説明

経口組成物

【課題】ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩の刺激的な苦味を低減させ、服用時に不快感を与えないような、新たなマスキング素材を含有させた経口組成物を提供すること
【解決手段】ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩とアミノ酸を配合した経口組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分であるジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩の苦味による不快感が防止された経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩(以下、「ジフェンヒドラミン等」という)は、各種の末梢組織のヒスタミン受容体に対する作用と中枢神経系に対する作用を併せ持っている薬物である。このうち、中枢神経系に対する作用は睡眠改善薬または鎮暈薬に利用され、一方、末梢組織のヒスタミン受容体に対する作用は鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に利用されている。両方の作用は共に医薬品として応用され、その結果多くの経口剤が市場に供されている。
【0003】
ところで、ジフェンヒドラミン等の味は、舌を麻痺させるような刺激的な苦味が強く、服用時に不快感を与えるという問題があった。従来、この苦味を隠蔽し、服用感を改善する方法としては、ステビア(特許文献1)、アセスルファムK(特許文献2)、スクラロース(特許文献3)等の高甘度の甘味料を添加する方法、ワックス状物質および糖アルコールを用いる方法(特許文献4)、味遮蔽剤としてのイオン交換樹脂に吸着させる方法(特許文献5)、ポリマー等で被覆製剤とする方法(特許文献6、7)、ジフェンヒドラミン等の粒子径を調節する方法(特許文献8)、膨潤性の異なる複数の高分子と組み合わせて錠剤とする方法(特許文献9)等が試みられている。
【0004】
しかし、これらの従来の苦味の隠蔽方法では、マスキングが不完全で苦味が舌に残る場合や原材料費や製造コストが高くなる場合があった。また、ジフェンヒドラミン等の溶出が遅くなる場合やその生物学的利用能が低下する場合があり、更には、配合成分によっては錠剤等特定の固形製剤の剤型にしか適用できないという場合もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−20653号公報
【特許文献2】特開2001−253826号公報
【特許文献3】特表2006−524675号公報
【特許文献4】特開2000−327590号公報
【特許文献5】特表2003−527410号公報
【特許文献6】特開平7−507549号公報
【特許文献7】特開2003−300872号公報
【特許文献8】特開2004−99510号公報
【特許文献9】特開2004−107258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、ジフェンヒドラミン等の刺激的な苦味を低減させ、服用時に不快感を与えないような技術を開発し、これを利用した経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ジフェンヒドラミン等の苦味を防ぐ方法を開発すべく、種々の材料のマスキング作用を検索していたところ、予想外にもそれ自体に高甘度な甘味や良好な嗜好性を持ち合わせていないアミノ酸を配合すると、ジフェンヒドラミン等の刺激的な苦味がやわらぎ、服用感に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩とアミノ酸とを配合したことを特徴とする経口組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の経口組成物は、組み合わせて配合されるアミノ酸の作用により、ジフェンヒドラミン等に起因する舌を麻痺させるような強烈な苦味を防止することができる。また、この経口組成物は、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等にも加工しやすいものである。
【0010】
従って、本発明の経口組成物は、服用感に優れ、しかも、ジフェンヒドラミン等の薬理効果を充分にひきだすことができるので、睡眠改善薬、鎮暈薬、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に広く適用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の経口組成物(以下、「本発明組成物」という)に含有されるジフェンヒドラミン等としては特に制限無く使用することができる。しかし、ジフェンヒドラミンそのものは常温で液状であり、固型剤として使用するには、例えば、軽質無水ケイ酸等の粉体に塩基を保持させ粉粒体化して用いる必要があるため、酸付加塩を用いることが好ましい。このようなジフェンヒドラミンの酸付加塩としては、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン、硫酸ジフェンヒドラミン等が例示される。これらジフェンヒドラミンの酸付加塩の中でも、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミンまたはクエン酸ジフェンヒドラミンが好ましく、特に、塩酸ジフェンヒドラミンまたはクエン酸ジフェンヒドラミンが好ましい。
【0012】
