説明

組換え型VWF製剤

本発明は、組換えvon−Willebrand因子(rVWF)の長期的に安定な医薬製剤と前記製剤の製造方法および投与方法とを提供する。本発明の製剤は、(a)rVWF;(b)緩衝剤;(c)1種または複数種の塩;(d)任意に安定化剤;および(e)任意に界面活性剤を含み;ここでこのrVWFは、a)配列番号3に示したアミノ酸配列;b)a)の生物学的に活性なアナログ、フラグメントまたは変異体;c)配列番号1に記載したポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;d)c)の生物学的に活性なアナログ、フラグメントまたは変異体;およびe)中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1に記載したポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドからなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年12月28日に出願された米国仮出願第61/017,418号および2007年12月31日に出願された米国仮出願第61/017,881号(これらの各々は、それらの全体が参考として本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は全般的に、組換え型VWF(von Willebrand factor)の製剤および組換え型VWFを含む組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Von Willebrand因子(VWF)は、大きさが約500〜20,000kDにわたる一連の多量体として血漿中に循環する糖タンパク質である。VWFの多量体形態は、ジスルフィド結合により結合した250kDのポリペプチドサブユニットで構成される。VWFは損傷血管壁の内皮下層への初期の血小板粘着に関わる。止血活性を示すのは比較的大きな多量体だけである。大きな多量体形態のVWFは内皮細胞から分泌され、低分子量のVWF形態(低分子量VWF)はタンパク質分解切断から生じると推察される。分子量の大きい多量体は内皮細胞のWeibel−Pallade小体に貯蔵され、刺激を受けると遊離される。
【0004】
VWFは、大部分が繰り返しドメインからなるプレプロVWFとして内皮細胞および巨核球で合成される。シグナルペプチドが切断されると、プロVWFがC末端領域のジスルフィド結合により二量体になる。この二量体は、遊離末端間のジスルフィド結合による多量体化を促進するプロトマの働きをする。多量体が構築されると、タンパク分解によりプロペプチド配列が除去される(非特許文献1)。
【0005】
VWFのcDNAクローンから予想される一次翻訳産物は2813個の残基の前駆体ポリペプチド(プレプロVWF)である。このプレプロVWFは、2050個のアミノ酸を含む成熟VWFと共に22個のアミノ酸のシグナルペプチドおよび741個のアミノ酸のプロペプチドからなる(非特許文献2)。
【0006】
程度の差はあるものの出血の表現型を特徴とするVon Willebrand病(VWD:Von Willebrand disease)はVWFの異常が原因である。VWFが完全欠損している3型VWDは最も重篤な病型であり、1型VWDはVWFの量的欠乏に関係し、その表現型は極めて弱い場合がある。2型VWDはVWFの質的異常に関係し、3型VWDと同じくらい重篤な場合がある。2型VWDには多くの亜型があり、高分子量多量体の欠乏または減少が関連しているものもある。2a型Von Willebrand症候群(VWS−2A)は中程度の多量体と大きい多量体との欠乏を特徴とし、VWS−2Bは最も高分子量の多量体の欠乏を特徴とする。VWFに関係する他の疾患および障害については、当該技術分野において公知である。
【0007】
特許文献1、特許文献2および欧州特許出願公開第04380188.5号には血漿由来のVWF製剤が記載されている。しかしながら、血漿由来のVWFには量および純度の問題に加えて、血液に媒介される病原体(たとえば、ウイルスおよび異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD:Variant Creutzfeldt−Jakob disease)のリスクもある。
【0008】
したがって、当該技術分野において組換え型VWFを含む安定な医薬製剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,531,577号明細書
【特許文献2】米国特許第7,166,709号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Leyteら、Biochem.J.(1991)274,257−261
【非特許文献2】Ruggeri Z.A.およびWare,J.,FASEB J.,(1993)308−316
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は組換え型VWFを含む組成物に有用な製剤であり、非常に安定となった医薬組成物を提供する。この安定な医薬組成物は、組換え型VWFの投与で効果が得られる可能性がある障害または症状に罹患している人を処置する際に治療薬として有用である。
【0012】
一実施形態では、本発明は組換え型von Willebrand因子(rVWF)の安定な液体医薬製剤であって、(a)rVWF;(b)緩衝剤;(c)1種または複数種の塩;(d)任意に安定化剤;および(e)任意に界面活性剤を含み;rVWFは、a)配列番号3に示したアミノ酸配列;b)a)の生物学的に活性なアナログ、フラグメントまたは変異体;c)配列番号1に記載したポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;d)c)の生物学的に活性なアナログ、フラグメントまたは変異体;およびe)中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1に記載したポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドを含み、緩衝剤は約0.1mM〜約500mMの範囲のpH緩衝剤からなり、かつpHは約2.0〜約12.0の範囲にあり;塩は約1〜500mMの濃度にあり;安定化剤は約0.1〜1000mMの濃度にあり;界面活性剤は約0.01g/L〜0.5g/Lの濃度にある、医薬製剤を提供する。
【0013】
別の実施形態では、前述の製剤であって、rVWFが配列番号3に示したアミノ酸配列を含む製剤を提供する。別の実施形態では、前述の製剤であって、緩衝剤がクエン酸ナトリウム、グリシン、ヒスチジン、トリスおよびこうした緩衝剤の組み合わせからなる群より選択される製剤を提供する。なお別の実施形態では、前述の製剤であって、緩衝剤がシトラートである製剤を提供する。本発明のさらに別の実施形態では、前述の製剤であって、pHが6.0〜8.0または6.5〜7.3の範囲にある製剤を提供する。関連する実施形態では、前述の製剤であって、pHが7.0である製剤を提供する。別の実施形態では、前述の製剤であって、緩衝剤がシトラートでpHが7.0である製剤を提供する。
【0014】
さらに別の実施形態では、前述の製剤であって、塩が塩化カルシウム、塩化ナトリウムおよび塩化マグネシウムからなる群より選択される製剤を提供する。別の実施形態では、前述の製剤であって、塩が0.5〜300mMの濃度範囲にある製剤を提供する。別の実施形態では、前述の製剤であって、塩が10mMの濃度の塩化カルシウムである製剤を提供する。
【0015】
別の実施形態では、前述の製剤であって、rVWFが配列番号3に示したアミノ酸配列を含み;緩衝剤がシトラートでpHが7.0であり;塩が10mMの濃度の塩化カルシウムである製剤を提供する。さらに別の実施形態では、前述の製剤であって、rVWFが配列番号3に示したアミノ酸配列を含み;緩衝剤がクエン酸ナトリウムでpHが7.0であり;塩が10mMの濃度の塩化カルシウムおよび100mMの濃度のNaClである製剤を提供する。
【0016】
本発明は他の製剤も意図している。たとえば、一実施形態では、前述の製剤であって、1種または複数種の緩衝剤がそれぞれ3.3mMの濃度のヒスチジンおよびトリスである製剤を提供する。別の実施形態では、前述の製剤であって、pHが7.0である製剤を提供する。なお別の実施形態では、前述の製剤であって、第1の塩が30mMの濃度の塩化ナトリウムであり、第2の塩が0.56mMの濃度の塩化カルシウムである製剤を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態では、前述の製剤であって、安定化剤がマンニトール、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトースおよびこれらの安定化剤の組み合わせからなる群より選択される製剤を提供する。別の実施形態では、前述の製剤であって、安定化剤が7.8mMの濃度のトレハロースおよび58.6mMの濃度のマンニトールである製剤を提供する。
【0018】
別の実施形態では、前述の製剤であって、界面活性剤がジギトニン、トリトンX−100、トリトンX−114、トゥイーン20、トゥイーン80およびこれらの界面活性剤の組み合わせからなる群より選択される製剤を提供する。別の実施形態では、前述の製剤であって、界面活性剤が0.03g/Lのトゥイーン80である製剤を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態では、前述の製剤であって、rVWFが配列番号3に示したアミノ酸配列を含み;緩衝剤がpH7.0で3.3mMの濃度のヒスチジンおよび3.3mMの濃度のトリスであり;第1の塩が30mMの濃度の塩化ナトリウムであり、第2の塩が0.56mMの濃度の塩化カルシウムであり;安定化剤が7.8mMの濃度のトレハロースおよび58.6mMの濃度のマンニトールであり;界面活性剤が0.03g/Lのトゥイーン80である製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】Advate緩衝液に溶かしたrVWFがグルタチオンの存在により26週後に安定していないことを示す。
【図2】Advate1:3緩衝液に溶かしたrVWFが4℃で最大12週間安定であることを示す。
【図3】シトラート系製剤の方が0.1Mのグルタチオンを含むAdvate1:3緩衝液製剤よりも安定性に優れていることを示す。
