説明

細菌感染およびバイオフィルム形成の抑制

本発明は、概して、細菌感染の処置の分野に関する。より具体的には、抗菌剤と、抗菌剤を用いたバイオフィルムおよびプランクトン様細胞の除去方法とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によってその全体が援用される2009年12月9日に出願された米国仮特許出願第61/285,009号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、細菌感染の処置の分野に関する。より具体的には、抗菌剤と、これらの抗菌剤を用いたバイオフィルムおよびプランクトン様細胞の除去方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
望ましくない微生物によるバイオフィルムの形成およびプランクトン様増殖は、家庭内でも工業環境においてもよく知られている現象である。例えば、全ての創傷は微生物によりコロニー形成されると考えられている。微生物が臨床感染のレベルに到達すると、その存在は治癒を損なうと考えられ、創傷の慢性化の要因になり得る。近年、研究者らにより、創傷の慢性化の一因となるのはプランクトン群集ではなくむしろバイオフィルム群集であり得ることが提唱されている。
【0004】
バイオフィルムは多微生物性の細菌分類であり、これらは、タンパク質、DNA、およびポリサッカルヒド(polysaccarhides)からなる細胞外高分子物質中で結合されており、全てが抗生物質による処置の影響を受けやすいわけではない。実際に、近年の研究(Jamesら、2008年)では、試験した慢性創傷の60%がバイオフィルムを含有していたと示されている。従って、創傷の治療の最も重要な態様の1つは、処理および取扱いの間の生物汚染度または微生物レベルを管理するという概念である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、概して、細菌感染の処置の分野に関する。より具体的には、抗菌剤と、これらの抗菌剤を用いたバイオフィルムおよびプランクトン様細胞の除去方法とに関する。
【0006】
いくつかの態様では、本発明は、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコースを含む天然酵素および基質系と、抗菌性金属と、双性イオン洗剤とを含む抗菌剤製剤を提供する。特定の実施形態では、製剤中の薬剤の1つまたは複数はカプセル化される。一実施形態では、カプセル化剤は界面活性剤の多層ミクロスフェアである。他の実施形態では、製剤中の薬剤はカプセル化されない。
【0007】
酵素および基質成分は、当業者により認識され得るように、任意の適切な比率で存在することができる。いくつかの実施形態では、酵素および基質成分は、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、および/または1:40の比率、またはこれらの間で誘導可能な任意の比率で存在し得る。特定の実施形態では、酵素および基質成分は、1:20の比率で存在する。代替の実施形態では酵素基質としてスクロースまたはフルクトースなどの他の糖を利用することができ、この場合、酵素に対する基質の比率は、対形成のための反応要求に適合するように変化され得る。本発明のいくつかの実施形態では、酵素および基質成分は合わせて最終製剤の1%〜5%(v/v)を形成する。特定の実施形態では、酵素および基質成分は合わせて最終製剤の1.25%〜2%(v/v)を形成する。
【0008】
抗菌性金属は、抗菌特性を有する任意の金属であり得る。このような金属は当業者に知られている。特定の実施形態では、抗菌性金属は、ガリウム、銅、亜鉛、または銀である。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、2つ以上の抗菌性金属を含有する。さらに他の実施形態では、これらの金属は、酸化銀または銀タウレート(silver taurate)などの、酸化物形態または有機的に利用可能な形態で存在する。
【0009】
洗剤は、当業者に知られている任意の適切な洗剤であり得る。いくつかの実施形態では、洗剤は双性イオン洗剤である。特定の実施形態では、双性イオン洗剤は、ラウラミンオキシド、コカミドプロピルアミンオキシド、またはデシルアミンオキシドである。他の実施形態では、洗剤は非イオン性洗剤である。特定の実施形態では、非イオン性洗剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリソルベート40またはポリソルベート60である。
【0010】
抗菌剤製剤は、当業者に知られている任意の製剤であり得る。いくつかの実施形態では、製剤は、エマルジョン、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、ヒドロゲル、またはエレクトロポレーションデバイスカートリッジである。特定の実施形態では、抗菌剤は親水性溶液である。抗菌剤製剤は、さらに、当業者に知られている付加的な成分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、付加的な成分は、酸化防止剤、緩衝系、穏やかな界面活性剤、または医薬成分であり得る。
【0011】
他の態様では、本発明は、バイオフィルムと、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコースを含む天然酵素および基質系、抗菌性金属、ならびに双性イオン洗剤を含む抗菌剤とを接触させることを含む、バイオフィルム中の微生物の除去方法を提供する。
【0012】
バイオフィルムは、患者、または手術器具、感染したハードウェア、もしくは埋め込みデバイスなどの表面上に位置し得る。いくつかの実施形態では、患者はヒト患者である。いくつかの実施形態では、患者は傷害を有し得る。特定の実施形態では、傷害は、熱傷、擦過傷、切創、掻破傷、剥皮組織傷害またはこれらの組み合わせであり得る。他の実施形態では、患者は慢性創傷を患っていてもよい。特定の実施形態では、慢性創傷は、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡、放射線潰瘍、外傷性創傷、非治癒創傷またはこれらの組み合わせである。
