説明

組織のラマン分析

【課題】ヒトまたは動物被検体内部の組織の組成の測定、特に非侵襲性インビボ測定のための改善された方法および装置を提供する。
【解決手段】ヒトまたは動物被検体の一部分内の組織の組成の非侵襲性インビボ測定は、後方散乱ジオメトリではなく、透過を使用して当該部分を通して散乱される光のラマンスペクトル特性を検出する。該技術は、ヒト乳房組織における石灰化の検出にも適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物被検体内の組織の組成を測定するための方法および装置、特にインビボで非侵襲的に行なわれるそのような測定に関する。単なる例として、本発明は、ヒト乳房内の組織の微小石灰化の測定、または指、つま先、手、もしくは足の骨、軟骨、もしくは他の組織組成の測定に適用することができる。
【0002】
(イントロダクション)
ラマン分光法は、光子が種々の媒質中の分子により非弾性ラマン散乱を受けることから、通常レーザによって発生する光子の波長の小さいシフトの研究である。異なる分子との干渉は異なるスペクトルシフトを引き起こすので、ラマンスペクトルの分析を使用して、サンプルの化学組成を決定することができる。散乱の非常に弱い性質は、ラマン信号が蛍光および他の背景信号に圧倒されるため、多くの状況でラマン分光法の使用を困難にしている。
【従来技術の説明】
【0003】
ラマン分光法は、多種多様な生体組織を分析するために用いられてきた。例えば、Hakaらの「Identifying Microcalcifications in Benign and Malignant Breast Lesions by Probing Differences in Their Chemical Compositon Using Raman Spectroscopy」、Cancer Research 62、2002は、ラマン分光法を使用して、ヒト乳房から取り除かれた組織サンプルの良性および悪性病変に生じる微小石灰化の化学組成を分析することを論じている。
【非特許文献1】Hakaらの「Identifying Microcalcifications in Benign and Malignant Breast Lesions by Probing Differences in Their Chemical Compositon Using Raman Spectroscopy」、Cancer Research 62、2002
【0004】
ラマン分光法を使用して、組織組成の特徴をインビボで決定することも、例えばHanlonらの「Prospects for in vivo Raman Spectroscopy」、Phys.Med.Biol.45、2000に提案されており、かつヒト乳癌診断を目的として、Shafer‐Peltierらの「Raman microscopic model of human breast tissue: implications for breast cancer diagnosis in vivo」、J.Raman Spectroscopy 33、2002にも提案されている。この文書は、特に石灰化の組成を調べるために、乳房に挿入され、病変の位置まで操縦される光ファイバ針装置を使用することを論じている。
【非特許文献2】Hanlonらの「Prospects for in vivo Raman Spectroscopy」、Phys.Med.Biol.45、2000に提案されており、かつヒト乳癌診断を目的として、Shafer‐Peltierらの「Raman microscopic model of human breast tissue: implications for breast cancer diagnosis in vivo」、J.Raman Spectroscopy 33、2002
【0005】
乳房の石灰化は、良性および悪性病変の両方に見ることができ、これらの化学組成は疾病状態の可能性を示すことができる。シュウ酸カルシウム(二水和物)(COD)は良性病変に関係付けられるが、カルシウムヒドロキシアパタイト(HAP)は主に悪性組織に見られる。マンモグラフィおよび病理組織診断のような現在の常法は、試料の形態を検査するので、2種類の石灰化を確実に区別することができない。マンモグラムにおける影は往々にして、癌性病変の存在を示す唯一の特徴である。
【0006】
US2005/0010130A1は、ラマンおよび他の分光技術を使用して、インビボで経皮的に、または切開を介して、生検組織を採取することによって、骨組成の特徴を決定することを論じている。WO03/073082A1は、共焦点ラマン分光法を使用して、皮膚内のpHの深部選択的測定を行なうことを開示している。
【特許文献1】US2005/0010130A1
【特許文献2】WO03/073082A1
【0007】
図1は、ラマン分光法を使用して、インビボでヒトまたは動物の組織の特徴を検出する、WO03/073082に提示されたものと同様のスキームを示す。レーザ源10は共焦点光学系12に光子を提供し、それにより光子は被検体の表面組織14に差し向けられる。ラマン散乱事象16は一部の光子の周波数を変化させ、ラマン散乱光子の一部は後方散乱して共焦点光学系12により捕集され、スペクトル分析器18に差し向けられる。スペクトル分析器の出力はコンピュータ20によって解釈され、ラマン散乱が行なわれた組織の特性が演繹される。
【特許文献3】WO03/073082A1
【0008】
