説明

細菌の広域スペクトルの検出に有用な方法、ペプチドおよびバイオセンサー

本明細書中には、アルファ−1−プロテイナーゼ阻害剤の反応性部位ループ(RSL)ドメインの改変から誘導されるペプチド基質を試料と接触させることによる、創傷感染の検出および試料内の細菌、例えば創傷細菌の存在または非存在を検出するための方法が記載される。本発明において、我々はアルファ1タンパク質を有しないペプチド基質がペプチド基質として効率的に使用できることを証明した。細菌により産生および/または分泌される酵素によるペプチド基質の改変または改変の非存在は、試料内に細菌の存在または非存在の指標として役立つことができる。本発明は試料内の細菌の存在または非存在を検出するためのバイオセンサーも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2004年6月9日付けの米国仮出願第60/578,811号および2003年11月3日付けの米国仮出願第60/516,692号の利益を主張する。上記出願のすべての教示は引用することにより本明細書に編入される。
【技術分野】
【0002】
創傷の感染は、米国における健康管理経費の一つの主要な原因である。すべての手術創傷の約5%が微生物に感染され、そしてこの値は、腹部手術を受けた患者では著しく高い(10〜20%)。ブドウ球菌(Staphylococci)のような細菌種が、感染した創傷から最も数多く単離される生物体である。これはヒトが、環境内のブドウ球菌の天然の蓄積体であり、いずれの時点でも人口の50%までに定住しているからであろう。病院環境内での健康管理従事者内および患者内の双方で定住比率が著しく高い。その上、病院環境内での定住生物体は、抗生物質が頻繁に使用される院内環境内に存在する強い選択圧により、抗微生物治療の多数の方式に抵抗性となり易い。ブドウ球菌は、通常、無害の共生生物として保持されるが、しかし、表皮内に裂け目ができると、それらは重く、生命をも脅かす感染を起こし得る。
【0003】
ブドウ球菌は、手術創傷感染における最も一般的な病因菌である。その他のものには、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、糞便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、霊菌(Serratia marcescens)、奇怪変形菌(Proteus mirabilis)、エンテロバクター・クロカエ(Enterobacter clocae)、アセチノバクター・アニトラタス(Acetinobacter anitratus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、および大腸菌(Escherichia coli)が含まれるがこれらに限定はされない。上記生物体のいずれかによる手術後感染は、病院の重大な関心事である。かかる感染を防止するための最も一般的な方法は、予防的抗生物質薬剤の投与である。この戦略は、一般に有効ではあるが、細菌の耐性株を繁殖させるという意図しない作用を有する。予防的な抗生物質の日常的な使用は、耐性株の繁殖を促進するという重大な理由から止めるべきである。
【0004】
慣例的な予防法の使用ではなく、それより良い方法は、良好な創傷管理、すなわち、手術前、その間、およびその後においてその領域を無菌に維持すること、および治癒の間の感染の部位の注意深い監視の実行である。通常の監視方法には、遅い治癒、炎症の兆候および膿に対する創傷部位の細心の観察、ならびに発熱の兆候に対する患者体温の測定が含まれる。不幸なことには、多くの症状は感染がすでに確立した後にのみ明らかになる。さらに、患者が病院から退院した後には、患者は彼自身の健康管理の監視に責任を持つことになり、そして感染の症状は不慣れな患者には明確ではないこともある。
【0005】
特に症状が悪化する前の感染の初期段階の間に、細菌の広域スペクトルを検出できるバイオセンサーシステムは、患者および健康管理従事者の双方に有益であろう。病院/クリニックを退院した後に患者が創傷の状態を正確に監視できれば、適切な抗菌治療が、さらに重大な感染を防止するために十分に早く開始できる。
【発明の開示】
【0006】
合成酵素基質であるヒトアルファ−1プロテアーゼ阻害剤が、一般的に創傷に感染する多種の微生物種、例えば細菌を同定するための試験系に使用できることを発見した。
【0007】
ヒトアルファ−1プロテイナーゼ阻害剤(α1−PI)は、セルピンファミリーの一員である。セルピンは、プロテイナーゼの阻害をもたらす不可逆的自殺基質として機能するセリンプロテイナーゼ阻害剤の一員である。プロテアーゼは、病原性細菌中の普通の毒性因子であり、そして時には宿主防御を無力化するために使用される。セルピンファミリー(阻害剤はセルピンの名称内にすでに含まれている)の中で、アルファ−1−プロテイナーゼ阻害剤(α1−PI)は、主要でそして最も良く研究されているメンバーの一つである。α1−PIは、活性化された好中球から分泌されるエラスターゼの調節に関与し、それは他方では宿主の結合組織の分解を制御する(Salveen,GS et al.,”Human plasma proteinase inhibitors”,Ann.Rev.Biochem.,52:655−709(1983)、引用することにより本明細書に編入される)。セリンプロテイナーゼ阻害剤の独特のカテゴリーは、特性的な暴露された反応性部位ループ(RSL)ドメインを有する。重要なことは、α1−PIのRSLが、宿主および細菌の双方を起源とする多数のプロテイナーゼにより切断を受けやすく、α1−PIの不活性化をもたらすことが実証されたことである。
【0008】
試験系は、多種(例えば、少なくとも2、少なくとも5、または少なくとも10種)の異なる微生物種、例えば創傷に一般的に感染するものを同時に同定するように設計できる。例えば、病原性細菌のある種には共通であるが、しかしそれは非病原性細菌中には存在しないような酵素を同定できる。かかる酵素は、例えば細菌ゲノムデータベースのバイオインフォマティクススクリーンに基づいてコンピューターを用いて同定できる。検出系のための基準として酵素を用いることにより、非常に感度が高い試験が設計できるが、それというのも非常に少量の酵素でも基質のかなりの量のターンオーバーに触媒作用ができるからである。
【0009】
従って、本発明は、試料中の細菌に対する分子マーカーの存在または非存在を検出して、試料内の1種もしくはそれ以上の微生物、例えば細菌の存在または非存在を検出する方法を特徴とする。
【0010】
「分子マーカー」とは、試料、例えば創傷または体液内の微生物(例えば細菌、真菌またはウイルス)の存在または非存在の検出のために使用できるいずれかの分子である。特定すると、検出されるべき分子マーカーは、タンパク質、例えば微生物により分泌されるか、微生物の細胞表面に発現されるか、またはウイルスまたはプリオンで感染された細胞の表面上に発現されるタンパク質を含む。一つの態様では、酵素が細菌プロテアーゼである。
【0011】
一つの局面では、本発明は、細菌により産生および/または分泌された酵素により基質の改変がもたらされる条件下で、試料を検出可能に標識された合成セルピン反応性部位ループ(RSL)ドメインペプチド基質と接触させ、そして基質の改変または改変の非存在を検出する工程を含んでなる、試料内の1種もしくはそれ以上の細菌の存在または非存在を検出する方法を特徴とする。基質の改変は、試料内の細菌の存在を示し、そして基質の改変の非存在は、試料内の細菌の非存在を示す。
【0012】
基質は合成物であることができる。例えば、それは天然または非天然に生成されたRSLドメインから誘導できそして野生型セルピンのRSLと同様または同等の活性を有することができる。それはセルピンRSLドメインの変種、類似体またはフラグメントを含んでなるかまたはそれらから成ることもできる。一つの態様では、基質は配列番号1、2または3を含んでなる。一つの態様では、基質は以下に記載のCRI1、CRI2またはCRI3である。
【0013】
細菌は、例えば創傷特異性細菌、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表在ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、化膿連鎖球菌、緑膿菌、糞便連鎖球菌、霊菌、奇怪変形菌、エンテロバクター・クロカエ、アセチノバクター・アニトラタス、肺炎桿菌、および大腸菌である。
【0014】
別の局面では、本発明は、a)細菌により産生および/または分泌された酵素により基質の改変がもたらされる条件下で、被験者(subject)内の創傷から得られた試料を検出可能に標識された合成セルピンRSLドメインペプチド基質と接触させ、b)基質の改変または改変の非存在を検出する工程を含んでなる、被験者内の創傷感染の存在または非存在を検出する方法と特徴とする。基質の改変は、被験者内の創傷感染の存在を示し、そして基質の改変の非存在は、被験者内の感染の非存在を示す。
【0015】
さらに別の局面では、本発明は a)細菌により産生および/または分泌された酵素により基質の改変がもたらされる条件下で、細菌により産生および/または分泌された酵素について、被験者内の創傷を、検出可能に標識された合成セルピンRSLドメインペプチド基質と接触させ、b)基質の改変または改変の非存在を検出する工程を含んでなる、被験者内の創傷感染の存在または非存在を検出する方法と特徴とする。基質の改変は、被験者内の創傷感染の存在を示し、そして基質の改変の非存在は、被験者内の感染の非存在を示す。
【0016】
