説明

組織因子経路阻害因子(TFPI)に対する抗体

本発明は、組織因子経路阻害因子(TFPI)に特異的に結合し、かつ、(a)ヒトF VIII欠損血漿、および/または(b)ヒト全血において、凝固時間を減少させる抗体に関する。前記抗体は出血性疾患の治療、および血液凝固の刺激において有用性を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織因子経路阻害因子(TFPI)に特異的に結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
血管壁損傷は組織因子を血液循環に接触させ、TFは、TFを有している細胞表面上で第VII因子/活性化した第VII因子(F VII/F VIIa)と、複合体を形成する。前記は、第X因子(F X)からF Xaへの活性化を導き、F XaはF Vaと共に限定された量のトロンビン(F IIa)を作り出す。少量のトロンビンは血小板を活性化し、前記は、F VIIIa/F IXaから成るテナーゼ複合体の結合を支持するリン脂質の表面露出をもたらす。
【0003】
テナーゼ複合体は、大量のF Xaを産生し、引き続いて十分なトロンビンバーストを促進する。十分なトロンビンバーストは、機械的に強力なフィブリン構造の形成、および、止血血栓の安定化に必要とされる。F VIIIまたはF IXは、血友病の患者において欠損しているか、低いレベルで存在し、テナーゼ活性の欠如のために、F Xaを産生する能力が、凝固の増幅フェーズを後押しするには低く、不十分である。対照的に、TFが介する初期フェーズはテナーゼ複合体の形成に依存しない。しかし、TF経路は、初期のF Xa産生のすぐ後に、血漿の阻害因子によってブロックされる。
【0004】
組織因子経路阻害因子(TFPI)は、F Xaの触媒活性を中和することによって、および、F Xa存在下でのTF-F VIIa複合体の阻害によって、進行中の凝固を下方制御する。TFPIは、細胞表面のTF/F VIIa/F Xa複合体、または、F Xaの放出を阻害し、引き続いて、F VIIa/TF阻害が続く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Caceci et al. Byte 9: 340-362, 1984
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特異的にTFPIと結合し、それによって、TFPIの活性を調節する抗体を同定した。本発明は、前記抗体、および、前記抗体に由来する、または前記抗体と同様の結合特性を持つ、他の関連した抗体に関する。
【0007】
従って、本発明は、組織因子経路阻害因子(TFPI)に特異的に結合し、かつ、(a)ヒトF VIII欠損血漿、および/または(b)ヒト全血における、凝固時間を減少させる抗体に関する。
【0008】
好ましい抗体は、配列番号3の軽鎖可変領域および、配列番号6の重鎖可変領域を含む。
【0009】
また、本発明は、本発明の抗体をコードするポリヌクレチド、例えば、本発明の抗体軽鎖および/または抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
また、本発明は、本発明の抗体またはポリヌクレオチド、および、医薬的に許容可能なキャリアーまたは希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0011】
また、(a)出血性疾患の治療もしくは予防用、または(b)血液凝固の刺激用の本発明の抗体、ポリヌクレオチドおよび組成物を提供する。すなわち、本発明は、(a)出血性疾患の治療もしくは予防、または(b)血液凝固の刺激のための方法であって、それを必要とする患者への、治療的または予防的に効果的な量の、本発明の抗体、ポリヌクレオチド、または組成物の投与を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図AおよびBは、コントロールIgG(血友病)または抗TFPI抗体TFPI-3F18A2(3F18)での処理の後に、一過的血友病ウサギにおいて測定された角質出血時間と失血を示す。
【図2】図2は、抗体TFPI-3F18A4B1のVL(図2A)およびVH(図2B)配列に関するヌクレオチド配列および翻訳されたポリペプチド配列を示す。
【図3】図3は、3F18抗体のVL(A)およびVH(B)のアミノ酸配列を示す。配列の上のナンバリングをKabatに従って示す。CDRループに相当する位置を、Kabatナンバリング中において太文字で下線が引かれたテキストで強調する。
【図4】図4は、TFPI1の配列を示す。Kunitzドメインを太字で示す:TFPI1 Kunitz ドメイン1=アミノ酸26から76、TFPI1 Kunitz ドメイン2=アミノ酸97から147、TFPI1 Kunitz ドメイン3=アミノ酸188から238。TFPI1のC末端部分を、アミノ酸240から276において、イタリック体で示す。
【図5】図5は、抗F VIII抗体、抗TFPI抗体での刺激、次に出血の後の、血小板数を示す。前記を、コントロール血友病モデルにおいて、本願明細書に記載の抗TFPI抗体3F18存在下で、実施した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(配列表の簡単な記載)
配列番号1は、ヒトTFPI1のアミノ酸配列を示す。
配列番号2から4は、TFPI-3F18A4B1モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)の、(コードおよび相補)ポリヌクレオチド、ならびにポリペプチド配列を示す。
配列番号5から7は、TFPI-3F18A4B1モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)の、(コードおよび相補)ポリヌクレオチド、ならびにポリペプチド配列を示す。
配列番号8は、重鎖可変ドメイン増幅のために使用したリバースプライマーの配列を示し、配列番号9は軽鎖増幅のために使用したリバースプライマーの配列を示す。
【0014】
(発明の詳細な記載)
本発明は、TFPIに結合する抗体に関する。前記抗体は、好ましくは特異的にTFPIに結合する、すなわち、前記抗体はTFPIに結合するが、他の分子には結合しない、または、低い親和性で結合する。特に、本発明は、TFPIに結合し、かつ、TFPIの活性を調節する抗体に関する。したがって、本発明による抗体は、凝固時間を短くする能力を持ちうる。例えば、本発明の抗体は、ヒトF VIII欠損血漿において凝固時間を短くする、または、ヒト全血のトロンボエラストグラフィー(TEG)解析による凝固時間を減少させる能力を持ちうる。また、本発明はこのような抗体の使用、例えば治療的および医薬的使用に関する。
【0015】
本願明細書で使用する用語TFPIは、任意の適した生物から得られうる、TFPIの任意に天然に存在する形態を含む。例えば、本願明細書で記載される時に使用するTFPIは哺乳類のTFPI、例えば、ヒト、マウス、ラット、霊長類、ウシ、ヒツジ、またはブタのTFPIでありうる。好ましくはTFPIはヒトTFPIである。TFPIは、TFPIの成熟形態、例えば、適切な細胞内で翻訳後プロセシングを経た、TFPIタンパク質でありうる。このような成熟したTFPIタンパク質は、例えば、グリコシル化されうる。TFPIは完全長のTFPIタンパク質でありうる。また、用語TFPIは、前記TFPI分子のバリアント、アイソフォームおよび他のホモログを含む。バリアントTFPI分子は一般的に、天然に存在するTFPIと同じタイプの活性、例えば、F Xaの触媒活性を中和するように変換する能力、またはTF-FV IIa/F Xaの複合体を阻害する能力を持つことによって、特徴づけられる。
【0016】
本発明の抗体は、TFPIに結合する能力を持つ。好ましくは、本発明の抗体は、特異的にTFPIに結合する。すなわち、本発明の抗体は、好ましくは、他の分子と結合するより大きな結合親和性でTFPIに結合する。本発明の抗体は、本願明細書に記載のTFPI分子、例えば本願明細書に記載の任意の標的分子と結合する、または特異的に結合する能力を持ちうる。
【0017】
用語「結合活性」および「結合親和性」は、標的に結合する、または結合しない、抗体分子の傾向を示すことが意図される。結合親和性は、抗体およびその標的について解離定数(Kd)を決定することによって、定量化しうる。同様に、標的に対する抗体の結合の特異性は、抗体および他の非標的分子に関する解離定数と比較した時の、標的についての抗体の相対的な解離定数(Kd)の観点から、定義しうる。
【0018】
典型的に、標的に関する抗体のKdは、他の非標的分子、例えば、関係ない物質または環境中に付随的な物質に関するKdよりも、2倍、好ましくは5倍、さらに好ましくは10倍小さくなる。より好ましくは、Kdは50倍、さらにより好ましくは100倍、さらに一層好ましくは200倍少なくなる。
【0019】
解離定数の値を、既知の方法によって、直接的に決定しうる、例えば、Caceciら(Byte 9: 340-362, 1984)の公表した方法によって、混合物についてさえ、コンピューター処理しうる。例えば、Kdを、例えばWong & Lohman(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90,5428-5432, 1993)によって開示された二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイ(double-filter nitrocellulose filter binding assay)を用いて規定しうる。標的に対する抗体のような、リガンドの結合能を評価するための他の標準的アッセイは、当該業界においては、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIAおよびフローサイトメトリー解析を含み、既知である。また、抗体の結合反応速度論(例えば結合親和性)は、Biacore(商標)システム解析のような当該業界における既知の標準的なアッセイによって、評価しうる。
【0020】
標的への抗体の結合を、標的の他の既知のリガンド、例えば他の抗体による、標的の結合と比較する、競合的結合アッセイを、実行しうる。50%阻害が生じる濃度はKiとして知られる。理想的な状況下で、KiはKdと等しい。Ki値は決してKdよりも小さくならず、従って、Kiの測定は、便宜上、Kdに関する上限を提供するために代用されうる。
【0021】
本発明の抗体に関する好ましいKd(またはKi)値は、少なくとも1 x 10-11 M、少なくとも1 x 10-10 M、少なくとも1 x 10-9 M または 1 x 10-8 Mでありうる。本発明の抗体は、1 x 10-7 M以下、1 x 10-8 M以下、または1 x 10-9 M以下の、標的に関するKd(またはKi)を持ちうる。
【0022】
特異的に標的に結合する抗体は、高い親和性、例えば前記に記載のKd(またはKi)で、標的に結合しうり、他の、非標的分子に低い親和性で結合しうる。例えば、前記抗体は、非標的分子に、1 x 10-6 M以上、さらに好ましくは1 x 10-5 M以上、さらに好ましくは1 x 10-4 M以上、さらに好ましくは1 x 10-3 M以上、さらにもっと好ましくは、 1 x 10-2 M以上のKd(またはKi)で、結合しうる。本発明の抗体は、好ましくは、他の非標的分子に結合する親和性よりも、少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍以上の親和性で標的に結合しうる。
【0023】
