説明

細隙灯顕微鏡

【課題】蛍光観察と他の観察との切り替えが容易であり、また、バリアフィルタの汚損から保護することができる細隙灯顕微鏡を提供する。
【解決手段】細隙灯顕微鏡1は、被検眼2aを拡大する対物顕微鏡部20と、対物顕微鏡部20からの観察光が導かれ被検眼2aを観察するための双眼部41と、対物顕微鏡部20と双眼部41との間に設けられた中間部ケース部31と、中間部ケース部31に収容され、観察位置と退避位置との間で移動可能に設けられた蛍光観察用のバリアフィルタ33aと、バリアフィルタ33aを移動するために操作するフィルタ操作ノブ35と、中間部ケース部31に収容され、フィルタ操作ノブ35の操作に応じて、バリアフィルタ33aを観察位置と退避位置との間で移動をするフィルタ移動部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼をスリット光で照射して観察を行う細隙灯顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼をスリット光で照明して、観察を行うスリットランプ(細隙灯顕微鏡)があった(例えば特許文献1)。従来のスリットランプを利用して、例えばコンタクトレンズ装着時の観察へと切り替える場合には、観察者は、その都度、蛍光観察用のバリアフィルタを取り付ける必要があった。
しかし、眼科医療の現場では、蛍光観察と他の観察との切り替えが頻繁に行われており、観察者は、バリアフィルタの着脱作業に煩わしさを感じる場合があった。また、バリアフィルタは、着脱時にゴミが付着したり傷をつけてしまう等、汚損してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−224036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、蛍光観察と他の観察との切り替えが容易であり、また、バリアフィルタの汚損から保護することができる細隙灯顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0006】
第1の発明は、左右一対の光学系を有し、被検眼(2a)を拡大する拡大部(20)と、前記拡大部からの観察光が導かれる左右一対の光学系を有し、観察者(3)が被検眼を観察するための双眼観察部(41)と、前記拡大部と前記双眼観察部との間に設けられたケース部(31)と、前記ケース部に収容され、観察光路内に配置された観察位置と、前記観察位置から前記観察光の光軸とは直交する方向に移動した位置であり前記観察光路から退避した退避位置との間で移動可能に設けられた蛍光観察用のバリアフィルタ(33a)と、前記バリアフィルタを移動するために操作するフィルタ操作部(35)と、前記ケース部に収容され、前記フィルタ操作部の操作に応じて、前記バリアフィルタを前記観察位置と前記退避位置との間で移動をするフィルタ移動部(34)と、を備える細隙灯顕微鏡である。
第2の発明は、第1の発明の細隙灯顕微鏡において、前記拡大部(20)は、内斜系実体の左右一対の光学系を有し、前記バリアフィルタ(33a)は、前記拡大部の前記左右一対の光学系にそれぞれ設けられた板状の部材であり、その各表面が前記各光学系の光軸(O1,O2)に直交するように配置され、前記フィルタ移動部(34)の前記バリアフィルタの移動方向が鉛直方向(Z)であること、を特徴とする細隙灯顕微鏡である。
第3の発明は、第1又は第2の発明の細隙灯顕微鏡において、前記バリアフィルタ(33a)と一体で移動し、前記バリアフィルタが前記退避位置にある状態で前記観察光路内に配置され、前記バリアフィルタが前記退避位置にある状態の観察光路長と、前記バリアフィルタが前記観察位置にある状態の観察光路長とが等しくなるように補正する光路長補正部材(33b)を備えること、を特徴とする細隙灯顕微鏡である。
第4の発明は、第1から第3までのいずれかの発明の細隙灯顕微鏡において、前記拡大部(20)は、変倍光学系を有し、前記ケース部(31)内に観察方向に平行に延在するように配置され、前記変倍光学系の倍率を変更する駆動力を伝達する駆動力伝達部(25)と、前記バリアフィルタ(33a)を移動可能に保持し、前記移動をする過程で前記駆動力伝達部との干渉を防止する切り欠き(33e)を有するバリアフィルタ保持枠(33c)とを備えること、を特徴とする細隙灯顕微鏡である。
