組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステム及び方法
【課題】様々な組織から細胞、例えば再生細胞を分離して濃縮するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】様々な組織から細胞を分離するのに用いられるシステム及び方法。特に、再生細胞、例えば幹細胞及び/又は始原細胞を脂肪組織から分離する自動化システム及び方法が説明される。本明細書に説明するシステム及び方法は、被験者の中に再注入するのに適する再生細胞を分離して濃縮する迅速で確実な方法を提供する。
【解決手段】様々な組織から細胞を分離するのに用いられるシステム及び方法。特に、再生細胞、例えば幹細胞及び/又は始原細胞を脂肪組織から分離する自動化システム及び方法が説明される。本明細書に説明するシステム及び方法は、被験者の中に再注入するのに適する再生細胞を分離して濃縮する迅速で確実な方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2001年12月7日出願の米国特許仮出願第60/338,856号の恩典を主張する「PLA細胞で患者を治療するためのシステム及び方法」という名称の2002年12月9日出願の米国特許出願第10/316,127号の一部継続出願である。本出願はまた、2003年8月20日出願の「脂肪組織から細胞を分離するためのシステム及び方法」という名称の米国特許仮出願第60/496,467号、及び2003年6月25日出願の「脂肪組織から細胞を分離するためのシステム及び方法」という名称の米国特許仮出願第60/482,820号に対する優先権を主張するものである。全ての上述の出願の内容は、本明細書においてこの引用により明示的に組み込まれる。
本発明は、様々な組織から細胞、例えば、再生細胞を分離して濃縮するためのシステム及び方法に関する。本発明は、特に、脂肪組織から再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞を分離して濃縮するための自動化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療は、再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞(すなわち、身体の未分化万能細胞)のそれら自体が無制限に再生して成熟分化細胞に成長する能力を臨床的ターゲット方式で利用する。幹細胞は、胎生組織及び一部の成人臓器及び組織で成育の初期段階の間の胎芽内に見出される(Pera他、2000年)。胚幹細胞(以降「ESC」と呼ぶ)は、身体の細胞及び組織の種類の全てではなくてもその多くになることが公知である。ESCは、個体の遺伝情報の全てを含むだけでなく、身体の200+の細胞及び組織のいずれにもなる新生能力も含む。すなわち、これらの細胞は、再生医療に極めて大きな可能性を有する。例えば、ESCは、心臓、肺、又は腎臓のような特定の組織に成長することができ、その後、これらを用いて損傷及び罹患臓器を修復することができるであろう(Assady他、2001年;Jacobson他、2001年;Odorico他、2001年)。しかし、ESC由来組織は、臨床的に限界がある。ESCは、別の個体、すなわち、胎芽由来とする必要があるために、レシピエントの免疫システムにより新しい生体物質が拒絶されることになる危険性がある。このような拒絶を防止する免疫抑制薬が利用可能であるが、このような薬物は、細菌感染及びウイルスに対する免疫応答のような望ましい免疫応答も阻害することが公知である。更に、ESCの供給源、すなわち、胎芽に関する倫理的論議が十分に記録されており、近い将来に対する付加的な、恐らくは克服できない障害が呈示されている。
【0003】
成人幹細胞(以降、ASCと互換的に呼ぶ)は、ESCの利用に対する代替方法を表すものである。ASCは、多くの非胚組織にひっそりと存在し、外傷又は他の破壊性疾患の過程に応答し、損傷組織を治癒することができるように待っていると推定される(Arvidsson他、2002年;Bonner−Weir及びSharma、2002年;Clarke及びFrise、2001年;Crosby及びStrain、2001年;Jiang他、2002年a)。特に、新たに見出された科学的事実により、細胞及び組織の全ての種類ではなくてもその多くになることができる能力をESCと共有することができるASCのプールを各個人が持っていることが示されている(Young他、2001年;Jiang他、2002年a;Jiang他、2002年b;Schwartz他、2002年)。すなわち、ASCは、ESCのように再生医療を臨床的に応用するための極めて大きな可能性を有する。
【0004】
ASC集団は、骨髄、皮膚、筋肉、肝臓、及び脳の1つ又はそれよりも多くに存在することが示されている(Jiang他、2002年b;Alison、1998年;Crosby及びStrain、2001年)。しかし、これらの組織におけるASCの頻度は低いものである。例えば、骨髄中の間葉幹細胞頻度は、100,000有核細胞のうちの1つと1,000,000有核細胞のうちの1つの間と推定される(D’Ippolito他、1999年;Banfi他、2001年;Falla他、1993年)。同様に、ASCを皮膚から抽出するには、数週間にわたる複雑な一連の細胞培養段階を必要とし(Toma他、2001年)、骨格筋からのASCを臨床応用するには、2〜3週間の培養相(Hagege他、2003年)が必要である。従って、このような組織からのASCのいかなる提案された臨床応用にも、細胞精製及び細胞培養の過程により細胞数、純度、及び成熟度を増大させることが必要である。
【0005】
細胞培養段階により、細胞数、純度、及び成熟度が増大するが、これにはある代償が支払われる。この代償には、以下の技術的問題、すなわち、細胞老化による細胞機能の損失、有用である可能性がある非幹細胞集団の損失、細胞を患者に応用するのが遅れる可能性、金銭的費用の増大、及び細胞が培養中に環境微生物で汚染される危険性の増大の1つ又はそれよりも多くを含む可能性がある。骨髄からのASCの治療効果を調べる近年の研究では、基本的に全骨髄を用いて細胞培養に付随する問題を避けている(Horwitz他、2001年;Orlic他、2001年;Stamm他、2003年;Strauer他、2002年)。しかし、臨床的利点は次善最適であり、結果は、ほぼ間違いなく、骨髄で本質的に利用可能なASC用量及び純度が限定されていることに関連している。
【0006】
近年、脂肪組織は、ASCの供給源であることが示されている(Zuk他、2001年;Zuk他、2002年)。骨髄、皮膚、筋肉、肝臓、及び脳と異なり、脂肪組織は、比較的大量に収集することが比較的容易である(Commons他、2001年;Katz他、2001年b)。更に、脂肪からのASCは、骨、脂肪、軟骨、及び筋肉を含む複数の組織を生成する能力を有することが試験管内で示されている(Ashjian他、2003年;Mizuno他、2002年;Zuk他、2001年;Zuk他、2002年)。すなわち、脂肪組織は、再生医療に用いるためのASCの最適な供給源であることを示している。
【0007】
しかし、当業技術は、脂肪からのASCを収集するための適切な方法を欠いていると考えられる。現行の方法には、いくつか欠陥があるであろう。例えば、現行の方法では、脂肪組織を除去するための吸引装置を最適に収容する能力に欠ける場合がある。現行の方法はまた、組織相を処理することにより脂肪組織相を収集することからの部分的又は完全自動化にも欠けているであろう(Katz他、2001年a)。現行の方法では、更に、100mlの脂肪組織よりも大きな容積能力にも欠ける場合がある。更に、現行の方法では、組織相を処理することにより脂肪組織相を収集することからの部分的又は完全な密閉システムにも欠けるであろう。最後に、現行の方法では、試料の1つから別の試料に物質が交差汚染する付随の危険性を低減するための構成要素の廃棄性に欠ける場合がある。要約すれば、脂肪組織からASCを収集するための従来技術の方法の多くは、上述の皮膚、筋肉、肝臓、及び脳からASCを収集することに伴う技術的問題を克服しているようには見えない。
【0008】
従って、再生細胞集団、例えば、ASCを高収量、高濃度、及び/又は高純度で収集することができ、これを後抽出操作の必要性を低減するか又は存在させずに迅速かつ確実に行うことができるシステム及び方法に対する必要性が当業技術にまだ存在している。理想的には、このような装置、システム、又は方法は、レシピエントに直接入れるのに適切な方法で再生細胞を生成すると考えられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、被験者に再注入するのに適切な再生細胞、例えば、幹細胞及び始原細胞を生成するために所定の組織を分離して濃縮することができる非常に万能なシステム及び方法に関する。特に、本発明は、再生細胞を組織から分離して濃縮するための自動化システムを提供するものである。本発明のシステム及び方法で処理することができる組織の種類には、以下に限定されるものではないが、脂肪組織、血液、骨髄、筋肉、皮膚、肝臓、結合組織、筋膜、及び他の軟組織及び液状組織又は組織成分が含まれる。
【0010】
好ましい実施形態では、本発明は、被験者に再注入するのに適する脂肪組織からの再生細胞を分離して濃縮するための自動化システムを提供する。本明細書の開示による脂肪組織から細胞を分離して濃縮するためのシステムは、一般的に、収集チャンバ、処理チャンバ、廃棄物チャンバ、産出チャンバ、及びサンプルチャンバのうちの1つ又はそれよりも多くを含む。様々なチャンバは、生体物質を含有する流体が密閉無菌流体/組織通路でチャンバの1つから別のチャンバに通過することができるように、1つ又はそれよりも多くの導管を通じて互いに連結されている。いくつかの実施形態では、廃棄物チャンバ、産出チャンバ、及びサンプルチャンバは任意的である。
【0011】
システムはまた、複数のフィルタを含む。フィルタは、とりわけ脂肪組織の処理に関連する溶液に存在することがあるコラーゲン、脂肪細胞、及び組織脱凝集剤から幹細胞及び/又は始原細胞を分離するのに有効である。一実施形態では、フィルタアセンブリには、中空糸型濾過装置が含まれる。別の実施形態では、フィルタアセンブリには、浸出型濾過装置が含まれ、これは、沈殿処理と共に用いることができ、又はそうでなくてもよい。好ましい実施形態では、フィルタアセンブリは、遠心分離装置を含み、これは、溶出装置及び処理と共に用いることができ、又はそうでなくてもよい。更に別の実施形態では、システムは、これらの濾過装置の組合せを含む。本発明の濾過機能は二重とすることができ、一部のフィルタでコラーゲン、遊離脂質、遊離脂肪細胞、及び残留コラゲナーゼのようなものを最終濃縮物から除去し、他のフィルタを用いて最終生成物を濃縮する。
【0012】
他の実施形態では、システムの1つ又はそれよりも多くの構成要素は自動化され、処理機能の多くを制御する内部処理装置及び関連ソフトウエアプログラムを含む。システムの構成要素は、1回使用後にシステムの一部分を処分することができるように使い捨てとすることもできる。このようなシステムはまた、処理装置(コンピュータ及び関連ソフトウエアプログラム)とモータやポンプなどのような他の構成要素とを含む再使用可能な構成要素を含んでいる。
【0013】
一実施形態では、患者を治療する方法は、a)組織除去システムを準備する段階、b)組織除去システムを用いて、幹細胞の濃縮物を有する脂肪組織を患者から除去する段階、c)脂肪組織の少なくとも一部を処理し、処理前の脂肪組織の再生細胞の濃縮物以外の再生細胞の濃縮物を得る段階、及びd)患者に投与する前に再生細胞を組織除去システムから除去することなく再生細胞を患者に投与し、それによって患者を治療する段階を含む。
本明細書に説明するあらゆる特徴又は特徴の組合せは、このような組合せに含まれる特徴が前後関係、本明細書、及び当業者の知識から明らかになる時に互いに矛盾しないという条件で本発明の範囲に含まれるものである。
本発明の付加的な利点及び態様は、以下の詳細説明及び特許請求の範囲において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】1つのフィルタアセンブリを含む組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図2】直列構成の複数のフィルタアセンブリを有する図1と同様のシステムの図である。
【図3】並列構成の複数のフィルタアセンブリを有する図1と同様のシステムの図である。
【図4】遠心分離チャンバを含む組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図5】組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムに用いられる前置フィルタを含む収集チャンバの断面図である。
【図6】浸出濾過システムを用いる組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの処理チャンバの断面図である。
【図7】再生細胞を濃縮するための遠心分離装置を用いる再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの処理チャンバの断面図である。
【図8】図7の処理チャンバの別の断面図である。
【図9】(A)〜(C)は、本発明のシステムと共に用いられる溶出構成要素の図である。
【図10】流れの方向及びタイミングを制御するための活栓、液口、及びクランプのシステムを用いて所定の速度で組織及び流体を引くように制御された真空ポンプ又は真空供給装置をシステムの産出部に付加することによって真空システムを構成することができる、真空圧力を用いてシステムを通して流体を移動させる組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図11】正圧システムが流れの方向及びタイミングを制御するための弁、活栓、液口、及びクランプを用いてある一定の定めた速度でこのシステムを通して流体及び組織を押すか又は推進するための蠕動ポンプのような機械的手段を用いる、正圧を用いてシステムを通して流体を移動させる組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図12】(A)は、流体の給送流がフィルタの孔の接線方向に流れる濾過処理の図であり、(B)は、流体の給送流がフィルタの孔と垂直に流れる濾過処理の図である。
【図13】本発明のシステムのための例示的な使い捨てセットの図である。
【図14】本発明のシステムのための例示的な再使用可能な構成要素の図である。
【図15A】図13の使い捨てセット及び図14の再使用可能な構成要素を用いて組み立てられた本発明の例示的な装置の図である。
【図15B】システムの万能性を示す2つの代替処理パラメータが示されている、本発明のシステムの自動化実施形態を制御するソフトウエアプログラムを通して実施される例示的な予めプログラムされた段階を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下に限定されるものではないが、脂肪、骨髄、血液、皮膚、筋肉、肝臓、結合組織、筋膜、脳及び他の神経系組織、血管、及び他の軟組織又は液状組織又は組織成分又は組織混合物(例えば、皮膚、血管、脂肪、及び結合組織を含む組織混合物)を含む様々な組織から再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞を分離して濃縮するための迅速で確実なシステム及び方法に関する。好ましい実施形態では、システムは、脂肪組織から再生細胞を分離して濃縮する。別の好ましい実施形態では、再生細胞の分離から濃縮までの方法全体をユーザの介入を最小限にした一連の連続した段階で行うことができるようにシステムが自動化される。特に好ましい実施形態では、本発明のシステム及び方法を用いて得られる再生細胞は、レシピエントの中に入れるのに適するものである。
【0016】
好ましくは、組織抽出から再生細胞を分離、濃縮してレシピエントに入れるまでの手順全体は、全て同じ施設で、実際には、手順を受けている患者と同じ室内でさえも行われるであろう。再生細胞は、抽出及び濃縮後、比較的短時間内に用いることができる。例えば、再生細胞は、患者から組織を収集してから約1時間以内に用いる準備を整えることができ、特定の状況では、組織の収集から約10〜40分以内に用いる準備を整えることができる。好ましい実施形態では、再生細胞は、組織の収集から約20分以内に用いる準備を整えることができる。抽出から分離及び濃縮を通る手順全体の長さは、患者プロフィール、収集する組織の種類及び所定の治療用途に必要な再生細胞の量を含むいくつかの因子により変化する場合がある。細胞はまた、レシピエントに治療的、構造的、又は美容的利点を生じさせることを意図した単一の作業手順に関連し、他の細胞、組織、組織断片、骨格、又は細胞成長及び/又は分化のための他の刺激要因と組み合わせてレシピエントに入れることができる。このシステムの分離及び濃縮相を超えて再生細胞を更に操作するには、このような操作の方法に相応の付加的な時間を必要とすることになることが理解される。
【0017】
様々な疾患及び障害を有する患者は、本発明の再生細胞から利益を得ることができる。例えば、心臓血管疾患及び障害、肝疾患及び障害、腎疾患及び障害、骨格筋障害、肺外傷及び障害、糖尿病、消化管疾患及び障害、神経系障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、卒中関連疾患及び障害、造血系の疾患及び障害、創傷、潰瘍及び他の皮膚疾患及び障害、外傷性傷害、火傷、放射線又は化学物質又は他の毒素誘発性傷害又は障害、及び、骨及び軟骨関連疾患及び障害を有する患者は、本発明のシステム及び方法で得られる再生細胞を用いて治療することができる。
【0018】
特定的な実施形態では、血管形成及び動脈形成が介在する疾患及び障害は、本発明のシステム及び方法を用いて得られる再生細胞で治療することができる。例えば、急性心筋梗塞、虚血性心筋症、末梢血管疾患、虚血性脳卒中、急性尿細管壊死、虚血性障害、敗血症、虚血性腸疾患、糖尿病性網膜症、神経障害、腎障害、脈管炎、虚血性脳障害、勃起障害、虚血性及び/又は外傷性脊髄損傷、多臓器系不全、虚血性歯肉疾患、及び移植関連虚血を治療することができる。
【0019】
更に、1つよりも多い生理学的システムに影響を及ぼす疾患及び障害、例えば、軟組織及び硬組織の両方に関する外傷性傷害、老化性多臓器障害の影響等も本発明のシステム及び方法を用いて得られる再生細胞で治療することができる。また、腱及び軟骨修復を促進するために及び自己脂肪移動用途を含む様々な臨床及び非臨床の美容的及び構造的用途のために再生細胞を用いることもできる。美容的用途には、例えば、顔面のひだ及び皺、口唇、胸部及び臀部、及び他の軟組織の欠陥を再構成することが含まれる。再生細胞はまた、当業技術で公知の組織工学用途に用いることもできる。
【0020】
本発明を更に容易に理解することができるように、ある一定の用語を最初に定義する。付加的な定義は、詳細な説明を通して説明する。
本明細書で用いる場合、「再生細胞」とは、本発明のシステム及び方法を用いて得られるあらゆる異種又は相同細胞を意味し、これは、臓器、組織、又は生理的単位又はシステムの構造又は機能を完全に又は部分的に再生、復元、又は置換させるか又はそれに寄与することにより、治療的、構造的、又は美容的利点をもたらすものである。再生細胞の例には、ASC、内皮細胞、内皮前駆細胞、内皮始原細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、ケラチノサイト、単分化能及び多分化能始原及び前駆細胞(及びその子孫)、及びリンパ細胞が含まれる。
【0021】
再生細胞が治療的、構造的、又は美容的利点をもたらすことができる機構の1つは、新しく生成されたか、存在するか、又は修復された組織又は組織成分の中にそれ自身又はその子孫を組み込むことによるものである。例えば、ASC及び/又はその子孫は、治療的、構造的、又は美容的な改善を引き起こすか又はそれに寄与するように、新しく生成された骨、筋肉、又は他の構造的又は機能的組織に組み込むことができる。同様に、内皮細胞又は内皮前駆細胞又は始原細胞及びその子孫を存在するか、新しく生成されたか、修復されたか、又は拡張された血管に組み込み、それによって治療的、構造的、又は美容的利点を引き起こすか又はそれに寄与することができる。
【0022】
再生細胞が治療的、構造的、又は美容的利点をもたらすことができる別の機構は、所定の組織又は組織成分の構造又は機能の生成、保持、復元、及び/又は再生を促進する分子、例えば、成長因子を発現及び/又は分泌させることによるものである。例えば、再生細胞は、分子を発現及び/又は分泌させることができ、これは、組織又は細胞の成長の促進をもたらし、これらは、次に、構造又は機能を改善するのに直接的又は間接的に参加する。再生細胞は、成長因子を発現及び/又は分泌することができ、成長因子には、例えば、「血管内皮成長因子(VEGF)」、「胎盤成長因子(PlGF)」、bFGF、IGF−II、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IL−12p40/p70、IL−12p70、IL−13、IL−6、IL−9、レプチン、MCP−1、M−CSF、MIG、PF−4、TIMP−1、TIMP−2、TNF−a、トロンボポエチン、及びそのイソ型が含まれ、以下の機能、すなわち、新しい血管の発生を刺激する、すなわち血管形成を促進する機能、既存の小さな血管(側枝)の血液運搬容量を拡大することによりその酸素供給を改善する機能、傷害の部位から離れた部位の再生細胞を可動化することによりこのような細胞が傷害の部位にホーミングして遊走するのを促進する機能、傷害部位での細胞の成長を刺激及び/又は生存を促進することにより機能又は構造の保持を促進する機能、抗アポトーシス特性を有する分子を送出することにより細胞死及び機能の永久的損失の比率又は可能性を低減する機能、及び内因性再生細胞及び/又は他の生理学的機序と相互作用する機能の1つ又はそれよりも多くを行うことができる。
【0023】
再生細胞は、組織に存在するか又は本発明のシステム及び方法を用いて分離して濃縮したようなその「未変性」形で用いることができ、又は、それらは、成長因子又は他の生物反応修飾物質で刺激又は初回刺激することにより、遺伝子移入(一過性又は安定移入)により、物理的特性(例えば、大きさ又は密度)、固体相材料に対する差次的付着性、細胞表面又は細胞内分子の表現、細胞培養又は他の生体外又は生体内操作、修飾、又は本明細書で更に説明するような分割に基づいて、得られる集団を更に分割することにより、修飾することができる。再生細胞はまた、本明細書で更に説明するような細胞の関連特性を修飾又は向上させる因子、薬物、化学物質、又は他の薬剤を送出する合成的又は生物学的骨格、材料、又は装置のような他の細胞又は装置と組み合わせて用いることができる。
【0024】
本明細書で用いる場合、「再生細胞組成物」とは、組織、例えば、脂肪組織を洗って少なくとも部分的に脱凝集した後に典型的にある一定の容積の液体中に存在する細胞の組成物を意味する。例えば、本発明の再生細胞組成物は、ASC、内皮細胞、内皮前駆細胞、内皮始原細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、ケラチノサイト、単分化能及び多分化能始原及び前駆細胞(及びその子孫)、及びリンパ細胞を含む複数の異なる種類の再生細胞を含む。再生細胞組成物はまた、本明細書に説明する組織脱凝集に用いられるか又はそれによって生じる組織断片又は残留コラゲナーゼ又は他の酵素又は薬剤に存在することができる、コラーゲンのような1つ又はそれよりも多い夾雑物を含むことができる。
【0025】
本明細書で用いる場合、「再生医療」とは、再生細胞を直接的又は間接的のいずれかで被験者に入れることにより得られるあらゆる治療的、構造的、又は美容的利点を意味する。再生医療には、本明細書に説明したもの及び当業技術で公知の疾患及び障害の全てが含まれる。
本明細書で用いる場合、「幹細胞」とは、1つ又はそれよりも多くの特定の機能を行い、自己複製する能力を有する様々な他の細胞型に分化することができる多分化能再生細胞を意味する。本明細書で開示する幹細胞の一部は、多分化能とすることができる。
【0026】
本明細書で用いる場合、「始原細胞」とは、1つよりも多い細胞型に分化することができる多分化能再生細胞を意味し、自己複製の能力は、限定されているか又は皆無である。「始原細胞」はまた、本明細書で用いる場合には、1つ又はそれよりも多い特定の機能を行い、自己複製の能力が限定されているか又は皆無である単一の細胞型にのみ分化することができる単分化能細胞も意味する。特に、本明細書で用いる場合、「内皮始原細胞」とは、血管内皮細胞に分化する能力を有する多分化能又は単分化能細胞を意味する。
【0027】
本明細書で用いる場合、「前駆細胞」とは、1つの細胞型に分化することができる単分化能再生細胞を意味する。前駆細胞及びその子孫は、高度増殖能を保持することができ、例えば、リンパ細胞及び内皮細胞は、適切な条件下で増殖することができる。
本明細書で用いる場合、「幹細胞数」又は「幹細胞頻度」とは、脂肪からの細胞(ADC)を低細胞密度(<10,000細胞/ウェル)で蒔き、MSC増殖を助ける増殖培地(例えば、10%ウシ胎仔血清、5%ウマ血清、及び抗生物質/抗真菌剤を補ったDMEM/F12培地)で増殖させるクローン検定で観察されるコロニーの数を意味する。細胞は2週間増殖させ、その後、培養物をヘマトキシリンで染色すると、50細胞よりも多いコロニーがCFU−Fとして計数される。幹細胞頻度は、蒔いた100有核細胞当たりのCFU−Fの数として計算される(例えば、1,000有核再生細胞で開始したプレートで15コロニーが計数されれば、幹細胞頻度は1.5%になる)。幹細胞数は、幹細胞頻度に得られる有核ADC細胞の総数を乗じたものとして計算される。再生細胞から増殖した高い割合(〜100%)のCFU−Fは、細胞表面分子CD105を発現するが、これは、骨髄由来幹細胞によっても発現される(Barry他、1999年)。CD105もまた脂肪組織由来幹細胞によって発現される(Zuk他、2002年)。
【0028】
本明細書で用いる場合、「脂肪組織」という用語は、脂肪を貯蔵する結合組織を含む脂肪を意味する。脂肪組織には、ASC及び内皮始原及び前駆細胞を含む複数の再生細胞の種類が含まれる。
本明細書で用いる場合、「脂肪組織の単位」という用語は、個別の又は測定可能な量の脂肪組織を意味する。脂肪組織の単位は、その単位の重量及び/又は容積を判断することにより測定することができる。上述のように識別したデータに基づいて、PLA細胞の単位は、患者から除去されると、少なくとも0.1%の細胞成分が幹細胞である、すなわち、上述のように判断した幹細胞頻度が少なくとも0.1%である細胞成分を有する。本明細書の開示に関しては、脂肪組織の単位は、患者から除去した脂肪組織の全体量又は患者から除去した脂肪組織の全体量よりも少ない量を意味することができる。従って、脂肪組織の単位は、脂肪組織の別の単位と組み合わせて、個々の単位の合計である重量又は容積を有する脂肪組織の単位を形成することができる。
【0029】
本明細書で用いる場合、「一部分」という用語は、全体量よりも少ない材料の量を意味する。小部分とは、50%未満の量を意味し、主要部分とは、50%よりも多い量を意味する。従って、患者から除去された脂肪組織の量全体未満の脂肪組織の単位は、除去脂肪組織の一部分である。
本明細書で用いる場合、「PLA細胞」という用語は、成熟脂肪細胞及び結合組織から活性細胞成分(例えば、修復性を含む成分)を分離するように処理された脂肪組織を意味する。この分画は、本明細書では「脂肪由来細胞」又は「ADC」と呼ぶ。一般的に、ADCは、脂肪組織からの細胞を洗い、分離し、濃縮することにより得られる再生細胞のペレットを意味する。ペレットは、一般的に、細胞が遠心分離チャンバ又は細胞濃縮装置の底部に凝集するように、細胞の懸濁液を遠心分離することにより得られる。
【0030】
本明細書で用いる場合、「投与する」、「導入する」、「送出する」、「配置する」、及び「移植する」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、望ましい部位への再生細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路により本発明の再生細胞を被験者に配置することを意味する。再生細胞は、細胞又は細胞成分の少なくとも一部分が生存可能である被検体の望ましい部位への送出をもたらす適切ないずれかの経路により投与することができる。被検体に投与後の細胞の生存可能期間は、数時間、例えば、24時間から数日ほどの短さから数年ほどの長さまでとすることができる。
【0031】
本明細書で用いる場合、「治療する」という用語には、疾患又は障害の少なくとも1つの有害作用又は症状を減少又は軽減することが含まれる。
本明細書で用いる場合、「治療に有効な用量の再生細胞」とは、有利か又は望ましい臨床効果をもたらすのに十分な量の再生細胞を意味する。この用量は、1回又はそれよりも多い投与で投与することができると考えられる。しかし、どれが有効用量と見なされるかの正確な判断は、以下に限定されるものではないが、患者の年齢、大きさ、疾患の種類又は範囲、疾患の段階、再生細胞の投与経路、用いる補助療法の種類又は範囲、進行中の疾患過程及び望ましい治療の種類(例えば、積極的治療法に対して従来の治療法)を含む各個人に固有の因子に基づくであろう。
本明細書で用いる場合、「被検体」という用語には、温血動物、好ましくはヒトを含む哺乳類が含まれる。好ましい実施形態では、被検体は霊長類である。更に好ましい実施形態では、被検体はヒトである。
【0032】
先に本明細書で示したように、再生細胞、例えば、幹細胞及び始原細胞は、様々な組織から収集することができる。このような全ての組織に本発明のシステムを用いることができる。しかし、脂肪組織は、再生細胞が特に豊富な供給源である。従って、本発明のシステムは、本明細書では、再生細胞の供給源として脂肪組織を用いて示すが、これは単なる例として非制限的に示すものである。
脂肪組織は、当業者に公知のあらゆる方法により得ることができる。例えば、脂肪組織は、脂肪吸引(注射器又は動力補助付き)によるか、又は脂肪組織切除、例えば、吸引補助脂肪形成、超音波補助脂肪形成、及び切除的脂肪組織切除、又はその組合せにより患者から除去することができる。脂肪組織は、除去して収集され、本明細書に説明した本発明のシステムのいずれかの実施形態により処理することができる。収集される組織の量は、ドナーの肥満度指数及び年齢、収集に利用可能な時間、到達可能な脂肪組織収集部位の利用可能性、併用中及び既存の医薬品及び条件(例えば、抗凝固剤療法)、及び組織を収集する臨床目的を含む多くの因子に依存する。例えば、痩せ型個体から抽出される脂肪組織100mlの再生細胞パーセントは、肥満ドナーから抽出される場合よりも大きい(表1)。これは、恐らく肥満個体の方が脂肪含量が多いという希釈効果を反映するものである。従って、本発明の態様の1つによれば、過体重ドナーからは、痩せ型の患者から引き抜くであろう量に比較して大量の組織を得ることが望ましいと考えられる。この所見はまた、本発明の有用性が大量の脂肪組織を有する個体に限定されないことも示している。
【0033】
【表1】
【0034】
脂肪組織を処理した後、得られる再生細胞は、実質的に成熟脂肪細胞及び結合組織を含まない。従って、本発明のシステムでは、不均一な複数の脂肪由来再生細胞を生成し、これを研究及び/又は治療の目的で用いることができる。好ましい実施形態では、細胞は、レシピエントの身体内に配置又は再注入するのに適切である。他の実施形態では、研究のためにこの細胞を用いることができ、例えば、この細胞を使用して、長期間にわたって生存することができ、更に別の研究に用いることができる幹細胞又は始原細胞株を確立することができる。
【0035】
本発明の現在好ましい実施形態に関してここで詳細に以下に説明するが、その例は添付図面に示されているものである。図面及び説明では、可能な場合は常に同じ又は同様の部分を指すのに同じか又は同様の参照番号を用いる。図面は簡略形であり、正確な縮尺でないことに注意すべきである。本明細書の開示に関しては、単に便宜上及び明快さのために、添付の図面に関して上部、下部、左、右、上方向に、下方向に、の上に、上方に、下方に、下に、後部、前部、遠位、及び近位のような方向を表す用語を用いる。このような方向を表す用語は、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0036】
本明細書の開示は、いくつかの図示の実施形態に関するが、これらの実施形態は、例として挙げたものであり、限定するために挙げたものでないことは理解されるものとする。以下の詳細説明の意図は、例示的な実施形態を説明するにも関わらず、特許請求の範囲により定める本発明の精神及び範囲に含むことができるような実施形態の全ての修正、変更、及び均等物を網羅するように解釈することである。本発明は、当業技術で従来用いられている様々な医療的手順に関して用いることができる。
【0037】
図を参照すると、本発明のシステム10は、一般的に、組織収集チャンバ20、処理チャンバ30、廃棄物チャンバ40、産出チャンバ50、及びサンプルチャンバ60の1つ又はそれよりも多くから成る。様々なチャンバは、密閉された無菌の流体/組織通路を維持しながら生体物質を含む流体がチャンバの1つから別のチャンバに通過することができるように、1つ又はそれよりも多くの導管12を通じて互いに連結される。導管は、本明細書でそれぞれ管腔及びチューブと互換的に呼ばれる剛性又は可撓性の本体を含むことができる。いくつかの実施形態では、導管は、臨床の場で従来用いられるポリエチレンチューブ、シリコーン、又は当業技術で公知のいずれかの他の材料のような可撓性チューブの形態である。導管12は、流体又は組織が通過することを望むか否かにより大きさを変えることができる。導管12はまた、システムを通って循環する組織又は流体の量に応じて大きさを変えることができる。例えば、流体を通過させるためには、導管の直径は、約0.060〜約0.750インチの範囲とすることができ、組織を通過させるためには、導管の直径は、0.312〜0.750インチの範囲とすることができる。一般的に、導管の大きさは、導管が収容することができる容積及びこの導管を通して組織又は流体を運ぶのに必要な時間の均衡を取るように選択される。システムの自動化実施形態では、上述のパラメータ、すなわち、運ぶための容積及び時間は、適切な信号がシステムの処理装置に送信することができるように特定すべきである。これによって、装置は、液体及び組織の正確な量をチャンバの1つから別のチャンバへ移動することができる。用いられる可撓性チューブは、負圧に耐え、崩壊の可能性を低減することができるべきである。用いられる可撓性チューブは、例えば、システムに用いることができる容量式ポンプによって生じる正圧にも耐えることができるべきである。
【0038】
システムの全てのチャンバは、規格IVの注射器及び吸引チューブ接続を受け入れる1つ又はそれよりも多いポート、例えば、出口22又は入口21ポートから成ることができる。ポートは、ゴム隔膜密閉注射針アクセスポート51のような密封ポートとすることができる。入口ポートは、導管により1つ又はそれよりも多いカニューレ(図示せず)に連結することができる。例えば、組織入口ポート21は、一体化された単回使用脂肪吸引カニューレに連結することができ、導管は、可撓性チューブとすることができる。導管は、一般的に、システムのチャンバの1つから別のチャンバへの流体通路を設けるように位置決めされる。この端部に向けて、導管及びポートは、例えば、手動又は自動で作動することができる吸引装置(図示せず)に連結することができる。吸引装置は、例えば、注射器又は電気ポンプとすることができる。吸引装置は、患者から組織を吸込むのに十分な負圧を与えることができるべきである。一般的に、当業者、例えば外科医に公知のあらゆる適切な吸引装置を用いることができる。
【0039】
導管12は、システムの様々な構成要素の中で材料の流れを制御するために1つ又はそれよりも多いクランプ(図示せず)を更に含むことができる。クランプは、システムの異なる領域を実質的に密封することによりシステムの無菌性を維持するのに有用である。代替的に、導管12は、システムを通る材料の流れを制御する1つ又はそれよりも多い弁14を含むことができる。弁14は、図の白丸として示されている。好ましい実施形態では、弁は、電気機械式ピンチ弁とすることができる。別の実施形態では、弁は、空気圧弁とすることができる。更に別の実施形態では、弁は、水圧弁又は機械式弁とすることができる。このような弁は、レバーに連結することができる制御システムによって作動されることが好ましい。レバーは、レバーが作動されるように手動で操作することができる。自動化実施形態では、制御システムは、レバー、並びに所定の作動条件で弁を作動させることができる処理装置に連結することができる。いくつかの自動化実施形態では、弁の作動は、この処理を最適とすることができるように部分的に自動とし、部分的にユーザの選択に委ねることができる。更に別の実施形態では、ある一定の弁を手動で作動し、他の弁は、処理装置を通して自動的に作動させることができる。また、弁14は、1つ又はそれよりも多いポンプ、例えば、蠕動ポンプ34又は容量式ポンプ(図示せず)と組み合わせて用いることができる。また、導管12及び/又は弁14は、センサ29、例えば、光学センサ、超音波センサ、圧力センサ、又はシステムを流れる様々な流体成分及び流体レベルを識別することができる当業技術で公知の他の形態のモニタで構成することができる。好ましい実施形態では、センサ29は、光学センサとすることができる。
【0040】
また、システムには複数のフィルタ36を含むことができる。いくつかの実施形態では、フィルタは、システム28のチャンバ内に含むことができる。システム内の異なるチャンバは、異なるフィルタで構成することができる。フィルタは、不要な細胞及び本システムにより用いることもある脱凝集剤から再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞を分離するのに有効である。一実施形態では、フィルタアセンブリ36には、中空糸型濾過装置が含まれる。別の実施形態では、フィルタアセンブリ36には、浸出型濾過装置が含まれ、これは、沈殿処理と共に用いてもよく又は用いなくてもよい。別の実施形態では、フィルタアセンブリ36には遠心分離装置が含まれ、これは、溶出装置及び処理と共に用いてもよく又は用いなくてもよい。更に別の実施形態では、システムにはこれらの濾過装置の組合せが含まれる。本発明の濾過機能は二重とすることができ、一部のフィルタが最終濃縮物からコラーゲン、遊離脂質、遊離脂肪細胞、及び残留コラゲナーゼのような物質を除去し、別のフィルタを用いて最終生成物を濃縮する。システムのフィルタには、直径及び/又は長さが20〜800μmの範囲である複数の孔を含むことができる。好ましい実施形態では、収集チャンバ20は、80〜400μmの範囲の複数の孔を備えた前置フィルタ28を有する。別の好ましい実施形態では、収集チャンバ20は、複数の265μrn孔を備えた前置フィルタ28を有する。他の実施形態では、フィルタは、取外し可能及び/又は使い捨て可能にすることができる。
