説明

細長いノズルを有する印字ヘッド

【課題】優れたインクジェット印字ヘッドを提供する。
【解決手段】各々がノズル(25)、ノズル(25)を通してインクを排出する細長いアクチュエータを有するアレイ状のインク室を備えるインクジェット印字ヘッドで、ノズル(25)は、その長い寸法が細長いアクチュエータのそれと位置合わせされた細長い形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微小電子機械システム(MEMS)の分野に関し、MEMS技術で製造した印字ヘッドを使用するインクジェット印字システムを開示する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本発明に関連する様々な方法、システム及び装置が、本発明の出願人又は譲渡人によって出願された以下の米国特許/特許出願において開示されている。
【表1】


【表2】


これらの出願及び特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、泡形成液中に気体又は蒸気の泡を形成することによってインク滴を排出することを含む。この原理は、特許文献1に概略されている。印刷された像の各ピクセルは、1つ又は複数のインクノズルから排出されたインク滴から得られる。近年、インクジェット印字は、主にその安価で汎用性のある性質のせいで益々普及している。インクジェット印字の多くの異なる態様及び技術が、以上の相互参照文書で詳細に説明されている。
【0004】
ノズルのパッキング密度、つまり1平方ミリメートルの印字ヘッド当たりのノズル数は、印字の解像度及び製造費用に関係がある。これを鑑みて、ノズルのパッキング密度を高める努力が現在されている。その結果、個々のノズル構造は、隣接するノズル間の間隔を短縮するように構成される。このような1つの構成は細長いインク室、及び同様に細長いインク排出アクチュエータを使用して、隣接するノズル間の間隔を短縮する。しかし、ノズルから細長い室内のインクの有意の割合を排出することは、多大な水力学的損失を伴う。この損失を克服するために、アクチュエータはより多くのエネルギを使用して、滴を排出するのに十分な圧力パルスをインク内に発生させる。したがって、印字ヘッドの全体的効率は、それほど細長くない室内のアクチュエータより低くなる。
【特許文献1】米国特許第3,747,120号(Stemme)
【発明の開示】
【0005】
したがって、本発明は、
各々がノズル、ノズルを通してインクを排出する細長いアクチュエータを有するアレイ状のインク室を備え、
ノズルが細長い形状を有し、その長い寸法が細長いアクチュエータのそれと位置合わせされる、
インクジェット印字ヘッドを提供する。
【0006】
ノズルを細長くし、それをアクチュエータと位置合わせすることにより、ノズル形状は、アクチュエータがインク内に発生させる圧力パルスの形状に、さらに密接に対応する。これによって、ノズルを通して圧力パルスがインクをさらに容易に排出することができる。圧力パルスによって押されているインクが、同様の形状のノズルを通して排出される時に受ける流体抵抗が低下するので、水力学的損失が低下する。これは、印字ヘッドの動作効率を改善する。さらなる好ましい形態では、アクチュエータは、ノズルを通して排出するために蒸気の泡を発生する細長い加熱器要素がある熱アクチュエータである。幾つかの実施形態では、アレイの各インク室は、細長いアクチュエータと位置合わせされた複数の細長いノズルを有する。任意選択で、アレイの各インク室は、複数の細長いアクチュエータにそれぞれ対応する複数の細長いノズルを有する。
【0007】
第1の態様では、本発明は、
各々がノズル、ノズルを通してインクを排出する細長いアクチュエータを有するアレイ状のインク室を備え、
ノズルは、その長い寸法が細長いアクチュエータのそれと位置合わせされる細長い形状を有する、
インクジェット印字ヘッドを提供する。
【0008】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0009】
任意選択で、アクチュエータは、ノズルを通して排出する蒸気の泡を発生する細長い加熱器要素がある熱アクチュエータである。
【0010】
任意選択で、アレイの各インク室は、細長いアクチュエータと位置合わせされた複数の細長いノズルを有する。
【0011】
任意選択で、アレイの各インク室は、複数の細長いアクチュエータにそれぞれ対応する複数の細長いノズルを有する。
【0012】
さらなる態様では、さらに、各アクチュエータにそれぞれ1対の電極を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、アクチュエータは、各々が電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有する熱アクチュエータであり、熱アクチュエータは全て一体の平面構造である。
【0013】
任意選択で、駆動回路にエッチングされたトレンチは、電極間に延在する。
【0014】
任意選択で、インク室はそれぞれ複数のノズルを有し、使用中に、
アクチュエータは室の全ノズルを通して同時にインクを排出する。
【0015】
任意選択で、インク室はそれぞれ2つのノズルを有する。
【0016】
任意選択で、各室のノズルは、加熱器要素の長さに平行な線に配置され、ノズルの中心軸は加熱器要素に沿って規則的に隔置される。
【0017】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0018】
任意選択で、楕円形ノズルの長軸が位置合わせされる。
【0019】
任意選択で、駆動回路は、熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0020】
任意選択で、駆動FETの駆動電圧は2.5ボルトである。
【0021】
さらなる態様では、ノズル板とその下のウェハとの間にあるインク導管をさらに備え、インク導管は、複数のインク室の開口と流体連絡するインクジェット印字ヘッドが提供される。
【0022】
さらなる態様では、ウェハ基板内に画定された複数のインク入口をさらに備え、
インク導管はそれぞれ、インク室に供給するインクを受け取るために、インク入口の少なくとも1つと流体連絡するインクジェット印字ヘッドが提供される。
【0023】
任意選択で、インク導管はそれぞれ、インク入口の2つと流体連絡する。
【0024】
任意選択で、インク入口はそれぞれ、インク透過性トラップ、及び自身の全体にわたってインクのメニスカスの表面張力が漏れを防止するようなサイズにされた通気口を有し、使用中は、
インク透過性トラップが気泡を通気口へと配向し、そこで大気へと排出する。
【0025】
任意選択で、インク室は、側壁の2つが他に対して長いような細長い形状を有し、インクで室を再充填できるようにする開口が、長い側壁の1つにある。
【0026】
任意選択で、ノズルは、ノズルの中心が同一線上にあり、各列に沿ったノズルのピッチが1インチ(2.54cm)当たりノズル1000個を超えるように、列状に配置構成される。
【0027】
第2の態様では、本発明は、
アレイ状のノズルと、
ステムが破壊する場合に、滴が分離する前に小滴ステムに付着するインクの球が形成されるように、ノズルを通してインクを排出する複数のアクチュエータと、
隣接するアクチュエータ間に配置された複数の小滴ステムアンカと、を備え、使用中に、
隣接するアクチュエータがインクを同時に排出し、小滴ステムアンカが、隣接するノズルによって同時に排出されたインクを組み合わせて、1つの滴にする
インクジェット印字ヘッドを提供する。
【0028】
任意選択で、隣接するアクチュエータは、1つの楕円形ノズルを通してインクを排出する2つの熱アクチュエータである。
【0029】
任意選択で、熱アクチュエータは、同時に起動し、排出するために直列接続された両方の加熱器要素である。
【0030】
任意選択で、2つの加熱器要素は、その端部及び中央点にて吊り下げられた加熱器材料の1つのビームの部分である。
【0031】
任意選択で、加熱器要素は、最大抵抗区間で蒸気の泡が開始するように、電気抵抗が最大になるテーパ状区間を有する。
【0032】
任意選択で、加熱器要素は、小滴ステムアンカの対向する側にあり、したがって1つの加熱器要素によって排出されたインクの軌跡が、他方の加熱器要素によって排出されたインクの軌跡と交差する。
【0033】
任意選択で、加熱器要素は、インク室に隣接し、小滴ステムアンカが隣接する境界にある。
【0034】
任意選択で、加熱器要素は1つのインク室内にある。
【0035】
任意選択で、隣接するアクチュエータによって排出されたインクは、起動前に流体連絡する。
【0036】
任意選択で、加熱器要素はTiAlNから形成される。
【0037】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0038】
任意選択で、楕円形ノズルの主軸が位置合わせされる。
【0039】
任意選択で、駆動回路は、熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0040】
任意選択で、駆動FETの駆動電圧は2.5ボルトである。
【0041】
さらなる態様では、ノズル板とその下のウェハとの間にあるインク導管をさらに備え、インク導管は、複数のインク室の開口と流体連絡するインクジェット印字ヘッドが提供される。
【0042】
さらなる態様では、さらに、ウェハ基板内に画定された複数のインク入口を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、
インク導管はそれぞれ、インク室に供給するインクを受け取るために、インク入口の少なくとも1つと流体連絡する。
【0043】
任意選択で、インク導管はそれぞれ、インク入口の2つと流体連絡する。
【0044】
任意選択で、インク入口はそれぞれ、インク透過性トラップ、及び自身の全体にわたってインクのメニスカスの表面張力が漏れを防止するようなサイズにされた通気口を有し、使用中は、
インク透過性トラップが気泡を通気口へと配向し、そこで大気へと排出する。
【0045】
任意選択で、インク室は、側壁の2つが他に対して長いような細長い形状を有し、インクで室を再充填できるようにする開口が、長い側壁の1つにある。
【0046】
任意選択で、ノズルは、ノズルの中心が同一線上にあり、各列に沿ったノズルのピッチが1インチ(2.54cm)当たりノズル1000個を超えるように、列状に配置構成される。
【0047】
第3の態様では、本発明は、
各々がインク再充填開口、ノズル、及びノズルを通してインクを排出するアクチュエータを有するアレイ状のインク室と、
室から流出するインクより室に流入するインクに対する水力学的抵抗が少なくなるように、インク再充填開口にある流体流れ整流弁と、
を備えるインクジェット印字ヘッドを提供する。
【0048】
任意選択で、整流弁は、主要導管及び2次導管、及び少なくとも1つの2次導管があるテスラ弁であり、使用中に、室から流出するインクが主要流れと2次流れに分割され、したがってインクが室から流出する場合、2次流れは、主要流れを収縮するように主要流れと組み合わせられる。
【0049】
任意選択で、テスラ弁は、主要導管の対向する側に2つの2次導管を有する。
【0050】
任意選択で、使用中に、インクが室に流入すると、2次導管の上流の開口が、流れの方向に平行な面にあり、下流の開口が、主要流れに平行で、それに隣接する2次流れを全て下流の開口に配向する。
【0051】
任意選択で、室から流出するインクが主要導管の対向する側にある間、2次導管の下流の開口は、主要導管を通る流れの方向に対して横向きになる。
