説明

細菌感染症を処置するための組合せ薬

カルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための、式(I)(ここで、オキシイミノ基、即ち、>C=N−O−は、Z幾何配置を有する)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に後述される式(I)のモノバクタム系抗生物質の使用及び該化合物とカルバペネム系抗生物質とを含む組合せを含む新規な医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
β−ラクタム系抗生物質は、病院及び大衆薬の両方において細菌感染症の処置に広く使用されている。臨床適用されている幾つかの分類のβ−ラクタム系抗生物質が存在するが、これらは、ペニシリン類、セファロスポリン類、セファマイシン類、カルバセフェム類、オキサセフェム類、カルバペネム類及びモノバクタム類を包含する。
【0003】
細菌感染症を治すこれらの分類全ての効率は、抗生物質に対して耐性の細菌の出現により損なわれている。グラム陰性細菌におけるこの耐性の一般的な原因は、β−ラクタム系抗生物質を加水分解することにより、これらを不活化することができる、β−ラクタマーゼとして知られている酵素の、細菌による発現である。細菌は、ペニシリナーゼ、セファロスポリナーゼ、セファマイシナーゼ、カルバペネマーゼ、モノバクタマーゼ、広域スペクトルβ−ラクタマーゼ及び拡張スペクトルβ−ラクタマーゼを包含する、種々のβ−ラクタマーゼを産生することができる。
【0004】
モノバクタム系抗生物質(例えば、アズトレオナム)は、多くのβ−ラクタマーゼに対して安定であると考えられている。それにもかかわらず、今やアズトレオナムに対してβ−ラクタマーゼ介在性の耐性を示す多くの菌株のグラム陰性細菌が存在する。アズトレオナム、即ち、(Z)−2−[[[(2−アミノ−4−チアゾリル)[[(2S,3S)−2−メチル−4−オキソ−1−スルホ−3−アゼチジニル]カルバモイル]メチレン]アミノ]オキシ]−2−メチルプロピオン酸とカルバペネム系(イミペネム又はメロペネム)との間の組合せは、細菌の耐性を克服するための可能性ある方法として研究されている。アズトレオナムとカルバペネムの間に、Enterobacteriaceaeに属する細菌に対してある程度の相乗作用が観測された[Sader HS, Huynh HK, Jones RN; Contemporary in vitro synergy rates for aztreonam combined with newer fluoroquinolones and β-lactams tested against Gram-negative bacilli; Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 47(2003) 547-550]が、Pseudomonas aeruginosaに対するこの組合せの活性は、相乗作用を欠いていたか、又は拮抗作用さえ示した[Sader HS, Huynh HK, Jones RN; Contemporary in vitro synergy rates for aztreonam combined with newer fluoroquinolones and β-lactams tested against Gram-negative bacilli; Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 47 (2003) 547-550;Yamaki K, Tanaka T, Takagi K, Ohta M; Effects of aztreonam in combination with antipseudomonal antibiotics against Pseudomonas aeruginosa isolated from patients with chronic or recurrent lower respiratory tract infection. J. Infect. Chemother. 4(1998) 50-55]。
【0005】
WO 98/47895は、一般式:
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、下記式:
【0008】
【化2】

【0009】
で示されるオキシイミノ断片は、上記式に示されるように「anti」幾何配置を有する]で示される2−オキソ−1−アゼチジンスルホン酸誘導体に関する。「anti」は、オキシム化合物のtrans異性体を指定するために使用される古い用語である(よって「syn」という接頭文字は、オキシムのcis異性体を指定するために使用された);IUPAC Gold Book; IUPAC Compendium of Chemical Terminology, Electronic version, http://goldbook.iupac.org/E0204.html及びPAC, 1996, 68, 2193 Basic terminology of stereochemistry (IUPAC Recommendations 1996)の2207ページを参照のこと。開示された2−オキソ−1−アゼチジンスルホン酸誘導体は、細菌感染症の処置のために、イミペネム、メロペネム又はビアペネムを包含するカルバペネム系抗生物質と組合せて使用されることになっている。R1Ref.は、好ましくは2−チエニル基であり、該参考文献の全ての例示された発明化合物において使用されている。R2Ref.は、特に例えば、下記式:
【0010】
【化3】

【0011】
で示される基であってよい。オキシイミノ断片の「anti」(trans)幾何配置は、セフタジジムとの優れた相乗作用を提供するために記述されている。例えば、参考文献の実施例1は、(3S)−trans−3−[(E)−2−(2−チエニル)−2−{(1,5−ジヒドロキシ−4−ピリドン−2−イルメトキシ)イミノ}アセトアミド]−4−メチル−2−オキサゼチジン−1−スルホン酸に関し、セフタジジムと一緒になって多数の菌株の病原性細菌に対する抗菌活性を有することが証明されている。
【0012】
しかし、例えば、アズトレオナムのような従来のモノバクタム系抗生物質に対する耐性の形成は増加している。特にこの増大する耐性の観点から、既知のモノバクタム系抗生物質の新規な代替品に対する、更には新規な抗生物質の組合せの発見に対する継続的なニーズが存在している。
【0013】
本発明は、新規なモノバクタム系抗生物質の最新の知見に基づき、そして更に具体的には、これらのモノバクタム系の具体的実施態様である、本明細書に後述される式(I)のモノバクタム系抗生物質が、他の抗生物質、特にカルバペネム系抗生物質と組合せて使用されると、グラム陽性及び特にグラム陰性細菌(Enterobacteriaceae及びPseudomonas aeruginosaを包含する)を包含する、広範な細菌に対する効力の改善が見られるという新規な知見に基づく。詳細には、式(I)のモノバクタム系抗生物質とカルバペネム系抗生物質との新規な組合せの効力は、多くの菌株の重要な病原性細菌に関して、アズトレオナムとそれぞれのカルバペネム系抗生物質との組合せ、例えば、アズトレオナムとメロペネム又はイミペネムとの組合せに対して有意に改善している。
【0014】
更には、本発明の組合せは、組合せのパートナー単独の最良の効力と比較すると、しばしば細菌に対する効力の有意な改善を示し、そしてしばしば相乗作用、即ち、純粋に相加作用から期待されるものより強力な作用を示す。
【0015】
よって本発明は、1種以上のカルバペネム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための、式(I):
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、オキシイミノ基、即ち、>C=N−O−は、Z幾何配置である(WO 98/47895に関する上述の意味で=のcis幾何配置又はsyn幾何配置に相当する)]で示されるモノバクタム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩の使用に関する。
【0018】
別の態様において本発明は、上述のような式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩、及び1種以上のカルバペネム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩を含む、医薬品に関する。
【0019】
これらの医薬品は、グラム陽性及び特にグラム陰性細菌を包含する、病原性細菌に起因する感染症の処置用に向上した医薬に相当する。
【0020】
本発明に特に好ましいのは、単一のカルバペネム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための式(I)のモノバクタム系抗生物質又はその塩の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】Cu Kα線を用いて得られるX線粉末回折パターンである。
【0022】
式(I)のモノバクタム系抗生物質は、例えば、以下の一般スキーム1:
【0023】
【化5】

