説明

組換えFSHを精製する方法

本発明は、組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)または組換えFSH変異型を精製する方法に関する。方法は、組換えFSHまたは組換えFSH変異型を含有する液体を、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、および色素アフィニティークロマトグラフィにかけることを含み、これらのクロマトグラフィはどの順序で行ってもよく、該方法は、弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まない。この精製方法により、所望の程度の純度を有する高収率の組換えFSHが得られる。得られたFSHは、FSH調製物が有用な治療剤と見なされる疾患ならびに医学適応の予防および治療に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)または組換えFSH変異型を精製する方法に関する。方法は、組換えFSHまたは組換えFSH変異型を含有する液体を、陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、および色素アフィニティークロマトグラフィにかけることを含み、これらのクロマトグラフィはどの順序で行ってもよく、該方法は、弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まない。この精製方法により、所望の程度の純度を有する高収率の組換えFSHが得られる。得られたFSHは、FSH調製物が有用な治療剤と見なされる疾患ならびに医学適応の予防および治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
卵胞刺激ホルモン(FSH)は下垂体前葉の性腺刺激細胞により生成され、血中へ放出される。FSHは、雌での卵成熟の制御、および雄での精子形成の制御の際に黄体形成ホルモン(LH)と共に作用する。FSHとLHはいずれも、別々の遺伝子によりコードされた2つの非共有結合により結合されたα鎖とβ鎖から成るヘテロダイマー糖タンパク質のファミリーに属している。α鎖とβはいずれも糖化すなわちグリコシル化されている。α−サブユニットは92個のアミノ酸残基から成り、β−サブユニットは111個のアミノ酸残基から成り、その各々は2つの潜在的なアスパラギンに結合されるグリコシル化部位を有する。
【0003】
ヒトFSHは、無排卵女性の治療に、多卵胞発達(過剰排卵)の刺激のために、およ
びIVF、ICSI、GIFTまたはCIFT等の受胎支援の準備に使用されている。さらに、ヒトFSHは、FSH生産が低いか無い女性での卵胞成熟の刺激や、先天性または後天性の低ゴナドトロピン性性機能低下症の男性での精子形成の刺激のために使用されている。
【0004】
排卵誘発の一般的な治療計画では、患者は約6日ら約12日までの期間の間、毎日FHSまたは変異型(約75〜450IU FSH/日)を注射で毎日投与される。卵巣過剰刺激の抑制のための一般的な治療計画では、患者は約6日ら約12日までの期間の間、FSHまたは変異型(約150〜600IU FSH/日)を注射で毎日投与される。
【0005】
精子形成刺激の場合、150IU FSHを一週間に3回と、2,500IU hCGを一週間に2回との組み合わせが、低ゴナドトロピン性性機能不全に罹患している男性の精子数の改善の達成に成功している。
【0006】
1980年代までは、ヒトFSHの主な供給源は、出産適齢期の女性の尿から単離された尿由来のFSHであった。さらに精製された形式の高純度の尿由来 FSHが1990
年代に導入され、遂には1998年以来、組換えFSHが開発され広く使用されるようになった。組換えDNA技術の到来で、α鎖およびβ鎖 をコードする核酸配列でトランス
フェクトした細胞培養物でヒトFSHを生産することが可能となった。α鎖およびβ鎖をコードするDNA配列と、組換え FSHの生産方法が例えば特許文献1〜3に開示され
ている。
【0007】
現在、ドイツの市場にはGONAL−f(登録商標)および Puregon(登録商
標)という2つの市販の組換えヒトFSH製品があり、これらはいずれもヒト野生型α鎖およびβ鎖をコードするDNA配列をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現させることにより生産されている。
受胎障害の治療におけるFSHの重要性のために、高純度で比活性の高い組換えFSHを提供することが望ましい。FSH治療には注射が繰り返し要求される。高度に精製されFSH製剤は皮下投与が可能であり、これは患者による自己投与を許容し、それにより、患者の便宜および遵守を増大させることが可能である。
【0008】
Ares Trading S.A.の特許文献4は、組換えFSHを精製する方法であって、1)色素
アフィニティークロマトグラフィ、2)疎水性相互作用クロマトグラフィ、および3)逆相クロマトグラフィからなる工程を含む方法について記載している。さらに、特許文献4は、FSHを1)陰イオン交換クロマトグラフィ、2)色素アフィニティークロマトグラフィ、3)疎水性相互作用クロマトグラフィ、4)逆相クロマトグラフィ、および5)陰イオン交換クロマトグラフィにかける工程を含むFSHの精製方法を開示している。
【0009】
Ares Trading S.A.の特許文献5は、組換えヒトFSHの精製方法であって、(1)イ
オン交換クロマトグラフィ、(2)固定化金属イオンクロマトグラフィ、および(3)疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)からなる工程を含む方法に関する。
【0010】
Ares Trading S.A.の特許文献6は、FSHの精製方法であって、色素アフィニティー
クロマトグラフィ、弱陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、および強陰イオン交換クロマトグラフィからなるクロマトグラフィ工程を含む方法について記載している。これらのクロマトグラフィ工程はどの順序で実行されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第88/l0270号
【特許文献2】国際公開第86/04589号
【特許文献3】欧州出願出願公開第0 735 139号
【特許文献4】国際公開第2006/051070A1号
【特許文献5】国際公開第2005/063811A1号
【特許文献6】国際公開第2007/065918A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
組換えFSHおよびFSH変異型を精製する新しい方法が絶えず必要とされている。特に、逆相クロマトグラフィ工程の使用を回避する精製方法が必要とされている。さらに、免疫親和性クロマトグラフィに依存せず、このコスト集約的な工程なしで行なうことが可能な精製方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記のおよび更なる課題は独立請求項の特徴により解決される。有利な実施形態は従属請求項に定義される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的は、組換えFSHまたは組換えFSH変異型を精製する新規かつ有利な方法を提供することにある。
第1態様では、本発明は、組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)または組換えFSH変異型を精製する方法であって、
前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、
−陰イオン交換クロマトグラフィ、
−疎水性相互作用クロマトグラフィ、および
−色素アフィニティークロマトグラフィ
にかける工程を含み、
前記3つのクロマトグラフィはどの順序で行なってもよく、
弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まない方法を提供する。
【0015】
別の実施形態では、上記の異なるクロマトグラフィの工程は以下の順に行なわれる:(1)陰イオン交換クロマトグラフィ、(2)疎水性相互作用クロマトグラフィおよび(3)色素アフィニティークロマトグラフィ。陰イオン交換クロマトグラフィ(AEC)は、サンプル中のタンパク質と、樹脂に固定化された電荷との間の電荷と電荷の相互作用に基づいている。陰イオン交換クロマトグラフィでは、タンパク質の結合イオンは陰性であり、固定化される官能基は陽性である。一般的に使用される陰イオン交換樹脂はQ樹脂、第四級アミンおよびDEAE樹脂(ジエチルアミノエタン)である。しかしながら、一般に、陰イオン交換クロマトグラフィ工程は、すべての一般的な市販の陰イオン交換樹脂または膜で行なうことが可能である。陰イオン交換樹脂は、予め液体を注入されたカラムの形で使用されてもよい。代わりに、カラムは自己調製されてもよい。通常のカラム以外のカラムの容量および形状に関する制限は特に無い。当業者には、使用される陰イオン交換樹脂の量が、細胞培養液または捕捉工程でカラムに適用される他の流体(例えば先のクロマトグラフィ工程の溶出液)の全タンパク質含有量に依存して決まることが理解される。
【0016】
本発明の目的で使用可能な典型的な強陰イオン交換樹脂は、以下のような官能基を含む:
第四級アミノエチル(QAE)部分 例えばToyopearl QAE(ドイツ所在のTosoh Bioscience社から入手可能)、Selectacel QAE(セルロースの第四級アミノエチル誘導体、アメリカ合衆国ペンシルバニア所在のPolysciences社から入手可能)等を含む樹脂、
第四級アンモニウム(Q)部分 例えばQ Sepharose XL、Q Sepharose FF、Q Sepharose HP(ドイツ所在のGE Healthcare社から入手可能)、Resource Q(ドイツ所在のGE Healthcare社から入手可能)、Macro Prep High Q(アメリカ合衆国カリフォルニア州Bio−rad)、Toyopearl Super Q(ドイツ所在のTosoh Bioscienceから入手可能)、UNOsphere Q(アメリカ合衆国カリフォルニア州Bio−radから入手可能)およびトリメチルアンモニウムエチル(TMAE)基を含む樹脂、例えばFractogel EMD TMAE(ドイツ所在のMerckから入手可能)を含む樹脂。
【0017】
陰イオン交換クロマトグラフィは好ましくは、−N+(CH33官能基を有する強陰イ
オン交換樹脂または同様の特性を有する樹脂を使用して行なわれる強陰イオン交換クロマトグラフィである。
【0018】
本発明の目的で使用することが可能な強陰イオン交換樹脂の好ましい例は、UNOsphere Q、Q Sepharose HPとして当該技術分野で周知の強陰イオン交換体樹脂および第四級アンモニウム基(Q)部分を有する他の樹脂である。
【0019】
強陰イオン交換体であるUNOsphere Qの特性は以下の通りである:
官能基 −N+(CH33
総イオン容量 120μeq/ml
動的容量
150cm/時 180mg/ml
600cm/時 125mg/ml
送出する対イオン Cl-
平均粒径 120μm
推奨される線形流速範囲
50−1200cm/時
化学安定性
2,000時間まで 1.0M NaOH(20℃)
200時間まで 1.0M HCl(20℃)
体積変化
体積変化率
pH4−10 <5%
0. 01−1.0M NaCl <5%
pH安定性 1−14