【図4】Advate緩衝液に溶かしたrVWF濃度が26週にわたり安定であることを示す。
【図5】Advate1:3緩衝液に溶かしたrVWF濃度が長期的に安定であることを示す。
【図6】シトラート系緩衝液に溶かしたrVWF濃度が長期的に安定であることを示す。
【図7】大部分の賦形剤がrVWFのアンフォールディング温度を約1または2℃上昇させることを示す。
【図8】10mMのCaClがrVWFのアンフォールディング温度を約8℃〜約67℃上昇させることを示す。
【図9】CaClの作用がpH7.3とpH6.5とで類似していることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
用語の定義
他に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を持つ。以下の参考文献は本発明に使用する多くの用語の一般的な定義を当業者に与えてくれる:Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY(2d ed.1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.,1988);THE GLOSSARY OF GENETICS,5TH ED.,R.Rieger,et al.(eds.),Springer Verlag(1991);and Hale and Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY(1991)。
【0022】
本明細書に引用する各刊行物、特許出願、特許および他の文献については、本開示と矛盾しない範囲で参照によってその全体を援用する。
【0023】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数のものを含む点に注意されたい。
【0024】
本明細書で使用する場合、以下の用語は、他に記載がない限り、定義した意味を有する。
【0025】
ペプチド化合物に対する「を含む(comprising)」という用語は、ある化合物がその配列のアミノ末端とカルボキシ末端のどちらか一方あるいは両方に別のアミノ酸を含んでもよいことを意味する。言うまでもなく、そうした別のアミノ酸はその化合物の活性を大きく阻害してはならない。本発明の組成物に対する「を含む(comprising)」という用語は、組成物が別の成分を含んでもよいことを意味する。そうした別の成分は、本組成物の活性を大きく阻害してはならない。
【0026】
「薬理学的に活性な」という用語は、その物質が医学的パラメーター(たとえば、以下に限定されるものではないが、血圧、血球数、コレステロールレベル)または病状(たとえば、以下に限定されるものではないが、癌、自己免疫障害)に作用する活性を持つことが確認されていることを意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、「発現する」、「発現している」および「発現」という用語は、遺伝子またはDNA配列の情報を表現したり、表現させたりすること、たとえば、対応する遺伝子またはDNA配列の転写および翻訳に関わる細胞機能を活性化することでタンパク質が生成されることを意味する。DNA配列は細胞内または細胞から発現することでタンパク質などの「発現産物」を生成する。発現産物自体、たとえば、生成されたタンパク質についても、「発現する」という場合もある。発現産物は、細胞内に発現するもの、細胞外に発現するものまたは分泌発現するものに分けられる。「細胞内」という用語は、細胞の内部を意味する。「細胞外の」という用語は、膜貫通タンパク質など細胞の外側を意味する。ある物質が細胞上または細胞内のどこかから離れて大部分が細胞の外側で認められる場合、その物質は細胞から「分泌されている」。
【0028】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」とは、ペプチド結合により結合したアミノ酸残基で構成されるポリマー、その構造変異体、それに関連する天然の構造変異体および合成非天然のアナログをいう。合成ポリペプチドは、たとえば、自動ポリペプチド合成機を用いて調製することができる。「タンパク質」という用語は一般に大きなポリペプチドをいう。「ペプチド」という用語は一般に短いポリペプチドをいう。
【0029】
本明細書で使用する場合、ポリペプチドの「フラグメント」とは、全長ポリペプチドまたはタンパク質発現産物よりも小さなポリペプチドまたはタンパク質の任意の部分をいうものとする。
【0030】
本明細書で使用する場合、「アナログ」とは構造がほぼ同様で分子全体あるいはそのフラグメントに対して同じ生物活性を有するが、活性の程度が異なる場合がある2つ以上のポリペプチドのいずれかをいう。アナログは、1種または複数種のアミノ酸と他のアミノ酸との置換など1つまたは複数の突然変異によってアミノ酸配列の組成が異なっているものである。置換については、置換される側のアミノ酸と置換する側のアミノ酸との物理化学的または機能上の関連性に応じて保存的置換でも非保存的置換でもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、「変異体」とは、通常その分子の一部ではない別の化学部分を含むように修飾されたポリペプチド、タンパク質またはそのアナログをいう。そうした部分は、分子の溶解性、吸収作用、生物学的半減期などを調節することができる。あるいは、この部分は分子の毒性を抑制し、分子の望ましくない任意の副作用を除去または減弱するなどが可能である。こうした作用を媒介できる部分については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されている。このような部分を分子に連結する手順は当該技術分野において周知である。たとえば、変異体は、インビボでタンパク質の半減期を延長する化学修飾を受けた血液凝固因子であってもよい。種々の態様では、グリコシル化、ペグ化および/またはポリシアル化によりポリペプチドを修飾する。
【0032】
組換え型VWF
プレプロVWFのポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1および配列番号2に示す。それぞれGenBank受託番号NM_000552およびNP_000543で入手できる。成熟VWFタンパク質に対応するアミノ酸配列を配列番号3(全長プレプロVWFアミノ酸配列のアミノ酸764〜2813に相当する)に示す。
【0033】
有用なrVWFの一形態は少なくとも、少なくとも1つの第VIII因子(FVIII)分子をインビボで安定化する、たとえば、結合するという特性、および任意に薬理学的に許容されるグリコシル化パターンを持つという特性を持っている。その具体例として、A2ドメインを持たないためタンパク質分解に対して抵抗性を示すVWF(Lankhofら、Thromb.Haemost.77:1008−1013,1997)および糖タンパク質Ib結合ドメインとコラーゲンおよびヘパリンの結合部位とを含むVal449からAsn730のVWFフラグメントが挙げられる(Pietuら、Biochem.Biophys.Res.Commun.164:1339−1347,1989)。VWFが少なくとも1つのFVIII分子を安定化する能力の測定は、新技術として知られる(known in the state in the art)方法に従ってVWF欠乏哺乳動物を用いて行うことができる。
【0034】
本発明のrVWFは、当該技術分野において公知の任意の方法により作製することができる。1つの具体例は、組換え型VWFを生成する方法について参照によって本明細書に援用する1986年10月23日に公開された国際公開第86/06096号、および1990年7月23日に出願された米国特許出願第07/559,509号に開示されている。したがって、(i)遺伝子工学、たとえば、RNAの逆転写および/またはDNAの増幅による組換えDNAを作製し、(ii)トランスフェクション、たとえば、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションにより原核細胞または真核細胞に組換えDNAを導入し、(iii)たとえば、連続培養またはバッチ培養により前記形質転換細胞を培養し、(iv)たとえば、構成的または誘導によりVWFを発現させ、(v)たとえば、培養基から、または形質転換細胞を回収して前記VWFを単離し、(vi)たとえば、陰イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたrVWFを得る方法は当該技術分野において公知である。当該技術分野において周知の組換えDNA技法により形質転換した宿主細胞を用いて組換え型VWFを作製してもよい。たとえば、ポリペプチドをコードする配列については、好適な制限酵素を用いてDNAから切断することができる。
【0035】
あるいは、ホスホルアミダート法などの化学合成法を用いてDNA分子を合成することもできる。さらに、こうした技法の組み合わせを用いてもよい。
【0036】
本発明はまた、適切な宿主に導入された、本発明のポリペプチドをコードするベクターも提供する。ベクターは、適当な発現制御配列に作動的に連結されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。ベクターへのポリヌクレオチドの挿入の前あるいは後にこの作動的連結を行う方法についてはよく知られている。発現制御配列にはプロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナルおよび転写または翻訳の制御に関与する他のシグナルがある。ポリヌクレオチドを含む得られたベクターを用いて適当な宿主を形質転換する。こうした形質転換は当該技術分野において周知の方法により行えばよい。
【0037】
本発明の実施に際しては入手可能でよく知られた宿主細胞が多くあり、任意の宿主細胞を用いればよい。個々にどのような宿主を選択するかは、たとえば、選択した発現ベクターとの適合性、DNA分子がコードするペプチドの毒性、形質転換率、ペプチドの回収しやすさ、発現特性、バイオ安全性および費用など当該技術分野で知られる多くの要因によって決まる。個々のDNA配列の発現効率がすべての宿主細胞で同等とは限らないことを理解して、こうした要因のバランスをとる必要がある。こうした一般的なガイドライン内で有用な微生物宿主細胞として、細菌、酵母および他の真菌、昆虫、植物、哺乳動物(ヒトを含む)の培養細胞または当該技術分野において公知の他の宿主が挙げられる。