標的分子は、本願明細書に記載の任意のTFPI分子、例えば、天然に存在するTFPI分子、完全成熟TFPI分子、または、全長TFPI分子でありうる。好ましいTFPI分子は完全に成熟した、天然に存在する、全長の哺乳類のTFPI分子である。例えば、TFPI分子は、配列番号1のアミノ酸配列、または、本願明細書に記載の、前記アミノ酸配列のフラグメントもしくは他のバリアントから成りうる、または、含みうる。
【0024】
標的分子は例えば、TFPI分子のフラグメントのような、TFPI分子のバリアントでありうる。例えば、標的分子は、抗体結合のための適切なエピトープが維持されている、TFPIのフラグメントまたは他のバリアントでありうる。例えば、標的分子は、本願明細書に記載のエピトープを保持する、TFPIのフラグメントまたは他のバリアントでありうる。標的分子はこのようなエピトープを含みうる。
【0025】
一つの実施態様において、標的分子は全長TFPI分子である。全長TFPI分子は、本願明細書に記載の、第一、第二、および第三のKunitzドメインを含みうる。全長TFPI分子は、本願明細書に記載の、第一、第二、および第三のKunitzドメイン、ならびに、本願明細書に記載のカルボキシ末端領域もまた含みうる。全長TFPI分子は、TFPI遺伝子から発現されたような、または、TFPI発現細胞によって分泌されたような、全長TFPIポリペプチドのように天然に存在するTFPI分子でありうる。全長TFPI分子は、血漿中に遊離の形態で循環に見出されるような、天然に存在するTFPI分子でありうる。全長TFPI分子は、本願明細書に記載の天然に存在するトランケートされたTFPI分子のような、トランケートされたTFPI分子ではない。
【0026】
一つの実施態様において、標的分子はトランケートされたTFPI分子である。例えば、トランケートされたTFPI分子は、カルボキシ末端トランケーションを含みうる。例えば、多数の天然に存在するトランケートされた形態のTFPIが知られている。これらは、TFPIの、一部または全ての、カルボキシ末端部分のトランケーションを含みうる。さらに、これらは、一部または全ての、一つもしくは複数のKunitzドメインのトランケーションを含みうる。例えば、TFPIのトランケートされた形態は、カルボキシ末端部分および一部または全ての第三のKunitzドメインの失欠を含みうる。
【0027】
抗体が、天然に存在するトランケートされたTFPIのような、TFPIの特定のトランケートされた形態に対して望まれている場合、トランケートされたTFPIは、好ましくは標的分子として使用される。例えば、TFPIの、ある天然に存在するトランケートされた形態は、(本願明細書においてTFPI(1-161)と記載された)全長TFPI分子の1から161のアミノ酸のみを含みうる。TFPI(1-161)は、全長分子と比較して減少した活性を持つ、TFPIの活性型である。TFPI(1-161)は、全長TFPIと構造において異なり、従って、標的分子としてのTFPI(1-161)に対して作製した抗体は、全長TFPIに対して作製した抗体と異なりうる。
【0028】
一つの実施態様において、標的分子は、TFPIの天然に存在する形態である。標的分子は、in vivoで存在する形態で使われうる。例えば、標的分子は、前記で記載のように、天然に存在する全長TFPIでありうる。標的分子は、前記で記載のように、天然に存在するトランケートされたTFPIでありうる。標的分子はin vivoの血漿に存在する形態のTFPIでありうる。標的分子は、in vivoの血漿に存在する場合と同様の方法で、リポタンパク質に結合するTFPIでありうる。標的分子は、血管内皮細胞に結合しているTFPIのように、in vivoで起こるのと同様の方法で細胞に結合しているTFPI分子でありえる。本発明の抗体は、任意の、一つまたは複数の、TFPIのこれらの天然に存在する形態に結合しうる。本発明の抗体は、全てのTFPIのこれらの天然に存在する形態に結合しうり、または、あるものに結合するが他方には結合せずに、これらの異なる形態間を、識別しうる。
【0029】
標的分子は、TFPIのKunitzドメインでありうり、または、含みうる。前記標的分子は、配列番号1の26-76のアミノ酸、または、別のTFPIポリペプチドに由来する相当するKunitzドメイン1領域を含みうる。前記標的分子は、配列番号1の97から147のアミノ酸、または、配列番号91から150のアミノ酸、または、別のTFPIポリペプチドに由来する相当するKunitzドメイン2領域を、含みうる。前記標的分子は、配列番号1の188から138のアミノ酸、または、別のTFPIポリペプチドに由来する相当するKunitzドメイン3領域を含みうる。標的分子はTFPIのKunitzドメインのフラグメントでありうり、または含みうる。例えば、標的分子は、Kunitzドメインに由来する、5以上、8以上、10以上、12以上または15以上のアミノ酸を含みうる。
【0030】
前記標的分子は、TFPIのカルボキシ末端部分でありうり、または含みうる。TFPIのカルボキシ末端部分は、第3のKunitzドメインおよびタンパク質のC末端との間に位置する、TFPIのアミノ酸配列の一部として定義されうる。前記標的分子は、配列番号1の240-276のアミノ酸、または別のTFPIポリペプチドに由来する相当するカルボキシ末端領域を含みうる。標的分子は、TFPIのカルボキシ末端部分のフラグメントでありうり、または含みうる。例えば、標的分子は、TFPIのカルボキシ末端部分に由来する、5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上のアミノ酸を含みうる。
【0031】
標的分子は、TFPIの、またはTFPIの特定の領域、例えば、特定のKunitzドメインもしくはTFPIのC末端領域の、5以上、8以上、10以上、12以上または15以上の、表面に接近可能な残基を含みうる。表面に接近可能な残基は、40%を超えた相対アクセシビリティーを持つ残基である。
【0032】
例えば、TFPI1のKunitz 2 ドメイン(配列番号1を参照せよ)に関して、以下のアミノ酸:94-95、98、100-110、118-121、123-124、131、134、138-142および144-145は、40%を超えた相対アクセシビリティーを持つ。標的分子は、前記残基の5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上、例えば、前記残基の5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上を含むTFPIのフラグメントを、含みうる。TFPI1のKunitz 1 ト゛メイン(配列番号1を参照せよ)に関して、以下のアミノ酸:23-24、27、28-41、47-50、52-53、60-65、67-71、および、73-74は、40%を超えた相対アクセシビリティーを持つと予想される。標的分子は、前記残基の5以上、8以上、10以上、12以上または15以上、例えば、前記残基の5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上を含むTFPIのフラグメントを、含みうる。TFPI1のKunitz 3 ドメイン(配列番号1を参照せよ)に関して、以下のアミノ酸:186-187、190、192-208、213、215-220、225-228、230-234、および236-237は、40%を超えた相対アクセシビリティーを持つと予想される。標的分子は、前記残基の5以上、8以上、10以上、12以上、または、15以上、例えば、前記残基の5以上、8以上、10以上、12以上、または15以上を含むTFPIのフラグメントを、含みうる。
【0033】
前記標的分子は、TFPIに由来する既知のエピトープを含みうる。従って、抗体は、本発明の別の既知の抗体と同一のエピトープに結合しうる。
【0034】
本願明細書において記載の、用語「エピトープ」は一般的に、抗体のような免疫レセプターによって認識される標的抗原上の位置を示す。好ましくは、エピトープはタンパク質の一部から得られる、またはタンパク質の一部のような、短いペプチドである。しかし、また、前記用語は、グリコペプチド、および、炭水化物エピトープを伴うペプチドを含むことが意図される。単一の抗原性の分子、例えば、本願明細書に記載の標的タンパク質は、数個の異なるエピトープを含みうる。エピトープを、ペプチドのアミノ酸の情報、および、対応するDNA配列だけでなく、特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷など)、およびコドン表から、過度の実験なしに、同定しうる。例えば、Ivan Roitt, Essential Immunology, 1988、Janis Kuby, Immunology, 1992 例えばpp 79〜81を参照せよ。
【0035】
エピトープの位置を通常の方法によって同定しうる。例えば、エピトープの一般的な位置を、TFPIポリペプチドの異なるフラグメントまたはバリアントに対して結合する抗体の能力の評価によって決定しうる。また、抗体に接触するTFPI内の特定のアミノ酸を、通常の方法、例えば、実施例に記載されたような方法によって、決定しうる。例えば、抗体および標的分子を結合しうり、抗体/標的複合体を結晶化しうる。複合体の結晶構造を決定しうり、抗体とその標的間の相互作用の、特異的サイトの同定に使用しうる。
【0036】
本発明の抗体は、本発明の別の抗体と同一のエピトープまたは領域に結合しうる。例えば、本発明の抗体が既知の場合、本発明の他の抗体を、それらのTFPIへの結合と既知の抗体のTFPIへの結合の比較によって、同定しうる。本発明の抗体は、本願明細書に記載の3F18抗体と同一のエピトープまたは領域に結合しうる。
【0037】
本発明の抗体は、TFPIへの結合に関して、本発明の別の抗体と、または本願明細書に記載の別の適切な標的と、交差競合(cross-compete)する能力を持ちうる。例えば、本発明の抗体は、TFPIへの結合に関して、または、本願明細書に記載の標的分子のように、3F18抗体によって結合されるTFPIの適切なフラグメントまたはバリアントへの結合に関して、本願明細書に記載の3F18抗体と、交差競合しうる。このような交差競合する抗体は、本発明の既知の抗体と交差競合するそれらの能力に基づいて、標準的結合アッセイで、同定されうる。例えば、BIAcore解析、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーが、交差競合を実証するのに使用されうる。同様の交差競合は、二つの抗体が同一の、または類似のエピトープと結合することを示唆しうる。
【0038】
従って、本発明の抗体を、試験抗体が標的分子上の結合サイトに関して、本発明の既知の抗体と交差競合することができるかどうかを評価する、前記の結合アッセイを含む方法によって同定しうる。競合的結合アッセイの実行についての方法は、当該業界において周知である。例えば、競合的結合アッセイの実行についての方法は、前記抗体が標的分子に結合できる状況下での、本発明の既知の抗体および標的分子の接触を含む。従って、抗体/標的複合体を試験抗体に接触させることができ、試験抗体が、抗体/標的複合体から、本発明の抗体を置換する程度が評価されうる。別の方法は、抗体結合が可能な状況下での、試験抗体と標的分子の接触、その後の、前記標的分子に結合できる本発明の抗体の添加、本発明の抗体が、抗体/標的複合体から試験抗体を置換する程度の評価を含みうる。
【0039】
試験抗体の、標的への本発明の抗体の結合を阻害する能力は、標的への結合に関して、試験化合物が本発明の抗体と競合しうること、従って、試験抗体が、本発明の既知の抗体とTFPIタンパク質上の同一のエピトープまたは領域に結合することを立証する。前記方法において本発明の既知の抗体と交差競合するとして同定された試験抗体は、また、本発明に従う候補抗体である。試験抗体が、本発明の既知の抗体と同一の領域において、TFPIに結合でき、かつ、本発明の既知の抗体と交差競合するという事実は、試験抗体が、既知の抗体と同一の結合サイトに、リガンドとして働きうること、従って、試験抗体が既知の抗体の機能を模倣しうることを示唆する。前記は、本願明細書に記載の試験化合物存在下でのTFPIの活性の評価により確認されうる。
