説明

組織培養用培養器、及び三次元組織培養物の製造方法

【課題】配向性を有する三次元組織培養物の力学的強度を簡便に高めることができる組織培養用培養器、及びそれを用いた三次元組織培養物の製造方法を提供する。
【解決手段】細胞から三次元組織培養物を製造するための組織培養用培養器であって、前記細胞を付着させて培養する面に、底部の幅よりも上部の幅が大きい溝が所定方向に向かって連続的又は断続的に設けられると共に、当該所定方向に向かって設けられた溝が前記所定方向と交差する方向に所定間隔で複数配列されている組織培養用培養器、並びに前記組織培養用培養器に細胞を播種する播種工程と、播種後の細胞を培養して前記培養する面に付着させると共に、前記細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、所定期間後に、前記培養する面から前記培養物を分離する分離工程と、を含む三次元組織培養物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織培養用培養器、及び三次元組織培養物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重症臓器不全や難治性疾患、或いは激しいスポーツや交通事故などによって、生体組織の一部又は全部が損傷を受けた場合には、遺伝子工学や細胞組織工学、再生医学等を駆使して、この欠損部を補う再生医療による治療が注目されている。
これまで組織修復、再生をめざした細胞治療を行う場合、細胞の集積の維持、細胞増殖、分化機能の安定化、さらには治療部位にかかる力学的ストレスからの保護などのために大多数の研究では、有機高分子化合物や生体スキャフォールド(Scaffold)が使用されてきた(例えば、特許文献1)。しかし、スキャフォールドの多くは生物(動物)材料、生体高分子材料等を含有し、それらの材料の使用が生体に及ぼす安全性は長期にわたっては予測しきれない問題があった。
【0003】
スキャフォールドなどの足場材を用いない細胞移植方法としては、温度感受性培養皿を利用した細胞シート工学技術等が知られている(例えば、非特許文献1)。しかし、この細胞シート技術を使用する場合、単独のシートでは脆弱であることが多く、移植等の外科的操作に耐えうる強度を得るためにはシートを重ね合わせる操作等の工夫が必要であった。
【0004】
これらの問題を解決するために、スキャフォールドを含まない培養組織が知られている(特許文献2及び非特許文献2)。このようなスキャフォールドフリー自己組織性三次元人工組織(3DBT: scaffold-free Three-Dimensional Bioengineered Tissue)は、滑膜などに由来する幹細胞を、細胞外基質産生促進因子を含む細胞培養液中で培養すると得ることができると記載されている。また、細胞外基質産生促進因子を添加することによって細胞外基質の生産が促進されて、その結果、得られる培養組織又は複合体が硬化され、剥離しやすくなり、培養物を剥がしたときに収縮し、三次元化、重層化などが促進されると記載されている。このような培養組織及びその複合体によって、スキャフォールド自体の混入に起因する問題を一挙に解決することができ、スキャフォールドがないにもかかわらず、移植後の経過において優れた治療を可能にすることができると記載されている。
【0005】
しかしながら、上記スキャフォールドフリー自己組織性三次元人工組織は、線維組織などの構造が未発達のため、自己支持性をある程度は維持できるとしても、手術手技における操作で破損等しないよう取り扱いに注意する必要ある。従来の作製方法では、これ以上の引張強度を向上させるには限界があった。
また、上記スキャフォールドフリー自己組織性三次元人工組織は、細胞やコラーゲン線維などが配向性を有しない等方性材料であるが、靭帯や腱などの力学的及び形態的異方性を有する軟組織の代替組織としては、生体内の組織に近似した異方性を有することが望ましい。
このように、高分子材料等を用いずに簡便に培養組織の強度を高め、また、生体内の組織に模倣した配向性を培養組織に付与する方法が必要とされていた。
【0006】
これに関連して、細胞を播種して培養させる培養器としては、例えば、細胞を播種する面に数μm〜数十μm程度の深さの方形の溝を設けて、当該面に細胞を播種して培養する培養器が記載されている(例えば、非特許文献3〜5)。このような培養器により培養した培養組織は、組織及び組織に含まれる細胞やコラーゲン線維が溝の方向に沿った配向性を有することが知られている。
しかしながら、このような培養器により培養した培養組織は、培養器の培養面から引き剥がす際、剥れにくい上、それに伴い培養組織が破壊されやすくなり、強度が高められなくなってしまうといった現象も生じている。また、溝の深さが浅いため、生成される組織に十分な構造的・力学的異方性を付与することができない。
このような点からも、培養組織に配向性を付与しつつ、簡便に培養組織の強度を高める方法が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002/010349号パンフレット
【特許文献2】特表2007−528756号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J Biomed. Mater. Res., Vol.45, pp.355-362 (1999)
【非特許文献2】Biomaterials, Vol. 38(36), pp.5462-5470 (2007)
【非特許文献3】Journal of Biomechanics, Vol. 36, pp.97-102 (2003)
【非特許文献4】Biomaterials, Vol. 29, pp.2565-2572 (2008)
【非特許文献5】Biomaterials, Vol. 30, pp.5417-5426 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、溝部分の細胞密度と基質密度が高く、溝以外の部分では低密度となるような不均一な組織であって、生体内組織やこれまでのバイオマテリアルになかった新規な性質を付与された組織を生成することができる組織培養用培養器、及びそれを用いた三次元組織培養物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]細胞から三次元組織培養物を製造するための組織培養用培養器であって、前記細胞を付着させて培養する面に、底部の幅よりも上部の幅が大きい溝が所定方向に向かって連続的又は断続的に設けられると共に、当該所定方向に向かって設けられた溝が前記所定方向と交差する方向に所定間隔で複数配列されている組織培養用培養器である。
【0011】
[2]前記溝の側面が、湾曲した壁面で構成された[1]に記載の組織培養用培養器である。
[3]材質が無機材料である[1]又は[2]に記載の組織培養用培養器である。
[4]前記溝の深さが、5μm〜40μmである[1]〜[3]のいずれか1つに記載の組織培養用培養器である。
【0012】