【0038】
次に、形質転換した宿主を培養し、精製する。宿主細胞は、所望の化合物が発現するような従来の発酵条件で培養すればよい。そうした発酵条件は当該技術分野において周知である。最後に、当該技術分野において周知の方法により培養物からポリペプチドを精製する。
【0039】
本発明の化合物の発現に使用する宿主細胞にもよるが、タンパク質のグリコシル化部位であることが分かっている部位に炭水化物(オリゴ糖)基が結合すると都合がよい場合がある。一般にオリゴ糖が配列Asn−X−Ser/Thrの一部で、Xがプロリン以外の任意のアミノ酸であり得る場合、O−結合型オリゴ糖はセリン(Ser)またはトレオニン(Thr)残基に結合し、N−結合型オリゴ糖はアスパラギン(Asn)残基に結合する。Xは好ましくはプロリンを除く19種の天然のアミノ酸の1つである。各型に見られるN−結合型およびO−結合型オリゴ糖と糖残基との構造は多岐にわたる。2つの型に多く見られるタイプの糖の1つはN−アセチルノイラミン酸(シアル酸という)である。シアル酸は通常N−結合型オリゴ糖、O−結合型オリゴ糖の両方の末端残基であり、その負電荷によりグリコシル化化合物に酸性特性を与えることができる。こうした部位(単数または複数)については本発明の化合物のリンカーに組み込んでもよく、好ましくはポリペプチド化合物の組換え体作製の過程において細胞で(たとえば、CHO、BHK、COSなどの哺乳動物細胞内で)グリコシル化される。ただし、当該技術分野において公知の合成または半合成手順により、こうした部位をさらにグリコシル化して構わない。
【0040】
あるいは、合成方法によって本化合物を作製しても構わない。たとえば、固相合成法を用いてもよい。好適な技法は当該技術分野において周知であり、Merrifield(1973),Chem.Polypeptides,pp.335−61(Katsoyannis and Panayotis eds.);Merrifield(1963),J.Am.Chem.Soc.85:2149;Davis et al.(1985),Biochem.Intl.10:394−414;Stewart and Young(1969),Solid Phase Peptide Synthesis;米国特許第3,941,763号;Finn et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2:105−253;and Erickson et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2:257−527に記載された技法が挙げられる。固相合成は小さなペプチドを作製する最も費用効果に優れた方法であるため、ペプチドを個別に作製するのに好ましい手法である。
【0041】
VWFのフラグメント、変異体およびアナログ
ポリペプチドのフラグメント、変異体またはアナログの調製方法は当該技術分野において公知である。
【0042】
ポリペプチドのフラグメントは、以下に限定されるものではないが、酵素的切断(たとえば、トリプシン、キモトリプシン)により、さらに特定のアミノ酸配列を持つポリペプチドフラグメントを生成する組換え手段も用いて調製する。多量体化ドメインまたは当該技術分野において公知の他の任意の同定可能なVWFドメインなど、特定の活性を持つタンパク質の領域を含むポリペプチドのフラグメントを生成してもよい。
【0043】
ポリペプチドアナログの作製方法についてもよく知られている。ポリペプチドのアミノ酸配列アナログは置換アナログでも、挿入アナログでも、付加アナログでもまたは欠失アナログでもよい。ポリペプチドのフラグメントを含む欠失アナログは、機能または免疫原性活性に必須ではない、未変性タンパク質の1つまたは複数の残基が欠損している。挿入アナログは、たとえば、ポリペプチドの末端以外でのアミノ酸(単数または複数)付加が伴う。このアナログは免疫反応性エピトープが挿入されていても、または単に1つの残基が挿入されていてもよい。ポリペプチドのフラグメントを含む付加アナログは、タンパク質の両末端のうちどちらかに1つまたは複数のアミノ酸が付加されているものを含み、たとえば、融合タンパク質がある。
【0044】
置換アナログは一般にタンパク質内の1つまたは複数の部位で野生型の1つのアミノ酸を別のアミノ酸と交換したものであり、ポリペプチドの1つまたは複数の特性を他の機能または特性を消失させずに調節するように設計してもよい。一態様では、置換は保存的置換である。「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸を化学的特性の類似した側鎖を持つアミノ酸と置換することを意味する。保存的置換を生じる類似のアミノ酸としては、酸性側鎖を持つアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸);塩基性側鎖を持つアミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン);極性アミド側鎖を持つアミノ酸(グルタミン、アスパラギン);疎水性脂肪族側鎖を持つアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、グリシン);芳香族側鎖を持つアミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン);小さな側鎖を持つアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン);あるいは脂肪族ヒドロキシル側鎖を持つアミノ酸(セリン、トレオニン)が挙げられる。
【0045】
アナログは、アナログを得る元となった組換え型VWFと実質的に相同でも、または実質的に同一でもよい。好ましいアナログは、野生型ポリペプチドの生物活性、たとえば、血液凝固活性の少なくとも一部を保持している。
【0046】
意図しているポリペプチド変異体は、ユビキチン化、ポリシアル化などのグリコシル化、治療剤または診断剤とのコンジュゲーション、標識化、ペグ化(ポリエチレングリコールを用いた誘導体化)などのポリマーの共有結合、非加水分解性結合の導入、および通常ヒトタンパク質に認められないオルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入または置換といった技法により化学修飾されたポリペプチドを含む。変異体は、本発明の非修飾分子と同じまたは本質的に同じ結合特性を保持している。こうした化学修飾には、VWFポリペプチドへの作用物質の直接的または間接的(たとえば、リンカーを介した)結合を含めてもよい。間接的結合の場合、リンカーは加水分解性でも、または非加水分解性でもよいと考えられる。
【0047】
ペグ化ポリペプチドアナログの調製は一般に、(a)ポリペプチド結合コンストラクトが1つまたは複数のPEG基に結合する条件下でポリペプチドをポリエチレングリコールと反応させる(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)のステップおよび(b)反応生成物(単数または複数)を得るステップを含む。一般に、アシル化反応に最適な反応条件は既知のパラメーターおよび所望の結果に基づき決定される。たとえば、PEG:タンパク質の比が大きいほど、ポリペグ化生成物の割合が高くなる。いくつかの実施形態では、結合コンストラクトはN末端に単一のPEG部分を持つ。ポリエチレングリコール(PEG)を血液凝固因子に結合させてインビボでの半減期を延長させてもよい。PEG基は都合のよい任意の分子量としてよく、直鎖でもまたは分枝でもよい。PEGの平均分子量は約2キロダルトン(「kD:kiloDalton」)〜約100kDa、約5kDa〜約50kDaまたは約5kDa〜約10kDaの範囲である。PEG基はPEG部分の天然または人工の反応基(たとえば、アルデヒド基、アミノ基、チオール基またはエステル基)と血液凝固因子の反応基(たとえば、アルデヒド基、アミノ基またはエステル基)とのアシル化または還元アルキル化により、または当該技術分野において公知の他の任意の手法により血液凝固因子に結合している。
【0048】
ポリシアル化ポリペプチドの調製方法は、米国特許出願公開第20060160948号,Fernandes et Gregoriadis;Biochim.Biophys.Acta 1341:26−34,1997,and Saenkoら、Haemophilia 12:42−51,2006に記載されている。簡単に説明すると、0.1MのNaIOを含むコロミン酸溶液を暗所で室温にて撹拌してCAを酸化する。この活性化CA溶液を、たとえば、暗所で0.05Mのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2に対して透析し、この溶液をrVWF溶液に加え、緩やかに振盪しながら暗所で室温にて18時間インキュベートする。次いで限外濾過/ダイアフィルトレーションにより、このrVWF−ポリシアル酸コンジュゲートから遊離試薬を分離すればよい。rVWFとポリシアル酸のコンジュゲーションについては、グルタルアルデヒドを架橋結合試薬として用いて行ってもよい(Migneaultら、Biotechniques 37:790−796,2004)。
【0049】
本発明のポリペプチドはポリペプチドである第2の作用物質との融合タンパク質としてもよいことをさらに意図している。一実施形態では、ポリペプチドである第2の作用物質は、以下に限定されるものではないが、酵素、成長因子、抗体、サイトカイン、ケモカイン、細胞表面受容体、細胞表面受容体の細胞外ドメイン、細胞接着分子、または上述のタンパク質のフラグメントもしくは活性ドメインである。関連する実施形態では、第2の作用物質は第VIII因子、第VII因子、第IX因子などの血液凝固因子である。意図している融合タンパク質は当該技術分野において公知の化学的技法または組換え技法により作製される。
【0050】
さらに、本発明の製剤ではプレプロVWFポリペプチドおよびプロVWFポリペプチドが治療効果をもたらすことも意図している。たとえば、米国特許第7,005,502号には、インビトロでトロンビンの産生を誘導する、大量のプロVWFを含む医薬調製物が記載されている。本発明は組換え体、天然の成熟VWFの生物学的に活性なフラグメント、変異体またはアナログだけでなく、本明細書に記載の製剤にプレプロVWF(配列番号2に記載)またはプロVWFポリペプチド(配列番号2のアミノ酸残基23〜764)の生物学的に活性な組換えフラグメント、変異体またはアナログを使用することを意図している。