別の局面では、本発明は、基質が固体支持体に付着されている固体支持体および検出可能に標識された合成セルピンRSLドメインペプチド基質を含んでなる、試料中の細菌、例えば創傷特異性細菌の存在または非存在を検出するためのバイオセンサーを特徴とする。ペプチドは、細菌プロテアーゼによるペプチド切断の検出のための蛍光または比色色素を用いて標識されてもよい。
【0017】
さらに別の局面では、本発明は、試料内の細菌の存在または非存在を検出するためのバイオセンサー、および創傷感染の原因因子である細菌の存在を検出するための1種もしくはそれ以上の試薬を含んでなる、創傷感染を検出するためのキットを特徴とする。例えば、試薬は細菌により分泌される酵素を検出するために使用できる。特定すると、試薬は、バイオセンサーの基質の改変を検出するために使用できる。
<発明の詳細な説明>
正常な生育の過程の一部として、多くの微生物は酵素をそれらの生育環境内に分泌する。それらの酵素は、栄養素の放出、宿主防御に対する保護、細胞エンベロープ合成(細菌内)および/または維持、およびまだ決定されていないその他を含み、それらに限定されない多数の機能を有する。細菌のような多数の微生物は、細胞外環境へ暴露(そしてそれと相互作用)する細胞表面上で酵素産生もする。
【0018】
産生および/または分泌されるそれらの酵素の存在を検出できる系は、産生/分泌細菌の存在を示すためにも同様に役立つ。あるいは、産生および/または分泌されるそれらの酵素の非存在を検出できる系は、同様に産生/分泌細菌の非存在を示すために役立つ。かかる検出系は例えば創傷感染のような感染の検出または診断のために有用である。
【0019】
本発明は、細菌の広域スペクトルにより産生または分泌される酵素の存在または非存在を検出するための、基質、例えば合成セルピンRSLドメインペプチド基質の使用に関する。本明細書中に使用される場合に、「合成」とは、天然には生成しないペプチドを指す。合成ペプチドはセルピンファミリーの一員(例えばα1−PI)の全長または野生型反応性部位ループ(RSL)(の例えば変種、類似体またはフラグメント)から誘導できる。一つの態様では、合成ペプチド基質は、本明細書中で例示する方法に従って調製できる。次いで、それらの合成基質は、それらの各酵素がそれらと特異的に反応するような条件下で検出可能なラベルを用いて標識でき、それらは改変、例えば観察される目視可能な色変化を受ける。本発明で使用される基質には、合成または天然に生成するいずれかの分子、例えば本発明の酵素と相互作用できるRSL配列の切断部位を含んでなる分子が含まれる。アルファ−1−プロテイナーゼ阻害剤(α1−PI)のRSL配列上の切断部位の相対位置は、すでに報告されており(Nelson,D et al.,”Inactivation of alpha 1−proteinase inhibitor as a broad screen for detecting proteolytic activities in unknown samples”,Anal.Biochem.,260(2):230−36(1998))そして図1Aに示される。基質の例には、本明細書中に記載の基質、ならびに当該技術分野では公知の酵素のための基質も含まれる。一つの態様では、基質は配列EAAGAMFLEAIPK(配列番号1)を含んでなる。別の態様では、基質はEGAMFLEAIPMSIPK(配列番号2)を含んでなる。別の例には、α1−PI誘導蛍光ペプチド、例えばEdans−EAAGAMFLEAIPK−Dabcyl(CPI1)およびEdans−EGAMFLEAIPMSIPK−Dabcyl(図1B)が含まれる。
【0020】
本発明に使用される基質には、比色および/または蛍光測定用成分およびペプチドも含まれ、そしてそれは微生物により産生および/または分泌される少なくとも1種のタンパク質と相互作用する。いくつかの態様では、基質のペプチド成分が微生物のタンパク質と相互作用する。他の態様では、基質の少なくとも1種の比色成分部分が微生物のタンパク質と相互作用する。
【0021】
基質の例は、2003年1月31日付け出願、そして2003年8月7日付けで国際特許出願公開(WO)第03/063693号として公開されたPCT出願PCT/US03/03172号、Mitchell C.Sandersらによる名称「微生物の検出方法」、および2004年6月9日付けで出願された米国出願第60/578,502号、Mitchell C.Sandersらによる名称「比色基質、比色センサー、および使用方法」中に記載されている。これら出願の教示全体は、引用することにより本明細書に編入される。
【0022】
合成セルピンRSLドメインペプチド基質は、多種(すなわち1種を越え、例えば少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25種またはそれ以上)の創傷病原体、例えば細菌を検出するために使用できる。本発明の細菌検出方法に使用される酵素は、好ましくは創傷特異性酵素である。本明細書中に使用される場合に、創傷特異性酵素とは病原性細菌により産生および/または分泌されるが、しかし非病原性細菌によっては産生および/または分泌されない酵素である。病原性細菌の例には、ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表在ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、または腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus))、連鎖球菌属(Streptococcus)(例えば、化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、またはアガラクチア菌(Streptococcus agalactiae))、腸球菌属(Enterococcus)(例えば、糞便連鎖球菌、またはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium))、コリネバクテリウム種(Corynebacteria)(例えば、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae))、バシラス属(bacillus)(例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis))、リステリア属(listeria)(例えば、リステリア菌(Listeria monocytogenes))、クロストリジウム種(Clostridium)(例えば、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetanus)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・デフィシル(Clostridium difficile))、ナイセリア種(Neisseria)(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、または淋菌(Neisseria gonorrhoeae))、大腸菌、赤痢菌種(Shigella)、サルモネラ種(Salmonella)、エルシニア種(Yersinia)(例えば、ペスト菌(Yersinia pestis)、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)、または腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica))、コレラ菌(Vibrio cholerae)、カンピロバクター種(Campylobacter)(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)またはカンピロバクター・フィータス(Campylobacter fetus))、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、シュードモナス属(pseudomonas)(例えば、緑膿菌、または馬鼻疽菌(Pseudomonas mallei))、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、ライム菌(Borrelia burgdorferi)、マイコバクテリウム属(mycobacteria)(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis))、癩菌(Mycobacterium leprae)、放線菌種(Actinomyces)、ノカルジア種(Nocardia)、クラミジア属(chlamydia)(例えば、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、または肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae))、リッケチア属(Rickettsia)(例えば、斑点熱リッケチア(Rickettsia ricketsii)、発疹チフスリッケチア(Rickettsia prowazekii)またはリッケチア痘リッケチア(Rickettsia akari))、ブルセラ属(brucella)(例えば、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、またはブタ流産菌(Brucella suis))、奇怪変形菌、霊菌、エンテロバクター・クロカエ、アセチノバクター・アニトラタス、肺炎桿菌および野兎病菌(Francisella tularensis)が含まれるが、これらに限定はされない。好ましくは、創傷特異性細菌は、ブドウ球菌、連鎖球菌、腸球菌、バシラス、クロストリジウム種、大腸菌、エルシニア、シュドモナス、奇怪変形菌、霊菌、エンテロバクター・クロカエ、アセチノバクター・アニトラタス、肺炎桿菌または癩菌である。例えば、創傷特異性酵素は、黄色ブドウ球菌、表在ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、緑膿菌、糞便連鎖球菌、奇怪変形菌、霊菌、エンテロバクター・クロカエ、アセチノバクター・アニトラタス、肺炎桿菌、および/または大腸菌から産生および/または分泌され得る。
