説明

組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品

【課題】可動部材と可動部材を支える固定部材とが予め組付けられた状態で成形して、可動部の精密な可動を確保するとともに量産に適応することができるようにする。可動部材の可動形態に特徴をもたせて有用性を高め商品価値を高めるようにする。
【解決手段】可動部材1の可動支持部12と可動部材1を支える固定部材2の可動受部22とを組付ける製品を合成樹脂材で成形する製造方法において、可動部材1の可動支持部12側と固定部材2の可動受部22側との間に係合離脱が可能な凹凸構造13b,23bを設ける。可動部材1の可動支持部12と固定部材2の可動受部22との可動面13a,23aとを避けたうえで可動部材1と固定部材2とが相互に接近する部位を接続部分として金型4の内部で一体成形し、金型4の離型の際に可動部材1と固定部材2との接続部分3を破断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部材と可動部材を支える固定部材とが組付けられた製品を合成樹脂材で一体成形して製造する組付け合成樹脂製品の製造方法と完成製品である組付け合成樹脂製品の前段階製品で組付け合成樹脂半製品とに係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、組付け製品の製造では、可動部材と固定部材とを別個に成形してから後組付けすることが行われている。然しながら、可動部材の成形用の金型と固定部材の成形用の金型とが必要になることから、製造コストが嵩むという難点がある。また、組付け製品が微小構造となった場合には、組付けが困難になるという難点がある。
【0003】
この後組付けによる製造の難点を解消するために、1つの金型の内部に可動部材,固定部材を成形するキャビティを組付け状態となるように区画して各キャビティに別個のゲートを連通させ、可動部材と固定部材とを予め組付けられた状態で一体成形する技術が開発されている。然しながら、各キャビティに別個のゲートを連通させるため、金型が大型化,複雑化してしまうという新たな難点が生じている。
【0004】
このため、金型を大型化,複雑化させることなく可動部材,固定部材を予め組付けられた状態で成形する技術の開発が要望されている。
【0005】
従来、金型を大型化,複雑化させることなく可動部材,固定部材を予め組付けられた状態で一体成形する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0006】
特許文献1には、受け部とこの受け部に回転自在に軸支される軸部とが一体成形されるもので、軸部が受け部の貫通孔に挿入されており、貫通孔の内周面から軸部へ向かう可動面に互いに対向するように突設された4点で支持する構造が示されている。支持部は略円錐体を頂点から半分に切断された形状を呈し、各支持部の立面は、軸受部の内側面と同一面に形成されている。上記支持部と軸部との連結部分は薄肉部とされているので、軸受部側あるいは軸部側のいずれか又は双方を捩ることにより薄肉部が破断するように成形されている(段落0021,0022)。
【0007】
特許文献1に係る組付け製品の製造方法は、成形の際には金型が大型化,複雑化させないように軸部,受け部を一体化させておき、成形後に面倒な組付け作業ではなく軸部,受け部を接続する支持部を破断して軸部,受け部を分離(離脱ではなく軸部が回転可能な組付け状態になること)させることで、前述の難点を克服しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第2582128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に係る組付け製品の製造方法では、軸部と受け部との可動面である回転面の一部が接続されているため、破断された支持部に発生する切断痕が障害となって軸部の精密な回転が不能になるという大きな問題点がある。特に、支持部にある薄肉部に対しては捩じれによる回転トルクが作用するので、切断痕が軸部側あるいは受け部側に任意に発生するものである。
【0010】
また、組付け半製品を金型から取出した後に、軸部,受け部の接続部分を捩る操作をすることとなるが、作業者の技能、あるいは捩り力や捩り方法の如何によっては上記した切断痕の場所や大きさが異なってくるので、可動面における実用性に欠けるものとなると認められる。
【0011】
また、軸部,受け部が単純な回転支持構造とされて軸部の可動形態に特徴がないため、組付け半製品の有用性が低く商品価値が低にとどまっているという問題点がある。
【0012】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、可動部材,固定部材が予め組付けられた状態で成形して、可動部の精密な可動を確保するとともに量産に適応することができ、しかも可動部材の可動形態に特徴をもたせて有用性を高め商品価値を高めるようにした組付け合成樹脂製品の製造方法と完成製品である組付け合成樹脂製品の前段階製品で組付け合成樹脂半製品とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため、本発明では、可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける製品を合成樹脂材で成形する製造方法において、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側との間に係合離脱が可能な凹凸構造を設け、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形し、金型の離型の際に可動部材と固定部材との接続部分を破断する手段を採用する。
