組成物
【課題】 眼の硝子体液代替物として有用な組成物を提供する。
【解決手段】 ヒドロゲルポリマーを含む組成物を開示する。該ヒドロゲルポリマーは、酸化ヒアルロン酸と、酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドとを含む。また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。これらの特性により、該ヒドロゲルポリマーは、硝子体液代替物として有用である。
【解決手段】 ヒドロゲルポリマーを含む組成物を開示する。該ヒドロゲルポリマーは、酸化ヒアルロン酸と、酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドとを含む。また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。これらの特性により、該ヒドロゲルポリマーは、硝子体液代替物として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、眼球の硝子体代用物として使用される組成物に関し、具体的には、硝子体液代替物として使用される組成物、および、その調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硝子体は、水晶体の後部で、網膜の前部にある眼の硝子体腔中の澄んで透明な膠様質である。硝子体は、眼の容積の3分の2を占め、およそ4gの重量および約4mlの容積である。硝子体の主成分には、水(98%)、膠原細繊維、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸(HA)、および他の残余溶質が含まれる。特異的疾患、年齢に関連する変性または外傷は、硝子体で、HA変性およびコラーゲン沈殿を含む病理変化をもたらし、基質(matrix)の液化が生じる。変性または液化した硝子体は、浮遊物の形成をもたらし、最終的には、後部硝子体剥離および網膜剥離の可能性が生じる。
【0003】
臨床治療時において、経扁平部硝子体切除(PPV)は、糖尿病性網膜症、難治性網膜剥離(complex retinal detachment)(例えば、外傷によるもの)、および黄斑円孔を含む、眼に関連する多くの疾病を治療するための最も重要な手術のうちの一つである。
PPV時に、硝子体を切断し吸引し、次いで、ガス(空気、パーフルオロプロパン(perfluropropane)、もしくは六フッ化硫黄)、またはシリコーン油等の硝子体代替物と一般に交換する。硝子体代替物を使用して、硝子体腔を充填し、硝子体切除手術後に網膜が再付着するのを支援する。手術後に、硝子体代替物は、網膜と網膜色素上皮(RPE)細胞の間の付着を形成する、位置に網膜を保持することができる。水より軽いガスは、剥離した網膜を平坦にし、治療における網膜の付着を保持するのに有用である。
【0004】
しかしながら、ガスを使用する場合、手術後1週間以上、腹臥位を維持する必要があることが多い。1960年代以来、シリコーン油を、難治性網膜剥離(complicated retinal detachment)において、または手術後に姿勢を維持することができない患者(例えば、子供)において、手術後に付着した網膜を保持するガスの代わりに使用することもある。しかし、シリコーン油を後で除去しない場合、長期的合併症が生じる場合がある。その上、シリコーン油は、角膜内皮細胞等の眼組織に対して細胞毒性でもあり得る。
【0005】
近年、天然、半合成、または合成高分子を使用する多数の硝子体代替材料が調査されており、これらには、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(グリセリルメタクリラート)、ポリ(メチル−2−アクリルアミド−2−メトキシアセタート)、およびポリ(2−ヒドロキシエチルアクリラート)が含まれる。理想的な硝子体代替物としての基準には、清澄度、透明度、屈折率、タンポナーデ代替物として作用するのに十分な剛性、代謝物質移動の許容能、非吸収性、親水性組成、および小ゲージ針による注入能が含まれる。これらの基準は、硝子体代替物の適切な材料を見つけることが容易な課題ではないことを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−526965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、特に硝子体代替物に関して、当技術分野で、前述した不備および不適切な点を検討するための、これまで検討されていないニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、ヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
この組成物は、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含むヒドロゲルポリマーを含む。ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0009】
別の態様において、本発明は、前述した組成物の調製方法に関する。この調製方法は、酸化ヒアルロン酸を含む第1の溶液と、ジヒドラジドを含む第2の溶液とを混合して、ヒドロゲルポリマーを含んだ組成物を形成する工程を含む。
ヒドロゲルポリマーは、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含む。また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0010】
さらに、別の態様において、本発明は、次に示すものを含むキットに関する。
a)酸化ヒアルロン酸、b)ジヒドラジド、c)緩衝液、および、d)前述した組成物の調製方法を記載した説明書。
【0011】
さらに、別の態様において、本発明は、次に示す段階を含む眼球の硝子体の置換方法に関する。
眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階、
硝子体を空気と置換する段階、
硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の組成物を注入する段階。
【0012】
さらにまた、別の態様において、本発明は、次に示す化学式(I)のヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
【化1】
【0013】
式中、m、nは整数であり、m≦5、100≦n≦2500である。
また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに5分以内に変化する、という特性を有する。
【0014】
本明細書の種々の変形例および改良は、本開示の新規概念の趣旨および範囲から逸脱することなく、影響を及ぼし得るが、これらの態様および別の態様は、次に示す図面と共に把握される、次に示す好ましい実施態様の記載から明らかになる。
【0015】
添付の図面は、説明と共に、本発明の1以上の実施態様を例示し、本発明の原理について説明するのに有用である。可能な限り、同様の実施態様の要素に言及するために、同じ参照符号を図面全体で使用する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】ヒアルロン酸(HA)が過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)によって酸化することを示す化学反応式である。
【図1B】種々の酸化度(DO)による酸化ヒアルロン酸(オキシ−HA)のFT−IRスペクトルである。(i)HA粉末(DO:0%)、(ii)低酸化度オキシ−HA(DO:27.3%)、(iii)中酸化度オキシ−HA(DO:44.3%)、および(iv)高酸化度オキシ−HA(DO:60.4%)。矢印は、1725cm-1および836cm-1のオキシ−HAのアルデヒド官能基、並びに、1147cm-1および895cm-1のC−O−CおよびC−Hバンドのピークの変化を示す。
【図2A】アジピン酸ジヒドラジド(ADH)と共有結合により架橋したオキシ−HAを示す概略図である。
【図2B】27ゲージ針(左の写真)によってオキシ−HA/ADH溶液を注入して、無色で透明なヒドロゲル(右の写真)を形成できたことを示す。
【図2C】種々の濃度のADH(2w/v%〜8w/v%)で架橋した6w/v%オキシ−HA(酸化度:44.3%)の屈折率を示す。
【図3A】4℃でのオキシ−HA/ADHヒドロゲルの弾性率(G',○)および粘性率(G'',●)の時間変化を示すグラフである。 オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、6%(重量/v)のオキシ−HA(DO:44.3%)を、(i)2%、(ii)4%、(iii)8%(重量/v)の架橋剤ADHとそれぞれ反応させることによって調製した。オキシ−HA/ADHヒドロゲルの弾性率(G',○)および粘性率(G'',●)を、時間に対して0.1Hzの一定周波数で測定した。 ここで、ゲル化点を、G'およびG''の交点と定義する。ゲル化点を生じるのに必要な時間をゲル化時間と称する。
【図3B】37℃でのオキシ−HA/ADHヒドロゲルの弾性率(G',○)および粘性率(G'',●)の時間変化を示すグラフである。 オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、図3Aに記載のとおりに、オキシ−HAを架橋剤ADHと反応させることによって調製した。
【図4A】リゾチーム(lysozme)消化後のヒドロゲルの質量残存率の時間変化を示すグラフである。オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、6%(重量/v)のオキシ−HA(DO:44.3%)を、2%(◇)、4%(△)および8%(重量/v)(□)の架橋剤ADHとそれぞれ反応させることによって調製した。円柱状ヒドロゲル(300μl)は、10,000ユニット/mlのリゾチームを含む3mlのPBS中に浸漬した。
【図4B】リゾチーム(lysozme)消化後のヒドロゲルの膨潤指数の時間変化を示すグラフである。オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、6%(重量/v)のオキシ−HA(DO:44.3%)を、2%(◇)、4%(△)および8%(重量/v)(□)の架橋剤ADHとそれぞれ反応させることによって調製した。
【図5A】オキシ−HA/ADHヒドロゲルが細胞増殖に対して効果がなかったことを示すグラフである。WST−8アッセイで得られた吸光度の読取りは、細胞増殖に関連していた(n=6)。
【図5B】オキシ−HA/ADHヒドロゲルが細胞毒性効果を有しなかったことを示すグラフである。細胞は、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの抽出培地で培養した(n=6)。
【図6】蛍光顕微鏡による、細胞培養での生存細胞および死細胞の同時検出のために色素で染色した細胞の顕微鏡写真の集合である。倍率:40X、スケールバー200μm。
【図7A】観察期間中に眼内圧の有意な増加が観察されず、手術した眼と対照の眼との間で有意差がみられなかったことを示す。
【図7B】観察期間中に角膜厚さの有意な変化が観察されず、手術した眼と対照の眼との間で有意差がみられなかったことを示す(n=3)。
【図8A】オキシ−HA/ADH8を注入した眼(左)の手術の3週間後、および対照の眼(右)のスリットランプ写真を示す。
【図8B】手術後21日目の網膜組織部分の光学顕微鏡観察を示す(HE染色、200x)。左:手術した眼、右:対照の眼。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書中の多くの改良および変形例が当業者に明らかであるので、以下、例示として、本発明の実施例を説明する。本発明の種々の実施態様をこれから詳細に説明する。
さらに、読み手の便宜上、表題または副題を明細書で使用してもよく、これらは、本発明の範囲に影響がないものとする。さらにまた、本明細書で使用する一部の用語は、具体的に以下のように定義される。
【0018】
(定義)
本明細書で一般に使用する用語は、本発明の文脈内およびそれぞれの用語を使用する特定の文脈で、当技術分野において通常の意味を有する。本発明を説明するのに使用する特定の用語は、明細書中で定義され、本発明の技術分野の当業者に付加的に教示される。
便宜上、特定の用語を、例えば、「 」等を用いて強調してもよい。強調表示の使用は、用語の範囲および意味に影響がない。強調されても強調されてなくても、同じ文脈での用語の範囲および意味は同じである。
同じものを2つ以上の用語で表す場合がある。したがって、本明細書の用語に代えて、代替用語または同義語を使用してもよく、また、その用語が本明細書で用いられているか否かに特別の意味は無い。特定の用語に対し同義語が使用される。ある同義語の使用は、他の同義語の使用を排除しない。
本明細書で論じられる用語の一例を含む、本明細書のいかなる箇所における一例の使用は、例示のみであり、本発明の用語または例示した用語の範囲および意味を全く限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書における種々の実施態様に限定されない。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味である。例外的に一般の解釈と矛盾する場合は、本明細書の定義に基づいて解釈する。
【0020】
本明細書で使用する「約」は、一般に、所定の値または範囲の20パーセント以内、好ましくは10パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を意味するものとする。本明細書で提供される数的な量は、およその量を示し、明示がなければ、「約」を暗示する意味である。
本明細書の説明において、具体的な数または範囲が示される場合、当業者は、この数または範囲が、本発明に関係する特定の分野において適切で妥当な範囲を包含することを意図すると理解する。
【0021】
本明細書で使用するように、用語「ヒドロゲル」とは、親水性ポリマーの架橋ネットワークをいう。
ジヒドラジドは、下記の活性基によって表される。
【化2】
【0022】
式中、Rは、好ましくはカルボン酸由来の、多価有機ラジカルであり得る。
触媒および水抽出手段を用いて、カルボン酸エステルを、アルコール溶液中でヒドラジン水化物と反応させる。最も一般的なジヒドラジドには、アジピン酸由来のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド(SDH)、アミノ酸バリン由来のバリンジヒドラジド(VDH)、および,イソフタル酸ジヒドラジド(isophthalic dihydrazide)(IDH)が含まれる。脂肪族のR基は、任意の長さであり得る。例えば、R基が炭素のみである場合、生じる化合物は、最も短いジヒドラジドである、カルボジヒドラジド(CDH)である。また、イコサン二酸ジヒドラジド(LDH)で、C−18の長さのRが報告されている。ADHの安全性は十分に確立されている。