強陰イオン交換体Q Sepharose HPの特性は以下の通りである:
イオン容量 0.14−0.20 mmol Cl-/ml
動的容量 70mg BSA/ml 媒体
記録流速 30−150cm/時
動作中の充填ベッドに対する最大圧力 3バール(42psi、0.3MPa)
HiLoadカラムハードウェア圧力限界 5バール(73psi、0.5MPa)
平均粒径 34μm
排除限界(Mr) 約4×106球状タンパク質
マトリックス 架橋アガロース、6%
pH安定性 2−12(動作期間および長期間)
1−14(短期間)
化学安定性 一般に用いられているすべての緩衝液において安定

官能基としてジエチルアミノエチル(DEAE)またはジメチルアミノエチル(DMAE)に基づくもののような弱陰イオン交換樹脂の使用は回避することが望ましい。
【0020】
陰イオン交換クロマトグラフィの工程は、穏やかにアルカリ性のpH、例えば7.0または7.0周辺から9.0にまたは9.0周辺、もしくは、7.5または7.5周辺から8.5または8.5周辺のpHを有する緩衝液を使用して好ましくは行なわれる。適切な緩衝液には例えば、ホウ酸緩衝液、トリエタノールアミン/イミノ二酢酸Tris、酢酸アンモニウム、トリシン、ビシン、TES、HEPES、TAPSが含まれる。トリス(Tris)緩衝液の使用が好ましい。陰イオン交換樹脂からの溶出は、塩、好ましくは塩化ナトリウムの添加を通じて移動相の伝達率を増加させることにより通常達成される。
【0021】
本発明の方法の疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)は、(逆相樹脂のはるかに強い疎水性の表面と比較して)比較的穏やかに疎水性の表面を有するHIC樹脂を使用して行なうことが可能である。疎水性の表面性質を有するタンパク質は、エーテル基、フェニル基、ブチル基またはヘキシル基を一般に有する樹脂に引きつけられる。
【0022】
HICは、すべての通常市販されているHIC樹脂で行なうことが可能である。本発明の目的で使用することが可能なHIC樹脂には、ブチル、フェニル、プロピル、またはオクチルセファロース、SOURCE 15(すべて、ドイツ所在のGE Healthcare社から入手可能)、Macro−Prep Methylまたはt−ブチルHIC支持体(ドイツ所在のBio−rad)またはプロピルリガンドまたはフェニルリガンドを備えたFractogel EMD(ドイツ所在のMerck AG)、Toyopearl HIC樹脂(例えばToyopearl Butyl 650M)および同様のHIC樹脂(Tosoh Bioscience)等のマトリックスを含む。
【0023】
好ましい実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィは、フェニル基、ブチル基ま
たはオクチル基で誘導体化された架橋アガロースビーズから成る樹脂または同様の特性を有する樹脂を使用して行なわれる。Phenyl Sepharose 6FF(GE Healthcare社から入手可能)の特性が以下に与えられる。
【0024】
リガンド密度
Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow (low sub) 25μmol/ml 媒体
Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow (high sub) 40μmol/ml 媒体
結合量
Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow (low sub) 10mg IgG/ml 媒体、24mg HSA/ml 媒体
Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(high sub) 30mg IgG/ml 媒体、36mg HSA/ml 媒体
圧力/フロー仕様 200−400cm/時、1バール XK 50/60カラム、ベッド高さ 25cm
pH安定性 2−14(短期間)、3−13(長期間)
化学安定性 通常の緩衝液、カオトロピック剤、界面活性剤、および極性有機溶媒において安定
平均粒径 90μm
保存 20% エタノール
保存温度 4℃から30℃まで
HIC樹脂での結合は、塩(例えばNaCl、(NH42SO4またはNa2SO4)の
添加を通じて得られた高い伝導率を備えた緩衝液で達成される。HIC工程における溶出は、5または5周辺から9または9周辺、より好ましくは6または6周辺から8または8周辺、最も好ましくは7または7周辺から8または8周辺のpHを有する緩衝液を用いて、移動相の伝導率を減少させる(つまり塩濃度を低下させる)ことにより通常実行される。
【0025】
平衡化緩衝液、洗浄緩衝液および溶出緩衝液は、HICに通常使用される緩衝液の種類をすべて含んでもよい。したがって、緩衝剤はリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、Tris/HCl、HEPESまたは他の緩衝剤を含む。さらに、緩衝液は、緩衝液が平衡化、洗浄、または溶出に使用されるかどうかに基づいて、0.5mMから3Mの間のNaCl、KClまたは他の適切な塩類を含んでもよい。平衡化緩衝液および洗浄緩衝液は、溶出緩衝液よりも高い濃度の前記塩類を含む。
【0026】
HIC工程における特に好ましい緩衝液は、塩化ナトリウムを含むTris/HCl緩衝液である。
本発明の方法の色素アフィニティークロマトグラフィは、固定化リガンドとして当業者に周知の色素化合物すなわちシバクロンブルーF3G−Aを有する樹脂を使用して行なうことが可能である。用語「固定化」は、当業者によく理解されている用語であって、リガンドが樹脂に化学的に結合されるという意味でリガンドが誘導体化されることを意味する。
好ましい実施形態では、色素アフィニティークロマトグラフィは、任意のマトリックス(例えばアガロースマトリックス)に共有結合されたリガンドとしてのシバクロンブルーF3G−Aを用いて行なわれる。好ましくは、色素アフィニティークロマトグラフィは、Blue Sepharose FF(ドイツ所在のGE Healthcare社から入手可能)として周知の樹脂を使用して行なわれる。Blue Sepharose FFの技術特性は以下に与えられる:
リガンド シバクロンブルーF3G−A
リガンドカップリング方法 トリアジンカップリング
結合量 >18mgヒト血清アルブミン/ml 媒体
リガンド密度 約7μmol シバクロンブルー/ml 媒体
マトリックス 高度に架橋されたアガロース、6%
平均粒径 90μm
pH安定性 4−12(長期間)、3−13(短期間)
保存 20% エタノール、0.1M リン酸カリウム緩衝液、pH8.0
保存温度 4℃から30℃まで
化学安定性 70% エタノール、6M 塩酸グアニジン、8M 尿素で40℃にて7日間において安定
本発明の方法の色素アフィニティークロマトグラフィは、同様の特性を有する代替樹脂で行なわれてもよいことが理解される。代替樹脂の例には以下のものが含まれる:Toyopearl AF−blue−HC−650M(Tosoh Bioscience社)、Blue Cellthru BigBead(Sterogene社)、SwellGel Blue(Pierce社)、Cibachrome blue 3GA−アガロース 100(Sigma社)、AffiGel−Blue(Bio−rad社)、Econo−Pac blueカートリッジ(Bio−rad社)、シバクロンブルー3GA(Sigma社)。
【0027】
固定化色素アフィニティークロマトグラフィの工程における溶出は、Tris/HCl緩衝液またはリン酸緩衝液を使用して好ましくは実行される。最も好ましいのは塩化ナトリウムを含むTris/HCl緩衝液である。溶出液のpHは好ましくは7または7周辺から9または9周辺であり、最も好ましくはpHは7と8の間の範囲にある。
【0028】
別の態様では、本発明による組換えFSHまたはFSH変異型を精製する方法は、 前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、
−陰イオン交換クロマトグラフィ、
−疎水性相互作用クロマトグラフィ、
−色素アフィニティークロマトグラフィ、および
さらに陽イオン交換クロマトグラフィ
にかける工程を含み、
前記4つのクロマトグラフィはどの順序で行なってもよく、
前記方法は、弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まない。
【0029】
1実施形態では、工程は、(1)陰イオン交換クロマトグラフィ、(2)疎水性相互作用クロマトグラフィ、(3)色素アフィニティークロマトグラフィおよび(4)陽イオン交換クロマトグラフィの順に行なわれる。
【0030】
陽イオン交換クロマトグラフィ(CEC)は、サンプル中のタンパク質と、樹脂に固定化された電荷との間の電荷と電荷の相互作用に基づいている。陽イオン交換クロマトグラフィでは、タンパク質の結合イオンは陽性であり、固定化される官能基は陰性である。一般的に使用される陽イオン交換樹脂はS樹脂、硫酸塩誘導体およびCM(カルボキシメチル)樹脂、カルボキシル基誘導体化されたイオンである。
【0031】
しかしながら、一般に、陽イオン交換クロマトグラフィ工程は、すべての一般的な市販の陽イオン交換樹脂または膜で行なうことが可能である。陽イオン交換樹脂は、官能基(例えばスルホン酸)が固定された、予め液体を注入されたカラムまたは膜の形で使用されてもよい。代わりに、カラムは自己調製されていてもよい。通常のカラム以外のカラムの容量および形状に関する制限は特に無い。当業者には、使用される陽イオン交換樹脂の量が、細胞培養液または他の流体(例えば先のクロマトグラフィ工程の溶出液)の全タンパ
ク質含有量に依存して決まることが理解される。
【0032】
本発明の目的で使用可能な典型的な陽イオン交換樹脂は、GE Healthcare社およびイオンクロマトグラフィの付属品およびカラムの他の製造業者から入手可能である。一般に、CECは4と7の間のpH値の緩衝液を使用して行なわれる。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の方法の陽イオン交換工程は膜陽イオン交換として行なわれる。好ましくは、陽イオン交換工程は、膜に固定された強酸性の陽イオン交換体であるスルホン酸または同様の特性を有する交換体を用いて行なわれる。
本発明の陽イオン交換工程に使用される適切な膜吸着体は、当該技術分野で周知であり、いくつかの供給業者から入手可能である。例えば、本発明の方法の陽イオン交換クロマトグラフィは再生セルロースから作られ、かつセルロース骨格上に形成されたスルホン酸のクロマトグラフィマトリックスを有する膜を使用して行なうことが可能である。有用な膜吸着体の例は、Sartorius社により販売されているSartobind S膜吸着体である。Sartobind S膜吸着体の技術的なデータは以下に与えられる。
名称 Sartobind SingleSep(登録商標)(強酸陽イオン交換体S)リガンド スルホン酸(R−CH2−SO3-
静的結合量 ≧0.8mg/cm2 (29mg/ml)ウシ血清アルブミンおよび鶏卵リゾチームで測定
イオン交換能 4−6μeq/cm2