【0023】
本明細書中で使用される「改変(modification)」とは、例えば切断またはその他の直接的もしくは間接的に検出可能な手段による基質の改変を指す。本発明の酵素は、切断により例えばタンパク質またはポリペプチドのような基質を改変でき、そしてかかる改変は検出されて、試料内の病原体の存在または非存在を決定できる。酵素による基質の改変を検出する一つの方法は、2種の異なる色素を用いて基質を標識する方法であり、ここで、一方は分子、例えば色素または比色物質が極く近接してある場合に他者への蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を消光(quench)することに役立ち、そして蛍光により測定される。
【0024】
FRETは、一方の蛍光分子の発光が他の励起に結合する距離依存性励起状態相互作用のプロセスである。共鳴エネルギー移動の典型的なアクセプターおよびドナー対は、4−〔〔−(ジメチルアミノ)フェニル〕アゾ〕安息香酸(DABCYL)および5−〔(2−アミノエチルアミノ〕ナフタレンスルホン酸(EDANS)から成る。EDANSは336nm光の照射により励起され、そして波長490nmの光子を発生する。DABCYL部分がEDANSから20オングストローム以内に位置すると、この光子は効率良く吸収される。DABCYLおよびEDANSはペプチド基質の反対末端に結合される。基質が不変なら、FRETは非常に効率的である。ペプチドが酵素により切断されると、もはや2種の色素は極く近接しては存在せず、そしてFRETは非効率的となる。切断反応はDABSYL蛍光の低下またはEDANS蛍光の増加(消光の消失)のいずれかを観察して追跡できる。
【0025】
改変される基質がタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドの場合には、基質は標準的な組換えタンパク質技術を使用して作製できる(例えばAusbel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,(1998)参照、その教示全体は引用することにより本明細書に編入される)。さらに、本発明の酵素も組換え技術を用いて作製できる。酵素またはその基質の十分な供給により、改変の正確な部位が決定できる。
【0026】
基質は、酵素と基質の間の相互作用を監視しそしていずれかの基質改変、例えば基質の切断またはかかる相互作用からもたらされるラベルを検出するために使用される検出可能なラベルを用いて標識される。検出可能なラベルの例は、基質内組み込みができる種々の色素、例えば本明細書に記載のもの、スピンラベル、抗原タグ、エピトープタグ、ハプテン、酵素ラベル、補欠分子族、蛍光物質、pH感受性物質、化学発光物質、色素原色素、比色成分、生物発光物質、および放射性物質を含む。適切な酵素ラベルの例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み、適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、およびフィコエリトリンを含み、化学発光物質の例はルミノールを含み、生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み、そして適切な放射性物質の例は125I、131I、35S、およびHを含む。検出可能なラベルのその他の例は、ボジピー(Bodipy)、ピレン(Pyrene)、テキサスレッド(Texas Red)、IAEDANS、ダンシルアジリジン(Dansyl Aziridine)、IATRおよびフルオレセインを含む。それらのラベルのスクシミジルエステル、イソチオシアナート、およびヨードアセトアミドも市場で入手できる。一つの態様では、基質は蛍光プローブおよび消光色素分子を用いて標識される。
【0027】
基質は、タンパク質と基質との間の相互作用を監視しそしていずれかの基質改変、例えばペプチドの切断もしくはかかる相互作用からもたらされるラベルを検出するために使用される少なくとも1種の比色成分を用いて標識されることもできる。この方法において、比色成分は、試料内の微生物の存在または非存在を明らかにするために改変の存在または非存在を示すラベルもしくはタグとして作用する。いくつかの態様では、比色成分はペプチドに共有結合する。
【0028】
いくつかの態様では、タンパク質は(少なくとも1種の)比色成分を含む基質の少なくとも一部分を切断する。例えば、基質が青色比色成分および黄色比色成分を含む場合には、非切断基質は緑色に見える。タンパク質が黄色比色成分を含む基質の部分を切断した後では、基質は青色に見える。
【0029】
いくつかの態様では、基質の改変は、ペプチド内の少なくとも1個のペプチド結合を加水分解することを含み、そして基質から切断されているペプチドの少なくとも一部分をもたらす。切断された部分は少なくとも1個の比色成分を含み、目に見える色変化をもたらす。他の態様では、基質の改変は、ペプチドから少なくとも1個の比色化合物の切断を含み、目に見える色変化をもたらす。
【0030】
比色成分はラベルまたはタグとして作用する。一つの態様では、少なくとも1個の比色成分が他の比色成分とは異なる色である。比色成分の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む。本発明の一つの態様では、基質は少なくとも2個の比色成分を有するペプチドを含んでなり、ここでそれぞれの比色成分は異なる色を含んでなり、そしてここで基質は固体支持体に付着される。基質の改変は、基質の少なくとも1部分の切断を含んでなることができ、ここでその部分は比色成分の一方を含み、そして切断は目に見える色変化をもたらす。
【0031】
細菌の存在または非存在が検出されるかまたは創傷感染が診断される試料は、例えば創傷(例えば被験者上の創傷表面)、体液、例えば血液、尿、痰唾、または創傷液(例えば創傷部位から生成する膿汁)であってもよい。試料または固体支持体は、細菌がその中または上に存在できるいずれかの物品、例えばカテーテル、バッグ(例えば蓄尿バッグ、血液蓄積バッグまたは血漿蓄積バッグ)、ディスク、ポリマー、膜、樹脂、ガラス、スポンジ、試料を集める物品、試料を入れる物品、スコープ(scope)、フィルター、レンズ、発泡体、布、紙、縫合糸、ディップスティック、スワブ(swab)、試験管、マイクロプレートのウエル、コンタクトレンズ液、または部屋または建物の領域、例えば健康管理環境の試験室もしくは手術室、浴室、キッチン、またはプロセスもしくは製造設備からのスワブであることができる。
【0032】
本発明は、本明細書中に記載された(1種以上、例えば少なくとも2種、少なくとも5種、少なくとも10種、少なくとも20種、少なくとも30種、少なくとも50種、少なくとも75種、少なくとも100種)の創傷病原体、例えば細菌を検出しそして感染の存在を消費者に知らせるためのバイオセンサーも特徴とする。バイオセンサーは、感染された創傷を検出するために健康管理環境または家庭内使用のために使用できる。それは、細菌汚染を監視される創傷またはその他の体液に近接する固体支持体に結合した(1個もしくはそれ以上の)広域スペクトルの基質を含んでなることができる。好ましくは、基質は、ラベルに共有結合した合成セルピンRSLドメインペプチド基質でありそれにより基質ラベル結合のタンパク質分解の際に細菌の存在を示す検出シグナルを有する。
【0033】
バイオセンサーは、最初に1種もしくはそれ以上、そして好ましくは、多種の検出可能なラベル、例えば色素原性また蛍光性離脱基を有する本発明の基質、例えば合成セルピンRSLドメインペプチド基質を標識して作製する。最も好ましくは、標識基は、シグナルが基質からタンパク質分解により離れた場合にのみ活性化される潜在的シグナルを提供する。色素原性離脱基は、例えばパラ−ニトロアナリド(nitroanalide)基を含む。基質が、細菌により創傷もしくはその他の体液中に内に分泌されるかまたはは細菌細胞の表面上に存在する酵素と接触すると、酵素は、かかる改変、例えば(例えば固体支持体、例えば創傷用包帯(dressing)上)で色の変化として目視により、または当該技術分野では標準的な分光測光技術を用いて検出できる吸光度の変化の検出をもたらすように基質を改変する。
【0034】
バイオセンサーは、固体支持体、例えば創傷用包帯(例えば包帯、またはガーゼ)、滅菌状態または微生物汚染(汚染物)を含まないことが要求される材料、例えばポリマー、膜、樹脂、ガラス、スポンジ、ディスク、スコープ、フィルター、レンズ、発泡体、布、紙、ディップスティック、もしくは縫合糸、または試料を保存または集めるための物品(例えば体液を保存するための容器、例えば蓄尿バッグ、血液または血漿蓄積バッグ、試験管、カテーテル、スワブ、またはマイクロプレートのウエル)である。
【0035】
典型的には、固体支持体は、支持体が創傷または試料と直接接触した場合に滅菌に適する材料から作製される。本発明の一つの態様では、バイオセンサーは、創傷と直接接触できる。ある場合には、かかる直接接触の際に創傷または体液の汚染を防止するために滅菌被覆または層が使用される。かかる滅菌被覆を用いる場合には、それらは滅菌に適合させるが、しかし酵素/基質相互作用は妨害しない性質を有する。好ましくは、創傷と接触するバイオセンサーの部分は、試料表面からバイオセンサーを容易に離脱できるような非接着性でもある。例えば、バイオセンサーが創傷用包帯を含んでなる場合に、包帯は、酵素基質が反応するために十分な期間創傷と接触し、次いで創傷もしくは周囲の組織にさらなる損傷を与えないで包帯を取り去る。
