説明

組電池

【目的】 組電池を構成する単電池が異常発熱した場合でも、この熱により隣り合う単電池にまで不具合が生じることを防止できる組電池を提供すること。
【構成】 組電池100は、隣り合って配置された複数の単電池110,110,…を有する。この組電池100は、単電池110の通常使用時の温度域よりも高く、かつ、単電池110が熱破壊される破壊温度よりも低い融点に有する相変化物質135を有する。この相変化物質135は、互いに隣り合う単電池110,110,…同士の間に存在し、単電池110,110,…のうちの1つが、融点よりも高い温度まで発熱した場合に、その熱を吸収して溶融する形態に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合って配置された複数の単電池を備える組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、隣り合って配置された複数の単電池を備える組電池が知られている。この中には、単電池同士の間にスペーサを介在させたものもある。例えば特許文献1や特許文献2に、このような形態の組電池が開示されている。スペーサには、冷却路が設けられており、この冷却路に冷却風を流すことで、充放電により温度上昇した単電池を冷却できるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−126585号公報
【特許文献2】特開2007−22139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、組電池を構成する単電池の1つが、性能劣化等により過充電状態になるなどして異常発熱した場合には、この高熱がスペーサを介して隣り合う単電池にも伝熱され、この隣り合う単電池の温度も上昇する。この場合、この隣り合う単電池の温度も、充放電などの通常使用時の温度域を超えて、単電池が熱破壊する破壊温度に近づき、場合によっては、この単電池が熱破壊するおそれがある。また、同様に異常発熱して、異常発熱が次々と隣り合う単電池に伝わる事態となるおそれもある。
【0005】
前述の組電池では、スペーサに冷却路を設けて冷却風を流すことにより、単電池を冷却することが可能である。しかし、この冷却手法は、通常使用時に生じる熱を放熱させるものであるため、異常発熱した単電池を速やかに冷却するには不十分なことが多い。従って、冷却風による冷却機構がある場合でも、異常発熱した単電池の熱がスペーサを介して隣り合う単電池に伝熱し、隣り合う単電池にまで不具合を生じさせるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、組電池を構成する単電池が異常発熱した場合でも、この熱により隣り合う単電池にまで不具合が生じることを防止できる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段は、隣り合って配置された複数の単電池を備える組電池であって、隣り合って配置された複数の単電池を備える組電池であって、前記単電池の通常使用時の温度域よりも高く、かつ、前記単電池が熱破壊される破壊温度よりも低い融点を有する相変化物質を、互いに隣り合う前記単電池同士の間に、前記単電池のうちの1つが前記融点よりも高い温度まで発熱した場合に、その熱を吸収して溶融する形態に配置してなる組電池である。
【0008】
本発明の組電池では、互いに隣り合う単電池同士の間に、上述の温度範囲に融点を有する相変化物質(PCM:Phase Change Material)を配置している。これにより、組電池を構成する単電池の1つが異常発熱して、上記相変化物質の融点を超えた場合に、単電池間に配置された相変化物質がその熱を吸収して溶融する。相変化物質は、相変化(溶融)する際の潜熱分だけ、異常発熱した単電池の熱を吸収できるので、異常発熱した単電池に隣り合う単電池の温度上昇が抑えられ、この隣り合う単電池が破壊温度に達することを防止できる。或いは、少なくとも、この隣り合う単電池の温度上昇を遅らせて、その間に適正な処置を取る時間を生み出すことができる。よって、本発明によれば、組電池を構成する単電池が異常発熱した場合でも、この熱により隣り合う単電池にまで不具合が生じることを効果的に防止できる。
【0009】
なお、単電池の「通常使用時の温度域」とは、組電池(単電池)を所期の特性で使用し続け得る温度範囲を言う。例えば、一般的なリチウム二次電池では、−30℃〜60℃程度の温度範囲がこれに該当する。
また、単電池が熱破壊される「破壊温度」とは、組電池(単電池)が当該温度になった場合に、単電池に使用している各部材が、その温度特性上、溶融したり変質して不可逆的な変化を生じるために、その後に温度を下げても回復できず、電池としての機能を失ったり、或いは、熱暴走などの異常現象を生じる温度を言う。例えば、正極活物質としてニッケル酸リチウムを使用したリチウム二次電池では、150℃よりも高い温度がこれに該当する。
