説明

細胞溶解のための組成物、使用方法、装置およびキット

細胞溶解組成物、この組成物を使用して宿主細胞からタンパク質およびペプチドを抽出および単離するための方法、宿主細胞からタンパク質分子およびペプチド分子を抽出および単離するためならびにタンパク質またはペプチドの存在について検出するためのキットならびに装置。この組成物は、機械的破壊を必要とせず、かつ細胞培地から細胞を単離してもしなくても、宿主細胞からタンパク質およびペプチドを抽出および単離することを可能にする。この組成物は、約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞溶解組成物、タンパク質を抽出および精製するための方法、細胞培地および細胞ペレットを含む宿主細胞から標的タンパク質を抽出するための装置ならびにキットに関する。特に本発明は、機械的破壊を必要とせずに宿主細胞からタンパク質を抽出するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、参照によりその全体が援用される米国仮出願第60/422,931号(2002年11月1日出願)の利益を主張する。
組換えDNA技術は、大量の所望の真核生物タンパク質(例えば、哺乳動物のホルモン、インターフェロンおよび酵素)を合成する価値ある手段を提供している。所望のタンパク質を産生するために生物を容易に操作することができるが、この宿主生物は通常、タンパク質産物を培養培地中に分泌しない。従って、生物(例えば、細菌)の溶解とその後の所望のタンパク質の単離とが通常必要である。
【0003】
一般に、天然のタンパク質および組換えタンパク質の精製における第1の工程は、これらのタンパク質を産生する細胞の溶解を伴い、細胞成分を遊離させる。細胞溶解のための古典的な物理的方法には、超音波処理およびフレンチプレス細胞破砕機(French Pressure Cell)の使用などが挙げられるが、溶解において補助的に化学薬剤または酵素剤と組み合わされることが多い。物理的方法で溶解すると、膜の断片および染色体DNAの剪断によって生じる小分子DNAが生じるが、これらはいずれもその後の所望のタンパク質の分離および/または分析を妨害する可能性がある。これらの混入物を除去するには、DNA消化などの、費用および時間のかかるさらなる精製工程を必要とする。
【0004】
古典的なタンパク質精製方法には、沈殿(例えば、PEI、PEGおよび硫酸アンモニウム)、濾過、分取電気泳動などが含まれる。これらの方法は、細菌溶解物または部分的に精製されたタンパク質調製物に対して実施されることが多い。クロマトグラフィーを用いるさらなる方法には、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび親和性クロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されない。これらの方法のいずれかおよび全てが、適切な収量を確実にするためには有効な溶解手法に依存する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞の溶解のための方法は当該分野に存在するが、穏やかな細胞溶解を使用しかつ機械的破壊を回避する迅速な方法、混入する細胞破片(DNA断片および膜の断片を含む)からの目的のタンパク質およびペプチドの分離、ならびに手順が1回または数回となる別の精製方法が、当該分野において必要とされている。本発明は、このような組成物、方法およびキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、概して、タンパク質分子およびペプチド分子を抽出および単離する際に使用するための組成物、方法およびキットに関する。より具体的には、本発明は、溶解および1つまたは複数のさらなる単離手順を介した、宿主細胞(例えば、細菌細胞、動物細胞、真菌細胞、酵母細胞または植物細胞)からのタンパク質分子およびペプチド分子の抽出および単離において有用な、このような組成物、方法およびキットに関する。特に、本発明は、細胞を溶解して細胞からタンパク質を放出させるための細胞溶解組成物ならびにタン
パク質分子およびペプチド分子を結合するための基材を使用して、1回または数回の手順で所望のタンパク質分子およびペプチド分子が宿主細胞から抽出および単離される、組成物、方法およびキットに関する。
【0007】
本発明は、宿主細胞を溶解するための組成物を提供する。この組成物は、(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;および(b)少なくとも1種の細胞膜を変化させる化合物(以降、細胞膜改変化合物とする)を含んでなる。この界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群より選択可能であり、組成物の約0.001%(w/w)〜約10%(w/w)の範囲の量で組成物中に存在する。この細胞膜改変化合物は、硫酸ポリミキシンBもしくはバンコマイシン、またはポリミキシンB1とポリミキシンB2との混合物などの抗生物質であり得る。本発明の組成物は、組成物のpHを約6.5〜約9.0の範囲に維持するのに充分な量で緩衝液を含んでもよい。所望の場合、組成物は、消泡剤またはリゾチームなどの他の成分を含んでいてもよい。組成物は、水で再構成するための固体形態でも、水溶液でも、水性濃縮物でもよい。
【0008】
本発明はまた、宿主細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または植物細胞)からタンパク質を回収するための方法を提供する。この方法は、所望のタンパク質を有する細胞の供給源を提供する工程;約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;ならびにこの細胞を、細胞を溶解しその後タンパク質を放出させるのに充分な量の組成物と接触させる工程からなる。この細胞は、細胞培養物またはペレットの形態であり得る。本発明の1態様において、この方法は、放出されたタンパク質を分離する工程からさらになる。放出されたタンパク質は、同タンパク質を結合する基材と接触させることによって分離され得る。基材の代表的な例には、磁性または非磁性の樹脂などの任意の適切なクロマトグラフィー媒体が含まれる。
【0009】
本発明はまた、精製された形態でタンパク質を単離するための方法を提供する。この方法は、所望のタンパク質を有する細胞の供給源を提供する工程;約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;タンパク質を結合するための基材を提供する工程;細胞を、細胞を溶解させてタンパク質を放出させるのに充分な量の組成物と接触させる工程;放出されたタンパク質を、この放出されたタンパク質が基材と結合するのに有効な条件下で基材と接触させる工程;基材に結合したタンパク質を洗浄する工程;ならびに基材に結合したタンパク質を回収する工程からなる。
【0010】
本発明はまた、タンパク質を抽出および単離するための装置を提供する。この装置は、抽出および単離しようとするタンパク質またはペプチドを有するサンプルを入れることができるハウジング;約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物;ならびにこのタンパク質を結合する基材からなる。適切なハウジングには、容器、カラムまたはマルチ・ウェル・プレートが含まれる。基材には、クロマトグラフィー樹脂またはメンブレンが含まれる。本発明の1態様において、この装置はタンパク質を単離するためのキット中に含まれる。
【0011】
本発明はまた、宿主細胞からタンパク質を回収するためのキット、サンプル中のタンパク質の存在を検出するためのキット、および細胞溶解物を調製するためのキットを提供する。このキットは、約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;少なくとも1種の細胞膜改変化合物;ならびにこのキットを使用するための指示書からなる。このキットは、約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バ
ランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を含み得る。所望の場合、この組成物は水溶液である。この溶液は、濃縮物の形態であってもよい。このキットは任意選択で緩衝塩およびリゾチームなどの他の成分を含み得るが、該成分は組成物の一部として含まれてもよいし、組成物とは別に含まれてもよい。キットは、1種または複数の洗浄用バッファー、溶出用バッファー、タンパク質を結合するための基材もまた含み得る。
【0012】
本発明の1実施形態において、
(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;および
(b)少なくとも1種の細胞膜改変化合物、
を含んでなる組成物が提供される。
【0013】
本発明のこの実施形態の1態様において、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群より選択される。界面活性剤は、組成物の約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲の量で組成物中に存在することが好ましい。非イオン性界面活性剤は、エトキシ化アルキルフェノール(例えば、エトキシ化ノニルフェノールまたはオクチルフェノキシポリエトキシエタノール)を含んでなる。カチオン性界面活性剤は、脂肪族アミンまたはエトキシ化獣脂アミンのエチレンオキシド縮合物を含んでなる。界面活性剤は、エトキシ化アミンを含んでなるものでもよい。本発明の好ましい実施形態において、界面活性剤は、Tomah(R)E−18−5、Tomah(R)E−18−15、Rhodameen(R)VP532/SPB、Trymeen(R)6607およびTriton X−100(R)からなる群より選択される。
【0014】
本発明のこの実施形態の別の態様において、細胞膜改変化合物は、細胞膜もしくは細胞壁を実質的に溶解させるかまたは細胞膜もしくは細胞壁に孔を生じさせるのに有効な量で組成物中に存在する。細胞膜改変化合物は、リン脂質感受性のCa+2依存性プロテイン・キナーゼを阻害し、かつ細胞膜を攻撃し、膜の透過性を変化させ、もしくは膜を破壊し得る。細胞膜改変化合物は、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、アルキルグリコシドもしくはアルキルチオグリコシド、ベタイン界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アミン、リジンポリマー、マガイニン(magainin)、メリチン(melittin)、ホスホリパーゼAまたはホスホリパーゼA活性化ペプチド(PLAP)を含んでなる。あるいは、細胞膜改変化合物は、硫酸ポリミキシンBもしくはバンコマイシン、またはポリミキシンB1とポリミキシンB2との混合物などの抗生物質である。好ましくは、細胞膜改変化合物は、アルキルグリコシドまたはオクチルチオグルコシドなどのアルキルチオグリコシドを含んでなる。オクチルチオグルコシドは、終濃度が少なくとも0.4%(w/v)かつ1%(w/v)未満、好ましくは0.4%(w/v)〜0.6%(w/v)で存在し得る。
【0015】
本発明のこの実施形態の別の態様において、組成物は緩衝塩をさらに含んでなる。緩衝塩は、約6.5〜約9.0のpH範囲を維持するのに充分な量で存在し得る。
本発明のこの実施形態の別の態様において、組成物は、消泡剤、親和性標識していないタンパク質の非特異的結合を低減させる薬剤、またはリゾチームなどの他の物質をさらに含んでなる。
【0016】
本発明のこの実施形態の別の態様において、組成物は、水溶液の形態、好ましくは濃縮物の形態である。組成物は、好ましくは、約6.5〜約9.0のpH範囲を維持するのに充分な量で緩衝塩を含む。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、組成物は、Tomah(R)E−18−15、Triton X100(R)およびオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなり、最も好ましくは500mM HEPES(pH7.5)中に2%のTomah(R)E−18−15、2%のTriton X100(R)および6%のオクチルβチオグルコピラノシド含んでなる。
【0018】
本発明の別の実施形態において、宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための方法が提供され、この方法は、
所望のタンパク質またはペプチドを有する細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;ならびに
細胞を、細胞を溶解させてその後タンパク質またはペプチドを放出させるのに有効な量の組成物と接触させる工程からなる。
【0019】
本発明の1実施形態において、細胞は、原核細胞または真核細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または植物細胞)からなる。これらの細胞は培養培地中に存在していてもよく、組成物は、培地から細胞を収集する工程なしに同培地に添加される。あるいは、細胞がペレットの形態で培地から収集されてもよく、細胞溶解組成物がこのペレットに添加される。
【0020】
本発明のこの実施形態の別の態様において、この方法は、好ましくは、放出されたタンパク質またはペプチドを、同タンパク質またはペプチドを結合する基材と接触させることによって分離する工程からさらになる。好ましくは、この基材は、磁性または非磁性の樹脂からなる。
【0021】
本発明の別の実施形態において、宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための方法が提供され、この方法は、
所望のタンパク質またはペプチドを有する細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;
タンパク質またはペプチドを結合するための基材を提供する工程;
細胞を、細胞を溶解してタンパク質またはペプチドを放出させるのに有効な量の組成物と接触させる工程;
放出されたタンパク質またはペプチドを、この放出されたタンパク質が基材と結合するのに有効な条件下で基材と接触させる工程;
基材に結合したタンパク質またはペプチドを洗浄する工程;ならびに
基材に結合したタンパク質またはペプチドを回収する工程からなる。
【0022】
本発明の別の実施形態において、タンパク質またはペプチドを抽出および単離するための装置が提供され、この装置は、
タンパク質またはペプチドを有する1つまたは複数のサンプルを入れるためのハウジング;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物;ならびに
このタンパク質またはペプチドを結合する基材からなる。
【0023】
本発明のこの実施形態の1態様において、ハウジングは、容器、カラムまたはマルチ・ウェル・プレートからなる。
本発明のこの実施形態の別の態様において、基材は、クロマトグラフィー樹脂またはメ
ンブレンからなる。クロマトグラフィー樹脂は、磁性であることが好ましい。
【0024】
本発明のこの実施形態の別の態様において、タンパク質またはペプチドを単離するための装置を備えてなるキットが提供される。
本発明の別の実施形態において、
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;
少なくとも1種の細胞膜改変化合物;ならびに
キットを使用するための指示書、
からなるキットが提供される。
【0025】
本発明のこの実施形態の1態様において、界面活性剤および細胞膜改変化合物は、組成物中に含まれる。好ましくは、この組成物は濃縮物などの水性組成物であり得る。
本発明のこの実施形態の別の態様において、キットは、1または複数の以下の成分、すなわち:緩衝剤、リゾチーム、1または複数の洗浄用バッファー、1または複数の溶出用バッファー、およびタンパク質またはペプチドを結合するための基材、をさらに含み得る。基材は、磁性または非磁性のクロマトグラフィー樹脂からなるものでよい。このキットは、サンプル中に存在するタンパク質またはペプチドを検出あるいは定量するための手段をさらに含み得る。キットは、宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するため、標的タンパク質または標的ペプチドが存在するか否かについて検出するため、あるいは細胞抽出物を調製するために有用である。
【0026】
本発明の別の実施形態において、宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための高スループットの方法が提供され、この方法は、
所望のタンパク質またはペプチドを有する、1つまたは複数の細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;ならびに
細胞の各供給源を、細胞を溶解してその後タンパク質またはペプチドを放出させるのに有効な量の組成物と接触させる工程からなる。
【0027】
本発明のこの実施形態の1態様において、この方法は、細胞の各供給源由来の放出されたタンパク質またはペプチドを分離する工程からさらになる。この工程は、放出されたタンパク質またはペプチドを、同タンパク質またはペプチドの一部または全てに結合する基材と接触させることによって実施され得る。基材は、磁性または非磁性の樹脂からなり得る。
【0028】
本発明のこの実施形態の別の態様において、この方法は、放出されたタンパク質またはペプチドの活性または結合を測定する工程からさらになる。
本発明の別の実施形態において、宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための高スループットの方法が提供され、この方法は、
所望のタンパク質またはペプチドを有する、1つまたは複数の細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;
タンパク質またはペプチドを結合するための1種または複数の基材を提供する工程;
細胞の各供給源を、細胞を溶解してその後タンパク質またはペプチドを放出させるのに有効な量の組成物と個別に接触させる工程;
細胞の各供給源から放出されたタンパク質またはペプチドを、この放出されたタンパク
質の一部または全てが基材と結合するのに有効な条件下で基材と接触させる工程;
基材に結合したタンパク質を洗浄する工程;ならびに
基材に結合したタンパク質を回収する工程からなる。
【0029】
本発明のこの実施形態の1態様において、基材は磁性または非磁性の樹脂からなる。
本発明のこの実施形態の別の態様において、この方法は、放出されたタンパク質またはペプチドの活性または結合を測定する工程からさらになる。
【0030】
本発明の別の実施形態において、宿主細胞の各供給源が有するベクターによってコードされるタンパク質またはペプチドを構成メンバーとする、宿主細胞の供給源由来のライブラリーをスクリーニングするための高スループットの方法が提供され、この方法は、
ライブラリーを構成するタンパク質またはペプチドをコードするベクターを有する宿主細胞の供給源から、タンパク質またはペプチドのライブラリーを提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;
タンパク質またはペプチドを結合するための1または複数の基材を提供する工程;
細胞の各供給源を、細胞を溶解させてその後タンパク質またはペプチドを放出させるのに有効な量の組成物と接触させる工程;
細胞の各供給源から放出されたタンパク質またはペプチドを、この放出されたタンパク質またはペプチドの一部または全てが基材と結合するのに有効な条件下で基材と接触させる工程;
基材に結合したタンパク質またはペプチドを洗浄する工程;ならびに
基材に結合したタンパク質またはペプチドを回収する工程からなる。
【0031】
本発明のこの実施形態の1態様において、これらのタンパク質またはペプチドは、目的の特定のタンパク質またはペプチドの変異体である。
本発明のこの実施形態の別の態様において、この方法は、タンパク質またはペプチドの活性または結合特性を測定する工程からさらになる。
【0032】
本発明のこの実施形態の別の態様において、この組成物は、Tomah(R)E−18−15、Triton X100(R)およびオクチルβチオグルコピラノシドからなり、好ましくは500mM HEPES(pH7.5)中に2%のTomah(R)E−18−15、2%のTriton X100(R)および6%のオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる。
【0033】
本発明の別の実施形態において、培養培地から細胞を収集する工程を伴わずに、培養された細胞から細胞抽出物を作製するための方法が提供され、この方法は、細胞培地を、細胞を溶解させるのに有効な量の組成物と接触させる工程からなり、この組成物は、
(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;および
(b)少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる。
【0034】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、以下の詳細な説明に照らして明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、タンパク質および/またはペプチドを含む細胞から、タンパク質分子およびペプチド分子を抽出および単離する際に使用可能な、組成物、方法およびキットを提供する。本発明によれば、任意の細胞、組織、器官、細胞集団などがタンパク質およびペプチ
ドの供給源として使用され得ることが、当業者には容易に理解されよう。
【0036】
A.定義
以下の説明において、分子生物学、生化学およびタンパク質化学の分野で使用される多数の用語が広範に利用される。このような用語が用いられる範囲を含む明細書および特許請求の範囲が明確かつ矛盾なく理解されるように、以下の定義が提供される。
【0037】
本明細書中で定義するように、用語「宿主細胞」(「宿主」と互換的に使用される)は、本明細書中で使用される場合、目的のタンパク質および/またはペプチドを産生する任意の原核細胞または真核細胞をいう。このような宿主の例については、マニアティス(Maniatis)ら、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第二版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory )[米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在](1982)を参照のこと。好ましい原核生物宿主には、エシェリキア(Escherichia )属の細菌(例えば、大腸菌(E.coli))、バチルス(Bacillus)属の細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の細菌、アグロバクター(Agrobacter)属の細菌(例えば、アグロバクター・ツメファシエンス(A.tumefaciens ))、ストレプトマイセス(Streptomyces)属の細菌、シュードモナス(Pseudomonas )属の細菌、サルモネラ(Salmonella)属の細菌、セラチア(Serratia)属の細菌、カリオファノン(Caryophanon )属の細菌などが含まれるが、これらに限定されない。最も好ましい原核生物宿主は大腸菌(E.coli)である。本発明において特に注目した細菌宿主には、大腸菌株K12、DH10B、DH5α、HB101、JM109およびBL21(DE3)pLysが含まれる。好ましい真核生物宿主には、真菌細胞、魚類細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい動物細胞は、ドロソフィラ(Drosophila)細胞、スポドプテラ(Spodoptera)のSf9細胞、Sf21細胞およびトリコプルサ(Trichoplusa )High−Five(TM)細胞などの昆虫細胞;線虫(C. elegans)細胞などのネマトーダ細胞;ならびにCOS細胞、CHO細胞、VERO細胞、293細胞、PERC6細胞、BHK細胞およびヒト細胞などの哺乳動物細胞である。本発明によれば、宿主または宿主細胞は、単離しようとする所望のタンパク質分子および/またはペプチド分子のための細胞性供給源として働き得る。
【0038】
用語「天然のコンホメーション」は、本明細書中で使用する場合、そのタンパク質またはペプチドが介入なしに自然に翻訳される生物学的宿主中に存在することがわかっている場合の、該アミノ酸鎖の3次構造もしくは4次構造(または3次構造もしくは4次構造の範囲)として定義される。当該分野においては、天然のコンホメーションの状態にあるタンパク質またはペプチドは天然の全ての機能および活性をも保有すると一般に考えられている。天然のコンホメーションに混乱が生じると、必ずというわけではないが、多くの場合天然の機能または活性に混乱が生じるが、そのようなタンパク質およびペプチドは、変性タンパク質または変性ペプチドとも称することができる。本願の目的に関しては、タンパク質またはペプチドの構造は、これらの天然の構造が有意な操作(例えば、再構築技術)なしには回復され得ない場合に混乱が生じているとみなされる。天然のコンホメーションを実質的に維持しているタンパク質およびペプチドは、その天然の機能および活性を実質的に全て有している。
【0039】
用語「可溶性タンパク質」は、本明細書中で定義する場合、非特異的様式(例えば、沈殿、フロキュレーションなど)で他のタンパク質分子との巨大な凝集体を形成することのないように、その一般に知られているコンホメーションが溶媒分子によって適切に取り囲まれるタンパク質分子として定義される。対称的な用語は不溶性タンパク質ということになるが、不溶性タンパク質には膜貫通タンパク質、変性タンパク質および封入体を形成するタンパク質が挙げられる。1つの溶媒(例えば、水性溶媒)中で不溶性であり得る(封
入体を形成し得る)タンパク質またはペプチドが、異なるバッファー系(例えば、6M尿素)中で可溶性であることもある。
【0040】
用語「単離された」(「単離されたタンパク質分子」または「単離されたペプチド分子」でのような)は、単離された材料、成分または組成物が、単離された同材料、成分または組成物の一部ではない他の材料、混入物などから離されて少なくとも部分的に精製されたことを意味する。例えば、「単離されたタンパク質分子」は、このタンパク質分子が細胞、組織、器官または生物体中で結合し得る混入物(例えば、膜の断片または核酸)の少なくとも一部を除去するような方法で処理されたタンパク質分子である。しかし、当業者であれば十分認識しているように、単離されたタンパク質分子および/またはペプチド分子を含んでなる溶液は、1または複数の緩衝塩、溶媒(例えば水)ならびに/または他のタンパク質分子およびペプチド分子を含むことが可能であり、その場合も所望のタンパク質分子およびペプチド分子はなお、その出発材料に関して「単離された」タンパク質分子およびペプチド分子とみなすことができる。
【0041】
用語「細胞溶解組成物または試薬」とは、本明細書中で使用する場合、単離しようとするタンパク質分子およびペプチド分子の供給源として使用される細胞、組織または生物体の溶解、破裂または孔形成をもたらし、その結果、その細胞、組織または生物体の供給源中に含まれている可溶性のタンパク質分子およびペプチド分子(またはそれらの一部分)をこの細胞、組織または生物体から放出させる組成物をいう。本発明によれば、これらの細胞、組織または生物体が、完全に溶解され/破壊され/透過性とされる必要はなく、この供給源の細胞、組織または生物体中に含まれる全てのタンパク質分子およびペプチド分子が、この細胞、組織または生物体から放出される必要もない。細胞破壊用組成物または細胞溶解組成物は、細胞、組織または生物体中に含まれる目的の(可溶性および不溶性の)タンパク質分子またはペプチド分子全体の少なくとも50%以上を放出することが好ましいであろう。
【0042】
用語「細胞膜改変化合物」とは、本明細書中で使用する場合、細胞性供給源から所望のタンパク質の一部または全てを放出させるための任意の機構によって、タンパク質分子およびペプチド分子の細胞性供給源の細胞膜の透過性を変化させるか、あるいは同供給源の膜および/または細胞壁の完全性を破壊する(すなわち、膜および/もしくは細胞壁を溶解するか、または膜および/もしくは細胞壁に孔を形成させる)任意の化合物または化合物の組合せをいう。一般に、細胞膜改変化合物には、ポリミキシンB(例えば、ポリミキシンB1およびポリミキシンB2)およびポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)などの抗生物質;アルキルグルコシドもしくはアルキルチオグルコシド(オクチル−β−D−1−チオグルコピラノシドなど)(本明細書中でその全体が参考として援用される米国特許第6,174,704号を参照のこと);カルボキシプロピルベタイン(CB−18)などのベタイン界面活性剤;臭化トリメチルオクタデシルアンモニウム(TMA−18)などの第4級アンモニウム塩;プロタミン;トリエチルアミン(TEA)およびトリエタノールアミン(TeolA)などのアミン;ならびに孔形成性の(抗菌性の)ポリリジンペプチド(例えば、ランチビオティックであるナイシン)などのリジンポリマー;ならびにマガイニン、メリチン、ホスホリパーゼAおよびホスホリパーゼA活性化ペプチド(PLAP)などの神経毒など、種々の薬剤が含まれるが、これらは細胞膜に孔を形成し、かつ/または細胞膜の既存の孔を広げる。本明細書中で全体が参考として援用される、モルブ(Morbe )ら、マイクロバイオロジカル・リサーチ誌(Microbiol.Res.)、1997年、第152巻、385〜394ページを参照のこと。
【0043】
用語「疎水性−親油性バランス値」または(HLB)は、本明細書中で使用する場合、水中での界面活性剤の挙動および溶解性に関する界面活性剤の分類をいう。HLB値は、非イオン性界面活性剤について計算することが可能であり、他の界面活性剤について実験
的に決定することも可能である。HLB値の規模は、1〜40である。HLBが増大するにつれて、その界面活性剤中の親水性基が増え、その界面活性剤はより水溶性となる。一般に、3〜6のHLBは油中水乳化剤を示し、7〜9のHLBは湿潤剤を示し、8〜18のHLBは水中油乳化剤を示し、13〜15のHLBは界面活性剤を示し、15〜22のHLBは可溶化剤を示す。以下の参考文献は、HLBについてのさらなる情報を提供している:グリフィン,ダブリューシー(Griffin, WC )、「非イオン性界面活性剤のHLB価の算出(Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants)」、ジャーナル・オブ・ザ・ソサイエティ・オブ・コスメティック・ケミスツ誌(Journal of the Society of Cosmetic Chemists )、第5巻(1954年)、249〜256ページ;グリフィン,ダブリューシー(Griffin, WC )、「HLBによる界面活性剤の分類(Classification of Surface-Active Agents by 'HLB')」、ジャーナル・オブ・ザ・ソサイエティ・オブ・コスメティック・ケミスツ誌、第1巻(1949年)、311〜326ページ;「アトラスのHLBシステム(The Atlas HLB System)」、第4刷、アトラスケミカルインダストリーズ社(Atlas Chemical Industries )[米国デラウエア州ウィルミントン(Wilmington)所在]、1963年;「エマルジョン(Emulsions )」、ウルマン工業化学百科事典(Ullmans's Encyclopedia of Industrial Chemistry)、第5版、1987年;フォックス,シー.(Fox, C. )、「乳化剤選択の論拠(Rationale for the Selection of Emulsifying Agents )」、コスメティクス・アンド・トイレタリーズ誌(Cosmetics & Toiletries)、第101.11巻(1986年)、25〜44ページ;ガルシア,エイ.(Garcia, A.)、ジェイ.ラシェーズ(J. Lachaise )およびジー.マリオン(G. Marion )、「乳化剤に求められる親水‐親油バランスの研究(A Study of the Required Hydrophile-Lipophile Balance for Emulsification )」、ラングミュア誌(Langmuir)、第5巻(1989年)、1215〜1318ページ;ならびにグリフィン,ダブリュー.シー.(Griffin, W.C. )「エマルジョン(Emulsions )」、カーク・オスマー化学大辞典(Kirk
Othmer Encyclopedia of Chemical Technology )、第3版、1979年。
【0044】
本明細書中で使用されているような、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、分子生物学および細胞生物学の分野において使用されるその他の用語は、適用可能な分野の当業者には一般的に理解されよう。
【0045】
B.タンパク質およびペプチドの供給源
本発明の方法、組成物およびキットは、任意の細胞性供給源(種々の細胞、組織、器官または生物体を含む)由来のタンパク質分子およびペプチド分子の単離に適切であり、細胞性供給源は、天然のものでもよいし、または様々な市販の供給源(米国メリーランド州ロックビル所在のアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection: ATCC);米国メイン州バーハーバー(Bar Harbor)所在のジャクソンラボラトリーズ社(Jackson Laboratories);米国ワシントン州カークランド(Kirkland)所在のセルシステムズインコーポレーテッド社(Cell Systems,Inc. );米国カリフォルニア州ラホヤ(La Jolla)所在のアドバンストティシューサイエンシズ社(Advanced Tissue Sciences)など)を介して入手してもよい。細胞性のタンパク質およびペプチドの供給源として使用され得る細胞は、原核生物(エシェリキア属のメンバー(特に大腸菌)、セラチア属のメンバー、サルモネラ属のメンバー、スタフィロコッカス属のメンバー、ストレプトコッカス(Streptococcus )属のメンバー、クロストリジウム(Clostridium )属のメンバー、クラミジア(Chlamydia )属のメンバー、ナイセリア(Neisseria )属のメンバー、トレポネマ(Treponema )属のメンバー、マイコプラズマ(Mycoplasma)属のメンバー、ボレリア(Borrelia)属のメンバー、ボルデテラ(Bordetella)属のメンバー、レジオネラ(Legionella)属のメンバー、シュードモナス(Pseudomonas )属のメンバー、マイコバクテリウム(Mycobacterium )属のメンバー、ヘリコバクター(Helicobacter)属のメンバー、アグロバクテリウム(Agrobacterium )属のメンバー、コレクトトリチューム(Collectotrichum )属のメンバー、リゾビウム(Rhizobium )属のメンバーおよびス