【0036】
検出可能なラベル、例えば色素原性色素を用いて適切に標識され、そしてセンサー装置に付着または組み込まれた広域スペクトル基質(例えば1個を越える病原体または細菌の検出に適する基質)は、上記の酵素を分泌する多種の病原性細菌の存在または非存在の指標として作用できる。
【0037】
本発明のバイオセンサーは、場合により、病原性細菌の産生および/または分泌する酵素に対して、1種もしくはそれ以上の追加の基質(例えば少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100種の基質)を含んでなることができる。1種を越える基質を利用する場合には、それぞれは他のものから区別するために標識(例えば異なる検出可能ラベルを用いて)されてもよいか、またはそれぞれを固体支持体上の特定の領域内に限定してもよい。
【0038】
疎水性離脱基を有する基質は、疎水性表面に非共有結合により結合できる。あるいは、親水性または疎水性基質は、ジスルフィドまたは第一級アミン、カルボキシルもしくはヒドロキシル基により表面に結合できる。固体支持体への基質の結合の方法は、当該技術分野では公知である。例えば、蛍光性および色素原性基質は、創傷病原体との反応に影響しない非本質的反応性末端、例えば遊離アミン、カルボン酸もしくはSH基を用いて固体基質に結合できる。遊離アミンは、例えば、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)またはN−シクロヘキシル−N’−2−(4’−メチル−モルホリニウム)エチルカルボジイミド−p−トルエンスルホナート(CMC)のいずれかの10モル過剰を用い、2時間、4℃でpH4.5に調整した蒸留水中で基質上のカルボキシル基に結合させて、ペプチド結合を形成するように縮合反応を促進できる。SH基は、DTTまたはTCEPを用いて還元し、次いでN−e−マレイミドカプロン酸(EMCA、Griffith et al.,Febs Lett.,134:261−263(1981)、引用することにより本明細書に編入される)を用いて表面上の遊離アミノ基に結合できる。
【0039】
本発明のポリペプチドは、本明細書中に記載の広域スペクトルペプチド基質、例えばセルピンRSLドメインペプチド基質のフラグメントおよび変種を含んでなるかまたはそれらから成ることもできる。変種は、それらのペプチド基質として同じ遺伝子座、例えば生物体内のα1−RSLドメインによりコードされる本質的に相同のポリペプチド、すなわち対立遺伝子変種、ならびに他の変種を含む。変種は、他の生物体内の他の遺伝子座から誘導されるが、しかし本明細書中に記載のペプチド基質と本質的な相同性を有するポリペプチドも包含する。変種は、それらのペプチド基質に本質的に相同または一致するが、しかし他の生物体から誘導されたポリペプチド、すなわちオルソログも含む。変種は、それらのペプチド基質と本質的に相同または一致し、化学合成により製造されるポリペプチドも含む。変種は、それらのペプチド基質と本質的に相同または一致し、組換え法により製造されるポリペプチドも含む。
【0040】
2種のアミノ酸配列の一致百分率は、最適比較の目的のために配列を整列して決定できる(例えば、第一の配列の配列にギャップを導入できる)。次いで相当する位置にあるアミノ酸を比較し、そして2個のアミノ酸配列の間の一致百分率は、配列により共有される一致位置の数の関数である(すなわち一致百分率=一致位置の数/位置の総数X100)。特定の態様では、比較の目的で整列されたアミノ酸配列の長さは、ペプチド基質配列、例えばα1RSLドメイン配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも60%、そしてよりさらに好ましくは少なくとも70%、80%、90%、または100%である。2個の配列の実際の比較は、周知の方法、例えば数学的アルゴリズムを用いて達成できる。かかる数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873−5877(1993)(これは引用することにより本明細書に編入される)に記載されている。このようなアルゴリズムは、Schaeffer et al(Nucleic Acids.Res.29:2994−3005(2001)(引用することにより本明細書に編入される))に記載のようにBLASTプログラム(バージョン2.2)内に組み込まれている。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる場合には、それぞれのプログラムのデフォールトパラメーターを用いることができる。一つの態様では、検索されるデータベースは非重複性(NR)データベースであり、そして配列比較のためのパラメーターは、フィルターなし;期待値10;ワードサイズ3;マトリックスがBLOSUM62であり;そしてギャップコスト(Gap Cost)が1のExistence1および1のextensionを有するように設定できる。
【0041】
別の態様では、2個のアミノ酸配列の間の一致百分率は、GCGソフトウエアパッケージ(Accelrys Inc.San Diego,California)中のGAPプログラムを使用し、Blossom63マトリックスまたはPAM250マトリックスルのいずれか、およびギャップウエイト12、10、8、6または4、および長さウエイト2、3または4を使用して得ることができる。さらに別の態様では、2個の核酸配列の間の一致百分率は、ギャップウエイト50および長さウエイト3を用いるGCGソフトウエアパッケージ(Accelrys Inc.)中のGAPプログラムを用いて達成できる。
【0042】
その他の好ましい配列比較は本明細書中に記載されている。
【0043】
本発明は、一致度は低いがしかしポリペプチド基質により行使される1種もしくはそれ以上の同一機能、例えば、細菌、例えば創傷特異性細菌により産生または分泌される酵素のための基質として作用する能力を行使するために十分な類似性を有するポリペプチド基質も包含する。類似性は、保存されたアミノ酸置換により決定される。かかる置換は、似た特性の別のアミノ酸によりポリペプチド中の与えられたアミノ酸を置換するものである。保存的置換は表現型的にサイレントとなりやすい。典型的には、保存的置換と考えられるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの間の相互の交換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの間の交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換および芳香族残基PheおよびTyrの間の置換である。どのアミノ酸変化が表現型としてサイレントになりやすいかについてのガイダンスは、Bowieら、Science,247:1306−1310(1990)(引用することにより明細書中に編入される)に見いだされる。
【0044】
機能的変種は、機能に無変化または重要でない変化をもたらすα1RSLドメイン内のものと類似のアミノ酸の置換も含むことができる。あるいは、かかる置換はある程度は機能に正または負に影響することもある。非機能性変種は、典型的には、1個もしくはそれ以上の非保存アミノ酸置換、欠失、挿入、逆転、もしくは短縮、または重要な残基または重要な領域内での置換、挿入、逆転、もしくは欠失を含み、かかる重要な領域は感染特異性プロテアーゼのためのタンパク質分解性切断部位を含む。
【0045】
酵素、例えばプロテアーゼによる切断に本質的である本発明のペプチド基質内のアミノ酸は、当該技術分野では公知の方法、例えば部位指定変異誘発またはアラニン走査変異誘発により同定できる(Cunningham et al.,Science,244:1081−1085(1989)、引用することにより明細書中に編入される)。後者の方法は分子内の残基それぞれの残基において単一アラニン変異を導入する(分子あたりに変異1個)。
【0046】
本発明は、本明細書中に記載の合成または天然に生成するペプチド基質、例えばα1RSLドメイン配列に60%、70%、80%、90%または95%の配列一致を有する生物学的活性フラグメントを含む、ペプチド基質またはその機能性変種のポリペプチドフラグメントも含む。本発明は、本明細書中に記載のポリペプチドの変種のフラグメントも包含する。生物学的活性フラグメントには、細菌、例えば創傷特異性細菌により産生または分泌される酵素のための基質として作用する能力を保持するフラグメントが含まれる。
【0047】
フラグメントは、分離(他のアミノ酸またはポリペプチドに融合していない)していてもよくまたはより大きいポリペプチド内にあってもよい。さらに数個のフラグメントが単一のさらに大きいポリペプチド内に含んでなることもできる。一つの態様では、宿主内の発現のために設計されたフラグメントは、ポリペプチドフラグメントのアミノ末端に融合された異種プレ−およびプロ−ポリペプチド領域およびフラグメントのカルボキシル末端に融合された追加の領域を有することができる。
【0048】