従って、一般的なリチウム二次電池においては、「相変化物質」の融点は、例えば60℃〜120℃が好ましい。
【0010】
また、「相変化物質」としては、1種類の相変化物質のみを用いてもよいし、複数種類の相変化物質を混合して用いてもよい。また、相変化物質に他の適当な物質を混合してもよい。他の物質を添加することで、融点等を調整することが可能である。なお、融点が60℃〜120℃の「相変化物質」の具体例としては、例えば表1に記載したものが挙げられる。
【0011】
【表1】

【0012】
また、「相変化物質」の配置形態としては、後述するように、互いに隣り合う単電池同士の間に、これらに接してスペーサを配置し、そのスペーサに相変化物質を含ませる形態が挙げられる。また、後述するように、互いに隣り合う単電池同士の間に、単電池を冷却する形態で冷却媒体が流れる流路を設け、この冷却媒体に相変化物質を含ませる形態が挙げられる。また、互いに隣り合う単電池同士の間隙に、直接、相変化物質を充填した形態が挙げられる。
【0013】
上記の組電池であって、互いに隣り合う前記単電池同士の間に、これらに接して配置されたスペーサを備え、前記スペーサは、前記相変化物質を含んでなる組電池とすると良い。
【0014】
本発明の組電池では、スペーサに相変化物質を含ませている。このため、相変化物質を単電池同士の間に容易に配置できる。
なお、「スペーサ」には、単電池を冷却する冷却媒体が流れる流路を設けることができる。このような形態とすることで、通常使用時に単電池を冷却できるだけでなく、単電池が異常発熱した場合もこれを冷却でき、相変化物質による冷却と冷却媒体により冷却の相乗効果により、異常発熱した単電池と隣り合う単電池にまで不具合が生じるのをより効果的に防止できる。
また、「スペーサ」を構成する基材としては、例えば、PP、PE、PET、ABS、PPSなどのエンジニアプラスチックの他、ガラスなどのセラミック、鉄、アルミニウムなどの金属などが挙げられる。
【0015】
スペーサに相変化物質を含ませる具体的な形態としては、例えば、後述するように、スペーサ本体部材に中空の収容部を設け、この収容部内に相変化物質を充填した形態とすることができる。また、後述するように、相変化物質をカプセルに封入して(カプセル化して)、これをスペーサ内に分散させた(スペーサの基材中に分散させた)形態が挙げられる。また、スペーサ本体部材を多孔質に形成し、その孔に相変化物質を保持させる形態が挙げられる。また、スペーサ本体部材の表面に、例えば適当な結着剤(樹脂結着剤など)と共に相変化物質を塗布するなどして、スペーサ本体部材の表面に相変化物質を固着させた形態が挙げられる。
【0016】
更に、上記の組電池であって、前記スペーサは、中空の収容部を有するスペーサ本体部材と、前記収容部に充填された前記相変化物質と、を有する組電池とすると良い。
【0017】
本発明の組電池では、スペーサ本体部材に収容部を設け、この収容部に相変化物質を充填している。このようにすれば、相変化物質を内包するスペーサを容易に形成できるので、相変化物質を含むスペーサを安価にすることができる。従って、組電池を安価にすることができる。
【0018】
更に、前記の組電池であって、前記相変化物質は、カプセルに封入された状態で、前記スペーサ内に分散されてなる組電池とすると良い。
【0019】
本発明の組電池では、相変化物質をカプセル化し、これをスペーサ内に分散している。このようにすれば、相変化物質を内包するスペーサを容易に形成できるので、相変化物質を含むスペーサを安価にすることができる。従って、組電池を安価にすることができる。また、相変化物質をスペーサ内に均一に分散することができるので、異常発熱した単電池の熱をより確実に吸収できる。
【0020】
更に、前記の組電池であって、互いに隣り合う前記単電池同士の間に、前記単電池を冷却する形態で冷却媒体が流れる流路を備え、前記冷却媒体は、前記相変化物質を含んでなる組電池とすると良い。
【0021】
本発明の組電池では、単電池同士の間に、冷却媒体が流れる流路を設け、この冷却媒体に相変化物質を含ませている。このようにすることで、相変化物質を単電池同士の間に容易に配置できる。また、相変化物質を含む冷却媒体を単電池間に流すため、単電池が異常発熱した場合に、これをより速やかに冷却できる。
なお、冷却媒体に相変化物質を含ませる具体的な形態としては、例えば、相変化物質をカプセル化して、これを冷却媒体に分散した形態や、相変化物質を直接、冷却媒体中に分散した形態などが挙げられる。
【0022】
更に、上記のいずれかに記載の組電池であって、前記相変化物質は、エリスリトールを含む組電池とすると良い。
【0023】