図1に示すようなスキームは、表面の組織または表面に非常に近接した組織、例えば最上部の数十マイクロメートルの組織の特性を決定するために使用することができる。ラマン散乱はサンプル内のより深部で発生するが、入射放射線の強度、およびサンプル表面に後方散乱するラマン散乱光子の数は、深さと共に急速に低下し、蛍光および他の背景信号に急速に圧倒されるようになる。この問題を克服し、かつサンプル内のより深部をプローブするために、Morrisら、「Kerr‐gated time‐resolved Raman spectroscopy of equine cortical bone tissue」、J.Biomedical Optics 10 2005に記載されているように、捕集された光子は時間ゲーティングを行なって時間遅延蛍光信号を除外することができる。該文献では、表面から約300マイクロメートル下のラマン信号が検出された。しかし、そのような時間ゲーティングを達成するための装置は複雑であり、増大する検出の深さは、ヒトおよび動物被検体でプローブすることが望まれる皮膚および他の軟組織の典型的な厚さと比較して、やや微小である。
【非特許文献3】Morrisら、「Kerr‐gated time‐resolved Raman spectroscopy of equine cortical bone tissue」、J.Biomedical Optics 10 2005
【発明の課題】
【0009】
本発明の目的は、ヒトまたは動物被検体内部の組織の組成の測定、特に非侵襲性インビボ測定のための改善された方法および装置を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、ラマン分光法を用いて、ヒトまたは動物の組織内の増大する深部をプローブする方法および装置を提供することでもある。
【0011】
ヒトまたは動物被検体の一部分、特に乳房内の石灰化した組織の組成の非侵襲性インビボ測定のための方法および装置を提供することも、本発明の目的である。
【0012】
本発明は、関連先行技術のこれらおよび他の問題に対処する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、ヒトまたは動物被検体の一部分の第1表面にプローブ光を差し向け、かつ該部分の反対側の第2面から散乱光を捕集することによって、該部分の内部をプローブする方法を提供する。捕集光内のラマンスペクトル特徴が測定され、特定の物質の存在のような、該部分の内部の組織の特性を決定するために使用される。本発明は、ヒトまたは動物被検体の一部分の非侵襲性インビボプローブが可能であり、かつ薄い表面層に非常に強くバイアスした先行技術のラマン技術とは異なり、当該部分の第1面と第2面との間の内部バルクの特性がプローブされるので、特に有利である。
【0014】
該方法を使用して、従来型の反射ジオメトリで後方散乱した光ではなく、透過ジオメトリで身体部分を通して前方散乱した光が捕集され、分析される。
【0015】
本発明はまた、例えば身体部分の第1および第2両面に配置されるかそれに方向付けられた照射光学系および捕集光学系と、照射源にプローブ光を提供する光源と、捕集された光を捕集光学系から受け取り、かつ捕集された光の1つまたはそれ以上のラマンスペクトル特性を決定するように適応されたスペクトル分析器とを備えた、対応する装置をも提供する。スペクトル分析器は、例えば選択されたフィルタおよび適切な光子検出装置、または従来型もしくはフーリエ変換分光器によって提供することができる。
【0016】
本発明はまた、ヒトまたは動物被検体の第1表面にプローブ光を差し向け、被検体の第2表面で光を捕集し、かつ介在する組織内のラマン散乱から導出されるラマンスペクトル信号を検出するための方法および装置をも提供する。
【0017】
特に、本発明は、ヒトまたは動物被検体の一部分内の組織の組成の非侵襲性インビボ測定の方法であって、該部分の第1外側表面領域を通して該部分に放射線を方向付けるステップと、該部分を通して前方散乱した後、該部分の第2外側表面領域から出射する前記放射線の一部分を捕集するステップと、前記捕集された放射線で、前記組織によるラマン散乱から生じた前記放射線の特性を検出するステップと、前記特性から前記組織の組成の測定を決定するステップとを含む方法を提供する。
【0018】
第2表面領域は、好ましくは組織の介在体積分だけ前記第1表面領域から離隔することが好ましい。前記組織の少なくとも一部は、第1および第2表面間に配置することが好ましく、第1および第2表面間に直接配置することがより好ましい。特に、第2表面領域は、少なくとも方向付けおよび捕集のステップ中は、当該部分の第1表面領域とは反対側に位置することができる。
【0019】
組成の測定は、前記組織内の石灰化の組成の測定、例えばタイプIのシュウ酸カルシウム系物質およびタイプIIのリン酸カルシウム系物質の少なくとも1つ、例えばカルシウムヒドロキシアパタイト系物質の測定とすることができる。そのような測定は、身体部分がヒトまたは動物の乳房である場合、特に適している。その場合、乳房は、乳房の第1および第2外側表面がクランプ面によって相互に向かって圧搾されるように、対向するクランプまたはプレート表面の間で圧搾される。
【0020】
本発明はまた、上記のように前記組成の測定を決定するステップと、前記組成の測定に基づき、疾病の診断を行なうステップとを含む、乳癌状態のような疾病を診断する方法をも提供する。
【0021】
本発明は、指、手足、唇、耳、まぶた、歯、舌、または鼻のような種々の身体部分に実行することができ、組織は骨、軟骨、骨髄、脳、神経、脂質、血液、歯、および乳房組織のような組織の1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0022】
以下に、本発明の実施形態について、単なる例として添付図面に関連して説明する。
【実施形態の詳細な説明】
【0023】
ここで図2を参照すると、照射光学系32と捕集光学系34との間に配置されたヒトまたは動物被検体の一部分30が、断面図で示されている。レーザ36は光子源を照射光学系32に提供し、照射光学系は、身体部分の第1外側表面領域40を通して当該身体部分に光子を差し向ける。当該部分の内側で、光子の小さい割合がラマン散乱事象42を経験し、散乱事象が起きる組織、特に組織内の分子に応じた量だけ周波数をシフトする。ラマン散乱光子の一部は、当該部分の第2外側表面領域44を通して身体部分30から外に通過し、捕集光学系34によって捕集される.