本発明のバイオセンサーおよびペプチドは、細菌、および殊には病原性細菌の存在または非存在を検出するために望ましいいずれの状況でも使用できる。例えば、健康管理施設内、そして殊には手術室内の作業表面上に集まる細菌は、本明細書中に記載のバイオセンサを用いて検出できる。細菌により分泌されるかまたはその上に存在する酵素により改変され得る1種またはそれ以上の基質は、標識されそして回収基質、例えばスワブの先端上の木綿繊維に共有結合により結合される。1種を越える基質を使用する場合には、相互に区別するためにそれぞれを標識するか(例えば異なる検出可能ラベルを使用する)および/またはそれぞれを固体支持体上の特定の領域内に限定してもよい。スワブ先端は、細菌による汚染が疑われる表面を拭き取るために使用される。スワブ先端を媒体内に浸漬しそして結合し標識された基質に特異性の酵素が存在する場合に標識された基質の改変を可能とする条件を用いてインキュベーションされる。
【0049】
本発明は、本明細書中に記載の創傷特異性細菌を検出するためのキットも特徴とする。該キットは例えば、それに検出可能に標識された基質(例えばセルピン反応性部位ループ(RSL)ドメインペプチド基質)が連結、結合もしくは付着している複数のウエル(例えばマイクロタイタープレート)を有する固体支持体を含んでなることができる。1種もしくはそれ以上の緩衝液を提供する手段が設けられている。陰性対照および/または陽性対照も提供できる。適切な対照は、当該技術分野の専門家により容易に調製できる。病原体(例えば本明細書中に記載の細菌)による汚染が疑われる試料は緩衝液を使用して調製される。試料のアリコート、陰性対照、および陽性対照をそれ自身のウエル内に入れ、そして反応させる。基質の改変、例えば色変化が観察されたウエルを微生物病原体を含むと決定する。かかるキットは、被験者内の創傷感染を検出するために特に有用である。
【0050】
本発明には、バイオセンサー、例えばパッケージ化された滅菌創傷用包帯、および検出アッセイを実行するために必要ないずれかの追加の試薬を含んでなるキットも包含される。
実施例
【0051】
本発明を以下の実施例により説明するが、しかしこれをいかなる意味でも限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0052】
試料内の細菌の非存在または存在の検出のための細菌の調製
下記の細菌種それぞれの培養物を、当該技術分野では標準の方法を用いて、ブレインハートインフュージョン(Brain Heart Infusion、BHI)浴中、37℃で激しく攪拌(約200rpm)して一晩(O/N)培養した;黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、霊菌、大腸菌、緑膿菌(PA14)、緑膿菌(GSU3)、および糞便連鎖球菌。一晩培養の後、それぞれの培養物の試料1mlを採取し、そして12.000rpm、5分間の遠心分離によりカルチャー上清から細胞を取り除いた。残ったカルチャー上清は必要になるまで氷上で保存した(1時間以内)。細菌は、以下に記載のように酵素の存在または非存在に関してアッセイされた。
【0053】
あるいは、細菌細胞をカルチャー上清から分離しないで、それらの培養浴内にまだ懸濁している細胞を含む試料についてアッセイを行った。培養48時間(2日間)後に、操作を繰り返した。
【実施例2】
【0054】
創傷試料中の細菌の非存在または存在を決定するための創傷用包帯からの細菌の抽出
35個の新しく冷凍した創傷用包帯をThomas Serena博士(St.Vincent Wound Clinic,Erie,PAの医学指導者かつPenn North Centers for Advanced Wound Careの創始者)から入手した。包帯を本研究のための医療廃棄物として分類しそして創傷または患者についてのいかなる情報も得られなかった。包帯は無作為に創傷に由来しそして同じ日の内に集めて発送された。包帯をドライアイス上で輸送しそして到着すると直ちに−80℃で保管した。
抽出
分析する日に、包帯をフリーザーから取り出しそして切断のために包帯を引き出すために十分な程度に解凍した。すべての作業は、滅菌条件下で、血液中病原体ガイドライン(Blood−Borne Pathogen Guidline)に従って行われた。各種の包帯大きさおよび浸出物が存在した。大部分の包帯はガーゼタイプであり、いくつかは吸収中心部を有していた(すなわち、親水コロイドまたは先進的創傷管理ドレッシングは含まれていなかったように見受けられる)。それぞれの包帯から2x3.5cmの長方形を切り取った(面積7cm)。大型包帯の場合には包帯の最も代表的な部分を選択した。
【0055】
各種の包帯色調および浸出物が得られた。滅菌PBS3mlを含む15ml滅菌円錐形試験管内に包帯を置きそして一晩、4℃で抽出を行った。包帯を浸漬すると直ちにPBSが濁った白色に変化した数個の試料があった(試料2、3、9、14、22、26、および27)。それらの包帯試料は創傷の処置に由来する銀を含むと推測した。包帯抽出の後、それぞれの溶液の色調を記録した。それぞれの抽出液の0.5mlアリコート3個を保管および試験のために集めた。
【0056】
切断反応は、37℃で全体積100μl中の創傷試料抽出液10μl、CP12ペプチド基質(水/DMSO中5mg/mL)3μlを用いて行った。反応は、励起波長355nmおよび発光波長485nmを用いて蛍光プレートリーダーで追跡した(図10A〜10D)。
【実施例3】
【0057】
α1−PI RSL配列の変種を用いる広域スペクトルアッセイ
2種のペプチド基質、CPI1およびCPI2はRSL配列のすべての切断部位を包含するように設計され、それを図1Aおよび1Bに示す。ペプチド基質を蛍光プローブedans(5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸)および消光色素分子dabcyl((4−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸)を用いて標識した。
(CPI1)Edans−EAAGAMFLEAIPK−dabcyl(配列番号1)
(CPI2)Edans−EGAMFLEAIPMSIPK−dabcyl(配列番号2)
細菌をインキュベーター内で一晩、37℃で5mL PHI(ブレインハートインフュージョン)培地中で培養した。得られた培養物それぞれを2個の試料に分割した。1個は培養物として使用し、他方は遠心分離で分離して上清を集めた。アッセイは、150mM NaClを添加した20mM tris緩衝液(pH7.2)中で行った(PBS)。切断反応は、37℃で全体積100μL中の培地または上清7μLおよびペプチド基質(水/DMSO中5mg/mL)3μLを用いて行った。反応は、励起波長355nmおよび発光波長485nmを用いて蛍光プレートリーダーで追跡した。
【0058】
実験の第一の組は、細菌培養物(培地および細胞)のアッセイ溶液内への直接添加により行った。第一のアッセイは、一晩(一日)培養細胞および上清ならびに基質としてペプチドCPI1およびCPI2を用いた。図2Aおよび2Bに示すように、プロテアーゼ活性はペプチド基質を用いて多数の細菌で観察された。
【0059】
どの細菌がプロテアーゼを分泌したかを決定するために、ペプチドCPI1およびCPI2を用いた一晩培養細菌培養物から得られた細菌上清を用いて、同様のアッセイを行った。図2Cおよび2Dに示すように、結果は細菌培養物のものと同様であり、プロテアーゼが分泌されたことを示した。
【0060】
実験の第二の組では、48時間(2日)培養細胞および上清を用いて同様のアッセイを行った。アッセイは培地としてCPI1およびCPI2を用いた。アッセイは、細菌上清5μLを用いたことを除いて、実験の第一の組にすでに記載したと同様に行った。結果を図3A〜Dに示す。
【実施例4】
【0061】
バイオセンサー表面の開発
表面への分子の付着は、数種の異なる形式の相互作用を用いて行うことができる。典型的には、タンパク質は、疎水性、静電気、または共有結合相互作用を用いて表面に付着できる。各種の表面性質を有する多数の市場で入手できる膜および樹脂がある。表面は、所要の表面性質を備えるために化学的に改変されることもできる。
【0062】
タンパク質およびペプチド結合のために市場で入手できる移動膜が存在する。それらは正および負に帯電したポリマー、例えばイオン交換膜ディスクフィルターおよび樹脂からなる。ニトロセルロース膜が疎水性および静電気相互作用を提供する。ガラス繊維膜は、容易に化学的に改変されて機能性基を付加できる疎水性膜を提供する。タンパク質およびペプチドを共有結合する反応性機能性基を提供する改変ポリマー膜も存在する。
【0063】
タンパク質に共有結合するために膜または樹脂上の各種の官能基および架橋剤を使用することも可能である。架橋剤は2個の反応性基を含みそれにより2個の標的官能基を共有結合的に連結する手段を提供する。タンパク質を標的とする最も通常の官能基は、分子間架橋を形成するために使用されるアミン、チオール、カルボン酸、およびアルコール基である。架橋剤は、同種二官能性または異種二官能性であることができ、種々の長さの架橋剤の選択が市場で可能である。
【0064】
金属キレート(アフィニティー結合)相互作用は、生物学的分子にさらに強い結合を提供できる。ペプチド基質内へ組み込まれたhis−タグは、ニッケル結合樹脂への連結を可能とするために使用できる。ヒスチジン−タグを有するペプチドは、共有結合的に結合したニトリロ三酢酸(NTA)により不動体化されたニッケルイオンを含む樹脂(セファロース(Sepharose))に結合する連続ヒスチジン残基の能力に基づいて精製される。CGAMFLEAIPMSIPAAAHHHHH(配列番号5)を含んでなるCPI3ペプチドは、ヒスチジン−タグを付加してCPI2に基づいて作製された。CPI3は、比色色素を用いてシステイン基に標識された。この例において、レマゾール(remazol)色素、リアクティブブラック(Reactive Black)5(RB5)を使用した。この色素は、595nmにピーク吸光を有する暗青色を発光する。
【0065】
【化1】