【0051】
当業者であれば、天然分子と同一または類似の生物活性を有する、天然分子の生物学的に活性なフラグメント、変異体またはアナログをコードするように、フラグメント、変異体およびアナログをコードするポリヌクレオチドを容易に作製することができる。こうしたポリヌクレオチドは、PCR技法、分子をコードするDNAの消化/ライゲーションおよび同種のものを用いて調製すればよい。したがって、当業者はDNA鎖の一塩基を変化させられるため、以下に限定されるものではないが、部位特異的変異誘発など当該技術分野において公知の任意の方法により、コドンの変化およびミスセンス変異を引き起こすことができる。本明細書で使用する場合、「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、たとえば、50%ホルムアミド中、42℃でハイブリダイズし、0.1×SSC、0.1%SDS中、60℃で洗浄することを意味する。当業者であれば、ハイブリダイズしようとする配列の長さおよびGCヌクレオチド塩基含量によってこうした条件が変化することを理解するであろう。当該技術分野における処方標準は、正確なハイブリダイゼーション条件を判定するのに適している。Sambrookら、9.47−9.51 in Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989)を参照されたい。
【0052】
一般的な製剤および賦形剤
賦形剤は製剤(drug product)の安定性および送達性を付加したり、向上させたりするために製剤に加える添加剤である。賦形剤は、加える理由にかかわらず、製剤(drug product)に不可欠な成分であり、したがって、患者において安全かつ忍用性が良好である必要がある。タンパク質薬剤の場合、賦形剤の選択が薬剤の有効性および免疫原性の両方に影響する可能性があるため特に重要である。このため、タンパク質製剤は、好適な安定性、安全性および市場性を与える賦形剤を適切に選択して開発する必要がある。
【0053】
治療用タンパク質の製剤を開発する際の主な課題は、製造、輸送および保管のストレスに対して生成物を安定化させることである。製剤賦形剤の役割はこうしたストレスに対して安定性を与えることにある。また、賦形剤は、高濃度タンパク質製剤の粘度を低下させ送達できるようにして患者の利便性を高めるために使用されることもある。一般に、賦形剤は、様々な化学的および物理的ストレスに対してタンパク質を安定化させる機序に基づき分類することができる。ある種の賦形剤は、特定のストレス作用を軽減したり、または特定のタンパク質の何らかの感受性を制御したりするために使用される。タンパク質の物理的安定性および共有結合の安定性に対してより全体的な作用を及ぼす賦形剤もある。本明細書に記載の賦形剤は、化学的種類あるいは製剤における機能的役割のどちらかでまとめられる。安定化の機序に関する簡単な説明は、各賦形剤のタイプを考察する際に行う。
【0054】
本明細書に記載の本教示およびガイダンスを踏まえれば、本発明の生物学的製剤(たとえば、ポリペプチド)の安定性の保持を促す生物学的製剤を得るには、どの製剤にどのくらいの量または範囲の賦形剤を加えられるかが当業者であれば分かるであろう。たとえば、本発明の生物学的製剤に加えるべき塩の量および種類は、最終溶液の所望の重量オスモル濃度(すなわち、等張、低張または高張)のほか、製剤に加えるべき他の成分の量および重量オスモル濃度に基づき選択すればよい。同様に、製剤に加えるべきポリオールまたは糖の種類を例にとれば、そうした賦形剤の量はその重量オスモル濃度によって決まる。
【0055】
たとえば、約5%ソルビトールを加えると等張化するのに対し、スクロース賦形剤で等張化するには約9%のスクロース賦形剤が必要である。本発明の生物学的製剤内に加えてもよい1種または複数種の賦形剤の濃度の量または範囲の選択については、塩、ポリオールおよび糖を参照して上記に例示した。ただし、本明細書に記載され、さらに個別の賦形剤を参照して例示される考慮すべき各項目については、たとえば、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定剤、充填剤、凍結保護物質、凍結乾燥保護剤、酸化防止剤、金属イオン、キレート化剤および/または防腐剤など、どの種類および組み合わせの賦形剤にも当てはまることを当業者であれば理解するであろう。
【0056】
さらに、ある賦形剤をモル濃度で表す場合、溶液の等価なw/vパーセント(%)(たとえば、(溶液サンプル中の物質のグラム数/溶液のmL数)×100%)も意図していることを当業者であれば分かるであろう。
【0057】
言うまでもなく、本明細書に記載の賦形剤の濃度が個々の製剤内で相互に依存していることも当業者であれば分かるであろう。たとえば、ポリペプチド濃度が高い場合、たとえば、安定化剤の濃度が高い場合は充填剤の濃度を低くしてもよい。さらに、充填剤が存在しない特定の製剤の等張性を維持するには、それに応じて安定化剤の濃度を調節することになる(すなわち、安定剤を「等張になる」量で使用することになる)ことも当業者であれば分かるであろう。通常の賦形剤は当該技術分野において公知であり、Powellら、Compendium of Excipients fir Parenteral Formulations(1998),PDA J.Pharm.Sci.Technology,52:238−311で確認することができる。
【0058】
緩衝液および緩衝剤
薬理学的に活性なポリペプチド製剤の安定性は通常、狭いpH範囲で最大になることが観察される。この最も安定したpH範囲は、プレフォーミュレーション研究の初期段階で確認する必要がある。これを行う際には加速安定性試験および熱量測定スクリーニング試験などいくつかのアプローチが有用であることが明らかになっている(Remmele R.L.Jr.ら、Biochemistry,38(16):5241−7(1999))。製剤が完成したら、その医薬品を保管期間通じて製造し、保存する必要がある。したがって、製剤のpHを調節するために必ずといっていいほど緩衝剤が使用される。
【0059】
タンパク質製剤の緩衝液としては通常、有機酸、ホスファートおよびトリスが使用されている。緩衝種の緩衝能はpKaとpHが等しいときに最大になり、pHがその値から増加したり減少したりするにつれ小さくなる。緩衝能力の90パーセントはそのpKaの1pH単位内に存在する。また、緩衝能は緩衝液濃度の上昇に比例して増大する。
【0060】
緩衝液の選択の際は複数の要因を考慮する必要がある。何よりもまず、そのpKaおよび所望の製剤pHに基づき緩衝液種およびその濃度を規定する必要がある。同様に、その緩衝液にポリペプチドおよび他の製剤賦形剤との適合性があり、いかなる分解反応も触媒しないことを確認することも重要である。考慮すべき第3に重要な点は、投与時に緩衝液が引き起こすことがあるチクチク感および刺激感である。たとえば、シトラートは注射時にチクチク感を引き起こすことが知られている(Laursen Tら、Basic Clin Pharmacol Toxicol.,98(2):218−21(2006))。投与時に製剤が速やかに血液に希釈されるIV経路による投与に比べて薬剤溶液が比較的長時間その部位にとどまる皮下(SC:subcutaneous)または筋肉内(IM:intramuscular)経路により投与される薬剤は、チクチク感および刺激感が起こる可能性が大きくなる。直接的なIV注入により投与される製剤の場合、緩衝液(および他の任意の製剤成分)の総量をモニターする必要がある。患者の心血管に対して作用する場合がある、リン酸カリウム緩衝液の形態で投与されたカリウムイオンについては、特に注意しなければならない(Hollander−Rodriguez JCら、Am.Fam.Physician.,73(2):283−90(2006))。
【0061】
本組成物に存在する緩衝系は生理学的に適合性があり、医薬製剤の所望のpHを維持するように選択する。一実施形態では、溶液のpHはpH2.0〜pH12.0である。たとえば、溶液のpHは2.0、2.3、2.5、2.7、3.0、3.3、3.5、3.7、4.0、4.3、4.5、4.7、5.0、5.3、5.5、5.7、6.0、6.3、6.5、6.7、7.0、7.3、7.5、7.7、8.0、8.3、8.5、8.7、9.0、9.3、9.5、9.7、10.0、10.3、10.5、10.7、11.0、11.3、11.5、11.7または12.0としてもよい。
【0062】
このpH緩衝化合物は、製剤のpHを所定のレベルで維持するのに好適であればどのような量で存在してもよい。一実施形態では、pH緩衝濃度は0.1mM〜500mM(1M)である。たとえば、pH緩衝剤は少なくとも0.1、0.5、0.7、0.8 0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500mMであることを意図している。
【0063】
本明細書に記載するような製剤を緩衝するのに使用する例示的なpH緩衝剤としては、グリシン、ヒスチジン、グルタマート、スクシナート、ホスファート、アセタート、シトラート、トリス、およびアミノ酸または、以下に限定されるものではないが、アスパルタート、ヒスチジンおよびグリシンなどのアミノ酸の混合物があるが、これに限定されるものではない。
【0064】

タンパク質の溶解性、物理的安定性および等張性に重要である場合がある製剤のイオン強度を高めるには、塩を加える場合が多い。塩は、様々な方法でタンパク質の物理的安定性に作用することができる。イオンは、タンパク質の表面の荷電残基に結合して未変性状態のタンパク質を安定化させることができる。あるいは、塩は、タンパク質骨格(−CONH−)に沿ったペプチド基に結合して変性状態を安定化させることもできる。塩はさらに、タンパク質分子内の残基間の静電的斥力相互作用を遮蔽してタンパク質の未変性コンホメーションも安定化させることができる。タンパク質製剤中の塩は、タンパク質の凝集および不溶を引き起こすことがあるタンパク質分子間の静電的斥力相互作用を遮蔽することもできる。提供する製剤中の塩濃度は0.1、1、10、20、30、40、50、80、100、120、150、200、300および500mMである。
【0065】
安定剤および充填剤
