説明

組織処理装置

【課題】種々の異なる大きさの試薬貯蔵容器の直接的な交換を可能にする組織処理装置を提供すること。
【解決手段】組織処理装置(1)は、複数の試薬で組織学試料を処理するレトルト(2)、複数の試薬貯蔵容器(3)、及び試薬貯蔵容器(3)からレトルト(2)へ試薬を移送する導管システム(6)及び制御装置(5)を有する。吸引管(11)は、試薬吸引のために容器開口(7)を通じて各試薬貯蔵容器(3)内へ突設される。円錐形状で中空の閉止栓(13)を有する閉止システム(12)は、容器開口(7)を閉止するために設けられる。吸引管(11)は、試薬吸引のために閉止栓(13)の空洞(14)を貫通して導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織処理装置に関し、特に、請求項1の前置部分に記載されているような、種々の試薬で組織学試料を処理するレトルトを有する組織処理装置に関する。即ち、本発明は、複数の試薬で組織学試料を処理するレトルト、それぞれが少なくとも1つの容器開口を備える複数の試薬貯蔵容器、及び試薬貯蔵容器からレトルトへ試薬を移送する導管システム及び制御装置を有し、吸引管が、試薬吸引のために容器開口を通じて各試薬貯蔵容器内へ突設されている組織処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組織処理装置は、顕微鏡検査するために、ミクロトームによる後の薄片準備のための組織学試料の自動処理に使用される。試料の組織は最初に、複数の工程で、脱水され、清浄化ないし洗浄され、硬化され、そしてパラフィンで安定化する工程を施さなければならない。これらの工程は、試料を処理する様々な試薬でもって実施される。
【0003】
試料の大規模な自動処理を可能にする組織処理装置は、ライカ社の文献である非特許文献1に描写及び説明されている。
【0004】
組織処理装置は、試料用処理部としてレトルトを備える。レトルトは、種々の試薬用の規格化された複数の試薬貯蔵容器にチューブシステム又はパイプシステムを介して接続される。各試薬は、ポンプシステム及び電子制御システムによって、試薬貯蔵容器からレトルトへ及びその逆方向へ自動送液することができる。
【0005】
【非特許文献1】“Leica ASP 300”, Leica Microsystems Nussloch GmbH, order no. 0704-2-1-103, April 2001(「ライカASP300」、ライカ・ミクロズュステムス・ヌスロッホ・ゲーエムベーハー、order no.0704−2−1−103、2001年4月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
組織処理装置に配置された試薬貯蔵容器は、時折空にされ、未使用の試薬に置き換えられなければならない。そのため、組織処理装置は、個々の試薬貯蔵容器を空にすること及び再充填ないし補充することができる外部のチューブシステム用のコネクタを備える。この通常の手順には、実験室に個別に備えておかなければならない複数の外部容器が必要となる。その場合、新しい試薬の容器と使用済みの試薬の容器が有る状況においては混同するおそれも存在する。
【0007】
また、外部の補充試薬容器に種々のサイズがあると試薬貯蔵容器の簡単で直接的な交換が阻害される。
【0008】
したがって、本発明の目的は、種々の異なる大きさの試薬貯蔵容器の直接的な交換を可能にする組織処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は、請求項1の特徴部分に示された特徴によって達成される。本発明のさらに有利な形態は、従属請求項に記載されている。なお、特許請求の範囲の各請求項に付記された図面参照符号は、専ら理解を助けるためであり、図示の態様に本発明を限定することを意図するものではない。
【0010】
本発明の第1視点によれば、複数の試薬で組織学試料を処理するレトルト、それぞれが少なくとも1つの容器開口を備える複数の試薬貯蔵容器、及び試薬貯蔵容器からレトルトへ試薬を移送する導管システム及び制御装置を有し、吸引管が、試薬吸引のために容器開口を通じて各試薬貯蔵容器内へ突設されている組織処理装置であって、円錐形状で中空の閉止栓を有する閉止システムが、容器開口を閉止するように配設され、吸引管が、試薬吸引のために閉止栓の空洞を貫通して導かれている組織処理装置を提供する。
【0011】
上記第1視点の好ましい形態によれば、閉止栓の端部の筒状部の内径は、吸引管の外径より大きく形成され、閉止栓の端部に環状開口が、吸引管の外周面と円筒状部の内壁面の間に形成されている。さらに好ましい形態によれば、環状開口は、ガス管に接続されている。さらに好ましい形態によれば、ガス管は、フィルタ装置に接続されている。
【0012】
上記第1視点の好ましい形態によれば、閉止栓は、伸縮可動に取り付けられているか及び/又は形成されている。
【0013】
上記第1視点の好ましい形態によれば、閉止栓は、蛇腹に連結されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明において注目すべき点は、円錐形状ないしお椀形状で中空の閉止栓を有する閉止システムが容器開口を閉止するように配設されていることである。吸引管は、試薬吸引のために、閉止栓の空洞を貫通して誘導される。円錐形状ないしお椀形状の(縮径する)閉止栓によって、組織処理装置に付加的なアダプタ又は他の変更点を設ける必要なく、種々の開口径を有する試薬貯蔵容器を接続することができる。
【0015】
本発明の改良点においては、閉止栓の端部の筒状部の内径は、吸引管の外径よりも大きくなるように形成される。これにより、閉止栓の端部に環状開口が、吸引管の外径(即ち、外周面)と閉止栓の端部の空洞径(即ち、空洞壁面)の間に形成される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態においては、環状開口はガス管に接続され、試薬貯蔵容器はガス管を通じて通気及び排気でき、これにより有害な蒸気を排出することがない。
【0017】
本発明の改良点においては、閉止栓は、伸縮可動に(ないし弾力的に)取り付けられるか又は形成され、安定した摩擦接続が試薬貯蔵容器と閉止システムとの間に構成される。
【0018】