【0040】
本発明の既知の抗体は本願明細書に記載の抗体でありうり、例えば、本願明細書に記載のTFPI-3F18A4B1(3F18)抗体、または、TFPIへ結合する能力を保持している、それらの任意のバリアント、またはフラグメントでありうる。
【0041】
本発明の抗体は、本願明細書に記載の3F18抗体、または、本願明細書に記載の、TFPIへ結合する能力を保持している、それらの任意のバリアント、または、フラグメントと同一のエピトープに結合しうる。
【0042】
特異的な結合を、標的ではない分子への抗体の結合を参照して、評価しうる。前記比較を、抗体の、標的に結合する能力および、別の分子と結合する能力を比較することによって行いうる。この比較を、前記のようにKdまたはKiの評価において行いうる。前記比較に使用した他の分子は、標的分子でない任意の分子であってよい。好ましくは、他の分子は標的分子と同一でない。好ましくは、標的分子は、標的分子のフラグメントでない。
【0043】
本発明の抗体はその標的に結合しうるが、(a)標的と同一のアミノ酸配列を持たない、および(b)標的のフラグメントでない、ペプチドまたはタンパク質には、結合しえない。例えば、標的が、TFPIまたはその特定のフラグメントもしくはエピトープである場合、本発明の抗体はTFPI、フラグメントまたはエピトープに結合しうるが、(a)TFPI、フラグメント、またはエピトープと同一の配列を持たない、(b)前記TFPI、フラグメント、またはエピトープでない、ペプチドまたはタンパク質には、結合しえない。
【0044】
特異的結合を決定するのに使用された他の分子は、標的への構造または機能に無関係でありうる。例えば、他の分子は、環境において無関係な物質または付随する物質でありうる。
【0045】
特異的結合を決定するのに使用されうる、他の物質は、標的分子と同一のin vivo経路に関与する別の分子でありうる。例えば、標的がTFPI、またはそのフラグメントもしくはバリアントである場合、比較のために使用した他の分子は、血液凝固カスケードの一部を形成するタンパク質でありうる。本発明の抗体が、別の同様の分子よりもTFPIについて特異性を持つことを確保することによって、望ましくないin vivo交差反応性が避けられうる。
【0046】
比較に関して使用された他の分子は、標的分子に関しうる。例えば、特定のエピトープに対してのみ結合する抗体を同定することが望ましい場合、比較に関する他の因子は、エピトープを欠いている、または崩壊した、TFPI分子でありうる。従って、比較に関して用いた他の分子は、対象とする抗体により結合される標的分子と異なる、別の標的分子でありうる。
【0047】
本発明の抗体は、標的分子に関連するいくつかの分子に結合する能力を保持しうる。例えば、全長成熟ヒトTFPIは標的として使用されうるが、前記抗体は、また、例えばヒトTFPIの未成熟型、ヒトTFPIのフラグメントもしくはトランケート型、リポタンパク質もしくは細胞に結合するTFPI、または、他の哺乳類のTFPIのような他の種に由来するTFPIに結合しうる。
【0048】
あるいは、本発明の抗体は、特定の標的分子について特異性を持ちうる。例えば、前記抗体は、本願明細書に記載のある標的分子に結合しうるが、本願明細書に記載の異なる標的分子に結合しない、または有意に減少した親和性で結合する。例えば、全長成熟ヒトTFPIは標的として使用されうるが、全長成熟ヒトTFPIに結合する抗体は、例えばヒトTFPIの未成熟型、ヒトTFPIのフラグメントもしくはトランケート型、リポタンパク質もしくは細胞に結合するTFPI、または他の哺乳類のTFPIのような他の種に由来するTFPIへ、結合しえない、または、より低い親和性で結合しうる。
【0049】
本発明の抗体はTFPIに結合しうり、および、そうすることにより、TFPIの活性を阻害しうる。
【0050】
前記に説明されたように、TFPIは血液凝固を下方制御する。前記はF Xaの活性の阻害および、F Xa 存在下におけるTF-F VIIa複合体の阻害によるものである。本発明の抗体によって阻害されるTFPIの活性は、任意の前記活性、または、それらの任意の下流効果でありうる。例えば、本発明の抗体は、血液の凝固の増加、F Xaの存在もしくはレベルの増加、またはTF-F VIIaの活性の増加を導きうる。好ましくは、本発明の抗体は、(a)ヒトF VIII欠損血漿、または(b)ヒト全血と接触する場合、凝固時間を減少させる。
【0051】
TFPI活性の測定は、血液サンプルにおいて、凝固を阻害すること、または、凝固時間を減少させることに関する、TFPIの活性の評価を含みうる。例えば、このような方法は、凝固が起こるべき状況下での、血液凝固因子を含む血漿または血清のような血液のサンプルまたは血液産物との接触、および、血液の凝固が阻害されているのか、または、TFPIの存在によって凝固時間が減少しているのかの決定を含みうる。その後、前記サンプルにおける血液凝固のレベル、または凝固時間を、試験抗体もまた存在する同等のサンプルにおける血液凝固のレベル、または凝固時間と、比較しうる。抗体サンプルにおいて凝固のレベルが増加する、または凝固時間が減少する場合、抗体がサンプル中のTFPIの活性を阻害することを示唆する。
【0052】
血液凝固を、血液それ自身の凝固の観察によって、または、TFPIの作用点から下流に存在する凝固カスケードの一つまたは複数の特徴によって検出しうる。例えば、前記方法はサンプル中の、F XaのレベルまたはTF-F IIaの活性化のレベルを評価しうる。
【0053】
血液凝固および凝固時間の評価に関する様々な他の方法は、当該業界において周知である。例えば、血液凝固時間に対する抗体の任意の効果を、実施例に記載のように希釈プロトロンビン時間解析(dilute prothrombin time analysis)を用いて評価しうる。簡単に述べると、ヒト血漿をヒトトロンボプラスチンに接触させる。血漿について凝固に要する時間を、試験抗体存在下、および非存在下で、測定する。前記解析において、ポジティブコントロールを、例えば凝固時間を減少させると予測されるF VIIaの添加を、使用しうる。本発明の抗体は前記方法において凝固時間を減少させることが可能であるはずである。好ましくは、本発明の抗体は用量依存的に凝固時間を減少させることが可能であるはずである。
【0054】
トロンボエラストグラフィーを、全血のサンプル中で血塊形成および線溶の動態を評価するのに使用しうる。従って、凝固時間を減少させる、または、血液凝固を刺激する抗体の能力を、全血サンプルにおいて、前記抗体の存在下および非存在下で血塊形成に要した時間を比較することにより、同様に評価しうる。
【0055】
従って、本発明の抗体の機能的効果を評価する方法を、in vitroで行いうる。前記方法を、好ましくは、ヒト血液または血漿のサンプルにおいて行いうる。前記サンプルは、正常なヒト血液もしくは血漿でありうり、または、血液凝固に関与する一つもしくは複数の因子を欠損している、もしくは追加しうる。例えば、前記方法を、正常なヒト全血、正常なヒト血漿、またはF VIII欠損血漿または全血を用いて行いうる。F VIII欠損血液または血漿を、適切な血液または血漿サンプルの抗F VIII中和抗体への接触によって作製しうる。
【0056】
好ましくは、本発明の抗体は、(a)ヒト全血、(b)ヒト血漿、(c)F VIII欠損ヒト全血、または(d)F VIII欠損ヒト血漿のサンプルにおいて、凝固時間を減少させる、および/または血液凝固を刺激することができる。
【0057】
また、血液凝固を刺激する、または凝固時間を減少させる、抗体の能力を決定する方法を、in vivoで行いうる。例えば、in vivoにおける研究を、実施例に記載のように、一過的血友病ウサギにおいて行いうる。簡単に述べると、ウサギを抗F VIII抗体の投与によって一過的に血友病にしうる。その次に試験抗体を投与しうり、角質出血時間および/または血小板数を評価しうる。試験抗体存在下の角質出血時間の減少は、前記抗体が凝固時間を減少させ、血液凝固を刺激することが可能であることを示す。従って、前記効果を持つ抗体は、本発明の抗体でありうる。
【0058】
また、本発明の抗体は、著しい血小板数の減少を導かないであろう。特に、本発明の抗体は、(a)ヒト全血、(b)ヒト血漿、(c)F VIII欠損ヒト全血、もしくは(d)F VIII欠損ヒト血漿のサンプル、または動物のin vivoにおいて、血小板数の著しい減少を導くことなく、凝固時間の減少および/または血液凝固の刺激を可能にしうる。血小板数を、前記で記載した他の効果のように、同様のサンプルもしくは動物において評価しうり、または独立して評価しうる。例えば、血小板数を、患者または実験動物から得られる血液サンプルのような、血液サンプルにおいて、評価しうる。血小板数を、前記で記載したように一過的血友病ウサギに対する抗体の投与に続いて、評価しうる。本発明の好ましい抗体は、一過的血友病ウサギにおいて、同時に血小板減少を導くことなく、角質出血時間を減少させることが可能である。血小板数の変化を、抗体の投与前および後の血小板数の比較、または、対象とする抗体で処理したサンプルもしくは動物と、前記抗体で処理しなかったコントロールサンプルもしくは動物との間の血小板数の比較によって評価しうる。好ましくは、前記比較を行う場合、血小板数に違いがない、または統計的に有意な違いがない。つまり、本発明の抗体は血小板数の如何なる減少も引き起こさない。
【0059】
本願明細書に記載の用語「抗体」は、抗体全体および任意の抗原が結合するフラグメント(すなわち「抗原結合部分」)または、それらの単鎖を含む。抗体は、ジスルフィド結合により相互的に結合される少なくとも二つの重(H)鎖および二つの軽(L)鎖を含む、糖タンパク質、または、それらの抗原結合部分を指す。各重鎖は(本願明細書ではVHと略された)重鎖可変領域および重鎖定常領域から構成される。各軽鎖は、(本願明細書ではVLと略された)軽鎖可変領域および軽鎖定常領域から構成される。重鎖および軽鎖の前記可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。VHおよびVL領域は、さらに保存されているフレームワーク領域(FR)と称される領域が組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域へとさらに細かく分割しうる。抗体の定常領域は、様々な、免疫システムにおける細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体システムの最初の因子(C1q)を含む、宿主の組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介しうる。
【0060】
本発明の抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体でありうる。一つの実施態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の抗体はキメラ抗体、CDR移植抗体、ヒトもしくはヒト化抗体、または、任意のそれらの抗原結合部分でありうる。モノクローナルおよびポリクローナル抗体両方の製造のためには、実験動物は、適切には、哺乳類、例えば、ヤギ、ウサギ、ラットまたはマウスである。
【0061】