【0014】
この手段では、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側との間に係合離脱が可能な凹凸構造が設けられることで、凹凸構造の係合離脱で可動部材の可動を規制することができる。また、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との破断される接続部分が可動面を避けているため、破断された接続部分が可動部材の可動の障害になることがなくなる。また、接続部位が可動部材と固定部材の接近部位にあるために、組付け保形が確実化され、切断が容易化される。さらに、金型から取出される際に可動部材,固定部材の接続部分が破断されて可動部材,固定部材が分離されることで、組付け合成樹脂製品の製造方法における金型から取出した後の工程が不要になる。
【0015】
また、本発明では、可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける製品を合成樹脂材で成形する製造方法において、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側とを可動によって両者の間のスペースに変化が生ずるように組付け、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形し、金型の離型の際に可動部材と固定部材との接続部分を破断する手段を採用する。
【0016】
この手段では、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側とを可動によって両者の間のスペースに変化が生ずるように組付けられることで、可動部材の可動で両者の間のスペースが可変される。また、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との破断される接続部分が可動面を避けているため、破断された接続部分が可動部材の可動の障害になることがなくなる。また、接続部位が可動部材と固定部材の接近部位にあるために、組付け保形が確実化され、切断が容易化される。さらに、金型から取出される際に可動部材,固定部材の接続部分が破断されて可動部材,固定部材が分離されることで、組付け合成樹脂製品の製造方法における金型から取出した後の工程が不要になる。
【0017】
また、本発明では、金型の離型の際に金型の一部で可動部材または固定部材を押圧して可動部材と固定部材との接続部分を破断する手段を採用する。
【0018】
この手段では、可動部材,固定部材の接続部分が金型の一部の押圧で破断される。
【0019】
また、本発明では、金型に備えられ成形品を突出すエジェクタピンを可動部材と固定部材との接続部分に突出しの応力が集中して破断するように配置する手段を採用する。
【0020】
この手段では、可動部材,固定部材の接続部分がエジェクタピンの突出しの応力で破断される。
【0021】
また、本発明では、金型に備えられ成形品を突出すエジェクタピンを可動部材と固定部材との接続部分に突出しの応力が集中して破断するように突出しタイミングを調整する手段を採用する。
【0022】
この手段では、可動部材,固定部材の接続部分がエジェクタピンの突出しのタイミングの調整で破断される。
【0023】
また、本発明では、金型の可動部材と固定部材との接続部分を錐形のスリットとして金型の離型の応力で破断されるようにしたことを特徴とする手段を採用する。
【0024】
この手段では、金型の通常の型開き動作の応力で可動部材,固定部材の接続部分が破断される。勿論、請求項2〜4の手段で破断することも可能である。
【0025】
次に、本発明では、可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける合成樹脂半製品において、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側との間に係合離脱が可能な凹凸構造が設けられ、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形され、金型の離型の際に可動部材と固定部材との上記接続部分を破断せずに金型から離型される手段を採用する。
【0026】
この手段では、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側との可動面が可動可能に成形されている一方で、接続部分が可動部材と固定部材の他の部位に接続されている一体型の半製品として取り扱いされ、破断に際しては可動面を避けて実施される。また、接続部位が可動部材と固定部材の接近部位にあるために、組付け保形が確実化されていることに加え、切断に際しては容易化される。さらに、凹凸構造の係合離脱で可動部材の可動が規制される。
【0027】
また、本発明では、可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける合成樹脂半製品において、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側とを可動によって両者の間のスペースに変化が生ずるように組付けられ、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形され、金型の離型の際に可動部材と固定部材との上記接続部分を破断せずに金型から離型される手段を採用する。
【0028】