基材 安定化強化セルロース
膜厚 275μm
公称孔径 >3μm
カプセル
設計 円筒状、公称の層数:15
ベッド高さ:4mm
材料カプセル ポリプロピレン(FDA)
最大圧力 0.4 MPa(4バール、58psi)
pH安定性 3−14(短期間)
保存 1回使用後、廃棄
化学安定性 1M NaOH(20℃で30−60分)、8M 尿素、8M 塩酸グアニジン、エタノール、アセトンおよび100% アセトニトリルにおいて、クロマトグラフィで一般に用いられているすべての緩衝液において安定。酸化剤はなし。
【0034】
CEC工程は製造業者のプロトコルに従って行なうことが可能である。例えば、Tris−HCl緩衝液はpH7.0で使用することが可能である。
CEC工程、好ましくは陽イオン細胞膜吸着体工程は、処理時間を短く維持しつつすべての分子の大きさの宿主細胞タンパク質を除去することが分かった。FSHはpH7.0では吸着体に結合しないため、約95%という収率は非常に有利である。
【0035】
一般に、クロマトグラフィ膜の形の陽イオン交換クロマトグラフィは、組換えFSHまたはFSH変異型の精製に非常に有用であることが分かった。したがって、別の態様では、本発明は、FSHまたはFSH変異型を精製する方法における陽イオン膜吸着体の使用に関する。好ましい実施形態では、陽イオン膜吸着体は、再生セルロースから作られ、かつセルロース骨格上に形成されたスルホン酸のクロマトグラフィマトリックスを有する、陽イオン交換体吸着体、好ましくは強い陽イオン交換吸着体である。
別の態様では、本発明による組換えFSHまたはFSH変異型を精製する方法は、 前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、
−陰イオン交換クロマトグラフィ、
−疎水性相互作用クロマトグラフィ、
−色素アフィニティークロマトグラフィ、
−任意選択の陽イオン交換クロマトグラフィ、および
さらなる陰イオン交換クロマトグラフィ
にかける工程を含み、
前記クロマトグラフィはどの順序で行なってもよく、
前記方法は、弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まない。
【0036】
1実施形態では、工程は、第1の陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、色素アフィニティークロマトグラフィ、任意選択の陽イオン交換クロマトグラフィ、および第2の陰イオン交換クロマトグラフィの順に行なわれる。
【0037】
第2の陰イオン交換クロマトグラフィは、第1の陰イオン交換クロマトグラフィに関連して上述した典型的な陰イオン交換樹脂を使用して行なうことが可能である。また、第2の陰イオン交換クロマトグラフィは好ましくは、−N+(CH33官能基を有する強い陰
イオン交換樹脂または同様の特性を有する樹脂を使用して行なわれる強陰イオン交換クロマトグラフィである。本発明の目的で使用可能な強陰イオン交換樹脂の好ましい例は、UNOsphere QおよびQ Sepharose HPとして当該技術分野で周知の第四級アンモニウム強陰イオン交換体樹脂、ならびに第四級アンモニウム基(Q)部分を有する他の樹脂である。強陰イオン交換体UNOsphereQおよびQ Sepharose HPの特性は、第1の陰イオン交換クロマトグラフィに関して与えた通りである。第2の陰イオン交換クロマトグラフィ工程でも、官能基としてジメチルアミノエチル(DEAE)またはジメチルアミノエチル(DMAE)に基づくもの等の弱陰イオン交換樹脂の使用を避けるのが好ましい。
【0038】
陰イオン交換クロマトグラフィの工程は、穏やかにアルカリ性のpH、例えば7.0またはその周辺から9.0またはその周辺、もしくは7.5またはその周辺から8.5またはその周辺のpHを有する緩衝液を使用して好ましくは行なわれる。適切な緩衝液には例えば、ホウ酸緩衝液、トリエタノールアミン/イミノ二酢酸Tris、酢酸アンモニウム、トリシン、ビシン、TES、HEPES、TAPSが含まれる。トリス(Tris)緩衝液の使用が好ましい。陰イオン交換樹脂からの溶出は、塩、好ましくは塩化ナトリウムの添加を通じて移動相の伝達率を増加させることにより通常達成される。
【0039】
1実施形態では、第2の陰イオン交換クロマトグラフィは、Tris−HCl/塩化ナトリウム緩衝液を使用して7.0から9.0の間の範囲のpHで行われる。
別の態様では、本発明による組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)または組換えFSH変異型を精製する方法は、前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、
−陰イオン交換クロマトグラフィ、
−疎水性相互作用クロマトグラフィ、および
−色素アフィニティークロマトグラフィ
にかける工程を含み、
前記3つのクロマトグラフィはどの順序で行なってもよく、
前記方法は、弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まず、
前記方法は、サイズ排除クロマトグラフィをさらに含む。
【0040】
別の態様では、本発明による組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)または組換えFSH変異型を精製する方法は、前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、
−陰イオン交換クロマトグラフィ、
−疎水性相互作用クロマトグラフィ、
−色素アフィニティークロマトグラフィ、
−任意選択の陽イオン交換クロマトグラフィ、
−任意選択のさらなる陰イオン交換クロマトグラフィ、および
−サイズ排除クロマトグラフィ
にかける工程を含み、
前記6つのクロマトグラフィはどの順序で行なってもよく、
前記方法は、弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まない。
【0041】
1実施形態では、工程は以下の順に行なわれる:陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、色素アフィニティークロマトグラフィ、任意選択の陽イオン交換クロマトグラフィ、任意選択のさらなる陰イオン交換クロマトグラフィ、およびサイズ排除クロマトグラフィ。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明の方法は以下の順に以下の工程を含む:第1の陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、色素アフィニティークロマトグラフィ、任意選択の陽イオン交換クロマトグラフィ、任意選択の第2の陰イオン交換クロマトグラフィ、およびサイズ排除クロマトグラフィ。
【0043】
ゲルろ過クロマトグラフィとしても知られているサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)は、粒子(例えばタンパク質および他の生体分子)がそれらのサイズに基づいて分離されるクロマトグラフ法である。SECのための典型的なゲル媒体はポリアクリルアミド、デキストラン、アガロースまたはそれらの混合物である。SECマトリックスはクロマトグラフィの付属品およびカラムの様々な製造業者(例えばTosoh Bioscience LLC社またはGE Healthcare社)から入手可能である。
【0044】
サイズ排除クロマトグラフィは、架橋アガロースおよびデキストランからなる球状複合体のマトリックスを使用して好ましくは行なわれる。
有用なサイズ排除クロマトグラフィマトリックスの例は、例えばGE Healthcare社から入手可能な、Superdex 75 pgとして当該技術分野で周知のマトリックスである。Superdex 75 pgカラムは、サイズによるタンパク質、ペプチドおよび他の生体分子の高分解能の分離を可能にする。一般に、サイズ排除カラムは精製手順における研摩工程にとって理想的である。
【0045】
Superdex 75 pgマトリックスの技術的詳細は以下の通りである:
排除限界(Mr) 1×105 球状タンパク質
分離範囲(Mr) 3000−70000 球状タンパク質
マトリックス 架橋アガロースとデキストランからなる球状複合体
平均粒径 34μm
化学安定性 すべての一般的な緩衝液において安定:
1M 酢酸、8M 尿素、6M 塩酸グアニジン、30% イソプロピルアルコール、70% エタノール、1M NaOH(定置洗浄用)
pH安定性 3−12(動作時間および長期間)および1−14(短期間)
Superdex(商標) 10×300 GLカラム(Tricorn)
ベッド寸法 10×300mm
推奨サンプル体積 25−250μl
ベッド体積 24ml
最大圧力 18バール(261psi、1.8MPa)
最大流速(25℃の水) 1.5ml/分
理論段 >30 000m-1
Superdex(商標) PC 3.2/30カラム
ベッド寸法 3.2×300mm
ベッド体積 2.4ml
推奨サンプル体積 2−25μl
最大圧力 24バール(348psi、2.4MPa)
最大流速(25℃の水) 0.100ml/分
理論段 >30 000m-1
保存 20% エタノール
保存温度 4℃から30℃まで

SEC工程は製造業者のプロトコルに従って行なうことが可能である。例えば、リン酸ナトリウム緩衝液はpH6〜8、好ましくは約pH7.0で使用することが可能である。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法は以下の順に以下の工程を含む:第1の陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、色素アフィニティークロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、第2の陰イオン交換クロマトグラフィ、およびサイズ排除クロマトグラフィ。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明の方法の陽イオン交換クロマトグラフィ工程は、膜陽イオン交換として行なわれる。好ましくは、陽イオン交換工程は、膜に固定された強酸性の陽イオン交換体であるスルホン酸または同様の特性を有する交換体を用いて行なわれる。
【0048】
さらに、本発明の方法は、1または複数の限外ろ過およびナノろ過のうちの少なくとも一方の工程を含む。限外ろ過(UF)は、静水圧が半透膜に対して液体を押しやる膜ろ過の形式である。浮遊物質と高分子量の溶質が保持される一方、水と低分子量の溶質が膜を通過する。限外ろ過は、巨大分子の溶液(特にタンパク溶液)を精製および濃縮するためのよく用いられている分離方法である。限外ろ過はナノろ過と似ているが、保持する分子のサイズの点で異なっている。本発明の構成では、10kDaの分子量カットオフ値が好まれる(10kDa UF)。UF膜は、希釈および再濃縮を繰り返すかまたは連続させるかによって溶液から塩類および他の小型種を除去するのにも使用可能である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、精製工程は、1または複数の限外ろ過、透析ろ過、およびナノろ過のうちの少なくとも一つの工程を含む。これらのろ過工程は、市販のろ過装置(例えばGE Healthcare社またはSartorius社から入手可能なもの)を使用して行なうことが可能である。
【0050】
限外ろ過は、Sartorius社により販売されているSartoconカセットおよびSartoconスライスカセットを使用して好ましくは行なわれる。
膜 ポリエーテルスルホン(PESU)またはHydrosart(登録商標)
分子量カットオフ値 10kD
フィルタ面積 0.02〜0.7m2
供給圧 4バール(58psi)最大
pH安定性 1−14
動作温度 20℃において最大50℃
洗浄 1M NaOH、40℃
消毒 1M NaOH、40−50℃、30分
保存 0.1M NaOH

