説明

組織構築物および多層化組織構築物

【課題】組織または組織構築物を調製するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】天然の組織由来の生(生きている)細胞を播種された細胞支持マトリックスを含む、多層化生物構造(すなわち、システム)の構築。また、組織および組織構築物のインビトロでの成長を促進するための組織培養プロトコル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織および組織構築物を調製するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、細胞を生物学的基質に取り込む組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セキツイ動物の組織および器官は、損傷した場合に正常な形態および機能に回復しないことがよくあり、かつ移植した場合に(代謝的なおよび/または物理的な損傷のために)ホストと適当に一体化しないことがよくある。組織および器官を再構築するための試みにおいて、外科医は損傷したまたは切除した天然の解剖学的構造の代りにリビング組織またはノンリビング物質を移植してきた。これらの伝統的な方法には限界がある。例えば、自家移植片は生体適合性があるが、ドナーサイトからの組織のロスは非常に似たホストにおいて解剖学的および/または生理学的病理を生み出すことがよくある。一方、移植された同種移植片および異種移植片はホストからのこれらの移植片の拒絶に近い病理的免疫応答をよく引き起こす。
【0003】
ノンリビング移植物質は、回復および天然組織、組織構築物および器官の移植において、限界効用的である。特に、移植されたノンリビング物質は、突出、感染および瘢痕組織形成を特に受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,902,741号明細書
【特許文献2】米国特許第5,928,945号明細書
【特許文献3】米国特許第6,080,194号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移植された天然の組織およびノンリビング物質に対する代替物として生体工学処理された組織を使用することも記載されている。例えば、Purchio等の米国特許第5,902,741号明細書は、軟骨の細胞または先駆体を育てる培養液を接種したフレームワークを使用してインビトロで軟骨の組織を培養する方法を開示する。類似して、Selektar等の米国特許第5,928,945号明細書は、軟骨細胞に流体流れ剪断流れ応力を適用することにより生体工学処理したネオ軟骨を産生する工程を開示する。別の例では、Pachence等の米国特許第6,080,194号明細書は、サブ軟骨プレートからの血管成長および細胞移動を防止するために軟骨欠陥の表面に置かれた密なコラーゲンマトリックスを含む関節軟骨を産生するテンプレートを開示する。
【0006】
しかし、(先行技術における)これらの組成物および方法は、置換を試みつつある天然組織の解剖学的および生理学的レパートリーの一部に過ぎない。特に、先行技術のこれらの欠点は、三次元細胞支持層の完全な断面を横切って、均一に細胞を蒔き、培養し、分化させることが不可能であることに部分的に原因がある場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、組織および組織構築物の調製のための、組成物および方法に関する。選択された態様では、本発明は細胞外支持マトリックスへ取り込むリビング細胞を有する多層化(マルチレイヤード)生物学的構造(即ち、システムフレームワーク)の構築に関する。
【0008】
ある態様では、本発明は、第1集積層;第2細胞支持層に(ゲル中に懸濁した)細胞をまいたときに前記第1集積層に操作可能に結合する(マトリックスを有する)第2細胞支持層;前記第1および第2層に操作可能に結合した第3保護層を有する組成物を企図する。
【0009】
本発明は、多層化システムを有する組成物が特定数の層を有することに限定されることを意図しない。ある態様では、前記多層化システムは2層を有する。好ましい態様では、前記多層化システムは3層を有する。別の態様では、前記多層化システムは3層より多い層を有する。
【0010】
本発明は、細胞支持マトリックスを構築する特定の方法に限定されることを意図しない。特開平6−22744号公報(参照して取り込む)発明の名称「細胞培養用コラーゲン担体」は、本発明に記載した細胞支持層を使用するのに適したマトリックスの調製を開示する。
【0011】
前記細胞支持層のゲル要素が単一組成物に限定されることを意図しない。ある態様では、前記ゲル要素がゼラチンを含む。別の態様では、前記ゲル要素がコラーゲンを含む。好ましい態様では、前記ゲル要素がI型コラーゲンを有する。
【0012】
本発明の組成物および方法は特定の種からハーベストされた細胞に限定されることを意図しない。ある態様では、前記細胞は哺乳動物細胞である。好ましい態様では、前記細胞はヒトからのものである。
【0013】
ある態様では、本発明の組成物および方法において使用される細胞は上皮組織、結合組織、筋肉組織および/または神経組織からハーベストされる。ある態様では、前記細胞は骨細胞である。別の態様では、前記細胞は靱帯繊維芽細胞である。別の態様では、前記細胞は腱細胞(tenocytes)である。別の態様では、前記細胞は滑膜繊維芽細胞である。好ましい態様では、前記細胞は結合組織からハーベストされた軟骨細胞である。好ましい態様では、前記結合組織は軟骨である。
【0014】
ある態様では、本発明はリビング組織から直接単離されたおよび/または増大されたリビング細胞をまいた細胞支持マトリックスを含む多層化システムを使用して組織または組織構築物を調製する方法を開示する。
好ましい態様では、本発明は、細胞支持マトリックス、ゲル、および細胞を供給し;前記細胞を前記ゲルと混合して細胞懸濁液を形成し;および前記細胞懸濁液を前記細胞支持マトリックスに接触させて細胞播種マトリックスを作る方法を企図する。
【0015】
別の態様では、本発明は、前記ゲルが硬化されて略固体形態になる条件下で前記細胞播種マトリックスに熱を加え、これにより、熱硬化細胞播種マトリックスを形成することをさらに含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、前記細胞支持マトリックスが本質的に多孔性I型コラーゲンからなり、かつ前記細胞が軟骨細胞である、一定のまたは周期的な静水圧を有する条件下で前記熱硬化細胞播種マトリックスを培養することをさらに含む。
【0017】
ある態様では、本発明は、懸濁した軟骨細胞を有する溶液(i);スポンジマトリックス(ii);および処理手段(iii)を供給すること(a);毛管作用により前記溶液が前記スポンジに入り、かつ前記軟骨細胞が前記マトリックスに接触して播種デバイスを作るような条件下で前記スポンジマトリックスを前記溶液に導入すること(b);および前記デバイス内で前記溶液の少なくとも一部が固化するような条件下で前記播種デバイスを前記処理手段で処理すること、を有する方法を開示する。
【0018】
本発明のある態様では、前記処理手段は培養チャンバーを有する。別の態様では、本発明は、前記播種デバイスの、二酸化炭素の非存在下で加熱することを有する処理を企図する。
本発明のある態様では、スポンジマトリックスはヒトの関節に移植されるために設定される。
【0019】
本発明のある態様では、軟骨細胞懸濁溶液は中和化水性I型コラーゲンを含む。
本発明の別の態様では、前記軟骨細胞が細胞外マトリックスに関連した遺伝子生成物を作るような条件下で前記軟骨細胞を培養することを上記工程(c)の後にさらに含む。ある態様では、前記培養工程は1気圧より高い圧力下で実施される。別の態様では、前記培養工程は一定のまたは周期的な静水圧下で実施され、前記周期的静水圧は0.5Hzで約0.01〜10.0MPaの範囲にある。別の態様では、前記周期的静水圧は0.5Hzで0.5〜5.0MPaの範囲にある。好ましい態様では、前記周期的静水圧は0.5Hzで約3.0MPaの圧力である。ある態様では前記周期的圧力の期間は1〜30日である。別の態様では、前記周期的圧力の期間は5〜8日である。好ましい態様では、前記周期的圧力の期間は約6日である。
【0020】
ある態様では、本発明は(周期的圧力に暴露した後)休止期を企図する。ある態様では、前記休止期の期間は1〜60日の範囲にある。ある態様では、前記休止期の期間は4〜21日の範囲にある。好ましい態様では、前記休止期は約12日である。
【0021】
別の態様では、本発明は、水性コラーゲンに懸濁した軟骨細胞を有する溶液(i);細胞支持マトリックス(ii);および処理手段(iii)を供給すること(a);毛管作用により前記溶液が前記スポンジに入り、かつ前記軟骨細胞が前記マトリックスに接触して播種デバイスを作るような条件下で前記マトリックスを前記溶液に導入すること(b);および前記デバイス内で前記溶液の少なくとも一部が固化するような条件下で前記播種デバイスを前記処理手段で処理すること、を有する方法を開示する。
【0022】
本発明のある態様では、前記軟骨細胞懸濁溶液は少なくとも部分的にゲル化されている。
本発明のある態様では、前記処理手段は培養チャンバーを有する。別の態様では、前記処理は二酸化炭素の不存在下で加熱することを含む。
本発明のある態様では、スポンジマトリックスはヒトの関節に移植されるために設定されるI型コラーゲンを有する。
【0023】
本発明の別の態様では、前記軟骨細胞が細胞外マトリックスに関連した遺伝子生成物を作るような条件下で前記軟骨細胞を培養することを上記工程(c)の後にさらに含む。
本発明のある態様では、前記培養工程は1気圧より高い圧力下で実施される。別の態様では、前記培養工程は一定のまたは周期的な静水圧下で実施され、前記周期的静水圧は0.5Hzで約0.01〜10.0MPaの範囲にある。別の態様では、前記周期的静水圧は0.5Hzで0.5〜5.0MPaの範囲にある。好ましい態様では、前記周期的静水圧は0.5Hzで約3.0MPaの圧力である。ある態様では前記周期的圧力の期間は1〜30日である。別の態様では、前記周期的圧力の期間は5〜8日である。好ましい態様では、前記周期的圧力の期間は約6日である。
【0024】
ある態様では、本発明は(周期的圧力に暴露した後)休止期を企図する。ある態様では、前記休止期の期間は1〜60日の範囲にある。別の態様では、前記休止期の期間は4〜21日の範囲にある。好ましい態様では、前記休止期は約12日である。
