説明

組換えIL−18結合タンパク質の生産

【課題】組換えIL-18結合タンパク質(IL-18BP)の生産方法の提供。
【解決手段】無血清の培養条件下にあるバイオリアクター中の哺乳動物細胞において組換えインターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)を生産するための方法であって、以下のステップ:a. 37℃での細胞増殖期;b. 任意に33℃での間期;c. 29℃での生産期、を含んで成る、無血清の培養条件下、バイオリアクター中で行われる流加方法である、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質生産の分野にある。より詳細には、本発明は組換えIL-18結合タンパク質(IL-18BP)の生産方法に関する。さらに本発明は、特異的グリコシル化プロファイルによって特徴付けられるIL-18BP組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、一般に"生物製剤"とも呼ばれる薬物として商業的に重要になりつつある。最大の課題の一つは、商業規模での組換えタンパク質生産のための安価且つ効率的な方法の開発である。
【0003】
バイオテクノロジー産業は、ヒトの治療用の組換え糖タンパク質を製造するための哺乳動物細胞の広範囲な使用を成す。
【0004】
今日、流加培養(fed-batch culture)とかん流培養は、哺乳動物細胞培養方法に関する生産工程の2つの基本様式であり、大量のタンパク質を必要とする(Hu及びAunins 1997)。生産技術の選定はどんなものでも、安価で、高い体積生産性、バッチ間の一貫性、均質の製品品質を保証する生産方法を得る目的で試みられる。
【0005】
流加またはかん流での生産様式の決定は、主にクローン生物学及び生産物の性質に影響され、また場合に応じて一連の新薬開発の間に行われる(Kadouri及びSpier 1997)。
【0006】
かん流方法が選定される場合の培養系の選定の一つは、細胞が固体担体に固定される固定型充填層バイオリアクターである。この系は操作しやすく、且つ適宜担体及び培養条件によって非常に高い細胞密度(〜107-108個の細胞・ml-1)を可能にする。
【0007】
この高い細胞密度の帰結は、生存可能な細胞と細胞生産性を維持するために用いられる集中的な培地かん流量(仕込み及び採取)を必要とする。かん流量は、かさの高いタンパク質生産性を促進し、且つタンパク質生産物の品質を高め、また方法全体の経済性に非常に強い影響を有する、といった方法の中心的パラメーターの一つであると思われる。
【0008】
したがって、工業規模で最適な固定型充填層バイオリアクター法は、生産物の品質と量に妥協せずに、できるだけ低かん流量で操作すべきである。
【0009】
かん流量を減じる一連の手順においていくつかの研究が行われ、これらの研究では低かん流量で高レベルの乳酸塩及びアンモニア等の有毒な副産物を培養中に蓄積させずにバイオリアクターを操作するために所定のグルコース濃度が(Wang等. 2002)(Dowd等. 2001)供給培地中に他の栄養素レベルの指標として使用されている(Sugiura及びKakuzaki 1998) (Racher等. 1993)。pHまたは温度等の培養パラメーターの改善(Chuppa等. 1997)も培養条件を最適化し、且つ培地かん流を減少させる必要性に対する一般的な戦略である。
【0010】
最適な培地のかん流量を達成するためには、以下の3つのアプローチが考えられる:
a) 生産処理の全体に渡り、不変値でかん流量を固定すること。
このアプローチは、堅実且つ継続的に操作するためにより簡便であるから、一般に工業生産工程において好適である。また処理間のかん流量にばらつきがないため、工程の中間コストを定めるのに利点を有する。
b) 細胞数及び/またはグルコース(Oh等. 1994) (Dowd等. 2001) (Gorenflo等. 2003)、グルタミン(Gorenflo等. 2002)、または酸素(Kyung等. 1994)等の栄養消費量に応じて、かん流量を調整すること。
このアプローチは、かん流量を調整するためのより科学的な論拠を提供するが、過剰発育培養及びかん流量の“制御不能”な増加をもたらし得る。細胞を懸濁様式で培養する場合は、"培養流出(culture bleed)"をして培養の過剰発育を回避するが、細胞を担体上に固定する場合はこれを回避できない。ゆえに一般にこのアプローチは、堅実且つ継続的な方法で操作することが困難であり、また毎日培地かん流量の再調整を行う必要があるような製造操作には向かない。
c) a)とb)の両戦略を初期細胞増殖期(または"成長期")と組み合せること。
ここでは細胞代謝を比較的低い不変レベルで安定化し保持するために、温度及び/またはpH等の培養条件を移行した後の成長期の間に、かん流量を細胞成長の要求に従って徐々に増加させる。この段階でのかん流量は生産期の間の細胞の減少した要求に合致する固定値まで減少させることができる。
【0011】
かん流工程の間のかん流量の改善は、他のバイオプロセスファクターの改善と同様に組換えタンパク質の品質、特にそのグリコシル化パターンに影響を及ぼし得ることが公知である(Jenkins等. 1996) (Andersen等. 2000)。グリコシル化は、一般にヒトの糖タンパク質の溶解性、免疫原性、及び薬物動態特質において重要な機能であり、それらは製品の安全性及び臨床効果における主要なパラメーターであると認識されている(Goochee等. 1991)。特にグリコシル化は、多くの糖タンパク質のフォールディング及び分泌、並びにそれらの血漿中半減期に影響を及ぼすので、in vivoでの生物学及びグリコシル化タンパク質の活性に重要な影響を有している。
【0012】
一般にタンパク質の"グリコシル化"という用語は、糖-アミノ酸連鎖の形成を言う。グリコシル化は、糖質単位の(分泌された)糖タンパク質の生合成において不可欠な事象である。複雑な一連の翻訳後の酵素段階を作動させ、多様な生物学的機能を有するタンパク質の結合したオリゴ糖集団の形成を導く。
【0013】
哺乳動物の糖タンパク質は、一般に3種のタイプの構成要素であるグリカン;Asn-Xxx-(Ser、Thr)モチーフ中でN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を介してアスパラギンに結合したN-連鎖グリカン(ここでのXxxはプロリン以外の任意のアミノ酸であってよい)、O-連鎖グリカンと呼ばれるセリンまたはトレオニンに結合したグリカン、及びグリコシルホスファチジルイノシトールの糖質成分を含む。多くのバリエーションが可能であるが、成熟グリカンのアンテナは、通常シアル酸またはα-連鎖したガラクトースのいずれかに連鎖停止を有する1個以上のN-アセチルラクトサミン単位から成る。フコースは、しばしばアスパラギン-連鎖GlcNAc残基に結合して見出され、更にアンテナ上にも頻繁に見出される。基本構造に対する他の一般的な修飾は、"分岐(bisecting)" GlcNAc残基と呼ばれるコアとなる分岐マンノース残基の4-位に結合したGlcNAc残基を含み、またコア及びアンテナ上の多様な場所で見られる硫酸基を含む。
【0014】
これらの化合物の生合成は、トリマンノシル-キトビオースコアを更なる6個のマンノースと3個のグルコース残基と共に含むグリカンのアスパラギンへの結合、その後のグルコースと4個のマンノース残基の除去を伴う。その後、多様な他のグリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼは、成熟グリカンに対する(GlcNAc)2(Man)5構造を処理する。この処理は、処理範囲によって3種の一般的なタイプのN-連鎖グリカン;"高-マンノース"グリカン(マンノースのみが2つのアンテナ上にある)、"ハイブリッドグリカン"(一つのアンテナが処理される)、及び"複合"グリカン(両方のアンテナが修飾される)をもたらす。一方、O-連鎖グリカンは、結合部位でアミノ酸の一般的なコア構造またはコンセンサス配列を有しない単糖から大きな硫酸化多糖の範囲でより多様性である(Harvey, 2001)。
【0015】
治療的に重要な一つのかかるグリコシル化タンパク質は、インターロイキン-18結合タンパク質である。
【0016】
インターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)は、最初に尿からIL-18カラムでアフィニティー精製された天然の可溶性タンパク質である(Novick等. 1999)。IL-18BPは、in vitroでIFN-γのIL-18誘発及びNF-κBのIL-18活性化を無効にする。さらにIL-18BPは、LPSを注入したマウスにおけるIFN-γの誘導を阻害する。
【0017】
IL-18BP遺伝子はヒト染色体11に局在し、且つIL-18BP遺伝子を含む8.3 kbゲノム配列中で見出され得る膜貫通ドメインをコードするエクソンは存在しなかった。IL-18BPの4種のアイソフォームは、これまでヒトにおいて同定されてきた選択的mRNAスプライシングによって作成された。それらはIL-18BP a、b、c、及びdとされ、全ては同一のN-末端を共有し、且つC-末端が相違する(Novick等 1999)。これらのアイソフォームは、それらのIL-18結合能が相違する(Kim等. 2000)。これらの4種のヒトIL-18BP(hlL-18BP)アイソフォームのうちのアイソフォームaとcは、IL-18の中和能を有することが知られている。最も多く存在するIL-18BPアイソフォームである、アイソフォームaは、急速でも遅速でもIL-18に高い親和性を示し、また約0.4 nM の解離定数(Kd)を示す(Kim等. 2000)。IL-18BPは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。
【0018】
IL-18のIL-18BPとの相互作用に関与する残基は、コンピュータモデリングの使用を通して(Kim等. 2000)、また類似のタンパク質IL-1βのIL-1RタイプIとの間の相互作用に基づき(Vigers等. 1997) 発表されている。
【0019】
IL-18BPは、多くの細胞中に構造的に存在し(Puren等. 1999)、また健常人の体内で循環し、サイトカイン生物学において独自の現象を示す。IL-18BPのIL-18への高い親和性(Kd = 0.4 nM)並びにIL-18BPの高い濃度のために循環中に見出され(IL-18の20倍のモル数)、循環中のIL-18分子の全てではないが、大部分がIL-18BPに結合すると推測されている。したがって、IL-18の細胞表面受容体と競合する循環IL-18BPは、天然の抗-炎症性分子及び免疫抑制性分子として作用し得る。