[5]培養液中で細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造する製造方法であって、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の組織培養用培養器に細胞を播種する播種工程と、播種後の細胞を培養して前記培養する面に付着させると共に、前記細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、所定期間後に、前記培養する面から前記培養物を分離する分離工程と、を含む三次元組織培養物の製造方法である。
【0013】
[6]前記細胞が、間葉系幹細胞である[5]に記載の三次元組織培養物の製造方法である。
[7]前記細胞を、細胞外基質産生促進因子の存在下で培養する[5]又は[6]に記載の三次元組織培養物の製造方法である。
[8]前記細胞外基質産生促進因子が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、TGF−β1及びTGF−β3からなる群より選択される少なくとも1種である[7]に記載の三次元組織培養物の製造方法である。
[9]前記細胞外基質が、コラーゲンI、コラーゲンIII、ビトロネクチン及びフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1種である[5]〜[8]のいずれか1つに記載の三次元組織培養物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溝部分の細胞密度と基質密度が高く、溝以外の部分では低密度となるような不均一な組織であって、生体内組織やこれまでのバイオマテリアルになかった新規な性質を付与された組織を生成することができる組織培養用培養器、及びそれを用いた三次元組織培養物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の三次元組織培養用培養器の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の三次元組織培養用培養器の底部の一例を示す概略断面図(図1のA−A断面図に相当)である。
【図3】本発明の三次元組織培養用培養器の底部の他の一例を示す概略断面図(図1のA−A断面図に相当)である。
【図4】本発明の三次元組織培養用培養器の底部の他の一例を示す概略断面図(図1のA−A断面図に相当)である。
【図5】本発明の三次元組織培養用培養器の他の一例を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の三次元組織培養用培養器の他の一例を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の三次元組織培養用培養器の他の一例を示す概略斜視図である。
【図8】本発明の三次元組織培養用培養器の製造方法の一例を示す工程図である。
【図9】本発明の三次元組織培養用培養器の製造方法の一例を示す工程図である。
【0016】
【図10】本発明の実施例にかかる試料の調製を模式的に示した図である。
【図11】本発明の実施例で得られた試料の微分干渉顕微鏡像である。
【図12】本発明の実施例で得られた試料の応力−ひずみ曲線である。
【図13】本発明の実施例で得られた試料の応力−ひずみ曲線である。
【図14】本発明の実施例で得られた試料の応力−ひずみ曲線である。
【図15】本発明の実施例で得られた試料の応力−ひずみ曲線である。
【図16】本発明の実施例で得られた試料の応力−ひずみ曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の組織培養用培養器は、細胞から三次元組織培養物を製造するための組織培養用培養器であって、前記細胞を付着させて培養する面(以下、培養面と称する)に、底部の幅よりも上部の幅が大きい溝が所定方向に向かって連続的又は断続的に設けられると共に、当該所定方向に向かって設けられた溝が前記所定方向と交差する方向に所定間隔で複数配列されている組織培養用培養器(以下、培養器と称する)である。
なお、培養面は、一般に培養器の底面であるが側面であってもよい。
【0018】
そして、本発明の三次元組織培養物の製造方法は、培養液中で細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造する製造方法であって、本発明の培養器に細胞を播種する播種工程と、播種後の細胞を培養して前記培養器の培養する面に付着させると共に、前記細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、所定期間後に、前記培養する面から前記培養物を分離する分離工程と、を含む三次元組織培養物の製造方法である。
【0019】
本発明の培養器を用いた三次元組織培養物の製造方法によれば、溝部分の細胞密度と基質密度が高く、溝以外の部分では低密度となるような不均一な組織であって、生体内組織やこれまでのバイオマテリアルになかった新規な性質を付与された組織を生成することができる。
また、本発明の培養器を用いた三次元組織培養物の製造方法によれば、三次元組織培養物に配向性を付与することができる。そして、配向性を付与することで三次元組織培養物に力学的強度を付与し、かつ、その力学的強度を簡便に高めることができる。これにより、力学的に生体内の組織の代替物として有用な培養物を作製することができる。また、手術手技のハンドリング性に優れる培養物を作製することができる。
【0020】
本発明の培養器の培養面においては、溝が所定方向に向かって連続的又は断続的に設けられており、その方向に沿うように細胞及びコラーゲンなどの細胞外基質が整列し、三次元組織培養物に配向が生じるものと考えられる。
加えて、培養面に形成された溝は、底部の幅よりも上部の幅が大きいことから、当該溝に埋まり込むように培養された培養物を、培養面から分離する際、培養物における溝に埋まり込んだ部位が当該溝から抜け易く、損傷が生じ難くなると考えられる。このため、溝の深さを深くしても、当該損傷に起因した培養物の強度低下が抑制され、結果、高い強度(引張強度)を持つ三次元組織培養物が得られると考えられる。
【0021】
本発明において配向とは、当技術分野で通常用いられる意味で使用される。三次元組織培養物の配向は、形態的には、肉眼での観察、及び拡大鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いた観察により確認でき、この際にHE染色や免疫染色などの組織染色を行って観察することもできる。三次元組織培養物の配向は、力学的には、後述する引張強度、剛性率、ヤング率などを複数方向に測定することによって確認できる。
【0022】
まず、本発明の培養器を説明する。
本発明の培養器は、例えば、図1及び図2に示すように、円形状で透明なガラス皿10で構成され、この底面を培養面10Aとしている。
そして、この培養面10Aに、複数の溝12がストライプ状に形成されている。具体的には、一つの溝12は、所定方向に向かって直線状に連続的に形成され、これが当該所定方向(溝12の延在方向)と交差(例えば直交)する方向に所定間隔(所定ピッチ)で配列されている。
【0023】
溝12は、底部の幅よりも上部の幅(溝12の開口縁における幅)が大きくなっており、具体的には、例えば、底面として培養面10Aと平行な面を有し、底部から上部に向かって次第に幅が大きくなる断面形状となっている。具体的には、溝12は、例えば、底面が培養面10Aと平行な面で構成されると共に、側面が湾曲した壁面で構成されている。