【0024】
[ここで、「HOBT」は、「ヒドロキシベンゾトリアゾール」を表し、「DCC」は、「ジシクロヘキシルカルボジイミド」を、そして「TFA」は、「トリフルオロ酢酸」を表す]により調製することができる。該スキームによる一般式(1a)の化合物と化合物(2)との反応は、Org. Process Res. & Dev. 2002, 863に記載されている。あるいは、一般式(1a)の化合物と化合物(2)とのカップリング反応は、例えば、対応する塩化アシル(Chem. Pharm. Bull. 1983, 2200)により、又はN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(Org. Process Res. & Dev. 2002, 863を参照のこと)若しくはベンゾチアゾリルチオエステル(J. Antibiotics 2000, 1071)のような、化合物(1)の活性化エステルにより実行することができる。あるいは、ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAT)、ヘキサフルオロリン酸2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・メタンアミニウム(HATU)、ヘキサフルオロリン酸O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム(HBTU)のような他のカップリング試薬(アミノ酸カップリング反応に使用される)に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)又はヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム(PyBOP)を置き換えることができる(適切なカップリング試薬について更に詳細には、N. Sewald, H.-D. Jakubke, Peptides: Chemistry and Biology, Wiley-VCH, 2002を参照のこと)。
【0025】
一般式(1a)の化合物の調製は、適切なケト酸(1-A3)を適切にエーテル化されたヒドロキシルアミン(1-A4)と以下のスキーム2に示されるように反応させることにより、通常の方法で実施することができる:
【0026】
【化6】

【0027】
上記スキーム2において、コウジ酸からの化合物(1-A4)の調製及びそれの化合物(1-A3)との反応は、例えば、EP-A-0,251,299に詳細に記述されている。化合物(1-A3)は、上記スキーム2の上部に示されるように化合物(1-A0)から出発して入手することができる。化合物(1-A0)は、既知の方法により調製することができ、そして一部は市販されている[例えば、CHEMOS GmbH, 93128 Regenstauf, Germany製の2−(2−アミノ−1,3−チアゾール−4−イル)酢酸エチル(式(1-A0)のR=エチル)]。例えば、二酸化セレンによる(1-A0)から(1-A2)への酸化は、GB-A-1,575,804の実施例1の第2工程に記述された酸化と同様に実行することができる。
【0028】
スキーム1の化合物(2)は、例えば、スキーム3:
【0029】
【化7】

【0030】
[式中、「DMF SO」は、ジメチルホルムアミド−三酸化硫黄複合体を表し、そして「TFA」は、トリフルオロ酢酸を表す]で示される経路により製造することができる。上のスキーム3において、出発物質(2-A3)は、Tetrahedron Lett. 1986, p.2789-2792の2790ページに記載されているように調製することができる(次にそこで出発物質として必要とされる光学活性(S)−N−Boc−3−ヒドロキシバリンの直接合成法は、J. Org. Chem. 2003, 68, p.177-179の最後の例に見い出すことができる)。(2-A3)から(2-A4)への、(2-A5)への、及び(2)への変換は、更に詳細には、例えば、J. Antibiotics, 1985, p.1536-1549の例に記述されている(該参考文献のスキーム1を参照のこと)。
【0031】
上記スキーム1において
は、アミン保護基(ホルミル、トリフルオロアセチル、O−ニトロフェノキシアセチル、クロロアセチル、トリクロロアセチル、γ−クロロブチリル、ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジルなど)を表し;そして
及びRは、相互に独立にアルコール保護基(ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリアルキルシラン(トリメチルシラン、トリエチルシラン又はtert−ブチルジメチルシランなど)など)を表す。
【0032】
該アミン及びアルコール保護基は、例えば、酸加水分解又は他の周知の手法により、容易に脱離することができる。[更に詳細には、例えば、T.W. Greene et al., Protective Groups in Organic Chemistry, Wiley interscience, 1999を参照のこと]。一般式(1a)の化合物中の保護基は、周知の合成法により容易に導入することができる。[更に詳細には、例えば、T.W. Greene et al., Protective Groups in Organic Chemistry, Wiley interscience, 1999を参照のこと]。
【0033】
官能基の脱保護は、溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、塩化メチレン又は塩化エチレンなど)中、水素化又は適切な酸(塩酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、NaHPO、NaHPO、p−トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸など)による、加水分解のいずれかにより実施することができる。水素化は、通常金属触媒(Pd、Pt又はRhなど)の存在下で常圧から高圧下で実施される。異なる官能基の脱保護は、同時又は逐次のいずれかで実施することができる。
【0034】
反応に最適な溶媒は、使用される反応物に基づいて選択され、そしてベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エタノール、メタノール、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのような溶媒から選択される。溶媒混合物も使用することができよう。
【0035】
反応温度は、一般に−70℃〜150℃の間の範囲であろう。反応物の好ましいモル比は、1:1〜1:5である。反応時間は、反応物に応じて0.5〜72時間の範囲である。
【0036】
式(I)の化合物の薬学的に許容しうる塩の例は、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、特にナトリウム若しくはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、特にマグネシウム若しくはカルシウム塩のような無機塩基の塩;有機塩基の塩、特に有機塩基としてシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、ジエチロールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、プロカイン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、ピペラジンから誘導される塩;又は塩基性アミノ酸、例えば、リシン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジンなどとの塩を包含する。
【0037】
このような塩は、それ自体既知の方法で、例えば、式(I)の化合物を適切な塩基と、好ましくは室温又はそれ以下で、例えば、約2℃〜約25℃で反応させ、そして生成した塩を、例えば、凍結乾燥によって単離することにより、製造することができる。
【0038】
式(I)の化合物は、場合により実質的に結晶形で使用される。式(I)の実質的に結晶性の化合物は、以前に報告されたことがない。これは、例えば、本出願の実施例に記載されるように結晶化法により入手することができる。本出願の目的には、「実質的に結晶性」という用語は、対応する物質のX線粉末回折(XRPD)図が、その半値幅の少なくとも5倍に相当する最大の高さを有する、1個以上の独特なピークを示すことを意味する。一般に、物質の結晶化度は、あるピークの高さ対その半値幅の比の平均値が増加するにつれて増加する。更に、XRPD図は、全走査2θ範囲にわたり実質的に一定の基線(基線=XRPD図曲線の極小値をつなぐ線)を示すが、これは、記録試料中の無定形物質の実質的な非存在を示している。「実質的に一定の基線」は、本出願の目的には、基線が、好ましくは該図の最低ピークの高さより高くならないことを意味する。
【0039】
よって本発明の更なる主題は、実質的に結晶形である式(I)の化合物である。
【0040】
該式(I)の実質的に結晶性の化合物は、約6.8±0.1、15.1±0.1、15.6±0.1及び25.4±0.1に、Cu Kα線で記録して[°2θ]として与えられた、50%を超える相対強度を有するX線粉末回折(XRPD)のピークを示し、そしてCu Kα線で記録された、本質的に以下:
【0041】
【表1】