この手段では、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面が可動可能に成形されている一方で、接続部分が可動部材と固定部材の他の部位に接続されている一体型の半製品として取り扱いされ、破断に際しては可動面を避けて実施される。また、接続部位が可動部材と固定部材の接近部位にあるために、組付け保形が確実化されていることにわ加え、切断に際しては容易化される。また、可動部材の可動で両者の間のスペースが可変される。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法は、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側との間に係合離脱が可能な凹凸構造が設けられることで、凹凸構造の係合離脱で可動部材の可動を規制することができ、可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側とを可動によって両者の間のスペースに変化が生ずるように組付けられることで、可動部材の可動で両者の間のスペースが可変されるため、可動部材の可動形態に特徴をもたせて有用性を高め商品価値を高めることができる。また、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面を避けているために、破断された接続部分が可動部材の可動の障害になることがなくなるため、可動部材,固定部材が予め組付けられた状態で成形して可動部材の精密な可動を確保することができる効果がある。さらに、組付け合成樹脂半製品を金型から取出した後に、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部を可動面から捩る作業操作をしていたが、このような作業に伴う問題点を一掃することができる。
【0030】
また、本発明に係る組付け合成樹脂半製品は、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部とを可動可能に成形されていると同時に他の部位が接続された一体型の半製品として提供することができ、別部品への組付け等に際しては可動面を避けているため、破断された接続部分が可動面の可動の障害になることが一掃される。また、接続部位が可動部材と固定部材の接近部位にあるために、組付け保形が確実に行える一方、切断に際しては容易に行える。さらに、凹凸構造の係合離脱で可動部材の可動が規制され、可動部材の可動で両者の間のスペースが可変されるため、可動部材の可動形態に特徴をもたせて有用性を高め商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態の第1例の装置構成を含む分解斜視図である。
【図2】図1の成形品である組付け合成樹脂製品の分解した斜視図である。
【図3】図1の要部の拡大断面図である。
【図4】図1の組立状態の縦断面図である。
【図5】図1の組立状態の横断面図である。
【図6】図4における可動部材,固定部材の接続部分の破断動作図である。
【図7】図1の成形品である組付け合成樹脂製品の要部の拡大断面図である。
【図8】本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態の第2例の装置構成を含む断面図である。
【図9】図8における可動部材,固定部材の接続部分の破断動作図である。
【図10】本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態の第3例の装置構成を含む断面図である。
【図11】図10における可動部材,固定部材の接続部分の破断動作図である。
【図12】本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態の第4例の装置構成を含む断面図である。
【図13】本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態の第5例の成形品の断面図である。
【図14】本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態の第5例の成形品の平面図である。
【図15】図13の成形品の固定具としての使用例を示すものであり、(A)に固定前状態が示され、(B)に固定後状態が示されている。
【図16】本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態の第6例の成形品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法及び組付け合成樹脂半製品を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1〜図7は、本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法を実施するための形態の第1例を示すものである。
【0034】
第1例では、可動部材1の可動支持部12と固定部材2の可動受部22とが可動できる組付け合成樹脂製品Pを製造するものを示している。
【0035】
可動部材1は、方形ブロック体の基部11の一部に可動支持部12を備え、対向面を蒲鉾形ブロック体に突出して可動支持部12として軸支持部が構成され、その両端面12bに円柱形の軸部13が突設されている。可動支持部(軸支持部)12の固定部材2に対向する側は、軸部13に沿う大径の半円形部12aに形成されている。軸部13の可動面となる外周面13aには、径方向の外部に突出して軸方向へ延びる凹凸部(凹凸構造)13bが軸中心に対して放射状に設けられている。