特に、溝12の側面は、湾曲した壁面で構成されていることがよく(具体的に溝12の底部における幅方向両端部が湾曲した壁面で構成されていることがよく)、これにより、溝12の底部における幅方向両端部に培養される培養物が入り込まず、過度な力を加えずに培養物が培養面10Aから分離されることから、その損傷が生じ難く、結果、培養物の強度が高められる。
ここで、溝12の断面形状とは、所定方向に沿って溝12が形成された培養器を、当該所定方向(溝12の延在方向)に対して直交する方向に沿って切断したときの断面形状を意味する。また、溝12の上部とは、培養面10Aに直交し、且つ当該培養面10Aの外側を向く方向を意味する。
【0024】
溝12の深さR1は、例えば、5〜40μmがよく、好ましくは10〜40μm、より好ましくは15〜35μm、更に好ましくは20〜30μm、特に好ましくは25〜30μmである。この溝12の深さR1を上記範囲とすることで、得られる培養物の配向性が得られ易く、且つ得られた培養物を培養器の培養面10Aから分離する際に、当該培養物の損傷が抑制される。
【0025】
溝12の幅R2(溝12の開口縁部での幅:最大幅)は、例えば、40〜150μmがよく、好ましくは50〜120μm、より好ましくは60〜100μmである。この溝12の幅R2を上記範囲とすることで、得られる培養物の配向性が得られ易く、且つ得られた培養物を培養器の培養面10Aから分離する際に、当該培養物の損傷が抑制される。
【0026】
溝12のピッチR3(配列間隔)は、例えば、100〜220μmがよく、好ましくは120〜200μm、より好ましくは140〜180μm、更に好ましくは140〜160μmである。この溝12のピッチR3を上記範囲とすることで、得られる培養物の配向性が得られ易く、且つ得られた培養物を培養器の培養面10Aから分離する際に、当該培養物の損傷が抑制される。
【0027】
溝12の深さR1と幅R2との比率(R1:R2)は、例えば、1:30〜1:1がよく、好ましくは1:5〜1:2である。この溝12の深さR1と幅R2との比率を上記範囲とすることで、得られる培養物の配向性が得られ易く、且つ得られた培養物を培養器の培養面10Aから分離する際に、当該培養物の損傷が抑制される。
【0028】
なお、溝12は、底部の幅よりも上部の幅(溝12の開口縁における幅)が大きい形状であれば、上記断面形状以外にも、例えば、1)図3に示すように、底面として培養面10Aと平行な面を有し、底部から上部に向かって次第に幅が大きくなり、そして幅が一定となる、U字状の断面形状、2)図4に示すように、これらの断面形状であって、溝12の開口縁が面取りされた断面形状(例えば、図4中では図2に示す断面形状で、湾曲状に面取りされた断面形状を示す)等が挙げられる。
【0029】
また、溝12は、一つの溝12が直線状に連続的に設けられた形態に限られず、例えば、図5に示すように、断続的に設けたれた形態であってもよい。溝12を断続的に設けても、培養物に配向性は付与できる。
【0030】
また、溝12は、複数の溝12が所定間隔(ピッチ)で配列し、ストライプ状に形成した形態に限られず、図6に示すように、この培養面10Aに、一つの溝12を所定方向に向かって直線状に連続的に形成され、これを当該所定方向(溝12の延在方向)と交差する方向に所定間隔(所定ピッチ)で配列させたものを第1の溝群とし、当該所定方向に向かって形成された第1の溝群に対して、当該所定方向と交差する方向(例えば直交方向)に当該第1の溝群と同様の第2の溝群を配設した形態(つまり、溝12を格子状に設けた形態)であってもよい。これにより、2つの方向に配向性を持たせた培養物、つまり、2つの方向に対して強度(引張強度)が付与された培養物が得られる。
【0031】
また、本発明の培養器は、円形状のガラス皿10の底面を培養面10Aとして、これに溝を設けた形態に限られず、例えば、図7に示すように、円形状の板状体11の表面を培養面として、これに溝12を形成した形態であってもよい。例えば、この溝12を設けた板状体11は、図7に示すように円形状のガラス皿10の底面に配置して使用される。
【0032】
次に、本発明の培養器の製造方法について説明する。
本発明の培養器の製造方法は、例えば、培養器を準備し、その培養面に対して、エッチング処理(例えばドライエッチング処理、ウエットエッチング処理)を施すことで、当該培養面に溝が設けられた培養器を得る方法が挙げられる。無論、本発明の培養器の製造方法は、特に制限はなく、培養面に溝が形成できれば、周知の方法が採用される。
【0033】
本発明の培養器の製造方法としては、例えば図8及び図9に示す方法が挙げられる。この培養器の製造方法は、ガラス製の円形皿に対してウエットエッチング処理を施して培養面に溝を形成する方法である。
【0034】
具体的には、まず、円形状のガラス皿10又は円形状の板状体11(例えば、テンパックスガラス:千葉理科ガラス)を準備する。なお、これら部材は、円形状に限られるわけではない。
以下、円形状のガラス皿10を用いた場合を例にして説明するが、円形状の板状体11を用いた場合も同様である。
図8(A)に示すように、円形状のガラス皿10の培養面10Aとなる底面をイソプロパノールアルコール(大成化学社製)、純水の順でそれぞれ15分間超音波洗浄をして、ガラス皿10の底面に付着している汚れを落とす。洗浄後、例えば、エアガンによりガラス皿10の底面に付着した水分を吹き飛ばして、例えば、120℃に設定したホットプレート上で30分間温め、水分を完全に飛ばす。
【0035】
次に、図8(B)に示すように、ガラス皿10が冷めたら、例えば、三元スパッタ装置により、ガラス皿10の底面に金属マスク層20(例えばCr膜)を蒸着する。この時、金属マスク層20を蒸着する面(底面)は、傷がない奇麗な面であることを確認する。
【0036】
次に、図8(C)に示すように、ガラス皿10の底面に金属マスク層20上に、例えば、スピンコータにより感光性樹脂(例えばOFPR:東京応化工業)を均一に塗布して感光性樹脂の層を形成する。このスピンコータの回転プログラムは、例えば、初速300rpmを5s、本速5000rpmを15s、終速6000rpmを0.2sとする。
そして、例えば、スピンコート後、110℃で5分間プリベークすることで、液体である感光性樹脂(例えばOFPR:東京応化工業)を硬化させて、感光性樹脂層22を形成する。
【0037】
次に、図8(D)に示すように、感光性樹脂層22に対して、片面マスクアライナにより紫外線を20s間、パターン照射した後、現像液(例えばNMD−3:東京応化工業)に浸し現像処理を施し、感光性樹脂層22に開口パターン22Aを形成する。その後、例えば、現像液を完全に除外するため、純水で3回洗浄してエアガンにより表面の水分を除去し、感光性樹脂層22を下層(金属マスク層20)と密着させるために、120℃で5分間ポストベークを行う。
【0038】
次に、図9(E)に示すように、例えば、金属エッチング液(例えばETCH−1:三洋化成)により、金属マスク層20のエッチングを行い、開口パターン20Aを形成する。その後、例えば、純水で三回洗浄を行って金属エッチング液を完全に除去して、水分をエアガンで吹き飛ばす。
【0039】
