説明

経口投与用固形製剤

【課題】主賦形剤として乳糖を使用した塩酸カリプラジンを安定に保存できる経口投与用固形製剤を提供する。
【解決手段】シクロデキストリンを加えなくても塩酸カリプラジンを安定に保存できる、主賦形剤として乳糖を使用した塩酸カリプラジンを含有する経口投与用固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は統合失調症等の治療薬として有用な塩酸カリプラジンの経口投与用固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、下式の塩酸カリプラジンがD3/D2受容体アンタゴニストであり、統合失調症等の治療剤として有用であることが記載されている。

同公報の第27頁には、塩酸カリプラジンを含む一般式(I)の化合物を有効成分とし、シクロデキストリンを含有する錠剤の処方例が下記の通り、開示されている。
「式(I)の化合物 1〜40mg
希釈剤/充填剤(シクロデキストリンも含み得る) 50〜250mg
結合剤 5〜25mg
崩壊剤(シクロデキストリンも含み得る) 5〜50mg
滑剤 1〜5mg
シクロデキストリン 1〜100mg
希釈剤:例えば微晶質セルロース、ラクトース、デンプン。
結合剤:例えばポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース。
崩壊剤:例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドン。
滑剤 :例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム。」
【0003】
一般的に製剤中に、シクロデキストリンを添加することで、化学的に不安定な化合物を安定化できることが知られている。また、その他にも、シクロデキストリンには医薬化合物の水への溶解度改善、生体利用率改善、苦味低減(マスキング)等の効果があり、医薬品へ応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/012266号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シクロデキストリンは安定化の効果が期待されるものの、シクロデキストリンを医薬品添加剤として使用した場合、薬物の包接による体内動態および、薬効への影響や、他の併用薬剤に与える影響が不明確である。これらの点から、塩酸カリプラジンを安定に保存できるシクロデキストリンを含まない経口投与用固形製剤が望まれている。本発明の課題は当該経口投与用固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは塩酸カリプラジンを含有する種々固形製剤について鋭意検討した結果、賦形剤としてマンニトール又は無水リン酸水素カルシウムを一部に含む場合、及び結晶セルロースのみを使用した場合は、類縁物が多量に生成したが、主賦形剤として乳糖を用いれば、シクロデキストリンを加えなくても塩酸カリプラジンを安定に保存できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 主賦形剤として乳糖を使用し、塩酸カリプラジンを含有する経口投与用固形製剤。
(2) 乳糖以外に使用される賦形剤が結晶セルロース及び/又はデンプンである(1)記載の固形製剤。
(3) 賦形剤全量中、50〜100重量%が乳糖であり、0〜50重量%が結晶セルロースであり、0〜35重量%がデンプンである(2)記載の固形製剤。
(4) 賦形剤全量中、60〜100重量%が乳糖であり、0〜29重量%が結晶セルロースであり、0〜11重量%がデンプンである(2)記載の固形製剤。
(5) 賦形剤全量中、70〜100重量%が乳糖であり、0〜25重量%が結晶セルロースであり、0〜5重量%がデンプンである(2)記載の固形製剤。
(6) 賦形剤全量中、80〜95重量%が乳糖であり、5〜20重量%が結晶セルロースであり、デンプンを含まない(2)記載の固形製剤。
(7) ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポビドン及びポリビニルアルコールから少なくとも1種選ばれる結合剤を使用する(1)〜(6)のいずれか記載の固形製剤。
(8) カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カンテン末及びクロスポビドンから少なくとも1種選ばれる崩壊剤を使用する(1)〜(7)のいずれか記載の固形製剤。
(9) 塩酸カリプラジン、賦形剤、結合剤、及び必要に応じて崩壊剤を混合及び造粒して、これに崩壊剤及び滑沢剤を混合したのち圧縮成型することを特徴とする錠剤である(1)〜(8)のいずれか記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の経口投与用固形製剤は、シクロデキストリンを加えなくても塩酸カリプラジンを安定に保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例4で得られた錠剤における類縁物の経時的変化を示す図である。
【図2】実施例8で得られた錠剤における類縁物の経時的変化を示す図である。
【図3】実施例9で得られた錠剤における類縁物の経時的変化を示す図である。
【図4】実施例10で得られた錠剤における類縁物の経時的変化を示す図である。
【図5】実施例18及び20で得られた錠剤における経時的硬度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、塩酸カリプラジンの配合量は、通常、1錠あたり0.01〜70重量%であるが、0.1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.4〜10重量%である。