【0020】
IL-18BPは、乾癬、 クローン病、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、肝障害、敗血症、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、アレルギー等の多くの疾患及び障害における治療用タンパク質として示唆されている。例えば、WO9909063、WO0107480、WO0162285、WO0185201、WO02060479、WO02096456、WO03080104、WO02092008、WO02101049、WO03013577を参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来技術は、CHO細胞における組換えIL-18BPの生産方法も、特定のグリコシル化プロファイルによって特徴付けられるIL-18BP組成物も発表していない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の概要
本発明は、無血清の培養条件下にあるバイオリアクター中の哺乳動物細胞において組換えインターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)を生産するための方法の開発に関し、約37℃での細胞増殖期、及び約29℃〜約34℃の範囲の温度での生産期を含んで成る。
【0023】
特に、細胞による組換えタンパク質生産の生産性を有意に減少させないバイオリアクター中の哺乳動物細胞由来の組換えタンパク質の生産期の間のかん流量の減少に関与する効率的なかん流生産方法は、IL-18結合タンパク質(IL-18BP)のために開発された。
【0024】
無血清の培養条件下にあるバイオリアクター中の哺乳動物細胞において組換えインターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)を生産するためのかん流方法は:
a) 37℃で一定のかん流量(100%)での細胞増殖期;
b) 33.5℃で、ステップ(a)のかん流量の約85〜約65%または約80〜約70%の範囲、或いは約75%のかん流量での生産期I;
c) 32.5℃で、ステップ(a)のかん流量の約85〜約65%または約80〜約70%の範囲、或いは約75%のかん流量での生産期II、を含んで成る。
【0025】
さらに効率的な流加(fed-batch)培養方法は、無血清の培養条件下でのIL-18BPの生産のために開発され:
a. 37℃での細胞増殖期;
b. 任意に33℃での間期;
c. 29℃での生産期、を含んで成る。
【0026】
また本発明は、特異的なグリコシル化プロファイルによって特徴付けられるIL-18BPを含んで成る組成物にも関し、当該組成物は、約15〜約25%のシアル化されていないN-グリカン、約15〜約25%のシアル化されていないN-グリカン、約15〜約30%のモノ-シアル化グリカン、約35〜約55%のジ-シアル化N-グリカン、約5〜約15%のトリ-シアル化N-グリカン、及び約1〜約5%のテトラ-シアル化N-グリカンを含んで成る。
【0027】
さらに本発明は、約0〜約15%の塩基性の糖型、約15〜約30%のより弱酸性の糖型、約40〜約65%の酸性の糖型、及び約10〜約30%のより強酸性の糖型を含む糖型プロファイルによって特徴付けられるIL-18BPを含んで成る組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1による充填層バイオリアクター中のCHO細胞の連続培養の間の、2.6 vvd(●)、2.0 vvd(○)及び1.3 vvd (黒正三角)のかん流レベルでの培地かん流量。バイオリアクターは、100%のかん流を処理-100(●)、75%のかん流を処理-75(○)、及び50%のかん流を処理-50(黒正三角)として標識した。100%の最大かん流量は、参照条件として使用された2.6 vvdに対応する。
【図2A】100%(●)75%(○)及び50%(黒正三角)の培地かん流量に関する実施例1による充填層バイオリアクター中のCHO細胞の連続培養の間のグルコース(A)と乳酸塩(B)濃度プロファイル。
【図2B】図2Aと同じ。
【図3】実施例1による充填層バイオリアクター中のCHO細胞の連続培養の間の、100%(●)75%(○)及び50%(黒正三角)の培地かん流量に関するグルコース消費量(GCR)プロファイル。GCRはFibra-Cel担体の1日あたり且つ1kgあたりに消費されるグルコースのグラムで表される。
【図4】実施例1による充填層バイオリアクター中のCHO細胞の連続培養の間の、100%(●)75%(○)及び50%(黒正三角)の培地かん流量に関するグルコースから乳酸塩への見掛けのモル変換率プロファイル。
【図5A】実施例1による充填層バイオリアクター中のCHO細胞の連続培養の間に生産された100%(●)75%(○)及び50%(黒正三角)の培地かん流量についてのr-IL-18BPの標準化された生産性データ (A)1日あたりの総培養体積あたりの生産物単位中の体積生産性、(B)生産物単位における累積生産物、(C)総培養体積あたりの生産物の単位中の力価。データを標準化するために、60日の生産期に渡る100%かん流量で得られた平均値を100%生産性(点線)として取り入れた。
【図5B】図5Aと同じ。
【図5C】図5Aと同じ。
【図6】処理-50、処理-75及び処理-100の生産期47〜48日での中間バルブサンプル中のN-グリカンマッピング(RP-HPLCプロファイル)によるシアル化。
【図7−1】(A)総細胞密度、(B)生存率、(C)残留グルコース濃度、及び(D)r-hlL-18BP力価に関する実施例2による流加方法の性能。
【図7−2】図7−1と同じ。
【図8】かん流方法(上パネル)または流加方法(下パネル)で調製された精製IL-18BPにおけるN-グリカンマッピングによるシアル化(RP-HPLCプロファイル)。
【図9】流加方法由来の(前処理された)粗採取物サンプル(上部)、及びかん流方法由来の(前処理された)採取物サンプル(下部)の2つの別個の分析手順から得られたキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)プロファイルの比較。
【図10】かん流処理(点線及び斜線)及び流加処理(灰色及び黒色)に関する前処理された粗採取物サンプル(点線及び灰色)及びIL-18の精製サンプル(斜線及び黒色)におけるキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)によるアイソフォーム分布(標的分子の全ての形態の%として与えられる)。エラーバーはCZE法の±10%バラツキに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、無血清の細胞培養条件下にあるバイオリアクター中で組換えIL-18BPを生産するための効率的な方法の開発に基づく。したがって本発明は、無血清の培養条件下にあるバイオリアクター中の哺乳動物細胞において組換えインターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)を生産するための方法に関し、約37℃での細胞増殖期、及び約29℃〜約34℃の範囲の温度での生産期を含んで成る。
【0030】
例えば28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35℃といった約29〜約34℃の間の任意の温度が本発明の構成に適するだろう。
【0031】
好適には本発明は、無血清の培養条件下にあるバイオリアクター中の哺乳動物細胞において組換えインターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)を生産するためのかん流方法に関し:
a) 37℃で一定のかん流量(100%)での細胞増殖期;
b) 33.5℃で、ステップ(a)のかん流量の約85〜約65%または約80〜約70%の範囲、或いは約75%のかん流量での生産期I;
c) 32.5℃で、ステップ(a)のかん流量の約85〜約65%または約80〜約70%の範囲、或いは約75%のかん流量での生産期II、を含んで成る。
【0032】
生産期(IまたはIIのいずれか、または両方)のかん流量が、例えばステップ(a)の初期かん流量の約86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66または65、或いは64%であり得ることは、当業者に理解されるだろう。
【0033】
後の実施例で示すように、驚くことに減少したかん流量であるにもかかわらず、IL-18BPの細胞生産性が実質的に維持されたことが見出された。
【0034】
例えばステップ(a)で約37.5℃、またはステップ(b)で34〜33℃、またはステップ(c)で32〜33℃であるように温度をある制限の中で変化させ得ることも当業者に理解されるだろう。
【0035】
典型的に、細胞培養の溶解した酸素濃度(DO)は空気飽和率の約50〜70%で維持され、またpH値は6.5〜7.5の間で変化し、好適には約7.0である。
【0036】
本明細書で使用される用語“バイオリアクター”とは、細胞の合成的または化学的変換能を用いて分泌タンパク質等の生体分子を生成するために使用される装置または閉ざされた容器を言う。バイオリアクターは、古典的な発酵槽及び細胞培養かん流系を含む。バイオリアクターは、例えば循環ループ流、温度、過度の圧力、及び/または培地かん流量等の細胞培養工程の間の多様なパラメーターを制御することを可能にする。
【0037】
本明細書において使用される用語"無血清培地"とは、例えばウシ胎仔血清等の動物血清から由来する成分が存在しない任意の培地を言う。本発明に従い使用され得る商業的に入手可能な無血清培地の例は、例えばSFM 90 (JRH, 67350)、SFM 90.1 (JRH, 67350)、Supmed300またはSupmed300修飾体(JRH, 67350)、DMEM (Gibco, 7490571)、DMEM/F12 (Gibco, 99.5043)、SFM CHO 3a (BioWhittaker)、CHO PFM (Sigma, C6970)、ProCHO 5、EX-CELL培地(EX-CELL 302 (JRH, カタログNo.14312-1000M)またはEX-CELL 325 (JRH, カタログNo.14335-1000M)等)、CHO-CD3 (Sigma, カタログNo.C-1490)、CHO III PFM (Gibco, カタログNo.96-0334SA)、CHO-S-SFMII(Gibco, カタログNo.12052-098)、CHO-DHFR (Sigma, カタログNo.C-8862)、ProCHO 5 (Cambrex, カタログNo.BE12-766Q)、SFM4CHO (HyClone, カタログNo.SH30549.01)、Ultra CHO (Cambrex, カタログNo.12-724Q)、HyQ PF CHO (HyClone, カタログNo.SH30220.01)、HyQ SFX CHO (HyClone, カタログNo.SH30187.01)、HyQ CDM4CHO (HyClone, カタログNo.SH30558.01)、IS CHO-CD (Irvine Scientific, カタログNo.#91119)、IS CHO-V (Irvine Scientific, カタログNo.#9197)、及びそれらの誘導体を含む。SFM 90、SFM 90.1、SupMed300、DMEM、DMEM/F12、SFM CHO 3a及び CHP PFMの組成物を後の表Iに示す。