本発明組成物において、ジフェンヒドラミン等の含有量は、特に制限されるものではなく用途に応じて適宜決定することができる。例えば、ジフェンヒドラミンの中枢神経系に対する作用を利用した治療分野で製剤化する場合と末梢組織のヒスタミン受容体に対する作用を利用した治療分野で製剤化する場合でジフェンヒドラミン類の含有量が異なり、また、製剤化する剤形によっても異なるが、全組成に対しジフェンヒドラミン類を、概ね1〜95質量%(以下、単に「%」という)含有させることが好ましく、さらに5〜90%含有させることがより好ましい。具体的に、本発明組成物を睡眠改善薬とするには、ジフェンヒドラミン等として50mg相当量程度またはその整数分の1の量を1個中または1分包中に含有させることが良く、鎮暈薬とするには、ジフェンヒドラミン等の120mg相当量程度またはその整数分の1の量を1個中または1分包中に含有させることが良く、かぜ内服薬および鼻炎内服薬とするには、ジフェンヒドラミン等の75mg相当量程度またはその整数分の1の量を1個中または1分包中に含有させることが良く、鎮咳去痰薬とするには、塩酸ジフェンヒドラミンの90mg相当量程度とサリチル酸ジフェンヒドラミンの120mg相当量程度またはその整数分の1の量を1個中または1分包中に含有させることがよい。
【0013】
一方、本発明組成物においてジフェンヒドラミン等の苦味のマスキング剤として使用されるアミノ酸とは、分子内にカルボキシル基とアミノ基とを有する化合物を意味する。このアミノ酸の例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、シスチン、システイン、アセチルシステイン、グルタミン酸、グルタミン酸エチルアミド、グルタミン酸グルコース、グルタミン、グルタチオン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ε-アミノカプロン酸、γ‐アミノ酪酸、グリシン、グリシルグリシン、メチオニン、カルニチン、スレオニンおよびこれらの金属塩、酸付加塩ならびに塩化物を挙げることができ、これらは1種または2種以上を混合して用いてよい。また、本発明組成物には、上記アミノ酸でD体、DL体、L体はいずれも使用できるが、DL体またはL体がより好ましく、L体が特に好ましい。これらのアミノ酸の中でも、より好ましいアミノ酸としては、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン酸エチルアミド、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、γ-アミノ酪酸、グリシン、メチオニン、カルニチン、スレオニンおよびこれらの金属塩、酸付加塩ならびに塩化物を挙げることをでき、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。特に好ましいアミノ酸としては、γ-アミノ酪酸、グリシン、L−グルタミン酸、グルタミン酸エチルアミドおよび塩化カルニチンから選ばれる1種または2種以上を挙げることができる。
【0014】
本発明組成物におけるアミノ酸の含有量は、アミノ酸の種類によっても異なるが、通常、ジフェンヒドラミン等の1質量部に対し、0.1〜60質量部配合することが好ましく、さらに、0.2〜15質量部配合することが好ましく、特に0.5〜8質量部配合することが好ましい。
【0015】
本発明組成物は、常法に従い、上記必須成分であるジフェンヒドラミン等とアミノ酸とを製剤化することにより調製されるが、上記必須成分のほかに他の薬理活性成分や通常の医薬品に使用される成分を適宜その目的に応じて配合してもよい。他の薬理活性成分としては、本発明組成物の必須成分であるジフェンヒドラミン等を、かぜ薬、鼻炎用薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬、睡眠改善薬および鎮暈薬等に用いる際に利用される薬理活性成分を上げることができる。このような他の薬理活性成分の具体的な例としては、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、エテンザミド、エトドラク、サザピリン、サリチルアミド、セレコキシブ、メディコキシブ、メロキシカム、ラクチルフェネジン、ロキソニン等の解熱鎮痛成分、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワリル尿素等の鎮静成分、塩酸アロクラミド、塩酸クロペラスチン、塩酸ノスカピン、クエン酸ペントキシベリン、クエン酸チペピジン、ジブナートナトリウム、臭化水素酸デキストロメトルファン、デキストロメトルファンフェノールフタリン酸、ノスカピン、ヒベンズ酸チペピジン、フェンジゾサンクロペラスチン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、リン酸ジモルファン等の鎮咳成分、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリン、塩酸トリメトキノール、塩酸メトキシフェナミン、塩酸メチルエフェドリン、メチルエフェドリンサッカリン塩等の気管支拡張成分、塩酸アンブロキソール、塩酸エチルシステイン、塩酸メチルシステイン、カルボシステイン、フドステイン、塩酸ブロムヘキシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、クレゾールスルホン酸カリウム、塩化アンモニウム、メントール、アンモニウム・ウイキョウ精等の去痰成分、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸プソイドエフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン等の血管収縮成分、ダツラエキス、ベラドンナアルカロイド、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、ロートエキス、臭化水素酸スコポラミン等の副交感神経遮断成分、塩酸ジフェニドール等の抗めまい成分、アミノ安息香酸エチル等の鎮吐成分、アンレキサノクス、イブジラスト、塩酸アゼラスチン、塩酸イソチペンジル、塩酸イプロヘプチン、塩酸エピナスチン、塩酸ジフェテロール、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸プロメタジン、塩酸メクリジン、オキサトミド、クロモグリク酸ナトリウム、ジフェニルスルホン酸カルビノキサミン、ジメンヒドリナート、酒石酸アリメマジン、タザノラスト、タンニン酸フェネタジン、テオクル酸ジフェニルピラリン、テオクル酸プロメタジン、テルフェナジン、トシル酸スプラタスト、トラニラスト、フマル酸クレマスチン、フマル酸ケトチフェン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、マレイン酸フェニラミン、メキタジン、レピリナスト、リン酸ジフェテロール等の抗アレルギーおよび抗ヒスタミン成分、塩化リゾチーム、ブロメライン、セラペプターゼ等の消炎酵素成分、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム等の消炎成分、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等の中枢神経刺激成分、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン等のビタミンBおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン等のビタミンBおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム等のビタミンCおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサミン等のビタミンBおよびその誘導体ならびにそれらの塩類、コバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、メコバラミン等のビタミンB12およびその塩並びにその誘導体、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、イノシトールヘキサニコチネート、ヘプロニカート等のナイアシンおよびその塩並びにその誘導体、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール、パンテチン等のパントテン酸およびその塩並びにその誘導体、ビオチン、葉酸、オロチン酸、オロチン酸カリウム、オロチン酸マグネシウム、オロチン酸コリン等のオロチン酸およびその塩並びにその誘導体、パンガミン酸、パンガミン酸カルシウム等のパンガミン酸およびその塩並びにその誘導体、チオクト酸(リポ酸)、チオクト酸アミド等のチオクト酸およびその塩並びにその誘導体、パラアミノ安息香酸およびその塩並びにその誘導体、イノシトール、イノシトールヘキサニコチネート等のイノシトールおよびその塩並びにその誘導体、ヘスペリジン、ルチン、ケルセチン、コリン、オロチン酸コリン、酒石酸水素コリン等のコリンおよびその塩並びにその誘導体等のビタミンおよびビタミン様作用物質成分、グルコン酸カルシウム、りん酸水素カルシウム、無水りん酸水素カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、5'−リボヌクレオチドカルシウム、硫酸カルシウム、りん酸三カルシウム、プロピオン酸カルシウム、りん酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、酸化カルシウム等のミネラル成分、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、アルミニウムグリシネート、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の制酸剤成分、アセンヤク、ウイキョウ、オウゴン、オウバク、オウレン、オウヒ、オート、オンジ、ガジュツ、カノコソウ、カバカバ、カミツレ、カモミール、カロニン、カンゾウ、ケイガイ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、ゴミシ、キキョウ、キョウニン、サイシン、サンソウニン、シオン、獣胆、シャコウ、シャジン、シャゼンシ、シャゼンソウ、ショウキョウ、地竜、シンイ、セイヨウヤドリギ、センキュウ、ゼンコ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、セキサン、セネガ、チクセツニンジン、チモ、チャボトケイソウ、チュウトウコウ、チンピ、テンナンショウ、トコン、ナンテンジツ、ニンジン、バイモ、バクモンドウ、パッシフローラ、ハンゲ、ビャクシ、ブクリョウ、ボタンピ、ホップ、ポテンティラ、マオウ、リンデン、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、紫胡桂枝湯、小紫胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等の生薬および漢方成分等を挙げることができる。