【0052】
さらなる態様では、さらに、各アクチュエータにそれぞれ電極の対を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、アクチュエータは、各々が電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有する熱アクチュエータであり、熱アクチュエータは全て一体の平面構造である。
【0053】
任意選択で、駆動回路にエッチングされたトレンチは、電極間に延在する。
【0054】
任意選択で、インク室はそれぞれ複数のノズルを有し、使用中に、
アクチュエータは室の全ノズルを通してインクを同時に排出する。
【0055】
任意選択で、インク室はそれぞれ2つのノズルを有する。
【0056】
任意選択で、各室のノズルは、加熱器要素の長さに平行な線に配置され、ノズルの中心軸は加熱器要素に沿って規則的に隔置される。
【0057】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0058】
任意選択で、楕円形ノズルの主軸が位置合わせされる。
【0059】
任意選択で、駆動回路は、熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0060】
任意選択で、駆動FETの駆動電圧は2.5ボルトである。
【0061】
さらなる態様では、さらに、ノズル板とその下にあるウェハの間にインク導管を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、インク導管は、複数のインク室の開口と流体連絡する。
【0062】
さらなる態様では、さらに、ウェハ基板内に画定された複数のインク入口を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、
インク導管は各々、インク室に供給するインクを受け取るために、インク入口の少なくとも1つと流体連絡する。
【0063】
任意選択で、インク導管はそれぞれ、インク入口の2つと流体連絡する。
【0064】
任意選択で、インク入口はそれぞれ、インク透過性トラップ、及び自身の全体にわたってインクのメニスカスの表面張力が漏れを防止するようなサイズにされた通気口を有し、使用中は、
インク透過性トラップが気泡を通気口へと配向し、そこで大気へと排出する。
【0065】
任意選択で、インク室は、側壁の2つが他に対して長いような細長い形状を有し、インクで室を再充填できるようにする開口が、長い側壁の1つにある。
【0066】
任意選択で、ノズルは、ノズルの中心が同一線上にあり、各列に沿ったノズルのピッチが1インチ(2.54cm)当たりノズル1000個を超えるように、列状に配置構成される。
【0067】
第4の態様では、本発明は、
各々がノズル、小滴ステムアンカ、及びノズルを通してインクを排出するアクチュエータを有するアレイ状のインク室を備え、使用中に、
ノズルから排出されるインクは、ステムが破壊するまで、インクステムによって小滴ステムアンカに付着し、したがって排出されたインクが別個の滴を形成する、
インクジェット印字ヘッドを提供する。
【0068】
任意選択で、小滴ステムアンカは、ノズルに近位の円柱状形体である。
【0069】
任意選択で、小滴ステムアンカの軸とノズルの中心軸は同一線上にある。
【0070】
任意選択で、各インク室は2つのアクチュエータを有し、各アクチュエータは、ノズルを通してインクを排出するために蒸気の泡を発生する加熱器要素を有し、小滴ステムアンカが、加熱器要素間に配置される。
【0071】
任意選択で、アクチュエータは、自身の間に延在する筋交い構造と並列に接続された複数の加熱器要素を有し、筋交い構造も、小滴ステムアンカを提供する。
【0072】
任意選択で、アクチュエータは、並列の2つの加熱器要素を有し、筋交い構造は、小滴ステムアクチュエータの位置を特定するために表面に凹凸がある1本のビームである。
【0073】
さらなる態様では、さらに、各アクチュエータにそれぞれ1対の電極を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、アクチュエータは、各々が電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有し、熱アクチュエータは全て一体の平面構造である。
【0074】
任意選択で、駆動回路にエッチングされたトレンチは、電極間に延在する。
【0075】
任意選択で、インク室はそれぞれ複数のノズルを有し、使用中に、
アクチュエータは室の全ノズルを通してインクを同時に排出する。
【0076】
任意選択で、インク室はそれぞれ2つのノズルを有する。
【0077】
任意選択で、各室のノズルは、加熱器要素の長さに平行な線に配置され、ノズルの中心軸は加熱器要素に沿って規則的に隔置される。
【0078】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0079】
任意選択で、楕円形ノズルの主軸が位置合わせされる。
【0080】
任意選択で、駆動回路は、熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0081】
任意選択で、駆動FETの駆動電圧は2.5ボルトである。
【0082】
さらなる態様では、ノズル板とその下のウェハとの間にあるインク導管をさらに備え、インク導管は、複数のインク室の開口と流体連絡するインクジェット印字ヘッドが提供される。
【0083】
さらなる態様では、さらに、ウェハ基板内に画定された複数のインク入口を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、
インク導管はそれぞれ、インク室に供給するインクを受け取るために、インク入口の少なくとも1つと流体連絡する。
【0084】
任意選択で、インク導管はそれぞれ、インク入口の2つと流体連絡する。
【0085】
任意選択で、インク入口はそれぞれ、インク透過性トラップ、及び自身の全体にわたってインクのメニスカスの表面張力が漏れを防止するようなサイズにされた通気口を有し、使用中は、
インク透過性トラップが気泡を通気口へと配向し、そこで大気へと排出する。
【0086】
任意選択で、インク室は、側壁の2つが他に対して長いような細長い形状を有し、インクで室を再充填できるようにする開口が、長い側壁の1つにある。
【0087】
第5の態様では、本発明は、各々がノズル、及びノズルを通してインクを排出するアクチュエータを有するアレイ状のインク室を備え、使用中に、
アクチュエータが、ノズルの面に平行な2本の直交軸に対して対称である四重極圧力パルスを開始し、直交軸は、ノズルの中心を通って延在する相互に直交する軸と交差する。
【0088】
任意選択で、アクチュエータは、インクを排出するために蒸気の泡を発生させる加熱器要素を有する熱アクチュエータである。
【0089】
任意選択で、アクチュエータは、四重極圧力パルスを開始するために、各電流路に沿って直列に接続された2つの加熱器要素を有する2つの平行電流路を有する。
【0090】
任意選択で、加熱器要素は、電流路の他の区間より迅速に加熱する泡核生成区間を含む。
【0091】
任意選択で、泡核生成区間は、熱慣性がより大きい電流路の区間の間にある。
【0092】
任意選択で、泡核生成区間は、より大きい半径の曲線間にある半径が小さい曲線であり、したがって半径が小さい曲線の周囲に集まる電流は、半径が大きい方の曲線より大きい抵抗加熱を発生する。
【0093】
任意選択で、加熱器要素は室内に吊り下げられる。
【0094】
任意選択で、アクチュエータは、平行の電流路上にある中間点間に延在する筋交い構造を有する。
【0095】
任意選択で、筋交い構造は、各電流路に接続する場合に、熱慣性が高くなる。
【0096】
任意選択で、筋交い構造は小滴ステムアンカを提供する。
【0097】
さらなる態様では、さらに、各アクチュエータにそれぞれ1対の電極を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、アクチュエータは、各々が電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有する熱アクチュエータであり、熱アクチュエータは全て一体の平面構造である。
【0098】
任意選択で、駆動回路にエッチングされたトレンチは、電極間に延在する。
【0099】
任意選択で、インク室は各々、複数のノズルを有し、使用中に、
アクチュエータは、室の全ノズルを通して同時にインクを排出する。
【0100】
任意選択で、インク室は各々、2つのノズルを有する。
【0101】
任意選択で、各室のノズルは、加熱器要素の長さに平行な線に配置構成され、ノズルの中心軸が、加熱器要素に沿って規則的に隔置される。
【0102】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0103】
任意選択で、楕円形ノズルの長軸が位置合わせされる。
【0104】
任意選択で、駆動回路は、熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0105】
任意選択で、駆動FETの駆動電圧は2.5ボルトである。
【0106】
任意選択で、ノズルは、ノズルの中心が同一線上にあり、各列に沿ったノズルのピッチが1インチ(2.54cm)当たりノズル1000個を超えるように、列状に配置構成される。
【0107】
第6の態様では、本発明は、
各々がノズル、及びノズルを通してインクを排出するために蒸気の泡を発生させる熱アクチュエータを有するアレイ状のインク室を備え、
熱アクチュエータが、1対の接触部、及び接触部の間の少なくとも2つの平行電流路を有し、各電流路は、蒸気の泡に核生成する複数の加熱器要素を有する。
【0108】
任意選択で、加熱器要素は、アクチュエータが起動する毎に、個々の泡に同時に核生成する。
【0109】
任意選択で、アクチュエータは、各電流路に沿って直列に接続される2つの加熱器要素を有する2つの平行電流路を有する。
【0110】
任意選択で、加熱器要素は、電流路の他の区間より迅速に加熱される泡核生成区間を含む。
【0111】
任意選択で、泡核生成区間は、熱慣性が大きい方の電流路の区間の間にある。
【0112】
任意選択で、泡核生成区間は、より大きい半径の曲線間にある半径が小さい曲線であり、したがって半径が小さい曲線の周囲に集まる電流は、半径が大きい方の曲線より大きい抵抗加熱を発生する。
【0113】
任意選択で、加熱器要素は室内に吊り下げられる。
【0114】
任意選択で、アクチュエータは、平行の電流路上にある中間点間に延在する筋交い構造を有する。
【0115】
任意選択で、筋交い構造は、各電流路に接続する場合に、熱慣性が高くなる。
【0116】
任意選択で、筋交い構造は小滴ステムアンカを提供する。
【0117】
任意選択で、アクチュエータが、ノズルの面に平行な2本の直交軸に対して対称である四重極圧力パルスを開始し、直交軸は、ノズルの中心を通って延在する相互に直交する軸と交差する。
【0118】
任意選択で、熱アクチュエータはTiAlNから形成される。
【0119】
さらなる態様では、さらに、各アクチュエータにそれぞれ1対の電極を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、アクチュエータは、各々が電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有し、熱アクチュエータは全て一体の平面構造である。
【0120】