【0036】
固定部材2は、方形ブロック体の基部21の両側を突出するように可動受部22が設けられ、可動受部22の間は略垂直ないし緩い凹状の受面22aに形成されて可動部材1の可動支持部(軸支持部)12の半円形部12aに対向されるようになっている。可動受部22は蒲鉾形板体の可動受部として1対のアーム部に形成され、可動受部(アーム部)22には円形の軸受孔23が穿孔されている。可動受部(アーム部)22は内側に平面状の内面部22bが設けられている。軸受孔23の可動面となる内周面23aには、径方向の外部に突出して軸方向へ延びる凹凸部(凹凸構造)23bが軸中心に対して放射状に設けられている。
【0037】
可動部材1,固定部材2の成形の際の接続部分3は、可動部材1の可動支持部(軸支持部)12と固定部材2の可動受部(アーム部)22との間に設けられている。図示するように、接続部分3は可動支持部(軸支持部)12の半円形部12aの頂部と、略平行状態で離間している固定部材2の可動受部(アーム部)22の受面22aとの間に連通状態で設けられる。換言すると、接続部分3は、可動支持部12と可動受部22との間には設けられておらず、且つ、可動支持部12と可動受部22とが接近する半円形部12aの頂部とこれに対応する受面22aとの部位に配置されている。その結果、接続部分3は短く設けられている一方で、半円形部12aによる回転トルクが発生し易く構成されている。この接続部分3は1個が図示されているが、樹脂材料や金型構造による流動性を考慮して切断容易な範囲で複数配置することを妨げない。
【0038】
上記軸部13の外周面13aの凹凸部(凹凸構造)13bと軸受孔23の内周面23aの凹凸部(凹凸構造)23bには、凹凸部分が複数配置されてなる単位で周方向に複数箇所配置され、図3に示すように、深さ(a,b)が互いに重なるように設けられている。
【0039】
第1例は、多分割構造の金型4を使用して合成樹脂材により組付け合成樹脂製品Pを成形する。
【0040】
金型4は、1個の上型41と2個の下型42,43と割型である2個の側型44,45からなる。金型4の上型41は、組付け合成樹脂製品Pの可動部材1,固定部材2の大部分の上半部を成形するキャビテイ41aと、組付け合成樹脂製品Pの可動部材1,固定部材2の接続部分3の上半部を成形するスリット41bと、側型44,45の上半部のスライドを可能にするスライド用穴41cとが設けられている。
【0041】
金型4の下型42,43は、組付け合成樹脂製品Pの可動部材1,固定部材2の大部分の下半部を成形するキャビテイ42a,43aと、組付け合成樹脂製品Pの可動部材1,固定部材2の接続部分3の下半部を成形するスリット43b(右側の下型43のみ)と、側型44,45の下半部のスライドを可能にするスライド用穴42b,43cとが設けられている。両下型42,43は、スライド用穴42b,43cの中心で左右に2分割されている。右側の下型43は、左側の下型42に対して分割面の上部で傾倒(回動)可能になっている。
【0042】
金型4の側型44,45は、組付け合成樹脂製品Pの可動部材1の軸部13の外周面(可動面)13aと固定部材2の軸受孔23の内周面(可動面)23aを成形する円筒形に形成され、直交方向から接離間可能に配置されている。そして、金型4の円筒形の側型44,45の内周面,外周面に凹部44a,45a,44b,45bが深さ(a,b)が互いに重なるように設けられ(図3参照)、可動部材1の可動面(軸部13の外周面)13aと固定部材2の可動面(軸受孔23の内周面)23aとに前述の凹凸部13b,23bを成形することができるようになっている(図7参照)。
【0043】
型閉状態の金型4に対しては、図4,図5に示すように、単一のゲートから溶融された合成樹脂材が射出等により充填される。この結果、金型の3の内部で可動部材1,固定部材2が接続部分3を介して一体化されて成形される。
【0044】
この結果、ゲートを複数設ける必要がなく、金型4の大型化,複雑化が避けられる。
【0045】
この後、図6に示すように、上型41を型開した後、右側の下型43を上方にわずかに移動(回動)させる。
この結果、固定部材2の基部21が押されその応力が受面22aを介して可動部材1の可動支持部(軸支持部)12の半円形部12aの頂部にある接続部分3に集中され、軸部13と軸受孔23の回転が促されると同時に上記回転部位より大径な半円形部12aの頂部で大きな回転トルクが発生することによって、接続部分3が金型4から取出される前に容易かつ確実に破断される。
【0046】
従って、成形品である組付け合成樹脂製品Pを金型4の内部から取出すと、可動部材1の軸支持部12の半円形部12aと、固定部材2の基部21の受面22aとに位置する接続部分3が破断され、可動部材1,固定部材2が分離された状態となっている。
【0047】
この結果、成形品である組付け合成樹脂製品Pを金型4から取出した後に、可動部材1,固定部材2の接続部分3を破断して可動部材1,固定部材2を分離させる工程が不要になるうえに、可動部材1の軸支持部12の軸部13と固定部材2のアーム部22の軸受孔23との可動面13a,23aに切断痕が発生していないことから、量産にも適応することになる。
換言すると、可動部材1の可動面(軸部13の外周面)13aと固定部材2の可動面(軸受孔23の内周面)23aとに接続部分3が存在しないため、接続部分3が可動の障害となることがない。この結果、組付け合成樹脂製品Pにおける可動部材1の精密な可動が確保される。
【0048】