【0025】
本発明は、前記軟骨細胞がゾルゲル溶液に懸濁される状況に限定されることを意図しない。本発明は前記軟骨細胞含有ゾルゲル溶液に対して特異的なゲル化度に限定されることを意図しない。
本発明は全体の軟骨細胞懸濁溶液が固化する状況に限定されることを意図しない。すなわち、溶液の大部分が固化することで充分であり、これにより、ある態様では播種マトリックス内で懸濁した細胞を略固定化する。
【0026】
ある態様では、本発明は、三次元に細胞が成長できるように設定される細胞支持層であって、統合的部位および機能的部位を有し、かつ播種細胞を作るために少なくとも一つの細胞型を播種する細胞支持層(i);前記細胞支持層の統合的部位に接触する統合層であって、組織に挿入可能であるように設定される統合層(ii);および前記細胞支持体の機能的部位に接触する保護層であって、血液由来の薬剤の効果から前記播種細胞を保護するように設定される前記保護層(iii)を有するシステムを企図する。
【0027】
本発明のある態様では、前記血液由来の薬剤は凝固因子、サイトカイン、および/または細胞障害性細胞である。本発明のある態様では、前記播種細胞は栄養流体と接触する。本発明の別の態様では、前記統合層は手術後組織に挿入可能に構成される。
本発明の態様では、三次元で細胞が成長可能に設定される細胞支持層であって、統合部位および機能部位を有し、播種細胞をつくるために少なくとも1つの細胞型を播種される細胞支持層(i);前記細胞支持層の前記統合部位に接触する統合層であって、組織に挿入可能に設定される統合層(ii);および前記細胞支持層の前記機能部位に接触する保護層であって、患者の組織に挿入され、血液ボーン剤の効果から播種細胞を保護するように設定された保護層(iii)を含むシステムを挿入する方法を企図する。別の態様では、患者への前記システムの挿入は患者に対する手術に続いて行う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】TESSマトリックス内で培養された軟骨細胞によるグリコサミノグリカン(GAG)生成について、静的大気圧と比較した、周期的静水圧の効果におけるデータを示す。特に、図1は、コントロールグループ(大気圧のみ)におけるTESSマトリックスにおける場合よりも、試験グループ(0.5Hzにおける3.0MPaのCHP)におけるTESSマトリックスにおけるGAG生成の際に300%の増加(p<0.001)が見られることを示す。
【図2A】TESSマトリックス内で、静的大気圧(コントロールグループ)下で培養された、軟骨細胞による細胞外マトリックスのサフラニン−O染色の生成を示す写真である。この図は、細胞支持マトリックス(例えば、TESSマトリックス)のハニカムスポンジ要素が「HC」でラベル化され、(培養された軟骨細胞により生成された)細胞外マトリックスの領域を「*」でラベル化される。
【図2B】TESSマトリックス内で、周期的静水圧(試験グループ)下で培養された、軟骨細胞による細胞外マトリックスのサフラニン−O染色の生成を示す写真である。この図は、細胞支持マトリックス(例えば、TESSマトリックス)のハニカムスポンジ要素が「HC」でラベル化され、(培養された軟骨細胞により生成された)細胞外マトリックスの領域を「*」でラベル化される。
【図3A】TESSマトリックス内で、静的大気圧(コントロールグループ)下で培養された、軟骨細胞による細胞外マトリックスのサフラニン−O染色の生成を示す別の写真である。この図は、細胞支持マトリックス(例えば、TESSマトリックス)のハニカムスポンジ要素が「HC」でラベル化され、(培養された軟骨細胞により生成された)細胞外マトリックスの領域を「*」でラベル化される。
【図3B】TESSマトリックス内で、周期的静水圧(試験グループ)下で培養された、軟骨細胞による細胞外マトリックスのサフラニン−O染色の生成を示す別の写真である。この図は、細胞支持マトリックス(例えば、TESSマトリックス)のハニカムスポンジ要素が「HC」でラベル化され、(培養された軟骨細胞により生成された)細胞外マトリックスの領域を「*」でラベル化される。
【図4】TESSマトリックス内で培養された軟骨細胞によるグリコサミノグリカン(GAG)生成について、静的大気圧と比較した、周期的静水圧の効果におけるデータを示す。特に、図4は、コントロールグループ(大気圧のみ)におけるTESSマトリックスと比較した、試験グループ(0.5Hzにおける3.0MPaのCHP)におけるTESSマトリックスにおけるGAG生成の際に132%の増加(p<0.006)が見られることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明において、「組織」の用語は、類似細胞の集まりおよびこれらを取り巻く細胞間物質をいう。体には4種の基本的な組織型があることを当業者にはわかるであろう:(1)上皮組織;(2)血液、骨および軟骨を含めた結合組織;(3)筋肉;および(4)神経。
本発明において、「ネオ組織」の用語は、生体位置における天然の組織の形態および機能に似た、細胞を含む組成物をいう。
本発明において、「ネオ器官」の用語は、生体位置における天然の器官の形態および機能に似た、細胞を含む合成組成物をいう。
本発明において、「ネオ軟骨」の用語は、組織発生の移行状態における複数の軟骨細胞をいう。組織発生の移行状態は細胞外マトリックスに関連した遺伝子生成物(GAG)の生成およびくぼみへの部分的なカプセル化を含む形態形成により特徴付けられる。ある態様では、このネオ軟骨は商標NEOCART下でヒストジェニクスコーポレーション(マサチューセッツ州、イースタンプトン)により製造される。
【0030】
本発明では、「組織構築物」の用語は、非限定的に、TESS組織プロセッサを含む組織培養システムにおいて増殖した細胞の実質的に無血管混合集合物をいう。
「ネオ組織構築物」は、本発明の方法により細胞または組織から新規に形成された組織構築物をいう。
本発明では、「天然の環境」の用語は、天然の組織または天然の構築物を支持する生体位置における生理的環境をいう。
【0031】
本発明では、「生物適合性」の用語は、接触したその他の組成物の正常な生物的機能を実質的に妨害することのない組成物(例えば、細胞、組織、マトリックス等)をいう。例えば、本発明はシステムにより生成された組織(例えば、ネオ組織)および細胞と生物適合性を有し、かつシステム(およびその細胞または組織)が配送される細胞または組織とも生物適合性を有する物理的および化学的構造をもつ多層システムを有する組成物を企図する。選択された態様では、本発明は生物分解性および生物非分解性の両方の生物適合性物質をも企図する。
【0032】
本発明では、「マトリックス」の用語は、自由空間を流体連絡状態で部分的に囲まれた隙間に分割する複数のポアを有する組成物をいう。ある型のマトリックスは、毛管作用により流体を持ち上げるマトリックスを含む「スポンジマトリックス」である。選択された態様では、本発明は、コラーゲンスポンジマトリックスを有する細胞支持層を含む組成物を企図する。
【0033】
本発明では、「TESSマトリックス」の用語は、本発明で説明した細胞支持層の市場的な(日本、東京、コーケン社により製造された特許組成物)態様をいう。
本発明では、「ポアサイズ」の用語は、マトリックスにおける隙間の平均断面寸法をいう。
本発明では、「機能的表面」は、少なくとも1つの機能を実行する細胞、組織または器官の領域を指向する表面をいう。例えば、軟骨生成のためのシステムでは、「機能的表面」は、システムをホスト内に埋め混んだ場合、滑膜に面した表面をいう。同様に、口腔粘膜を生成するためのシステムでは、「機能的表面」の用語は、システムをホストに埋め込むと、口の内側に面する表面をいう。
【0034】
本発明では、「ドナー」の用語は、移植のために、細胞、組織、血液、または器官を採取するヒトまたは非ヒトをいう。
本発明では、「ホスト」の用語は、細胞、組織、血液、または器官を移植される個体(ヒトまたは非ヒト)をいう。例えば、本発明は、インビトロの増殖およびホストへの移植のために細胞(例えば、軟骨細胞)をドナーから取り出す方法を企図する(ドナーおよびホストは同じ個体かまたは異なる個体である)。
【0035】
本発明では、「軟骨細胞(chondrocytes)」の言葉は、特異的な型の軟骨(cartilage)の細胞をいう。
インビボで、これらの細胞は、これらの同じ細胞に対して(組織培養において観察された)インビトロでの形態学および生理学と比較して、生体位置で観察された明確な形態学および生理学により特徴付けられる。例えば、成体哺乳類滑車からハーベストされた軟骨細胞は実質的に非分割であり、細胞外マトリックスを実質的に生成しない(すなわち、GAG)。対照的に、成体哺乳類滑車から単離された実質的に休止期の軟骨細胞は、これらの培養された細胞の大部分は分裂し、インビトロで細胞外マトリックスに関連した遺伝子生成物(すなわち、GAG)を生成するように、インビトロで(例えば、組織培養に付された場合に)活性化される。
【0036】
本発明では、「懸濁した軟骨細胞」の用語は、流体中のいかなる数の軟骨細胞をいう。好ましい態様では、前記流体は水性I型コラーゲンを含む。
本発明では、「デリバリング組織」の用語は、ホストへドナーからの細胞または組織を導入、挿入、注入、または移植するプロセスをいう。例えば、本発明は、本発明の多層システムにおいて成長した組織(すなわち、ネオ組織)を、ホストの例えば病変(すなわち、目標病変)部位にデリバリする方法を企図する。
【0037】
本発明では、「周期的静水圧」(および略語「CHP」)の用語は、好ましくはサイン波形態の測定圧をつくる、(規定された負荷間隔内で)加えられた静水圧の繰り返し(例えば、2またはそれ以上)周期の適用をいう。好ましい態様では、前記CHPは0.5Hzで3.0MPaである。
本発明では、「一定圧」の用語は、周期時間にわたって実質的に非振動性(例えば、±20%以下、または好ましくは5%以下)または非周期性圧力負荷の適用をいう。
本発明では、「負荷」または「負荷間隔」の用語は、周囲圧(例えば、外部圧を加えない状態)に戻る、適用されたCHP負荷の周期をいう。
【0038】
本発明では、「休止期」の用語は、周期的静水圧下で暴露または培養した後、略大気圧における培養を維持される可変期間長さである。
本発明では、「デノボ形成」の用語は、支持構造(例えば、多層システム、足場またはコラーゲンマトリックス)内における、細胞(例えば、軟骨細胞、繊維芽細胞、繊維軟骨細胞、腱細胞、および骨芽細胞)または組織(例えば、軟骨結合組織、繊維軟骨、腱および骨)の生成をいう。