【0023】
本発明は、硝子体代替物として酸化HA(オキシ−HA)とアジピン酸ジヒドラジド(ADH)からなり、インサイチュ(in situ)で形成される、注入可能なヒドロゲルに関する。前述したように、ヒアルロン酸(HA)は、硝子体液の主成分のうちの一つである。ヒアルロン酸は、バイオマテリアル、組織工学、および他の関連する分野の領域において広く使用されている。これらのグルコース系ポリマーは、ポリマーを高い親水性にさせ、さらには、化学的に機能化させる高密度のヒドロキシル基を含む。
ヒアルロン酸は、1960年代に硝子体代替物として最初に使用された。しかしながら、ヒアルロン酸は、部分的にその低い表面張力およびその比重のために、手術時に、または手術後において、網膜に対する適切なタンポナーデ効果を提供しない。その上、HA溶液は、眼から比較的速く除去されるために、長期的な硝子体代替物として有用でないことが示されている。HA系の硝子体代替物の保持時間を改善するために、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)をオキシデートHAに使用して、アルデヒド官能基を作製した。次いで、ADHによってオキシ−HAを架橋して、澄んで、無色透明なオキシ−HA/ADHヒドロゲルを形成した。
【0024】
オキシ−HAのアルデヒド官能基を、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)分析によって特性評価した。また、オキシ−HAの酸化度を、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイによって決定した。屈折率(RI)は、硝子体代替物の実質的特性であるので、種々の組成物によるオキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率を、屈折計によって測定した。オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化性を、4℃および37℃でレオロジー分析によって評価した。弾性率(G')および粘性率(G'')を記録して、ゲル化時間を決定した。さらに、オキシ−HA/ADHのインビトロの分解時間、膨潤特性および細胞毒性を調査した。
【0025】
(第一態様)
一態様において、本発明は、ヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
この組成物は、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含むヒドロゲルポリマーを含む。ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0026】
本発明の一実施態様において、ヒドロゲルは、37℃で5分以内に、液体状態からゲルに変化する。
【0027】
本発明の一実施態様において、ジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド(succinic dihydrazide)、マロン酸ジヒドラジド(malonic dihydrazide)、エチルマロン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド(sebasic acid dihydrazide)、イソフタル酸ジヒドラジド、アミキュアLDH、アミキュアVDH、マレイン酸ジヒドラジド、およびピメリン酸ジヒドラジドからなる群より選択される。例えば、ヒドロゲルポリマーは、アジピン酸ジヒドラジドによって架橋した酸化ヒアルロン酸を含んでもよい。
【0028】
本発明の別の実施態様において、ヒドロゲルポリマーの架橋した酸化ヒアルロン酸は、C2もしくはC3、またはこれらのアルデヒド基を有するグルクロン酸を含む。
【0029】
本発明の別の実施態様において、ジヒドラジドは、酸化ヒアルロン酸のグルクロン酸のC2およびC3によって、2つの鎖の酸化ヒアルロン酸を架橋する。
【0030】
本発明の別の実施態様において、ヒドロゲルポリマーの架橋した酸化ヒアルロン酸は、C2もしくはC3、または酸化したC2もしくはC3を有するグルクロン酸が含む。
【0031】
本発明の別の実施態様において、酸化ヒアルロン酸とヒドラジドとの重量比は、12:1から3:1まで変動する。本発明の範囲を限定する意図なしに、酸化ヒアルロン酸とアジピン酸ジヒドラジドとの重量比の一例は、3:1である。
【0032】
本発明の別の実施態様において、組成物は、1.341〜1.345の範囲の屈折率を有する。
【0033】
本発明の別の実施態様において、組成物は、1.3420〜1.3442の範囲の屈折率を有する。
【0034】
(第二態様)
別の態様において、本発明は、前述した組成物の調製方法に関する。この調製方法は、酸化ヒアルロン酸を含む第1の溶液と、ジヒドラジドを含む第2の溶液とを混合して、ヒドロゲルポリマーを含んだ組成物を形成する工程を含む。
ヒドロゲルポリマーは、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含む。また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0035】
本発明の一実施態様において、第1の溶液中の酸化ヒアルロン酸の濃度(w/v)は、4%を超え8%未満であり、第2の溶液中のジヒドラジドの濃度(w/v)は、2%から8%まで変動する。
【0036】
本発明の別の実施態様において、組成物中の酸化ヒアルロン酸とジヒドラジドとの重量比または濃度比は、3:1である。
【0037】
本発明の別の実施態様において、組成物中の酸化ヒアルロン酸とアジピン酸ジヒドラジドとの重量比または濃度比は、3:1から12:1である。
【0038】
本発明の別の実施態様において、混合工程は、ゲル化時間が5分以上のヒドロゲルポリマーを形成する温度で行なわれる。少なくとも5分間、溶液状態を維持するヒドロゲルを形成するために、混合工程は4℃で行ってもよい。
【0039】
(第三態様)
さらに、別の態様において、本発明は、次に示すものを含むキットに関する。
a)酸化ヒアルロン酸、b)ジヒドラジド、c)緩衝液、および、d)前述した組成物の調製方法を記載した説明書。
【0040】
本発明の一実施態様において、前述したキットにおけるジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジドである。
【0041】
(第四態様)
さらに、別の態様において、本発明は、次に示す段階を含む眼球の硝子体の置換方法に関する。
a)眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階、
b)硝子体を空気と置換する段階、
c)硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の組成物を注入する段階。
【0042】
(第五態様)
さらにまた、別の態様において、本発明は、次に示す化学式(I)のヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
【化3】
【0043】
式中、m、nは整数であり、m≦5、100≦n≦2500である。
また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0044】
本発明の一実施態様において、m=4である。
【0045】
本発明の別の実施態様において、nは、≦2400、≦2300、≦2200、≦2100、≦2000、≦1900、≦1800、≦1700、≦1600、≦1500、≦1400、≦1300、≦1200、≦1100または≦1000である。
【0046】
本発明の別の実施態様において、nは、≧200、≧300、≧400、≧500、≧600、≧700、≧800または≧900である。
【0047】
本発明の別の実施態様において、組成物中のポリマーにおける酸化HAは、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の理論的酸化度を有する。
【0048】
本発明の別の実施態様において、組成物中の酸化HAは、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の試験的酸化度を有する。
【0049】
本発明の別の実施態様において、酸化HAは、100%の理論的酸化度、および/または20%から80%に及ぶ試験的酸化度を有する。
【0050】
本発明の別の実施態様において、組成物中のポリマーにおける酸化HAは、少なくとも40%、45%または50%の酸化度を有する。
【実施例】
【0051】
本発明の範囲を限定する意図なしに、本発明の実施態様による例示的な機器、装置、方法およびこれらに関連する結果を以下に示す。読み手の便宜上、表題または副題を実施例で使用してもよく、これらは、本発明の範囲に影響がないものとする。
さらに、本明細書で特定の理論を提案し開示する。しかしながら、本発明が、特定の理論または実施方式に関なく実施される限り、その特定の理論が正しいか間違っているかにかかわらず、本発明の範囲を全く限定するものではない。
【0052】
<2.材料、および、調製、試験、評価等の方法>
2.1.材料
ヒアルロン酸(平均分子量Da=3.2×105)は、Q.P.社(日本、東京)から購入した。
四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、tert-ブチルカルバジン酸 (tert-butyl carbazae)、およびアジピン酸ジヒドラジドは、Sigma-Aldrich社(米国、ミズーリ州、セントルイス)から購入した。
ジエチレングリコール、臭化カリウム(KBr)、および過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)は、RDH Chemical社(米国、カリフォルニア州、スプリングバレー)から購入した。
トリクロロ酢酸は、JTB社(日本、東京)から購入した。
【0053】
透析チューブ(MWCO 6,000−8,000)は、Membrane Filtration Products社(米国、テキサス州)から入手した。
ヒト網膜色素上皮細胞(RPE細胞、BCRC60383)は、台湾国立細胞科学センター(National Centre for Cell Sciences)から提供された。
細胞培養培地DMDM/F−12、トリプシン−EDTA、ウシ胎仔血清、およびペニシリン‐ストレプトマイシンは、Gibco社(米国、ニューヨーク州、グランド・アイランド)から購入した。
高速セル増殖アッセイキットIIは、BioVision社(米国、カリフォルニア州)から入手した。
CYTOTOX96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイは、Promega社(米国、ウィスコンシン州)から入手した。
哺乳類細胞の生/死、生存率/細胞毒性キット(Live/Dead Viability/Cytotoxicity kit)は、Molecular Probes社(米国、オレゴン州、ユージーン)から入手した。
【0054】
2.2.酸化ヒアルロン酸(オキシ−HA)の調製
ヒアルロン酸(HA)を、室温で24時間、水溶液中で過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)によって酸化した。アルミホイルでくるんだ300mlのビーカーにおいて、ヒアルロン酸(2.00g)を再蒸留水(200ml)中で溶解した。次いで、種々の濃度の過ヨウ素酸ナトリウム溶液を撹拌しながら徐々に加えた。HAに対するNaIO4のモル比は、低酸化度、中酸化度、高酸化度のオキシ−HAを得るために、それぞれ1:0.5、1:1、1:2とした。
24時間の撹拌後、さらにエチレングリコールを添加して30分撹拌し、反応を停止した。得られた溶液を、再蒸留水で3日間、MWCO6,000−8,000の透析チューブ(CelluSep T2チューブ、Uptima社製)によって透析した。透析処理中に水を少なくとも3回交換した。そして、透析した溶液を、3日間、凍結乾燥器(FDU−1100、東京理化器械社製(日本、東京))によって凍結乾燥して、白色の綿毛状の生成物である酸化ヒアルロン酸(オキシ−HA)を得た。FT−IR分析(JASCO FTIR−4200及びATR PRO450−S)のために、得られたオキシ−HAを人の手で小さなペレットに圧搾した。
【0055】
2.3.酸化度の決定
t−ブチルカルバジン酸(t−BC)を使用し、オキシ−HA中のアルデヒド官能基の数を測定することによって、オキシ−HAの酸化度を定量化した。カルバジン酸塩は、ヒドラゾン形成と類似する方法で、アルデヒドと反応して安定したカルバジン酸塩を形成することで周知である。したがって、過剰のt−BC(25μl、1%水性トリクロロ酢酸中30.0mM)を、24時間、オキシ−HA(25μl、0.6w/v%)のアルデヒド官能基と反応させた後、残余のt−BCを測定することによって、オキシ−HAの酸化度を決定した。過剰の水性トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)水溶液(500μl、6.0mM)を加え、錯体(トリニトロフェニル誘導体)の340nmの吸光度を測定することによって、残余のt−BCを決定した。基準として種々の濃度のt−BC溶液を使用し、較正曲線を得て、試験試料中の未反応のカルバジン酸塩を確認した。
【0056】
2.4.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの調製
各酸化度のオキシ−HA試料を、室温で一晩、6w/v%の最終濃度となるまでリン酸緩衝液(pH7.4)中で個別に溶解した。2、4および8w/v%のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)溶液を、リン酸緩衝液で調製した。水と氷の入ったバス(約0℃)に入れたエッペンドルフにおいて、オキシ−HA溶液(400μl)を2、4および8w/v%のADH溶液(100μl)と混合し、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8のヒドロゲルをそれぞれ形成した。
【0057】
2.5.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率
屈折計(DR−A1 アタゴ社、日本)を使用して、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの屈折率(RI)を測定した。簡潔に説明すれば、液体状態のオキシ−HA/ADH溶液の一部を、ピペット先端で屈折計プリズムに移した。屈折計プリズムを、等温の循環水浴によって37℃でインキュベートした。ゲル化のため10分間待機した後、ヒドロゲルの屈折率(RI)をディジタル画面から読み取った。