【0024】
照射光学系および捕集光学系は、捕集される光子が反射ジオメトリで後方散乱されたものではなく、透過ジオメトリで身体部分を通して前方散乱されたものとなるように、配置される。特に、照射および捕集光学系は、該方法が実行されるときに、好ましくは測定される組織が第1および第2表面領域の間に位置するように、当該身体部分の両側に配置することができる。
【0025】
捕集光学系によって捕集される光子は、組織で発生するラマン散乱の特性を決定するために、適切に分析される。図2の構成では、例えばフーリエ変換分光器とするか、または1つ以上の狭帯域通過フィルタを使用することのできるスペクトル分析器46が、ラマン光子の特性を検出する。コンピュータ48はスペクトル分析器によって提供されるデータを処理し、例えば組織の化学的性質または組成の標識を提供する。
【0026】
実際には、照射および捕集光学系は、第1および第2表面領域に隣接して適切に配置するように操作することのできる光ファイバ束など、種々の形を取ることができる。照射および捕集光学系は、サンプルの表面を走査するための自動手段を装備することができ、かつ/または、身体部分の種々の部位から光子を照射するため、かつ/または捕集するために選択的に使用することのできる、相異なる区分を設けることができる。
【0027】
身体部分は種々の異なる身体部分のいずれかとすることができ、照射および捕集光学系はそれに応じて適応することができる。例えば身体部分は指、つま先、足、手、または耳のような指または手足であるかもしれず、測定される組織は骨、軟骨、関節液、血液、または皮膚とすることができる。
【0028】
身体部分を光学系に提示するために、マウントまたは他の拘束または位置決め手段を設けることができる。図3は、ヒト乳房に対し本発明を実行するための機械50を示す。機械は、乳癌を検出するために使用される乳房撮影画像を得るための先行技術で見慣れたX線機械に、多くの点で類似している。使用中にヒト乳房は、一般的に透明なプラスチックから作られるか、少なくともそれで上張りされた、2つの乳房クランプまたはプレート52の間に配置される。次いでそれらは、乳房の大部分を約2cmの厚さに圧搾するように調節される。先行技術の機械では、X線源54が乳房クランプ52の上に収容され、X線カメラ56またはフィルムが下部乳房クランプに収容される。しかし、図3の実施形態では、乳房クランプの一方が図2の照射光学系32を組み込み、他方の乳房クランプが捕集光学系34を組み込む。光学系は、クランプされた乳房を走査するように自動的に駆動することができ、特定の関心領域に方向付けられるように自動的に駆動するか手動で調整することができ、あるいは光学系はクランプされた乳房のかなりの部分を充分にカバーすることができる程度とすることができる。さらに、機械50は、上述したX線機能を含んでも含まなくてもよい。X線機能が含まれる場合には、X線画像データを使用して、乳房の特定部分について調べるようにラマン光学系の動作を指示することができる。
【0029】
図3には図示しないが、機械50はまた、捕集されたラマン光のスペクトル分析のための手段、およびスペクトル分析の結果を処理して有用な情報を臨床医に提供するためのコンピュータ装置をも含むことが好ましい。例えばコンピュータ装置は、プローブされた乳房組織における様々な化学型の石灰化の存在の程度を示すデータを出力するために、スペクトル分析の結果を解釈するように実現することができる。
【0030】
上述した方法および装置は特に、例えば下述する乳房組織に見られる異なる型の石灰化を区別することによって、乳房および他の組織における石灰化を検出しかつ測定するために使用することができる。石灰化は多くの異なる生体組織に見られ、例えば骨および歯に自然生成物として、かつ疾病の結果として軟組織に形成される。自然石灰化は骨における石化作用の生成物として存在し、特定の鉱物ヒドロキシアパタイトから構成される。病理的石灰化は、糖尿病、乳癌、および結晶関連性骨関節炎のような多くの病状に関連付けられる。細胞におけるカルシウム結晶の沈着は有害な細胞効果を誘発し、関連疾病の進行を加速する。
【0031】
乳房撮影画像における石灰化の存在は、ときどき悪性乳房病変の唯一のマーカである場合があるので、診断的に特に重要な特徴である。マンモグラフィは、理学的検査によって検出できない小さい塊、歪み領域、不明瞭な密度、および微小石灰化を検出することができる。しかし、これは試料の形態のみに頼るので、良性および悪性石灰化を分類するための決定的な判断基準を持たない。実際、マンモグラフィで検出された病変のうち、針生検で悪性であることが明らかになるのは、10〜25%だけであることが明らかになっている。
【0032】
微小石灰化は2つのタイプに分類することができる。タイプIは、二水和シュウ酸カルシウム(COM)から構成され、タイプII沈着はリン酸カルシウム、主にカルシウムヒドロキシアパタイト(HAP)から構成される。現在、これらの2タイプの石灰化をマンモグラフィによって見分ける確実な方法は無いが、タイプは疾病に相関すると考えられる(例えば、Haka A.S.ら、「Identifying differences in microcalcifications in benign and malignant breast lesions by probing differences in their chemical composition using Raman spectroscopy」、Cancer Research 62(2002)5375〜5380を参照されたい)。シュウ酸カルシウム結晶は主に良性管のう胞に見られ、癌腫にはめったに見られないが、カルシウムヒドロキシアパタイト沈着はしばしば癌腫に見られる。