【0016】
また、本発明組成物に必要により配合される通常に医薬品に使用される成分としては、各種担体、安定(化)剤、界面活性剤、可塑剤、滑沢(化)剤、可溶(化)剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯味剤、結合剤、懸濁(化)剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、剤皮、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼化剤、着色剤、着香剤、香料、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘稠(化)剤、発泡剤、pH調整剤、稀釈剤および賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、崩壊延長剤、芳香剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、流動化剤、帯電防止剤、増量剤、保湿剤、付湿剤等の製剤添加物を挙げることができる。
【0017】
本発明組成物は、通常行われている製剤化方法(津田恭介・上野寿著、「医薬品開発基礎講座XI 薬剤製造法(上)(下)」、地人書館、1971年発行;仲井由宣著、「製剤工学ハンドブック」、地人書館、1983年発行;仲井由宣著、「医薬品の開発11 製剤の単位操作と機械」、廣川書店、1989年発行;橋田充著、「経口投与製剤の設計と評価」、薬業時報社、1995年発行;橋田充著、「経口投与製剤の処方設計」、薬業時報社、1995年発行)により、種々の形態の製剤とすることができる。この製剤の剤形としては、内服固形製剤であれば特に制限されないが、例えば、素錠、多層錠、有核錠、口腔内速崩壊型錠、チュアブル錠等の錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤等のカプセル剤、カプレット、顆粒剤、細粒剤、散剤、粉末剤、丸剤等が挙げられる。また、これらの製剤はフィルム、糖衣等でコーティングしてもよい。更に、これらの製剤は分包されてもよい。
【0018】
上記した製剤のうち、錠剤は、本発明組成物の成分であるジフェンヒドラミン等、アミノ酸および必要により添加される他の医薬成分の混合物(以下。「原末」という)、またはこの原末から調整された粉末剤、細粒剤、顆粒剤等と製剤添加物を混合し、圧縮成型することにより製造される。カプセル剤は、本発明組成物の原末、またはこの原末から調製された粉末剤、造粒末、小型の錠剤等を、カプセル充填機を用いてカプセルに充填することにより製造される。カプレットは、上記錠剤と同様にして圧縮成型することにより製造される。顆粒剤および細粒剤は、原末と製剤添加剤を混合後、湿式または乾式で造粒することにより製造される。また、顆粒剤は造粒後に丸め処理をしてもよい。散剤および粉末剤は、原末と製剤添加剤を混合後、そのままで、あるいは必要に応じて粉砕、または造粒することにより製造される。丸剤は原末と製剤添加剤を混合し、練合、分割、成型の後、でんぷん等で丸衣することにより製造される。なお、これら製剤を製造するに際して造粒末を調製する必要がある場合には、一般に利用される造粒法、例えば、水や有機溶媒を含む溶液または分散液を用いる噴霧造粒法、撹拌造粒法、流動造粒法、転動造粒法、転動流動造粒法等の湿式造粒法、粉粒状の結合剤を用いる圧密造粒法等の乾式造粒法等を用いることができる。
【0019】
また、これらの製剤のフィルム、糖衣等によるコーティングには、パンコーティング法、流動層コーティング法、転動コーティング法、ドライコーティング法およびこれらの組み合せ等を用いることができる。
【0020】
このようにして製造された本発明組成物は、ジフェンヒドラミン等を含有するものの、これと組み合わせて配合されるアミノ酸のためにジフェンヒドラミン等の苦味が抑制され、服用感に優れ、しかも、製造コストも低く、加工し易いため様々な固形製剤の剤形に適用させることができる。
【実施例】
【0021】
次に、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0022】
実 施 例 1
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)100g、グリシン(協和醗酵株式会社製)10g、乳糖(タブレトース80:メグレ・ジャパン株式会社製)536g、結晶セルロース(セオラスKG−802:旭化成ケミカルズ株式会社製)320g、低置換度ヒドロキシプロピルロース(L−HPC LH−11:信越化学工業株式会社製)24g、クロスカルメロースナトリウム(キッコレート:旭化成ケミカルズ株式会社製)20g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)10g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)10gおよびタルク(キハラ化成株式会社製)10gをV型混合器(TVC30型:株式会社特寿工作所製)で混合した後、直径9mmの臼杵を用いて1錠あたりの質量を260mgになるように打錠(VIRGO−0512型打錠機:菊水製作所株式会社製)し、厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0023】
実 施 例 2
実施例1の処方においてグリシンを20gに、乳糖を526gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0024】