【0041】
また、システムには、システムの1つ又はそれよりも多いチャンバに含まれる材料の温度を調節するように位置決めされた1つ又はそれよりも多い温度制御装置(図示せず)が含まれる。温度制御装置は、加熱装置、冷却装置、又は両方とすることができ、すなわち、加熱装置と冷却装置の間で切り換えることができる。温度装置は、組織、脱凝集剤、再懸濁剤、リンス剤、洗浄剤、又は添加剤を含むシステムを通る材料のいかなる温度も調節することができる。例えば、脂肪組織を加熱すると、脱凝集が容易になり、再生細胞産出物を冷却すると、生存度を維持するのに望ましい。また、組織処理を最適にするために予め温めた試薬が必要である場合は、温度装置の役割は、温度を上昇又は下降させることではなく、所定の温度を維持することであろう。
【0042】
密閉した無菌の流体/組織通路を維持するために、全てのポート及び弁は、システムの密封構成を維持する密閉装置を含むことができる。密閉装置は、流体、空気、及び他の夾雑物に不透過性である膜とすることができ、又は当業技術で公知の他のいずれかの適切な密閉装置とすることもできる。更に、システムの全てのポートは、システムの無菌性を損なうことなく注射器、針、又はチャンバに材料を引き出すための他の装置を収容することができるように設計することができる。
【0043】
本明細書で説明するように、組織は、いずれかの当業技術で公知の方法で患者から抽出することができる。吸込んだ組織は、システムに入れて処理する前に抽出することができる。吸込んだ組織は、一般的に、ゴム隔膜密閉注射針アクセスポート(収集チャンバ上に図示せず)のような密封入口ポートを介し、導管12を通して収集チャンバ20に移送される。代替的に、組織抽出段階は、システムの一部とすることができる。例えば、収集チャンバ20は、患者に挿入した標準カニューレを用いて組織を除去するのを容易にする真空ライン11を含むことができる。従って、この実施形態では、システム全体が患者に取り付けられる。組織は、密閉無菌通路の一部である12aのような導管を介して、入口ポート21を通って収集チャンバ20に導入することができる。収集チャンバ20は、複数の可撓性又は剛性のキャニスタ又はシリンダ又はその組合せを含むことができる。例えば、収集チャンバ20は、大きさが可変の1つ又はそれよりも多い剛性キャニスタを含むことができる。また、収集チャンバ20は、1つ又はそれよりも多い可撓性バッグを含むことができる。このようなシステムでは、バッグには、好ましくは、内部又は外部フレームのような支持体が設けられ、これによってバッグが吸引されると潰れることになる可能性を低減するのを助ける。収集チャンバ20は、処理チャンバ30で行われる処理の洗浄及び濃縮段階の前に組織を適切に洗浄して脱凝集するのに必要な量を保持する大きさにされる。収集チャンバ20に存在する組織又は流体の容積は、裸眼で容易に確かめられることが好ましい。例えば、脂肪組織から再生細胞を得るために、適切な収集チャンバは、脂肪吸引物800ml及び1200ml生理食塩水を保持する収容能力を有する。従って、一実施形態では、収集チャンバ20の収容能力は少なくとも2リットルである。別の実施形態では、血液から赤血球を分離して濃縮するために、収集チャンバ20の収容能力は少なくとも1.5リットルである。一般的に、収集チャンバ20の大きさは、患者から収集する組織の種類及び量に応じて変化することになる。収集チャンバ20は、約5mlほどの少量から約2リットルまでの組織を保持する大きさにすることができる。少量の組織、例えば5ml〜100mlに対しては、組織は、収集チャンバ20に移送する前に注射器に集めることができる。
【0044】
収集チャンバ20は、滅菌することができるあらゆる適切な生体適合性材料を用いて構成することができる。好ましい実施形態では、収集チャンバ20は、「ISO 10993」基準に説明されるような血管内接触に対する生体適合性要件を満たす使い捨ての材料から成る。例えば、ポリカーボネートアクリル又はABSを用いることができる。収集チャンバ20の流体経路は、発熱物質を含まない、すなわち、疾患伝染の危険を伴うことなく血液の使用に適することが好ましい。一実施形態では、収集チャンバ20は、チャンバに存在する組織の概略容積をユーザが視覚的に判断することができる材料から成る。他の実施形態では、収集チャンバ20内の組織及び/又は流体の容積は、自動センサ29で判断される。収集チャンバ20は、自動化実施形態では、システムが妥当な程度の精度でチャンバ内の組織及び/又は流体の容積を判断することができるように設計されることが好ましい。好ましい実施形態では、システムは、±15パーセントの精度で収集チャンバ内の容積を検知する。
【0045】
単に例示的に挙げた特定的な実施形態では、収集チャンバ20は、剛性チャンバ、例えば、メッシュの大きさが265μm(図5参照)の医療用等級のポリエステルのほぼ円錐形の前置フィルタ28を含む医療用等級のポリカーボネートで構成されたチャンバの形態である。剛性組織収集容器の大きさは、高さほぼ8インチ、直径ほぼ5インチとすることができ、壁厚は、約0.125インチとすることができる。シリンダの内部には、例えば、吸引チューブのための1つ又はそれよりも多いポート、無菌ドッキング技術で連結するためのチューブを備えた1つ又はそれよりも多いポート、及び/又はゴム隔膜を通して針穿孔アクセスするための1つ又はそれよりも多いポートを通してアクセス可能である。収集チャンバ20の内部の前置フィルタ28は、脂肪組織を保持して非脂肪組織を通すように、例えば、組織が患者から除去されるように構成されることが好ましい。より詳細には、フィルタ28は、脂肪組織を最初に収集する間、又は別の実施形態ではその後に、遊離脂質、血液、及び生理食塩水を通すことができ、脂肪組織の断片を保持することができる。この点に関して、フィルタ28は、同じか又は異なる大きさのいずれかであるが約20μm〜5mmの範囲の大きさの複数の孔を含む。好ましい実施形態では、フィルタ28は、複数の400μmの孔を含む。好ましい実施形態では、フィルタ28は、約200μm厚さで孔径が約265μm、開放面積が約47%の医療用等級のポリエステルメッシュである。この材料は、組織脱凝集後に、すすぎの間は組織を保持するが細胞はメッシュを通過させるものである。従って、患者から組織を吸込む時に、非脂肪組織を脂肪組織から分離することができる。異なる材料、メッシュの大きさ、及びポートの数及び種類を用いて、同じ機能を達成することができる。例えば、100μmよりも小さいか又は数千ミクロンほどの大きなメッシュ孔径でも、脂肪組織凝集物及び断片を保持しながら生理食塩水及び血球を通過させるという同じ目的を達成するであろう。同様に、同じ目的は、別の剛性プラスチック材料を用いることによっても又は当業者に公知であると考えられる多くの他の変更によっても達成することができるであろう。
【0046】
システム10はまた、1つ又はそれよりも多い溶液供給装置22も含むことができる。溶液供給装置には、洗浄溶液供給装置23、及びコラゲナーゼのような組織脱凝集剤供給装置24を含むことができる。収集チャンバ20には、洗浄及び脱凝集溶液又は薬剤を無菌的に組織に加えることができる密閉流体通路が含まれる。
洗浄溶液23及び脱凝集剤24のための容器は、内容物を無菌的に保持することができるあらゆる適切な容器、例えば、臨床の場で用いられるIVバッグのような折畳み可能バッグとすることができる。これらの容器は、洗浄溶液及び脱凝集剤を収集チャンバ20の内部に送出することができるように収集チャンバ20に連結された導管12eのような導管12を有することができる。洗浄溶液及び脱凝集剤は、生理食塩水23及び/又は脱凝集剤24のための容器の外側に印加される単純重力圧力によるか、又は導管、例えば、図4の導管12dに容量式ポンプを付けることを含むいずれかの当業技術で公知の方法で収集チャンバ20の内部に送出することができる。自動化実施形態では、システムの処理装置は、最初にユーザにより入力された情報(例えば、処理される組織の容積)に基づいて、様々なパラメータ、例えば、生理食塩水の容積及び洗浄に必要な時間又は反復回数、及び、脱凝集に必要な脱凝集剤の濃度及び量及び時間を計算する。代替的に、量及び時間等は、ユーザが手動で操作することができる。
【0047】
収集チャンバ内の組織及び/又は流体は、30℃〜40℃の範囲の温度に維持すべきである。好ましい実施形態では、収集チャンバ内の懸濁液の温度は37℃に維持される。いくつかの実施形態では、外科的手術又は治療の適用を遅らせることが必要な場合は、選択した組織は、後で用いるために収集チャンバに保存することができる。組織は、室温又は約室温又は約4℃に96時間まで保存することができる。
【0048】
洗浄溶液は、生理食塩水又はいずれかの他の緩衝又は非緩衝電解質溶液を含む当業者に公知のいずれかの溶液とすることができる。処理される組織の種類により、用いる洗浄溶液の種類又は組合せが決まることになる。一般的に、生理食塩水のような洗浄溶液は、脂肪組織が患者から除去されて収集チャンバに入れられた後に収集チャンバ20に入る。しかし、洗浄溶液は、脂肪組織が抽出される前に収集チャンバ20に送出することができ、又は脂肪組織と同時に収集チャンバ20に送出することもできる。収集チャンバ20では、洗浄溶液及び抽出脂肪組織は、以下に説明する方法を含むいずれかの手段で混合させることができる。
【0049】
例えば、組織は、撹拌することにより洗浄することができる(細胞生存度を最大にし、放出された遊離脂質の量を最小にする)。一実施形態では、組織は、可変度の弧を通して(例えば、約45度〜約90度の弧を通して)可変速度、例えば、約30回転/分で収集チャンバ20全体を回転させることにより撹拌される。他の実施形態では、組織は、収集チャンバの内面に固く取り付けられた1つ又はそれよりも多いパドル又は突起が含まれた収集チャンバ20全体を可変度の弧を通して(例えば、約45度〜約90度の弧を通して)可変速度、例えば、約30回転/分で回転することにより撹拌される。上述の収集チャンバ20の回転は、収集チャンバ20に取り付けられるか又はその近くの駆動機構により達成することができる。駆動機構は、単純ベルト又はギア又は当業技術で公知の他の駆動機構とすることができる。回転の速度は、例えば、30回転/分とすることができる。一般的に、高速は、大量の遊離脂質を生成することが分かっているが、最適でない場合がある。
【0050】
他の実施形態では、組織は、回転可能シャフト25を収集チャンバ20の内部に入れることにより撹拌され、この回転可能シャフトは、回転可能シャフト25に固く取り付けられた1つ又はそれよりも多いパドル25a又は突起から成り、これがシャフトが回転する時に混合物を通過する。いくつかの実施形態では、固く取り付けられた25aパドルを備えた回転可能シャフト25は、収集チャンバ20の下部に置くことができる。これは、例えば、パドル状装置を回転磁場に入れることにより(例えば、磁気撹拌子)達成することができる。代替的に、組織の撹拌は、当業技術で公知の単純撹拌装置、すなわち、回転せずに上下に振る装置を用いて達成することができる。この組織はまた、振動、撹拌、反転、その他を含むいずれかの他の当業技術で公知の手段を用いて洗浄することができる。
【0051】
望ましい量の洗浄サイクルの後に、組織脱凝集剤を収集チャンバ20に送出し、残りの脂肪組織成分から再生細胞を分離することができる。脱凝集剤は、当業者に公知のいずれかの脱凝集剤とすることができる。用いることができる脱凝集剤には、中性プロテアーゼ、コラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、「Blendzyme」酵素混合物群のメンバー、例えば、「Liberase H1」、ペプシン、超音波又は他の物理的エネルギ、レーザ、マイクロ波、他の機械的装置及び/又はその組合せが含まれる。本発明の好ましい脱凝集剤は、コラゲナーゼである。脱凝集剤は、他の溶液と共に加えることができる。例えば、コラゲナーゼを加えるのと一緒又はその直前に、生理食塩水供給装置23から送出される生理食塩水のような生理食塩水を脂肪組織に加えることができる。一実施形態では、洗浄脂肪組織は、37℃又はその付近で約20〜60分にわたってコラゲナーゼ含有酵素と混合される。他の実施形態では、高濃度のコラゲナーゼ又は同様の薬剤を加えて消化時間を低減することができる。次に、上述の撹拌方法と同様の方法で、洗浄脂肪組織が脱凝集されるまで洗浄脂肪組織及び組織脱凝集剤を撹拌することができる。例えば、洗浄脂肪組織及び組織脱凝集剤は、収集チャンバ全体をほぼ90度の弧を通して回転することにより、シャフトが回転する時に溶液を通過する1つ又はそれよりも多いパドルを含むシャフトを備えることにより、及び/又は収集チャンバの内面にパドル又は突起を含む収集チャンバ全体を回転させることにより撹拌することができる。
【0052】
脂肪由来細胞を用いる目的によっては、脂肪組織は、部分的に脱凝集するか又は完全に脱凝集するかのいずれかとすることができる。例えば、脂肪からの細胞が脂肪組織の単位と組合される実施形態では、収集した脂肪組織を部分的に脱凝集し、部分的脱凝集脂肪組織の一部分を除去した後に、収集チャンバに残っている脂肪組織の残留部分の脱凝集を継続することが好ましい場合がある。代替的に、消化する前に、洗浄脂肪組織の一部分を除去して試料容器に取っておくことができる。別の実施形態では、収集した脂肪組織は、患者に再導入して戻す前に部分的に脱凝集して細胞を濃縮する。一実施形態では、脂肪組織は、ある一定の期間、一般的に約20分未満にわたって組織脱凝集剤と混合される。次に、部分的脱凝集組織の一部分を収集チャンバから除去することができ、残りの部分的脱凝集組織は、組織脱凝集剤と更に40分間混合することにより更に脱凝集することができる。脂肪由来細胞を再生細胞の本質的に純粋な集団として用いる場合には、脂肪組織は、完全に脱凝集することができる。
【0053】
消化後、組織及び脱凝集剤溶液は、収集チャンバ内で溶液の浮遊物及び非浮遊物成分が区別されるのに十分なある一定の期間にわたって沈殿させることができる。一般的に、この時間は約15秒〜数分の範囲であるが、変更実施形態では他の時間を実施することができる。浮遊物層は、更に洗浄して濃縮することが必要な再生細胞から成る。非浮遊物層には、血液、コラーゲン、脂質、及び組織の他の非再生細胞成分が含まれる。非浮遊物層は、除去して廃棄物チャンバに入れる必要がある。
【0054】
従って、収集チャンバ20は、血液及び組織の他の非浮遊物成分が1つ又はそれよりも多い導管12を通じて1つ又はそれよりも多い廃棄物容器40に排出されるように、チャンバの最下点に出口ポート22を含むことが好ましい。収集チャンバ20は、出口ポート22が収集チャンバの下部に位置決めされるようにほぼ直立位置にある(又は、そのように配置することができる)。排出は、受動的又は能動的とすることができる。例えば、上述の非浮遊物成分は、重力を用いることにより、正又は負の圧力を掛けることにより、ポンプ34を用いることにより、又は液口32を用いることにより排出することができる。自動化実施形態では、処理装置は、ある一定の弁及び/又はポンプに信号を送って収集チャンバ20から非浮遊物層を輩出させることができる。自動化実施形態はまた、浮遊物と非浮遊物液体の間の界面に到達する時を検出することができるセンサ29を含むことができる。自動化実施形態はまた、センサ29、例えば、光学センサを含むことができ、これは、収集チャンバから出る導管を流れる流出物の光屈折の変化を検出することができる。光屈折の適切な変化は、出導管に浮遊物層が存在するという信号を送ることができ、これは、非浮遊物層が排出されたことを示すものである。次に、センサ29は、次の段階に進むように処理装置に信号を送ることができる。
【0055】
しかし、いくつかの実施形態では、組織を処理して組織の非再生細胞成分を回収することができる。例えば、ある一定の治療的又は研究的用途では、コラーゲン、タンパク質、基質又は間質成分、脂質、脂肪細胞、又は組織の他の成分が望ましいこともある。このような実施形態では、上述のように廃棄物チャンバに除去する必要があるのは、再生細胞を含む浮遊物層である。次に、非浮遊物層がシステムに保持され、必要に応じて更に処理される。
【0056】
非浮遊物層が除去された状態で、再生細胞を含む浮遊物層は、1回又はそれよりも多い回数洗浄して残留夾雑物を除去することができる。従って、収集チャンバ20には、一般的に、洗浄溶液をチャンバの内部に送出させるための1つ又はそれよりも多いポート21、及び廃棄物及び他の材料を収集チャンバ20から導出させるための1つ又はそれよりも多いポート22が含まれる。例えば、収集チャンバには、本明細書に説明したような1つ又はそれよりも多い密封入口ポートを含むことができる。また、収集チャンバ20は、洗浄溶液が収集チャンバに送出される間及び/又は廃棄物が移送されて排出される間にシステムが確実に無菌のままであるように、上部キャップ及び下部キャップのような1つ又はそれよりも多いキャップ(図示せず)を含むことができる。ポート21は、収集チャンバのキャップ上又は収集チャンバの側壁上に設けることができる。
【0057】
新しい洗浄溶液で洗浄する処理は、溶液中の非浮遊物夾雑物の残留内容物が所定のレベルになるまで繰り返すことができる。言い換えると、収集チャンバ20に残った材料は、上述の混合物の浮遊材料を含み、これには脂肪組織断片が含まれるが、これを不要な材料の量が望ましい所定のレベルに減少するまで1回又はそれよりも多い回数更に洗浄することができる。洗浄の終了点を判断する1つの方法は、組織溶液中の赤血球の量を測定することである。これは、540nm波長で吸収された光を測定することにより達成することができる。好ましい実施形態では、約0.546と約0.842の間の範囲が満足できるものと見なされる。
【0058】
洗浄及び/又は脱凝集中に、結果を向上させるために、必要に応じて様々な容器に1つ又はそれよりも多い添加剤を加えることができる。添加剤の一部の例には、洗浄及び脱凝集を最適にする薬剤、処理中に活性細胞集団の生存度を向上させる添加剤、抗菌薬剤(例えば、抗生物質)、脂肪細胞及び/又は赤血球を溶解する添加剤、又は関連の細胞集団を富化する添加剤(固相成分に示差付着させることによるか又は他の方法で細胞集団を実質的に減少又は富化することによる)が含まれる。他の可能性のある添加剤には、再生細胞(例えば、カスパーゼ阻害剤)の回収率及び生存度を促進するもの又は注入又は据付に関する有害反応の可能性を低減するもの(例えば、細胞又は結合組織の再凝集阻害剤)が含まれる。
【0059】
十分な設定時間が過ぎた後には、得られる洗浄脂肪組織断片及び組織脱凝集剤の非浮遊物分画は、再生細胞、例えば、幹細胞及び他の脂肪由来始原細胞を含むことになる。本明細書に説明するように、再生細胞を含む非浮遊物分画は、脂肪由来幹細胞のような関連の再生細胞が混合物の非浮遊物分画に存在する他の細胞及び材料から分離されることになる処理チャンバ30に移送されることになる。この非浮遊物分画は、本明細書では、再生細胞組成物と呼び、幹細胞、始原細胞、内皮前駆細胞、脂肪細胞、及び本明細書に説明する他の再生細胞を含む複数の異なる種類の細胞を含む。再生細胞組成物はまた、脂肪組織断片、又は組織脱凝集からの残留コラゲナーゼに存在するコラーゲン及び他の結合組織タンパク質及び断片自身のような1つ又はそれよりも多い夾雑物を含むこともある。
【0060】
本発明の処理チャンバ30は、再生細胞組成物がチューブ12、弁14、及びポンプ34によって無菌状態で収集チャンバ20から処理チャンバ30まで移動するようにシステム内に位置決めされることが好ましい。処理チャンバは、10mL〜1.2Lの範囲の組織/流体混合物を収容する大きさにされる。好ましい実施形態では、処理チャンバは、800mLを収容する大きさにされる。いくつかの実施形態では、収集チャンバ20からの再生細胞組成物全体が処理チャンバ30に導かれる。しかし、他の実施形態では、再生細胞組成物の一部分が処理チャンバ30に導かれ、別の部分がシステムの異なる領域、例えば、サンプルチャンバ60に導かれ、後に処理チャンバ30で処理される細胞と再び組み合わされる。
【0061】
処理チャンバ30は、滅菌することができるあらゆる適切な生体適合性材料を用いて構成することができる。好ましい実施形態では、処理チャンバ30は、「ISO 10993」基準に記載の血管内接触に対する生体適合性要件を満たす使い捨て材料から成る。例えば、ポリカーボネートアクリル、ABS、エチレンビニルアセテート、又はスチレン−ブタジエンコポリマー(SBC)を用いることができる。別の実施形態では、使い捨て処理チャンバの流体経路には発熱物質がない。処理チャンバは、従来、血液バンクで血液を処理するのに用いられているもののようなプラスチック袋の形態とすることができ、又は他の実施形態では構造的に剛性とすることができる(図6)。一実施形態では、処理チャンバ30は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている、2001年12月7日出願の本出願人が所有する米国特許出願第10/316,127号、及び2002年12月20日出願の米国特許出願第10/325,728号に開示された処理チャンバと同様とすることができる。
【0062】
処理チャンバ30は、濾過及び遠心分離及び/又はその組合せを含む細胞を分離して濃縮するのに適切ないずれかの方法で構成することができる。いくつかの実施形態では、収集チャンバ20からの再生細胞組成物は、処理チャンバ30に導入され、そこで組成物が濾過され、特定の再生細胞集団を分離及び/又は濃縮することができる。細胞濾過は、他の異なる成分又は種類の細胞から特定の成分及び細胞を分離する方法である。例えば、本発明の再生細胞組成物には、幹細胞、始原細胞、及び脂肪細胞、並びに脂肪組織断片に存在するコラーゲン又は組織脱凝集処理から得られる残留コラゲナーゼのような1つ又はそれよりも多い夾雑物を含む複数の異なる種類の細胞が含まれる。処理チャンバ30に存在するフィルタ36は、再生細胞、例えば、幹細胞又は内皮始原細胞等の特定の小集団を分離して濃縮することができる。
【0063】
液体から細胞を濾過することに関連する一部の変数には、以下に限定されるものではないが、ろ材の孔径、孔の幾何学(形状)、フィルタの表面積、濾過される溶液の流れ方向、膜貫通型圧力、特定の細胞集団の希釈、粒子の大きさ及び形状、並びに細胞の大きさ及び細胞生存度が含まれる。本明細書の開示によれば、分離又は濾過されることが望ましい特定の細胞は、一般的に脂肪由来幹細胞である。しかし、いくつかの実施形態では、特定の細胞には、内皮前駆細胞単独か又は幹細胞と組み合わせたもののような脂肪由来始原細胞を含むことができる。
【0064】
再生細胞組成物は、フィルタアセンブリ36のようなフィルタアセンブリを通して誘導することができる。いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリ36は、異なる機能を実行し、再生細胞組成物を区別可能な部分又は成分に分離する複数のフィルタを含む。例えば、フィルタの1つを再生細胞組成物からコラーゲンを分離するように構成することができ、フィルタの1つを再生細胞組成物から脂肪細胞及び/又は脂質成分を分離するように構成することができ、フィルタの1つを再生細胞組成物から組織脱凝集剤のような残留酵素を分離するように構成することができる。いくつかの実施形態では、フィルタの1つは、コラーゲン及び組織脱凝集剤を組成物から分離することのような2つの機能を行うことができる。一般的に複数のフィルタが直列に配列されるが、フィルタの少なくとも1部分は、同じく並列に配列することもできる。フィルタアセンブリ36のフィルタの直列配列を図2に示している。フィルタアセンブリ36のフィルタの並列配列を図3に示している。
【0065】
一実施形態では、フィルタアセンブリ36は、第1のフィルタ、第2のフィルタ、及び第3のフィルタを含む。第1のフィルタは、再生細胞組成物に存在するコラーゲン粒子を除去するように構成される。これらのコラーゲン粒子は、一般的に直径がほぼ0.1ミクロンであり、20ミクロンまでの長さとすることができる。コラーゲン粒子は、消化によって様々な大きさとすることができる。コラーゲン粒子はまた、原線維とすることができ、これは、捩れ及び回転を有することを意味する。本明細書に説明するいずれのフィルタもポリエーテルスルホン、ポリエステル、PTFE、ポリプロピレン、PVDF、又は場合によってはセルロースで作ることができる。コラーゲンの濾過に対する2つの可能性が存在する。まず大きな粒子を除去しようとして細胞を通過させる場合には、例えば、恐らく10ミクロン範囲のフィルタを必要とするであろう。第2の方法は、4.5ミクロンのような小さな大きさのフィルタを用いることであり、細胞を捕捉するようにコラーゲンがよく消化され、コラーゲンを通過させることを意図している。これには、フィルタから細胞を戻して浮かせる手段を必要とするであろう。また、コラーゲン繊維を引きつけて保持すると考えられるフィルタを実施する可能性も存在する。
【0066】
第2のフィルタは、再生細胞組成物中の浮遊物でない遊離未成熟脂肪細胞を除去するように構成される。一実施形態では、第2のフィルタは、ポリエステルで構成することができ、孔径が約30と約50ミクロンの間であり、好ましい孔径は約40ミクロンである。第2のフィルタとして参照するが、このような装置の配置は、第2の位置ではなく第1の位置にして大きな細胞及び粒子を最初に除去するのを容易にすることができる。第3のフィルタは、組成物に存在する未使用又は残留コラゲナーゼ又は他の組織脱凝集剤を除去するような構成にされる。好ましい実施では、コラゲナーゼは、時間が経つと変質する場合がある。一実施形態では、第3のフィルタには、直径又は長さが1μm未満の複数の孔が含まれる。いくつかの実施形態では、孔径は、1μmよりも小さくすることができる。他の実施形態では、孔径は、10kDと5ミクロンの間である。いくつかの実施形態では、第3のフィルタは、本明細書に説明するように、再生細胞集団を濃縮して小容積の生理食塩水又は他の洗浄溶液にするように構成することができる。現在好ましい方法では、最終フィルタのみが中空糸ユニットである。いずれのフィルタも必ずしも中空糸型である必要はない。再生細胞に最低限の有害作用しか及ぼさずにコラゲナーゼを除去するのに最も効率的であるように、好ましい実施例では、最終フィルタに中空糸ユニットが用いられる。装置が市販品の収集物である実施形態では、第3のフィルタは、別々の収容装置に入れられる。第3のフィルタに中空糸ユニットを用いる場合には、第1及び第2のフィルタを組み合わせて1つの収容装置に入れることは実行可能である。最終フィルタが中空糸構成でない場合には、3つのフィルタ全てを1つの収容装置に含むことができる。
【0067】
フィルタアセンブリ36のフィルタは、処理チャンバ30内に配置することができ、又は処理チャンバ30から分離した構成要素として設けることもできる。更に、フィルタアセンブリ36のフィルタは、複数の処理チャンバ内又はインライン様式に設けることができる。いくつかの実施形態では、導管又はチューブは、処理チャンバ又は各処理チャンバとして働くことができる。処理チャンバの大きさは、フィルタに連結される導管の内部容積になるように低減することができる。この種類のシステムは、組織溶液の容積を適切な大きさにすれば正確に機能することになる。従って、導管は、フィルタに流れる時に細胞を含む流体を含むことにより処理チャンバとして働くことができる。細胞/組織がシステムを準備して作動させる処理で不必要に失われないように、導管の容積を最小にするように配慮することができる。
【0068】
上述の実施形態を参照すると、洗浄細胞及び残留コラーゲン、脂肪細胞、及び/又は未消化組織脱凝集剤を含む再生細胞組成物は、濾過した溶液に存在するコラーゲン粒子が少なくなるように、及び好ましくは皆無になるように、第1のフィルタを通して組成物からコラーゲン粒子の少なくとも一部分、好ましくは実質的にその全てを除去するように誘導することができる。次に、脂肪細胞及び/又は未消化組織脱凝集剤を含む濾過した再生細胞組成物は、第2のフィルタを通して、濾過再生細胞組成物から遊離脂肪細胞の少なくとも一部分、好ましくは実質的にその全てを除去するように誘導することができる。その後、未消化組織脱凝集剤を含む2回濾過した再生細胞組成物を本明細書で説明した中空糸型濾過装置のような第3のフィルタを通し、再生細胞組成物から未消化組織脱凝集剤を除去又は低減するように誘導することができる。
【0069】
3回濾過した再生細胞組成物(すなわち、第1、第2、及び第3のフィルタを通過した後に残る組成物)は、次に、複数の出口を含む処理チャンバ30の一部分を含むことができる複数の出口に誘導することができる。これらの出口は、必要な圧力を維持するように働き、並びに収集チャンバ20、産出チャンバ50、及び/又は廃棄物容器40を含むことができる他の容器に導管を通じて接続するように働くことができる。
【0070】
一実施形態では、フィルタアセンブリ36のフィルタは、中空糸濾過部材を含む。又は、言い換えると、フィルタは、ろ材で形成された中空チューブの集合を含む。開示するシステム10に用いることができるろ材の例には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、又は混合エステル材料等が含まれる。これらのろ材の中空糸又は中空チューブは、フィルタアセンブリ36の円筒形カートリッジに含むことができる。ろ材の個々のチューブ又は繊維の内径は、一般的に、約0.1mm〜約1mmの範囲であり、好ましい値は約0.5mmである。適切な円筒形カートリッジの直径及び長さにより、カートリッジの内部に配置することができるろ材の個々のチューブの数が判断されることになる。適切な中空糸フィルタカートリッジの例の1つは、「FiberFlo(登録商標)接線流れフィルタ」、カタログ番号「M−C−050−K」(Minntech、米国ミネソタ州ミネアポリス)である。ろ材の孔径は、約10キロダルトンと約5ミクロンの間の範囲とすることができ、好ましい孔径は、約0.5ミクロンである。
【0071】
中空糸フィルタでは、各中空チューブは、第1の端部と、第2の端部と、本体内に配置されて第1の端部と第2の端部の間に延びる管腔とを備えた本体を有する。各中空チューブの本体には複数の孔が含まれる。孔は、一般的に、図12(A)に示すように、再生細胞組成物が本体の管腔を通って流れることによって濾過され、濾過された生成物が接線方向に孔を通過するような本体の向きにされる。言い換えると、液体中の小さな粒子が本体の管腔を通る流体の流れに対して接線方向に孔を通過する。再生細胞を含む組成物は、組成物が濾過される時に各中空チューブの管腔を通過する。好ましくは、組成物の流れは、各中空チューブの本体の孔の接線方向である。
【0072】
流体の接線方向の流れを用いることにより、幹細胞の濾過の効率は、他の濾過技術に対して向上させることができる。例えば、一部の濾過技術によれば、ろ材の孔は、図12(B)に示すように、フィルタが流体の流れに垂直な向きに置かれ、ろ材が濾過される流体の経路を遮断するように配置される。この種類の濾過では、再生細胞組成物から濾過される粒子、例えば、幹細胞は、フィルタの片側に蓄積し、孔を通る流体の流れを遮断する。このように遮断されることにより、フィルタの効率が減少する場合がある。更に、細胞は、流体の流れの圧力、及び、フィルタの蒸留側に蓄積する細胞の重さにより継続的に圧迫される。これによって、幹細胞の溶解が増大する場合がある。従って、流体の流れがフィルタの孔の方向に平行であるこのような濾過技術では、流体が孔を通過する時に大きな細胞及び小さな粒子の両方がろ材に対して向けられる可能性があるので望ましくない。この結果、細胞のような液体中の大きな生成物が孔を遮断し、これによって濾過作用が減少し、細胞破裂又は傷害が起こりやすくなる場合がある。
【0073】
これと対照的に、本システム10の中空糸構成では、濾過されている流体は、中空チューブの管腔の内部を流れる。フィルタ本体の孔を通過する能力を有する流体の部分は、本体の内部への流体の正圧、並びに本体の外側に掛かる負圧に助けられてそのような能力を得ている。この実施形態では、細胞は、一般的に流体の流れの圧力も他の細胞の重量も受けず、従って、幹細胞へのせん断力が減少する。従って、目詰まり率を低減し、再生細胞の溶解を低減することにより、濾過の効率と有効性を向上させることができる。濾過中の生理食塩水及び不要なタンパク質分子の大きさにより、これらの分子及び他の小さな成分は、中空チューブの本体の孔を通過して中空チューブの外側に至り、廃棄物容器40に導かれる。一実施形態では、濾過は、中空チューブろ材の外側に真空を発生させることにより改善される。再生細胞、例えば、幹細胞又は始原細胞の大きさのために、これらの細胞は、一般的に本体の孔を通過することができず、従って、中空チューブフィルタの内部(例えば、チューブの管腔)に留まり、フィルタと処理チャンバの間の導管を通じて処理チャンバ30まで又は産出チャンバ50に再度導かれる。
【0074】
1つの特定的な実施形態では、中空糸フィルタは、約0.05ミクロンの孔径であり、ほぼ550cm2の表面積のろ材を含む。個々のろ材チューブの直径は、一般的に約0.5mmである。130mlの再生細胞組成物を処理する際には、ほぼ120mlの付加的な生理食塩水を組成物に加えることができる。処理又は濾過時間は、ほぼ8分とすることができる。中空糸チューブ本体のいずれかの側に掛かる圧力(例えば、本体管腔内部及び本体外部の圧力)の差は、膜間圧力と考えられる。膜間圧力は、約1mmHg〜約500mmHgの範囲とすることができ、好ましい圧力は、約200mmHgである。中空糸濾過を用いる平均有核細胞回収率及び生存度は、生存細胞のほぼ80%とすることができる。
【0075】
このようなシステムで典型的に除去されるコラゲナーゼの量は、3対数的減少に等しい。例えば、収集チャンバから処理チャンバに移送される再生細胞組成物のコラゲナーゼの初期濃度が0.078U/mlの場合、最終的再生細胞組成物のコラゲナーゼ濃度は、0.00078U/mlになるであろう。コラゲナーゼは、中空糸フィルタから除去され、中空糸フィルタは、上述の第3のフィルタに対応している。
【0076】
上述の1つ又はそれよりも多い細胞濾過法を示す処理チャンバを図、特に図1〜図3に示している。図1〜図3を参照すると、処理チャンバ30とフィルタアセンブリ36の濾過チャンバとの間には、ポンプ34のようなポンプを設けることができる。更に、処理チャンバ30及びフィルタアセンブリ36と整列して液口32及び圧力センサ39のような液口及び圧力センサを設けることができる。また、産出チャンバ50のための取付け部品を設けることができる。これらの任意的な構成要素(例えば、ポンプ34、液口32、圧力センサ39、及び産出チャンバ50のための取付け部品)は、処理チャンバ30に収容された液体がフィルタアセンブリ36を通って流れる前にこれらの任意的な構成要素の1つ又はそれよりも多くに流れることができるように、処理チャンバ30とフィルタアセンブリ36の間に設けることができる。例えば、液体は、フィルタアセンブリ36に至る前にポンプ34を通って流れることができる。又は、液体は、フィルタアセンブリを通過する前に圧力センサ39を通って流れ、システムの前フィルタ液体圧力を得るようにすることができる。ある一定の状況では、これらの構成要素の1つ又はそれよりも多くは、図6に示す液口32のような処理チャンバ30の要素として設けることができる。図示の実施形態では、圧力センサ39は、フィルタアセンブリ36の濾過チャンバに入る時にポンプ34により生じる再生細胞組成物の圧力が判断されるように整列している。この構成により、フィルタ膜にわたる膜間圧力をモニタするのを容易にすることができる。付加的な生理食塩水又は他の緩衝液及び洗浄溶液を再生細胞組成物に加えて、組成物がフィルタアセンブリ36を通して濾過される時に不要なタンパク質を除去するのを助けることができる。このような反復洗浄を複数回行い、再生細胞の純度を向上させることができる。いくつかの実施形態では、濾過を強化するのに必要と考えられるどの段階でも生理食塩水を加えることができる。
【0077】
一例として挙げられて制限的なものではない1つの特定的な実施形態では、不要なタンパク質及び生理食塩水又は他の洗浄溶液は、次のように除去される。再生細胞並びにコラーゲン及び結合組織粒子又は断片、脂肪細胞、及びコラゲナーゼを有する組成物は、最小容積が達成されるまで一連のフィルタを通して循環される。最小容積は、システムの全保持容積及び何らかの所定の定数の関数である。保持容積は、全ての処理チャンバが空の場合にチューブ及び導管に収容される液体の容積である。一実施形態では、最小容積は15mlである。最小容積になれば、洗浄溶液の所定の容積がシステムに導入され、再生細胞組成物と混合される。次に、洗浄溶液及び再生細胞組成物のこの混合物は、再び最小容積になるまでフィルタを通して循環される。このような循環を複数回繰返し、再生細胞の純度を向上させることができ、言い換えると、組成物中の再生細胞の組成物中の他の材料に対する比を増大させることができる。図10及び図11を参照されたい。
【0078】
再生細胞組成物の不要なタンパク質が洗浄され、十分に濃縮されたと判断された後に(例示的な実施形態では、約1×105〜約1×107細胞/mlの最小濃度を用いることができ、好ましい実施形態では、最小濃度は、約1×107細胞/mlとすることができる)、産出バッグのような産出チャンバ50は、特定的な実施形態に依存して、処理チャンバ30の出口ポート及び/又はフィルタアセンブリ36に接続することができる。次に、液口32のような液口を開けて、濃縮再生細胞の産出を容易にすることができる。実施例の1つでは、何時最小濃度に達したかの判断は、実験を行って装置の電子制御装置内にプログラムされた後に経験的に為される。この判断は、何を得ることが望ましいのか、すなわち、いくつの幹細胞/始原細胞が望ましいか、又は細胞濃度の範囲に関する処理への入力とすることができる。科学的データに基づいて、所定の量の脂肪組織を得てシステムの中に入れ、望ましい産出物を達成する必要がある。液口32が開放されていれば、ポンプ34のようなポンプは、濃縮再生細胞を産出バッグに移送するように機能することができる。一実施形態では、産出バッグ50は、空の血液バッグと同様であり、一端に取付け部品を備えたチューブを有する。無菌的に産出バッグの取付け部品を出口ポートに取付けることができ、濃縮再生細胞を産出バッグに移送することができる。
【0079】