次に、図9(F)に示すように、所望の開口パターン20Aで金属マスク層20がエッチングされているか確認した後、例えば、所定の溝12の深さになるまで、フッ化水素酸によりガラス皿10の底面にエッチングを施し、溝12を形成する。その後、例えば、即座に純水で三回洗浄し、フッ化水素酸を完全に除去して、水分をエアガンで吹き飛ばす。
【0040】
次に、図9(G)に示すように、例えば、70℃に温めた剥離液(例えば剥離液105:東京応化工業)を用いて、感光性樹脂層22を除去する。その後、例えば、剥離液をイソプロパノールアルコールで置換した後に、純水で二回洗浄する。
そして、金属エッチング液(例えばETCH−1:三洋化成)により、金属マスク層20を除去する。そして、同様に純粋で三回洗浄を行って金属エッチング液を完全に除去して、水分をエアガンで吹き飛ばす。
【0041】
以上の工程を経て、培養器が得られる。
なお、上記製造方法において、例えば、金属マスク層20、感光性樹脂層22に形成される開口パターンの形状や、ガラス皿10の底面に対するエッチング時間等により、形成される溝12の幅、深さ、配列間隔(ピッチ)等が制御される。
また、上記ウエットエッチング処理を採用すると、底部の幅よりも上部の幅が大きく、湾曲した壁面で構成された溝12が得られ易い。
【0042】
また、本発明の培養器においては、その材質として、ガラスを採用したものについて説明したが、これに限られるわけではなく、プラスチック等の樹脂、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等の高分子、等を採用したものであってもよい。ガラス製、セラミック製、金属製(例えば、シリコン等)等の無機材料の培養器は、変形が少なく、殺菌処理を行えば、繰り返し使用することができる。また、透明なガラス製の培養器を採用することで、リアルタイムで細胞観察が可能となる。
【0043】
次に、本発明の三次元組織培養物の製造方法について説明する。
本発明の三次元組織培養物の製造方法は、本発明の培養器を用いて、培養液中で細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造するものである。詳細には、本発明の培養器に細胞を播種する播種工程と、播種後の細胞を培養して培養する面に付着させると共に、前記細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、所定期間後に、培養する面から前記培養物を分離する分離工程と、を含む。
【0044】
培養器に播種する細胞としては、特に制限されないが、増殖能と分化能の観点から、幹細胞が好ましい。
本発明において幹細胞とは、自己複製能と分化能とを有する細胞をいう。本発明における幹細胞としては、胚性幹(ES)細胞、体性幹細胞を挙げることができ、また、上述の能力を有している限り、人工的に作製した多能性幹細胞もまた、本発明における幹細胞に該当する。胚性幹細胞とは、初期胚に由来する多能性幹細胞をいい、体性幹細胞とは、胚性幹細胞よりも分化の方向が限定されている細胞である。体性幹細胞としては、外胚葉に由来する幹細胞、中胚葉に由来する幹細胞、内胚葉に由来する幹細胞があり、例えば、外胚葉に由来する幹細胞としては皮膚系、神経系、中胚葉に由来する幹細胞としては骨髄系、内胚葉に由来する幹細胞としては消化器系などに分けられる。皮膚系の体性幹細胞としては、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞などが挙げられる。消化器系の体性幹細胞としては、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄系の体性幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞(例えば、脂肪由来、骨髄由来)などが挙げられる。神経系の体性幹細胞としては、神経幹細胞、網膜幹細胞などが挙げられる。本発明では、なかでも間葉系幹細胞に好ましく用いられる。
【0045】
間葉系幹細胞は、増殖能と、骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、ストローマ細胞、腱細胞、脂肪細胞、等への分化能を有する。本発明においては、腱細胞、骨細胞、軟骨細胞等への分化能を有する幹細胞を好ましく用いることができる。
【0046】
これらの間葉系幹細胞は、これらの幹細胞が存在しうる組織から得ることができる。本発明における幹細胞を得るために好ましく用いられる供給源としての組織には、骨、軟骨、腱、靭帯、半月、椎間板、骨膜、血管、血管様組織、心臓、心臓弁、心膜、硬膜などの組織を挙げることができる。なかでも、腱細胞へ分化可能な幹細胞を用いる場合には、滑膜等の組織を供給源とすることができ、滑膜由来間質細胞などを用いることが好ましい。また、骨細胞、軟骨細胞へ分化可能な幹細胞を用いる場合には、脂肪等の組織を供給源とすることができ、脂肪組織由来細胞などを用いることが好ましい。
【0047】
また、培養器に播種する細胞としては、細胞外基質の生産性が高い細胞が好ましい。細胞外基質の生産性が高い細胞としては、例えば、間葉系幹細胞、線維芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、ストローマ細胞、腱細胞、滑膜細胞、脂肪細胞、等が挙げられる。
細胞外基質としては、特に制限はないが、コラーゲンI、コラーゲンIII、ビトロネクチン及びフィブロネクチンのうちの少なくとも1種が好ましい。
【0048】
細胞の由来には特に制限はないが、ヒトに対して三次元組織培養物を移植片等として使用する場合には、種適合性等を勘案してヒト及びその他の哺乳動物から適宜選択されることが好ましい。その他の哺乳動物としては、例えば、貧歯類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目などを挙げることができ、例えば、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌなどの動物を具体例として挙げることができる。組織適合性の観点からは、自家移植が好ましい。
【0049】
これらの細胞は、生体から採取されたいわゆる初代培養物であっても継代されたものであってもよいが、細胞密度向上と細胞外基質生産能力向上の観点から、4継代以上7継代以下の培養細胞を用いることが好ましい。本発明において「継代」とは、当技術分野で通常用いられる意味で使用され、本発明における細胞は、生体から採取した初代培養以来の継代回数で表される。本発明における細胞が4継代以上の培養細胞であれば充分な強度の培養物とすることができ、7継代以下の培養細胞であれば細胞の増殖能も充分に高いため、好ましい。また、5継代以上7継代以下の培養細胞であれば、細胞外基質の生産と三次元組織培養物としたときの細胞密度のバランスを高いレベルで良好なものにすることができ、より好ましい。
【0050】
細胞の培養に用いられる培養液としては、目的とする細胞の培養に一般的に用いられるものであればよく、例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB104、199、MCDB153、L15、SkBM、Basal培地などを使用することができる。また、これらの培養液には、一般に添加可能な各種の成分、例えば、グルコース、FBS(ウシ胎仔血清)又はヒト血清、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシンなど)を添加してもよい。なお、血清を添加する場合の濃度は、培養状態によって適宜変更することができるが、通常10%(v/v)とすることができる。細胞の培養には、通常の培養条件、例えば37℃の温度で5%CO濃度のインキュベーター内での培養が適用される。