【0033】
本書に記載する方法および装置は、病変および石灰化の化学的構成を非侵襲的にインビボで測定するために使用することができ、乳房病変を診断するための非常に単純化された決定が可能になる。これは、良性病変の生検に伴う患者の外傷、時間遅延、および高額医療費を軽減するために使用することができる。
数値モデル
【0034】
モンテカルロモデルを使用して、図2の身体部分30のような混濁媒質内で散乱する照射光子およびラマン光子の輸送をシミュレートした。該モデルを使用して、後方散乱および前方散乱ラマン光子の相対強度を、混濁媒質内のそれらの深さの関数として算出した。簡単に言うと、弾性的(照射)および非弾性的(ラマン)散乱光子の両方を、それらが3次元空間でランダムウォーク状に媒質中を伝搬するときに、個別に追跡した。各ステップで光子が距離tを一直線に伝搬し、その後、次の散乱事象でその方向は完全にランダム化されるものと単純に想定した。この図式は個別散乱事象の観点からは単純すぎるが、混濁媒質中を伝搬する光子は一般的に、それらの原伝搬方向が完全に混乱した状態になるまでに、複数の散乱事象(例えば10〜20回)を受けなければならない。これは、個別散乱事象が往々にして前方方向に強くバイアスするという事実によるものである。しかし、ここでの関心対象であるサブ表面組織の実験に関する場合のように、伝搬距離が大きい場合、個々の複数の散乱事象は、「ランダム化長さ(randomisation length)」tにわたって発生する単一複合事象に近似させることができることが示されている(Matousek P.ら、Applied Spectroscopy 59、p1485、2005)。この単純化された想定は、控えめな計算費用(エクスペンス)で大きい伝搬距離の分析を可能にする。
【0035】
光子の方向がランダム化される伝搬距離tは、散乱媒質の輸送長(lt)におおまかに近似させることができ(Brenan C.およびHunter I.、Journal of Raman Spectroscopy 27、p561、1996)、散乱媒質の輸送長は、光子がそれらの原伝搬方向から著しく逸れるまで、サンプル内で移動しなければならない平均距離と同様に定義される。輸送長は一般的に、媒質中の光子の平均自由散乱長(ls)より1桁長い。正確な関係は、ls=(1−g)ltであり、ここでgは、個別散乱事象の異方性である。本モデルでは、媒質を伝搬する光の波長が散乱長1sより実質的に短いことも想定した。
【0036】
モデル化したサンプル身体部分60を図4に示す。サンプル身体部分はxおよびy方向に無限に延び、空気‐媒質界面が頂面62z=0および底面64z=d3に位置するとみなした。ここでzは、界面平面に垂直なデカルト座標である。サンプル身体部分は、関心のある組織を表わす異なるラマンシグネチャを有する中間層66を除き、均質な混濁媒質としてモデル化された。中間層は厚さd2を有し、頂面は深さd1に位置する。モデル化されたサンプルの全厚さはd3であった(d3>=d1+d2)。すなわち、バルクサンプル媒質は、d1>z1>0かつd3>z1>(d1+d2)となるように深さz1に位置し、異なるラマンシグネチャの中間層は、d1+d2<z2<d1となるように深さz2に位置する。本書に報告するシミュレーションでは、パラメータd2およびd3をそれぞれ0.5mmおよび4mmに固定し、サンプル60のバルク内の中間層66の様々な深さを表わすために、d1を0から3.5mmまで変化させた。
【0037】
モデルは、全ての照射光子が最初に輸送長ltに等しい深さに位置し、かつ座標系x,yの原点の周りに対称的に分布すると想定した。入射光のビーム半径rは3mmであり、ビームには均一な「トップハット」型強度プロファイルを与え、全ての光子がサンプルの断面内の任意の点に送り込まれる均等な確率を有するようにした。モデルでは、ラマン光を最初にサンプル頂面62で入射光の照射領域から捕集し、かつ別個に、サンプルの反対側64で、頂部の捕集/レーザ照射領域の投影軸を中心に対称的に捕集した。
【0038】
レーザビーム光子は、個別の各光子をステップtだけランダム方向に移動させることによって媒質中を伝搬した。各ステップで、光子がラマン光子に変換される所与の確率が存在した。光子の吸収は、このシミュレーションではわずかであると想定した。このパラメータは、レーザビーム光子からラマン光への変換の光学密度として表わされる。すなわち、例えば1mm当たり1または2の光学密度(OD)はそれぞれ、1mmの全伝搬距離を通過する照射光子の数が、ラマン光子への変換により、10分の1または100分の1に減少することに相当する。照射光子からラマン光子への変換を説明する光学密度を、1mm当たり0.01に設定した。この値は実際の変換の値より高いが、それはラマン光子の絶対数に影響するだけであり、実験レジームにおける関心事の空間依存性には影響しない。照射光子がラマン光子に変換されるときに、これが発生した層を識別し、記録する。ラマン光子は照射光子と同様の仕方で伝搬される。サンプル‐空気界面62、64でサンプルから出射するレーザ光子は全てサンプルには戻らず、マイグレーションプロセスから事実上喪失するので、これらの界面には光子エスケープの有力なメカニズムが存在する。レーザビームの軸を中心とする半径3mmの捕集アパーチャ内の頂部または底部界面で出射するラマン光子は、別個に検出ラマン光子として計数される。サンプルから出射する光子は、その後の計算から除去される。