【0042】
[表中、
vstは、100%〜90%の相対強度を表し;
stは、90%未満〜65%の相対強度を表し;
mは、65%未満〜50%の相対強度を表し;そして
wは、50%未満〜30%の相対強度を表す]のとおりのX線粉末回折パターンを示し、更に具体的にはCu Kα線で記録された、以下のX線粉末回折パターンを示すが、これは、20%以上の相対強度の回折ピークを示している:
【0043】
【表2】


**相対強度の表示値の典型的な変動を伴う。
【0044】
ピークの相対強度の値は、線位置よりも測定試料の幾つかの性質、例えば、結晶の大きさ及び/又は試料中のその配向に、より強く依存していることが知られている。よって示されるピーク強度の約±20%の変動は生じる可能性が高い。
【0045】
図1は、Cu Kα線で記録された式(I)の化合物の典型的な結晶性物質のXRPD図を示す。
【0046】
式(I)の化合物及びその薬学的に適合性の塩は、本発明により、哺乳動物、ヒト及び非ヒトの感染性疾患、特に細菌感染症、更に具体的にはグラム陽性細菌が関係する感染症、そして最も好ましくはグラム陰性細菌が関係する感染症(例えば、院内肺炎、市中肺炎、尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、複雑性皮膚/皮膚組織感染症、嚢胞性線維症の感染性増悪、敗血症、類鼻疽など)の制御又は予防における抗菌作用医薬として、特にカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩のような他の抗生物質と組合せて使用される。
【0047】
この意味で、式(I)の化合物及びその薬学的に許容しうる塩は、本発明により、このような処置のためにカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩と組合せて使用される。好ましくはないが、2種又は更にそれ以上の異なるカルバペネム系抗生物質と一緒の化合物(I)又はその塩の使用が、有利かつ指示されるある種の状況も存在しうる。
【0048】
本出願の目的には、「カルバペネム系抗生物質」という用語は、下記式:
【0049】
【化8】

【0050】
で示される構造要素を含む、抗菌作用化合物のことをいう。多数のカルバペネム系抗生物質が、当該分野において知られており、そして一般には本発明の目的に使用することができる。適切な例は、例えば、A. BRYSKIER "Carbapenems", ANTIMICROBIAL AGENTS: ANTIBACTERIALS AND ANTIFUNGALS, page 270-321, Publisher: American Society for Microbiology, Washington D.C., 2005、及びそこに引用された参考文献に記載されている。「カルバペネム系抗生物質」という用語は、例えば、ME1036又はビアペネムのような分子内塩を包含する。
【0051】
上述の分子内塩に加えて、カルバペネム系抗生物質の他の薬学的に許容しうる塩(例えば、薬学的に許容しうる有機及び/又は無機酸から誘導される酸付加塩)もまた、本発明の目的に使用することができる。
【0052】
好ましくは、本発明に使用されるカルバペネム系抗生物質は、式(II):
【0053】
【化9】