ポリクローナル抗体は、異なるB細胞株から得られる抗体である。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に対する、異なる免疫グロブリン分子の混合物を含みうる。ポリクローナル抗体は、一つの抗原分子の、一つまたは複数の異なるエピトープに結合する異なる免疫グロブリン分子の混合物を含みうる。ポリクローナル抗体を、対象とする抗原を用いた、適切な動物の免疫化のような通常の方法によって、作製しうる。引き続いて、血液を動物から採取し、IgI画分を精製しうる。
【0062】
モノクローナル抗体は、互いに同一であり、かつ、特定のエピトープについて単一の結合特異性および親和性を持つ、免疫グロブリン分子である。本発明のモノクローナル抗体(mAbs)を、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、Kohler and Milstein(1975)Nature 256: 495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術、または、Bリンパ球のウイルス性もしくは発癌性形質転換を含む、様々な技術によって、作製しうる。ハイブリドーマを調製するための好ましい動物システムは、マウスのシステムである。マウスにおけるハイブリドーマ作製は非常に確立した方法である。免疫化プロトコル、および、融合のための、免疫化した脾細胞の単離に関する技術は、当該業界において既知である。また、融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合方法も既知である。
【0063】
本発明のモノクローナル抗体を作製するハイブリドーマを作製するために、免疫化したマウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離しうり、マウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化した細胞株と融合しうる。得られるハイブリドーマを、抗原特異的抗体の製造のために、スクリーニングしうる。抗体を分泌するハイブリドーマを、再播種し、再度スクリーニングし、適切なIgGに関してさらに陽性である場合、モノクローナル抗体を、少なくとも二回の限界希釈によって、サブクローニングしうる。その後、ステーブルなサブクローンを、特性評価のために、組織培養培地において、少量の抗体を産生するべく、in vitroで培養しうる。
【0064】
用語、抗体の「抗原結合部分」は、本願明細書に記載のTFPIまたは別の標的タンパク質のような抗原に、特異的に結合する能力を保持している、抗体の一つまたは複数のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによってもたらされることが示されてきた。用語、抗体の「抗原結合部分」に含有される、結合フラグメントの例は、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、および、単離した相補性決定領域(CDR)を含む。scFVのような単鎖抗体、ならびに、VHHおよびラクダ抗体のような重鎖抗体もまた、用語、抗体の「抗原結合部分」に含有されることが意図される。前記抗体フラグメントを、当業者に既知の一般的な技術を用いて得うり、および前記フラグメントを、インタクトな抗体と同様の方法で、有用性に関してスクリーニングしうる。
【0065】
本発明の抗体を、組換え手段、例えば、(a)対象とする免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス)、または、それらから調製されたハイブリドーマから、単離された抗体、(b)対象の抗体を発現する形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから、単離された抗体、(c)組み換え体、合成抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列から他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の方法によって調製され、発現され、作製され、もしくは単離された抗体、によって調製しうり、発現しうり、作製しうり、または単離しうる。
【0066】
本発明の抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体でありうる。本願明細書で用いる、用語「ヒト抗体」は、フレームワークおよびCDR領域の両方が、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から得られる、可変領域を持つ抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域は、また、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から得られる。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列にコードされない(例えば、ランダムに、もしくは、in vitroにおける部位特異的突然変異によって、またはin vivoにおける体細胞突然変異によって導入された変異)アミノ酸残基を含みうる。しかし、本願明細書で用いる、用語「ヒト抗体」は、マウスのような別の哺乳類種の生殖細胞系列由来のCDR配列をヒトフレームワーク配列へ移植した、抗体を含むことは意図されない。
【0067】
前記ヒト抗体はヒトモノクローナル抗体でありうる。前記ヒトモノクローナル抗体を、
不死化した細胞と融合した、ヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを持つトランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得られた、B細胞を含む、ハイブリドーマから作製しうる。
【0068】
ヒト抗体を、ヒトリンパ球のin vitro免疫化に続く、エプスタイン・バールウイルス(Epstein-Barr virus)を用いたリンパ球の形質転換によって、調製しうる。
【0069】
用語「ヒト抗体誘導体」は、ヒト抗体の任意の変形態様、例えば抗体と、別の作用因子または抗体との、複合体を指す。
【0070】
用語「ヒト化抗体」は、マウスのような別の哺乳類種の生殖細胞系列から得られたCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植された、抗体を指すことが意図される。付加的なフレームワーク領域改変を、ヒトフレームワーク配列内で行いうる。
【0071】
本発明の抗体を、標的タンパク質への結合に関して、例えば標準的なELISAまたはウエスタンブロッティングによって、試験しうる。また、ELISA試験を、標的タンパク質に陽性反応性を示すハイブリドーマのスクリーニングに使用しうる。また、抗体の結合特異性を、標的タンパク質を発現する細胞への抗体の結合をモニターすることによって、例えばフローサイトメトリーにより、決定しうる。
【0072】
さらに、本発明の抗体の標的タンパク質に関する特異性を、抗体が他のタンパク質に結合するかどうかを決定することによって、調査しうる。例えば、TFPIまたはTFPIの特定の部分、例えば、エピトープに特異的に結合する抗体を作製するのが望ましい場合、抗体の特異性を、また、抗体が、他の分子、または対象の部分を欠いたTFPIの改変された形態に結合するかどうかを決定することにより、評価しうる。
【0073】
前記に記載のように、本発明の抗体はTFPIの活性を改変しうる。従って、要求される結合特性を持つ抗体を、TFPIの活性におけるそれらの効果を決定するべく、さらに試験しうる。従って、方法を、TFPIに結合することができ、かつその活性を改変することができる、特にその活性の減少に関して改変することができる、適切な抗体を同定するのに使用しうる。
【0074】
一度適した抗体を同定し、選択すると、当該業界において既知の方法によって抗体のアミノ酸配列を同定しうる。抗体をコードする遺伝子を、縮重プライマーを用いてクローニングしうる。抗体を、通常の方法によって組換え技術で作製しうる。
【0075】
本願明細書において「ポリペプチド」は、その広い意味において、二つ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸アナログの、化合物、または他のペプチド模倣物(peptidomimetics)を指す。従って、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列、およびまた、より長いポリペプチドおよびタンパク質を含む。本願明細書で用いる、用語「アミノ酸」は、天然、および/もしくは非天然のアミノ酸、または、合成アミノ酸を指し、グリシンおよび、DまたはL光学異性体、およびアミノ酸アナログおよびペプチ模倣物を含む。
【0076】
本発明者は実施例に記載したような抗体を同定した。前記抗体は、本願明細書においてTFPI-3F18A4B1または3F18と記載する。本発明は、前記抗体および、前記抗体の一つまたは複数の活性を保持している、そのバリアントおよびフラグメントを含む。前記抗体の活性は、TFPIに結合する能力、TFPI分子内の特定の位置に結合する能力、および、場合によっては、血小板数の減少を導くことなく、TFPIの活性を阻害する能力を含む。
【0077】
前記抗体の任意の、適切なフラグメントまたはバリアントは、TFPIに結合する能力を保持する。好ましくは、TFPIに特異的に結合する能力を保持する。好ましくは、本発明から得られる抗体(3F18)とTFPI分子の同一のエピトープまたは領域に特異的に結合する能力を保持する。好ましくは、場合によって血小板数の減少を導くことなく、TFPI活性を阻害する能力、または凝固時間を減少させる能力のように、本発明から得られる抗体の、一つもしくは複数の付加的な機能を保持する。
【0078】
本発明によるポリペプチドまたは抗体「フラグメント」を、トランケーション、例えばポリペプチドのNおよび/またはC末端からの一つまたは複数のアミノ酸の除去によって作製しうる。このような方法で、Nおよび/またはC末端から10まで、20まで、30まで、40までまたはそれ以上のアミノ酸を除去しうる。また、フラグメントを、一つまたは複数の内部の欠失によって作製しうる。
【0079】
本発明の抗体は、3F18抗体のフラグメント、またはそのバリアントでありうり、または、含みうる。本発明の抗体は、前記でさらに記載した通り、前記抗体、またはそのバリアントの抗原結合部分でありうり、または含みうる。例えば、本発明の抗体は、前記抗体もしくはそのバリアントのFabフラグメントでありうり、または、前記抗体もしくはそのバリアント由来の単鎖抗体でありうる。
【0080】
3F18抗体のVLおよびVH鎖のアミノ酸配列を配列番号3および6それぞれに示す。
【0081】
本発明の抗体は、配列番号3に示された3F18VLアミノ酸配列、またはそのフラグメント、もしくはバリアントを含みうる。抗体は、本願明細書に記載したように、付加的に、または代わりに、配列番号6に示された3F18VLアミノ酸配列、またはそのフラグメント、もしくはバリアントを含みうる。
【0082】
本発明の抗体は、図2に示したVLまたはVHアミノ酸配列の一方のフラグメントを含みうる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも20、または少なくとも25の連続した、配列番号3または6からのアミノ酸配列の、フラグメントを含みうる。前記のフラグメントは、好ましくは、TFPIに結合する能力のような、前記で論じた、一つまたは複数の機能を保持する。
【0083】