Sartorius社により販売されている交差流カセットに使用されているポリエーテルスルホン膜(PESU)は、広範pHと温度範囲を特徴とする安定な膜ポリマーである。
【0051】
Sartorius社により販売されているHydrosart(登録商標)限外ろ過カセットも使用することが可能である。Hydrosartは生物工学の用途のために最適化された安定したセルロース膜である。Hydrosart限外ろ過膜およびカセットは、以下の公称分子量カットオフ値で入手可能である:2kD、5kD、10kDおよび30kD。
【0052】
好ましい実施形態では、精製方法はナノろ過工程を含む。ナノろ過は任意の有用なナノフィルタ装置を使用して行なってもよい。ナノろ過は好ましくは、Planovaフィルタ(Asahi Kaseiメディカル会社から入手可能)を使用して行なわれる。
【0053】
Planovaフィルタは生物医薬品等の生物治療薬製品の製造中にウイルスを除去するために設計されている。Planovaフィルタは、狭い孔分布の天然の親水性銅アンモニア再生セルロースから構成された、中空の繊維からなる微小孔のある膜に基づく。Planovaフィルタは、4つの平均孔径が15nm、19nm、35nmおよび72nm(それぞれPlanova 15N、2ON、35N、および75N)の使い捨ての内蔵モジュールとして入手可能である。本発明の処理ではで、Planova 15Nフィルタ(つまり15nmの平均孔径を有するフィルタ)を使用することが好ましい。フィルタは供給業者のプロトコルに従って使用される。
【0054】
本発明によるFSHの精製方法は、金属イオン親和性クロマトグラフィを含まないことが好ましい。
さらに、本発明の方法は、免疫親和性クロマトグラフィがないことが好ましい。免疫親和性クロマトグラフィ工程のないFSHの精製により、抗体の調製から生じる不純物または病原体がFSH化合物と干渉する可能性が無くなる。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、組換えFSHまたは組換えFSH変異型を精製する方法であって、前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、膜陽イオン交換体にかける工程を含む方法に関する。
【0056】
好ましい実施形態では、膜陽イオン交換体は、膜に固定された強酸性の陽イオン交換体スルホン酸または同様の特性を有する交換体である。
本発明の方法に使用される適切な膜吸着体が、当該技術分野で周知であると共に、いくつかの供給業者から入手可能である。例えば、本発明の方法の陽イオン交換クロマトグラフィは、再生セルロースから作られ、かつセルロース骨格上に形成されたスルホン酸のクロマトグラフィマトリックスを有する膜を使用して行なうことが可能である。有用な膜吸着体の例は、Sartorius社により販売されているSartobind S膜吸着体である。その技術的詳細は上述した。
【0057】
別の実施形態では、前記FSHを含有する液体を膜陽イオン交換体へかける工程を含む組換えFSHまたは組換えFSH変異型を精製する方法は、さらに疎水性相互作用クロマトグラフィを含む。
【0058】
本発明の方法の疎水性相互作用クロマトグラフィは、上述の組換えFSHまたは組換えFSH変異型を精製する方法に関連して説明したように行うことが可能であり、該方法は、前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を陰イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、および色素アフィニティークロマトグラフィにかける工程を含み、それらのクロマトグラフィはどの順で行なってもよく、
前記方法は弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも、それらの好ましい実施形態も含まない。
【0059】
好ましい実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィは、フェニル基またはブチル基で誘導体化された架橋アガロースビーズから成る樹脂または同様の特性を有する樹脂を使用して行なわれる。
【0060】
別段の定めがなければ、以下の定義は、本発明を説明するために使用される種々の用語の意味および範囲を例証および定義するように意図される。
用語「FSH」は、組換え技術により生産されてもよいし、閉経後の女性の尿等のヒ
トの供給源から分離されてもよい、ヒトFSHすなわち「hFSH」を含む がこれに限
定されない全長成熟タンパク質としての卵胞刺激ホルモンポリペプチドのことを指す。 ヒト糖タンパク質のタンパク質配列およびヒトFSHβサブ ユニットのタンパク質配列
は、科学論文および特許文献(例えば国際公開第2004/087213号参照)から当業者には知られている。
【0061】
本明細書に添付されるように、ヒトFSHのα鎖のアミノ酸配列は配列番号1で示さ
れ、ヒトFSHのβ鎖のアミノ酸配列は配列番号2で示される。これらのア ミノ酸配列
は、EMBLデータベースでアクセッション番号J00152およびNCBIデータベースでアクセッション番号NM000510でそれぞれ寄託されたヒトFSHのα鎖およびβ鎖野生型アミノ酸配列に相当する。
【0062】
ヒトFSHをコードする野生型核酸配列は、配列番号3(=α鎖)および配列番号4(=β鎖)で示される。
組換えFSHは、ヒトで天然に見出される野生型核酸配列によってコードされてもよいし、またはその発現が野生型アミノ酸配列(つまりヒトで天然に見出される野生型タンパク質配列)を有するFSHになる変更された核酸配列によってコードされてもよい。
【0063】
ヒトFSHをコードする核酸配列は、例えば、ヒトFSHのα鎖およびβ鎖をコード
する核酸配列の一方又は両方を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞でのコドン使用に適合させて、かかる宿主細胞での組換えFSHの発現レベルおよび収率を増加させるように変更されてもよい。
【0064】
ヒトFSHをコードし、CHO細胞でのコドン利用に関して修飾された核酸配列の例
が、国際公開第2009/000913号に記載されている。ヒトFSHのβ鎖をコードする修飾核酸配列は、配列番号5で示される核酸配列のコード領域であり(配列番号5において、コード領域はヌクレオチド56から開始し、ヌクレオチド442まで延びる)、ヒトFSHのα鎖をコードする修飾核酸配列は、配列番号6で示される核酸配列のコード領域である(配列番号6で、コード領域 はヌクレオチド19から開始し、ヌクレオチド
366まで延びる)。ヒトFSHのβ鎖をコードする第1の修飾核酸配列と、ヒトFSHのα鎖をコードする第2 の修飾核酸配列とを有する組換え核酸分子を備えたCHO細胞