【0054】
[式中、
は、水素又はC−Cアルキルを表し;
は、水素又はC−Cアルキルを表し;
は、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ;−(C1n2n)−R又は−O−(C1n2n)−Rを表し;そしてここで
は、ハロゲン、シアノ、C−Cアルコキシ、アミノ、(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、又は式:−CO−R、−NH−CO−R、−CO−NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基を表すが、これらの基において1個以上の水素原子はまた、Rで置換されていてもよいか、又はこの基の−NH残基は、環内に存在する窒素原子を介して基に結合した5〜6員複素環で置換されていてもよく、そしてこの複素環は、非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
は、C−Cアルキル、フェニル又は5〜6員複素環を表し、かつ非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
nは、1〜6の整数であり;
は、式:−(S)−Rの基を表し;そしてここで
mは、0又は1であり、そして
は、水素;C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている)を表し;そしてここで、
各Sは、他の置換基Sと独立に、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、シアノ、ハロゲン、又は式:−CO−R、−NH−CO−NH、−CO−NH、−NH−CH=NH、−(C=NH)−C−Cアルキル、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基から選択されるが、これらの基において1個以上の水素原子はまた、Rで置換されていてもよいか、又はこの基の−NH残基は、環内に存在する窒素原子を介して基に結合した5〜6員複素環で置換されていてもよく、そしてこの複素環は、非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
は、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている)を表し;そしてここで
各Sは、他の置換基Sと独立に、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、シアノ、ハロゲン、又は式:−CO−R、−NH−CO−R、−CO−NH、−NH−CH=NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基から選択されるが、これらの基において1個以上の水素原子はまた、Rで置換されていてもよいか、又はこの基の−NH残基は、環内に存在する窒素原子を介して基に結合した5〜6員複素環で置換されていてもよく、そしてこの複素環は、非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
は、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている)を表し;そしてここで
各Sは、他の置換基Sと独立に、非置換C−Cアルキル、非置換フェニル又は非置換5〜6員複素環;C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、シアノ、ハロゲン、又は式:−NH−CO−NH、−CO−NH、−NH−CH=NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基を表すか;あるいは
及びRは、一緒にC−Cポリメチレン基を形成するが、これは、非置換であるか、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、上述の意味の1つを有する)で置換されている]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩である。
【0055】
「C−Cアルキル」及び「−(C1n2n)−」という用語は、本出願において使用されるとき、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル又はネオペンチルのような、分岐の、又は好ましくは直鎖のC−Cアルキル又は−(C1n2n)−(ここで、nは、1〜6、好ましくは1〜4の整数である)のことをいう。好ましいのは、C−Cアルキル基である。「C−Cアルコキシ」という用語は、上の定義のC−Cアルキルに基づいたアルコキシ基を意味する。
【0056】
「C−Cポリメチレン基」という用語は、1個又は2個の二重結合を含んでもよく、かつ非置換であっても、又は指定されるように置換されていてもよい、式:−(CH3−7−の基のことをいう。
【0057】
「ヘテロシクリル基」及び「複素環」という用語は、飽和又は不飽和である、対応する基のことをいう。
【0058】
「窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよい)」という用語は、例えば、アゼチジン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ピラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インダゾリン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、オキサゾール、イソオキサゾール、フラザン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、チアゾール、イソチアゾール、チアゼピン又はヒドロチアゼピンのことをいう。本発明の目的に適した多くの他の複素環基が、当業者には知られているか、かつ/又は文献に容易に見い出すことができる。好ましいのは、窒素、硫黄及び酸素(特に窒素及び硫黄)から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する5〜6員複素環基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は窒素、硫黄及び酸素(特に窒素及び硫黄)から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する5〜6員複素環に縮合していてもよい)である。
【0059】
「1個以上の〜により置換されている」は、好ましくは「1個又は2個の〜により置換されている」、例えば、「1個の〜により置換されている」を意味する。
【0060】
更に好ましくは、Rは、ハロゲン、シアノ、C−Cアルコキシ、アミノ、(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、又は式:−CO−R、−NH−CO−R、−CO−NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHを表すが、ここでRは、C−Cアルキル、フェニル又は5〜6員複素環を表し、そして非置換であっても、又は上記と同義の1個の置換基Sから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0061】
ハロゲンという用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のことをいい、好ましくはフッ素及び塩素のことをいう。
【0062】
別の群の特に好ましい式(II)の化合物は、Rが、式:−(S)−Rの基を表し、mが、0又は1であり、そしてRが、窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員複素環基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は上に詳細に定義されるように置換されている)を表す、化合物である。更に好ましいのは、mが、1である時の、式(II)のこのような化合物である。
【0063】
また好ましいのは、
が、水素又はC−Cアルキルを表し;
が、水素又はC−Cアルキルを表し;そして
が、C−Cアルキルを表す、式(II)の化合物であり、特に、R及びRの一方が、水素を表し、かつもう一方が、−CHを表し、そしてRが、−CHである時である。
【0064】
式(III):
【0065】
【化10】

【0066】
[式中、
Yは、窒素又は>CH−を表し;
は、水素を表すか、又は上記と同義のSの意味を有しており;そして
Rは、水素;C−Cアルキル(特にメチル)、又は−(N=H)−C−Cアルキル(特に−(N=H)−CH)を表すか、あるいは
及びRは、これらが結合している窒素原子又はY基と一緒に、5〜6員複素環を形成する(Rは、最も好ましくは水素又はメチルである)]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩は、本発明の目的に特に好ましい、別の群のカルバペネムの実施態様を形成する。
【0067】
以下のカルバペネム系抗生物質又はその薬学的に許容しうる塩は、本発明において有用な具体的に好ましい例である:
【0068】
【化11】

【0069】
内科診療において、パニペネムは一般に、当該分野において知られているようにパニペネムの腎取り込みを阻害する腎阻害薬であるベタミプロンと一緒に使用される。
【0070】
本発明における使用に特に好ましいカルバペネム系抗生物質は、以下の化合物:
【0071】
【化12】