【0058】
2.6.オキシ-HA/ADHヒドロゲルのレオロジー評価
円錐状およびプレート状(1−C35/2 Ti)のレオメータ(HAAKE Rheostress 600、Thermo Fisher Scientific社製)を使用して、保存温度4℃および本体温度37℃で、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジー特性を評価した。温度4℃は、混合オキシ−HA/ADH溶液に対する外科医の手術時間の評価に用い、温度37℃は、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化時間の評価に用いた。
振動時間掃引(oscillation time sweep)モードでは、0.1Hz、10Paで運転し、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化時間を決定するために15分後に終了した。弾性率G'および粘性率G''を、RheoWin 3ソフトウェアによって記録して分析した。
【0059】
2.7.オキシ−HA/ADHヒドロゲルのインビトロ(in vitro)分解試験
オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの分解特性を、10000ユニット/mlのリゾチームを含むPBS中に、予め形成したヒドロゲルを浸漬することによって評価した。リゾチームは、多糖部分に作用する眼の酵素であることが知られていることから、分解モデル系にリゾチームを選択した。
簡潔に説明すれば、溶液中のオキシ−HAおよびADHをエッペンドルフで混合し、混合物(オキシ−HA/ADH溶液)300μlをすぐに円柱状の型に移し、10分間ゲル化させて、径0.7mmおよび高さ0.8mmの円柱状ヒドロゲルを形成した。この円柱状オキシ−HA/ADHヒドロゲルを、24ウエルの培養皿に入れ、リゾチームを含む3mlのPBSをそれぞれのウエルに加えた。ヒドロゲル形成直後に、ヒドロゲルの初期乾燥重量(Wid)を決定した。規則的な間隔で、ヒドロゲルを取り除き、凍結乾燥器によって、これを72時間、凍結乾燥した。種々の時点のオキシ−HA/ADHヒドロゲルの乾燥重量(Wd)を秤量し、分解割合を、[(Wid−Wd)/Wid]によって算出した。
【0060】
2.8.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの膨潤試験
オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの膨潤指数を、インビトロの分解試験と同じ条件下で評価した。ヒドロゲル形成直後にヒドロゲルの初期重量(Wi)を決定し、次いで、これを24ウエル培養皿に入れた。規則的な間隔で、リゾチームを含むPBSからヒドロゲルを取り除き、ろ紙で表層水を拭き取ってヒドロゲルを取り除き、これを秤量(Wt)し、同じ容器(各測定で緩衝液を交換した)に戻した。WtとWiの比率から膨潤指数を算出した。
【0061】
2.9.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの細胞毒性評価
オキシ−HA/ADHヒドロゲルの細胞毒性評価を、ISO規格に従ってヒト網膜色素上皮細胞(RPE細胞、BCRC60383、台湾国立細胞科学センター)の単層による抽出培地を試験することによって行った。オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルを、標準培地(DMEM/F−12)と共に、37℃で72時間、抽出率0.75cm2/mlでインキュベートすることによって抽出培地を調製した。
200μlの抽出培地を単層のRPE細胞で試験した。RPE細胞を、5x103細胞/ウエルの細胞密度で96ウエルの培養皿に接種し、37℃で一晩、標準培地に供した。その後、標準培地を抽出培地と交換した。対照(標準培地)、負の対照(Al2O3抽出培地)、正の対照(0.1%Triton X−100含有培地)、ならびに試験群(オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8抽出培地)を含む群を、6回反復して試験した(n=6)。
37℃で1日間および3日間インキュベーション後、高速セル増殖アッセイキットII(BioVision社製)、およびCYTOTOX96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega社製)をそれぞれ使用して、細胞生存率および細胞毒性を定量的に評価した。また、抽出培地で処理したRPE細胞を、生/死 染色キット(Molecular Probes # L3224)で染色した。
【0062】
高速セル増殖アッセイキットIIを使用して細胞生存率を評価した。細胞を1日間および3日間培養し、その後、培地を廃棄し、それぞれのウエルにおいて0.2ml水溶性テトラゾリウム−8(WST−8)標準溶液と交換した。WST−8を生存細胞における脱水素酵素によって低減して、黄色の有色生成物(ホルマザン)を生成することができる。2時間インキュベーション後、100μl標準溶液を、450nmでの分光測光器による読み取りによって定量的に評価した。標準波長は650nmであった。
【0063】
CYTOTOX96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイキットを使用して、細胞毒性を評価した。このアッセイキットは、細胞溶解で放出した安定性のあるサイトゾル酵素である乳酸脱水素酵素(LDH)を定量的に測定した。1日間および3日間の培養後、培地および全細胞溶解を共に、アッセイマニュアルに従って490nmの吸光度で測定した。また、抽出培地(RPE細胞によりインキュベーションしていない)も、バックグラウンドとして使用するため評価した。細胞毒性を次に示す数式によって算出した。
【数1】
【0064】
2.10.予備動物試験
3羽のニュージーランド産シロウサギ(2.8〜3.2kg)の6つの眼を使用した。ケタラール/チャナジン(Chanazine)2%の筋肉注射による全身麻酔下で手術を行った。手術用顕微鏡下で、手術用メスによって、左眼におよそ3mmの強膜切開を形成した。
18ゲージ(gague)針によって硝子体をできるだけ多く吸引し、空気と置換した後、オキシ−HA/ADH溶液を硝子体腔に注入した。手術後、眼を、1週間、1日に3回、抗生物質点眼薬および塩酸テトラサイクリン(tetracyclin hydrochloride)眼軟膏として、ゲンタマイシン(genticin、Roche社製)で処理した。また、手術していない対照として右眼を使用した。
眼科用テーブルスリットランプ(Topcon Medical Systems社製)を使用して、前部および透光体を観察し記録した。手術後第1、5、8、12、15および21日目に、schiotz眼圧計によって眼内圧(IOP)を測定した。超音波パキメトリー(DGH Technology社製)を使用して、中心角膜厚さを測定した。手術3週間後、3羽のウサギを屠殺した。右眼(対照)および左眼(手術したもの)を、これらの動物から採取した。この眼を10%ホルムアルデヒド溶液で定着し、これらをパラフィンに埋め込み、光学顕微鏡観察のためにヘマトキシロンおよびエオシン(HE染色)で染色した。
【0065】
2.11.統計分析
すべてのデータを「平均±標準偏差」として示す。群間の統計的相違を、一元配置分散分析(ANOVA)を使用して試験した。統計的有意性は、予めp=0.05の確率水準に設定した。
【0066】
<3.結果>
3.1.酸化ヒアルロン酸(オキシ-HA)の特性評価
ヒアルロン酸(HA)を、室温で、種々の濃度の過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化した。図1Aは、NaIO4によってHAを酸化して、2つのアルデヒド官能基を形成する、化学反応を示す。
図1Bに、(i)HA粉末、および、(ii)低酸化度、(iii)中酸化度、(iv)高酸化度の酸化HA(オキシ−HA)オキシ−HAのFT−IRスペクトルを示した。
(ii)、(iii)、(iv)ののFT−IRスペクトルにおいて、1725cm-1および836cm-1にアルデヒド官能基の顕著なピークを観察することができ、その強度は、酸化度の増加((ii)<(iii)<(iv))に伴って増加した。
(i)HA粉末のスペクトルの1147cm-1および895cm-1のピークは、C−O−C(エーテル結合)、およびC−Hと関係があった。これらの2つのピークは、アルデヒド官能基の形成により、(ii)、(iii)、(iv)のスペクトルにおいて、1112cm-1および875cm-1へそれぞれシフトした。
【0067】
オキシ−HAの酸化度を、前述したt−BC滴定(TNBSアッセイ)によってさらに測定した。
表1は、HA対のNaIO4のモル比から算出した理論的酸化度、およびTNBSアッセイによって測定して得た酸化度を示す。予想どおりに、NaIO4量の増加に伴って、オキシ−HAの酸化度は、27.3±2.3%から60.4±2.66%まで増加した。中酸化度(44.3±4.25%)を有するオキシ−HAについて、次に示す試験において、種々の濃度のADH(2、4および8w/v%)によって架橋した。
【0068】
【表1】
【0069】
3.2.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率(RI)
オキシ−HAが、二官能性架橋剤であるADHにより架橋して、化学開始剤を使用することなく、ヒドロゲルを形成できることがわかった。図2Aは、他の化学試薬を添加することなく、架橋反応が自然に発生し、反応が開始されたことを示す。
オキシ−HAのアルデヒド官能基は、ADHのNH2官能基と急速に反応して、無色透明なオキシ−HA/ADHヒドロゲルを形成した(図2B、左右の写真)。
ADHの濃度が2%から8%に増加するに伴って、オキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率は1.3420から1.3442まで変化した(図2C)。この値は、ヒト硝子体液の屈折率(1.3345〜1.3348)に近い。
【0070】
3.3.オキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジー特性
振動時間掃引(Oscillatory time sweeps)を行い、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化挙動を評価した。図3は、4℃および37℃のオキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの弾性率(G')および粘性率(G'')を示す。G'およびG''の交点を、ゲル生成を示すゲル化点と定義する。ゲル化点を生じるのに必要な時間を試料のゲル化時間と称する。
【0071】
図3Aは、4℃のオキシ−HA/ADHヒドロゲル(オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8)のレオロジーの結果を示す。これらの結果は、すべての型のオキシ−HA/ADHヒドロゲルが、ヒドロゲル中のADH濃度によって、4℃で3〜8分間、液体状態に維持できることを示す。
図3Bは、37℃のオキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジーの結果を示す。すべてのヒドロゲルのゲル化時間は、143〜175秒と考えられ、これは、オキシ−HA/ADHヒドロゲルが、37℃、3分以内で、ゲルマトリックスに変化し始めることを示している。オキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジー評価の結果を、表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
3.4.オキシ−HA/ADHヒドロゲルのインビトロ分解および膨潤指数
図4Aは、オキシ−HA/ADHヒドロゲルの質量残存率の時間変化を示す。オキシ−HA/ADH2(◇)、およびオキシ−HA/ADH4(△)ヒドロゲルをそれぞれ、第3日目および第14日目で完全に溶解した。オキシ−HA/ADH8ヒドロゲル(□)の質量残存率は、第3日目において86.67±3.54%であり、第35日で徐々に61.02±3.13%まで減少した。
図4Bは、種々の濃度のADHで架橋したオキシ−HAの膨潤指数を示す。ヒドロゲルが完全に溶解するまで(3日以内)、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルの膨潤指数は、時間の経過に伴って増加した。オキシ−HA/ADH4およびオキシ−HA/ADH8の膨潤指数は、最初の3日間でわずかに減少し、その後、ヒドロゲルが分解し始めるまで、一定の値を維持した。
【0074】
3.5.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの細胞毒性
細胞生存率をWST−8アッセイによって評価した(図5A)。第1日目では、試験群(オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8)の有意差はなかった(p>0.5)。培養第3日目の対照、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8群のWST−8 OD450値は、それぞれ、1.27±0.03、1.20±0.05、1.14±0.04、および0.99±0.06だった。オキシ−HA/ADH2およびオキシ−HA/ADH4の抽出培地(p>0.5)は、対照および負の対照群と比較して、RPE細胞の細胞生存率に顕著な影響を及ぼさなかった。しかしながら、オキシ−HA/ADH8の抽出培地は、対照群(p<0.001)と比較して、細胞生存率のわずかな減少が生じた。
【0075】
さらに、LDHアッセイによって細胞毒性を評価した(図5B)。オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8の細胞毒性割合は、それぞれ、6.1640±0.5805%、6.0720±0.3872%、および5.3166±0.9590%であった。この結果は、対照群(6.9811±0.6663%、p>0.5)と比較して、オキシ-HA/ADH抽出培地群では有意差がないことを示している。
【0076】
図6は、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの抽出培地で培養したRPE細胞の蛍光顕微鏡写真をそれぞれ示す。ポリアニオン色素カルセイン−AMは、生存細胞内で保持され、生存細胞において強くて均一な緑色蛍光を生成することができる。一方、EthD−1は、損傷を受けた細胞膜を有する細胞に入り、死細胞において明るい赤色蛍光を生成することができる。生/死細胞の染色の結果は、種々の抽出培地で培養したほとんどの細胞が生存できることを示した。