トレプトマイセス(Streptomyces)属のメンバーを含む細菌)または真核生物(真菌もしくは酵母、植物、原生生物および他の寄生生物、ならびにヒトおよび他の哺乳動物を含む動物など)であり得る。哺乳動物の組織もしくは細胞(例えば、脳、腎臓、肝臓、膵臓、血液、骨髄、筋肉、神経、皮膚、尿生殖器、循環系、リンパ系、胃腸および(例えば、内胚葉起源または外胚葉起源の)結合組織供給源由来の組織もしくは細胞、ならびに哺乳動物(ヒトを含む)の胚または胎仔由来の組織もしくは細胞)もまた、タンパク質分子およびペプチド分子の供給源として使用するのに適切である。タンパク質およびペプチドの適切な供給源はまた、所望のタンパク質およびペプチドを発現し得るプラスミド、ファージミド、コスミド、ウイルス、ファージまたは他のDNA分子を保有する上記の任意の細胞でもよい。これらの細胞、組織および器官は、正常な細胞株、初代細胞株、形質転換細胞株もしくは樹立された細胞株でもよいし、あるいは(細菌、真菌もしくは酵母、AIDSを含むウイルスによって引き起こされる)感染性疾患もしくは寄生生物、遺伝的もしくは生化学的な病変(例えば、嚢胞性線維症、血友病、アルツハイマー病、精神分裂病、筋ジストロフィーまたは多発性硬化症)、または癌および癌性プロセスに関与するものなど病理学的な細胞、組織および器官でもよい。本発明の方法、組成物およびキットは、小さい可溶性のタンパク質およびペプチド(例えば、1000kD以下、好ましくは約1〜100kD、最も好ましくは約1〜50kDのタンパク質またはペプチド)の単離に充分適している。より大きい分子量のタンパク質(例えば、1000kDより大きいタンパク質)については、これらのタンパク質の放出を補助するための添加物としてリゾチームが使用されてもよい。本発明の方法は、生物学的宿主において発現され、封入体を形成するタンパク質分子またはペプチド分子の単離のために特に充分適している。封入体からタンパク質分子またはペプチド分子を放出するために、尿素またはグアニジン−HClなどの試薬が、封入体と関連するタンパク質分子およびペプチド分子の放出を補助するための補助剤として使用されてもよい。
【0046】
特に好ましい態様において、本発明の方法は、組換えタンパク質および組換えペプチドを発現し得る宿主中に取り込まれたDNAから発現される組換えタンパク質分子および組換えペプチド分子の単離において有用である。特に好ましいタンパク質分子およびペプチド分子は、タンパク質ライブラリーまたはペプチド・ライブラリーの一部である。このようなライブラリーには、ランダムなポリヌクレオチド配列によってコードされる完全に新規のアミノ酸配列の集団が含まれるがこれに限定されず、またはこのようなライブラリーは、ランダムに生成された変異タンパク質および変異ペプチドのライブラリーもしくは集団でもよい。当業者ならよく知っていようその他の細胞、組織、ウイルス、器官および生物体も、本発明に従って単離されるタンパク質分子およびペプチド分子の抽出および調製のためのタンパク質分子およびペプチド分子の供給源として使用され得る。
【0047】
b.細胞溶解組成物
本発明は、1つまたは複数の細胞を破壊または溶解する細胞溶解組成物に関する。これらの細胞は、細胞培地中に存在していてもよいし、または凍結ペレットもしくは非凍結ペレットとして存在してもよい。本発明の1実施形態において、この細胞溶解組成物は、(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する、少なくとも1種の界面活性剤;および(b)少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる。この組成物は、水溶液でもよいし、または使用前に水もしくは緩衝溶液中に再構成される固体の形態でもよい。細胞溶解組成物の好ましい形態は、1×溶液または濃縮溶液(例えば、(特に好ましくは)10×)などの水溶液である。1×溶液が細胞ペレットに直接添加されてもよいし、濃縮物が細胞培地に直接添加されてもよい。10×濃縮溶液が使用される場合、1容量の10×溶液が9容量の細胞培地と混合されて、該細胞混合物中の細胞溶解試薬濃度を最終的に1×とすることが好ましい。
【0048】
界面活性剤は、細胞溶解組成物の約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)の範
囲、好ましくは約0.01%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲、最も好ましくは約1%(w/v)〜10%(w/v)の範囲の量で、同組成物中に存在する。10×濃縮物の形態の細胞溶解試薬を、本明細書中に記載される特定の適用において細胞培地に添加する場合、界面活性剤の好ましい終濃度は、約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の範囲である。界面活性剤は、約11〜約16の範囲の疎水性−親油性バランス値を有する非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群より選択され得る。このような界面活性剤の商業的供給源は、これもまた本明細書中で参考として援用される、「マカッチャンの乳化剤と界面活性剤(McCutcheon's EMULSIFIERS AND DETERGENTS )」、北米版、2002年、エムシーパブリッシングカンパニー社マカッチャン部門(McCutcheon Division、MC Publishing Company )中に見出され得る。非イオン性界
面活性剤の適切な例(限定するものではない)には、アルキルアルコールエトキシレート、アルキルエステルエトキシレート、ポリプロピレンオキシド、ソルビトールアルキルエステル、グリセロールアルキルエステル、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー;ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル(例えば、米国デラウエア州ウィルミントン(Wilmington)所在のアイシーアイアメリカズ社(ICI Americas)から入手可能な商品名Brijとして販売されているもの)、商品名Tween(米国デラウエア州ウィルミントン所在のアイシーアイアメリカズ社)として販売されているポリ(オキシエチレン)ソルビタンエステルが挙げられる。好ましい非イオン性界面活性剤には、商品名Tergitol(R)NP(米国コネチカット州ダンバリー(Danbury )所在のユニオンカーバイド社(Union Carbide ))として販売されているエトキシ化ノニルフェノールまたは商品名Triton X(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア所在のロームアンドハース社(Rohm & Haas ))として販売されているオクチルフェノキシポリエトキシエタノールなどの、エトキシ化アルキルフェノールが挙げられる。
【0049】
カチオン性界面活性剤の適切な例(限定するものではない)には、脂肪族アミンまたはエトキシ化獣脂アミンのエチレンオキシド縮合物が含まれる。好ましいカチオン性界面活性剤には、米国オハイオ州シンシナティ(Cincinnati)所在のヘンケルコーポレーション社(Henkel Corp.)から商品名Trymeenのもとで販売されているエトキシ化アミン、および米国ウィスコンシン州ミルトン(Milton)所在のトマープロダクツインコーポレイテッド社(Tomah Products, Inc.)から入手可能なTomah Eシリーズとして販売されているエトキシ化アミンが挙げられる。
【0050】
本発明における使用のために適切ないくつかの界面活性剤(限定するものではない)は、米国ニュージャージー州クランベリー(Cranberry )所在のロディア社(Rhodia)から入手可能な商品名Rhodameen(R)VPとして販売されているエトキシ化脂肪アミンなど、非イオン性の特性およびカチオン性の特性の両方を有するものと特徴付けられる。
【0051】
細胞膜改変化合物の適切な例(限定するものではない)には、抗生物質、アルキルグリコシドもしくはアルキルチオグリコシド、ベタイン界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アミン、短鎖リン脂質(1,2−ジヘプタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DHPC)など)および孔形成性ペプチドが含まれる。代表的な抗生物質には、硫酸ポリミキシンBまたはバンコマイシンが含まれるが、限定するものではない。好ましい抗生物質は、一般にポリミキシンBと称される、ポリミキシンB1とポリミキシンB2との混合物である。所望のタンパク質またはペプチドの一部または全てを放出するために、宿主の細胞膜または細胞壁を溶解させるか、あるいは宿主の細胞膜または細胞壁に孔を形成させるのに充分な任意の適切な量の細胞膜改変化合物が、細胞溶解組成物中で使用され得る。好ましい細胞膜改変化合物であるポリミキシンBが細胞溶解組成物中で使用される場合、ポリミキシンBの存在量は一般に、約0.025%(w/v)〜約0.25%(w/v)の範囲である。
【0052】
別の好ましい細胞膜改変化合物は、アルキルグリコシドまたはアルキルチオグリコシドである。代表的なアルキルグリコシドまたはアルキルチオグリコシドには、オクチル−β−D−1−チオグルコピラノシド(またはオクチルチオグルコシド)が含まれる(限定ではない)。米国特許第6,174,704号(その全体が本明細書中で参考として援用される)は、宿主細胞から組換えタンパク質を調製および抽出する方法を提供している。この方法は、細胞を溶解させると同時に他の宿主細胞由来のタンパク質から目的のタンパク質を抽出するために、本質的に1%のオクチルチオグルコシド(OTG)を含んでなる試薬溶液を使用している。本発明では、充分に細胞を溶解することと満足のいくタンパク質純度を得ることをいずれも達成するために、OTGに加えて少なくとも1種の界面活性剤が必要であることが、思いがけず発見された。さらに、より高い濃度のOTG(例えば、米国特許第6,174,704号で使用された1%(w/v))を用いれば溶解性がより高まるにもかかわらず、そのような高濃度のOTGを含む細胞溶解組成物は、ある種のタンパク質を不活化する傾向も強いことが、思いがけず発見された。従って、細胞の充分な溶解とタンパク質の活性との間の注意深いバランスが非常に重要である。本発明の1実施形態において、OTGは、細胞培地に直接添加される10×細胞溶解組成物中の細胞膜改変化合物として使用され、このときOTGの望ましい濃度は、少なくとも4%(w/v)かつ10%(w/v)未満、好ましくは4%(w/v)〜6%(w/v)である。従って、1×細胞溶解組成物におけるOTGの実用上の最適な終濃度は、少なくとも0.4%(w/v)かつ1%(w/v)未満、好ましくは0.4%(w/v)〜0.6%(w/v)である。しかし、タンパク質またはペプチドが天然の構造または活性を有する必要のない場合、溶解/破壊用の試薬についての制限は必要ない。細胞溶解組成物は、細胞培地または懸濁物(細胞ペレットが細胞溶解組成物中に懸濁される場合)において、pHを約6.5〜9.0、好ましくは約7.0〜約8.0の範囲に維持するのに有効な量の緩衝塩を含む。適切な緩衝剤(限定するものではない)には、HEPES、PIPES、トリス塩酸塩(Tris−HCl)およびMOPSが含まれる。
【0053】
その後いずれの精製手順が使用されるかに依存して、任意の成分が、細胞溶解組成物の一部として、または別個に添加されるべき補助剤として含まれ得る。任意の成分には、濃度約1%の消泡剤;リゾチーム、リティカーゼ、ザイモリアーゼ、ノイラミニダーゼ、ストレプトリシン、セルリシン(cellulysin)、ムタノリシン(mutanolysin)、キチナーゼ、グルカラーゼ(glucalase)またはリソスタフィン(lysostaphin)などの酵素(約0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度);約1mM〜5Mの濃度の、1種または複数の無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化リチウムまたは塩化プラセオジミウム);プロテアーゼ阻害剤(例えば、フッ化フェニルメチルスルホニル、トリプシン阻害剤、アプロチニン、ペプスタチンA)、0.1mM〜10mMの濃度の還元剤(例えば、2−メルカプトエタノールおよびジチオトレイトール);キレート剤(例えば、最も好ましくは約1mM以下の濃度のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(NaEDTA)、EGTA、CDTA);1μg/ml〜400μg/mlの範囲の濃度の1種または複数のリボヌクレアーゼ(RNase A、T1、T2など)、または上記の任意の組み合わせが含まれる。DNaseI濃度は、1単位〜100単位(10,000単位/mg)の範囲であり得る。
【0054】
c.方法
本発明はまた、宿主細胞からタンパク質を単離するための方法に関する。本発明のこの態様に従う方法は、細胞を本明細書中に記載されるような細胞溶解組成物と接触させて、細胞を溶解させた後に所望のタンパク質の全てまたは一部分を放出させる工程からなる。放出されたタンパク質を、溶解物からさらに分離することも可能である。本発明の1実施形態において、宿主細胞からタンパク質を回収するための方法が提供され、この方法は、
所望のタンパク質を有する細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;ならびに
細胞を、該細胞の溶解およびその後のタンパク質の放出をもたらすのに充分な量の組成物と接触させる工程からなる。
【0055】
本発明の実施において、細胞膜/細胞壁の完全性を破壊することによって細胞を溶解させ、続いて細胞性供給源から所望のタンパク質の全部または一部を放出させるのに有効な任意の適切な量の組成物を使用すればよい。本発明の実施において、この組成物は、所望のタンパク質およびペプチドの天然のコンホメーションまたは機能を実質的に乱すことなく、細胞膜または細胞壁の完全性を破壊し、その結果、天然のコンホメーションまたは実質的に天然のコンホメーションを有するタンパク質またはペプチドが収集され得る。しかし、タンパク質またはペプチドの天然の構造が必要でなければ、溶解/破壊用の試薬についての制限は必要ない。一般に、細胞混合物中の界面活性剤の濃度は、約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲、通常は約0.01%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲、好ましくは約0.1%(w/v)〜約1%(w/v)の範囲である。本発明の別の実施形態において、宿主細胞からタンパク質を回収するための方法が提供され、この方法は、溶解物から放出された所望のタンパク質を分離する工程をさらに含む。この方法は、
所望のタンパク質を有する細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;
タンパク質を結合するための基材を提供する工程;
細胞を、該細胞を溶解させてタンパク質を放出させるのに有効な量の組成物と接触させる工程;
放出されたタンパク質を、この放出されたタンパク質が基材と結合するのに有効な条件下で基材と接触させる工程;
基材に結合したタンパク質を洗浄する工程;ならびに
基材に結合したタンパク質を回収する工程からなる。
【0056】
放出されたタンパク質の分離は、当該分野で公知の任意の適切な方法(タンパク質精製技術または該タンパク質に結合する基材(例えば、磁性または非磁性の樹脂)を使用するクロマトグラフィー技術など)によって達成され得る。本発明の実施において、所望のタンパク質は分離され、親和性クロマトグラフィー(例えば、ニッケル樹脂またはGST樹脂)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、沈殿(例えば、PEI、PEGまたは硫酸アンモニウムを用いる)などを使用してさらに精製され得る。適切なクロマトグラフィー樹脂は、例えば、その全体が本明細書中で参考として援用される米国特許出願第60/419,614号(2002年10月18日出願)、表題「分子を分離する組成物及び方法(Compositions and Methods of Separating Molecules)」(代理人事件番号B0174893)において記載されている。単離されたタンパク質は、意図された目的のために充分な純度である場合もあれば、またはさらなる精製手順(例えば、樹脂、抗体など)に供される場合もある。このような追加の精製により、望ましくない混入物、例えば、核酸、他のタンパク質およびペプチド、脂質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはタンパク質分子およびペプチド分子の活性を阻害ししたりさらなる操作(例えば、標識、タンパク質分解による切断、酵素活性の検出および定量など)を阻害したりする可能性のある化合物もしくは組成物の除去が容易となる。いかなる場合においても、このようなさらなる精製が行なわれる必要はなく、従って、本発明の方法によって得られるタンパク質は、標準的な生化学の技法およびタンパク質化学の技法によって直接操作され得る。
【0057】
本発明の好ましい態様において、1または複数の追加の精製用組成物(例えば、イオン交換樹脂、親和性樹脂、磁性ビーズまたは磁性樹脂、抗体、ニッケル樹脂、GST樹脂など)が、本発明に従って分離マトリックスと合わせて利用される。このような追加の精製は、別個の手順で達成されてもよいが、好ましい態様においては、追加の精製は本発明の分離方法と同時に、または本発明の分離方法と合わせて達成される。1態様において、1または複数の分離マトリックスならびに1または複数のタンパク質およびペプチド精製用組成物は、流体チャネルにおいて連続的に連結され、その結果、所望のタンパク質分子およびペプチド分子を含むサンプルは、1つのマトリックスから別のマトリックスへと通過し得る。
【0058】
放出されたタンパク質は、任意の適切な形式(例えば、ミニ・カラムを含むカラム形式、チューブ形式、ウェル形式、マルチ・ウェル・プレート形式など)で分離および/または精製され得る。本発明の1態様では、細胞の溶解および分離が同じ容器内で実施されることになる。1つの特に好ましい実施形態は、本明細書中に記載されるような高スループットの精製形式での、宿主細胞からのタンパク質またはペプチドの抽出および精製を含む。例えば、基材が、ウェルに入った細胞溶解物に添加されてもよい。次いでこの基材は、放出されたタンパク質を基材に結合させるための一定の時間、この細胞溶解物と共にインキュベートされる。その後、溶解物が除去され、基材に結合したタンパク質が洗浄用バッファーまたは洗浄溶液で1回または複数回洗浄されればよい。次いで、基材に結合したタンパク質は、溶出用バッファーまたは溶出溶液で1回または複数回基材を洗浄することによって、回収され得る。本発明の別の態様において、細胞溶解物は、ミニ・カラム中に含まれる基材を介して濾過され得る。タンパク質を基材に結合させるための所定の時間の後、この基材が任意の適切な洗浄用バッファーまたは洗浄溶液で1回または複数回洗浄され、かつ結合したタンパク質が任意の適切な溶出用バッファーまたは溶出溶液で1回または複数回基材を洗浄することによって基材から溶出され得る。望ましくない物質、例えば、脂質、核酸、溶解組成物の成分、またはタンパク質分子およびペプチド分子のさらなる操作もしくは分析を阻害し得る任意の他の物質は、所望のタンパク質分子およびペプチド分子を精製用の固定化組成物上に保持させる任意の適切な洗浄用バッファーまたは洗浄溶液を用いて除去され得る。所望のタンパク質分子およびペプチド分子を精製用の固定化組成物から除去するための任意の適切な溶出用バッファーまたは溶出溶液が、精製されたタンパク質分子およびペプチド分子を単離するために使用され得る。これらの手順のいずれかは、例えば96ウェルのプレートを使用して1種類または多種類のタンパク質またはペプチドを精製するための高スループットの精製形式に変形され得る。宿主細胞がウェル中に個々に添加されて、本発明の細胞溶解試薬を用いて溶解されればよい。次いで、各ウェル由来の溶解された混合物は、基材(例えば、タンパク質またはペプチドに結合するクロマトグラフィー樹脂)を有する別個のウェル中にピペッティングされ得る。望ましくない材料をすべて除去するために洗浄用バッファーで1回または複数回基材を洗浄した後、溶出用バッファーで1回または複数回この基材を洗浄することによって、タンパク質が基材から溶出され得る。
【0059】
本発明の別の実施形態において、高スループット形式でタンパク質分子のライブラリーをスクリーニングするための方法が提供される。例えば、ランダムなポリヌクレオチド配列または変異ポリヌクレオチド配列のライブラリーが、記載の本発明を使用して、96ウェル・プレートにおいて酵素活性または結合特性についてスクリーニングされてもよい。各々がライブラリーの1つのメンバーをコードするプラスミドを含む細菌のコロニーが、タンパク質合成の誘導後に溶解組成物を用いて溶解されてもよく、その結果放出されたタンパク質は、このタンパク質に結合する基材を使用して分離される。望ましくない物質をすべて除去するために基材が洗浄された後、緩衝水溶液および/または遠心分離を使用して基材からタンパク質分子が溶出され96ウェル・プレートのウェル中に収集されうる。
所望のリガンドまたは基材を含む試薬が96ウェル・プレートの各ウェルに添加され、次いで活性または結合の存在が、所望の活性または結合特性について適切であると考えられる任意の方法によって測定され得る。
【0060】
本発明の別の実施形態において、目的の特定のタンパク質またはペプチドについてランダムに生成された変異体または合成により生成された変異体のライブラリーをスクリーニングするための方法が提供される。変異体のライブラリーは、溶解用の96ウェル・プレートを使用して、相対的酵素活性について効率よくスクリーニングされ得る。さらに、スクリーニングは、足場(例えば、マルチ・ウェル・プレート、チップ、スライド、ウエハ、フィルタ、シート、チューブなど)上に本発明のタンパク質またはペプチドを固定することによって達成され得る。固定された本発明のタンパク質またはペプチドを含むこれらの足場は、タンパク質分子もしくはペプチド分子に結合する組成物(例えば、抗体)、タンパク質分子もしくはペプチド分子によって結合される組成物(例えば、リガンド)、または測定可能なパラメータ(例えば、ルミネセンス、色の変化、蛍光、化学ルミネセンスなど)の変化を引き起こす組成物のいずれかと接触させることが可能である。
【0061】
d.装置およびキット
本発明はまた、タンパク質を抽出および単離する際に使用するための装置に関する。従って、本発明の1実施形態において、この装置は、
(a)試験しようとするサンプルを入れることができるハウジング;
(b)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物;ならびに
(c)タンパク質を結合する少なくとも1種の基材からなる。
【0062】
ハウジングの適切な例(限定するものではない)には、ボックス、カートン、チューブ、マイクロスピン用チューブ、微量遠心分離チューブ、スピン・カートリッジ、マルチ・ウェル・プレート、バイアル、アンプル、バッグなどのような容器が含まれる。
【0063】
タンパク質を結合する基材の代表的な例(限定するものではない)には、タンパク質またはペプチドを結合するクロマトグラフィー用の樹脂または非樹脂が含まれる。タンパク質またはペプチドを結合するクロマトグラフィー樹脂の例には、イオン交換樹脂、親和性樹脂、磁性ビーズもしくは磁性樹脂、抗体、ニッケル樹脂、GST樹脂などが含まれる。これらの樹脂には、抗体、タンパク質リガンド、タンパク質またはペプチドにそれ自体が共有結合し得る組成物などがさらに結合していてもよい。適切なクロマトグラフィー樹脂は、例えば、その全体が本明細書中で参考として援用される米国特許出願第60/419,614号(2002年10月18日出願)、表題「分子を分離する組成物及び方法(Compositions and Methods of Separating Molecules)」(代理人事件番号B0174893)において記載されている。本発明の別の実施形態において、この装置は、サンプル中のタンパク質を検出するかまたはサンプル中のタンパク質の量を定量するための手段、例えば該タンパク質またはペプチドに結合する抗体;該タンパク質またはペプチドの基質;該タンパク質またはペプチドに対するリガンド;該タンパク質の補因子;該タンパク質またはペプチドを修飾する酵素;および該タンパク質またはペプチドを修飾する組成物など、からさらになる。
【0064】
本発明はまた、タンパク質分子およびペプチド分子を単離する際に使用するためのキットに関する。本発明のこのようなキットは、ボックス、カートン、チューブ、マイクロスピン・チューブ、微量遠心分離チューブ、スピン・カートリッジ、マルチ・ウェル・プレート、バイアル、アンプル、バッグなどのような1つまたは複数の容器中に含まれ得る、または前記1つまたは複数の容器を含み得る1種または複数の構成要素からなり得る。1実施形態において、本発明のキットは、
(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物;ならびに
(b)キットを使用するための指示書からなる。
【0065】
このキットにおいて使用される組成物は、固体の形態でもよいし、濃縮された水溶液もしくは使用準備のできた希釈状態の水溶液の形態でもよい。
本発明の別の実施形態において、サンプル中のタンパク質の存在について検出するための診断キットが提供される。このキットは、
(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物;
(b)サンプル中に存在するタンパク質を検出または定量するための手段;ならびに
(c)キットを使用するための指示書からなる。
【0066】
本発明のキットはさらに、タンパク質および/またはペプチド精製用のさらなる組成物、洗浄用バッファー、溶出用バッファー;本発明に従って単離または精製されるタンパク質分子およびペプチド分子をさらにタンパク質プロセシング、分析または使用するのに有用であり得る1種または複数の追加の構成要素または試薬(例えば、タンパク質およびペプチドの精製、標識または検出において有用な構成要素または試薬)からなり得る。このような試薬または構成要素には、例えば、精製において補助するためにアミノ酸配列を結合する1もしくは複数の基材(例えば、ニッケル樹脂およびGST結合樹脂)、または当業者によく知られる他の試薬が含まれ得る。タンパク質の検出および/または定量、ならびにタンパク質純度のレベルの確認は、当該分野で公知の任意の従来の手段によって実施され得る。例えば、タンパク質またはペプチドの検出および/または定量は、イムノアッセイなど任意の方法でタンパク質またはペプチドの活性または結合を測定することによって、あるいはSDS−PAGE分析によって実施され得る。例えば、アール.ケイ.スコープス(R.K. Scopes )、「タンパク質精製:原理と実践(Protein Purification: Principles and Practice )」、第3版、シュプリンガー・フェアラーク社(Springer-Verlag )、1994年を参照のこと。
【実施例1】
【0067】
(細胞溶解試薬の調製)
この実施例では、幾つかの代表的な細胞溶解試薬について説明する。細胞ペレット用に、1×濃度の水性配合物の細胞溶解試薬を使用することが好ましい。細胞培地用には、10×濃度の細胞溶解試薬が好ましい。
【0068】
(a)1×濃度の細胞溶解試薬:
この1×水性配合物は、細胞ペレット(凍結または非凍結)からタンパク質またはペプチドを抽出するのに有用である。ペレットに加える配合物の量は一般に、細胞の光学密度に基づく。例えば、200ulの1×配合物を、OD600が1.8/1mlの細胞を溶解するのに使用する。この配合物は、以下の成分を含む:
100mM HEPES、pH7.5、
1%TritonX−100(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ(Sigma )、カタログ番号T−9284)
1%MazuDF204(消泡剤、米国イリノイ州グルニー(Gurnee)所在のピーピージーインダストリーズ(PPG Industries)、カタログ番号213306−2)
0.4%Tomah(精製TomahE−18−15、米国イリノイ州ロスコー(Roscoe)所在のバイオアフィニティシステムズ(Bioaffinity systems )、カタログ番号016483)
10mMイミダゾール(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ;カタログ番号I−2399)
380U硫酸ポリミキシンB(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ;カタログ番号P−1004、ロット22K2517)
(b)リゾチームを含む1×細胞溶解試薬
この1×水性配合物は、細胞ペレット(凍結または非凍結)から比較的大きなタンパク質またはペプチド(>400kD)の抽出を改善するのに有用である。ペレットに加える配合物の量は一般に、細胞の光学密度に基づく。例えば、200ulの1×配合物を、OD600が1.8/1mlの細胞を溶解するのに使用する。この配合物は、以下の成分を含む:
100mM HEPES、pH7.5、
1%TritonX−100(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ、カタログ番号T−9284)
1% MazuDF204(消泡剤、米国イリノイ州グルニー所在のピーピージーインダストリーズ、カタログ番号213306−2)
0.4%Tomah(精製TomahE−18−15、米国イリノイ州ロスコー所在のバイオアフィニティシステムズ、カタログ番号016483)
10mMイミダゾール(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ;カタログ番号I−2399)
380U硫酸ポリミキシンB(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ;カタログ番号P−1004、ロット22K2517)
任意選択で、リゾチーム(米国ミズーリ州セントルイス所在のシグマ)を加えることが可能である。
【実施例2】
【0069】
(大腸菌からのウミシイタケ(Renilla )ルシフェラーゼの放出)
界面活性剤およびポリミキシンBを含む溶液で細胞を処理すると、酵素(ウミシイタケ・ルシフェラーゼ)によって測定される細胞質タンパク質が、大腸菌細胞から放出される。驚くべきことに、この酵素の放出には、処理中の培養物の光学密度の観察によって測定されるような通常の細胞溶解を伴わない。
【0070】
Hisタグ付きのウミシイタケ・ルシフェラーゼを発現する大腸菌細菌を、ルリア(Luria )ブロス[Lブロス]+10ng/mlテトラサイクリン[Tet][250mlフラスコ中に培地50ml]中で、200RPMで回転する振とう培養器中で一晩37℃において増殖させた。この大腸菌株は、ヒスチジン・タグ付きのウミシイタケ・ルシフェラーゼを発現するベクターを用いて、大腸菌を形質転換することによって作製した。このベクターは、従来の方法によって構築した。マニアティス(Maniatis)ら、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第二版、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在のコールドスプリングハーバーラボラトリー社(Cold Spring Harbor Laboratory )、1982年を参照のこと。一晩培養した後、細菌細胞を新鮮なLブロス+Tetで1:100に希釈し、振とう培養器で37℃において、600nmで0.6の密度まで増殖させた[OD600 0.6]。ウミシイタケの発現は、濾過滅菌した1M溶液のイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度1mMまで加えることによって誘導した。この培養物を、使用前に振とう培養器で37℃においてさらに4時間増殖させた。
【0071】
リゾチーム[Lysozyme、シグマ L6876、ロット51K7028]の10mg/ml溶液は、固体状の酵素を20mMのTris−HClバッファー(pH7.3)に溶解することによって調製した。
【0072】
10×細胞溶解試薬[CLR配合物A]配合物は、25mlの1M HEPESバッファー(pH7.5)、5mlのTritonX100[米国ミズーリ州セントルイス所在
のシグマT9284、ロット118H0297]、2mlのTomah E−18−15[米国ウィスコンシン州トマー所在トマーケミカルカンパニー(Tomah Chemical Company)により供給されたもの]、25mgのポリミキシンB[シグマP−1004、ロット22K2517]を混合し、濾過処理したnanopure(R)水を加えて溶液を50mlに調整することによって作製した。
【0073】
ウミシイタケ・ルシフェラーゼを発現している大腸菌培養物1mlを、1〜12にラベル付けした12本のチューブそれぞれに加えた:チューブ1〜3、さらなる添加なし;チューブ4〜6、10ulの10mg/mlリゾチーム;チューブ7〜12、100ulのCLR配合物A、;チューブ10〜12、100ulのCLR配合物Aおよび10ulの10mg/mlリゾチーム。これらのチューブを10回上下反転して混合し、次いで濁度のレベルを肉眼によって調べた:チューブ1〜3、溶液が非常に濁っている;チューブ4〜6、溶液が非常に濁っている;チューブ7〜9、溶液の濁りがわずかに少ない;チューブ10〜12、溶液はあまり濁っていない。
【0074】
900ulの20mM Tris−HCl(pH7.3)および100ulの上記溶液を、12個の使い捨てプラスチック・キュベットそれぞれに加えた。20mM Tris−HCl(pH7.3)を用いて600nmにおける光学密度(OD600)について機器のバックグラウンド値をゼロに設定した後、溶液の光学密度を測定した。以下の読み取り値が記録された:
チューブ番号 OD600
チューブ1 0.3193
チューブ2 0.3266
チューブ3 0.3266
チューブ4 0.3264
チューブ5 0.3261
チューブ6 0.3033
チューブ7 0.1779
チューブ8 0.1789
チューブ9 0.1779
チューブ10 0.0020
チューブ11 0.0012
チューブ12 0.0013
これらのデータは、培養物について実施した希釈に関して吸光度測定値を調整した後、図1Aにグラフとして表されている。
【0075】
チューブ10〜12中の溶液の光学密度の劇的な低下は、細胞が完全に溶解したことを充分に示すものである。チューブ7〜9中では溶液の光学密度の測定可能な低下がみられたが、その光学密度の低下は、チューブ10〜12中で見られたものほど劇的ではなかった。これらのデータを図1Aにグラフによって表す。
【0076】
チューブ1〜12中の残りの溶液を、微量遠心分離機において4℃で10分間、全速で遠心し、上清をラベル付けした新たなチューブに移した(注:チューブ10〜12にはペレットはほとんど見られなかった。少量[約20ul]の上清を上記チューブに残し、偶発的にペレットが乱れるのを防いだ)。1mlのCLR配合物A、9mlのnanopure(R)水、および100ulの10mg/mlのリゾチームから構成される800u1の溶液中に、ペレットを再懸濁させた。
【0077】
3mlのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用バッファー[米国ウィスコンシン州マディソン(Madison )所在のプロメガ コーポレイション(Promega Corp)、E29
0A、ロット13327801]を、30ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用基質[プロメガ コーポレイション、E289A、13358301]と混合して、ウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用試薬を作製し、その試薬の100ulサンプルを24本の発光測定装置用チューブのそれぞれの中に入れた。次いで、取っておいた上清2マイクロリットルのサンプル、および再懸濁ペレットから2マイクロリットルを、そのそれぞれのチューブに加えた。3秒間渦流混合(vortex)することによってチューブを混合し、Turner TD20/20発光測定装置(米国カリフォルニア州サニーベール(Sunnyvale )所在のターナーデザインズ(Turner Designs)を使用して、発光を測定した。以下の相対光度単位(RLU)の測定値を観察した:
【0078】
【表1】