第5の発明は、第1から第4までのいずれかの発明の細隙灯顕微鏡において、撮像部(40)と、前記ケース部(31)に収容され、前記拡大部(20)の観察光の少なくとも一部を前記撮像部の方向に屈曲させる屈曲位置と、前記拡大部からの観察光を前記双眼観察部(41)へと透過させる透過位置との間で移動可能に設けられ、その移動方向が前記バリアフィルタ(33a)の移動方向と同じ鉛直方向Zである屈曲部(36a)とを備え、前記バリアフィルタは、前記拡大部と前記屈曲部との間に設けられた間隙に配置されていること、を特徴とする細隙灯顕微鏡である。
第6の発明は、第5の発明の細隙灯顕微鏡において、前記屈曲部(36a)を移動するために操作する屈曲操作部(36h)と、前記ケース部(31)に収容され、前記屈曲操作部の操作に応じて、前記屈曲部を前記屈曲位置と前記透過位置との間で移動をする屈曲部移動部(36g)とを備え、前記フィルタ移動部(34)及び前記屈曲部移動部は、前記ケース部の左右方向(X)の両端部であって左右対称の範囲に収容され、前記フィルタ操作部(35)及び前記屈曲操作部は、前記ケース部の左右方向の側面のうち前記フィルタ移動部及び前記屈曲部移動部に対応する側であって、左右対称の範囲に配置されていること、を特徴とする細隙灯顕微鏡である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、バリアフィルタをケース部に収容し、バリアフィルタをケース部に収容した状態で移動できるのでバリアフィルタを汚損することがない。また、フィルタ操作部の操作に応じて、バリアフィルタを観察位置と退避位置との間で移動するので、通常の観察と蛍光観察との切り替えを容易に行うことができる。さらに、アタッチメント等を着脱する必要がないので、通常の観察及び蛍光観察を連続して行うことができ、被検者に色々な検査をしていると思わせたりすることがないので、被検者を不安にさせることがない。
(2)本発明は、拡大部が内斜系実体の光学系であり、バリアフィルタの移動方向が鉛直方向つまり左右の光学系にともに直交する方向であるので、拡大部が内斜系実体の光学系であっても、バリアフィルタを観察位置と退避位置との間で移動することができる。
【0008】
(3)本発明は、光路長補正部材を備えるので、バリアフィルタが観察位置と退避位置とに配置された場合の光路長を等しくし、精度のよい観察をすることができる。
(4)本発明は、バリアフィルタ保持枠が変倍光学系の駆動力伝達部との干渉を防止する切り欠きを有するので、操作部をバリアフィルタよりも観察方向後側に配置して、バリアフィルタよりも観察方向後側から変倍光学系に駆動力を伝達することができる。これにより、観察者は、バリアフィルタよりも観察方向前側に手を伸ばさなくても、変倍操作をすることができる。このように、本発明は、バリアフィルタを設けた場合であっても、変倍操作を容易に行うことができる。
【0009】
(5)本発明は、拡大部と屈曲部との間に間隙を設け、この間隙にバリアフィルタを配置し、屈曲部及びバリアフィルタの移動方向を同じにするので、装置を大型にすることがなく、また、屈曲部及びバリアフィルタが干渉することなく、観察光の光路内に互いに自由に配置、退避させることができる。
(6)本発明は、フィルタ移動部及び屈曲部移動部をケース内に左右対称に配置することにより、各移動部をバランスよく配置できるので、この装置の重さの左右バランスをよくすることができ、またケース部が大型になることがない。さらに、フィルタ操作部及び屈曲操作部は、左右方向の側面の左右対称の範囲に配置されているので、観察者は、これらの位置を感覚的に把握しやすく、操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の細隙灯顕微鏡1の側面図である。
【図2】本実施形態の本体部10の右側光学系の光軸断面を示す側面図である。
【図3】本実施形態の本体部10の断面を含む上面図である。
【図4】本実施形態の本体部10の一部の分解斜視図である。
【図5】本実施形態の右側面及び左側面を表す斜視図である。
【図6】本実施形態のフィルタ保持枠33cの移動動作を模式的に説明する右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の細隙灯顕微鏡(眼医療用スリットランプ)1の側面図である。
なお、以下の細隙灯顕微鏡1の説明及び図面において、図1の紙面に直交する方向を左右方向X、図1の左右方向を観察方向Y、図1の上下方向を鉛直方向Zとして説明する。
細隙灯顕微鏡1は、基台4と、被検眼固定部5と、滑動台6と、支持アーム7と、照明部8と、本体部10とを備えている。
基台4は、細隙灯顕微鏡1のベースとなる部材である。