【0038】
無血清培地は、化学的に規定された培地、すなわち精製された材料から調製された培地であり、それらの正確な組成が公知であるものが好適である。詳細には化学的に規定された培地は、動物由来成分も規定されていない加水分解物も含まない。
【0039】
本発明のかん流方法による好適な態様では、ステップ(a)のかん流量は約2〜3vvdの範囲、好適には約2.5vvdの希釈率を有する。
【0040】
本明細書で定義される用語"希釈率"とはvvdで表される希釈率Dを言い、1日あたりの総システム処理容量のリットルあたりの培地のリットルとして算出される(総容量=充填層+調整タンク容量)。ステップ(a)のかん流量が、例えば約1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0または3.1vvdであり得ることは、当業者に理解されるだろう。
【0041】
約2.6、或いは2.5または2.75vvdの初期かん流量が特に好都合であることが示されている。
【0042】
ステップ(a)の細胞増殖期、ステップ(b)の生産期I、及びステップ(c)の生産期IIの長さは、初期の細胞種、使用される細胞のタイプ、一日に測定されるグルコース消費量、希釈率、及び工程時間等のパラメーターに基づき、当業者に容易に決定されるだろう。本発明によれば、細胞はバイオリアクター中の担体に結合し、またステップ(b)の生産期Iは担体のキログラムあたり約250〜350gのグルコース消費量で開始することが好適である。
【0043】
本発明の方法に従い使用され得る担体は、例えばマイクロキャリアであってよい。マイクロキャリアは小さな固体粒子であり、当該粒子上の細胞は懸濁培養中で成長し得る。細胞はマイクロキャリアの表面上に付着し増殖することができる。典型的にマイクロキャリアは90 μm〜300 μmの直径のビーズから成る。マイクロキャリアは、例えば、ガラス、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ゼラチン及びセルロース等の細胞接着及び増殖の成功が証明された多様な材料から作ることができる。さらにマイクロキャリアの表面は、細胞接着及び成長を促進する材料、例えばN,N-ジエチルアミノエチル、ガラス、コラーゲンまたは組換えタンパク質等で覆ってよい。マクロ多孔性及び非-多孔性の両方のマイクロキャリアが存在する。マクロ多孔性表面は、播種後にマイクロキャリアの内側に近づきやすい細胞を与え、そして一度細胞がマイクロキャリアの内側に近づくと、細胞はバイオリアクターの機械的な攪拌と曝気によって発生したせん断力から保護される。
【0044】
本発明によって使用され得る更なる固体担体は、例えばFibra-Cel(商標)ディスクであってよい。Fibra-Cel(商標)ディスクは直径6 mmのディスクであって、ポリプロピレンメッシュのシートに結合したポリエステル不織布繊維でできている(例えば、米国特許No.5,266,476、及びワールドワイドウェブページnbsc.com/products/miscellaneous/fibracel/、及びnbsc.com/support/faqs/#fibraを参照)。Fibra-Cel(商標)ディスクは、通常静電的に処理され、懸濁細胞のディスクへの付着、及び懸濁細胞が培養工程を通じて残存している繊維系中での捕捉の開始を促進する。Fibra-Cel(商標)ディスク上で成長した細胞によって達成される細胞密度と生産性は、マイクロキャリア上での細胞成長によるものよりも10倍まで高くなり得る。
【0045】
本発明の方法によりバイオリアクター中で培養され得るIL-18BPを発現している細胞は、例えば、3T3細胞、COS細胞、ヒト骨肉腫細胞、MRC-5細胞、BHK細胞、VERO細胞、CHO細胞、rCHO-tPA細胞、rCHO-Hep B表面抗原細胞、CHO-S細胞、HEK 293細胞、rHEK 293細胞、rC127-Hep B表面抗原細胞、正常ヒト繊維芽細胞、間質細胞、肝細胞、及びPER.C6細胞等の動物またはヒト細胞を含む任意の哺乳動物細胞であってよい。
【0046】
本発明に係る方法においてIL-18BPを発現するためには、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を使用することが好適である。
【0047】
本発明のIL-18BPを生産するための方法は、好適には細胞培養上澄みを収集するステップを更に含んで成る(採取)。
【0048】
さらに好適な態様では、本方法はIL-18BPを精製する1以上のステップを更に含んで成る。任意の適切な方法は、例えばWO 2006/003134またはWO 2005/049649にIL-18BPに関して発表された精製工程のようなIL-18BPの精製に使用され得る。
【0049】
その後、精製IL-18PB生産物は、好適には医薬組成物に製剤化され得る。
【0050】
さらに本発明は、約15〜約25%、好適には約19〜約21%のシアル化されていないN-グリカン、約15〜約30%、好適には約20〜約25%のモノ-シアル化グリカン、約35〜約55%、好適には約39%〜約44%のジ-シアル化N-グリカン、約5〜約15%、好適には約7〜約10%のトリ-シアル化N-グリカン、及び約1〜約5%、好適には約2%〜約3%のテトラ-シアル化N-グリカンを含むシアル化プロファイルによって特徴付けられるIL-18BP組成物にも関する。
【0051】
かかるIL-18BP組成物は、好適には本発明の生産方法によって得られる。
【0052】
さらに本発明は、無血清の培養条件下にあるバイオリアクター中の哺乳動物細胞において組換えインターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)を生産するための流加方法に関し、以下のステップ:
a. 37℃での細胞増殖期;
b. 任意に33℃での間期;
c. 29℃での生産期、を含んで成る。
【0053】
期(a)、任意に期(b)、及び期(c)の長さは、当業者によって容易に決定され得る。期(a)は、例えば105〜106個の範囲といった十分な数の細胞を産生するまで継続されるだろう。期(b)は、より低温へ細胞を適用させるための一時的な期であるように、短いことが好適であろう。
【0054】
好適な態様では、好適には少なくとも10日間の細胞培養で、生産期における総細胞密度が1 mlあたり、1日あたり4〜8×106個の細胞の範囲である。
【0055】
さらに好適な態様では、好適には少なくとも10日間の細胞培養で、生存能力が100〜80%の範囲である。
【0056】
さらにタンパク質生産性が、Iあたり、1日あたり、約150 mgまたは約250 mgまたは約350より高いことが好適である。
【0057】
本発明の方法の構成において使用される好適な哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0058】
本方法は、好適には細胞培養上澄みを収集するステップ、及び/またはIL-18BPを精製するステップ、及び/またはIL-18BPを医薬組成物に製剤化するステップを更に含んで成る。
【0059】
また本発明は、約0〜約15%の塩基性の糖型、約15〜約30%のより弱い酸性の糖型、約45〜約65%の酸性の糖型、及び約10〜約25%のより強い酸性の糖型を含んで成る糖型のプロファイルを有するIL-18BP組成物に関する。
【0060】
糖型プロファイルは、IL-18BPの塩基性、より弱酸性、酸性、及びより強酸性の糖型の存在を示すキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)法によって特徴付けられる。当該方法、及び塩基性、より弱酸性、酸性、及びより強酸性の糖型の定義は、後の実施例から得られる。
【0061】
仮想電荷数(The hypothetical charge number)Zは、公知の公式によって算出されるパラメーターであり(Hermentin等., 1996, Gervais等., 2003、及び後の実施例を参照)、且つ糖タンパク質のシアル化の範囲を特徴付ける。
【0062】
本発明のIL-18BP組成物は、約130〜約160、好適には約140〜155、より好適には約145〜約150の範囲のZ数によって特徴付けられる。IL-18BPの好適なZ数は、例えば139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、または156である。
【0063】
本発明のIL-18BP組成物は任意の方法(例えば本明細書において発表されたより高いかん流量等よりも多様なパラメーター調節で操作されるかん流方法等)で生産され得るが、好適には本発明のIL-18BP組成物は、本発明のかん流方法または流加方法において生産される。
【0064】
本発明によれば、生産されるIL-18BPは、任意の種由来の任意のIL-18BPであってよい。好適にはヒトIL-18BPである。
【0065】
IL-18BPは可溶性の分泌タンパク質であるので、その天然のシグナルペプチドによって、またはGHシグナルペプチド等の異種のシグナルペプチド(すなわち他の分泌タンパク質に由来するシグナルペプチドであり、使用される特定の発現系においてより効率的であり得る)によって細胞培養上澄み中で放出される。
【0066】
用語"IL-18結合タンパク質"とは、本明細書において"IL-18BP"と同義で使用される。この用語はWO 99/09063、またはNovick等.,1999において定義されたようなIL-18結合タンパク質を言う。用語IL-18BPは、Kim等.,2000,において定義されたようなIL-18結合タンパク質のスプライス変異体及び/またはアイソフォーム、特にIL-18のヒトアイソフォームa及びcを含む。
【0067】