【0013】
バイオフィルムは、任意の適切な方法で抗菌剤により接触され得る。いくつかの実施形態では、バイオフィルムとの接触は、創傷に抗菌剤を適用することを含む。いくつかの実施形態では、バイオフィルムとの接触は、組成物を局所的に投与することを含む。特定の実施形態では、組成物の局所的投与は、手による投与、押出機による投与、スプレー送達、組成物を含む包帯の適用、およびこれらの組み合わせから選択される。他の実施形態では、バイオフィルムとの接触は、包帯を患者に適用する前に包帯に組成物を適用することを含む。さらに他の実施形態では、抗菌剤は、局所的に、静脈内で、皮内で、動脈内で、腹腔内で、病巣内で、頭蓋内で、関節内で、前立腺内で、胸膜内で、気管内で、眼内で、鼻腔内で、硝子体内で、腟内で、直腸内で、筋肉内で、腹腔内で、皮下で、結膜下で、小胞内で(intravesicularlly)、粘膜で、心膜内で、臍帯内で、眼内で(intraocularally)、経口的に、吸入により、注射により、点滴により、持続点滴により、標的細胞を直接浸す局在化灌流により、カテーテルにより、または洗浄によって接触される。いくつかの実施形態では、バイオフィルムは抗菌剤と2回以上接触される。
【0014】
バイオフィルムは、バイオフィルムを形成することができる任意の細菌によって形成され得る。このような細菌は当業者に知られている。いくつかの実施形態では、バイオフィルムは、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)、レジオネラ属、ナイセリア・ゴノレー(Neisseria gonorrhoeae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)またはエンテロコッカス種(Enterococcus sp.)の細菌によって形成される。特定の実施形態では、バイオフィルムは、シュードモナス属(Pseudomonas)またはスタフィロコッカス属(Staphylococcus)の細菌によって形成される。
【0015】
さらに他の態様では、本発明は、バイオフィルム形成マイクロオガニズム(microoganisms)と、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコースを含む天然酵素および基質系、抗菌性金属、ならびに双性イオン洗剤を含む抗菌剤とを接触させることを含む、バイオフィルム形成微生物の除去方法を提供する。いくつかの実施形態では、バイオフィルム形成微生物はプランクトン様状態にある。
【0016】
実施例セクションにおける実施形態は、本発明の全ての態様に適用できる本発明の実施形態であると理解される。
【0017】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明確に示されない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ、ならびに「および/または」を指す定義を支持する。
【0018】
本出願全体にわたって、「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用される装置または方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0019】
長年の特許法に従って、「a」および「an」という語は、特許請求の範囲または明細書において「含む(comprising)」という語と共に使用される場合、特に言及されない限り、1つまたは複数を示す。
【0020】
「治療的に有効な」という用語は、本明細書で使用される場合、処置中の状態の少なくとも1つの症状が少なくとも回復されるような治療効果を達成するために本発明の方法において使用される細胞および/または治療組成物(治療ポリヌクレオチドおよび/または治療ポリペプチドなど)の量、および/またはこれらの細胞と共に使用される方法または材料の分析を指す。
【0021】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲内の種々の変化形態および変更形態は当業者に明らかになり得るので、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すが例示のためだけに与えられると理解されるべきである。
【0022】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書において提供される特定の実施形態の詳細な説明と共にこれらの図面の1つまたは複数を参照することによってより良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】酵素基質系の機能を表すフローチャートである。
【図2】皮膚創傷のブタバイオフィルムモデルにおけるバイオフィルム破壊研究の結果を示すグラフである。対照=処置なし、NPWT=−125mmHgにおけるV.A.C.(登録商標)Therapy(のみ)による処置、溶液1=ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、ラウラミンオキシド、塩化ガリウム、Tris HCl(pH5.3〜5.9)による処置、溶液2=Spherulites(商標)中にカプセル化されたラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコース、ラウラミンオキシド、塩化ガリウム、Tris HCl、水(pH5.2〜5.9)による処置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
工業化社会における医療の達成は、免疫無防備状態の患者および老齢の人々においてますます明らかになってきている慢性感染のために著しく損なわれる。従来の抗生物質治療は通常これらの感染を根絶するために十分ではないので、慢性感染は医療従事者にとって依然として大きな課題のままである。残留性1つの主な理由は、不利な環境因子から細菌を保護するバイオフィルム内で細菌が増殖する能力であると思われる。バイオフィルムは、創傷床組織内のその残留性および深さのために、慢性創傷の原因となる因子としての役割を果たすという点で特に厄介である。