【0066】
CPI3−リアクティブブラック5標識ペプチドは、ヒスチジン−タグを介してNTA樹脂に結合した。NTA樹脂は非特異性結合をしないで高いレベルのペプチド結合を与える。
【0067】
標識したNTA樹脂上のCPI3は、緑膿菌(PA14)を用いて一晩、37℃で切断された。切断されたペプチドは、樹脂および細菌を入れた試験管内に配置した正に荷電した膜(Pall SB6407)を用いて集めた。対照試料は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の正荷電膜と一緒のNTA上のCPI3から成っていた。対照で示されるものと比較すると、細菌と一緒の試料内の正荷電膜上で、強い色変化が得られた。膜上の色変化は、CPI3が切断されそして色素を含む切断部分が膜上に拡散して青色を発生することを示した。
【0068】
リシンペプチドタグは、例えばウルトラバインド(UltraBind)TM(Pall Gelman Laboratory,Ann Arbor,MI)のような表面に連結するために使用できる。ウルトラバインドは、タンパク質の共有結合のためにアルデヒド基を用いて改変されたポリエーテルスルホン膜である。タンパク質は、ウルトラバインド表面と直接反応させる。架橋鎖を用いてタンパク質またはペプチドを表面に連結することも可能である。例えば、カルボジイミド、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ヒドロクロリド)は、カルボン酸基をアミンに連結するために慣用的に使用される。ペプチドと架橋剤との連結は、膜の表面を離れてペプチドを延長し一方ではまだそれに共有結合するリンカー鎖の選択を可能とする。クロスリンカーを介するペプチドの連結は、ペプチドを細菌酵素に利用させるように最適化できる。これは、センサーの反応時間の最適化を可能とするが、それはペプチドの利用性がこのパラメーターに直接関連するからである。
【実施例5】
【0069】
表面センサーの感度
CPI2は、広域スペクトルセンサーの良い候補として決定された。表面センサーは下記のように構築された。
【0070】
使用した膜: Pall SB6407
使用したペプチド: CPI2
使用した量: 8μg
センサーを空気乾燥しそして−20℃で一晩保管した。感度研究のために、センサーを滅菌した96ウエルプレート内に装入した。
【0071】
糞便連鎖球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、および霊菌の細菌を、培養器内で一晩、37℃で、5ml BHI(ブレインハートインフュージョン)培地内で培養し、そしてそれぞれの実験に定められた濃度に希釈した。細菌のそれぞれの株をPBS(pH7.4)を用いて希釈して550nmで約0.52の光学密度(OD)を得た。このODは細菌の約10細胞/mlを表すと想定された。それぞれの細菌の10細胞/mlの原料をPBSで希釈して、10、10、10および10細胞/mlの濃度系列を得た。感度試験は、10、10、10および10細胞/ml(細胞)の濃度系列のそれぞれの100μLをセンサーの列上に配置することから成っていた。それぞれの感度試験の対照は、100μLPBSに暴露されたセンサーからなっていた。
【0072】
データは、それぞれのプレートについて4、24および48時間で採取した。データは、KODAK DC290ディジタルカメラを用いて比較的均等な条件(照明、暴露時間など)で撮影した各プレートの色(蛍光)写真から成っていた。写真は国立衛生研究所(NIH)で開発した公開ドメイン写真加工および分析プログラム(public domain image processing and analysis program)であるNIH ImageJを用いて分析した。分析は、それぞれのウエル内の強度値(すなわちピクセルの数により分割された選択内のすべてのピクセルの強度値の和)の測定からなっていた。ピクセルは0〜1の値に範囲内である。ImageJは、白色を0でそして黒色を1の値で表示した。すべてのセンサー感度データを時間に対して0〜1の指数スケールでプロットしそしてトレンドは写真内に見られるものを正確に反映していた。
【0073】
10、10、10および10細胞/mlの濃度系列で試験した糞便連鎖球菌センサーの結果を図4Aおよび4Bに示す。
【0074】
10、10、10および10細胞/mlの濃度系列で試験した緑膿菌センサーの結果を図5Aおよび5Bに示す。
【0075】
10、10、10および10細胞/mlの濃度系列で試験した黄色ブドウ球菌センサーの結果を図6Aおよび6Bに示す。
【0076】
10、10、10および10細胞/mlの濃度系列で試験した化膿連鎖球菌センサーの結果を図7Aおよび7Bに示す。
【0077】
10、10、10および10細胞/mlの濃度系列で試験した霊菌センサーの結果を図8Aおよび8Bに示す。
【0078】
CPI2ペプチド基質は糞便連鎖球菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌および霊菌のプロテアーゼにより効率的に切断された。CPI2ペプチド基質は大腸菌または上清と共にインキュベーションした場合には切断されなかった。CPI2ペプチドは非感染創傷液の存在下では切断されなかった。細菌の最高の濃度で、上記の蛍光アッセイの多くは消光を示し、それは10および10試料の一部での蛍光レベル内の低下により証明された。アッセイは、蛍光消光を低下させるために膜上に少ない基質を用いて反復できる。
【0079】
それぞれのセンサーの反応性は、センサー試験(40時間)の末期に比較してそれぞれから得られた相対シグナルで決定した。結果を図9A〜9Cに示す。CPI2ペプチドは、10CFUで大部分の病原体を検出するために有効であった。すべての5種の細菌(大腸菌を除く)は、10細菌/mlの濃度で強いシグナルを発生した。しかし、10細菌/mlの濃度では、霊菌は背景以上で有意に測定できるシグナルを発生するとは観察されなかった。
【0080】
CPI2ペプチドと無害の細菌および創傷液との相互反応性は、適切な対照を用いてさらに完全に分析できる。創傷包帯上および生体ブタ内試験におけるCPI2ペプチド基質の適用可能性も決定できる。
【0081】
本発明は、その好ましい態様を参照して具体的に示して説明したが、当該技術分野の専門家は、形状よび詳細における種々の変化が、添付の請求範囲により包含される本発明の範囲から外れることなく可能であることを理解するであろう。
【実施例6】
【0082】
プッシュ−スルー試験
CPI3ペプチドは、多種の病原体の検出のために使用される広域スペクトルペプチドCPI2の5−ヒスチジンタグ付バージョンである。システイン基がN−末端に付加されて色素を用いる標識を可能とする:
CPI3 〔Ac〕−CGAMFLEAIPMSIPAAAHHHHH〕〔OH〕
CPI3ペプチドは、システイン基上にテトラメチルローダミン ヨードアセトアミド(TMRIA)色素(Molecular Probe,Eugene,Oregonから入手可能)を用いて標識された。標識反応は、過剰のTMRIA色素を用いてPBS中、pH値7.4で行った。色素対ペプチドの比率は約1.0と算出された。
【0083】
TMRIA色素で標識されたCPI3の約1mgを、ペプチド上の5−ヒスチジンタグを介して1mlのニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)アガロースビーズ(Qiagen,Valencia,Californiaから入手)に結合させた。本質的にすべてのCPI3がNi−NTAに結合し、それは溶液から色の消失により証明された。
【0084】