図1〜図3に示すように、真空ポンプ26をシステム10に設け、とりわけシステム内の圧力を変化させることができる。例えば、真空ポンプ26は、導管12bのような導管を通じて収集チャンバ20に連結し、収集チャンバ20内の圧力を低減することができる。また、真空ポンプ26は、導管12gのような導管により処理チャンバ30に連結することができる。ポンプ34と共に真空ポンプ26を作動することに関して、2つの別々の真空ポンプ又は供給装置を実質することができ、又はこの処理の特定の地点に必要とされる真空吸引を異なる導管に向ける弁を用いることにより単一の真空ポンプ又は供給装置を用いることができる。更に、真空ポンプ26は、導管12fのような導管を通じて廃棄物容器40に連結することができる。
【0080】
図10及び図11を参照すると、真空ポンプ26で生じる圧力を用いて、再生細胞を含む流体の流れが導管12を通るように誘導することができる。この圧力は、例えば、システム10の1つ又はそれよりも多い弁14の位置を自動又は手動で制御することにより複数の方向に供給することができる。システム10は、正圧を用いることによるか、又は負圧を用いることによるか、又はその組合せにより適切に機能するように作ることができる。例えば、再生細胞は、上述の第1のフィルタ及び第2のフィルタを通し、第3のフィルタに連結された柔らかな側面の容器に引き込むことができる。柔らかな側面の容器は、第3のフィルタの前方に一列(直列)に連結することができる。最終産出チャンバは、第3のフィルタの他方の側(例えば、下流側)にある柔らかな側面の容器とすることができる。この実施形態では、圧力を用いて1つの柔らかな側面の容器から第2の柔らかな側面の容器までフィルタを通して再生細胞を移動させる。
【0081】
システム10の別の実施形態では、幹細胞及び/又は脂肪由来始原細胞の濾過は、浸出濾過及び沈殿の組合せを用いて達成することができる。例えば、このようなシステムでは、組織再生細胞組成物(例えば、幹細胞及び/又は脂肪由来始原細胞を含む組成物)を通過し、それからフィルタを通過する生理食塩水を用いる。再生細胞組成物から細胞を浸出濾過することに関連する変数の一部には、以下に限定されるものではないが、ろ材の孔径、孔の幾何学又は形状、フィルタの表面積、濾過される再生細胞組成物の流れ方向、注入生理食塩水の流速、膜間圧力、細胞集団の希釈、細胞の大きさ及び生存度が含まれる。
システム10の一実施形態では、処理チャンバ30には、浸出濾過及び沈殿を用いて再生細胞を分離して濃縮するフィルタアセンブリ36が用いられる。限定ではなく一例として、処理チャンバ30は、図6に示すように側壁30a、上面30b、及び底面30cを有するほぼ円筒形本体であるとして形成される。上面30bには無菌液口32が設けられる。
【0082】
図6の実施形態では、処理チャンバ30は、大きな孔のフィルタ36a及び小さな孔のフィルタ36bのような2つのフィルタを含むフィルタアセンブリ36を含むように示されている。フィルタ36a及び36bの孔径は、一般的に、約0.05ミクロンと約10ミクロンの間の範囲である。大きな孔のフィルタ36aには、直径約5μmの孔を含むことができ、小さな孔のフィルタ36bには、直径約1〜3μmの孔を含むことができる。一実施形態では、フィルタの表面積は約785mm2である。第1のチャンバ37a、第2のチャンバ37b、及び第3のチャンバ37cが含まれるように、フィルタ36a及び36bにより処理チャンバ30の内部が分割される。図6に示すように、第1のチャンバ37aは、第2のチャンバ37bと第3のチャンバ37cの間に配置される。更に、第1のチャンバ37aは、入口ポート31a及び出口ポート31bを有する処理チャンバ30の領域として示されている。図示の処理チャンバ30には、ポート31a、31b、及び31cのような処理チャンバ30の外部から処理チャンバ30の内部までの連通経路を設ける複数のポートが含まれる。ポート31a、31b、及び31cは、処理チャンバ30の本体の側壁30aに配置されるように示されている。しかし、ポート31a、31b、及び31cは、他の領域に位置決めすることもできる。ポート31は、再生細胞を含む組成物を処理チャンバ30の内部に通すことができるように導管に連結した構成にされた試料入口ポートとして示されている。ポート31bは、分離されて濃縮された細胞を処理チャンバ30の内部から除去することができるように導管に連結した構成にされた出口ポートとして示されている。ポート31cは、生理食塩水のような新しい洗浄溶液を処理チャンバ30の内部に送出するように導管に連結した構成にされた入口ポートとして示されている。
【0083】
使用時には、再生細胞は、入口ポート31aを通じて中央チャンバ37aに導入することができる。生理食塩水又は他の緩衝液は、入口ポート31cを通して下部チャンバ37bに導入される。生理食塩水は、チャンバ37aの再生細胞組成物を通して約10ミリリットル/分の速度で誘導することができる。生理食塩水の流量は、それが重力の力に対抗するようになっている。生理食塩水の流れにより、チャンバ内の細胞には細胞の密度に基づいて分離する能力が与えられる。一般的に、生理食塩水が組成物を通して押し上げられると、組成物の大きな細胞が中央チャンバ37aの下部に沈殿することになり、小さな細胞及びタンパク質は、第2のフィルタ36bを通して上部チャンバ37c内に運ばれることになる。この濾過は、大きな細胞が所定位置に転がり込み、これによって小さな粒子が自由になって生理食塩水と共に運び出されるように生理食塩水の流速を調節することにより達成される。チャンバ30には、処理ユニットの3つのチャンバ内に正確な圧力勾配が確実に維持されるように無菌液口32が含まれる。上側チャンバ37cには吸収媒体33を含むことができる。吸収媒体の目的は、溶液中の不要なタンパク質を捕捉し、例えば生理食塩水の流れが減少しても、ろ材を超えて処理溶液中に戻らないことを確実にすることである。吸収媒体は、濾過で除去される材料又は成分を吸収又は引き付けるフィルタ材料の種類とすることができる。上部フィルタの上に流出ポートを加え、廃棄物を排出させるのを助けることができる。これの別の実施形態では、上部から穏やかな真空を加えて、廃棄物を引き出すのを助けることができる。図示の実施形態のように流速が比較的遅い場合には、吸収媒体を用いることができる。次に、過剰な生理食塩水及びタンパク質が廃棄物容器に運び出される。
【0084】
大きな細胞(例えば、脂肪由来幹細胞及び/又は始原細胞)が小さな細胞及びタンパク質から十分に分離されると、分離した細胞を含む組成物は、本明細書で説明するように濃縮することができる。組成物は、出口ポート31bを通してチャンバ37aから除去された後か、又はチャンバ37aにある間に更に濃縮することができる。一実施形態では、組成物中の細胞の濃度は、次のように増大する。細胞が十分に分離された後に、フィルタ36a及び36bのようなフィルタを互いに向けて移動させることができる。このような移動は、2つのフィルタ間の容積(例えば、チャンバ37aの容積)を低減するように作用する。また、処理チャンバ30に連結して振動部材を設け、組成物中の細胞が容易に集中するようにすることができる。一実施形態では、振動部材をフィルタ36b(例えば、小さな孔のフィルタ)に連結することができる。振動により、細胞がフィルタに捕捉される割合を低減することができる。組成物の容積が減少すると、過剰な生理食塩水が廃棄物として除去され、細胞が小容積に濃縮される。
【0085】
別の実施形態では、再生細胞の濃縮は次のように達成される。細胞が十分に分離されると、再生細胞組成物を別のチャンバ(図示せず)に移送することができ、そこで重力を用いて過剰な生理食塩水を濾過して除去する。好ましい実施形態では、沈殿は、浸出と同時に行うことができる。この沈殿は、孔径が約10kD〜約2ミクロンの範囲のフィルタの上部に組成物を導入することにより達成することができる。一実施形態では、適切なフィルタの孔径は約1ミクロンである。組成物中の細胞がフィルタを通って流れるのを防ぎながら、重力により、生理食塩水及び小さな粒子がフィルタを通過することができることになる。細胞の望ましい濃度が得られ、フィルタの下部から小さな粒子が濾過された後に、再生細胞組成物を撹拌してフィルタから細胞除去することができ、その後、濃縮再生細胞を産出バッグに移送することができる。小さな粒子は、廃棄物として出口を通して排出することができる。
【0086】
特定的な実施形態では、収集チャンバ20からの再生細胞組成物は、処理チャンバ30に運ばれ、そこで組成物は遠心分離され、再生細胞を分離して濃縮することができる。遠心分離の原理は、当業技術で公知であり、簡潔にするために本明細書では繰り返さないことにする。本明細書では、標準の当業技術で公知の遠心分離装置、構成要素、及びパラメータを用いる。遠心分離装置の一部として用いる例示的な処理チャンバを図7及び図8に示している。一般的に、遠心分離装置により、遠心分離チャンバ(図7に示すようなもの)が軸を中心として回転し、それによって溶液中の細胞に掛かる力が重力よりも増大する。溶液中の密度がより高いか又はより重い材料は、一般的に、遠心分離チャンバ、すなわち、図7の産出チャンバ50の一端に沈殿して再生細胞ペレットを形成する。次に、ペレットを再び懸濁し、望ましい細胞濃度及び/又は望ましい細胞及び媒体容積の溶液を得ることができる。図7に示す処理チャンバは、遠心力及び重力の両方を用い、細胞を分離して濃縮するように構成されている。詳細には、遠心分離中は、遠心力により再生細胞組成物の密度が高い成分、例えば、再生細胞が遠心分離チャンバの最も外側の端部に誘導される。遠心分離チャンバが遅くなり、最終的に停止すると、重力は、再生細胞が遠心分離チャンバの最も外側の端部に留まって細胞ペレットを形成するのを助ける。従って、細胞ペレットを分配することなく、再生細胞組成物の不要な成分、すなわち、廃棄物を除去することができる。
【0087】
本発明の更に別の実施形態では、処理チャンバには、回転膜フィルタの形態の細胞濃縮機を含むことができる。遠心分離処理の別の実施形態では、遠心溶出法を用いることもできる。この実施形態では、細胞は、個々の細胞沈殿速度に基づいて分離することができ、遠心分離により加えられる方向(例えば、外向き)力により、細胞及び溶質が異なる速度で沈殿する。溶出では、ターゲット細胞集団の沈殿速度は、遠心力の反対方向に溶液をポンプで送り出すことにより与えられる反対(例えば、内向き)流速と反対である。対向流は、溶液中の細胞及び粒子が分離されるように調節される。溶出は、細胞分離の多くの例で用いられており(Inoue,Carsten他、1981年;Hayner,Braun他、1984年;Noga、1999年)、当業者は、流れ及び遠心分離パラメータを最適にするのに用いられるこの原理及び実施を本開示に照らしてここに用いることができる。
【0088】
図9は、本発明による溶出の実施に関連する原理を示している。溶出実施形態は、回転ロータを用いて力が溶液に加えられる範囲では、遠心分離の実施と同様とすることができる。この実施形態の溶出分離に関連する変数の一部には、以下に限定されるものではないが、回転チャンバの大きさ及び形状、ロータの直径、ロータの速度、対向流チューブの直径、対向流の流速、並びに溶液から除去される粒子及び細胞の大きさ及び密度が含まれる。遠心分離におけるように、再生細胞は、個々の細胞密度に基づいて分離することができる。
【0089】
一実施形態では、図9(A)に示すように、再生細胞組成物、例えば、再生細胞及びコラゲナーゼを含む溶液が回転ロータのチャンバに導入される。溶液をチャンバに加えた後に、所定の流速で付加的な生理食塩水をチャンバに加える。生理食塩水の流速は、ロータの速度、細胞直径、及び経験的に確立したチャンバ定数の関数として予め決めることができる。流速は、例えば、IVポンプと同様の装置で制御されることになる。付加的な生理食塩水の目的は、図9(B)に示すように、大きな粒子がチャンバの一方の側に移動することになり、小さな粒子が他方に移動することになるロータチャンバの内部の条件を整えることである。流れは、図9(C)に示すように、この用途では小さな粒子がチャンバを出て廃棄物容器に移動するように調節される。この移動により、ロータチャンバ内の溶液が幹細胞のような細胞の実質的に均質な集団を有することになる。幹細胞が溶液(不要なタンパク質及び遊離脂質がチャンバから除去されている)中の品目の残りから分離されたと判断された後に、対向流が停止される。次に、チャンバ内の細胞は、チャンバの外壁に濃縮ペレットを形成することになる。対向流を逆向きにし、細胞ペレットを産出バッグに移送する。
【0090】
本明細書で上述したように、処理チャンバ30又は産出チャンバ50には、1つ又はそれよりも多いポート、例えば、ポート51又は52を含むことができる。これらのポートの1つ又はそれよりも多くは、上述の方法のいずれかの組合せを用いて得られた再生細胞又はその一部を、導管を通じて他の外科的装置、細胞培養装置、細胞浸漬装置、遺伝子治療装置又は精製装置に運ぶように設計することができる。また、これらのポートは、システム内の又は上述と同じ目的の別のシステムの一部としての付加的なチャンバ又は容器に導管を通じて再生細胞を運ぶように設計することができる。また、ポート及び導管を用いて、1つ又はそれよりも多い添加剤、例えば、成長因子、再懸濁流体、細胞培養試薬、細胞増殖試薬、細胞保存試薬、又は遺伝子を細胞に移送する薬剤を含む細胞修飾試薬を加えることができる。また、ポート及び導管を用いて、移植材料(例えば、骨格又は骨断片)のような別のターゲット、並びに他の外科的移植物及び装置に再生細胞を運ぶことができる。
【0091】
また、細胞を更に処理する段階は、現行のシステムの使い捨てセットの相互接続を再構成することにより、現行のシステムの処理装置を再プログラミングすることにより、現行のシステムに対して異なるか又は付加的な容器及び/又はチャンバを設けることにより、細胞を1つ又はそれよりも多い付加的なシステム又は装置及び/又はそのいずれかの組合せに運ぶことにより開始することができる。例えば、システムは、上述の手段のいずれかにより、システムを用いて得られた再生細胞に以下の1つ又はそれよりも多くを行うことができるように再構成することができる。すなわち、細胞増殖(1つ又はそれよりも多い再生細胞の種類)及び細胞維持管理(細胞シートすすぎ及び媒体交換を含む)、細胞培養、細胞播種、一過性形質移入(バルク供給品からの質移入細胞の播種を含む)、収集(酵素的、非酵素的収集及び機械的掻き取りによる収集)、細胞生存度の測定、細胞蒔き付け(例えば、増殖のための個々のウェルから細胞を採取する段階と新しいウェルに細胞を入れて増殖する段階を含む、マイクロタイタープレート上で)、高収量スクリーニング、細胞治療への適用、遺伝子治療への適用、組織工学への適用、治療タンパク質への適用、ウイルスワクチンへの適用、バンキング又はスクリーニングのための再生細胞又は上清の収集、細胞増殖、溶解、接種、感染症又は誘発の測定、細胞株(ハイブリドーマ細胞を含む)の生成、透過性研究のための細胞培養、RNAi及びウイルス抵抗研究のための細胞、ノックアウト及び遺伝子導入動物研究のための細胞、親和精製研究、構造生物学への適用、検定法開発、及びタンパク質工学への適用である。
【0092】
例えば、特定の用途のために再生細胞集団の増殖が必要であれば、この集団を優先的に増殖させ、同時に他の集団が維持される(及び、それによって選択細胞が増殖すれば希釈により低減される)か又は必要な増殖条件が欠如するために消失される培養条件を用いる手法を用いることができる。Sekiya他は、この点に関して骨髄由来幹細胞に対して用いることができる条件を説明している(Sekiya他、2002年)。この手法(組織培養プラスチックへの示差的付着あり又はなし)は、本発明の別の実施形態に適用することができる。この実施形態では、最終再生細胞ペレットを産出チャンバから除去し、細胞培養成分を供給する第2のシステムに入れる。これは、従来の実験室用組織培養インキュベータ又はTsao他の米国特許第6,001,642号又はArmstrong他の米国特許第6,238,908号に説明されるようなバイオリアクタ型装置の形態とすることができる。代替的実施形態では、細胞増殖又は細胞培養成分を現行のシステム、例えば、産出チャンバに加えて、脂肪由来細胞集団の短期間付着及び/又は細胞培養を可能にすることができる。この代替的実施形態では、細胞培養及び/又は細胞増殖構成要素をシステムと一体化し、このシステムから細胞を除去して別のシステムに入れる必要性を排除することができる。
【0093】
処理中に、必要に応じて、1つ又はそれよりも多い添加剤を様々なチャンバ又は容器に加えるか又は供給して結果を向上させることができる。また、これらの添加剤は、現行のシステムに関連するか又は現行のシステムから分離した別のシステムの一部として供給することができる。例えば、いくつかの実施形態では、システムから再生細胞を除去することを必要とせずに添加剤を加えるか又は供給する。他の実施形態では、添加剤を含む新しい容器又はチャンバをシステムの未使用部分に無菌状態で連結することにより添加剤を加えるか又は供給する。更に別の実施形態では、本発明のシステムに連結されていない第2のシステム又は装置に添加剤を加えるか又は供給する。添加剤の一部の例には、洗浄及び脱凝集を最適化する薬剤、処理中の活性細胞集団の生存度を向上させる添加剤、抗菌薬剤(例えば、抗生物質)、脂肪細胞及び/又は赤血球を溶解する添加剤、又は本明細書に説明するような関連の細胞集団を豊富にする(固体相成分への示差的付着性によるか又は他の方法で細胞集団を実質的に低減するか又は豊富にする)添加剤が含まれる。
【0094】
例えば、均質な再生細胞集団を得るために、例えば、幹細胞又は始原細胞上、例えば内皮前駆細胞上に存在する抗原を認識して結合する細胞特異的抗体を用いることのような特定の再生細胞種を分離して濃縮するためのあらゆる適切な方法を用いることができる。これらには、正の選択(ターゲット細胞を選択)、負の選択(不要な細胞を選択的に除去)の両方、又はその組合せが含まれる。また、特定の酵素が作用すると蛍光を発する分子を用いて選択する際には、酵素のような細胞内マーカを用いることもできる。更に、最終細胞ペレット内の再生細胞の特定の集団が示差的に付着し及び/又は溶出することを可能にするように選択した付着特性を有する固体相材料をシステムの産出チャンバに挿入することができる。
【0095】
この示差的付着法の代替的実施形態には、ターゲット再生細胞及び不要細胞上に示差的に表出する表面分子を認識する抗体及び/又は抗体の組合せを用いることが含まれるであろう。特定の細胞表面マーカ(又はその組合せ)の表出に基づく選択は、抗体が固体相支持体構造に(直接的又は間接的に)取り付けられる別のよく用いられる技術である(Geiselhart他、1996年;Formanek他、1998年;Graepler他、1998年;Kobari他、2001年;Mohr他、2001年)。
【0096】
別の実施形態では、細胞ペレットは、再懸濁され、流体材料の上(又は下)に積層され、連続的又は非連続的密度勾配が形成され、細胞密度に基づいて細胞集団を分離するために遠心分離装置に入れることができる。同様の実施形態では、アフェレーシス(Smith、1997年)及び溶出(対向流あり又はなし)(Lasch他、2000年)(Ito及びShinomiya、2001年)のような連続流の手法を用いることもできる。
【0097】
添加剤の他の例には、本明細書で説明するように、細胞分化因子、成長促進剤、免疫抑制剤、医療用装置、又はそのいずれかの組合せのような付加的な生物学的又は構造的成分を含むことができる。例えば、他の細胞、組織、組織断片、VEGF及び他の公知の血管原性又は動脈原性の成長因子のような成長因子、生物学的に活性又は不活性化合物、再吸収可能な骨格、又は、送出、有効性、耐容性、又は再生細胞の集団の機能を向上させるように意図された他の添加剤を加えることができる。また、再生細胞集団は、DNAの挿入によるか、又は構造的又は治療的目的を導出するために再生細胞の機能を変化、向上、又は補足するように細胞培養システム(本明細書に説明のものか又は当業技術で公知のもの)を配置することによっても修正することができる。例えば、幹細胞に対する遺伝子移入技術は、(Morizono他、2003年;Mosca他、2000年)に開示するように当業者には公知であり、これには、ウイルス移入技術を含むことができ、より詳細には、(Walther及びStein、2000年)及び(Athanasopoulos他、2000年)に開示されるようなアデノ関連ウイルス遺伝子移入技術を含むことができる。また、(Muramatsu他、1998年)に開示するように非ウイルスに基づく技術を行うこともできる。また、1つ又はそれよりも多い細胞の分化因子、例えば、成長因子又はサイトカインを符号化する遺伝子を加えることができる。様々な細胞分化剤の例は、(Gimble他、1995年;Lennon他、1995年;Majumdar他、1998年;Caplan及びGoldberg、1999年;Ohgushi及びCaplan、1999年;Pittenger他、1999年;Caplan及びBruder、2001年;Fukuda、2001年;Worster他、2001年;Zuk他、2001年)に開示されている。また、抗アポトーシス因子又は薬剤を符号化する遺伝子も加えることができる。遺伝子(又は、遺伝子の組合せ)の添加は、以下に限定されるものではないが、アデノウイルス形質移入、「遺伝子銃」、リポゾーム媒介性形質移入、及びレトロウイルス又はレンチウイルス媒介性形質移入、プラスミド、アデノ関連ウイルスを含む当業技術で公知のいずれかの技術によることができる。次に、これらの再生細胞は、原位置で形質移入を継続又は開始することができるように、時間が経つと遺伝子を細胞に放出及び/又は呈示することができる遺伝子送出媒体を担持する担体材料と共に移植することができるであろう。
【0098】
細胞及び/又は組織が得られた患者以外の患者に細胞及び/又は細胞を含む組織を投与する場合、細胞及び/又は組織を受け取る患者に1つ又はそれよりも多い免疫抑制剤を投与して移植片の拒絶を低減し、好ましくは防止することができる。本明細書で用いる場合、「免疫抑制薬又は抑制剤」という用語は、正常な免疫機能を阻害又は妨害する医薬品を含むものとする。本明細書に開示した方法に適切な免疫抑制剤の例には、米国特許公開第20020182211号に開示されているCTLA4及びB7経路を通じたT細胞及びB細胞のカプリングを妨害する薬剤のようなT細胞/B細胞同時刺激経路を阻害する薬剤が含まれる。好ましい免疫抑制剤は、シクロスポリンAである。他の例には、ミコフェノール酸モフェチル、ラパミシン、及び抗胸腺細胞グロブリンが含まれる。一実施形態では、免疫抑制薬は、少なくとも1つの他の治療薬剤と共に投与される。免疫抑制薬は、望ましい治療効果を達成するのに十分な用量で投与経路に合せた剤形で被験者に投与される。別の実施形態では、免疫抑制薬は、本発明の再生細胞に耐性が誘発されるのに十分な時間にわたって一時的に投与される。
【0099】
これらの実施形態では、再生細胞は、本明細書に記載の撹拌装置のような装置及び関連する方法を含むいずれかの当業技術で公知の方法で添加剤に接触し、結合され、混合され、又は添加されることができる。例えば、揺動、反転、圧縮パルス、又は移動ローラを用いることができる。
別の態様では、細胞集団は、レシピエントに入れて、再吸収可能なプラスチック鞘又は「MacroPore Biosurgery,Inc.」により製造されるもののような他の材料及び関連構成要素により囲むことができるであろう(例えば、米国特許第6,269,716号、第5,919,234号、第6,673,362号、第6,635,064号、第6,653,146号、第6,391,059号、第6,343,531号、及び第6,280,473号を参照されたい)。
【0100】
上述の実施形態の全てにおいて、分離及び濃縮された再生細胞の少なくとも一部分は、本出願人に譲渡された2001年9月14日出願の米国特許仮出願第60/322,070号の恩典を主張する2002年9月12日出願の「非造血性組織からの非胎芽細胞の保存」という名称の米国特許出願第10/242,094号に説明されているように凍結保存することができる。これらの内容は、本明細書においてその全体が引用により明示的に組み込まれている。
【0101】
処理の最後で再生細胞は、産出チャンバから手動で回収することができる。細胞は、皮下、筋肉内、又は細胞を患者のターゲット部位に送出することができる他の技術のいずれかによってレシピエントに投入するために、注射器のような送出装置に装填することができる。言い換えると、細胞は、当業者に公知のあらゆる手段により患者に投入することができる。好ましい実施形態には、注射針又はカテーテルにより、又は直接外科的な移植により投入することが含まれる。他の実施形態では、細胞は、細胞を患者に投入するのに用いることができる容器、注射器、又はカテーテル等の形態とすることができる産出チャンバに自動的に移送することができる。また、容器を用いて、後に用いるか又は凍結保存するために細胞を保存することができる。全ての回収法は無菌状態で行われる。外科的移植の実施形態では、細胞は、本明細書に説明した予め形成された基質又は骨格のような添加物と共に投与することができる。
【0102】
本発明の好ましい実施形態(例えば、図4に示す実施形態)では、システムは自動化されている。別の実施形態では、システムは、自動及び手動構成要素の両方を有する。システムは、再使用可能なハードウエア構成要素又はモジュールに連結されるか又は装着された1つ又はそれよりも多い使い捨て構成要素を含むことができる。本発明の自動化システムにより、システムが適切に作動するように促すスクリーンディスプレイ(図16参照)が提供される。また、自動化システムにより、システムの使い捨て構成要素を適切に設置するための手順及び/又は段階的指示の状態を提供するスクリーンも提供される。また、スクリーンは、システムの問題又は故障が起こった場合はそれも示し、適切な場合には「トラブルシューティング」手引きも示すことができる。一実施形態では、スクリーンは、例えば、タッチスクリーンでユーザがシステムにパラメータを入力することができるユーザインタフェーススクリーンである。
【0103】
部分的及び完全な自動化システムには、ユーザ入力に基づいて処理の1つ又はそれよりも多い段階を作業して自動化するシステムのための制御論理を提供する処理装置(例えば、マイクロプロセッサ又はパーソナルコンピュータ)及び関連ソフトウエアプログラムを含むことができる。いくつかの実施形態では、システムの1つ又はそれよりも多い態様は、処理装置に含まれるソフトウエアを通じてユーザプログラム可能にすることができる。処理装置は、「読取専用メモリ(ROM)」に1つ又はそれよりも多い予めプログラムされたソフトウエアプログラムを有することができる。例えば、処理装置は、血液を処理するために特別仕様にした予めプログラムされたソフトウエア、脂肪組織を処理して少量の再生細胞を得るための別のプログラム、及び脂肪組織を処理して大量の再生細胞を得るための別のプログラムを有することができる。また、処理装置は、必要な再生細胞の量、処理される組織の種類、必要な後処理操作の種類、治療用途の種類などのような関連情報のユーザ入力に基づいて処理を最適化する適切なパラメータをユーザに提供する予めプログラムされたソフトウエアを有することができる。
【0104】
また、このソフトウエアにより、システムのポンプ及び弁を制御することによって特定のチューブ経路に沿う流体及び組織の進入及び退出を制御する段階、作業の適切な順序及び/又は方向を制御する段階、圧力センサで閉塞を検出する段階、混合機構、容積測定機構を用いて特定の通路に沿って移動される組織及び/又は流体を測定する段階、熱制御装置を用いて様々な構成要素の温度を維持する段階、及びタイミング及びソフトウエア機構で分離及び濃縮処理を一体化する段階のような段階を自動化することができる。また、処理装置は、処理する組織の種類及び/又は収集する細胞集団又は下位集団、行う手順の種類(例えば、再生細胞で増加させた脂肪組織を用いる組織増強、又は再生細胞コーティング骨グラフトを用いる骨修復用途のための細胞処理)に基づいて遠心分離速度を制御することができる。また、処理装置には、標準パラレル又はシリアルポート、又は他のコンピュータ又はネットワークと連絡する他の手段を含むことができる。従って、処理装置は、自立ユニットとすることができ、又は本明細書に説明する更に別の処理方法のための関連する1つ又はそれよりも多い付加的装置とすることができる。
【0105】
このソフトウエアにより、例えば、使い捨て構成要素のロット番号、温度及び容積測定値、組織容積及び細胞数パラメータ、投与する酵素の用量、培養時間、オペレータ識別、日付及び時間、患者識別などを含む「試験データ」を自動収集することができる。装置の好ましい実施形態では、これらの変数(例えば、使い捨てセットのロット番号及び使用期限、「コラゲナーゼ」のロット番号及び使用期限、患者/試料識別等)を処理の文書化の一部として処理装置にデータ入力することができるように、バーコード読取システムのような文字認識システムは一体化されるであろう。これによって、データ入力誤差の機会が減少すると考えられる。このようなバーコード読取システムは、USB又は他のインタフェースポート及び当業技術で公知のシステムを用いて容易に処理装置に組み込むことができる。従って、この装置により、データ入力及び処理の文書化が集中制御されると考えられる。これらのパラメータの印刷レポートは、システムのプログラムされた作業のユーザ定義パラメータの一部とされるであろう。勿論、これは、プリンタ構成要素(ハードウエア及びドライバ)又はソフトウエア内のプリンタドライバ、それに加えて装置のハードウエア内のプリンタのためのインタフェース出力コネクタ(例えば、USBポート)の一体化を必要とすると考えられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、システムは完全自動化システムである。例えば、ユーザは、最初に処理する組織の量を選択し、システムを患者に取付けることができ、次に、システムは、自動的に必要な組織を判断し、更にユーザ入力されなくても途切れることなく順序通りに再生細胞を分離して濃縮することができる。また、ユーザは、システムが必要な量の組織を判断して組織を処理することができるように、必要な再生細胞の量を入力することができる。また、完全自動化システムには、いくつか(例えば、2つ又はそれよりも多く)のユーザ入力パラメータ、例えば、洗浄の反復回数、遠心分離の速度等に基づいて再構成することができるシステムも含まれる。また、システムは、半自動モードで作動することができ、その作動中に、システムは、ユーザが介入することなくいくつかの段階を通過するが、ある一定の処理が起こる可能性がある前にはユーザの介入が必要である。他の実施形態では、システムは、ユーザが所定の作業を所定の回数行うように案内する指示を表示する単一の一体化されたシステムである。例えば、処理装置は、チューブ、チャンバ、及びシステムの他の構成要素を適切に挿入するのに必要な段階を通してユーザに促すことができる。従って、ユーザは、作業が適切な順序で行われていることを確認することができる。このようなシステムでは、更に、処理の段階が不注意に作動するか又は停止するのを防ぐためにユーザが各作業段階を確認することが必要である可能性がある。別の実施形態では、システムは、チューブ、チャンバ、閉塞の不在等が正しく挿入されていることを確認するために自動試験を開始することができる。更に別の実施形態では、本発明のシステムは、システムを通る組織の流れの自動制御を通して複数回の分離及び濃縮処理を行うようにプログラムすることができる。この特徴は、例えば、そうでなければ失われるであろう組織をシステムに収集し、組織からの再生細胞を分離し、濃縮して患者に戻す、患者に対する手術中に重要であると考えられる。
【0107】
上述のように、システムの構成要素は、システムの一部分を1回用いた後に処分することができるように使い捨て(本明細書では「使い捨てセット」と呼ぶ)とすることができる。このように実施すると、患者組織と接触するあらゆる表面が使用後に確実に処分されることになるのを保証することを助けることができる。例示的な使い捨てセットを図13に示している。好ましい実施形態では、システムの使い捨てセットは、用いるのが容易で装填するのも容易であり、多くのチューブ接合部とチューブ接合部の複雑なルーティングとの必要性が消失する利用可能な「市販品」になるように、予め滅菌して包装される。このような使い捨て構成要素は、製造するのが比較的廉価であり、従って、その処分のための実質的な費用は生じない。一実施形態では、使い捨てシステム(本明細書では「使い捨てセット」と互換的に呼ぶ)は、収集チャンバ20、処理チャンバ30、廃棄物チャンバ40、産出チャンバ50、フィルタアセンブリ36、試料バッグ60、及び関連導管12又はチューブを含むか、本質的にこれらから成るか、又はこれらから成る。システムの使い捨てセットの好ましい実施形態では、収集チャンバ20及び処理チャンバ30は、剛性フレームに収容された導管12により連結される。また、処理チャンバ30の回転密封ネットワーク(図7及び図8)も同じ剛性フレームに収容することができる。別の好ましい実施形態では、使い捨てセットの様々なチャンバ及び容器は、ポンプ、弁、センサ、及びシステムを自動化する他の装置がユーザの介入なしで必要に応じて適切に作動されるか又は非作動されるように、システムの処理装置と通信することができる必要なインタフェースから成る。また、このインタフェースにより、システムを設定する時間及び専門的知識も減少し、システムを適切に設定する方法を示して誤った設定の場合はユーザに警告することによりエラーも減少する。
【0108】
本発明の使い捨てセットのほとんどは、多くの共通の要素を有することになる。しかし、システムの異なる用途には、使い捨てセットの一部とすることができる付加的な構成要素を必要とする場合があることを当業者は認識するであろう。従って、使い捨てセットは、患者から脂肪又は他の組織を得て再生細胞を患者に戻すのに適切な1つ又はそれよりも多い針又は注射器を更に含むことができる。含まれる針及び注射器の型番及び種類は、処理する組織の種類及び量に依存することになる。使い捨てセットは、洗浄流体及びシステムに用いられる他の処理試薬を保持するための1つ又はそれよりも多い剛性又は可撓性の容器を更に含むことができる。例えば、使い捨てセットには、生理食塩水、酵素、及び手順に必要なあらゆる他の治療又は交換流体を保持するための容器を含むことができる。更に、適切な洗浄溶液、再懸濁流体、添加剤、薬剤、又は移植材料に本発明のシステム及び方法と併せて用いるための使い捨てセットを備えることができる。
【0109】
本発明に説明された又はそれ以外に本発明を実施するのに必要なシステム構成要素、機器、又は供給品のいかなる組合せもキットの形態で準備することができる。例えば、本発明のキットには、例えば、注射器に基づく脂肪吸引に最適な長さ及びゲージの針と、少量の組織を処理することができる好ましいろ材を含む無菌注射器とを含むことができる。本発明に用いることができ、本発明のキットにも含むことができる他の例示的な機器及び供給品を表II及び表IIIに列記する。
以下の表IIは、本発明のシステム及び方法による脂肪由来再生細胞を得るのに用いることができる供給品の例を特定するものである。
【0110】
【表2】
【0111】
以下の表IIIは、本明細書に開示するシステム及び方法と共に用いることができる機器を特定するものである。
【0112】
【表3】
【0113】
システムの再使用可能な構成要素は、収集チャンバと、ポンプと、弁及びポンプ制御装置を作動する様々なセンサとのための撹拌機構、遠心分離装置モータ、遠心分離装置モータの回転フレーム、ユーザインタフェーススクリーン及びUSBポート、使い捨てセットが再使用可能なハードウエア構成要素及び他の付随装置に確実に取り付けられてそれと接続するように使い捨てセットを結合する連動装置又はドッキング装置又は構成を含むか、本質的にそれらから成るか、又はそれらから成る。例示的な再使用可能な構成要素を図14に示している。好ましい実施形態では、再使用可能な構成要素には、再生細胞組成物から再生細胞を分離して濃縮するための手段、例えば、回転遠心分離装置が含まれる。この実施形態では、再使用可能な構成要素は、図15Aに示すような使い捨てセットの処理チャンバ(遠心分離チャンバを含む)の一部分に連結され、インタフェースで接続するように設計される。再使用可能な構成要素中の再生細胞を分離して濃縮するための手段は、回転遠心分離装置に限定されず、回転膜フィルタを含む本明細書に説明されるあらゆる他の構成も含むことができることが理解される。また、再使用可能な構成要素は、いくつかの異なる組織処理手順を行ってそれに応じてシステムの様々なポンプ及び弁を選択的に作動するための予めプログラムされたソフトウエアを含む本明細書に記載の処理装置を収容することができる。また、処理装置は、ドナー/患者情報を保存して後にダウンロードしたり編集するために情報及び他のデータの収集物を処理するためのデータ保存機能を含むこともできる。再使用可能な構成要素は、様々な使い捨てセットと共に用いることができる。使い捨てセットは、再使用可能な構成要素に存在する処理装置が信号を制御することができ、すなわち、使い捨てセットの様々な構成要素、並びに再使用可能な構成要素及び他の関連装置及びシステムの様々な構成要素に対して信号を送受信することができる方法で使い捨てセットが再使用可能なハードウエア構成要素に確実に取り付けられてそれとインタフェースで接続するように、例えば使い捨てセットを結合する連動装置又は構成を用いて再使用可能な構成要素に接続される。
【0114】
一実施形態では、システムに用いるための使い捨てセットは、約800mLの組織を収容することができる収集チャンバ20と、収集チャンバ20で洗浄されて消化された約800mLの組織により生成された再生細胞組成物を処理することができる処理チャンバ30と、少なくとも0.5mLの再生細胞を収容することができる産出チャンバ50と、約10Lの廃棄物を収容することができるウエスタ容器40とを含む。この実施形態では、ハードウエア装置は、24”L×18”W×36”H以下の大きさである。使い捨てセット並びにハードウエア装置の様々な構成要素を必要に応じて代替寸法に構成することができ、これらも無制限に本発明に含まれるものとする。
【0115】
システムの使い捨て構成要素は、装置上に容易に配置される。用いられる使い捨てセットは、対応する再使用可能な構成要素と共に組み立てられた図面で図15Aに示されている。システムは、不適切に装填された使い捨て構成要素を検出することができるように設計されることが好ましい。例えば、各使い捨てセットの構成要素は、チューブ及びチャンバなどをシステムの適切な場所に適切に位置合わせして挿入することができるように色誘導式マークを有する。別の実施形態では、本明細書に開示されるシステムは、携帯用ユニットである。例えば、携帯用ユニットは、脂肪組織収集が行われた部位から脂肪組織を収集するための別の部位まで移動させることができる。いくつかの実施例では、携帯用ユニットは、患者のベッドサイド近くで脂肪組織を収集して処理するのに適切である。従って、携帯用ユニットは、患者から患者へ移動することができるシステムの一部とすることができる。従って、携帯用ユニットは、所定位置に固定された車輪付きとすることができ、従って、手順全体を通して便利な場所の安定で安全な位置に容易に位置決めして用いることができる。他の実施形態では、携帯用ユニットは、テーブル面のような平坦な表面上に設置して作動するように設計される。また、携帯用ユニットは、収容ユニット内に封入することができる。携帯用ユニットは、ハンガ、フック、ラベル、定規、及び手順に役立つ他の装置を更に含むことができる。遠心分離装置、処理装置、表示画面のような本明細書に説明したシステムの再使用可能な構成要素の全ては、システムの携帯用ユニット上に装着することができる。