主賦形剤とは、賦形剤全量中50重量%以上含まれる賦形剤を言い、本発明の固形製剤において乳糖が主賦形剤として使用される。その他に使用される賦形剤としては、結晶セルロース及びデンプン(トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、有孔デンプン等)等が挙げられる。結晶セルロース及びデンプンは保水性を有しており、これらを一部賦形剤に加えることで、湿式造粒の際に固形製剤の製造ロット間のばらつきを抑制でき、打錠時に臼への充填性が向上される。好ましい賦形剤としては、(a)賦形剤全量中、50〜100重量%が乳糖であり、0〜50重量%が結晶セルロースであり、0〜35重量%がデンプンである賦形剤、(b)賦形剤全量中、60〜100重量%が乳糖であり、0〜29重量%が結晶セルロースであり、0〜11重量%がデンプンである賦形剤、(c) 賦形剤全量中、70〜100重量%が乳糖であり、0〜25重量%が結晶セルロースであり、0〜5重量%がデンプンである賦形剤、(d)賦形剤全量中、80〜95重量%が乳糖であり、5〜20重量%が結晶セルロースであり、デンプンを含まない賦形剤が挙げられる。なお、デンプンを使用しないか、あるいは使用量を低く抑えることで、固形製剤の硬度低下を抑えることができ、また湿度の如何に関わらず、塩酸カリプラジンを安定に保存できるため、好ましい。賦形剤は1錠あたり5〜99.9重量%、好ましくは80〜95重量%を用いることができる。
【0011】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポピドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン等が挙げられ、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらは1錠あたり0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%を用いることができる。
崩壊剤としては、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カンテン末等が用いられ、好ましくはカルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらは1錠あたり0.1〜15重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0012】
その他、本発明の製剤は、発明の効果に支障のない限り、香料、滑沢剤、着色剤等や一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでもよい。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号等の食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄等が挙げられる。また、本発明の固形製剤を製造する際に、細粒状の核に対し、活性成分、添加剤等で被覆した後、さらに味・臭気のマスキング、腸溶性化又は徐放化等を目的として公知の方法によってコーティングした物を混合して用いてもよい。
【0013】
本発明の固形製剤としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤などが挙げられ、なかでも錠剤が好ましい。ここで、錠剤の形状は特に限定されず、円形錠剤、オーバル型錠剤、オブロング型錠剤などの錠剤の素錠およびその被覆錠剤などのいずれであってもよい。また、本発明の固形製剤は2種類以上の顆粒を混合して成錠した群分け錠:二層錠、三層錠などの多層錠:有核錠:プレスコーティング錠などであってもよい。
【0014】
本発明の固形製剤は、例えば、塩酸カリプラジン、賦形剤、結合剤及び/又は崩壊剤を、高速攪拌造粒機、流動層造粒乾燥機、遠心転動流動層造粒コーティング機又は混練機等の機器を用いて水又は結合剤液を用いて湿式造粒し、これに滑沢剤を混合/噴霧したのち圧縮成形することによって製造することができる。あるいは、塩酸カリプラジン、賦形剤及び/又は結合剤(さらに崩壊剤を含んでもよい)を、ローラーコンパクター等の機器を用いて乾式造粒したのち、これに崩壊剤(さらに滑沢剤等を含んでもよい)を混合/噴霧したのち圧縮成形することによって製造することができる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例等を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
高速攪拌混合造粒機は、パウレック社製FM−VG−10又はFM−VG−25を使用した。転動流動層造粒乾燥機は、パウレック社製MP−01を使用した。流動層造粒乾燥機は、フロイント産業社製FLO−5/2SJ、又はパウレック社製MP−01を使用した。整粒機は、パウレック社製QC−197S、0.991mm丸穴スクリーンを使用した。V型混合機は、不二パウダル社製VM−10、又は徳寿工作所製TCV−20を使用した。打錠機は菊水製作所製AQUA0518SS2AII、またはVIRG0518SS2AZを使用した。なお圧縮圧力(打圧)の単位については、機器表示単位(AQUA:kgf、VIRG:kN)にて表中に記載した。
【0016】
実施例1
表1の乾燥末の欄に記載の各成分を高速攪拌混合造粒機に仕込み、混合した後、水を添加して造粒した。これを転動流動層造粒乾燥機で乾燥し、乾燥末を得た。得られた乾燥末と、表1の錠原末混合の欄に記載の各成分をV型混合機にて混合し、錠原末を得た。この錠原末を圧縮成型(錠剤直径7mm、曲率半径10mm)し、1錠当たり塩酸カリプラジン0.5mgを含有する錠剤(120mg)を製造した。
【0017】
実施例2
表1記載の成分を混合し、実施例1と同一の方法(高速攪拌造粒法)にて1錠あたり塩酸カリプラジン2.5mgを含む錠剤(120mg)を製造した。
【0018】
実施例3
表1の乾燥末の欄に記載の各成分(結合剤を除く)を高速攪拌混合造粒機に仕込み混合した。この混合品を流動層造粒乾燥機に仕込み流動させ、表1記載の結合剤量にて調整した結合液を用いて流動層造粒した後、層内で乾燥し、乾燥末を得た。乾燥末を整粒機にて整粒し、得られた整粒末と表1の錠原末混合の欄に記載の各成分をV型混合機にて混合し、錠原末を得た。この錠原末を圧縮成型(錠剤直径7mm、曲率半径10mm)し、1錠当たり塩酸カリプラジン0.5mgを含有する錠剤(120mg)を製造した。
【0019】
実施例4
表1記載の成分を混合し、実施例3と同一の方法(流動層造粒法)にて1錠あたり塩酸カリプラジン0.5mgを含む錠剤(120mg)を製造した。
【表1】