【0077】
3.6.予備動物試験
図7Aは、手術後の眼内圧(IOP)の変化を示す。手術した眼におけるIOPは、手術後第1日目でわずかに減少した。オキシ−HA/ADHヒドロゲル注入後第5日目および第8日目で、IOPに上昇傾向があった。手術後第12日目、15日目および21日目で、IOPがプラトーレベルに達した。観察期間中に手術した眼と対照の眼の間のIOPに有意差はなかった。
図7Bは、手術した眼および対照の眼の角膜厚さを示す。群間の角膜厚さに有意差はなかった。
【0078】
図8Aは、オキシ−HA/ADH8注入後第21日目の眼のスリットランプ検査の写真を示す。手術した眼の角膜および水晶体は、欠陥を示さなかった。結果は、手術3週間後に検査した眼の前部において、顕著な炎症または他の疾病を示さなかった。
図8Bは、手術後第21日目の手術した眼および対照の眼の網膜部分を示す。手術した眼の網膜層は容易に検出された。また、炎症反応もしくは浸潤、または、対照の眼とのいかなる相違もなかった。
【0079】
<4.考察>
患者が硝子体切除手術を受ける場合、硝子体腔から多くの硝子体液を除去する。生来の硝子体は再生することができないので、硝子体腔を硝子体代替物で充填して、網膜の位置を保持し、網膜が再び剥離するのを防ぐことが必要である。過去数十年間で、硝子体代替物の開発は、研究者にとって挑戦であった。多くの生体高分子および合成化合物が研究室で検討された。しかしながら、恒久的な硝子体代替物となりうる理想的な材料は、現在開発されていない。
【0080】
本研究では、27ゲージ針によって硝子体腔に注入することができ、その後、ゲル様物質に変化することができる無色透明なオキシ−HA/ADHヒドロゲルを得ることができた。オキシ−HAにおけるアルデヒド官能基をNaIO4によって形成した。すなわち、FT−IRによって特性評価されるように(図1Bの1725cm-1および836cm-1のピーク)、グルクロン酸のC2−C3ヒドロキシル基を開裂してジアルデヒドを形成した。オキシ−HAのジアルデヒドは、ADHのヒドラジド基と反応して、オキシ−HA/ADHヒドロゲルにおいて分子間ネットワークを形成することができた。
【0081】
屈折率は、硝子体代替物の適用において重要な光学特性のうちの一つである。硝子体代替物の不適切な屈折率は、硝子体切除手術後に患者の視力に影響を及ぼす。ガスタンポナーデは、眼底検査および患者の視力を共に、一時的に制限するのに十分厳格な光学的変化を誘導する。現在の硝子体代替物(例えば、シリコーン油、nD=1.40516、ヘビーシリコーン油、nD=1.3008)の屈折率は、天然の硝子体の屈折率(nD=1.336)と異なるため、タンポナーデ眼における屈折の変化の誘導を招くこととなる。
それに対し、オキシ−HA/ADH8の屈折率は約1.3342であり、これはヒト硝子体と非常に類似している。硝子体代替物としてのオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの利用は、硝子体切除手術後に好ましくない屈折の変化を回避することができる。
【0082】
小ゲージ針による注入は、硝子体代替物の送入のための臨床的な一般的な手法である。図2B(左の写真)に示すように、27ゲージ針によって、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルを容易に注入することができた。注入能は、眼科医および患者への重要な要因である。
手術時間は、眼科医が硝子体腔に液体状態のヒドロゲルを注入するのに十分である必要がある。また、溶液‐ゲル変化時間は、ヒドロゲルの押出しを防ぐように、できるだけ短いことが必要である。レオロジー評価は、オキシ−HA溶液とADH溶液の混合物が、約8分間、溶液形態で維持できることを示した。したがって、眼科医は、4℃でオキシ−HAとADH溶液を混合した後、注射器に混合オキシ−HA/ADH溶液を移すのに十分な時間(8分)が与えられる。また、液体形態で注入することができるので、ゲル形態で代替物を導入する際の困難性を克服する。このため、眼への硝子体代替物の送入方法において、侵襲性を最小とすることができる。
【0083】
低架橋ヒドロゲル(例えば、オキシ−HA/ADH2)において、膨潤指数はすぐに増加し、3日以内に完全に溶解した。この間、ヒドロゲルは加水分解を受け、ヒドラゾン結合は時間の経過に伴ってほぼ直線的に分解した。高架橋ヒドロゲル(例えば、オキシ−HA/ADH4およびオキシ−HA/ADH8)において、膨潤指数は、最初の3日間で減少した後、一定した値であり、その後、ネットワークが完全に溶解するまで、増加した。経時的な膨潤指数の増加は、ヒドロゲルネットワーク中のヒドラゾン結合の加水分解の結果であった。ヒドロゲル中のヒドラゾン結合が加水分解する場合、該ネットワークは、膨脹し、多くの水を含み、その後、完全に溶解する。
【0084】
質量損失試験によれば、オキシ−HA/ADH4およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルでみられた分解挙動は、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルでみられたものと異なっていた。高いADH含量の、したがってヒドラゾン結合の多い、ヒドロゲルは、低いADH含量のヒドロゲルよりも遅く加水分解する傾向がある。高架橋ヒドロゲルでは、おそらく、低架橋密度または未架橋ヒアルロン酸を有するヒドロゲル領域の加水分解により、最初の3日間の質量損失(5〜15%)において初期の減少があった。この段階の後に、おそらく、高架橋領域の分解により、次の数日または数週で質量のわずかな減少があった。そして、ヒドロゲル中のヒドラゾン結合が加水分解し、これは、溶解段階で生じた。
【0085】
オキシ−HA/ADH4ヒドロゲルは、第8−12日目で膨潤の進行を示した。これは、ヒドラゾン結合がこのときに加水分解し、その後、第14日目で溶解段階があることを意味した。これによって、ヒドロゲル質量の減少が生じ、最終的にヒドロゲルの完全溶解が生じた。一方、高度の架橋により、オキシ−HA/ADH8は、3日間一定の膨潤指数に達し、ヒドロゲルは、第30−35日目で膨潤の進行を示した。
【0086】
インビトロ分解試験は、酵素(10,000ユニット/mlのリゾチームを含むPBS)の存在下で、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの30−40%のみが分解するにすぎず、ヒドロゲルが5週間安定することを示した。シリコーン油およびガスは、臨床的に、眼内容積を回復し網膜剥離を操作する網膜再付着手術における一般的な硝子体代替物である。これらは、網膜破損による液体の通過を防ぎ、正常な網膜−網膜色素上皮(RPE)の付着を維持し、網膜の再付着を維持する。ガスの寿命は、ガスの種類、気泡容積、初期濃度、および眼内圧によって、通常数日から2週間以内である。数週以内に再吸収する眼内のガスとは対照的に、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルは、インビトロ分解試験で少なくとも5週間ゲルマトリックスを維持することができる。臨床的考慮において、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの寿命は、網膜付着に有益である。さらに、患者がガスタンポナーデにより硝子体切除手術を受ける場合、ヒドロゲルは、腹臥位の不便性を克服する。
【0087】
網膜色素上皮(REP)細胞は、網膜剥離または局所的な網膜切除後に、眼球を充填する硝子体代替物に直接暴露することが多いので、REP細胞を細胞毒性評価のための標的細胞として選択した。また、RPE細胞も、網膜の再付着の失敗および増殖性硝子体網膜症(PVR)に関係することが分かった。細胞生存率アッセイ(WST−8)、および細胞毒性(LDHアッセイ)は、オキシ−HA/ADHヒドロゲルが、インビトロ評価で、生体適合性であり、RPE細胞による毒性がなかったことを示す。
【0088】
ヒドロゲルの分解産物は、臨床応用についての別の懸念である。分解評価の結果によれば、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルは、水性環境中で3日以内に分解した。これは、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルが、抽出処理(37℃、72時間)時に、抽出培地ですべて分解し、分解産物が、細胞毒性評価でRPE細胞と培養されたことを示す。細胞毒性分析データ(図5A、5B)によれば、この群では、顕著な細胞毒性はなかった。これらの結果は、オキシ−HA/ADHヒドロゲルからの分解産物が、WST−8および細胞毒性アッセイに基づき、RPE細胞に対して細胞毒性がないことを示した。さらに、生/死細胞染色も、種々の抽出培地からほとんどの培養細胞が生存できたことを示す。
【0089】
オキシ−HA/ADH8を注入した眼のスリットランプ検査は、観察期間中、前眼部で炎症または混濁が発生しないことを示した。眼内圧の増加は、硝子体切除手術後に生じることが多い。しかしながら、手術した眼の眼内圧は、観察期間中に正常なレベルにとどまった。これは、オキシ−HA/ADHヒドロゲルの膨潤指数のわずかな減少によるものであると考えられた。また、網膜組織の組織学的検査も、構造変化または分解がないことを示し、対照の眼との有意差も示さなかった。
【0090】
<5.結論>
現在、臨床応用のための理想的な硝子体代替物は、まだ開発されていない。多くの研究は、硝子体代替物のための適切なバイオマテリアルを開発することを試みた。
本発明は、注入可能な新規ヒアルロン酸系ヒドロゲルであるオキシ−HA/ADHの合成および特性に関する。このヒドロゲルは、適切な屈折率を有し、注入可能であり、インサイチュのゲル化性を有し、また、REP細胞に対して細胞毒性を示さない等の、硝子体代替物としての利用において幾つかの有益な特性を示す。さらに、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルは、眼の酵素(リゾチーム)によって、5週間、インビトロで分解しなかった。予備動物試験では、オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、観察期間に重篤な合併症を誘発しなかった。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、眼球の硝子体代用物として使用される組成物に関し、具体的には、硝子体液代替物として使用される組成物、および、その調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硝子体は、水晶体の後部で、網膜の前部にある眼の硝子体腔中の澄んで透明な膠様質である。硝子体は、眼の容積の3分の2を占め、およそ4gの重量および約4mlの容積である。硝子体の主成分には、水(98%)、膠原細繊維、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸(HA)、および他の残余溶質が含まれる。特異的疾患、年齢に関連する変性または外傷は、硝子体で、HA変性およびコラーゲン沈殿を含む病理変化をもたらし、基質(matrix)の液化が生じる。変性または液化した硝子体は、浮遊物の形成をもたらし、最終的には、後部硝子体剥離および網膜剥離の可能性が生じる。
【0003】
臨床治療時において、経扁平部硝子体切除(PPV)は、糖尿病性網膜症、難治性網膜剥離(complex retinal detachment)(例えば、外傷によるもの)、および黄斑円孔を含む、眼に関連する多くの疾病を治療するための最も重要な手術のうちの一つである。
PPV時に、硝子体を切断し吸引し、次いで、ガス(空気、パーフルオロプロパン(perfluropropane)、もしくは六フッ化硫黄)、またはシリコーン油等の硝子体代替物と一般に交換する。硝子体代替物を使用して、硝子体腔を充填し、硝子体切除手術後に網膜が再付着するのを支援する。手術後に、硝子体代替物は、網膜と網膜色素上皮(RPE)細胞の間の付着を形成する、位置に網膜を保持することができる。水より軽いガスは、剥離した網膜を平坦にし、治療における網膜の付着を保持するのに有用である。
【0004】
しかしながら、ガスを使用する場合、手術後1週間以上、腹臥位を維持する必要があることが多い。1960年代以来、シリコーン油を、難治性網膜剥離(complicated retinal detachment)において、または手術後に姿勢を維持することができない患者(例えば、子供)において、手術後に付着した網膜を保持するガスの代わりに使用することもある。しかし、シリコーン油を後で除去しない場合、長期的合併症が生じる場合がある。その上、シリコーン油は、角膜内皮細胞等の眼組織に対して細胞毒性でもあり得る。
【0005】
近年、天然、半合成、または合成高分子を使用する多数の硝子体代替材料が調査されており、これらには、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(1−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(グリセリルメタクリラート)、ポリ(メチル−2−アクリルアミド−2−メトキシアセタート)、およびポリ(2−ヒドロキシエチルアクリラート)が含まれる。理想的な硝子体代替物としての基準には、清澄度、透明度、屈折率、タンポナーデ代替物として作用するのに十分な剛性、代謝物質移動の許容能、非吸収性、親水性組成、および小ゲージ針による注入能が含まれる。これらの基準は、硝子体代替物の適切な材料を見つけることが容易な課題ではないことを示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−526965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、特に硝子体代替物に関して、当技術分野で、前述した不備および不適切な点を検討するための、これまで検討されていないニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、ヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
この組成物は、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含むヒドロゲルポリマーを含む。ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0009】
別の態様において、本発明は、前述した組成物の調製方法に関する。この調製方法は、酸化ヒアルロン酸を含む第1の溶液と、ジヒドラジドを含む第2の溶液とを混合して、ヒドロゲルポリマーを含んだ組成物を形成する工程を含む。