本医薬製剤においては、保管による凝集および化学分解を防止または抑制するために安定剤(または安定剤の組み合わせ)を加えてもよい。曇ったまたは濁った溶液は再構成時にタンパク質が沈殿したり、または少なくとも凝集したりすることが示されている。「安定剤」という用語は、液体状態における凝集または他の物理的分解だけでなく、化学分解(たとえば、自己分解、脱アミド、酸化など)を防止できる賦形剤を意味する。医薬組成物に通常使用される安定剤として、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、アルギニンHCL、デキストラン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、シクロデキストリン、N−メチルピロリデン、セルロースおよびヒアルロン酸などの多糖類を含むポリ−ヒドロキシ化合物、塩化ナトリウムが挙げられるが、これに限定されるものではない[Carpenterら、Develop.Biol.Standard 74:225,(1991)]。安定剤は本製剤中に約0.1、0.5、0.7、0.8 0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、700、900または1000mMの濃度で加える。
【0066】
必要に応じて、本製剤は、適切な量の充填剤および重量オスモル濃度調節剤も含む。充填剤としては、たとえば、マンニトール、グリシン、スクロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ラクトース、ソルビトール、トレハロースまたはキシリトールなどのポリマーが挙げられる。一実施形態では、充填剤はマンニトールである。充填剤は約0.1、0.5、0.7、0.8 0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、700、900または1000mMの濃度で加える。
【0067】
界面活性剤
タンパク質分子は、気−液、バイアル−液および液−液(シリコーンオイル)界面で吸着および変性を受けやすくなる表面と相互作用する傾向が強い。この分解経路はタンパク質濃度に逆相関することが観察されており、この分解経路により可溶性および不溶性のタンパク質凝集の形成、または表面への吸着による溶液からのタンパク質の減少のどちらが起こる。表面に誘起される分解は容器表面への吸着に加えて、生成物の輸送および取り扱いの過程で見られるような物理的撹拌によっても進む。
【0068】
界面活性剤は、表面に誘起される分解を防止するためタンパク質製剤に繁用されている。界面活性剤は、界面位置においてタンパク質に置き換わることができる両親媒性分子である。界面活性剤分子の疎水性部分は界面位置(たとえば、気/液)に集まるのに対し、分子の親水性部分はバルク溶媒に向いてとどまる。十分な濃度(典型的には界面活性剤(detergent)の臨界ミセル濃度前後)であれば、界面活性剤分子の表層はタンパク質分子が界面に吸着されるのを防止する働きをする。このため、表面に誘起される分解が最小限に抑えられる。最も多く使われている界面活性剤はソルビタンエトキシラートの脂肪酸エステル、すなわち、ポリソルベート20およびポリソルベート80である。この2つが異なるのは分子に疎水特性を与える脂肪族鎖の長さだけであり、それぞれC−12およびC−18である。したがって、ポリソルベート80の方がポリソルベート20よりも表面活性が強く、臨界ミセル濃度が低い。
【0069】
また、界面活性剤(detergent)はタンパク質の立体構造の熱力学的安定性にも作用することができる。個々の界面活性剤(detergent excipient)の作用はやはりタンパク質特異的となる。たとえば、ポリソルベートはタンパク質の安定性を低下させることもあれば、高めることもある。界面活性剤(detergent)によるタンパク質の不安定化は、界面活性剤(detergent)分子の疎水性尾が、一部または全部の折り畳みがほどけている状態のタンパク質との特異的結合に関与する場合があることによって合理的に説明できる。この種の相互作用により、コンホメーションの平衡状態はタンパク質がより伸びた状態に変化する(すなわち、ポリソルベートの結合に伴いタンパク質分子の疎水性部分の曝露が増大する)場合がある。あるいは、タンパク質の未変性状態で疎水性表面がある程度現れている場合、未変性状態に界面活性剤(detergent)が結合すると、そのコンホメーションを安定化させることができる。
【0070】
ポリソルベートのもう1つの側面は、本質的に酸化分解を受けやすいことである。原料としてのポリソルベートは、タンパク質残基の側鎖、特にメチオニンを酸化するペルオキシドを十分な量で含んでいる場合が多い。安定剤を添加すると酸化損傷を起こす可能性があるため、製剤には賦形剤を最小有効濃度で使用する点に留意すべきである。界面活性剤の場合、安定化の機序によって個々のタンパク質に対する有効濃度が異なる。界面活性剤の安定化の機序が表面変性の防止に関係するのであれば、有効濃度は界面活性剤(detergent)の臨界ミセル濃度付近になると考えられている。一方、安定化の機序がタンパク質−界面活性剤(detergent)の特異的相互作用に関連するのであれば、界面活性剤の有効濃度はタンパク質濃度および相互作用の化学量論に関係する(Randolph T.W.ら、Pharm Biotechnol,13:159−75(2002))。
【0071】
界面活性剤はさらに、凍結および乾燥中の表面に関連する凝集の防止のため適当な量で加えてもよい[Chang,B,J.Pharm.Sci.85:1325,(1996)]。例示的な界面活性剤として、天然のアミノ酸に由来する界面活性剤などアニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性および両性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびジオクチルスルホン酸ナトリウム、ケノデオキシコール酸、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ドデシル硫酸リチウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウムおよびグリコデオキシコール酸ナトリウム塩があるが、これに限定されるものではない。カチオン性界面活性剤には、ベンザルコニウムクロリドまたは塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドがあるが、これに限定されるものではない。両性イオン界面活性剤には、CHAPS、CHAPSO、SB3−10およびSB3−12があるが、これに限定されるものではない。非イオン界面活性剤には、ジギトニン、トリトンX−100、トリトンX−114、トゥイーン20およびトゥイーン80があるが、これに限定されるものではない。界面活性剤には、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ひまし油10、40、50および60、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート40、60、65および80、大豆レシチンおよびジオレイルホスファチジルコリン(DOPC:dioleyl phosphatidyl choline)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG:dimyristoylphosphatidyl glycerol)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC:dimyristoylphosphatidyl choline)および(ジオレイルホスファチジルグリセロール)DOPG(dioleyl phosphatidyl glycerol)などの他のリン脂質;スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースがあるが、これに限定されるものではない。したがって、これらの界面活性剤を個別にあるいは混合物として様々な比率で含む組成物も提供される。本製剤においては約0.01〜約0.5g/Lの濃度で界面活性剤を加える。
【0072】
他の一般的な賦形剤成分
アミノ酸
アミノ酸は緩衝液、充填剤、安定剤および酸化防止剤としてタンパク質製剤に広く使用されている。ヒスチジンおよびグルタミン酸はそれぞれpH範囲5.5〜6.5および4.0〜5.5でタンパク質製剤の緩衝に使用される。ヒスチジンのイミダゾール基はpKa=6.0であり、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基のpKaは4.3であるため、これらのアミノ酸はそのそれぞれのpH範囲での緩衝に好適である。そうした場合にグルタミン酸は特に有用である(たとえば、Stemgen(登録商標))。ヒスチジンは市販のタンパク質製剤(たとえば、Xolair(登録商標)、Herceptin(登録商標)、Recombinate(登録商標))によく用いられており、このアミノ酸は、注射時に刺痛があることが知られている緩衝液シトラートに変わる緩衝液になっている。興味深いことに、ABX−IL8(IgG2抗体)を含む製剤で認められているように、ヒスチジンは高濃度で使用する場合、液体状態でも凍結乾燥状態でも凝集に対して安定化作用があることも報告されている(Chen Bら、Pharm Res.,20(12):1952−60(2003))。さらに、ヒスチジン(最大60mM)は、この抗体の高濃度製剤の粘度を低下させることも観察された。しかしながら、同じ試験でこの著者らは、ステンレス鋼容器中の抗体に関する凍結融解試験においてヒスチジン含有製剤中で凝集および変色が促進されるのを観察した。著者らはこれを鋼容器の腐食により溶出した鉄イオンの影響によるものと考えた。ヒスチジンのもう1つの注意点は、金属イオンの存在下で光酸化を受けることである(Tomita Mら、Biochemistry,8(12):5149−60(1969))。メチオニンを製剤の酸化防止剤として使用するのは有望のようであり、多くの酸化ストレスに対して有効であることが観察されている(Lam XMら、J Pharm Sci,86(11):1250−5(1997))。
【0073】
アミノ酸のグリシン、プロリン、セリンおよびアラニンは、優先的な排除機構によりタンパク質を安定化させることが明らかになっている。グリシンはさらに、凍結乾燥製剤に繁用される充填剤でもある(たとえば、Neumega(登録商標)、Genotropin(登録商標)、Humatrope(登録商標))。アルギニンは、凝集の阻害に有効な作用物質であることが明らかになっており、液体製剤にも凍結乾燥製剤にも(たとえば、Activase(登録商標)、Avonex(登録商標)、Enbrel(登録商標)液体)使用されている。また、アルギニンの存在下である種のタンパク質のリフォールディング効率が高まるのは、リフォールディングにおける凝集の競合反応をアルギニンが抑制するためである。