又は薬学的に許容しうるその塩から選択される。
【0072】
本発明の更なる好ましい主題は、イミペネム又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための、上述の式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の使用である。内科診療において、イミペネムは一般に、上述のパニペネムと組合せたベタミプロンと同様の、不活化に対してイミペネムを安定化するために使用される、腎臓の近位尿細管における腎ジペプチダーゼの阻害薬である、シラスチンと一緒に使用される。
【0073】
本発明の別の好ましい主題は、メロペネム又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための、上述の式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の使用である。メロペネムは時にはまた、イミペネムと同様、シラスチンと一緒に使用される(Antimicrob. Agents Chemother. 2000, 44, 885-890)。
【0074】
本発明の別の好ましい主題は、エルタペネム又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための、上述の式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の使用である。
【0075】
本発明のまた別の好ましい主題は、ドリペネム又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための、上述の式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の使用である。
【0076】
式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩は、カルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の投与の前に、投与と同時に、又は投与後に本発明により投与することができる。組合せのパートナーの実質的に同時又は正確に同時の投与が、一般には好ましい。
【0077】
式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩は、任意の投与経路により、好ましくはそのような経路に適合させた薬剤組成物の形で投与することができる。用量及び投与経路は、原因菌の感受性、感染の重篤度及び部位、並びに患者の特定の症状により決定すべきであり、そしてしかるべく選択すべきである。好ましいタイプの薬剤組成物は、例えば、経口的に、吸入により、又は更に好ましくは非経口的に(例えば、静脈内又は筋肉内に)投与される。
【0078】
非経口投与用の処方は、特に限定されないが、水性等張性無菌注射液、溶液、更なる希釈用(例えば、輸液用)の濃縮液若しくは溶液、又は懸濁液(ナノサスペンション及びナノ結晶を包含する)を包含する。これらの溶液又は懸濁液は、無菌粉末、顆粒又は凍結乾燥物から調製することができる。本化合物は、無菌水に、又は種々の無菌緩衝液(特に限定されないが、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、ショ糖、ブドウ糖、アルギニン、リシン、クエン酸、乳酸、リン酸及び対応する塩を含有してもよい)に溶解することができる。この処方は、0.1%〜99重量%、好ましくは10%〜90重量%のそれぞれの活性成分を含有することができる。本組成物が、投与単位を含有するならば、各単位は、好ましくは50mg〜4gのそれぞれの活性物質を含有する。
【0079】
よって本発明の更なる主題は、式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩を含む、医薬品である。
【0080】
本発明の医薬品は、例えば、式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩の1種以上の投与単位、及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩を含有する(かつ式(I)の化合物を含まない)1種以上の投与単位を含むことができる。一例として、本発明の医薬品は、2種の別々のパッケージを含んでよく、これらのそれぞれは、適切な剤形の組合せパートナーの一方のみを含む薬剤処方を含む。
【0081】
本発明の医薬品の別の実施態様は、1種以上の投与単位を含み、そして各投与単位が、式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩とカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩との両方を含む。このような固定用量の組合せは、一般に式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩、更には薬学的に許容しうる担体、及び場合により適切なそれぞれの剤形に典型的な更なる賦形剤を含む。
【0082】
本発明の医薬品は、式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩を、適切な重量比で、例えば、10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5、更に好ましくは、例えば、2:1〜1:2又は約1:1のように、3:1〜1:3の重量比で含む。
【0083】
本発明の医薬品は、種々の細菌に対して、特にグラム陽性細菌(例えば、Staphylococcus aureus、Staphylococccus epidermidis、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniaを包含する)及びグラム陰性細菌[Enterobacteriaceae(例えば、Escherichia coli、Enterobacter cloacae、Enterobacter aerogenes、Citrobacter freundii、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Proteus vulgaris、Providencia rettgeri);Pseudomonas(例えば、P. aeruginosa);Acinetobacter(例えば、A. baumannii);Burkholderia(例えば、B. cepacea、B. mallei、B. pseudomallei);Stenotrophomonas(例えば、S. maltophilia);Haemophilus influenzaeを包含する]に対して活性である。
【0084】
本製品は、よって例えば、院内肺炎、市中肺炎、尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、複雑性皮膚/皮膚組織感染症、嚢胞性線維症、敗血症を包含する感染性疾患の処置に使用することができる。
【0085】
該処置のための、式(I)の化合物の、及び薬学的に適合性のその塩の、並びにカルバペネム系抗生物質又はその塩の用量は、広い範囲内で変化させることができ、そして各特定の症例において処置すべき患者の個々の要求に、及び制御すべき病原体に適合させられよう。一般に、24時間で1〜4回投与される、全抗生物質で約0.1〜約4g、例えば、約0.5〜約2gの用量が適切であろう。
【0086】
本発明は以下の非限定的な実施例により更に例証される。
【0087】
実施例1
ヒドロキシスルホン酸(3S)−3−{(2Z)−2−(2−アミノ(1,3−チアゾール−4−イル))−3−[(1,5−ジヒドロキシ−4−オキソ(2−ヒドロピリジル))メトキシ]−3−アザプロパ−2−エノイルアミノ}−4,4−ジメチル−2−オキソアゼチジニル(式(I)の化合物)の調製
モノバクタム系抗生物質(I)は、スキーム4に略述される合成法により、及び後述される手順により調製した。
【0088】
【化13】

【0089】
ヒドロキシスルホン酸(3S)−3−{(2Z)−3−{[1,5−ビス(ジフェニルメトキシ)−4−オキソ(2−ヒドロピリジル)]メトキシ}−2−{2−[(トリフェニルメチル)アミノ](1,3−チアゾール−4−イル)}−3−アザプロパ−2−エノイルアミノ}−4,4−ジメチル−2−オキソアゼチジニル(3)の調製
カップリング試薬としてHOBtを使用
(2Z)−3−{[1,5−ビス(ジフェニルメトキシ)−4−オキソ(2−ヒドロピリジル)]メトキシ}−2−{2−[(トリフェニルメチル)アミノ](1,3−チアゾール−4−イル)}−3−アザプロパ−2−エン酸(1)(0.89g、0.95mmol、J. Antibiotics 1990, 1450及びWO-A-02/22613)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(0.14g、1.03mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(0.26g、1.41mmol)をDMF(25mL)に室温で溶解した。最初にヒドロキシスルホン酸(3S)−3−アミノ−4,4−ジメチル−2−オキソアゼチジニル(2)(0.20g、0.95mmol、J. Org. Chem. 2003, 177及びTetrahedron Lett. 1986, 2786)を、次いで30分後にNaHCO(0.09g、1.05mmol)を前記溶液に加えた。生じた混合物を18時間撹拌した。生成した沈殿物を濾過して、酢酸エチルを濾液に加えた。有機相を飽和NaCl水溶液で2回洗浄し、NaSOで乾燥して、溶媒を真空で留去した。残渣を酢酸エチル(30mL)で粉砕することにより、所望の化合物(3)0.5gを白色の固体として濾過後に得た。
HPLC純度:98%。
【0090】
カップリング試薬としてHATUを使用
HATU(1.38g、3.64mmol)を含有するDMSO(10mL)の溶液を、室温でDMSO(20mL)中の(2Z)−3−{[1,5−ビス(ジフェニルメトキシ)−4−オキソ(2−ヒドロピリジル)]メトキシ}−2−{2−[(トリフェニルメチル)アミノ](1,3−チアゾール−4−イル)}−3−アザプロパ−2−エン酸(1)(3.0g、3.16mmol、J. Antibiotics 1990, 1450及びWO-A-02/22613)及びヒドロキシスルホン酸(3S)−3−アミノ−4,4−ジメチル−2−オキソアゼチジニル(2)(1.18g、5.06mmol、J. Org. Chem. 2003, 177及びTetrahedron Lett. 1986, 2786)の懸濁液に加えた。次にNaHCO(0.81g、9.65mmol)を固体として加えた。生じた混合物は1時間後に溶液になったが、これを室温で24時間撹拌した。次いで酢酸エチル(50mL)を加え、生じた溶液を食塩水(6×30mL)で6回洗浄した。有機相をNaSOで乾燥して、混合物を真空での溶媒の留去により濃縮して、溶液約25mLがフラスコに残るようにした。室温で、シクロヘキサン(40mL)を、この黄色の溶液に滴下により加えた。生じた沈殿物を濾過により集めて、次にこのケーキをシクロヘキサン(2×5mL)で洗浄することにより、所望の化合物(3)3.3gを得た。
HPLC純度:95%。
両方の方法により、同一のNMR及びMSスペクトルを持つ生成物を得た。
【0091】
【表3】