【0020】
実施例5
表2の乾燥末の欄に記載の各成分(結合剤を除く)を高速攪拌混合造粒機に仕込み混合した。この混合品を流動層造粒乾燥機に仕込み流動させ、表記載の結合剤量にて調整した結合液を用いて流動層造粒した後、層内で乾燥し、乾燥末を得た。乾燥末を整粒機にて整粒し、得られた整粒末と表2の錠原末混合の欄に記載の各成分をV型混合機にて混合し、錠原末を得た。この錠原末を圧縮成型(錠剤直径7mm平面隅角)し、1錠当たり塩酸カリプラジン0.5mgを含有する錠剤(120mg)を製造した。
【0021】
実施例6〜実施例19
表2記載の成分を混合し、実施例5と同一の方法(流動層造粒法)にて製造した。1錠あたりの錠剤質量は120mg、含量は表2記載の成分含量に従って製造した。
【0022】
【表2】

【0023】
実施例20〜33
表3記載の成分を混合し、実施例5と同一の方法(流動層造粒法)にて製造した。1錠あたりの錠剤質量は120mg、含量は表3記載の成分含量に従って製造した。
【表3】

【0024】
比較例1
表4の乾燥末の欄に記載の各成分(結合剤を除く)をラボ用万能粉粒体処理装置(メカノミル、岡田精工)に仕込み混合した。この混合品を流動層造粒乾燥機に仕込み流動させ、表記載の結合剤量にて調整した結合液を用いて流動層造粒した後、層内で乾燥し、乾燥末を得た。乾燥末を整粒機にて整粒し、得られた整粒末と表4の錠原末混合の欄に記載の各成分をV型混合機にて混合し、錠原末を得た。この錠原末を圧縮成型(錠剤直径7mm平面隅角)し、1錠当たり塩酸カリプラジン0.5mgを含有する錠剤(120mg)を製造した。乳糖水和物をD−マンニトールに変更した以外は配合量・製造方法ともに実施例5と同一である。
【0025】
比較例2
表4記載の成分をラボ用万能粉粒体処理装置に仕込み混合し、錠原末を得た。この錠原末を圧縮成型(錠剤直径7mm平面隅角)し、1錠あたり塩酸カリプラジン0.5mgを含有する錠剤(120mg)を製造した。
【0026】
比較例3
表4記載の成分をラボ用万能粉粒体処理装置に仕込み混合し、錠原末を得た。この錠原末を圧縮成型(錠剤直径7mm平面隅角)し、1錠あたり、塩酸カリプラジン0.5mgを含有する錠剤(120mg)を製造した。
【表4】