本発明では、「I型コラーゲン」の用語は、2つのアルファ1(I)鎖および1つのアルファ2(I)鎖により特徴付けられる(ヘテロ三量体コラーゲン)。アルファ1(I)鎖は長さ約300nmである。I型コラーゲンは、骨、(シート様構造における)皮膚、および(ロープ様構造における)腱において主に見いだされる。さらに、I型コラーゲンは、プロテオグリカンとして知られる別の結合組織成分の蛋白質コアとの反応により類型化される。
【0039】
本発明では、「II型コラーゲン」の用語は、クロモソーム12に存在する3つの同一アルファ1(II)鎖(ホモ三量体コラーゲン)により特徴付けられる。軟骨におけるII型コラーゲンは、他の成分(特に、プロテオグリカン)と強く相互作用してルーズメッシュにおける薄いフィブリルとして存在する。II型コラーゲンはIX型コラーゲンおよび他のFACITコラーゲンに共有結合により架橋しており、これらはII型コラーゲンの形成を助ける。この分子もまたインテグリンおよびデコリン分子と結合および相互作用可能である。
【0040】
本発明では、「中和化水性I型コラーゲン」は電荷のないI型コラーゲンをいう。
本発明では、「MMP」は「マトリックスメタロプロテイナーゼ」をいう。MMPは病んだ関節において軟骨の変質に関連する。MMPはMMP−1、MMP−2、MMP−9等としてさらに区別される。
本発明では、「MPa」の用語は、メガパスカルを意味する。1MPaは145psi(pound per square inch、平方インチ当たりのポンド)に等しい。
本発明では、「マンドレル」の用語は、コア周りの材料が鋳造、鍛造、曲げ、またはその他の成形により形作られたコアとして機能する、テーパー状の、またはシリンダー状のアクスル、スピンドル、またはアーバーをいう。
本発明では、「上皮組織」の用語は、全自由表面、皮膚、粘膜、および血清、さらに、腺、およびこれに由来する他の構造を覆う(典型的には無血管の)細胞層をいう。上皮組織は組織的試験について、扁平上皮の、立方体の、および/または円柱の細胞を表す。さらに、上皮組織はシンプル、層状、多列上皮として説明される。
【0041】
本発明では、「結合組織」の用語は、体およびその器官を保護し、支持する組織および器官を一緒に結合する組織をいう。このような組織の例としては、非制限的に、間葉系組織、膠様結合組織、疎性結合組織、脂肪組織、細網組織、弾性組織、膠原性組織、骨組織、血液組織、または軟骨組織(例えば、硝子軟骨、線維軟骨、および弾性軟骨)を含む。
本発明では、「筋肉組織」の用語は、刺激を受けて収縮する能力により特徴付けられ、かつ骨格筋、心筋、および平滑筋に分類される。
本発明では、「神経組織」の用語は、神経インパルスを始動し、伝達する(神経繊維、樹状、および支持組織を含む)組織をいう。
【0042】
本発明では、「膜組織」および「膜性組織」の用語は、膜を形成する結合組織および上皮組織の結合をいう。このような膜の例としては、非制限的に、粘膜、漿膜、皮膚および滑膜をいう。
本発明では、「ゾル−ゲル溶液」の用語は、液体(ゾル)からより固体材料(ゲル)に移行するコロイド懸濁をいう。好ましい態様では、「ゾル」は、熱処理によりゲルに移行する水性コラーゲンの懸濁物である。
本発明では、「ゲル」または「ゲル化」の用語は、液体と固体の間の物質状態をいう。このような、「ゲル」は液体の特性のいくつか(即ち、その形は弾力性および変形可能である)および固体の特性のいくつか(即ち、その形は二次元表面に三次元を維持するのに充分に分離性をもつ)を具える。
【0043】
本発明では、「部分的ゲル化」の用語は、より多くの液体の特性(すなわち、その形は弾力性および変形可能である)を示し、より少ない固体の特性(即ち、その形は二次元表面に三次元を維持するのに充分に分離性をもつ)を示すような、液体および固体の間の物質状態をいう。
本発明では、「固化する」または「固化した」の用語は、物質が固体に、緻密に、または固くなるプロセスをいう。
本発明では、「部分的に固化する」または「部分的に固化した」の用語は、作用を受ける物質に比べて、その物質がより固体に、緻密に、または固くなるプロセスをいう。
【0044】
本発明では、「硬化する」または「硬化した」の用語は、ゲルをさらに固化する化学的または物理的プロセスの適用をいう。
本発明では、「処理手段」の用語は、温度、大気圧、および/またはガス飽和率を規制できるデバイスをいう。
本発明では、「播種デバイス」の用語は、いかなる数の細胞をも含むマトリックスをいう。好ましい態様では、前記播種デバイスはコラーゲンスポンジマトリックス内に配置した軟骨細胞を含む。
本発明では、「遺伝子生成物を生成する」の用語は、細胞による、ペプチドおよび/または蛋白質生成をいう。好ましい態様では、軟骨細胞は、軟骨の細胞外マトリックスに関連した蛋白質(非制限的にGAG)を生成する。
【0045】
本発明は、ネオ組織および組織構築物の調製のための、組成物および方法に関する。好ましい態様では、本発明は、リビング細胞をまいた少なくとも1つのマトリックス層を含む多層化生物学的構造(例えば、三次元構造)の構築物に関する。
【0046】
I.組織および組織構築物の生成のための装置の一般的な設計
本発明は、生体位置で器官または組織からオリジナルにハーベストされ、マトリックス内に播種する前に実質的に増殖(インビトロでの細胞培養を経て)された細胞を含むマトリックスを有する組成物を提供する。ある態様では、この組成物は、システム内に配置した細胞が数増加および/または分化するように、播種したマトリックスを含み、(カセット様の)組織培養装置(一例では組織プロセッサ)に入れる。本発明は特異的な型の細胞に限定されることを意図しない。好ましい態様では、前記細胞は、周期的静水圧を含む条件下で培養する場合に増殖および分化する軟骨細胞である。
【0047】
本発明では、特定の構成に限定されない。しかし、ある態様では、本発明は2つの層を有するシステムである。
細胞が(a)(組織培養装置において)ネオ組織に分裂および分化するとき、かつ(b)システムがホストに埋め込まれるとき;細胞支持層は、システムにまかれた細胞を含むプラットフォームを提供し、かつ細胞に対して支持体を提供する。
統合層は、生体外で、組織培養装置において分割するとき、ネオ組織を保護する。このネオ組織がホストに埋め込まれると、統合層が配向され、ホストの天然の組織表面に対抗し、これにより、前記ネオ組織を、移植部位における体液因子(例えば、ホルモンおよび栄養因子)を含む環境に暴露する。
【0048】
幾つかの態様では、システムは細胞支持層および統合層を実質的にカプセル化する保護層をも含む。システム多層化設計は多種の形態に組み立てることができる。ある態様では、システムはシートである。別の態様では、システムは、非制限的にチューブ、楕円、棍棒状を含む生体内で観察されるような組織または器官の三次元構造に近付けて形成することができる。
本発明にかかる方法にしたがって増殖したネオ組織(または「生成物」)は天然の組織を実質的に複製する。特に、本発明のシステムおよび方法は、天然の組織の解剖学的および生物的な実質的再生産をする組織を生成する。ある態様では、本発明のネオ組織は、当初は意図した(例えば、自家である)ホストから採取した細胞から増殖される。幾つかの態様では、本発明の統合および細胞支持層は生物分解性である。これらの態様では、ホストへの埋め込みの後、ネオ組織のみがホストに統合されるように、システムの非細胞成分は生物分解する。
【0049】
上記のように、多層化システムは少なくとも2層、つまり細胞支持層および統合層を有する。選択した態様では、システムは保護層をも含む。これらの層の各々は以下に、より充分に説明される。しかし、本発明はシステムへ含まれる補助層についても企図する。これらの補助層は種々の栄養因子を含む。その因子としては、非制限的に、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子β(例えば、TGFβ−1、TGFβ−2等)、血小板由来成長因子(例えば、PDGF−AA,PDGF−AB,PDGF−BB)、繊維芽細胞成長因子(FCF)、インスリン様増殖因子(IGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、コロニー刺激因子(CSF)、神経成長因子(NGF)、結合組織成長因子(CTGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、プロ血管新生因子またはアンチ血管新生因子、および他の治療剤を含み、治療剤としては、非制限的に、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1,IL−2)、またはヘパリンまたはカルモジュリン等の他のコファクター、抗生物質、抗腫瘍剤、および抗菌剤を含み、これらにより、組織再構築を刺激またはコントロールし、あるいは敗血症をコントロールする。
【0050】
他の態様では、このような補助層は骨形態形成蛋白質(BMP1−8)等の個体発生または形態形成因子;ヘッジホッグ(hh)ファミリー遺伝子生成物;ホックスファミリー遺伝子生成物;パースク(Pax)ファミリー遺伝子生成物;ノッチ遺伝子生成物;オステオプロテジェリン;およびオステオプロテジェリン結合蛋白質を提供する。
本発明のシステムの一般的な設計は1層より多い層を有するシステムについて提供するが、本発明は細胞支持層のみ有する態様をも企図する。
【0051】
II.多層化システムの要素
1.細胞支持層(および「TESSマトリックス」)
本発明の細胞支持層(「TESSマトリックス」とう特定の市販の態様において)が、組織および組織構築物の三次元増殖を促進するマトリックスを有する。細胞支持層の機能は、部分的に、細胞(一例として軟骨細胞)に対する成長プラットフォームを提供する。細胞支持層の望ましい特徴は、非制限的に、生体適合性、親水性、および中性電荷を有する。ある態様では、細胞支持層はI型コラーゲンから実質的に組み立てられたマトリックス(またはハニカム様格子)を有する。ある好ましい態様では、前記ハニカム様I型コラーゲンマトリックスは「TESSマトリックス」という。
【0052】
細胞支持層は特定の材料または配合に限定されることを意図しない。例えば、特開平6−22744号公報に記載されたマトリックスは本発明に記載の細胞支持層としての使用に適している。このマトリックスはアンモニアガスを用いて酸性水性コラーゲン溶液をゲル化してコラーゲンゲルを形成し、その後、このゲルを凍結乾燥して略全ての水分を蒸発させることにより調製され、これにより、実質的に多孔性乾燥マトリックスを形成する。