【0025】
本開示は、バイオフィルム中の細胞およびプランクトン様細胞の両方を除去するのに有効な抗菌剤系の製剤を提供する。このような抗菌剤系をバイオフィルムの機械的破壊方法と合わせると、バイオフィルムの根絶および創傷の治癒がさらに促進され得る。
【0026】
A.バイオフィルムおよびプランクトン様細胞
バイオフィルムは、細胞が互いにおよび/または表面に固着した微生物の凝集体である。対照的に、プランクトン様細胞は、液体媒体中で浮遊または遊泳し得る単細胞である。バイオフィルム中に見られる接着細胞は、自己産生された細胞外高分子物質のマトリックス内に埋め込まれていることが多く、生体または非生体表面上に生じることができ、そして自然、工業および病院環境における微生物生命の一般的なモードを表す。バイオフィルムは多数の因子に応答して形成され、これらの因子には、表面の特異的または非特異的な付着部位の細胞認識、栄養的な手がかり(nutritional cue)、または場合によりプランクトン様細胞の抑制濃度未満の抗生物質への暴露よるものが含まれ得る。プランクトン様状態の細菌細胞は、未処置のまま放置されるとバイオフィルムを形成し得る。
【0027】
バイオフィルムおよびプランクトン様細胞は、体内の様々な種類の微生物感染に関与することが分かっている。バイオフィルムが関与している感染過程には、尿路感染、カテーテル感染、中耳感染、歯垢の形成、歯肉炎、コーティングコンタクトレンズ、心内膜炎、および嚢胞性線維症における感染などの一般的な問題が含まれる。またバイオフィルムは、カテーテル、人工心臓弁および子宮内避妊器具などの埋め込みデバイスの不活性表面上に形成されることも可能である。また細菌バイオフィルムは、皮膚創傷の治癒を損ない、感染した皮膚創傷の治癒または治療における局所抗菌剤の効率を低下させ得る。
【0028】
当業者は、多数の細菌がバイオフィルムを形成することを認識するであろう。Wolcottら、2008年およびJamesら、2008年。例えば、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)はバイオフィルムを形成することが知られており、重要な日和見病原体であり、新たな院内感染の原因病原体である。歯垢は歯の表面のバイオフィルムであり、細菌細胞(主に、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)およびストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis))、唾液ポリマーおよび細菌の細胞外産物からなる。レジオネラ属細菌は、消毒薬にから保護される特定の条件下、バイオフィルム中で増殖することが知られている。ナイセリア・ゴノレー(Neisseria gonorrhoeae)は、ガラス表面およびヒト細胞上にバイオフィルムを形成することが実証されている排他的なヒト病原体である。バイオフィルムを形成する他の種類の細菌には、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)およびエンテロコッカス種(Enterococcus sp.)が含まれる。
【0029】
バイオフィルム中の微生物によって提供される特性のために、バイオフィルムは、通常、抗生物質、抗菌剤、および殺生物剤の影響を受けくい。いくつかの場合には、バイオフィルム中の細菌は、プランクトン様状態にある同一の生物体よりも最大4,000倍耐性であり得る(すなわち、影響を受けにくい)。最低抑制濃度(MIC)は、バイオフィルム形成を抑制するために必要な、プランクトン様微生物に送達される活性剤の量を表す。対照的に、最低バイオフィルム根絶濃度(MBEC)は、バイオフィルムの増殖を抑制または根絶するために必要な、バイオフィルムに送達される活性剤の最低濃度を表す。これらの量において見ることができる差は、バイオフィルム形成微生物が、標準的な治療濃度において抗菌剤の影響をはるかに受けにくいことを説明する。
【0030】
本発明の製剤は、バイオフィルムおよびプランクトン様生物体の両方に対して効力を有する。また開示される多成分抗菌剤製剤は、バイオフィルムの特徴的な特性である組織内の残留性および深さの両方に対して有効である。
【0031】
B.酵素基質系
いくつかの態様では、本発明の製剤の抗菌活性は、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコースを含む天然酵素および基質系に基づく。ラクトペルオキシダーゼは、乳中に見られるペルオキシダーゼ酵素であり、抗菌および酸化防止特性を有することが分かっている。グルコース(Glc)は単糖であり、生物学において非常に重要な炭水化物である。生細胞は、これをエネルギー源および代謝中間体として使用する。グルコースは光合成の主要産物の1つであり、原核生物(細菌を含む)および真核生物の両方において細胞呼吸を開始する。グルコースオキシダーゼ酵素(GOx)はβ−D−グルコピラノースに結合し、糖をその代謝産物に分解するのに役立つ。グルコースオキシダーゼは、大気中Oを、抗菌バリアの役割を果たす過酸化水素(H)に還元することによって、天然防腐剤の機能を果たす。例示的な実施形態では、酵素組成物は、Arch Personal Care Products,L.P.により商品名「Biovert Enzyme & Substrate」で販売されている。特定の理論によって束縛されることは望まないが、グルコースの存在下で、グルコースオキシダーゼは過酸化水素を発生させると考えられる。次に、過酸化水素はラクトペルオキシダーゼによって使用されて、次亜ヨウ素酸塩および次亜チオシアン酸塩(hypothiocyanate)を形成する(図1)。次亜ヨウ素酸塩および次亜チオシアン酸塩はどちらも良好な抗菌活性を有し、微生物細胞の急速な死をもたらす。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、酵素および基質成分は、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、および/または1:40の比率、またはこれらの間で誘導可能な任意の比率を含む化学量論的比の範囲で使用される。特定の実施形態では、酵素および基質成分は1:20の比率で使用される。代替の実施形態は酵素基質としてスクロースまたはフルクトースなどの他の糖を利用することができ、この場合、酵素に対する基質の比率は、対形成のための反応要求に適合するように変化され得る。本発明のいくつかの実施形態では、酵素および基質成分は合わせて最終製剤の1%〜5%(v/v)を形成する。特定の実施形態では、酵素および基質成分は合わせて最終製剤の1.25%〜2%(v/v)を形成する。
