブレオマイシンなどのDNAインターカレート剤、エトポシドまたはカンプトテシンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、アンジオスタチンなどの血管新生阻害剤、タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤、および/または例えばそれぞれ、GLEEVEC(Novartis Pharmaceuticals Corporation)およびHERCEPTIN(Genentech、Inc.)のような、その他の抗癌薬もしくは抗体と組合せて使用することができる。
【0054】
本発明は、本発明の化合物を単離および精製する方法にも関する。一つの態様において、この方法は、シノイカム被嚢類を溶媒抽出に供する段階;該溶媒を除去し、抽出物を提供する段階;および、パルメロリドを単離するために、該抽出物を分画する段階を含む。
【0055】
本発明は、本発明の化合物を合成する方法にも関する。
【0056】
「薬学的に許容される担体」とは、薬学的組成物における使用に適している、好ましくは無毒の、任意の担体、希釈剤、賦形剤、湿潤剤、緩衝剤、懸濁化剤、滑沢剤、アジュバント、媒体、送達系、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香味料、または甘味料を意味する。
【0057】
「薬学的に許容される同等物」とは、薬学的に許容される塩または結晶型、水和物、代謝産物、プロドラッグ、および同配体を含むが、これらに限定されるものではない。多くの薬学的に許容される同等物が、本発明の化合物と同じまたは同様のインビトロまたはインビボ活性を有することが予想される。
【0058】
「薬学的に許容される塩または結晶型」とは、所望の薬理学的活性を有しかつ生物学的にもその他にも望ましくなくはない、本発明の化合物の塩を意味する。この塩は、非限定的に、酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、亜硫酸、酪酸、クエン酸、樟脳酸、カンファースルホン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、ヘミ硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、シュウ酸、チオシアン酸、トシル酸、およびウンデカン酸を含む酸により形成することができる。塩基塩の例は、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチル-D-グルカミンなどの有機塩基との塩、ならびにアルギニンおよびリシンなどのアミノ酸との塩を含む。塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物のような、低級ハロゲン化アルキル;ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸塩のような、ジアルキル硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物のような、長鎖ハロゲン化物;ならびに、ベンジルおよびフェネチルの臭化物などの、ハロゲン化アラルキルを含む物質により、4級化することができる。
【0059】
「プロドラッグ」は、薬理学的作用を発揮する前に、代謝などにより、生体内変化を受ける、本発明の化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、改善された化学安定性、改善された患者の受容および服薬遵守、改善された生体利用性、延長された作用持続期間、改善された臓器選択性、改善された製剤(例えば、増大された水溶解性)、ならびに/または軽減された副作用(例えば毒性)を目的として処方される。プロドラッグは、「Burger's Medicinal Chemistry and Drug Chemistry」(第5版、第1巻、172-178頁、949-982頁(1995))に説明されている方法のような、当該技術分野において公知の方法を使用し、本発明の化合物から容易に調製することができる。
【0060】
本明細書において使用される「パルメロリド」は、カーボネートおよびアミド官能性を有する、多員マクロ環状ポリケチドを意味する。一つの態様において、パルメロリドは、南極半島のパルマー・ステーション(Palmer Station)近郊から収集された、被嚢類シノイカム・アダレアナムから単離された。
【0061】
本明細書において使用される「ポリケチド」は、アセチル補酵素Aの反復縮合に由来する、カルボニル基およびメチレン基を交互に含む(「β-ポリケトン」)任意の天然の化合物を意味する。
【0062】
本明細書において使用される「マクロ環」は、様々な点で結合された様々な半化合物(semi-compound)で、円形に配置された巨大分子を意味する。亜分子(sub-molecule)の結合点および性質が、それを含む化合物の性質および生理学的作用を決定する。
【0063】
本明細書において使用される「マクロライド」は、大環状ラクトンを構成する分子により特徴付けられる抗生物質のクラスを意味する。
【0064】
本明細書において使用される「オレフィン」は、「アルケン」と同義であり、1個または複数の二重結合を含む非環式炭化水素を意味する。
【0065】
本明細書において使用される「臨床反応」は、本明細書に開示された新規化合物による治療に対する、メラノーマ、結腸癌、および腎癌などの、細胞増殖障害の反応である。療法に対する反応を決定する基準は、広範に受け入れられており、かつ有効な代替療法の比較が可能である(SlapakおよびKufe、「Harrison's Principles of Internal Medicine」第13版、Isselbacherら編、McGraw-Hill、Inc. 1994中の「Principles of Cancer Therapy」を参照のこと)。完全反応(または完全寛解)は、全ての検出可能な悪性疾患の消失である。部分反応は、1個または複数の病巣の最大垂直直径の積のおよそ50%の減少である。いずれかの病巣のサイズの増大または新規病巣の出現は存在し得ない。進行疾患は、一つの病巣もしくは腫瘍の最大垂直直径の積の少なくともおよそ25%の増加または新規病巣もしくは腫瘍の出現を意味する。治療に対する反応は、対象が療法を完了した後に評価される。
【0066】
本発明の「薬学的組成物」は、その意図された投与経路と適合可能であるように製剤化される。投与経路の例は、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、口腔内または鼻腔内(例えば吸入)、経皮(局所的)、経粘膜、および経直腸投与を含む。非経口、皮内、または皮下適用に使用される液剤または懸濁剤は、以下の成分を含有することができる:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒など;抗菌薬、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩など;ならびに、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性調節物質。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような、酸または塩基により調節することができる。非経口調剤品は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザルシリンジ、または複数回投与用バイアル中に封入することができる。
【0067】
注射用途に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性である場合)もしくは分散液、および無菌の注射用溶液もしくは分散液の即時調製のための無菌の散剤を含む。静脈内投与に関して、好適な担体は、生理食塩水、静菌水、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、この組成物は、無菌でなければならず、および容易に注射可能である程度に流動性であることが望ましい。これは、製造および貯蔵の条件下で安定していなければならず、ならびに細菌および真菌のような微生物の混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。好適な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合必要な粒度の維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌薬および抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより実現することができる。多くの場合において、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、マンニトールもしくはソルビトールなどのポリアルコール、および/または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続性の吸収は、組成物中に、例えばアルミニウムモノステアレートおよびゼラチンのような吸収を遅延する物質を含有することにより、もたらすことができる。
【0068】
無菌の注射用液剤は、必要に応じ、先に列記された構成成分の一つまたは組合せと共に、必要量の適当な溶媒中に活性化合物を混入し、それに続けて濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散剤は、活性化合物の、基本的分散媒および先に列記されたもので必要な他の構成成分を含有する無菌媒体への混入により調製される。無菌注射用液剤の調製のための無菌散剤の場合、調製の好ましい方法は、事前に滅菌-濾過されたそれらの溶液から、活性構成成分に加え任意の追加の所望の構成成分の粉末を生じる、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0069】
経口組成物は、一般に不活性希釈剤または可食担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル内に封入されるか、または錠剤へ圧縮される。経口治療投与を目的として、活性化合物は、賦形剤と共に混入され、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形で使用され得る。経口組成物は、含嗽剤として使用される流体担体を用いて調製することもでき、ここで流体担体中の化合物は、経口的に適用され、および含嗽され、喀出または嚥下される。薬学的に適合性のある結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含有することができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の構成成分、または同様の性質の化合物のいずれかを含有することができる:結合剤、例えば微晶質セルロース、トラガントガムまたはゼラチンなど;賦形剤、例えばデンプンまたは乳糖など;分散剤、例えばアルギン酸、プリモゲル、またはトウモロコシデンプンなど;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなど;流動促進剤(glidant)、例えばコロイド状二酸化ケイ素など;甘味剤、例えばショ糖またはサッカリンなど;もしくは、香味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料など。吸入による投与のためには、これらの化合物は、好適な噴射剤、例えば二酸化炭素のような気体を含む加圧容器もしくはディスペンサーからのエアロゾルスプレーの形で、またはネブライザーで送達される。
【0070】
全身投与は、経粘膜手段または経皮手段によることもできる。経粘膜投与または経皮投与に関して、透過されるべき障壁に適した浸透剤が、製剤中で使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野において一般に公知であり、ならびに経粘膜投与のために、例えば界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤の使用により実現することができる。経皮投与に関して、活性化合物は、当該技術分野において一般に公知のように、軟膏剤、サルバ、ゲル剤、またはクリーム剤に製剤化される。これらの化合物は、経直腸送達のための坐剤(例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような、通常の坐剤用基剤)または停留浣腸剤の形で調製することもできる。
【0071】
一つの態様において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル封入された送達系などの放出制御製剤のような、生体からの迅速な排泄に対し化合物を保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを、使用することができる。そのような製剤の調製法は、当業者には明らかであると考えられる。これらの物質は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals、Inc.から商業的に得ることもできる。リポソーム懸濁剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞へ標的化されたリポソームを含有)も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従い調製することができる。
【0072】
本発明の化合物および組成物は、細胞との直接接触または担体手段を介してのいずれかにより、細胞へ送達することができる。組成物を細胞へ送達するための担体手段は、当該技術分野において公知であり、かつ例えば、化合物または組成物のリポソーム部分内封入を含む。本発明の化合物の細胞への送達の別の手段は、この化合物の、標的細胞への送達のために標的化されたタンパク質または核酸への接着を含む。米国特許第6,960,648号および米国特許出願公開第20030032594号は、別の化合物へ結合させることができ、ならびにその化合物を生体膜を超えて移行することができるアミノ酸配列を開示している。米国特許出願公開第20020035243号も、細胞内送達のために、細胞膜を超えて生物学的成分を輸送するための組成物を開示している。化合物および組成物は、ポリマーへ混入することもでき、その例は、頭蓋内腫瘍のためのポリ(D-Lラクチド-コ-グリコリド)ポリマー;モル比20:80のポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン:セバシン酸](GLIADEL中で使用される);コンドロイチン;キチン;および、キトサンを含む。
【0073】
本発明の化合物は、立体異性体を生じることができる、1個または複数の非対称に置換された炭素原子を含んでよいことは、当業者には明らかであると考えられる。エナンチオマー、およびジアステレオ異性体ならびにそれらのラセミ混合物を含む混合物を含む、そのような立体異性体の全ては、本発明の範囲内であることが企図されている。
【0074】
「治療的有効量」は、インビボにおいて対応する化合物の治療的有効量を提供するために必要な、パルメロリドA、B、C、D、E、F、G、H、およびK、またはそれらの任意の組合せを含む、本発明のパルメロリドの量である。この化合物の量は、細胞増殖性疾患または他の適応症の、全面的な予防(例えば、防御および完全な治癒)および改善された生存率もしくはより迅速な回復、または関連した症状の改善もしくは排除を含むが、これらに限定されるものではない反応が当業者により適当な尺度として選択された場合に、それを実現するために有効でなければならない。本発明に従い、好適な単回量のサイズは、好適な期間にわたり1回または複数回投与された場合に、患者において症状を予防または緩和(軽減または排除)することが可能である投与量である。当業者は、哺乳動物のサイズおよび投与経路を基に、全身投与のための適当な単回量のサイズを容易に決定することができる。
【0075】
実施例1−予備インビボ試験のための中空線維アッセイ