一例として、300gの1%水性アテロコラーゲン溶液(pH3.0に維持)を10×20cmトレイに注ぐ。その後、このトレイを5リットルのコンテナに入れる。その後、30mlの3%水性アンモニア溶液を含む50mlオープンコンテナを、300gの1%水性アテロコラーゲン溶液を入れた、5リットルチャンバ内の前記トレイの次に置く。その後、5リットルコンテナ(アテロコラーゲンおよびアンモニアのオープントレイを含む)をシールして室温に12時間放置する。この間に、水性アンモニアのオープンコンテナから放出され、シールされた5リットルコンテナ内に閉じ込められたアンモニアガスは水性アテロコラーゲンと反応して、これにより、アテロコラーゲンの水性溶液をゲル化する。
【0053】
その後、コラーゲンゲルを水で一晩洗浄し、次に、凍結乾燥して、スポンジ様マトリックスを生成する。その後、この凍結乾燥マトリックスを四角に切断し、滅菌し、滅菌ラップ下で貯蔵する。
本発明は、他のプロトコルにしたがって調製されたマトリックスを企図する。ある態様では、Liの米国特許第5,206,028号(参照により本発明に取り込む)に説明されたプロトコルにしたがって調製されたマトリックスを使用する。別の態様では、Glowacki等の米国特許第5,656,492号(参照により本発明に取り込む)に説明されたプロトコルにしたがって調製されたコラーゲンマトリックスを使用する。
これらのコラーゲンマトリックスのポアサイズを分散pH、コラーゲン濃度、および凍結乾燥周期(例えば、凍結時間、温度範囲、および周期時間)を変えることにより調節できる。Yannas等の米国特許第4,522,753号を参照のこと(参照により本発明に取り込む)。本発明は特定のメカニズムに限定されることを意図しないが、ポアサイズの調節は、異なる形態を有する細胞の均一な分布を促進する場合に有利であり得る。
【0054】
例えば、I型コラーゲンマトリックスにおいて培養された軟骨細胞は、マトリックスの平均ポアサイズが100マイクロメータより大きい場合にマトリックスへの浸透が増加することを示す。Pachence等の米国特許第6,080,194号を参照のこと(参照により本発明に取り込む)。本発明の支持層は特定のポアサイズに限定されることを意図せず、本発明のある態様では、ポアサイズが約50〜500マイクロメータの範囲にある。別の態様では、ポアサイズは100〜300マイクロメータの範囲にある。別の態様では、ポアサイズは約200マイクロメータである。
【0055】
本発明はI型コラーゲンを有する細胞支持層に限定されることを意図しない。他の態様では、システムの細胞支持層は他の材料からなる。他の材料は、非制限的に、II型およびIV型コラーゲン等の他のコラーゲン;プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、グリコプロテイン(例えば、フィブロネクチン、ラミニン等)等の細胞外マトリックスの他の成分を含む細胞収縮コラーゲンゲル;エラスチンおよび/または生物活性ペプチド成長因子またはサイトカイン;フィブリン等の他のバイオポリマー;ポリ乳酸またはポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、またはポリアミノ酸、またはこれらのコポリマー等のポリマーから作られた合成生物分解生繊維;およびコラーゲンおよびポリ乳酸を有する構築物構造体を含む。
【0056】
2.ゲル要素
本発明の好ましい態様では、本発明の細胞支持マトリックスは、ゾル状態にある、ゾル−ゲル溶液に懸濁された細胞を運び上げる(そして、マトリックスの隙間に均一に分布させる)スポンジのように作用する。本発明は特定の型のゾル−ゲルに限定されることを意図しない。しかし、ゾル−ゲルの好ましい特徴は、非制限的に、公称剪断力のみが細胞とゲルを混合するために必要であるような条件下で細胞の容易な混合を促進する粘度(ゾルとしての)を含む。好ましい態様では、このゾル−ゲルは実質的にI型コラーゲンから構成され、市販されている(例えば、カリフォルニア、Palto AltoのCohesion Corporation製のVITROGEN)。VITROGENは、0.012NのHClに溶解した、純粋な(即ち、99.9%純度の)ペプシン可溶化ウシ真皮コラーゲンであり、滅菌溶液として維持される。
このゾル−ゲルの別の好ましい特徴は固体形態に硬化(または移行)される能力があることである。前記固体形態は、自由に注がれ、あるいは混合されることが実質的に不可能であることにより特徴付けられる。本発明は前記ゾル−ゲルを固体(例えば、ゲル)に硬化するための特別な機構に限定されることを意図しない。ある態様では、前記硬化には熱の適用が含まれる。好ましい態様では、ゾル−ゲルは約37度の温度を与えることにより硬化する。他の態様では、前記ゾル−ゲルは薬剤または紫外線放射に暴露することにより略固体形態に硬化される場合がある。
別の態様では、本発明はポリペプチドキャリヤゲルの使用を企図する。
【0057】
3.統合層
本発明は、細胞を播種され、さらに統合層を有する支持マトリックスを企図する。この統合は細胞を播種された前記支持マトリックスの(生体内での)体の損傷または欠陥への取り込みを容易にする。ある態様では、この統合層は生体内で器官または組織に接触する。すなわち、統合層は(外科的に)導入された細胞播種された支持マトリックスと受容者の天然の生体内での組織または器官の間の界面を形成する。
【0058】
細胞が取り込まれる支持マトリックスおよび組織に取り込まれた細胞の特別な型に応じて、統合層は異なる機能を提供できる。ある態様では、保護層はホストの天然の組織によって生成されたエンドクリンまたはパラクリン信号から、移植された細胞播種マトリックスを遮蔽する。別の態様では、統合層は、ホストの天然の組織からのエンドクリンまたはパラクリン信号の、移植された細胞播種マトリックスへの伝達を容易にするように構成される。
【0059】
本発明では、統合層に対する作用の特定の機構に限定することを意図しない。ある態様では、統合層は下にある骨組織から血管および望ましくない細胞の、ホストの関節に移植された軟骨細胞播種マトリックスへの侵入を防止する。
本発明の統合層を調製する際に、稠密なコラーゲンバイヤを米国特許第5,206,028号に記載された手順にしたがって調製でき、これを参照により本発明に取り込む。約4mmから10mmの厚さを有する多孔性コラーゲンマトリックスは(25℃における相対湿度80%に)水分制御下チャンバーを使用して60分間水和される。コラーゲン材料は2枚のテフロン(登録商標)シートの間で0.2mmより薄い厚さに圧縮される。その後、圧縮材料は0.5%ホルムアルデヒド、1%重炭酸ナトリウムの溶液(pH8)中で60分間架橋される。その後、架橋膜を水で充分に洗浄し、約48時間凍結乾燥する。稠密なコラーゲンバリヤは多層構造に絡み合って密集して充填された繊維からなる内部構造を持つ。
【0060】
別の態様では、統合層は、空気乾燥してシート形態にしたコラーゲン基分散液または溶液から調製される。乾燥は約4〜40℃の温度範囲で約7〜48時間の時間実施される。
別の態様では、統合層は、ポリエチレングリコールおよびコラーゲンのコポリマーから構成され、これは液体をゆっくり吸収しかつゆっくり生物分解する。このポリエチレングリコールとコラーゲンのコポリマーの接着の性質はシステムがより効率的に損傷または欠陥部位に置かれ接着することを可能にする。
【0061】
本発明にかかる統合層はポリエチレングリコールとコラーゲンのコポリマーに限定されることを意図しない。例えば、他の態様では、システムの(単数または複数の)統合層は、コラーゲン、フィブリン、アガロース、アルギネート、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸およびポリグリコール酸のコポリマー、コラーゲンとフィブリンのコポリマーから構成される。加えて、統合層はさらに特定の組織および細胞の成長および発達を促進、刺激、または阻害する材料を含んでもよい。
【0062】
このような材料の例としては、非限定的に、脱塩化骨粉末、骨形態形成蛋白質等の成長および発達因子;表皮成長因子;コンドロイチナーゼABC(米国特許第5,916,557号明細書、参照により本発明に取り込む)等の細胞外マトリックス交替を刺激する酵素;および血管内皮細胞成長因子(VEGF)等のプロ血管形成因子を含む。
血管新生を促進するように設計された本発明の態様では、本発明の統合層はヘパリン等の抗血栓形成因子、または抗血栓形成効果を生じるスチレン−エチレンまたはブチレン−エチレンコポリマー等の高度に負に荷電した人工材料を含む。
【0063】
(例えば、骨芽細胞が支持マトリックスにまかれた箇所における)骨組織の形成を促進するように設計された本発明の別の態様では、統合層は生体内で軟骨下組織を刺激する骨形成因子および/または脱塩化骨粉末を含んでもよい。
【0064】
4.保護層
本発明は細胞をまき、さらに保護層を有する支持マトリックスを企図する。保護層は細胞播種支持マトリックスの外側面をカプセル化する。保護層は細胞播種支持マトリックスを、ホストへの細胞播種マトリックスの移植に関連するいくつかの適用において、機械的および生理的障害から絶縁し、同時に栄養を細胞播種マトリックスに移動させる。ある態様では、保護層は、前記マトリックスを組織プロセッサから除去する前および/または後に細胞播種マトリックスに適用される。
【0065】
好ましい態様では、保護層は特許溶液を有し、これはCT3と表示され、カリフォルニア州、Palto AltoのCohesion Technologiesにより製造され、組織プロセッサにおける所定培養期間の後除去された軟骨播種マトリックスの表面上に適用される。ある態様では、外科医はこのエアロゾル化したCT3を生体内で軟骨下骨に適用する。細胞支持層を置く際、外科医がポリマー材料を、完全に重合するのを待つことなく、損傷部位に配置し、ネオ軟骨を適所に配置する。このようにして、軟骨下骨に面した層は軟骨下骨をシールし、細胞支持層(例えば、ネオ軟骨)を適所に保持する。その後、前記ポリマーを有する外側保護層は急速に重合する形態で適用され、摩擦により移動するのを防止すべく、関節の関節面の下に保持するように適用される。
【0066】