本明細書で使用される用語"IL-18PB"は、WO 99/09063で定義されたようなIL-18BPのムテイン、官能性誘導体、活性フラクション、融合タンパク質、環状タンパク質、及び塩を更に含む。
【0068】
本明細書で使用される用語"ムテイン"とは、IL-18BPのアナログ、またはウィルス性IL-18BPのアナログを言い、ここでの天然IL-18BPまたはウィルス性IL-18BPの1種以上のアミノ酸残基は、野生型IL-18BPまたはウィルス性IL-18BPと比較して得られる産物の活性を有意に変化させずに多様なアミノ酸残基で置換され、または欠失し、或いは1種以上のアミノ酸残基が天然配列のIL-18BP、またはウィルス性IL-18BPに付加される。これらのムテインは、公知の合成法、及び/または部位特異的突然変異生成技術、或いは適宜任意の他の公知の技術によって調製される。
【0069】
本発明に係るムテインは、ストリンジェント条件下でIL-18BPまたはウィルス性IL-18BPをコードするDNAまたはRNAとハイブリダイズするDNAまたはRNA等の核酸によりコードされるタンパク質を含む(WO9909063)。用語"ストリンジェント条件"とは、ハイブリダイゼーションとその後の洗浄条件を言い、当業者は慣用的に"ストリンジェント"と言う。Ausubel等., Current Protocols,Molecular Biology, supra, Interscience, N.Y.,§§6.3 及び6.4 (1987, 1992)を参照。制限されずにストリンジェント条件の例は、例えば2×SSCと0.5%のSDSを5分間、2×SSCと0.1%のSDSを15分間;0.1×SSCと0.5%のSDSを37℃で30〜60分間、そして0.1×SSCと0.5%のSDSを68℃で30〜60分間という研究下でハイブリッドの算出されたTmを12〜20℃下回る洗浄条件を含む。この技術の当業者は、ストリンジェント条件がDNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(10〜40塩基等)または混合オリゴヌクレオチドプローブの長さにも依存することを理解する。混合プローブを使用する場合は塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)をSSCの代わりに使用することが好適である。上記のAusubel,を参照。
【0070】
同一性は2個以上のポリペプチド配列、または2個以上のポリヌクレオチド配列の関連性を表し、それらの配列を比較することによって決定される。一般に同一性とは、2種のポリヌクレオチド配列または2種のポリペプチド配列が比較される配列の長さにおいてそれぞれ対応する正確なヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸を言う。
【0071】
正確に一致しない部分が存在する配列に関しては、"%同一性"を決定してよい。一般に比較される2種の配列は、配列間に最大限の相関を与えるように位置合わせされる。これは配列の一方または双方に”ギャップ”を挿入し、合致の程度を増大させることを含み得る。%同一性は、比較される配列のそれぞれの全長(全体配列と呼ばれる)で決定してよく、同一の長さの配列または非常に近似した長さの配列、或いは規定された長さ(局所配列と呼ばれる)のごく短い配列に関して特に適し、同等でない長さの配列に関してより適している。
【0072】
2種以上の配列の同一性と相同性を比較するための方法は、当業界において周知である。したがって例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package, バージョン9.1 (Devereux J等.,1984)から入手可能なプログラム、例えばプログラムBESTFIT及びGAPは、2種のポリヌクレオチド間の%同一性、及び2種のポリペプチド配列間の%同一性と%相同性を決定するために使用され得る。BESTFITは、Smith及びWatermanの"局所相同性"アルゴリズム(1981)を使用して、2種の配列間で類似性の最も高い単一領域を探し出す。配列間の同一性及び/または類似性を決定するための他のプログラム、例えば、BLASTファミリープログラム(Altschul S F等, 1990, Altschul S F等, 1997, www.ncbi.nlm.nih.gov のNCBIのホームページから入手可能)、及びFASTA(Pearson W R, 1990)もまた当業界において公知である。
【0073】
任意のかかるムテインは、IL-18BPと実質的に同様の活性を有するような、IL-18BPのアミノ酸配列と十分に重複したアミノ酸配列、またはウィルス性IL-18BPのアミノ酸配列と十分に重複したアミノ酸配列を有することが好適である。IL-18BPの一つの活性は、そのIL-18への結合能である。ムテインがIL-18に実質的な結合活性を有する限りアフィニティークロマトグラフィー等によるIL-18の精製に使用することができるので、実質的にIL-18BPと同様の活性を有すると考えられる。したがってかかるムテインを、例えば適宜ラベルしたIL-18に結合するか否かを決定するための単純なサンドウィッチ競合アッセイ(ラジオイムノアッセイまたはELISAアッセイ等)にかけることを含む常用の実験によって任意の所定のムテインが実質的にIL-18BPと同一の活性を有するか否かを決定することができる。
【0074】
好適な態様では、任意のかかるムテインは、WO 99/09063で定義されたように、IL-18BPまたはウィルスコードされたIL-18BPホモログのいずれかの配列と少なくとも40%の同一性または相同性を有する。より好適には、ムテインはIL-18BPまたはウィルスコードされたIL-18BPホモログのいずれかの配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または最適には少なくとも90%の同一性または相同性を有する。
【0075】
本発明において使用され得るIL-18BPポリペプチドのムテイン、またはウィルス性IL-18BPのムテイン、或いはそれらをコードする核酸は、過剰な実験をせずに、本明細書において示した教示及び指南に基づき当業者によって日常的に得られるような置換ペプチドまたは置換ポリヌクレオチドと実質的に一致する配列の有限集合を含む。
【0076】
本発明に係るムテインの好適な変更は、"保存的"置換として公知であるものである。IL-18BPポリペプチドまたはタンパク質、或いはウィルス性IL-18BPの保存的アミノ酸置換は、基のメンバー間での置換が分子の生物製剤機能を保存であろう同様の物理化学的特質を十分に有する基の中での同義のアミノ酸を含み得る(Grantham, 1974)。アミノ酸の挿入及び欠失は、特に挿入または欠失が少数のアミノ酸、例えば30個を下回るアミノ酸、また好適には10個を下回るアミノ酸が関与するだけで、機能的なコンホメーションに重要なアミノ酸(例えばシステイン残基)を除去または置き換えないような場合は、それらの機能を変化させずに上記定義した配列中でも行ってよりことは明白である。欠失及び/または挿入等によって生産されるタンパク質とムテインは、本発明の範囲内にある。
【0077】
好適には同義のアミノ酸群は、表4で定義されるものである。より好適には同義のアミノ酸群は、表5で定義されるものであり;且つ最適には同義のアミノ酸群は、表6で定義されるものである。
【0078】
表1 好適な同義アミノ酸群
【表1】

表2 より好適な同義アミノ酸群
【表2】

表3 最適な同義アミノ酸群
【表3】

【0079】
本発明において使用するためのIL-18BPポリペプチドまたはタンパク質のムテイン、或いはウィルス性IL-18BPのムテインを得るために使用され得るタンパク質中のアミノ酸置換生成の例は、 米国特許4,959,314、4,588,585及び4,737,462、Mark等.,;5,116,943、Koths等., 4,965,195、Namen等;4,879,111、Chong等;及び5,017,691、Lee等に示されるような任意の公知のステップ;並びに米国特許No.4,904,584(Shaw等)に示されるリシン置換タンパク質を含む。
【0080】
用語"融合タンパク質"とは、例えば体液中で延長した滞留時間を有する他のタンパク質と融合したIL-18BPまたはウィルス性IL-18BP、或いはそれらのムテインまたはフラグメントを含むポリペプチドを言う。したがってIL-18BPまたはウィルス性IL-18BPは、例えば免疫グロブリンまたはそれらのフラグメントのような他のタンパク質、ポリペプチド等と融合し得る。
【0081】
本明細書で使用される"官能性誘導体"とは、IL-18BPまたはウィルス性IL-18BPの誘導体、並びにそれらのムテイン及び融合タンパク質に渡り、残基の側鎖或いはN-末端またはC-末端基として発生する官能基から当業界において公知の手段によって調製でき、またそれらが医薬的に許容され得るままである限り、すなわちIL-18BPまたはウィルス性IL-18BPの活性と実質的に同様であるタンパク質の活性を破壊せず、且つそれを含む組成物に毒性を与えない限り、本発明に含まれる。
【0082】
これらの誘導体は、例えば抗原部位を覆い、且つ体液中のIL-18BPまたはウィルス性IL-18BPの居留を拡張し得るポリエチレングリコール側鎖を含み得る。他の誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第一もしくは第二アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部位により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN-アシル誘導体(例えばアルカノイルまたは炭素環アロイル基)、またはアシル部位により形成される遊離ヒドロキシ基のO-アシル誘導体(例えばセリルまたはトレオニル残基のもの)を含む。
【0083】
"活性フラクション"としてのIL-18BP、またはウィルス性IL-18BP、ムテイン及び融合タンパク質は、本発明ではタンパク質分子単独または付随した分子と一緒になったタンパク質分子のポリペプチド鎖の任意のフラグメントまたは前駆体、或いはそれらに連結した残基に渡る(例えば糖またはホスフェート残基、或いはそれら自体から成るタンパク質分子または糖残基の会合体)。ただし前記フラグメントは実質的にIL-18BPと同様の活性を有することが条件となる。
【0084】