【0033】
C.洗剤
いくつかの実施形態では、抗菌剤製剤はさらに洗剤を含む。洗剤は、当業者に知られている任意の適切な洗剤であり得る。Ananthapadmanabhanら、2004年。洗剤の添加はバイオフィルムの成分の乳化に役立ち、酵素系による抑制または損傷の影響をより受けやすくする。また洗剤は、薬剤が患部組織に浸透するのを助ける。いくつかの実施形態では、抗菌剤製剤は低レベルの洗剤を含む。低レベルの洗剤は、概して、0.25%〜5%(v/v)であり得る。特定の実施形態では、洗剤のレベルは0.25%〜1.5%(v/v)である。いくつかの実施形態では、洗剤は穏やかな双性イオン洗剤である。特定の実施形態では、洗剤は、一般に安全であると見なされる(Generally Regarded As Safe、GRAS)として指定されるいくつかの洗剤のうちの1つでよく、例としては、ラウラミンオキシド、コカミドプロピルアミンオキシドまたはデシルアミンオキシドが挙げられるがこれらに限定されない。適切な洗剤のその他の例には、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリソルベート40もしくはポリソルベート60またはその他の穏やかな双性イオン洗剤などの非イオン性洗剤が含まれる。
【0034】
D.抗菌性金属
いくつかの態様では、抗菌剤製剤は、酵素系の効力を相乗的に高める抗菌性金属も含有する。既知の抗菌特性を有する金属は当業者に知られている。Michels 2009年およびKaneko 2007年。例えば、ガリウム、銅、亜鉛、および銀は、既知の抗菌特性を有する。特定の実施形態では、抗菌性金属はガリウムである。ガリウムは抗バイオフィルム特性を有することが知られており、鉄と競合するので、細菌、プランクトン様細胞、およびバイオフィルムに対して活性である。鉄がガリウムで置き換えられると、細菌の増殖に必要な鉄含有酵素が不活性化されると考えられる。他の実施形態では、銅、亜鉛、または銀などの既知の抗菌特性を有する他の金属が製剤に添加されてもよい。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、2つ以上の抗菌性金属を含有する。さらに他の実施形態では、これらの金属は、酸化銀または銀タウレートなどの、酸化物形態または有機的に利用可能な形態で存在する。
【0035】
E.付加的な成分
いくつかの実施形態では、当業者に知られている付加的な成分が製剤に添加されてもよい。これらには、以下に議論されるものが含まれるが限定はされない。
【0036】
1.酸化防止剤
本発明の抗菌剤と共に使用可能な酸化防止剤の非限定的な例としては、アセチルシステイン、アスコルビン酸ポリペプチド、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビルメチルシラノールペクチ、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、BHA、BHT、t−ブチルヒドロキノン、システイン、システインHCl、ジアミルヒドロキノン、ジ−t−ブチルヒドロキノン、チオジプロピオン酸ジセチル、ジオレイルトコフェリルメチルシラノール、硫酸アスコルビル二ナトリウム、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸ジトリデシル、没食子酸ドデシル、エリトルビン酸、アスコルビン酸のエステル、フェルラ酸エチル、フェルラ酸、没食子酸エステル、ヒドロキノン、チオグリコール酸イソオクチル、コウジ酸、アスコルビン酸マグネシウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸メチルシラノール、緑茶またはブドウ種子抽出物などの天然植物酸化防止剤、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸オクチル、フェニルチオグリコール酸、アスコルビルトコフェリルリン酸カリウム、亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、キノン、ロスマリン酸、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、エリトルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、スーパーオキシドジスムターゼ、チオグリコール酸ナトリウム、ソルビチルフルフラール、チオジグリコール、チオジグリコールアミド、チオジグリコール酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオサリチル酸、トコフェレス(tocophereth)−5、トコフェレス−10、トコフェレス−12、トコフェレス−18、トコフェレス−50、トコフェロール、トコフェルソラン(tocophersolan)、酢酸トコフェリル、リノール酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェリル、コハク酸トコフェリル、および亜リン酸トリス(ノニルフェニル)が挙げられる。
【0037】
2.緩衝系