任意選択で、駆動回路にエッチングされたトレンチが、電極間に延在する。
【0121】
任意選択で、インク室はそれぞれ複数のノズルを有し、使用中に、
アクチュエータは室の全ノズルを通してインクを同時に排出する。
【0122】
任意選択で、インク室はそれぞれ2つのノズルを有する。
【0123】
任意選択で、各室のノズルは、加熱器要素の長さに平行な線に配置され、ノズルの中心軸は加熱器要素に沿って規則的に隔置される。
【0124】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0125】
任意選択で、楕円形ノズルの長軸が位置合わせされる。
【0126】
任意選択で、駆動回路は、熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0127】
第7の態様では、
各々がノズル、及びノズルを通してインクを排出するために蒸気の泡を発生させる複数の加熱器要素を有するアレイ状のインク室を備え、加熱器要素が、インクに浸漬するために吊り下げられ、さらに、
加熱器要素間の間隔を維持する筋交い構造
を備えるインクジェット印字ヘッドが提供される。
【0128】
任意選択で、加熱器要素は、アクチュエータが起動する毎に、個々の泡に同時に核生成する。
【0129】
任意選択で、インク室は、自身の間に延在する2つの平行電流路を有する1対の接触部を有し、各電流路は、直列で接続された加熱器要素のうち2つを有する。
【0130】
任意選択で、加熱器要素は、電流路の他の区間より迅速に加熱する泡核生成区間を含む。
【0131】
任意選択で、泡核生成区間は、熱慣性がより大きい電流路の区間の間にある。
【0132】
任意選択で、筋交い構造が加熱器要素と一体形成され、平行電流路上の中間点の間に延在する。
【0133】
任意選択で、筋交い構造は、電流路内で熱慣性が比較的大きい区間を提供する。
【0134】
任意選択で、加熱器要素が、ノズルの面に平行な2本の直交軸に対して対称である四重極圧力パルスを開始し、直交軸は、ノズルの中心を通って延在する相互に直交する軸と交差する。
【0135】
任意選択で、加熱器要素及び接触部はTiAlNから形成される。
【0136】
任意選択で、筋交い構造は小滴ステムアンカを提供する。
【0137】
任意選択で、アクチュエータが、ノズルの面に平行な2本の直交軸に対して対称である四重極圧力パルスを開始し、直交軸は、ノズルの中心を通って延在する相互に直交する軸と交差する。
【0138】
さらなる態様では、さらに、各アクチュエータにそれぞれ1対の電極を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、アクチュエータは、各々が電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有し、熱アクチュエータは全て一体の平面構造である。
【0139】
任意選択で、駆動回路にエッチングされたトレンチが、電極間に延在する。
【0140】
任意選択で、インク室はそれぞれ複数のノズルを有し、使用中に、
アクチュエータは室の全ノズルを通してインクを同時に排出する。
【0141】
任意選択で、インク室はそれぞれ2つのノズルを有する。
【0142】
任意選択で、各室のノズルは、加熱器要素の長さに平行な線に配置され、ノズルの中心軸は加熱器要素に沿って規則的に隔置される。
【0143】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0144】
任意選択で、楕円形ノズルの長軸は位置合わせされる。
【0145】
任意選択で、駆動回路は熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0146】
任意選択で、駆動FETの駆動電圧は2.5ボルトである。
【0147】
第8の態様では、本発明は、
各々がノズル、及びノズルを通してインクを排出するアクチュエータを有するアレイ状のインク室を備え、
ノズルは、ノズル開口を画定するノズル縁部、及びノズル縁部上でノズル開口の中心に向かって延在する局所的な凹凸を有する、
インクジェット印字ヘッドを提供する。
【0148】
任意選択で、局所的凹凸は、小滴ステムがノズル縁部の他の任意の点よりも優先的に付着するように配置された小滴ステムアンカである。
【0149】
任意選択で、局所的凹凸は、ノズル縁部からノズル開口内に延在する横方向の突堤である。
【0150】
任意選択で、アクチュエータは、インク内に浸漬するために吊り下げられたビーム加熱器要素を有する熱アクチュエータである。
【0151】
任意選択で、アレイの全突堤は平行であり、加熱器要素に対して同じ位置を有する。
【0152】
さらなる態様では、さらに、各アクチュエータにそれぞれ1対の電極を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備えるインクジェット印字ヘッドが提供され、アクチュエータは、各々が電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有し、熱アクチュエータは全て一体の平面構造である。
【0153】
任意選択で、駆動回路にエッチングされたトレンチが、電極間に延在する。
【0154】
任意選択で、インク室はそれぞれ複数のノズルを有し、使用中に、
アクチュエータは室の全ノズルを通してインクを同時に排出する。
【0155】
任意選択で、インク室はそれぞれ2つのノズルを有する。
【0156】
任意選択で、各室のノズルは、加熱器要素の長さに平行な線に配置され、ノズルの中心軸は加熱器要素に沿って規則的に隔置される。
【0157】
任意選択で、ノズルは楕円形である。
【0158】
任意選択で、楕円形ノズルの長軸は位置合わせされる。
【0159】
任意選択で、駆動回路は熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である。
【0160】
任意選択で、駆動FETの駆動電圧は2.5ボルトである。
【0161】
さらなる態様では、さらに、ノズル板とその下にあるウェハの間にインク導管を備え、インク導管が、複数のインク室の開口と流体連絡するインクジェット印字ヘッドが提供される。
【0162】
さらなる態様では、さらに、ウェハ基板内画定された複数のインク入口を備え、
各インク導管が、インク室に供給するインクを受け取るために、インク入口の少なくとも1つと流体連絡する
インクジェット印字ヘッドが提供される。
【0163】
任意選択で、各インク導管が、インク入口の2つと流体連絡する。
【0164】
任意選択で、インク入口はそれぞれ、インク透過性トラップ、及び自身の全体にわたってインクのメニスカスの表面張力が漏れを防止するようなサイズにされた通気口を有し、使用中は、
インク透過性トラップが気泡を通気口へと配向し、そこで大気へと排出する。
【0165】
任意選択で、インク室は、側壁の2つが他に対して長いような細長い形状を有し、インクで室を再充填できるようにする開口が、長い側壁の1つにある。
【0166】
任意選択で、ノズルは、ノズルの中心が同一線上にあり、各列に沿ったノズルのピッチが1インチ(2.54cm)当たりノズル1000個を超えるように、列状に配置構成される。
【0167】
本発明による印字ヘッドは、複数のノズル、さらに各ノズルに対応する室及び1つ又は複数の加熱器要素を備える。印字ヘッドの最小反復ユニットは、1つ又は複数の室にインクを供給するインク供給入口を有する。ノズルアレイ全体は、これらの個々のユニットを繰り返すことによって形成される。このような個々のユニットを、本明細書では「ユニットセル」と呼ぶ。
【0168】
また、「インク」という用語は、排出可能な液体を意味するように使用され、着色した染料を含む従来通りのインクに制限されない。非着色インクの例は定着剤、赤外線吸収剤インク、機能付与した化学物質、接着剤、生物学的流体、薬剤、水及び他の溶剤などを含む。インク又は排出可能な液体はまた、必ずしも厳密に液体である必要はなく、固体粒子の浮遊物を含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0169】
次に、添付図面を参照しながら、例示によってのみ本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0170】
以下の説明では、対応する参照番号は対応する部品に関係する。便宜上、各参照番号で示される形体が以下に列挙されている。
1.ノズルユニットセル
2.シリコンウェハ
3.CMOS金属層内の最上アルミ金属層
4.不活性化層
5.化学蒸着酸化層
6.最上アルミ金属層3内のインク入口開口
7.最上部アルミ金属層3のピット開口
8.ピット
9.電極
10.SACIフォトレジスト層
11.加熱器材料(TiAlN)
12.熱アクチュエータ
13.フォトレジスト層
14.フォトレジスト層を通してエッチングされたインク入口開口
15.インク入口通路
16.SAC2フォトレジスト層
17.室の側壁開口
18.前部流路プライミング形体
19.インク入口におけるバリア構成
20.室の天井層
21.天井
22.側壁
23.インク導管
24.ノズル室
25.楕円形ノズル縁部
25(a)内リップ
25(b)外リップ
26.ノズル開口
27.インク供給流路
28.接触部
29.加熱器要素
30.泡ケージ
32.泡保持構造
34.インク透過性構造
36.抽気孔
38.インク室
40.2列フィルタ
42.紙の埃
44.インク樋
46.SACIとトレンチ側壁の間のギャップ
48.トレンチ側壁
50.トレンチ縁部周囲のSACIの隆起リップ
52.加熱器材料の薄くなった傾斜区間
54.直列接続した加熱器要素間の低温スポット
56.ノズル板
58.円柱状突起
60.側壁のインク開口
62.インク再充填開口
64.インク
66.泡
68.膨らんだインクのメニスカス
70.インクの球
72.小滴ステム
74.小滴ステム付着点
76.ノズルの中心線
78.滴の誤配向
80.滴
82.従属滴
84.小滴ステムアンカ
86.最大抵抗区間又は「ホットスポット」
88.小滴ステムアンカのいずれかの側のショット
90.半円形電流路
92.「冷点」
94.中心棒
96.半径が大きい方の曲線
98.半径が小さい方の曲線
100.半径が小さい方の曲線の外縁
102.半径が小さい方の曲線の内縁
104.インク再充填開口
106.整流弁(テスラ弁)
108.主要導管
110.2次導管
112.ノズル縁部からの横方向の突堤
MEMS製造プロセス
MEMS製造プロセスは、CMOS処理の終了後にシリコンウェハ上にノズル構造を構築する。図2は、CMOS処理の終了後、MEMS処理前のノズルユニットセル1の切り取り斜視図である。
【0171】
ウェハのCMOS処理中に、金属層が層間誘電(ILD)層の間を満たす状態で、4つの金属層をシリコンウェハ2に付着させる。4つの金属層はM1、M2、M3及びM4層と呼ばれ、CMOS処理中にウェハ上に順番に蓄積する。これらのCMOS層は、印字ヘッドを動作させる駆動回路及び論理を全て提供する。
【0172】
完成した印字ヘッド内で、各加熱器要素アクチュエータは、最も外側のM4層内に画定された1対の電極を介してCMOSに接続される。したがって、M4 CMOS層は、その後にウェハをMEMS処理するための基礎となる。M4層は、各印字ヘッド集積回路の縦方向の縁部に沿ったボンディングパッドも画定する。これらのボンディングパッド(図示せず)により、ボンディングパッドから延在するワイヤボンドを介してCMOSをマイクロプロセッサに接続することができる。
【0173】