CPI3−TMRIAの50μlビーズ体積を試験管内に配置しそしてmLあたりに1x10または1x10cfuの糞便連鎖球菌200μlを加えそして5分間、室温でインキュベーションした。細菌プロテアーゼは、色素−ペプチドフラグメントがNi−NTAビーズから開放されるようにCPI3を切断した。ビーズはマイクロ遠心分離機を用いる短時間の遠心分離により溶液から分離した。10、10、10cfu当量を得るためにに相当する体積および細胞濃度(例えば1x10cfu/μlの100μl)を試験管から取り出しそして1mlシリンジの先端に置いた。細菌を加えないリン酸緩衝生理食塩水を対照として使用した。次いで濾紙で裏から抑えたポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜上の適合する大きさのO−リングの上にシリンジを配置しそして液に膜を通過させるようにプランジャーで押した。色素−ペプチドフラグメントはPVDF膜の表面に保持されそして色素を含まない液体だけが濾紙を通過した。5分後に、10cfu/mLの液体に暴露されたPVDF膜は最も明るい色反応を示し、一方10cfu/mLの液体に暴露されたPVDF膜は10cfu/mL液体に暴露された膜よりも低い色反応を示した。5分後に、10cfu/mLの液体に暴露されたPVDF膜は10cfu/mLの液体に暴露されたPVDF膜はよりも低い色反応を示し、一方0cfu/mLの液体に暴露された膜は識別可能な色反応を示さなかった。
【実施例7】
【0085】
検出可能に標識された基質の安定性
検出可能に標識された基質の長期の安定性または使用可能性を評価するために、CPI2基質をHRPを用いて検出可能に標識しそしてアフィゲル(AffiGel)ビーズへ付着させた。40℃で合計して35日間、ビーズを熟成した。35日間の熟成過程の間に種々の間隔でビーズの試料を採取しそして緑膿菌の10CFU/mLを含む溶液またはPBSの対照緩衝液に暴露した。細胞に暴露されたビーズは、暗青色シグナルを発光し、一方対照に暴露されたものは発光しなかった。図11は、安定性研究の間に採取された種々の試料の色測定のグラフを示す。データは、ビーズが非常に安定でありそして時間経過と共に検出可能なシグナルの劣化に伴ういかなる問題もなかったことを示し、ビーズが非常に耐久性であることを示した。
【実施例8】
【0086】
株間の操作性
CPI2蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ペプチドを糞便連鎖球菌の5種の異なる臨床株(University of Coloradoから入手)に暴露した。ペプチドはすべての5種の株と強く反応した。図12は、種々の株に暴露した後に測定された相対蛍光のグラフを示す。データは、検出可能に標識されたペプチドが、創傷病原体の異なる株の存在を検出することを示す。
【実施例9】
【0087】
HRPと共役したCPI2ペプチドの反応性
CPI2ペプチドを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と共役させ、次いで液相および固相アッセイのために種々のビーズ(例えばアフィゲルおよびアガロースビーズ)に結合させた。一部のビーズは、緑膿菌の10CFU/mLを含む溶液に暴露させた。暗青色がABTSおよび過酸化水素の存在で形成され、それは細菌の存在を示した。検出可能な色シグナルは、4分間以下作動し、検出可能に標識されたビーズは、有害病原体を検出するために有用な注意試験(care test)の迅速な広域スペクトル点として使用できることを示唆した。
【実施例10】
【0088】
臨床スワブ試料試験
CPI2ペプチドを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と共役させ、次いで液相および固相アッセイのために種々のビーズ(例えばアフィゲルおよびアガロースビーズ)に結合させた。患者の創傷に暴露させたスワブ試料は、University of Massachusetts Medical Schoolから入手した。スワブ試料を下記のプロトコールを用いて細菌の存在に関して試験した。
【0089】
1)HRP−ビーズをPBSを用いて1:10に希釈してビーズスラリーを形成した。スラリー10μLをフィルタープレートのそれぞれのウエルに加えた。
【0090】
2)冷凍した創傷試料のそれぞれ10μLにPBS80μLを加えた。次いで得られた溶液をフィルタープレート内のウエルに加えた。
【0091】
3)プレートを4分間インキュベーションし、次いでUS生物学的安定液体基質(1.46mM ABTSおよびH)を含む他のプレートに回し入れた(spun into)。
【0092】
4)現像時間の1分後に、マイクプレートリーダーを405nmで読み取った。
【0093】
創傷病原体を含む試料は、ABTSおよび過酸化水素の存在下で暗青色に変化した。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1A−1B】図1Aは、アルファ−1プロテイナーゼ阻害剤(α1−PI)RSL配列(配列番号4)上の切断部位の相対位置を示す。図1Bは、CPI1ペプチド(配列番号1)、CPI2ペプチド(配列番号2)およびアルファ−1プロテイナーゼ阻害剤(ヒト)(配列番号3)の配列を示す。
【図2A−2D】図2Aおよび2Bは、一晩細菌培養したアッセイ基質(図2A、CPI1ペプチド;図2B、CPI2ペプチド)、および150mMNaClを含む反応緩衝液(pH7.2)を含む試料の相対蛍光の時間経過(秒)に対するグラフである。図2Cおよび2Dは、一晩経過細菌上清、アッセイ基質(図2C、CPI1ペプチド;図2D、CPI2ペプチド)、および150mMNaClを含む反応緩衝液(pH7.2)を含む試料の相対蛍光の時間経過(秒)に対するグラフである。
【図3A−3D】図3Aおよび3Bは、48間経過細菌培養物、アッセイ基質(図3A、CPI1ペプチド;図3B、CPI2ペプチド)、および反応緩衝液を含む試料の相対蛍光の時間経過(秒)に対するグラフである。図3Cおよび3Dは、48時間経過細菌上清、アッセイ基質(図3C、CPI1ペプチド;図3D、CPI2ペプチド)、および反応緩衝液を含む試料の相対蛍光の時間経過(秒)に対するグラフである。
【図4A−4B】図4Aおよび4Bは、CPI2ペプチドを用いた糞便連鎖球菌(10、10、10および10細胞/mlの濃度系列)のセンサーデータを示す。図4Aは、365nm紫外線源下で細菌と共にインキュベーションしたセンサーの写真を示す。図4Bは、ディジタル化した写真から得られた各濃度からの強度データを示す。
【図5A−5B】図5Aおよび5Bは、CPI2ペプチドを用いた緑膿菌(10、10、10および10細胞/mlの濃度系列)のセンサーデータを示す。図5Aは、365nm紫外線源下で細菌と共にインキュベーションしたセンサーの写真を示す。図5Bは、ディジタル化した写真から得られた各濃度からの強度データを示す。
【図6A−6B】図6Aおよび6Bは、CPI2ペプチドを用いた黄色ブドウ球菌(10、10、10および10細胞/mlの濃度系列)のセンサーデータを示す。図6Aは、365nm紫外線源下で細菌と共にインキュベーションしたセンサーの写真を示す。図6Bは、ディジタル化した写真から得られた各濃度からの強度データを示す。
【図7A−7B】図7Aおよび7Bは、CPI2ペプチドを用いた化膿連鎖球菌(10、10、10および10細胞/mlの濃度系列)のセンサーデータを示す。図7Aは、365nm紫外線源下で細菌と共にインキュベーションしたセンサーの写真を示す。図7Bは、ディジタル化した写真から得られた各濃度からの強度データを示す。
【図8A−8B】図8Aおよび8Bは、CPI2ペプチドを用いた霊菌(10、10、10および10細胞/mlの濃度系列)のセンサーデータを示す。図8Aは、365nm紫外線源下で細菌と共にインキュベーションしたセンサーの写真を示す。図8Bは、ディジタル化した写真から得られた各濃度からの強度データを示す。
【図9A−9C】図9A〜9Cは、異なる細菌濃度を用いた40時間にわたる相対インキュベーションを示す棒グラフである。(A=10CFU;B=10CFU;C=10CFU)(Staph=黄色ブドウ球菌、Serratia=霊菌、Strep=唾液連鎖球菌(Streptococcus salivarius)、PA14=緑膿菌、Entero=糞便連鎖球菌)
【図10A−10D】図10A〜10Dは、外傷用包帯から抽出された細菌の相対蛍光を示すグラフである(ペプチド基質:CPI2)(反応緩衝液:1XPBS)。(A:創傷試料番号1〜10;B:創傷試料番号11〜20;C:創傷試料番号20〜30;D:創傷試料番号31〜35)。
【図11】図11は、安定性研究の間に採取された種々の試料から測定された蛍光のグラフを示す。
【図12】図12は、創傷病原体の種々の株に暴露された後の検出可能に標識された基質から測定された相対蛍光のグラフを示す。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図4B】