実 施 例 3
実施例1の処方においてグリシンを50gに、乳糖を496gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0025】
実 施 例 4
実施例1の処方においてグリシンを100gに、乳糖を446gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0026】
実 施 例 5
実施例1の処方においてグリシンを200gに、乳糖を346gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0027】
実 施 例 6
実施例1の処方においてグリシンを400gに、乳糖を146gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0028】
実 施 例 7
実施例1の処方においてグリシンを600gに、乳糖を46gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0029】
実 施 例 8
実施例1の処方において塩酸ジフェンヒドラミンを50gに、グリシンを400gに、乳糖を276gに、結晶セルロースを240gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0030】
実 施 例 9
実施例1の処方において塩酸ジフェンヒドラミンを50gに、グリシンを750gに、乳糖を6gに、結晶セルロースを160gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0031】
実 施 例 10
実施例1の処方において塩酸ジフェンヒドラミンを25gに、グリシンを750gに、乳糖を11gに、結晶セルロースを180gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0032】
実 施 例 11
実施例1の処方において塩酸ジフェンヒドラミンを12.5gに、グリシンを750gに、乳糖を60.5gに、結晶セルロースを180gに変えて、その他は実施例1と同様にして厚さ4.2mmの錠剤約3800錠を得た。
【0033】
比 較 例 1
実施例1の処方においてグリシンを除き、更に乳糖を546gに変えて、その他は実施例1と同様にして、厚さ4.2mmのアミノ酸を含まない錠剤約3800錠を得た。
【0034】
試 験 例 1
官能試験(1):
被験者12名を用いて官能試験を行った。各被験者に実施例1〜11および比較例1の錠剤1錠を各々10秒間口に含んだのち、吐き出し、服用感を以下の評価基準に基づき評価した。その結果を表1に示した。
【0035】
<服用感評価基準>
(評点) (内容)
5点 : 非常に強い苦味
4点 : やや強い苦味
3点 : 苦い
2点 : やや苦い
1点 : 苦くない
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜11の錠剤は、アミノ酸を含まない比較例1の錠剤より苦味が非常に抑制され、服用感に優れていることがわかった。また、ジフェンヒドラミン1質量部に対し、アミノ酸を0.1質量部以上添加することで苦味抑制の効果が現れる。さらに、アミノ酸の添加量を増やすと苦味を抑制する効果も強くなることが分かり、特にジフェンヒドラミン1質量部に対しアミノ酸を0.5質量部以上添加するとスコアは2よりも小さく苦味の抑制効果が非常に強くなることがわかった。
【0038】
実 施 例 12
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)25g、γ-アミノ酪酸(味の素株式会社製)150g、乳糖(タブレトース80:メグレ・ジャパン株式会社製)11.5g、結晶セルロース(セオラスKG−802:旭化成ケミカルズ株式会社製)55g、低置換度ヒドロキシプロピルロース(L−HPC LH−11:信越化学工業株式会社製)6g、クロスカルメロースナトリウム(キッコレート:旭化成ケミカルズ株式会社製)5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)2.5g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)2.5gおよびタルク(キハラ化成株式会社製)2.5gを乳鉢で混合した後、直径9mmの臼杵を用いて1錠あたりの質量を260mgになるように打錠(N−30E型打錠機:岡田精工株式会社製)し、厚さ4.2mmの錠剤約900錠を得た。
【0039】
実 施 例 13
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)25g、L−グルタミン酸(味の素株式会社製)25g、乳糖(タブレトース80:メグレ・ジャパン株式会社製)91.5g、結晶セルロース(セオラスKG−802:旭化成ケミカルズ株式会社製)100g、低置換度ヒドロキシプロピルロース(L−HPC LH−11:信越化学工業株式会社製)6g、クロスカルメロースナトリウム(キッコレート:ニチリン化学工業株式会社製)5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)2.5g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)2.5gおよびタルク(キハラ化成株式会社製)2.5gを乳鉢で混合した後、直径9mmの臼杵を用いて1錠あたりの質量を260mgになるように打錠(N−30E型打錠機:岡田精工株式会社製)し、厚さ4.2mmの錠剤約900錠を得た。
【0040】