予想されたように、ほぼ全てのウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性が、チューブ1〜3のペレット・サンプル中に見出された。同じく予想どおり、ほぼ全てのウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性が、チューブ4〜6のペレット・サンプル中に見出された。なぜなら、これらの溶液中では光学密度の低下はほとんど観察されず、リゾチームだけで大腸菌細胞が溶解されるとは予想されないからである。さらに予想どおり、ほぼ全てのウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性が、チューブ10〜12の上清サンプル中に見出されたが、このことは、光学密度が劇的に低下し、これらの細胞が完全に溶解されて細胞の細胞質タンパク質であるウミシイタケ・ルシフェラーゼが培地中に放出されたであろうことが示唆されたからである。驚くべきことに、チューブ7〜9中の溶液は光学密度の低下がごくわずかであった(細胞がほぼ完全な状態であったことが示唆される)が、ほぼ全てのウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性が上清サンプルに見出されており、これらの細胞に与えられた処理によって酵素が培地中に放出されたことが示唆される。このデータを図1Bにグラフによって表す。
【実施例3】
【0079】
(大腸菌から培地中へ酵素を失活させずに放出させる能力に関する、界面活性剤のスクリーニング)
この実施例では、幾つかの界面活性剤について、単独およびポリミキシンBと組み合わ
せて、大腸菌細胞から細胞質タンパク質を放出させる能力に関して試験した。
【0080】
以下の界面活性剤溶液ストックを調製した:
2グラムのデオキシコール酸、ナトリウム塩[シグマ D6750、102H0811]を脱イオン水に溶かして、4%(v/v)のDOC溶液を作製した。
【0081】
2グラムのラウリル硫酸、ナトリウム塩[シグマ L4390、73H0057]を脱イオン水に溶かして、4%(v/v)のSDS溶液を作製した。
2グラムのTomah(R)E−14−5[トマーケミカルカンパニー、ロット71002−1]を脱イオン水に溶かして、4%(v/v)のTomah E−14−5溶液を作製した。
【0082】
2グラムのTomah E−14−2[トマーケミカルカンパニー、ロット70224−1]を脱イオン水に溶かして、4%(v/v)のTomah E−14−2溶液を作製した。
【0083】
2グラムのTomah E−18−15[トマーケミカルカンパニー、ロット60911−1]を脱イオン水に溶かして、4%(v/v)のTomah E−18−15溶液を作製した。
【0084】
2グラムのTomah E−18−5[トマーケミカルカンパニー、ロット60911−1]を脱イオン水に溶かして、4%(v/v)のTomah E−18−5溶液を作製した。
【0085】
2ミリリットルのRhodameen(R)PN−430[ロディア、ノースアメリカンケミカルズ(Rhodia、North American Chemicals )、ロットSP8B017049]
を脱イオン水と混合して、4%(v/v)のRhodameenPN溶液を作製した。
【0086】
2ミリリットルのRhodameen VP532/SPB[ロディア、ノースアメリカンケミカルズ、ロットSP8B017049]を脱イオン水と混合して、4%(v/v)のRhodameenVP溶液を作製した。
【0087】
2ミリリットルのTrymeen(R)6607[クラフトケミカルカンパニー(Kraft Chemical Company)、ロット8A0120]を脱イオン水と混合して、4%(v/v)のTrymeen6607溶液を作製した。
【0088】
2ミリリットルのTritonW−30[シグマケミカルカンパニー(Sigma Chemical
Company)、W−30、ロット18F0766]を脱イオン水と混合して、4%(v/v)のTritonW−30溶液を作製した。
【0089】
10ミリリットルのTween20(R)[シグマケミカルカンパニー、P7949、ロット15H09293]を脱イオン水と混合して、20%(v/v)のTween20溶液を作製した。
【0090】
10ミリリットルのTritonX−100(R)[シグマケミカルカンパニー、T9284、ロット118H0297]を脱イオン水と混合して、20%(v/v)のTritonX−100溶液を作製した。
【0091】
10ミリリットルのTergitol(R)NP−9[シグマケミカルカンパニー、NP−9、ロット41KO156]を脱イオン水と混合して、20%(v/v)のTerg
itolNP−9溶液を作製した。
【0092】
10ミリリットルのTween80(R)[シグマケミカルカンパニー、P1754、ロット44H0121]を脱イオン水と混合して、20%(v/v)のTween80溶液を作製した。
【0093】
10ミリリットルのBRIJ(R)35[シグマケミカルカンパニー、P1254、ロット30K0198]を脱イオン水と混合して、20%(v/v)のBRIJ35溶液を作製した。
【0094】
ポリミキシンB、50mg、[シグマ P−1004、ロット22H2517]を水に溶かして、40mlのポリミキシンB溶液(10,000U/ml)を作製した。
his−タグ付きウミシイタケ・ルシフェラーゼ融合タンパク質プラスミドを含む大腸菌細胞の一晩培養物1mlを、テトラサイクリンを含む新鮮なLブロス50mlに加えた。この新しい培養物を振とう培養器において37℃で4時間インキュベートした時点で、1MのIPTGを同培養物に加えて終濃度1mMとした。この培養物をさらに2.5時間振とう培養器でインキュベートした時点で、培養物を溶解実験で使用した。
【0095】
1.5mlの微量遠心分離チューブに、A〜U、およびB1とラベル付けした。以下の細胞溶解溶液を調製し、一部をラベル付けしたチューブに分注した:
A 500ulの4%TritonW30溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure(R)水
B 500ulの4%DOC溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
C 500ulの4%ドデシル硫酸ナトリウム溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
D 500ulの4%RhodameenVP−532/SPB溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
E 500ulの4%RhodameenPN−430溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
F 500ulの4%Tomah E−14−5溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
G 500ulの4%Tomah E−18−15溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
H 500ulの4%Tomah E−14−2溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
I 500ulの4%Trymeen6607溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
J 100ulの20%Tween20溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、650ulのnanopure水
K 100ulのポリミキシンB溶液(10,000U/ml)、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
L Aと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
M Bと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
N Cと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
O Dと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
P Eと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
Q Fと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
R Gと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
S Hと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
T Iと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
U Jと同じ。ただし、100ulのnanopure水を100ulの10,000U/mlポリミキシンBに置き換えた
B1 250ulの1M HEPES(pH7.5)、750ulのnanopure水
チューブを閉じ、5分間渦流混合した。実証的観察によれば、チューブCおよびNの溶液は、混合後濁っていたようであり、チューブH、LおよびSの溶液は、混合後わずかに乳濁していたようであった。
【0096】
新たな0.5mlのプラスチック製微量遠心分離チューブにA〜UおよびB1とラベル付けし、上記の対応する1.5mlチューブ中の溶液50ulを、対応する0.5mlチューブに移した。この0.5ml微量遠心分離チューブに上述の細菌培養物200マイクロリットルを加え、3秒間渦流混合することによって混合した。次いでこの0.5mlチューブを微量遠心分離機で12,000RPMとして室温で5分間回転させた。上清をラベル付けした新しいチューブに移し、ペレットは−20℃のフリーザー中に入れた。
【0097】
ウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用試薬を実施例2と同様に作製し、その試薬100ulを発光測定装置用チューブに入れた。10マイクロリットルの上清を、実施例2と同様に調製した240ulの10×細胞溶解試薬配合物Aと混合した。希釈した上清の2連の5ulサンプルを発光測定装置用チューブに加え、同チューブを2秒間渦流混合し、TurnerTD20/20発光測定装置(米国カリフォルニア州サニーベール所在のターナーデザインズ)を使用して発光を測定した。
【0098】
−20℃で約30分間凍結させた後、実施例2で調製した10×細胞溶解試薬配合物A250ulを、細胞ペレットそれぞれに加えた。次いで細胞ペレットを、約5秒間の渦流混合処理によって再懸濁させた。2連の5マイクロリットルの再懸濁ペレットを、100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用試薬を含む発光測定装置用チューブに加え、溶液を2秒間混合し、該溶液によって発生した光を、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して測定した。以下の相対光度単位の読み取り値を記録した:
【0099】
【表2】