【0074】
酸化防止剤
タンパク質残基の酸化は様々な原因から起こる。酸化によるタンパク質損傷の予防に際しては、特定の酸化防止剤の添加以外に、空気中の酸素、温度、光の曝露および化学汚染など生成物の製造プロセスおよび保管を通じて多くの要因を慎重に制御する必要もある。最も多く使われている医薬用酸化防止剤は還元剤、酸素/フリーラジカルスカベンジャーまたはキレート化剤である。治療用タンパク質製剤の酸化防止剤は水溶性であり、生成物の保管期間を通じて活性が維持される。還元剤および酸素/フリーラジカルスカベンジャーは溶液中の活性酸素種を切断することで作用する。EDTAなどのキレート化剤は、フリーラジカルの形成を促進する微量金属夾雑物に結合することで効果を発揮する。たとえば、EDTAは、金属イオンを触媒とするシステイン残基の酸化を阻害するため酸性線維芽細胞増殖因子の液体製剤に使用されていた。EDTAはKineret(登録商標)およびOntak(登録商標)のような市販の製品に使用されている。
【0075】
タンパク質の酸化を防止する様々な賦形剤の有効性だけでなく、酸化防止剤自体がタンパク質に他の共有結合の変化または物理変化を引き起こすことが懸念される。たとえば、還元剤は分子内のジスルフィド結合を破壊する恐れがあるため、混合ジスルフィドが生成される可能性がある。遷移金属イオンの存在下のアスコルビン酸およびEDTAについては、多くのタンパク質およびペプチドにおいてメチオニン酸化を促進することが明らかになっている(Akers MJ,and Defelippis MR.Peptides and Proteins as Parenteral Solutions.In:Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins.Sven Frokjaer,Lars Hovgaard,editors.Pharmaceutical Science.Taylor and Francis,UK(1999)); Fransson J.R.,J.Pharm.Sci.86(9):4046−1050(1997);Yin Jら、Pharm Res.,21(12):2377−83(2004))。チオ硫酸ナトリウムに関してはrhuMab HER2において光および温度によるメチオニン酸化のレベルを低下させることが報告されている。ただし、この研究では、チオスルファート−タンパク質付加物の形成も報告された(Lam XM,Yang JYら、J Pharm Sci.86(11):1250−5(1997))。適切な酸化防止剤の選択は、タンパク質の個々のストレスおよび感受性に従って行われる。
【0076】
金属イオン
一般に、遷移金属イオンはタンパク質の物理化学的分解反応を触媒する恐れがあるため、タンパク質製剤には好ましくない。しかしながら、特定の金属イオンはタンパク質の補助因子である場合に製剤に、さらに金属イオンが配位錯体を形成する場合にタンパク質の懸濁液製剤(たとえば、インスリンの亜鉛懸濁液)に含まれている。最近ではマグネシウムイオン(10〜120mM)を使用すると、アスパラギン酸のイソアスパラギン酸への異性化が阻害されると考えられている(国際公開第2004039337号)。
【0077】
金属イオンが安定性を付与したり、タンパク質の活性を高めたりする2つの例として、ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase、Pulmozyme(登録商標))および第VIII因子がある。rhDNaseの場合、Ca+2イオン(最大100mM)が特異的結合部位により酵素の安定性を高めた(Chen Bら、J Pharm Sci.,88(4):477−82(1999))。実際にEGTAを用いて溶液からカルシウムイオンを除去したところ、脱アミドおよび凝集が促進された。しかしながら、この作用はCa+2イオンでしか観察されず、他の二価カチオンMg+2、Mn+2およびZn+2はrhDNaseを不安定化させることが観察された。同様の作用が第VIII因子でも観察された。Ca+2およびSr+2イオンはタンパク質を安定化させたのに対し、Mg+2、Mn+2およびZn+2、Cu+2およびFe+2のような他のイオンはこの酵素を不安定化させた(Fatouros,A.ら、Int.J.Pharm.,155,121−131(1997)。第VIII因子の別の研究では、Al+3イオンの存在下で凝集率の大幅な上昇が観察された(Derrick TSら、J.Pharm.Sci.,93(10):2549−57(2004))。この著者らは緩衝塩のような他の賦形剤にもAl+3イオンが混入している場合が多いことを指摘し、製剤化した製品には賦形剤を適切な量で使用する必要があることを明らかにしている。
【0078】
防腐剤
同一容器から2回以上取り出す必要がある複数回使用の非経口製剤を開発する場合は防腐剤が必要である。その機能は微生物の増殖を阻害し、製剤(drug product)の保管期間または使用期間を通じて生成物の無菌性を確保することである。多く使用される防腐剤として、ベンジルアルコール、フェノールおよびm−クレゾールが挙げられる。防腐剤は長い間使用されてはいるものの、防腐剤を含むタンパク質製剤の開発は問題となる場合がある。防腐剤は、ほとんどの場合、タンパク質に不安定化作用(凝集)を及ぼすものであり、これが反復投与タンパク質製剤への防腐剤使用が制限される主な要因になっている(Roy Sら、J Pharm Sci,94(2):382−96(2005))。
【0079】
これまでに製剤化されてきた大部分のタンパク質薬剤は、単回用のみである。しかしながら、反復投与製剤が可能になれば、患者に利便性を与え、市場性が向上するという利点が加わる。防腐剤を含む製剤の開発がより簡便な複数回使用のペン型注射器の商品化に結び付いたヒト成長ホルモン(hGH)の例が良い例である。防腐剤の入ったhGH製剤を含む少なくとも4種類のそうしたペン型装置が現在市場に出ている。Norditropin(登録商標)(液体、Novo Nordisk)、Nutropin AQ(登録商標)(液体、Genentech)およびGenotropin(凍結乾燥−二重チャンバーカートリッジ、Pharmacia & Upjohn)はフェノールを含むのに対し、Somatrope(登録商標)(Eli Lilly)はm−クレゾールと共に製剤化されている。
【0080】
防腐剤を含む剤形の製剤開発においては、いくつかの側面を考慮する必要がある。製剤(drug product)中の防腐剤の有効濃度については、最適化しなければならない。これには、剤形中の防腐剤がタンパク質の安定性を損なうことなく抗菌有効性を与える濃度範囲にあることを個々に検査することが不可欠である。たとえば、インターロイキン−1受容体(I型)の液体製剤の開発では3種の防腐剤が示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)によるスクリーニングに成功した。この防腐剤は、市販の製品に多く使用される濃度で安定性に及ぼす影響に基づき順位付けされた(Remmele RL Jr.ら、Pharm Res.,15(2):200−8(1998))。
【0081】
防腐剤の選択の際に考慮する必要があるもう1つの要因は、一部の防腐剤が注射部位反応を引き起こす恐れがあることである。Norditropinの防腐剤および緩衝液に着目した臨床試験において、フェノールおよびベンジルアルコールを含む製剤ではm−クレゾールを含む製剤に比べて痛みが軽減されることが観察された(Kappelgaard A.M.,Horm Res.62 Suppl 3:98−103(2004))。興味深いことに、繁用される防腐剤の中でベンジルアルコールは麻酔特性を有する(Minogue SC,and Sun DA.,Anesth Analg.,100(3):683−6(2005))。
【0082】
凍結乾燥
また、本発明のVWFポリペプチドを含む製剤は投与前に凍結乾燥する場合があることも意図している。凍結乾燥は当該技術分野における通常の技法を用いて行い、開発している組成物に対して最適化するべきである[Tangら、Pharm Res.21:191−200,(2004)and Changら、Pharm Res.13:243−9(1996)]。
【0083】
一態様では、凍結乾燥サイクルは、凍結、1次乾燥および2次乾燥という3つのステップから構成される[A.P.Mackenzie,Phil Trans R Soc London,Ser B,Biol 278:167(1977)]。凍結ステップでは、溶液を冷却して氷を形成させる。さらに、このステップでは充填剤を結晶化させる。1次乾燥段階ではこの氷を昇華させる。これは、真空にしてチャンバー圧力を氷の蒸気圧未満に下げ、昇華を促進する熱を導入して行う。最後に、2次乾燥段階ではチャンバー圧力を下げながら棚温度を高温にして吸着または結合した水を除去する。このプロセスでは凍結乾燥ケークという材料が生成される。このケークは後で滅菌水あるいは好適な注射用希釈液で再構成することができる。
【0084】
凍結乾燥サイクルは賦形剤の最終的な物理的状態を決定するだけでなく、再構成時間、外観、安定性および最終的な含水量などの他のパラメーターにも影響を与える。凍結状態にある組成物の構造は特定の温度で起こるいくつかの転移(たとえば、ガラス転移、湿潤および結晶化)を経て移行するものであり、これを用いれば凍結乾燥プロセスを理解し最適化することができる。ガラス転移温度(Tgおよび/またはTg’)からは溶質の物理的状態に関する情報が得られ、示差走査熱量測定(DSC)によって判定することができる。TgおよびTg’は、凍結乾燥サイクルを設計する際に考慮に入れなければならない重要なパラメーターである。たとえば、Tg’は1次乾燥において重要である。さらに、乾燥状態のガラス転移温度は最終生成物の保管温度に関する情報を与える。
【0085】
調製方法
