説明

組電池

【課題】簡単な構成で各電池セルの温度差を小さくして長寿命化を図った組電池を提供すること。
【解決手段】扁平状の電池セル50、50・・を複数積層して形成された組電池42において、電池セル50、50間に、それぞれ電池セル50に接触して当該電池セル50で発生した熱が伝達されるスペーサ51A〜51Cを配置し、これらスペーサ51A〜51Cと電池セル50、50とを略同一の大きさとするとともに、これらスペーサ51A〜51Cのうち、熱が集中する積層方向の略中央部に配置されるスペーサ51Cを端部のスペーサ51Aに比べて厚く形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを積層した組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機を駆動源とした電動車両には、電動機駆動用の高電圧のバッテリー装置が搭載されている。この種のバッテリー装置では、複数の電池セルを積層して形成された組電池を備え、各電池セル間に金属製のスペーサを挟むとともに、このスペーサの側面にペルチェ素子を配置して当該電池セルを冷却するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−47371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の電池セルを積層した組電池では、例えば、略中央部に位置する電池セルほど放熱がされにくく、熱が集中するため、積層方向の端部に位置する電池セルよりも温度が高くなる傾向にある。各電池セル間に温度差が生じると、電池セルの電気特性の変化により当該電池セルの残容量に差が生じ、特定の電池セルが過充電または過放電されやすくなるため、当該電池セルが劣化して組電池の寿命が短縮することが想定される。
【0005】
従来の構成では、各電池セルの温度差を抑制するために、各電池セル間に挟まれた金属製のスペーサの側面にペルチェ素子を配置していたため、装置構成が煩雑になり組電池の大型化、高コスト化を招くといった問題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、簡単な構成で各電池セルの温度差を小さくして長寿命化を図った組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、扁平状の電池セルを複数積層して形成された組電池において、前記電池セル間に、それぞれ電池セルに面接触して当該電池セルで発生した熱が伝達されるスペーサを配置し、これらスペーサと前記電池セルとを略同一の大きさとするとともに、これらスペーサのうち、前記熱が集中する部分に配置されるスペーサを他のスペーサに比べて厚く形成したことを特徴とする。
【0008】
この構成において、前記熱が集中する部分は積層方向の略中央部であり、この略中央部に配置されたスペーサを、当該積層方向の端部に配置されるスペーサよりも厚く形成しても良い。また、各スペーサの厚みは、前記積層方向の略中央部から端部に向けて段階的に薄く形成されていても良い。
【0009】
また、最も厚いスペーサの厚みを最も薄いスペーサの厚みの2倍以上とするのが良い。また、前記スペーサは前記電池セルよりも熱伝導性の低い材質で形成されても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池セル間に、それぞれ電池セルに面接触して当該電池セルで発生した熱が伝達されるスペーサを配置し、これらスペーサと前記電池セルとを略同一の大きさとしたため、電池セル同士が直接接触することを防止できるとともに、電池セルと熱交換する接触面を増大させることができ、当該電池セルから発せられた熱を効果的に吸収することができる。さらに、これらスペーサのうち、熱が集中する部分に配置されるスペーサを他のスペーサに比べて厚く形成したため、この厚く形成したスペーサにより多くの熱が吸収されることにより、当該スペーサに面接触する電池セルの温度上昇が抑えられるため、簡単な構成で各電池セル間の温度差を抑制することができ、ひいては、組電池の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態にかかるバッテリー装置を搭載した電動車両の一例を示す右側面図である。
【図2】バッテリー装置の外観斜視図である。
【図3】組電池の外観斜視図である。
【図4】バッテリー装置を正面側から見た概略側面図である。
【図5】本構成の組電池にかかる電池セル間の温度差を従来のものと比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかるバッテリー装置40を搭載した電動車両1の一例を示す右側面図である。電動車両1は、図1に示すように、前輪2、及び後輪3を備えた自動二輪車である。電動車両1は、メインフレーム4、及びスイングアーム5が主たる骨組みとして構成されている。