【0092】
ヒドロキシスルホン酸(3S)−3−{(2Z)−2−(2−アミノ(1,3−チアゾール−4−イル))−3−[(1,5−ジヒドロキシ−4−オキソ(2−ヒドロピリジル))メトキシ]−3−アザプロパ−2−エノイルアミノ}−4,4−ジメチル−2−オキソアゼチジニル(I)の調製
(a)トリフルオロ酢酸の使用
ヒドロキシスルホン酸(3S)−3−{(2Z)−3−{[1,5−ビス(ジフェニルメトキシ)−4−オキソ(2−ヒドロピリジル)]メトキシ}−2−{2−[(トリフェニルメチル)アミノ](1,3−チアゾール−4−イル)}−3−アザプロパ−2−エノイルアミノ}−4,4−ジメチル−2−オキソアゼチジニル(3)(0.25g、0.23mmol)及びトリエチルシラン(0.08g、0.69mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶解して、−10°で冷却した。次にこの冷却混合物にトリフルオロ酢酸(1.04g、9.2mmol)をゆっくり加えた。温度をゆっくり25℃まで上げて、反応液を更に4時間撹拌した。溶媒を真空で除去して、残渣を、ヘキサン及び酢酸エチル(1:4)を含有する溶媒混合物で粉砕することにより、所望の化合物(I)0.11gを固体として得た。
HPLC純度:94%。
【0093】
(b)ギ酸の使用
5℃のギ酸(3mL)中に、ヒドロキシスルホン酸(3S)−3−{(2Z)−3−{[1,5−ビス(ジフェニルメトキシ)−4−オキソ(2−ヒドロピリジル)]メトキシ}−2−{2−[(トリフェニルメチル)アミノ](1,3−チアゾール−4−イル)}−3−アザプロパ−2−エノイルアミノ}−4,4−ジメチル−2−オキソアゼチジニル(3)(0.40g、0.31mmol)を加え、この清澄な溶液を5〜10℃で5時間撹拌した。次に酢酸エチル(40mL)を加えて、生じた沈殿物を濾別した。この白色の沈殿物を更なる酢酸エチル(2×5mL)で洗浄して、真空乾燥後に所望の化合物(I)0.09gを得た。
HPLC純度:92%。
両方の方法により、同一のNMR及びMSスペクトルを持つ生成物を得た。
【0094】
【表4】


−ESI−MSスペクトル:m/z:517[M−H]
【0095】
上述の方法により、式(I)の化合物は、一般に無定形で得られる。該形態で使用してもよいが、例えば、本明細書に後述のように、場合により結晶性物質に変換してもよい。
【0096】
式(I)の化合物の結晶化手順
前もって調製した式(I)の化合物の粗生成物(1.31g)を室温でアセトニトリル(15mL)に懸濁した。次に水(3.30mL)を前記懸濁液に加えた。結晶化が開始するまで、この清澄な溶液(溶液が清澄でないなら、懸濁液を穏やかに温めればよい)を室温で数分間撹拌した。この懸濁液を室温で1時間及び0℃で更に1時間撹拌した。濾過後、式(I)の化合物1.05gを白色の結晶性物質として得たが、これは、無定形物質について以前に報告されたものと同一のNMR及びMSスペクトルを有する。
【0097】
この結晶性物質は、以下の表にリストされる赤外吸収スペクトルにより特性決定した(4000〜500cm−1までに16回の走査を収集して、2cm−1の分解能で粉末で記録されたFTIR、ATR Golden gateを付けたBruker Vector 22分光計)。
式(I)の化合物の結晶性物質のFTIRスペクトル:
【0098】
【表5】

【0099】
この結晶性物質は、以下の表及び図1に示されるような、CuKα線を用いて得られるX線粉末回折(「XRPD」)パターンを示した。
【0100】
【表6】

【0101】
2θ角は、約±0.1°の誤差を有する。ピークの相対強度の値は、線の位置よりも測定試料のある種の性質に、例えば、結晶のサイズ及び試料中のその配向に、より強く依存することが知られている。よって示されるピーク強度の±20%の変動は生じる可能性が高い。
【0102】
この結晶性物質は更に、下表に示され、10℃/分の走査速度を用いて得られる、熱重量分析(「TGA」)データにより特性決定した(Perkin-Elmer TGS2)。この物質の温度を室温から100℃まで上げるとき、物質の減量は約7%であった。試料の融点/分解温度に相当する192〜193℃では更なる減量を観測した。
【0103】
【表7】

【0104】
実施例2
(a)式(I)の化合物のナトリウム塩の調製
炭酸水素ナトリウム(0.0077g、0.095mmol)を何回かに分けて、式(I)の化合物(0.05g、0.1mmol)を含有する5℃で冷却した水溶液(pH2〜3)(20mL)に加えた。この清澄な溶液を5℃で15分間撹拌した(pH5〜6)。溶液を一晩凍結乾燥することにより、白色の固体0.052gを得た。
【0105】
【表8】

【0106】
(b)式(I)の化合物のL−アルギニン塩の調製
式(I)の化合物(0.20g、0.39mmol)及びL−アルギニン(0.0672g、0.39mmol)を室温で固体として一緒に激しく混合した。生じた粉末を水(40mL)に溶解して、室温で2〜3分間撹拌した。この溶液を一晩凍結乾燥することにより、白色の固体0.260gを得た。
【0107】
【表9】

【0108】
(c)式(I)の化合物のL−リシン塩の調製
式(I)の化合物(0.20g、0.39mmol)及びL−リシン(0.0564g、0.39mmol)を室温で固体として一緒に激しく混合した。生じた粉末を水(45mL)に溶解して、室温で2〜3分間撹拌した。この溶液を一晩凍結乾燥することにより、白色の固体0.250gを得た。
【0109】
【表10】