図1及び図2は、自身上に付着した不活性化層4を有するアルミのM4層3を示す。(これらの図では、M4層のMEMS形体のみが図示され、M4層の主要なCMOS形体は、ノズルのユニットセルの外側に配置される。)M4層3は1ミクロンの厚さを有し、CVD酸化物5の2ミクロンの層上に付着する。図1及び図2に示すように、M4層3は、インク入口開口6及びピット開口7を有する。これらの開口は、MEMSプロセスでその後に形成されるインク入口及びピットの位置を画定する。
【0174】
ユニットセル1のMEMS処理が開始する前に、各印字ヘッド集積回路の縦方向の縁部に沿ったボンディングパッドが、不活性化層4を通したエッチングによって画定される。このエッチングは、ボンディングパッド位置でM4層3を露出させる。ノズルのユニットセル1は、このステップのためにフォトレジストで完全にマスキングされ、したがってエッチングの影響を受けない。
【0175】
図3から図5を参照すると、MEMS処理の第1段階は、不活性化層4及びCVD酸化物層5を通してピット8をエッチングする。このエッチングは、図3に示した暗い色調のピットマスクによって露出したフォトレジスト(図示せず)の層を使用して画定される。ピット8は、M4層3の頂部から測定して2ミクロンの深さを有する。ピット8をエッチングするのと同時に、不活性化層4を通してM4層3を部分的に露出させることにより、ピットのいずれかの側で電極9を画定する。完成したノズル内で、加熱器要素は電極9間でピット8をまたいで吊り下げられる。
【0176】
次のステップ(図6から図8)では、ピット8をフォトレジスト10の第1犠牲層(「SAC1」)で再充填する。高速フォトレジストの2ミクロンの層は、最初にウェハ上に引き延ばされ、次に図6に示した暗い色調のマスクを使用して露出される。SAC1フォトレジスト10は、ピット8のいずれかの側に電極9をまたいで加熱器材料をその後に付着させるための足場を形成する。その結果、SAC1フォトレジスト10は、電極9の上面と面一である平坦な上面を有することが重要である。それと同時に、SAC1フォトレジストは、ピットをまたいで延在し、電極9を短絡する導電性加熱器材料の「ストリンガ」を回避するために、ピット8を完全に再充填しなければならない。
【0177】
通常、トレンチをフォトレジストで再充填する場合は、フォトレジストがトレンチの壁に接して再充填し、したがってその後の付着ステップで「ストリンガ」を回避することが保証されるために、トレンチの周囲の外側にフォトレジストを露出させる必要がある。しかし、この技術の結果、トレンチの周囲にフォトレジストの隆起した(又はスパイク状の)縁部が生じてしまう。これは、その後の付着ステップで、材料が隆起した縁部に不均一に付着するので望ましくない。つまり、トレンチを再充填するフォトレジストの縁部の垂直又は傾斜した表面が、水平の平面より付着材料が少なくなる。この結果が、材料の付着が薄い領域の「抵抗ホットスポット」である。
【0178】
図7に示すように、このプロセスは、図6に示すマスクを使用してピット8の周囲壁の内側(例えば0.5ミクロン以内)にSAC1フォトレジスト10を意図的に露出させる。これは、SAC1フォトレジスト10の平面の上面を確保し、ピット8の周縁の周囲でフォトレジストにスパイク状領域が生じるのを回避する。
【0179】
SAC1フォトレジスト10の露出後に、フォトレジストを加熱によってリフローさせる。フォトレジストのリフローによって、これはピット8の壁まで流れ、それを正確に再充填する。図9及び図10は、リフロー後のSAC1フォトレジスト10を示す。フォトレジストは平面の上面を有し、電極9を形成するM4層3の上面と面一で合う。リフロー後に、SAC1フォトレジスト10を紫外線硬化及び/又はハードベークし、加熱器材料のその後の付着ステップ中のリフローを回避する。
【0180】
図11及び図12は、0.5ミクロンの加熱器材料11をSAC1フォトレジスト10上に付着させた後のユニットセルを示す。上述したリフロープロセスのせいで、加熱器材料11は、電極9及びSAC1フォトレジスト10上に均一かつ平面の層になって付着する。加熱器材料は、TiAl、TiN、TiAlN、TiAlSiNなどの任意の適切な導電性材料で構成することができる。典型的な加熱器材料の付着プロセスは、TiAlの100Åのシード層、TiAlNの2500Åの層、TiAlの100Åのさらなるシード層、最後にTiAlNの2500Åのさらなる層を順番に付着させることを含んでよい。
【0181】
図13から図15を参照すると、次のステップで、加熱器材料11の層がエッチングされ、熱アクチュエータ12を画定する。各アクチュエータ12は、SAC1フォトレジスト10のいずれかの側にある個々の電極9への電気接続を確立する接触部28を有する。加熱器要素29は、対応する接触部28の間に引き延ばされる。
【0182】
このエッチングは、図13に示した暗い色調のマスクを使用して露出したフォトレジスト(図示せず)の層によって画定される。図15に示すように、加熱器要素12は電極9の対の間にある線系ビームスパニングである。しかし、加熱器要素12は、参照によって内容が本明細書に組み込まれる出願人の米国特許第6,755,509号に記載されているような他の構成を代替的に採用することができる。例えば、中心空隙を有する加熱器要素29の構成は、インク排出中に気泡が崩壊した場合に、加熱器材料にかかるキャビテーションの力の有害な効果を最小限に抑えるために有利であり得る。「泡の通気」及び自動不活性化材料の使用など、他の形態のキャビテーション保護を採用してもよい。これらのキャビテーション管理技術は、米国特許出願(出願人の文書MTC001US)で詳細に検討されている。
【0183】
ステップの次のシーケンスでは、不活性化層4、酸化物層5及びシリコンウェハ2を通して、ノズルのインク入口がエッチングされる。CMOS処理中に、各金属層は、このインク入口のエッチングの準備でインク入口開口(例えば図1のM4層3の開口6参照)がエッチングされている。これらの金属層は、挿入したILD層とともに、インク入口の密封リングを形成し、インクがCMOS層に染みこむのを防止する。
【0184】
図16から図18を参照すると、フォトレジスト13の比較的厚い層がウェハ上に引き延ばされ、図16に示す暗い色調のマスクを使用して露光される。必要なフォトレジスト13の厚さは、インク入口のエッチングに使用される深反応性イオンエッチング(DRIE)の選択性に依存する。インク入口開口14がフォトレジスト13内に画定された状態で、ウェハはその後のエッチングステップの準備が整う。
【0185】
第1エッチングステップ(図19及び図20)では、下のシリコンウェハを通して誘電層(不活性化層4及び酸化物層5)がエッチングされる。任意の標準的な酸化物エッチング(例えばO/Cプラズマ)を使用してよい。
【0186】
第2エッチングステップ(図21及び図22)では、同じフォトレジストマスク13を使用して、シリコンウェハ2を通して25ミクロンの深さまでインク入口15をエッチングする。このエッチングには、ボッシュエッチング(米国特許第6,501,893号及び第6,284,148号参照)などの任意の標準的異方性DRIEを使用してよい。インク入口15のエッチング後、プラズマ灰化でフォトレジスト層13を除去する。
【0187】
次のステップでは、インク入口15にフォトレジストで栓をし、SAC1フォトレジスト10及び不活性化層4の頂部にフォトレジストの第2犠牲層(「SAC2」)16を構築する。SAC2フォトレジスト16は、各ノズル室の天井及び側壁を形成する天井材料をその後に蓄積するための足場として働く。図23から図25を参照すると、約6ミクロンの高速フォトレジスト層をウェハ上に引き延ばし、図23に示した暗い色調のマスクを使用して露光する。
【0188】
図23及び図25に示すように、マスクは、室の側壁及びインク導管の側壁の位置に対応して、SAC2フォトレジスト16に側壁開口17を露出させる。また、開口18及び19は、それぞれ栓をした入口15及びノズル室の入口に隣接して露光される。これらの開口18及び19は、その後の天井付着ステップにて天井材料で再充填され、本発明のノズル設計で独特の利点を提供する。特に、天井材料で再充填された開口18は、インクを入口15から各ノズル室に引き込むことを補助するプライミング形体として作用する。これについては、以下でさらに詳細に説明する。天井材料で再充填された開口19は、フィルタ構造及び流体クロストークのバリアとして作用する。これらは、気泡がノズル室に入るのを防止するのに役立ち、熱アクチュエータ12によって発生した圧力パルスを拡散する。
【0189】
図26及び図27を参照すると、次の段階は、PECVDによって3ミクロンの天井材料20をSAC2フォトレジスト16に付着させる。天井材料20は、SAC2フォトレジスト16の開口17、18及び19を再充填し、天井21及び側壁22を有するノズル室24を形成する。インクを各ノズル室に供給するインク導管23も、天井材料20の付着中に形成される。また、プライミング形体及びフィルタ構造(図26及び図27では図示せず)があれば、それも同時に形成される。それぞれが個々のノズル室24に対応する天井21は、隣接するノズル室にまたがって列状に引き延ばされ、連続的なノズル板を形成する。天井材料20は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化酸化膜、窒化アルミなどの任意の適切な材料で構成してよい。
【0190】
図28から図30を参照すると、次の段階は、2ミクロンの天井材料20をエッチングで除去することによって、天井21の楕円形ノズル縁部25を画定する。このエッチングは、図28に示した暗い色調の縁部マスクによって露光したフォトレジスト(図示せず)の層を使用して画定される。楕円形縁部25は、個々の熱アクチュエータ12上に配置された2つの同軸縁部リップ25a及び25bを備える。
【0191】
図31から図33を参照すると、次の段階は、縁部25によって制限された残りの天井材料20を通して全てエッチングすることによって、天井21内に楕円形ノズル開口26を画定する。このエッチングは、図31に示した暗い色調の天井マスクによって露光したフォトレジスト(図示せず)の層を使用して画定される。楕円形ノズル開口26は、図33に示すように熱アクチュエータ12上に配置される。
【0192】
ここでMEMSノズル形体が十分に形成された状態で、次の段階は、Oプラズマ灰化(図34から図35)によってSAC1及びSAC2フォトレジスト層10及び16を除去する。灰化の後、熱アクチュエータ12はピット8上で1つの平面になって吊り下げられる。接触部28と加熱器要素29を同一面に付着させることにより、電極9と効率的に電気接続される。
【0193】
図36及び図37は、SAC1及びSAC2フォトレジスト層10及び16の灰化後のシリコンウェハ2の全厚さ(150ミクロン)を示す。
【0194】
図38から図40を参照すると、ウェハの前側MEMS処理が終了したら、標準的な異方性DRIEを使用して、ウェハの裏側からインク供給流路27をエッチングし、インク入口15と合わせる。この裏側エッチングは、図38で示した暗い色調のマスクによって露光されたフォトレジスト層(図示せず)を使用して画定される。インク供給流路27は、ウェハの裏側とインク入口15の間を流体接続する。
【0195】
最後に、図41及び図42を参照すると、裏側エッチングによってウェハを135ミクロンに薄くする。図43は、完成した印字ヘッド集積回路の切り取り斜視図で、隣接する3列のノズルを示す。ノズルの各列は、その長さに沿って延在し、各列の複数のインク入口15にインクを供給する個々のインク供給流路27を有する。インク入口は、各列のインク導管23にインクを供給し、各ノズル室は、その列の共通のインク導管からインクを受け取る。