系を、2007年3月28日に寄託番号DSM ACC2833の下、ブラウンシュベイク (Braunschweig)所在のドイツ細胞バンク(DSMZ)に寄託した。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明のFSH液体製剤は、CHO細胞でのコドン利用に関してヒトFSHのβ鎖とα鎖の両方について修飾されたFSH核酸配列から組換え遺伝子発現によって得られた組換えヒト野生型FSHを含む。別の好ましい実施形態では、組換えFSHは国際公開第2009/000913号に開示されたFSH核酸配列からの発現により得られる。
【0066】
「FSH変異型」という表現は、ヒトFSHとアミノ酸配列、グリコシル化パターン
、またはサブユニット間結合が異なるが、FSH活性は示す分子を包含する ことを意味
する。例にはCTP−FSHが含まれ、これはLaPoIt et al. (1992)Endocrinology, 131, 2514-2520またはKlein et al. (2003)Human Reprod., 18, 50-56に記載されているような、野生型αサブユニットと、hCGのカルボキシ末端ペプチドがFSHのβサブユニットのC末端に融合されたハイブリッド βサブユニットとから成る長時間作用性修飾組
換えFSHである。単一鎖CTP−FSHも含まれるが、これはhCGのカルボキシ末端ペプチドがFSHのβサ ブユニットのC末端に融合されたKlein et al. (2002)Fertility & Sterility, 77, 1248-1255に記載された単一鎖分子である。FSH変異型の他の例
には、国際公開第01/58493号に開示されるようなα鎖およびβ鎖の少なくと も
一方に追加のグリコシル化部位組み込まれたFSH分子や、国際公開第98/58957号に開示されるようなサブユニット間S−S結合を有するFSH分子 が含まれる。国際
公開第2004/087213号には、βサブユニットのカルボキシ末端の欠失が特徴であるFSH変異型の他の例が開示されている。FSH 変異型の他の例には、追加のグリ
コシル化部位を導入するか天然のグリコシル化部位を削除するようにタンパク質のアミノ酸配列を変化させることにより、野生型のFSHと比較してグリコシル化の程度を変更させたFSH分子が含まれる。
【0067】
さらに、本発明のFSHまたはFSH変異型は、化学的部分により修飾されたFSH分子であってもよい。そのようなFSH結合体は、例えばポリアルキルエングリコール(例、PEG)、ヒドロキシアルキルスターチ(例、HES)または他のポリマー部分を備えてもよい。
【0068】
FSHヘテロダイマーまたはFSH変異型ヘテロダイマーは、任意の適切な方法により、例えば組換えにより、場合に応じて天然供給源からの単離または精製により、または化学合成により、もしくはそれらの任意の組み合わせにより、生産することが可能である。
【0069】
用語「組換え」の使用は、組換えDNA技術の使用を通じて生産されるFSHまたは
FSH変異型の調製を指す(例えば国際公開第85/01958号参照)。 FSHのゲ
ノムおよび相補的DNAクローンの配列がいくつかの種のαサブユニットとβサブユニットについて知られている。組換え技術を使用した組換え FSHまたはFSH変異型の種
々の生産方法が先行技術に記載されており、例えば欧州特許出願出願公開第0 711 894号および欧州特許出願出願公開第0 487 512号を参照されたい。
【0070】
好ましくは、本発明により精製されたFSHは、配列番号1のαサブユニットおよび配列番号2のβサブユニットを有している。
別の態様では、本発明は、本発明による精製方法によって得られた、精製されたFSHまたはFSH変異型タンパク質に関する。
【0071】
本発明はさらに、本発明の方法を使用して精製されたFSHまたはFSH変異型と、医薬として許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。好ましい実施形態では、医薬組成物は防腐剤を含み、複数回投与に使用可能である。好ましい医薬組成物は国際出願出願番号第PCT/EP2009/051451号に記載されている。
【0072】
さらに、本発明は、本発明の方法を使用して精製されたFSHまたはFSH変異型の使用、または受胎障害の治療のための前記FSHまたはFSH変異型と医薬として許容される賦形剤との組み合わせを含む医薬組成物の使用にも関する。
【0073】
組換えヒトFSHは、本発明の方法によって、宿主細胞の培養上清から精製される。組換えヒトFSHまたはFSH変異型は、国際公開第2009/000913号に記載されているように好ましくは生産される。
【0074】
最も好ましくは、FSHは組み換え技術により生産されたヒトFSHであり、特に好ましくは、配列番号3および4(=野生型の核酸配列)または配列番号5および6(=コドン最適化された核酸配列)のいずれかでコードされたFSHのヒト糖タンパク質αサブユニットおよびβサブユニットをコードするDNAを含む1つまたは複数のベクターでトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣細胞で生産されたヒトFSHである。αサブユニットおよびβサブユニットをコードするDNAは同じベクター上に存在してもよいし、異なるベクター上に存在してもよい。
【0075】
組換えFSHは、その尿相当物に勝るいくつかの長所を有する。組換え細胞を使用した培養および単離技術により、バッチの一貫性が可能となる。対照的に、 尿FSHは、サ
ブユニットの純度、グリコシル化パターン、シアリル化および酸化等の特性がバッチによって大幅に変わる。組換えFSHではバッチごとの一貫 性と純度が大きいため、かかる
ホルモンは容易に等電点電気泳動(IEF)等の技術を使用して容易に識別および定量化することが可能である。組換えFSHの 識別および定量化が可能となるその容易さによ
り、バイオアッセイにより充填せずにホルモンの質量で(fill-by-mass)ガラス瓶に充填することが 可能となる。
【0076】
用語「FSH活性」は、Steelman−Pohleyアッセイ(Steelman et al. (1953)Endocrinology 53, 604-616)における卵巣重量増加や女性患者における卵胞成長のようなFSHに関連する生体応答を誘発するFSH製剤の能力を指す。女性患者における卵胞成長は、例えば刺激の8日目の平均直径が約16mmの卵胞の数に関して、超音波により評価することが可能である。生物活性はFSHについて認められている基準に関して評価される。
【0077】
組換えFSHの比インビボ生物活性は、通常約8,000IU FSH/mgタンパク
質〜約16,000IU FSH/mgタンパク質の範囲である。例えば、市販製品であ
るPuregon(Organon社)中の組換えヒトFSHは、約10,000IU
FSH/mgタンパク質の特異的生物活性を有し、Serono社のGonal−fの場合、組換えヒトFSHの生物活性は約13,600IU FSH/mgタンパク質である