任意の前記VHまたはVL配列の、適したフラグメント、またはバリアントは、TFPIに結合する能力を保持する。好ましくは特異的にTFPIに結合する能力を保持する。好ましくは本発明から得られる抗体(3F18)とTFPI分子の同一のエピトープまたは領域に特異的に結合する能力を保持する。好ましくは、本発明から得られる抗体の、一つまたは複数の付加的な機能、例えばTFPIの活性を阻害する能力、または凝固時間を減少させる能力を保持する。
【0084】
本発明の抗体は、本願明細書で同定された特異的な抗体の三つのうちの一つに由来するCDR領域、例えば、配列番号3または6内に由来するCDR領域を、含みうる。CDR領域同定に関する方法は、当該業界において既知である。CDRの位置は、in silicoにおいて、例えばKabatによる番号割り当てにより、評価しうる。抗体結合に関与するアミノ酸残基の位置を、抗体分子またはエピトープにおいて、抗体とそのエピトープとで形成された複合体の結晶を、X線によって実験的に評価しうる。2つの分子間の距離を評価しうる。例えば、抗体のパラトープおよび抗原のエピトープを、他の分子の重原子から4Aの距離内の重原子を持つアミノ酸を含むように、同定しうる。
【0085】
例えば、図3に示すように、Kabatナンバリングを用いて、3F18の軽鎖内のCDR配列を、配列番号3の、24から39、55から61、94から102のアミノ酸に同定しうる。3F18の重鎖のCDR配列を、配列番号6の、31から35、50から65および、98から107のアミノ酸に同定しうる。本発明の抗体は、図3に示す、任意の一つもしくは複数のCDR配列を含みうる。例えば、本発明の抗体は、配列番号3の、24から39、55から61、および94から102の残基の示す、一つ、二つ、または三つ全てのアミノ酸配列を含みうる。本発明の抗体は、代わりにまたは付加的に、配列番号6の、31から35、50から65、および98から107の残基の示す、一つ、二つ、または三つ全てのアミノ酸配列を含みうる。本発明の抗体は配列番号3の、24から39、55から61、および94から102、ならびに配列番号6の、31から35、50から65、および98から107の残基の示す、6つ全てのアミノ酸配列を含みうる。
【0086】
本発明の抗体は、3F18抗体のバリアントのように、特定の配列の一つのバリアントの代わりになりうる、または、含みうる。例えば、バリアントは、任意の前記アミノ酸配列の置換、失欠、または付加バリアントでありうる。
【0087】
バリアント抗体は、前記で論じた特定の配列およびフラグメントからの、1、2、3、4、5、10まで、20まで、30まで、またはそれ以上のアミノ酸置換、および/または失欠を含みうる。「失欠」バリアントは個々のアミノ酸の失欠、2、3、4、または5アミノ酸のような小さなグループのアミノ酸の失欠、特定のアミノ酸ドメインまたは他の特徴の失欠のような、大きなアミノ酸領域の欠失を含みうる。「置換」バリアントは、好ましくは、一つまたは複数のアミノ酸の、同数のアミノ酸との交換であって、保存的アミノ酸置換をもたらす交換を含む。例えば、アミノ酸を、同様の性質を持つ代わりのアミノ酸、例えば、他の塩基性アミノ酸、他の酸性アミノ酸、他の中性アミノ酸、他の荷電したアミノ酸、他の親水性アミノ酸、他の疎水性アミノ酸、他の極性アミノ酸、他の芳香族アミノ酸、他の脂肪族アミノ酸で、置換しうる。適切な置換を選ぶために使用されうる、20の主なアミノ酸のいくつかの性質は次の通りである:
【0088】
【表1】

【0089】
好ましい「誘導体」または「バリアント」は、天然に存在するアミノ酸の代わりに、配列中に存在するアミノ酸がそれらの構造的アナログである、ものを含む。また、配列中に使用されるアミノ酸を、抗体の機能の提供が著しい悪影響を与えない限りにおいて、誘導体化しうり、改変しうり、例えば、ラベル化しうる。
【0090】
前記の誘導体、およびバリアントを、抗体の合成中に、または製造後の改変によって、または、抗体が組換え体に含まれる場合、核酸の、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、もしくは酵素的切断、および/もしくはライゲーションの、既知の技術によって、調製しうる。
【0091】
好ましくは、本発明によるバリアント抗体は、60%を超える、または70%を超える、例えば75もしくは80%、好ましくは、85%を超える、例えば90もしくは95%を超える、配列番号3または6またはそれらのフラグメントと、同一なアミノ酸配列を持つ。このレベルのアミノ酸同一性は、関連のある配列番号の配列の全長にわたって、または、前記配列の一部にわたって、例えば、20、30、50、75、100、150、200またはそれ以上のアミノ酸にわたって、全長ポリペプチドのサイズに応じて見られる。
【0092】
アミノ酸配列に関連して、「配列同一性」は、以下のパラメーターで、Clustal W(Thompson et al., 1994, supra)を用いて評価した場合に、規定された値を持つ配列とみなす:
【0093】
ペアワイズ・アライメント パラメーター―Method: accurate、Matrix: PAM、Gap open penalty: 10.00、 Gap extension penalty: 0.10;
マルチプル・アライメント パラメーター―Matrix: PAM、Gap open penalty: 10.00、% identity for delay: 30、Penalize end gaps: on、Gap separation distance: 0、Negative matrix: no、Gap extension penalty: 0.20、 Residue-specific gap penalties、Hydrophilic gap penalties: on、Hydrophilic residues: GPSNDQEKR。
特定の残基における配列同一性は、簡単に誘導体化される、同一の残基を含むことを意図される。
【0094】
従って、本発明は、特定のVHおよびVLアミノ酸配列を持つ抗体、ならびに、前記VHおよびVLドメインの機能または活性を維持する、そのフラグメントおよびフラグメントを提供する。
【0095】
従って、本発明の抗体は、
(a)配列番号3の軽鎖可変領域アミノ酸配列、
(b)TFPIに特異的に結合する能力を保持する、(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント、または、
(c)(a)の配列に対して、少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を持つ(a)のバリアントであって、TFPIに特異的に結合する能力を保持している、(a)のバリアント、
を含みうる。
【0096】
本発明の抗体は、
(a)配列番号6の重鎖可変領域アミノ酸配列、
(b)TFPIに特異的に結合する能力を保持する、(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント、または、
(c)(a)の配列に対して、少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を持つ(a)のバリアントであって、TFPIに特異的に結合する能力を保持している、(a)のバリアント、
を含みうる。
【0097】
本発明の抗体は、配列番号3の軽鎖可変領域、および、配列番号6の重鎖可変領域を含みうる。
【0098】
本発明の抗体は、
(a)配列番号3の軽鎖可変領域、および、配列番号6の重鎖可変領域、
(b)重鎖および軽鎖配列の一つまたは両方が、(a)に規定されている配列の少なくとも7アミノ酸のフラグメントを含むように改変されている、(a)のバリアント、または、
(c)重鎖および軽鎖配列の一つまたは両方が、(a)または(b)の配列に対して少なくとも70%アミノ酸配列同一性を持つように改変されている、(a)または(b)のいずれかのバリアント、
を含みうる抗体であって、TFPIに特異的に結合する能力を保持する。また、抗体は、本願明細書に記載の本発明の抗体の、一つまたは複数の付加的な機能または活性、例えば、場合によっては血小板数の減少を導くことなく、TFPIを阻害する能力、または凝固時間を短縮する能力を保持しうる。
【0099】
好ましい、配列番号3のフラグメントおよびバリアントは、(i)配列番号3のアミノ酸24から39、および/または、(ii)配列番号3のアミノ酸55から61、および/または、(iii)配列番号3のアミノ酸94から102を、含む。好ましい、配列番号6のフラグメントおよびバリアントは、(i)配列番号6のアミノ酸31から35、および/または、(ii)配列番号6のアミノ酸50から65、および/または、(iii)配列番号6のアミノ酸98から107を、含む。
【0100】
以上の通り、本発明の抗体は、本発明の別の抗体と同一のエピトープまたは領域に結合しうる。従って、前記抗体が、本願明細書に記載の任意の特定の抗体、フラグメント、およびバリアントと同一の、TFPIのエピトープまたは領域に結合しうることが理解されるであろう。
【0101】
また、本発明は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。従って、本発明のポリヌクレオチドは本願明細書の任意の抗体をコードしうる。用語「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」を、本願明細書において同じ意味で用い、デオキシリボ核酸かそれともリボヌクレオチド核酸、またはそれらのアナログの、任意の長さのヌクレオチドの重合体とみなす。ポリヌクレオチドの非限定的例は、遺伝子、遺伝子フラグメント、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、リコンビナントポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、および、プライマーを含む。本発明のポリヌクレオチドを、単離された、または精製された形態で提供しうる。
【0102】
選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、適切な制御配列のコントロール下に位置する場合、in vivoにおいて(DNAの場合)転写され、(mRNAの場合)ポリペプチドに翻訳される核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび、3’(カルボキシ)末端の転写終始コドンによって決定される。本発明の目的のために、前記核酸配列は、ウイルスからのcDNA、原核生物または真核生物のmRNA、ウイルスからのゲノム配列、または、原核生物のDNAもしくはRNA、および合成DNA配列さえ、含みうるが、限定はされない。翻訳終止配列はコード配列の3’に位置しうる。
【0103】
一つの実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、前記のVHまたはVLアミノ酸配列をコードする配列を含む。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、前記の、配列番号3または6、またはそれらのバリアントもしくはフラグメントを含む、ポリペプチドをコードしうる。このようなポリヌクレオチドは、配列番号2、4、5および7の、任意の一つの核酸配列から成りうる、または含みうる。適切なポリヌクレオチド配列は、代わりに、前記の特定のポリヌクレオチド配列のうちの一つのバリアントでありうる。例えば、バリアントは、任意の前記核酸配列の置換、失欠、付加バリアントでありうる。バリアントポリヌクレオチドは、配列表に記載の配列からの、1、2、3、4、5、10まで、20まで、30まで、40まで、50まで、75まで、またはそれ以上の核酸置換、および/または失欠を含みうる。
【0104】