これらの結果は、ポリミキシンBとともに、あるいはポリミキシンBを含めずにSDSを使用する配合物[溶液CおよびN]などの、幾つかの界面活性剤配合物は、界面活性剤を含まない対照[溶液B1]またはバッファー中にポリミキシンBのみを含む溶液[溶液K]と比較して、酵素活性測定値の合計が非常に低いことを示している。ポリミキシンBを含む、あるいは含まないTween20含有溶液[溶液JおよびU]などの他の溶液は、相当な酵素活性を保持しているが、その活性の大部分は細胞ペレット画分中にある。しかしながら、Tomah E−18−15[溶液R]など、選択した幾つかの界面活性剤は、ポリミキシンBの存在下で細胞から相当量の酵素を放出させ、かつ測定される総酵素活性を大幅に低下させることもない。しかしながら、これらの界面活性剤の幾つかは、ポリミキシンBの不在下では[Tomah E−18−15溶液Gにより例示されるように]それほど多くの酵素は放出させない。Tomah E−18−15単独[溶液G]あるいはポリミキシンB単独[溶液K]ではいずれも細胞から実質的活性を有する酵素を放出しないので、これらを組み合わせて得られる溶液[溶液R]が細胞から相当量の酵素を放出させ、かつ培地中の酵素の活性を保持することが可能であることは驚きである。
【実施例4】
【0100】
(その他の界面活性剤の試験)
この実施例では、他の界面活性剤について、実施例3で使用した実験条件と同様の条件下で、活性を有するHis−タグ付きウミシイタケ・ルシフェラーゼを大腸菌から放出させる能力に関して試験する。
【0101】
実施例3で使用した培養物を作製するために使用した一晩培養物(約36時間齢)500マイクロリットルを使用して、50mlのLブロス+Tetに接種し、この培養物を、振とう培養器で30分間振とうしながら37℃で増殖させた時点で、1Mのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)50ulを培養物に加え、この培養物をさらに2.5時間増殖させてから以下の実験に使用した。以下の溶液を作製した。ストック溶液とは、実施例3で調製したストック溶液を指すことに留意されたい。
【0102】
溶液 組成
A 500ulのTomah E−18−15ストック溶液、250ulの1M
HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
B 500ulのRhodameenVP−532/SBPストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
C 500ulのTrymeen6607ストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
D 100ulのTween20ストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
E 100ulのBRIJ35ストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
F 100ulのTergitolNP9ストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
G 100ulのTritonX−100ストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
H 100ulのポリミキシンBストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
I 500ulのTomah E−18−5ストック溶液、250ulの1M HEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
Con 250ulの1M HEPES(pH7.5)、750ulのnanopure水
A’ Aと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulのポリミキシンBストック溶液を加えた。
【0103】
B’ Bと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulのポリミキシンBストック溶液を加えた。
C’ Cと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulのポリミキシンBストック溶液を加えた。
【0104】
D’ Dと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulのポリミキシンBストック溶液を加えた。
E’ Eと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulのポリミキシンBストック溶液を加えた。
【0105】
F’ Fと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulのポリミキシンBストック溶液を加えた。
G’ Gと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulの
ポリミキシンBストック溶液を加えた。
【0106】
I’ Iと同じ。ただし、nanopure水を100ul減らし、100ulのポリミキシンBストック溶液を加えた。
36本の1.5mlのプラスチック製微量遠心分離チューブに1〜36とラベル付けし、100ulの溶液Aをチューブ1および2に加え、100ulの溶液Bを3および4に加えるなどして、最後に100ulのI’をチューブ35および36に加えた。次いで、400マイクロリットルの培養物をチューブ1〜36に加え、チューブを5回上下反転して混合し、次いでチューブを微量遠心分離機で室温において12,000RPMで4分間回転させた。チューブ内の上清10ulを、290ulの50mM Tris−HCl(pH7.5)に加え、混合した。この希釈した上清5マイクロリットルを、発光測定装置用チューブに入った100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用試薬[実施例2参照]に加え、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、発光を測定した。以下の測定値が記録された:
【0107】
【表3】

前述のデータから示唆されるように、幾つかの界面活性剤配合物は、ポリミキシンBを含まない培地で処理した大腸菌細胞から、他の界面活性剤配合物に比べて多量の細胞質タンパク質を放出させることが可能である。さらに、多くの界面活性剤は、ポリミキシンBと組み合わせた場合に多くの細胞質タンパク質を培地に放出させる。例えば、Tomah
E−18−5、RhodameenVP532/SPB、Trymeen6607、およびTomah E−18−15[上記の表においてそれぞれチューブ17と18、3と4、5と6、および1と2で試験したもの]は、Tween20、ポリミキシンBおよびバッファーを含む配合物、またはバッファーのみの配合物[それぞれチューブ7と8、15と16、および19と20で試験したもの]に比べて大腸菌の細胞質物質を非常に多く放出させる(Hisウミシイタケ・ルシフェラーゼの放出により測定)。しかしながら、前述のように、一部の界面活性剤にポリミキシンBを加えることによって、界面活性剤のみあるいはポリミキシンBのみを使用するよりも効率よく活性タンパク質が放出される。例えば、Tomah E−18−5のみ(チューブ17および18)およびポリミキシンBのみ(チューブ15および16)と、Tomah E−18−5およびポリミキシンB(それぞれチューブ35および36)との相対光度単位を比較されたい。イオン性界面活
性剤(Tomah E−18−15など)および非イオン性界面活性剤(TritonX100など)のいずれも、ポリミキシンBなどの細胞膜改変化合物と組み合わせると、大腸菌から培地へとタンパク質を放出させる際に有効である可能性があることも、前述のデータから明らかである。このデータは、図2Aおよび図2Bにグラフによって表す。
【実施例5】
【0108】
(大腸菌からのHis−PPEルシフェラーゼの放出のHLB試験)
この実施例では、よく知られているHLB指標を有するさまざまな界面活性剤溶液について、ポリミキシンBと組み合わせて、大腸菌細胞から耐熱性ホタル・ルシフェラーゼ・タンパク質を放出させる能力に関して試験する。ヒスチジン・タグ付きの耐熱性ホタル・ルシフェラーゼを発現するベクターを用いて大腸菌を形質転換することによって、大腸菌株を作製した。このベクターは従来の方法によって構築した。マニアティス(Maniatis)ら、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: Laboratory Manual )」、第二版、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在のコールドスプリングハーバーラボラトリー社、1982年を参照のこと。HLB指標は、表面活性剤および界面活性剤を使用する分野の当業者によって用いられている尺度であり、マカッチャン(McCutcheon)の1996年第1巻「乳化剤と界面活性剤(Emulsifiers and Detergents)」(米国ニュージャージー州グレンロック(Glen Rock )ロックロード(Rock Road )175所在のマカッチャンパブリッシングカンパニー社マカッチャン部門(McCutcheon's division Mc Publishing Co. ))などの、よく知られている教本に界面活性剤およびそのHLB値のリストが載っている。前述の実施例3および4から、ポリミキシンBの存在下でタンパク質を放出させる際に有効であった界面活性剤のHLB値を調べると、これらの界面活性剤は11〜16のHLB値を有しており、一方タンパク質の放出に無効であったか、あるいはタンパク質を不活性化させた可能性がある界面活性剤は、11未満または16を超える値を有していたことが分かった。この試験では特に、米国コネチカット州ダンベリー(Danbury )所在のユニオン・カーバイド(Union Carbide )から入手可能なTergitolとして知られている一連の界面活性剤を使用して、有効なHLB範囲を決定した。なぜならこれらの界面活性剤は、広範囲のHLB指標を有しているからである。この一連の界面活性剤を使用して、これらの物質がタンパク質の放出に関して、他の界面活性剤で見られたのと同じHLB指標依存性を示すかどうかを決定することができた。タンパク質の放出に関するHLB指標依存性は、Tergitolシリーズの界面活性剤を使用することによって確認可能であると考えられた。なぜならこのシリーズの界面活性剤は、ほぼ同じ化学構造を有するからである。言い換えれば、11〜16のHLB値を有する界面活性剤から作製したTergitol溶液がポリミキシンBとの組み合わせでタンパク質を効果的に放出させ、11〜16の範囲外の溶液ではタンパク質を効果的に放出しないことを実証することができれば、その結果によって、HLBが11〜16の範囲内の界面活性剤は、活性を有するタンパク質またはペプチドを細胞から効果的に放出させるであろうことが証明されると思われる。
【0109】
50mlのLブロス+Tetに、His−PPE−ルシフェラーゼを発現する大腸菌株を接種し、振とう培養器において37℃で一晩増殖させた。一晩増殖させた後、0.5mlの培養物を250mlフラスコ中の50mlの新鮮なLブロス+Tetに入れて希釈し、密度がOD600で0.6に達するまで振とうしながら37℃で増殖させた。その時点で、1MのIPTGを加えて終濃度1mMとし、培養物をさらに6時間インキュベートしてから以下の実験で使用した。
【0110】
以下のストック溶液を調製した:
3mlのTergitolNP−4(シグマケミカルカンパニー NP−4 ロット52K1286)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
【0111】
3mlのTergitolNP−7(シグマケミカルカンパニー NP−7 ロット79H0109)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
3mlのTergitolNP−9(シグマケミカルカンパニー NP−9 ロット41K0156)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
【0112】
3mlのTergitolNP−10(シグマケミカルカンパニー NP−10 ロット78H1091)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
3グラムのTergitolNP−40(シグマケミカルカンパニー NP−40 ロット110K0225)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
【0113】
3mlのTergitol15−S−5(シグマケミカルカンパニー 15−S−5 ロット61K0040)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
3mlのTergitol15−S−12(シグマケミカルカンパニー 15−S−12 ロット81K0292)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
【0114】
3グラムのTergitol15−S−30(シグマケミカルカンパニー 15−S−30 ロット20H0123)を、脱イオン水に溶かして30mlにした。
以下の溶液を作製した:
溶液 組成
T1 100ulのTergitolNP−4ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水
T2 100ulのTergitolNP−7ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水
T3 100ulのTergitolNP−9ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水
T4 100ulのTergitolNP−10ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水
T5 100ulのTergitolNP−40ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水
T6 100ulのTergitol15−S−5ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水
T7 100ulのTergitol15−S−12ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水
T8 100ulのTergitol15−S−30ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、400ulのnanopure水 TP1 T1と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
【0115】
TP2 T2と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
TP3 T3と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
【0116】
TP4 T4と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
TP5 T5と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
【0117】
TP6 T6と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
TP7 T7と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
【0118】
TP8 T8と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
Tcon 500ulのHEPES(pH7.5)、500ulのnanopure水
TO−1 250ulの実施例3のTomah E−18−15ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水
TOP−1 TO−1と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
【0119】
TO−2 250ulの実施例3のTomah E−18−5ストック溶液、500ulのHEPES(pH7.5)、250ulのnanopure水。
TOP−2 TO−2と同じ。ただし、実施例3のポリミキシンBストック溶液100ulを、100ulのnanopure水の代わりとする。
【0120】
42本の1.5mlのプラスチック製微量遠心分離チューブに1〜42の番号を付け、前述の溶液200ulを、以下に示すようにチューブに加えた。
【0121】
【表4】