【0051】
細胞の播種は、細胞の種類、細胞の継代数、培養期間などによって適宜調整可能であるが、一般に、5×10〜1×10cells/cmの細胞密度で播種することができる。
細胞の播種の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、細胞を懸濁した培養液を培養器に注入することで行うことができる。
【0052】
細胞の播種が完了すると、付着培養工程において、細胞を培養して、細胞を培養面に付着させると共に、細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する。
細胞の培養面への付着は、通常の培養条件において、細胞の性質に応じて培養面へ細胞が付着することより容易に達成される。培養面に形成された溝の幅及び深さと播種した細胞の大きさ及び性質によるが、細胞は溝の壁面にも付着することができる。
細胞の付着は、培養面に強固に付着している必要はなく、培養面の形状を細胞が感受できる程度の付着力で付着していればよく、細胞の性質上、独立して浮遊せず、培養器の培養面に接触している程度でもよく、後述する分離工程において、所定の分離手段によって容易に分離可能となる程度の付着力であることが、培養物の損傷を抑えることができる点で好ましい。
【0053】
また培養期間を継続させることにより、細胞から細胞外基質が産生される。
細胞から産生される細胞外基質としては、例えば、コラーゲンI、コラーゲンIII、コラーゲンV、エラスチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、トロンボスポンディン、プロテオグリカン類(例えば、デコリン、バイグリカン、フィブロモジュリン、ルミカン、ヒアルロン酸、アグリカンなど)等を挙げることができるがそれらに限定されず、細胞接着を担う細胞外基質であれば、いずれのものであってもよい。より好ましくは、細胞外基質は、コラーゲン(I型、III型など)、ビトロネクチン及びフィブロネクチンをすべて含む。これらの細胞外基質が産生されることにより、細胞外基質のネットワークが形成された細胞と細胞外基質とで構成された三次元の培養物が形成される。
【0054】
細胞からの細胞外基質の産生を促進するために、細胞の培養は、細胞外基質産生促進因子の存在下で行われることが好ましい。このため、培養液には、細胞外基質産生促進因子が添加されることが好ましい。
なお、細胞外基質産生促進因子は、付着培養工程において存在していればよく、培養開始時から培養液に添加していてもよく、細胞播種後に培養液に添加してもよい。
これらの細胞外基質産生促進因子の存在下で細胞を培養することにより、後述する分離工程において、培養物の分離をより容易にすることができる。
【0055】
培養液中に添加される細胞外基質産生促進因子は、細胞の細胞外基質の分泌を促進するような因子であり、例えば、TGF−β1、TGF−β3、アスコルビン酸、アスコルビン酸2リン酸またはその誘導体あるいはそれらの塩を挙げることができる。コラーゲン産生の観点から好ましくは、アスコルビン酸、アスコルビン酸2リン酸またはそれらの誘導体およびその塩(例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩など)とすることができる。本発明におけるアスコルビン酸は、L体であることが好ましいが、それに限定されない。
【0056】
本発明において使用される細胞外基質産生促進因子の添加量としては、例えばアスコルビン酸2リン酸の場合であれば、通常0.01mM以上、三次元組織培養物の引張強度の観点から、好ましくは0.05mM以上、さらに好ましくは0.1mM以上とすることができ、より好ましくは0.2mM以上とすることができる。アスコルビン酸2リン酸の場合には、添加量を多くしてもよく、例えば5.0mM以下としてもよいが、添加量に対する引張強度向上効率の観点から、1.0mMであることがさらに好ましい。
【0057】
三次元組織培養物を形成するための付着培養期間としては、播種した細胞数、細胞の種類、目的とする組織の種類などによって異なるが、一般には、少なくとも7日間とすることができる。培養物の強度の増大を期待できる観点から、付着培養期間を、例えば15日程度に延長することも好ましく、より好ましくは21日程度、更に好ましくは28日程度、特に好ましくは35日程度である。これにより、目的に応じたサイズ及び強度の三次元組織培養物を形成しうる。
【0058】
分離工程では、前記培養面から、培養中の培養物を分離する。
培養工程によって形成された三次元組織培養物は、培養面からの分離によって培養液中に浮遊する。この分離の刺激を与えることによって自己収縮が生じて、培養物の硬化(線維組織の架橋による剛性と強度の増大)が生じる。
【0059】
分離の手段としては、培養物に自己収縮を生じる一方で培養物に損傷を与えない刺激であればよい。このような分離手段としては、例えば、物理的手段(例えば、培地のピペッティングなど)、化学的手段(物質の添加)などを挙げることができる。中でもピペッティングなどの物理的手段であることが、得られた培養物に異物を混入させないという観点から好ましい。また、剥離は、物理的な刺激(例えば、培養器の角に棒などで物理的手段、即ち、ずり応力印加、ピペッティング、培養器の変形などを与えるなど)を行うことによって促進することができる。自己収縮は、このような剥離の後、物理的刺激が与えられる場合、自然に起こる。化学的刺激の場合は、自己収縮および剥離が並行して生じる。このような刺激により生じる自己収縮によって、特に第三次元方向の生物学的結合が促進されると考えられ、この結果、培養物は、三次元の構造体としての形態を維持することができる。
【0060】
本発明の三次元組織培養物の製造方法においては、更に、分離工程の後に、培養物を培養器から分離させた状態で浮遊培養する浮遊培養工程を設けることができる。分離工程において培養面から分離された三次元培養物は自然と培養液中に浮遊状態となり、浮遊培養工程は、このような浮遊状態による培養を所定期間継続することにより行われる。浮遊培養工程により、三次元培養物の強度を向上させることができる。
浮遊状態による培養の期間は、特に制限されないが、少なくとも1日以上継続することが好ましい。3日以上とすることで、充分な自己収縮を生じさせることができる。
【0061】
本発明により得られた三次元組織培養物は、人工物を含まない、いわゆるスキャフォールドフリーの組織培養物であって、手術手技における操作で破損等することがなく、操作性を確保できる十分な強度を有するものである。また、力学的にも形態的にも、生体内の組織に模倣した配向性を付与された、生体内の組織の代替物として有用なものである。
【0062】