本発明はさらに、医薬製剤の調製方法も意図している。種々の水性キャリア、たとえば、無菌注射用水、防腐剤を含む反復投与用の水もしくは適切な量の界面活性剤(たとえば、ポリソルベート−20)を含む水、0.4%食塩水、0.3%グリシンまたは水性懸濁液には、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤との混合物としての活性化合物を含めてもよい。種々の態様では、そうした賦形剤は、たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびゴムアカシアなどの懸濁化剤であり、分散剤または湿潤剤、たとえば、レシチンなどの天然のホスファチド、または、たとえば、ステアリン酸ポリオキシエチレンなどのアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、または、たとえば、ヘプタデカエチル−エネオキシセタノールなどのエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートなどのエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、または、たとえば、ポリエチレンソルビタンモノオレアートなどのエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物であってもよい。水性懸濁液は、1種または複数種の防腐剤、たとえば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルを含んでもよい。
【0086】
投与
一態様では、組成物をヒトまたは試験動物に投与するため、組成物に1種または複数種の薬学的に許容されるキャリアを含ませる。「薬学的に」または「薬理学的に」許容されるという語句は、分子的実体および組成物が安定であり、凝集および切断生成物などのタンパク質分解を阻害するほか、下記のような当該技術分野において公知の経路により投与したときにアレルギー反応または他の有害反応を起こさないことをいう。「薬学的に許容されるキャリア」としては、臨床的に有用なあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤ならびに上記に開示した作用物質を含む同種のものが挙げられる。
【0087】
医薬製剤は経口投与しても、局所投与しても、経皮投与しても、非経口投与しても、噴霧吸入投与しても、経膣投与しても、直腸内投与しても、または頭蓋内注射投与してもよい。本明細書で使用する場合、非経口という用語は、皮下注射、静脈内注射または注入、筋肉内注射または注入、大槽内注射または注入技法を含む。静脈内注射による投与、皮内注射による投与、筋肉内(intramusclar)注射による投与、乳房内注射による投与、腹腔内注射による投与、髄膜内注射による投与、眼球後注射による投与、肺内注射による投与およびまたは特定部位での外科的植え込みも意図している。一般に、組成物は本質的にパイロジェン、および被投与者に有害となる恐れがある他の不純物を含まない。
【0088】
組成物の単回または反復投与は、担当医師が選択した用量レベルおよびパターンにより行えばよい。疾患の予防または処置の際の適切な投与量は上述のような処置対象の疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、薬剤の投与が予防目的かまたは治療目的か、以前に行われた治療、患者の既往歴および薬剤に対する応答ならびに主治医の裁量によって異なる。
【0089】
キット
追加の態様として、本発明は、被検体への投与の際に使用しやすいようにパッケージ化された1つまたは複数の医薬製剤を含有するキットを含む。一実施形態では、そうしたキットは、密封ビンまたは入れ物などの容器内にパッケージ化された本明細書に記載の医薬製剤(たとえば、治療用タンパク質またはペプチドを含む組成物)を含み、この方法を実施する際の化合物または組成物の使用を説明したラベルが容器に貼付されているか、パッケージの中に入れられている。一実施形態では、医薬製剤は、容器内のヘッドスペースの量(たとえば、液体製剤と容器上端との間の空気量)が非常に少なくなるように容器内にパッケージ化されている。好ましくは、ヘッドスペースの量は無視できる程度である(すなわち、ほとんどない)。一実施形態では、キットは、治療用タンパク質またはペプチド組成物を含む第1の容器と組成物用の生理学的に許容される再構成溶液を含む第2の容器とを含む。一態様では、医薬製剤は単位剤形内にパッケージ化されている。キットはさらに、個々の投与経路に応じて医薬製剤の投与に好適な装置を含んでもよい。好ましくは、キットは、医薬製剤の使用を説明したラベルを含む。
【0090】
投与量
本明細書に記載する状態の処置方法に関係する投与レジメンは、薬剤の作用を変える様々な要因、たとえば、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の感染症の重症度、投与期間および他の臨床的因子を考慮して主治医が決定する。たとえば、本発明の組換え型VWFの代表的な用量は約50U/kg、500μg/kg相当である。
【0091】
本発明の製剤は、初回ボーラス投与し、その後は製剤(drug product)の治療域血中濃度を維持するため持続注入としてもよい。もう1つの例として、本発明の化合物を1回投与として投与してもよい。当業者であれば、医療実施基準および個々の患者の臨床症状から判断して有効投与量および投与レジメンを容易に最適化できる。投与頻度は、作用物質の薬物動態パラメーターおよび投与経路によって異なる。最適な医薬製剤は、当業者が投与経路および所望の投与量に応じて決定する。たとえば、開示内容を参照によって本明細書に援用するRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)pages 1435−1712を参照されたい。こうした製剤は、投与された作用物質の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度およびインビボでのクリアランス速度に影響を与える場合がある。好適な用量は投与経路に応じて、体重、体表面積または臓器サイズに従って算出すればよい。適切な投与量は、適切な用量反応データと共に血中濃度投与量を判定する確立されたアッセイを使用して確認してもよい。最終的な投与レジメンは、薬剤の作用を変える様々な要因、たとえば、薬剤の比活性、障害の重症度および患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の感染症の重症度、投与期間ならびに他の臨床的因子を考慮して主治医が決定する。研究が行われるにつれて、様々な疾患および症状に対する適切な投与量レベルおよび処置期間に関する情報がさらに明らかになるであろう。
【0092】
以下の実施例は限定的であることを意図するものではなく、本発明の具体的な実施形態を例示するものにすぎない。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
振動実験
様々な製剤におけるrVWFの沈殿量を判定するため、種々の条件下で乱流振動後のrVWFの回収率を検査した。
【0094】
Advate緩衝液(90mMのNaCl、1.68mMのCaCl、10mMのL−ヒスチジン、10mMのトリス、0.26mMのグルタチオン、23.4mMのトレハロース、175.7mMのマンニトールおよび0.1g/Lのトゥイーン80、pH7.0)またはAdvate1:3緩衝液(水で3倍希釈したAdvate緩衝液)に溶かしたrVWFをシェーカーで室温(RT:room temperature)にて0分間、1分間、2.5時間または4日間乱流振動に供し、rVWFの回収率を振動前の出発材料と比較して測定した。表1に示すように、Advate緩衝液では約40〜80%の減少が観察され、Advate1:3緩衝液では約20〜30%の減少が観察された。VWF抗原VWF:Agは抗VWFポリクローナル抗体を用いたVWF特異的ELISAで検出できるVWFの量に相当し、VWF:RCoはリストセチンの存在下で安定化した血小板の凝集が起こるVWFの量に相当する。どちらの場合も、実際のWHO標準品に対して較正したヒト標準血漿を標準として使用した(1mlの標準血漿は通常1UのVWFを含む)。
【0095】
表1。乱流振動時間のrVWF回収率に対する影響
【0096】
【表1】

さらに、振動実験により凍結/解凍および凍結乾燥の作用を試験した。−20℃の低温室内で−20℃またはドライアイス上で凍結を行い、どちらの場合もRTで解凍し、どちらも液体製剤から開始した。凍結乾燥に関しては、本明細書に記載の製剤化したVWFサンプルをパイロット規模の凍結乾燥器内で<=−40℃にて凍結させ、標準的なlyoプログラムにより凍結乾燥させた。この液体製剤(5mlバイアル内に2ml)を用いて直接振動を行った。表2に示すようにrVWFの回収率は、Advate緩衝液に比べてAdvate1:3緩衝液の方が高かった。
【0097】
表2
【0098】
【表2】

振動実験ではヘッドスペースのあるシリンジ内とヘッドスペースのないシリンジ内で保管したrVWF回収率も測定した。興味深いことに、rVWFをヘッドスペースのないシリンジ内で保管し、上記のように振動させると、rVWFの沈殿は観察される。これに対し、rVWFをヘッドスペースのあるシリンジ内保管すると、沈殿がある程度観察される。
【0099】
要約すると、乱流振動の結果、Advate緩衝液またはAdvate1:3緩衝液ではrVWFが少なくとも30%減少し、Advate1:3緩衝液に比べてAdvate緩衝液の方が回収率の減少が大きいことが示された。興味深いことに、乱流振動実験で観察されたのと同じ沈殿物は、rVWFを保管して車で約5000km輸送した場合には観察されなかった(輸送中に予想される振動に相当する)。ヘッドスペースのないシリンジ内で保管することによりrVWFの沈殿を排除し得る。
【0100】
(実施例2)
組換え型VWFの安定性
様々な製剤に認められるrVWFの活性レベルを評価してrVWFの安定性を試験した。
【0101】
図1に示すように、rVWFはAdvate緩衝液中では0.3mMのグルタチオンが存在するため26週後には安定していない。しかしながら、図2に示すように、Advate1:3緩衝液ではrVWFの安定性が増す(たとえば、4℃で12週まで。)
図3に示すように、シトラート系製剤(15mMのクエン酸ナトリウム、10mMのCaCl、100mMのNaCl、pH7.0)の安定性は、0.1Mのグルタチオンを含むAdvate1:3緩衝液製剤よりも優れている。
【0102】
同様に、様々な緩衝液中のrVWFの濃度を長期的に測定した。図4、図5および図6に示すように、rVWF濃度はAdvate緩衝液、Advate1:3緩衝液およびシトラート系緩衝液中でそれぞれ長期的に安定している。
【0103】
(実施例4)
液体製剤の特徴付け