800マイクロリットルの細菌培養物をチューブに加えて得られた溶液を混合した。チューブを室温で4分間12,000RPMで回転させ、上清を新たなチューブに移した。ペレットは、0.2%[v/v]TritonX−100、0.2%Tomah E−18−15および200U/mlのポリミキシンBを含む100mMのHEPES(pH7.5)溶液に再懸濁させた[使用したTriton、TomahおよびポリミキシンBストック溶液は、実施例3に記載されている;HEPES(pH7.5)は1Mストックから希釈した]。上清サンプルと再懸濁させた細胞ペレットの両方を、サンプル1部に対して19部の割合で1%のTritonX−100中に希釈し、この溶液を混合して得られた溶液4ulを、発光測定装置用チューブに入った100ulのルシフェラーゼ・アッセイ用試薬(LAR:プロメガ社(Promega Corp. )のルシフェラーゼ・アッセイ用基質E151Aを製造業者の説明どおりにプロメガ社のルシフェラーゼ・アッセイ用バッファーE152Aに溶解することによって作製)に加えた。添加の直後に、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、チューブを直ちに読み取った。以下の測定値が得られた。
【0122】
【表5】

これらの結果から示唆されるように、試験したTergitol溶液はいずれも、単独では大部分のHis−PPE−ルシフェラーゼを放出することはできなかったが、幾つかのTergitol溶液は、ポリミキシンBと組み合わせると大部分の酵素を放出する(例えば、ポリミキシンBを含まないTergitolNP−7[チューブ3および4]と、ポリミキシンBを含むチューブ23および24を比較されたい。また、測定された酵素活性の約95%が細胞上清中に存在するチューブ37および38も参照されたい)。一方他のTergitol溶液は、ポリミキシンBの存在下でも、酵素に放出には無効である(例えば、ポリミキシンBを含まないTergitolNP−40[チューブ15および16]と、ポリミキシンBを含むチューブ35および36を比較されたい)。
【0123】
前述のマカッチャンの参照文献が示すように、これらの界面活性剤は以下のHLB指標を有する:Tergitol15−S−30、8.0;TergitolNP−4、8.9;Tergitol15−S−5、10.5;TergitolNP−7、11.7;TergitolNP−9、12.9;TergitolNP−10、13.6;Tergitol15−S−12、14.5;TergitolNP−40、17.8。
【0124】
この情報を前述の結果と組み合わせると、前述のように作製し試験した、11未満または16を超えるHLB指標を有するTergitol溶液は、大腸菌細胞から培地にタンパク質を放出させる際に無効であるが、一方11〜16のHLB指標を有するTergitol溶液は、培地にタンパク質を放出させる際に有効であることがわかる。したがってこれらの結果は、HLB 11〜16のHLB値を有する界面活性剤は、前述のようにポリミキシンBと配合すると、前述のように増殖させた大腸菌細胞から培地へとタンパク質を放出させると予想されることを示す。これらの結果は、図3にグラフで表す。
【実施例6】
【0125】
(界面活性剤/ポリミキシンB溶液を含む培地で処理した大腸菌からの、β−ガラクトシダーゼの放出の測定を経時的に追跡する)
この実施例では、大腸菌β−ガラクトシダーゼ(タンパク質テトラマーであり活性テトラマーに関して約460,000ダルトンのみかけの分子量を有する)の放出を経時的に追跡する。
【0126】
大腸菌株W3110(エール大学(Yale University )の大腸菌ストックセンター(E.coli Genetic Stock Center: CGSC )から入手)の一晩培養物を、振とう培養器内でLブロス中において37℃で一晩増殖させた。一晩増殖させた後、培養物を新鮮なLブロスで1:100に希釈し、培養物の密度がOD600で0.6に達するまで37℃で増殖させ、次いで1MのIPTGを加えて終濃度1mMとし、培養物をさらに4時間増殖させてから以下の試験で使用した。
【0127】
10×細胞溶解試薬と呼ぶことにする以下の溶液を、25mlの1M HEPES(pH7.5);5mlのTritonX100(シグマケミカルコーポレーション T9284、ロット118H0297);2mlのTomah E−18−15(トマーケミカルカンパニー);25mgのポリミキシンB(シグマケミカルコーポレーション P−1004、22K2517)を混合し、nanopure水を用いて該溶液を50mlに希釈することによって作製した。
【0128】
100ulの10×細胞溶解試薬を、1、3、5、7、および9とラベル付けした5本の1.5mlのプラスチック製微量遠心分離チューブに加え、100ulのnanopure水を0とラベル付けした6番目のチューブに加えた。900ulのW3110培養物をチューブ0、1、3、5、7、および9に加えた。チューブ0と1を上下反転することによって混合し、直ちに4℃において2分間14,000RPMの遠心分離にかけた。残りのチューブを上下反転することによって混合し、タイマーを始動させた。チューブ3は前述と同様に5分間遠心分離し;チューブ5は混合後15分間;チューブ7は混合後25分間、チューブ9は混合後30分間遠心分離した。上清を新たなチューブに移し、ペレットがあれば、1mlの1×細胞溶解試薬[10×細胞溶解試薬1部とnanopure水9部とで希釈することによって作製]に再懸濁させた。
【0129】
50マイクロリットルの上清および再懸濁させた細胞ペレットを、20mMのTris−HCl(pH7.3)950ulで希釈して、希釈サンプルを生成させた。
5mlのアッセイ用2×バッファー(プロメガ社のキットE2000 B)を5mlのnanopure水で希釈し、200ulを透明なマイクロタイター・プレートのウェル中に入れた。希釈サンプル5マイクロリットルを、マイクロタイター・プレートの2つの個別ウェルに加え、タイマーを始動させた。肉眼による観察で幾つかのウェルが黄色を示し始めたときに、420nmにおける溶液の吸光度を、マイクロタイター・プレート・リーダーで読み取った。記録した値は以下の通りであった:
【0130】
【表6】

このデータが示すように、上記の条件下では、少量のβ−ガラクトシダーゼタンパク質が培地に放出された。このタンパク質は大きさが非常に大きく、約115,000ダルトンのサブユニットのテトラマーであり、活性タンパク質の大きさは460,000ダルトンである。
【0131】
培地に放出されるβ−ガラクトシダーゼタンパク質の量を増大させるために、実施例1(c)のリゾチームを含む1×細胞溶解試薬を使用した。
his−タグ付のタンパク質である、リボヌクレアーゼ阻害剤RNasin(R)、RNaseHI、メチオニルtRNA合成酵素、耐熱性ホタル・ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼ、を別々に発現することが可能な大腸菌細胞(大腸菌JM109または大腸菌BL21(DE3)pLysS菌株、それぞれ米国ウィスコンシン州マディソン所在のプロメガ コーポレイションのL2001およびL1191)を、Lブロス+適切な抗生物質中で一晩インキュベートした。5マイクロリットルの一晩培養物を、50mlのLブロスおよび適切な抗生物質の入った250mlフラスコに移し、細菌細胞をOD600が0.4〜0.8になるまで増殖させ、終濃度1mMのIPTGによってタンパク質の発現を誘導した。細胞培養物を、誘導後一晩25℃で増殖させた。この二晩目のインキュベーションの後、細菌培養物のODは1.8〜3.4に達していた。それぞれの培養物1ミリリットルを、縦6列の深型ウェル細胞培養プレートのウェルに移した。各縦列に1種類ずつの細菌培養物を分配した;縦列1にはhis−RNaseHIを含む細胞、縦列2にはhis−ヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼを含む細胞、縦列3にはhis−RNasinを含む細胞、縦列4にはhis−耐熱性ホタル・ルシフェラーゼを含む細胞、縦列5にはhis−MGHを含む細胞、そして縦列6にはhis−β−ガラクトシダーゼを含む細胞を入れた。プレートを遠心分離にかけ、上清を除去した。横列Aのサンプルには200ulの細胞溶解試薬を加えて対照ウェルとし、横列Bのサンプルには200ulの細胞溶解試薬および1mg/mlのリゾチーム
を加えた。タンパク質精製は、Magne−His(商標)タンパク質精製システム(カタログ番号V8500、米国ウィスコンシン州マディソン所在のプロメガ コーポレイション)を使用して、BioMek(R)2000で実施した。
【0132】
BioMek2000でタンパク質を精製した後、各精製タンパク質サンプル20ulを、SDS−PAGEを使用して目に見える状態にした。図12中に見られるように、ゲルの上部のレーン名は、M=分子量マーカー、1=his−RNaseHI、2=his−ヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼ、3=his−RNasin、4=his−耐熱性ホタル・ルシフェラーゼ、5=his−メチオニルtRNA合成酵素、および6=his−β−ガラクトシダーゼに対応する。図12は、リゾチームを含まない陰性対照ゲル(−lysozyme)と比較すると、リゾチームを細胞溶解試薬に加えることによって、試験したうちの最も大きなタンパク質であるhis−β−ガラクトシダーゼについて、捕捉および精製されるタンパク質の量が増大したことを実証している。
【実施例7】
【0133】
(界面活性剤/ポリミキシンB溶液を含む培地で処理した大腸菌からのGST−ホタル・ルシフェラーゼの放出に関する反応時間の試験)
この実施例では、大腸菌細胞からの約90,000ダルトンのグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)標識ホタル・ルシフェラーゼ・タンパク質(GST−PPE−Luc)の放出を経時的に追跡する。GSTタグ付きのホタル・ルシフェラーゼを発現するベクターを用いて大腸菌を形質転換することによって、この大腸菌株を作製した。このベクターは従来の方法によって構築した。マニアティス(Maniatis)ら、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第二版、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在のコールドスプリングハーバーラボラトリー社、1982年を参照のこと。細胞は実施例6と同様に増殖させた。ただし、GSTとPPEルシフェラーゼの融合体を発現する大腸菌の菌株を増殖させ、Lブロス+Tetを増殖培地として使用した。
【0134】
実施例6と同様に、チューブにラベル付けし、操作した。各々のチューブの上清および細胞ペレット由来のサンプルを、実施例5と同様にLARに加えた。ただしこの実験では、読み取り値は1つだけとした。以下の値が記録された:
【0135】
【表7】

前述の表(および他の実施例)に示した「活性(%)」は、測定された全体のRLU(上清およびペレット)に対する上清中に測定されたRLUの割合を指す。前述のデータは、大きさ約90,000ダルトンのこのタンパク質は、上記の反応条件下で本発明の細胞溶解試薬を適用することによって、相当量が細胞から培地に放出されることを示す。
【実施例8】
【0136】
(界面活性剤/ポリミキシンB溶液を含む培地で処理した大腸菌からの、GST‐ウミシイタケ・ルシフェラーゼの放出を経時的に測定する)
この実施例では、約60,000ダルトンのタンパク質(GST−ウミシイタケ・ルシフェラーゼ)の大腸菌細胞からの放出を経時的に追跡する。GSTタグ付きのウミシイタケ・ルシフェラーゼを発現するベクターを用いて大腸菌を形質転換することによって、大腸菌株を調製した。このベクターは従来の方法によって構築した。マニアティス(Maniatis)ら、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第二版、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在のコールドスプリングハーバーラボラトリー社、1982年を参照のこと。
【0137】
細胞は実施例6と同様に増殖させた。ただし、GSTとウミシイタケ・ルシフェラーゼとの融合体を発現する大腸菌の菌株を増殖させ、Lブロス+Tetを増殖培地として使用した。
【0138】
実施例6と同様に、チューブをラベル付けし、操作した。培地およびペレットのサンプルを採取し、そのサンプルをLARに加えた[実施例5に記載のとおり]。ただし、この実験では、読み取り値は1つだけとした。以下の値が記録された:
【0139】
【表8】

前述のデータは、大きさ約60,000ダルトンのこのタンパク質は、上記の反応条件下で本発明の細胞溶解試薬を適用することによって、細胞から培地へと実質的に放出されることを示す。
【実施例9】
【0140】
(さまざまな濃度における界面活性剤の有効性)
この実施例では、ポリミキシンBの存在下で大腸菌細胞からHisタグ付きのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・タンパク質を放出させる、さまざまな界面活性剤の能力を、さまざまな界面活性剤濃度で測定する。大腸菌培養物は、実施例4に記載したのと同様に増殖させた。
【0141】
以下の溶液を作製した。ストック溶液とは、実施例3で調製したストック溶液を指すことに留意されたい:
溶液 組成
AH 100ulのTritonX−100ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、550ulのnanopure水;
AM 10ulのTritonX−100ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、640ulのnanopure水;
AL 1ulのTritonX−100ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、649ulのnanopure水;
BH 100ulのTergitolNP−9ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、550ulのnanopure水;
BM 10ulのTergitolNP−9ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、640ulのnanopure水;
BL 1ulのTergitolNP−9ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、649ulのnanopure水;
CH 500ulのTomah E−18−15ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、150ulのnanopure水;
CM 50ulのTomah E−18−15ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、600ulのnanopure水;
CL 5ulのTomah E−18−15ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、645ulのnanopure水;
DH 500ulのRhodameenVP−523/SPBストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、150ulのnanopure水;
DM 50ulのRhodameenVP−523/SPBストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、600ulのnanopure水;
DL 5ulのRhodameenVP−523/SPBストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、645ulのnanopure水;
EH 500ulのTrymeen6607ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、150ulのnanopure水;
EM 50ulのTrymeen6607ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、600ulのnanopure水;
EL 5ulのTrymeen6607ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、645ulのnanopure水;
FH 500ulのTomah E−18−5ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、[実施例3で調製した]100ulのポリミキシンBストック溶液、150ulのnanopure水;
FM 50ulのTomah E−18−5ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、600ulのnanopure水;
FL 5ulのTomah E−18−5ストック溶液、250ulのHEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンBストック溶液、645ulのnanop
ure水;
Con1 250ulのHEPES(pH7.5)、650ulのnanopure水、100ulのポリミキシンBストック溶液;
Con2 250ulのHEPES(pH7.5)、750ulのnanopure水。
【0142】
前述の溶液それぞれ100ulを、20本の1.5mlの微量遠心分離チューブに分注し、次いで400ulの細菌培養物を加えた。チューブを閉じ、5回の上下反転によって混合し、室温で4分間13,000RPMで回転させた。上清を取り出して新たなチューブに移し、それぞれの上清の10ulサンプルを、290ulの50mMのTris−HCl(pH7.5)に加えて希釈し、希釈サンプル5ulを、発光測定装置用チューブに入った100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用試薬[実施例2で調製したストック溶液由来]に加え、渦流混合処理によって混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、すぐに発光を測定した。測定された相対光度単位の値は、以下の通りであった:
【0143】
【表9】

表にみられるように、幾つかの界面活性剤は、ポリミキシンBとの組み合わせで、前の実施例で使用した濃度よりはるかに低い濃度でも、大腸菌から培地に多量のタンパク質を放出させることが可能である。例えば、配合物CH中のTomah E−18−15は、前の実施例で使用した濃度と同等の濃度であり、上記の条件下で742.2RLUの活性を放出した。配合物CL中の同じ界面活性剤は、配合物CH中で使用された濃度のわずか1%の濃度でしか存在しなくても、ほぼ同等の量の活性[514.2RLU]を放出した。このデータを、図4にもグラフ形式で表す。したがって、幾つかの界面活性剤は、非常に低い濃度であっても、酵素を放出させる際に有効である。
【0144】
幾つかの界面活性剤は、ポリミキシンBを補うと非常に低い濃度でタンパク質を放出する際に一層有効であることを確認するために、別の1.5mlチューブ20本を、1〜20に番号付けした。チューブ1〜3には100ulのAL;チューブ4〜6には100ulのBL;チューブ7〜9には100ulのCL;チューブ10〜12には100ulのDL;チューブ13〜15には100ulのEL;チューブ16〜18には100ulのFL、チューブ19には100ulのCon1、チューブ20には100ulのCon2を入れた。このチューブ1〜20に400マイクロリットルの前述の培養物を加え、チュ
ーブにキャップをし、5回の上下反転によって混合し、室温で5分間12,000RPMで回転させ、上清を取り出して新たなチューブに移した。ペレット・サンプルは、実施例2で調製した1×細胞溶解試薬に再懸濁させた。チューブ16〜18中にはペレットが見られなかったので、これらのチューブには1×細胞溶解試薬を加えず、したがって、これらのチューブからは細胞のペレット・サンプルは得られなかった。上清サンプルおよび再懸濁した細胞ペレット・サンプルを、1×細胞溶解試薬で1:30に希釈し、渦流混合処理によって混合し、この物質5ulを発光測定装置用チューブ中の100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用溶液に加え、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、発光を直ちに測定した。以下の相対光度単位の読み取り値が記録された:
【0145】
【表10】

これらの結果から、Tomah E−18−15およびTomah E−18−5などの幾つかの物質は、大腸菌から培地にタンパク質を放出させる際に、ポリミキシンBと組み合わせると非常に低い濃度で驚くほど有効であることは明らかである。
【実施例10】
【0146】
(さまざまな形式を使用する、培地に放出されたタンパク質の精製)
この実施例では、2つの界面活性剤によって培養培地に放出されたタンパク質の精製を親和性樹脂で試みる。これらの結果は、さまざまな界面活性剤によって、培地にタンパク質を放出させることが可能であるが、すべての界面活性剤が下流の用途について等しく有利であるとは限らないかもしれないことを示す。
【0147】
Hisタグ付きのウミシイタケ・ルシフェラーゼを発現する大腸菌培養物を、実施例3に示したのと同様に増殖させた。ただし、この試験で使用した培養物は、IPTG誘導の3時間後のものとした。増殖後、培養物を3〜50mlのプラスチック製チューブに分けたが;10mlはCONとラベル付けしたチューブに入れ;20mlはTRA−15とラベル付けしたチューブに入れ、20mlはTRA−5とラベル付けしたチューブに入れた。以下の溶液を作製した:
溶液T−5
5mlの1M HEPES(pH7.5)、100ulのポリミキシンB(10,000U/ml)[実施例3で調製したもの]、0.5mlの4%TomahE−18−5溶液[実施例3で調製したもの]、および3.5mlのnanopure水を合わせて混合した。
【0148】
溶液T−15
T−5と同様に作製した。ただし、0.5mlの4%TomahE−18−15溶液[実施例3で調製したもの]を、TomahE−18−5の代わりに使用した。
【0149】
500mMのHEPES(pH7.5)バッファー2.5mlをCONチューブに加え、5mlのT−5をTRA−5チューブに、5mlのT−15をTRA−15チューブに加えた。チューブにキャップをし、室温で2分間攪拌した。3本のチューブの2連の1mlサンプルを、1.5mlのプラスチック製微量遠心分離チューブに移し、これらのチューブを室温で4分間、12,000RPMで遠心した。遠心したチューブおよび遠心していないチューブの上清10マイクロリットルを、実施例2で調製した1×細胞溶解試薬190ulで希釈した。1秒間渦流混合した後、5ulのそれぞれのサンプルを、100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用溶液に加え、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、発光を測定した。以下の読み取り値が記録された:
【0150】
【表11】