【図5B】

【図6B】

【図7B】

【図8B】

【図9A】

【図9B】

【図9C】

【図10A】

【図10B】

【図10C】

【図10D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)試料を、検出可能に標識された合成セルピン反応性部位ループドメインペプチド基質と、細菌により産生された酵素により該基質の改変がもたらされる条件下で、接触させ、そして
b)基質の改変または改変の非存在を検出し、基質の改変が試料内の細菌の存在を示しそして基質の改変の非存在が試料内の細菌の非存在を示す
工程を含んでなる、細菌の非存在の存在を検出する方法。
【請求項2】
細菌が黄色ブドウ球菌、表在ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、緑膿菌、糞便連鎖球菌、霊菌、奇怪変形菌、エンテロバクター・クロカエ、アセチノバクター・アニトラタス、肺炎桿菌、および大腸菌から成る群から選択される創傷特異性細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵素がプロテアーゼである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
基質が蛍光プローブおよび消光色素分子を用いて標識される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
基質が、スピンラベル、抗原タグ、エピトープタグ、ハプテン、酵素ラベル、補欠分子族、蛍光物質、pH感受性物質、化学発光物質、比色化合物、生物発光物質、および放射性物質から成る群から選択されるラベルにより標識される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
基質が
EAAGAMFLEAIPK、EGAMFLEAIPMSIPK、KGTEAAGAMFLEAIPMSIPPEVK、GAMFLEAIPMSIPPE,およびCGAMFLEAIPMSIPAAAHHHHH
から成る群から選択されるペプチドの少なくとも1種を含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
試料が被験者上の創傷表面および体液から成る群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
基質が固体支持体上にある、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
固体支持体が、創傷用包帯、体液を保持するための容器、ディスク、スコープ、フィルター、レンズ、発泡体、布、紙、縫合糸、ディップスティック、スワブ、蓄尿バッグ、血液蓄積バッグ、血漿蓄積バッグ、試験管、カテーテル、およびマイクロプレートのウエルから成る群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
固体支持体が、微生物の汚染物を含まないことを要求される材料を含んでなる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
基質が少なくとも2種の異なる比色成分を含んでなり、そして基質が固体支持体上に付着され、ここで、基質の改変が比色成分の一種を含む基質の少なくとも一部分を切断することを含んでなる、該切断が目視可能な色変化をもたらす、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
比色成分がペプチドに共有結合される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
バイオセンサーが、
a)固体支持体、および
b)検出可能に標識された合成セルピン反応性部位ループ(RSL)ドメインペプチド基質であって、該基質は該固体支持体に付着されている、
ことを含んでなる、試料内の細菌の存在または非存在を検出するためのバイオセンー。
【請求項14】
基質が、黄色ブドウ球菌、表在ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、緑膿菌、糞便連鎖球菌、霊菌、奇怪変形菌、エンテロバクター・クロカエ、アセチノバクター・アントラタス、肺炎桿菌、および大腸菌から成る群から選択される創傷特異性細菌により産生されるタンパク質に特異性である、請求項13に記載のバイオセンサー。
【請求項15】
タンパク質がプロテアーゼ酵素である、請求項14に記載のバイオセンサー。
【請求項16】
基質が蛍光プローブおよび消光色素分子を用いて標識される、請求項13〜15のいずれかに記載のバイオセンサー。
【請求項17】
基質が、スピンラベル、抗原タグ、エピトープタグ、ハプテン、酵素ラベル、補欠分子族、蛍光物質、pH感受性物質、化学発光物質、比色化合物、生物発光物質、および放射性物質から成る群から選択されるラベルにより標識される、請求項13〜16のいずれかに記載のバイオセンサー。
【請求項18】
基質が
EAAGAMFLEAIPK、EGAMFLEAIPMSIPK、KGTEAAGAMFLEAIPMSIPPEVK、GAMFLEAIPMSIPPE,およびCGAMFLEAIPMSIPAAAHHHHH
から成る群から選択されるペプチドの少なくとも1種を含んでなる、請求項13〜17のいずれかに記載のバイオセンサー。
【請求項19】
固体支持体が、創傷用包帯、体液を保持するための容器、ディスク、スコープ、フィルター、レンズ、発泡体、布、紙、縫合糸、ディップスティック、スワブ、蓄尿バッグ、血液蓄積バッグ、血漿蓄積バッグ、試験管、カテーテル、およびマイクロプレートのウエルから成る群から選択される、請求項13〜18のいずれかに記載のバイオセンサー。
【請求項20】
固体支持体が、微生物の汚染物を含まないことを要求される材料を含んでなる、請求項13〜19のいずれかに記載のバイオセンサー。
【請求項21】
基質が、ペプチドに共有結合している少なくとも2種の異なる比色成分を含んでなる、請求項13〜20のいずれかに記載のバイオセンサー。
【請求項22】
検出可能な標識およびEAAGAMFLEAIPK、EGAMFLEAIPMSIPK、KGTEAAGAMFLEAIPMSIPPEVK、GAMFLEAIPMSIPPE,およびCGAMFLEAIPMSIPAAAHHHHHから成る群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる、単離されたペプチド。

【図11】
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【図12】
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【図4A】
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【図5A】
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【図6A】
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【図7A】
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【図8A】
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【公表番号】特表2007−514409(P2007−514409A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538453(P2006−538453)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036600
【国際公開番号】WO2005/042770
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591005420)エチコン・インコーポレーテツド (8)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON INCORPORATED
【Fターム(参考)】