【0116】
再生細胞を得るための代替的な手動実施形態も本発明の範囲に含まれる。例えば、一実施形態では、脂肪組織は、本明細書に説明するシステム、機器、及び/又は供給品の構成要素のいずれかの組合せを用いて処理することができる。
本発明のシステムの手動実施形態は、以下の段階及び情報により実施することができるが、これらは例示的に挙げたものであり、決して限定するものではない。最初に、患者から脂肪組織を収集する。組織回収ライン又はサンプリング部位連結器を開放し、600ml血液バッグの側部ポートにスパイクを装填する。ほぼ10mlの脂肪組織を平滑カニューレを通して10ml注射器に収集する。平滑カニューレを比較的鋭い針(14G)と交換する。サンプリング部位をヨウ素ワイプで拭く。脂肪組織をサンプリング部位を通して600mlバッグ内に注入する。次に、注射器及び針を鋭利物チャンバに廃棄する。十分な組織がバッグに入るまでこれらの段階を繰り返す。十分な組織は、患者及び用途の臨床的特異性に基づいてケースバイケースで判断される。
【0117】
第2に、吸い出された脂肪組織を洗浄する。予め温めた(37℃)生理食塩水バッグを作業表面の上に吊るす。600mlバッグとスパイクの間のチューブ上に青い止血クランプを配置する。クランプを閉じてチューブを密封する。600mlバッグのスパイクを用いて生理食塩水バッグに進入する(この設定では、600mlバッグ上の針を用い、ゴム隔膜を通して生理食塩水バッグに進入し、針を挿入する前にヨウ素で隔膜を拭く)。青いクランプを緩め、ほぼ150mlの生理食塩水を600mlバッグに流入させる。望ましい容積の生理食塩水が600mlバッグに入ると、青いクランプを閉じる。600mlバッグをほぼ15秒にわたって10〜15回逆さにする。第2の青いクランプを3L廃棄物バッグからスパイクに至るチューブに付ける。3Lバッグのスパイクを用いて600mlバッグに進入する。600mlバッグを作業表面の上に逆さに吊るし、ほぼ1分放置する。3Lバッグに至る青いクランプを緩める。廃棄流体を3Lバッグに流入させる。青いクランプを付けて、組織がチューブに入る前に流れを止める。600mlバッグを作業表面まで下げる。これらの段階を更に2回繰り返す。生理食塩水廃棄物が依然として目に付くほど赤く見えれば、第3の付加的なサイクルが指示されている。ヒートシーラーを用いて3L廃棄物バッグと600mlバッグの間でチューブを密封する。密封は、チューブのほぼ半分の地点に行う。3L廃棄物バッグを除去して廃棄する。600mlバッグを作業表面に戻す。
【0118】
第3に、洗浄脂肪組織を消化する。生理食塩水と600mlバッグの間のチューブ上の青いクランプを緩めて、ほぼ150mlの生理食塩水が600mlバッグに入るようにする。600mlバッグのサンプリング部位をヨウ素ワイプで拭く。サンプリング部位を通して600mlバッグにコラゲナーゼを注入する。コラゲナーゼは、1つのコラゲナーゼバイアルを37℃水浴又はマイクロ波以外の均等物で溶かして調製する。1ml注射器に22G針を付け、バイアルに挿入する。コラゲナーゼを針の中に引き抜く。針を除去し、0.2μmフィルタ及び第2の22G針と取り替える。次に、0.2μmフィルタ及び針を通して注射器からコラゲナーゼを放出する。脂肪組織の消化は、最終コラゲナーゼ濃度0.1〜0.2「Wunsch」単位/mlで行う。ロッカー上に加熱パッドを置く。この間に、依然として取り付けられている生理食塩水バッグをロッカーの側部に設定する。生理食塩水バッグに至るチューブが運動中にロッカー上に捕捉されないように確実に位置決めされるように注意する。加熱パッド制御装置を37℃に設定する。600mlバッグをロッカー上に置く。ロッカーは最大に設定する。バッグは、それが安定であってほぼ1時間(55±10分)揺動されることを確実にするために観察される。
【0119】
第4に、再生細胞組成物を回収する。ロッカーからバッグを除去する。元は廃棄物バッグに至っていた密閉チューブに青いクランプを付ける。無菌の連結装置を用いて、4個入りバッグセット(以下の指示に従い予め準備する)を元は廃棄物バッグに取り付けられていたチューブに取り付ける。4個入りパックは、2つの繋がった4個入りパックとして見ることができる。それを2つのパックに分割するチューブを特定し、チューブをそれ自体の上に折り畳み、折り畳んだチューブの上に金属ループを滑らせる(チューブの両部分の上に)。ループをほぼ0.5インチ滑らせて下げる。屈曲部に形成された圧着部は、チューブを密封するように働く。血管鉗子を用いて閉じたループを部分的に圧着する。ループは、処理中に除去する必要があるために、あまりきつく圧着しない。600mlバッグを作業表面の上に逆向きに吊るし、ほぼ3分間放置する。4個入りセットに至るチューブ上の青いクランプを緩め、細胞分画(黄色/オレンジ脂肪層の下の層)を4個入りセット内に排出させる。脂肪層がチューブに入らないように注意する。この工程中に、チューブを手動で圧着し、脂肪層がチューブに近づくにつれて流れが遅くなるようにすることができる。4個入りバッグに至るチューブセットを次に青いクランプで密閉する。600mlバッグを作業表面に戻し、生理食塩水バッグを吊るす。生理食塩水と600mlバッグの間のチューブ上の青いクランプを緩め、ほぼ150mlの生理食塩水が600mlバッグに入るようにする。600mlバッグをほぼ15秒にわたってほぼ10〜15回逆向きにする。次に、600mlバッグを作業表面の上に吊るし、約3〜5分間放置する。4個入りセットに至るチューブ上の青いクランプを緩め、細胞分画(黄色/オレンジ脂肪層の下の層)を4個入りセット内に排出する。脂肪層がチューブに入らないように注意する。例えば、チューブを手動で圧着することにより、脂肪層がチューブに近くなるにつれて流れが遅くなるようにすることができる。4個入りバッグに至るチューブセットを青いクランプで密閉する。4個入りセットから600mlバッグに至るチューブを次に密封する。次に、600mlバッグを除去して廃棄する。
【0120】
第5に、再生細胞組成物を洗浄する。2つの満水バッグの間のチューブ上に金属クリップを配置し、チューブを密封する。4個入りセットを天秤上に置く。第2の「ダミー」4個入りセットに水を加え、4個入りセットと均衡を取る。4個入りセット及び均衡を取ったセットを遠心分離装置の対向するバケツに入れる。中空フィルタに対しては、細胞を洗浄してバッグに入れ、バッグと上述の中空糸フィルタアセンブリの間でチューブを密封する。蠕動ポンプを用い、フィルタアセンブリを通して流体を流し、下流端部のバッグに細胞濃縮物を収集する。4個入りセットバッグが確実に圧縮されずに直立であるように注意する。遠心分離装置は、400×gで10分間作動する。4個入りセットを遠心分離装置から除去し、血漿圧搾機に入れる。バッグ上部の剛性のチューブが背板のちょうど上部になるようにバッグを圧搾機に入れるように注意する。バッグが高すぎる場合には、過剰な生理食塩水が保持されることになり、低すぎる場合には、チューブが前部プレートの密閉する能力を損なうことになり、この場合も過剰な生理食塩水が保持されることになる。満水4個入りセットから空のセットに至るラインの各々に青いクランプを付加する。金属ループ及び青いクランプを除去し、上清が空の4個入りセットに流入することができるようにする。できるだけ多くの生理食塩水を圧出するが、細胞ペレットが押し出されないように注意する。上清を含む各バッグに流入するチューブをヒートシールする。上清を含む廃棄物バッグを除去する。細胞を含む各4個入りセットバッグに至るチューブに青いクランプを付ける。血漿圧搾機からバッグを取り出す。無菌連結装置を用いて4個入りパックに至るチューブを生理食塩水バッグに連結する。4個入りセットバッグの1つに至る青いクランプを除去してほぼ150ml生理食塩水がバッグに流入するようにし、その後、クランプを再び付けて生理食塩水の流れを止める。次に、満水4個入りセットバッグをほぼ15秒にわたってほぼ10〜15回逆向きにする。空の4個入りセットバッグに至る青いクランプを次に除去し、満水バッグの全ての内容物を空のバッグに排出して入れる。金属ループクランプを再び付けて、2つの4個入りセットバッグ間のチューブを密封する。次に、チューブをヒートシールして生理食塩水バッグを除去する。次に、満水4個入りセットバッグをほぼ16秒にわたってほぼ10〜15回逆向きにする。別のダミー4個入りセットを天秤上に置き、細胞4個入りセットと再び均衡を取る。4個入りセットバッグ(1つは満杯、1つは空)は、次に、4個入りセットバッグが圧縮されずに直立するように遠心分離装置に入れられる。
【0121】
遠心分離装置は、約400×gで10分間作動する。次に、4個入りセットを遠心分離装置から除去し、バッグ上部の剛性チューブが背板のちょうど上部になるように注意深く血漿圧搾機に入れる。バッグが高すぎると、過剰な生理食塩水が保持されることになり、低すぎると、チューブは、前部プレートが密閉する能力を妨げ、この場合も過剰な生理食塩水が保持されることになる。金属ループを除去し、再生細胞ペレットを押し出さないように注意して満水バッグから上清の全てを空のバッグ中に圧出する。バッグ間のチューブを密封し、満水(廃棄物)バッグを除去して廃棄する。次に、新しいサンプリング部位連結器を残りのバッグに挿入する。次に、細胞ペレットの細胞を残留生理食塩水(もしあれば)に再懸濁し、再生細胞濃縮物を得る。再懸濁は、バッグを穏やかに操作する(例えば、絞ったり擦ったりする)ことにより行うことができる。
【0122】
本発明を具体化するシステムの特定の例を図4に示している。図4は、患者に再注入するのに適切な再生細胞を組織、例えば脂肪組織から分離して濃縮するための自動化システム及び方法を示している。図4に示すシステムのいくつかの実施形態では、システムは、所定の量の組織を患者から吸い出すための自動化段階を更に含む。図4に示すシステムは、図14に示すシステムの再使用可能な構成要素に連結して図15Aに示すシステムの自動化実施形態に到達する図13に示す使い捨てセットを含む。使い捨てセットは、再使用可能な構成要素上に存在する処理装置が使い捨てセットの様々な構成要素、並びに再使用可能な構成要素及び他の関連装置及びシステムの様々な構成要素を制御してインタフェースで接続する、すなわち、それに対して信号を送受信することができるような方法で使い捨てセットが再使用可能なハードウエア構成要素に確実に取り付けられて関連付けられるように、例えば、使い捨てセットを再使用可能な構成要素に連結する連動又はドッキング装置又は構成を通して再使用可能な構成要素に連結される。
【0123】
ユーザは、使い捨てセットを再使用可能な構成要素に連結することができ、ユーザインタフェースを用いてある一定のパラメータ、例えば、収集される組織の容積を入力し、システムを患者に取付けることができ、システムは、予めプログラムされた及び/又はユーザ入力のパラメータを用いて途切れることなく順序通りに自動的に図4に示す段階の全てを行う。このような順序の1つを図15Bに示している。代替的に、組織は、ユーザにより患者から手動で吸い出し、再生細胞を処理する、すなわち、分離して濃縮するためにシステムに移送することができる。
【0124】
詳細には、図4に示すように、組織、例えば脂肪組織は、導管12を用いて患者から引き出し、収集チャンバ20に導入することができる。図4の収集チャンバの詳細な図面を図5に示している。図5に示すように、収集チャンバ20は、標準カニューレを用いて組織が容易に除去されるようにする真空ライン11を含むことができる。ユーザは、この時点で収集チャンバ20に導かれる組織の推定容積を入力することができる。組織は、組織、生理食塩水、及び他の薬剤が無菌的に組織に加えられるようにする密閉流体通路の一部である入口ポート21を通して収集チャンバ20に導入される。システムの光学センサ、例えばセンサ29により、何時組織のユーザ入力容積が収集チャンバ20に存在するかを検出することができる。いくつかの実施形態では、収集チャンバに存在する組織がユーザ入力よりも少なければ、ユーザは、収集チャンバ20に存在する組織の容積を処理することを開始するという選択肢を有することになる。いくつかの実施形態では、患者から除去された組織の一部分は、ユーザインタフェースを用いたユーザ入力を通じて作動することができるポンプ、例えば蠕動ポンプを用いることにより、導管を通じてサンプルチャンバ60に導入することができる。
【0125】
センサ29は、再使用可能な構成要素に存在する処理装置に信号を出し、組織を洗浄して脱凝集するのに必要な段階を作動させることができる。例えば、処理装置は、自動弁及びポンプを用いて、収集された組織の容積に基づいて洗浄剤の予め設定した容積を導入することができる。このサイクルは、光学センサにより流出物液体が十分に透明で不要な材料がないと判断されるまで、収集チャンバで繰り返すことができる。例えば、収集チャンバ12b又は12dから出る導管に沿う光学センサ29により、不要な材料が除去されたことを検出することができ、処理装置に必要な弁を閉じて次の段階を開始するように信号を送ることができる。
【0126】
次に、処理装置は、収集した組織の容積に基づいて脱凝集剤の予めプログラムされた量を導入することができる。また、処理装置は、収集した組織の初期容積に基づくか又はユーザ入力に基づいて、予め設定された期間にわたって収集チャンバ内で組織の撹拌を作動することができる。図4に示されている実施形態では、脱凝集剤、例えばコラゲナーゼがコラゲナーゼ供給装置24を通して収集チャンバ20に加えられると、収集チャンバ20内のモータが処理装置を通じて作動される。モータは、磁気撹拌子と、1つ又はそれよりも多いパドル25が収集チャンバ28に前置されたフィルタのフィルタケージ27に固く取り付けられたパドル状装置とを含む回転可能シャフト25を作動する。再生細胞が組織から分離するように、パドルを脱凝集剤の存在下で撹拌する。
【0127】
収集チャンバ20内の溶液は、予め設定された期間にわたって沈殿させられる。溶液の浮遊部分は、溶液の上部まで上昇することができる。予め設定された期間が経過した状態で、処理装置により必要な弁及びポンプが作動され、非浮遊部分を廃棄物チャンバ40に除去する。廃棄物チャンバ40への移送は、溶液の浮遊物分画が廃棄物チャンバ30に移送される寸前であることを収集チャンバから出る導管12b又は12dに沿うセンサ29が検出することができるまで継続される。例えば、収集チャンバから出る導管12b又は12dに沿うセンサ29は、不要な材料が除去されたことを検出することができ、必要な弁を密閉するように処理装置に信号を出すことができる。
【0128】
この時点で、溶液の非浮遊物分画、すなわち、再生細胞組成物は、処理チャンバ30に移動される。これは、必要な弁及び蠕動ポンプを用いることにより達成される。いくつかの実施形態では、再生細胞組成物を処理チャンバ30に移送する前に、生理食塩水の付加的な容積を収集チャンバ20に留まる溶液の浮遊物分画に加えることができる。もう一度洗浄サイクルを繰り返すことができる。このサイクルが終わると、溶液を沈殿させ、非浮遊物分画(再生細胞を含む)が処理チャンバ30に移送され、浮遊物分画が廃棄物チャンバ40に排出される。付加的な洗浄サイクルを用いて、全ての分離した再生細胞が最適に処理チャンバ30に移送されるようにする。
【0129】
再生細胞組成物が導管12により処理チャンバ30に移送された状態で、濃縮相が開始される前に、組成物に1つ又はそれよりも多い付加的な洗浄段階を行うことができる。これによって廃棄物及び残留夾雑物が収集チャンバ20から確実に除去される。同様に、濃縮段階に続いて、再生細胞組成物に1つ又はそれよりも多い付加的な洗浄段階を行い、残留夾雑物を除去することができる。不要な材料は、同じ方法で、すなわち、上述のように処理装置からの信号を通じて弁及びポンプを制御する方法で処理チャンバ30から廃棄物チャンバ40に除去することができる。
【0130】
図4に示す処理チャンバ30の様々な実施形態を以下に詳細に説明する。図4に示す処理チャンバ30は、遠心分離チャンバの形態である。図4の処理チャンバの詳細な図面を図7及び図8に示している。このような処理チャンバ30は、一般的に、外側ハウジング30.2、1つ又はそれよりも多い密封部30.3、1つ又はそれよりも多い軸受部30.4、及びシステムの再使用可能な構成要素に存在する遠心分離装置に処理チャンバを連結するための装着点30.6を含む回転密封ネットワーク30.1と、回転密封部から延び、フレーム53に収容された産出チャンバ50の形態である各端で遠心分離チャンバ内で終了する導管の形態の1つ又はそれよりも多い流体経路30.5とから成り、このフレームは、1つ又はそれよりも多いポート52及び手動で産出チャンバ50を再位置決めするための1つ又はそれよりも多いハンドルから成る。
処理チャンバの流体通路を確実に無菌状態に維持することができるように回転密封ネットワーク30.1が含まれる。更に、処理チャンバの流体通路には、処理チャンバの遠心分離チャンバが回転している間であっても、いつでも無菌状態で(例えば、薬剤又は洗浄溶液を加えるために)進入することができる。
【0131】
図7及び図8に示す回転密封ネットワーク30.1は、2つ又はそれよりも多い軸受部30.4、3つ又はそれよりも多いリップ密封部30.3、及び外側ハウジング30.2から成る回転シャフトを含む。この実施形態では、軸受部30.4には、本明細書ではレースと呼ばれる外側及び内側シャフト(図示せず)が更に含まれる。これらのレースは、精密に研削された球により分離することができる。軸受部を構成するレース及び球は、好ましくは、体液で接触されるのに適切な材料で製造されるか、又は体液に接触されるのに適切な材料でコーティングされる。好ましい実施形態では、レース及び球は、例えば、シリコーンニトリド又はジルコニアを用いて製造される。更に、この実施形態では、3つのリップ密封部は、円形の「U」形チャンネル(図示せず)、並びに円形バネ(図示せず)から成る。円形「U」形チャンネルは、回転密封ネットワーク30.1の回転シャフトに耐漏れ接合が形成されるように可撓性材料で製造されることが好ましい。更に、リップ密封部は、処理チャンバを通って流れる再生細胞組成物からの圧力で張力が増大することにより密封アセンブリが回転シャフトとの接合部を堅く締める向きに置かれることが好ましい。密封部は、回転密封ネットワーク30.1の外側ハウジング30.2の溝と係合させるために必要に応じて広がり及び/又は折り畳むことができる1つ又はそれよりも多い円形クリップ(図示せず)により定位置に固定することができる。回転密封ネットワーク30.1により又はその近くで発生する熱は、通路を通って移動中の溶液中の細胞が溶解しないように制御されるべきである。これは、例えば、回転シャフトを構成するのに剛性材料を選択することにより、密封部と接触する回転シャフトの部分を磨くことにより、及び回転シャフトと密封部の間の接触を最小にすることにより達成することができる。
【0132】
別の実施形態では、回転密封ネットワーク30.1は、単一のゴム密封部30.3及び空気ガスケット(図示せず)を含む。この密封部及びガスケットにより、システムの無菌性を損なう場合があるあらゆる生体物質に対して蛇行路が設けられる。別の実施形態では、回転密封ネットワーク30.1は、個々の流体経路を隔離する複数のバネ装填密封部30.3を含む。密封部30.3は、滅菌することができ、並びに潤滑剤なしで回転シャフトを密封することができる材料で製造される。別の実施形態では、回転密封ネットワーク30.1は、異なる流体経路を作り出し、システムの回転に耐えることができ、細胞溶解を引き起こすことができない一対のセラミック円板(図示せず)から成る。別の実施形態では、流体通路は可撓性があり、処理チャンバに対して巻き付けて巻き戻すことができる。これは、可撓性の流体通路を処理チャンバ30が2回回転する毎に1回回転させることにより達成される。これによって密封部を共に回転させる必要がなくなる。
【0133】
再生細胞組成物は、回転密封ネットワーク30.1の回転軸を通る流体経路に沿って収集チャンバ20からポンプで汲み出され、次に、各々処理チャンバ30の中心軸から外向きに広がり、処理チャンバ30の外側端部近くで終結し、すなわち、産出チャンバ50を収容する遠心分離チャンバ内にある最低でも2つの流体通路30.5に分割される(図7及び図8)。従って、好ましい実施形態では、処理チャンバ30は、図7及び図8に示すように1つよりも多い産出チャンバ50を含む。これらの産出チャンバ50は、それらが処理30.7中に1つの向き及び濃縮再生細胞30.8を回収するために別の向きになるように位置決めされる。例えば、産出部の変化は、処理中には1つの角度の傾きであり、細胞回収中には別の角度の傾きである。細胞回収角度は、処理角度よりも垂直に近い。産出チャンバ50の2つの位置は、処理チャンバ30から突出するハンドル53を通して手動で操作することができる。再生細胞は、回収方向30.8の時に注射器を用いて産出チャンバ50から手動で回収することができる。別の実施形態では、流体経路30.5は、処理チャンバの外側で分かれ、その後、処理チャンバ30の外側端部に連結し、すなわち、産出チャンバ50を収容する遠心分離チャンバ(図示せず)内にあるように構成される。この実施形態では、大量の再生細胞組成物及び/又は添加剤、溶液などを遠心分離チャンバ及び/又は産出チャンバに直接移送することができる。
【0134】
図4及び図7〜図9を参照すると、収集チャンバ20と処理チャンバ30の間には、ポンプ34及び1つ又はそれよりも多い弁14を設けることができる。好ましい実施形態では、弁14は電気機械弁である。更に、圧力センサ29のようなセンサを処理チャンバ30及び収集チャンバ20と一列に設けることができる。弁、ポンプ、及びセンサは、再使用可能な構成要素(図14)上に存在する処理装置と協調して働き、システムの濃縮段階を自動化する。
【0135】
センサは、遠心分離チャンバ内に再生細胞組成物が存在することを検出し、システムの処理装置と通信することにより、遠心分離装置を作動する。次に、最初に収集された組織の量及び/又はユーザ入力に基づいて、再生細胞組成物に予めプログラムされた時間にわたって予めプログラムされた負荷を掛ける。いくつかの実施形態では、この段階は、自動的又はユーザ入力のいずれかで繰り返すことができる。例えば、組成物に、約5分の期間にわたって重力のほぼ400倍の負荷を掛ける。産出チャンバ50は、チャンバの最も外側が高密度粒子及び細胞のための小さなリザーバを形成するように構成される。産出チャンバ50は、軽い上清を流体経路、例えば回転密封ネットワーク30.1の回転軸に沿って処理チャンバ30の中心の低い点から回転密封ネットワーク30.1を通って廃棄物容器40まで進む流体経路を通して除去しながら「細胞ペレット」と呼ばれるものの中に高密度粒子を保持する。弁14及びポンプ34は、産出チャンバ50に存在する細胞ペレットを乱すことなく上清を廃棄物容器40に除去する段階を作動させるように処理装置に信号を送る。
【0136】
図4に示すシステムを用いて得られる細胞ペレットは、本発明の濃縮再生細胞を含む。一部の実施形態では、上清が除去されて廃棄物チャンバ40に導入された後に、流体経路30.5を用いて付加的な溶液及び/又は他の添加剤と遠心分離した後に形成される細胞ペレットとを再懸濁することができる。このように細胞ペレットを再懸濁すると、再生細胞を更に洗浄して不要なタンパク質及び化学化合物を除去することができ、並びに細胞までの酸素の流れを増大することができる。得られる懸濁液には、約5分の別の期間にわたって重力の力のほぼ400倍の負荷を掛けることができる。第2の細胞ペレットが形成され、得られた上清が廃棄物チャンバ40に除去された後に、上述のように生理食塩水又は他の適切な緩衝溶液で最後の洗浄を行うことができる。このような反復洗浄を複数回行い、再生細胞溶液の純度を高めることができる。いくつかの実施形態では、処理を向上させるのに必要であると考えられるあらゆる段階で生理食塩水を加えることができる。図4に示すシステムを用いて得られる再生細胞濃縮物は、収集した組織の量、患者の年齢、患者プロフィール等により変えることができる。例示的な収量は表1に与えられている。
【0137】
次に、産出チャンバ50を細胞除去に適切な方向に位置決めした後に、産出チャンバ50に存在する最終ペレットを適切な注射器を用いて無菌的に回収することができる。他の実施形態では、最終ペレットは、必要に応じて除去して保存することができる産出チャンバ50内の容器に自動的に移動させることができる。この容器は、あらゆる適切な形又は大きさとすることができる。例えば、容器は、注射器とすることができる。いくつかの実施形態では、産出容器50自体をヒートシールして(自動又は手動のいずれかで)、次に、患者への再注入を含む本明細書に説明するような治療用途に対して再生細胞を回収して用いるために、処理チャンバの他の構成要素から隔離することができる。また、細胞には、産出チャンバから回収される前又は第2のシステム又は装置に移送された後に、本明細書に説明するように更に処理を行うことができる。図14に示す再使用可能な構成要素は、必要に応じて更に別の処理のために1つ又はそれよりも多い付加的なシステム又は装置に連結することができるように構成される。
【0138】
上述のシステム及び方法を本明細書にある程度詳細に説明したが、本発明の開示は単に例示的に為されたものであり、指定されたシステムの構造及び方法の順序の変更を当業者によって行うことができ、かつ本発明に含まれるように意図されていることは理解されるものとする。
上述のように多くの文献及び特許が参照されている。参照した文献及び特許の各々は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。
均等物
当業者は、通常以上ではない実験を用いて本明細書に説明した本発明の特定的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか又は確認することができるであろう。このような均等物は、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2001年12月7日出願の米国特許仮出願第60/338,856号の恩典を主張する「PLA細胞で患者を治療するためのシステム及び方法」という名称の2002年12月9日出願の米国特許出願第10/316,127号の一部継続出願である。本出願はまた、2003年8月20日出願の「脂肪組織から細胞を分離するためのシステム及び方法」という名称の米国特許仮出願第60/496,467号、及び2003年6月25日出願の「脂肪組織から細胞を分離するためのシステム及び方法」という名称の米国特許仮出願第60/482,820号に対する優先権を主張するものである。全ての上述の出願の内容は、本明細書においてこの引用により明示的に組み込まれる。
本発明は、様々な組織から細胞、例えば、再生細胞を分離して濃縮するためのシステム及び方法に関する。本発明は、特に、脂肪組織から再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞を分離して濃縮するための自動化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療は、再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞(すなわち、身体の未分化万能細胞)のそれら自体が無制限に再生して成熟分化細胞に成長する能力を臨床的ターゲット方式で利用する。幹細胞は、胎生組織及び一部の成人臓器及び組織で成育の初期段階の間の胎芽内に見出される(Pera他、2000年)。胚幹細胞(以降「ESC」と呼ぶ)は、身体の細胞及び組織の種類の全てではなくてもその多くになることが公知である。ESCは、個体の遺伝情報の全てを含むだけでなく、身体の200+の細胞及び組織のいずれにもなる新生能力も含む。すなわち、これらの細胞は、再生医療に極めて大きな可能性を有する。例えば、ESCは、心臓、肺、又は腎臓のような特定の組織に成長することができ、その後、これらを用いて損傷及び罹患臓器を修復することができるであろう(Assady他、2001年;Jacobson他、2001年;Odorico他、2001年)。しかし、ESC由来組織は、臨床的に限界がある。ESCは、別の個体、すなわち、胎芽由来とする必要があるために、レシピエントの免疫システムにより新しい生体物質が拒絶されることになる危険性がある。このような拒絶を防止する免疫抑制薬が利用可能であるが、このような薬物は、細菌感染及びウイルスに対する免疫応答のような望ましい免疫応答も阻害することが公知である。更に、ESCの供給源、すなわち、胎芽に関する倫理的論議が十分に記録されており、近い将来に対する付加的な、恐らくは克服できない障害が呈示されている。
【0003】
成人幹細胞(以降、ASCと互換的に呼ぶ)は、ESCの利用に対する代替方法を表すものである。ASCは、多くの非胚組織にひっそりと存在し、外傷又は他の破壊性疾患の過程に応答し、損傷組織を治癒することができるように待っていると推定される(Arvidsson他、2002年;Bonner−Weir及びSharma、2002年;Clarke及びFrise、2001年;Crosby及びStrain、2001年;Jiang他、2002年a)。特に、新たに見出された科学的事実により、細胞及び組織の全ての種類ではなくてもその多くになることができる能力をESCと共有することができるASCのプールを各個人が持っていることが示されている(Young他、2001年;Jiang他、2002年a;Jiang他、2002年b;Schwartz他、2002年)。すなわち、ASCは、ESCのように再生医療を臨床的に応用するための極めて大きな可能性を有する。
【0004】
ASC集団は、骨髄、皮膚、筋肉、肝臓、及び脳の1つ又はそれよりも多くに存在することが示されている(Jiang他、2002年b;Alison、1998年;Crosby及びStrain、2001年)。しかし、これらの組織におけるASCの頻度は低いものである。例えば、骨髄中の間葉幹細胞頻度は、100,000有核細胞のうちの1つと1,000,000有核細胞のうちの1つの間と推定される(D’Ippolito他、1999年;Banfi他、2001年;Falla他、1993年)。同様に、ASCを皮膚から抽出するには、数週間にわたる複雑な一連の細胞培養段階を必要とし(Toma他、2001年)、骨格筋からのASCを臨床応用するには、2〜3週間の培養相(Hagege他、2003年)が必要である。従って、このような組織からのASCのいかなる提案された臨床応用にも、細胞精製及び細胞培養の過程により細胞数、純度、及び成熟度を増大させることが必要である。
【0005】
細胞培養段階により、細胞数、純度、及び成熟度が増大するが、これにはある代償が支払われる。この代償には、以下の技術的問題、すなわち、細胞老化による細胞機能の損失、有用である可能性がある非幹細胞集団の損失、細胞を患者に応用するのが遅れる可能性、金銭的費用の増大、及び細胞が培養中に環境微生物で汚染される危険性の増大の1つ又はそれよりも多くを含む可能性がある。骨髄からのASCの治療効果を調べる近年の研究では、基本的に全骨髄を用いて細胞培養に付随する問題を避けている(Horwitz他、2001年;Orlic他、2001年;Stamm他、2003年;Strauer他、2002年)。しかし、臨床的利点は次善最適であり、結果は、ほぼ間違いなく、骨髄で本質的に利用可能なASC用量及び純度が限定されていることに関連している。
【0006】
近年、脂肪組織は、ASCの供給源であることが示されている(Zuk他、2001年;Zuk他、2002年)。骨髄、皮膚、筋肉、肝臓、及び脳と異なり、脂肪組織は、比較的大量に収集することが比較的容易である(Commons他、2001年;Katz他、2001年b)。更に、脂肪からのASCは、骨、脂肪、軟骨、及び筋肉を含む複数の組織を生成する能力を有することが試験管内で示されている(Ashjian他、2003年;Mizuno他、2002年;Zuk他、2001年;Zuk他、2002年)。すなわち、脂肪組織は、再生医療に用いるためのASCの最適な供給源であることを示している。
【0007】
しかし、当業技術は、脂肪からのASCを収集するための適切な方法を欠いていると考えられる。現行の方法には、いくつか欠陥があるであろう。例えば、現行の方法では、脂肪組織を除去するための吸引装置を最適に収容する能力に欠ける場合がある。現行の方法はまた、組織相を処理することにより脂肪組織相を収集することからの部分的又は完全自動化にも欠けているであろう(Katz他、2001年a)。現行の方法では、更に、100mlの脂肪組織よりも大きな容積能力にも欠ける場合がある。更に、現行の方法では、組織相を処理することにより脂肪組織相を収集することからの部分的又は完全な密閉システムにも欠けるであろう。最後に、現行の方法では、試料の1つから別の試料に物質が交差汚染する付随の危険性を低減するための構成要素の廃棄性に欠ける場合がある。要約すれば、脂肪組織からASCを収集するための従来技術の方法の多くは、上述の皮膚、筋肉、肝臓、及び脳からASCを収集することに伴う技術的問題を克服しているようには見えない。
【0008】
従って、再生細胞集団、例えば、ASCを高収量、高濃度、及び/又は高純度で収集することができ、これを後抽出操作の必要性を低減するか又は存在させずに迅速かつ確実に行うことができるシステム及び方法に対する必要性が当業技術にまだ存在している。理想的には、このような装置、システム、又は方法は、レシピエントに直接入れるのに適切な方法で再生細胞を生成すると考えられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、被験者に再注入するのに適切な再生細胞、例えば、幹細胞及び始原細胞を生成するために所定の組織を分離して濃縮することができる非常に万能なシステム及び方法に関する。特に、本発明は、再生細胞を組織から分離して濃縮するための自動化システムを提供するものである。本発明のシステム及び方法で処理することができる組織の種類には、以下に限定されるものではないが、脂肪組織、血液、骨髄、筋肉、皮膚、肝臓、結合組織、筋膜、及び他の軟組織及び液状組織又は組織成分が含まれる。
【0010】
好ましい実施形態では、本発明は、被験者に再注入するのに適する脂肪組織からの再生細胞を分離して濃縮するための自動化システムを提供する。本明細書の開示による脂肪組織から細胞を分離して濃縮するためのシステムは、一般的に、収集チャンバ、処理チャンバ、廃棄物チャンバ、産出チャンバ、及びサンプルチャンバのうちの1つ又はそれよりも多くを含む。様々なチャンバは、生体物質を含有する流体が密閉無菌流体/組織通路でチャンバの1つから別のチャンバに通過することができるように、1つ又はそれよりも多くの導管を通じて互いに連結されている。いくつかの実施形態では、廃棄物チャンバ、産出チャンバ、及びサンプルチャンバは任意的である。
【0011】
システムはまた、複数のフィルタを含む。フィルタは、とりわけ脂肪組織の処理に関連する溶液に存在することがあるコラーゲン、脂肪細胞、及び組織脱凝集剤から幹細胞及び/又は始原細胞を分離するのに有効である。一実施形態では、フィルタアセンブリには、中空糸型濾過装置が含まれる。別の実施形態では、フィルタアセンブリには、浸出型濾過装置が含まれ、これは、沈殿処理と共に用いることができ、又はそうでなくてもよい。好ましい実施形態では、フィルタアセンブリは、遠心分離装置を含み、これは、溶出装置及び処理と共に用いることができ、又はそうでなくてもよい。更に別の実施形態では、システムは、これらの濾過装置の組合せを含む。本発明の濾過機能は二重とすることができ、一部のフィルタでコラーゲン、遊離脂質、遊離脂肪細胞、及び残留コラゲナーゼのようなものを最終濃縮物から除去し、他のフィルタを用いて最終生成物を濃縮する。
【0012】
他の実施形態では、システムの1つ又はそれよりも多くの構成要素は自動化され、処理機能の多くを制御する内部処理装置及び関連ソフトウエアプログラムを含む。システムの構成要素は、1回使用後にシステムの一部分を処分することができるように使い捨てとすることもできる。このようなシステムはまた、処理装置(コンピュータ及び関連ソフトウエアプログラム)とモータやポンプなどのような他の構成要素とを含む再使用可能な構成要素を含んでいる。
【0013】
一実施形態では、患者を治療する方法は、a)組織除去システムを準備する段階、b)組織除去システムを用いて、幹細胞の濃縮物を有する脂肪組織を患者から除去する段階、c)脂肪組織の少なくとも一部を処理し、処理前の脂肪組織の再生細胞の濃縮物以外の再生細胞の濃縮物を得る段階、及びd)患者に投与する前に再生細胞を組織除去システムから除去することなく再生細胞を患者に投与し、それによって患者を治療する段階を含む。
本明細書に説明するあらゆる特徴又は特徴の組合せは、このような組合せに含まれる特徴が前後関係、本明細書、及び当業者の知識から明らかになる時に互いに矛盾しないという条件で本発明の範囲に含まれるものである。
本発明の付加的な利点及び態様は、以下の詳細説明及び特許請求の範囲において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】1つのフィルタアセンブリを含む組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図2】直列構成の複数のフィルタアセンブリを有する図1と同様のシステムの図である。
【図3】並列構成の複数のフィルタアセンブリを有する図1と同様のシステムの図である。
【図4】遠心分離チャンバを含む組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図5】組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムに用いられる前置フィルタを含む収集チャンバの断面図である。
【図6】浸出濾過システムを用いる組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの処理チャンバの断面図である。
【図7】再生細胞を濃縮するための遠心分離装置を用いる再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの処理チャンバの断面図である。
【図8】図7の処理チャンバの別の断面図である。