【0110】
実施例3
化合物の及びこれらの組合せの抗菌活性を、National Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLSドキュメントM7-A6)に記載された標準手順により様々な生物に対して求めた。化合物は、その水溶解度により100% DMSO又は無菌ブロスに溶解して、微生物増殖培地(IsoSensiTest Broth + 16μg/mL 2,2’−ビピリジル)に最終反応濃度(0.06〜32μg/mL)まで希釈した。全ての場合に、細菌と共にインキュベートしたDMSOの最終濃度は、1%以下とした。最小阻止濃度(MIC)の推定のために、化合物の2倍希釈液を、10細菌/mLを含有するマイクロプレートのウェルに加えた。プレートを適切な温度(30℃又は37℃)で一晩インキュベートし、光学密度を目測した。MIC値は、試験生物の目に見える増殖を完全に阻止する最低化合物濃度として定義される。相乗作用試験は、チェッカーボード形式に分配した2種の抗菌剤を用いた他は、上述のものと同じ条件下で実行した[Isenberg HD (1992) Synergism testing: Broth microdilution checkerboard and broth macrodilution methods. In: Clinical Microbiology Procedures Manual vol. 1. Washington, DC: American Society for Microbiology. Sections 5.18.1 to 5.18.28.]。使用した菌株は以下である:Pseudomonas aeruginosa 6067(DSMZのアクセッション番号;DSMZ- Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Inhoffenstr. 7 B, D-38124 Braunschweig:DSM18987)、Pseudomonas aeruginosa (67/2B)2R.A.(DSM18988)、Achromobacter(旧名Alcaligenes)xylosoxidans QK3/96(DSM18991)、Enterobacter aerogenes Zayakosky 5(DSM18992)。
【0111】
アズトレオナム更には化合物A及び化合物B(後者は両方ともWO 98/47895に開示されている)は、構造的に式(I)の化合物に類似しているが、これらを比較として使用した。
【0112】
【化14】

【0113】
表1は、同重量の本発明の式(I)のモノバクタム系抗生物質と式(II)のカルバペネム系の組合せが、カルバペネム耐性株に対するカルバペネムのMICを、2種の活性化合物の組合せから期待されるよりも大きく低下させることを示した。本発明の組合せのMICはまた、アズトレオナムと対応するカルバペネム系との類似の等重量組合せのMICよりも小さかった。最後に、本発明の組合せは、WO 98/47895(例えば、表1に参照した化合物Aに対応する、WO 98/47895、実施例1)に対応する組合せよりも低いMIC値を示すことが証明された。
【0114】
【表11】

【0115】
分画阻止濃度(FIC)は、下記式:
【0116】
【数1】


により求めた[Isenberg HD (1992); Eliopoulos, G.M. & Moellering, R.C. (1996). In Antibiotics in Laboratory Medicine, 4th edn, (Lorian, V., Ed.), pp. 330-96. Williams and Wilkins, Baltimore, MD.]。
【0117】
表2には、チェッカーボード力価測定法を用いての式(I)の化合物、又は対照化合物のアズトレオナム、化合物A及び化合物Bと、カルバペネム系との間の相互作用を示した。相加又は相乗的相互作用は、式(I)の化合物とカルバペネム系抗生物質との間でのみ観測された。同じ条件下で、アズトレオナム、化合物A又は化合物Bとの組合せは、不偏であるか又は拮抗作用さえ示した。
【0118】
FIC値の解釈は、Sader HS, Huynh HK, Jones RN; Contemporary in vitro synergy rates for aztreonam combined with newer fluoroquinolones and β-lactams tested against Gram-negative bacilli; Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 47 (2003) 547-550により与えられた定義による、即ち、以下のとおりである:
S=FIC≦0.5: 相乗作用
s=0.5<FIC<1: 部分相乗作用
D=FIC=1: 相加作用
I=1<FIC<4: 不偏
N=4≦FIC: 拮抗作用
【0119】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のカルバペネム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置用医薬の製造のための、式(I):
【化15】


[式中、オキシイミノ基、即ち、>C=N−O−は、Z幾何配置を有する]で示されるモノバクタム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩の使用。
【請求項2】
医薬が、グラム陽性及び/又はグラム陰性細菌、特にグラム陰性細菌による感染症の処置用である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
1種のカルバペネム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、細菌感染症の処置のための、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
カルバペネム系抗生物質が、式(II):
【化16】


[式中、
は、水素又はC−Cアルキルを表し;
は、水素又はC−Cアルキルを表し;
は、水素、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ;−(C1n2n)−R又は−O−(C1n2n)−Rを表し;そしてここで
は、ハロゲン、シアノ、C−Cアルコキシ、アミノ;(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、又は式:−CO−R、−NH−CO−R、−CO−NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基を表すが、これらの基において1個以上の水素原子はまた、Rで置換されていてもよいか、又はこの基の−NH残基は、環内に存在する窒素原子を介して基に結合した5〜6員複素環で置換されていてもよく、そしてこの複素環は、非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
は、C−Cアルキル、フェニル又は5〜6員複素環を表し、かつ非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
nは、1〜6の整数であり;
は、式:−(S)−Rの基を表し;そしてここで
mは、0又は1であり、そして
は、水素;C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている)を表し;そしてここで、
各Sは、他の置換基Sと独立に、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、シアノ、ハロゲン、又は式:−CO−R、−NH−CO−NH、−CO−NH、−(C=NH)−C−Cアルキル、−NH−CH=NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基から選択されるが、これらの基において1個以上の水素原子はまた、Rで置換されていてもよいか、又はこの基の−NH残基は、環内に存在する窒素原子を介して基に結合した5〜6員複素環で置換されていてもよく、そしてこの複素環は、非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
は、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている)を表し;そしてここで
各Sは、他の置換基Sと独立に、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、シアノ、ハロゲン、又は式:−CO−R、−NH−CO−R;−CO−NH、−NH−CH=NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基から選択されるが、これらの基において1個以上の水素原子はまた、Rで置換されていてもよいか、又はこの基の−NH残基は、環内に存在する窒素原子を介して基に結合した5〜6員複素環で置換されていてもよく、そしてこの複素環は、非置換であっても、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、後述の意味の1つを有する)で置換されていてもよく;そして
は、C−Cアルキル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);フェニル(非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている);又は窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は1個以上の置換基Sで置換されている)を表し;そしてここで
各Sは、他の置換基Sと独立に、非置換C−Cアルキル、非置換フェニル又は非置換5〜6員複素環;C−Cアルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、アミノ、(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノ、シアノ、ハロゲン、又は式:−NH−CO−NH、−CO−NH、−NH−CH=NH、−NH−CO−NH、−NH−SO−NH若しくは−NH−(C=NH)−NHの基を表すか;あるいは
及びRは、一緒にC−Cポリメチレン基を形成するが、これは、非置換であるか、又は1個以上の置換基S(ここで、各Sは、他の置換基Sと独立に、上述の意味の1つを有する)で置換されている]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
が、式:−(S)−Rの基を表し、そしてここで、
mが、0又は1であり、そして
が、窒素、硫黄及び酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する3〜6員ヘテロシクリル基(このヘテロシクリル基は更に、場合によりフェニル環又は5〜6員複素環に縮合していてもよく、そして基全体は、非置換であるか、又は請求項4と同義に置換されている)を表す、又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
mが、1である、又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項5記載の使用。
【請求項7】
が、水素又はC−Cアルキルを表し;
が、水素又はC−Cアルキルを表し;そして
が、C−Cアルキルを表す、又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
及びRの一方が、水素を表し、かつもう一方が、−CHを表し;そして
が、−CHを表す、又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
カルバペネム系抗生物質が、式(III):
【化17】