【0014】
メインフレーム4は、前端部が上方に向かって屈曲しており、その前端部で前輪2及びハンドル6を操舵可能に支持している。メインフレーム4の後端側であって、電動車両1の前後方向の略中央部には、使用者が腰を掛けるシート7と、バッテリー収容部8とが備えられている。バッテリー収容部8は、シート7の下方に設けられ、内部にバッテリー装置40が収容されている。シート7は、バッテリー収容部8の蓋の役目も果たし、バッテリー収容部8に対して開閉可能にして取り付けられている。メインフレーム4のシート7の後方であって、後輪3の上方の箇所には、荷物台9が備えられている。
【0015】
スイングアーム5は、メインフレーム4後部の、シート7及びバッテリー収容部8の箇所の下方から後方に向かって延びている。後輪3は、図1に示すように、スイングアーム5の後端に支持されている。なお、スイングアーム5は、後輪3の左側のみに設けられ、片持ち状態で後輪3を支持している。また、後輪3は、駆動輪であり、スイングアーム5との間にモータ駆動装置20を備えている。スイングアーム5は、その後端がモータ駆動装置20の前端部に接続され、モータ駆動装置20を介して後輪3を支持する支持部材である。モータ駆動装置20の左側には、サスペンションケース10が備えられている。サスペンションケース10から上方の荷物台9に向かって、後輪3のサスペンションユニット11が延びている。
【0016】
次に、バッテリー装置40について説明する。
【0017】
図2は、バッテリー装置40の外観斜視図であり、図3は、バッテリー装置40を構成する組電池の外観斜視図である。なお、図2では、外装ケースの前面パネルを開放した状態を示す。
【0018】
バッテリー装置40は、図2に示すように、外装ケース41と、この外装ケース41内に収納される組電池42とを備える。外装ケース41は、組電池42を水や塵挨から保護するものであり、前面側に開口41Aが形成された角箱状のケース本体45と、この開口41Aに配置される前面パネル(図示略)とを備える。この前面パネルを取り外すと、開口41Aを通じて組電池42が露出し、当該開口41Aを通じて、組電池42を外部に引く出すことができる。本実施形態では、ケース本体45の内側の高さは、組電池42の高さと略同一に形成され、組電池42の底面及び天面がケース本体45の底板45A及び天板45Bの内面にそれぞれ接触している。また、ケース本体45の内幅は、組電池42の横幅よりも広く形成され、この組電池42とケース本体45の各側板45C,45Dとの間には、空気が滞留する空間43が形成される。このため、組電池42から発生した熱は、ケース本体45と直接接触している底板45A及び天板45Bから放出されるとともに、上記空間43内の空気を介してケース本体45の各側板45C,45Dに伝達されて放出される。
【0019】
組電池42は、図3に示すように、鉛直方向に積層された複数(本実施形態では7つ)の電池セル50と、これら電池セル50,50間にそれぞれ配置されるスペーサ51と、当該積層された電池セル50の上下端に配置される樹脂性のエンドプレート52,52と、これらエンドプレート52,52間に架け渡されて当該電池セル50を一体化する複数の締結バンド53とを備える。
【0020】
また、図示は省略したが、組電池42は、外装ケース41の上端部に制御回路を備え、この制御回路によって各電池セル50の電圧、電流、温度などが測定され、電池容量、及び、必要充放電量等が決定され、充放電等の制御が行われる。
【0021】
電池セル50は、その幅よりも薄い扁平状の角型電池であり、図示は省略したが、有底筒状に形成された外装缶である角形ケース55の開口部分から巻き電極を挿入し、電解液を注入した後、封口板で開口部分を閉塞して、レーザー溶接等により封止して形成されている。角形ケース55は、熱伝導性に優れた金属で構成される。封口板には、安全弁が設けられ、電池セル50が異常な状態で充放電されると安全弁が開弁して、電解液が排出されるように構成されている。
【0022】
また、電池セル50は、角形ケース55の一側面55Aに正極タブ50A及び負極タブ50Bがお互いに離間して設けられている。これら正極タブ50A及び負極タブ50Bは、角形ケース55の左右対称となる位置に設けられ、電池セル50を交互に裏返して積層したときに、正極タブ50Aと負極タブ50Bとが上下に重なり合い、金属製のバスバー54を用いて複数の電池セル50を容易に直列に接続することができる。
【0023】
この電池セル50は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の二次電池が利用できる。特に、リチウムイオン電池は、単位体積当たりの出力が高く、小型化、高出力化に適しているため、好適に用いることができる。
【0024】
エンドプレート52は、電池セル50と略同一の大きさに形成された板材であり、各電池セル50を狭持して一体化するため、ある程度の剛性を有する厚みに形成される。また、エンドプレート52は、電池セル50で発生した熱を外装ケース41に伝達する機能を有するため、熱伝導率が高い材料で形成されることが望ましい。