1.5mlのプラスチック製微量遠心分離チューブ6本に、T−15A〜CおよびT−5A〜Cとラベル付けした。TRA−15とラベル付けしたチューブ中の溶液の1mlサンプルを、T−15A〜Cに入れ、TRA−5とラベル付けしたチューブ中の溶液の1mlサンプルは、T−5A〜C中に入れた。ニッケルが固定化された磁性シリカ樹脂の10%(w/v)懸濁液(その全容を本願明細書に援用する、米国特許出願第60/419,614号(2002年10月18日出願)、表題「分子を分離する組成物及び方法(Compositions and Methods of Separating Molecules)」(代理人事件番号B0174893)に従い調製したもの)30マイクロリットルを、T−15BおよびT−5Bに加え、同樹脂100ulをT−15CおよびT−5Cに加えた。約30秒毎に上下反転させることによって、これらの溶液を混合した。樹脂添加後5、10、15、および20分に、樹脂
を磁力でペレット状にし、上清の10ulサンプルを、190ulの1×細胞溶解試薬で希釈し、次いでチューブを再度密封し、20分後に最終サンプルを得るまで約30秒毎に上下反転させることによって混合した。
【0151】
それぞれの時点で得た10マイクロリットルの希釈サンプルを、発光測定装置用チューブ中の100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用溶液に加え、1秒間渦流混合処理することによってチューブを混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、発光を直ちに測定した。以下の結果を得た:
【0152】
【表12】

このデータによって、(1)培地中に放出されるタンパク質の酵素活性は、本発明の細胞溶解試薬を用いてタンパク質を抽出し、親和性樹脂を用いてこれらのタンパク質を単離する場合には保存され得ること、および(2)酵素を捕捉するために使用する樹脂の量を増大させると、樹脂によって捕捉されるタンパク質の量も増大することが確認される。
【0153】
20分の時点で測定値を得た後、5B、5C、15Bおよび15Cの上清を取り出して「非結合」とラベル付けした新たなチューブに移し、後のアッセイ用に保存した。樹脂ペレットを1mlの100mM HEPES(pH7.5)に再懸濁させ、次いで磁力によって再度ペレット状にした。これらの上清を、「洗浄1」とラベル付けしたチューブに移し、後のアッセイ用に保存した。別の1mlの100mM HEPES(pH7.5)を使用して、「洗浄1」の後の各樹脂ペレットを再懸濁させ、サンプルを再度ペレット状にした。各チューブの上清を、「洗浄2」とした新たなチューブに移し、後のアッセイ用に保存した。100mM HEPES(pH7.5)に溶かした500mMイミダゾール500マイクロリットルを使用して、「洗浄2」の後の樹脂粒子を再懸濁させ、粒子を含んだ状態で溶液を室温で2分間放置した。次いで樹脂を磁力によってペレット状にし、上清を取り出して「溶出タンパク質」とラベル付けした新たなチューブに入れた。これらの操作中に得られたさまざまなサンプルの分割試料10マイクロリットルを、190ulの1×細胞溶解試薬で希釈し、この希釈物5ulを、発光測定装置用チューブ中の100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用溶液に加え、1秒間渦流混合処理することによってチューブを混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して発光を測定した。これらのサンプルから、以下の読み取り値が記録された:
【0154】
【表13】

このデータは、樹脂上で捕捉された活性タンパク質は、洗浄の際は大部分が樹脂上に残っていることを示す。しかしながら、Tomah E−18−15処理した培養物由来の活性タンパク質が樹脂から容易に溶出されうる(1544および2270の相対光度単位が生じている)が、Tomah E−18−5処理した培養物に関して放出されたタンパク質は上記の溶出条件下では樹脂から容易には溶出されない(Tomah E−18−15処理した培養物と同様の方法でアッセイすると、5.9および16.5の相対光度単位が生じている)。
【実施例11】
【0155】
(種々のHLB値の界面活性剤を用いて作製した界面活性剤/ポリミキシンB溶液を使用する、放出されたタンパク質の高スループット精製)
この実施例では、一定範囲のHLB指標を有する界面活性剤溶液から放出されたHisタグ付きPPEホタル・ルシフェラーゼ・タンパク質の精製を実証する。使用した物質は、実施例5に詳細に記載している。この実験は、実施例5に記載した界面活性剤とポリミキシンBの組合せから単離した上清サンプルを使用することから始める。
【0156】
実施例5においてTP2、TP3、TP4、TP7、TOP−1およびTOP−2として示した細胞溶解試薬由来の上清の、200ulの分割試料2つを、個々のラベル付きチューブ:TP2、TP3、TP4、TP7、TOP−1およびTOP−2中に入れた。ニッケルがキレートされた50ulの磁性シリカ樹脂[実施例10に示したのと同様のもの](10%w/v)を、それぞれのチューブに加え、上下反転させることによってチューブを混合した。これらのチューブを、時折上下反転させながら30分間室温でインキュベートし、次いで樹脂を磁力によってペレット状にし、上清を除去した。150マイクロリットルの100mM HEPES(pH7.5)を使用して樹脂を再懸濁させ、再懸濁物を、KingFisher(商標)96ウェル・プレート[フィンランド国ヘルシンキ(Helsinki)オーイ(Oy)所在のサーモラボシステムズ(Thermo Labsystems )、カタログ番号97002080、ロット213500]の横列Aに移した。このプレートの下記の横列には以下を添加した:横列B、150ulの100mM HEPES(pH7.5);横列C、100mMのHEPES(pH7.5)に溶解した100mMのNaCl;横列DおよびE、100mMのHEPES(pH7.5)に溶解した500mMイミダゾール、150ul。次いでこのプレートを、KingFisher(商標)磁気粒子処理装置[フィンランド国ヘルシンキ所在のサーモラボシステムズ、製品番号5400000]で、製造者が推奨する使い捨て器具を使用して処理した。自動装置のプログラムに従って、最初のウェル中の液体が数秒間混合された。次いで磁性樹脂が回収されて隣の横列のウェルに移されて、粒子が横列AからB、C、D、そして最後にEへと進められ、次いで粒子がEから取り出され、自動装置により引き続き粒子が残りのウェルへと移動された。プレートを処理した後、磁性シリカを入れた元の上清のチューブに入っている10ulの非結合試料を190ulの1×細胞溶解試薬で希釈した。KingFisherプレートの
横列Dのサンプルを、1×細胞溶解試薬を用いて1:10に連続的に希釈した。希釈後、4ulの希釈サンプルを、発光測定装置用チューブに入った100ulのウミシイタケ・ルシフェラーゼ・アッセイ用溶液に加え、チューブを渦流混合し、Turner TD20/20発光測定装置を使用して発光を測定した。以下の読み取り値が得られた。
【0157】
【表14】

非結合サンプルおよび第1の溶出サンプルの中の何%の活性酵素が第1の溶出サンプル中に存在するかを決定するために計算を行なった。これらの結果は、図6にグラフによって表す。
【0158】
これらの結果は、選択した範囲のHLB値を有する上記のさまざまな界面活性剤を使用して、酵素を培地中に放出させ、次いで親和性樹脂に捕捉させて放出させることが可能であることを示している。これらの結果は、本発明の溶解試薬を、タンパク質精製に有用な自動システムと組み合わせて使用することが可能であることも示している。
【実施例12】
【0159】
(非磁性の固体支持体による、大腸菌から放出されたタンパク質の精製)
この実施例では、本願の根本となる物質のさまざまな異なる性質を実証する:同物質をカラム形式で樹脂と共に使用可能であること、およびさらなる実施時間が与えられれば、該タンパク質放出試薬によって、古い、保存培養物からタンパク質を放出させることが可能であることを実証する。
【0160】
(a)細胞溶解物の調製
約800ミリリットルの大腸菌培養物を、ほぼ実施例5に記載したように増殖させた。ただし、一晩培養物の希釈を、非常に大量のLブロス+Tet[成分の割合は一定に保った]において行なった点が変更されている。IPTG添加後に6時間増殖させた後、培養物を4℃に18時間置いてから使用した。
【0161】
5mlの1M HEPES(pH7.5)、1mlの20%TritonX−100溶液[実施例3で調製したもの]、および46mlのnanopure水を混合することによって、希釈用試薬を調製した。
【0162】
4℃で保存した後、フラスコを攪拌することによって細胞を培地に再懸濁させ、培養物を室温まで暖めた。室温に達した後、2本の1.5mlのチューブに「処理」および「非処理」とラベル付けした。再懸濁した培養物1mlを、「未処理」チューブ中に入れた。
【0163】
4gのTomah E−18−15、4gのTritonX−100(シグマ T9284、ロット118h02970)、および47.6gのHEPES(シグマケミカルカンパニー H4034、ロット108H54102)をビーカー内で混合し、約160mlまで水を加えることによって、10×細胞溶解試薬を調製した。この溶液を攪拌し、次いで固体NaOH(フィッシャー(Fisher)S318−1、ロット975006)をゆっくりと加えることによってpH7.5に調整した。pH7.5に達した後、49mgの硫酸ポリミキシンB(シグマ P1004、22K2517、固体1mgあたり8140U)を該溶液中に溶かし、体積を200mlに調整した。
【0164】
100マイクロリットルの10×細胞溶解試薬を、900ulの細菌培養物とともに、「処理」とラベル付けしたチューブに入れた。上下反転させることによってチューブを混合し、「処理」および「非処理」チューブを、室温において4分間12,000RPMで遠心分離した。上清を新たなラベル付きチューブに移し、ペレットは1mlの希釈用試薬に再懸濁させた。10マイクロリットルの上清および再懸濁細胞を、190ulの希釈用試薬で希釈し、この希釈物10ulを、発光測定装置用チューブに入った190ulのルシフェラーゼ・アッセイ用試薬(LAR)[プロメガ コーポレイション、E1483、15517301]に加え、チューブを1秒間渦流混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して発光を測定した。以下の値が記録された:
【0165】
【表15】

これらの読み取り値について注目すべき2つの要因が存在する。第1に、本発明の細胞溶解試薬で細胞培養物を処理すると、ルシフェラーゼ活性が明らかに増大する。具体的には、測定可能な相対光度単位の合計(上清+ペレット)は、処理サンプルおよび非処理サンプルに関してそれぞれ1588.1および123.467であった。このことは、本発明の細胞溶解試薬を加えることにより、測定可能な酵素活性が約12倍に増大することを示している。いかなる理論にも縛られるものではないが、この現象は、細胞膜に孔を形成することおよび/または細胞膜の孔を広げることによって、酵素が基質と接触しやすくなるということに起因するものかもしれない。
【0166】
第2に、処理サンプルおよび非処理サンプルの上清中に見出される活性の割合のみを見ると、放出されるタンパク質の割合が細胞溶解試薬を加えることによって低下したという不適切な結論に至る可能性がある。このような異常な状態は、非処理サンプルの細胞ペレット中の酵素活性を効率よく測定し得ないことによるものである。細胞ペレット中の酵素
活性を効率よく測定するというこの問題を克服するために、ペレットを1×細胞溶解試薬中に再懸濁させることが可能である。
【0167】
(b)界面活性剤との反応時間を延長した場合の酵素放出の測定
多くの研究者は細胞培養物を長時間保存すると思われるので、さらなる試験を行なって、古い細胞培養物(言い換えれば、細胞培養物は少なくとも18時間置いたものとした)から、細胞溶解試薬による処理時間を増大させることによって、追加の酵素が放出され得るかどうかを測定した。91ミリリットルの前述の細胞培養物(ここでは約36時間置いたもの)をビーカーに入れ、1mlを取り出して「Pre」とラベル付けした1.5mlチューブに移し、10mlの10×細胞溶解試薬をビーカーに加え、ビーカーを約1分間攪拌し、次いで1mlのサンプルを取り出して「INIT」とラベル付けした1.5mlのプラスチック製微量遠心分離チューブ中に入れた。PreおよびINITチューブを、室温で4分間12,000RPMにて回転させ、上清を取り出して新たにラベル付けしたチューブに移した。ペレットは、1mlの希釈用試薬中に再懸濁させた。培養物と細胞溶解試薬との混合物を、細胞溶解試薬の添加後5、10、20、および120分の時点でサンプリングしたが、1mlのサンプルを取り出し、1.5mlの微量遠心分離チューブ中に入れ、室温において4分間12,000RPMでチューブを回転させ、上清を取り出してラベル付けした新しいチューブに移し、ペレットを1mlの希釈用試薬中に再懸濁させることによって行った。10マイクロリットルの上清および再懸濁細胞ペレットを、190ulの希釈用試薬で希釈し、1秒間渦流混合処理することによって溶液を混合し、次いで、得られた混合物の10ulサンプルを発光測定装置用チューブに入った100ulのLARに加え、1秒間渦流混合処理することによってチューブを混合し、Turner TD20/20発光測定装置を使用して、発光を直ちに読み取った。以下の読み取り値が記録された:
【0168】
【表16】

これらの結果は、本発明の細胞溶解試薬を一定時間培養物と共にインキュベートすることが可能であれば、時間を置いた培養物中で発現されたルシフェラーゼ活性のほぼ全てを放出させることが可能であることを示している。
【0169】
(c)カラム系システムを使用する、活性酵素の捕捉および溶出
この項では、細胞溶解試薬溶液を樹脂カラムに直接注入して得られたタンパク質溶液は、酵素の可逆的結合および溶出用に使用可能であるという実証を示す。
【0170】
活性酵素の精製は一般に、該酵素を含むタンパク質の溶液を、目的の該酵素と可逆的に結合し溶出させる樹脂を含むカラムに、その樹脂と結合し溶出される他のタンパク質がほ
とんどない条件下で注入することによって行なう。しかしながら一般には、注入されるタンパク質溶解物は、培養培地から細胞を単離し、これらの細胞を(しばしばフレンチプレスの使用などの物理的手段によって)溶解し、細胞残屑を除去し、次いでタンパク質溶液を樹脂カラムにかけることによって生成する。
【0171】
その全容を本願明細書に援用する米国特許出願第60/419,614号(2002年10月18日出願)、表題「分子を分離する組成物及び方法(Compositions and Methods
of Separating Molecules)」(代理人事件番号B0174893)に従い調製した、ニッケルが固定化された2.5mlのシリカ樹脂をカラムに入れ、別の樹脂2.5mlを50mlの密封可能なチューブに入れた。His−PPE−ルシフェラーゼ細菌培養物/細胞溶解試薬の混合物の1.5mlサンプル8つを注入し、画分を回収した。8回目にサンプルを注入しているとき、カラム中の液体の流れが大幅に低下したことが示された。被験サンプル中の樹脂を再懸濁させると、カラム中の流速は元に戻った。次いでこのカラムを、100mMのHEPES(pH7.5)に溶かした10mMイミダゾール4mlで洗浄し、1ml画分を回収した。次いでカラムを、100mMのHEPES(pH7.5)に溶かした500mMイミダゾールを1mlサンプルずつ用いて複数回溶出し、1ml画分を回収した。培養物−細胞溶解試薬の混合物を注入したときに回収した画分は、希釈用試薬に1:25に希釈し、洗浄および溶出中に回収した画分は、1:20に希釈した。細胞溶解試薬の混合物を注入したときに回収した画分の希釈物および洗浄画分のサンプル10マイクロリットルを、発光測定装置用チューブに入った100ulのLARに加え、1秒間の渦流混合によってチューブを混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、発光を直ちに測定した;溶出中に回収した画分の希釈物の2ulサンプルを、発光測定装置用チューブに入った100ulのLARに加え、1秒間の渦流混合によってチューブを混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して、発光を直ちに測定した。以下の読み取り値が記録された:
【0172】
【表17】

これらの結果は、本発明の試薬および方法を使用することによって、活性酵素が高度に捕捉され、かつ樹脂から溶出したことを示している。実際、前に記載した上清の実験において見られた活性に基づいてみると、本発明の方法を使用することによって、元の培養物中の潜在的酵素が高い割合で捕捉され溶出された。
【0173】
(d)目的の酵素を単離するための、培地に放出されたタンパク質の一括捕捉
前項(c)に示したように、細胞溶解試薬溶液を樹脂に直接適用して目的の酵素を単離することが可能である。しかしながら、この方法は、細胞および細胞残屑でカラムを詰まらせる危険があり、樹脂粒子をカラム内で再懸濁させてカラムの流れを元に戻すことが必要である。目的の酵素が樹脂と結合し、かつ細胞および細胞残屑は樹脂から移し取られる条件下において、細胞溶解試薬の混合物を樹脂に直接加えることが可能であれば、上記の閉塞の影響は回避し得る。さらに、樹脂をまとめて洗浄してからカラム内に入れることが可能であれば、目的の酵素を精製するための非常に迅速な方法、すなわち、細胞溶解試薬の混合物を形成することと、目的の酵素は樹脂と結合するが大部分の他のタンパク質は非結合状態である条件下において、この混合物に樹脂粒子を直接適用することと、任意選択で、樹脂粒子間の溶液中に存在する微量の非結合タンパク質を除去するために樹脂を洗浄することと、樹脂からタンパク質を溶出させることと、を想定することが可能である。この項では、このような精製法を記載する。
【0174】
20ミリリットルの細胞溶解試薬の混合物を、50mlのプラスチック製のキャップ付
きチューブ中に入れたが、このチューブは、米国特許出願第60/419,614号(2002年10月18日出願)、表題「分子を分離する組成物及び方法(Compositions and
Methods of Separating Molecules)」(代理人事件番号B0174893)に従い調製した2.5mlのニッケルでキレート化されたシリカ樹脂を含んでいた。樹脂添加の直後、50mlのプラスチック製チューブから樹脂粒子が取り出されないように注意しながら、10ulの溶液を取り出して別のチューブに入れた。チューブを閉じ、ゆっくり上下反転させることによって混合し、さらに10ulずつのサンプルを、樹脂添加の2、4、6、8、10、20および30分後に採取した。樹脂を沈殿させ、上清を捨て、樹脂を2回洗浄したが、樹脂の洗浄は、100mMのHEPES(pH7.5)に溶かした5mlの10mMイミダゾールを2分割したものに樹脂を再懸濁させ、5分間ゆっくり上下反転させることによって内容物を混合し、上清を捨てることによって実施した。
【0175】
5mlの10mMイミダゾール、100mMのHEPES(pH7.5)中に樹脂を再懸濁(3回目)させ、次いでカラムに移し、液体のレベルがカラム中の樹脂のレベルにちょうど達するまで、液体をこのカラムに移された樹脂から排出させた。この間に溶出した液体は、後のアッセイ用に保存した。次いで、10mMイミダゾール、100mM HEPES(pH7.5)5mlサンプル(×2)をカラムに加え、溶出した液体を後に使用するために回収した。500mMのイミダゾールを100mMのHEPES(pH7.5)に溶かした溶出溶液をカラムに注入し、溶出した液体サンプル1mlずつを回収した。
【0176】
溶出溶液の注入の際に幾つかの画分を回収した後、この種々の画分の10ulサンプルを、190ulの希釈用試薬で希釈した。この希釈サンプルを10分割した試料を、発光測定装置用チューブに入った100ulのLARに加え、1秒間渦流混合することによってチューブを混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して発光を測定した。希釈していない溶出画分の2ul分割試料も同様に、発光測定装置用チューブに入った100ulのLARに加え、1秒間渦流混合することによってチューブを混合し、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して発光を測定した。以下の読み取り値が記録された:
【0177】
【表18】