本明細書における用語"塩"は、IL-18阻害剤分子のカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩、或いはそれらのアナログを言う。カルボキシル基の塩は当業界において公知の手段で形成され、また無機塩(例えばナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、鉄塩または亜鉛塩等)、及びアミン(トリエタノールアミン、アルギニンまたはリシン、ピペリジン、プロカイン等)と共に形成されるものとしての有機塩基との塩を含み得る。酸付加塩は、例えば鉱酸(例えば塩酸または硫酸)との塩、及び有機酸(例えば酢酸またはシュウ酸等)との塩を含む。もちろん任意のかかる塩は、血液細胞中でのIFN-γの誘導といったIL-18阻害剤の生物活性を保持しなければならない。
【0085】
IL-18BP及びそのスプライス変異体/アイソフォームの配列は、WO 99/09063またはNovick等.,1999、及びKim等.,2000から入手できる。
【0086】
IL-18BPの官能性誘導体は、安定性、半減期、バイオアベイラビリティー、ヒトへの耐性、または免疫原性といったタンパク質の特質を改善するために、ポリマーと結合させてよい。この目標を達成するために、IL18-BPを例えばポリエチレングリコール(PEG)と連結させてよい。PEG化は、例えばWO 92/13095で発表された公知の方法によって行ってよい。
【0087】
IL-18BPの融合タンパク質は、例えば免疫グロブリン融合を含み得る。すなわちIL-18阻害剤はIL-18結合タンパク質の全てまたは部分を含む融合タンパク質であり、免疫グロブリンの全てまたは一部に融合する。免疫グロブリン融合タンパク質を作成するための方法は、例えばWO 01/03737に発表された方法等が当業界において周知である。当業者は、得られた本発明の融合タンパク質が、例えばIL-18に結合するように、実質的にIL-18BPの生物活性を保持し、それを従来技術である例えばWO 99/09063等で発表されたin vitroアッセイで測定できることを理解するだろう。融合は直接的であっても、1〜3個長以上のアミノ酸残基、例えば13個長のアミノ酸残基と同じくらい短くできるリンカーペプチドを介してもよい。前記リンカーは、例えば配列E-F-M(Glu-Phe-Met)のトリペプチド、またはIL-18BP配列と免疫グロブリン配列間に導入されるGlu-Phe-Gly-Ala-Gly-Leu-Val-Leu-Gly-Gly-Gln-Phe-Metを含む13-アミノ酸リンカー配列であってよい。得られた融合タンパク質は、体液中での延長した滞留時間(半減期)、増加した特異的活性、増加した発現レベル、または融合タンパク質の精製が促進されるといった改良された特質を有する。
【0088】
好適な態様では、IL-18BPはIg分子の不変領域、例えば免疫グロブリンのFc部位に融合する。好適には例えばIL-18BPは、CH2及びCH3ドメインのような重鎖領域に、任意にヒトIgG1のヒンジ領域を有する重鎖領域に融合する。Fc部分は、例えば補体結合、Fc受容体への結合等の所望されない活性を予防するために突然変異させてよい。
【0089】
IL-18BP及び免疫グロブリンの一部を含む特異的融合タンパク質の生成は、例えばWO 99/09063の実施例11に発表されている。アイソフォームIgG2またはIgG4、または例えばIgMまたはIgAのような他のIgクラスといった他のIg分子のアイソフォームも本発明にかかる融合タンパク質の生成に適している。融合タンパク質は、単量体または多量体、ヘテロ-またはホモ多量体であってよい。
【0090】
さらにIL-18BPの融合タンパク質は、二量体、三量体等の形成を可能にする他のタンパク質から単離された融合ドメインによって調製され得る。本発明のポリペプチドの多量体化を可能するタンパク質配列の例は、hCG(WO 97/30161)、コラーゲンX(WO 04/33486)、C4BP(WO 04/20639)、Erbタンパク質(WO 98/02540)、またはコイル状ペプチド(WO 01/00814)等のタンパク質から単離されるドメインである。
【0091】
本発明の方法によって生産されたIL-18BP、または本発明にかかる組成物は、治療的使用、すなわち患者への投与を目的とし得る。IL-18BPが患者に投与される場合、全身投与が好ましく、また好適には皮下または筋肉内、或いは局所、すなわち局部的に投与される。IL-18BPの特定の用途に応じて、直腸または髄腔内投与も適し得る。
【0092】
この目的のために生産されたIL-18BPは、医薬組成物として、すなわち医薬的に許容され得る担体、賦形剤等と一緒に製剤化され得る。
【0093】
"医薬的に許容され得る"の定義は、活性成分の生物活性の有効性を妨げず、且つ投与されるホストに毒性でない任意の担体を含有することを意味する。例えば非経口投与に関しては、活性タンパク質は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー液等のビヒクル中で注入されるための単位投与形態に製剤化され得る。
【0094】
本発明にかかる医薬組成物の活性成分は、多様な方法で個体に投与できる。投与経路は、皮内、経皮(例えば徐放製剤)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、頭蓋内、硬膜外、局所、直腸、及び鼻腔内経路を含む。任意の他の治療的に有効な投与経路、例えば 上皮組織または皮内組織を介する吸収、或いは活性剤をコードするDNA分子が患者に投与されて(例えばベクターを介して)、in vivoで発現及び分泌される活性剤をもたらす遺伝子治療を使用することができる。さらに本発明にかかるタンパク質は、生物活性剤を医薬的に許容され得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤、及びビヒクル等の他の成分と一緒に投与することができる。
【0095】
非経口(例えば静脈内、皮下、筋肉内)投与のための活性タンパク質は、医薬的に許容され得る非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)及び添加剤に関連して溶液、懸濁剤、乳濁剤、または凍結乾燥粉末として製剤化され、等張性(例えばマンニトール)または化学安定性(例えば防腐剤及び緩衝剤)を維持できる。当該製剤は、一般に使用される技術により殺菌される。
【0096】
活性タンパク質の治療有効量は、アンタゴニストのタイプ、IL-18のアンタゴニストの親和性、アンタゴニストによって示されるいくらかの残留する細胞毒活性、投与経路、患者の臨床症状(非毒性レベルの内因性IL-18活性を維持することの要望を含む)を含む、多くの変数となるだろう。
【0097】
"治療有効量"とは、投与されるIL-18阻害剤がIL-18の生物活性の阻害をもたらす量である。個体に対する単回または反復投与での投与量は、IL-18阻害剤薬物動態特性、投与経路、患者の症状及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、体格)、兆候の程度、現在の治療、治療の頻度、及び所望される効果を含む多様な要因によって変化するだろう。確立された投与量範囲の調整及び操作は、個体におけるIL-18阻害を決定するためのin vitro及びin vivo方法と同様に当業者の能力の範囲内にある。
【0098】
IL-18BPは約0.001〜100 mg/体重kg、または約0.01〜10 mg/体重kg、または約0.1〜5 mg/体重kg、または約1〜3 mg/体重kg、または約2 mg/体重kgの範囲の量で使用され得る。
【0099】
IL-18BPは、毎日、または1日おき、または1週間に3回、または1週間に1回で、同様の用量で、または時間によって増加もしくは減少した用量で投与され得る。
【0100】
1日投与量は、一般に所望される結果を得るために有効な分割投与形態、または徐放形態で供される。2回目の投与またはその後の投与は、個体への初回または以前の投与量と同一の投与量、少ない投与量または多い投与量で行うことができる。2回目またはその後の投与は、罹患中、または疾患が始まる前に投与できる。
【0101】
IL-18BPは、他の治療計画や治療剤(例えば多剤投与計画)を用いる前、同時、後に、治療有効量で予防的または治療的に個体に投与され得る。
【0102】
本発明によって生産されたIL-18BPは、多くの疾患または障害の治療及び/または予防用の薬剤を調製するために使用され得る。かかる疾患または障害は、例えばIL-18を介した障害であり得る。例えばIL-18BPは、乾癬、乾癬性関節炎、クローン病、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、アルコール肝硬変等の肝障害、敗血症、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、アレルギー、特に遅延型過敏症、及び閉鎖性頭部外傷の治療及び/または予防に使用され得る。
【0103】
本発明を本明細書において十分に発表したので、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱せず、過度の実験を必要とせずに、同じ発明を広範な等価のパラメーター、濃度及び条件の中で実行できることを理解するだろう。
【0104】
また本発明はそれらの特別な態様との関連の中で発表されたので、更なる改変が可能であることが理解されるだろう。本願は一般に本発明の原理及び本発明の開示から逸脱しないような本発明が属する当業界における公知の仕事または慣行を含む原理に従い、また添付の特許請求の範囲に従って上記に発表された本質的な特徴に適用され得るように本発明の任意のバリエーション、使用または適用に渡ることが意図される。
【0105】
学術論文または抄録、刊行されたまたは刊行されていない米国または外国特許出願、発行された米国または外国特許、或いは任意の他の参照を含む本明細書に引用された全ての参照は、参照中で引用された全てのデータ、表、図及び文章を含み、本明細書に参照によって全体的に組み入れられている。さらに本明細書に引用された参照中で引用された参照の全内容もまた参照によって全体的に組み入れられている。
【0106】
公知方法のステップ、慣用方法のステップ、公知方法または慣用方法の参照は、本発明の任意の観点、発表、または態様が、関連技術において開示、教示、または示唆されることを許容する任意の方法ではない。
【0107】
上記の特定の態様は、本発明の一般的な性質を十分に明らかにしたので、他人は過度の実験を行わず、本発明の一般概念から逸脱せずに当業者の知識を適用することによって(本明細書に引用した参照の内容を含む)容易にかかる特定の態様を修飾及び/または多様な応用に適用できる。したがって、かかる適用及び修飾は、本明細書において示した教示及び指南に基づいて開示された態様と同等の範囲の意味であることが意図される。本明細書における語法または専門用語は発表を目的とし、且つ限定されないものであることが理解される。つまり本明細書の語法または専門用語は、本明細書に示した教示及び指南の観点において、通常の当業者の知識の組合せの中で、当業者に理解されるものである。