【0039】
該モデルを実施するための数値コードは、Mathematica5.0(Wolfram Research)で作成した。100,000個のシミュレーション光子は、吸収が無い状態でラマン分光法で観察される典型的なマイグレーション時間と一致する、40mmの総距離を各々伝搬された。使用したステップサイズはt=0.2mmであった(すなわち200ステップを使用した)。これは、それぞれ0.9および0.95の異方性のために、直径10および20μmの粒子サイズを有する粉末から作られたサンプルに対応する。したがって、粒子の寸法は、直径が約10ないし20μmのほとんどの上皮細胞の寸法に匹敵する。さらに、多くの微小石灰化もこの程度である。これらのマイグレーション時間後に、光子の大部分がサンプル‐表面界面で喪失したことを確認した。このプロセスを50回繰り返した。したがって、伝搬した光子の総数は106であり、検討した総ステップ数は約109であった。これらの繰返し実験で検出されたラマン光子を全て合計した。
【0040】
中間層66で発生し、上面62で後方散乱光子として捕集され、かつ下面64で透過光子として捕集されたラマン光子の数を図5に示す。グラフは、d1=0mmである頂面からd1=3.5mmである底面までの範囲の中間層66の8つの異なる深さd1に対する後方散乱光子および透過光子の数を示す。
【0041】
図5から、直径が6mmもの大きさのアパーチャからでさえ、後方散乱ジオメトリにおけるラマン光子の捕集は、サンプル身体部分の表面層の方向に極めて強くバイアスすることが明瞭である。厚さ0.5mmの中間層を被照射面から1.5mmの深さに再配置すると、ラマン後方散乱強度は97%低下する。大部分の現実的な用途で、ラマン信号は、媒質の表面領域から発生するラマンまたは蛍光信号に圧倒されているであろう。3mmの深さでは、中間層から発生するラマン信号は、深さ零におけるその原レベルから4桁低下する。他方、透過ラマン光子の強度の依存性は、サンプル内の中間層の位置に対し弱い依存性を示すだけである。中間層が深さ0mmから3.5mmの間を移動するときに、対応するラマン信号は2倍変動するだけである。中間層からのラマン信号の絶対強度は、バルク媒質のそれより約20倍低いだけであり、検出が比較的簡単になる。したがって、透過ジオメトリは明らかに、満足できる感度を可能にしながら、身体部分内部のバルクを従来の後方散乱ジオメトリより大きく表わすサンプリングを達成する。
【0042】
後方散乱ジオメトリの場合、モデルはまた、サンプル身体部分の厚さが1mmから4mmに増大すると、後方散乱ジオメトリで検出されるラマン信号が58%増加することも明らかにしている。簡単に言うと、これは、頂部1mmのサンプル層に加えられた余分な3mmの厚さで生じる余分なラマン光子(厚さ4mmの身体部分に観察された全ラマン信号の37%にのぼる)として間違って解釈されるおそれがある。しかし、4mm厚さのサンプル身体部分のモデルは、ラマン信号の88%が頂部1mmの層で生じ、12%だけが残り3mmの身体部分の厚さ内で生じることを示している。余分な3mmの物質は、ラマン光子の余分な生成により貢献するだけでなく、1mm層内で生じたラマン光子の下部表面64における損失をも低減する。したがって、サンプルのさらなる3mmの追加による後方散乱ラマン光子の増加は、上面付近で生じたラマン光子を上面に戻すことによって達成され、そこから光子を出射させて、捕集することができる。同様にして、一部の照射光子は上面62に向かって後方散乱し、上部1mmの層内でさらに多くのラマン光子を発生させることが可能になる。
【実施例】
【0043】
透過前方散乱ジオメトリにおけるラマン分光法の使用を、実験室で図6に示すようにシミュレートした。サンプルは、厚さ約8mmに切断された生のニワトリ胸部組織72を、2mmの光路長および10mm×40mmの横寸法を有する透明なセル74の周りに巻き付けたものを使用して構成した。セル内に、検出用の石灰化物質76を挿置した。使用した石灰化物質は、乳房組織内の微小石灰化の文脈で両方とも上述した、シュウ酸カルシウム(二水和物)(COD)またはカルシウムヒドロキシアパタイト(HAP)のいずれかであった。
【0044】
レーザ78を用いて照射ビームを発生させ、該ビームは照射光学系を用いてサンプルの第1表面領域80に差し向けられ、光学セル74および2層のニワトリ胸部72を含むサンプルの全厚を通して第2表面領域82に散乱した光は、捕集光学系を用いて収集した。次いで、捕集された光のラマン成分を分析し、光学セル内の物質を検出かつ識別することのできる程度を決定した。