金型4から取出された組付け合成樹脂製品Pは、可動部材1の可動面(軸13の外周面)13aと固定部材2の可動面(軸受孔23の内周面)23aとに凹凸構造(凹凸部13b,23b)が形成されることになることから、可動部材1の可動を一定角度でストップさせたり、可動部材1に力を加えることによって段階的に角度を調整したり、角度調整の際にクリック感を発生させることができる(図7参照))。従って、可動部材1の可動形態に特徴がもたらされるため、組付け合成樹脂製品Pの有用性が高められ商品価値が高められる。
【0049】
図8,図9は、本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法を実施するための形態の第2例を示すものである。
【0050】
第2例は、第1例の金型4の左右の下型42,43を一体化して金型4から成形品を突出すエジェクタピン5を可動部材1,固定部材2の接続部分3に突出しの応力が集中して破断するようにエジェクタピン5を配置してある。すなわち、可動部材1の軸支持部12の半円形部12aの頂部にある接続部分3が配置され、軸部13と軸受孔23では回転可能に可動面が設けられ、これと同時に上記回転部位より大径な半円形部12aの頂部で大きな回転トルクが発生する構成になっている。
【0051】
第2例では、成形品である組付け合成樹脂製品Pを金型4から取出す際に、可動部材1の半円形部12aと固定部材2の受面22aとの接続部分3が破断され、可動部材1,固定部材2が分離された状態となる。
【0052】
第2例によると、第1例に比して、金型4の構造を簡素化することができる利点がある。
また、第2例については、一般的な配置のエジェクタピン5について、各エジェクタピン5の突出しのタイミングを調整することによっても、同様の作用,効果を奏することができる。
【0053】
図10,図11は、本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法を実施するための形態の第3例を示すものである。
【0054】
第3例は、第1例の金型4の左右の下型42,43を一体化して上型41のスリット41bと右側の下型43のスリット43bとをサブマリンゲートのような錐形に形成してある。上記スリット41b,43bは、可動部材1の軸支持部12の半円形部分12aの頂部と固定部材2の可動受部22の受面22aとに配置されることが望ましい。
【0055】
第3例によると、金型4の通常の型開き動作の応力で可動部材1,固定部材2の接続部分3が簡単に破断されるため、金型4,エジェクタピン5に特殊な動作を要求することがないため、組付け合成樹脂製品Pの成形速度を高速化することができる利点がある。
【0056】
図12は、本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法を実施するための形態の第4例を示すものである。
【0057】
第4例は、接続部分3を可動部材1の軸部13の基端に位置する軸支持部12の両端面12aと固定部材2のアーム部22の内面部22bとの間に設けている。
【0058】
第4例によると、図示した可動部材1,固定部材2の接続部分3の位置によっても、軸部13の外周面13aと軸受孔23の周面23aに影響を及ぼさないので、前述の作用,効果が確実に奏される。
【0059】
以上、図示した形態の外に、金型4の一部を振動させることで可動部材1,固定部材2の接続部分3を破断することも可能である。
【0060】
図13,図14、図15は、本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法を実施するための形態の第5例を示すものである。
【0061】
第5例は、組付け合成樹脂製品Pについて、可動部材1が方形ブロック体の基部11の一部に90度屈曲した断面略P字形の格好で設けられた蒲鉾形ブロック体の軸支持部12の両端面12aに円柱形の軸部13が設けられ、固定部材2が板形ブロック体の基部21の両側端からコ字形になるように突出して設けられた板体の1対の可動受部(アーム部)22に円形の軸受孔23が穿孔されている。そして、可動部材1の軸支持部12の中心Cが軸部13の中心Dからα分偏心されている。
【0062】
第5例によると、図15(A)に示すように、可動部材1を固定部材2から引起こした状態で可動部1の軸支持部12と固定部材2の基部21との間にシート状部材Sを挿入して、図15(B)に示すように、可動部材1を回動(傾倒)させることでシート状部材Sを可動部材1の軸支持部12の半円形部12cと固定部材2の基部21との間にα分変位して圧接固定することができる。即ち、固定具として使用することができる。従って、可動部材1の可動形態として回動に特徴がもたらされるため、組付け合成樹脂製品Pの有用性が高められ商品価値が高められる。
【0063】
図16は、本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法を実施するための形態の第6例を示すものである。
【0064】
第6例は、第5例のように、可動部材1の軸支持部12,軸部13に精密な偏心構造を構成しなくても、可動部材1の軸部13の中心に対して軸支持部12の周面にシート状部材Sを挿入可能にする凹部とシート状部材Sを圧接可能にする凸部とを設ける簡単な凹凸構造13cを形成することでも実現することができる。すなわち、可動部材1を回動させることでシート状部材Sを凹凸部13cで圧接固定することができる。
【0065】
前述した本発明に係る組付け合成樹脂製品の製造方法を実施するための形態の各例においては、金型4内で接続部分3を切断することを前提として説明したが、製品としてはこれに限定する趣旨ではない。