ある態様では、システムを欠陥または目標損傷に配送または移植すると、保護層は機能面から新しい組織に向かう力またはプロセスから新しい組織を遮蔽し、これにより、細胞支持体が、損傷を取り巻く天然の組織に統合することを容易にする。例えば、移植されたネオ軟骨を保護するために使用する場合、この保護層は、管状骨から患者の骨膜の薄い層を除去する必要性をなくす、他の型の保護的外科的介入に置き換わることができ、続いてネオ軟骨を含むシステムを適所に固定する。
【0067】
ネオ軟骨を生成するためのシステムにおいて、ネオ軟骨は硫酸コンドロイチンおよび他のグリコサミノグリカン等の負に帯電した成分を発現し生成するので、ネオ軟骨により生成される天然のマトリックスを化学的に含むために保護層が正に帯電するかまたは中性の電荷であることがさらに望ましい。
システムの保護層は異なる形態を取る。他の形態のなかからある形態を使用することは、ネオ組織を配送、戻し、または移植すべき損傷および損傷部位の性質に依存する。ある態様では、本発明は生体内でライニングを生じ、続いてライニングを有する、細胞を播種した支持マトリックスに接触する、前記保護を有する損傷または損傷部位を企図する。
【0068】
本発明は、特定の材料でできた保護層を有する多層システムに限定されることを意図しない。例えば、ある態様では、保護層は接着シーラントを有する。接着シーラントは、統合層および細胞支持層を損傷に配置した後内科医または外科医により適用され、したがって、細胞の初期播種時にはシステムに付着していない。効果的なシールを形成するために、接着シーラントは、接着性シーラントがコポリマーの重合(または硬化)前に施術者によって容易に操作されるように、大きい口径のシリンジ等の器具を用いて噴霧または塗布されることが望ましい。
【0069】
この材料(すなわち、シーラント)が0.01〜15.00MPaの応力に耐えられることがさらに望ましい。この用途に使用される材料は、体内で均一に生物分解される生物学的に良好なポリマーである必要がある。好ましい材料の例としては、ポリエチレングリコールおおよびコラーゲンのコポリマー(または構築物)である。実際、軟骨をコラーゲンマトリックスに播種する本発明の態様では、コラーゲン基シーラントが好ましい。保護層におけるこのようなコポリマー(または構築物)を使用する利点のいくつかは、前記コポリマーが効果的であり、安全であり、強く、耐性があること、および目標損傷への多層システムまたはマトリックス(および対応する細胞またはネオ組織)の配送後、外科的シーラントとして内科医によっても使用されることを含む。
【0070】
別の態様では、外側/保護層は、システムを培養する前に多層システムの表面に噴霧されたシーラント(すなわち、材料)の保護層を有し、その後、損傷に配置され、より多層の同じ材料で補強される。
別の態様では、Wallaceによる米国特許第20010055615号(2001年、12月27日公開)(出願番号09/293,708に対応)(参照により本発明に取り込む)に記載された、急速にゲル化する生物適合性ポリマー組成物は、本発明の保護層として使用することができる。
【0071】
さらに、別の態様では、保護層は固く、しかし可撓性がある材料を含み、損傷部位に押し込まれ、損傷を効果的にシールし、さらに保護機能果たすことにより利用できる。前記態様は、ウェッジ保護層といわれる。この態様で使用されるのに適した材料の例としては、非制限的に、ポリラクテートまたはポリ乳酸−ポリグリコール酸のコポリマーの形態をとり、およびアセチル化度が変わるN−グルコサミンの不織圧縮構造を含む。本発明は、このような材料の、別々の、または組み合わせでの使用を企図する。さらに、本発明は、(上記の)接着性シーラントは、挿入されたシステムの周囲のエキストラシーラントとしてウェッジ保護層と一緒にも使用する態様を企図する。
【0072】
III.組織培養デバイスおよび組織プロセッサ
1.標準インキュベータ
本発明の方法は、種々の組織培養デバイスを採用する。標準組織培養インキュベータおよびインキュベーション環境は、組織または器官からハーベストされた細胞を増殖するために使用される。好ましい態様では、この細胞増加は死んだ細胞および細胞破片(例えば、残渣天然細胞外マトリックス)の除去に関連する。すなわち、標準組織培養法は細胞の所望の集団を選択して増殖するために使用できる。その後、これらの増加された細胞は本発明にかかる三次元細胞支持マトリックスに入り込まれる。好ましい態様では、例えば、関節軟骨からハーベストされた軟骨が培養により増殖される。その後、これらの増加した軟骨を細胞支持マトリックスに播種して播種マトリックスを形成する。その後、この播種マトリックスを組織プロセッサに入れることができる。
【0073】
2.組織プロセッサ
組織プロセッサは、一定のまたは周期的静水圧の適用、培地の再循環、および酸素濃度の調整を含む、組織培養条件を調整できる能力を持つ。好ましい態様では、前記組織プロセッサは▲高▼木産業株式会社に譲渡された、米国特許出願公開第20010021529号明細書(米国特許出願番号09/796,422)(参照により本明細書に取り込む)に記載の組織エンジニアリングサポートシステム(Tissue Engineering Support System:TESS)である。
【0074】
TESSプロセッサは細胞または組織を培養するための装置を提供し、これは、細胞または組織および培養培地を含有する培養チャンバーを有する培養ユニット;前記培養チャンバー内の細胞または組織に圧力を適用するための圧力適用手段;および前記培養ユニットへの培養培地の連続的なまたは断続的な配送供給のための培養培地供給手段を有する(参照:米国特許出願番号第09/796,422の対応明細書および図1)。TESSプロセッサは、圧力適用手段または培養培地供給手段を制御するための制御手段(例えば、圧力リリーフバルブ)をも有する。一般に、細胞または組織に適用される圧力は成長させるべき細胞または組織の型に応じて設定される。また、TESSプロセッサは、窒素、二酸化炭素、および酸素等のガスを吸収可能な手段をさらに有する。さらに、TESSプロセッサは、加熱手段および湿度手段を含む密閉シール化スペースをさらに有する。
【0075】
3.組織プロセッサの使用
ある種の細胞は、ネオ組織(例えば、ネオ軟骨)を形成するように、三次元(3D)培養において成長することが非常に困難である。TESSプロセッサは、成長および培養が困難なこれらの細胞の成長を促進するのみならず、細胞の混合培養が一緒に成長させることができる。細胞のこれらの混合集団は、生体内で器官の組織学的組織化にアプローチする組織構築物に自己組織化するような条件下で、TESSにおいて培養される。本発明は特定の組織培養機構またはプロトコルにより限定されることを意図せず、TESSは圧力下で培地を還流し、これにより、細胞播種3Dマトリックス内部への酸素および栄養の配送を容易にする。
【0076】
ネオ組織は健康なヒトまたは癌性細胞からなり得る。癌性細胞は制癌スクリーニングのためのモデルシステムとして使用でき、治療に先立って研究員がインビトロで最適な投薬計画を開発することができる。
例えば、上皮由来分泌細胞および中胚葉由来ストローマ細胞から構成される3Dネオ組織は生体内前立腺組織の形態形成に近づくことができる。このような「前立腺様」ネオ組織は、研究者が、前立腺腫瘍抑制剤として、多くのビタミンD類似体をスクリーニング可能にする。
【0077】
さらに、これらの3D培養は(ある器官における転位腫瘍からの)癌性細胞および前記癌性細胞の転位の標的である「正常」細胞から構成可能であり、これにより、転位性相互作用を研究することが容易になる。このようなシステムは、上皮分泌細胞(例えば、前立腺癌または乳癌における)の一次癌からではなく、一次癌部位からの移動細胞との相互作用による骨変形から癌死亡率が生じる場合に特に重要である。このような3D培養は前立腺転位に対して示された組み合わせ投薬計画(例えば、カルボプラチン等のアンドロゲンレプレッサ/化学療法剤)を評価する際に価値がある。
【0078】
IV.ネオ組織形成の概観
本発明は、上記多層システムの要素を使用してネオ組織の形成のための方法を提供する。特に、これらの成分は、リビング三次元ネオ組織が生成されるような条件下で結合され、反応される。これらの要素に対する結合および反応条件は生成されるネオ組織の型およびこの同じネオ組織に対する意図する用途に応じて変えることができる。しかし、好ましい態様では、ネオ軟骨は以下の計画にしたがって生成される。
【0079】
1.給源組織からの軟骨細胞の単離
軟骨細胞を生後6カ月のブタの後肢から無菌条件下で採取した軟骨から酵素処理を施し単離した。大腿骨は脛骨から離され、滑車ヘッドが露出された。手術用メスを使用して、軟骨の細長い片を滑車から除去した。軟骨は細かく刻まれ、0.15%コラゲナーゼI型溶液〔1%ペニシリン・ストレプトマイシン(P/S)を含む、DMEMとNutrient Mixture F−12(DMEME/F−12)の1:1の混合溶液〕で消化し、37℃で18時間ゆるやかに回転させられた。軟骨細胞を集めて、2回、PBSを用い3000rpm、5分間遠心分離して濯いだ。軟骨細胞を、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)および1%P/Sを添加したDMEM/F−12に再懸濁した。
【0080】
2.TESSマトリックスへの細胞播種
単離した軟骨細胞を標準インキュベータ中で37℃5日間インキュベートした。その後、細胞をトリプシン処理により集めた。1マトリックスあたり、18ulのVITROGEN溶液中に150,000細胞の細胞懸濁液を播種した。1グループあたり、9マトリックスである。本発明は、特定の細胞支持マトリックスサイズまたは形または細胞数に限定されることを意図しない。実際、本発明のある態様では、播種マトリックスはスケールアップして体積を増加させることができる(ここで、上記細胞懸濁液約1ulを1ulのマトリックスにまいた。)。コントロールグループマトリックスを37℃のインキュベータ中でインキュベートし、試験グループはTESSでインキュベートした(参照:実施例1および表1)。
【0081】
別の実施例では、単離した軟骨細胞を標準インキュベータ中で37℃で5日間インキュベートした。その後、細胞をトリプシン処理により集めた。18ulのVITROGEN溶液中300,000細胞の細胞懸濁液を1マトリックス当たりにまき(このマトリックスは約19ulの体積を有する。)、1グループあたり8マトリックスである。本発明は特定の細胞数または細胞支持マトリックスサイズまたは形に限定することを意図しない。実際、本発明のある態様では、播種マトリックスはスケールアップして、体積を増加させることができる(ここでは、上記細胞懸濁液の約1ulを1ulのマトリックスに播種した)。コントロールグループマトリックスを37℃のインキュベータでインキュベートし、試験グループをTESSでインキュベートした(参照:実施例2および表2)。