【0196】
[特定の実施形態の特徴及び利点]
以下では、適切な小見出しで本発明の実施形態の特定の独特の特徴、及びこれらの特徴の利点について検討する。特徴は、内容が特に特定の図面を排除し、特に言及された図面に関連しない限り、本発明に関連する全ての図面に関連して考察される。
【0197】
低損失電極
図41及び図42に示すように、加熱器要素29は室内に吊り下げられる。これは、室のプライミング時に加熱器要素がインクに浸漬されることを保証する。加熱器要素をインクに完全に浸漬すると、印字ヘッドの効率が劇的に改善する。下にあるウェハ基板に散逸する熱が非常に少なくなり、したがってインクを排出する泡を発生させるために使用される入力エネルギが増加する。
【0198】
加熱器要素を吊り下げるために、接触部を使用して、要素を上昇した位置で支持する。基本的に、加熱器要素のいずれかの端部にある接触部は、CMOSドライブ上の個々の電極を上昇した位置で要素に接続するために、垂直又は傾斜した区間を有することができる。しかし、垂直又は傾斜表面に付着した加熱器材料は、水平表面上にある材料より薄い。薄くなった区間による望ましくない抵抗損を回避するために、熱アクチュエータの接触部分は比較的大きくする必要がある。大型化した接触部がウェハ表面の有意の区域を占有し、ノズルパッキング密度を制限する。
【0199】
加熱器を浸漬するために、本発明は、電極9間にピット又はトレンチ8をエッチングし、室の床のレベルを低下させる。以上で検討したように、犠牲フォトレジスト(SAC)層10(図9参照)は、トレンチ内に付着して、加熱器要素の足場を提供する。しかし、SAC10をトレンチ8に付着させ、単純にそれを加熱器材料の層で覆うと、(図7に関連して前述したように)SAC10とトレンチ8の側壁48の間のギャップ46にストリンガを形成することができる。ギャップが形成されるのは、マスクをトレンチ8の側部に正確に一致させることが困難だからである。通常、マスキングしたフォトレジストを露光すると、ピットの側部とSACの間にギャップ46が形成される。加熱器材料層を付着させる場合は、これらのギャップに再充填して、(知られているような)「ストリンガ」を形成する。ストリンガは、(加熱器要素を形成する)金属エッチング及び(最終的にSACを除去する)解放エッチングの後にトレンチ8内に残る。ストリンガは加熱器を短絡することがあり、したがって泡を生成することができない。
【0200】
次に図52及び図53を参照すると、ストリンガを防止する「伝統的な」技術が図示されている。SACを露光するUVマスクをトレンチ8よりわずかに大きくすることにより、SAC10が側壁48上に付着し、したがってギャップが形成されない。残念ながら、これはトレンチの頂部の周囲に隆起したリップ50を生成する。加熱器材料層11を付着させる場合(図53参照)、これはリップ50の垂直又は傾斜表面52上の方が薄くなる。金属エッチング及び解放エッチングの後、これらの薄いリップ構成52が残り、「ホットスポット」を引き起こす。というのは、局所的に薄くなると、抵抗が増加するからである。これらのホットスポットは、加熱器の動作に影響し、通常は加熱器の寿命を短縮する。
【0201】
以上で検討したように、本出願人は、SAC10のリフローがギャップ46を閉じ、したがって電極9間の足場が完全に平坦であることを発見した。これによって、熱アクチュエータ12の全体を平面にすることができる。熱アクチュエータの平面構造は、接触部がCMOS電極9及び吊り下げられた加熱器要素29に直接付着した状態で、垂直又は傾斜表面によって引き起こされるホットスポットを防止し、したがって接触部は、抵抗損をそれほど大きくせずに、はるかに小さい構造にすることができる。低い抵抗損は、吊り下げられた加熱器要素の効率的な動作を維持し、小さい接触部のサイズは、ノズルを印字ヘッド上に接近させてパッキングするために都合がよい。
【0202】
各室の複数のノズル
図49を参照すると、図示のユニットセルは2つの別個のインク室38を有し、各室は、接触部28の個々の対の間に延在する加熱器要素29を有する。インク透過性構造34がインク再充填開口内に配置され、したがってインクが室に入ることができるが、起動すると、構造34は、逆流又は流体クロストークが許容可能なレベルまで減少することに対する十分な水力学的抵抗を提供する。
【0203】
インクは、ウェハの裏側からインク入口15を通して供給される。プライミング形体18が入口開口内に延在し、したがってインクのメニスカスは開口の周縁にピン留めされず、インクの流れを停止しない。入口15からのインクは、ユニットセルの両方の室38に供給する横方向のインク導管23を再充填する。
【0204】
室毎に1つのノズルではなく、各室38が2つのノズル25を有する。加熱器要素29が起動する(泡を形成する)と、2滴のインクが、各ノズル25から1滴ずつ排出される。インクの個々の各滴は、室が1つのノズルしか有していない場合に排出される1つの滴より体積が小さい。1つの室から複数の滴を同時に排出すると、印字品質が改善される。
【0205】
ノズル毎に、排出される滴がある程度、誤配向される。誤配向の程度に応じて、これは印字品質にとって有害なことがある。室に複数のノズルを与えることにより、各ノズルが比較的小さい体積で、異なる誤配向を有する滴を排出する。異なる方向に誤配向された幾つかの小さい滴は、誤配向された1つの比較的大きい滴ほど印字品質にとって有害ではない。本出願人は、目が小さい各滴の誤配向を平均し、全体的誤配向が非常に低下した状態で、1つの滴からのドットを効果的に「見る」ことを発見した。
【0206】
多ノズル室は、ノズル1つの室よりも効果的に滴を排出することもできる。加熱器要素29は、吊り下げられた細長いTiAlNのビームであり、これが形成する泡は同様に細長くなる。細長い泡によって生成された圧力パルスは、中心に配置したノズルを通してインクを排出させる。しかし、圧力パルスからのエネルギの一部は、泡の幾何学的形状とノズルのそれとの間の不一致に伴う水力学的損失で散逸する。
【0207】
加熱器要素29の長さに沿って幾つかのノズル25を隔置すると、泡の形状と、排出されるインクが通るノズル構成との間の幾何学的不一致が減少する。これは、インク排出に対する水力学的抵抗を減少させ、それによって印字ヘッドの効率を改善する。
【0208】
楕円形ノズル
同様に、小滴排出に対する水力学的抵抗は、楕円形ノズルを使用することによって減少させることができる。図44に示すように、加熱器要素29によって発生する蒸気の泡は細長い。加熱器要素は、泡の核生成及び成長が同様に長さに沿って実質的に均一になるように、長さの大部分に沿って均一に加熱するように設計される。楕円形ノズル25を、その長軸が要素の中心線と平行であるように、加熱器要素29と中心を合わせた状態で、泡の幾何学的形状は、ノズルのそれにほぼ対応する。したがって、圧力パルスによって押されるインクは、ノズルを通して排出される前に、急な方向転換をせず、高い流体抵抗も発生しない。小滴の排出に必要な力が低下した状態で、印字ヘッドはさらに効率的になる。
【0209】
楕円形ノズルは、開口の面積が同等の円形ノズルより薄くもなる。したがって、隣接するノズル間の間隔が短くなる。これは、ノズルのピッチを上げ、したがって印字の解像度を改善するのに役立つ。
【0210】
隣接するインク室を介して再充填されるインク室
図46を参照すると、2つの対向するユニットセルが図示されている。この実施形態では、ユニットセルは4つのインク室38を有する。室は、側壁22及びインク透過性構造34によって画定される。各室は自身の加熱器要素29を有する。加熱器要素29は、直列に接続された対の状態で配置構成される。各対の間には、抵抗が低下及び/又はヒートシンク作用が増大した「低温スポット」54がある。これは、泡が低温スポット54で凝集しないことを保証し、したがって低温スポットが加熱器要素の各対の外側接触部28間の共通接触部になる。
【0211】
インク透過性構造34によって滴の排出後にインクで室38を再充填することができるが、各加熱器要素29からの圧力パルスを邪魔して、隣接する室間の流体クロストークを減少させることができる。この実施形態は、以上で検討した図49に示したものと平行な多くを有することが認識される。しかし、この実施形態は、図49の比較的長い室を2つの別個の室に効果的に分割する。これは加熱器要素29によって形成された泡の幾何学的形状を、ノズル25の形状と位置合わせし、滴の排出中の水力学的損失を減少させる。これは、ノズルの密度を低下させないで達成されるが、製造プロセスに多少の複雑さを加える。
【0212】
インクをアレイの各インク室に分配する導管(インク入口15及び供給導管23)は、ウェハ区域の有意の割合を占有することがある。これは、印字ヘッド上のノズル密度の制限要因になり得る。各室を流体クロストークから十分に解放しながら、幾つかのインク室を他のインク室へのインク流路の一部にすることによって、インク供給導管への失われるウェハ区域の量が減少する。
【0213】
複数のアクチュエータ及び個々のノズルがあるインク室
図54を参照すると、図示のユニットセルは2つの室38を有し、各室は2つの加熱器要素29及び2つのノズル25を有する。室毎に複数のノズルを使用することによって、滴の誤配向を効果的に減少させることについては、図49に示した実施形態に関して以上で検討した。1つの細長い室を、それぞれ自身のアクチュエータがある別個の室に分割することの追加の利点について、図46に示した実施形態に関して説明する。この実施形態は、各室の複数のノズル及び複数のアクチュエータを使用して、驚くほど複雑でない設計で、図46の実施形態の利点の多くを達成する。単純化した設計で、ユニットセルの全体的寸法が縮小し、それによってノズル密度を上げることができる。図示の実施形態では、ユニットセルの占有面積は長さ64μm、幅16μmである。
【0214】
インク透過性構造34は、図46の実施形態のような3つの隔置された円柱ではなく、各室38のインク再充填開口にある1つの円柱である。1つの円柱は、再充填流に対する抵抗は低下するが、起動圧力パルスによる突然の逆流に対しては抵抗が上がる断面輪郭を有する。各室の加熱器要素は両方とも、接触部28及び低温スポット形体54とともに同時に付着させることができる。両方の室38に、共通のインク入口15及び供給導管23からインクを供給する。これらの形体によって、占有面積を縮小することもでき、これについては以下でさらに詳細に検討する。プライミング形体18は、室の側壁22及び壁のインク導管23のうち一方と一体に作成されている。これらの形体は2つの目的を有する性質で、製造を単純化し、設計をコンパクトにするのに役立つ。
【0215】
駆動回路毎の複数の室及び複数のノズル
図54では、アクチュエータが直列に接続され、したがって同じ駆動信号で一緒に始動し、CMOS駆動回路を単純化する。図46のユニットセルでは、隣接するノズルのアクチュエータが同じ駆動回路内で直列に接続される。言うまでもなく、隣接する室内のアクチュエータも並列で接続することができる。対照的に、各室のアクチュエータが別個の回路になる場合、CMOS駆動回路はさらに複雑になり、ユニットセルの占有面積の寸法が増大する。複数の比較的小さい滴で置き換えることによって滴の誤配向に対応する印字ヘッドの設計では、幾つかのアクチュエータ及びその個々のノズルを組み合わせて共通の駆動回路内に入れると、印字ヘッドのIC製造とノズルの密度の両方に関して、効率的に実現される。
【0216】
高密度熱インクジェット印字ヘッド
ユニットセルの幅を減少させると、印字ヘッドは、以前はノズル密度を低下させる必要があったノズルパターンを有することができる。言うまでもなく、ノズル密度の低下は、印字ヘッドのサイズ及び/又は印字品質に対応する影響を及ぼす。