被検眼固定部5は、被検者2の顔を固定するための部分であり、被検者2の顎受け5aと、額当て5b等とを備えている。
滑動台6は、基台4に対して左右方向Xに移動可能に設けられている。
支持アーム7は、照明部8及び本体部10を支持するアーム部材である。支持アーム7は、滑動台6に設けられている。支持アーム7は、照明部8及び本体部10を、被検眼2aをほぼ中心として鉛直方向Zの軸Z3回りに回転可能に支持する。
【0012】
照明部8及び本体部10は、滑動台6及び支持アーム7によって、左右方向Xに移動可能にかつ鉛直方向Zの軸Z3回りに回転可能に支持される。照明部8及び本体部10の移動及び回転は、例えば、被検眼2aを左眼から右眼へと変更する場合等に行われる。
照明部8は、照明光を被検眼2aに照射する装置である。
【0013】
本体部10について、以下説明する。
図2は、本実施形態の本体部10の右側光学系の光軸断面を示す側面図である。
図3は、本実施形態の本体部10の断面を含む上面図である。
図4は、本実施形態の本体部10の一部の分解斜視図である。
図5は、本実施形態の右側面及び左側面を表す斜視図である。
本体部10は、対物顕微鏡部20(拡大部)と、中間部30と、撮像部40と、双眼部41(双眼観察部)とを備えている。
【0014】
図2に示すように、対物顕微鏡部20、中間部30及び双眼部41は、被検眼2a側からこの順番で配置される。対物顕微鏡部20に入射した観察光は、中間部30を通過して双眼部41によって正立され観察眼3cに導かれたり、中間部30から撮像部40の方向つまり上側Z2に導かれる。
図3に示すように、この光学系は、左右一対の光学系によって構成される内斜系実体の光学系である。左側光学系の光軸O1と右側光学系の光軸O2がなす角θ1は、被検眼2aと観察部41aとの距離等によって定められており、例えば12度程度である(図3参照)。
なお、右側光学系と、左側光学系とは、ビームスプリッタ部36(後述する)の構成や、撮像部40の有無等が相違し、その他の部分は、ほぼ左右対称の光学系である。以下、右側光学系について、主に説明する。
【0015】
図2に示すように、対物顕微鏡部20は、被検眼2aを拡大する光学系を有している。対物顕微鏡部20は、対物部ケース部21と、対物部シャーシ22と、第1群23a、第2群23b及び第3群23cから構成される光学系と、変倍軸25(駆動力伝達部)とを備えている。
対物部ケース部21は、対物顕微鏡部20の筐体である。
対物部シャーシ22は、対物顕微鏡部20の基礎となるシャーシ部材である。
【0016】
第1群23a、第2群23b及び第3群23cは、被検眼2a側からこの順番で配置されている。第1群23a、第2群23b及び第3群23cは、対物部シャーシ22に固定されたレンズ鏡筒24に収容されている。第1群23a、第2群23b及び第3群23cは、変倍光学系であり、第2群23bが光軸O2に沿って駆動されることによって、倍率が変更可能である。
変倍軸25は、第2群23bを移動して、変倍光学系の倍率を変更する駆動力を伝達するための軸体である。変倍軸25は、対物顕微鏡部20の対物部ケース部21及び中間部30の中間部ケース部31(後述する)内に、観察方向Yに平行に延在するように配置されている。変倍軸25は、観察方向Yの軸回りに回転可能に保持されている。変倍軸25は、第2群レンズ枠26に噛み合うねじ部が、外周に設けられている。変倍軸25は、回転されることにより、送りねじのようにして、第2群23b及び第2群レンズ枠26を移動する。なお、変倍軸25は、左右の光学系の第2群を一体で移動する。
【0017】
中間部30は、対物顕微鏡部20と双眼部41との間の部分である。
図2〜図4に示すように、中間部30は、中間部ケース部31と、中間部シャーシ32と、バリアフィルタ部33と、ビームスプリッタ部36と、変倍軸回転部39と、変倍操作部39dとを備えている。
図2に示すように、中間部ケース部31は、中間部30の筐体である。
中間部シャーシ32は、中間部30の基礎となるシャーシ部材である。
【0018】
図4に示すように、バリアフィルタ部33は、バリアフィルタ33aと、光路長補正フィルタ33b(光路長補正部材)と、フィルタ保持枠33cと、ガイド軸33fと、フィルタ移動部34と、フィルタ操作ノブ35(フィルタ操作部)とを備えている。
図2に示すように、バリアフィルタ33aは、被検眼2aを蛍光観察する場合に用いられる蛍光観察用のフィルタである。バリアフィルタ33aは、第3群23cの後端のレンズから、ビームスプリッタ部36との間に設けられている。バリアフィルタ33aは、対物顕微鏡部20の左右一対の光学系にそれぞれ設けられている(図4参照)。