【0178】
【表19】

【0179】
【表20】

これらのデータは、上述の細胞溶解試薬を使用することによって大腸菌培養物中に放出された酵素を同溶液中で直接捕捉することが可能であり、樹脂を洗浄した後に酵素を放出させることができることを実証するものである。
【実施例13】
【0180】
(高スループット機能アッセイ)
この実施例では、終濃度が1×未満の本発明の細胞溶解試薬でも、細菌培養物のいかなる機械的な予備処理も必要とせずに、細胞を溶解することが可能であることを実証するための実験を行なった。この実施例は、終濃度が1×未満の本発明の細胞溶解試薬を使用して、組換えタンパク質を細菌培養物から放出させ、高スループットの機能アッセイにおいて分析することが可能であることを実証する。
【0181】
ラット肝臓cDNA由来のリボヌクレアーゼインヒビター遺伝子(米国メリーランド州ロックビル所在のオリジーンテクノロジーズ社(OriGene Technologies, Inc.))を、PCRによって増幅させ、従来の方法に従ってベクターにクローニングした。マニアティスら、「分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第二版、米国ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在のコールドスプリングハーバーラボラトリー社、1982年を参照のこと。このベクターで大腸菌株JM109およびCA7を形質転換し、形質転換反応物の200ul分割試料を、96ウェル・プレート(ファルコン(Falcon)96ウェルMicroTest(商標)III、蓋付き組織培養プレート;カタログ番号3075)に分注した。形質転換した細菌細胞を12℃で一晩増殖させて、クローニングしたリボヌクレアーゼインヒビター遺伝子を発現できるようにした。その後、実施例1に記載した10ulの1×細胞溶解試薬を、ウェルに入っている各200ul培養物に加え、プレートを、サーモライン(Thermolyne)Maxi−Mix
III(商品名)、タイプ65800(米国アイオワ州ドゥビューク(Dubuque )所在のサーモライン社、モデル番号M65825)を使用して室温で20分間軽く振とうさせた。細胞残屑は、スイング・バケット遠心分離装置(ベックマン(Beckman )GS−6R遠心分離装置、米国カリフォルニア州フラールトン(Fullerton )所在のベックマン・コールター(Beckman coulter ))中で、3000rpmで15分間、96ウェル・プレートを遠心分離することによってウェルから除去し、それぞれのウェルからの上清の10ul分割試料について、RNAse検出アッセイを使用してRNAse阻害活性を分析した。
【0182】
RNAse検出アッセイは、既存の寒天プレートを用いるアッセイ(プロメガ コーポ
レイション(Promega Corp. )、パーツ番号AB150)の変法である。簡単に述べると、RNAがRNAseによって加水分解されるにつれて溶液のpHが変化し、このpHがA650における吸光度の変化によって検出される。活性は、吸光度の変化の総量として測定される。この検出アッセイにおいては、リボヌクレアーゼ阻害活性は、RNAseが不活性であること、または吸光度の変化がないことによって測定される。サンプル(純化したクローンまたは溶解物など)を、添加した量のRNAseを阻害することが可能な量の野生型リボヌクレアーゼインヒビターの陽性対照、およびインヒビターを含まないRNAseの陰性対照サンプル(阻害が無いという意味で陰性である)と比較する。測定した吸光度の変化を、相対的活性に関して対照と比較する。
【0183】
材料:
トルイジンブルーO[シグマ T−3260]
酵母菌の全RNA[ベーリンガー・マンハイム/ロシュ(Boehringer-Mannheim/Roche )109−223]
2MのTris−HClバッファー、pH7.3[プロメガ LSS1472]
2MのTris−HClバッファー、pH8.0[プロメガ LSS4227]
80%グリセロール[プロメガ LSS6208]
RNAseA[シグマ R−4642]
96ウェルのマイクロタイター・プレート、Immulon(R)、平底、ポリスチレン、[ダイネックス(Dynex )、3455]
アッセイ用溶液:
200mMのTris−HCl(pH7.3)、2mg/mLの酵母菌 全RNA、終濃度0.0075%(v/v)のトルイジンブルーO(0.5%(w/v)のストックをnanopure水で作製し、1.5%(v/v)を溶液に加える)。溶液は4℃で保存した。
【0184】
手順:
サンプルを96ウェルのマイクロタイター・プレートのウェルに等分し、サンプル・ウェルあたり100ulのアッセイ用溶液を加えた。溶液とサンプルとを混合し、時間=0におけるサンプルの吸光度をA650で測定した。プレートを37℃で30分間インキュベートし、時間=30におけるサンプルの吸光度をA650で測定した。650nmで吸光度を測定することが可能な測光フィルタを備えた、Lucy1マイクロプレート発光測定装置(オーストリア国バルツ/ザルツブルグ(Wals/Salzburg )所在のアントスラボテクインスツルメンツ(Anthos Labtec Instruments )、モデル番号16−800)によって、吸光度を測定した。時間=0と時間=30との間の全体的な吸光度の変化を計算しプロットした。対照の吸光度の変化と実験サンプルの吸光度の変化を比較することによって、あるいはリボヌクレアーゼインヒビターサンプルの吸光度の変化:RNAseAサンプルの吸光度の変化の比と、実験サンプルの吸光度の変化:RNAseAサンプルの吸光度の変化の比とを比較することによって、データを分析することが可能である。
【0185】
RNAse検出アッセイのための、対照実験を行なった。阻害活性の陽性対照として、10ulのRNAse希釈用バッファー(10mMのTris−HCl(pH8.0)、5%グリセロール)とRNAseAを組み合わせて終濃度1ng/ulとした。10ul(約20U)の精製ラット・リボヌクレアーゼインヒビターを反応に加え、約1〜2分間反応させた。阻害の陰性対照は、陽性対照と同じプロトコルに従い、ラット・リボヌクレアーゼインヒビターを加えないものとした。さらに、酵素を含まないバッファーのみの陰性対照を使用した。全てのサンプルに関して、吸光度を測定した。図10および11を参照のこと。これらの結果は、遠心分離なしで細菌細胞を直接溶解するために本発明の細胞溶解試薬を使用することが可能であることを実証している。この手法は、以下の高スループットのタンパク質機能アッセイを試験するのに有用である。
【実施例14】
【0186】
(異なる組換えタンパク質の高スループット精製)
この実施例では、本明細書に記載の発明の細胞溶解バッファーを、幾つかの異なるポリヒスチジン‐タグ付きのタンパク質;リボヌクレアーゼインヒビター、RNaseHI、メチオニルtRNA合成酵素、熱安定性ホタル・ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、MGH、およびヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼの高スループット精製に使用した。これらのHis‐タグ付きタンパク質の細菌細胞からの精製は、ヒスチジン‐タグ付きタンパク質のアフィニティ精製用のキットを使用して行なった。MagneHis(商標)タンパク質精製システム(プロメガ コーポレイション、カタログ番号V8500)。このキットは、ニッケル結合磁気粒子、結合/洗浄用バッファー(100mMのHEPESバッファー(pH7.5)および10mMのイミダゾール)、溶出用バッファー(100mMのHEPESバッファー(pH7.5)および500mMのイミダゾール)、および実施例1に記載した本発明の細菌細胞溶解試薬を含む。
【0187】
さまざまなhis‐タグ付きタンパク質を発現することが可能な細菌細胞を、OD600 0.4〜0.6まで増殖させ、終濃度1mMまでIPTGを加えることによって、タンパク質の発現を誘導した。細胞をさらに3時間増殖させ、1mlのそれぞれの培養物を、96ウェルのプレートに等分した。遠心分離によって細胞をペレット状にし、培養培地を除去した。その後、200ulの細胞溶解試薬をそれぞれのペレットに加え、ペレットを再懸濁させ、混合物を10分間振とうさせながらインキュベートし、さらに精製するためにプレートをベックマン(Beckman )Biomek(R)2000に配置した。得られた溶解物を100ul分割試料としてMagneHis(商標)粒子(30ul)に直接加えた。次に、タンパク質が結合した粒子を、洗浄/結合用バッファーで処理した。続いて、0.5Mのイミダゾールを含むバッファーを用いてタンパク質を溶出させた。次いで、溶出サンプルをSDS−PAGEによって分析した。
【0188】
これらの結果は図7に示し、図の上部のレーン番号は、それぞれのレーン中に矢印によって示した精製Hisタグ付きタンパク質に対応する;M=分子量マーカー、1=His−RNaseHI、2=His−ヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼ、3=His−RNasin、4=His−熱安定性ホタル・ルシフェラーゼ、5=His−MGH、および6=His−β−ガラクトシダーゼ。これらの結果は、自動システム(robotics platform )で多数のHisタグ付きタンパク質を精製する際に、本発明の細胞溶解試薬が適用可能であることを示す。
【実施例15】
【0189】
(遠心分離を伴わない溶解細胞からのタンパク質の精製)
この実施例では、his‐メチオニルtRNA合成酵素を発現することができる大腸菌JM109細胞を使用した。実施例14に記載したようにして細胞を増殖させ誘導した。誘導後、1mlの細胞を2本の異なるチューブそれぞれに等分し、サンプルを遠心分離にかけ、細胞ペレットを回収した。細胞溶解試薬の200ul分割試料をそれぞれのペレットに加え、この混合物を室温で10分間インキュベートした。溶解後、サンプルの1つを遠心分離にかけて、細胞残屑および他の混入物を除去した。このチューブには「遠心分離サンプル」とラベル付けした。もう1つのサンプルは、全く遠心分離せずに処理した。このサンプルには「非遠心分離サンプル」とラベル付けした。
【0190】
MagneHis(商標)精製粒子(30ul)(MagneHis(商標)タンパク質精製システム(プロメガ コーポレイション、カタログ番号V8500)を両方のサンプルに直接加え、混合物を完全に混合させた。粒子を結合用バッファーで洗浄し、0.5Mのイミダゾールを含む結合用バッファーを用いて、タンパク質を溶出させた。次いで、
これらのサンプルをSDS−PAGEによって分析した。これらの結果を図8に示す。レーン番号1〜4は実験サンプル;1)遠心分離した粗溶解物5ul、2)遠心分離した溶解物由来の精製タンパク質20ul、3)遠心分離していない粗溶解物の5ulサンプル、4)遠心分離していない溶解物由来の精製タンパク質20ul、に対応する。レーン5は分子量マーカーを含む。
【0191】
これらの結果は、(1)本発明の細胞溶解試薬は、さまざまな自動システムで組換えタンパク質を精製するために使用可能であり、(2)本明細書に記載の本発明の方法を使用して、96ウェル・プレートのそれぞれのウェルからタンパク質を均一に精製することが可能であることを示している。
【実施例16】
【0192】
(複数のシステムにおける、溶解細胞からのタンパク質の自動精製)
この実施例では、細菌細胞培養物中で発現された組換えタンパク質を、本発明の方法を使用した高スループットのタンパク質精製のためのマルチ−ウェル形式で精製した。3つの自動システム、すなわちBeckman FX、Beckman Biomek(R)2000、およびTecan Genesis(R)RSPについて、高スループットのタンパク質精製に関して評価した。
【0193】
実施例5に記載したのと同様に調製した、hisタグ付きの熱安定性ホタル・ルシフェラーゼを発現可能な細菌細胞を、OD600 0.4〜0.6まで増殖させ、終濃度1mMまでIPTGを加えることによって、タンパク質の発現を誘導した。細胞をさらに3時間増殖させ、1mlの培養物を96ウェルのプレートのすべてのウェルに等分した。遠心分離によって細胞をペレット状にし、培養培地は除去した。その後、実施例1に記載した1×細胞溶解試薬200ulを、深型96ウェル・プレートのそれぞれのウェルに等分した。ペレット/試薬を、それぞれのウェルを10回のピペット操作によって混合させ、オービタル・シェーカーで5分間プレートを攪拌した。この溶解物の分割試料100ulを各ウェルから取り出し、30ulのMagneHis(商標)精製粒子の入った第2のプレートに移した。溶解物と粒子とを最初にピペットによって混合し、さらにオービタル・シェーカーで1分間混合した。このプレートをMagnaBot(R)磁気デバイス[プロメガ コーポレイション、パーツ番号V8151]上に1分間置いた。
【0194】
素通りした液体(廃物)を、3つの各自動システムについて予め定義したコンピュータ・プログラムを使用して、自動操作によって除去した。さらに100ulの溶解物を各ウェルに加えた。溶解物と粒子をピペット操作によって混合し、さらにオービタル・シェーカー上で1分間混合した。このプレートを再度、MagnaBot(登録商標)磁気デバイス上に1分間置いた。素通りした液体を除去し、100ulの洗浄/結合用バッファー(100mMのHEPESおよび10mMのイミダゾール)を使用して、粒子を洗浄した。粒子を3分間振とうさせ、プレートをMagnaBot(登録商標)デバイス上に1分間置いた。洗浄/結合用バッファーを除去した。100ulの洗浄/結合用バッファーを加え、この工程をさらに2回繰り返した。次いで、ピペット操作および1分間の振とうによって、粒子とバッファーを再懸濁させた。
【0195】
サンプル操作の後、96ウェル・プレートを、MagnaBot(登録商標)磁気デバイス上に1分間置き、200ulの溶出バッファー[100mMのHEPES(pH7.5)、500mMのイミダゾール]を加えた。溶出したタンパク質は、分析用に別のプレートに移した。サンプルは、SDS−PAGEによって分析した(図9参照)。
【0196】
これらの結果は、(1)本発明の細胞溶解試薬は、さまざまな自動システムで組換えタンパク質を精製するために使用可能であり、(2)本明細書に記載の本発明の方法を使用
して、96ウェル・プレートのそれぞれのウェルから、タンパク質を均一に精製することが可能であることを示している。
【実施例17】
【0197】
(細胞を透過性にする第2の物質オクチル‐β‐チオグルコピラノシドを使用する、大腸菌細胞からのタンパク質の放出)
この実施例では、さまざまな試薬配合物について、大腸菌細胞からタンパク質を放出させる能力に関して比較する。これらの配合物は、2つの異なる化学試薬、ポリミキシンBまたはオクチル‐β‐チオグルコピラノシドを使用するが、これらの試薬は単独で、互いに組み合わせて、タンパク質の活性を安定化させることが可能な界面活性剤[TritonX100およびToman E−18−15]と組み合わせて、大腸菌細胞を透過性にすることが知られている。
【0198】
以下の溶液を作製した。
PRS#1 2%のTomah E−18−15、2%のTritonX100、100U/mlのポリミキシンB、500mMのHEPES(pH7.5)
PRS#2 PRS#1と同じ。ただし、6%(w/v)のオクチル‐β‐チオグルコピラノシドも含む
PRS#3 10%のTritonX100、3%のTomah E−18−15、100mMのイミダゾール、500mMのHEPES(pH7.5)、6%のオクチル‐β‐チオグルコピラノシド
PRS#4 PRS#3と同じ。ただし、Tomah E−18−15は含まない
PRS#5 2%のTomah E−18−15、2%のTritonX100、500mMのHEPES(pH7.5)、100mMのイミダゾール、6%(w/v)のオクチル‐β‐チオグルコピラノシド
PRS#6 PRS#5と同じ。ただし、6%(w/v)オクチル−β−チオグルコピラノシドは含まない
実施例5に記載したのと同様に調製した、Photinus pennsylvanica由来のhisタグ付き熱安定性ルシフェラーゼを発現する培養物を、振とうさせながら37℃で一晩、100ug/mlのアンピシリンも含むルリアブロス中で増殖させた。1mlの種菌ストックを調製し、−70℃で保存した。実験の日に、1mlの種菌ストックを使用して、100ug/mlのアンピシリンを含む50mlのルリアブロスに接種し、この培養物を0.4〜0.6のOD600に達するまで振とうさせながら25℃で増殖させた。この時点で、1MのIPTG(イソプロピル‐β‐D‐チオガラクトピラノシド、プロメガカタログ番号V3951)を、終濃度1mMで培養物に加え、振とうさせながら室温で一晩、培養物を増殖させる。
【0199】
翌日、PRS#1〜#6の2連の100ulサンプルを、ラベル付けした1.5mlのチューブに入れた。次いで900マイクロリットルずつの一晩培養物をこの1.5mlチューブに加え、室温で10分間上下反転させることによって、チューブを混合させた。
【0200】
10分間の上下反転操作の後、このチューブの200ulサンプルを別のチューブ中で4℃にて微量遠心分離機において全速で15分間回転させ、無傷の細胞および細胞残屑をペレット状にした。回転させた後、上清を注意深く取り出してラベル付けした新たなチューブに移した。
【0201】
回転処理していない残りの細胞サンプルおよび上清サンプル10マイクロリットルを、990ulの1×細胞溶解試薬(25mMのTris−リン酸pH7.8、2mMのジチオスレイトール、2mMの1,2ジアミノシクロヘキサン−N,N,N,N−テトラ酢酸、10%グリセロール、1%のTritonX−100に1mg/mlのBSA(ウシ血
清アルブミン)を含めたもの)に希釈し、希釈した溶液は氷上で保存した。ルシフェラーゼ・アッセイ用試薬(LAR)(1.07mMの炭酸マグネシウム、0.1mMのEDTA、2.67mMの硫酸マグネシウム、33.3mMのジチオスレイトール、0.27mMのコエンザイムA、0.53mMのATPおよび0.47mMのルシフェリン)の100ulサンプルを、Turner発光測定装置用チューブに入れた。5マイクロリットルの希釈サンプルを、LARの入った発光測定装置用チューブの1つに加え、このチューブを1〜2秒間混合させ、次いで、反応によって生成した光を、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して読み取った。以下の値が記録された:
【0202】
【表21】

これらのデータは、タンパク質を安定化する界面活性剤を細胞に透過性をもたらす種々の試薬と共に使用して、タンパク質を大腸菌細胞から培地中に効果的に放出させることが可能な溶液を作製することができることを示している。タンパク質の放出は、上清および全溶解物のSDS PAGE分析によって確認された。
【実施例18】
【0203】
(タンパク質を安定化する界面活性剤をオクチルβチオグルコピラノシドの溶液に加えることによって、安定化をもたらす該化学物質を含まない溶液に比べてタンパク質の活性を損ねない溶液を作製することが可能である。
【0204】
この実施例では、タンパク質を安定化する界面活性剤の存在下または不在下において、オクチルβチオグルコピラノシドの溶液を、ホタル・ルシフェラーゼと共にインキュベートする。安定化をもたらす界面活性剤を含む溶液は、該界面活性剤を含まないオクチルβチオグルコピラノシドの溶液よりも、酵素活性を有意に高く保持することが示されるであろう。
【0205】
以下の溶液を作製した:
試験溶液#1 6%のオクチルβチオグルコピラノシドを、500mMのHEPES(pH7.5)に溶かした溶液
試験溶液#2 試験溶液#1と同じ。ただし、10%(v/v)のTritonX100も含む
試験溶液#3 前述の実施例17中のPRS#3と同じ
試験溶液#4 6%のオクチルβチオグルコピラノシド、2%のTritonX100(v/v)、2%のTOMAH E−18−15(vol/vol)を、500mMのHEPES(pH7.5)に溶かした溶液
前述の試験溶液40マイクロリットルを、2連のチューブ中に360ulの脱イオン水を用いて1:10に希釈した。1×細胞溶解試薬(25mMのTris−リン酸pH7.8、2mMのジチオスレイトール、2mMの1,2ジアミノシクロヘキサン−N,N,N,N−テトラ酢酸、10%グリセロール、1%のTriton x−100を含む1mg/mlのBSA(ウシ血清アルブミン、プロメガカタログ番号W3841))(1mg/mlのBSAも含む)の入った1つの最終組のチューブを、2連のチューブ中に置いた。1組のチューブを氷上に置き、もう一方は室温に保つ。Photinus pyralis由来の野生型ルシフェラーゼを含む溶液(4ulの25mMトリス酢酸pH7.5、1mMのEDTA、1mMのDTT、0.2M硫酸アンモニウム、15%のグリセロール、30%のエチレングリコール、14.6ug/ulのルシフェラーゼ;溶液は使用時まで−70℃で保存)を全チューブに加え、氷上あるいは室温で20分間インキュベートした。20分間のインキュベーションの後、全ての溶液を1×細胞溶解試薬(1mg/mlのBSAも含む)で1/100に希釈した。
【0206】
実施例16に記載したルシフェラーゼ・アッセイ用試薬の100マイクロリットルのサンプルを、Turner発光測定装置用チューブに入れた。BSAを含むCCLRに希釈した酵素ストックの10マイクロリットルのサンプルを加え、チューブを混合させ、TurnerTD20/20発光測定装置を使用して光を読み取った。各サンプルについて2連で光を読み取った。以下の値が得られた。
【0207】
【表22】