実 施 例 14
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)25g、グルタミン酸エチルアミド(太陽化学株式会社製)100g、乳糖(タブレトース80:メグレ・ジャパン株式会社製)36.5g、結晶セルロース(セオラスKG−802:旭化成ケミカルズ株式会社製)80g、低置換度ヒドロキシプロピルロース(L−HPC LH−11:信越化学工業株式会社製)6g、クロスカルメロースナトリウム(キッコレート:旭化成ケミカルズ株式会社製)5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)2.5g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)2.5gおよびタルク(キハラ化成株式会社製)2.5gを乳鉢で混合した後、直径9mmの臼杵を用いて1錠あたりの質量を260mgになるように打錠(N−30E型打錠機:岡田精工株式会社製)し、厚さ4.2mmの錠剤約900錠を得た。
【0041】
実 施 例 15
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)25g、塩化カルニチン(田辺製薬株式会社製)100g、乳糖(タブレトース80:メグレ・ジャパン株式会社製)36.5g、結晶セルロース(セオラスKG−802:旭化成ケミカルズ株式会社製)80g、低置換度ヒドロキシプロピルロース(L−HPC LH−11:信越化学工業株式会社製)6g、クロスカルメロースナトリウム(キッコレート:旭化成ケミカルズ株式会社製)5g、軽質無水ケイ酸(アドソリダー101:フロイント産業株式会社製)2.5g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学株式会社製)2.5gおよびタルク(キハラ化成株式会社製)2.5gを乳鉢で混合した後、直径9mmの臼杵を用いて1錠あたりの質量を260mgになるように打錠(N−30E型打錠機:岡田精工株式会社製)し、厚さ4.2mmの錠剤約900錠を得た。
【0042】
実 施 例 16
塩酸ジフェンヒドラミン(金剛化学株式会社製)50g、グリシン(協和醗酵株式会社製)300g、マンニトール(東和化成工業株式会社製)36.5g、コーンスターチ(サンエイ糖化株式会社製)105g、低置換度ヒドロキシプロピルロース(L-HPC LH-31:信越化学工業株式会社製)200g、軽質無水ケイ酸(アエロジル200:日本アエロジル株式会社製)20g、香料20gおよびヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L:日本曹達株式会社製)5gを高速攪拌造粒機(バーチカルグラニュレーターVG−10:パウレック株式会社製)で混合し、精製水150gを添加し練合した後、押し出し造粒機(ツインドームグランTDG−80:不二パウダル株式会社製)1.0mmスクリーンで押し出し造粒後、流動層乾燥装置(FLO−5A/2:フロイント産業株式会社製)にて乾燥し、乾燥顆粒を得た。この乾燥顆粒を4方アルミヒートシールで1包1.5gに分包して分包顆粒剤約900包を得た。
【0043】
試 験 例 2
官能試験(2):
実施例12〜15の錠剤および実施例16の顆粒剤を用い、試験例1と同様にして官能試験を行った。その結果を表2に示した。
【0044】
【表2】

【0045】
本発明の実施例12〜16の製剤は、いずれも苦味がアミノ酸を含まない比較例1の錠剤の苦味スコアの4.83より非常に抑制されていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の経口組成物は、ジフェンヒドラミン等の苦味が防止され、服用感に優れているのでジフェンヒドラミン等を有効成分とする睡眠改善薬、鎮暈薬、鼻炎用薬、かぜ薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー用薬等に好適に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩とアミノ酸とを配合したことを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、シスチン、システイン、アセチルシステイン、グルタミン酸、グルタミン酸エチルアミド、グルタミン酸グルコース、グルタミン、グルタチオン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ε-アミノカプロン酸、γ‐アミノ酪酸、グリシン、グリシルグリシン、メチオニン、カルニチン、スレオニンおよびこれらの金属塩、酸付加塩ならびに塩化物から選ばれるアミノ酸の1種または2種以上である請求項1記載の経口組成物。
【請求項3】
アミノ酸が、γ-アミノ酪酸、グリシン、L−グルタミン酸、グルタミン酸エチルアミドおよび塩化カルニチンから選ばれるアミノ酸の1種または2種以上である請求項1記載の経口組成物。
【請求項4】
ジフェンヒドラミンまたはその酸付加塩の1質量部に対してアミノ酸を0.1〜60質量部配合したものである請求項1ないし3のいずれかに記載の経口組成物。



【公開番号】特開2008−174501(P2008−174501A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10446(P2007−10446)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000102496)エスエス製薬株式会社 (50)
【Fターム(参考)】