【実施例1】
【0108】
充填層バイオリアクターにおける無血清CHO細胞採取物由来の組換えヒトIL-18BPの生産のためのかん流方法
本実施例は、充填層バイオリアクター中での組換えCHO細胞の高細胞密度培養に基づく方法を発表する。ここでのかん流量は、成長期の間は細胞成長の要求に伴い調整し、その後の生産期の間は方法の生産性またはタンパク質の品質を落とさずに顕著に減少させた。
【0109】
本方法によって生産したタンパク質生産物であるIL-18BPは、好都合のN-グリカン-プロファイルを有することを特徴とすることが判明した。
【0110】
第一世代の方法は、当初は前臨床試験及び初期臨床試験用の材料を迅速に生産することを目的として設計された。
【0111】
本方法は、生産期の間は高い細胞密度(〜2.5・107細胞・充填層ml-1) に新鮮な培地を提供するために、2.6vvdの高かん流量を設計した。この第一世代の方法では、培養に課せられた高い希釈率が、バイオリアクター環境中の生産物であるIL-BPの短い滞留時間を維持したので、生産物の劣化は懸案事項とはならなかった。
【0112】
方法を改良するために、後期の開発で、−25%及び−50%まで培地かん流量を減少させる試験をした。小規模系を使用して試験を処理し、その後、改良された第二世代の方法で臨床試験用材料を更に生産するために、選定された条件をパイロット規模で実施した。
【0113】
材料及び方法
細胞培養−実験系
Fibra-Cel(商標)担体(Bibby Sterilin, 英国)を有する充填層バイオリアクター(Ducommun等. 2002a; Ducommun等. 2002b)を、CHO細胞(Laboratoires Serono S.A., Corsier-sur-Vevey, スイス)を培養するために使用し、無血清培地(Sigma C-9486)中でIL-18BPを発現及び分泌させた。かん流量の減少を調査するために用いた小規模系では、バイオリアクターと充填層は、15リットル及び5リットルの処理容量をそれぞれ有した。
【0114】
バイオリアクターは、成長期と生産期の間は2.6 vvd(表1で定義した通り)でかん流させた。この基礎的なかん流量を100%参照として選定し、処理-100として表した。
【0115】
表1:生産期の間の処理-100、処理-75及び処理-50に関するかん流量を試験した。平均の複製数n(処理-100では±2標準偏差)。
【表4】

*vvdで表される希釈率Dは、1日あたりの総システム処理容量の1リットルあたりの培地のリットルとして算出される(総容量=充填層+調整タンク容量)
【0116】
これらの条件はバイオリアクター実験の全てのセットに適用され:培地は成長期の間、37℃で、100%でかん流された。成長期の間は、温度を37.0℃に調節し、その後、2段階で32.5℃まで落とした。pHは7.00で調節し、そして培養を通じて溶解した酸素濃度(DO)を空気飽和率の70%に保った。
【0117】
充填層バイオリアクター中の細胞数のカウント及び細胞数の決定は、複雑且つ不正確な分析であるという事実があるので、我々は間接的な方法としてグルコース消費率(GCR)を用いて、充填層バイオリアクター中の細胞成長と細胞密度を評価した。我々のシステムでは、多くの充填層培養中で直接的な細胞カウントによって、1日あたりFibra-Cel(商標)ディスクの1キログラムあたり300グラムのグルコースのGCRが、充填層バイオリアクター容量の1mlあたりの約2.5・107個の細胞と一致したことを決定した(データは示していない)。
【0118】
この段階は、37℃での細胞増殖期の終わりとして定義され、GCRが1日あたりFibra-Cel(商標)ディスクの1キログラムあたり300グラムのグルコースのレベルに到達したとき、培養は37.0℃から33.5℃に温度を下げることによって生産モードに移行された。この段階では、表1に要約した通り、バイオリアクターの1つのセットにおけるかん流を100%(処理-100)に保ち、また他の2つのセットを75%(処理-75)及び50%(処理-50)の最大レベルの培地かん流量で実施した。温度を生産期の後期で32.5℃に更に下げて更なる細胞成長を妨げ、且つ生産を促進した。
【0119】
結果の欄では、処理-100の条件下で処理された8個の複製を測定した4つの標準偏差(±2標準偏差)の隔たりを表すバーを図に示した。
【0120】
アッセイ
培養中は、サンプルを毎日取り除いた。グルコースと乳酸塩の濃度はEML 105分析器(Radiometer Medical A/S, Bronshoj, デンマーク)で定量した。
【0121】
生産した組換えIL18BPは、ELISA試験で定量した。
【0122】
組換えタンパク質の品質は、SDS-PAGE法を組み合せたRP-HPLC法で評価した(ExcelGel SDS Homogeneous 12.5% (Cat# 80-1261-01, Pharmacia)。高分子量(すなわち二量体、凝集体)または低分子量のIL-18の変異体を検出ためにウェスタンブロットによってゲルを特異的に染色した。それらの相対強度を決定するために、銀染色による非特異的染色も使用し、個々のバンドを走査した(Scanner ARCUS 2, Afga)後、不純物と比較したIL-18BPの相対強度を評価した。
【0123】
Gervais等. 2003に発表されたように、タンパク質シアル化、及び特に中性、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラ-シアル化N-グリカンの存在量をそれらの電荷に従ってN-グリカンの分離によって分析した。N-グリカンをIL-18BPからヒドラジン分解によって特異的に開裂し(N-グリカナーゼE-5006BまたはE-5006C、Glyko Inc.)、2-アミノベンズアミド蛍光染色(Signal 2-AB labelling kit K404, Glyko Inc.)でラベル化し、そして蛍光検出器を通過する前にクロマトグラフィーカラムで分離した。その後N-グリカンの種類の比率を中性、モノ-、ジ-、トリ-、及びテトラ-シアル化形態に対応するHPLCピークを積分した後に決定した。
【0124】
結果
かん流量の減少
最初の試みは、生産期の間のかん流量を2.6 vvdから2.0 vvd及び1.3 vvdに減少させること(図1)、及びその細胞代謝への影響、体積生産性、及び製品の品質を追跡することであった。
【0125】
グルコースと乳酸塩の濃度は、3種の全てのかん流量について測定し(図2A及びB)、また残留グルコースレベルは、0.5 g/L超であった。
【0126】
図3の結果は、試験された3セットのかん流量についてのグルコース消費率(GCR)レベルを示す。これらの結果は、減少したかん流量が培養のより低いGCRを誘導することを示す。しかしながらこの効果は殆ど有意なものではなく、また培地かん流量が−25%及び−50%まで減少したとき、60日間の生産期に渡り測定された平均GCRは−8%及び−15%までそれぞれ減少した(図3)。
【0127】
並行して、グルコースの乳酸塩への見掛けのモル変換率Ylac/glc(図4)は、より低いかん流量に応じて軽度に減少したが、消費されたグルコースの1モルあたりで生産された乳酸塩を1.55〜1.65モルの範囲で残した。Ylac/glc率について観察された相違は、減少したかん流量で試験処理のために測定された全てのデータポイントが、参照処理で得られた標準偏差値の±2の中に含まれるので、統計的に有意差はなかった。
【0128】
方法の生産性
図5A、B及びCに示した結果は、参照処理-100と減少した培地かん流での処理において生産した組換えタンパク質の比較を示す(体積生産性、全生産量、および滴定濃度)。
【0129】
培地かん流量が−25%及び−50%まで減少したとき、平均の体積生産性は、−3%及び−30%までそれぞれ減少した(図5A)。処理-50に関して得られたより低い生産性の結果は、参照条件とは統計学的に有意に相違する。
【0130】
図5Aで観察された他の相違は、生産期の時間経過に沿った体積生産性の減退である。安定な体積生産性は処理-100及び処理-75で観察されたが、処理-50における生産性は60日間の生産期に渡り減退した。より詳細には処理-50の生産性レベルは、60日の生産期の終了時に参照値の60%であった。
【0131】
処理-50のより低い生産性は図5Bでも見られる。図5Bは60日の生産期に渡り作られた生産物の累積量を示す。
【0132】
多様なかん流量について計測された対応の滴定濃度は図5Cに示され、還流が−25%及び−50%まで減少したとき、組換えタンパク質滴定濃度がコントロールに対して+25%及び+50%までそれぞれ増加したことを示す。
【0133】
生産物の品質
2.6 vvdから2.0 vvd及び1.3 vvdまでのかん流量の減少について、処理-100、処理-75、及び処理-50に関して試験した。組換えタンパク質の滞留時間(t)は、それぞれ0.4日から0.5日及び0.8日に増加した(t=1/D)。
【0134】
バイオリアクター環境へのより長時間の暴露は、潜在的に組換えタンパク質の劣化を導き得るので、安定性試験はバイオリアクター中の試験を開始する前に行った。IL-18BPのサンプルを細胞培養培地中にスパイクし、そしてIL-18BPの品質特性を37℃で播種した1、2及び5日後にモニターした。生産物の劣化のサインが安定性指標法で検出されなかったので(データは示していない)、バイオリアクター実験を開始することを決定した。
【0135】
バイオリアクターでの試験の間、組換えタンパク質は、生産物の品質がそれぞれ調査されるかん流量で維持されることを検証するために、バイオリアクター処理の3つの時点(20日、40日、及び60日)で均質に精製した。処理-50の条件は、この処理がバイオリアクター中で最も低いかん流量と最も長い生産物滞留時間で有すために、タンパク質劣化に関して最悪のケースとみなされた。
【0136】
生産物品質が減少したかん流量に影響されるかどうかを評価するために、処理-50の最終バルクをSDS-PAGE銀染色及びSDS-PAGEウェスタンブロットで分析し、そして処理-100の参照条件中で得られたプロファイルと比較した。処理-50の生産期の47〜48日で採取されたIL-18BPにより形成された1つのバルクに関して得られた対応データは、約40 kDaの分子量と予想される単一バンドをもたらした(示していない)。修飾されていないIL-18BPの品質特性は、処理-100と比較した処理-50について検出された。SDS-PAGE銀染色によって測定された電気泳動の純度は、全てのレーンで99%よりも高く、また凝集体または切り詰め型が存在しないことはSDS-PAGEウェスタンブロットに示されるように検出できた(示していない)。