これらのデータは、タンパク質を安定化する試薬を加えることによって、オクチルβチオグルコピラノシドの存在下における、ルシフェラーゼ酵素の安定性が大幅に改善されたことを実証する。これらの物質を加えることによって、細胞タンパク質放出試薬による大腸菌細胞からのタンパク質の放出が妨げられることはないことを実証した前述の実施例17のデータと組み合わせると、これらのデータは、これらの試薬を組み合わせることによって、タンパク質放出試薬を単独で使用するよりも改善されたタンパク質放出物質がもたらされることを実証する。なぜなら、組み合わせることによって、放出試薬による害を受ける可能性があるタンパク質活性の保持の助けとなるからである。
【0208】
本発明をある程度具体的に記載し例示してきたが、当業者であれば、本発明の思想から逸脱せずに、本明細書で開示してきたものについて、変形、追加および省略を含めたさまざまな変更形態を作製可能であることを理解するであろう。したがって、これらの変更形態も本発明に含まれるものであり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲について法律上従うことが可能な最も広い解釈によってのみ制限されるものと考えられる。本願明細書に引用した全ての参照文献は、それらの全容を本願明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1a】実施例2に記載のように種々の配合物で処理した細菌溶液の見かけの細胞培養物密度を示す棒グラフ。
【図1b】実施例2に記載のように種々の溶液で大腸菌培養物を処理した際の、培地および細胞ペレットにおける酵素の相対的酵素レベルを示す棒グラフ。
【図2a】実施例4に記載のような、種々の界面活性剤を使用した、酵素の培地中への放出を示す棒グラフ。
【図2b】実施例4に記載のような、種々の界面活性剤をポリミキシンBと組み合わせて使用した、酵素の培地中への放出を示す棒グラフ。
【図3】実施例5に記載のような、ポリミキシンBと組み合わせた種々のTergitol(R)界面活性剤溶液による酵素の放出を示す棒グラフ。
【図4】実施例11に記載のような、種々の界面活性剤濃度における、大腸菌からのタンパク質の培地中への放出を示す棒グラフ。
【図5】実施例10に記載のような、Tomah(R)E−18−15界面活性剤を含む細胞溶解試薬を使用して大腸菌から放出された培地中のタンパク質の捕捉および溶出を相対的に示す棒グラフ。
【図6】実施例11に記載のような、大腸菌細胞から培地中への酵素の放出後に、親和性樹脂に結合して溶出された活性酵素の割合(%)を示す棒グラフ。
【図7】実施例14に記載のように、細胞溶解試薬を使用してロボットを用いて複数のタンパク質の精製について相対的な精製度を示すSDS−PAGEゲルの写真。(細胞溶解用バッファーを使用した、自動システムにおける複数のタンパク質の精製。)矢印は対応するタンパク質を示す。レーン1:His−RNaseHI;レーン2:His−ヒト化ウミシイタケ(Renilla )ルシフェラーゼ;レーン3:His−RNasin;レーン4:His−熱安定性ホタル・ルシフェラーゼ;レーン5:His−MGH;レーン6:His−βガラクトシダーゼ;M:分子量マーカー。
【図8】実施例15に記載のような、遠心分離した細胞に対して遠心分離していない細胞のタンパク質純度を相対的に示すSDS−PAGEゲルの写真。(遠心分離した細胞と遠心分離していない細胞の比較。)レーン1:遠心分離した溶解物、サンプル5μl;レーン2:遠心分離した溶解物から精製したタンパク質、サンプル20μl;レーン3:遠心分離していない溶解物、サンプル5μl;レーン4:遠心分離していない溶解物から精製したタンパク質、サンプル20μl;レーン5:分子量マーカー。
【図9】実施例16に記載のように、異なるロボット・プラットホームにおいて1×細胞溶解試薬を使用してタンパク質を高スループット精製した場合のタンパク質純度を相対的に示すSDS−PAGEゲルの写真。(異なる自動システムにおいて1×細胞溶解試薬を使用したタンパク質の高スループット精製。A1‐H8は、96ウェル・プレートのウェルに相当する。)
【図10】実施例13に記載のような高スループット・アッセイにおけるJM109細胞の溶解を実証する棒グラフ。
【図11】実施例13に記載のような高スループット・アッセイにおけるCA7細胞の溶解を実証する棒グラフ。
【図12A】リゾチームの非存在下(−lysozyme)におけるタンパク質の放出を実証する図。レーン1:High−RnaseHI;レーン2:His−ヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼ;レーン3:His−RNasin;レーン4:His−熱安定性ホタル・ルシフェラーゼ;レーン5:His−メチオニルtRNA合成酵素;およびレーン6:His−β−ガラクトシダーゼ。
【図12B】リゾチーム(lysozyme)の存在下(+Lysozyme)におけるタンパク質の放出を実証する図。レーン1:High−RnaseHI;レーン2:His−ヒト化ウミシイタケ・ルシフェラーゼ;レーン3:His−RNasin;レーン4:His−熱安定性ホタル・ルシフェラーゼ;レーン5:His−メチオニルtRNA合成酵素;およびレーン6:His−β−ガラクトシダーゼ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;および
(b)少なくとも1種の細胞膜改変化合物
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、前記組成物の約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲の量で該組成物中に存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤がエトキシ化アルキルフェノールを含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記エトキシ化アルキルフェノールが、エトキシ化ノニルフェノールまたはオクチルフェノキシポリエトキシエタノールを含んでなる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン性界面活性剤が、脂肪族アミンまたはエトキシ化獣脂アミンのエチレンオキシド縮合物を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤がエトキシ化アミンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、Tomah(R)E−18−5、Tomah(R)E−18−15、Rhodameen(R)VP532/SPB、Trymeen(R)6607、Triton X−100(R)からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞膜改変化合物が、細胞膜もしくは細胞壁を実質的に溶解させるかまたは細胞膜もしくは細胞壁において孔形成を引き起こすのに有効な量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞膜改変化合物が、リン脂質感受性のCa+2依存性プロテイン・キナーゼを阻害し、かつ細胞膜を攻撃する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞膜改変化合物が、膜の透過性を変化させるかまたは膜を破壊する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞膜改変化合物が、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、アルキルグリコシドもしくはアルキルチオグリコシド、ベタイン界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アミン、リジンポリマー、マガイニン、メリチン、ホスホリパーゼAまたはホスホリパーゼA活性化ペプチド(PLAP)を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞膜改変化合物が抗生物質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記細胞膜改変化合物が、硫酸ポリミキシンBまたはバンコマイシンを含んでなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞膜改変化合物が、ポリミキシンB1とポリミキシンB2との混合物を含んでなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞膜改変化合物が、アルキルグリコシドまたはアルキルチオグリコシドを含んでなる、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞膜改変化合物がオクチルチオグルコシドを含んでなる、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記オクチルチオグルコシドが、少なくとも0.4%(w/v)かつ1%(w/v)未満の終濃度で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記オクチルチオグルコシドが、0.4%(w/v)〜0.6%(w/v)の終濃度で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
緩衝塩をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記緩衝塩が、約6.5〜約9.0のpH範囲を維持するのに充分な量で存在する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
消泡剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
親和性標識していないタンパク質の非特異的結合を低減させる薬剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
リゾチームをさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が水溶液の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記溶液が濃縮物である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
約6.5〜約9.0のpH範囲を維持するのに充分な量の緩衝塩をさらに含んでなる、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
Tomah E−18−15、Triton X100およびオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
500mM HEPES(pH7.5)中に2%のTomah E−18−15、2%のTriton X100および6%のオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための方法であって、
所望のタンパク質またはペプチドを有する細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;ならびに
細胞を、該細胞の溶解およびその後のタンパク質またはペプチドの放出をもたらすのに有効な量の組成物と接触させる工程
からなる方法。
【請求項31】
放出されたタンパク質またはペプチドを分離する工程からさらになる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
放出されたタンパク質またはペプチドを、該放出されたタンパク質またはペプチドを結合する基材と接触させる工程からさらになる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記基材が磁性または非磁性の樹脂からなる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物がリゾチームをさらに含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が原核細胞または真核細胞からなる、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または植物細胞からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が、細胞培養物またはペレットの形態である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記界面活性剤が、前記組成物の約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記非イオン性界面活性剤がエトキシ化アルキルフェノールを含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記エトキシ化アルキルフェノールが、エトキシ化ノニルフェノールまたはオクチルフェノキシポリエトキシエタノールを含んでなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記カチオン性界面活性剤が、脂肪族アミンまたはエトキシ化獣脂アミンのエチレンオキシド縮合物を含んでなる、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記界面活性剤がエトキシ化アミンを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
前記界面活性剤が、Tomah E−18−5、Tomah E−18−15、Rhodameen VP532/SPB、Trymeen 6607、Triton X−100からなる群より選択される1種または複数の化合物を含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞膜改変化合物が、細胞膜もしくは細胞壁を実質的に溶解させるかまたは細胞膜もしくは細胞壁において孔形成を引き起こすのに有効な量で存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞膜改変化合物が、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、アルキルグリコシドもしくはアルキルチオグリコシド、ベタイン界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アミン、リジンポリマー、マガイニン、メリチン、ホスホリパーゼAまたはホスホリパーゼA活性化ペプチド(PLAP)を含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞膜改変化合物が、リン脂質感受性のCa+2依存性プロテイン・キナーゼを阻害し、かつ細胞膜を攻撃する、請求項30に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞膜改変化合物が抗生物質である、請求項30に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞膜改変化合物が、硫酸ポリミキシンBまたはバンコマイシンを含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞膜改変化合物が、ポリミキシンB1とポリミキシンB2との混合物を含んでなる、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞膜改変化合物が、アルキルグリコシドまたはアルキルチオグリコシドを含んでなる、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞膜改変化合物がオクチルチオグルコシドを含んでなる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記オクチルチオグルコシドが、少なくとも0.4%(w/v)かつ1%(w/v)未満の終濃度で存在する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記オクチルチオグルコシドが、0.4%(w/v)〜0.6%(w/v)の終濃度で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物が緩衝塩をさらに含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項56】
前記緩衝塩が、約6.5〜約9.0のpH範囲を維持するのに充分な量で存在する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記組成物が消泡剤をさらに含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項58】
前記組成物が、親和性標識していないタンパク質の非特異的結合を低減させる薬剤をさらに含んでなる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物がリゾチームをさらに含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物が、Tomah E−18−15、Triton X100およびオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が、500mM HEPES(pH7.5)中に2%のTomah E−18−15、2%のTriton X100および6%のオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項62】
宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための方法であって、
所望のタンパク質またはペプチドを有する細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;
該タンパク質またはペプチドを結合するための基材を提供する工程;
該細胞を、該細胞の溶解および該タンパク質またはペプチドの放出をもたらすのに有効な量の該組成物と接触させる工程;
該放出されたタンパク質またはペプチドを、放出されたタンパク質が基材と結合するのに有効な条件下で該基材と接触させる工程;
該基材に結合した該タンパク質またはペプチドを洗浄する工程;ならびに
該基材に結合した該タンパク質またはペプチドを回収する工程
からなる方法。
【請求項63】
タンパク質またはペプチドを抽出および単離するための装置であって、
タンパク質またはペプチドを有する1つまたは複数のサンプルを入れるためのハウジング;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物;ならびに
該タンパク質またはペプチドを結合する基材
からなる装置。
【請求項64】
前記ハウジングが、容器、カラムまたはマルチ・ウェル・プレートからなる、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記基材が、クロマトグラフィー樹脂またはメンブレンからなる、請求項63に記載の装置。
【請求項66】
前記クロマトグラフィー樹脂が磁性である、請求項65に記載の装置。
【請求項67】
請求項63に記載の装置を備えてなる、タンパク質またはペプチドを単離するためのキット。
【請求項68】
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;
少なくとも1種の細胞膜改変化合物;ならびに
キットを使用するための指示書
からなるキット。
【請求項69】
前記界面活性剤および細胞膜改変化合物が1つの組成物中に存在する、請求項68に記載のキット。
【請求項70】
前記組成物が水を含む、請求項69に記載のキット。
【請求項71】
前記水性組成物が濃縮物の形態である、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
バッファーをさらに備えてなる、請求項68に記載のキット。
【請求項73】
リゾチームをさらに備えてなる、請求項68に記載のキット。
【請求項74】
1種または複数の洗浄用バッファーをさらに備えてなる、請求項68に記載のキット。
【請求項75】
1種または複数の溶出用バッファーをさらに備えてなる、請求項68に記載のキット。
【請求項76】
タンパク質またはペプチドを結合するための基材をさらに備えてなる、請求項68に記載のキット。
【請求項77】
前記基材が磁性または非磁性のクロマトグラフィー樹脂からなる、請求項76に記載のキット。
【請求項78】
宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するため、標的タンパク質または標的ペプチドが存在するか否かを検出するため、あるいは細胞抽出物を調製するために使用される、請求項68に記載のキット。
【請求項79】
サンプル中に存在するタンパク質またはペプチドを検出あるいは定量するための手段をさらに備えてなる、請求項68に記載のキット。
【請求項80】
宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための高スループットの方法であって、
所望のタンパク質またはペプチドを有する1つまたは複数の細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;ならびに
細胞の各供給源を、該細胞の溶解およびその後のタンパク質またはペプチドの放出をもたらすのに有効な量の該組成物と接触させる工程
からなる方法。
【請求項81】
細胞の各供給源から放出されたタンパク質またはペプチドを分離する工程からさらになる、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記工程が、放出されたタンパク質またはペプチドを、該放出されたタンパク質またはペプチドの一部または全てに結合する基材と接触させることによって実施される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記基材が磁性または非磁性の樹脂からなる、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
放出されたタンパク質またはペプチドの活性または結合を測定する工程からさらになる、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
宿主細胞からタンパク質またはペプチドを回収するための高スループットの方法であって、
所望のタンパク質またはペプチドを有する、1つまたは複数の細胞の供給源を提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;
該タンパク質またはペプチドを結合するための1種または複数の基材を提供する工程;
細胞の各供給源を、該細胞の溶解およびその後のタンパク質またはペプチドの放出をもたらすのに有効な量の該組成物と個別に接触させる工程;
細胞の各供給源から放出されたタンパク質またはペプチドを、該放出されたタンパク質の一部または全てが基材と結合するのに有効な条件下で該基材と接触させる工程;
該基材に結合した該タンパク質を洗浄する工程;ならびに
該基材に結合した該タンパク質を回収する工程
からなる方法。
【請求項86】
前記基材が磁性または非磁性の樹脂からなる、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記放出されたタンパク質またはペプチドの活性または結合を測定する工程からさらになる、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
宿主細胞の各供給源が有するベクターによってコードされるタンパク質またはペプチドを構成メンバーとする、宿主細胞の供給源由来のライブラリーをスクリーニングするための高スループットの方法であって、
ライブラリーを構成するタンパク質またはペプチドをコードするベクターを有する宿主細胞の供給源から、タンパク質またはペプチドのライブラリーを提供する工程;
約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の細胞膜改変化合物を含んでなる組成物を提供する工程;
該タンパク質またはペプチドを結合するための1種または複数の基材を提供する工程;
細胞の各供給源を、該細胞の溶解およびその後のタンパク質またはペプチドの放出をもたらすのに有効な量の組成物と接触させる工程;
細胞の各供給源から放出されたタンパク質またはペプチドを、該放出されたタンパク質またはペプチドの一部または全てが該基材と結合するのに有効な条件下で該基材と接触させる工程;
該基材に結合した該タンパク質またはペプチドを洗浄する工程;ならびに
該基材に結合した該タンパク質またはペプチドを回収する工程
からなる方法。
【請求項89】
前記タンパク質またはペプチドが、目的の特定のタンパク質またはペプチドの変異体である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記タンパク質またはペプチドの活性または結合特性を測定する工程からさらになる、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記組成物が、Tomah E−18−15、Triton X100およびオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項80、85または88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記組成物が、500mM HEPES(pH7.5)中に2%のTomah E−18−15、2%のTriton X100および6%のオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項80、85または88に記載の方法。
【請求項93】
培養培地から細胞を収集する工程を伴わずに、培養された細胞から細胞抽出物を作製するための方法であって、該方法は、該細胞培地を、該細胞を溶解させるのに有効な量の組成物と接触させる工程からなり、該組成物は、
(a)約11〜約16の範囲内の疎水性−親油性バランス値を有する少なくとも1種の界面活性剤;および
(b)少なくとも1種の細胞膜改変化合物
を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項94】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
前記界面活性剤が、前記組成物の約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲の量で該組成物中に存在する、請求項94に記載の組成物。
【請求項96】
前記非イオン性界面活性剤がエトキシ化アルキルフェノールを含んでなる、請求項94に記載の組成物。
【請求項97】
前記エトキシ化アルキルフェノールが、エトキシ化ノニルフェノールまたはオクチルフェノキシポリエトキシエタノールを含んでなる、請求項96に記載の組成物。
【請求項98】
前記カチオン性界面活性剤が、脂肪族アミンまたはエトキシ化獣脂アミンのエチレンオキシド縮合物を含んでなる、請求項94に記載の組成物。
【請求項99】
前記界面活性剤がエトキシ化アミンを含んでなる、請求項93に記載の組成物。
【請求項100】
前記界面活性剤が、Tomah E−18−5、Tomah E−18−15、Rhodameen VP532/SPB、Trymeen 6607、Triton X−100からなる群より選択される、請求項93に記載の組成物。
【請求項101】
前記細胞膜改変化合物が、細胞膜もしくは細胞壁を実質的に溶解させるかまたは細胞膜もしくは細胞壁において孔形成を引き起こすのに有効な量で前記組成物中に存在する、請求項93に記載の組成物。
【請求項102】
前記細胞膜改変化合物が、リン脂質感受性のCa+2依存性プロテイン・キナーゼを阻害し、かつ細胞膜を攻撃する、請求項93に記載の組成物。
【請求項103】
前記細胞膜改変化合物が、膜の透過性を変化させるかまたは膜を破壊する、請求項93に記載の組成物。
【請求項104】
前記細胞膜改変化合物が、ポリミキシン−β−ノナペプチド(PMBN)、アルキルグリコシドもしくはアルキルチオグリコシド、ベタイン界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アミン、リジンポリマー、マガイニン、メリチン、ホスホリパーゼAまたはホスホリパーゼA活性化ペプチド(PLAP)を含んでなる、請求項93に記載の方法。
【請求項105】
前記細胞膜改変化合物が抗生物質である、請求項93に記載の組成物。
【請求項106】
前記細胞膜改変化合物が、硫酸ポリミキシンBまたはバンコマイシンを含んでなる、請求項105に記載の組成物。
【請求項107】
前記細胞膜改変化合物が、ポリミキシンB1とポリミキシンB2との混合物を含んでなる、請求項105に記載の組成物。
【請求項108】
前記細胞膜改変化合物が、アルキルグリコシドまたはアルキルチオグリコシドを含んでなる、請求項104に記載の組成物。
【請求項109】
前記細胞膜改変化合物がオクチルチオグルコシドを含んでなる、請求項108に記載の組成物。
【請求項110】
前記オクチルチオグルコシドが、少なくとも0.4%(w/v)かつ1%(w/v)未満の終濃度で存在する、請求項109に記載の組成物。
【請求項111】
前記オクチルチオグルコシドが、0.4%(w/v)〜0.6%(w/v)の終濃度で存在する、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
緩衝塩をさらに含んでなる、請求項93に記載の組成物。
【請求項113】
前記緩衝塩が、約6.5〜約9.0のpH範囲を維持するのに充分な量で存在する、請求項112に記載の組成物。
【請求項114】
消泡剤をさらに含んでなる、請求項93に記載の組成物。
【請求項115】
親和性標識していないタンパク質の非特異的結合を低減させる薬剤をさらに含んでなる
、請求項93に記載の組成物。
【請求項116】
リゾチームをさらに含んでなる、請求項93に記載の組成物。
【請求項117】
前記組成物が水溶液の形態である、請求項93に記載の組成物。
【請求項118】
前記溶液が濃縮物である、請求項117に記載の組成物。
【請求項119】
約6.5〜約9.0のpH範囲を維持するのに充分な量の前記緩衝塩をさらに含んでなる、請求項115に記載の組成物。
【請求項120】
Tomah E−18−15、Triton X100およびオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項119に記載の組成物。
【請求項121】
500mM HEPES(pH7.5)中に2%のTomah E−18−15、2%のTriton X100および6%のオクチルβチオグルコピラノシドを含んでなる、請求項93に記載の組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−507818(P2006−507818A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549969(P2004−549969)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/030463
【国際公開番号】WO2004/042003
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】