【図9】(A)〜(C)は、本発明のシステムと共に用いられる溶出構成要素の図である。
【図10】流れの方向及びタイミングを制御するための活栓、液口、及びクランプのシステムを用いて所定の速度で組織及び流体を引くように制御された真空ポンプ又は真空供給装置をシステムの産出部に付加することによって真空システムを構成することができる、真空圧力を用いてシステムを通して流体を移動させる組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図11】正圧システムが流れの方向及びタイミングを制御するための弁、活栓、液口、及びクランプを用いてある一定の定めた速度でこのシステムを通して流体及び組織を押すか又は推進するための蠕動ポンプのような機械的手段を用いる、正圧を用いてシステムを通して流体を移動させる組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムの図である。
【図12】(A)は、流体の給送流がフィルタの孔の接線方向に流れる濾過処理の図であり、(B)は、流体の給送流がフィルタの孔と垂直に流れる濾過処理の図である。
【図13】本発明のシステムのための例示的な使い捨てセットの図である。
【図14】本発明のシステムのための例示的な再使用可能な構成要素の図である。
【図15A】図13の使い捨てセット及び図14の再使用可能な構成要素を用いて組み立てられた本発明の例示的な装置の図である。
【図15B】システムの万能性を示す2つの代替処理パラメータが示されている、本発明のシステムの自動化実施形態を制御するソフトウエアプログラムを通して実施される例示的な予めプログラムされた段階を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、以下に限定されるものではないが、脂肪、骨髄、血液、皮膚、筋肉、肝臓、結合組織、筋膜、脳及び他の神経系組織、血管、及び他の軟組織又は液状組織又は組織成分又は組織混合物(例えば、皮膚、血管、脂肪、及び結合組織を含む組織混合物)を含む様々な組織から再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞を分離して濃縮するための迅速で確実なシステム及び方法に関する。好ましい実施形態では、システムは、脂肪組織から再生細胞を分離して濃縮する。別の好ましい実施形態では、再生細胞の分離から濃縮までの方法全体をユーザの介入を最小限にした一連の連続した段階で行うことができるようにシステムが自動化される。特に好ましい実施形態では、本発明のシステム及び方法を用いて得られる再生細胞は、レシピエントの中に入れるのに適するものである。
【0016】
好ましくは、組織抽出から再生細胞を分離、濃縮してレシピエントに入れるまでの手順全体は、全て同じ施設で、実際には、手順を受けている患者と同じ室内でさえも行われるであろう。再生細胞は、抽出及び濃縮後、比較的短時間内に用いることができる。例えば、再生細胞は、患者から組織を収集してから約1時間以内に用いる準備を整えることができ、特定の状況では、組織の収集から約10〜40分以内に用いる準備を整えることができる。好ましい実施形態では、再生細胞は、組織の収集から約20分以内に用いる準備を整えることができる。抽出から分離及び濃縮を通る手順全体の長さは、患者プロフィール、収集する組織の種類及び所定の治療用途に必要な再生細胞の量を含むいくつかの因子により変化する場合がある。細胞はまた、レシピエントに治療的、構造的、又は美容的利点を生じさせることを意図した単一の作業手順に関連し、他の細胞、組織、組織断片、骨格、又は細胞成長及び/又は分化のための他の刺激要因と組み合わせてレシピエントに入れることができる。このシステムの分離及び濃縮相を超えて再生細胞を更に操作するには、このような操作の方法に相応の付加的な時間を必要とすることになることが理解される。
【0017】
様々な疾患及び障害を有する患者は、本発明の再生細胞から利益を得ることができる。例えば、心臓血管疾患及び障害、肝疾患及び障害、腎疾患及び障害、骨格筋障害、肺外傷及び障害、糖尿病、消化管疾患及び障害、神経系障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、卒中関連疾患及び障害、造血系の疾患及び障害、創傷、潰瘍及び他の皮膚疾患及び障害、外傷性傷害、火傷、放射線又は化学物質又は他の毒素誘発性傷害又は障害、及び、骨及び軟骨関連疾患及び障害を有する患者は、本発明のシステム及び方法で得られる再生細胞を用いて治療することができる。
【0018】
特定的な実施形態では、血管形成及び動脈形成が介在する疾患及び障害は、本発明のシステム及び方法を用いて得られる再生細胞で治療することができる。例えば、急性心筋梗塞、虚血性心筋症、末梢血管疾患、虚血性脳卒中、急性尿細管壊死、虚血性障害、敗血症、虚血性腸疾患、糖尿病性網膜症、神経障害、腎障害、脈管炎、虚血性脳障害、勃起障害、虚血性及び/又は外傷性脊髄損傷、多臓器系不全、虚血性歯肉疾患、及び移植関連虚血を治療することができる。
【0019】
更に、1つよりも多い生理学的システムに影響を及ぼす疾患及び障害、例えば、軟組織及び硬組織の両方に関する外傷性傷害、老化性多臓器障害の影響等も本発明のシステム及び方法を用いて得られる再生細胞で治療することができる。また、腱及び軟骨修復を促進するために及び自己脂肪移動用途を含む様々な臨床及び非臨床の美容的及び構造的用途のために再生細胞を用いることもできる。美容的用途には、例えば、顔面のひだ及び皺、口唇、胸部及び臀部、及び他の軟組織の欠陥を再構成することが含まれる。再生細胞はまた、当業技術で公知の組織工学用途に用いることもできる。
【0020】
本発明を更に容易に理解することができるように、ある一定の用語を最初に定義する。付加的な定義は、詳細な説明を通して説明する。
本明細書で用いる場合、「再生細胞」とは、本発明のシステム及び方法を用いて得られるあらゆる異種又は相同細胞を意味し、これは、臓器、組織、又は生理的単位又はシステムの構造又は機能を完全に又は部分的に再生、復元、又は置換させるか又はそれに寄与することにより、治療的、構造的、又は美容的利点をもたらすものである。再生細胞の例には、ASC、内皮細胞、内皮前駆細胞、内皮始原細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、ケラチノサイト、単分化能及び多分化能始原及び前駆細胞(及びその子孫)、及びリンパ細胞が含まれる。
【0021】
再生細胞が治療的、構造的、又は美容的利点をもたらすことができる機構の1つは、新しく生成されたか、存在するか、又は修復された組織又は組織成分の中にそれ自身又はその子孫を組み込むことによるものである。例えば、ASC及び/又はその子孫は、治療的、構造的、又は美容的な改善を引き起こすか又はそれに寄与するように、新しく生成された骨、筋肉、又は他の構造的又は機能的組織に組み込むことができる。同様に、内皮細胞又は内皮前駆細胞又は始原細胞及びその子孫を存在するか、新しく生成されたか、修復されたか、又は拡張された血管に組み込み、それによって治療的、構造的、又は美容的利点を引き起こすか又はそれに寄与することができる。
【0022】
再生細胞が治療的、構造的、又は美容的利点をもたらすことができる別の機構は、所定の組織又は組織成分の構造又は機能の生成、保持、復元、及び/又は再生を促進する分子、例えば、成長因子を発現及び/又は分泌させることによるものである。例えば、再生細胞は、分子を発現及び/又は分泌させることができ、これは、組織又は細胞の成長の促進をもたらし、これらは、次に、構造又は機能を改善するのに直接的又は間接的に参加する。再生細胞は、成長因子を発現及び/又は分泌することができ、成長因子には、例えば、「血管内皮成長因子(VEGF)」、「胎盤成長因子(PlGF)」、bFGF、IGF−II、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IL−12p40/p70、IL−12p70、IL−13、IL−6、IL−9、レプチン、MCP−1、M−CSF、MIG、PF−4、TIMP−1、TIMP−2、TNF−a、トロンボポエチン、及びそのイソ型が含まれ、以下の機能、すなわち、新しい血管の発生を刺激する、すなわち血管形成を促進する機能、既存の小さな血管(側枝)の血液運搬容量を拡大することによりその酸素供給を改善する機能、傷害の部位から離れた部位の再生細胞を可動化することによりこのような細胞が傷害の部位にホーミングして遊走するのを促進する機能、傷害部位での細胞の成長を刺激及び/又は生存を促進することにより機能又は構造の保持を促進する機能、抗アポトーシス特性を有する分子を送出することにより細胞死及び機能の永久的損失の比率又は可能性を低減する機能、及び内因性再生細胞及び/又は他の生理学的機序と相互作用する機能の1つ又はそれよりも多くを行うことができる。
【0023】
再生細胞は、組織に存在するか又は本発明のシステム及び方法を用いて分離して濃縮したようなその「未変性」形で用いることができ、又は、それらは、成長因子又は他の生物反応修飾物質で刺激又は初回刺激することにより、遺伝子移入(一過性又は安定移入)により、物理的特性(例えば、大きさ又は密度)、固体相材料に対する差次的付着性、細胞表面又は細胞内分子の表現、細胞培養又は他の生体外又は生体内操作、修飾、又は本明細書で更に説明するような分割に基づいて、得られる集団を更に分割することにより、修飾することができる。再生細胞はまた、本明細書で更に説明するような細胞の関連特性を修飾又は向上させる因子、薬物、化学物質、又は他の薬剤を送出する合成的又は生物学的骨格、材料、又は装置のような他の細胞又は装置と組み合わせて用いることができる。
【0024】
本明細書で用いる場合、「再生細胞組成物」とは、組織、例えば、脂肪組織を洗って少なくとも部分的に脱凝集した後に典型的にある一定の容積の液体中に存在する細胞の組成物を意味する。例えば、本発明の再生細胞組成物は、ASC、内皮細胞、内皮前駆細胞、内皮始原細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、分化又は脱分化脂肪細胞、ケラチノサイト、単分化能及び多分化能始原及び前駆細胞(及びその子孫)、及びリンパ細胞を含む複数の異なる種類の再生細胞を含む。再生細胞組成物はまた、本明細書に説明する組織脱凝集に用いられるか又はそれによって生じる組織断片又は残留コラゲナーゼ又は他の酵素又は薬剤に存在することができる、コラーゲンのような1つ又はそれよりも多い夾雑物を含むことができる。
【0025】
本明細書で用いる場合、「再生医療」とは、再生細胞を直接的又は間接的のいずれかで被験者に入れることにより得られるあらゆる治療的、構造的、又は美容的利点を意味する。再生医療には、本明細書に説明したもの及び当業技術で公知の疾患及び障害の全てが含まれる。
本明細書で用いる場合、「幹細胞」とは、1つ又はそれよりも多くの特定の機能を行い、自己複製する能力を有する様々な他の細胞型に分化することができる多分化能再生細胞を意味する。本明細書で開示する幹細胞の一部は、多分化能とすることができる。
【0026】
本明細書で用いる場合、「始原細胞」とは、1つよりも多い細胞型に分化することができる多分化能再生細胞を意味し、自己複製の能力は、限定されているか又は皆無である。「始原細胞」はまた、本明細書で用いる場合には、1つ又はそれよりも多い特定の機能を行い、自己複製の能力が限定されているか又は皆無である単一の細胞型にのみ分化することができる単分化能細胞も意味する。特に、本明細書で用いる場合、「内皮始原細胞」とは、血管内皮細胞に分化する能力を有する多分化能又は単分化能細胞を意味する。
【0027】
本明細書で用いる場合、「前駆細胞」とは、1つの細胞型に分化することができる単分化能再生細胞を意味する。前駆細胞及びその子孫は、高度増殖能を保持することができ、例えば、リンパ細胞及び内皮細胞は、適切な条件下で増殖することができる。
本明細書で用いる場合、「幹細胞数」又は「幹細胞頻度」とは、脂肪からの細胞(ADC)を低細胞密度(<10,000細胞/ウェル)で蒔き、MSC増殖を助ける増殖培地(例えば、10%ウシ胎仔血清、5%ウマ血清、及び抗生物質/抗真菌剤を補ったDMEM/F12培地)で増殖させるクローン検定で観察されるコロニーの数を意味する。細胞は2週間増殖させ、その後、培養物をヘマトキシリンで染色すると、50細胞よりも多いコロニーがCFU−Fとして計数される。幹細胞頻度は、蒔いた100有核細胞当たりのCFU−Fの数として計算される(例えば、1,000有核再生細胞で開始したプレートで15コロニーが計数されれば、幹細胞頻度は1.5%になる)。幹細胞数は、幹細胞頻度に得られる有核ADC細胞の総数を乗じたものとして計算される。再生細胞から増殖した高い割合(〜100%)のCFU−Fは、細胞表面分子CD105を発現するが、これは、骨髄由来幹細胞によっても発現される(Barry他、1999年)。CD105もまた脂肪組織由来幹細胞によって発現される(Zuk他、2002年)。
【0028】
本明細書で用いる場合、「脂肪組織」という用語は、脂肪を貯蔵する結合組織を含む脂肪を意味する。脂肪組織には、ASC及び内皮始原及び前駆細胞を含む複数の再生細胞の種類が含まれる。
本明細書で用いる場合、「脂肪組織の単位」という用語は、個別の又は測定可能な量の脂肪組織を意味する。脂肪組織の単位は、その単位の重量及び/又は容積を判断することにより測定することができる。上述のように識別したデータに基づいて、PLA細胞の単位は、患者から除去されると、少なくとも0.1%の細胞成分が幹細胞である、すなわち、上述のように判断した幹細胞頻度が少なくとも0.1%である細胞成分を有する。本明細書の開示に関しては、脂肪組織の単位は、患者から除去した脂肪組織の全体量又は患者から除去した脂肪組織の全体量よりも少ない量を意味することができる。従って、脂肪組織の単位は、脂肪組織の別の単位と組み合わせて、個々の単位の合計である重量又は容積を有する脂肪組織の単位を形成することができる。
【0029】
本明細書で用いる場合、「一部分」という用語は、全体量よりも少ない材料の量を意味する。小部分とは、50%未満の量を意味し、主要部分とは、50%よりも多い量を意味する。従って、患者から除去された脂肪組織の量全体未満の脂肪組織の単位は、除去脂肪組織の一部分である。
本明細書で用いる場合、「PLA細胞」という用語は、成熟脂肪細胞及び結合組織から活性細胞成分(例えば、修復性を含む成分)を分離するように処理された脂肪組織を意味する。この分画は、本明細書では「脂肪由来細胞」又は「ADC」と呼ぶ。一般的に、ADCは、脂肪組織からの細胞を洗い、分離し、濃縮することにより得られる再生細胞のペレットを意味する。ペレットは、一般的に、細胞が遠心分離チャンバ又は細胞濃縮装置の底部に凝集するように、細胞の懸濁液を遠心分離することにより得られる。
【0030】
本明細書で用いる場合、「投与する」、「導入する」、「送出する」、「配置する」、及び「移植する」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、望ましい部位への再生細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路により本発明の再生細胞を被験者に配置することを意味する。再生細胞は、細胞又は細胞成分の少なくとも一部分が生存可能である被検体の望ましい部位への送出をもたらす適切ないずれかの経路により投与することができる。被検体に投与後の細胞の生存可能期間は、数時間、例えば、24時間から数日ほどの短さから数年ほどの長さまでとすることができる。
【0031】
本明細書で用いる場合、「治療する」という用語には、疾患又は障害の少なくとも1つの有害作用又は症状を減少又は軽減することが含まれる。
本明細書で用いる場合、「治療に有効な用量の再生細胞」とは、有利か又は望ましい臨床効果をもたらすのに十分な量の再生細胞を意味する。この用量は、1回又はそれよりも多い投与で投与することができると考えられる。しかし、どれが有効用量と見なされるかの正確な判断は、以下に限定されるものではないが、患者の年齢、大きさ、疾患の種類又は範囲、疾患の段階、再生細胞の投与経路、用いる補助療法の種類又は範囲、進行中の疾患過程及び望ましい治療の種類(例えば、積極的治療法に対して従来の治療法)を含む各個人に固有の因子に基づくであろう。
本明細書で用いる場合、「被検体」という用語には、温血動物、好ましくはヒトを含む哺乳類が含まれる。好ましい実施形態では、被検体は霊長類である。更に好ましい実施形態では、被検体はヒトである。
【0032】
先に本明細書で示したように、再生細胞、例えば、幹細胞及び始原細胞は、様々な組織から収集することができる。このような全ての組織に本発明のシステムを用いることができる。しかし、脂肪組織は、再生細胞が特に豊富な供給源である。従って、本発明のシステムは、本明細書では、再生細胞の供給源として脂肪組織を用いて示すが、これは単なる例として非制限的に示すものである。
脂肪組織は、当業者に公知のあらゆる方法により得ることができる。例えば、脂肪組織は、脂肪吸引(注射器又は動力補助付き)によるか、又は脂肪組織切除、例えば、吸引補助脂肪形成、超音波補助脂肪形成、及び切除的脂肪組織切除、又はその組合せにより患者から除去することができる。脂肪組織は、除去して収集され、本明細書に説明した本発明のシステムのいずれかの実施形態により処理することができる。収集される組織の量は、ドナーの肥満度指数及び年齢、収集に利用可能な時間、到達可能な脂肪組織収集部位の利用可能性、併用中及び既存の医薬品及び条件(例えば、抗凝固剤療法)、及び組織を収集する臨床目的を含む多くの因子に依存する。例えば、痩せ型個体から抽出される脂肪組織100mlの再生細胞パーセントは、肥満ドナーから抽出される場合よりも大きい(表1)。これは、恐らく肥満個体の方が脂肪含量が多いという希釈効果を反映するものである。従って、本発明の態様の1つによれば、過体重ドナーからは、痩せ型の患者から引き抜くであろう量に比較して大量の組織を得ることが望ましいと考えられる。この所見はまた、本発明の有用性が大量の脂肪組織を有する個体に限定されないことも示している。
【0033】
【表1】
【0034】
脂肪組織を処理した後、得られる再生細胞は、実質的に成熟脂肪細胞及び結合組織を含まない。従って、本発明のシステムでは、不均一な複数の脂肪由来再生細胞を生成し、これを研究及び/又は治療の目的で用いることができる。好ましい実施形態では、細胞は、レシピエントの身体内に配置又は再注入するのに適切である。他の実施形態では、研究のためにこの細胞を用いることができ、例えば、この細胞を使用して、長期間にわたって生存することができ、更に別の研究に用いることができる幹細胞又は始原細胞株を確立することができる。
【0035】
本発明の現在好ましい実施形態に関してここで詳細に以下に説明するが、その例は添付図面に示されているものである。図面及び説明では、可能な場合は常に同じ又は同様の部分を指すのに同じか又は同様の参照番号を用いる。図面は簡略形であり、正確な縮尺でないことに注意すべきである。本明細書の開示に関しては、単に便宜上及び明快さのために、添付の図面に関して上部、下部、左、右、上方向に、下方向に、の上に、上方に、下方に、下に、後部、前部、遠位、及び近位のような方向を表す用語を用いる。このような方向を表す用語は、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0036】
本明細書の開示は、いくつかの図示の実施形態に関するが、これらの実施形態は、例として挙げたものであり、限定するために挙げたものでないことは理解されるものとする。以下の詳細説明の意図は、例示的な実施形態を説明するにも関わらず、特許請求の範囲により定める本発明の精神及び範囲に含むことができるような実施形態の全ての修正、変更、及び均等物を網羅するように解釈することである。本発明は、当業技術で従来用いられている様々な医療的手順に関して用いることができる。
【0037】
図を参照すると、本発明のシステム10は、一般的に、組織収集チャンバ20、処理チャンバ30、廃棄物チャンバ40、産出チャンバ50、及びサンプルチャンバ60の1つ又はそれよりも多くから成る。様々なチャンバは、密閉された無菌の流体/組織通路を維持しながら生体物質を含む流体がチャンバの1つから別のチャンバに通過することができるように、1つ又はそれよりも多くの導管12を通じて互いに連結される。導管は、本明細書でそれぞれ管腔及びチューブと互換的に呼ばれる剛性又は可撓性の本体を含むことができる。いくつかの実施形態では、導管は、臨床の場で従来用いられるポリエチレンチューブ、シリコーン、又は当業技術で公知のいずれかの他の材料のような可撓性チューブの形態である。導管12は、流体又は組織が通過することを望むか否かにより大きさを変えることができる。導管12はまた、システムを通って循環する組織又は流体の量に応じて大きさを変えることができる。例えば、流体を通過させるためには、導管の直径は、約0.060〜約0.750インチの範囲とすることができ、組織を通過させるためには、導管の直径は、0.312〜0.750インチの範囲とすることができる。一般的に、導管の大きさは、導管が収容することができる容積及びこの導管を通して組織又は流体を運ぶのに必要な時間の均衡を取るように選択される。システムの自動化実施形態では、上述のパラメータ、すなわち、運ぶための容積及び時間は、適切な信号がシステムの処理装置に送信することができるように特定すべきである。これによって、装置は、液体及び組織の正確な量をチャンバの1つから別のチャンバへ移動することができる。用いられる可撓性チューブは、負圧に耐え、崩壊の可能性を低減することができるべきである。用いられる可撓性チューブは、例えば、システムに用いることができる容量式ポンプによって生じる正圧にも耐えることができるべきである。
【0038】
システムの全てのチャンバは、規格IVの注射器及び吸引チューブ接続を受け入れる1つ又はそれよりも多いポート、例えば、出口22又は入口21ポートから成ることができる。ポートは、ゴム隔膜密閉注射針アクセスポート51のような密封ポートとすることができる。入口ポートは、導管により1つ又はそれよりも多いカニューレ(図示せず)に連結することができる。例えば、組織入口ポート21は、一体化された単回使用脂肪吸引カニューレに連結することができ、導管は、可撓性チューブとすることができる。導管は、一般的に、システムのチャンバの1つから別のチャンバへの流体通路を設けるように位置決めされる。この端部に向けて、導管及びポートは、例えば、手動又は自動で作動することができる吸引装置(図示せず)に連結することができる。吸引装置は、例えば、注射器又は電気ポンプとすることができる。吸引装置は、患者から組織を吸込むのに十分な負圧を与えることができるべきである。一般的に、当業者、例えば外科医に公知のあらゆる適切な吸引装置を用いることができる。
【0039】
導管12は、システムの様々な構成要素の中で材料の流れを制御するために1つ又はそれよりも多いクランプ(図示せず)を更に含むことができる。クランプは、システムの異なる領域を実質的に密封することによりシステムの無菌性を維持するのに有用である。代替的に、導管12は、システムを通る材料の流れを制御する1つ又はそれよりも多い弁14を含むことができる。弁14は、図の白丸として示されている。好ましい実施形態では、弁は、電気機械式ピンチ弁とすることができる。別の実施形態では、弁は、空気圧弁とすることができる。更に別の実施形態では、弁は、水圧弁又は機械式弁とすることができる。このような弁は、レバーに連結することができる制御システムによって作動されることが好ましい。レバーは、レバーが作動されるように手動で操作することができる。自動化実施形態では、制御システムは、レバー、並びに所定の作動条件で弁を作動させることができる処理装置に連結することができる。いくつかの自動化実施形態では、弁の作動は、この処理を最適とすることができるように部分的に自動とし、部分的にユーザの選択に委ねることができる。更に別の実施形態では、ある一定の弁を手動で作動し、他の弁は、処理装置を通して自動的に作動させることができる。また、弁14は、1つ又はそれよりも多いポンプ、例えば、蠕動ポンプ34又は容量式ポンプ(図示せず)と組み合わせて用いることができる。また、導管12及び/又は弁14は、センサ29、例えば、光学センサ、超音波センサ、圧力センサ、又はシステムを流れる様々な流体成分及び流体レベルを識別することができる当業技術で公知の他の形態のモニタで構成することができる。好ましい実施形態では、センサ29は、光学センサとすることができる。
【0040】
また、システムには複数のフィルタ36を含むことができる。いくつかの実施形態では、フィルタは、システム28のチャンバ内に含むことができる。システム内の異なるチャンバは、異なるフィルタで構成することができる。フィルタは、不要な細胞及び本システムにより用いることもある脱凝集剤から再生細胞、例えば、幹細胞及び/又は始原細胞を分離するのに有効である。一実施形態では、フィルタアセンブリ36には、中空糸型濾過装置が含まれる。別の実施形態では、フィルタアセンブリ36には、浸出型濾過装置が含まれ、これは、沈殿処理と共に用いてもよく又は用いなくてもよい。別の実施形態では、フィルタアセンブリ36には遠心分離装置が含まれ、これは、溶出装置及び処理と共に用いてもよく又は用いなくてもよい。更に別の実施形態では、システムにはこれらの濾過装置の組合せが含まれる。本発明の濾過機能は二重とすることができ、一部のフィルタが最終濃縮物からコラーゲン、遊離脂質、遊離脂肪細胞、及び残留コラゲナーゼのような物質を除去し、別のフィルタを用いて最終生成物を濃縮する。システムのフィルタには、直径及び/又は長さが20〜800μmの範囲である複数の孔を含むことができる。好ましい実施形態では、収集チャンバ20は、80〜400μmの範囲の複数の孔を備えた前置フィルタ28を有する。別の好ましい実施形態では、収集チャンバ20は、複数の265μrn孔を備えた前置フィルタ28を有する。他の実施形態では、フィルタは、取外し可能及び/又は使い捨て可能にすることができる。
【0041】
また、システムには、システムの1つ又はそれよりも多いチャンバに含まれる材料の温度を調節するように位置決めされた1つ又はそれよりも多い温度制御装置(図示せず)が含まれる。温度制御装置は、加熱装置、冷却装置、又は両方とすることができ、すなわち、加熱装置と冷却装置の間で切り換えることができる。温度装置は、組織、脱凝集剤、再懸濁剤、リンス剤、洗浄剤、又は添加剤を含むシステムを通る材料のいかなる温度も調節することができる。例えば、脂肪組織を加熱すると、脱凝集が容易になり、再生細胞産出物を冷却すると、生存度を維持するのに望ましい。また、組織処理を最適にするために予め温めた試薬が必要である場合は、温度装置の役割は、温度を上昇又は下降させることではなく、所定の温度を維持することであろう。
【0042】
密閉した無菌の流体/組織通路を維持するために、全てのポート及び弁は、システムの密封構成を維持する密閉装置を含むことができる。密閉装置は、流体、空気、及び他の夾雑物に不透過性である膜とすることができ、又は当業技術で公知の他のいずれかの適切な密閉装置とすることもできる。更に、システムの全てのポートは、システムの無菌性を損なうことなく注射器、針、又はチャンバに材料を引き出すための他の装置を収容することができるように設計することができる。
【0043】
本明細書で説明するように、組織は、いずれかの当業技術で公知の方法で患者から抽出することができる。吸込んだ組織は、システムに入れて処理する前に抽出することができる。吸込んだ組織は、一般的に、ゴム隔膜密閉注射針アクセスポート(収集チャンバ上に図示せず)のような密封入口ポートを介し、導管12を通して収集チャンバ20に移送される。代替的に、組織抽出段階は、システムの一部とすることができる。例えば、収集チャンバ20は、患者に挿入した標準カニューレを用いて組織を除去するのを容易にする真空ライン11を含むことができる。従って、この実施形態では、システム全体が患者に取り付けられる。組織は、密閉無菌通路の一部である12aのような導管を介して、入口ポート21を通って収集チャンバ20に導入することができる。収集チャンバ20は、複数の可撓性又は剛性のキャニスタ又はシリンダ又はその組合せを含むことができる。例えば、収集チャンバ20は、大きさが可変の1つ又はそれよりも多い剛性キャニスタを含むことができる。また、収集チャンバ20は、1つ又はそれよりも多い可撓性バッグを含むことができる。このようなシステムでは、バッグには、好ましくは、内部又は外部フレームのような支持体が設けられ、これによってバッグが吸引されると潰れることになる可能性を低減するのを助ける。収集チャンバ20は、処理チャンバ30で行われる処理の洗浄及び濃縮段階の前に組織を適切に洗浄して脱凝集するのに必要な量を保持する大きさにされる。収集チャンバ20に存在する組織又は流体の容積は、裸眼で容易に確かめられることが好ましい。例えば、脂肪組織から再生細胞を得るために、適切な収集チャンバは、脂肪吸引物800ml及び1200ml生理食塩水を保持する収容能力を有する。従って、一実施形態では、収集チャンバ20の収容能力は少なくとも2リットルである。別の実施形態では、血液から赤血球を分離して濃縮するために、収集チャンバ20の収容能力は少なくとも1.5リットルである。一般的に、収集チャンバ20の大きさは、患者から収集する組織の種類及び量に応じて変化することになる。収集チャンバ20は、約5mlほどの少量から約2リットルまでの組織を保持する大きさにすることができる。少量の組織、例えば5ml〜100mlに対しては、組織は、収集チャンバ20に移送する前に注射器に集めることができる。
【0044】
収集チャンバ20は、滅菌することができるあらゆる適切な生体適合性材料を用いて構成することができる。好ましい実施形態では、収集チャンバ20は、「ISO 10993」基準に説明されるような血管内接触に対する生体適合性要件を満たす使い捨ての材料から成る。例えば、ポリカーボネートアクリル又はABSを用いることができる。収集チャンバ20の流体経路は、発熱物質を含まない、すなわち、疾患伝染の危険を伴うことなく血液の使用に適することが好ましい。一実施形態では、収集チャンバ20は、チャンバに存在する組織の概略容積をユーザが視覚的に判断することができる材料から成る。他の実施形態では、収集チャンバ20内の組織及び/又は流体の容積は、自動センサ29で判断される。収集チャンバ20は、自動化実施形態では、システムが妥当な程度の精度でチャンバ内の組織及び/又は流体の容積を判断することができるように設計されることが好ましい。好ましい実施形態では、システムは、±15パーセントの精度で収集チャンバ内の容積を検知する。
【0045】
単に例示的に挙げた特定的な実施形態では、収集チャンバ20は、剛性チャンバ、例えば、メッシュの大きさが265μm(図5参照)の医療用等級のポリエステルのほぼ円錐形の前置フィルタ28を含む医療用等級のポリカーボネートで構成されたチャンバの形態である。剛性組織収集容器の大きさは、高さほぼ8インチ、直径ほぼ5インチとすることができ、壁厚は、約0.125インチとすることができる。シリンダの内部には、例えば、吸引チューブのための1つ又はそれよりも多いポート、無菌ドッキング技術で連結するためのチューブを備えた1つ又はそれよりも多いポート、及び/又はゴム隔膜を通して針穿孔アクセスするための1つ又はそれよりも多いポートを通してアクセス可能である。収集チャンバ20の内部の前置フィルタ28は、脂肪組織を保持して非脂肪組織を通すように、例えば、組織が患者から除去されるように構成されることが好ましい。より詳細には、フィルタ28は、脂肪組織を最初に収集する間、又は別の実施形態ではその後に、遊離脂質、血液、及び生理食塩水を通すことができ、脂肪組織の断片を保持することができる。この点に関して、フィルタ28は、同じか又は異なる大きさのいずれかであるが約20μm〜5mmの範囲の大きさの複数の孔を含む。好ましい実施形態では、フィルタ28は、複数の400μmの孔を含む。好ましい実施形態では、フィルタ28は、約200μm厚さで孔径が約265μm、開放面積が約47%の医療用等級のポリエステルメッシュである。この材料は、組織脱凝集後に、すすぎの間は組織を保持するが細胞はメッシュを通過させるものである。従って、患者から組織を吸込む時に、非脂肪組織を脂肪組織から分離することができる。異なる材料、メッシュの大きさ、及びポートの数及び種類を用いて、同じ機能を達成することができる。例えば、100μmよりも小さいか又は数千ミクロンほどの大きなメッシュ孔径でも、脂肪組織凝集物及び断片を保持しながら生理食塩水及び血球を通過させるという同じ目的を達成するであろう。同様に、同じ目的は、別の剛性プラスチック材料を用いることによっても又は当業者に公知であると考えられる多くの他の変更によっても達成することができるであろう。
【0046】
システム10はまた、1つ又はそれよりも多い溶液供給装置22も含むことができる。溶液供給装置には、洗浄溶液供給装置23、及びコラゲナーゼのような組織脱凝集剤供給装置24を含むことができる。収集チャンバ20には、洗浄及び脱凝集溶液又は薬剤を無菌的に組織に加えることができる密閉流体通路が含まれる。
洗浄溶液23及び脱凝集剤24のための容器は、内容物を無菌的に保持することができるあらゆる適切な容器、例えば、臨床の場で用いられるIVバッグのような折畳み可能バッグとすることができる。これらの容器は、洗浄溶液及び脱凝集剤を収集チャンバ20の内部に送出することができるように収集チャンバ20に連結された導管12eのような導管12を有することができる。洗浄溶液及び脱凝集剤は、生理食塩水23及び/又は脱凝集剤24のための容器の外側に印加される単純重力圧力によるか、又は導管、例えば、図4の導管12dに容量式ポンプを付けることを含むいずれかの当業技術で公知の方法で収集チャンバ20の内部に送出することができる。自動化実施形態では、システムの処理装置は、最初にユーザにより入力された情報(例えば、処理される組織の容積)に基づいて、様々なパラメータ、例えば、生理食塩水の容積及び洗浄に必要な時間又は反復回数、及び、脱凝集に必要な脱凝集剤の濃度及び量及び時間を計算する。代替的に、量及び時間等は、ユーザが手動で操作することができる。
【0047】
収集チャンバ内の組織及び/又は流体は、30℃〜40℃の範囲の温度に維持すべきである。好ましい実施形態では、収集チャンバ内の懸濁液の温度は37℃に維持される。いくつかの実施形態では、外科的手術又は治療の適用を遅らせることが必要な場合は、選択した組織は、後で用いるために収集チャンバに保存することができる。組織は、室温又は約室温又は約4℃に96時間まで保存することができる。
【0048】
洗浄溶液は、生理食塩水又はいずれかの他の緩衝又は非緩衝電解質溶液を含む当業者に公知のいずれかの溶液とすることができる。処理される組織の種類により、用いる洗浄溶液の種類又は組合せが決まることになる。一般的に、生理食塩水のような洗浄溶液は、脂肪組織が患者から除去されて収集チャンバに入れられた後に収集チャンバ20に入る。しかし、洗浄溶液は、脂肪組織が抽出される前に収集チャンバ20に送出することができ、又は脂肪組織と同時に収集チャンバ20に送出することもできる。収集チャンバ20では、洗浄溶液及び抽出脂肪組織は、以下に説明する方法を含むいずれかの手段で混合させることができる。
【0049】
例えば、組織は、撹拌することにより洗浄することができる(細胞生存度を最大にし、放出された遊離脂質の量を最小にする)。一実施形態では、組織は、可変度の弧を通して(例えば、約45度〜約90度の弧を通して)可変速度、例えば、約30回転/分で収集チャンバ20全体を回転させることにより撹拌される。他の実施形態では、組織は、収集チャンバの内面に固く取り付けられた1つ又はそれよりも多いパドル又は突起が含まれた収集チャンバ20全体を可変度の弧を通して(例えば、約45度〜約90度の弧を通して)可変速度、例えば、約30回転/分で回転することにより撹拌される。上述の収集チャンバ20の回転は、収集チャンバ20に取り付けられるか又はその近くの駆動機構により達成することができる。駆動機構は、単純ベルト又はギア又は当業技術で公知の他の駆動機構とすることができる。回転の速度は、例えば、30回転/分とすることができる。一般的に、高速は、大量の遊離脂質を生成することが分かっているが、最適でない場合がある。
【0050】
他の実施形態では、組織は、回転可能シャフト25を収集チャンバ20の内部に入れることにより撹拌され、この回転可能シャフトは、回転可能シャフト25に固く取り付けられた1つ又はそれよりも多いパドル25a又は突起から成り、これがシャフトが回転する時に混合物を通過する。いくつかの実施形態では、固く取り付けられた25aパドルを備えた回転可能シャフト25は、収集チャンバ20の下部に置くことができる。これは、例えば、パドル状装置を回転磁場に入れることにより(例えば、磁気撹拌子)達成することができる。代替的に、組織の撹拌は、当業技術で公知の単純撹拌装置、すなわち、回転せずに上下に振る装置を用いて達成することができる。この組織はまた、振動、撹拌、反転、その他を含むいずれかの他の当業技術で公知の手段を用いて洗浄することができる。
【0051】
望ましい量の洗浄サイクルの後に、組織脱凝集剤を収集チャンバ20に送出し、残りの脂肪組織成分から再生細胞を分離することができる。脱凝集剤は、当業者に公知のいずれかの脱凝集剤とすることができる。用いることができる脱凝集剤には、中性プロテアーゼ、コラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、「Blendzyme」酵素混合物群のメンバー、例えば、「Liberase H1」、ペプシン、超音波又は他の物理的エネルギ、レーザ、マイクロ波、他の機械的装置及び/又はその組合せが含まれる。本発明の好ましい脱凝集剤は、コラゲナーゼである。脱凝集剤は、他の溶液と共に加えることができる。例えば、コラゲナーゼを加えるのと一緒又はその直前に、生理食塩水供給装置23から送出される生理食塩水のような生理食塩水を脂肪組織に加えることができる。一実施形態では、洗浄脂肪組織は、37℃又はその付近で約20〜60分にわたってコラゲナーゼ含有酵素と混合される。他の実施形態では、高濃度のコラゲナーゼ又は同様の薬剤を加えて消化時間を低減することができる。次に、上述の撹拌方法と同様の方法で、洗浄脂肪組織が脱凝集されるまで洗浄脂肪組織及び組織脱凝集剤を撹拌することができる。例えば、洗浄脂肪組織及び組織脱凝集剤は、収集チャンバ全体をほぼ90度の弧を通して回転することにより、シャフトが回転する時に溶液を通過する1つ又はそれよりも多いパドルを含むシャフトを備えることにより、及び/又は収集チャンバの内面にパドル又は突起を含む収集チャンバ全体を回転させることにより撹拌することができる。
【0052】