示差走査熱量測定(DSC)を用いて様々な緩衝液中のタンパク質(rVWF)のアンフォールディングの程度を評価した。表3に示すように、安定化にはAdvate緩衝液、pH7.0が最適である。
【0104】
DSCは、サンプルと基準物質との温度上昇に必要な熱量の差を温度の関数として測定する熱分析手法である。DSC実験の結果は、熱流と温度または時間との曲線になる。
【0105】
示差走査熱量計は加熱および冷却しながら一定範囲の温度を走査し、設定温度に達するのに必要な熱量を測定することで相転移、すなわち、融解、結晶化またはガラス転移を測定することができる。熱量計は熱容量、Cpおよび融点、Tmが既知である一連の純金属(亜鉛、インジウムおよびスズ)で較正した。それぞれの標準緩衝液を標準キャピラリーに入れ、rVWFサンプルをこの機器のサンプルキャピラリーに入れた。
【0106】
表3。様々な緩衝液におけるアンフォールディング温度
【0107】
【表3】

【0108】
【数1】

さらに、図7に示すように、大部分の製剤賦形剤はアンフォールディング温度を約1〜2℃上昇させる。図8は、10mMのCaClがアンフォールディング温度を約8℃〜約67℃上昇させ、Advate緩衝液も達する場合があるアンフォールディング温度であることを示す。このCaClの作用は図9に示すようにpH7.3および6.5で類似している。最後に、アンフォールディング温度に対するトレハロースおよびスクロースの作用を解析した。トレハロースもスクロースも単独のシトラートに比べてrVWFのアンフォールディング温度を上昇させなかった。様々な賦形剤の存在下でのrVWFのアンフォールディング温度(Tmax)データの概要を表4に記載する。
【0109】
【表4】

様々な緩衝液だけでなくAdvate緩衝液中でもDSCを用いて様々なpH値でrVWFのアンフォールディング温度を評価した。結果を以下の表5に示す。rVWFの安定化(すなわち、最も高いアンフォールディング温度;ピーク1)にはAdvate緩衝液、pH7.0が最適である。
【0110】
【表5】

様々な長さの期間に様々な温度で保管した後、Advate緩衝液およびAdvate1:3緩衝液に溶かしたrVWFの蛍光スペクトルを評価した。Advate緩衝液とAdvate1:3緩衝液とのどちらも0〜28日間40℃で保管後の蛍光スペクトルに変化は観察されなかった(またはごくわずかしか観察されなかった)。他の温度では差が認められなかった。
【0111】
同様に、ゲル濾過(Superose6)によりrVWFの分解を評価した。4℃で26週間後にはAdvate緩衝液中で分解がある程度観察されたが、Advate1:3緩衝液ではrVWFの分解がほとんど観察されなかった。グルタチオンは40℃で経時的に分解量を増加させた(ただし、Advate1:3緩衝液の方が程度は遅い)。
【0112】
上記の実施例に基づき、非希釈のAdvate緩衝液に比べてAdvate1:3緩衝液には凍結/解凍および凍結乾燥後の回収率について利点がある。さらに、Advate1:3緩衝液はAdvate緩衝液よりも、40℃でのインキュベーション中にrVWF活性を安定化させる(たとえば、生物活性を維持する)ことができる。Advate1:3緩衝液に溶かしたrVWFは、4℃で4週間のインキュベーションにおいて安定である。最後に、DSCによりrVWFの分解防止にはpH7.0が最適である(すなわち、最も高いアンフォールディング温度を示す)ことが明らかになっている。
【0113】
以上のように、本明細書に示すデータに照らして、NaClにより所望の重量オスモル濃度に調整した、15mMのシトラート(またはグリシンもしくはヒチジン)、10mMのCaCl、pH6.5〜7.3を含むrVWF製剤が想定された。たとえば、一実施形態では、シトラート系処方は15mMのクエン酸ナトリウム、10mMのCaCl、100mMのNaCl、pH7.0である。
【0114】
あるいは、以下のようなAdvate緩衝液またはグルタチオンを含まないAdvate1:3緩衝液も考えられる:Advate:90mMのNaCl、1.68mMのCaCl、10mMのL−ヒスチジン、10mMのトリス、0.26mMのグルタチオン、23.4mMのトレハロース、175.7mMのマンニトールおよび0.1g/L トゥイーン80、pH7.0;Advate1:3:30mMのNaCl、0.56mMのCaCl、3.3mMのL−ヒスチジン、3.3mMのトリス、7.8mMのトレハロース、58.6mMのマンニトールおよび0.03g/L トゥイーン80、pH7.0。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)rVWF;(b)緩衝剤;(c)1種または複数種の塩;(d)任意に安定化剤;および(e)任意に界面活性剤を含む組換え型von Willebrand因子(rVWF)の安定な液体医薬製剤であって、
該rVWFは
a)配列番号3に示したアミノ酸配列;
b)a)の生物学的に活性なアナログ、フラグメントまたは変異体;
c)配列番号1に記載したポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;
d)c)の生物学的に活性なアナログ、フラグメントまたは変異体;および
e)中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1に記載したポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド
からなる群より選択されるポリペプチドを含み;
該緩衝剤は約0.1mM〜約500mMの範囲のpH緩衝剤からなり、かつそのpHは約2.0〜約12.0の範囲にあり;
該塩は約1〜500mMの濃度にあり;
該安定化剤は約0.1〜1000mMの濃度にあり;
該界面活性剤は約0.01g/L〜0.5g/Lの濃度にある
製剤。
【請求項2】
前記rVWFが配列番号3に示したアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記緩衝剤が、クエン酸ナトリウム、グリシン、ヒスチジン、トリスおよびこうした緩衝剤の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記緩衝剤が、15mMの濃度のクエン酸ナトリウムである、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
pHが6.0〜8.0の範囲にある、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
pHが6.5〜7.3の範囲にある、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記pHが7.0である、請求項4に記載の製剤。
【請求項8】
前記緩衝剤はシトラートであり、そのpHが7.0である、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記塩は塩化カルシウム、塩化ナトリウムおよび塩化マグネシウムからなる群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記塩は0.5〜300mMの濃度範囲である、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記塩は10mMの濃度の塩化カルシウムである、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記rVWFは配列番号3に示したアミノ酸配列を含み;前記緩衝剤はシトラートであり、そのpHが7.0であり;前記塩は10mMの濃度の塩化カルシウムである、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記rVWFは配列番号3に示したアミノ酸配列を含み;前記緩衝剤は15mMの濃度のクエン酸ナトリウムであり、そのpHが7.0であり;前記塩は10mMの濃度の塩化カルシウムおよび100mMの濃度のNaClである、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
前記1種または複数種の緩衝剤はそれぞれ3.3mMの濃度のヒスチジンおよびトリスである、請求項3に記載の製剤。
【請求項15】
前記pHが7.0である、請求項3に記載の製剤。
【請求項16】
前記1種または複数種の塩は30mMの濃度の塩化ナトリウムおよび0.56mMの濃度の塩化カルシウムである、請求項9に記載の製剤。
【請求項17】
前記安定化剤はマンニトール、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトースおよびこれらの安定化剤の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
前記安定化剤は7.8mMの濃度のトレハロースおよび58.6mMの濃度のマンニトールである、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記界面活性剤はジギトニン、トリトンX−100、トリトンX−114、トゥイーン20、トゥイーン80およびこれらの界面活性剤の組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
前記界面活性剤は0.03g/Lのトゥイーン80である、請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
前記rVWFは配列番号3に示したアミノ酸配列を含み;前記緩衝剤は3.3mMの濃度のヒスチジンおよびpH7.0で3.3mMの濃度のトリスであり;前記塩は30mMの濃度の塩化ナトリウムおよび0.56mMの濃度の塩化カルシウムであり;前記安定化剤は7.8mMの濃度のトレハロースおよび58.6mMの濃度のマンニトールであり;前記界面活性剤は0.03g/Lのトゥイーン80である、請求項1に記載の製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−508742(P2011−508742A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540873(P2010−540873)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/088201
【国際公開番号】WO2009/086400
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】