ここで培養物として、手術手技における操作で破損等することがなく、操作性を確保できる十分な強度とは、自己支持性に十分な強度に加えて、手術手技においてピンセット等で把持し、操作する際に破壊されない程度の強度を意味する。本発明における「自己支持性」とは、組織の少なくとも1点が空間上に固定されたときに、その組織が実質的に破壊されない特性をいう。本発明における三次元組織培養物は、自己支持性に十分な程度の強度よりも大きな強度を示すものであり、従来の培養法で得られる組織に比べ、顕著な引張強度を得ることが可能である。
【0063】
本発明における培養組織、三次元構造体などが有する引張に抗する組織の力学的特性は、一般に引張試験を実施して、引張強度、剛性率、ヤング率などを測定することによって求めることができる。
【0064】
また、本発明における培養組織、三次元構造体などが有する力学的特性は、力学試験において応力・歪み特性を測定することによって求めることができる。手短に述べると、試料に荷重を加え、例えば、1chは歪み、2chは荷重の各々のAD変換器(例えば、ELK−5000)に入力して、応力および歪みを測定し、引張強さや接線係数(材料の硬さ)などを求めることができる。
【0065】
力学的特性はまた、クリープ特性を試験することによっても求めることができる。クリープ特性インデンテーション試験とは、一定の荷重を加えた状態で時間とともにどのように伸びていくかを調べる試験である。微小な素材、薄い素材などのインデンテーション試験は、先端の半径0.1〜1μm程度の、例えば、三角錐の圧子を試験対象物に押し込んで実験を行う。まず、試験片に対して圧子を押し込み、負荷を与える。そして、試験片に数十nmから数μm程度押し込んだところで、圧子を戻し除荷する。このような試験方法によって得られる荷重除荷曲線から得られた負荷荷重と押し込み深さの挙動とによって硬さ、ヤング率などを求めることができる。
【0066】
本発明の三次元組織培養物が有する高い強度は、引張強度による数値を指標として評価することができる。この引張強度による数値は、手術手技のハンドリングの観点から、少なくとも0.1MPa又はそれ以上であることが好ましく、高いほどよい。この引張強度は、引張試験によって確認することができる。上記の強度は、以下の条件で測定されたものとして定義する。
【0067】
引張試験は、37℃に保たれたPBS中で、各試料をアルミ合金(A6061)のクランプで挟み込み、幅が6mmになるよう両側を切りそろえる。PBSの温度は、バス底面に配置したシリコンラバーヒータ(一般用SR:スリーハイ社)と温度コントローラにより温度管理を行う。クランプの一方はアクチュエータ(LAH−46−3002−F−PA−B1−SP、ハーモニック・ドライブ・システムズ)に接続し、他方は荷重検出部と一体とする。荷重検出部は、表裏に2枚ずつ、ひずみゲージ(KGF−02−120−C1−23、共和電業)を貼ることにより微小加重も正確に検出できるようにする。試験中、各試料のひずみを非接触で測定するため、マーカーは、微小磁石(質量0.002g、寸法1×1×1mm)と発泡スチロールビーズ(φ2mm)を用いて作製し、各試料を上下から挟み込んで固定する。断面積は、マイクロスコープ(VHX−100、キーエンス)で測定した厚みと幅から算出する。プレロードとして2mN与え、その状態をひずみ0と定義し、引張速度0.05mm/sで試料が破断するまで引張加重を与える。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0069】
[実施例1]
<ヒト滑膜由来間質細胞からの三次元組織培養物の作製>
(1)培養細胞の維持
患者に同意を得た上で採取されたヒト滑膜由来間質細胞を用いて三次元組織培養物を得るための細胞を調製した。
膝関節から滑膜組織片を採取し、コラゲナーゼ処理後、DMEM培養液(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)にて、5%CO、37℃の条件で培養を行った。培養細胞の維持は、培養液(20ml)の約1/3量を7日ごとに交換することとし、継代を行う場合には、14日ごとに継代を行った。
【0070】
(2)試験片(試料A)の調製
上記(1)の方法で7回継代培養して細胞数を増やした細胞群を、初期細胞密度4.0×10cells/cmとなるように、DMEM培養液(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、0.2mMアスコルビン酸2リン酸)に懸濁し、培養器に播種して、5%CO、37℃の条件で培養を開始した。ここで用いた培養器は、培養面(底面)に、図2に例示するような断面形状が半円弧状の溝を、図1に例示するようにストライプ状に形成したものである(溝のピッチ200μm、幅100μm、深さ30μm。底面の材質はガラス(テンパックスガラス:千葉理科ガラス)、径35mm)。細胞は播種した後ほどなく、培養器の底面に付着した。
【0071】
培養35日目に、マイクロピペットの先端を用いて培養物をプレートの底面から剥離させ、浮遊状態のまま1時間維持して、自己収縮させた。自己収縮後に培養物を培養液から取り出し、試料Aとした(図10参照)。
試料Aの微分干渉顕微鏡像を図11中央に示す。図11中央に示されるように、試料Aは、組織が配向していた。この配向の方向は培養面(底面)の溝の方向とだいたい一致しており、溝の方向に沿って細胞及び細胞外基質が整列していた。
【0072】
(3)比較試験片(試料B)の調製
上記(1)の方法で7回継代培養した細胞群を、上記(2)と同様に培養液に懸濁し、6ウェルプレート(BD Falcon)に播種して、5%CO、37℃の条件で培養を開始した。細胞は播種した後ほどなく、プレートの底面に付着した。
【0073】
培養35日目に、マイクロピペットの先端を用いて培養物をプレートの底面から剥離させ、浮遊状態のまま1時間維持して、自己収縮させた。自己収縮後に培養物を培養液から取り出し、試料Bとした。
試料Bの微分干渉顕微鏡像を図11左に示す。図11左に示されるように、試料Bは、組織が配向していなかった。
【0074】
(4)試験片の評価
上記で得られた試料A及びBの力学的特性を以下のようにして評価した。
(a)厚み
シート状の各試料をスライドガラスに広げて、PBS10μlを添加し、カバーガラスで挟み、デジタルマイクロスコープ(VHX−100、キーエンス)を用いて、スライドガラスとカバーガラス間距離を5カ所測定し、測定値の平均を各試料の厚みとした。各試料の厚みと幅から各試料の断面積を求めた。結果を表1に示す。
【0075】
(b)引張強度及び剛性
各試料の引張強度と剛性を、下記の引張試験を行って評価した。
各試料をアルミ合金のクランプに挟み込み、幅が6mmになるよう両側を切断した。試料に、引張速度0.05mm/sで、試料が破断する時点(ブレーキングポイント、BP)まで引張荷重を与え、試料が破断した時点での引張荷重を試料の断面積で除したものを引張強度とした。なお、試料Aには、組織の配向の方向に引張荷重を与えた。
同時に、試料のひずみを測定し、応力−ひずみ線図のひずみ域0%〜5%における接線係数を求め、この数値を剛性とした。
ひずみは、各試料に付けたマーカーを画像センサー(CV−750、キーエンス)を用いて、非接触で測定した。マーカーは微小磁石(重量0.002g、寸法1×1×1mm)と発泡スチロールビーズ(φ2mm)を用いて製作し、試料を上下から挟み込んで試料に固定した。リニアアクチュエータ(LAH−46−3002−F−PA−V1−SP、ハーモニック・ドライブ・システムズ)によりプレロード2mNを与え、その状態をひずみ0と定義した。