エリスリトールは、融点が118℃であるため、相変化物質として特に適している。また、エリスリトールは潜熱量が340kJ/kgと大きいので、異常発熱した単電池の熱の伝熱速度を遅らせる効果が大きい。また、エリスリトールは安全性が高い物質であるので、環境問題などの点からみても好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1及び図2に、本実施形態1に係る組電池100の概略を示す。また、図3に、組電池100を構成する単電池110を示す。また、図4及び図5に、組電池100を構成するスペーサ130を示す。この組電池100は、ハイブリットカーや電気自動車に搭載されて、その動力源として利用される電池である。
【0025】
組電池100は、図1に示すように、複数の単電池110,110,…と、複数のスペーサ130,130,…と、2つのエンドプレート150,150と、4本の拘束バント155,155,…とを有する。
このうち、単電池110は、リチウム二次電池であり、直方体状をなす角型電池である。単電池110は、電池ケース111、電池ケース111内に収容された図示しない電極体、電池ケース111にそれぞれ固設された正極端子113及び負極端子115等から構成されている(図3参照)。なお、図1及び図2では、正極端子113及び負極端子115を省略してある。
【0026】
電池ケース111は、金属により形成されて直方体状をなす。この電池ケース111は、ケース上壁部111aと、これに対向するケース下壁部111bと、これらの間を結ぶ4つのケース側壁部111c,111d,111e,111fとを有する。ケース上壁部111aの両端近傍の所定位置には、正極端子113と負極端子115がそれぞれ固設されている。正極端子113は、電池内部において図示しない電極体の正極集電体と電気的に接続する一方、ケース上壁部111aから上方に突出しており、隣り合う単電池110との電気的接続に用いられている。また、負極端子115は、電池内部において図示しない電極体の負極集電体と電気的に接続する一方、ケース上壁部111aから上方に突出しており、隣り合う単電池110との電気的接続に用いられている。
【0027】
各単電池110,110,…は、後述するスペーサ130,130,…を介して隣り合って配置されている(図1及び図2参照)。具体的には、一の単電池110の最も面積の大きいケース側壁部111dと、これと隣り合う他の単電池110の最も面積の大きいケース側壁部110cとが、スペーサ130を介して互いに対向した状態で、各単電池110,110,…が一列に積層されている。また、これらの単電池110,110,…の正極端子113及び負極端子115は、図示しないバスバーにより、互いに電気的に直列に接続されている。
【0028】
この単電池110は、通常使用時の温度域、即ち、組電池100(単電池110)を所期の特性で使用し続け得る温度範囲が、−30℃〜60℃程度である。一方、この単電池110が熱破壊される破壊温度、即ち、組電池100(単電池110)が当該温度になった場合に、単電池110に使用している各部材が、その温度特性上、溶融したり変質して不可逆的な変化を生じるために、その後に温度を下げても回復できず、電池としての機能を失ったり、或いは、熱暴走などの異常現象を生じる温度は、150℃程度である。
【0029】
互いに隣り合う単電池110,110,…同士の間には、単電池110,110,…に接するようにして、それぞれスペーサ130,130,…が配置されている。このスペーサ130は、スペーサ上面130aと、これに対向するスペーサ下面130bと、これらの間を結ぶ4つのスペーサ側面130c,130d,130e,130fとを有する直方体状をなす(図4及び図5参照)。
このスペーサ130のスペーサ側面130dには、3本の流路131,131,131が形成されている。具体的には、各流路131,131,131は、スペーサの130の長手方向(図4中、左右方向。図5中、紙面に直交する方向)に沿って等間隔に並んで形成され、長手方向に直交する断面が矩形状をなす凹溝である。
【0030】
このスペーサ130は、PP(融点157℃)を基材133として一体的に形成され、基材133中には、カプセルに封入された(カプセル化された)相変化物質135が、スペーサ130内全体に均一に分散されている。具体的には、本実施形態1では、相変化物質135として、結晶状のエリスリトールが用いられている。エリスリトールの融点は、118℃である。前述したように、単電池110の通常使用時の温度域は、−30℃〜60℃程度であり、一方、単電池110が熱破壊される破壊温度は、150℃程度である。従って、この相変化物質135の融点(118℃)は、単電池110の通常使用時の温度域よりも高く、単電池110が破壊される破壊温度よりも低い。
【0031】
なお、相変化物質135のカプセル化は、一般的な手法により行えばよい。具体的には、反応開始剤を含む相変化物質135を非水系基材中に分散させた後、シランカップリング剤、フッ素系モノマー、無機粒子への吸着性を有する反応性乳化剤等のカプセル化成分を混合し、攪拌して放置する。そうすると、相変化物質135の界面にカプセル化成分が吸着し、相変化物質135中の反応開始剤が反応して、相変化物質135の表面がコーティングされてカプセルとなる。