バリアフィルタ33aは、蛍光観察時には、観察光路内の観察位置に配置される。一方、バリアフィルタ33aは、通常の可視光等の観察時には、観察光の光軸O1,O2とはそれぞれ直交する方向(つまり下側Z1)に移動して、観察光路から退避した退避位置に配置される。バリアフィルタ33aは、これら観察位置と退避位置との間で移動可能に設けられている。バリアフィルタ33aは、観察位置において、その各表面が各光学系の光軸O1,O2に直交するように配置される。
【0019】
光路長補正フィルタ33bは、透明なフィルタである。光路長補正フィルタ33bは、バリアフィルタ33aが退避位置にある状態で観察光路内に配置される。これにより、光路長補正フィルタ33bは、バリアフィルタ33aが退避位置にある状態の観察光路長と、バリアフィルタ33aが観察位置にある状態の観察光路長とが等しくなるように補正する。
【0020】
図4に示すように、フィルタ保持枠33cは、バリアフィルタ33a及び光路長補正フィルタ33bを、鉛直方向Zに一体で移動可能に保持する枠体である。
フィルタ保持枠33cは、バリアフィルタ33a及び光路長補正フィルタ33bを、取り付け板33dで挟みこむようにして保持する。フィルタ保持枠33cは、移動する過程で変倍軸25との干渉を防止する切り欠き33eを有する。つまり、この切り欠き33eは、フィルタ保持枠33cが移動範囲の最下端に移動した場合に、変倍軸25を逃げるようになっている。
【0021】
ガイド軸33fは、フィルタ保持枠33cを鉛直方向Zに移動可能に支持し、ガイドする部材である。ガイド軸33fは、中間部ケース部31内の左側X1及び右側X2に、軸方向が鉛直方向Zになるように配置されている。ガイド軸33fは、フィルタ保持枠33cの左側X1及び右側X2に設けられたガイド溝及びガイド孔に係合して、フィルタ保持枠33cを支持、ガイドする。
【0022】
フィルタ移動部34は、中間部ケース部31の右側X2の範囲に収容され、フィルタ保持枠33cを鉛直方向Zに移動するための移動機構である。
フィルタ移動部34は、アーム部34aを備えている。
アーム部34aは、左右方向Xの回転軸34c回りに回転可能に支持されている。アーム部34aは、一端にフィルタ保持枠33cの突起33gに係合する切り欠き34bを有しており、他の一端にフィルタ操作ノブ35が設けられている。
フィルタ操作ノブ35は、観察者3がフィルタ保持枠33cを鉛直方向Zに移動するために操作する操作部材である。フィルタ操作ノブ35は、中心軸がアーム部34aの回転軸34cと同軸になるように配置されている。フィルタ操作ノブ35は、回転操作されることによって、アーム部34aを回転軸34c回りに回転する。
【0023】
図2〜図5に示すように、ビームスプリッタ部36は、ビームスプリッタ36a(屈曲部)と、透過部材36dと、スプリッタ保持枠36eと、ガイド軸36fと、スプリッタ移動部36g(屈曲部移動部)と、スプリッタ操作ノブ36h(屈曲部操作部)とを備えている。
図2に示すように、ビームスプリッタ36aは、右側光学系の光路上に配置される。ビームスプリッタ36aは、鉛直方向Zに移動可能に中間部ケース部31内に収容される。ビームスプリッタ36aは、鉛直方向Zに細長い四角柱状の部材である。ビームスプリッタ36aは、1つの側面が観察光の光軸O2に直行するように配置される。
ビームスプリッタ36aは、上側Z2の透明部36bが観察光を透過させ、一方、下側Z1のスプリッタ部36cが対物顕微鏡部20からの光線を分割するようになっている。ビームスプリッタ36aは、下側Z1に透過位置に配置された状態(図2に実線で示す状態)で、透明部36bが観察光路内に配置され、観察光の全てを双眼部41の方向に導く。一方、ビームスプリッタ36aは、上側Z2の屈曲位置に配置された状態(図2に点線で示す状態)で、スプリッタ部36cが観察光を分割して、一部の観察光を撮像部40の方向に屈曲させ、他の観察光を双眼部41の方向に導く。
【0024】
図3に示すように、透過部材36dは、ビームスプリッタ36aと同様な材料により形成され、左側光学系の光路上に配置される。透過部材36dは、ビームスプリッタ36aを有する右側X2の光学系と、左側X1の光学系の光路長とが等しくなるように補正する部材である。透過部材36dは、ビームスプリッタ36aとほぼ同一の外形を有する透明な角柱である。透過部材36dは、ビームスプリッタ36aと一体で、鉛直方向Zに移動可能に中間部ケース部31内に収容される。透過部材36dは、一部材により形成されており、スプリッタ部を有さず、全ての観察光を透過させて双眼部41に導くようになっている。