応力は、ひずみゲージの荷重出力を各試料の初期断面積で除し公称応力を求めた。ここで断面積はマイクロスコープ(VHX−100、キーエンス)で測定した厚みと幅から算出した。
引張試験の間、試験環境を生体に模擬するため、各試料をバス中のPBSに浸し、シリコンラバーヒーター(一般用SR、スリーハイ)と温度コントローラー(共和電子産業)を用いて、PBSの温度を37℃に保った。
【0076】
引張強度及び接線係数の検定はt検定で行い、有意水準を5%とした。結果を表1に示す。また、応力−ひずみ曲線を図12に示す。図12において、白四角は試料Aを表し、黒丸は試料Bを表す。
【0077】
【表1】



【0078】
表1に示されるように、試料Aは試料Bと比較して、厚みには有意差が見られないものの、引張強度は有意に増大し(P<0.05)、剛性(ひずみ域0%〜5%における接線係数)も有意に増大した(P<0.05)。
このことから、力学的刺激や化学的刺激を与えることなく、本発明の培養器を用いて培養を行うという方法で、培養物に配向性を付与することができ、また、容易に培養物の強度及び剛性を高められることがわかった。
【0079】
[実施例2]
<溝の配列方向の検討>
(1)試験片(試料C)の調製
実施例1の試料Aの調製において、培養期間を28日としたこと以外は、試料Aの調製と同様にして培養物を作製し、試料Cとした。試料Cの微分干渉顕微鏡像は、試料Aと同様であった。試料Cは、組織が配向しており、この配向の方向は培養面(底面)の溝の方向とだいたい一致しており、溝の方向に沿って細胞及び細胞外基質が整列していた。
【0080】
(2)試験片(試料D)の調製
実施例1の試料Aの調製において、培養期間を28日とし、また、用いた培養器を変更したこと以外は、試料Aの調製と同様にして培養物を作製し、試料Dとした。ここで用いた培養器は、培養面(底面)に、図2に例示するような断面形状が半円弧状の溝を、図6に例示するように格子状に形成したものである(第1の溝群及び第2の溝群のピッチ200μm、幅100μm、深さ30μm。第1の溝群とび第2の溝群は直交。底面の材質はガラス(テンパックスガラス:千葉理科ガラス)、径35mm)。
試料Dの微分干渉顕微鏡像を図11右に示す。図11右に示されるように、試料Dは、組織が2方向に配向していた。この配向の方向は培養面(底面)の溝の方向とだいたい一致しており、溝の方向に沿って細胞及び細胞外基質が2方向に整列していた。
【0081】
(3)試験片の評価
試料C及びDについて実施例1と同様にして、厚み、引張強度及び接線係数を測定した。ただし、接線係数については、ひずみ域0%〜5%における接線係数、及びBP−5%〜BPにおける接線係数を求めた。試料Cについては、組織の配向方向に直交する向き(「垂直方向」ということがある。)についても厚みを測定し、また、引張試験を行って、引張強度及び接線係数を測定した。試料Dについては、引張試験を行う際、2方向の配向の一方に沿って引張荷重を与えた。
結果を表2に示す。また、応力−ひずみ曲線を図13に示す。図13において、白四角は試料Cの配向方向を表し、白丸は試料Cの垂直方向を表し、黒菱形は試料Dを表す。
【0082】
【表2】



【0083】
表2に示されるように、試料Cの配向方向、試料Cの垂直方向、及び試料Dでは、厚みに有意差が見られなかった。
試料Cの配向方向は試料Cの垂直方向に比べ、引張強度が有意に増大した(P<0.05)。また、低ひずみ域での剛性(ひずみ域0%〜5%における接線係数)に差は見られなかったが、高ひずみ域での剛性(BP−5%〜BPにおける接線係数)が有意に増大した(P<0.05)。
試料Cの配向方向は試料Dに比べ、引張強度が有意に増大した(P<0.05)。また、低ひずみ域での剛性(ひずみ域0%〜5%における接線係数)に有意な差は見られなかったが、高ひずみ域での剛性(BP−5%〜BPにおける接線係数)が有意に増大した(P<0.05)。
試料Dは試料Cの垂直方向に比べ、有意差はないものの、引張強度と高ひずみ域での剛性(BP−5%〜BPにおける接線係数)が増大した。
このことから、本発明の培養器を用いて培養を行うという方法で、培養物に力学的異方性を付与できることがわかった。
【0084】
[実施例3]
<溝の配列間隔の検討>
(1)試験片(試料E)の調製
実施例1の試料Aの調製において、初期細胞密度を1.0×10cells/cmとし、培養期間を2か月としたこと以外は、試料Aの調製と同様にして培養物を作製し、試料Eとした。
【0085】
(2)試験片(試料F)の調製
実施例1の試料Aの調製において、初期細胞密度を1.0×10cells/cmとし、培養期間を2か月とし、また、用いた培養器を変更したこと以外は、試料Aの調製と同様にして培養物を作製し、試料Fとした。ここで用いた培養器は、培養面(底面)に、図2に例示するような断面形状が半円弧状の溝を、図1に例示するようにストライプ状に形成したものである(溝のピッチ160μm、幅100μm、深さ30μm。底面の材質はガラス(テンパックスガラス:千葉理科ガラス)、径35mm)。
【0086】
(3)試験片の評価
試料E及びFについて実施例1と同様にして、厚み、引張強度及び接線係数を測定した。ただし、接線係数については、ひずみ域10%〜40%における接線係数を求めた。
結果を表3に示す。また、応力−ひずみ曲線を図14に示す。図14において、黒三角は試料Eを表し、白四角は試料Fを表す。
【0087】
【表3】



【0088】
表3に示されるように、試料F(ピッチ160μm)は試料E(ピッチ200μm)と比較して、厚み及び引張強度に有意な差が見られた(P<0.05)。
剛性(ひずみ域10%〜40%における接線係数)については、有意差は認められなかったが、試料Fが試料Eよりも値が大きかった。
このことから、培養面の溝が配列する間隔(ピッチ)を狭くすることで、培養物の厚み、強度及び剛性を高められることがわかった。
【0089】
[実施例4]
<溝の深さの検討>
(1)試験片(試料G)の調製
実施例1の試料Aの調製において、初期細胞密度を6.0×10cells/cmとし、培養期間を21日とし、また、用いた培養器を変更したこと以外は、試料Aの調製と同様にして培養物を作製し、試料Gとした。ここで用いた培養器は、培養面(底面)に、図2に例示するような断面形状が半円弧状の溝を、図1に例示するようにストライプ状に形成したものであり、溝の深さが10μmである(溝のピッチ200μm、幅100μm。底面の材質はガラス(テンパックスガラス:千葉理科ガラス)、径35mm)。
試料Gの微分干渉顕微鏡像は、試料Aと同様であった。試料Gは、組織が配向しており、この配向の方向は培養面(底面)の溝の方向とだいたい一致しており、溝の方向に沿って細胞及び細胞外基質が整列していた。
【0090】
(2)試験片(試料H)の調製
実施例1の試料Aの調製において、初期細胞密度を6.0×10cells/cmとし、培養期間を21日としたこと以外は、試料Aの調製と同様にして培養物を作製し、試料Hとした。即ち、ここで用いた培養器は、培養面(底面)に、図2に例示するような断面形状が半円弧状の溝を、図1に例示するようにストライプ状に形成したものであり、溝の深さが30μmである(溝のピッチ200μm、幅100μm。底面の材質はガラス(テンパックスガラス:千葉理科ガラス)、径35mm)。