【0045】
照射ビームは、827nmで動作する、ラマン分光法に適した温度安定化ダイオードレーザ78(Micro Laser Systems,Inc, L4 830S‐115‐TE)を用いて発生させた。第1表面領域に対するレーザ電力は約60mWであり、第1表面領域におけるレーザスポットの直径は約4mmであった。2つの830nmのSemrock製(RTM)帯域通過フィルタ(84)を用いて、ビームのスペクトルから残留増幅自然放出成分を除去することによって、ビームをスペクトル的に純化した。827nmレーザ波長のスループットを最適化するために、これらをわずかに傾斜させた。
【0046】
照射光学系は、7本のコア光ファイバおよび26本のアウタリングファイバの束の終端部の光ファイバプローブ86によって設けられた。このプローブは、下でさらに詳述する捕集光学系に使用するプローブと同一構造であった。
【0047】
サンプルを通して第2表面領域82に散乱した光は、次の捕集光学系を用いて捕集された。該領域から出射した光は、60mmの焦点距離を持つ50mm径レンズ90によって収集された。収集された光はコリメートし、50mm径ホログラフィックノッチフィルタ92(830nm、Kaiser Optical Systems,Inc)を通過させて、原レーザ周波数に対応する光の弾性散乱成分を抑制した。また、827nmの弾性散乱の抑制を最適化するために、フィルタをわずかに傾斜させた。次いで、第1のレンズと同一である第2のレンズ94を使用して、1:1の倍率でサンプル相互作用域をファイバプローブ96の前面上に結像した。第1表面領域におけるレーザ入射スポットは、結像系を通してサンプル上に投影されるときに、それがプローブ軸の中心と一致するように配置した。第1のホログラフィックフィルタ92を通過した残留弾性散乱光を抑制するために、25mm径ホログラフィックノッチフィルタ(830nm、Kaiser Optical Systems,Inc)(98)およびエッジフィルタ(830nm、Semrock)(99)をプローブ96の直前に使用した。
【0048】
ファイバプローブ96は、プローブの中心に密集して配置された7本のファイバ、および半径3mmのリング上に分布された26本のファイバから構成した。ファイバはシリカから作られ、200μmのコア径、230μmのクラッド径、および0.37の開口数を持つ。ファイバをより密に詰め込むために、両端でスリーブを剥離した。束はC Technologies Incに特注して作成した。ラマン光は、長さが約1mのファイバシステム中を、スリットを除去したKaiser Optical Technologies Holospec f#=1.4 NIR分光器100の入力像平面に、垂直方向に向けられて配置されたリニアファイバ端まで伝搬させた。この配置で、ファイバ自体が分光器の入力スリットとして働いた。ラマンスペクトルは、深層空乏型冷却CCDカメラ102を用いて、両方のファイバセットからの信号を単一スペクトルにビニング(binning)することによって捕集した(完全垂直チップビニング)。アクティブスペクトル範囲における検出システム感度のむらに対し、ラマンスペクトルは補正されていない。
【0049】
図7aは、光学セルが空のとき(110)、光学セルにHAP粉末を充填したとき(112)、および光学セルにCOM粉末を充填したとき(114)に、上記構成を用いて測定されたスペクトルを示す。これらのスペクトルは、右側の軸の尺度を基準にして描かれており、スペクトルを分離するために縦方向に任意のオフセットを加えている。参考のために、ニワトリ胸部組織を省く以外は同一実験装置を用いて得たスペクトルを、HAP粉末(116)およびCOM粉末(118)について示す。これらの基準スペクトルは、左側の軸の尺度を基準にして描かれており、再びスペクトルを分離するために、縦方向にオフセットを加えている。純粋HAPおよびCOMのスペクトルの主な特徴は、完全な実験のそれぞれの曲線112および114に明確に視認できる。
【0050】
図7bは、図7aのHAP(120)およびCOM(122)のスペクトルから組織だけのスペクトル(110)を減算したものであり、再び参考のために純粋HAPおよびCOMのスペクトルを示す。
【0051】
サンプルの1表面に1層のニワトリの皮膚を追加して実験を繰り返し、それ以外は図7bと同じである図7cに、背景減算HAPスペクトルを124として、かつ背景減算COMスペクトルを126として、この実験の結果を示す。
【0052】
図7a〜7cに示す全ての場合に、HAPまたはCOM物質の主なスペクトル特性は、捕集された光が16mm以上の組織を通して散乱された場合でさえも、明確に視認できる。
【0053】
さらなる実施形態では、光学セルを使用せずにサンプルを作成した。代わりに、各々が約16mm厚さの2層のニワトリ胸部組織の間に、約100〜300μmの厚さの1層の石灰化物質を提示するように、COMまたはHAPいずれかの粉末をニワトリ胸部組織に塗抹した。図8aは、このサンプルを使用して得たスペクトルを、COM粉末(130)、HAP粉末(132)を使用する場合、および対照背景として粉末層無し(134)の場合について示す。背景スペクトルを減算したCOMおよびHAPのスペクトルを、図8bにそれぞれ曲線136および138として示し、参考のために純粋なCOMおよびHAPのスペクトルと示す。サンプルに存在するCOMおよびHAP物質は少量であるにもかかわらず、これらの物質を識別する主なスペクトル特徴は依然として明確に視認できる。