【0078】
FSH活性はFSHおよび他の性腺刺激ホルモンに関する公知の方法により決定可能である。かかる方法には例えば酵素免疫活性分析(EIA)またはレポーター遺伝子分析が含まれる。生物活性は、尿由来のFSHに対する欧州薬局方第5版に記載されているバイオアッセイにより通常決定される。その際、生物活性 は、胎盤性性腺刺激ホルモンで処
理された未熟ラットの卵巣を拡大させるFSH効果と、標準品の同じ効果とを比較することにより推定される。
【0079】
FSHまたはFSH変異型の生物活性は、所与の条件下で、胎盤性性腺刺激ホルモンで処理された未成熟ラットの卵巣拡大の効果を、国際基準の調製物または国際単位で補正された参照調製物(ヨーロッパ薬局方第5版)の同じ効果と比較することにより評価可能である。
【0080】
インビトロでのFSH活性の測定はAlbanese et. al. (1994)Mol. Cell Endcrinol. 101:211-219に記載されている。
本発明の方法で得られるFSHまたはFSH変異型の純度は、少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは99%よりも大きい。純度の程度はHPLC分析により決定可能である。そのような分析を行なうための適切な材料およびプロトコルをVydacまたはTOSHO Bioscience等の供給業者から得ることが可能である。
【0081】
以下の実施例を、本発明の精製方法をさらに詳しく例証するためにのみ提供する。本発明の範囲は以下の実施例から成るのみであると解釈されないものとする。
実施例
実施例1
実施例1
組換え技術による組換えヒトFSHの調製
組換えヒトFSHは、トランスフェクトされたCHO宿主細胞中で標準的方法により生産さ れる。かかる方法は、ヒトFSHのα鎖とβ鎖をコードする1または複数の組換え核
酸分子から、組換えヒトFSHを生産するCHO細胞クローンを生成し、かつ宿主細胞を適切な条件で培養することを含む。次に組換えヒトFSHは、本発明に従って細胞培養物からを精製される。
【0082】
好ましい実施形態では、組換えヒトFSHは国際公開第2009/000913号に記載されているように生産される。
実施例2
細胞培養物からのFSHの精製
精製スキームは以下の通りである:
陰イオン交換クロマトグラフィ工程