試料Hの微分干渉顕微鏡像は、試料Aと同様であった。試料Hは、組織が配向しており、この配向の方向は培養面(底面)の溝の方向とだいたい一致しており、溝の方向に沿って細胞及び細胞外基質が整列していた。
【0091】
(3)試験片の評価
試料G及びHについて実施例1と同様にして、厚み、引張強度及び接線係数を測定した。結果を表4に示す。また、応力−ひずみ曲線を図15に示す。図15において、白丸は試料Gを表し、黒四角は試料Hを表す。
【0092】
【表4】



【0093】
表4に示されるように、試料Gと試料Hとは、引張強度に有意な差が見られ(P<0.05)、試料Hのほうが値が大きかった。
一方、試料Gと試料Hとは、厚みには有意差は認められなかった。剛性(ひずみ域5%〜10%における接線係数)については、有意差は認められなかったが、試料Hのほうが接線係数が大きかった。
また、試料Gと試料Hの組織観察の結果から、試料Hのほうが培養物表面の凹凸が鮮明に見えた。
これらのことから、培養面の溝の深さを変えることで、培養物の力学的異方性の程度を変えることができることがわかった。培養面の溝の深さは10μmよりも30μmのほうが、培養物の強度を高められることがわかった。
【0094】
[実施例5]
<ヒト皮膚線維芽細胞からの三次元組織培養物の作製>
(1)培養細胞の維持
ヒト皮膚線維芽細胞(Cell Systems社、2F0−C75)をDMEM培養液(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)にて、5%CO、37℃の条件で培養を行った。培養細胞の維持は、培養液(20ml)の約1/3量を7日ごとに交換することとし、継代を行う場合には、14日ごとに継代を行った。
【0095】
(2)試験片(試料I)の調製
ヒト皮膚線維芽細胞を4回継代培養して細胞数を増やした細胞群を用い、初期細胞密度を6.0×10cells/cmとし、培養期間を15日としたこと以外は、実施例1の試料Aの調製と同様にして培養物を作製し、試料Iとした。
試料Iの微分干渉顕微鏡像は、試料Aと同様であった。試料Iは、組織が配向しており、この配向の方向は培養面(底面)の溝の方向とだいたい一致しており、溝の方向に沿って細胞及び細胞外基質が整列していた。
【0096】
(3)比較試験片(試料J)の調製
ヒト皮膚線維芽細胞を4回継代培養して細胞数を増やした細胞群を用い、初期細胞密度を6.0×10cells/cmとし、培養期間を15日としたこと以外は、実施例1の試料Bの調製と同様にして培養物を作製し、試料Jとした。
試料Jの微分干渉顕微鏡像は、試料Bと同様であった。試料Jは、組織が配向していなかった。
【0097】
(4)試験片の評価
試料I及びJについて実施例1と同様にして、厚み、引張強度及び接線係数を測定した。結果を表5に示す。また、応力−ひずみ曲線を図16に示す。図16において、白四角は試料Iを表し、黒四角は試料Jを表す。
【0098】
【表5】



【0099】
表5に示されるように、試料Iは試料Jと比較して、厚みと剛性(ひずみ域5%〜10%における接線係数)には有意差が見られないものの、引張強度は有意に増大した(P<0.05)。
このことから、力学的刺激や化学的刺激を与えることなく、本発明の培養器を用いて培養を行うという方法で、培養物に配向性を付与することができ、また、容易に培養物の強度を高められることがわかった。
【0100】
試料Jを調製するための培養中に、組織の一部が培養面から剥離する現象が見られた。一方、試料Iの調製においては、培養面からの組織の剥離は見られなかった。
このことから、本発明の培養器を用いて培養を行うという方法で、培養物が培養中に培養面から剥離することなく、培養物を容易に得られることがわかった。
【0101】
本発明によれば、溝部分の細胞密度と基質密度が高く、溝以外の部分では低密度となるような不均一な組織であって、生体内組織やこれまでのバイオマテリアルになかった新規な性質を付与された組織を生成することができる。
【符号の説明】
【0102】
10…ガラス皿
10A…培養面
12…溝
20…金属マスク層
22…感光性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞から三次元組織培養物を製造するための組織培養用培養器であって、
前記細胞を付着させて培養する面に、底部の幅よりも上部の幅が大きい溝が所定方向に向かって連続的又は断続的に設けられると共に、当該所定方向に向かって設けられた溝が前記所定方向と交差する方向に所定間隔で複数配列されている組織培養用培養器。
【請求項2】
前記溝の側面が、湾曲した壁面で構成された請求項1に記載の組織培養用培養器。
【請求項3】
材質が無機材料である請求項1又は請求項2に記載の組織培養用培養器。
【請求項4】
前記溝の深さが、5μm〜40μmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の組織培養用培養器。
【請求項5】
培養液中で細胞及び細胞外基質を含む三次元組織培養物を製造する製造方法であって、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の組織培養用培養器に細胞を播種する播種工程と、
播種後の細胞を培養して前記培養する面に付着させると共に、前記細胞から細胞外基質を産生させて培養液中に三次元の培養物を形成する付着培養工程と、
所定期間後に、前記培養する面から前記培養物を分離する分離工程と、
を含む三次元組織培養物の製造方法。
【請求項6】
前記細胞が、間葉系幹細胞である請求項5に記載の三次元組織培養物の製造方法。
【請求項7】
前記細胞を、細胞外基質産生促進因子の存在下で培養する請求項5又は請求項6に記載の三次元組織培養物の製造方法。
【請求項8】
前記細胞外基質産生促進因子が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、TGF−β1及びTGF−β3からなる群より選択される少なくとも1種である請求項7に記載の三次元組織培養物の製造方法。
【請求項9】
前記細胞外基質が、コラーゲンI、コラーゲンIII、ビトロネクチン及びフィブロネクチンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の三次元組織培養物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−155945(P2011−155945A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22146(P2010−22146)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月15日 日本臨床バイオメカニクス学会発行の「第36回日本臨床バイオメカニクス学会」に発表 平成21年10月16日 日本臨床バイオメカニクス学会主催の「第36回日本臨床バイオメカニクス学会年会」において文書をもって発表 平成21年11月6日 社団法人 日本機械学会発行の「第20回バイオフロンティア講演会講演論文集」に発表 平成21年11月8日 日本機械学会主催の「日本機械学会 第20回バイオフロンティア講演会」において文書をもって発表
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】