ヒドロゲルポリマーは、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含む。また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0010】
さらに、別の態様において、本発明は、次に示すものを含むキットに関する。
a)酸化ヒアルロン酸、b)ジヒドラジド、c)緩衝液、および、d)前述した組成物の調製方法を記載した説明書。
【0011】
さらに、別の態様において、本発明は、次に示す段階を含む眼球の硝子体の置換方法に関する。
眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階、
硝子体を空気と置換する段階、
硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の組成物を注入する段階。
【0012】
さらにまた、別の態様において、本発明は、次に示す化学式(I)のヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
【化1】
【0013】
式中、m、nは整数であり、m≦5、100≦n≦2500である。
また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに5分以内に変化する、という特性を有する。
【0014】
本明細書の種々の変形例および改良は、本開示の新規概念の趣旨および範囲から逸脱することなく、影響を及ぼし得るが、これらの態様および別の態様は、次に示す図面と共に把握される、次に示す好ましい実施態様の記載から明らかになる。
【0015】
添付の図面は、説明と共に、本発明の1以上の実施態様を例示し、本発明の原理について説明するのに有用である。可能な限り、同様の実施態様の要素に言及するために、同じ参照符号を図面全体で使用する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】ヒアルロン酸(HA)が過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)によって酸化することを示す化学反応式である。
【図1B】種々の酸化度(DO)による酸化ヒアルロン酸(オキシ−HA)のFT−IRスペクトルである。(i)HA粉末(DO:0%)、(ii)低酸化度オキシ−HA(DO:27.3%)、(iii)中酸化度オキシ−HA(DO:44.3%)、および(iv)高酸化度オキシ−HA(DO:60.4%)。矢印は、1725cm-1および836cm-1のオキシ−HAのアルデヒド官能基、並びに、1147cm-1および895cm-1のC−O−CおよびC−Hバンドのピークの変化を示す。
【図2A】アジピン酸ジヒドラジド(ADH)と共有結合により架橋したオキシ−HAを示す概略図である。
【図2B】27ゲージ針(左の写真)によってオキシ−HA/ADH溶液を注入して、無色で透明なヒドロゲル(右の写真)を形成できたことを示す。
【図2C】種々の濃度のADH(2w/v%〜8w/v%)で架橋した6w/v%オキシ−HA(酸化度:44.3%)の屈折率を示す。
【図3A】4℃でのオキシ−HA/ADHヒドロゲルの弾性率(G',○)および粘性率(G'',●)の時間変化を示すグラフである。 オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、6%(重量/v)のオキシ−HA(DO:44.3%)を、(i)2%、(ii)4%、(iii)8%(重量/v)の架橋剤ADHとそれぞれ反応させることによって調製した。オキシ−HA/ADHヒドロゲルの弾性率(G',○)および粘性率(G'',●)を、時間に対して0.1Hzの一定周波数で測定した。 ここで、ゲル化点を、G'およびG''の交点と定義する。ゲル化点を生じるのに必要な時間をゲル化時間と称する。
【図3B】37℃でのオキシ−HA/ADHヒドロゲルの弾性率(G',○)および粘性率(G'',●)の時間変化を示すグラフである。 オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、図3Aに記載のとおりに、オキシ−HAを架橋剤ADHと反応させることによって調製した。
【図4A】リゾチーム(lysozme)消化後のヒドロゲルの質量残存率の時間変化を示すグラフである。オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、6%(重量/v)のオキシ−HA(DO:44.3%)を、2%(◇)、4%(△)および8%(重量/v)(□)の架橋剤ADHとそれぞれ反応させることによって調製した。円柱状ヒドロゲル(300μl)は、10,000ユニット/mlのリゾチームを含む3mlのPBS中に浸漬した。
【図4B】リゾチーム(lysozme)消化後のヒドロゲルの膨潤指数の時間変化を示すグラフである。オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、6%(重量/v)のオキシ−HA(DO:44.3%)を、2%(◇)、4%(△)および8%(重量/v)(□)の架橋剤ADHとそれぞれ反応させることによって調製した。
【図5A】オキシ−HA/ADHヒドロゲルが細胞増殖に対して効果がなかったことを示すグラフである。WST−8アッセイで得られた吸光度の読取りは、細胞増殖に関連していた(n=6)。
【図5B】オキシ−HA/ADHヒドロゲルが細胞毒性効果を有しなかったことを示すグラフである。細胞は、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの抽出培地で培養した(n=6)。
【図6】蛍光顕微鏡による、細胞培養での生存細胞および死細胞の同時検出のために色素で染色した細胞の顕微鏡写真の集合である。倍率:40X、スケールバー200μm。
【図7A】観察期間中に眼内圧の有意な増加が観察されず、手術した眼と対照の眼との間で有意差がみられなかったことを示す。
【図7B】観察期間中に角膜厚さの有意な変化が観察されず、手術した眼と対照の眼との間で有意差がみられなかったことを示す(n=3)。
【図8A】オキシ−HA/ADH8を注入した眼(左)の手術の3週間後、および対照の眼(右)のスリットランプ写真を示す。
【図8B】手術後21日目の網膜組織部分の光学顕微鏡観察を示す(HE染色、200x)。左:手術した眼、右:対照の眼。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書中の多くの改良および変形例が当業者に明らかであるので、以下、例示として、本発明の実施例を説明する。本発明の種々の実施態様をこれから詳細に説明する。
さらに、読み手の便宜上、表題または副題を明細書で使用してもよく、これらは、本発明の範囲に影響がないものとする。さらにまた、本明細書で使用する一部の用語は、具体的に以下のように定義される。
【0018】
(定義)
本明細書で一般に使用する用語は、本発明の文脈内およびそれぞれの用語を使用する特定の文脈で、当技術分野において通常の意味を有する。本発明を説明するのに使用する特定の用語は、明細書中で定義され、本発明の技術分野の当業者に付加的に教示される。
便宜上、特定の用語を、例えば、「 」等を用いて強調してもよい。強調表示の使用は、用語の範囲および意味に影響がない。強調されても強調されてなくても、同じ文脈での用語の範囲および意味は同じである。
同じものを2つ以上の用語で表す場合がある。したがって、本明細書の用語に代えて、代替用語または同義語を使用してもよく、また、その用語が本明細書で用いられているか否かに特別の意味は無い。特定の用語に対し同義語が使用される。ある同義語の使用は、他の同義語の使用を排除しない。
本明細書で論じられる用語の一例を含む、本明細書のいかなる箇所における一例の使用は、例示のみであり、本発明の用語または例示した用語の範囲および意味を全く限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書における種々の実施態様に限定されない。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味である。例外的に一般の解釈と矛盾する場合は、本明細書の定義に基づいて解釈する。
【0020】
本明細書で使用する「約」は、一般に、所定の値または範囲の20パーセント以内、好ましくは10パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を意味するものとする。本明細書で提供される数的な量は、およその量を示し、明示がなければ、「約」を暗示する意味である。
本明細書の説明において、具体的な数または範囲が示される場合、当業者は、この数または範囲が、本発明に関係する特定の分野において適切で妥当な範囲を包含することを意図すると理解する。
【0021】
本明細書で使用するように、用語「ヒドロゲル」とは、親水性ポリマーの架橋ネットワークをいう。
ジヒドラジドは、下記の活性基によって表される。
【化2】
【0022】
式中、Rは、好ましくはカルボン酸由来の、多価有機ラジカルであり得る。
触媒および水抽出手段を用いて、カルボン酸エステルを、アルコール溶液中でヒドラジン水化物と反応させる。最も一般的なジヒドラジドには、アジピン酸由来のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)、セバシン酸ジヒドラジド(SDH)、アミノ酸バリン由来のバリンジヒドラジド(VDH)、および,イソフタル酸ジヒドラジド(isophthalic dihydrazide)(IDH)が含まれる。脂肪族のR基は、任意の長さであり得る。例えば、R基が炭素のみである場合、生じる化合物は、最も短いジヒドラジドである、カルボジヒドラジド(CDH)である。また、イコサン二酸ジヒドラジド(LDH)で、C−18の長さのRが報告されている。ADHの安全性は十分に確立されている。
【0023】
本発明は、硝子体代替物として酸化HA(オキシ−HA)とアジピン酸ジヒドラジド(ADH)からなり、インサイチュ(in situ)で形成される、注入可能なヒドロゲルに関する。前述したように、ヒアルロン酸(HA)は、硝子体液の主成分のうちの一つである。ヒアルロン酸は、バイオマテリアル、組織工学、および他の関連する分野の領域において広く使用されている。これらのグルコース系ポリマーは、ポリマーを高い親水性にさせ、さらには、化学的に機能化させる高密度のヒドロキシル基を含む。
ヒアルロン酸は、1960年代に硝子体代替物として最初に使用された。しかしながら、ヒアルロン酸は、部分的にその低い表面張力およびその比重のために、手術時に、または手術後において、網膜に対する適切なタンポナーデ効果を提供しない。その上、HA溶液は、眼から比較的速く除去されるために、長期的な硝子体代替物として有用でないことが示されている。HA系の硝子体代替物の保持時間を改善するために、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)をオキシデートHAに使用して、アルデヒド官能基を作製した。次いで、ADHによってオキシ−HAを架橋して、澄んで、無色透明なオキシ−HA/ADHヒドロゲルを形成した。
【0024】
オキシ−HAのアルデヒド官能基を、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)分析によって特性評価した。また、オキシ−HAの酸化度を、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイによって決定した。屈折率(RI)は、硝子体代替物の実質的特性であるので、種々の組成物によるオキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率を、屈折計によって測定した。オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化性を、4℃および37℃でレオロジー分析によって評価した。弾性率(G')および粘性率(G'')を記録して、ゲル化時間を決定した。さらに、オキシ−HA/ADHのインビトロの分解時間、膨潤特性および細胞毒性を調査した。
【0025】
(第一態様)
一態様において、本発明は、ヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
この組成物は、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含むヒドロゲルポリマーを含む。ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0026】
本発明の一実施態様において、ヒドロゲルは、37℃で5分以内に、液体状態からゲルに変化する。
【0027】
本発明の一実施態様において、ジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド(succinic dihydrazide)、マロン酸ジヒドラジド(malonic dihydrazide)、エチルマロン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド(sebasic acid dihydrazide)、イソフタル酸ジヒドラジド、アミキュアLDH、アミキュアVDH、マレイン酸ジヒドラジド、およびピメリン酸ジヒドラジドからなる群より選択される。例えば、ヒドロゲルポリマーは、アジピン酸ジヒドラジドによって架橋した酸化ヒアルロン酸を含んでもよい。
【0028】
本発明の別の実施態様において、ヒドロゲルポリマーの架橋した酸化ヒアルロン酸は、C2もしくはC3、またはこれらのアルデヒド基を有するグルクロン酸を含む。
【0029】
本発明の別の実施態様において、ジヒドラジドは、酸化ヒアルロン酸のグルクロン酸のC2およびC3によって、2つの鎖の酸化ヒアルロン酸を架橋する。
【0030】
本発明の別の実施態様において、ヒドロゲルポリマーの架橋した酸化ヒアルロン酸は、C2もしくはC3、または酸化したC2もしくはC3を有するグルクロン酸が含む。
【0031】
本発明の別の実施態様において、酸化ヒアルロン酸とヒドラジドとの重量比は、12:1から3:1まで変動する。本発明の範囲を限定する意図なしに、酸化ヒアルロン酸とアジピン酸ジヒドラジドとの重量比の一例は、3:1である。
【0032】
本発明の別の実施態様において、組成物は、1.341〜1.345の範囲の屈折率を有する。
【0033】
本発明の別の実施態様において、組成物は、1.3420〜1.3442の範囲の屈折率を有する。
【0034】
(第二態様)
別の態様において、本発明は、前述した組成物の調製方法に関する。この調製方法は、酸化ヒアルロン酸を含む第1の溶液と、ジヒドラジドを含む第2の溶液とを混合して、ヒドロゲルポリマーを含んだ組成物を形成する工程を含む。
ヒドロゲルポリマーは、a)酸化ヒアルロン酸と、b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含む。また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0035】