いくつかの実施形態では、抗菌剤製剤はさらに、製剤を最適なpHに維持するために緩衝系を含む。適切な緩衝系は当業者により認識され、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩、グルタミン酸/グルタミン酸塩、およびリン酸/リン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。pH緩衝系の濃度は、製剤の所望のpHに依存する。当業者に知られている任意の緩衝系が抗菌剤と共に使用され得る。特定の実施形態では、緩衝系はTrizma HClである。他の実施形態では、緩衝液はMESまたはHEPES緩衝液である。
【0038】
3.界面活性剤
いくつかの実施形態では、抗菌剤製剤はさらに界面活性剤を含む。界面活性剤は、当業者によく知られている任意の適切な界面活性剤であり得る。界面活性剤は、液体の表面張力を低下させてより容易な延展を可能にすると共に、2つの液体間の界面張力を低下させる湿潤剤である。本発明の製剤のいくつかの実施形態では、界面活性剤は、バイオフィルムのムコ多糖を乳化させることによりバイオフィルムを製剤の抗菌特性に対して開放するのを助けるために添加される。また、界面活性剤は、表面下のバイオフィルムに対処するために製剤の浸透も促進する。特定の実施形態では、界面活性剤は穏やかな界面活性剤である。他の実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。
【0039】
4.医薬成分
医薬成分も本発明の抗菌剤製剤と共に有用であると考えられる。医薬成分の非限定的な例としては、抗炎症薬(非ステロイド系抗炎症薬を含む)、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗菌剤、抗癌活性剤、殺疥癬虫薬、殺シラミ薬、抗悪性腫瘍薬、制汗剤、鎮痒薬、抗乾癬薬、抗脂漏薬、生物学的に活性なタンパク質およびペプチド、熱傷処置薬、焼灼剤、脱色剤、脱毛剤、おむつかぶれ処置薬、酵素、止血薬、ケロトリティックス(kerotolytics)、口内炎処置薬、口唇ヘルペス処置薬、歯および歯周部処置薬、光感作活性剤、皮膚保護剤/バリア剤、ステロイド(ホルモンおよび副腎皮質ステロイドを含む)、日焼け処置薬、日焼け止め、経皮活性剤、および経鼻活性剤が挙げられる。医薬成分のその他の例としては、さらに、脱臭剤、抗生物質(エリスロマイシンなど)、抗ウイルス薬、防腐薬(ベンジルトニウム(benzylthonium)または塩化ベンジルコニウム(benzylkonium chloride)など)およびラクトフェリンなどの抗菌性の鉄キレート剤を挙げることができる。
【0040】
F.組成物媒体
本発明の組成物は、全てのタイプの媒体中に配合することができる。適切な媒体の非限定的な例としては、エマルジョン(例えば、水中油、油中水、水中シリコーン、シリコーン中水、水中油中水、水中油、油中水中油、シリコーン中水中油など)、クリーム、ローション、溶液(水性および水アルコール性の両方)、無水ベース(リップスティックおよび粉末など)、ゲル、軟膏、ペースト、乳液、液体、エアロゾル、固体形態、スプレー、ヒドロゲル、またはエレクトロポレーションデバイスカートリッジが挙げられる。いくつかの実施形態では、製剤は、親水性溶液、チキソトロピースプレー、または他の親水性(hydrophilic)局所剤であり得る。変化形態およびその他の適切な媒体は当業者には明らかであり、本発明における使用に適している。特定の態様において、成分の濃度および組み合わせは、その組み合わせが化学的に適合性であり、最終製品から沈殿する複合体を形成しないような形で選択することができる。さらに他の態様では、製剤は包帯などの表面に固定化され、グルコース洗浄によって活性化され得る。
【0041】
G.使用方法
いくつかの実施形態では、本発明は、バイオフィルムまたはプランクトン様バイオフィルム形成微生物の細胞を処置または除去するための、上記のような抗菌製剤の使用を提供する。このような実施形態では、抗菌製剤は、バイオフィルムが存在するか、あるいはプランクトン様バイオフィルム形成微生物が存在し得る(そして、バイオフィルム形成の可能性が高い)表面または創傷に適用することができる。抗菌剤はバイオフィルムまたは潜在的なバイオフィルムと接触されて、現存するバイオフィルムの細胞を低減または除去するか、あるいはバイオフィルム形成微生物の細胞の増殖を抑制またはその細胞を除去する。
【0042】
このような組成物は患者の創傷に適用されてもよいし、あるいは手術器具または感染したハードウェアなどの表面に適用されてもよい。例えば、ここで記載されるような抗菌剤は、問題のある感染を解決するために使用され得る。このような感染の例としては、尿路感染、カテーテル感染、中耳感染、歯垢の形成、歯肉炎、コーティングコンタクトレンズ、心内膜炎、嚢胞性線維症における感染、骨髄炎に関連する感染、体部白癬または股部白癬、おむつかぶれ、および爪真菌などの一般的な問題が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、抗菌剤は、カテーテル、人工心臓弁、子宮内避妊器具、および組織への侵入部位を有する管などの埋め込みデバイスの不活性表面のためのコーティングとして使用されてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、皮膚創傷の治癒を容易にするために、そして感染した皮膚創傷の治癒または治療における局所抗菌剤の効率を高めるために使用され得る。他の実施形態では、創傷周囲の皮膚を保護するめに皮膚用製剤中で使用され得る。
【0043】
抑制濃度未満の抗菌剤は、バイオフィルムの形成を誘発し得ることが報告されている(例えば、Frankら、2007年)。このことを考慮すると、バイオフィルム形成微生物の処置のための致死用量は、当業者によって通常使用される、プランクトン様微生物について決定される標準的な治療的に有効な量(すなわち、致死量または致死用量)よりも著しく高い可能性がある。従って、標準的な治療的に有効な量は、バイオフィルム形成微生物を処置するために必要な抗菌剤の量であり得る。「標準的な治療量」または「標準的な治療用量」は、プランクトン様微生物を低減または除去するために十分な薬剤の量も指すことができる。いくつかの実施形態では、バイオフィルムおよびバイオフィルム形成微生物の処置は、2回以上の用量の抗菌剤を必要とし得る。