【0025】
スプリッタ保持枠36eは、ビームスプリッタ36a及び透過部材36dを、フィルタ移動部34の移動方向と同じく鉛直方向Zに一体で移動可能に保持する枠体である。
ガイド軸36fは、ガイド軸33fと同様な部材であり、スプリッタ保持枠36eを鉛直方向Zに移動可能に支持しガイドする。
スプリッタ移動部36gは、フィルタ移動部34と同様な構成によって、スプリッタ保持枠36eを鉛直方向Zに移動するための移動機構である(詳細な説明は、省略する)。スプリッタ移動部36gは、中間部ケース部31の左側X1の範囲に収容される。
【0026】
スプリッタ移動部36gと、フィルタ移動部34とは、中間部ケース部31の左右方向Xの両端部であって左右対称の範囲に収容される。
これによって、本体部10は、同様な構造であるフィルタ移動部34及びスプリッタ移動部36gを、ケース内にバランスよく配置できる。このため、本体部10は、片側だけ大きくなったりすることがなく、また、左右方向Xの重量バランスをよくすることができるので、支持アーム7(図1参照)に無理な力が加わったりすることを防止することができる。
【0027】
図5に示すように、スプリッタ操作ノブ36hは、観察者3がスプリッタ保持枠36eを鉛直方向Zに移動するために操作する操作部材である。スプリッタ操作ノブ36hは、フィルタ操作ノブ35と同様な構成によって、スプリッタ保持枠36eを移動する。
【0028】
スプリッタ操作ノブ36hは、中間部ケース部31の左側X1の側面のうち、フィルタ操作ノブ35の左右対称の範囲に配置されている。
つまり、フィルタ操作ノブ35及びスプリッタ操作ノブ36hは、中間部ケース部31の左右方向Xの側面に、左右対称に配置されている。これによって、観察者3は、これらの位置を感覚的に把握しやすく、操作性を向上することができる。
【0029】
図4に示すように、変倍軸回転部39は、変倍操作部39dの回転力を変倍軸25に伝達して、変倍軸25を回転させる機構である。変倍軸回転部39は、軸体39aと、ホイール39cとを備えている。
軸体39aは、軸方向が左右方向Xになるように配置されており、中心軸回りに回転可能に中間部ケース部31に収容されている。軸体39aは、ウォーム39bが設けられている。
ホイール39cは、変倍軸25に設けられており、軸体39aのホイール39cに噛み合っている。
変倍操作部39dは、軸体39aの両端にそれぞれ設けられており、観察者3に回転操作されることにより軸体39aを回転する。これによって、軸体39aの回転力が変倍軸25に伝達されて変倍軸25が回転し、変倍光学系の倍率が変更される。
図5に示すように、変倍操作部39dは、中間部ケース部31の左右方向Xの側面の下側Z1の範囲に、それぞれ設けられている。
【0030】
図2に示すように、撮像部40は、右側光学系の撮像情報を取得するためのCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子(図示せず)を備えた撮像装置である。撮像部40は、中間部30の上側Z2の範囲に設けられている。撮像部40は、ビームスプリッタ36aが屈曲位置に配置されたときに、右側光学系の観察光を撮像素子表面に結像させて、被検眼2aの撮像データを取得する。撮像部40は、ケース40aに収容されている。
【0031】
図3に示すように、双眼部41は、対物顕微鏡部20からの観察光が導かれる左右一対の光学系を有し、観察者3が被検眼2aを観察する部分である。双眼部41は、対物顕微鏡部20からの観察光を、正立させて観察眼3aへと導く。
【0032】
図6は、本実施形態のフィルタ保持枠33cの移動動作を模式的に説明する右側面図である。
図6(a)は、フィルタ保持枠33cが上側Z2に配置され、バリアフィルタ33aが観察位置に配置された状態、つまり蛍光観察時の状態である。この状態から観察者3がフィルタ操作ノブ35を右回りに回転すると、アーム部34aは、右回りに回転しフィルタ保持枠33cの突起33gを下側に押し下げ、フィルタ保持枠33cが下側Z1に移動する。
図6(b)に示すように、フィルタ保持枠33cが下側Z1に移動すると、バリアフィルタ33aが退避位置に移動し、光路長補正フィルタ33bが観察光路上に配置される。フィルタ保持枠33cは、ストッパ(図示せず)によって、下側Z1に移動しないようになっている。これよって、観察者3は通常の観察をすることができる。