開発中治療法プログラムの生物試験部門(The Biological Testing Branch of the Developmental Therapeutics Program)は、大規模インビトロ細胞スクリーニングにより同定された化合物の可能性のある抗癌活性の評価のための、予備インビボスクリーニングツールを採用している。この中空線維ベースのアッセイは、1995年6月から使用されている(http://dtp.nci.nih.gov/branches/btb/hfa.html)。
【0076】
各化合物は、NCI-H23、NCI-H522、MDA-MB-231、MDA-MB-435、SW-620 COLO 205、LOX IMVI、UACC-62、OVCAR-3、OVCAR 5、U251およびSF-295を含む、12種のヒト腫瘍細胞株の標準パネルに対し試験される。これらの細胞株は、10%FBSおよび2mMグルタミンを含有するRPMI-1640において培養した。中空線維調製の前日に、細胞に、新鮮培地を補充し、対数相の増殖を維持した。線維調製に関して、細胞を、標準トリプシン処理技術により収集し、所望の細胞密度(2〜10×106個細胞/mlの間で細胞株により変動)に再浮遊させた。この細胞浮遊液を、500,000Daの分子量で排除する内径1mmのポリビニリデン中空線維にフラッシュした。この中空線維を、2cm間隔でヒート-シールし、これらのシールから作製した試料を、組織培養培地に配置し、5%CO2中、37℃で24〜48時間インキュベーションし、その後移植した。各マウスは、3個の腹腔内インプラント(各腫瘍株に1個)および3個の皮下インプラント(各腫瘍株に1個)を受け取るように、合計3種の異なる腫瘍株を、各実験用に調製した。
【0077】
移植日に、各腫瘍細胞株の試料を、ゼロ時点(0)の細胞塊を知るために、安定したエンドポイントMTTアッセイにより、生存細胞塊について定量した。こうして、被験化合物の細胞増殖抑制能および殺細胞能を評価することができる。マウスの実験物質による処置を、線維移植後3または4日目に開始し、合計4投与量で1日1回継続する。各物質は、3匹マウス/投与量/実験で、2つの投与量レベルでの腹腔内注射により評価した。媒体対照は、化合物希釈剤のみを受け取る6匹のマウスからなる。これらの線維を、4回目の化合物処置の翌日にマウスから収集し、安定したエンドポイントMTTアッセイに供した。各試料の光学密度を、分光光度計により540nmで決定し、各処置群の平均を計算した。各処置群の正味の細胞増殖率を計算し、媒体処置群の正味の細胞増殖率と比較した。各化合物は、合計4実験(3細胞株/実験×4実験=12細胞株)で評価した。
【0078】
いくつかの中空線維アッセイ基準を基に、化合物を更なる試験(例えば、時間/投与量曝露試験、予備薬理学試験、皮下異種移植片効果試験)のために選択した。これらは、(1)48種の可能性のある試験組合せ(12細胞株×2部位×2化合物投与量)中10種における、50%以上の正味の細胞増殖の低下;(2)24種の個別の部位の組合せ(腹腔内薬物/皮下培養物)中最低4種における、50%以上の正味の細胞増殖の低下;および/または、(3)いずれかの移植部位での1種以上の細胞株の細胞殺傷 (実験開始時に存在するレベルを下回る生存可能な細胞塊の低下)を含む。
【0079】
評価を簡略化するために、所定の化合物の活性の迅速な検分を可能にするポイントシステムを採用した。このために、数値2を、生存可能な細胞塊の50%以上の低下を生じる各化合物投与量に割り当てる。基準(1)および(2)を評価することができるように、腹腔内試料および皮下試料を、個別にスコア化した。IP+SCスコア合わせて20、SCスコア8、または1種もしくは複数の細胞株の正味の細胞殺傷を伴う化合物については、更なる試験を検討することができる。物質に関する可能なスコアの最大値は、96である(12細胞株×2部位×2投与量レベル×2[スコア])。これらの基準は、中空線維アッセイおよび異種移植片試験において、無作為に選択された化合物の>80の活性結果を比較することにより、統計学的にバリデートされた。この比較は、最初のインビボスクリーニング道具として中空線維アッセイが使用される場合、異種移植片活性化合物の喪失の可能性は非常に低いことを示した。中空線維アッセイのデザインのために、このアッセイの統計学的検定力は、細胞の全パネルに対する化合物の影響を基にしているので、個々の細胞株の結果は、報告されなかった。中空線維の結果の他に、他の因子(例えば、独自の構造、作用機序など)が、化合物がこれらの中空線維アッセイ基準に合致しない場合にも、化合物を更なる試験に委ねさせ得る。
【0080】
実施例II−パルメロリド単離
S.アダレアナムからの抽出物、パルメロリドA、パルメロリドC、パルメロリドD、およびパルメロリドEは、フィールドベースの摂食抑制アッセイにおいて生体活性を示し、これは本発明者らが活性の化学的性質を調べることにつながった。新規の単離されたポリケチド類、パルメロリドA、パルメロリドC、パルメロリドD、およびパルメロリドEが、S.アダレアナムの抽出物からの主要な天然産物として示された。これらのポリケチドは、米国立癌研究所(NCI)60細胞株パネルにおいて、選択的細胞傷害性を示し、とりわけメラノーマ(UACC-64、LC50 0.018μM)を、他の被験細胞株と比べ3桁より大きい感度で阻害する。
【0081】
同様の様式で、パルメロリドA〜H、およびKを、親油性天然産物の分画に関する本発明者らの標準プロトコールを使用してこれまでに単離した。凍結乾燥された生体塊(biomass)を、ジクロロメタン/メタノール1:1(3×)により可能な限り抽出し、一緒にした抽出物を濃縮し乾燥した。この抽出物を、100%ヘキサン中に充填されたシリカゲルカラムに装加した。2画分としてのヘキサンの2カラム容量の溶離に続け、1:9、2:8、4:6、8:2の酢酸エチル/ヘキサン、100%酢酸エチル、最後に5%、10%および20%のMeOH/酢酸エチルの2カラム容量の段階勾配が続き、各カラム容量を画分として収集した。反復高速液体クロマトグラフィー(HPLC;Waters YMC 5μ、ODS 10mm×30mm、単離物に応じ、MeCN中の変動量の水を使用)は、5種のパルメロリドの精製を生じた(図19参照)。追加のパルメロリド代謝産物は、親油性抽出物のより極性のある画分から単離することができる。例えば、親油性抽出物のフラッシュクロマトグラフィーからの酢酸エチル/メタノール溶離画分の更なる分画は、3種のより極性のあるパルメロリドを生じた(1H NMRスペクトルの検討を基に、これらのパルメロリドは、より高度にヒドロキシル化されていた)。本明細書に説明されたようなバイオアッセイ、および他の当該技術分野において公知のバイオアッセイは、これらの単離体の生体活性を確認することができる。
【0082】
親水性抽出物中に存在するより極性のあるパルメロリドまたは他のメラノーマ-生体活性化合物は、逆相真空クロマトグラフィーにより分画することができる。C-18修飾シリカゲルを、真空ロート内、水中に充填し、その後抽出物を装加し、2ベッドボリュームの水、1:9、2:8、4:6、8:2のメタノール/水、その後100%メタノールを、減圧下で流し、1画分/1ベッドボリュームで収集した。あるいは極性のある構成成分を、ポリスチレン樹脂(HP-20またはXAD)上に吸着させ、メタノールまたはアセトンの類似した勾配プロファイルで溶離した。こうして得られたクロマトグラフィー画分を次に濃縮し、バイオアッセイした。精製を実現するための必要に応じて、それに続くまたは代わりのクロマトグラフィー段階を、より狭い溶媒勾配にわたり先に説明されたものと同じ固定相を用るか、またはゲル透過(LH-20またはG-10)のような別の固定相により、当該技術分野において周知のように行った。
【0083】
生体活性単離体の最終精製は、HPLCによる。HPLCでの分離は、単離体のクロマトグラフィー挙動を基にいくつかの固定相を利用する。典型的には、非-極性化合物では逆相(C-18、フェニル)カラムが良く働き、中等度の極性の化合物では順相が、および充填物に類似した特徴を有する化合物では、様々なその他の結合相(アミノ、シアノ、ジオール)カラムが働く。しかし例え最も極性のある有機化合物の分離における逆相HPLCの使用であっても、稀なことではない。本発明者らは、純水および/または緩衝液溶媒を収容し、そのため例え最も極性のある代謝産物(アミノ酸、ヌクレオシド)であっても逆相HPLCにより分離することができる、高分子固定相C-18(YMCおよび/またはWaters)を用い、かなり成功している。本発明者らのHPLC装置は、質量-感受性検出器(示差屈折率(RI)および/または蒸発光散乱(ELSD))および紫外線検出器の両方を直列で装備している。RIまたはELSD検出器は、比較的感受性が悪いが、量に比例した反応を有するので、二重検出は重要である。紫外線検出器は、高度に感受性であるが、反応は発色団の励起係数に応じて変動する。このHPLC装置は、分析的な半-分取能および分取能(4個の装置、0.1mL/分〜300mL/分)を備え、ならびに本発明者らのLC/MSは、必要に応じ、単離体の質量スペクトルプロファイルを確保する追加の利点を伴うよう、MS(全イオンクロマトグラム、TIC)検出を追加するために、これらの装置のいずれかと一体化することができる。
【0084】
本発明者らは、パルメロリドの分取単離のためのHPLC装置を有するが、この方法は、当該技術分野において周知の遠心向流クロマトグラフィー(CCC)または遠心分配クロマトグラフィー(CPC)を使用することにより克服することができるある欠点を有する。CCCおよびCPCは、吸着クロマトグラフィーよりもより高い回収につながる物理特性である、2種の非混和相の間の検体の分配を基にした利点を有する。今日利用可能な装置は、分取スケールの分離により開発される多容量ローター(両技術は回転が誘導した重力勾配を利用する)を含む。Foucaultらは、水/DMSO/THF系を使用し、ポリケチドマクロライド(アンホテリシンB)の効果的精製を実現し、これはパルメロリド精製のための良好な開始点となる(Foucault、A.P.ら、1993)。
【0085】
実施例III−パルメロリドA
パルメロリドAを、粗親油性(1:1メタノール/ジクロロメタン)抽出物のシリカゲルクロマトグラフィーから溶離する1:1メタノール/酢酸エチル画分から、白色固形物として単離した。質量分光分析は、分子式C33H48N2O7をもたらした(HRFABMS m/z 585.3539、[M++1]についてΔ0.1mmu)。パルメロリドAのC-1からC-24炭素骨格は、gHMBCスペクトルからの1H-13C結合性帰属を基に明白に帰属することができる。このマクロ環は、C-19(δ73.69)メチンからC-1エステルカルボニルまでの間の相関の観測により完成された。C-7およびC-10のヒドロキシメチンは結果的に、gHMBCおよびCOSY両スペクトルにおけるヒドロキシルプロトンのカップリングの観測を基に帰属され:gHMBCスペクトルにおいては、ヒドロキシプロトンは、各々α-およびβ-炭素に相関されるのに対し、COSYスペクトルにおいては、相関は、ヒドロキシルプロトンとヒドロキシメチンプロトンの間で観測された。二次元NMR分析により確立されたイソペンテノイルアミドは、分子式から帰属されずにいるCO2NH2以外の全体の構造を完成した。この残存する炭素は、酸素を持つC-11上のプロトン(δ75.25)と相関されたが、更なる結合性は明白ではなかった。最後に残った結合価は、-NH2により占有されなければならず、C-11にカルバモイル基を生じ、パルメロリドAの平面構造を完成した。
【0086】
立体化学解析は、全ての二置換されたオレフィンが、それらの大きいカップリング定数(>14Hz)を基に、E立体配置を有することを認めた。C-16で三置換されたオレフィンも、H-16からH2-18のおよびH-15からH3-25のROESYスペクトルの相関の観測を基に、Eに帰属された。同様に、C-21オレフィンは、H-24からH3-27の、H-23からH3-27およびH-21の、およびH3-27からH-20およびH3-26のROESY相関を基に、E立体配置に帰属することができる。パルメロリドAの(R)-および(S)-MTPAエステル41は、C-7およびC-10の両方がR立体配置を生じることを明らかにした。C-10/C-11フラグメントの立体配置解析42は、隣接プロトン間に認められた小さい3JH-10/H-11を基にH-10とH-11の間にゴーシェ関係を、ならびにH-10/C-12およびH-11/C-9の両方の関係について大きい3JCHを同定した。立体構造に関する更なる裏付けは、2JC-11/H-10および2JC-10/H-11において認められ、これら両方とも、大きくかつ負であり、C-11の絶対立体化学をRとして定義した。同様に、C-19/C-20系の立体配置解析は、大きい3JH-19/H-20、小さい3JC-21/H-193JC-26/H-19および3JC-18/H-20、加えて大きい2JC-19/H-20を基に、各プロトンのアンチ関係を示唆した。このフラグメント内のC-18の相対位置は、H2-18とH-20の間、更にはH2-18とH3-26の間のROESY相関の観測により確証されたのに対し、H2-18とH-21の間にはROESY相関は観測されず、相対立体配置19R*、20S*を必要とした。パルメロリドAのNMRデータは、図2に見ることができる。
【0087】
マクロ環内の4個のオレフィンは、マクロライドにおいて頻繁に認められる柔軟性を拘束し、NOE試験による立体化学解析を容易にする。ROESYスペクトルの更なる解析は、マクロライドは、涙型サイクルの二つの大きい平面側(planar side)を採用し、一方の側はC-1からC-6からなり、他方はC-11からC-19からなり、C-7からC-10は曲線関係を提供することを明らかにした。特に、H-19、H3-27、H-15およびH2-13(図3参照)は、H3-26、H2-18、H-16、H-14およびH-12のように、ROESYスペクトルにおいて逐次相関し、西半球(western hemisphere)の頂面および底面の周囲を規定する。H-11は、プロトンの頂端のシリーズのみと相関し、結果は、R立体配置を共に取っているC-19およびC-11とのみ一致する。
【0088】
被嚢類は、I型ポリケチドの生産者としては周知ではないが、パテラゾールおよびイエジマリドは、重要な生体活性のある代表例である。パルメロリドAは、パテラゾールおよびイエジマリドの24員と比べ、20員の小型のマクロ環、ならびにトリトキシン(tolytoxin)のような藍色植物由来のマクロライドに関連しているより一般的特徴であるビニルアミドを持つ点が一般的ではない。パルメロリドAは、図2の、いくつかの他のメラノーマ細胞株[M14(LC50 0.076μM)、SK-MEL-5(6.8μM)およびLOX IMVI(9.8μM)]に加え、先に言及されたUACC-62に対する細胞傷害性を示す。図3のメラノーマに加え、図4Aの1種の結腸癌細胞株(HCC-2998、6.5μM)、および図4Bの1種の腎癌細胞株(RXF393、6.5μM)において、パルメロリドAは、細胞傷害性を大きく欠いており(LC50>10μM)、最大感受性の細胞について被験細胞株の間で選択性指数(selectivity index)103を示している。重要なことは、パルメロリドAは、NCIデータベースに関してCOMPARE-陰性であることであり、これはこれまで説明されていない作用機序を示唆している。
【0089】
図4Aおよび4Bは、パルメロリドAに関する、米国立癌研究所の開発中治療法プログラムインビトロ試験結果を示している。図5は、パルメロリドAに関して試験した全ての細胞株に関する、米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムの用量反応曲線を示している。比較のために、メラノーマ(図6)、結腸癌(図7)および腎癌(図8)について個々の結果を示している。
【0090】
実施例IV−パルメロリドCの細胞傷害性
以下および図9に示されたパルメロリドCは、化学式C33H49N2O7を有する(NMRデータは図10参照のこと)。NCI細胞傷害性は、図11Aおよび図11Bに示した。全ての細胞株に関するNCI用量反応曲線は、図12に示した。
【0091】
実施例V−パルメロリドDの細胞傷害性
以下および図13に示されたパルメロリドDは、化学式C36H53N2O7を有する。パルメロリドDのNMRデータは図14に示す。