【0044】
H.併用処置
本発明の処置方法はそれだけで使用されてもよいし、付加的な処置方法と併用して使用されてもよい。本発明の組成物による処置の有効性を高めるため、または別の(第2の)治療の保護を増大するために、これらの組成物および方法を、感染の処置、その危険の低下、またはその予防(例えば、抗細菌、抗ウイルス、および/または抗真菌処置)において有効な他の薬剤および方法と併用することが望ましいこともある。別の例として、イオン泳動を使用して、バイオフィルムの標識化または根絶の目的で薬剤を組織の中に駆動することもできる。さらに別の例は、V.A.C.(登録商標)Therapy(KCI International,San Antonio,TX)などの陰圧創傷療法による処置の使用であろう。V.A.C.(登録商標)Therapyは特許を取った包帯により創傷部位に陰圧をもたらし、創傷の端部を一緒に引きつけて感染材料を除去し、細胞レベルで顆粒化を活発に促進することを助ける。特定の実施形態では点滴注入療法が適合され、酵素および基質溶液の別々のリザーバーの使用により、酵素からの基質の分離が可能になる。酵素および基質は、送達装置内に2つの成分を導入し、混ぜ合わせた流体を創傷の空間に導入する前に既知の静的ミキサーデバイスでこれらを混合することによって、組織表面で混合されるだけである。これにより、製剤は、製剤の個々の成分を別々に貯蔵し、使用部位において完全な製剤を調製することによって本質的により安定になる。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術が、本発明の実施において十分に機能すると本発明者により発見された技術を表すことは当業者に認識されるはずであり、従って、その実施の好ましいモードを形成すると考えることができる。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多数の変化形態が成されることが可能であり、同様または類似の結果が得られるであろうということを認識すべきである。
【0046】
実施例1
この研究の目的は、いくつかの抗菌製剤が、スライドガラス上のシュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)バイオフィルムを不活性化する能力を決定することであった。
【0047】
1.プロトコールの概説
シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を増殖させて、スライドガラス上にバイオフィルムを形成した。各生物体の3通りのサンプルを3つの抗菌製剤(ココジメチルアミンオキシド、ジシルジメチルアミンオキシド(dicyldimethylamine oxide)、およびラウラミンオキシド)のうちの1つに10分間暴露した。暴露の後、各スライド上に残った生物体をアッセイして、各生物体に対する各抗菌溶液の効果を決定した。
【0048】
2.材料および方法
a.溶液の調製
実験を実行し、以下の実施例溶液に従って3つの製剤を調製した:97.3998%v/vのdiH2O、0.6%w/vのTris HCl、0.0002%(w/v)のGaCl、0.5%v/vの双性イオン洗剤、1.43%v/vのBiovert(登録商標)酵素基質、および0.07%(v/v)のBiovert(登録商標)酵素。双性イオン洗剤は、3つの溶液で以下のように異なった:
・ DO溶液はデシルアミンオキシドを含有し、
・ LO溶液はラウラミンオキシドを含有し、
・ CDOはコカミドプロピルアミンオキシドを含有した。
【0049】
最初にBiovert(登録商標)基質および酵素を除く全ての成分を一緒に混ぜ合わせた。最後の工程として、Biovert基質および酵素を添加した。最終溶液のpHは、5.2〜5.9の間のはずである。場合によっては、pHは1NのNaOHを用いて調整する必要があることもある。
【0050】
b.微生物接種材料の調製
シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC09027)およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(ATCC29213)の新鮮な培養物を凍結ストックから生き返らせ、Tryptic Soy Agar(TSA、Becton Dickinson,Sparks,MD)上に画線した。TSAプレートを35℃で24時間インキュベートした。各培養物の単一の単離コロニーをTryptic Soy Broth(TSB,BD)に移し、35℃でさらに24時間インキュベートした。バイオフィルム形成プロトコールはHarrison−Belestraら(2003年)から得た。これは、以下のように要約される。イソプロピルアルコールで浄化したガラスカバースリップを各生物体の培養物中に37℃で36〜48時間吊るし、軽く攪拌した。
【0051】
c.抗菌溶液および対照への暴露
スライドに所定体積の溶液をスプレーすることによって、各生物体の3通りの調製スライドを各抗菌溶液に暴露させた。サンプルは、3つのスライドセットにおいて10分間暴露した。抗菌剤に暴露しない付加的な調製スライドセットは各生物体の初期負荷を決定するために調製した。
【0052】
d.微生物の計数
スライド当たりの全コロニー形成単位(CFU/スライド)として、生き残った微生物の総数を数えた。個々のスライドを無菌緩衝ペプトン水(BPW,BD)ですすぎ、Eddy Jetスパイラルプレーター(IUL Instruments、Barcelona、Spain)を用いてPseudomonas Isolation Agar(PIA,BD)またはBaird−Parker Agar(BP,BD)上にプレーティングした。プレートを35±2℃で48±2時間インキュベートし、自動プレートカウントリーダー(Flash and Go,IUL Instruments)において係数した。
【0053】
3.結果
サンプルの係数結果は以下の表1および2に示されており、各表には、スライドに適用した処理、各繰り返しについて観察された生物体の量、3回の繰り返し全ての平均結果、平均のlog10、および(抗菌処理については)未処理対照からのlog減少が含まれる。