本発明の一実施態様において、第1の溶液中の酸化ヒアルロン酸の濃度(w/v)は、4%を超え8%未満であり、第2の溶液中のジヒドラジドの濃度(w/v)は、2%から8%まで変動する。
【0036】
本発明の別の実施態様において、組成物中の酸化ヒアルロン酸とジヒドラジドとの重量比または濃度比は、3:1である。
【0037】
本発明の別の実施態様において、組成物中の酸化ヒアルロン酸とアジピン酸ジヒドラジドとの重量比または濃度比は、3:1から12:1である。
【0038】
本発明の別の実施態様において、混合工程は、ゲル化時間が5分以上のヒドロゲルポリマーを形成する温度で行なわれる。少なくとも5分間、溶液状態を維持するヒドロゲルを形成するために、混合工程は4℃で行ってもよい。
【0039】
(第三態様)
さらに、別の態様において、本発明は、次に示すものを含むキットに関する。
a)酸化ヒアルロン酸、b)ジヒドラジド、c)緩衝液、および、d)前述した組成物の調製方法を記載した説明書。
【0040】
本発明の一実施態様において、前述したキットにおけるジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジドである。
【0041】
(第四態様)
さらに、別の態様において、本発明は、次に示す段階を含む眼球の硝子体の置換方法に関する。
a)眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階、
b)硝子体を空気と置換する段階、
c)硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の組成物を注入する段階。
【0042】
(第五態様)
さらにまた、別の態様において、本発明は、次に示す化学式(I)のヒドロゲルポリマーを含む組成物に関する。
【化3】
【0043】
式中、m、nは整数であり、m≦5、100≦n≦2500である。
また、該ヒドロゲルポリマーは、a)無色透明であり、b)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する、という特性を有する。
【0044】
本発明の一実施態様において、m=4である。
【0045】
本発明の別の実施態様において、nは、≦2400、≦2300、≦2200、≦2100、≦2000、≦1900、≦1800、≦1700、≦1600、≦1500、≦1400、≦1300、≦1200、≦1100または≦1000である。
【0046】
本発明の別の実施態様において、nは、≧200、≧300、≧400、≧500、≧600、≧700、≧800または≧900である。
【0047】
本発明の別の実施態様において、組成物中のポリマーにおける酸化HAは、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の理論的酸化度を有する。
【0048】
本発明の別の実施態様において、組成物中の酸化HAは、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の試験的酸化度を有する。
【0049】
本発明の別の実施態様において、酸化HAは、100%の理論的酸化度、および/または20%から80%に及ぶ試験的酸化度を有する。
【0050】
本発明の別の実施態様において、組成物中のポリマーにおける酸化HAは、少なくとも40%、45%または50%の酸化度を有する。
【実施例】
【0051】
本発明の範囲を限定する意図なしに、本発明の実施態様による例示的な機器、装置、方法およびこれらに関連する結果を以下に示す。読み手の便宜上、表題または副題を実施例で使用してもよく、これらは、本発明の範囲に影響がないものとする。
さらに、本明細書で特定の理論を提案し開示する。しかしながら、本発明が、特定の理論または実施方式に関なく実施される限り、その特定の理論が正しいか間違っているかにかかわらず、本発明の範囲を全く限定するものではない。
【0052】
<2.材料、および、調製、試験、評価等の方法>
2.1.材料
ヒアルロン酸(平均分子量Da=3.2×105)は、Q.P.社(日本、東京)から購入した。
四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、tert-ブチルカルバジン酸 (tert-butyl carbazae)、およびアジピン酸ジヒドラジドは、Sigma-Aldrich社(米国、ミズーリ州、セントルイス)から購入した。
ジエチレングリコール、臭化カリウム(KBr)、および過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)は、RDH Chemical社(米国、カリフォルニア州、スプリングバレー)から購入した。
トリクロロ酢酸は、JTB社(日本、東京)から購入した。
【0053】
透析チューブ(MWCO 6,000−8,000)は、Membrane Filtration Products社(米国、テキサス州)から入手した。
ヒト網膜色素上皮細胞(RPE細胞、BCRC60383)は、台湾国立細胞科学センター(National Centre for Cell Sciences)から提供された。
細胞培養培地DMDM/F−12、トリプシン−EDTA、ウシ胎仔血清、およびペニシリン‐ストレプトマイシンは、Gibco社(米国、ニューヨーク州、グランド・アイランド)から購入した。
高速セル増殖アッセイキットIIは、BioVision社(米国、カリフォルニア州)から入手した。
CYTOTOX96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイは、Promega社(米国、ウィスコンシン州)から入手した。
哺乳類細胞の生/死、生存率/細胞毒性キット(Live/Dead Viability/Cytotoxicity kit)は、Molecular Probes社(米国、オレゴン州、ユージーン)から入手した。
【0054】
2.2.酸化ヒアルロン酸(オキシ−HA)の調製
ヒアルロン酸(HA)を、室温で24時間、水溶液中で過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)によって酸化した。アルミホイルでくるんだ300mlのビーカーにおいて、ヒアルロン酸(2.00g)を再蒸留水(200ml)中で溶解した。次いで、種々の濃度の過ヨウ素酸ナトリウム溶液を撹拌しながら徐々に加えた。HAに対するNaIO4のモル比は、低酸化度、中酸化度、高酸化度のオキシ−HAを得るために、それぞれ1:0.5、1:1、1:2とした。
24時間の撹拌後、さらにエチレングリコールを添加して30分撹拌し、反応を停止した。得られた溶液を、再蒸留水で3日間、MWCO6,000−8,000の透析チューブ(CelluSep T2チューブ、Uptima社製)によって透析した。透析処理中に水を少なくとも3回交換した。そして、透析した溶液を、3日間、凍結乾燥器(FDU−1100、東京理化器械社製(日本、東京))によって凍結乾燥して、白色の綿毛状の生成物である酸化ヒアルロン酸(オキシ−HA)を得た。FT−IR分析(JASCO FTIR−4200及びATR PRO450−S)のために、得られたオキシ−HAを人の手で小さなペレットに圧搾した。
【0055】
2.3.酸化度の決定
t−ブチルカルバジン酸(t−BC)を使用し、オキシ−HA中のアルデヒド官能基の数を測定することによって、オキシ−HAの酸化度を定量化した。カルバジン酸塩は、ヒドラゾン形成と類似する方法で、アルデヒドと反応して安定したカルバジン酸塩を形成することで周知である。したがって、過剰のt−BC(25μl、1%水性トリクロロ酢酸中30.0mM)を、24時間、オキシ−HA(25μl、0.6w/v%)のアルデヒド官能基と反応させた後、残余のt−BCを測定することによって、オキシ−HAの酸化度を決定した。過剰の水性トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)水溶液(500μl、6.0mM)を加え、錯体(トリニトロフェニル誘導体)の340nmの吸光度を測定することによって、残余のt−BCを決定した。基準として種々の濃度のt−BC溶液を使用し、較正曲線を得て、試験試料中の未反応のカルバジン酸塩を確認した。
【0056】
2.4.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの調製
各酸化度のオキシ−HA試料を、室温で一晩、6w/v%の最終濃度となるまでリン酸緩衝液(pH7.4)中で個別に溶解した。2、4および8w/v%のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)溶液を、リン酸緩衝液で調製した。水と氷の入ったバス(約0℃)に入れたエッペンドルフにおいて、オキシ−HA溶液(400μl)を2、4および8w/v%のADH溶液(100μl)と混合し、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8のヒドロゲルをそれぞれ形成した。
【0057】
2.5.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率
屈折計(DR−A1 アタゴ社、日本)を使用して、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの屈折率(RI)を測定した。簡潔に説明すれば、液体状態のオキシ−HA/ADH溶液の一部を、ピペット先端で屈折計プリズムに移した。屈折計プリズムを、等温の循環水浴によって37℃でインキュベートした。ゲル化のため10分間待機した後、ヒドロゲルの屈折率(RI)をディジタル画面から読み取った。
【0058】
2.6.オキシ-HA/ADHヒドロゲルのレオロジー評価
円錐状およびプレート状(1−C35/2 Ti)のレオメータ(HAAKE Rheostress 600、Thermo Fisher Scientific社製)を使用して、保存温度4℃および本体温度37℃で、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジー特性を評価した。温度4℃は、混合オキシ−HA/ADH溶液に対する外科医の手術時間の評価に用い、温度37℃は、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化時間の評価に用いた。
振動時間掃引(oscillation time sweep)モードでは、0.1Hz、10Paで運転し、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化時間を決定するために15分後に終了した。弾性率G'および粘性率G''を、RheoWin 3ソフトウェアによって記録して分析した。
【0059】
2.7.オキシ−HA/ADHヒドロゲルのインビトロ(in vitro)分解試験
オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの分解特性を、10000ユニット/mlのリゾチームを含むPBS中に、予め形成したヒドロゲルを浸漬することによって評価した。リゾチームは、多糖部分に作用する眼の酵素であることが知られていることから、分解モデル系にリゾチームを選択した。
簡潔に説明すれば、溶液中のオキシ−HAおよびADHをエッペンドルフで混合し、混合物(オキシ−HA/ADH溶液)300μlをすぐに円柱状の型に移し、10分間ゲル化させて、径0.7mmおよび高さ0.8mmの円柱状ヒドロゲルを形成した。この円柱状オキシ−HA/ADHヒドロゲルを、24ウエルの培養皿に入れ、リゾチームを含む3mlのPBSをそれぞれのウエルに加えた。ヒドロゲル形成直後に、ヒドロゲルの初期乾燥重量(Wid)を決定した。規則的な間隔で、ヒドロゲルを取り除き、凍結乾燥器によって、これを72時間、凍結乾燥した。種々の時点のオキシ−HA/ADHヒドロゲルの乾燥重量(Wd)を秤量し、分解割合を、[(Wid−Wd)/Wid]によって算出した。
【0060】
2.8.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの膨潤試験
オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの膨潤指数を、インビトロの分解試験と同じ条件下で評価した。ヒドロゲル形成直後にヒドロゲルの初期重量(Wi)を決定し、次いで、これを24ウエル培養皿に入れた。規則的な間隔で、リゾチームを含むPBSからヒドロゲルを取り除き、ろ紙で表層水を拭き取ってヒドロゲルを取り除き、これを秤量(Wt)し、同じ容器(各測定で緩衝液を交換した)に戻した。WtとWiの比率から膨潤指数を算出した。
【0061】
2.9.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの細胞毒性評価
オキシ−HA/ADHヒドロゲルの細胞毒性評価を、ISO規格に従ってヒト網膜色素上皮細胞(RPE細胞、BCRC60383、台湾国立細胞科学センター)の単層による抽出培地を試験することによって行った。オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルを、標準培地(DMEM/F−12)と共に、37℃で72時間、抽出率0.75cm2/mlでインキュベートすることによって抽出培地を調製した。
200μlの抽出培地を単層のRPE細胞で試験した。RPE細胞を、5x103細胞/ウエルの細胞密度で96ウエルの培養皿に接種し、37℃で一晩、標準培地に供した。その後、標準培地を抽出培地と交換した。対照(標準培地)、負の対照(Al2O3抽出培地)、正の対照(0.1%Triton X−100含有培地)、ならびに試験群(オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8抽出培地)を含む群を、6回反復して試験した(n=6)。
37℃で1日間および3日間インキュベーション後、高速セル増殖アッセイキットII(BioVision社製)、およびCYTOTOX96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega社製)をそれぞれ使用して、細胞生存率および細胞毒性を定量的に評価した。また、抽出培地で処理したRPE細胞を、生/死 染色キット(Molecular Probes # L3224)で染色した。
【0062】
高速セル増殖アッセイキットIIを使用して細胞生存率を評価した。細胞を1日間および3日間培養し、その後、培地を廃棄し、それぞれのウエルにおいて0.2ml水溶性テトラゾリウム−8(WST−8)標準溶液と交換した。WST−8を生存細胞における脱水素酵素によって低減して、黄色の有色生成物(ホルマザン)を生成することができる。2時間インキュベーション後、100μl標準溶液を、450nmでの分光測光器による読み取りによって定量的に評価した。標準波長は650nmであった。