【0092】
実施例VI−パルメロリドEの細胞傷害性
以下および図15に示されたパルメロリドEは、化学式C27H39NO7を有する(NMRデータは図16参照のこと)。NCI細胞傷害性は、図17Aおよび図17Bに示した。全ての細胞株に関するNCI用量反応曲線は、図18に示した。

【0093】
実施例VII−バイオアッセイ
確立された細胞株(UACC-62、SK-MEL-5およびMK14、これらは全てパルメロリドAに感受性がある)を、NCI標準プロトコールから得、細胞培養のために使用した。
【0094】
UACC-62(Amundsonら、2000)およびMEL14(Linら、2003)。細胞を、10%ウシ胎仔血清およびグルタミンを補充しならびに抗生物質(100単位/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン)で処理したRPMI 1640培地において、5%CO2を含む95%空気の加湿した大気下で、37℃で増殖させた。
【0095】
SK-MEL-5(Miracco ら、2003)。細胞を、1.5g/L炭酸水素ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸および1.0mMピルビン酸ナトリウムを含有するように調節した、アールのBSSを含むイーグル最小必須培地において、5%CO2を含む95%空気の加湿した大気下で、37℃で増殖させた。
【0096】
本発明者らのバイオアッセイは、パルメロリドおよびそれらの誘導体により引き起こされた細胞増殖阻害または細胞致死率の定量のために、96-ウェル型のMTT-ベースの(Vogtら、2004)方法を使用した。このアッセイにおいて、代謝活性のある細胞は、黄色であるメチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)を切断し、540nmでのプレートリーダーモニタリング吸光度を用い定量することができる同時紫外線シフトを伴う紫色のホルマザン色素を形成する。
【0097】
実施例VIII−生体活性代謝産物の構造解明
代謝産物の単離時に、単離体の正体を確認すること(デレプリケーション)は重要である。1H NMRスペクトルの検討は、LC/MSおよび/またはESIMSからの質量スペクトルの情報と組合せ、先に説明された化合物の同定をもたらすことが多い。海洋天然産物データのデータベース探求および検索は、デレプリケーションを大きく補助し;海洋天然産物のデータベースは、Dr. J. BluntおよびDr. M. Munroにより作製された(Blunt、J.W.;Munro、M.H.G. MarinLit. University of Canterbury、クライストチャーチ、ニュージーランド、ver 12.4、2004)、ならびに米国立標準技術研究所(NIST)およびWileyから質量スペクトルライブラリーは、これに関して入手可能である。新規化合物は、パルメロリドAの主要データの節に説明されたように、分光分析に供された。
【0098】
最新の分光法を、新規単離体の構造決定に使用する(Crewsら、1998;Silversteinら、1998)。一次元プロトンおよび炭素NMR分光法は、質量スペクトル解析(LC/MSまたはエレクトロスプレーイオン化(ESI)もしくはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析計から)と組合せて、新規化合物の分子式を確定することができる。二重-および三重-結合プロトン-プロトン結合性は、COSY(Aueら、1976)、またはTOCSY(Braunschweilerら、1983)による延長された(extended)スピン系のような二次元NMR技術の組合せを用い、確立することができる。プロトン-炭素結合性は、HMQCまたはHSQC(Baxら、1986a;Bodenhausenら、1980)(一重結合)ならびにHMBC(Bax ら、1986b)(二重または三重結合)を用い確立することができる。これらのNMR実験は、必要ならば溶媒サプレッション(solvent suppression)を用い、最大感度に関して勾配(Maudsleyら、1978;Ruiz-Cabelloら、1992)モードで獲得されることが多い。十分な物質が得られた場合は、炭素-炭素結合性は、2D-INADEQUATEスペクトル(Baxら、1980)を得ることにより確立することができ;13C-13Cカップリングの直接測定は、構造の重要な部分の容易な評価を可能にする。立体配置的に拘束された系における立体化学的帰属は、カップリング定数データ、ならびに可能であるならば、核オーバーハウザー効果またはNOESY(Crewsら、1998;Silversteinら、1998)技術の結果、または誘導体化もしくは分解による結果を基にしている。柔軟な系(線状または大環状)の立体化学解析は、各々、デカップリングおよび/またはECOSY(Griesingerら、1985)(3JHH)もしくはJ-分解HMBC(Furihataら 1999)(2,3JCH)由来の、3JHHおよび2,3JCHの分析のムラタ法(Murataら、1999)を用い実現することができる。分光光度法が決定的でない事象において、化学的誘導体化および/または分解技術を利用し、構造を更に明確にすることができるか、または結晶を成長させ、X線結晶解析を促進することができる(Yoshidaら、1995;Ankisettyら、2004)。
【0099】
実施例IX−分解研究
パルメロリドは、分解研究のための十分な官能基化を提供する。パルメロリドA、D、および/またはEの還元的オゾン分解は、3種のヘキサンポリオール(11-13、スキーム1)をもたらす。これらのパルメロリドにおけるC-7の立体化学的立体配置は、11の旋光性の、真の(R,+)-1,2,6-トリヒドロキシヘキサン(Wuら、2000)の旋光性との比較により実現される。
【0100】
位置C-10およびC-11は、化学文献に報告されていない化合物である、テトラ-オール12との比較により照合され得る。テトラ-オール12は、同様の化合物の調製後にモデル化されたスキーム(Zhuら、2001)を基に、D-ガラクトースから容易に調製することができる(スキーム2)。D-ガラクトース1,3-アセトアルデヒドアセタール(16)の過ヨウ素酸切断(Dolderら、1990)、それに続くウィティッヒ反応を介した同族体化、水素化(Zhuら、2001)および加水分解は、比較のための所望の12を提供する。