また、スペーサ130は、カプセル化された相変化物質135を基材133中に均一に分散して射出成形することにより形成できる。
【0032】
外部から組電池100に導入される冷却風(冷却媒体)RFは、図1に矢印で示す方向に流れ、各スペーサ130,130,…の各流路131,131,…内を流通する。各流路131,131,…を流れる冷却風RFは、流路131,131,…に面する各単電池110,110,…のケース側面部111c,111c,…に接して、各単電池110,110,…を冷却する。そして、各単電池110,110,…との熱交換によって温度上昇した冷却風RFは、組電池100の外部へ排出される。この冷却により、通常の充放電により単電池110,110,…に生じる熱を放熱できる。
【0033】
一列に列置された単電池110,110,…及びスペーサ130,130,…群の両側には、それぞれエンドプレート150,150が配置されている(図1参照)。このエンドプレート150は、樹脂により形成されて直方体状をなす。エンドプレート150,150同士は、4本の拘束バンド155,155,…によって互いに結合されている。これにより、単電池110,110,…、スペーサ130,130,…及びエンドプレート150,150が互いに固定されている。
【0034】
以上で説明した本実施形態1の組電池100では、これを構成する単電池110,110,…の1つが、性能劣化等により過充電状態になるなどして異常発熱し、相変化物質135の融点を超えた場合に、単電池110,110間に配置されたスペーサ130内の相変化物質135がその熱を吸収して溶融する。相変化物質135は、相変化(溶融)する際の潜熱分だけ、異常発熱した単電池110の熱を吸収できるので、異常発熱した単電池110に隣り合う単電池110の温度上昇が抑えられ、この隣り合う単電池110が破壊温度に達することを防止できる。或いは、少なくとも、この隣り合う単電池110の温度上昇を遅らせて、その間に適正な処置を取る時間を生み出すことができる。よって、この組電池100では、これを構成する単電池110が異常発熱して、相変化物質135の融点を超えた場合でも、この熱により隣り合う単電池110にまで不具合が生じることを効果的に防止できる。
【0035】
また、本実施形態1の組電池100では、スペーサ130,130,…に相変化物質135を含ませ、このスペーサ130,130,…を隣り合う単電池110,110,…同士の間に配置している。このため、相変化物質135を単電池110,110,…同士の間に容易に配置できる。更に、相変化物質135は、カプセル化して、スペーサ130内に分散している。このため、相変化物質135を内包するスペーサ130が容易に形成できるので、相変化物質135を含むスペーサ130を安価にすることができる。従って、組電池100を安価にすることができる。また、相変化物質135をスペーサ130内全体に均一に分散できるので、単電池110が異常発熱した場合に、その熱をより確実に吸収できる。
【0036】
また、本実施形態1の組電池100では、相変化物質135がエリスリトールである。エリスリトールは、融点が118℃であるため、単電池110が異常発熱した場合に、隣り合う単電池110に不具合が生じるのを防止するのに、特に適している。また、エリスリトールは潜熱量が340kJ/kgと大きいので、異常発熱した単電池110の熱の伝熱速度を遅らせる効果が大きい。また、エリスリトールは安全性が高い物質であるので、環境問題などの点からも好適である。
【0037】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。図6に、本実施形態2に係る組電池200の概略を示す。また、図7に、この組電池200を構成するスペーサ230を示す。本実施形態2の組電池200は、スペーサ230の形態が上記実施形態1の組電池100のスペーサ130と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0038】
本実施形態2の組電池200は、上記実施形態1と同様に、複数の単電池110,110,…と、複数のスペーサ230,230,…と、2つのエンドプレート150,150と、4本の拘束バント155,155,…とを有する。
このうち、スペーサ230は、スペーサ上面230aと、これに対向するスペーサ下面230bと、これらの間を結ぶ4つのスペーサ側面230c,230d等とを有する直方体状をなす。このスペーサ230のスペーサ側面230dには、2本の流路231,231が形成されている。具体的には、各流路231,231は、スペーサ230の長手方向(図6及び図7中、紙面に直交する方向)に沿って等間隔に並んで形成され、長手方向に直交する方向の断面が矩形状をなす凹溝である。