【0063】
CYTOTOX96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイキットを使用して、細胞毒性を評価した。このアッセイキットは、細胞溶解で放出した安定性のあるサイトゾル酵素である乳酸脱水素酵素(LDH)を定量的に測定した。1日間および3日間の培養後、培地および全細胞溶解を共に、アッセイマニュアルに従って490nmの吸光度で測定した。また、抽出培地(RPE細胞によりインキュベーションしていない)も、バックグラウンドとして使用するため評価した。細胞毒性を次に示す数式によって算出した。
【数1】
【0064】
2.10.予備動物試験
3羽のニュージーランド産シロウサギ(2.8〜3.2kg)の6つの眼を使用した。ケタラール/チャナジン(Chanazine)2%の筋肉注射による全身麻酔下で手術を行った。手術用顕微鏡下で、手術用メスによって、左眼におよそ3mmの強膜切開を形成した。
18ゲージ(gague)針によって硝子体をできるだけ多く吸引し、空気と置換した後、オキシ−HA/ADH溶液を硝子体腔に注入した。手術後、眼を、1週間、1日に3回、抗生物質点眼薬および塩酸テトラサイクリン(tetracyclin hydrochloride)眼軟膏として、ゲンタマイシン(genticin、Roche社製)で処理した。また、手術していない対照として右眼を使用した。
眼科用テーブルスリットランプ(Topcon Medical Systems社製)を使用して、前部および透光体を観察し記録した。手術後第1、5、8、12、15および21日目に、schiotz眼圧計によって眼内圧(IOP)を測定した。超音波パキメトリー(DGH Technology社製)を使用して、中心角膜厚さを測定した。手術3週間後、3羽のウサギを屠殺した。右眼(対照)および左眼(手術したもの)を、これらの動物から採取した。この眼を10%ホルムアルデヒド溶液で定着し、これらをパラフィンに埋め込み、光学顕微鏡観察のためにヘマトキシロンおよびエオシン(HE染色)で染色した。
【0065】
2.11.統計分析
すべてのデータを「平均±標準偏差」として示す。群間の統計的相違を、一元配置分散分析(ANOVA)を使用して試験した。統計的有意性は、予めp=0.05の確率水準に設定した。
【0066】
<3.結果>
3.1.酸化ヒアルロン酸(オキシ-HA)の特性評価
ヒアルロン酸(HA)を、室温で、種々の濃度の過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化した。図1Aは、NaIO4によってHAを酸化して、2つのアルデヒド官能基を形成する、化学反応を示す。
図1Bに、(i)HA粉末、および、(ii)低酸化度、(iii)中酸化度、(iv)高酸化度の酸化HA(オキシ−HA)オキシ−HAのFT−IRスペクトルを示した。
(ii)、(iii)、(iv)ののFT−IRスペクトルにおいて、1725cm-1および836cm-1にアルデヒド官能基の顕著なピークを観察することができ、その強度は、酸化度の増加((ii)<(iii)<(iv))に伴って増加した。
(i)HA粉末のスペクトルの1147cm-1および895cm-1のピークは、C−O−C(エーテル結合)、およびC−Hと関係があった。これらの2つのピークは、アルデヒド官能基の形成により、(ii)、(iii)、(iv)のスペクトルにおいて、1112cm-1および875cm-1へそれぞれシフトした。
【0067】
オキシ−HAの酸化度を、前述したt−BC滴定(TNBSアッセイ)によってさらに測定した。
表1は、HA対のNaIO4のモル比から算出した理論的酸化度、およびTNBSアッセイによって測定して得た酸化度を示す。予想どおりに、NaIO4量の増加に伴って、オキシ−HAの酸化度は、27.3±2.3%から60.4±2.66%まで増加した。中酸化度(44.3±4.25%)を有するオキシ−HAについて、次に示す試験において、種々の濃度のADH(2、4および8w/v%)によって架橋した。
【0068】
【表1】
【0069】
3.2.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率(RI)
オキシ−HAが、二官能性架橋剤であるADHにより架橋して、化学開始剤を使用することなく、ヒドロゲルを形成できることがわかった。図2Aは、他の化学試薬を添加することなく、架橋反応が自然に発生し、反応が開始されたことを示す。
オキシ−HAのアルデヒド官能基は、ADHのNH2官能基と急速に反応して、無色透明なオキシ−HA/ADHヒドロゲルを形成した(図2B、左右の写真)。
ADHの濃度が2%から8%に増加するに伴って、オキシ−HA/ADHヒドロゲルの屈折率は1.3420から1.3442まで変化した(図2C)。この値は、ヒト硝子体液の屈折率(1.3345〜1.3348)に近い。
【0070】
3.3.オキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジー特性
振動時間掃引(Oscillatory time sweeps)を行い、オキシ−HA/ADHヒドロゲルのゲル化挙動を評価した。図3は、4℃および37℃のオキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの弾性率(G')および粘性率(G'')を示す。G'およびG''の交点を、ゲル生成を示すゲル化点と定義する。ゲル化点を生じるのに必要な時間を試料のゲル化時間と称する。
【0071】
図3Aは、4℃のオキシ−HA/ADHヒドロゲル(オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8)のレオロジーの結果を示す。これらの結果は、すべての型のオキシ−HA/ADHヒドロゲルが、ヒドロゲル中のADH濃度によって、4℃で3〜8分間、液体状態に維持できることを示す。
図3Bは、37℃のオキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジーの結果を示す。すべてのヒドロゲルのゲル化時間は、143〜175秒と考えられ、これは、オキシ−HA/ADHヒドロゲルが、37℃、3分以内で、ゲルマトリックスに変化し始めることを示している。オキシ−HA/ADHヒドロゲルのレオロジー評価の結果を、表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
3.4.オキシ−HA/ADHヒドロゲルのインビトロ分解および膨潤指数
図4Aは、オキシ−HA/ADHヒドロゲルの質量残存率の時間変化を示す。オキシ−HA/ADH2(◇)、およびオキシ−HA/ADH4(△)ヒドロゲルをそれぞれ、第3日目および第14日目で完全に溶解した。オキシ−HA/ADH8ヒドロゲル(□)の質量残存率は、第3日目において86.67±3.54%であり、第35日で徐々に61.02±3.13%まで減少した。
図4Bは、種々の濃度のADHで架橋したオキシ−HAの膨潤指数を示す。ヒドロゲルが完全に溶解するまで(3日以内)、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルの膨潤指数は、時間の経過に伴って増加した。オキシ−HA/ADH4およびオキシ−HA/ADH8の膨潤指数は、最初の3日間でわずかに減少し、その後、ヒドロゲルが分解し始めるまで、一定の値を維持した。
【0074】
3.5.オキシ−HA/ADHヒドロゲルの細胞毒性
細胞生存率をWST−8アッセイによって評価した(図5A)。第1日目では、試験群(オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8)の有意差はなかった(p>0.5)。培養第3日目の対照、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8群のWST−8 OD450値は、それぞれ、1.27±0.03、1.20±0.05、1.14±0.04、および0.99±0.06だった。オキシ−HA/ADH2およびオキシ−HA/ADH4の抽出培地(p>0.5)は、対照および負の対照群と比較して、RPE細胞の細胞生存率に顕著な影響を及ぼさなかった。しかしながら、オキシ−HA/ADH8の抽出培地は、対照群(p<0.001)と比較して、細胞生存率のわずかな減少が生じた。
【0075】
さらに、LDHアッセイによって細胞毒性を評価した(図5B)。オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8の細胞毒性割合は、それぞれ、6.1640±0.5805%、6.0720±0.3872%、および5.3166±0.9590%であった。この結果は、対照群(6.9811±0.6663%、p>0.5)と比較して、オキシ-HA/ADH抽出培地群では有意差がないことを示している。
【0076】
図6は、オキシ−HA/ADH2、オキシ−HA/ADH4、およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの抽出培地で培養したRPE細胞の蛍光顕微鏡写真をそれぞれ示す。ポリアニオン色素カルセイン−AMは、生存細胞内で保持され、生存細胞において強くて均一な緑色蛍光を生成することができる。一方、EthD−1は、損傷を受けた細胞膜を有する細胞に入り、死細胞において明るい赤色蛍光を生成することができる。生/死細胞の染色の結果は、種々の抽出培地で培養したほとんどの細胞が生存できることを示した。
【0077】
3.6.予備動物試験
図7Aは、手術後の眼内圧(IOP)の変化を示す。手術した眼におけるIOPは、手術後第1日目でわずかに減少した。オキシ−HA/ADHヒドロゲル注入後第5日目および第8日目で、IOPに上昇傾向があった。手術後第12日目、15日目および21日目で、IOPがプラトーレベルに達した。観察期間中に手術した眼と対照の眼の間のIOPに有意差はなかった。
図7Bは、手術した眼および対照の眼の角膜厚さを示す。群間の角膜厚さに有意差はなかった。
【0078】
図8Aは、オキシ−HA/ADH8注入後第21日目の眼のスリットランプ検査の写真を示す。手術した眼の角膜および水晶体は、欠陥を示さなかった。結果は、手術3週間後に検査した眼の前部において、顕著な炎症または他の疾病を示さなかった。
図8Bは、手術後第21日目の手術した眼および対照の眼の網膜部分を示す。手術した眼の網膜層は容易に検出された。また、炎症反応もしくは浸潤、または、対照の眼とのいかなる相違もなかった。
【0079】
<4.考察>
患者が硝子体切除手術を受ける場合、硝子体腔から多くの硝子体液を除去する。生来の硝子体は再生することができないので、硝子体腔を硝子体代替物で充填して、網膜の位置を保持し、網膜が再び剥離するのを防ぐことが必要である。過去数十年間で、硝子体代替物の開発は、研究者にとって挑戦であった。多くの生体高分子および合成化合物が研究室で検討された。しかしながら、恒久的な硝子体代替物となりうる理想的な材料は、現在開発されていない。
【0080】
本研究では、27ゲージ針によって硝子体腔に注入することができ、その後、ゲル様物質に変化することができる無色透明なオキシ−HA/ADHヒドロゲルを得ることができた。オキシ−HAにおけるアルデヒド官能基をNaIO4によって形成した。すなわち、FT−IRによって特性評価されるように(図1Bの1725cm-1および836cm-1のピーク)、グルクロン酸のC2−C3ヒドロキシル基を開裂してジアルデヒドを形成した。オキシ−HAのジアルデヒドは、ADHのヒドラジド基と反応して、オキシ−HA/ADHヒドロゲルにおいて分子間ネットワークを形成することができた。
【0081】
屈折率は、硝子体代替物の適用において重要な光学特性のうちの一つである。硝子体代替物の不適切な屈折率は、硝子体切除手術後に患者の視力に影響を及ぼす。ガスタンポナーデは、眼底検査および患者の視力を共に、一時的に制限するのに十分厳格な光学的変化を誘導する。現在の硝子体代替物(例えば、シリコーン油、nD=1.40516、ヘビーシリコーン油、nD=1.3008)の屈折率は、天然の硝子体の屈折率(nD=1.336)と異なるため、タンポナーデ眼における屈折の変化の誘導を招くこととなる。
それに対し、オキシ−HA/ADH8の屈折率は約1.3342であり、これはヒト硝子体と非常に類似している。硝子体代替物としてのオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの利用は、硝子体切除手術後に好ましくない屈折の変化を回避することができる。
【0082】
小ゲージ針による注入は、硝子体代替物の送入のための臨床的な一般的な手法である。図2B(左の写真)に示すように、27ゲージ針によって、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルを容易に注入することができた。注入能は、眼科医および患者への重要な要因である。
手術時間は、眼科医が硝子体腔に液体状態のヒドロゲルを注入するのに十分である必要がある。また、溶液‐ゲル変化時間は、ヒドロゲルの押出しを防ぐように、できるだけ短いことが必要である。レオロジー評価は、オキシ−HA溶液とADH溶液の混合物が、約8分間、溶液形態で維持できることを示した。したがって、眼科医は、4℃でオキシ−HAとADH溶液を混合した後、注射器に混合オキシ−HA/ADH溶液を移すのに十分な時間(8分)が与えられる。また、液体形態で注入することができるので、ゲル形態で代替物を導入する際の困難性を克服する。このため、眼への硝子体代替物の送入方法において、侵襲性を最小とすることができる。
【0083】
低架橋ヒドロゲル(例えば、オキシ−HA/ADH2)において、膨潤指数はすぐに増加し、3日以内に完全に溶解した。この間、ヒドロゲルは加水分解を受け、ヒドラゾン結合は時間の経過に伴ってほぼ直線的に分解した。高架橋ヒドロゲル(例えば、オキシ−HA/ADH4およびオキシ−HA/ADH8)において、膨潤指数は、最初の3日間で減少した後、一定した値であり、その後、ネットワークが完全に溶解するまで、増加した。経時的な膨潤指数の増加は、ヒドロゲルネットワーク中のヒドラゾン結合の加水分解の結果であった。ヒドロゲル中のヒドラゾン結合が加水分解する場合、該ネットワークは、膨脹し、多くの水を含み、その後、完全に溶解する。
【0084】
質量損失試験によれば、オキシ−HA/ADH4およびオキシ−HA/ADH8ヒドロゲルでみられた分解挙動は、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルでみられたものと異なっていた。高いADH含量の、したがってヒドラゾン結合の多い、ヒドロゲルは、低いADH含量のヒドロゲルよりも遅く加水分解する傾向がある。高架橋ヒドロゲルでは、おそらく、低架橋密度または未架橋ヒアルロン酸を有するヒドロゲル領域の加水分解により、最初の3日間の質量損失(5〜15%)において初期の減少があった。この段階の後に、おそらく、高架橋領域の分解により、次の数日または数週で質量のわずかな減少があった。そして、ヒドロゲル中のヒドラゾン結合が加水分解し、これは、溶解段階で生じた。