スキーム1:パルメロリドA(1)、D(8)およびE(9)の分解研究(オゾン分解)

スキーム2:(2R,3R)-1,2,3,6-テトラヒドロキシヘキサン(12)の調製の合成手順
【0101】
C-19およびC-20の位置の立体中心は、化合物13と先に公開された経路(スキーム3)(Ohiら、1999)を介して誘導される合成試料との比較により確認することができる。先に公開された経路でのキラル誘導は、6-メチル-2,6-ヘプテン-1-オール(19)のシャープレスエポキシ化により実現され、この化合物は、メチルリチウムにより処理され、アルコールから反対の面上にメチル基を導入する。公開された手順を使用し、L-ジエチル酒石酸塩(L-DET)の2S,3S異性体を実現し;この調製は、2R,3R異性体を必要とし、そのため一つはD-ジエチル酒石酸塩(D-DET)で始まる。アセトアルデヒドアセタール22として保護された、C-6アルコールは、ケトンへ酸化され、これはウィティッヒ反応により同族体化され、化合物23を生じ、これは比較試料21を生じるための脱保護のみを欠いている。

スキーム3. i)Ti(O-i-Pr)4 (0.2eq)、D-DET (0.3eq)、t-BuOOH. ii) CuCN、MeLi、Et2O. iii) 11、TsOH. iv)スワン酸化(Mancusoら、1981). v) Ph3PCH3、BuLi. vi) TsOH H2O.
【0102】
パルメロリドB(6)およびC(7)の分解研究は、同様にポリオール(スキーム4および5)を提供し得る。C-19およびC-20立体化学は、全てのパルメロリドにおいて同じであり、そのためパルメロリドBおよびCからのオゾン分解産物は、それらの立体中心を含む同じ生成物(13)生じることが予想される。パルメロリドBに関して、2種の新規分解産物(24、25)が生じる。D-およびL-グルタミン酸(Brunnerら、1989;Larchevequeら、1984)からの、24の両方のエナンチオマーが公知であり、一旦本発明者らの帰属が成されるとキラルの光学的比較を提供する。生成物25は、その末端トリオール機能と共に、スキーム2技術によりアクセス可能であり、必要ならば代替の糖により任意に始まり、ならびに3-ブロモプロパノール由来のC3 ウィティッヒ試薬により同族化される。

スキーム4. パルメロリドB(6)のオゾン分解

スキーム5. パルメロリドC(7)のオゾン分解
【0103】
パルメロリドC(7)の還元的オゾン分解(スキーム5)由来のペンタ-オール26は、分光学的に決定された立体化学に対処するのに適当なように、C5糖類のプールから選択された前駆体から調製される(スキーム6)。