【0033】
これとは反対に、バリアフィルタ33aを退避位置から観察位置に移動する場合には、前述した操作とは逆の操作をすればよい。
また、スプリッタ保持枠36eの移動も、フィルタ保持枠33cと同様な動作によって行われる(詳細な説明は、省略する)。
【0034】
以上説明した構成、動作によって、細隙灯顕微鏡1は、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)細隙灯顕微鏡1は、フィルタ操作ノブ35の操作に応じて、蛍光観察及び通常の観察等の切り替えを容易に行うことができる。蛍光観察は、例えば、コンタクトレンズの検査に用いられる等、眼科医療の現場では頻繁に行われている。このため、細隙灯顕微鏡1は、蛍光観察及び通常の観察等の切り替えを容易にすることより、眼科医療の現場での利便性を向上することができる。
(2)観察者3は、蛍光観察及び通常の観察等の切り替えをするためにアタッチメント等を着脱する必要がないので、双眼部41から眼を離さないでフィルタ操作ノブ35の操作をすることができる。
【0035】
(3)細隙灯顕微鏡1は、蛍光観察及び通常の観察等を連続して行うことができ、被検者2に色々な検査をしていると思わせたりすることがないので、被検者2を不安にさせることがない。
(4)細隙灯顕微鏡1は、光路長補正フィルタ33bを備えるので、バリアフィルタ33aが観察位置と退避位置とに配置された場合の光路長を等しくし、精度のよい観察等をすることができる。また、バリアフィルタ33aが退避位置に移動することによって、光路長補正フィルタ33bが自然に観察光路内に配置されるので、利便性がよい。
【0036】
次に、本体部10の各部材の配置について詳細に説明する。
図3に示すように、中間部30は、対物顕微鏡部20と双眼部41との間に位置し、上側Z2からみると、左右方向Xに長い矩形の領域を有する部分である。ビームスプリッタ部36は、この領域の観察方向後側Y2に配置されており、観察方向前側Y1の部分と、対物顕微鏡部20の第3群23cの後端のレンズとの間には、鎖線で示すように、光軸O1,O2に対応して屈曲する左右方向Xに細長い間隙Sを形成するようになっている。間隙Sは、鉛直方向Zに延在している(図2参照)。
フィルタ保持枠33cは、この間隙Sに対応して屈曲するように外形が形成されており、鉛直方向Zに移動することによって、この狭い間隙S内であっても、バリアフィルタ33aを観察位置と退避位置との間で移動することができる。また、フィルタ保持枠33c及びスプリッタ保持枠36eは、移動方向が同じ鉛直方向Zであるので、内斜系実体の光学系であっても、互いの移動範囲が重複することがないので、互いに干渉することなく自由に移動することができる。
【0037】
また、図5に示すように、フィルタ操作ノブ35及びスプリッタ操作ノブ36hは、中間部ケース部31の左右方向Xの側面に、左右対称に配置されている。また、変倍軸25をフィルタ保持枠33cに干渉することなく配置しているので、フィルタ保持枠33cの観察方向前側Y1に配置された第2群23bを、フィルタ保持枠33cの観察方向後側Y2に配置された変倍操作部39dによって操作することができる。
これによって、細隙灯顕微鏡1は、変倍操作部39dを、バリアフィルタ33aよりも観察方向後側Y2に設け、フィルタ操作ノブ35及びスプリッタ操作ノブ36hと同じく中間部ケース部31に配置することができる。また、左右の変倍操作部39dは、フィルタ操作ノブ35及びスプリッタ操作ノブ36hの下側Z1に配置されている。つまり、細隙灯顕微鏡1は、バリアフィルタ33aを内蔵し、各操作部を集中して配置できるので、これら操作部の位置を感覚的に把握しやすくできるとともに、操作性を向上することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の細隙灯顕微鏡1は、バリアフィルタ33aを汚損することなく、通常の観察と蛍光観察との切り替えを行うことができる。また、バリアフィルタ33aを予め内蔵しても、バリアフィルタ33a、変倍、ビームスプリッタ部36の各操作性を向上することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。
【符号の説明】
【0040】