【0137】
生産されたIL-18BPの高レベルの純度(〜100%)は、処理-100、処理-75、及び処理-50についてのRP-HPLCによって確認した。
【0138】
最終的に生産されたタンパク質中の宿主CHO細胞(宿主細胞タンパク質、HCP)に由来する不純物の量はHCP-ELISAで定量し(データは示していない)、そして処理-50、処理-75、及び処理-100の間での一貫性を見出した。
【0139】
N-グリカンプロファイル
生産された組換えIL-18BPのサンプルは、注目のタンパク質の多様なシアル化形態の比率を定量するために、上記で示した方法に従いN-グリカンマッピングに供した。N-グリカンマッピングの結果は、比較可能なN-グリカンの比率が試験された全てのかん流量で得られたことを示す表2に要約した。これは図6に示した対応のHPLCプロファイルによっても説明されている。
【0140】
表2:処理-100、処理-75、及び処理-50について半生産された薬物サンプル中で異なってシアル化されたN-グリカン分子のフラクション(N-グリカン群の%として示した)。
【表5】

これらのデータの比較は、生産物のシアル化が減少したかん流量で変化せず、また処理-75及び処理-50で得られたデータが処理-100の標準条件下で得られた範囲内にあることを明白にすることを実証する。
【0141】
要約及び結論
本研究では、Fibra-Cel(商標)ディスク担体でできている充填層バイオリアクター中での組換えCHO細胞株の連続培養に使用される最適な培地かん流量を決定した。
【0142】
もともと第一世代の方法では、高い細胞密度(〜2.5・107個の細胞・充填層ml-1 )に十分な新鮮な培地を供するために、生産期の間は2.6 vvdのかん流で操作される高かん流量で設計された。
【0143】
本方法の経済性を改良するために、−25%及び−50%までの培地かん流量の減少を小規模で研究した。その後改良された第二世代の方法により臨床試験用の材料を更に生産するために、最良のオプションをパイロット規模で実行した。
【0144】
−25%のかん流量の減少による体積生産性は第一世代の方法と比較して維持されたが、培地かん流量を更にもとのレベルの−50%に減少させた場合は−30%の生産性の損失があった。
【0145】
減少させたかん流量条件下でのタンパク質の品質は、純度、N-グリカンのシアル化レベル、二量体または凝集体の存在量について分析され、そして最終薬物の品質が高かん流条件で得られたものに匹敵することが示された。
【0146】
本研究では、生産物品質が培地かん流量の減少を維持したことを確立した。最も低いかん流処理による処理-50は最長の滞留時間(t=0.8日)を有し、またこれは長時間バイオリアクター環境中に存在する全ての潜在的な劣化活性に生産物を曝したままにすることから、タンパク質安定性については最悪のケースである。これらの条件下では、我々は99%のタンパク質がバイオリアクター系で4日よりも短い滞留時間を有するだろうと考えることができる(処理-50について、5t=4日)。
【0147】
安定性試験は、重要な変更がされていない粗採取物中のIL-18BPが4日間まで、37℃で貯蔵可能であることを実証したので、試験される範囲でのかん流量の下で生産物が劣化しないだろうということが期待された。これはバイオリアクター処理において得られた結果によって、それぞれ試験されたかん流条件の生産日-20、生産日-40、及び生産日-60で生成した全てのロットの生産されたタンパク質が処理-100からの参照材料で確立された規格に合致することが確認された。したがって、本明細書に示した研究では、検出され得る生産物劣化のサインはなかった。
【0148】
グルコース飢餓は不正確な生産物シアル化の典型的な原因である(Goochee及びMonica 1990)。この効果はCHO細胞から生産されたIFN-gに関し研究され、生産物グリコシル化は0.1 g/L未満の低いグルコース残留レベル下で影響を受けることが見出されている(Hayter等. 1993)、(Hooker等. 1995)。
【0149】
本明細書で示した条件では、IL-18BPのシアル化は低いグルコース濃度が処理-75、及び処理-50の生産期の間に達したおかげで影響を受けなかった。これは特に限定するわけではないが、本明細書で報告した残留グルコース濃度(2.6 g/L〜0.5 g/L)の範囲が、IFN-gの不完全なシアル化で観察された0.1 g/L未満のグルコースレベル値(おそらく多少のグルコース飢餓効果を誘導している)よりもなお高いという事実によって説明できた。
【0150】
小規模で得られた結果に基づく−25%の培地かん流の減少は、第二世代の方法においてパイロット規模で実施され、ここでは同一の生産性と同一の分子品質が維持され、また生産工程の培地、材料及び人件費の削減が可能となった。
【0151】
培地の−25%減少は、−25%節約(粉末培地及び副材料、前置フィルター及び滅菌フィルター、ろ過後の培地貯蔵に使用される滅菌バッグ、及びより少ない培地バッチが必要とされるような培地調製に伴う人件費)に直接言い換えられる。
【0152】
粗採取物中のIL-18BP滴定濃度は、第二世代の方法において+25%まで増加させたところ、下流工程でも同様の節約(より少ない手作業量、減少した生産サイクル時間、設備の最適化等のおかげで人的必要性が減少した)の利益が得られた(データは示していない)。
【0153】
結果
小規模で得られた結果から、かん流量の−25%の減少は、生産性の最大化の利益と−25%の培地消費の節約の利益が組み合されたことが明白である。
【0154】
−50%への更なるかん流量の減少は、減少した方法の生産性を導き、それはかかる条件下で−30%まで減退した。−50%のかん流量条件により、体積生産性は60日の生産期に渡り減退したが、安定な生産性は試験されたより高いかん流量により維持された。生産物安定性は該方法において使用されたかん流量に関係なく匹敵するものであった。
【実施例2】
【0155】
無血清CHO細胞培養から組換えヒトIL-18BPを生産するための流加方法
懸濁培養における組換えヒトIL-18発現細胞による流加方法も同様に開発された。合計で3つの処理を5 L (n=2)または300 L (n=1)の標準容量のバイオリアクターを用いて実行した。
【0156】
要約すると、培地のセットポイントは、50%空気飽和率の酸素濃度、pH 7.0及び6.90、成長期の間は37.0℃の温度、その後の2つのステップでは29.0℃まで減少させた温度であった。流加培養の経過中は、無血清基礎培地(Sigma、S-9942)に濃縮した供給溶液を徐々に補充した。
【0157】
流加方法のパラメーターは表3に要約される。
表3:流加製造方法スキーム
【表6】

1) 5Lと75Lのバイオリアクターは、それぞれ小規模(5L)とパイロット規模(300L)の操作用である。
2) 5Lと300Lのバイオリアクターは、それぞれ小規模(5L)とパイロット規模(300L)のの操作用である。
3) 供給-1の最初の付加は、c(グルコース)<1.0 g/L (+80 g/kg)のときに起こる。
4) 供給-1のその後の付加は、c(グルコース)<5.5 g/L (+30 g/kg)のときに起こる。
* WD=処理日数
** VCs=生存細胞
【0158】
重要なパフォーマンス指標、すなわち総細胞密度、生存能、残留グルコース濃度、及びタンパク質滴定濃度を分析した。図7(A)〜(D)に示す通り、最終の流加方法は、300Lの培養物が採取、清澄化、及び捕捉される19日目の処理まで、クローンを約7.0 mioCs/mLの最大総細胞密度まで成長させ、且つ80%超の細胞生存能を維持することを可能にする。図7(C)は毎日のオフライン測定に基づく残留グルコース濃度プロファイルに対応する。これらのプロファイルは、適用された供給戦略を説明する。例えば最初の80 g/kgの上澄みのボーラス付加は、残留グルコース濃度を5.5 g/L超にまで上げるために処理4日目で3つのバッチ全てに生じさせた。同様な方法で、30 g/kgの上澄みのそれぞれのその後の付加を容易に特定できる。さらに当該方法の生産性は、19日目の処理で一貫性のある400 mg/Lのr-hlL-18BPの最終滴定濃度により図7(D)に示されている。タンパク質の品質は、19日目の処理で全ての3つのバッチで評価した。
【実施例3】
【0159】
CHO細胞培養のためのかん流方法及び流加方法において生産されたrhlL-18BPのシアル化プロファイル
IL-18BPを生産するための更なるかん流方法を設定した。かん流処理は、4.4 kgのFibracel(商標)-ディスクでパックした160 Lの総容量(40 Lの外部カラムを含む)を含むバイオリアクター中で、33.5または32.5℃の生産温度で、2.75 vvdのかん流量で実施した。
【0160】
このかん流方法において生産されたIL-18BPを実施例2で発表した流加方法由来の物質と比較した。
【0161】
かん流または流加のいずれかの上澄みを、アフィニティークロマトグラフィーを用いた捕捉ステップにかけた。
【0162】
捕捉後のIL-18BP物質を上記の実施例1で発表したN-グリカン化(N-glycanation)について分析した。
【0163】
Z数とも呼ばれる仮想電荷数は、Gervais等.(2003)で発表されたように算出した。簡単にはZ数は、N-グリカン物質の中性、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、及びペンタシアル化領域における、それぞれ対応する電荷が乗じられたそれぞれの領域(A)の生産物の合計として定義される:
Z=A (中性)×0+A (モノ)×1+A (ジ)×2+A (トリ)×3+A (テトラ)×4+A (ペンタ)×5。
【0164】
結果は図8に説明され、多少の品質の相違(主にジ-シアル化群)にもかかわらず、N-グリカンマッピングデータは、品質の点で生産物のシアル化がかん流(Z=149)と流加(Z=145)方法条件で比較可能なものであったことを示す。また流加またはかん流方法のいずれかに由来するIL-18BP物質("粗採取物")も、後に詳細に説明したプロトコールに従って、別個に糖化されたアイソフォーム("糖型")についてキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)で分析した。
【0165】
当該アイソフォーム分布を流加またはかん流方法のいずれかに由来する精製IL-18BPと更に比較した。