【0082】
3.生化学(DMBアッセイ)
培養の終わりに、各グループから6つのマトリックスを使用して生化学アッセイを行った。要するに、マトリックスをマイクロ遠心分離管に移し、300μlのパパイン(0.1Mリン酸ナトリウムにおいて125μg/ml、5mMニナトリウムEDTA、および5mMのL−システイン−HCL)で60℃18時間消化した。マトリックスにおけるGAG生成を改変ジメチレンブルー(DMB)マイクロアッセイ(miocroassay)を使用してコントロールとして硫酸コンドロイチンを用いて測定した(参照:結合組織研究「Connective Tissue Research」1982年、9巻、247−248頁)。
【0083】
4.組織学
各グループから残りのマトリックスを4%パラホルムアルデヒドにおいて固定した。このマトリックスを処理してパラフィン中に埋設した。10μmの断面をマイクロトームで切断し、サフラニン−O(SafO)で染色した。
【0084】
V.ネオ−組織成長に対する好ましいプロトコル
本発明は、インスタント用途において記載した多層システムの要素を使用して、ネオ組織の成長(すなわち、インビボ、エキソビボ、およびインビトロ)に対するプロトコルを企図する。好ましい態様では、TESSプロセッサを使用して、細胞播種マトリックスに一定のまたは周期的な静水圧を配送する。この好ましい態様では、これらの細胞播種マトリックスを休止期に保持し(大気圧下37℃で保持した標準インキュベータまたはTESSプロセッサにおけるある実施例において)、続いて一定または周期的静水圧にさらす。
【0085】
1.ネオ軟骨の生成
好ましい態様では、自系ブタ軟骨細胞を細胞支持マトリックスに播種し、37℃および5%CO下で周期的静水圧にてインキュベートする。好ましい態様では、前記周期的静水圧は0.5Hzで約3.0MPaである。この態様では、前記周期的圧力の期間は約6日であり、その後、大気圧下37℃に保持されたインキュベータ中で12日の休止期に付す。この休止期の終わりに、マトリックスを、実施例1および実施例2に記載の生化学および組織学的分析のためにハーベストした。
【0086】
2.代替的プロトコル
別の態様では、本発明は、本発明の要素を使用して、細胞成長(すなわち、インビボ、エキソビボ、およびインビトロ)のアルゴリズムを企図する。単離したインサイツの軟骨(またはマトリックスに付着した軟骨細胞)に静水圧を与え、約1〜8時間周期的静水圧をかけ、約16〜23時間の回復期を与える療法にかける。
【0087】
3.酸素濃度低下
代替的態様では、上記軟骨細胞播種細胞支持マトリックスは、TESSプロセッサにおけるネオ軟骨形成中、低いO濃度下で(即ち、20%飽和より低い)培養される。本発明は特定の機構に限定されることを意図しないが、インビボで観察される軟骨の低酸素濃度は、軟骨の血管新生欠如、それは(隣接する組織に比較して)より低い酸素分圧を生じるのだが、そのことに起因する可能性がある。ある態様では、ネオ組織は約0%と約19%飽和の間の酸素濃度下で培養される。別の態様では、前記酸素濃度は約2%飽和である。
【0088】
VI.医学的用途
本発明の組成物および方法は、種々の医学的用途において使用するために適している。ある態様では、本発明に記載した熱硬化、細胞播種マトリックスは損傷した細胞または組織を修繕するためにインビボで移植できる。別の例では、本発明の熱硬化細胞播種マトリックスは、存在する組織を置換または増大でき、あるいは下記のように生物的組織または構造に一緒に結合できる。
【0089】
1.組織修復用途
本発明の組成物および方法の用途は特定の組織(または細胞)型の修復、置換、再構築、または増加に限定されることを意図しない。例えば、ある態様では、損傷した軟骨性組織を修復し、置き換え、再構築し、または増加される。別の態様では、腫瘍、外傷、感染、または先天性奇形(種々の組織または細胞型を含む)による組織欠損を修復、置き換え、再構築または増加する。
【0090】
A.軟骨修復
本発明は全厚軟骨欠損の修復のための、組成物および方法を提供するが、部分厚欠損の修復を指向することもできる。さらに、本発明のシステムおよび方法は欠損領域のテンプレートを形成するための方法と結合でき、特別注文で形成したネオ組織は、特定の患者の欠損のために寸法的に調整されあつらえて、製造できる。さらに、本発明のシステムおよび方法を使用して、半月板等の完全な軟骨構造を作ることができる。あるいは、本発明を使用して、関節表面の部分的なまたは全体的な置き換えのための材料をつくることができる。他の態様では、本発明にかかる、軟骨性ネオ組織(すなわち、ネオ軟骨)は人工関節を形成するためのアロプラスティック材料と結合するために利用可能である。ある態様では、本発明に記載した軟骨性ネオ組織(すなわち、ネオ軟骨)は腱および靱帯を修復および/または置換するであろう。特定の態様では、この靱帯は前十字靱帯(ACL)である。別の態様では、本発明で説明した軟骨性ネオ組織(すなわち、ネオ軟骨)は椎間円板を修復および/または置き換えするであろう。
【0091】
本発明の組成物および方法は、軟骨下骨を含む完全な関節表面の置き換えのために使用するために形成した例えば軟骨および骨と結合するネオ組織構築物の形成に適用でき、手首に見いだされるような軟骨で覆われた小さい骨の置き換えのために使用されるであろう。軟骨ネオ組織形成のために使用されるかまたはネオ組織構築物形成のために使用されるか、全関節置き換えに対して、あるいは手の関節または側頭下顎関節等の小さい関節における半関節置き換えに対して、これらの組成物を移植可能な構造に作ることができる。
【0092】
別の態様では、これらのシステムおよび方法を使用して、膝とうの大きな重量に耐える関節に配置される、移植可能な、全厚、軟骨ネオ組織を作ることができる。関節鏡検査法は、これらの組成物および方法により形成されるネオ組織に組み入れられるべき天然の軟骨細胞をハーベストする際に有利に利用できる。
【0093】
本発明の態様では、第1関節鏡検査法は潜在的な軟骨欠損の程度を評価するために、および本発明で説明した細胞支持マトリックスへ培養して配送するために天然軟骨をハーベストするために、使用される。第1関節鏡検査手順の際に形成されるテンプレートに基づいて、またはその手順の間に得られる測定値に基づいて、予見される欠損の寸法モデルを形成し、ネオ組織のサイズおよび形をこのモデルに一致させて形成する。
【0094】
第2関節鏡検査処置はインサイツで天然の軟骨の損傷領域を傷面切除するために、および本発明にしたがって調製されたネオ軟骨で損傷領域を置換するために、実施される。
従来の外科的方法の他の適合使用が、天然の軟骨細胞をハーベストするために、ホスト関節表面内の欠損を作るために(例えば、関節表面の完全な切除または関節表面の部分的切除を含む)、ネオ組織をホスト欠損に移植するために、およびネオ組織をその部位に保持するために、他の解剖的部位に使用されるであろう。
【0095】
B.組織欠損修復
腫瘍、外傷、感染、または先天的奇形により残された欠損は医学的および外科的技術においては周知である。このような欠損の再構築は全厚組織置換を必要とし、あるいは組織構築物の置換を必要とし得る。例えば、ある態様では、下瞼(基底細胞癌の場合において)から取った切除は、上瞼からの組織または隣接組織を「使用」する広範なフラップ手順により再構築されることが必要である。あるいは、ドナー部位として他の瞼または鼻中隔を使用する移植処置を使用できる(ドナー部位の問題があること、局部的組織再配列が再構築領域において必要とされることという事実にもかかわらず)。
【0096】
本発明はこれらの欠損を修復するために適合使用できる。例えば、ネオ軟骨およびカバー層の両方を提供するネオ組織構築物は、再構築されたタスクを単純化するためにこのような欠損に配置される。瞼組織の全3層を有するネオ組織は実質的に局所的な組織再配列に対する必要性を省くことができる。ネオ軟骨を有するネオ組織は、ドナー部位のリスクを伴う他の箇所からの軟骨移植片のハーベストの必要性を除去する。
【0097】
別の態様では、鼻中隔変形欠損はネオ軟骨を使用して修復されるであろう。口蓋破裂処置後の持続性瘻孔の修復は、本発明で説明したネオ軟骨を用いた治療にも従う。口蓋破裂修復から残されたこれらの瘻孔は内側の骨のような層を覆う2つの外側の粘膜層を有する組織構築物を使用した再構築が必要である。
【0098】
別の態様では、本発明に記載されたネオ組織は困難な再構築の問題に対しても適合使用されるであろう。本発明の組成物および方法を使用して、口腔内位置に対して適当な機能特性と有する専門化した組織で口腔欠損を満たすか覆うのに充分な量で口粘膜を製造できる。爪床並びに大きいおよび小さい関節の関節軟骨等の専門化した他の領域の再構築にも本発明の組成物および方法を使用して利用できる。本発明は、損傷した側頭下顎骨関節に再構築溶液を供給でき、またはリウマチ様関節炎等の変性疾患を修復するために使用できる。
【0099】
C.靱帯および腱
本発明の組成物および方法は、インビトロで靱帯および腱の生成に使用される。ある態様では、これは、靱帯または腱の外因性発達の間にエキソビボで、骨格にわたる靱帯および腱前駆細胞のストレッチにより促進される。本発明で企図される靱帯は前躯体細胞、間葉幹細胞、または繊維芽細胞、特に靱帯および腱を取り囲む鞘細胞から誘導された繊維芽細胞、靱帯または腱自体から誘導された繊維芽細胞または腱細胞(tenocyte)から誘導されるであろう。自系の靱帯および腱は患者自体の損傷した靱帯および腱を、免疫応答または他の有害な応答のおそれなく、置き換えるために使用できる。
【0100】
上記ストレッチ骨格は本発明の多層組成物における別の層と考えることができる。この骨格は前駆細胞がエキソビボでストレッチできるようにし(例えば、改変TESSプロセッサにおいて)、真性なネオ靱帯またはネオ腱に対応する蛋白質およびマトリックス成分の引き起こす物理的刺激を適用する。
【0101】
ある態様では、ストレッチ骨格は、軟骨や靱帯が寿命内で正常に受ける引張応力の範囲内にある引張応力に耐え得る繊維材料からなる。特に、繊維材料は、他の組織または器官から靱帯および腱を差別化し、かつこれらの遺伝子生成物が配向および生理的条件を受けることができるような正しい比で前記細胞が正常な遺伝子生成物を生成するよう誘導するために必要である引張応力の範囲を耐えることができ得る。したがって、健康で形態学的に良好な腱または靱帯はこのような骨格に依存する。また、繊維材料は、前記細胞がネオ靱帯またはネオ腱の形成を誘導するために必要な前駆細胞ストレッチの量を受容できる程度の弾性を持つ必要がある。