【0039】
外部からこの組電池200に導入される冷却風(冷却媒体)RFは、各スペーサ230,230,…の各流路231,231,…内を流通する(図1参照)。この冷却風RFは、流路231,231,…に面する各単電池110,110,…のケース側面部111c,111c,…に接して、各単電池110,110,…を冷却する。そして、各単電池110,110,…との熱交換によって温度上昇した冷却風RFは、組電池200の外部へ排出される。この冷却により、通常の充放電により単電池110,110,…に生じる熱を放熱できる。
【0040】
また、スペーサ230は、PPを基材233として形成されたスペーサ本体部材232を有する。このスペーサ本体部材232の内部には、5つの中空の収容部237,237,…が設けられている。具体的には、各収容部237,237,…は、スペーサ230の長手方向(図6及び図7中、紙面に直交する方向)に沿って上下に並んで形成され、長手方向に直交する方向の断面が矩形状をなす。そして、各収容部237,237,…には、それぞれ相変化物質235が充填されている。具体的には、相変化物質235として、エリスリトールが用いられている。
【0041】
この組電池200では、これを構成する単電池110,110,…の1つが異常発熱して、相変化物質235の融点を超えた場合に、単電池110,110間に配置されたスペーサ230内の相変化物質235がその熱を吸収して溶融する。相変化物質235は、相変化する際の潜熱分だけ、異常発熱した単電池110の熱を吸収できるので、異常発熱した単電池110に隣り合う単電池110の温度上昇が抑えられ、この隣り合う単電池110が破壊温度に達することを防止できる。或いは、少なくとも、この隣り合う単電池110の温度上昇を遅らせて、その間に適正な処置を取る時間を生み出すことができる。よって、この組電池200では、これを構成する単電池110が異常発熱して、相変化物質235の融点を超えた場合でも、この熱により隣り合う単電池110にまで不具合が生じることを防止できる。
【0042】
また、この組電池200では、スペーサ230,230,…に相変化物質235を含ませ、このスペーサ230,230,…を隣り合う単電池110,110,…同士の間に配置している。このため、相変化物質235を単電池110,110,…同士の間に容易に配置できる。更に、本実施形態2では、スペーサ本体部材232に収容部235,235,…を設け、この収容部235,235,…に相変化物質235を充填している。このようにすることで、相変化物質235を内包するスペーサ230を容易に形成できるので、相変化物質235を含むスペーサ230を安価にすることができる。従って、組電池200を安価にすることができる。その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0043】
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。図8に、本実施形態3に係る組電池300の概略を示す。また、図9に、この組電池300を構成するスペーサ330を示す。本実施形態3の組電池300は、スペーサ330の形態が上記実施形態1,2に係る組電池100,200のスペーサ130,230と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1等と同様であるので、上記実施形態1等と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0044】
本実施形態3の組電池300は、上記実施形態1等と同様に、複数の単電池110,110,…と、複数のスペーサ330,330,…と、2つのエンドプレート150,150と、4本の拘束バント155,155,…とを有する。
このうち、スペーサ330は、その長手方向(図8及び図9中、紙面に直交する方向)に直交する方向の断面が団子状の形態をなす。このような団子状とすることで、このスペーサ230の両側には、長手方向に沿って延びる片側4本(合計8本)の流路331,331,…が形成されている。
【0045】
外部からこの組電池300に導入される冷却風(冷却媒体)RFは、各スペーサ330,330,…の各流路331,331,…内を流通する(図1参照)。この冷却風RFは、流路331,331,…に面する各単電池110,110,…のケース側面部111c,111c,…に接して、各単電池110,110,…を冷却する。そして、各単電池110,110,…との熱交換によって温度上昇した冷却風RFは、組電池300の外部へ排出される。この冷却により、通常の充放電により単電池110,110,…に生じる熱を放熱できる。
【0046】