適切なバリアントは、任意の配列番号2、4、5および7の一つのポリヌクレオチドと、少なくとも70%相同でありうる。好ましくは、少なくとも80または90%、および、さらに好ましくは少なくとも95%、97%、または、99%前記と相同。相同性を測定する方法は当該業界において周知であり、本文脈に関して、相同性を核酸同一性に基づいて計算することは当業者によって理解されるであろう。このような相同性は、少なくとも15、好ましくは少なくとも30、例えば、少なくとも40、60、100、200またはそれ以上の連続したヌクレオチドの領域にわたって、存在しうる。このような相同性は、改変されないポリヌクレオチド配列の全長にわたって、存在しうる。
【0105】
ポリヌクレオチド相同性または同一性の測定方法は、当該業界において既知である。例えば、UWGCG Packageは、相同性を計算するのに使用することができるBESTFITプログラムを提供する(例えばデフォルトの設定において使用される)(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12, p387-395)。
【0106】
また、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを、相同性または配列のラインアップを計算するのに(典型的にデフォルト設定において)、例えば、Altschul S. F.(1993)J Mol Evol 36: 290-300、Altschul, S, F et al(1990) J Mol Biol 215: 403-10に記載のように、使用することができる。
【0107】
BLAST解析を実行するソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Centre for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/))を通じて公開されている。このアルゴニズムは、データーベース配列中の同じの長さのワードと整列させた場合、いくつかの正値閾値スコアTと一致するか、それとも、満たす、クエリー配列(query sequence)中の長さWの短いワードの同定によって、最初にhigh scoring sequence pair(HSPs)を同定することを含む。Tを近隣ワードスコア閾値(neighbourhood word score threshold)と称する(Altschul et al, supra)。これら最初の近隣ワードヒットは、それらを含むHSPsを見つける、最初の検索のための種として作用する。ワードヒットを、累積アライメントスコアを増加できうる限り、各配列に沿って両方向に伸張する。一つもしくは複数のネガティブスコアの残基アライメントの蓄積のために累積アライメントスコアがゼロ以下になる場合、または、どちらかの配列の終わりに達した場合、ワードヒットの両方向への伸張を停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXはアライメントの感受性と速度を決定する。BLASTプログラムはデフォルトとして、11のワード長(W)、BLOSUM62 スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919)を参照せよ)、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0108】
BLASTアルゴニズムは2つの配列間の類似性の統計的解析を実行する(例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照せよ)。BLASTアルゴニズムによって提供される類似性の一つの尺度は、二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然によって起こる確率の指標を提供する、最小和確率(P(N))である。例えば、第一の配列の、第二の配列との比較の最小和確率が、約1未満、好ましくは、約0.1未満、さらに好ましくは約0.01未満、最も好ましくは0.001未満である場合、第一の配列は、第二の配列と類似していると考えられる。
【0109】
ホモログは、3、5、10、15、20未満、またはそれ以上の変異(それぞれは、置換、欠失、または挿入でありうる)によって、関連するポリヌクレオチド内の配列と異なりうる。前記変異を、ホモログの、少なくとも30、例えば、少なくとも40、60、もしくは100またはそれ以上の連続したヌクレオチドの領域にわたって、測定しうる。
【0110】
一つの実施態様において、バリアント配列は、遺伝情報の縮重のために、配列表に記載された特定の配列から変化しうる。DNAコードには4つの主な核酸残基(A、T、C、およびG)があり、生物の遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸を示す、三つの文字のコドンを「つづる」ために使用する。DNA分子に沿ったコドンの線状の配列は、それら遺伝子にコードされたタンパク質のアミノ酸の線状の配列に翻訳される。コードは高度に縮重しており、61コドンで20の自然のアミノ酸をコードし、3コドンは「終止コドン」を示す。従って、たいていのアミノ酸は一つ以上のコドンによってコードされ、―実際、いくつかは、4つまたはそれ以上の異なるコドンによってコードされる。従って、本発明のバリアントポリヌクレオチドは、本発明の別のポリヌクレオチドと同一のポリペプチド配列をコードするが、同じアミノ酸をコードする異なるコドンの使用のために、異なる核酸配列を持ちうる。
【0111】
本発明によるポリヌクレオチド「フラグメント」を、トランケーションによって、例えば、ポリヌクレオチドの片方または両方の端からの、一つまたは複数のヌクレオチドの除去によって、作製しうる。10まで、20まで、30まで、40まで、50まで、75まで、100まで、200まで、またはそれ以上のアミノ酸を、このような方法でポリヌクレオチドの3’および/または5’末端から除去しうる。また、フラグメントを、一つまたは複数の内部欠失によって作製しうる。このようなフラグメントを、配列番号2、4、5、もしくは7の配列から得ることができ、または、本願明細書に記載のバリアントポリヌクレオチドから得うる。好ましくは、このようなフラグメントは、30から300残基長の間、例えば、30から300、30から200、30から100、100から200、または200から300残基である。あるいは、本発明のフラグメントは、より長い配列、例えば、本発明のポリヌクレオチドの全長の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を含むより長い配列でありうる。
【0112】
従って、本発明の抗体を、抗体をコードし、かつ、発現することができる、ポリヌクレオチドの形態から作製しうり、または供給しうる。抗体が二つ以上の鎖を含む場合、本発明のポリヌクレオチドは、一つまたは複数の抗体鎖をコードしうる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは抗体軽鎖、抗体重鎖、または両方をコードしうる。2つのポリヌクレオチド(一方が抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドであり、他方が対応する抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドである)を、提供しうる。前記ポリヌクレオチド、または、一対のポリヌクレオチドを、本発明の抗体を生じるように共に発現しうる。
【0113】
本発明のポリヌクレオチドを、Sambrook et al(1989, Molecular Cloning-a laboratory manual; Cold Spring Harnor Press)を例として記載の通り、当該業界で既知の方法で、合成しうる。
【0114】
本発明の核酸分子を、挿入された配列に操作可能に連結された、従って、in vivoにおいて本発明の抗体の発現を可能にする、コントロール配列を含む発現カセットの形態で提供しうる。前記発現カセットを、同じく典型的に、ベクター内に提供する(例えばプラスミドまたはリコンビナントウイルスベクター)。前記発現カセットを、ホスト被験体に直接投与しうる。あるいは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターをホスト被験体に投与しうる。好ましくは、ポリヌクレオチドを、遺伝子ベクターを用いて調製し、および/または投与する。適切なベクターは、十分な量の遺伝情報を運ぶことが可能であり、かつ、本発明のポリペプチドの発現を可能にする、任意のベクターでありうる。
【0115】
従って、本発明は、前記ポリヌクレオチド配列を含む、発現ベクターを含む。前記発現ベクターを、通常の分子生物学の当該技術において構築し、例えば、プラスミドDNAの使用、ならびに、適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー、および、例えば必要になりうり、および本発明のペプチドの発現を可能にするために正しい方向に配置されるポリアデニル化シグナルのような他の要素を、含みうる。他の適切なベクターは、当業者にとって明らかであろう。この点に関するさらなる例示として、本発明者はSambrook et alを参照する。
【0116】
また、本発明は、本発明の抗体を発現するように改変された細胞を含む。前記細胞はトランジェント、または、好ましくはステーブルな、哺乳類細胞もしくは昆虫細胞のような高等真核生物細胞株、酵母のような下等真核細胞、もしくはバクテリア細胞のような原核細胞を含む。本発明の抗体をコードする、ベクターまたは発現カセットの挿入によって改変されうる、細胞の特定の例は、哺乳類のHEK293T、CHO、HeLa、およびCOS細胞を含む。好ましくは、選択された細胞株は、ステーブルなだけでなく、ポリペプチドの、成熟グリコシル化および、細胞表面発現を可能にしたものである。
【0117】
本発明の前記細胞株を、本発明の抗体を作製するために、通常の方法を用いて培養しうり、または、本発明の抗体を被験体に運ぶために、治療的に、もしくは予防的に使用しうる。あるいは、本発明のポリヌクレオチド、発現カセット、またはベクターを、ex vivoにおいて被験体由来の細胞へ投与しうり、その後、前記細胞を前記被験体の体に戻しうる。
【0118】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の分子、例えば、本願明細書に記載の抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、および細胞を含む、組成物および処方を提供する。例えば、本発明は、医薬的に許容可能なキャリアーと共に処方された、本発明の一つまたは複数の分子、例えば、一つまたは複数の本発明の抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0119】
本願明細書において使用される「医薬的に許容可能なキャリアー」は、任意の、および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌、および抗真菌剤、等圧および吸収遅延剤、ならびに、生理的に適合性であるそれに類するものを含む。好ましくは、キャリアーは、非経口の、例えば静脈内の、筋肉内の、または皮下の(例えば注射もしくは点滴による)投与に適している。投与の経路に依存して、抗体を、抗体を不活性化または変性しうる、酸および他の自然状況の作用から抗体を守るために、物質でコーティングしうる。
【0120】