【0166】
粗採取物は、Sep-Pak(商標) tC2 カートリッジ(Waters)上でマイクロキャプチャーステップを行い、その後キャピラリーに注入される前に、Centricon(商標)10 (Millipore)限外ろ過による脱塩ステップを行った。精製IL-18BPは、アフィニティークロマトグラフィーに基づく多様な捕捉ステップによるものであるが、本質的に特許出願WO 2005/049649に発表されるように得た。簡単には、精製ステップは、金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(キレートセファロースFFにて)、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(Mep Hypercelにて)、イオン交換クロマトグラフィー(CM-セファロースFFにて、流水式を用いて)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(フェニルセファロース高速流HSにて)、及び逆相クロマトグラフィー(逆相-Source 30 RPCにて)を含む。最終精製物は、任意の更なる脱塩ステップを行わずにキャピラリーに直接適用した。
【0167】
方法:
CZE溶液
- 5 mMのホスフェートCZE洗浄/処理緩衝液:
50 mMのホスフェート貯蔵溶液pH 7.0を1:10に希釈して調製する。0.22 μmのフィルターを通しろ過する。新たに調製する。
- 0.5 MのNaOH (CZE洗浄液):
26.2 μlの50%のNaOHを水に付加し、1 mLの総容量とする。新たに調製する。
- 1 MのNaOH (CZE再生液):
52.4μlの50%のNaOHを水に付加し、1 mLの総容量とする。新たに調製する。
- 中性マーカー(1:10000に希釈)
10 μlの中性マーカー貯蔵溶液を水に付加し、1 mLの総容量とする。10 μLのこの中性マーカー1:100希釈物を水に付加し、1 mlの総容量とする。3ヶ月間、4℃で貯蔵する。
【0168】
CZE分析
≧20 μLのサンプル/参照を1/10の容積の中性マーカーを含むPCRバイアル中に移して、泡を立てずにリバースピペッティングで混合する。
【0169】
電気泳動パラメーター:
以下の試薬を別個のバイアルホルダーに泡を立てずに付加する。
表4:CZEの電気泳動パラメーター
【表7】

【0170】
表5:CZE分析タイムテーブル
【表8】

【0171】
表6:CZEキャピラリー再生産タイムテーブル
【表9】

【0172】
検出器に対するキャピラリーの長さ/全体の長さ 50/60 cm
極性 陽性対陰性(前進)
温度 キャピラリー=25±2℃
サンプル台 =10±2℃
検出 214 nm
【0173】
注入プロトコール
キャピラリー調整の目的のために、少なくとも3つの標準参照物質を注入すべきである。
標準参照1(開始)
サンプル1の単回注入
サンプル2の単回注入
サンプル3の単回注入
サンプル4の単回注入
標準参照2(終了)
注:再生産能を増加させるために、参照1と参照2の間の1順で、同一のCZE処理緩衝剤を用いて最大で4つのサンプルを分析することができる。
【0174】
或いは括弧内の2つの参照は、後に発表するように個々のサンプルに使用することができる。
【0175】
少なくとも3つの標準参照物質の注入がキャピラリー調整の目的で行われる。
標準参照(開始1)
サンプル1の単回注入
標準参照(終了1/開始2)
サンプル2の単回注入
標準参照反復(終了2/開始3)
サンプル3の単回注入
標準参照反復(終了3)
【0176】
データ分析
標準参照物質はサンプルデータの比較のために使用される。重層され、また積み重ねられたエレクトロフェログラムのサンプルと両括弧内の参照標準(開始/終了)はプリントアウトして保管される。
【0177】
移行時間MT2及びMT3の決定
参照標準(開始)の−3と+3のピークの左と右の谷間で移行時間MT2及びMT3が決定される。0ピークは、参照の主要ピークである。
【0178】
アイソフォームの分類
IL-18BP糖タンパク質の強い酸性プロファイルによって、MT2とMT3の間のアイソフォームは"酸性アイソフォーム"と名付けられた。MT3よりも長い移行時間を有するアイソフォームは"強酸性アイソフォーム"と名付けられた。MT2よりも短い移行時間を有するアイソフォームは"弱酸性アイソフォーム"と名付けられた。
【0179】
状況次第で、MT1よりも短い移行時間を有するアイソフォームとして定義される"塩基性アイソフォーム"の分類を加える必要があり得る。
【0180】
アイソフォーム存在量評価
参照とそれぞれのサンプルを、MT1-M2、MT2-MT3及びMT3-MT4の間のマニュアルピーク;5分と28分の間のマニュアルベースライン、並びに0とMT1の間、及びMT4と30分の間のインテグレーションオフの機能を用いて分析した。マニュアル的に幅(Width)と基準点(Threshold)の機能を改変して、上記の参照標準と類似するMT1-M2(より弱酸性のアイソフォーム)、MT2-MT3(酸性アイソフォーム)及びMT3-MT4(より強酸性のアイソフォーム)の間の3つのピークの群の統合を得る。
【数1】

【0181】
必要ならば、MT1よりも短い移行時間を有するアイソフォームとして定義される"塩基性アイソフォーム"に対応するピーク群が加えられて、適宜上記の式が修正される。
【0182】
結果:
本CZE法は粗採取物サンプル、並びにかん流方法及び流加方法の両方の精製サンプルに適用された(図9)。前処理された採取物サンプルで多少の相違が観察されたが(例えばかん流方法による塩基性アイソフォームの高い比率)、これらの塩基性アイソフォームは精製工程の間のイオン交換クロマトグラフィーでうまく除去された(データは示されていない)。したがって精製生産物に関しては、比較可能なアイソフォームプロファイルが両方法で得られた(図10)。
【0183】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
無血清の培養条件下にあるバイオリアクター中の哺乳動物細胞において組換えインターロイキン-18結合タンパク質(IL-18BP)を生産するための方法であって、約37℃の温度での細胞増殖期と約29℃〜約34℃の範囲の温度での生産期を含んで成る方法。
【請求項2】
前記方法がかん流方法であって、以下のステップ:
a. 37℃で、一定のかん流量(100%)での細胞増殖期;
b. 33.5℃で、ステップ(a)のかん流量の約85〜約65%または約80〜約70%の範囲、或いは約75%のかん流量での生産期I;
c. 32.5℃で、ステップ(a)のかん流量の約85〜約65%または約80〜約70%の範囲、或いは約75%のかん流量での生産期II、を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)のかん流量が約2〜約3 vvdの範囲、好適には約2.5 vvdの希釈率を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が担体に結合され、且つステップ(b)の生産期Iが担体のキログラムあたり、約250〜350 gのグルコース消費量で開始される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
細胞培養の上澄みを収集するステップを更に含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
IL-18BPを精製するステップを更に含んで成る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
IL-18BPを医薬組成物に製剤化するステップを更に含んで成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって生産されたIL-18BP組成物であって、約15〜約25%のシアル化されていないN-グリカン、約15〜約30%のモノ-シアル化グリカン、約35〜約55%のジ-シアル化N-グリカン、約5〜約15%のトリ-シアル化N-グリカン、及び約1〜約5%のテトラ-シアル化N-グリカンを含むシアル化プロファイルによって特徴付けられるIL-18BP組成物。
【請求項10】
前記方法が流加方法であって、以下のステップ:
a. 37℃での細胞増殖期;
b. 任意に33℃での間期;
c. 29℃での生産期、を含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記生産期における総細胞密度が、好適には少なくとも10日間の細胞培養で、1日あたり、1mlあたり、4〜8×106個の細胞の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
好適には少なくとも10日間の細胞培養で、生存能が100〜80%の範囲である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
タンパク質生産性が約150 mgまたは約250 mgより高い、或いはIあたり、1日あたり約350より高い請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
細胞培養の上澄みを収集するステップを更に含んで成る、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
IL-18BPを精製するステップを更に含んで成る、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
IL-18BPを医薬組成物に製剤化するステップを更に含んで成る、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法によって生産されたIL-18BP組成物であって、約0〜約15%の塩基性の糖型、約15〜約30%の弱酸性の糖型、約45〜約65%の酸性の糖型、及び約10〜約25%の強酸性の糖型を含む糖型プロファイルを有するIL-18BP組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−48633(P2013−48633A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−247547(P2012−247547)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2008−514112(P2008−514112)の分割
【原出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】