脂肪由来細胞を用いる目的によっては、脂肪組織は、部分的に脱凝集するか又は完全に脱凝集するかのいずれかとすることができる。例えば、脂肪からの細胞が脂肪組織の単位と組合される実施形態では、収集した脂肪組織を部分的に脱凝集し、部分的脱凝集脂肪組織の一部分を除去した後に、収集チャンバに残っている脂肪組織の残留部分の脱凝集を継続することが好ましい場合がある。代替的に、消化する前に、洗浄脂肪組織の一部分を除去して試料容器に取っておくことができる。別の実施形態では、収集した脂肪組織は、患者に再導入して戻す前に部分的に脱凝集して細胞を濃縮する。一実施形態では、脂肪組織は、ある一定の期間、一般的に約20分未満にわたって組織脱凝集剤と混合される。次に、部分的脱凝集組織の一部分を収集チャンバから除去することができ、残りの部分的脱凝集組織は、組織脱凝集剤と更に40分間混合することにより更に脱凝集することができる。脂肪由来細胞を再生細胞の本質的に純粋な集団として用いる場合には、脂肪組織は、完全に脱凝集することができる。
【0053】
消化後、組織及び脱凝集剤溶液は、収集チャンバ内で溶液の浮遊物及び非浮遊物成分が区別されるのに十分なある一定の期間にわたって沈殿させることができる。一般的に、この時間は約15秒〜数分の範囲であるが、変更実施形態では他の時間を実施することができる。浮遊物層は、更に洗浄して濃縮することが必要な再生細胞から成る。非浮遊物層には、血液、コラーゲン、脂質、及び組織の他の非再生細胞成分が含まれる。非浮遊物層は、除去して廃棄物チャンバに入れる必要がある。
【0054】
従って、収集チャンバ20は、血液及び組織の他の非浮遊物成分が1つ又はそれよりも多い導管12を通じて1つ又はそれよりも多い廃棄物容器40に排出されるように、チャンバの最下点に出口ポート22を含むことが好ましい。収集チャンバ20は、出口ポート22が収集チャンバの下部に位置決めされるようにほぼ直立位置にある(又は、そのように配置することができる)。排出は、受動的又は能動的とすることができる。例えば、上述の非浮遊物成分は、重力を用いることにより、正又は負の圧力を掛けることにより、ポンプ34を用いることにより、又は液口32を用いることにより排出することができる。自動化実施形態では、処理装置は、ある一定の弁及び/又はポンプに信号を送って収集チャンバ20から非浮遊物層を輩出させることができる。自動化実施形態はまた、浮遊物と非浮遊物液体の間の界面に到達する時を検出することができるセンサ29を含むことができる。自動化実施形態はまた、センサ29、例えば、光学センサを含むことができ、これは、収集チャンバから出る導管を流れる流出物の光屈折の変化を検出することができる。光屈折の適切な変化は、出導管に浮遊物層が存在するという信号を送ることができ、これは、非浮遊物層が排出されたことを示すものである。次に、センサ29は、次の段階に進むように処理装置に信号を送ることができる。
【0055】
しかし、いくつかの実施形態では、組織を処理して組織の非再生細胞成分を回収することができる。例えば、ある一定の治療的又は研究的用途では、コラーゲン、タンパク質、基質又は間質成分、脂質、脂肪細胞、又は組織の他の成分が望ましいこともある。このような実施形態では、上述のように廃棄物チャンバに除去する必要があるのは、再生細胞を含む浮遊物層である。次に、非浮遊物層がシステムに保持され、必要に応じて更に処理される。
【0056】
非浮遊物層が除去された状態で、再生細胞を含む浮遊物層は、1回又はそれよりも多い回数洗浄して残留夾雑物を除去することができる。従って、収集チャンバ20には、一般的に、洗浄溶液をチャンバの内部に送出させるための1つ又はそれよりも多いポート21、及び廃棄物及び他の材料を収集チャンバ20から導出させるための1つ又はそれよりも多いポート22が含まれる。例えば、収集チャンバには、本明細書に説明したような1つ又はそれよりも多い密封入口ポートを含むことができる。また、収集チャンバ20は、洗浄溶液が収集チャンバに送出される間及び/又は廃棄物が移送されて排出される間にシステムが確実に無菌のままであるように、上部キャップ及び下部キャップのような1つ又はそれよりも多いキャップ(図示せず)を含むことができる。ポート21は、収集チャンバのキャップ上又は収集チャンバの側壁上に設けることができる。
【0057】
新しい洗浄溶液で洗浄する処理は、溶液中の非浮遊物夾雑物の残留内容物が所定のレベルになるまで繰り返すことができる。言い換えると、収集チャンバ20に残った材料は、上述の混合物の浮遊材料を含み、これには脂肪組織断片が含まれるが、これを不要な材料の量が望ましい所定のレベルに減少するまで1回又はそれよりも多い回数更に洗浄することができる。洗浄の終了点を判断する1つの方法は、組織溶液中の赤血球の量を測定することである。これは、540nm波長で吸収された光を測定することにより達成することができる。好ましい実施形態では、約0.546と約0.842の間の範囲が満足できるものと見なされる。
【0058】
洗浄及び/又は脱凝集中に、結果を向上させるために、必要に応じて様々な容器に1つ又はそれよりも多い添加剤を加えることができる。添加剤の一部の例には、洗浄及び脱凝集を最適にする薬剤、処理中に活性細胞集団の生存度を向上させる添加剤、抗菌薬剤(例えば、抗生物質)、脂肪細胞及び/又は赤血球を溶解する添加剤、又は関連の細胞集団を富化する添加剤(固相成分に示差付着させることによるか又は他の方法で細胞集団を実質的に減少又は富化することによる)が含まれる。他の可能性のある添加剤には、再生細胞(例えば、カスパーゼ阻害剤)の回収率及び生存度を促進するもの又は注入又は据付に関する有害反応の可能性を低減するもの(例えば、細胞又は結合組織の再凝集阻害剤)が含まれる。
【0059】
十分な設定時間が過ぎた後には、得られる洗浄脂肪組織断片及び組織脱凝集剤の非浮遊物分画は、再生細胞、例えば、幹細胞及び他の脂肪由来始原細胞を含むことになる。本明細書に説明するように、再生細胞を含む非浮遊物分画は、脂肪由来幹細胞のような関連の再生細胞が混合物の非浮遊物分画に存在する他の細胞及び材料から分離されることになる処理チャンバ30に移送されることになる。この非浮遊物分画は、本明細書では、再生細胞組成物と呼び、幹細胞、始原細胞、内皮前駆細胞、脂肪細胞、及び本明細書に説明する他の再生細胞を含む複数の異なる種類の細胞を含む。再生細胞組成物はまた、脂肪組織断片、又は組織脱凝集からの残留コラゲナーゼに存在するコラーゲン及び他の結合組織タンパク質及び断片自身のような1つ又はそれよりも多い夾雑物を含むこともある。
【0060】
本発明の処理チャンバ30は、再生細胞組成物がチューブ12、弁14、及びポンプ34によって無菌状態で収集チャンバ20から処理チャンバ30まで移動するようにシステム内に位置決めされることが好ましい。処理チャンバは、10mL〜1.2Lの範囲の組織/流体混合物を収容する大きさにされる。好ましい実施形態では、処理チャンバは、800mLを収容する大きさにされる。いくつかの実施形態では、収集チャンバ20からの再生細胞組成物全体が処理チャンバ30に導かれる。しかし、他の実施形態では、再生細胞組成物の一部分が処理チャンバ30に導かれ、別の部分がシステムの異なる領域、例えば、サンプルチャンバ60に導かれ、後に処理チャンバ30で処理される細胞と再び組み合わされる。
【0061】
処理チャンバ30は、滅菌することができるあらゆる適切な生体適合性材料を用いて構成することができる。好ましい実施形態では、処理チャンバ30は、「ISO 10993」基準に記載の血管内接触に対する生体適合性要件を満たす使い捨て材料から成る。例えば、ポリカーボネートアクリル、ABS、エチレンビニルアセテート、又はスチレン−ブタジエンコポリマー(SBC)を用いることができる。別の実施形態では、使い捨て処理チャンバの流体経路には発熱物質がない。処理チャンバは、従来、血液バンクで血液を処理するのに用いられているもののようなプラスチック袋の形態とすることができ、又は他の実施形態では構造的に剛性とすることができる(図6)。一実施形態では、処理チャンバ30は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている、2001年12月7日出願の本出願人が所有する米国特許出願第10/316,127号、及び2002年12月20日出願の米国特許出願第10/325,728号に開示された処理チャンバと同様とすることができる。
【0062】
処理チャンバ30は、濾過及び遠心分離及び/又はその組合せを含む細胞を分離して濃縮するのに適切ないずれかの方法で構成することができる。いくつかの実施形態では、収集チャンバ20からの再生細胞組成物は、処理チャンバ30に導入され、そこで組成物が濾過され、特定の再生細胞集団を分離及び/又は濃縮することができる。細胞濾過は、他の異なる成分又は種類の細胞から特定の成分及び細胞を分離する方法である。例えば、本発明の再生細胞組成物には、幹細胞、始原細胞、及び脂肪細胞、並びに脂肪組織断片に存在するコラーゲン又は組織脱凝集処理から得られる残留コラゲナーゼのような1つ又はそれよりも多い夾雑物を含む複数の異なる種類の細胞が含まれる。処理チャンバ30に存在するフィルタ36は、再生細胞、例えば、幹細胞又は内皮始原細胞等の特定の小集団を分離して濃縮することができる。
【0063】
液体から細胞を濾過することに関連する一部の変数には、以下に限定されるものではないが、ろ材の孔径、孔の幾何学(形状)、フィルタの表面積、濾過される溶液の流れ方向、膜貫通型圧力、特定の細胞集団の希釈、粒子の大きさ及び形状、並びに細胞の大きさ及び細胞生存度が含まれる。本明細書の開示によれば、分離又は濾過されることが望ましい特定の細胞は、一般的に脂肪由来幹細胞である。しかし、いくつかの実施形態では、特定の細胞には、内皮前駆細胞単独か又は幹細胞と組み合わせたもののような脂肪由来始原細胞を含むことができる。
【0064】
再生細胞組成物は、フィルタアセンブリ36のようなフィルタアセンブリを通して誘導することができる。いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリ36は、異なる機能を実行し、再生細胞組成物を区別可能な部分又は成分に分離する複数のフィルタを含む。例えば、フィルタの1つを再生細胞組成物からコラーゲンを分離するように構成することができ、フィルタの1つを再生細胞組成物から脂肪細胞及び/又は脂質成分を分離するように構成することができ、フィルタの1つを再生細胞組成物から組織脱凝集剤のような残留酵素を分離するように構成することができる。いくつかの実施形態では、フィルタの1つは、コラーゲン及び組織脱凝集剤を組成物から分離することのような2つの機能を行うことができる。一般的に複数のフィルタが直列に配列されるが、フィルタの少なくとも1部分は、同じく並列に配列することもできる。フィルタアセンブリ36のフィルタの直列配列を図2に示している。フィルタアセンブリ36のフィルタの並列配列を図3に示している。
【0065】
一実施形態では、フィルタアセンブリ36は、第1のフィルタ、第2のフィルタ、及び第3のフィルタを含む。第1のフィルタは、再生細胞組成物に存在するコラーゲン粒子を除去するように構成される。これらのコラーゲン粒子は、一般的に直径がほぼ0.1ミクロンであり、20ミクロンまでの長さとすることができる。コラーゲン粒子は、消化によって様々な大きさとすることができる。コラーゲン粒子はまた、原線維とすることができ、これは、捩れ及び回転を有することを意味する。本明細書に説明するいずれのフィルタもポリエーテルスルホン、ポリエステル、PTFE、ポリプロピレン、PVDF、又は場合によってはセルロースで作ることができる。コラーゲンの濾過に対する2つの可能性が存在する。まず大きな粒子を除去しようとして細胞を通過させる場合には、例えば、恐らく10ミクロン範囲のフィルタを必要とするであろう。第2の方法は、4.5ミクロンのような小さな大きさのフィルタを用いることであり、細胞を捕捉するようにコラーゲンがよく消化され、コラーゲンを通過させることを意図している。これには、フィルタから細胞を戻して浮かせる手段を必要とするであろう。また、コラーゲン繊維を引きつけて保持すると考えられるフィルタを実施する可能性も存在する。
【0066】
第2のフィルタは、再生細胞組成物中の浮遊物でない遊離未成熟脂肪細胞を除去するように構成される。一実施形態では、第2のフィルタは、ポリエステルで構成することができ、孔径が約30と約50ミクロンの間であり、好ましい孔径は約40ミクロンである。第2のフィルタとして参照するが、このような装置の配置は、第2の位置ではなく第1の位置にして大きな細胞及び粒子を最初に除去するのを容易にすることができる。第3のフィルタは、組成物に存在する未使用又は残留コラゲナーゼ又は他の組織脱凝集剤を除去するような構成にされる。好ましい実施では、コラゲナーゼは、時間が経つと変質する場合がある。一実施形態では、第3のフィルタには、直径又は長さが1μm未満の複数の孔が含まれる。いくつかの実施形態では、孔径は、1μmよりも小さくすることができる。他の実施形態では、孔径は、10kDと5ミクロンの間である。いくつかの実施形態では、第3のフィルタは、本明細書に説明するように、再生細胞集団を濃縮して小容積の生理食塩水又は他の洗浄溶液にするように構成することができる。現在好ましい方法では、最終フィルタのみが中空糸ユニットである。いずれのフィルタも必ずしも中空糸型である必要はない。再生細胞に最低限の有害作用しか及ぼさずにコラゲナーゼを除去するのに最も効率的であるように、好ましい実施例では、最終フィルタに中空糸ユニットが用いられる。装置が市販品の収集物である実施形態では、第3のフィルタは、別々の収容装置に入れられる。第3のフィルタに中空糸ユニットを用いる場合には、第1及び第2のフィルタを組み合わせて1つの収容装置に入れることは実行可能である。最終フィルタが中空糸構成でない場合には、3つのフィルタ全てを1つの収容装置に含むことができる。
【0067】
フィルタアセンブリ36のフィルタは、処理チャンバ30内に配置することができ、又は処理チャンバ30から分離した構成要素として設けることもできる。更に、フィルタアセンブリ36のフィルタは、複数の処理チャンバ内又はインライン様式に設けることができる。いくつかの実施形態では、導管又はチューブは、処理チャンバ又は各処理チャンバとして働くことができる。処理チャンバの大きさは、フィルタに連結される導管の内部容積になるように低減することができる。この種類のシステムは、組織溶液の容積を適切な大きさにすれば正確に機能することになる。従って、導管は、フィルタに流れる時に細胞を含む流体を含むことにより処理チャンバとして働くことができる。細胞/組織がシステムを準備して作動させる処理で不必要に失われないように、導管の容積を最小にするように配慮することができる。
【0068】
上述の実施形態を参照すると、洗浄細胞及び残留コラーゲン、脂肪細胞、及び/又は未消化組織脱凝集剤を含む再生細胞組成物は、濾過した溶液に存在するコラーゲン粒子が少なくなるように、及び好ましくは皆無になるように、第1のフィルタを通して組成物からコラーゲン粒子の少なくとも一部分、好ましくは実質的にその全てを除去するように誘導することができる。次に、脂肪細胞及び/又は未消化組織脱凝集剤を含む濾過した再生細胞組成物は、第2のフィルタを通して、濾過再生細胞組成物から遊離脂肪細胞の少なくとも一部分、好ましくは実質的にその全てを除去するように誘導することができる。その後、未消化組織脱凝集剤を含む2回濾過した再生細胞組成物を本明細書で説明した中空糸型濾過装置のような第3のフィルタを通し、再生細胞組成物から未消化組織脱凝集剤を除去又は低減するように誘導することができる。
【0069】
3回濾過した再生細胞組成物(すなわち、第1、第2、及び第3のフィルタを通過した後に残る組成物)は、次に、複数の出口を含む処理チャンバ30の一部分を含むことができる複数の出口に誘導することができる。これらの出口は、必要な圧力を維持するように働き、並びに収集チャンバ20、産出チャンバ50、及び/又は廃棄物容器40を含むことができる他の容器に導管を通じて接続するように働くことができる。
【0070】
一実施形態では、フィルタアセンブリ36のフィルタは、中空糸濾過部材を含む。又は、言い換えると、フィルタは、ろ材で形成された中空チューブの集合を含む。開示するシステム10に用いることができるろ材の例には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、又は混合エステル材料等が含まれる。これらのろ材の中空糸又は中空チューブは、フィルタアセンブリ36の円筒形カートリッジに含むことができる。ろ材の個々のチューブ又は繊維の内径は、一般的に、約0.1mm〜約1mmの範囲であり、好ましい値は約0.5mmである。適切な円筒形カートリッジの直径及び長さにより、カートリッジの内部に配置することができるろ材の個々のチューブの数が判断されることになる。適切な中空糸フィルタカートリッジの例の1つは、「FiberFlo(登録商標)接線流れフィルタ」、カタログ番号「M−C−050−K」(Minntech、米国ミネソタ州ミネアポリス)である。ろ材の孔径は、約10キロダルトンと約5ミクロンの間の範囲とすることができ、好ましい孔径は、約0.5ミクロンである。
【0071】
中空糸フィルタでは、各中空チューブは、第1の端部と、第2の端部と、本体内に配置されて第1の端部と第2の端部の間に延びる管腔とを備えた本体を有する。各中空チューブの本体には複数の孔が含まれる。孔は、一般的に、図12(A)に示すように、再生細胞組成物が本体の管腔を通って流れることによって濾過され、濾過された生成物が接線方向に孔を通過するような本体の向きにされる。言い換えると、液体中の小さな粒子が本体の管腔を通る流体の流れに対して接線方向に孔を通過する。再生細胞を含む組成物は、組成物が濾過される時に各中空チューブの管腔を通過する。好ましくは、組成物の流れは、各中空チューブの本体の孔の接線方向である。
【0072】
流体の接線方向の流れを用いることにより、幹細胞の濾過の効率は、他の濾過技術に対して向上させることができる。例えば、一部の濾過技術によれば、ろ材の孔は、図12(B)に示すように、フィルタが流体の流れに垂直な向きに置かれ、ろ材が濾過される流体の経路を遮断するように配置される。この種類の濾過では、再生細胞組成物から濾過される粒子、例えば、幹細胞は、フィルタの片側に蓄積し、孔を通る流体の流れを遮断する。このように遮断されることにより、フィルタの効率が減少する場合がある。更に、細胞は、流体の流れの圧力、及び、フィルタの蒸留側に蓄積する細胞の重さにより継続的に圧迫される。これによって、幹細胞の溶解が増大する場合がある。従って、流体の流れがフィルタの孔の方向に平行であるこのような濾過技術では、流体が孔を通過する時に大きな細胞及び小さな粒子の両方がろ材に対して向けられる可能性があるので望ましくない。この結果、細胞のような液体中の大きな生成物が孔を遮断し、これによって濾過作用が減少し、細胞破裂又は傷害が起こりやすくなる場合がある。
【0073】
これと対照的に、本システム10の中空糸構成では、濾過されている流体は、中空チューブの管腔の内部を流れる。フィルタ本体の孔を通過する能力を有する流体の部分は、本体の内部への流体の正圧、並びに本体の外側に掛かる負圧に助けられてそのような能力を得ている。この実施形態では、細胞は、一般的に流体の流れの圧力も他の細胞の重量も受けず、従って、幹細胞へのせん断力が減少する。従って、目詰まり率を低減し、再生細胞の溶解を低減することにより、濾過の効率と有効性を向上させることができる。濾過中の生理食塩水及び不要なタンパク質分子の大きさにより、これらの分子及び他の小さな成分は、中空チューブの本体の孔を通過して中空チューブの外側に至り、廃棄物容器40に導かれる。一実施形態では、濾過は、中空チューブろ材の外側に真空を発生させることにより改善される。再生細胞、例えば、幹細胞又は始原細胞の大きさのために、これらの細胞は、一般的に本体の孔を通過することができず、従って、中空チューブフィルタの内部(例えば、チューブの管腔)に留まり、フィルタと処理チャンバの間の導管を通じて処理チャンバ30まで又は産出チャンバ50に再度導かれる。
【0074】
1つの特定的な実施形態では、中空糸フィルタは、約0.05ミクロンの孔径であり、ほぼ550cm2の表面積のろ材を含む。個々のろ材チューブの直径は、一般的に約0.5mmである。130mlの再生細胞組成物を処理する際には、ほぼ120mlの付加的な生理食塩水を組成物に加えることができる。処理又は濾過時間は、ほぼ8分とすることができる。中空糸チューブ本体のいずれかの側に掛かる圧力(例えば、本体管腔内部及び本体外部の圧力)の差は、膜間圧力と考えられる。膜間圧力は、約1mmHg〜約500mmHgの範囲とすることができ、好ましい圧力は、約200mmHgである。中空糸濾過を用いる平均有核細胞回収率及び生存度は、生存細胞のほぼ80%とすることができる。
【0075】
このようなシステムで典型的に除去されるコラゲナーゼの量は、3対数的減少に等しい。例えば、収集チャンバから処理チャンバに移送される再生細胞組成物のコラゲナーゼの初期濃度が0.078U/mlの場合、最終的再生細胞組成物のコラゲナーゼ濃度は、0.00078U/mlになるであろう。コラゲナーゼは、中空糸フィルタから除去され、中空糸フィルタは、上述の第3のフィルタに対応している。
【0076】
上述の1つ又はそれよりも多い細胞濾過法を示す処理チャンバを図、特に図1〜図3に示している。図1〜図3を参照すると、処理チャンバ30とフィルタアセンブリ36の濾過チャンバとの間には、ポンプ34のようなポンプを設けることができる。更に、処理チャンバ30及びフィルタアセンブリ36と整列して液口32及び圧力センサ39のような液口及び圧力センサを設けることができる。また、産出チャンバ50のための取付け部品を設けることができる。これらの任意的な構成要素(例えば、ポンプ34、液口32、圧力センサ39、及び産出チャンバ50のための取付け部品)は、処理チャンバ30に収容された液体がフィルタアセンブリ36を通って流れる前にこれらの任意的な構成要素の1つ又はそれよりも多くに流れることができるように、処理チャンバ30とフィルタアセンブリ36の間に設けることができる。例えば、液体は、フィルタアセンブリ36に至る前にポンプ34を通って流れることができる。又は、液体は、フィルタアセンブリを通過する前に圧力センサ39を通って流れ、システムの前フィルタ液体圧力を得るようにすることができる。ある一定の状況では、これらの構成要素の1つ又はそれよりも多くは、図6に示す液口32のような処理チャンバ30の要素として設けることができる。図示の実施形態では、圧力センサ39は、フィルタアセンブリ36の濾過チャンバに入る時にポンプ34により生じる再生細胞組成物の圧力が判断されるように整列している。この構成により、フィルタ膜にわたる膜間圧力をモニタするのを容易にすることができる。付加的な生理食塩水又は他の緩衝液及び洗浄溶液を再生細胞組成物に加えて、組成物がフィルタアセンブリ36を通して濾過される時に不要なタンパク質を除去するのを助けることができる。このような反復洗浄を複数回行い、再生細胞の純度を向上させることができる。いくつかの実施形態では、濾過を強化するのに必要と考えられるどの段階でも生理食塩水を加えることができる。
【0077】
一例として挙げられて制限的なものではない1つの特定的な実施形態では、不要なタンパク質及び生理食塩水又は他の洗浄溶液は、次のように除去される。再生細胞並びにコラーゲン及び結合組織粒子又は断片、脂肪細胞、及びコラゲナーゼを有する組成物は、最小容積が達成されるまで一連のフィルタを通して循環される。最小容積は、システムの全保持容積及び何らかの所定の定数の関数である。保持容積は、全ての処理チャンバが空の場合にチューブ及び導管に収容される液体の容積である。一実施形態では、最小容積は15mlである。最小容積になれば、洗浄溶液の所定の容積がシステムに導入され、再生細胞組成物と混合される。次に、洗浄溶液及び再生細胞組成物のこの混合物は、再び最小容積になるまでフィルタを通して循環される。このような循環を複数回繰返し、再生細胞の純度を向上させることができ、言い換えると、組成物中の再生細胞の組成物中の他の材料に対する比を増大させることができる。図10及び図11を参照されたい。
【0078】
再生細胞組成物の不要なタンパク質が洗浄され、十分に濃縮されたと判断された後に(例示的な実施形態では、約1×105〜約1×107細胞/mlの最小濃度を用いることができ、好ましい実施形態では、最小濃度は、約1×107細胞/mlとすることができる)、産出バッグのような産出チャンバ50は、特定的な実施形態に依存して、処理チャンバ30の出口ポート及び/又はフィルタアセンブリ36に接続することができる。次に、液口32のような液口を開けて、濃縮再生細胞の産出を容易にすることができる。実施例の1つでは、何時最小濃度に達したかの判断は、実験を行って装置の電子制御装置内にプログラムされた後に経験的に為される。この判断は、何を得ることが望ましいのか、すなわち、いくつの幹細胞/始原細胞が望ましいか、又は細胞濃度の範囲に関する処理への入力とすることができる。科学的データに基づいて、所定の量の脂肪組織を得てシステムの中に入れ、望ましい産出物を達成する必要がある。液口32が開放されていれば、ポンプ34のようなポンプは、濃縮再生細胞を産出バッグに移送するように機能することができる。一実施形態では、産出バッグ50は、空の血液バッグと同様であり、一端に取付け部品を備えたチューブを有する。無菌的に産出バッグの取付け部品を出口ポートに取付けることができ、濃縮再生細胞を産出バッグに移送することができる。
【0079】
図1〜図3に示すように、真空ポンプ26をシステム10に設け、とりわけシステム内の圧力を変化させることができる。例えば、真空ポンプ26は、導管12bのような導管を通じて収集チャンバ20に連結し、収集チャンバ20内の圧力を低減することができる。また、真空ポンプ26は、導管12gのような導管により処理チャンバ30に連結することができる。ポンプ34と共に真空ポンプ26を作動することに関して、2つの別々の真空ポンプ又は供給装置を実質することができ、又はこの処理の特定の地点に必要とされる真空吸引を異なる導管に向ける弁を用いることにより単一の真空ポンプ又は供給装置を用いることができる。更に、真空ポンプ26は、導管12fのような導管を通じて廃棄物容器40に連結することができる。
【0080】
図10及び図11を参照すると、真空ポンプ26で生じる圧力を用いて、再生細胞を含む流体の流れが導管12を通るように誘導することができる。この圧力は、例えば、システム10の1つ又はそれよりも多い弁14の位置を自動又は手動で制御することにより複数の方向に供給することができる。システム10は、正圧を用いることによるか、又は負圧を用いることによるか、又はその組合せにより適切に機能するように作ることができる。例えば、再生細胞は、上述の第1のフィルタ及び第2のフィルタを通し、第3のフィルタに連結された柔らかな側面の容器に引き込むことができる。柔らかな側面の容器は、第3のフィルタの前方に一列(直列)に連結することができる。最終産出チャンバは、第3のフィルタの他方の側(例えば、下流側)にある柔らかな側面の容器とすることができる。この実施形態では、圧力を用いて1つの柔らかな側面の容器から第2の柔らかな側面の容器までフィルタを通して再生細胞を移動させる。
【0081】
システム10の別の実施形態では、幹細胞及び/又は脂肪由来始原細胞の濾過は、浸出濾過及び沈殿の組合せを用いて達成することができる。例えば、このようなシステムでは、組織再生細胞組成物(例えば、幹細胞及び/又は脂肪由来始原細胞を含む組成物)を通過し、それからフィルタを通過する生理食塩水を用いる。再生細胞組成物から細胞を浸出濾過することに関連する変数の一部には、以下に限定されるものではないが、ろ材の孔径、孔の幾何学又は形状、フィルタの表面積、濾過される再生細胞組成物の流れ方向、注入生理食塩水の流速、膜間圧力、細胞集団の希釈、細胞の大きさ及び生存度が含まれる。
システム10の一実施形態では、処理チャンバ30には、浸出濾過及び沈殿を用いて再生細胞を分離して濃縮するフィルタアセンブリ36が用いられる。限定ではなく一例として、処理チャンバ30は、図6に示すように側壁30a、上面30b、及び底面30cを有するほぼ円筒形本体であるとして形成される。上面30bには無菌液口32が設けられる。
【0082】
図6の実施形態では、処理チャンバ30は、大きな孔のフィルタ36a及び小さな孔のフィルタ36bのような2つのフィルタを含むフィルタアセンブリ36を含むように示されている。フィルタ36a及び36bの孔径は、一般的に、約0.05ミクロンと約10ミクロンの間の範囲である。大きな孔のフィルタ36aには、直径約5μmの孔を含むことができ、小さな孔のフィルタ36bには、直径約1〜3μmの孔を含むことができる。一実施形態では、フィルタの表面積は約785mm2である。第1のチャンバ37a、第2のチャンバ37b、及び第3のチャンバ37cが含まれるように、フィルタ36a及び36bにより処理チャンバ30の内部が分割される。図6に示すように、第1のチャンバ37aは、第2のチャンバ37bと第3のチャンバ37cの間に配置される。更に、第1のチャンバ37aは、入口ポート31a及び出口ポート31bを有する処理チャンバ30の領域として示されている。図示の処理チャンバ30には、ポート31a、31b、及び31cのような処理チャンバ30の外部から処理チャンバ30の内部までの連通経路を設ける複数のポートが含まれる。ポート31a、31b、及び31cは、処理チャンバ30の本体の側壁30aに配置されるように示されている。しかし、ポート31a、31b、及び31cは、他の領域に位置決めすることもできる。ポート31は、再生細胞を含む組成物を処理チャンバ30の内部に通すことができるように導管に連結した構成にされた試料入口ポートとして示されている。ポート31bは、分離されて濃縮された細胞を処理チャンバ30の内部から除去することができるように導管に連結した構成にされた出口ポートとして示されている。ポート31cは、生理食塩水のような新しい洗浄溶液を処理チャンバ30の内部に送出するように導管に連結した構成にされた入口ポートとして示されている。
【0083】
使用時には、再生細胞は、入口ポート31aを通じて中央チャンバ37aに導入することができる。生理食塩水又は他の緩衝液は、入口ポート31cを通して下部チャンバ37bに導入される。生理食塩水は、チャンバ37aの再生細胞組成物を通して約10ミリリットル/分の速度で誘導することができる。生理食塩水の流量は、それが重力の力に対抗するようになっている。生理食塩水の流れにより、チャンバ内の細胞には細胞の密度に基づいて分離する能力が与えられる。一般的に、生理食塩水が組成物を通して押し上げられると、組成物の大きな細胞が中央チャンバ37aの下部に沈殿することになり、小さな細胞及びタンパク質は、第2のフィルタ36bを通して上部チャンバ37c内に運ばれることになる。この濾過は、大きな細胞が所定位置に転がり込み、これによって小さな粒子が自由になって生理食塩水と共に運び出されるように生理食塩水の流速を調節することにより達成される。チャンバ30には、処理ユニットの3つのチャンバ内に正確な圧力勾配が確実に維持されるように無菌液口32が含まれる。上側チャンバ37cには吸収媒体33を含むことができる。吸収媒体の目的は、溶液中の不要なタンパク質を捕捉し、例えば生理食塩水の流れが減少しても、ろ材を超えて処理溶液中に戻らないことを確実にすることである。吸収媒体は、濾過で除去される材料又は成分を吸収又は引き付けるフィルタ材料の種類とすることができる。上部フィルタの上に流出ポートを加え、廃棄物を排出させるのを助けることができる。これの別の実施形態では、上部から穏やかな真空を加えて、廃棄物を引き出すのを助けることができる。図示の実施形態のように流速が比較的遅い場合には、吸収媒体を用いることができる。次に、過剰な生理食塩水及びタンパク質が廃棄物容器に運び出される。
【0084】
大きな細胞(例えば、脂肪由来幹細胞及び/又は始原細胞)が小さな細胞及びタンパク質から十分に分離されると、分離した細胞を含む組成物は、本明細書で説明するように濃縮することができる。組成物は、出口ポート31bを通してチャンバ37aから除去された後か、又はチャンバ37aにある間に更に濃縮することができる。一実施形態では、組成物中の細胞の濃度は、次のように増大する。細胞が十分に分離された後に、フィルタ36a及び36bのようなフィルタを互いに向けて移動させることができる。このような移動は、2つのフィルタ間の容積(例えば、チャンバ37aの容積)を低減するように作用する。また、処理チャンバ30に連結して振動部材を設け、組成物中の細胞が容易に集中するようにすることができる。一実施形態では、振動部材をフィルタ36b(例えば、小さな孔のフィルタ)に連結することができる。振動により、細胞がフィルタに捕捉される割合を低減することができる。組成物の容積が減少すると、過剰な生理食塩水が廃棄物として除去され、細胞が小容積に濃縮される。
【0085】
別の実施形態では、再生細胞の濃縮は次のように達成される。細胞が十分に分離されると、再生細胞組成物を別のチャンバ(図示せず)に移送することができ、そこで重力を用いて過剰な生理食塩水を濾過して除去する。好ましい実施形態では、沈殿は、浸出と同時に行うことができる。この沈殿は、孔径が約10kD〜約2ミクロンの範囲のフィルタの上部に組成物を導入することにより達成することができる。一実施形態では、適切なフィルタの孔径は約1ミクロンである。組成物中の細胞がフィルタを通って流れるのを防ぎながら、重力により、生理食塩水及び小さな粒子がフィルタを通過することができることになる。細胞の望ましい濃度が得られ、フィルタの下部から小さな粒子が濾過された後に、再生細胞組成物を撹拌してフィルタから細胞除去することができ、その後、濃縮再生細胞を産出バッグに移送することができる。小さな粒子は、廃棄物として出口を通して排出することができる。
【0086】
特定的な実施形態では、収集チャンバ20からの再生細胞組成物は、処理チャンバ30に運ばれ、そこで組成物は遠心分離され、再生細胞を分離して濃縮することができる。遠心分離の原理は、当業技術で公知であり、簡潔にするために本明細書では繰り返さないことにする。本明細書では、標準の当業技術で公知の遠心分離装置、構成要素、及びパラメータを用いる。遠心分離装置の一部として用いる例示的な処理チャンバを図7及び図8に示している。一般的に、遠心分離装置により、遠心分離チャンバ(図7に示すようなもの)が軸を中心として回転し、それによって溶液中の細胞に掛かる力が重力よりも増大する。溶液中の密度がより高いか又はより重い材料は、一般的に、遠心分離チャンバ、すなわち、図7の産出チャンバ50の一端に沈殿して再生細胞ペレットを形成する。次に、ペレットを再び懸濁し、望ましい細胞濃度及び/又は望ましい細胞及び媒体容積の溶液を得ることができる。図7に示す処理チャンバは、遠心力及び重力の両方を用い、細胞を分離して濃縮するように構成されている。詳細には、遠心分離中は、遠心力により再生細胞組成物の密度が高い成分、例えば、再生細胞が遠心分離チャンバの最も外側の端部に誘導される。遠心分離チャンバが遅くなり、最終的に停止すると、重力は、再生細胞が遠心分離チャンバの最も外側の端部に留まって細胞ペレットを形成するのを助ける。従って、細胞ペレットを分配することなく、再生細胞組成物の不要な成分、すなわち、廃棄物を除去することができる。
【0087】
本発明の更に別の実施形態では、処理チャンバには、回転膜フィルタの形態の細胞濃縮機を含むことができる。遠心分離処理の別の実施形態では、遠心溶出法を用いることもできる。この実施形態では、細胞は、個々の細胞沈殿速度に基づいて分離することができ、遠心分離により加えられる方向(例えば、外向き)力により、細胞及び溶質が異なる速度で沈殿する。溶出では、ターゲット細胞集団の沈殿速度は、遠心力の反対方向に溶液をポンプで送り出すことにより与えられる反対(例えば、内向き)流速と反対である。対向流は、溶液中の細胞及び粒子が分離されるように調節される。溶出は、細胞分離の多くの例で用いられており(Inoue,Carsten他、1981年;Hayner,Braun他、1984年;Noga、1999年)、当業者は、流れ及び遠心分離パラメータを最適にするのに用いられるこの原理及び実施を本開示に照らしてここに用いることができる。
【0088】
図9は、本発明による溶出の実施に関連する原理を示している。溶出実施形態は、回転ロータを用いて力が溶液に加えられる範囲では、遠心分離の実施と同様とすることができる。この実施形態の溶出分離に関連する変数の一部には、以下に限定されるものではないが、回転チャンバの大きさ及び形状、ロータの直径、ロータの速度、対向流チューブの直径、対向流の流速、並びに溶液から除去される粒子及び細胞の大きさ及び密度が含まれる。遠心分離におけるように、再生細胞は、個々の細胞密度に基づいて分離することができる。
【0089】
一実施形態では、図9(A)に示すように、再生細胞組成物、例えば、再生細胞及びコラゲナーゼを含む溶液が回転ロータのチャンバに導入される。溶液をチャンバに加えた後に、所定の流速で付加的な生理食塩水をチャンバに加える。生理食塩水の流速は、ロータの速度、細胞直径、及び経験的に確立したチャンバ定数の関数として予め決めることができる。流速は、例えば、IVポンプと同様の装置で制御されることになる。付加的な生理食塩水の目的は、図9(B)に示すように、大きな粒子がチャンバの一方の側に移動することになり、小さな粒子が他方に移動することになるロータチャンバの内部の条件を整えることである。流れは、図9(C)に示すように、この用途では小さな粒子がチャンバを出て廃棄物容器に移動するように調節される。この移動により、ロータチャンバ内の溶液が幹細胞のような細胞の実質的に均質な集団を有することになる。幹細胞が溶液(不要なタンパク質及び遊離脂質がチャンバから除去されている)中の品目の残りから分離されたと判断された後に、対向流が停止される。次に、チャンバ内の細胞は、チャンバの外壁に濃縮ペレットを形成することになる。対向流を逆向きにし、細胞ペレットを産出バッグに移送する。
【0090】
本明細書で上述したように、処理チャンバ30又は産出チャンバ50には、1つ又はそれよりも多いポート、例えば、ポート51又は52を含むことができる。これらのポートの1つ又はそれよりも多くは、上述の方法のいずれかの組合せを用いて得られた再生細胞又はその一部を、導管を通じて他の外科的装置、細胞培養装置、細胞浸漬装置、遺伝子治療装置又は精製装置に運ぶように設計することができる。また、これらのポートは、システム内の又は上述と同じ目的の別のシステムの一部としての付加的なチャンバ又は容器に導管を通じて再生細胞を運ぶように設計することができる。また、ポート及び導管を用いて、1つ又はそれよりも多い添加剤、例えば、成長因子、再懸濁流体、細胞培養試薬、細胞増殖試薬、細胞保存試薬、又は遺伝子を細胞に移送する薬剤を含む細胞修飾試薬を加えることができる。また、ポート及び導管を用いて、移植材料(例えば、骨格又は骨断片)のような別のターゲット、並びに他の外科的移植物及び装置に再生細胞を運ぶことができる。
【0091】