HIC工程

色素アフィニティー工程

ウイルス不活性化

10kDa UF/DF

陽イオン膜吸着体

陰イオン交換クロマトグラフィ工程

10kDa UF

サイズ排除クロマトグラフィ工程

ナノろ過

発酵期間は28日とし、発酵体積は30Lとした。収穫物は0.22μmでろ過し、逆浸透水で3.5倍で希釈した。
【0083】
陰イオン交換クロマトグラフィ(AEC)工程:
希釈した細胞培養物の上清収穫物を、UNOsphere Qとして当該技術分野で知られている第四級アンモニウム基の強陰イオン交換樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィにかけた。このマトリックスはBioRadから入手可能である。
【0084】
50のmM Tris−HCl(pH7.6)の3カラム体積(CV)を平衡化に使用した。カラムに収穫物(逆浸透水で1:3.5に希釈、収穫物の力価は約1.8μg FSH/mL)を載せ、50mM Tris−HClpH 7.6(5CV)でその後洗浄した。その後、カラムを50mM Tris−HCl、15mM NaCl、pH7.6
(5CV)で洗浄し、タンパク質を50mM Tris−HCl、200mM NaCl、pH7.6(8CV)を使用して溶出した。この工程の収率は90%以上であった。
【0085】
HIC工程:
HICを、フェニル基で誘導化した架橋アガロースビーズから成る樹脂を使用して実行した。Phenyl Sepharose 6FF(GE Healthcare社から入手可能)は、アガロースに基づく高度に架橋された誘導体である。Phenyl Sepharose 6FFは物理的および化学的に安定しており、高い流量と樹脂寿命の増大を許容する。この樹脂の技術的詳細については上述した。
【0086】
8つのAEC溶出液をプールし、50mM Tris−HCl、4.5NaCl、pH7.6で3倍で希釈した。HICカラムを50mM Tris−HCl、3M NaCl、pH 7.6(4CV)で平衡化し、1:3で希釈したAEC溶出液を載せた。その後、カラムを50mM Tris−HCl、3M NaCl、pH 7.6(3CV)を使用して洗浄し、また50mM Tris−HCl、1.8M NaCl、pH7.6(5CV)を使用して洗浄した。1.8M NaClの洗浄緩衝液は、検知可能なFSHの損失のない良好なクリアランス力を有することが判明した。その後、タンパク質を50mM
Tris−HCl、0.8M NaCl、pH 7.6(6CV)で溶出した。
【0087】
HIC工程のFSH収率は95%よりも高く、カラムにかけている間の有意な損失はなく、全タンパク質のクリアランス力は約10倍(factor 10)と良好であった。これらのデ
ータは、この開発されたHIC工程が、合理的な収率と産物品質とを伴う非常に効率的な精製工程であることを示している。
【0088】
色素アフィニティークロマトグラフィ工程:
ブルー Sepharose FF(GE Healthcare社から入手可能)を、色素アフィニティークロマトグラフィ工程に使用した。HIC溶出液を50mM Tris−HCl pH7.6で4倍で希釈した。カラムを50mM Tris−HCl、pH7.6(3CV)を使用して平衡化し、1:4の希釈HIC溶出液を載せた。次にカラムを50mM Tris−HCl、pH 7.6(3CV)で洗浄し、FSHタンパク質を50mM Tris−HCl、4M NaCl、pH 7.6(6CV)で溶出した。
【0089】
アフィニティークロマトグラフィに続いて、溶出液を15%の2−プロパノールで2時間インキュベートすることにより、ウイルス不活性化工程を行なった。この目的で、色素アフィニティークロマトグラフィ溶出液を、50mM Tris−HCl、30% 2−プロパノール、pH7.6で2倍に希釈し、50mM Tris−HCl、15% 2−プロパノール、2M NaCl、pH 7.6とした。2時間のインキュベート後、ウイルスを不活性化した色素アフィニティークロマトグラフィ溶出液を20mM Tris−HCl pH7.0で2倍に希釈した。
【0090】
10kDa UF/DF:
限外および透析ろ過を、標準プロトコルに従って通常通りに行った。有用なUF/DF装置は、Sartorius社製のSartocon限外ろ過/透析ろ過カセット(ポリエーテルスルホン(PESU)、10kD)である(フィルタ面積:14,000cm2
、UF係数:13−20、DF係数:8−10、装填量(load):0.1〜0.5mg FSH/cm2)。UF/DF装置による透析ろ過を、限外ろ過(濃縮)係数13〜20
および透析ろ過係数8〜10で一般に実行した。
【0091】
ウイルスを不活性化した色素アフィニティークロマトグラフィ溶出液を、Tris−HCl緩衝液(20mM Tris−HCl、pH 7.0)で透析ろ過し、陽イオン膜吸
着体に直接載せた。
【0092】
陽イオン膜吸着体工程:
本発明の方法の陽イオン交換クロマトグラフィを、再生セルロースから作られ、かつセルロース骨格上に形成されたスルホン酸のクロマトグラフィマトリックスを有する膜を使用して行なった。そのような膜吸着体は、Sartobind S膜吸着体の商標名でSartor
ius社から入手可能である。Sartobind S膜吸着体は、リガンドが固定化されたいくつ
かの膜層を備えたカプセルである。この膜吸着体は、処理時間が短く、かつ緩衝液の体積が小さいという利点を有する。使い捨ての考え方であるため、確認にかかるコストと時間は無視できる。
【0093】
膜吸着体を、Tris−HCl、pH 7.0(200mL)で平衡化し、10kDa
UF/DF保持液(約100mL)を載せた。その後、吸着体を20mM Tris−HCl、pH 7.0(200mL)で洗浄した。
【0094】
膜吸着体を通過させる処理は、処理時間を短縮する流過モードである。さらに、次の処理工程(陰イオン交換クロマトグラフィ)に関する装填の調整は不要である。流過における生成物の収率は非常に良好であった。異なる緩衝系でpH値6.0、6.5および7.0でSartobind Sモジュールで処理する間に、実質上、生成物の損失は無かった。
【0095】
陽イオン膜吸着体工程はHCP(宿主細胞タンパク質)のクリアランスに非常に有利である。精製されるFSHは20mM Tris−HCl緩衝系のpH 7.0では吸着体に結合しないため、90〜95%という収率は非常に有利である。
【0096】
陰イオン交換クロマトグラフィ工程:
Q Sepharose HPとして当該技術分野で知られている第四級アンモニウム基の強陰イオン交換樹脂を用いて、第2の陰イオン交換クロマトグラフィを行なった。この樹脂はGE Healthcare社から入手可能である。
【0097】
AECカラムを20mM Tris−HCl、pH 7.0(3CV)で平衡化した。膜吸着体を流過させたプールをカラムに載せ(3CV)、カラムを20mM Tris−HCl、pH 7.0(2CV)でまず洗浄し、次に20mM Tris−HCl、pH
8.5(3CV)で洗浄し、最後に20mM Tris−HCl、60mM NaCl、pH 8.5(5CV)で洗浄した。その後、FSHを20mMTris−HCl、130mM NaCl、pH 8.5(6CV)で溶出した。
【0098】
Q Sepharose HP溶出液は、GONAL−f(登録商標)に匹敵する非常に高い純度を有する。
10kDa UF:
10kDa限外ろ過を、Sartorius社製のSartocon限外ろ過カセット(PESU、10kD)(フィルタ面積:3,000cm2、UF係数:10−20、装
填量(load):0.2〜1.0mg FSH/cm2)を使用して、標準プロトコルに従
って行った。限外ろ過は通常、10〜30の限外ろ過(濃縮)係数で一般に実行した。
【0099】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)工程:
サイズ排除クロマトグラフィはSuperdex 75pg(GE Healthcare社から入手可能)を使用して行なった。カラムを50mM Na−PO4、pH7.
0(2CV)を使用して平衡化した。10kDa UFh保持液をカラム(0.025C
V)に載せ、その後、カラムを50mM Na−PO4、pH7.0(2CV)で洗浄し
た。
【0100】
SEC溶出液は、商品GONAL−f(登録商標)と同じ範囲で高い純度を有する。
ナノろ過:
最後に、SEC溶出液をAsahi Kasei Medical社により販売されているPlanova 15Nフィルタ(平均孔径15nm)を使用してナノろ過した。目標装填最大値は2.5mL/cm2とした。ろ過は供給業者のプロトコルに従って行なっ
た。
【0101】
精製されたFSHの純度を、SE−HPLCおよびSDS−PAGEで測定した。得られたFSHの純度および特定された不純物は以下の通りであった:

SE−HPLC (二量体およびより高い分子量の関連物質)<1%
SDS−PAGE、還元)(コロイド法) 純度 >97%
HCP(汎用)< 10ppm
DNA < 0.006pg/IU FSH

組換えヒトFSHの生物活性は少なくとも約10,000IU/mgと決定された。好ましくは、組換えヒトFSHまたはFSH変異型の生物活性は約10,000IU/mgから約17,000IU/mgまでの範囲であり、より好ましくは、生物活性は少なくとも約12,000IU/mgであり、最も好ましくは、生物活性は少なくとも約15,000IU/mgである。
配列表:
配列番号1:ヒトFSHのα鎖のアミノ酸配列
配列番号2:ヒトFSHのβ鎖のアミノ酸配列
配列番号3:ヒトFSHのα鎖をコードする野生型の核酸配列
配列番号4:ヒトFSHのβ鎖をコードする野生型の核酸配列
配列番号5:ヒトFSHのβ鎖をコードするコドン最適化した核酸配列
配列番号6:ヒトFSHのα鎖を子オードするコドン最適化した核酸配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)または組換えFSH変異型を精製する方法であって、
前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、
−陰イオン交換クロマトグラフィ、
−疎水性相互作用クロマトグラフィ、および
−色素アフィニティークロマトグラフィ
にかける工程を含み、
前記3つのクロマトグラフィはどの順序で行なってもよく、
前記方法は、弱陰イオン交換クロマトグラフィも逆相クロマトグラフィも含まない方法。
【請求項2】
前記工程が、
a)陰イオン交換クロマトグラフィ、
b)疎水性相互作用クロマトグラフィ、および
c)色素アフィニティークロマトグラフィ
の順に行なわれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記陰イオン交換クロマトグラフィは、−N+(CH33官能基を有する強陰イオン交換
樹脂または同様の特性を有する樹脂を使用して行なわれる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水性相互作用クロマトグラフィは、フェニル基またはブチル基で誘導体化された架橋アガロースビーズから成る樹脂または同様の特性を有する樹脂を使用して行なわれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記色素アフィニティークロマトグラフィは、任意のマトリックスに共有結合されたリガンドとしてシバクロンブルー3Gを用いて行なわれる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
クロマトグラフィは、溶出液としてTris−HCl/塩化ナトリウム緩衝液を使用して7.0〜9.0の間の範囲のpHで行なわれる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
陽イオン交換クロマトグラフィをさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記陽イオン交換クロマトグラフィが、膜に固定された強酸性の陽イオン交換体スルホン酸または同様の特性を有する交換体で行なわれる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程が、
a)陰イオン交換クロマトグラフィ、
b)疎水性相互作用クロマトグラフィ、
c)色素アフィニティークロマトグラフィ、および
d)陽イオン交換クロマトグラフィ
の順に行われる請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
さらなる陰イオン交換クロマトグラフィを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記陰イオン交換クロマトグラフィは、−N+(CH33官能基を有する強陰イオン交換
樹脂または同様の特性を有する樹脂を使用して行なわれる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記陰イオン交換クロマトグラフィは、溶出液としてTris−HCl/塩化ナトリウム緩衝液を使用して7.0〜9.0の間の範囲のpHで行なわれる請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記工程が、
a)第1の陰イオン交換クロマトグラフィ、
b)疎水性相互作用クロマトグラフィ、
c)色素アフィニティークロマトグラフィ、
d)任意選択の陽イオン交換クロマトグラフィ、および
e)第2の陰イオン交換クロマトグラフィ
の順に行われる請求項10〜12に記載の方法。
【請求項14】
サイズ排除クロマトグラフィをさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
サイズ排除クロマトグラフィは、架橋アガロースとデキストランからなる球状複合体のマトリックスを使用して行なわれる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程が、
a)第1の陰イオン交換クロマトグラフィ、
b)疎水性相互作用クロマトグラフィ、
c)色素アフィニティークロマトグラフィ、
d)任意選択の陽イオン交換クロマトグラフィ、
e)任意選択の第2の陰イオン交換クロマトグラフィ、および
f)サイズ排除クロマトグラフィ
の順に行われる請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記工程が、
a)第1の陰イオン交換クロマトグラフィ、
b)疎水性相互作用クロマトグラフィ、
c)色素アフィニティークロマトグラフィ、
d)膜陽イオン交換、
e)第2の陰イオン交換クロマトグラフィ、および
f)サイズ排除クロマトグラフィ
の順に行われる請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
1または複数の限外ろ過およびナノろ過のうちの少なくとも一方の工程をさらに含む請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
金属イオン親和性クロマトグラフィは行なわれない請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
免疫親和性クロマトグラフィは行なわれない請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
組換え卵胞刺激ホルモン(FSH)または組換えFSH変異型を精製する方法であって、
前記FSHまたはFSH変異型を含有する液体を、膜陽イオン交換体に供する工程を含む方法。
【請求項22】
疎水性相互作用クロマトグラフィをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
膜陽イオン交換体が、強酸性の陽イオン交換体スルホン酸または同様の特性を有する交換体である請求項21または22の方法。
【請求項24】
前記FSHは配列番号1のαサブユニットと配列番号2のβサブユニットとを有する請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法により得られたFSHまたはFSH変異型。
【請求項26】
請求項25に記載のFSHまたはFSH変異型と、医薬として許容される賦形剤とを含有する医薬組成物。
【請求項27】
受胎障害の治療のための、請求項25に記載のFSHまたはFSH変異型、もしくは請求項26に記載の医薬組成物の使用方法。

【公表番号】特表2012−522736(P2012−522736A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502514(P2012−502514)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002111
【国際公開番号】WO2010/115586
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509275770)バイオジェネリクス アクチェンゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】BIOGENERIX AG
【Fターム(参考)】