【0102】
このような骨格化で発現した靱帯および腱は引張強度、弾性、およびインビボで骨および筋肉を支持する構造を必要とし、それは成長および分化の正常な過程で体内で発現した靱帯および腱の構造および引張強度に等しい。また、骨格はネオ靱帯または腱が充分に機能的であると、骨格が体内で統合するまで損傷および支持に靱帯または腱を再導入するように設計される。ある態様では、骨格化移植後に低下する。
ある態様では、骨格化に使われる細胞は、開発的段階における細胞から、(骨格化にあり、かつ軟骨および靱帯の分化を誘導するように設計される3D組織培養装置の物理的および化学的条件に置かれる場合)これらの細胞が形態学的に健康な靱帯または腱により作られた遺伝子生成物の略全てを生成するように、選択される。
【0103】
ある態様では、骨格化を種々の材料から選択する。その材料としては、非制限的に、ポリエステル(ポリアルキノエート(polyalkynoate)を含む)、ポリグリコレート、ポリラクテート、生物分解性構造材料を含む。さらに、他の材料は、これらの材料が体内で安全に分解できる限り、かつ分解生成物が軟骨および靱帯または周囲組織の正常な代謝機能に干渉しない限り適切である。
【0104】
骨格の物理的構造は意図する機能に適合する必要がある(例えば、細胞(マイクロメーター)レベルにおける引張応力の均一な適用)。これらの応力は、成熟した軟骨または靱帯への応力と比較して非常に穏やかである。また、要求される引張強度で破裂に耐える繊維構造であることが重要である。ある態様では、直径が1〜10マイクロメーターの繊維が、非制限的に中実織物、中央中空織物(中国パズル織物(Chinese puzzle weave)等)を含む種々の織りパターンに織られ、骨格化の端部への引張応力の適用は骨格表面の均一なストレッチを生じる。骨固着点を有する靱帯を生成するために、脱塩した骨粉末等の物質を骨格の極端部に取り込ませることができる。
【0105】
D.他の用途
本発明の組成物および方法をある疾患の機構を明らかにするためのモデルとして使用することもできる。例えば、ある態様では、本発明の多層化システムは、インビトロで生理的または病理的条件の研究のためのモデルとして使用できる。例えば、本発明の態様では、血液脳関門としてシステムを使用する。別の態様では、(本発明の組成物および方法を使用して生産した)粘膜表皮の三次元培養をヘルペスウイルスまたはパリローマウイル感染を研究するためのモデルシステムとして使用できる。このようなモデルシステムを使用して抗ウイルス薬剤の効力を試験できる。
【0106】
あるいは、本発明の組成物および方法は、種々の薬剤および成長因子の薬物動態を研究するために使用できる。例えば、本発明に記載したネオ組織を細胞毒性化合物、アレルゲン、成長および抑制因子、医薬的化合物のインビトロスクリーニングのためにも使用できる。この目的のために、ネオ組織をインビトロで維持し、試験されるべき化合物に暴露する。例えば、細胞毒化合物の活性を、培養細胞を損傷または殺す能力により測定できる。このことは、既知の生体染色法により容易に評価できる。
【0107】
成長または抑制因子の効果をネオ組織の細胞内容物を、例えば全細胞計数および/または分化細胞計数により、分析することにより調査できる。これは、型特異性細胞抗原を規定する抗体を使用する免疫細胞化学的方法の使用を含む、標準細胞学的および/または組織学的方法を使用して達成できる。三次元システムで培養した正常細胞に対する種々の薬剤の効果を評価することができる。例えば、赤血球細胞形成を高める薬剤を三次元骨髄培養について試験できる。例えば、コレステロール生成を低下させることにより、コレステロール代謝に影響を与える薬剤は、三次元肝臓システムについて試験できる。腫瘍細胞の三次元培養を例えば抗腫瘍剤の抗力を試験するためのモデルシステムとして使用できる。
【0108】
本発明の組成物および方法は悪性腫瘍および疾患の診断および治療の際の補助としても使用できる。例えば、組織(例えば、骨髄、皮膚、肝臓等)の生検を悪性腫瘍を有すると疑われる患者から採取できる。バイオプシ細胞を本発明のシステムで培養した場合、悪性腫瘍細胞は培養増殖の間にクローン的に増殖し、これにより、悪性腫瘍を検出する機会が増加し、したがって、診断の正確さおよび治療の瞬時性が高まる。本発明のこのような用途は、細胞の感染集団がインビボで消耗されるAIDS等の疾患において特に有益である。さらに、このような場合には、患者の培養は、最も有効な化合物(すなわち、悪性または疾患細胞は殺すが、正常細胞は殺さない化合物)を確認するために化合物(例えば、細胞毒化合物または調合薬)をスクリーニングするためにインビトロで使用できる。その後、これらの薬剤を使用して患者を治療できる。
【0109】
VII.代替的態様
ネオ組織またはネオ組織構築物を生成するための多層化システムのある態様では、3層構造を含むが、本発明は3層より多い層を有する多層化システムをも企図する。
例えば、ネオ組織またはネオ組織構築物を生成する際に、多層化システムの層は:組織取り付け層であるボトム;第1型の組織細胞を収容する生物的マトリックスを支持する第2層;、第2型の組織細胞を収容する生物的マトリックスの付加的な層と第2層を統合するために第2層上に配置された統合層である第3層;生物的マトリックスの付加的な層の頂部に配置された保護層であるトップを含んで配置できる。このような配置は粘膜層により保護される軟骨層を含む組織構築物を供給できる。このましくは、統合層は軟骨層および粘膜層の正常な取り付けを強化する材料から形成され、生理的条件下で統一的挙動により天然組織の挙動を複製する。
【0110】
少なくとも2つの組織型からの細胞を播種された複数の細胞支持マトリックスを有し、各マトリックス間に配置された統合層を有するより複雑な構造をも企図する。例えば、鼻中隔の組織構築物は、外側粘膜層、内側軟骨性層、および第2外側粘膜層を具えて(これらの原理にしたがって)組み立てることができる。
別の態様では、鼻中隔の3層を含む本発明のネオ組織構築物が生成される。
別の態様では、本発明により説明したネオ組織を種々の形に形成できる。例えば、血管、管または特に専門化した導管等の管状構造(例えば、尿管、食道等)をマンドレルまたは他の管形成形の周りにネオ組織を彫刻することにより形成できる。
他の態様では、本発明の組成物および方法は、例えば、多層化血管等の管腔状、管状または円筒状構造を作るために使用できる。
【0111】
別の態様では、本発明の組成物および方法を使用して腱または靱帯のレプリカを生成する(すなわち、ネオ腱またはネオ靱帯)。本発明の多層化システムは腱を機能的に複製する構造体を生成するために外部ガイド管内で形成できる。ネオ靱帯を形成するために、播種細胞支持マトリックスを、ネオ靱帯用形成テンプレートとして作用する外部ガイド管に挿入できる。別の態様では、ゆっくりと分解するマンドレルを、ポリグリコール乳酸(PGLA)のような材料を使用して採用できる。
【0112】
さらに別の態様では、本発明の組成物および方法は、口腔粘膜の組織粘膜(すなわち、ネオ粘膜)を形成するために使用できる。口腔粘膜を形成するためのシステムはケラチノサイトの成長および分化を支持するマトリックスを含み、口腔粘膜の機能的表面に指向する保護層(すなわち口腔キャビティに向かう)を含むことができる。前記保護層は、下の細胞支持層を唾液と接触するという化学的および酵素的衝撃から、および口腔内解剖学的位置に固有な物理的な力から遮蔽するために構築される。
【0113】
口腔粘膜を形成するためのシステムは、下の骨への、細胞支持層において形成された細胞の取り付けを容易にするために適合される統合層をさらに含む。例えば、統合層は、骨および骨膜靱帯開発を刺激および誘導するための骨形成因子または脱塩化骨粉を含む。別の態様では、この層は、骨形成因子または脱塩化骨粉末に埋設された(共に層状化した死体の真皮を有する。
【0114】
別の態様では、本発明の組成物および方法は皮膚(ネオ表皮またはネオ真皮)の組織レプリカを形成するために使用される。例えば、層状化、角質化表皮にケラチノサイトの成長および分化を可能にする細胞支持層が供給される。真皮の組織レプリカ(すなわち、ネオ真皮)を生成可能な適当な栄養材料、繊維芽細胞、成長因子をさらに含む統合層が、前記細胞支持層に取り付けられる。統合層は、皮膚組織レプリカを下の組織床に取り付けるために適合される。
【0115】
皮膚のネオ組織には多くの医療的用途がある。例えば、このようなネオ組織は、急性または再構築的火傷外科的処置において、切除の再構築において、または慢性的な外傷または床ずれの治療において、使用できる。
【0116】
さらに別の態様では、本発明の多層化システムは、細胞毒および薬学的化合物をスクリーニングするために、およびサイトカインおよび成長/抑制因子への生物的応答を調べるために、インビトロ組織構築物に形成される。例えば、ヒトまたは非ヒト動物の前立腺の形態および機能に近似する組織構築物(すなわち、間質性および腺細胞の複合体により特徴付けられるネオ前立腺またはネオ腺)は、保護層および複数細胞支持層を含むシステムを含む。このような態様では、保護層は、所望の体積内にネオ器官を含み、かつ形および統合性を保持するのを助けるために機能する。このようなシステムは任意に統合層を有することができる。統合層は、例えば、使用されたインビトロの培養基体(例えば、培養ディスク、フラスコ、スライド等)等のシステムに固着される。各細胞支持層は天然の前立腺にある基本的な細胞型を提供する。このような細胞型の例としては、非制限的に、前立腺分泌腺上皮、間質平滑筋、および繊維性結合組織を挙げることができる。天然の前立腺の寸法に近似したネオ器官を形成するために、多層システムは保護層、任意的に統合層、および複数の細胞支持層を含んで形成される。このような複数の細胞支持層は、例えば、互いの上に積み重なり、かつ単一システム内で開発された3つの細胞支持層の幾つかのセットから構成される。細胞型の組み合わせはインサイツでの前立腺の構造および機能に近似される。
【実施例】
【0117】
実験的なものとして、以下の例は本発明の好ましい態様および観点を説明するものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されない。
実施例1