また、細胞を更に処理する段階は、現行のシステムの使い捨てセットの相互接続を再構成することにより、現行のシステムの処理装置を再プログラミングすることにより、現行のシステムに対して異なるか又は付加的な容器及び/又はチャンバを設けることにより、細胞を1つ又はそれよりも多い付加的なシステム又は装置及び/又はそのいずれかの組合せに運ぶことにより開始することができる。例えば、システムは、上述の手段のいずれかにより、システムを用いて得られた再生細胞に以下の1つ又はそれよりも多くを行うことができるように再構成することができる。すなわち、細胞増殖(1つ又はそれよりも多い再生細胞の種類)及び細胞維持管理(細胞シートすすぎ及び媒体交換を含む)、細胞培養、細胞播種、一過性形質移入(バルク供給品からの質移入細胞の播種を含む)、収集(酵素的、非酵素的収集及び機械的掻き取りによる収集)、細胞生存度の測定、細胞蒔き付け(例えば、増殖のための個々のウェルから細胞を採取する段階と新しいウェルに細胞を入れて増殖する段階を含む、マイクロタイタープレート上で)、高収量スクリーニング、細胞治療への適用、遺伝子治療への適用、組織工学への適用、治療タンパク質への適用、ウイルスワクチンへの適用、バンキング又はスクリーニングのための再生細胞又は上清の収集、細胞増殖、溶解、接種、感染症又は誘発の測定、細胞株(ハイブリドーマ細胞を含む)の生成、透過性研究のための細胞培養、RNAi及びウイルス抵抗研究のための細胞、ノックアウト及び遺伝子導入動物研究のための細胞、親和精製研究、構造生物学への適用、検定法開発、及びタンパク質工学への適用である。
【0092】
例えば、特定の用途のために再生細胞集団の増殖が必要であれば、この集団を優先的に増殖させ、同時に他の集団が維持される(及び、それによって選択細胞が増殖すれば希釈により低減される)か又は必要な増殖条件が欠如するために消失される培養条件を用いる手法を用いることができる。Sekiya他は、この点に関して骨髄由来幹細胞に対して用いることができる条件を説明している(Sekiya他、2002年)。この手法(組織培養プラスチックへの示差的付着あり又はなし)は、本発明の別の実施形態に適用することができる。この実施形態では、最終再生細胞ペレットを産出チャンバから除去し、細胞培養成分を供給する第2のシステムに入れる。これは、従来の実験室用組織培養インキュベータ又はTsao他の米国特許第6,001,642号又はArmstrong他の米国特許第6,238,908号に説明されるようなバイオリアクタ型装置の形態とすることができる。代替的実施形態では、細胞増殖又は細胞培養成分を現行のシステム、例えば、産出チャンバに加えて、脂肪由来細胞集団の短期間付着及び/又は細胞培養を可能にすることができる。この代替的実施形態では、細胞培養及び/又は細胞増殖構成要素をシステムと一体化し、このシステムから細胞を除去して別のシステムに入れる必要性を排除することができる。
【0093】
処理中に、必要に応じて、1つ又はそれよりも多い添加剤を様々なチャンバ又は容器に加えるか又は供給して結果を向上させることができる。また、これらの添加剤は、現行のシステムに関連するか又は現行のシステムから分離した別のシステムの一部として供給することができる。例えば、いくつかの実施形態では、システムから再生細胞を除去することを必要とせずに添加剤を加えるか又は供給する。他の実施形態では、添加剤を含む新しい容器又はチャンバをシステムの未使用部分に無菌状態で連結することにより添加剤を加えるか又は供給する。更に別の実施形態では、本発明のシステムに連結されていない第2のシステム又は装置に添加剤を加えるか又は供給する。添加剤の一部の例には、洗浄及び脱凝集を最適化する薬剤、処理中の活性細胞集団の生存度を向上させる添加剤、抗菌薬剤(例えば、抗生物質)、脂肪細胞及び/又は赤血球を溶解する添加剤、又は本明細書に説明するような関連の細胞集団を豊富にする(固体相成分への示差的付着性によるか又は他の方法で細胞集団を実質的に低減するか又は豊富にする)添加剤が含まれる。
【0094】
例えば、均質な再生細胞集団を得るために、例えば、幹細胞又は始原細胞上、例えば内皮前駆細胞上に存在する抗原を認識して結合する細胞特異的抗体を用いることのような特定の再生細胞種を分離して濃縮するためのあらゆる適切な方法を用いることができる。これらには、正の選択(ターゲット細胞を選択)、負の選択(不要な細胞を選択的に除去)の両方、又はその組合せが含まれる。また、特定の酵素が作用すると蛍光を発する分子を用いて選択する際には、酵素のような細胞内マーカを用いることもできる。更に、最終細胞ペレット内の再生細胞の特定の集団が示差的に付着し及び/又は溶出することを可能にするように選択した付着特性を有する固体相材料をシステムの産出チャンバに挿入することができる。
【0095】
この示差的付着法の代替的実施形態には、ターゲット再生細胞及び不要細胞上に示差的に表出する表面分子を認識する抗体及び/又は抗体の組合せを用いることが含まれるであろう。特定の細胞表面マーカ(又はその組合せ)の表出に基づく選択は、抗体が固体相支持体構造に(直接的又は間接的に)取り付けられる別のよく用いられる技術である(Geiselhart他、1996年;Formanek他、1998年;Graepler他、1998年;Kobari他、2001年;Mohr他、2001年)。
【0096】
別の実施形態では、細胞ペレットは、再懸濁され、流体材料の上(又は下)に積層され、連続的又は非連続的密度勾配が形成され、細胞密度に基づいて細胞集団を分離するために遠心分離装置に入れることができる。同様の実施形態では、アフェレーシス(Smith、1997年)及び溶出(対向流あり又はなし)(Lasch他、2000年)(Ito及びShinomiya、2001年)のような連続流の手法を用いることもできる。
【0097】
添加剤の他の例には、本明細書で説明するように、細胞分化因子、成長促進剤、免疫抑制剤、医療用装置、又はそのいずれかの組合せのような付加的な生物学的又は構造的成分を含むことができる。例えば、他の細胞、組織、組織断片、VEGF及び他の公知の血管原性又は動脈原性の成長因子のような成長因子、生物学的に活性又は不活性化合物、再吸収可能な骨格、又は、送出、有効性、耐容性、又は再生細胞の集団の機能を向上させるように意図された他の添加剤を加えることができる。また、再生細胞集団は、DNAの挿入によるか、又は構造的又は治療的目的を導出するために再生細胞の機能を変化、向上、又は補足するように細胞培養システム(本明細書に説明のものか又は当業技術で公知のもの)を配置することによっても修正することができる。例えば、幹細胞に対する遺伝子移入技術は、(Morizono他、2003年;Mosca他、2000年)に開示するように当業者には公知であり、これには、ウイルス移入技術を含むことができ、より詳細には、(Walther及びStein、2000年)及び(Athanasopoulos他、2000年)に開示されるようなアデノ関連ウイルス遺伝子移入技術を含むことができる。また、(Muramatsu他、1998年)に開示するように非ウイルスに基づく技術を行うこともできる。また、1つ又はそれよりも多い細胞の分化因子、例えば、成長因子又はサイトカインを符号化する遺伝子を加えることができる。様々な細胞分化剤の例は、(Gimble他、1995年;Lennon他、1995年;Majumdar他、1998年;Caplan及びGoldberg、1999年;Ohgushi及びCaplan、1999年;Pittenger他、1999年;Caplan及びBruder、2001年;Fukuda、2001年;Worster他、2001年;Zuk他、2001年)に開示されている。また、抗アポトーシス因子又は薬剤を符号化する遺伝子も加えることができる。遺伝子(又は、遺伝子の組合せ)の添加は、以下に限定されるものではないが、アデノウイルス形質移入、「遺伝子銃」、リポゾーム媒介性形質移入、及びレトロウイルス又はレンチウイルス媒介性形質移入、プラスミド、アデノ関連ウイルスを含む当業技術で公知のいずれかの技術によることができる。次に、これらの再生細胞は、原位置で形質移入を継続又は開始することができるように、時間が経つと遺伝子を細胞に放出及び/又は呈示することができる遺伝子送出媒体を担持する担体材料と共に移植することができるであろう。
【0098】
細胞及び/又は組織が得られた患者以外の患者に細胞及び/又は細胞を含む組織を投与する場合、細胞及び/又は組織を受け取る患者に1つ又はそれよりも多い免疫抑制剤を投与して移植片の拒絶を低減し、好ましくは防止することができる。本明細書で用いる場合、「免疫抑制薬又は抑制剤」という用語は、正常な免疫機能を阻害又は妨害する医薬品を含むものとする。本明細書に開示した方法に適切な免疫抑制剤の例には、米国特許公開第20020182211号に開示されているCTLA4及びB7経路を通じたT細胞及びB細胞のカプリングを妨害する薬剤のようなT細胞/B細胞同時刺激経路を阻害する薬剤が含まれる。好ましい免疫抑制剤は、シクロスポリンAである。他の例には、ミコフェノール酸モフェチル、ラパミシン、及び抗胸腺細胞グロブリンが含まれる。一実施形態では、免疫抑制薬は、少なくとも1つの他の治療薬剤と共に投与される。免疫抑制薬は、望ましい治療効果を達成するのに十分な用量で投与経路に合せた剤形で被験者に投与される。別の実施形態では、免疫抑制薬は、本発明の再生細胞に耐性が誘発されるのに十分な時間にわたって一時的に投与される。
【0099】
これらの実施形態では、再生細胞は、本明細書に記載の撹拌装置のような装置及び関連する方法を含むいずれかの当業技術で公知の方法で添加剤に接触し、結合され、混合され、又は添加されることができる。例えば、揺動、反転、圧縮パルス、又は移動ローラを用いることができる。
別の態様では、細胞集団は、レシピエントに入れて、再吸収可能なプラスチック鞘又は「MacroPore Biosurgery,Inc.」により製造されるもののような他の材料及び関連構成要素により囲むことができるであろう(例えば、米国特許第6,269,716号、第5,919,234号、第6,673,362号、第6,635,064号、第6,653,146号、第6,391,059号、第6,343,531号、及び第6,280,473号を参照されたい)。
【0100】
上述の実施形態の全てにおいて、分離及び濃縮された再生細胞の少なくとも一部分は、本出願人に譲渡された2001年9月14日出願の米国特許仮出願第60/322,070号の恩典を主張する2002年9月12日出願の「非造血性組織からの非胎芽細胞の保存」という名称の米国特許出願第10/242,094号に説明されているように凍結保存することができる。これらの内容は、本明細書においてその全体が引用により明示的に組み込まれている。
【0101】
処理の最後で再生細胞は、産出チャンバから手動で回収することができる。細胞は、皮下、筋肉内、又は細胞を患者のターゲット部位に送出することができる他の技術のいずれかによってレシピエントに投入するために、注射器のような送出装置に装填することができる。言い換えると、細胞は、当業者に公知のあらゆる手段により患者に投入することができる。好ましい実施形態には、注射針又はカテーテルにより、又は直接外科的な移植により投入することが含まれる。他の実施形態では、細胞は、細胞を患者に投入するのに用いることができる容器、注射器、又はカテーテル等の形態とすることができる産出チャンバに自動的に移送することができる。また、容器を用いて、後に用いるか又は凍結保存するために細胞を保存することができる。全ての回収法は無菌状態で行われる。外科的移植の実施形態では、細胞は、本明細書に説明した予め形成された基質又は骨格のような添加物と共に投与することができる。
【0102】
本発明の好ましい実施形態(例えば、図4に示す実施形態)では、システムは自動化されている。別の実施形態では、システムは、自動及び手動構成要素の両方を有する。システムは、再使用可能なハードウエア構成要素又はモジュールに連結されるか又は装着された1つ又はそれよりも多い使い捨て構成要素を含むことができる。本発明の自動化システムにより、システムが適切に作動するように促すスクリーンディスプレイ(図16参照)が提供される。また、自動化システムにより、システムの使い捨て構成要素を適切に設置するための手順及び/又は段階的指示の状態を提供するスクリーンも提供される。また、スクリーンは、システムの問題又は故障が起こった場合はそれも示し、適切な場合には「トラブルシューティング」手引きも示すことができる。一実施形態では、スクリーンは、例えば、タッチスクリーンでユーザがシステムにパラメータを入力することができるユーザインタフェーススクリーンである。
【0103】
部分的及び完全な自動化システムには、ユーザ入力に基づいて処理の1つ又はそれよりも多い段階を作業して自動化するシステムのための制御論理を提供する処理装置(例えば、マイクロプロセッサ又はパーソナルコンピュータ)及び関連ソフトウエアプログラムを含むことができる。いくつかの実施形態では、システムの1つ又はそれよりも多い態様は、処理装置に含まれるソフトウエアを通じてユーザプログラム可能にすることができる。処理装置は、「読取専用メモリ(ROM)」に1つ又はそれよりも多い予めプログラムされたソフトウエアプログラムを有することができる。例えば、処理装置は、血液を処理するために特別仕様にした予めプログラムされたソフトウエア、脂肪組織を処理して少量の再生細胞を得るための別のプログラム、及び脂肪組織を処理して大量の再生細胞を得るための別のプログラムを有することができる。また、処理装置は、必要な再生細胞の量、処理される組織の種類、必要な後処理操作の種類、治療用途の種類などのような関連情報のユーザ入力に基づいて処理を最適化する適切なパラメータをユーザに提供する予めプログラムされたソフトウエアを有することができる。
【0104】
また、このソフトウエアにより、システムのポンプ及び弁を制御することによって特定のチューブ経路に沿う流体及び組織の進入及び退出を制御する段階、作業の適切な順序及び/又は方向を制御する段階、圧力センサで閉塞を検出する段階、混合機構、容積測定機構を用いて特定の通路に沿って移動される組織及び/又は流体を測定する段階、熱制御装置を用いて様々な構成要素の温度を維持する段階、及びタイミング及びソフトウエア機構で分離及び濃縮処理を一体化する段階のような段階を自動化することができる。また、処理装置は、処理する組織の種類及び/又は収集する細胞集団又は下位集団、行う手順の種類(例えば、再生細胞で増加させた脂肪組織を用いる組織増強、又は再生細胞コーティング骨グラフトを用いる骨修復用途のための細胞処理)に基づいて遠心分離速度を制御することができる。また、処理装置には、標準パラレル又はシリアルポート、又は他のコンピュータ又はネットワークと連絡する他の手段を含むことができる。従って、処理装置は、自立ユニットとすることができ、又は本明細書に説明する更に別の処理方法のための関連する1つ又はそれよりも多い付加的装置とすることができる。
【0105】
このソフトウエアにより、例えば、使い捨て構成要素のロット番号、温度及び容積測定値、組織容積及び細胞数パラメータ、投与する酵素の用量、培養時間、オペレータ識別、日付及び時間、患者識別などを含む「試験データ」を自動収集することができる。装置の好ましい実施形態では、これらの変数(例えば、使い捨てセットのロット番号及び使用期限、「コラゲナーゼ」のロット番号及び使用期限、患者/試料識別等)を処理の文書化の一部として処理装置にデータ入力することができるように、バーコード読取システムのような文字認識システムは一体化されるであろう。これによって、データ入力誤差の機会が減少すると考えられる。このようなバーコード読取システムは、USB又は他のインタフェースポート及び当業技術で公知のシステムを用いて容易に処理装置に組み込むことができる。従って、この装置により、データ入力及び処理の文書化が集中制御されると考えられる。これらのパラメータの印刷レポートは、システムのプログラムされた作業のユーザ定義パラメータの一部とされるであろう。勿論、これは、プリンタ構成要素(ハードウエア及びドライバ)又はソフトウエア内のプリンタドライバ、それに加えて装置のハードウエア内のプリンタのためのインタフェース出力コネクタ(例えば、USBポート)の一体化を必要とすると考えられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、システムは完全自動化システムである。例えば、ユーザは、最初に処理する組織の量を選択し、システムを患者に取付けることができ、次に、システムは、自動的に必要な組織を判断し、更にユーザ入力されなくても途切れることなく順序通りに再生細胞を分離して濃縮することができる。また、ユーザは、システムが必要な量の組織を判断して組織を処理することができるように、必要な再生細胞の量を入力することができる。また、完全自動化システムには、いくつか(例えば、2つ又はそれよりも多く)のユーザ入力パラメータ、例えば、洗浄の反復回数、遠心分離の速度等に基づいて再構成することができるシステムも含まれる。また、システムは、半自動モードで作動することができ、その作動中に、システムは、ユーザが介入することなくいくつかの段階を通過するが、ある一定の処理が起こる可能性がある前にはユーザの介入が必要である。他の実施形態では、システムは、ユーザが所定の作業を所定の回数行うように案内する指示を表示する単一の一体化されたシステムである。例えば、処理装置は、チューブ、チャンバ、及びシステムの他の構成要素を適切に挿入するのに必要な段階を通してユーザに促すことができる。従って、ユーザは、作業が適切な順序で行われていることを確認することができる。このようなシステムでは、更に、処理の段階が不注意に作動するか又は停止するのを防ぐためにユーザが各作業段階を確認することが必要である可能性がある。別の実施形態では、システムは、チューブ、チャンバ、閉塞の不在等が正しく挿入されていることを確認するために自動試験を開始することができる。更に別の実施形態では、本発明のシステムは、システムを通る組織の流れの自動制御を通して複数回の分離及び濃縮処理を行うようにプログラムすることができる。この特徴は、例えば、そうでなければ失われるであろう組織をシステムに収集し、組織からの再生細胞を分離し、濃縮して患者に戻す、患者に対する手術中に重要であると考えられる。
【0107】
上述のように、システムの構成要素は、システムの一部分を1回用いた後に処分することができるように使い捨て(本明細書では「使い捨てセット」と呼ぶ)とすることができる。このように実施すると、患者組織と接触するあらゆる表面が使用後に確実に処分されることになるのを保証することを助けることができる。例示的な使い捨てセットを図13に示している。好ましい実施形態では、システムの使い捨てセットは、用いるのが容易で装填するのも容易であり、多くのチューブ接合部とチューブ接合部の複雑なルーティングとの必要性が消失する利用可能な「市販品」になるように、予め滅菌して包装される。このような使い捨て構成要素は、製造するのが比較的廉価であり、従って、その処分のための実質的な費用は生じない。一実施形態では、使い捨てシステム(本明細書では「使い捨てセット」と互換的に呼ぶ)は、収集チャンバ20、処理チャンバ30、廃棄物チャンバ40、産出チャンバ50、フィルタアセンブリ36、試料バッグ60、及び関連導管12又はチューブを含むか、本質的にこれらから成るか、又はこれらから成る。システムの使い捨てセットの好ましい実施形態では、収集チャンバ20及び処理チャンバ30は、剛性フレームに収容された導管12により連結される。また、処理チャンバ30の回転密封ネットワーク(図7及び図8)も同じ剛性フレームに収容することができる。別の好ましい実施形態では、使い捨てセットの様々なチャンバ及び容器は、ポンプ、弁、センサ、及びシステムを自動化する他の装置がユーザの介入なしで必要に応じて適切に作動されるか又は非作動されるように、システムの処理装置と通信することができる必要なインタフェースから成る。また、このインタフェースにより、システムを設定する時間及び専門的知識も減少し、システムを適切に設定する方法を示して誤った設定の場合はユーザに警告することによりエラーも減少する。
【0108】
本発明の使い捨てセットのほとんどは、多くの共通の要素を有することになる。しかし、システムの異なる用途には、使い捨てセットの一部とすることができる付加的な構成要素を必要とする場合があることを当業者は認識するであろう。従って、使い捨てセットは、患者から脂肪又は他の組織を得て再生細胞を患者に戻すのに適切な1つ又はそれよりも多い針又は注射器を更に含むことができる。含まれる針及び注射器の型番及び種類は、処理する組織の種類及び量に依存することになる。使い捨てセットは、洗浄流体及びシステムに用いられる他の処理試薬を保持するための1つ又はそれよりも多い剛性又は可撓性の容器を更に含むことができる。例えば、使い捨てセットには、生理食塩水、酵素、及び手順に必要なあらゆる他の治療又は交換流体を保持するための容器を含むことができる。更に、適切な洗浄溶液、再懸濁流体、添加剤、薬剤、又は移植材料に本発明のシステム及び方法と併せて用いるための使い捨てセットを備えることができる。
【0109】
本発明に説明された又はそれ以外に本発明を実施するのに必要なシステム構成要素、機器、又は供給品のいかなる組合せもキットの形態で準備することができる。例えば、本発明のキットには、例えば、注射器に基づく脂肪吸引に最適な長さ及びゲージの針と、少量の組織を処理することができる好ましいろ材を含む無菌注射器とを含むことができる。本発明に用いることができ、本発明のキットにも含むことができる他の例示的な機器及び供給品を表II及び表IIIに列記する。
以下の表IIは、本発明のシステム及び方法による脂肪由来再生細胞を得るのに用いることができる供給品の例を特定するものである。
【0110】
【表2】
【0111】
以下の表IIIは、本明細書に開示するシステム及び方法と共に用いることができる機器を特定するものである。
【0112】
【表3】
【0113】
システムの再使用可能な構成要素は、収集チャンバと、ポンプと、弁及びポンプ制御装置を作動する様々なセンサとのための撹拌機構、遠心分離装置モータ、遠心分離装置モータの回転フレーム、ユーザインタフェーススクリーン及びUSBポート、使い捨てセットが再使用可能なハードウエア構成要素及び他の付随装置に確実に取り付けられてそれと接続するように使い捨てセットを結合する連動装置又はドッキング装置又は構成を含むか、本質的にそれらから成るか、又はそれらから成る。例示的な再使用可能な構成要素を図14に示している。好ましい実施形態では、再使用可能な構成要素には、再生細胞組成物から再生細胞を分離して濃縮するための手段、例えば、回転遠心分離装置が含まれる。この実施形態では、再使用可能な構成要素は、図15Aに示すような使い捨てセットの処理チャンバ(遠心分離チャンバを含む)の一部分に連結され、インタフェースで接続するように設計される。再使用可能な構成要素中の再生細胞を分離して濃縮するための手段は、回転遠心分離装置に限定されず、回転膜フィルタを含む本明細書に説明されるあらゆる他の構成も含むことができることが理解される。また、再使用可能な構成要素は、いくつかの異なる組織処理手順を行ってそれに応じてシステムの様々なポンプ及び弁を選択的に作動するための予めプログラムされたソフトウエアを含む本明細書に記載の処理装置を収容することができる。また、処理装置は、ドナー/患者情報を保存して後にダウンロードしたり編集するために情報及び他のデータの収集物を処理するためのデータ保存機能を含むこともできる。再使用可能な構成要素は、様々な使い捨てセットと共に用いることができる。使い捨てセットは、再使用可能な構成要素に存在する処理装置が信号を制御することができ、すなわち、使い捨てセットの様々な構成要素、並びに再使用可能な構成要素及び他の関連装置及びシステムの様々な構成要素に対して信号を送受信することができる方法で使い捨てセットが再使用可能なハードウエア構成要素に確実に取り付けられてそれとインタフェースで接続するように、例えば使い捨てセットを結合する連動装置又は構成を用いて再使用可能な構成要素に接続される。
【0114】
一実施形態では、システムに用いるための使い捨てセットは、約800mLの組織を収容することができる収集チャンバ20と、収集チャンバ20で洗浄されて消化された約800mLの組織により生成された再生細胞組成物を処理することができる処理チャンバ30と、少なくとも0.5mLの再生細胞を収容することができる産出チャンバ50と、約10Lの廃棄物を収容することができるウエスタ容器40とを含む。この実施形態では、ハードウエア装置は、24”L×18”W×36”H以下の大きさである。使い捨てセット並びにハードウエア装置の様々な構成要素を必要に応じて代替寸法に構成することができ、これらも無制限に本発明に含まれるものとする。
【0115】
システムの使い捨て構成要素は、装置上に容易に配置される。用いられる使い捨てセットは、対応する再使用可能な構成要素と共に組み立てられた図面で図15Aに示されている。システムは、不適切に装填された使い捨て構成要素を検出することができるように設計されることが好ましい。例えば、各使い捨てセットの構成要素は、チューブ及びチャンバなどをシステムの適切な場所に適切に位置合わせして挿入することができるように色誘導式マークを有する。別の実施形態では、本明細書に開示されるシステムは、携帯用ユニットである。例えば、携帯用ユニットは、脂肪組織収集が行われた部位から脂肪組織を収集するための別の部位まで移動させることができる。いくつかの実施例では、携帯用ユニットは、患者のベッドサイド近くで脂肪組織を収集して処理するのに適切である。従って、携帯用ユニットは、患者から患者へ移動することができるシステムの一部とすることができる。従って、携帯用ユニットは、所定位置に固定された車輪付きとすることができ、従って、手順全体を通して便利な場所の安定で安全な位置に容易に位置決めして用いることができる。他の実施形態では、携帯用ユニットは、テーブル面のような平坦な表面上に設置して作動するように設計される。また、携帯用ユニットは、収容ユニット内に封入することができる。携帯用ユニットは、ハンガ、フック、ラベル、定規、及び手順に役立つ他の装置を更に含むことができる。遠心分離装置、処理装置、表示画面のような本明細書に説明したシステムの再使用可能な構成要素の全ては、システムの携帯用ユニット上に装着することができる。
【0116】
再生細胞を得るための代替的な手動実施形態も本発明の範囲に含まれる。例えば、一実施形態では、脂肪組織は、本明細書に説明するシステム、機器、及び/又は供給品の構成要素のいずれかの組合せを用いて処理することができる。
本発明のシステムの手動実施形態は、以下の段階及び情報により実施することができるが、これらは例示的に挙げたものであり、決して限定するものではない。最初に、患者から脂肪組織を収集する。組織回収ライン又はサンプリング部位連結器を開放し、600ml血液バッグの側部ポートにスパイクを装填する。ほぼ10mlの脂肪組織を平滑カニューレを通して10ml注射器に収集する。平滑カニューレを比較的鋭い針(14G)と交換する。サンプリング部位をヨウ素ワイプで拭く。脂肪組織をサンプリング部位を通して600mlバッグ内に注入する。次に、注射器及び針を鋭利物チャンバに廃棄する。十分な組織がバッグに入るまでこれらの段階を繰り返す。十分な組織は、患者及び用途の臨床的特異性に基づいてケースバイケースで判断される。
【0117】
第2に、吸い出された脂肪組織を洗浄する。予め温めた(37℃)生理食塩水バッグを作業表面の上に吊るす。600mlバッグとスパイクの間のチューブ上に青い止血クランプを配置する。クランプを閉じてチューブを密封する。600mlバッグのスパイクを用いて生理食塩水バッグに進入する(この設定では、600mlバッグ上の針を用い、ゴム隔膜を通して生理食塩水バッグに進入し、針を挿入する前にヨウ素で隔膜を拭く)。青いクランプを緩め、ほぼ150mlの生理食塩水を600mlバッグに流入させる。望ましい容積の生理食塩水が600mlバッグに入ると、青いクランプを閉じる。600mlバッグをほぼ15秒にわたって10〜15回逆さにする。第2の青いクランプを3L廃棄物バッグからスパイクに至るチューブに付ける。3Lバッグのスパイクを用いて600mlバッグに進入する。600mlバッグを作業表面の上に逆さに吊るし、ほぼ1分放置する。3Lバッグに至る青いクランプを緩める。廃棄流体を3Lバッグに流入させる。青いクランプを付けて、組織がチューブに入る前に流れを止める。600mlバッグを作業表面まで下げる。これらの段階を更に2回繰り返す。生理食塩水廃棄物が依然として目に付くほど赤く見えれば、第3の付加的なサイクルが指示されている。ヒートシーラーを用いて3L廃棄物バッグと600mlバッグの間でチューブを密封する。密封は、チューブのほぼ半分の地点に行う。3L廃棄物バッグを除去して廃棄する。600mlバッグを作業表面に戻す。
【0118】
第3に、洗浄脂肪組織を消化する。生理食塩水と600mlバッグの間のチューブ上の青いクランプを緩めて、ほぼ150mlの生理食塩水が600mlバッグに入るようにする。600mlバッグのサンプリング部位をヨウ素ワイプで拭く。サンプリング部位を通して600mlバッグにコラゲナーゼを注入する。コラゲナーゼは、1つのコラゲナーゼバイアルを37℃水浴又はマイクロ波以外の均等物で溶かして調製する。1ml注射器に22G針を付け、バイアルに挿入する。コラゲナーゼを針の中に引き抜く。針を除去し、0.2μmフィルタ及び第2の22G針と取り替える。次に、0.2μmフィルタ及び針を通して注射器からコラゲナーゼを放出する。脂肪組織の消化は、最終コラゲナーゼ濃度0.1〜0.2「Wunsch」単位/mlで行う。ロッカー上に加熱パッドを置く。この間に、依然として取り付けられている生理食塩水バッグをロッカーの側部に設定する。生理食塩水バッグに至るチューブが運動中にロッカー上に捕捉されないように確実に位置決めされるように注意する。加熱パッド制御装置を37℃に設定する。600mlバッグをロッカー上に置く。ロッカーは最大に設定する。バッグは、それが安定であってほぼ1時間(55±10分)揺動されることを確実にするために観察される。
【0119】
第4に、再生細胞組成物を回収する。ロッカーからバッグを除去する。元は廃棄物バッグに至っていた密閉チューブに青いクランプを付ける。無菌の連結装置を用いて、4個入りバッグセット(以下の指示に従い予め準備する)を元は廃棄物バッグに取り付けられていたチューブに取り付ける。4個入りパックは、2つの繋がった4個入りパックとして見ることができる。それを2つのパックに分割するチューブを特定し、チューブをそれ自体の上に折り畳み、折り畳んだチューブの上に金属ループを滑らせる(チューブの両部分の上に)。ループをほぼ0.5インチ滑らせて下げる。屈曲部に形成された圧着部は、チューブを密封するように働く。血管鉗子を用いて閉じたループを部分的に圧着する。ループは、処理中に除去する必要があるために、あまりきつく圧着しない。600mlバッグを作業表面の上に逆向きに吊るし、ほぼ3分間放置する。4個入りセットに至るチューブ上の青いクランプを緩め、細胞分画(黄色/オレンジ脂肪層の下の層)を4個入りセット内に排出させる。脂肪層がチューブに入らないように注意する。この工程中に、チューブを手動で圧着し、脂肪層がチューブに近づくにつれて流れが遅くなるようにすることができる。4個入りバッグに至るチューブセットを次に青いクランプで密閉する。600mlバッグを作業表面に戻し、生理食塩水バッグを吊るす。生理食塩水と600mlバッグの間のチューブ上の青いクランプを緩め、ほぼ150mlの生理食塩水が600mlバッグに入るようにする。600mlバッグをほぼ15秒にわたってほぼ10〜15回逆向きにする。次に、600mlバッグを作業表面の上に吊るし、約3〜5分間放置する。4個入りセットに至るチューブ上の青いクランプを緩め、細胞分画(黄色/オレンジ脂肪層の下の層)を4個入りセット内に排出する。脂肪層がチューブに入らないように注意する。例えば、チューブを手動で圧着することにより、脂肪層がチューブに近くなるにつれて流れが遅くなるようにすることができる。4個入りバッグに至るチューブセットを青いクランプで密閉する。4個入りセットから600mlバッグに至るチューブを次に密封する。次に、600mlバッグを除去して廃棄する。
【0120】
第5に、再生細胞組成物を洗浄する。2つの満水バッグの間のチューブ上に金属クリップを配置し、チューブを密封する。4個入りセットを天秤上に置く。第2の「ダミー」4個入りセットに水を加え、4個入りセットと均衡を取る。4個入りセット及び均衡を取ったセットを遠心分離装置の対向するバケツに入れる。中空フィルタに対しては、細胞を洗浄してバッグに入れ、バッグと上述の中空糸フィルタアセンブリの間でチューブを密封する。蠕動ポンプを用い、フィルタアセンブリを通して流体を流し、下流端部のバッグに細胞濃縮物を収集する。4個入りセットバッグが確実に圧縮されずに直立であるように注意する。遠心分離装置は、400×gで10分間作動する。4個入りセットを遠心分離装置から除去し、血漿圧搾機に入れる。バッグ上部の剛性のチューブが背板のちょうど上部になるようにバッグを圧搾機に入れるように注意する。バッグが高すぎる場合には、過剰な生理食塩水が保持されることになり、低すぎる場合には、チューブが前部プレートの密閉する能力を損なうことになり、この場合も過剰な生理食塩水が保持されることになる。満水4個入りセットから空のセットに至るラインの各々に青いクランプを付加する。金属ループ及び青いクランプを除去し、上清が空の4個入りセットに流入することができるようにする。できるだけ多くの生理食塩水を圧出するが、細胞ペレットが押し出されないように注意する。上清を含む各バッグに流入するチューブをヒートシールする。上清を含む廃棄物バッグを除去する。細胞を含む各4個入りセットバッグに至るチューブに青いクランプを付ける。血漿圧搾機からバッグを取り出す。無菌連結装置を用いて4個入りパックに至るチューブを生理食塩水バッグに連結する。4個入りセットバッグの1つに至る青いクランプを除去してほぼ150ml生理食塩水がバッグに流入するようにし、その後、クランプを再び付けて生理食塩水の流れを止める。次に、満水4個入りセットバッグをほぼ15秒にわたってほぼ10〜15回逆向きにする。空の4個入りセットバッグに至る青いクランプを次に除去し、満水バッグの全ての内容物を空のバッグに排出して入れる。金属ループクランプを再び付けて、2つの4個入りセットバッグ間のチューブを密封する。次に、チューブをヒートシールして生理食塩水バッグを除去する。次に、満水4個入りセットバッグをほぼ16秒にわたってほぼ10〜15回逆向きにする。別のダミー4個入りセットを天秤上に置き、細胞4個入りセットと再び均衡を取る。4個入りセットバッグ(1つは満杯、1つは空)は、次に、4個入りセットバッグが圧縮されずに直立するように遠心分離装置に入れられる。
【0121】
遠心分離装置は、約400×gで10分間作動する。次に、4個入りセットを遠心分離装置から除去し、バッグ上部の剛性チューブが背板のちょうど上部になるように注意深く血漿圧搾機に入れる。バッグが高すぎると、過剰な生理食塩水が保持されることになり、低すぎると、チューブは、前部プレートが密閉する能力を妨げ、この場合も過剰な生理食塩水が保持されることになる。金属ループを除去し、再生細胞ペレットを押し出さないように注意して満水バッグから上清の全てを空のバッグ中に圧出する。バッグ間のチューブを密封し、満水(廃棄物)バッグを除去して廃棄する。次に、新しいサンプリング部位連結器を残りのバッグに挿入する。次に、細胞ペレットの細胞を残留生理食塩水(もしあれば)に再懸濁し、再生細胞濃縮物を得る。再懸濁は、バッグを穏やかに操作する(例えば、絞ったり擦ったりする)ことにより行うことができる。
【0122】
本発明を具体化するシステムの特定の例を図4に示している。図4は、患者に再注入するのに適切な再生細胞を組織、例えば脂肪組織から分離して濃縮するための自動化システム及び方法を示している。図4に示すシステムのいくつかの実施形態では、システムは、所定の量の組織を患者から吸い出すための自動化段階を更に含む。図4に示すシステムは、図14に示すシステムの再使用可能な構成要素に連結して図15Aに示すシステムの自動化実施形態に到達する図13に示す使い捨てセットを含む。使い捨てセットは、再使用可能な構成要素上に存在する処理装置が使い捨てセットの様々な構成要素、並びに再使用可能な構成要素及び他の関連装置及びシステムの様々な構成要素を制御してインタフェースで接続する、すなわち、それに対して信号を送受信することができるような方法で使い捨てセットが再使用可能なハードウエア構成要素に確実に取り付けられて関連付けられるように、例えば、使い捨てセットを再使用可能な構成要素に連結する連動又はドッキング装置又は構成を通して再使用可能な構成要素に連結される。
【0123】
ユーザは、使い捨てセットを再使用可能な構成要素に連結することができ、ユーザインタフェースを用いてある一定のパラメータ、例えば、収集される組織の容積を入力し、システムを患者に取付けることができ、システムは、予めプログラムされた及び/又はユーザ入力のパラメータを用いて途切れることなく順序通りに自動的に図4に示す段階の全てを行う。このような順序の1つを図15Bに示している。代替的に、組織は、ユーザにより患者から手動で吸い出し、再生細胞を処理する、すなわち、分離して濃縮するためにシステムに移送することができる。
【0124】
詳細には、図4に示すように、組織、例えば脂肪組織は、導管12を用いて患者から引き出し、収集チャンバ20に導入することができる。図4の収集チャンバの詳細な図面を図5に示している。図5に示すように、収集チャンバ20は、標準カニューレを用いて組織が容易に除去されるようにする真空ライン11を含むことができる。ユーザは、この時点で収集チャンバ20に導かれる組織の推定容積を入力することができる。組織は、組織、生理食塩水、及び他の薬剤が無菌的に組織に加えられるようにする密閉流体通路の一部である入口ポート21を通して収集チャンバ20に導入される。システムの光学センサ、例えばセンサ29により、何時組織のユーザ入力容積が収集チャンバ20に存在するかを検出することができる。いくつかの実施形態では、収集チャンバに存在する組織がユーザ入力よりも少なければ、ユーザは、収集チャンバ20に存在する組織の容積を処理することを開始するという選択肢を有することになる。いくつかの実施形態では、患者から除去された組織の一部分は、ユーザインタフェースを用いたユーザ入力を通じて作動することができるポンプ、例えば蠕動ポンプを用いることにより、導管を通じてサンプルチャンバ60に導入することができる。
【0125】
センサ29は、再使用可能な構成要素に存在する処理装置に信号を出し、組織を洗浄して脱凝集するのに必要な段階を作動させることができる。例えば、処理装置は、自動弁及びポンプを用いて、収集された組織の容積に基づいて洗浄剤の予め設定した容積を導入することができる。このサイクルは、光学センサにより流出物液体が十分に透明で不要な材料がないと判断されるまで、収集チャンバで繰り返すことができる。例えば、収集チャンバ12b又は12dから出る導管に沿う光学センサ29により、不要な材料が除去されたことを検出することができ、処理装置に必要な弁を閉じて次の段階を開始するように信号を送ることができる。