【0025】
ところで、複数の電池セル50を積層した組電池42では、積層方向の略中央部に位置する電池セル50ほど放熱がされにくく、熱が集中するため、積層方向の端部に位置する電池セル50よりも温度が高くなる傾向にある。各電池セル間に温度差が生じると、電池セルの電気特性の変化により当該電池セルの残容量に差が生じ、特定の電池セルが過充電または過放電されやすくなるため、当該電池セルが劣化して組電池の寿命が短縮することが想定される。
【0026】
このため、本構成では、電池セル50、50間に配置されるスペーサ51の厚みを変更することにより電池セル50間の温度差を抑制している。スペーサ51は、電池セル50,50間に配置され、充放電時に、一の電池セル50から発せられた熱が隣接する電池セル50に伝達されるのを抑えるとともに、当該熱をスペーサ51内に吸収し、当該電池セル50の温度上昇を抑える機能を有する。
【0027】
図4は、バッテリー装置を正面側から見た概略側面図である。
【0028】
本実施形態では、組電池42は、厚みの異なる3種類のスペーサ51A、51B、51Cを備え、温度が高くなる傾向にある積層方向の略中央部に、最も厚いスペーサ51C、51Cを配置し、上記略中央部に比べて温度が低くなる傾向にある積層方向の端部に、最も薄いスペーサ51A、51Aを配置し、その中間に中間の厚みのスペーサ51B,51Bを配置している。これらスペーサ51A〜51Cは、電池セル50と略同じ大きさに形成されるとともに、当該電池セル50よりも熱伝導性が低い(または断熱性を有する)材料で形成されるのが望ましく、本実施形態ではクロロプレンゴムが用いられている。このクロロプレンゴムは、耐熱性、難燃性に優れた材料であるため、例えば、ある電池セル50に内部短絡等の異常が生じたとしても、この異常に伴う発熱が隣接する電池セル50に伝達されることが防止される。
【0029】
各スペーサ51A〜51Cは、電池セル50に比べて極めて薄いシート状に形成されたものであり、スペーサ51Aの厚みL1が0.3mm、スペーサ51Bの厚みL2が0.5mm、スペーサ51Cの厚みL3が0.7mmに設定され、積層方向の略中央部から端部に向けて段階的に薄くしている。スペーサの厚みを厚くすることにより、このスペーサの体積が増大するため、当該スペーサの熱容量が増大して吸収できる熱量を増やすことができる。
【0030】
また、本実施形態では、組電池42の高さは外装ケース41の内側の高さの規制を受けるため、組電池42の高さは従来の組電池と同じ高さに設定されている。この場合、組電池42に使用される電池セル50、エンドプレート52は、従来と同じものを使用しているため、スペーサ51A〜51Cの全体の厚みは、従来のものと同じに設定されている。なお、従来の構成では、スペーサの厚みは、すべて上記したスペーサ51Bと同じ0.5mmに設定されていた。
【0031】
図5は、組電池42にかかる電池セル50間の温度差を従来のものと比較したグラフである。
【0032】
従来の構成では、スペーサとして上記した厚みが0.5mmのものを使用し、他の構成は本実施形態にかかる電池セル50、エンドプレート52、締結バンド53を使用している。この図5では、組電池を構成する1〜7までの電池セル50の充放電時の温度を計測し、これら各電池セル50の最高温度と最低温度との温度差を比較した。この図5において、下方に位置する7番目の電池セル50の温度が低くなっているのは、バッテリー装置40が載置される載置台60(図4)に熱が放出されるためである。
【0033】
この図5に示す結果によると、従来の構成にかかる組電池では、温度差T1が3.36℃であったのに対し、本実施形態にかかる組電池42では、温度差T2が2.87℃となり、温度差が約0.5℃小さくなっている。
【0034】
この結果によれば、充放電時における組電池42の温度差を抑制できるため、この組電池42の長寿命化を図ることができる。
【0035】
また、本実施形態では、積層方向の端部に配置されるスペーサ51Aの厚みL1を従来のものよりも薄くしているため、図5に示すように、1番目の電池セル及び7番目の電池セルの温度は若干上昇しているが、これにより組電池全体としての温度差は抑えられ、各電池セルの温度分布をより直線に近づけることができる。
【0036】
以上、本実施形態によれば、扁平状の電池セル50を複数積層して形成された組電池42において、電池セル50、50間に、それぞれ電池セル50に面接触して当該電池セル50で発生した熱が伝達されるスペーサ51A〜51Cを配置し、これらスペーサ51A〜51Cと電池セル50,50とを略同一の大きさとしたため、電池セル50,50同士が直接接触することを防止できるとともに、電池セル50と熱交換する接触面を増大させることができ、当該電池セル50から発せられた熱を効果的に吸収することができる。