スキーム6. i) エチルビニルエーテル、PPTS、CH2Cl2. ii) Ph3PCH2CH2CH2OH (TMS)2NLi. iii) H2/Pd. iv)1N HCl、室温.
【0104】
スキーム1から6は、パルメロリドA〜Gの立体化学の本発明者らの分解的構造の証明をまとめている。新規パルメロリドが単離された場合、これらは全ての立体化学的帰属の確認に従い処理することができる。
【0105】
実施例X−パルメロリドの構造-活性研究
パルメロリドは、液胞型アデノシン三リン酸分解酵素(V-ATPases)の阻害により、メラノーマ活性を示す。これらは、細胞質からのプロトン輸送に関わる多タンパク質膜貫通酵素であり、ホメオスタシスの重要な機能である、細胞内コンパートメントのpH調節をもたらす(Sun-Wadaaら、2004)。これらは、真核細胞において遍在し、場合によっては原核細胞において認められる。この酵素の二つのドメインは、各々ほぼ6個のサブユニットにより構成され、および最終的には20のタンパク質の集団を含む。膜に包埋されているV0ドメインは、プロトン輸送の遺伝子座であるのに対し、膜下V1ドメインは、触媒(ATPからADPへ)活性を有する(Nishiら、2002)。V-ATPaseは、pH調節に加え、エンドサイトーシス、膜融合(Morelら、2003)、骨吸収(Nomiyamaら、2005)および酸性度の単純な機能ではない他の機能(Nishiら、2002)において役割を果たす。しかしこれらは、細胞の増殖、分化(Martinez-Zaguilanら、1993)、血管新生(Martinez-Zaguilanら、1999a)、多剤耐性(Laurencotら、1995;Raghunandら、1999;Martinez-Zaguilanら、1999b;Sennouneら、2004)および転移(Martinez-Zaguilanら、1998)に関与した、癌-調節経路における特定された役割を有し得る。
【0106】
リガンド/受容体相互作用のより良い理解につながり得るV-ATPaseの構造研究は、FサブユニットのNMR試験(Jonesら、2001)、および真核細胞H+ V-ATPaseのc/c'/c"環と相同である原核細胞V-型Na+-ATPaseのK環サブユニットに関するより最新のX線データ(Murataら、2005)を含む。このX線データの意義は、H+ V-ATPaseの公知のインヒビターは、cサブユニットに結合する(Paliら、2004;Hussら、2002)ことであり、インヒビターのリガンド/受容体結合に関するX線データの可能性を秘めている。
【0107】
V-ATPaseは、1型糖尿病(Myersら、2003a;Myersら、2003b)、骨粗鬆症(Nomiyamaら、2005;Sundquistら、1990)、ならびに子宮頚癌(Ellegaardら、1975)、乳癌(Martinez-Zaguilanら、1999b)およびメラノーマ(Martinez-Zaguilanら、1998)のような、いくつかの癌(Sennouneら、2004)を含む、多くの病態に関連している。転移性乳癌細胞は、それらの形質膜上のV-ATPase酵素の顕著な増加を示すことが明らかにされている(Martinez-Zaguilanら、1993;Sennouneら,2004)。癌細胞は、低pHの細胞質を必要とし、その酸性度を維持することはV-ATPaseに大きく依存している(Martinez-Zaguilanら、1993;Raghunandら、1999)。
【0108】
バフィロマイシンA1(4、図3)は、原型的なV-ATPaseインヒビター(Zhangら、1994)であるが、その結合および特異性は、サリシリハラミド(salicylihalamide)(vis 5)(Ericksonら、1997;Boydら、2001)、オキシミジン(oximidine)(Kimら、1999)、ロバタミド(lobatamide)(McKeeら、1998;Shenら、2002)およびパルメロリドのような、より最近になって発見されたインヒビターに全く及ばない。バフィロマイシンに加え、コンカナマイシン(concanamycin)(Hussら、2002)は、同様のマクロ環立体配置であるが、ポエシラストリン(poecillastrin)およびコンドロプシン(chondropsin)(Xieら、2004)は、ラクトン連結に加え、ラクタム連結で構成される、かなり大きいマクロライドである。

【0109】
V-ATPaseインヒビターは、癌介入の新たな標的となり始めている(Cheneら、2003;Beutlerら、2003)。タキソールのようなファースト・イン・クラス(first-in-class)薬につながる重要な発見は、チューブリン脱重合の阻害(Horwitzら、2004)であり、これは最終的にはその適応症のための薬物の増大につながり、かつ治療の選択肢を大きく拡張する。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター(Artsら、2003)は、米食品医薬品局(FDA)が最近いくつかの研究新薬(IND)申請を承認したので、同様に関心が高まっている。現在公知のいくつかの強力なV-ATPaseインヒビターの中で、これはIND承認に前進するモデルとして、まもなく明らかになることが期待されている。
【0110】
本官能基操作法は、吸収、分布、代謝、排泄および毒性(Absorption、Distribution、Metabolism、Excretion and Toxicity)(ADMET)の問題点に対処するためにLipinskiら(2001)により精密に作り上げられた「ルール・オブ・ファイブ(Rule of 5)」原理で始まる。Lipinskiのルールの中で、パルメロリドは既によく持ちこたえている。5個以下のH-結合ドナーが存在し、MLogPは約1.8〜2.76(SimulationsPlus、Inc.(ランカスター、CA)のADMET Predictorソフトウェアを用いて算出)、および10個未満のH-結合アクセプターが存在する。その分子量は、やや大きく、500台半ばから610の範囲であり;パルメロリドEは、500未満の唯一のメンバーであるが、これはV-ATPase活性に必要なビニルアミドを欠いている。ADMET Predictorにより本発明者らの方法を改善すると、溶解度および透過度は、誘導体化研究に焦点を当てる領域であり、ならびにこれら二つは対立する傾向を辿ることが明らかである。従って溶解度は、極性官能基の追加により改善するが、透過度は、極性官能基の除去により改善する。この両断論理(dichotomy)の融和は、以下の生物学的評価において行われると考えられる:本明細書の内容に従い調製された化合物は、先に説明されたように、メラノーマおよび/またはV-ATPase活性について評価することができ、ならびに十分な生物活性(ミリモル以下)を保持しかつ有望なADMET特性(ADMET Predictorによる評価を基に)を発揮するものは、中空線維アッセイおよび/または異種移植片アッセイを施すことができる。
【0111】
C-24アミドの喪失は、活性の低下をもたらし、およびC-6からC-12のヒドロキシル化/オレフィン化パターンの交互の配置も、同様の活性の低下をもたらし、これらはNCI 60細胞株バイオアッセイが行われたパルメロリドC(7)およびE(9)により証明された。その他のパルメロリド類も、同様にアッセイすることができる。
【0112】
化学誘導体化研究に関して、パルメロリドの全体の構造は、以下の3つの関心対象の領域に分類される:(1)C-24末端および会合したビニルアミド(SAR1領域、スキーム7);(2)C-7からC-12までのヒドロキシル化/オレフィン化の並置部位(SAR2領域、スキーム7);ならびに、(3)化学的に操作することができるオレフィン基。

スキーム7:構造-活性プロファイルに基づく天然産物の多様性
【0113】
誘導体化研究は、各領域において極性基を増加し、各領域において極性基を減少し、および極性基の数を変化することなく修飾を行うことで実行することができる。コア構造の様々な部位上の極性基操作の置換は、他の可能性のある修飾につながる。生物学的データが蓄積されるにつれ、単に非常に多数の誘導体を作製するのではなく、所望の生体活性プロファイル(効能およびADMET Predictor特性)を選択する。領域に焦点を当てた操作に加え、極性基の数の追加、除去もしくは未変化のままであるための操作が、以下に説明される。
【0114】
i. SAR1領域
SAR1と称される領域は、少なくとも4種の天然産物により評価することができる。パルメロリドA(1)、D(8)、E(9)およびF(10)は、パルメロリド親鎖の末端の性質のみが異なる。C-24末端を更に探索するために導入されるべき合成修飾は、以下の鎖末端基を含むことができる。
極性官能基の保持:
非共役型:

共役型:

極性基の数の減少:

極性官能基の付加:
非共役型:

共役型:

【0115】
誘導体30から45の調製は、銅触媒されたビニルアミド化反応(スキーム8)(Shenら、2000)により実現され得る。パルメロリドの立体的に制御されたEビニルアミドアナログの高い収量は、触媒としてチオフェンカルボン酸銅(I)(CuTC)を使用する、所望のアミドのヨウ化ビニル46とのカップリングにより調製することができる。

スキーム8. i: CuTC、N,N'-ジメチル-エチレンジアミン、K2CO3、50℃、R'CONH2. ii: HFピリジン/ピリジン.
【0116】
必要なE-ヨウ化ビニル46は、二つの方法の一方で調製することができる。ほとんどの直接経路は、トリ-t-ブチルシリル-保護されたパルメロリドE(vis 47、スキーム9)のクロム-触媒された(タカイオレフィン化、Takaiら、1986)同族体化に関する。パルメロリドの官能基化は、ジスコデルモリドのそれとは異なるので(Gunasekeraら、1990)、本明細書に説明された状態に対するそれらの安定性は、当該技術分野において周知であるジスコデルモリドに適用された合成手順により証明することができる(Patersonら、2001;Smithら、2000)ことに留意されたい。