1…細隙灯顕微鏡 2a…被検眼 3a…観察眼 10…本体部 20…対物顕微鏡部 23b…第2群 25…変倍軸 30…中間部 31…中間部ケース部 33a…バリアフィルタ 33b…光路長補正フィルタ 33c…フィルタ保持枠 33e…切り欠き 34a…アーム部 35…フィルタ操作ノブ 36a…ビームスプリッタ 36b…透明部 36c…スプリッタ部 36d…透過部材 36e…スプリッタ保持枠 36h…スプリッタ操作ノブ 39…変倍軸回転部 39d…変倍操作部 40…撮像部 41…双眼部 O1,O2…光軸 S…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の光学系を有し、被検眼を拡大する拡大部と、
前記拡大部からの観察光が導かれる左右一対の光学系を有し、観察者が被検眼を観察するための双眼観察部と、
前記拡大部と前記双眼観察部との間に設けられたケース部と、
前記ケース部に収容され、観察光路内に配置された観察位置と、前記観察位置から前記観察光の光軸とは直交する方向に移動した位置であり前記観察光路から退避した退避位置との間で移動可能に設けられた蛍光観察用のバリアフィルタと、
前記バリアフィルタを移動するために操作するフィルタ操作部と、
前記ケース部に収容され、前記フィルタ操作部の操作に応じて、前記バリアフィルタを前記観察位置と前記退避位置との間で移動をするフィルタ移動部と、
を備える細隙灯顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の細隙灯顕微鏡において、
前記拡大部は、内斜系実体の左右一対の光学系を有し、
前記バリアフィルタは、前記拡大部の前記左右一対の光学系にそれぞれ設けられた板状の部材であり、その各表面が前記各光学系の光軸に直交するように配置され、前記フィルタ移動部の前記バリアフィルタの移動方向が鉛直方向であること、
を特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の細隙灯顕微鏡において、
前記バリアフィルタと一体で移動し、前記バリアフィルタが前記退避位置にある状態で前記観察光路内に配置され、前記バリアフィルタが前記退避位置にある状態の観察光路長と、前記バリアフィルタが前記観察位置にある状態の観察光路長とが等しくなるように補正する光路長補正部材を備えること、
を特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の細隙灯顕微鏡において、
前記拡大部は、変倍光学系を有し、
前記ケース部内に観察方向に平行に延在するように配置され、前記変倍光学系の倍率を変更する駆動力を伝達する駆動力伝達部と、
前記バリアフィルタを前記移動可能に保持し、前記移動をする過程で前記駆動力伝達部との干渉を防止する切り欠きを有するバリアフィルタ保持枠とを備えること、
を特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の細隙灯顕微鏡において、
撮像部と、
前記ケース部に収容され、前記拡大部の観察光の少なくとも一部を前記撮像部の方向に屈曲させる屈曲位置と、前記拡大部からの観察光を前記双眼観察部へと透過させる透過位置との間で移動可能に設けられ、その移動方向が前記バリアフィルタの移動方向と同じ鉛直方向である屈曲部とを備え、
前記バリアフィルタは、前記拡大部と前記屈曲部との間に設けられた間隙に配置されていること、
を特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項6】
請求項5に記載の細隙灯顕微鏡において、
前記屈曲部を移動するために操作する屈曲操作部と、
前記ケース部に収容され、前記屈曲操作部の操作に応じて、前記屈曲部を前記屈曲位置と前記透過位置との間で移動をする屈曲部移動部とを備え、
前記フィルタ移動部及び前記屈曲部移動部は、前記ケース部の左右方向の両端部であって左右対称の範囲に収容され、
前記フィルタ操作部及び前記屈曲操作部は、前記ケース部の左右方向の側面のうち前記フィルタ移動部及び前記屈曲部移動部に対応する側であって、左右対称の範囲に配置されていること、
を特徴とする細隙灯顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−4877(P2011−4877A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150089(P2009−150089)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(500400205)株式会社ライト製作所 (17)
【Fターム(参考)】