【0054】
上述の実験は臨床用途に適した信号強度を実証するが、該技術の感度および侵入深さは、入力光ビームの電力および捕集系の効率を高めることによって、さらに改善することができる。例えば入力光ビームおよびしたがって第1表面領域を、例えば数センチメートルの直径まで拡大して、1ワットに近い入力光ビームの電力を安全に使用することを可能にする。同様に捕集光学系を調整して、透過光のできるだけ多くを捕集することができ、例えば結像光学系、大きいファイバ束、または両方を使用して、大きい第2表面領域をカバーすることができる。
【0055】
照射および捕集光学系は種々の形を取ることができる。照射光は、結像光学系または光ファイバを使用して、用途の詳細な状況に応じて、広範囲の距離から第1表面領域上に投射することができる。
【0056】
本発明について、基本的に非侵襲性インビボ臨床用途に関連して記載したが、外科または侵襲性手技中に、透過ジオメトリでラマン分光法を使用する基本的に同じ方法および装置を使用して、インビボ組織を特性化することができる。そのような手技は、針プローブまたは類似物を用いて、例えば照射または捕集光学系の1つだけを例えば皮膚下の、開口内に挿入することによって、最小侵襲性とすることができる。
【0057】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載した実施形態に種々の改変および変形を施すことができることは、当業熟練者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、後方散乱ジオメトリを用いた組織のラマンプローブを示す図である。
【図2】図2は、前方散乱透過ジオメトリを用いた身体部分のラマンプローブを示す図である。
【図3】図3は、臨床環境における乳房組織のラマンプローブ用に適応された機械を示す図である。
【図4】図4は、モンテカルロ散乱モデルに使用される理想化されたサンプル身体部分の構造を示す図である。
【図5】図5は、ラマン散乱事象の深度に従ってプロットされ、図4のモデルを用いて算出された、照射面を通して後方散乱されるか反対側の表面から前方散乱されるかのいずれかのラマン光強度のグラフである。
【図6】図6は、乳房病変に見られるものと同様の石灰化した物質を含有する光学セルを包囲するニワトリ胸部のサンプルで本発明の原理を実証する実験構成を示す図である。
【図7a】図7aは、空のセル、およびHAPまたはCOM石灰化物質を含有するセルにより得られたスペクトル図である。
【図7b】図7bは、空のセルの背景を減算して得られる、図7aのHAPおよびCOMスペクトル図である。
【図7c】図7cは、サンプルの外側表面にニワトリの皮膚を追加した状態で、図7bと同様にして得られたスペクトル図である。
【図8a】図8aは、光学セルを使用する代わりに、ニワトリ胸部の内面にHAPまたはCOM物質を薄い層として塗り付けることによって得られたスペクトル図である。
【図8b】図8bは、組織だけの背景スペクトルを減算して得られる、図8aのHAPおよびCOMのスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物被検体の一部分の内部の組織の組成を非侵襲的にインビボ測定する方法であって、
前記部分の第1外側表面領域を通して前記部分内に放射線を方向付けるステップと、
前記部分を通る前方散乱の後、前記部分の第2外側表面領域から出射する前記放射線の一部分を捕集するステップと、
前記捕集された放射線内で、前記組織によるラマン散乱から生じた前記放射線の特性を検出するステップと、
前記特性から前記組織の組成の測定を決定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記組織の少なくとも一部が前記第1および第2外側表面領域間に直接位置するように、前記第2表面領域が前記第1表面領域から離隔される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも前記方向付けおよび捕集のステップ中は、前記第2表面領域が前記部分の前記第1表面領域とは反対側に位置する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記組織が石灰化を含み、かつ前記組成の測定が前記石灰化の組成の測定である、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記組成の測定が、タイプIのシュウ酸カルシウム系物質およびタイプIIのリン酸カルシウムまたはカルシウムヒドロキシアパタイト系物質の少なくとも1つの測定を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記身体部分が乳房である、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記乳房の前記第1外側表面および前記第2外側表面が対向するクランプ面によって相互に向かって圧迫されるように、前記クランプ面の間で乳房を圧搾するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