スキーム9. i: TBSCl、イミダゾール. ii: CHI3、CrCl2、THF、0℃.
【0117】
または、ヨウ化ビニル46は、パルメロリドAから調製することができる。パルメロリドAは被嚢類においてより多くを占めるので、より多くの段階が含まれるにもかかわらず、これが望ましい。従ってパルメロリドAは、C-11酸素機能からC-7およびC-10酸素機能を識別するために適宜保護され(スキーム10)、その後そのアミドは選択的に加水分解され(Eatonら、1988)、得られたフタルイミドは加水分解され、アルデヒド48を生じる。アルデヒド48は、ケトンから直接ヨウ化ビニルを生じるダニシェフスキー法(Di Grandiら、1993)を使用する、ヨウ化ビニルへの直接転換を受けやすい。熱力学的にEヨウ化ビニル(49)を生じる。このカルバメートは、使用された条件下で加水分解され:p-メトキシベンジルエーテル(PMBO(C=NH)CCl3、PPTS)(Nakajimaら、1988)保護基をその位置で使用し、これをC-7およびC-10酸化された機能からそれ以降の手順において識別する。

スキーム10. i) TBSCl、イミダゾール. ii)テトラクロロ無水フタル酸、Δ. iii) a. ヒドラジン、b. TsOH/H2O. iv) ヒドラジン. v) I2、DBU
【0118】
ダニシェフスキー法(スキーム9)が望ましくない場合、バイヤー-ビリガー酸化によるアルデヒド(48)の保護されたパルメロリドE(47、R=PMB)への分解、得られるホルミルエステルの加水分解、その後のアルデヒドへのデス-マーチン酸化(Dessら、1991)(スキーム11)を使用することができる。その後中間体47は、スキーム9に示されたように、所望のヨウ化ビニル46へ精緻化することができる。トリメチルシリル過酸化物のルイス酸触媒を利用するもののような、バイヤー-ビリガー試薬は、エポキシ化を恐れることなく頻繁にオレフィンの存在下で実現することができることに留意されたい(Brinkら、2004)。

スキーム11. i)バイヤー-ビリガー(Nakajimaら、1988) ii) TsOH/H2O. iii) DMP、NaHCO3
【0119】
パルメロリドアナログ39-41は、保護されたパルメロリドE(47)のメチルトリフェニル-臭化ホスホニウム/BuLiによるウィティッヒ反応(39を生じる)、ヒドロキシメチル誘導体48のNaBH4/CoCl2還元(40を生じる)または40のアセチル化(41を生じる)から調製することができる。
【0120】
ii. SAR2領域
C-7からC-12 SAR2領域は、SAR2領域のみ異なるパルメロリドA(1)、B(6)およびC(7)を含む、天然産物により探索することができる。パルメロリドCは、パルメロリドAよりも効能が低い。更なる合成誘導体化は、極性官能基の保持、還元および付加による鋳型51の修飾を基にアルコール基の役割を評価することができる。代わりの修飾は、容易に得ることができる。

SAR2修飾鋳型1(51)
極性官能基の保持:

極性官能基の還元:


SAR2修飾鋳型2(66)
極性官能基の付加(鋳型2):

【0121】
誘導体52〜69の調製:
C-7での反応は、C-10での反応に先行する(Diyabalanageら、2006)。従ってC-7モノ誘導体化化合物は、直接調製されると考えられる。C-10モノ誘導体は、C-7(トリ-t-ブチルシリルエーテル)配列の保護/脱保護により調製されると考えられる。デス-カルバマト(55)反応は、スキーム10に説明されており;適宜保護されたC-7およびC-10アルコールは、C-11の修飾へのアクセスを提供すると考えられる。カルバメートは、酢酸塩63-65の生体活性プロファイルにより警告される場合、C-7、C-10およびC-11(Cl3CC(O)NCHO、その後K2CO3)(Kocovsky 1986)の間で相互交換することができる。バリンエステル62および63は、著しく改善された薬力学特性を示す(Guglielmoら、2004)、同様のバラシクロビルプロドラッグ後にモデル化される。化合物67から69は、63-65の四酸化オスミニウムのジヒドロキシル化から調製され得る(ジアステレオマー生成物を形成し、その結果分離後、63から65の各々から2種の生成物が生じる)。
【0122】
iii. オレフィンの役割
最後に、オレフィン機能の役割の評価は、選択的水素化触媒を利用する。過水素化は、70を生じ、これはパルメロリドAのH2、Pd/Cによる処理により実現されるのに対し、臭化ニッケルは、二置換されたオレフィン(71)の選択的水素化を提供する(Choiら、1996)。α,β-不飽和カルボニル(vis 72)に関連したオレフィンの選択的還元は、10%Pd/Cおよびギ酸アンモニウムにより実現することができる(Ramら、1992)。孤立非-共役オレフィン(73)の選択的還元は、ホウ化水素交換樹脂/Ni2B触媒(Yoon 1996)などの、多くの水素化技術により実現することができる。これらのパルメロリドAの誘導体は、様々な水素化産物を生じると考えられる、他のパルメロリド天然産物に加え、パルメロリド類の生体活性プロファイルにおけるオレフィンの役割としての証拠を提供する。

【0123】
iv. 誘導体化の組合せ
SAR1、SAR2および/または水素化に関して説明された修飾は、生体活性プロファイルおよび/またはADMET Predictorシミュレーションにより望ましい場合に、容易に組合せることができる。
【0124】
天然産物の全体の合成は、化合物の明白な構造の決定の主要な道具である。全体の合成は、合成スキームにおける出発材料または反応の簡単な変更による、天然産物のアナログの形成に関する成功する戦略としても利用される。本発明者らが提唱したパルメロリドへの合成試験は、収束型方法を詳述し、これにより各成分は、V-ATPaseによりX線共-結晶化試験により、およびADMETを使用するコンピュータによる推定により、発想を得たアナログを提供する。この合成は、パルメロリドの構造および絶対的立体化学を確認するために使用することもできると考えられる。これは、単離することができる量がわずかであるために、パルメロリドD、E、およびFのような余り豊富でないパルメロリドに関して特に重要である。
【0125】
この合成は、パルメロリドAの還元的オゾン分解を使用する、分解研究(先に示した)から得られるフラグメントを大まかに基本としている。分解研究を考慮して、本発明者らは、パルメロリドAのレトロ合成分析(スキーム12)を考案した。本発明者らのレトロ合成は、この分子を3つの主要なセグメントに分けた。パルメロリドAのマクロ環のコアは、前駆体76の閉環メタセシスにより容易に形成されるはずである(Grubbsら、1995)。メタセシス前駆体76は、アルコール77の78によるエステル化から形成することができる。フラグメント79および80は、無理なくヘック反応のためのカップリングパートナーであることができ、所望のアルコールフラグメント77を生成する(Harrisら、1996)。アミド80は、Co-PI補助した開発(helped develop)(Shenら、2000;Klaparsら、2001;Jiangら、2003)を作業することに直接関連した、銅-触媒したアミド化反応により、C-21側鎖に挿入することができる。アミド化反応に必要なヨウ化ビニル82は、対応するアルデヒド前駆体のタカイオレフィン化(Takaiら、1986)を使用することにより合成することができる。次にC-22二重結合は、ウィティッヒ反応のSchlosser改変を用い、形成することができる(Schlosserら、1966)。これは、(E)-アルケンの選択的形成につながる。C-20およびC-21の立体化学は、Evansにより開発された高度に予測可能なジアステレオ選択的アルドール反応(Evansら、1981)により、確立することができる。次にキラルジオール79は、シャープレス非対称ジヒドロキシ化(Jacobsenら、1988)を用い、エナンチオ選択的に調製される。非対称ジヒドロキシ化を利用し、キラルアルコールフラグメント78も形成することができる。このことは、C-8上のキラル第2級アルコールのエナンチオ選択的形成につながる。フラグメント78中のビニル系(vinylogous)エステルは、ホーナー-ワズワース-エモンズオレフィン化反応(Stocksdaleら、1998)により調製することができる。

スキーム12. パルメロリドA(1)のレトロ合成分析
【0126】
パルメロリドAの合成は、フラグメント79の構築で始まる。市販のアルキニルアルコール85(スキーム13)は、公知の手順(Hanessianら、1975)でのイミダゾールおよびTBDPS-Clによるアルコールの処理により、TBDPSエーテルとして保護される。パラホルムアルデヒドおよびn-BuLiによるアルキン86の処理は、プロパルギル系アルコール87の先に公知の形成を生じる(Nicolaouら、1989)。87のRed-A1(ビス(2-メトキシエトキシ)水素化アルミニウムナトリウム)による処理は、公知のE-置換されたアリル系アルコール88の形成を生じる。88のシャープレス条件による非対称ジヒドロキシル化は、高度のエナンチオ選択性を伴う所望のジオール89の形成につながる(Jacobsenら、1988)。この時点で、シャープレス非対称アミノヒドロキシル化は、この合成(Liら、1996)のこの段階で使用されることに留意されたい。これは、エナンチオ的に純粋な1,2-アミノアルコールの形成につながる。アミド求核試薬は一般に、アルケンのより少ないヒンダード炭素を好む。その知見を基に、保護されたアミンは、パルメロリドAのC-11に挿入されるはずである。このアミノヒドロキシル化経路は、パルメロリドのアザ変種を提供する。化合物89の2個の第2級アルコール基は、アセトンおよびTsOH処理時にアセトニドとして、選択的に保護され得る(Coeら、1989)。これは、生成物の熱力学的安定性のために、第1級アルコールに有利に、2個の第2級アルコールを保護すると考えられる。この時点で、90の第1級アルコールは、TIPS基により保護され得る(Cunicoら、1980)。その後アセトニドは、クロロホルム中において、FeCl3およびSiO2 により開環される(Kimら、1986)。これは、アセトニドを開環するが、シリル保護されたアルコールには影響を及ぼさない。C-12上の第2級アルコールは、ここでTBS-Clおよびイミダゾールにより保護される(Coreyら、1972)。C-12アルコール保護は、C-10ヒドロキシル基上に存在する嵩高のTIPS保護のために、大きい(major)生成物である。C-11アルコールはここで、THF中のMOM-Cl、NaHにより保護される(Klugeら、1972)。全てのヒドロキシル基を様々な保護基で保護する能力は、パルメロリドAの誘導体化という本発明者らの主な目標を可能にするので、これはこの試験においては極めて重要である。アルデヒド92は、TBDPS基の選択的脱保護、それに続くデス-マーチンペルヨージナンによる酸化により調製することができる(Dessら、1983)。このアルデヒドは、タカイオレフィン化によりヨウ化ビニル93へ転換することができる(Jiangら、2003)。このオレフィン化手順は、(E)-ヨウ化ビニルを選択的に形成する。このヨウ化ビニルは、この合成経路において後のヘック反応に必要な正確な立体化学を有すると考えられる。