この実施例は一例を示し、この例では、組織が本発明のインビトロにおける一態様で形成された。要するに、ブタ関節軟骨細胞(sACs)をI型コラゲナーゼを用いて軟骨から酵素的に単離した。細胞を上記のようにコラーゲン(VITROGEN)中に懸濁し、細胞支持マトリックス(例えば、TESSマトリックス)のハニカムスポンジ素子内に入れた。これらの3D支持(すなわち、TESSマトリックス)内の細胞を37℃、5%CO、および20%Oで培養した。24時間後、これらの細胞マトリックス(すなわち、試験グループを含む細胞支持層)の幾つかを、TESSTMプロセッサに移し、上記のように6日間、3.0MPa周期的静水圧でインキュベートし、その後は12日間の休止期である。
【0118】
軟骨細胞播種TESSマトリックスから構成されるコントロールグループを18日間、37℃で、5%CO、および20%O、そして大気圧下でインキュベートした。
培養期間の終わりに、マトリックスを表1に記載したように生物化学的および組織学的分析のためにハーベストした。生物化学的分析のために、グリコサミノグリカン(GAG)生成を、改変したジメチメチレンブルー(DMB:dimethymethyleneblue)マイクロアッセイを使用して測定した。本明細書の「図面の説明」に記載した図1は表1で説明したデータをグラフの形態で示す。形態的分析について、ネオ組織の形成は、サフラニン−O染色により測定された。コントロールグループの組織形態を図2Aに示す。試験グループの組織学形態を図2Bに示す。
【0119】
【表1】

【0120】
注:1)全培養物を37℃、5%CO、および20%Oで培養した。
2)TESS培養において、培地流量は0.05ml/分であった。
3)各グループから2つのマトリックスを組織学的分析のためにハーベストした。
【0121】
実施例2
この実施例は、別の例を提供し、ここでは、組織を本発明の別の態様におけるインビトロで形成した。ブタ関節軟骨細胞(sACs)をI型コラーゲンを用いて軟骨から酵素的に単離した。細胞を上記のようにコラーゲン(VITROGEN)に懸濁し(例えば、18ulのVITROGEN中300,000細胞)、細胞支持マトリックスのハニカムスポンジ素子に入れた。ここで各マトリックスは体積が約19ulである。
【0122】
細胞支持マトリックスの細胞を37℃、5%CO、および20%Oで培養した。24時間後、これらの細胞マトリックスの幾つか(試験グループ)を、TESSTMプロセッサに移し、上記のように6日間3.0MPaの周期的静水圧で培養し、その後、37℃、5%CO、および20%O、大気圧下で培養した。
コントロールグループを含む残りの細胞マトリックスを大気圧下18日間37℃、5%CO、および20%Oで培養した。
培養期間の終わりに、マトリックスを表2に記載したように生物化学的および組織学的分析のためにハーベストした。生物化学的分析のために、グリコサミノグリカン(GAG)生成を、改変したジメチメチレンブルー(DMB:dimethymethyleneblue)マイクロアッセイを使用して測定した。本明細書の「図面の説明」に記載した図4は表2で説明したデータをグラフの形態で示す。形態的分析について、ネオ組織の形成は、サフラニン−O染色により測定された。コントロールグループの組織形態を図3Aに示す。試験グループの組織学形態を図3Bに示す。
【0123】
【表2】

【0124】
注:1)全培養物を37℃、5%CO、および20%Oで培養した。
2)TESS培養において、培地流量は0.05ml/分であった。
3)各グループから2つのマトリックスを組織学的分析のためにハーベストした。
【0125】
上記の説明および実施例から、本発明が提供する組織および組織構築物の調製のための組成物および方法が明確にされた。結論として、本発明は、開示した特定の態様に制限されず、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神および範囲内にあるすべての修飾を保護することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)懸濁した軟骨細胞を含有する溶液;ii)スポンジマトリックス;およびiii)処理手段;を提供すること、
b)播種デバイスを作るために、前記スポンジマトリックスを前記溶液に、前記溶液が前記スポンジに毛管作用により入り前記軟骨細胞が前記マトリックスに接触するような条件下で導入すること、および
c)前記播種デバイスを前記処理手段を用いて前記デバイス内で前記溶液の少なくとも一部が固化するような条件下で処理すること、
を含んで構成される方法。
【請求項2】
前記処理手段が培養チャンバーを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記処理が二酸化炭素の非存在下における加熱を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記スポンジマトリックスがヒトの関節に移植されるために構成される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記溶液がゾル−ゲルである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ゾル−ゲルが水性I型コラーゲンを含有する請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程(c)の後、前記軟骨細胞を前記軟骨細胞が細胞外マトリックスに結合した遺伝子生成物を合成するような条件下で培養することを、さらに含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記培養が0.01MPaより高い圧力下で行われる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記培養が周期的静水圧下で実施される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記圧力が0.5Hzにて0.5〜3.0MPaの範囲の周期的静水圧である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
a)i)水性コラーゲン中に懸濁した軟骨細胞を含有する溶液;ii)細胞支持マトリックス;およびiii)処理手段;を提供すること、
b)播種デバイスを作るために、前記マトリックスを前記溶液に、前記溶液が前記スポンジに毛管作用により入り前記軟骨細胞が前記マトリックスに接触するような条件下で導入すること、および
c)前記播種デバイスを前記処理手段を用いて前記デバイス内で前記溶液の少なくとも一部が固化するような条件下で処理すること、
を含んで構成される方法。
【請求項12】
前記溶液が少なくとも部分的にゲル化する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記処理手段が培養チャンバーを有する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記処理が二酸化炭素の非存在下における加熱を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記スポンジマトリックスがヒトの関節に移植されるために構成される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記コラーゲンがI型コラーゲンを有する、請求項11記載の方法。
【請求項17】
工程(c)の後、前記軟骨細胞を前記軟骨細胞が細胞外マトリックスに結合した遺伝子生成物を合成するような条件下で培養することを、さらに含む請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記培養が0.01MPaより高い圧力下で行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記培養が周期的静水圧下で実施される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記圧力が0.5Hzにて0.5〜3.0MPaの範囲の周期的静水圧である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
a)i)懸濁した軟骨細胞を含有する溶液;ii)スポンジマトリックス;およびiii)処理手段;を提供すること、
b)播種デバイスを作るために、前記スポンジマトリックスを前記溶液に、前記溶液が前記スポンジに毛管作用により入り前記軟骨細胞が前記マトリックスに接触するような条件下で導入すること、および
c)前記播種デバイスを前記処理手段を用いて前記デバイス内で前記溶液の少なくとも一部が固化するような条件下で処理すること、
d)前記処理軟骨細胞播種デバイスを周期的静水圧下で培養すること、および
e)前記周期的静水圧培養処理軟骨細胞播種デバイスを休止期に保持すること、
を含んで構成される方法。
【請求項22】
前記処理手段が培養チャンバーを有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記処理が二酸化炭素の非存在下における加熱を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記スポンジマトリックスがヒトの関節に移植されるために構成される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記溶液が水性I型コラーゲンを含有する請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記圧力が0.5Hzにて0.5〜3.0MPaの範囲の周期的静水圧である、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75201(P2010−75201A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−272109(P2009−272109)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2002−574807(P2002−574807)の分割
【原出願日】平成14年3月22日(2002.3.22)
【出願人】(506058875)ヒストジェニックス コーポレイション (7)
【出願人】(000170130)高木産業株式会社 (87)
【Fターム(参考)】