【0054】

【0055】

【0056】
DOまたはLO溶液に暴露された後、生物体は回収されなかった。これは、これらの2つの配合では最低5logの減少であることを意味した。CDOへの暴露は、シュードモナス属(Pseudomonas)についてはわずか2.70logの減少、そしてスタフィロコッカス属(Staphylococcus)ではわずか2.20logの減少しかもたらさなかった。
【0057】
4.結論
ジシルジメチルアミンオキシド(Dicyldimethylamine oxide)(DO)およびラウラミンオキシド(LO)は、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を、5logを超えて減少させるという点で有効であった。抗菌剤による暴露の10分後、表面から生物体は回収できず、未処置の対照サンプルから5logを超えて減少した。ココジメチルアミンオキシド(CDO)も試験生物体を減少させることができたが、より低い効力であった(シュードモナス属(Psuedomonas)に対しては(again)2.70logの減少、そしてS.アウレウス(S.aureus)に対しては2.20logの減少)。
【0058】
実施例2
ブタ皮膚外植片は、バイオフィルムの研究のために認められているモデルである(例えば、Phillipsら,「Effects of Antimicrobial Agents on an In Vitro Biofilm Model of Skin Wounds」,Advances in Wound Care,1:299−304(2010年)を参照)。抗菌製剤がこのモデルシステムにおけるバイオフィルムを不活性化する能力を決定するために、5インチ幅×7インチ長さのブタ皮膚外植片上にシュードモナス属(Pseudomonas)のバイオフィルムを増殖させた。ブタ皮膚に小さい創傷を作り、これらの創傷においてバイオフィルムを発達させた。特定のブタ皮膚における全ての創傷を同じ薬剤で処置した。例えば、1つの皮膚外植片の全ての創傷は、V.A.C.(登録商標)Therapyを用いる陰圧創傷療法によって処置し、別の皮膚外植片の全ての創傷は溶液1で処置した。
【0059】
外植片は、以下のようにして処置した:400〜600umの間の平均細孔サイズを有するポリウレタンフォーム包帯で皮膚の創傷を被覆した。包帯を閉塞性ドレープ(V.A.C.(登録商標)GranuFoam(商標)Dressing)で被覆した。ドレープに2つの小さい孔を開けた。一方は陰圧(−125mmHg)の送達を可能にするTRAC(商標)パッドを適用するためのものであり、他方は外植片への流体の送達を可能にするパッドのためのものであった。溶液1または溶液2の送達の際、溶液は、皮膚外植片に1日6回送達し、皮膚上の溶液滞留時間は点滴注入ごとに10分間であった。溶液を皮膚に送達する際、V.A.C.(登録商標)Therapy装置はオフにした。10分間の滞留時間の最後に、真空を元に戻し、流体を皮膚外植片の創傷から排出させた。24時間(そして6回の溶液点滴注入サイクル)の後、創傷におけるバイオフィルム中に残存する細菌を抽出し、プレーティングし、増殖させ、計数した。
【0060】
試験条件は次の通りである:
対照 − 処置なし、
NPWT − −125mmHgにおけるV.A.C.(登録商標)Therapy(のみ)による処置、溶液なし、
溶液1処置 − ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、ラウラミンオキシド、塩化ガリウム、Tris HCl(pH5.3〜5.9)、
溶液2処置 − Spherulites(商標)中にカプセル化されたラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコース、ラウラミンオキシド、塩化ガリウム、Tris HCl、水(pH5.2〜5.9)。Spherulites(商標)は、活性成分のカプセル化のために使用される界面活性剤の多層ミクロスフェアである。Spherulites(商標)は、皮膚浸透および生物学的表面への接着の増大、ならびに活性成分の持続放出を提供することができる。
【0061】
溶液1処置は約2logの細菌の減少をもたらした(図2)。24時間にわたる溶液の適用の6、10分後、バイオフィルム中のシュードモナス属(Pseudomonas)の93.2%が死滅した。溶液2では、シュードモナス属(Pseudomonas)の77.1%が死滅した。通常、1log以上の細菌の減少は有意であると考えられる。従って、溶液1処置により達成される減少は有意であったが、溶液2により達成される減少は必ずしも有意ではなかった。さらに、陰圧のみの適用は、バイオフィルム細菌の有意な減少を引き起こすのに十分ではなかった。
【0062】
本明細書において開示および請求される組成物および/または方法は全て、本開示を考慮すれば過度の実験がなくても製造および実行することができる。本発明の組成物および方法はいくつかの実施形態に関して説明されたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく本明細書中に記載される組成物および方法、ならびに方法の工程または一連の工程に変化が適用され得ることは、当業者に明らかであろう。より具体的には、本明細書中に記載される薬剤の代わりに、化学的および生理学的に関連する特定の薬剤が使用され得ることは明らかであり、同一または類似の結果が達成されるであろう。当業者に明らかであるこのような類似の置換および修正は全て、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念の中に包含されると見なされる。
【0063】
参考文献
以下の参考文献は、これらが本明細書に記載されるものの補足となる例示的な手順またはその他の詳細を提供する限り、参照によって本明細書中に具体的に援用される。
Ananthapadmanabhan et al,Dermatologic Therapy,17:16−25,2004.