【0126】
次に、処理装置は、収集した組織の容積に基づいて脱凝集剤の予めプログラムされた量を導入することができる。また、処理装置は、収集した組織の初期容積に基づくか又はユーザ入力に基づいて、予め設定された期間にわたって収集チャンバ内で組織の撹拌を作動することができる。図4に示されている実施形態では、脱凝集剤、例えばコラゲナーゼがコラゲナーゼ供給装置24を通して収集チャンバ20に加えられると、収集チャンバ20内のモータが処理装置を通じて作動される。モータは、磁気撹拌子と、1つ又はそれよりも多いパドル25が収集チャンバ28に前置されたフィルタのフィルタケージ27に固く取り付けられたパドル状装置とを含む回転可能シャフト25を作動する。再生細胞が組織から分離するように、パドルを脱凝集剤の存在下で撹拌する。
【0127】
収集チャンバ20内の溶液は、予め設定された期間にわたって沈殿させられる。溶液の浮遊部分は、溶液の上部まで上昇することができる。予め設定された期間が経過した状態で、処理装置により必要な弁及びポンプが作動され、非浮遊部分を廃棄物チャンバ40に除去する。廃棄物チャンバ40への移送は、溶液の浮遊物分画が廃棄物チャンバ30に移送される寸前であることを収集チャンバから出る導管12b又は12dに沿うセンサ29が検出することができるまで継続される。例えば、収集チャンバから出る導管12b又は12dに沿うセンサ29は、不要な材料が除去されたことを検出することができ、必要な弁を密閉するように処理装置に信号を出すことができる。
【0128】
この時点で、溶液の非浮遊物分画、すなわち、再生細胞組成物は、処理チャンバ30に移動される。これは、必要な弁及び蠕動ポンプを用いることにより達成される。いくつかの実施形態では、再生細胞組成物を処理チャンバ30に移送する前に、生理食塩水の付加的な容積を収集チャンバ20に留まる溶液の浮遊物分画に加えることができる。もう一度洗浄サイクルを繰り返すことができる。このサイクルが終わると、溶液を沈殿させ、非浮遊物分画(再生細胞を含む)が処理チャンバ30に移送され、浮遊物分画が廃棄物チャンバ40に排出される。付加的な洗浄サイクルを用いて、全ての分離した再生細胞が最適に処理チャンバ30に移送されるようにする。
【0129】
再生細胞組成物が導管12により処理チャンバ30に移送された状態で、濃縮相が開始される前に、組成物に1つ又はそれよりも多い付加的な洗浄段階を行うことができる。これによって廃棄物及び残留夾雑物が収集チャンバ20から確実に除去される。同様に、濃縮段階に続いて、再生細胞組成物に1つ又はそれよりも多い付加的な洗浄段階を行い、残留夾雑物を除去することができる。不要な材料は、同じ方法で、すなわち、上述のように処理装置からの信号を通じて弁及びポンプを制御する方法で処理チャンバ30から廃棄物チャンバ40に除去することができる。
【0130】
図4に示す処理チャンバ30の様々な実施形態を以下に詳細に説明する。図4に示す処理チャンバ30は、遠心分離チャンバの形態である。図4の処理チャンバの詳細な図面を図7及び図8に示している。このような処理チャンバ30は、一般的に、外側ハウジング30.2、1つ又はそれよりも多い密封部30.3、1つ又はそれよりも多い軸受部30.4、及びシステムの再使用可能な構成要素に存在する遠心分離装置に処理チャンバを連結するための装着点30.6を含む回転密封ネットワーク30.1と、回転密封部から延び、フレーム53に収容された産出チャンバ50の形態である各端で遠心分離チャンバ内で終了する導管の形態の1つ又はそれよりも多い流体経路30.5とから成り、このフレームは、1つ又はそれよりも多いポート52及び手動で産出チャンバ50を再位置決めするための1つ又はそれよりも多いハンドルから成る。
処理チャンバの流体通路を確実に無菌状態に維持することができるように回転密封ネットワーク30.1が含まれる。更に、処理チャンバの流体通路には、処理チャンバの遠心分離チャンバが回転している間であっても、いつでも無菌状態で(例えば、薬剤又は洗浄溶液を加えるために)進入することができる。
【0131】
図7及び図8に示す回転密封ネットワーク30.1は、2つ又はそれよりも多い軸受部30.4、3つ又はそれよりも多いリップ密封部30.3、及び外側ハウジング30.2から成る回転シャフトを含む。この実施形態では、軸受部30.4には、本明細書ではレースと呼ばれる外側及び内側シャフト(図示せず)が更に含まれる。これらのレースは、精密に研削された球により分離することができる。軸受部を構成するレース及び球は、好ましくは、体液で接触されるのに適切な材料で製造されるか、又は体液に接触されるのに適切な材料でコーティングされる。好ましい実施形態では、レース及び球は、例えば、シリコーンニトリド又はジルコニアを用いて製造される。更に、この実施形態では、3つのリップ密封部は、円形の「U」形チャンネル(図示せず)、並びに円形バネ(図示せず)から成る。円形「U」形チャンネルは、回転密封ネットワーク30.1の回転シャフトに耐漏れ接合が形成されるように可撓性材料で製造されることが好ましい。更に、リップ密封部は、処理チャンバを通って流れる再生細胞組成物からの圧力で張力が増大することにより密封アセンブリが回転シャフトとの接合部を堅く締める向きに置かれることが好ましい。密封部は、回転密封ネットワーク30.1の外側ハウジング30.2の溝と係合させるために必要に応じて広がり及び/又は折り畳むことができる1つ又はそれよりも多い円形クリップ(図示せず)により定位置に固定することができる。回転密封ネットワーク30.1により又はその近くで発生する熱は、通路を通って移動中の溶液中の細胞が溶解しないように制御されるべきである。これは、例えば、回転シャフトを構成するのに剛性材料を選択することにより、密封部と接触する回転シャフトの部分を磨くことにより、及び回転シャフトと密封部の間の接触を最小にすることにより達成することができる。
【0132】
別の実施形態では、回転密封ネットワーク30.1は、単一のゴム密封部30.3及び空気ガスケット(図示せず)を含む。この密封部及びガスケットにより、システムの無菌性を損なう場合があるあらゆる生体物質に対して蛇行路が設けられる。別の実施形態では、回転密封ネットワーク30.1は、個々の流体経路を隔離する複数のバネ装填密封部30.3を含む。密封部30.3は、滅菌することができ、並びに潤滑剤なしで回転シャフトを密封することができる材料で製造される。別の実施形態では、回転密封ネットワーク30.1は、異なる流体経路を作り出し、システムの回転に耐えることができ、細胞溶解を引き起こすことができない一対のセラミック円板(図示せず)から成る。別の実施形態では、流体通路は可撓性があり、処理チャンバに対して巻き付けて巻き戻すことができる。これは、可撓性の流体通路を処理チャンバ30が2回回転する毎に1回回転させることにより達成される。これによって密封部を共に回転させる必要がなくなる。
【0133】
再生細胞組成物は、回転密封ネットワーク30.1の回転軸を通る流体経路に沿って収集チャンバ20からポンプで汲み出され、次に、各々処理チャンバ30の中心軸から外向きに広がり、処理チャンバ30の外側端部近くで終結し、すなわち、産出チャンバ50を収容する遠心分離チャンバ内にある最低でも2つの流体通路30.5に分割される(図7及び図8)。従って、好ましい実施形態では、処理チャンバ30は、図7及び図8に示すように1つよりも多い産出チャンバ50を含む。これらの産出チャンバ50は、それらが処理30.7中に1つの向き及び濃縮再生細胞30.8を回収するために別の向きになるように位置決めされる。例えば、産出部の変化は、処理中には1つの角度の傾きであり、細胞回収中には別の角度の傾きである。細胞回収角度は、処理角度よりも垂直に近い。産出チャンバ50の2つの位置は、処理チャンバ30から突出するハンドル53を通して手動で操作することができる。再生細胞は、回収方向30.8の時に注射器を用いて産出チャンバ50から手動で回収することができる。別の実施形態では、流体経路30.5は、処理チャンバの外側で分かれ、その後、処理チャンバ30の外側端部に連結し、すなわち、産出チャンバ50を収容する遠心分離チャンバ(図示せず)内にあるように構成される。この実施形態では、大量の再生細胞組成物及び/又は添加剤、溶液などを遠心分離チャンバ及び/又は産出チャンバに直接移送することができる。
【0134】
図4及び図7〜図9を参照すると、収集チャンバ20と処理チャンバ30の間には、ポンプ34及び1つ又はそれよりも多い弁14を設けることができる。好ましい実施形態では、弁14は電気機械弁である。更に、圧力センサ29のようなセンサを処理チャンバ30及び収集チャンバ20と一列に設けることができる。弁、ポンプ、及びセンサは、再使用可能な構成要素(図14)上に存在する処理装置と協調して働き、システムの濃縮段階を自動化する。
【0135】
センサは、遠心分離チャンバ内に再生細胞組成物が存在することを検出し、システムの処理装置と通信することにより、遠心分離装置を作動する。次に、最初に収集された組織の量及び/又はユーザ入力に基づいて、再生細胞組成物に予めプログラムされた時間にわたって予めプログラムされた負荷を掛ける。いくつかの実施形態では、この段階は、自動的又はユーザ入力のいずれかで繰り返すことができる。例えば、組成物に、約5分の期間にわたって重力のほぼ400倍の負荷を掛ける。産出チャンバ50は、チャンバの最も外側が高密度粒子及び細胞のための小さなリザーバを形成するように構成される。産出チャンバ50は、軽い上清を流体経路、例えば回転密封ネットワーク30.1の回転軸に沿って処理チャンバ30の中心の低い点から回転密封ネットワーク30.1を通って廃棄物容器40まで進む流体経路を通して除去しながら「細胞ペレット」と呼ばれるものの中に高密度粒子を保持する。弁14及びポンプ34は、産出チャンバ50に存在する細胞ペレットを乱すことなく上清を廃棄物容器40に除去する段階を作動させるように処理装置に信号を送る。
【0136】
図4に示すシステムを用いて得られる細胞ペレットは、本発明の濃縮再生細胞を含む。一部の実施形態では、上清が除去されて廃棄物チャンバ40に導入された後に、流体経路30.5を用いて付加的な溶液及び/又は他の添加剤と遠心分離した後に形成される細胞ペレットとを再懸濁することができる。このように細胞ペレットを再懸濁すると、再生細胞を更に洗浄して不要なタンパク質及び化学化合物を除去することができ、並びに細胞までの酸素の流れを増大することができる。得られる懸濁液には、約5分の別の期間にわたって重力の力のほぼ400倍の負荷を掛けることができる。第2の細胞ペレットが形成され、得られた上清が廃棄物チャンバ40に除去された後に、上述のように生理食塩水又は他の適切な緩衝溶液で最後の洗浄を行うことができる。このような反復洗浄を複数回行い、再生細胞溶液の純度を高めることができる。いくつかの実施形態では、処理を向上させるのに必要であると考えられるあらゆる段階で生理食塩水を加えることができる。図4に示すシステムを用いて得られる再生細胞濃縮物は、収集した組織の量、患者の年齢、患者プロフィール等により変えることができる。例示的な収量は表1に与えられている。
【0137】
次に、産出チャンバ50を細胞除去に適切な方向に位置決めした後に、産出チャンバ50に存在する最終ペレットを適切な注射器を用いて無菌的に回収することができる。他の実施形態では、最終ペレットは、必要に応じて除去して保存することができる産出チャンバ50内の容器に自動的に移動させることができる。この容器は、あらゆる適切な形又は大きさとすることができる。例えば、容器は、注射器とすることができる。いくつかの実施形態では、産出容器50自体をヒートシールして(自動又は手動のいずれかで)、次に、患者への再注入を含む本明細書に説明するような治療用途に対して再生細胞を回収して用いるために、処理チャンバの他の構成要素から隔離することができる。また、細胞には、産出チャンバから回収される前又は第2のシステム又は装置に移送された後に、本明細書に説明するように更に処理を行うことができる。図14に示す再使用可能な構成要素は、必要に応じて更に別の処理のために1つ又はそれよりも多い付加的なシステム又は装置に連結することができるように構成される。
【0138】
上述のシステム及び方法を本明細書にある程度詳細に説明したが、本発明の開示は単に例示的に為されたものであり、指定されたシステムの構造及び方法の順序の変更を当業者によって行うことができ、かつ本発明に含まれるように意図されていることは理解されるものとする。
上述のように多くの文献及び特許が参照されている。参照した文献及び特許の各々は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。
均等物
当業者は、通常以上ではない実験を用いて本明細書に説明した本発明の特定的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか又は確認することができるであろう。このような均等物は、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織から再生細胞を分離して濃縮するための自動化システムであって、
a.再生細胞が組織から分離されるように該組織の脱凝集を容易にする、患者から除去された組織を受け取る収集チャンバと、
b.前記収集チャンバに連結されて該収集チャンバから前記脱凝集組織を受け取る処理チャンバと、
c.前記処理チャンバに連結することができ、該処理チャンバに存在する前記脱凝集組織から再生細胞を濃縮する遠心分離装置と、
d.前記収集チャンバ、前記処理チャンバ、前記遠心分離装置、及び関連接続部と通信することができ、かつ制御することができるプログラマブル処理装置と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記組織は、脂肪組織であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記再生細胞は、幹細胞であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記再生細胞は、始原細胞であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記再生細胞は、幹細胞及び始原細胞の組合せであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記分離されて濃縮された再生細胞は、患者の中に注入するのに適していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記再生細胞は、患者を治療するために使用されることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記収集チャンバは、更に、組織を保持して遊離脂質、血液、及び洗浄溶液から成る群から選択された非組織成分を濾過して除去するために該収集チャンバ内のフィルタケージに収容されたフィルタから成ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記収集チャンバは、回転可能シャフトが撹拌される時にパドルが組織の脱凝集を促進するようなパドルから成る回転可能シャフトの撹拌を通して組織の脱凝集を容易にすることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記パドルは、前記収集チャンバ内のフィルタケージに取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記回転可能シャフトは、磁気撹拌子を通じて撹拌されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記収集チャンバは、回転可能シャフトが回転される時にパドルが組織の脱凝集を促進するようなパドルから成る回転可能シャフトの回転を通して組織の脱凝集を容易にすることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記回転可能シャフトは、駆動機構を通じて回転されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
洗浄溶液供給装置を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記洗浄溶液は、生理食塩水であることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
脱凝集剤供給装置を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記脱凝集剤は、コラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、「Liberase H1」、ペプシン、又はそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記処理チャンバは、遠心分離装置における前記脱凝集組織の遠心分離中に該処理チャンバに存在する該脱凝集組織を保持するための1つ又はそれよりも多い遠心分離チャンバから成ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つ又はそれよりも多い遠心分離チャンバは、前記遠心分離装置における前記脱凝集組織の遠心分離中に前記濃縮再生細胞を収集するための1つ又はそれよりも多い産出チャンバを更に含むことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つ又はそれよりも多い産出チャンバは、遠心分離中に異なる角度に傾斜され、かつ前記濃縮再生細胞の収集に対して異なる角度に傾斜されることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項21】
前記1つ又はそれよりも多い産出チャンバは、前記濃縮再生細胞の収集に対する前記角度に到達するように手動で再位置決めすることができることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項22】
前記濃縮再生細胞は、注射器を用いて除去されることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記処理チャンバは、前記脱凝集組織の無菌で収集することを容易にする回転密封部から成ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記回転密封部は、回転シャフト、2つ又はそれよりも多い軸受部、3つ又はそれよりも多いリップ密封部、外側ハウジング、円形チャンネル、及び円形バネから成ることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記回転密封部は、回転シャフト、単一のゴム密封部、空気ガスケット、1つ又はそれよりも多いバネ装填密封部、及び2つのセラミック円板から成ることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
廃棄物チャンバを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記廃棄物チャンバは、患者から除去された前記組織の前記非再生細胞成分を受け取ることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記廃棄物チャンバに存在する前記非再生細胞成分は、コラーゲン、タンパク質、脂質、脂肪細胞、及び基質成分を含む成分を分離して濃縮するために遠心分離されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記廃棄物チャンバに存在する前記非再生細胞成分は、コラーゲン、タンパク質、脂質、脂肪細胞、及び基質成分を含む成分を分離して濃縮するために濾過されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記収集チャンバ及び前記処理チャンバは、チューブ接続を通じて連結されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記チューブ接続は、更に、センサから成ることを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記収集チャンバ及び前記処理チャンバは、1つ又はそれよりも多い弁、ポンプ、センサ、又はそれらの組合せを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
前記収集チャンバ、前記処理チャンバ、及び前記チューブ接続は、使い捨てであることを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
前記遠心分離装置及び前記処理装置は、再使用可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項35】
前記遠心分離装置は、遠心分離モータ、遠心分離モータコントローラ、及び遠心分離ブレーキコントローラを更に含むことを特徴とする請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
前記処理装置は、1つ又はそれよりも多いポンプの使用を通じて組織の流れを誘導することにより、前記遠心分離チャンバ及び前記処理チャンバを制御することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項37】
前記ポンプは、蠕動ポンプであることを特徴とする請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記ポンプは、再使用可能であることを特徴とする請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記処理装置は、ユーザがシステムにパラメータを入力するためのユーザインタフェースを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項40】
前記処理装置は、パラメータを入力するようにユーザを案内し、予めプログラムされた段階を確認し、エラーを警告し、又はそれらを組合せたものを行う命令を表示するための表示画面を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項41】
患者から除去された前記組織の一部分は、再生細胞を分離して濃縮するのに用いられ、残りの部分は、取りのけられることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項42】
前記組織の残りの部分は、サンプルチャンバに取りのけられることを特徴とする請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
1つ又はそれよりも多い添加物が、システムに加えられることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項44】
前記添加物は、成長因子、再懸濁流体、細胞培養試薬、細胞増殖試薬、細胞保存試薬、又は細胞修飾試薬、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
再生細胞を培養するためのシステムであって、
a.患者から組織を除去し、
b.再生細胞を分離して濃縮するための第1のシステムを準備し、
c.前記再生細胞を培養するために前記第1のシステムに連結された第2のシステムを準備する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項46】
再生細胞を遺伝子的に操作するためのシステムであって、
a.患者から組織を除去し、
b.再生細胞を分離して濃縮するための第1のシステムを準備し、
c.前記再生細胞を培養するために前記第1のシステムに連結された第2のシステムを準備する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項47】
組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムであって、
a.再生細胞が組織から分離されるように該組織の脱凝集を容易にする、患者から除去された組織を受け取る収集チャンバと、
b.前記収集チャンバに連結されて該収集チャンバから前記脱凝集組織を受け取る処理チャンバと、
c.前記脱凝集組織からの前記再生細胞を濃縮する少なくとも1つのフィルタアセンブリと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項48】
前記フィルタアセンブリは、浸出型濾過装置及び沈殿装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記フィルタアセンブリは、中空糸型濾過装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
前記フィルタアセンブリは、浸出型濾過装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項51】
前記フィルタアセンブリは、溶出装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項1】
組織から再生細胞を分離して濃縮するための自動化システムであって、
a.再生細胞が組織から分離されるように該組織の脱凝集を容易にする、患者から除去された組織を受け取る収集チャンバと、
b.前記収集チャンバに連結されて該収集チャンバから前記脱凝集組織を受け取る処理チャンバと、
c.前記処理チャンバに連結することができ、該処理チャンバに存在する前記脱凝集組織から再生細胞を濃縮する遠心分離装置と、
d.前記収集チャンバ、前記処理チャンバ、前記遠心分離装置、及び関連接続部と通信することができ、かつ制御することができるプログラマブル処理装置と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記組織は、脂肪組織であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記再生細胞は、幹細胞であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記再生細胞は、始原細胞であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記再生細胞は、幹細胞及び始原細胞の組合せであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記分離されて濃縮された再生細胞は、患者の中に注入するのに適していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記再生細胞は、患者を治療するために使用されることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記収集チャンバは、更に、組織を保持して遊離脂質、血液、及び洗浄溶液から成る群から選択された非組織成分を濾過して除去するために該収集チャンバ内のフィルタケージに収容されたフィルタから成ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記収集チャンバは、回転可能シャフトが撹拌される時にパドルが組織の脱凝集を促進するようなパドルから成る回転可能シャフトの撹拌を通して組織の脱凝集を容易にすることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記パドルは、前記収集チャンバ内のフィルタケージに取り付けられていることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記回転可能シャフトは、磁気撹拌子を通じて撹拌されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記収集チャンバは、回転可能シャフトが回転される時にパドルが組織の脱凝集を促進するようなパドルから成る回転可能シャフトの回転を通して組織の脱凝集を容易にすることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記回転可能シャフトは、駆動機構を通じて回転されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
洗浄溶液供給装置を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記洗浄溶液は、生理食塩水であることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
脱凝集剤供給装置を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記脱凝集剤は、コラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、「Liberase H1」、ペプシン、又はそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記処理チャンバは、遠心分離装置における前記脱凝集組織の遠心分離中に該処理チャンバに存在する該脱凝集組織を保持するための1つ又はそれよりも多い遠心分離チャンバから成ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つ又はそれよりも多い遠心分離チャンバは、前記遠心分離装置における前記脱凝集組織の遠心分離中に前記濃縮再生細胞を収集するための1つ又はそれよりも多い産出チャンバを更に含むことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つ又はそれよりも多い産出チャンバは、遠心分離中に異なる角度に傾斜され、かつ前記濃縮再生細胞の収集に対して異なる角度に傾斜されることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項21】
前記1つ又はそれよりも多い産出チャンバは、前記濃縮再生細胞の収集に対する前記角度に到達するように手動で再位置決めすることができることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項22】
前記濃縮再生細胞は、注射器を用いて除去されることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記処理チャンバは、前記脱凝集組織の無菌で収集することを容易にする回転密封部から成ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記回転密封部は、回転シャフト、2つ又はそれよりも多い軸受部、3つ又はそれよりも多いリップ密封部、外側ハウジング、円形チャンネル、及び円形バネから成ることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記回転密封部は、回転シャフト、単一のゴム密封部、空気ガスケット、1つ又はそれよりも多いバネ装填密封部、及び2つのセラミック円板から成ることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
廃棄物チャンバを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記廃棄物チャンバは、患者から除去された前記組織の前記非再生細胞成分を受け取ることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記廃棄物チャンバに存在する前記非再生細胞成分は、コラーゲン、タンパク質、脂質、脂肪細胞、及び基質成分を含む成分を分離して濃縮するために遠心分離されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記廃棄物チャンバに存在する前記非再生細胞成分は、コラーゲン、タンパク質、脂質、脂肪細胞、及び基質成分を含む成分を分離して濃縮するために濾過されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記収集チャンバ及び前記処理チャンバは、チューブ接続を通じて連結されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記チューブ接続は、更に、センサから成ることを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記収集チャンバ及び前記処理チャンバは、1つ又はそれよりも多い弁、ポンプ、センサ、又はそれらの組合せを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
前記収集チャンバ、前記処理チャンバ、及び前記チューブ接続は、使い捨てであることを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
前記遠心分離装置及び前記処理装置は、再使用可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項35】
前記遠心分離装置は、遠心分離モータ、遠心分離モータコントローラ、及び遠心分離ブレーキコントローラを更に含むことを特徴とする請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
前記処理装置は、1つ又はそれよりも多いポンプの使用を通じて組織の流れを誘導することにより、前記遠心分離チャンバ及び前記処理チャンバを制御することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項37】
前記ポンプは、蠕動ポンプであることを特徴とする請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記ポンプは、再使用可能であることを特徴とする請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記処理装置は、ユーザがシステムにパラメータを入力するためのユーザインタフェースを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項40】
前記処理装置は、パラメータを入力するようにユーザを案内し、予めプログラムされた段階を確認し、エラーを警告し、又はそれらを組合せたものを行う命令を表示するための表示画面を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項41】
患者から除去された前記組織の一部分は、再生細胞を分離して濃縮するのに用いられ、残りの部分は、取りのけられることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項42】
前記組織の残りの部分は、サンプルチャンバに取りのけられることを特徴とする請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
1つ又はそれよりも多い添加物が、システムに加えられることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項44】
前記添加物は、成長因子、再懸濁流体、細胞培養試薬、細胞増殖試薬、細胞保存試薬、又は細胞修飾試薬、又はそれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
再生細胞を培養するためのシステムであって、
a.患者から組織を除去し、
b.再生細胞を分離して濃縮するための第1のシステムを準備し、
c.前記再生細胞を培養するために前記第1のシステムに連結された第2のシステムを準備する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項46】
再生細胞を遺伝子的に操作するためのシステムであって、
a.患者から組織を除去し、
b.再生細胞を分離して濃縮するための第1のシステムを準備し、
c.前記再生細胞を培養するために前記第1のシステムに連結された第2のシステムを準備する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項47】
組織から再生細胞を分離して濃縮するためのシステムであって、
a.再生細胞が組織から分離されるように該組織の脱凝集を容易にする、患者から除去された組織を受け取る収集チャンバと、
b.前記収集チャンバに連結されて該収集チャンバから前記脱凝集組織を受け取る処理チャンバと、
c.前記脱凝集組織からの前記再生細胞を濃縮する少なくとも1つのフィルタアセンブリと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項48】
前記フィルタアセンブリは、浸出型濾過装置及び沈殿装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記フィルタアセンブリは、中空糸型濾過装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
前記フィルタアセンブリは、浸出型濾過装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【請求項51】
前記フィルタアセンブリは、溶出装置を含むことを特徴とする請求項47に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公開番号】特開2012−75439(P2012−75439A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217918(P2011−217918)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2006−517708(P2006−517708)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503077877)サイトリ セラピューティクス インコーポレイテッド (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2006−517708(P2006−517708)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503077877)サイトリ セラピューティクス インコーポレイテッド (32)
【Fターム(参考)】
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