スキーム13. i) TBDPSCl、イミダゾール、DMF. ii) BuLi、(CH2O)n、THF. iii) Red-Al、Et2O. iv) AD-mixβ、t-BuOH/H2O. v) アセトン、TsOH. vi) TIPS-Cl、ピリジン. vii) FeCl3/Si02、CHCl3. viii) TBS-Cl イミダゾール、DMF. ix) MOM-Cl、NaH、THF. x) 5N NaOH、EtOH. xi) デス-マーチンペルヨージナン、DCM. xii) CHI3、CrCl2、THF、O℃.
【0127】
パルメロリドA合成の次の主要段階は、レトロ合成からのフラグメント78の調製である。78の合成は、デス-マーチンペルヨージナンによる94の酸化(スキーム14)で始まる(Dessら、1983)。アルケンのシャープレス非対称ジヒドロキシル化は、ジオール95のエナンチオ選択的形成につながる(Jacobsenら、1988)。第1級アルコールは、TBDPS-Clおよびイミダゾールにより選択的に保護されると考えられる(Hanessianら、1975)。第2級ヒドロキシル基は、ジクロロメタン中のSEM-ClおよびDIPEAにより、SEMエーテル96へ転換される(Lipshutzら、1980)。97の形成は、ホーナー-ワズワース-エモンズオレフィン化反応により実現され得る(Stocksdaleら、1998)。これには、EtOH中の5N NaOHによるTBDPS基の脱保護、およびアルコールのデス-マーチンペルヨージナンによる酸化が続き、化合物98を生じる(Dessら、1983)。アルデヒド官能基のPetassisオレフィン化は、オレフィン99を生じると考えられる(Petassisら、1990)。化合物99中のエステル官能基のDIBALによる還元は、アルデヒド100を生じると考えられる(Sunazukaら、2000)。ジョーンズ酸化条件下でのアルデヒドの酸化は、カルボン酸101の形成につながると考えられる(Bowdenら、1946)。化合物101は、この合成におけるその後のエステル結合の形成に直接使用することができる。しかし塩化オキサリル102による酸の酸クロリドへの転換は、より穏やかなエステル化につながると考えられる。

スキーム14. i)デス-マーチンペルヨージナン、DCM. ii) AD-mix β、t-BuOH/H2O. iii) TBDPS-Cl、イミダゾール、DMF. iv) SEM-Cl、DIPEA、DCM. v)ホスホノ酢酸トリエチル、KHMDS、18-クラウン-6、トルエン. vi) 5N NaOH、EtOH. vii)デス-マーチンペルヨージナン. viii) Cp2Ti(Me2), THF、還流. ix) DIBAL-H、Et2O. x) NaClO2、NaH2PO4、2-メチル-2-ブテン、t-BuOH. xi) (COCl)2、ベンゼン.
【0128】
調製されることが必要である分子の最後のフラグメントは、C-17からC-25のアミド側鎖である。このフラグメントの合成における第一の段階(スキーム15)は、市販のゲラネオール(geraneol)のPDC酸化であり、103を生じる(Reiterら、2003)。この時点でのエバンスジアステレオ選択性アルドール縮合の使用は、104の形成をもたらす(Evansら、1981)。このエバンス法は、syn-選択性アルドール生成物の形成のための合成化学に利用可能な最も信頼できる道具の一つであることが証明されている。オキサゾリジノンのR基は、最高のジアステレオマー過剰の生成物を得るために変更することができる。化合物104におけるアルコールの保護は、105の形成につながる(Lipshutzら、1980)。その後オキサゾリジノンの補助基は、105のMeOH中のNaOMeへの曝露により取り除かれ、エステル106の形成につながる(Evansら、1981)。LiAlH4によるエステル106の還元、それに続くPPh3およびBr2による臭素化は、臭化物107の形成につながる(Wileyら、1964)。107の108によるウィティッヒ反応のSchlosser変種の使用は、(E)-アルケン109の過剰な形成につながる(Schlosserら、1966)。その後化合物109は、スキーム16の合成配列、引き続きアセタールの脱保護に供される。これは、パルメロリドEの合成を可能にする。アセタールの脱保護、それに続くタカイオレフィン化は、化合物110へつながる(Takaiら、1986;Hagiwaraら、1987)。ヨウ化ビニルの必要なアミドとの銅-触媒したカップリングは、111を提供する(Shenら、2000;Klaparsら、2001;Jiangら、2003)。このカップリングで使用されるアミドの変更は、パルメロリドDおよびFの合成につながる。

スキーム15. i) a) Bu2BOTf、DIPEA、DCM、0℃、次に103の添加、-78〜0℃. b) MeOH/30% H2O2. ii) イミダゾール、SEM-Cl、DMF. iii) NaOMe、MeOH、0℃. iv) LiAlH4、Et2O. v) PPh3、Br2、Triglyme. vi) PPh3、PhLi、LiBr Et2O、トルエン、その後108添加. vii) PPTS、アセトン、H2O、Δ. viii) CHI3、CrCl2、THF、0℃. ix) アミド、CuTC、N,N'-ジメチル-エチレンジアミン、K2CO3、50℃.
【0129】
パルメロリドAの合成の最後の段階(スキーム16)は、ヨウ化ビニル93およびアルケン111のヘックカップリングにより始まり、これはジエン112の形成を生じる(Harrisら、1996)。TIPS基の脱保護、引き続きの連続Petassesオレフィン化は、化合物113を提供すると考えられる(Petassisら、1990)。本発明者らは、Petassisオレフィン化の使用を好み、その理由はこの方法は、化合物112に存在する官能基の存在に耐える能力があるからである。化合物113中のSEM基の脱保護、引き続きの化合物101の連続エステル化は、114の形成につながると考えられる(Schlessingerら、1986)。第二世代のグラブス触媒を使用する114の閉環メタセシスは、マクロ環115の形成につながると考えられる(Grubbsら、1995)。メタセシス反応は、パルメロリドAに類似した構造の天然産物の合成において、マクロ環を閉環するために連続して使用することができることが認められる。例えば、天然産物のエポチロンファミリーのRCM法は、(E)-二重結合の形成に好ましい傾向がある(Mengら、1997)。カルバメート116の形成は、イソシアン酸およびCuClによる115の処理により実現され得る(Dugganら、1989)。パルメロリドAの合成における最終段階は、Et2O中のMgBr2およびBuSHによる残存する保護基の全体的脱保護である(Kimら、1991)。これは、ラクトンを開環せず、存在するカルバメート官能基を切断しない穏やかな脱保護手順である。

スキーム16. i) Pd(PPh3)4、Et3N、DMF. ii) 40% KOH、MeOH、還流. iii) Cp2Ti(Me2)、トルエン. iv) TFA、DCM、0℃. v) NaH、DMF、101. vi) Grubb第二世代の触媒、トルエン、Δ. vii) AcOH、H2O、THF. viii) HNCO、CuCl、DMF. ix) MgBr2、Et2O、BuSH、室温.
【0130】
本明細書に説明された実施例および態様は、単に例証を目的とするものであり、それらを考慮し様々な修飾または変更が、当業者に示唆されており、ならびに本願の精神および範囲内に、ならびに添付された特許請求の範囲に含まれるいることは理解されなければならない。加えて、本明細書に開示された発明またはそれらの態様の任意の要素または制限は、いずれかおよび/または全ての他の要素または制限(個別にまたは組合せて)と、もしくは本明細書に開示された任意の他の発明またはそれらの態様と組合せることができ、ならびにそのような組合せは全て、それらを限定することなく本発明の範囲内であることが企図されている。
【0131】
参考文献
米国特許第6,750,247号
米国特許第6,960,648号
米国特許出願第20030032594号