【0217】
伝統的に、ノズルの列は対に配置構成され、各列のアクチュエータが反対方向に延在している。列は、相互に対して互い違いになり、したがって印字解像度(1インチ当たりのドット数)は各列に沿ったノズルピッチ(1インチ毎のノズル数)の2倍である。ユニットの全幅が減少するように、ユニットセルの構成要素を構成することによって、印字解像度(d.p.i.)を犠牲にせずに、同じ数のノズルを対向する互い違いの2列ではなく1列に配置構成することができる。添付図面で図示した実施形態は、各直線列で1インチ(2.54cm)当たり1000を超えるノズルのノズルピッチを達成する。このノズルピッチで、印字ヘッドの印字解像度は、2つの対向する互い違いの列を考察した場合の写真(1600dpi)より良好であり、印字ヘッドの動作寿命が満足的なものであることを保証するノズルの冗長性、死んだノズルの補償などのために十分な容量がある。以上で検討したように、図54に示す実施形態は、16μmの幅である占有面積を有し、したがって1列に沿ったノズルピッチは1インチ(2.54cm)当たり約1600個のノズルである。したがって、2つの片寄った互い違いの列は、約3200d.p.i.の解像度を生成する。
【0218】
ユニットセルを狭くしたことに伴う特定の利点を認識して、本出願人は、印字ヘッド内の構造の関連する寸法を減少させる幾つかの形体の識別及び組合せに焦点を絞っている。例えば、楕円形ノズル、室からのインク入口のシフト、幾何学的論理の小型化、及び駆動FET(電界効果トランジスタ)の短縮は、図示の実施形態の幾つかを導き出すために本出願人が開発した特徴である。これに寄与する各特徴は、トランジスタの長さを短縮するために広く使用されている従来通りの5Vから2.5VにFET駆動電圧を低下させるなど、本技術分野の従来の知恵から逸脱することを必要とした。
【0219】
スティクションが減少した印字ヘッド表面
知られるようになった通りの静止摩擦、つまり「スティクション」は、埃の粒子をノズル板に「付着」させ、それによってノズルを詰まらせることができる。図50は、ノズル板56の一部を示す。明快さを期して、ノズル開口26及びノズル縁部25も図示されている。ノズル板の外面には、板の表面から短い距離だけ延在する円柱状突起58でパターンを形成する。ノズル板には、短い間隔の隆起、波形又はバンプなど、他の表面構成でパターンを形成することもできる。しかし、図示のパターンの円柱状突起にとって適切な紫外線マスクを生成することは容易であり、円柱を外面にエッチングすることは単純なことである。
【0220】
静止摩擦の共同作用を減少させることにより、紙の埃又は他の汚染物質がノズル板のノズルに詰まる可能性が低下する。ノズル板の外側に隆起した構成でパターンを形成すると、埃の粒子が接触する表面積が制限される。粒子が各構成の外端部にしか接触できない場合、粒子とノズル板との摩擦は最小になり、したがって付着する可能性は非常に低くなる。粒子が実際に付着すると、印字ヘッドの保守サイクルで除去される可能性が高くなる。
【0221】
入口のプライミング形体
図47を参照すると、相互に対して反対方向に延在する2つのユニットセルが図示されている。インク入口通路15が、横方向のインク導管23を介して4つの室38にインクを供給する。インク入口15などのミクロン規模の導管を通ってインクジェット印刷ヘッドの個々のMEMSノズルにインクを分配することは、マクロ規模の流れでは生じない要因によって複雑化する。メニスカスが形成され、開口の幾何学的形状に応じて、これが自身を開口のリップに非常に強力に「ピン留め」することがある。これは、捕捉した気泡は通気するがインクは保持する抽気孔などの印字ヘッドには有用であるが、一部の室へのインク流を停止する場合は、問題になることもある。これは、最初にインクで印字ヘッドにプライミングする場合に生じる可能性が最も高い。インクのメニスカスがインク入口開口にピン留めされた場合、その入口によって供給される室がプライミングされないままになる。
【0222】
これに対して保護するために、入口開口15の面を通って延在するように2つのプライミング形体18を形成する。プライミング形体18は、ノズル板(図示せず)の内部から入口15の周囲に延在する円柱である。各円柱18の一部は周の内側にあり、したがってインクを入口から引き出すように、インク入口におけるインクメニスカスの表面張力が、プライミング形体18に形成される。これは、メニスカスを周のその区間から「ピンを引き抜き」、インク室に向かう流れができるようにする。
【0223】
プライミング形体18は、開口の面を横切って延在する表面を呈する限り、多くの形態をとることができる。さらに、プライミング形体は、図54に示すような他のノズル形体の一体部品でよい。
【0224】
インク室の側部入口
図48を参照すると、幾つかの隣接するユニットセルが図示されている。この実施形態では、細長い加熱器要素29がインク分配導管23に平行に延在する。したがって、細長いインク室38は同様に、インク導管23と位置合わせされる。側壁開口60が室38をインク導管23に接続する。側部入口を有するようにインク室を構成すると、インク再充填時間が短縮される。入口が広くなり、したがって再充填流量が多くなる。側壁開口60は、流体クロストークを許容可能なレベルに維持するためにインク透過性構造34を有する。
【0225】
インク室の入口フィルタ
再び図47を参照すると、各室38へのインク再充填開口は、気泡又は他の汚染物質を捕捉するフィルタ構造40を有する。インク中の気泡及び固体汚染物質は、MEMSノズル構造にとって有害である。固体汚染物質は、明らかにノズル開口を詰まらせ、気泡は圧縮性が高いので、インク室内に捕捉されると、アクチュエータからの圧力パルスを吸収することがある。これは、影響を受けたノズルからのインクの排出を効果的に無能にする。開口を通る流れの方向を横切って延在する列状の障害の形態でフィルタ構造40を設け、流れの方向に対して隣接する列の障害と見当合わせされないように各列を隔置することによって、インクの再充填流量を過度に遅らせずに、汚染物質が室38に入る可能性が低下する。列は相互に対して片寄り、導入された乱流がノズル再充填率に及ぼす影響は最小限であるが、気泡又は他の汚染物質は比較的蛇行性の流路を辿り、障害40によって保持される可能性が高くなる。
【0226】
図示の実施形態は、ウェハ基板とノズル板の間に延在する円柱の形態の2列の障害40を使用する。
【0227】
多色インクジェット印字ヘッドの中間色表面バリア
次に図51を参照すると、上述した図46で示したようなユニットセルのノズル56の外面が図示されている。ノズル開口26は加熱器要素(図示せず)の真上に配置され、一連の縁部が直角のインク樋44がインク導管23の上のノズル板56内に形成される(図46参照)。
【0228】
インクジェットプリンタは、使用していない場合に印字ヘッドにキャップをする保守ステーションを有することが多い。ノズル板から余分なインクを除去するために、ノズル板の外面から剥ぎ取るように、キャッパを係合解除することができる。これは、キャッパ表面とノズル板の外面との間でメニスカスの形成を促進する。メニスカスの表面張力が表面と接触する角度に関する接触角の履歴(さらなる詳細については、参照により本明細書に組み込まれた本出願人の共願USSN(文書FND007US)参照)を使用して、ノズル板の外側を濡らすインクの大半を収集し、キャッパとノズル板の間のメニスカスによって引っ張ることができる。キャッパがノズル板から十分に係合解除するポイントに、インクを大きいビードとして都合よく付着させる。残念ながら、ノズル板に多少のインクが残る。印字ヘッドが多色印字ヘッドの場合、所与のノズル開口内又は開口の周囲に残った残留インクは、ノズルによって排出されるインクとは色が異なることがある。というのは、メニスカスがノズル板の表面全体にわたってインクを引っ張るからである。1つのノズルのインクを別のノズルからのインクで汚染すると、プリントに目に見えるアーチファクトを生じることがある。
【0229】
キャッパがノズル板から剥ぎ取られる方向を横切って延びる樋構成44は、メニスカス中のインクの一部を除去し、保持する。樋はメニスカスのインクを全部は収集しないが、異なる色のインクによるノズルの汚染レベルを大幅に低下させる。
【0230】
泡トラップ
インクに同伴する気泡は、印字ヘッドの動作にとって非常に有害である。空気又は一般的に気体は、圧縮性が高く、アクチュエータからの圧力パルスを吸収することができる。捕捉された泡が、アクチュエータに応答して単純に圧縮すると、ノズルからインクが排出されない。捕捉された泡は、インクの強制流で印字ヘッドからパージすることができるが、パージされたインクは吸い取る必要があり、強制流は新鮮な泡も導入することができる。
【0231】
図46に示す実施形態は、インク入口15に泡トラップを有する。トラップは、泡保持構造32、及び天井層に形成された通気口36によって形成される。泡保持構造は、入口15の周囲に隔置された一連の円柱32である。以上で検討したように、インクプライミング形体18は2つの目的を有し、泡保持構造の一部を都合よく形成する。使用時には、インク透過性トラップが気泡を通気口へと配向し、ここで大気へと通気する。泡をインク入口で捕捉し、小さい通気口へと配向することにより、インクを漏らさずにインク流から効果的に除去される。
【0232】
インク入口の複数の流路
ウェハの一方側から他方へと延在する導管を介してノズルにインクを供給すると、複雑なインク分配システムの代わりに、より多くの(インク排出側の)ウェハ区域がノズルを有することができる。しかし、ウェハを通って深くエッチングされたミクロン規模の穴は、汚染物質又は気泡で詰まりやすい。このせいで、影響を受けた入口から供給されるノズルが涸渇する。
【0233】
図48で最もよく図示されているように、本発明による印字ヘッドは、ノズル板とその下にあるウェハの間のインク導管23を介して各室38に供給する少なくとも2つのインク入口15を有する。
【0234】
幾つかの室38に供給し、それ自体が幾つかのインク入口15から供給されるインク導管23を導入すると、入口の詰まりによってノズルのインクが涸渇する可能性が低下する。1つの入口15が詰まると、インク導管はウェハの他の導管から引っ張るインクを多くする。
【0235】
小滴ステムアンカ
滴が分離する直前に排出されたインクを室内のインクに付着させる小滴ステムは、滴の誤配向を引き起こすことがある。図55から図59は、ノズルから滴を排出するプロセスの連続的な段階を示す。図55では、泡66の核を生成するために、加熱器要素29が迅速に加熱され、表面に密着しているインク64を気化する。これによってノズル開口26をまたぐインクのメニスカス68が外側に膨らみ始める。
【0236】
図56では、加熱器要素29が室38内のインク64をさらに気化するにつれ、泡66が成長し続ける。成長する泡からのこの圧力パルスは、インクのメニスカスをノズル開口26からさらに押し出す。図57では、泡66が成長し続け、排出されたインクが、相対的に厚い小滴ステム72によって室38内のインク64に接続された球70になり始める。
【0237】
図58では、ノズル開口26を通って雰囲気に吐き出される点まで、泡が成長している。これは、加熱器要素29のキャビテーション腐食を回避するために重要なメカニズムである。キャビテーション腐食は、加熱器要素表面上の1つの点の背後で泡が崩壊した時に生じる。泡が崩壊点の特異点に到達すると、表面張力が、加熱器材料を腐食し得る甚だしい水力学的力を生成する。泡を吐き出すことによって、加熱器要素上に崩壊点がなくなる。
【0238】