すなわち、各例に示すように、可動部材1の可動支持部12と固定部材2の可動受部22の可動面とを避けたうえで可動部材1と固定部材2とが相互に接近する部位を接続部分3として金型4の内部で一体成形され、金型4の離型の際に可動部1と固定部2との接続部分3を破断せずに金型4から離型される合成樹脂半製品をそのまま製品として提供することを妨げないものである。
【0066】
その結果、一体化された半製品としては管理保管や運搬等が容易なうえに、必要に応じて可動部材1と固定部材2とを作業操作で破断するとしても、軸部13と軸受孔23には破断痕の影響がないものとして利用可能である。
【0067】
以上、図示した形態の外に、可動部材1,固定部材2の可動面13a、23aがスライド構造を構成する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 可動部材
2 固定部材
3 接続部分
4 金型
5 エジェクタピン
11 基部(可動部)
12 可動支持部(軸支持部)
12a,12c 半円形部
12b 両端面
13 軸部
13a 可動面(外周面)
13b,13c 凹凸部
21 基部(固定部)
22 可動受部(アーム部)
22a 受面
22b 内面部
23 軸受孔
23a 可動面(内周面)
41 上型
41b,43b スリット
42a,43a キャビテイ
42b,43c スライド用穴
P 組付け合成樹脂製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける製品を合成樹脂材で成形する製造方法において、
可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側との間に係合離脱が可能な凹凸構造を設け、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形し、金型の離型の際に可動部材と固定部材との接続部分を破断することを特徴とする組付け合成樹脂製品の製造方法。
【請求項2】
可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける製品を合成樹脂材で成形する製造方法において、
可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側とを可動によって両者の間のスペースに変化が生ずるように組付け、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形し、金型の離型の際に可動部材と固定部材との接続部分を破断することを特徴とする組付け合成樹脂製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の組付け合成樹脂製品の製造方法において、金型の離型の際に金型の一部で可動部材または固定部材を押圧して可動部材と固定部材との接続部分を破断することを特徴とする組付け合成樹脂製品の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の組付け合成樹脂製品の製造方法において、金型に備えられ成形品を突出すエジェクタピンを可動部材と固定部材との接続部分に突出しの応力が集中して破断するように配置することを特徴とする組付け合成樹脂製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の組付け合成樹脂製品の製造方法において、金型に備えられ成形品を突出すエジェクタピンを可動部材と固定部材との接続部分に突出しの応力が集中して破断するように突出しタイミングを調整することを特徴とする組付け合成樹脂製品の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2記載の組付け合成樹脂製品の製造方法において、金型の可動部材と固定部材との接続部分を錐形のスリットとして金型の離型の応力で破断されるようにしたことを特徴とする組付け合成樹脂製品の製造方法。
【請求項7】
可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける組付け合成樹脂半製品において、
可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部側との間に係合離脱が可能な凹凸構造が設けられ、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形され、金型の離型の際に可動部材と固定部材との上記接続部分を破断せずに金型から離型されることを特徴とする組付け合成樹脂半製品。
【請求項8】
可動部材の可動支持部と可動部材を支える固定部材の可動受部とを組付ける組付け合成樹脂半製品において、
可動部材の可動支持部側と固定部材の可動受部とを可動によって両者の間のスペースに変化が生ずるように組付けられ、可動部材の可動支持部と固定部材の可動受部との可動面とを避けたうえで可動部材と固定部材とが相互に接近する部位を接続部分として金型の内部で一体成形され、金型の離型の際に可動部材と固定部材との上記接続部分を破断せずに金型から離型されることを特徴とする組付け合成樹脂半製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−161800(P2011−161800A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27410(P2010−27410)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000146630)株式会社新興セルビック (11)
【Fターム(参考)】