本発明のさらなる実施形態においては、閉止栓は、蛇腹(ベローズ)(bellows)に連結され、試薬貯蔵容器の状況に応じて、異なる全体的高さを補う(ないし異なる高さに適合する)こともできる。
【0019】
本発明の改良点においては、ガス管はフィルタ装置に接続され、試薬貯蔵容器からの排気によって有害な蒸気が環境に放出されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、概略図と共に実施形態を参照してより詳細に説明される。
【0021】
図1は、試料を処理するレトルト(retort)2及び制御装置5を有する組織処理装置1の図である。組織処理装置1は、入れ子式レール8によって組織処理装置1のハウジングに連結される引き出し4を備える。引き出し4は、複数の試薬貯蔵容器3の支持体(支持枠ないし受け枠)として、上下に配置された2つの板17を備える。試薬貯蔵容器3は、閉止システム12によって、試薬を試薬貯蔵容器3からレトルト2へ移送し、そしてレトルト2からまた戻す導管システムにそれぞれ接続される。さらに、組織処理装置1のフィルタ装置19に接続されると共に、試薬貯蔵容器3から排出される蒸気をフィルタするガス管(図2、図3参照)も設けられる。
【0022】
閉止システム12は、閉止栓(プラグ部材)13の内部に導かれると共に容器開口7を貫通して試薬貯蔵容器3の内部へ突出する吸引管(吸引ライン)11を有する閉止栓13を備える。閉止栓13は、円錐形状ないしお椀形状であり、容器開口7に向けて縮径して端部13aに円筒状部(管状部)が形成されている。閉止栓13は、(複数の)試薬貯蔵容器3の異なる全体的高さを補うことができる蛇腹(ベローズ)18に連結される。
【0023】
組織処理装置1のハウジングに引き出し4を保持するために、ロックボルト(locking bolt)10に機械的に連結される回動式レバー9が引き出し4の前面に配置される。レバー9は、同時に、引き出し4を動かす(引き出し/押し込む)ためのハンドルとして機能する。
【0024】
図2は、導管システム6及び伸縮可動蛇腹18を備える閉止システム12の詳細図である。蛇腹18は、空洞14を備える円錐状閉止栓13を支持する。外径が閉止栓13の端部13aの円筒状部の内径より小さく設計された吸引管11は、空洞14内を円筒状部の中心孔を通って導かれる。これにより、環状開口15が閉止栓13の縮径側の端部13aに形成される。この環状開口15は、円筒形状であり、二重シェル構造の外側通路を構成し、蛇腹18の内部空洞を介して、試薬貯蔵容器が通気及び排気するためのガス管(図3)に接続される。
【0025】
図3は、導管システム6を備える閉止システム12の詳細図である。各閉止システム12は、個々に吸引管11を備え、共通のガス管16に接続される。ガス管16は、フィルタ装置19(図1)に接続される。吸引管11によって、レトルトは試薬貯蔵容器からの試薬で満たされる。試料処理後、試薬は、レトルトから吸引管11を通じて試薬貯蔵容器へ戻される。このとき発生する蒸気はガス管16を通じてフィルタ装置へ運ばれるか、又は試薬貯蔵容器からガス管16を介して排気される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】引き出しを備える組織処理装置の図。
【図2】閉止システムの詳細図。
【図3】管接続を備える閉止システムの詳細図。
【符号の説明】
【0027】
1 組織処理装置
2 レトルト
3 試薬貯蔵容器
4 引き出し
5 制御装置
6 導管システム
7 容器開口
8 入れ子式レール
9 レバー
10 ロックボルト
11 吸引管
12 閉止システム
13 閉止栓
13a 端部(円筒状部)
14 閉止栓の空洞
15 環状開口
16 ガス管
17 板
18 蛇腹
19 フィルタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬で組織学試料を処理するレトルト(2)、それぞれが少なくとも1つの容器開口(7)を備える複数の試薬貯蔵容器(3)、及び前記試薬貯蔵容器(3)から前記レトルト(2)へ試薬を移送する導管システム(6)及び制御装置(5)を有し、
吸引管(11)が、試薬吸引のために前記容器開口(7)を通じて各試薬貯蔵容器(3)内へ突設されている組織処理装置(1)であって、
円錐形状で中空の閉止栓(13)を有する閉止システム(12)が、前記容器開口(7)を閉止するように配設され、
前記吸引管(11)が、試薬吸引のために前記閉止栓(13)の空洞(14)を貫通して導かれていることを特徴とする組織処理装置。
【請求項2】
前記閉止栓(13)の端部(13a)の筒状部の内径は、前記吸引管(11)の外径より大きく形成され、
前記閉止栓(13)の端部(13a)に環状開口(15)が、前記吸引管(11)の外周面と前記筒状部の内壁面の間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組織処理装置。
【請求項3】
前記環状開口(15)は、ガス管(16)に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の組織処理装置。
【請求項4】
前記閉止栓(13)は、伸縮可動に取り付けられているか及び/又は形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組織処理装置。
【請求項5】
前記閉止栓(13)は、蛇腹(18)に連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組織処理装置。
【請求項6】
前記ガス管(16)は、フィルタ装置(19)に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の組織処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−147627(P2007−147627A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320399(P2006−320399)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(500113648)ライカ ミクロズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】