【0037】
さらに、本実施形態によれば、これらスペーサ51A〜51Cのうち、熱が集中する積層方向の略中央部に配置されるスペーサ51Cを積層方向の端部に配置されるスペーサ51Aに比べて厚く形成したため、この厚く形成されたスペーサ51Cの熱容量を増大させることができる。このため、上記厚く形成したスペーサ51Cにより多くの熱が吸収されることにより、当該スペーサ51Cに面接触する電池セル50の温度上昇が抑えられるため、簡単な構成で各電池セル50,50間の温度差を抑制することができ、ひいては、組電池42の長寿命化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、各スペーサ51A,51B,51Cの厚みL1、L2、L3は、積層方向の略中央部から端部に向けて段階的に薄く形成されているため、隣接する電池セル50間の温度差を小さくすることができ、各電池セル50の温度分布をより直線に近づけることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、最も厚いスペーサ51Cの厚みL3を最も薄いスペーサ51Aの厚みL1の2倍以上としたため、最も厚いスペーサ51Cが配置される略中央部の電池セル50の温度を低下させることができ、各電池セル50,50間の温度差を抑制できる。
【0040】
また、本実施形態によれば、スペーサ51A〜51Cは電池セル50よりも熱伝導性の低い材質で形成されているため、電池セル50から発せられた熱を隣接する電池セル50に伝達しにくくすることができ、隣接する電池セル50に基づく温度上昇を抑制できる。
【0041】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態では、熱か集中する部分として積層方向の略中央部を説明したが、例えば、外装ケース41の天板45B上に冷却ユニット(不図示)が配置された構成では、組電池の積層方向の上端部ほど冷却され、中央部よりも下端部側に移動した部分に熱が集中する。このため、他の冷却手段を設けた場合には、それに伴って、スペーサの厚みを厚くする部分は適宜調整される。
【0042】
また、本実施形態では、スペーサ51の厚みを積層方向の略中央部から端部に向けて段階的に薄くしたものとして説明したが、これに限るものではなく、積層方向の略中央部のみを厚く形成し、その他を均一の厚みとしても良い。
【0043】
また、本実施形態では、電池セル50を7段に積層した構成について説明したが、これに限るものでないことは明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 電動車両
8 バッテリー収容部
40 バッテリー装置
41 外装ケース
41A 開口
42 組電池
43 空間
45 ケース本体
45A 底板
45B 天板
45C、45D 側板
50 電池セル
50A 正極タブ
50B 負極タブ
51、51A、51B、51C スペーサ
52 エンドプレート
53 締結バンド
54 バスバー
55 角形ケース
55A 一側面
60 載置台
T2 温度差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平状の電池セルを複数積層して形成された組電池において、
前記電池セル間に、それぞれ電池セルに面接触して当該電池セルで発生した熱が伝達されるスペーサを配置し、これらスペーサと前記電池セルとを略同一の大きさとするとともに、これらスペーサのうち、前記熱が集中する部分に配置されるスペーサを他のスペーサに比べて厚く形成したことを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記熱が集中する部分は積層方向の略中央部であり、この略中央部に配置されたスペーサを、当該積層方向の端部に配置されるスペーサよりも厚く形成したことを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
各スペーサの厚みは、前記積層方向の略中央部から端部に向けて段階的に薄く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
最も厚いスペーサの厚みを最も薄いスペーサの厚みの2倍以上としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の組電池。
【請求項5】
前記スペーサは、前記電池セルよりも熱伝導性の低い材質で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37793(P2013−37793A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170637(P2011−170637)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】