図58に示すように、泡を吐き出すと、小滴ステム72が、ノズル縁部上の点74に付着することができる。付着点74はノズル開口26の中心線76上にないので、表面積を減少させる表面張力の傾向のせいで、インクの球70が中心線から逸れる78。
【0239】
図59を参照すると、ステム52が最終的に破壊し、インク滴80が形成され、印字媒体までの軌跡に留まる。しかし、誤配向78は、従属滴82ばかりでなく、インクの滴80にも残る。吐き出された泡は、ノズル開口26に制限されるにつれて、インクを室内に引き込む助けとなる広がったインクのメニスカスになっている。
【0240】
図60から図67は、小滴ステムが付着する位置を能動的に特定する小滴ステムアンカを有するノズルの設計を示す。ステムが付着している位置を知ると、誤配向が減少する、又は場合によっては、全ノズルが同じ方向にほぼ同じ量だけ誤配向されるように、誤配向を制御する。しかし、小滴ステムアンカは、2次機能も実行することができ、次にこれについて以下で検討する。
【0241】
隣接するアクチュエータから排出されたインクを組み合わせる
図60及び図61を参照すると、図示のノズル設計は、1つの楕円形ノズル25を通してインクを排出する2つのアクチュエータ29を有する。アクチュエータは両方とも、同時に起動し、排出するために直列に接続された加熱器要素である。アクチュエータ29は両方とも、端部及び中央点で吊り下げられたTiAlNなどの加熱器材料のビーム1本の一部である。加熱器要素29は両方とも、電気抵抗が最大になるテーパ状区間86を有する。起動中に、その最大抵抗の区間又は「ホットスポット」86で、蒸気の泡ができ始める。
【0242】
両方の加熱器要素29を覆うインクは、スロット88によって接続されている。スロットは、加熱器要素が2つの別個のインク室になる程度まで、流体クロストークを減衰させるような寸法にすることができる、或いは両方の要素29が同じ室38内にあると考えられるほど十分に大きくなることができる。
【0243】
加熱器要素29は、各アクチュエータによって排出されたインクが、ステムによって付着した気泡を形成するにつれ、最も小さい表面積を占有しようとするインクの表面張力が、ノズル縁部25の他の点よりも優先的にステムをアンカに付着させるように、小滴ステムアンカ84に対して配置される。ホットスポット86がアンカ84の半径方向反対側にあるので、個々の小滴ステムに付着したインクの球が、相互に向かって誤配向される。最終的に、アンカの真上で遭遇し、対向する誤配向が相互に打ち消し合うか、少なくとも結果となる誤配向が非常に小さくなる。
【0244】
四重極起動
図62から図65は、四重極起動のノズルの幾つかの実施形態を示す。四重極起動は、2つの直交軸に対して対称であるインク室内の位置にて圧力パルスを開始する。パルスが室内で収束するにつれ、少なくとも理想的なケースでは、2つの軸での対称性がインクを、両方の軸に対して直角の方向にインクを押す。実際には、わずかな非対称性があるので、滴の方向が正確には直角でないことがあるが、通常は、室内の1点から圧力パルスが開始する場合より、はるかに近くなる。
【0245】
図62を参照すると、ユニットセルは、個々の室38内に2つのノズル25を示し、各々が四重極熱アクチュエータ12を有する。各アクチュエータ12の加熱器要素部分29は、ギリシャ文字の「シータ」に類似するように成形される。各アクチュエータは、接触部28間に2つの半円形電流路90を有する。中心棒94が、各電流路の中央点の間に延在する。シータ形構造全体が、室38内に吊り下げられ、ウェハ基板への熱の散逸を最小限に抑え、インクへの熱伝達を最大にする。
【0246】
中心棒94は、複数の目的に役立つ。第一に、加熱器要素に構造的剛性及び筋交いを提供する。これがない場合は、半円形の電流路の周期的加熱及び冷却が、図62のページを出入りする多少の座屈を引き起こすことになる。これは、室の床上で半円形を支持することによって、或いは各中央点で1カ所支持することによっても対応することができる。しかし、これは下にあるウェハ基板との接触を増加させ、したがって、熱の散逸を増加させる。中心棒94は、加熱器要素を室内で吊り下げたままで、座屈に対する抵抗を提供する。
【0247】
中心棒94は、各半円形の中央点に「冷点」92も提供する。棒の熱質量は小さいヒートシンクを提供し、したがって棒と半円形電流路との間の接合部が、泡核生成温度まで、接合部のいずれかの側の区間よりゆっくり加熱される。同様に、接触部28がヒートシンクとして作用し、したがって泡核生成は、接触部と中心棒94との接合部との間の円弧の中央に向けられる。これは、蒸気の泡がシータ形状上の4つの位置で核生成し、これらの位置が2つの直交軸に対して四重極対称であることを保証する。
【0248】
最後に、中心棒は、誤配向を追加的に制御する小滴ステムアンカも提供する。小滴ステムがノズル25上の点ではなく棒に付着した場合に、ノズル25の下にある中心棒94が、表面張力の面積を最小にするような位置にある場合、滴の軌跡は、ノズル開口26に対して直角に延在する中心軸にさらに密接に位置合わせされる。
【0249】
図63及び図64では、中心棒94は、小滴ステムの基部の位置を突き止めるためのラッチ点96を有する。ラッチ点は単純に、インクの表面張力が自身を「ピン留め」できる表面の凹凸である。中心棒94がノズル開口26の面に平行でない場合、又は泡核生成部位の位置に多少の非対称がある場合、小滴ステムは、中心棒94の中心をずれた部分にラッチ接続されることがある。中心棒94上の表面凹凸96は、小滴ステムの表面張力にひっかかり、それを棒の中央に係留する傾向がある。表面凹凸96は、図63に示すような断面の突然の減少、又は図64に示すようなボスでよい。いずれの場合も、小滴ステムは中心棒94の中央を起源とし、したがって滴の軌跡が誤配向されても、全て最小限に抑えられる。
二重棒、4つのキンク加熱器要素
図65は、別の四重極熱アクチュエータ12を示す。この場合も、接触部28間に延在する別個のビームによって提供された2つの電流路90を有する。明快さを期して、ユニットセルの他の形体は省略してある。
【0250】
ビーム90は、ウェハ基板への熱散逸を最小限に抑えるために、室38内に吊り下げられ、各ビームは、半径が大きい方の曲線96の間に半径が小さい2つの曲線、つまりキンク98を有する。この実施形態では、半径が小さいキンク98は、蒸気の泡が核生成するホットスポットとして作用する。これは、キンク98の周囲の電流の流れが、要素102の半径方向内側に向かって、及び外径100から離れて集中するからである。これは、局所的な断面の減少のように作用し、これらの点で抵抗が増加する。半径が大きい曲線96では、内縁と外縁の間の電流密度の差が、非常に小さくなり、したがって半径が小さいキンク98と比較して、抵抗の増加が小さくなる。
【0251】
半径が小さいキンク98は、曲げ抵抗が比較的低く、したがってページの面を出入りする座屈がない状態で、起動中のビーム90の縦方向の拡張に対応する。これによって、室38のホットスポットの位置が比較的安定し、それによって四重極対称が維持され、滴の誤配向が最小限に抑えられる。
【0252】
インク室入口の整流弁
図66に示すユニットセルは、各室38へのインク再充填開口104に整流弁106を有する。図示の特定の整流弁は、テスラ弁として知られている。整流弁は、室から流出するインクより、室38に流入するインクに対する水力学的抵抗が小さい。このことを利用して、インク再充填時間を(したがって印字時間を)遅らせずに、室38間の流体クロストークを減少させることができる。
【0253】
この実施例では、加熱器要素29は、接触部28間で室38内に吊り下げられた単純なビームである。同様に明快さを期して、ノズル縁部が省略されているが、これが加熱器要素29上で中心に配置されていることが、当業者には認識される。或いは、室38は、以上で検討したように各々幾つかのノズルを有することができる。
【0254】
室38には、横方向のインク導管23を介してインク入口15からインクが供給される。各再充填開口104にあるテスラ弁106は、1対のこれより小さい2次導管110の間に主要導管108を有する。インクが室38に流入する場合、導管自体の壁に対する流体抵抗以外は、主要導管108を通る流れに対する抵抗はほとんどない。2次導管110の上流の開口は流れに面せず、したがってこれに分岐する主要流れは少ない。下流の開口は、主要導管108からの流れに平行で、それに隣接する全ての流れを下流の開口に配向する。したがって、2次導管110は、室38に入るインクの流れにほとんど影響しない。
【0255】
起動すると、圧力パルスは、室38からのインクの逆流を生成し、横方向のインク導管23に戻すことができる。逆流は、圧力パルスからのエネルギを多少使用するので、滴の排出にとって有害である。逆流は、隣接する室の排出特性に影響を与える流体クロストークも生成する。
【0256】
テスラ弁106は、2次導管110からの流れを使用して逆流に抵抗し、主要導管108を通る流れを制限する。逆流中に、2次導管110の上流の開口は流れの方向に面している。いわば上流の開口は主要導管108に面している。圧力パルスは、強制的にインクを主要導管及び2次導管に沿って流すが、2次導管110の下流の開口は、そのインクの流れを流れの主要方向を横切るように配向し、これを阻止する。これらの制限流は、主要導管108内に乱流及び水力学的制限を生成する。したがって、主要導管108及び2次導管110を通る逆流が抑制される。逆流に対する抵抗が大きい状態で、圧力パルスの大きい方の部分を使用し、ノズルを通してインク滴を排出し、流体クロストークを減少させる。
【0257】
制御された滴の誤配向
図67は、制御された滴の誤配向があるノズルの略斜視図である。これは、以上で検討したような滴の誤配向を最小限に抑えるものとは異なるアプローチである。アレイの各ノズルから排出される滴を制御された量だけ意図的に誤配向することにより、印刷された像は、(ノズルアレイからわずかに片寄っていても)滴の誤配向を最小限にした印字ヘッドからのものと同等になる。
【0258】
滴の誤配向を最小限に抑える場合と同様に、このアプローチは、小滴ステムがノズル縁部25又は加熱器要素29の他のいずれの点よりも優先的に付着するように配置された小滴ステムアンカ74を使用する。しかし、滴が小滴ステムアンカの周囲に対称で形成できないノズルの設計では、滴の軌跡がノズル開口の面に直角ではなく、アレイの他の全てのノズルと同じ大きさ及び方向である既知の誤配向を引き起こす点に、アンカを配置することができる。
【0259】
図67に示す実施形態は、ノズル縁部25の側部からノズル開口26内に延在する横方向の突堤112の端部に、小滴ステムアンカを提供する。このノズルは、吊り下げられた単純なビーム加熱器要素29を使用し、これは、シータ加熱器(以上で説明)よりも付着及びエッチングが容易であるが、それでも小滴ステムアンカで滴の誤配向を制御する。突堤112は、通常の軌跡から滴を逸らせる障害であることが認識される。しかし、ノズルアレイの全突堤が平行で、加熱器要素に対して同じ位置を有する場合、アレイ全体での誤配向は均一になる。
【0260】
以上では本発明を特定の実施形態に関して説明しているが、本発明は多くの他の形態で実現できることが当業者には理解される。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】本発明による印字ヘッド上のMEMSノズルアレイの部分的に製造したユニットセルを示す図であり、ユニットセルは図3のA−Aに沿った断面である。
【図2】図1の部分的に製造したユニットセルの斜視図である。
【図3】加熱器要素のトレンチのエッチングに伴うマークを示す図である。