また、このスペーサ330は、PPを基材333として形成されたスペーサ本体部材332を有する。このスペーサ本体部材332の内部には、5つの収容部337,337,…が設けられている。具体的には、各収容部337,337,…は、スペーサ330の長手方向に沿って上下に並んで形成され、長手方向に直交する方向の断面が楕円状をなす。そして、各収容部337,337,…には、相変化物質335が充填されている。具体的には、相変化物質335として、エリスリトールが用いられている。
【0047】
この組電池300では、これを構成する単電池110,110,…の1つが異常発熱して、相変化物質335の融点を超えた場合に、単電池110,110間に配置されたスペーサ330内の相変化物質335がその熱を吸収して溶融する。相変化物質335は、相変化する際の潜熱分だけ、異常発熱した単電池110の熱を吸収できるので、異常発熱した単電池110に隣り合う単電池110の温度上昇が抑えられ、この隣り合う単電池110が破壊温度に達することを防止できる。或いは、少なくとも、この隣り合う単電池110の温度上昇を遅らせて、その間に適正な処置を取る時間を生み出すことができる。よって、この組電池300では、これを構成する単電池110が異常発熱して、相変化物質335の融点を超えた場合でも、この熱により隣り合う単電池110にまで不具合が生じることを効果的に防止できる。
【0048】
また、この組電池300では、スペーサ330,330,…に相変化物質335を含ませ、このスペーサ330,330,…を隣り合う単電池110,110,…同士の間に配置している。このため、相変化物質335を単電池110,110,…同士の間に容易に配置できる。更に、本実施形態3では、スペーサ本体部材332に収容部335,335,…を設け、この収容部335,335,…に相変化物質335を充填している。このようにすることで、相変化物質335を内包するスペーサ330を容易に形成できるので、相変化物質335を含むスペーサ330を安価にすることができる。従って、組電池300を安価にすることができる。その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0049】
(実施形態4)
次いで、第4の実施の形態について説明する。図10に、本実施形態4に係る組電池400の概略を示す。また、図11に、この組電池400を構成するスペーサ430を示す。本実施形態4の組電池400は、スペーサ430の内部の形態と、このスペーサ430の流路431を流通させる冷却媒体REが、上記実施形態1〜3の組電池100,200,300と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1等と同様であるので、上記実施形態1等と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0050】
本実施形態4の組電池400は、上記実施形態1等と同様に、複数の単電池110,110,…と、複数のスペーサ430,430,…と、2つのエンドプレート150,150と、4本の拘束バント155,155,…とを有する。
このうち、スペーサ430は、上記実施形態1で示したスペーサ130と外観が同じである。即ち、このスペーサ430は、スペーサ上面430aと、これに対向するスペーサ下面430bと、これらの間を結ぶ4つのスペーサ側面430c,430d等とを有する直方体状をなす。そして、スペーサ側面430dには、3本の流路431,431,431が形成されている。
このスペーサ430は、PPを基材433として一体的に形成されている。上記実施形態1〜3のスペーサ130,230,330には、その内部に相変化物質135,235,335が含まれていたが、このスペーサ430の内部には、相変化物質は含まれておらず、スペーサ430全体が基材433のみから形成されている。
【0051】
本実施形態4では、組電池400に流通させる冷却媒体REが、冷却風ではなく、冷却液である。この冷却液REは、図1に矢印で示す方向に流れ、各スペーサ430,430,…の各流路431,431,…内を流通する。各流路431,431,…を流れる冷却液REは、流路431,431,…に面する各単電池110,110,…のケース側面部111c,111c,…に接して、各単電池110,110,…を冷却する。この冷却液REは、油中に相変化物質435が分散されたものである。具体的には、相変化物質435として、エリスリトールが用いられている。
【0052】
この組電池400は、これを構成する単電池110,110,…の1つが異常発熱して、相変化物質435の融点を超えた場合に、単電池110,110間に配置されたスペーサ430,430,…の流路431,431,…を流れる冷却液RE中の相変化物質435が、その熱を吸収して溶融する。相変化物質435は、相変化する際の潜熱分だけ、異常発熱した単電池110の熱を吸収できるので、異常発熱した単電池110に隣り合う単電池110の温度上昇が抑えられ、この隣り合う単電池110が破壊温度に達することを防止できる。或いは、少なくとも、この隣り合う単電池110の温度上昇を遅らせて、その間に適正な処置を取る時間を生み出すことができる。よって、この組電池400では、これを構成する単電池110が異常発熱して、相変化物質の融点を超えた場合でも、この熱により隣り合う単電池110にまで不具合が生じることを効果的に防止できる。