【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】パルメロリドAの化学式の透視図を示す。
【図2】パルメロリドAのNMRデータを示すチャートである。
【図3】C-11とC-19の間の相対立体化学に関する選択されたROE相関を示す。
【図4】図4Aは、パルメロリドAに関する米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムインビトロ試験結果のチャートを示す。図4Bは、パルメロリドAに関する米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムインビトロ試験結果のチャートの続きを示す。
【図5】パルメロリドAに関して試験した全ての細胞株に関する、米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムの用量反応曲線のグラフを示す。
【図6】パルメロリドAに関して試験したメラノーマ細胞株に関する、米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムの用量反応曲線のグラフを示す。
【図7】パルメロリドAに関して試験した結腸癌細胞株に関する、米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムの用量反応曲線のグラフを示す。
【図8】パルメロリドAに関して試験した腎癌細胞株に関する、米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムの用量反応曲線のグラフを示す。
【図9】パルメロリドCの化学式の透視図を示す。
【図10】パルメロリドCのNMRデータを示すチャートである。
【図11】図11Aは、パルメロリドCに関する米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムのインビトロ試験結果のチャートを示す。図11Bは、パルメロリドCに関する米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムのインビトロ試験結果のチャートの続きを示す。
【図12】パルメロリドCに関して試験した全ての細胞株に関する、米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムの用量反応曲線のグラフを示す。
【図13】パルメロリドDの化学式の透視図を示す。
【図14】パルメロリドDのNMRデータを示すチャートである。
【図15】パルメロリドEの化学式の透視図を示す。
【図16】パルメロリドEのNMRデータを示すチャートである。
【図17】図17Aは、パルメロリドEに関する米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムのインビトロ試験結果のチャートを示す。図17Bは、パルメロリドEに関する米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムのインビトロ試験結果のチャートの続きを示す。
【図18】パルメロリドEに関して試験した全ての細胞株に関する、米国立癌研究所(NCI)の開発中治療法プログラムの用量反応曲線のグラフを示す。
【図19】パルメロリドA〜Gの単離に関する精製段階を示す。
【図20】パルメロリドBの化学式の透視図を示す。
【図21】パルメロリドFの化学式の透視図を示す。
【図22】パルメロリドGの化学式の透視図を示す。
【図23】パルメロリドHの化学式の透視図を示す。
【図24】パルメロリドKの化学式の透視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの単離されたパルメロリド(Palmerolide)化合物、および、その異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型:

式中、

R1は、カルボキシアルデヒド、-CHCHNHC(O)-アルキル、-OC-アルキル、-OC-アリール、-OC-アミノ、アリール、アミノ、-ビニルアミド、アリールアミド、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、または-CHOであり、そのいずれも、H、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、または-CH3により置換されてもよく;
R2は、独立して、OH、O-アシル、カルバメート、H、O-アルキル、アミノ、-OSO3H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、および/またはオキソであり;
R3は、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル; アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよく;
R4は、独立して、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル; アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよい。
【請求項2】
少なくとも1個のR2が、-OC(NH2)Oである、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項3】
R3が、メチルである、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項4】
少なくとも1個のR4が、メチルであり、更なる態様において、両方のR4が、メチルである、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項5】
R1が、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)2である、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項6】
R1が、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)CH2C(CH3)CH2である、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項7】
R1が、-CHCH-NHC(O)CH2C(CH3)CH2である、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項8】
R1が、-CH=Oである、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項9】
少なくとも1個のR2が、-OHである、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項10】
少なくとも1個のR2が、-OSO3Hである、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項11】
少なくとも2個のR2が、-OHであり、および少なくとも1個のR2が、-OC(NH2)Oであり、ならびにR3およびR4は-任意でCH3である、請求項1記載のパルメロリド化合物。
【請求項12】
化合物が、下記構造を有する、請求項1記載のパルメロリド化合物:

【請求項13】
化合物が、下記構造を有する、請求項1記載のパルメロリド化合物:

【請求項14】
化合物が、下記構造を有する、請求項1記載のパルメロリド化合物:

【請求項15】
化合物が、下記構造を有する、請求項1記載のパルメロリド化合物:

【請求項16】
化合物が、下記構造を有する、請求項1記載のパルメロリド化合物:

【請求項17】
化合物が、下記構造を有する、請求項1記載のパルメロリド化合物:

【請求項18】
化合物が、下記構造を有する、請求項1記載のパルメロリド化合物:

【請求項19】
式IIの単離されたパルメロリド化合物、および、その異性体、ラセミ体もしくはラセミ混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは結晶型:

式中、

R1は、カルボキシアルデヒド、-CHCHNHC(O)-アルキル、-OC-アルキル、-OC-アリール、-OC-アミノ、アリール、アミノ、-ビニルアミド、アリールアミド、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、または-CHOであり、そのいずれも、H、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、または-CH3により置換されてもよく;
R2は、独立して、OH、O-アシル、カルバメート、H、O-アルキル、アミノ、-OSO3H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲン、および/またはオキソであり;
R3は、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよく;
R4は、独立して、H、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル;アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルコキシカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシカルボニル、ハロゲンであり、そのいずれも、アルキル、アルコキシ、-OH、-NO2、-NH2、-COOH、ハロゲン、および/または-CH3により置換されてもよい。
【請求項20】
少なくとも1個のR2が、-OC(NH2)Oである、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項21】
R3が、メチルである、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項22】
少なくとも1個のR4が、メチルであり、更なる態様において、両方のR4が、メチルである、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項23】
R1が、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)2である、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項24】
R1が、-CHCHNHC(O)CHC(CH3)CH2C(CH3)CH2である、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項25】
R1が、-CHCH-NHC(O)CH2C(CH3)CH2である、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項26】
R1が、-CH=Oである、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項27】
少なくとも1個のR2が、-OHである、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項28】
少なくとも1個のR2が、-OSO3Hである、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項29】
少なくとも2個のR2が、-OHであり、および少なくとも1個のR2が、-OC(NH2)Oであり、ならびにR3およびR4は任意で-CH3である、請求項19記載のパルメロリド化合物。
【請求項30】
化合物が、下記構造を有する、請求項9記載のパルメロリド化合物:

【請求項31】
化合物が、下記構造を有する、請求項19記載のパルメロリド化合物:

【請求項32】
請求項1〜31のいずれか1項記載のパルメロリド化合物および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項33】
V-ATPase酵素を、該V-ATPaseの活性を阻害または機能を遮断するのに有効である量の請求項1〜32のいずれか1項記載のパルメロリド化合物と接触させるかまたは曝露する段階を含む、V-ATPase酵素を阻害する方法。
【請求項34】
請求項1〜32のいずれか1項記載のパルメロリド化合物の有効量を、治療を必要とするヒトまたは動物へ投与する段階を含む、V-ATPase酵素の発現に関連した状態を治療する方法。
【請求項35】
請求項1〜32のいずれか1項記載のパルメロリド化合物の治療的有効量を、ヒトまたは動物へ投与する段階を含む、癌性または腫瘍学的障害を有するヒトまたは動物を治療する方法。
【請求項36】
以下の段階を含む、パルメロリドの単離法:
a)シノイカム(Synoicum)被嚢類を溶媒抽出に供する段階;
b)該溶媒を除去し、抽出物を提供する段階;および
c)パルメロリドを単離するために、該抽出物を分画する段階。
【請求項37】
溶媒が、CH2CH2/Me0Hである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
抽出物が、フラッシュクロマトグラフィーを用いて分画される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
フラッシュクロマトグラフィーが、シリカ上の勾配フラッシュクロマトグラフィーである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
段階(c)の分画する段階の後に得られた画分を、シリカゲル上の勾配溶離に供する、請求項36記載の方法。
【請求項41】
段階(c)の分画する段階の後に得られた画分を、逆相HPLCのような、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供する、請求項36記載の方法。
【請求項42】
溶媒が、蒸発により除去される、請求項36記載の方法。
【請求項43】
段階(b)の後に、抽出物が溶媒中で分配される、請求項36記載の方法。
【請求項44】
溶媒が、酢酸エチルである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
溶媒で分配された抽出物が、洗浄および乾燥される、請求項43記載の方法。
【請求項46】
方法が、被嚢類を得る段階を更に含む、請求項36記載の方法。
【請求項47】
被嚢類が、シノイカム・アダレアナム(Synoicum adareanum)である、請求項36記載の方法。
【請求項48】
被嚢類が、凍結乾燥されている、請求項36記載の方法。
【請求項49】
パルメロリドが、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、またはパルメロリドKである、請求項36記載の方法。
【請求項50】
1個または複数の容器内に、請求項1〜32のいずれか1項記載のパルメロリドを含む、キット。
【請求項51】
パルメロリドが、パルメロリドA、パルメロリドB、パルメロリドC、パルメロリドD、パルメロリドE、パルメロリドF、パルメロリドG、パルメロリドH、またはパルメロリドKである、請求項50記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2009−508878(P2009−508878A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531434(P2008−531434)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/036484
【国際公開番号】WO2007/035734
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508079566)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (4)
【出願人】(508079577)ユーエイビー リサーチ ファウンデーション (1)
【Fターム(参考)】