【0085】
オキシ−HA/ADH4ヒドロゲルは、第8−12日目で膨潤の進行を示した。これは、ヒドラゾン結合がこのときに加水分解し、その後、第14日目で溶解段階があることを意味した。これによって、ヒドロゲル質量の減少が生じ、最終的にヒドロゲルの完全溶解が生じた。一方、高度の架橋により、オキシ−HA/ADH8は、3日間一定の膨潤指数に達し、ヒドロゲルは、第30−35日目で膨潤の進行を示した。
【0086】
インビトロ分解試験は、酵素(10,000ユニット/mlのリゾチームを含むPBS)の存在下で、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの30−40%のみが分解するにすぎず、ヒドロゲルが5週間安定することを示した。シリコーン油およびガスは、臨床的に、眼内容積を回復し網膜剥離を操作する網膜再付着手術における一般的な硝子体代替物である。これらは、網膜破損による液体の通過を防ぎ、正常な網膜−網膜色素上皮(RPE)の付着を維持し、網膜の再付着を維持する。ガスの寿命は、ガスの種類、気泡容積、初期濃度、および眼内圧によって、通常数日から2週間以内である。数週以内に再吸収する眼内のガスとは対照的に、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルは、インビトロ分解試験で少なくとも5週間ゲルマトリックスを維持することができる。臨床的考慮において、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルの寿命は、網膜付着に有益である。さらに、患者がガスタンポナーデにより硝子体切除手術を受ける場合、ヒドロゲルは、腹臥位の不便性を克服する。
【0087】
網膜色素上皮(REP)細胞は、網膜剥離または局所的な網膜切除後に、眼球を充填する硝子体代替物に直接暴露することが多いので、REP細胞を細胞毒性評価のための標的細胞として選択した。また、RPE細胞も、網膜の再付着の失敗および増殖性硝子体網膜症(PVR)に関係することが分かった。細胞生存率アッセイ(WST−8)、および細胞毒性(LDHアッセイ)は、オキシ−HA/ADHヒドロゲルが、インビトロ評価で、生体適合性であり、RPE細胞による毒性がなかったことを示す。
【0088】
ヒドロゲルの分解産物は、臨床応用についての別の懸念である。分解評価の結果によれば、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルは、水性環境中で3日以内に分解した。これは、オキシ−HA/ADH2ヒドロゲルが、抽出処理(37℃、72時間)時に、抽出培地ですべて分解し、分解産物が、細胞毒性評価でRPE細胞と培養されたことを示す。細胞毒性分析データ(図5A、5B)によれば、この群では、顕著な細胞毒性はなかった。これらの結果は、オキシ−HA/ADHヒドロゲルからの分解産物が、WST−8および細胞毒性アッセイに基づき、RPE細胞に対して細胞毒性がないことを示した。さらに、生/死細胞染色も、種々の抽出培地からほとんどの培養細胞が生存できたことを示す。
【0089】
オキシ−HA/ADH8を注入した眼のスリットランプ検査は、観察期間中、前眼部で炎症または混濁が発生しないことを示した。眼内圧の増加は、硝子体切除手術後に生じることが多い。しかしながら、手術した眼の眼内圧は、観察期間中に正常なレベルにとどまった。これは、オキシ−HA/ADHヒドロゲルの膨潤指数のわずかな減少によるものであると考えられた。また、網膜組織の組織学的検査も、構造変化または分解がないことを示し、対照の眼との有意差も示さなかった。
【0090】
<5.結論>
現在、臨床応用のための理想的な硝子体代替物は、まだ開発されていない。多くの研究は、硝子体代替物のための適切なバイオマテリアルを開発することを試みた。
本発明は、注入可能な新規ヒアルロン酸系ヒドロゲルであるオキシ−HA/ADHの合成および特性に関する。このヒドロゲルは、適切な屈折率を有し、注入可能であり、インサイチュのゲル化性を有し、また、REP細胞に対して細胞毒性を示さない等の、硝子体代替物としての利用において幾つかの有益な特性を示す。さらに、オキシ−HA/ADH8ヒドロゲルは、眼の酵素(リゾチーム)によって、5週間、インビトロで分解しなかった。予備動物試験では、オキシ−HA/ADHヒドロゲルは、観察期間に重篤な合併症を誘発しなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸化ヒアルロン酸と、
(b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含むヒドロゲルポリマーを含む組成物であって、
該ヒドロゲルポリマーは、
(i)無色透明であり、
(ii)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する特性を有する組成物。
【請求項2】
前記ジヒドラジドは、
アジピン酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アミキュアLDH、アミキュアVDH、マレイン酸ジヒドラジド、およびピメリン酸ジヒドラジドから選択される少なくとも1つである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジドである請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロゲルポリマーは、架橋した酸化ヒアルロン酸を含み、
該架橋した酸化ヒアルロン酸は、C2もしくはC3、またはこれらのアルデヒド基を有したグルクロン酸を有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】
前記ジヒドラジドは、前記酸化ヒアルロン酸のグルクロン酸のC2およびC3によって、2つの鎖の酸化ヒアルロン酸を架橋する請求項1または2記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロゲルポリマー中の酸化ヒアルロン酸とヒドラジドとの重量比は、12:1から3:1の範囲である請求項1または2記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒドロゲルポリマーは、1.341〜1.345の範囲の屈折率を有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物の調製方法であって、
酸化ヒアルロン酸を含む第1の溶液と、ジヒドラジドを含む第2の溶液とを混合して、ヒドロゲルポリマーを含む組成物を形成する工程を含み、
該ヒドロゲルポリマーは、
(a)酸化ヒアルロン酸と、
(b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含み、
該ヒドロゲルポリマーは、
(i)無色透明であり、
(ii)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する特性を有する組成物の調製方法。
【請求項9】
(a)酸化ヒアルロン酸と、
(b)ジヒドラジドと、
(c)緩衝液と、
(d)請求項1記載の組成物の調製方法を記載した説明書と、
を含むキット。
【請求項10】
前記ジヒドラジドは、
アジピン酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アミキュアLDH、アミキュアVDH、マレイン酸ジヒドラジド、およびピメリン酸ジヒドラジドから選択される少なくとも1つである請求項9記載のキット。
【請求項11】
前記ジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジドである請求項10記載のキット。
【請求項12】
ヒトを除く動物の眼球の硝子体の置換方法であって、
眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階と、
硝子体を空気と置換する段階と、
硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の請求項1記載の組成物を注入する段階と、
を含む眼球の硝子体の置換方法。
【請求項13】
ヒトを除く動物の眼球の硝子体の置換方法であって、
眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階と、
硝子体を空気と置換する段階と、
硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の請求項7記載の組成物を注入する段階と、
を含む眼球の硝子体の置換方法。
【請求項14】
化学式(I)のヒドロゲルポリマーを含み、
【化1】
式中、m、nは整数であり、m≦5、100≦n≦2500であり、
該ヒドロゲルポリマーは、
(i)無色透明であり、
(ii)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する特性を有する組成物。
【請求項15】
前記ヒドロゲルポリマーは、1.341〜1.345の範囲の屈折率を有する請求項14記載の組成物。
【請求項1】
(a)酸化ヒアルロン酸と、
(b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含むヒドロゲルポリマーを含む組成物であって、
該ヒドロゲルポリマーは、
(i)無色透明であり、
(ii)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する特性を有する組成物。
【請求項2】
前記ジヒドラジドは、
アジピン酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アミキュアLDH、アミキュアVDH、マレイン酸ジヒドラジド、およびピメリン酸ジヒドラジドから選択される少なくとも1つである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジドである請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロゲルポリマーは、架橋した酸化ヒアルロン酸を含み、
該架橋した酸化ヒアルロン酸は、C2もしくはC3、またはこれらのアルデヒド基を有したグルクロン酸を有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項5】
前記ジヒドラジドは、前記酸化ヒアルロン酸のグルクロン酸のC2およびC3によって、2つの鎖の酸化ヒアルロン酸を架橋する請求項1または2記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロゲルポリマー中の酸化ヒアルロン酸とヒドラジドとの重量比は、12:1から3:1の範囲である請求項1または2記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒドロゲルポリマーは、1.341〜1.345の範囲の屈折率を有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物の調製方法であって、
酸化ヒアルロン酸を含む第1の溶液と、ジヒドラジドを含む第2の溶液とを混合して、ヒドロゲルポリマーを含む組成物を形成する工程を含み、
該ヒドロゲルポリマーは、
(a)酸化ヒアルロン酸と、
(b)酸化ヒアルロン酸を架橋するジヒドラジドと、を含み、
該ヒドロゲルポリマーは、
(i)無色透明であり、
(ii)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する特性を有する組成物の調製方法。
【請求項9】
(a)酸化ヒアルロン酸と、
(b)ジヒドラジドと、
(c)緩衝液と、
(d)請求項1記載の組成物の調製方法を記載した説明書と、
を含むキット。
【請求項10】
前記ジヒドラジドは、
アジピン酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アミキュアLDH、アミキュアVDH、マレイン酸ジヒドラジド、およびピメリン酸ジヒドラジドから選択される少なくとも1つである請求項9記載のキット。
【請求項11】
前記ジヒドラジドは、アジピン酸ジヒドラジドである請求項10記載のキット。
【請求項12】
ヒトを除く動物の眼球の硝子体の置換方法であって、
眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階と、
硝子体を空気と置換する段階と、
硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の請求項1記載の組成物を注入する段階と、
を含む眼球の硝子体の置換方法。
【請求項13】
ヒトを除く動物の眼球の硝子体の置換方法であって、
眼球の硝子体腔から硝子体を除去する段階と、
硝子体を空気と置換する段階と、
硝子体腔に、空気と置換するのに十分な量の請求項7記載の組成物を注入する段階と、
を含む眼球の硝子体の置換方法。
【請求項14】
化学式(I)のヒドロゲルポリマーを含み、
【化1】
式中、m、nは整数であり、m≦5、100≦n≦2500であり、
該ヒドロゲルポリマーは、
(i)無色透明であり、
(ii)37℃で液体状態からゲルマトリックスに変化する特性を有する組成物。
【請求項15】
前記ヒドロゲルポリマーは、1.341〜1.345の範囲の屈折率を有する請求項14記載の組成物。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2013−519445(P2013−519445A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553006(P2012−553006)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/024398
【国際公開番号】WO2011/100469
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512175133)ナショナル ヘルス リサーチ インスティテューツ (2)
【氏名又は名称原語表記】National Health Research Institutes
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/024398
【国際公開番号】WO2011/100469
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512175133)ナショナル ヘルス リサーチ インスティテューツ (2)
【氏名又は名称原語表記】National Health Research Institutes
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]