[式中、
Yは、窒素又は>CH−を表し;
は、水素を表すか、又は請求項4と同義のSの意味を有しており;そして
Rは、水素;C−Cアルキル(特にメチル)、又は−(N=H)−C−Cアルキル(特に−(N=H)−CH)を表すか、あるいは
及びRは、これらが結合している窒素原子又はY基と一緒に、5〜6員複素環を形成する(Rは、最も好ましくは水素又はメチルである)]で示される化合物、又は薬学的に許容しうるその塩から選択される、請求項1〜8のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
カルバペネム系抗生物質が、下記式:
【化18】


で示される化合物又は薬学的に許容しうるその塩から選択される(ただし、パニペネムは、更にベタミプロンと組合せて使用される)、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
カルバペネム系抗生物質が、更にシラスチンと組合せて使用される、下記式:
【化19】


で示される化合物又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
カルバペネム系抗生物質が、場合により更にシラスチンと組合せた、下記式:
【化20】


で示される化合物又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
カルバペネム系抗生物質が、下記式:
【化21】


で示される化合物又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
カルバペネム系抗生物質が、下記式:
【化22】


で示される化合物又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
式(I):
【化23】


[式中、オキシイミノ基、即ち、>C=N−O−は、Z幾何配置を有する]で示されるモノバクタム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩、及び1種以上の、好ましくは1種のカルバペネム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩を含む、医薬品。
【請求項16】
式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩を含む1種以上の投与単位、及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩を含む1種以上の投与単位を含む、請求項15記載の医薬品。
【請求項17】
1種以上の投与単位を含み、該投与単位のそれぞれが、式(I):
【化24】


[式中、オキシイミノ基、即ち、>C=N−O−は、Z幾何配置を有する]で示されるモノバクタム系抗生物質、又は薬学的に許容しうるその塩、及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の両方を含む、請求項15記載の医薬品。
【請求項18】
カルバペネム系抗生物質が、下記式:
【化25】


で示される化合物、ベタミプロンと組合せたパニペネム及びビアペネム、又は薬学的に許容しうるその塩から選択される、請求項16又は17記載の医薬品。
【請求項19】
カルバペネム系抗生物質が、シラスチンと組合せた、イミペネム又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項16又は17記載の医薬品。
【請求項20】
カルバペネム系抗生物質が、場合によりシラスチンと組合せた、メロペネム又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項16又は17記載の医薬品。
【請求項21】
カルバペネム系抗生物質が、エルタペネム又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項16又は17記載の医薬品。
【請求項22】
カルバペネム系抗生物質が、ドリペネム又は薬学的に許容しうるその塩である、請求項16又は17記載の医薬品。
【請求項23】
式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩を10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5の重量比で含む、請求項15〜22のいずれか1項記載の医薬品。
【請求項24】
式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の重量比が、3:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2、例えば約1:1である、請求項23記載の医薬品。
【請求項25】
式(I)のモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩、並びに薬学的に許容しうる担体を含む組成物である、請求項15〜24のいずれか1項記載の医薬品。
【請求項26】
製品中に含まれる式(I)の化合物及びカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩の単独で使用されるときの効果と比較して、細菌、特にグラム陰性細菌に対して相乗効果を示す、請求項15〜25のいずれか1項記載の医薬品。
【請求項27】
院内肺炎、市中肺炎、尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、複雑性皮膚/皮膚組織感染症、嚢胞性線維症の感染性増悪、敗血症、類鼻疽の処置用の、請求項15〜26のいずれか1項記載の医薬品。
【請求項28】
処置を必要とする哺乳動物、特にヒトにおける細菌感染症の処置方法であって、該哺乳動物又は特に該ヒトに、1種以上のカルバペネム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩と組合せた、式(I):
【化26】


[式中、オキシイミノ基、即ち、>C=N−O−は、Z幾何配置を有する]で示されるモノバクタム系抗生物質又は薬学的に許容しうるその塩を、該感染症の処置に有効な用量で投与することを特徴とする方法。
【請求項29】
カルバペネム系抗生物質が、請求項4〜14のいずれか1項、特に請求項10〜14のいずれか1項記載の化合物である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
式(I)のモノバクタム系抗生物質又はその塩と、カルバペネム系抗生物質又はその塩との相乗的組合せが、該哺乳動物、又は好ましくは該ヒトに投与される、請求項28又は29記載の方法。
【請求項31】
院内肺炎、市中肺炎、尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、複雑性皮膚/皮膚組織感染症、嚢胞性線維症の感染性増悪、敗血症、類鼻疽の処置のための、請求項28〜30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
実質的に結晶形である、請求項1に示される式(I)の化合物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−521517(P2010−521517A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554024(P2009−554024)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053336
【国際公開番号】WO2008/116813
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(501241380)バジリア ファルマスーチカ アーゲー (24)
【氏名又は名称原語表記】Basilea Pharmaceutica AG
【Fターム(参考)】