Frank et al Antimicrobial Agents and Chemotherapy,888−895,2007.
Harrison−Belestra et al.Dermatol Surg.,29(6):631−635,2003.
James et al,Wound Repair Regen.,16(l):37−44,2008.
Kaneko et al,J.Clinical Invest.,1 17(4):877−888,2007.
Michels et al,Soc.Applied Microbiol.Lett.Applied Microbiol,49:191−195,2009.
Phillips et al,Advances in Wound Care,1:299−304,2010.
Wolcott et al,J.Wound Care,17(8):333−341,2008.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、抗菌性金属、および双性イオン洗剤を含むことを特徴とする抗菌組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌組成物において、前記ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコースが全組成物の1%〜5%(v/v)を構成することを特徴とする抗菌組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗菌組成物において、前記抗菌性金属が、ガリウム、銅、亜鉛、または銀であることを特徴とする抗菌組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の抗菌組成物において、前記双性イオン洗剤が、ラウラミンオキシドまたはデシルアミンオキシドであることを特徴とする抗菌組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の抗菌組成物において、前記組成物が、エマルジョン、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、またはヒドロゲルとして配合されることを特徴とする抗菌組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の抗菌組成物において、前記抗菌組成物が親水性であることを特徴とする抗菌組成物。
【請求項7】
バイオフィルム形成微生物と、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース、抗菌性金属、および双性イオン洗剤を含む抗菌組成物とを接触させることを含むことを特徴とする、バイオフィルム形成微生物の処置方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物がプランクトン様状態にあることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物がバイオフィルム中に存在することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか1項に記載の方法において、前記ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、およびグルコースが全製剤の1%〜5%(v/v)を構成することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7乃至10の何れか1項に記載の方法において、前記抗菌性金属が、ガリウム、銅、亜鉛、または銀であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7乃至11の何れか1項に記載の方法において、前記双性イオン洗剤がラウラミンオキシドまたはデシルアミンオキシドであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7乃至12の何れか1項に記載の方法において、前記抗菌組成物が、エマルジョン、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、またはヒドロゲルとして配合されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項7乃至13の何れか1項に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物がシュードモナス属(Pseudomonas)またはスタフィロコッカス属(Staphylococcus)であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項7乃至14の何れか1項に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物が、局所的に、静脈内で、皮内で、動脈内で、腹腔内で、病巣内で、頭蓋内で、関節内で、前立腺内で、胸膜内で、気管内で、眼内で、鼻腔内で、硝子体内で、腟内で、直腸内で、筋肉内で、腹腔内で、皮下で、結膜下(subconjunctival)、小胞内で、粘膜で、心膜内で、臍帯内で、眼内(intraocularally)で、経口的に、吸入により、注射により、点滴により、持続点滴により、標的細胞を直接浸す局在化灌流により、カテーテルにより、または洗浄により、前記抗菌組成物と接触されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項7乃至16の何れか1項に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物が前記抗菌組成物と2回以上接触されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物が前記抗菌組成物と1日に少なくとも6回接触されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項7乃至17の何れか1項に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物が患者の創傷内に位置することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記創傷が、熱傷、擦過傷、切創、掻破傷、剥皮組織傷害 静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡、放射線潰瘍、外傷性創傷、非治癒創傷、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載の方法において、前記抗菌組成物が前記創傷に局所的に投与されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18乃至20の何れか1項に記載の方法において、前記創傷に陰圧をかけることをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項7乃至17の何れか1項に記載の方法において、前記バイオフィルム形成微生物が、手術器具または埋め込みデバイス上に位置することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513608(P2013−513608A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543203(P2012−543203)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059261
【国際公開番号】WO2011/071904
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505167473)ケーシーアイ ライセンシング インク (19)
【Fターム(参考)】