【図4】トレンチのエッチング後のユニットセルの断面図である。
【図5】図4に示したユニットセルの斜視図である。
【図6】図7に示した犠牲フォトレジストの付着に伴うマスクを示す図である。
【図7】犠牲フォトレジストのトレンチを付着した後のユニットセルを、犠牲材料の縁部とトレンチの側壁との間のギャップを部分的に拡大して示す図である。
【図8】図7に示したユニットセルの斜視図である。
【図9】トレンチの側壁に沿ってギャップを閉じるために犠牲フォトレジストがリフローした後のユニットセルを示す図である。
【図10】図9に示したユニットセルの斜視図である。
【図11】加熱器材料層の付着を示す断面図である。
【図12】図11に示したユニットセルの斜視図である。
【図13】図14に示した加熱器材料の金属エッチングに伴うマスクを示す図である。
【図14】加熱器アクチュエータを成形する金属エッチングを示す断面図である。
【図15】図14に示したユニットセルの斜視図である。
【図16】図17に示すエッチングに伴うマスクを示す図である。
【図17】フォトレジスト層の付着と、その後のCMOS駆動層の頂部にある不活性化層へのインク入口のエッチングを示す図である。
【図18】図17に示したユニットセルの斜視図である。
【図19】不活性化層及びCMOS層を通して下にあるシリコンウェハまでの酸化エッチングを示す図である。
【図20】図19に示したユニットセルの斜視図である。
【図21】インク入口のシリコンウェハへの深い異方性エッチングを示す図である。
【図22】図21に示したユニットセルの斜視図である。
【図23】図24に示すフォトレジストエッチングに伴うマスクを示す図である。
【図24】室の天井及び側壁の開口を形成するフォトレジストエッチングを示す図である。
【図25】図24に示したユニットセルの斜視図である。
【図26】側壁及びリスク材料の付着を示す図である。
【図27】図26に示したユニットセルの斜視図である。
【図28】図29に示すノズル縁部エッチングに伴うマスクを示す図である。
【図29】ノズル開口の縁部を形成する天井層のエッチングを示す図である。
【図30】図29に示したユニットセルの斜視図である。
【図31】図32に示すノズル開口エッチングに伴うマスクを示す図である。
【図32】楕円形ノズル開口を形成する天井材料のエッチングを示す図である。
【図33】図32に示したユニットセルの斜視図である。
【図34】第1及び第2犠牲層の酸素プラズマリリースエッチングを示す図である。
【図35】図34に示したユニットセルの斜視図である。
【図36】リリースエッチング後のユニットセル、さらにウェハの対向する側部を示す図である。
【図37】図36に示したユニットセルの斜視図である。
【図38】図39に示す逆エッチングに伴うマスクを示す図である。
【図39】インク供給流路のウェハへの逆エッチングを示す図である。
【図40】図39に示したユニットセルの斜視図である。
【図41】裏面エッチングによってウェハを薄くすることを示す図である。
【図42】図41に示したユニットセルの斜視図である。
【図43】本発明による印刷ヘッド上にあるアレイ状のノズルの部分斜視図である。
【図44】ユニットセルの平面図を示す図である。
【図45】図44に示したユニットセルの斜視図である。
【図46】天井層は除去されているが、特定の天井層形体が輪郭線のみで図示されている2つのユニットセルの略平面図である。
【図47】天井層は除去されているが、ノズル開口が輪郭線のみで図示されている2つのユニットセルの略平面図である。
【図48】室の側壁にインク入口開口があるユニットセルの部分略平面図である。
【図49】天井層は除去されているが、ノズル開口が輪郭線のみで図示されているユニットセルの略平面図である。
【図50】スティクションを減少させる構成、及び紙の埃の粒子があるノズル板の部分平面図である。
【図51】残留インク樋があるノズル板の部分平面図である。
【図52】ストリンガを回避するために使用される先行技術によるSACIフォトレジストの付着を示す部分断面図である。
【図53】図52で付着したSACIフォトレジスト足場への加熱器材料の層の付着を示す部分断面図である。
【図54】各室内に複数のノズル及びアクチュエータがあるユニットセルの部分略平面図である。
【図55】滴を排出する段階の、図44に示したインク室の略断面図である。
【図56】滴を排出する段階の、図44に示したインク室の略断面図である。
【図57】滴を排出する段階の、図44に示したインク室の略断面図である。
【図58】滴を排出する段階の、図44に示したインク室の略断面図である。
【図59】滴を排出する段階の、図44に示したインク室の略断面図である。
【図60】図61に示す通りの小滴ステムアンカを有するノズルの略斜視図である。
【図61】小滴ステムアンカが中心に配置されたノズル開口の平面図である。
【図62】天井層を除去し、単純な「シータ」加熱器要素を示すユニットセルの略平面図である。
【図63】小滴ステムの位置を特定するために横木上で断面が突然減少するシータ加熱器要素を示す図である。
【図64】小滴ステムの位置を特定するために横木上で断面に構成があるシータ加熱器要素を示す図である。
【図65】二重棒、4つのキンク加熱器要素を示す図である。
【図66】室の入口を通るインクの流れを整流するテスラ弁を有するユニットセルの略平面図である。
【図67】制御された滴の誤配向のためにノズル開口内に延在する突堤を有するノズルの略斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状のインク室であって、各々のインク室が、ノズルと、前記ノズルを通してインクを排出する細長いアクチュエータとを有する当該アレイ状のインク室を備え、
前記ノズルは、該ノズルの長手方向が前記細長いアクチュエータの長手方向と位置合わせされた細長い形状を有する、
インクジェット印字ヘッド。
【請求項2】
前記ノズルが楕円形である、請求項1に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項3】
前記アクチュエータが、前記ノズルを通して排出するために蒸気の泡を発生する細長い加熱器要素を持つ熱アクチュエータである、請求項1に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項4】
前記アレイの各インク室が、前記細長いアクチュエータと位置合わせされた複数の細長いノズルを有する、請求項1に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項5】
前記アレイの各インク室が、複数の細長いアクチュエータとそれぞれ対応する複数の細長いノズルを有する、請求項1に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項6】
前記インクジェット印字ヘッドは、さらに、各アクチュエータにそれぞれ1対の電極を介してアクチュエータ駆動信号を提供する駆動回路を備え、
前記アクチュエータは、各々が前記電極の対上の2つの接触部間に延在する細長い加熱器要素を有する熱アクチュエータであり、前記熱アクチュエータが全て一体の平面構造である、請求項1に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項7】
前記駆動回路にエッチングされたトレンチが、前記電極間に延在する、請求項6に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項8】
前記インク室がそれぞれ複数のノズルを有し、使用中に、
前記アクチュエータが前記インク室の前記ノズル全部を通して同時にインクを排出する、請求項1に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項9】
前記インク室がそれぞれ2つのノズルを有する、請求項8に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項10】
各インク室の前記ノズルが、前記加熱器要素の長さに平行な線に配置され、前記ノズルの中心軸が前記加熱器要素に沿って規則的に隔置される、請求項8に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項11】
前記ノズルが楕円形である、請求項8に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項12】
楕円形の前記ノズルの長軸が位置合わせされる、請求項11に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項13】
前記駆動回路が、前記熱アクチュエータ毎に駆動電界効果トランジスタ(FET)を有し、前記駆動FETの駆動電圧は5ボルト未満である、請求項5に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項14】
前記駆動FETの駆動電圧が2.5ボルトである、請求項13に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項15】
前記インクジェット印字ヘッドは、さらに、前記ノズル板とその下のウェハとの間にあるインク導管を備え、
前記インク導管が、複数の前記インク室の前記開口と流体連絡する、請求項3に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項16】
前記インクジェット印字ヘッドは、さらに、前記ウェハ基板内に画定された複数のインク入口を備え、
前記インク導管がそれぞれ、前記インク室に供給するインクを受け取るために、インク入口の少なくとも1つと流体連絡する、請求項15に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項17】
前記インク導管がそれぞれ、前記インク入口の2つと流体連絡する、請求項16に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項18】
前記インク入口がそれぞれ、インク透過性トラップと、自身の全体にわたってインクのメニスカスの表面張力がインクの漏れを防止するようなサイズにされた通気口と、を有し、使用中は、
前記インク透過性トラップが気泡を前記通気口へと配向し、そこで大気へと排出する、請求項15に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項19】
前記インク室は、前記側壁の2つが他に対して長いような細長い形状を有し、前記インクで前記インク室を再充填できるようにする前記開口が、前記長い側壁の1つにある、請求項15に記載のインクジェット印字ヘッド。
【請求項20】
前記ノズルは、前記ノズルの中心が同一線上にあり、各列に沿った前記ノズルのピッチが1インチ(2.54cm)当たりノズル1000個を超えるように、列状に配置構成される、請求項1に記載のインクジェット印字ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【公表番号】特表2009−511294(P2009−511294A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534809(P2008−534809)
【出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001564
【国際公開番号】WO2007/041747
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】