好ましい医薬的に許容可能なキャリアーは、水性のキャリアーまたは希釈剤を含む。本発明の医薬組成物に使用されうる適切な水性のキャリアーの例は、水、緩衝用水、および生理食塩水を含む。他のキャリアーの例は、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびそれに類するもの)、ならびに、その適切な混合物、オリーブオイルのような植物性オイル、ならびに、オレイン酸エチルのような注射可能な有機エステル類を含む。適切な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散の場合において要求される粒子サイズの維持により、および、界面活性剤の使用により、維持しうる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール類、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。
【0121】
また、本発明の医薬組成物は、医薬的に許容可能な抗酸化剤を含みうる。また、前記組成物は、補助薬、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤を含みうる。微生物の存在の予防を、殺菌処置、上記によって、ならびに、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、およびそれに類するものの含有によって、確保しうる。また、等張剤、例えば、砂糖、塩化ナトリウム、およびそれに類するものを、組成物に含むことが望ましいであろう。加えて、注射可能な医薬形態の、長期にわたる吸収を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような、吸収を遅らせる剤の含有によってもたらしうる。
【0122】
治療組成物は、典型的に、製造および貯蔵の状況下で、無菌、および安定でなければならない。前記組成物を、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または、高い薬剤濃度に適した他の秩序付けられた構造として、処方しうる。
【0123】
無菌で注射可能な溶液を、上記に列挙された成分を一つまたは組み合わせて、適切な溶媒中において必要とされる量の活性剤(例えば、抗体)の組み込みによって、必要に応じてその後マイクロ濾過殺菌し、調製しうる。一般的に、分散剤を、基本的な分散媒体および上記に列挙された成分由来の、要求される他の成分を含む、無菌の小胞への、活性剤の組み込みによって調製する。無菌で注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、事前にその濾過滅菌された溶液から、任意の付加的な望ましい成分に加えて活性剤の粉末を生産する、真空乾燥およびフリーズ・ドライ(凍結乾燥)である。
【0124】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体および付加的な活性成分を含みうる。上記のように、本発明の組成物は、一つまたは複数の本発明の抗体を含みうる。また、本発明の医薬組成物は付加的な治療または予防剤を含みうる。例えば、本発明の医薬組成物が出血性疾患の治療用であることを意図される場合、本発明の医薬組成物は、出血性疾患の症状を軽減することを意図した、一つまたは複数の剤を付加的に含みうる。例えば、前記組成物は、一つまたは複数の凝固因子を含みうる。前記組成物は、患者の状態を改善することを意図した、一つまたは複数の他の成分を含みうる。例えば、前記組成物が、不要な出血を患う患者、例えば手術を経験する患者または外傷を患う患者の治療用であることを意図した場合、前記組成物は一つまたは複数の鎮痛剤、麻酔剤、免疫抑制剤、または抗炎症剤を含みうる。
【0125】
また、本発明の範囲内には、抗体または本発明の他の組成物および使用のための取扱説明書を含むキットが含まれる。さらに、前記キットは、一つまたは複数の付加的な試薬、例えば、前記の付加的な治療または予防剤を含みうる。
【0126】
本発明の抗体、他の分子および組成物は、凝固に関連する疾患の治療および予防を含む、多数のin vitroおよびin vivoにおける治療的有用性を持つ。例えば、前記抗体および組成物を、培養液中の細胞へ、in vitroもしくはex vivoで、または、ヒト被験体へ、例えばin vivoで、様々な疾患の予防または治療のために、投与することができる。
【0127】
特に、本発明は、効果的な量の本発明の抗体、または他の分子、または組成物を必要としている患者への投与を含む、出血性疾患の治療のための、または血液凝固の促進のための、方法を提供する。例えば、前記方法は、凝固因子欠損、例えば、血友病A、血友病B、第XI因子欠損、第VII因子欠損、血小板減少症、またはフォン・ヴィレブランド病の治療用となりうる。前記方法は、凝固因子阻害剤の存在に付随して起こる状態の治療用となりうる。前記方法は過度の出血の治療用となりうる。本発明の前記抗体と組成物を、手術もしくは抗凝血治療の前、最中、後に、または、外傷の後に患者を治療するために使用しうる。本願明細書に記載の前記抗体および組成物を、任意の前記治療に使用しうり、または任意の前記治療用の医薬の製造に使用しうる。
【0128】
本発明の抗体および組成物を、予防的/阻害的、および/または治療的処置のために投与しうる。
【0129】
治療的適応において、抗体または組成物は、前記の疾患および状態を既に患う対象に、
状態、または一つもしくは複数の症状の治癒、軽減、または部分的な抑止に十分な量で、投与される。このような治療的処置は病気の症状の重症度の減少、または症状がない時間の頻度もしくは持続の増加をもたらす。これを達成するのに適した量は「治療に効果的な量」として定義される。例えば、治療が、不要な出血のためである場合、治療を、出血量の減少、または完全に出血を止める適切な凝血として定義しうる。
【0130】
予防的または阻害的適用において、抗体または組成物を、前記の疾患または状態の危険がある対象に、状態、または、一つもしくは複数のその症状の、引き続いた影響を阻害する、または減少させるのに十分な量で、投与する。これを達成するのに適した量を、「予防に効果的な量」として定義する。例えば、治療が、不要な出血を阻害する場合、予防的効果を、調節因子の非存在下において見られる状態と比較した、出血の予防、または、出血の期間もしくは量の減少として定義しうる。
【0131】
各目的について適切な量は、対象の体重および一般的な状態だけでなく、疾患または傷害の重症度に依存する。
【0132】
本願明細書で使用される用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類および非哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0133】
本発明の抗体または組成物を、当該業界で既知の、一つまたは複数の多種多様な方法を用い、一つまたは複数の投与ルートを経由して、投与しうる。当業者にとって正確に理解されているように、投与の経路、および/または、方法は、望ましい結果に依存して変化する。本発明の抗体または組成物の投与に関する、好ましい経路は、例えば、注射または点滴による、静脈内の、筋肉内の、皮内の、腹腔内の、皮下の、脊髄の、または他の非経口の投与ルートを含む。本願明細書で記載の表現「非経口の投与」は、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与の方法を意味する。あるいは、本発明の抗体または組成物は、非経口ではない経路を介して、例えば、局所の、表皮性の、または粘膜の投与経路で投与することができる。
【0134】
本発明の抗体の適切な量を、医療分野の当業者により、決定しうる。本発明の医薬組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性にならずに、特定の患者、組成物、および投与の方法について、望ましい治療反応を効果的に達成する、活性成分の量が得られるように、変動しうる。選択された用量レベルは、使用された特定の抗体の活性、投与経路、投与時間、抗体の排出率、治療の持続時間、使用された特定の組成物と組み合わせて用いられる、他の薬物、化合物、および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康および既往歴、および医薬業界において既知の類する因子を含む、多種多様な薬物動態の因子に依存する。
【0135】
本発明の抗体の適切な用量は、例えば、治療されるべき患者の体重kg当り約0.1 μgから約100 mgの範囲内でありうる。例えば、適切な用量は、約1 μg/kg体重/日から約10 mg/kg体重/日または、約10 g/kg体重/日から約5 mg/kg体重/日である。
【0136】
投薬計画を、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するために調節しうる。例えば、一つのボーラスを投与しうり、いくつかに分けられた用量を規定時間を超えて投与しうり、または、治療状況の緊急の要求によって指示されたように、前記用量を、比較的に減らしたり増加させたりしうる。投与および調剤の均一性を簡略化するために、投与単位形態で非経口組成物を処方することが、特に有利になる。本願明細書で記載の投与単位形態は、治療されるべき対象のための一回の用量に適した、物理的に別々のユニット(各ユニットは、要求された医薬的キャリアーと共同して、望まれた治療効果をもたらすように計算された活性化合物の事前に決定された量を含む)を意味する。
【0137】
抗体を、一回の服用、または複数回の服用で、投与しうる。複数の服用を、同一または異なる経路を介して、かつ、同一または異なる部位に投与しうる。あるいは、抗体を、少ない頻度での投与が要求される場合において、徐放性製剤のように投与しうる。用量と頻度は、患者内の抗体の半減期、および、望まれる治療の持続時間に依存して、変化しうる。また、投与の用量と頻度は、処置が予防的または治療的かどうかに依存して変化しうる。予防的適応において、比較的低い用量を、長期間にわたって、比較的離れた間隔で、投与しうる。治療的適応において、比較的多い用量を、例えば、患者が、疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、投与しうる。
【0138】
前記のように、本発明の抗体を、一つまたは他の複数の、他の治療剤と、同時投与しうる。他の剤は、調節因子の効果を増進する剤でありうる。他の剤は、血液凝固因子のように、血液凝固を増進する剤でありうる。特に、本発明の調節因子を、第VII因子または第VIIa因子と同時投与しうる。他の剤は、患者の他の症状または状態を治療することを意図されうる。例えば、他の剤は、鎮痛剤、麻酔剤、免疫抑制剤または抗炎症剤でありうる。
【0139】
二種類以上の剤の併用投与を、多数の異なる方法で達成しうる。一つの実施態様において、抗体および他の剤を、一つの組成物で共に投与しうる。もう一つの実施態様において、抗体および他の剤を、併用療法の一環として分離した組成物で投与しうる。例えば、調節因子を、他の剤と、事前に、事後に、または同時に投与しうる。
【0140】
さらに、本発明を、以下の実施例によって例示するが、さらに限定することを意図するものではない。本出願の全文中で引用された、全ての図および全ての参考文献、特許、および公開された特許出願の中身を、明確に、参考によって本願明細書に組み入れる。
【実施例】
【0141】
(実施例1―TFPIに対するモノクローナル抗体の作製と特性評価)
<要約>
モノクローナル抗体を組織因子経路阻害因子(TFPI)に対して作製した。望ましい結合特異性を持つモノクローナル抗体を同定し、クローニングし、配列決定した。前記抗体はin vivoにおける角質出血時間を著しく減少させるが、血小板数の著しい減少を導かないことが発見された。
【0142】
<方法と結果>