乳癌状態を診断する方法であって、
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法を実行して、前記組成の測定を決定するステップと、
前記組成の測定に基づいて乳癌状態の診断を行なうステップと、を含む方法。
【請求項9】
生体組織のサンプルをプローブする方法であって、
前記サンプルの第1表面に入射放射線を方向付けるステップと、
前記入射放射線の前方散乱要素を前記サンプルの第2表面から捕集するステップと、
前記捕集された放射線内のラマン放射線を検出するステップと、を含む方法。
【請求項10】
前記組織が骨、軟骨、骨髄、脳、神経、脂質、血液、歯、および乳房組織の少なくとも1つを含む、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ヒトまたは動物被検体内部の組織の組成を非侵襲的にインビボ測定するための装置であって、
前記被検体の第1表面にプローブ光を方向付けるように構成された照射光学系と、
前記組織の少なくとも一部が前記第1および第2表面間に位置するように、前方散乱光を前記被検体の第2表面から捕集するように構成された捕集光学系と、
前記プローブ光を前記照射光学系に提供するように構成された光源と、
前記捕集された光を前記捕集光学系から受け取り、かつ前記捕集された光の1つまたはそれ以上のラマンスペクトル特性を決定するように適応された分析器と、を備える装置。
【請求項12】
前記決定された1つまたはそれ以上のラマンスペクトル特性を受け取り、かつそこから前記組織の組成の1つまたはそれ以上の指標を導出するように適応されたデータプロセッサをさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記組織を含む前記被検体の少なくとも一部分の動きを抑制するように構成された拘束器をさらに備える、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記組織の特性を決定するように構成されたX線源およびX線検出器をさらに備える、請求項11ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
ヒトまたは動物被検体の乳房内の石灰化した組織の組成を非侵襲的にインビボ測定するための装置であって、
乳房をそれらの間で圧搾するために対峙するように適応された少なくとも第1および第2マウント面を含む乳房マウントと、
前記乳房マウント内で圧搾されるときに乳房内に放射線を方向付けるように構成された照射光学系と、
前記乳房から出射する前記放射線の一部を捕集するように構成された捕集光学系と、
前記捕集された放射線内で、前記石灰化した組織によるラマン散乱から生じる前記放射線の特性を検出するように適応された検出器と、を備える装置。
【請求項16】
前記特性から前記石灰化した組織の組成の測定を決定するように適応されたデータプロセッサをさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記組織が前記照射光学系および捕集光学系間に位置するように構成された、請求項15または16に記載の装置。
【請求項18】
前記照射光学系が、前記第1マウント面と対峙する前記乳房の第1表面領域を通して放射線を方向付けるように構成され、かつ前記捕集光学系が、前記第2マウント面と対峙する前記乳房の第2表面領域を通して前記乳房から出射する前記放射線の一部を捕集するように構成された、請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a】
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【図8b】
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【公表番号】特表2009−538156(P2009−538156A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503653(P2009−503653)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001258
【国際公開番号】WO2007/113570
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(507187802)ザ サイエンス アンド テクノロジー ファシリティーズ カウンシル (15)
【氏名又は名称原語表記】THE SCIENCE AND TECHNOLOGY FACILITIES COUNCIL
【住所又は居所原語表記】Harwell Innovation Campus, Rutherford Appleton Laboratory, Chilton, Didcot, Oxon OX11 0QX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】