【0053】
また、本実施形態4では、単電池110,110,…同士の間に、冷却液REが流れる流路431,431,…を設け、この冷却液RE中に相変化物質435を含ませている。このようにすることで、相変化物質435を単電池110,110,…同士の間に容易に配置できる。また、相変化物質435を含む冷却媒体REを単電池110,110,…間に流すため、単電池110が異常発熱した場合に、これをより速やかに冷却できる。
【0054】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜4に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態1〜4では、単電池110として、リチウム二次電池を用いているが、例えばニッケル水素二次電池など、他の種類の単電池を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態1に係る組電池の概略を示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係る組電池のうち、複数の単電池がスペーサを介して積層された様子を示す説明図である。
【図3】実施形態1に係る組電池を構成する単電池を示す斜視図である。
【図4】実施形態1に係る組電池を構成するスペーサを示す斜視図である。
【図5】実施形態1に係る組電池を構成するスペーサの長手方向に直交する断面図である。
【図6】実施形態2に係る組電池のうち、複数の単電池がスペーサを介して積層された様子を示す説明図である。
【図7】実施形態2に係る組電池を構成するスペーサの長手方向に直交する断面図である。
【図8】実施形態3に係る組電池のうち、複数の単電池がスペーサを介して積層された様子を示す説明図である。
【図9】実施形態3に係る組電池を構成するスペーサの長手方向に直交する断面図である。
【図10】実施形態4に係る組電池のうち、複数の単電池がスペーサを介して積層された様子を示す説明図である。
【図11】実施形態4に係る組電池を構成するスペーサの長手方向に直交する断面図である。
【符号の説明】
【0056】
100,200,300,400 組電池
110 単電池
130,230,330,430 スペーサ
130a,230a,430a スペーサ上面
130b,230b,430b スペーサ下面
130c,130d,130e,130f,230c,230d,430c,430d スペーサ側面
131,231,331,431 流路
133,233,333,433 基材
135,235,335,435 相変化物質
232,332 スペーサ本体部材
237,337 収容部
RF 冷却風(冷却媒体)
RE 冷却液(冷却媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合って配置された複数の単電池を備える組電池であって、
前記単電池の通常使用時の温度域よりも高く、かつ、前記単電池が熱破壊される破壊温度よりも低い融点を有する相変化物質を、
互いに隣り合う前記単電池同士の間に、前記単電池のうちの1つが前記融点よりも高い温度まで発熱した場合に、その熱を吸収して溶融する形態に配置してなる
組電池。
【請求項2】
請求項1に記載の組電池であって、
互いに隣り合う前記単電池同士の間に、これらに接して配置されたスペーサを備え、
前記スペーサは、前記相変化物質を含んでなる
組電池。
【請求項3】
請求項2に記載の組電池であって、
前記スペーサは、
中空の収容部を有するスペーサ本体部材と、
前記収容部に充填された前記相変化物質と、を有する
組電池。
【請求項4】
請求項2に記載の組電池であって、
前記相変化物質は、カプセルに封入された状態で、前記スペーサ内に分散されてなる
組電池。
【請求項5】
請求項1に記載の組電池であって、
互いに隣り合う前記単電池同士の間に、前記単電池を冷却する形態で冷却媒体が流れる流路を備え、
前記冷却媒体は、前記相変化物質を含んでなる
組電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の組電池であって、
前記相変化物質は、エリスリトールを含む
組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−73406(P2010−73406A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237773(P2008−237773)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】