全てのキットを製造者の使用説明書に従って使用した。略語:HC: 重鎖(heavy chain)、LC: 軽鎖(light chain)、VH: 可変ドメイン―重鎖(variable domain-heavy chain)、VL: 可変ドメイン―軽鎖(variable domain-light chain)、PCR: ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)。
【0143】
<免疫化および細胞融合>
マウスを、全長TFPIおよび、最初の2つのKunitzドメインのみを含む、短縮型TFPIB161Bの両方を用いて免疫化した。RBFマウスを免疫化およびマウスモノクローナル抗体作製に使用した。注射をマウスの背中の皮下に行った。20 μgタンパク質を、最初の注射のために、完全フロイントアジェバントと混合した。次の免疫化において、不完全フロイントアジェバントを同濃度の抗原と使用した。最後の免疫化の後10日目、マウス由来の眼の血液を、TFPI特異的抗体について、ELISAによってスクリーニングを行った。陽性の血清力価を伴うマウスを10 μgのTFPIを用いて、静脈内の注射によって追加免疫し、3日後に解剖した。脾臓を無菌的に取り出し、単細胞の懸濁液へ分散させた。脾臓細胞と骨髄腫細胞との融合を、PEG法または、電気融合によって行った。
【0144】
<結合アッセイ:ELISA>
イムノプレート(immunoplate)を、抗マウスIgGでコーティングした。ハイブリドーマ細胞由来の培養上清をプレートに加え、洗浄後、可溶性ビオチン化ヒトTFPI、またはTFPIB161Bを、特異的結合に関して試験するために、加えた。
【0145】
<中和抗体価測定法:F Xaアッセイ、および、TF/F VIIa/ F Xaアッセイ>
F Xa阻害アッセイ:F Xaの90%阻害を引き起こす、固定された濃度のTFPIを、抗TFPIモノクローナル抗体を含んだハイブリドーマ細胞由来の培養上清とプレインキュベートし、F Xaに加えてF Xa特異的発色基質を加えた。このアッセイは、TFPIのF Xaへの結合(K2ドメイン)に対応する。
【0146】
F VIIa/TF/F Xa阻害アッセイ:1)固定されたTFPI(F VIIa/TFの90%阻害)と抗TFPI抗体を含むハイブリドーマ細胞由来の培養上清とのインキュベーション、2)TFPI+F VIIa+TF+F Xaのインキュベーション、3)F X(F X>> F Xa)の添加、続いてF Xa発色基質とのインキュベーション。
【0147】
<希釈プロトロンビン時間(dPT)>
希釈プロトロンビン(PT)解析:希釈したヒトトロンボプラスチン(TFソース)と組み合わせたヒト血漿。血漿の凝固時間を、濃度を増加させたプロテインAで精製したTFPIモノクローナル抗体を添加して測定し、凝固時間の用量依存的減少について探索した。F VIIa(25 nM)はポジティブコントロールであり、前記凝固時間を短くする。
【0148】
<結合相互作用解析>
結合相互作用解析を、Biacore 3000における表面プラズモン共鳴により行った。固定した濃度の関連するモノクローナル抗体のキャプチャーを、固定化したマウス抗IgGで得た。異なる濃度のTFPIをテストした。結合定数(Kon、Koff、KD)の決定を、TFPIおよび対象とする抗体との相互作用を1:1と仮定して、得た。
【0149】
<トロンボエラストグラフィー>
全血における、血塊形成および線溶の動態の記録。血友病Aのような状態を、中和抗F VIII IgGを用いて血液をプレインキュベートすることにより誘導する。
【0150】
<in vivo解析>
ウサギを、2000 RBU/kgの、抗F VIIIモノクローナル抗体の静脈注射による投与によって、一過的な血友病にした。10分後、ウサギに、12000 U/kgの、抗TFPI抗体(3F18、1.93 mg/kg)を投与した。角質出血時間は、抗F VIII抗体投与後45分間誘導された。
【0151】
3F18抗体は、10 mg/kg rF VIIaの効果に比較して、角質出血時間の著しい減少をもたらした(図1)。3F18抗体の投与は血小板数の著しい減少は導かなかった(図5)。
【0152】
<抗体のクローニングおよび配列決定>
抗TFPI抗体に関する、マウスの重鎖および軽鎖の配列をハイブリドーマからクローニングした:TFPI-3F18A4B1(本願明細書においては3F18と略した)。QiagenのRNeasy-Mini Kitを用いてハイブリドーマ細胞から抽出した全RNAを、cDNA合成の鋳型として使用した。cDNAを、ClontechのSMART(商標)RACE cDNA amplication kitを用いて、5’-RACE反応で合成した。引き続いて、HCおよびLC配列の標的増幅を、Phusion Hot Star polymerase(Finnzymes)および、フォワードプライマーとして、SMART(商標)RACE kitに含まれるuniversal primer mix(UPM)を用い、PCRにより行った。HC(VHドメイン)の増幅のために、以下の配列のリバースプライマー、5’-CCCTTGACCAGGCATCCCAG-3’(primer#129)を、使用した。LC増幅のために、以下の配列のリバースプライマー、5’-GCTCTAGACTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTG-3’(primer#69)を使用した。
【0153】
PCR産物を、ゲル電気泳動によって分離し、GE Healthcare Bio-SciencesのGFX PCR DNA and Gel Band Purification Kitを用いて抽出し、InvitrogenのZero Blunt TOPO PCR Cloning Kitおよび、化学的なコンピテントTOP10 大腸菌(E. Coli)を用いて配列決定のためにクローニングした。コロニーPCRを、選択したコロニーにおいて、Applied BiosystemsのAmpliTaq Gold Mas-ter Mixおよび、M13uni/M13rev primersを用いて行った。コロニーPCRの精製をExoSAP-IT enzyme mix(usb)を用いて行った。配列決定を、ドイツ、マルティンスリートのMWG Biothechで、M13uni(-21)/M13rev(-29)またはT3/T7 sequenc-ing primersのどちらかを用いて行った。配列はVecterNTIプログラムを用いて解析し、アノテートした。
【0154】
ハイブリドーマTFPI-3F18A4B1由来の、単一のユニークなマウスカッパー型LC、単一のユニークなマウスHC、サブクラス IgG1を同定した。VH & VL配列を図2に示す、リーダーペプチド配列は含まれない。
【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織因子経路阻害因子(TFPI)に特異的に結合し、かつ、(a)ヒトF VIII欠損血漿、および/または(b)ヒト全血における、凝固時間を減少させる抗体であって、
(a)配列番号3の軽鎖可変領域アミノ酸配列、
(b)TFPIに特異的に結合する能力を保持する、(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント、または、
(c)(a)の配列に対して、少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を持つ(a)のバリアントであって、TFPIに特異的に結合する能力を保持している、(a)のバリアント、
を含む抗体。
【請求項2】
(a)配列番号3のアミノ酸24から39、
(b)配列番号3のアミノ酸55から61、および
(c)配列番号3のアミノ酸94から102、
から選択された、一つまたは複数の配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
組織因子経路阻害因子(TFPI)に特異的に結合し、かつ、(a)ヒトF VIII欠損血漿、および/または(b)ヒト全血における、凝固時間を減少させる抗体であって、
(a)配列番号6の重鎖可変領域アミノ酸配列、
(b)TFPIに特異的に結合する能力を保持する、(a)の少なくとも7アミノ酸のフラグメント、または、
(c)(a)の配列に対して、少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を持つ(a)のバリアントであって、TFPIに特異的に結合する能力を保持している、(a)のバリアント、
を含む抗体。
【請求項4】
(a)配列番号6のアミノ酸31から35、
(b)配列番号6のアミノ酸50から65、および
(c)配列番号6のアミノ酸98から107、
から選択された、一つまたは複数の配列を含む、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
組織因子経路阻害因子(TFPI)に特異的に結合し、かつ、(a)ヒトF VIII欠損血漿、および/または(b)ヒト全血における、凝固時間を減少させる抗体であって、
(i)請求項1または2に定義のアミノ酸配列、および、(ii)請求項3または4に定義のアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項6】
配列番号3の軽鎖可変領域、および、配列番号6の重鎖可変領域を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
組織因子経路阻害因子(TFPI)に特異的に結合し、かつ、(a)ヒトF VIII欠損血漿、および/または(b)ヒト全血における、凝固時間を減少させる抗体であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体と、同一のエピトープに結合する抗体。
【請求項8】
TFPIの結合に関して請求項6に記載の抗体と競合する、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
血小板レベルの著しい減少なしに、in vivoにおける凝固時間を減少させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
モノクローナル抗体である、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号2、4、5、および7から選択される配列を含む、請求項11に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体、または、請求項11もしくは120に記載のポリヌクレオチド、および、医薬的に許容可能なキャリアーまたは希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
(a)出血性疾患の治療もしくは予防用の、または、(b)血液凝固の刺激用の、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体、請求項11もしくは12に記載のポリヌクレオチド、または、請求項13に記載の組成物。


【図4】
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【図1】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−513193(P2012−513193A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541487(P2011−541487)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067566
【国際公開番号】WO2010/072687
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511099685)
【Fターム(参考)】