【0027】
上記実施例で得られた錠剤について、種々の包装形態での安定性を評価した。
実験例1 安定性試験
実施例4で得た錠剤について、PTP(PVC)ブリスター包装(PVC成形シート:大和化成工業、PVC用アルミ箔:大和化成工業、10錠/シート)を実施し、PTP包装品を得た。また、防湿性の高い包装形態の比較例として、このPTP包装品について、10シートをアルミガゼット袋(岡田紙業)に入れ、ヒートシーラー(不二インパルス)でヒートシールすることにより、PTPアルミ袋包装品を、PTP包装品10シートとシリカゲル(新越化成工業、シリカゲル三方1g)1シートをアルミガゼット袋(岡田紙業)に入れ、ヒートシーラー(不二インパルス)でヒートシールすることによりPTPシリカゲルアルミ袋包装品を得た。PTP包装品、PTPアルミ袋包装品及びPTPシリカゲルアルミ袋包装品について、温度40℃相対湿度75%の恒温恒湿室に保存することで安定性試験を実施した。保存期間はいずれの包装形態も1箇月、2箇月、3箇月及び6箇月とし、それぞれ取り出してその類縁物を高速液体クロマトグラフィーによって確認し、各時点での類縁物割合の保存開始時との差について経時的に観察した(図1)。
【0028】
実験例2 安定性試験
実施例8、実施例9及び実施例10で得た錠剤について、実験例1と同様に包装を実施し、PTP包装品とPTPアルミ包装品を得た。得られたPTP包装品及びPTPアルミ袋包装品について、温度40℃相対湿度75%の恒温恒湿室に保存することで安定性試験を実施した。保存期間はいずれの包装形態も1箇月、2箇月、3箇月及び6箇月とし、それぞれ取り出してその類縁物を高速液体クロマトグラフィーによって確認し、各時点での類縁物割合の保存開始時との差について経時的に観察した(図2、図3及び図4)。
実験例1及び2で得られた図1、図2、図3及び図4の結果通り、実施例4、8、9及び10の錠剤はいずれも類縁物の生成は多くは無く、保存安定性に優れている。また、防湿性が高い包装形態ほど類縁物が多く生成する傾向も見られた。
【0029】
実験例3 安定性試験
比較例1、2、3、実施例12、14、15で得た製剤について、PTP包装品を温度60℃の恒温層に保存することで安定性試験を実施した。保存期間は2箇月とし、類縁物を高速液体クロマトグラフィーにて確認した。表5に、2箇月60℃保存条件での類縁物の生成量を示す。
【表5】

実施例12、14及び15と比較して、比較例1、2及び3では顕著な類縁物の生成が認められた。すなわち、比較例1では類縁物2の顕著な増加と共に、他の処方では認められない特有な類縁物(類縁物4)が生成した。比較例2では類縁物1及び2が多量に生成した。比較例3でも類縁物2が顕著に増加していた。以上より、賦形剤として、マンニトール、無水リン酸水素カルシウムを使用する場合、及び結晶セルロースのみを使用する場合は、多量の類縁物が生成され、これらを賦形剤とすることは好ましくないことが確認された。他方、主賦形剤として乳糖を使用すれば、塩酸カリプラジンが化学的に安定に保存できることが分かった。
【0030】
実験例4 安定性試験
実施例18、実施例20で得た錠剤について、実験例1と同一の方法にてPTP包装品、PTPアルミ袋包装品、PTPシリカゲルアルミ袋包装品を得た。得られたそれぞれの包装品を温度40℃相対湿度75%の恒温恒湿室に保存することで安定性試験を実施した。保存期間は6箇月とし、それぞれの取り出し後、錠剤の水分活性値を測定した。その後類縁物を高速液体クロマトグラフィーによって確認した。表6に、実施例18での錠剤の水分活性値と、類縁物の生成量を、表7に実施例20での錠剤の水分活性値と類縁物の生成量とを示す。水分活性測定装置には、AQUALAB(series3TE、DECAGON)を使用した。また、水分活性値の測定は、恒温恒湿室から取り出し後12時間以内に実施した。なお、実施例18は実施例14の結合液添加量を全体の2%から3%に増加し、その増加分トウモロコシデンプンを減量した点以外は同一の処方・製法である。
【表6】

【表7】

表6及び7の通り、実施例20の錠剤のほうが実施例18の錠剤よりも、安定性が優れており、低湿度下で特に安定であり、湿度依存性が少ないことが確認された。すなわち、賦形剤としてデンプンを用いない錠剤がより優れていることが分かった。
【0031】
実験例5 安定性試験
実験例4で使用したPTP包装品(実施例18、実施例20)を温度40℃相対湿度75%の恒温恒湿室に保存し、安定性試験を実施した。保存期間は0.25、0.5、1、2、3、6箇月とし、取り出し後に硬度を測定し、経時的な硬度変化を観察した(図5)。
図5の通り、実施例18の錠剤は著しい硬度低下が生じた。通常、取り扱いに問題がない硬度として20N以上が望まれていることから、本錠剤は高湿度環境下での保存に問題がある可能性がある。他方、実施例20の錠剤では許容範囲内の硬度低下に留まる結果が得られた。以上より、賦形剤としてデンプンを含まない錠剤がより優れていることが分かる。また、打錠時の圧縮圧が実施例20の方が低圧で同様の硬度を出すことができ、優れた製造性を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によって、シクロデキストリンを加えなくても塩酸カリプラジンを安定に保存できる経口投与用固形製剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載のいづれかの発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−132654(P2010−132654A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258219(P2009−258219)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【分割の表示】特願2009−520724(P2009−520724)の分割
【原出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】