説明

経口組成物

【課題】経口組成物を提供する。より詳細には、血管の弾性力等を改善し血管年齢を低下させるなど、血管状態の改善を目的として用いられる経口組成物に関する。
【解決手段】松樹皮抽出物、還元型コエンザイムQ10、および杜仲抽出物を組み合わせて経口組成物として調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経口組成物に関する。より詳細には、本発明は血管の弾性力等を改善し血管年齢を低下させるなど、血管状態の改善を目的として用いられる経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会を迎え、成人病がますます重要な社会問題となっている。成人病に起因する症状、特に血液関連の疾病、例えば高血圧症、動脈硬化症、肺高血圧症、心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞、クモ膜下出血後の血管攣縮などのように、血管が細くしかも硬くなることによって起こる疾病の発生を予防することは、セルフメディケーションの必要性が唱えられている今日、特に高年齢層の社会では重要な課題である。
【0003】
血管に対するダメージ・老化の進み具合は各人各様であり一様ではない。そこで、直接血管の老化度を測定することが重要となるが、近年、心拍によって生じる動脈圧の変動、すなわち脈波を測定して解析することにより血管の老化度を非侵襲的、かつ定量的に評価することが可能となってきた。脈波が血管内を伝わる速度である脈波伝播速度(PWV)や、末梢総血管抵抗を反映するオーグメンテーションインデックス(AIx)、あるいは指尖容積波の2次微分である加速度脈波の特定の波形成分、およびそれらから成る数値指標などが加齢により一定の変化を示すことから(非特許文献1及び2)、各年代における基準値をもとにした“血管年齢”という概念が普及しつつある。最近の臨床試験においても、PWVやAIxなどが心血管疾患リスクの予測因子として有用であることを示す報告例が増えてきている(非特許文献3および4参照)。従って、PWVやAIxなどの脈波関連指標を直接改善し、“血管年齢”を適正な範囲に維持し得る成分は、心血管系疾患の予防や治療に有用である可能性が高い。
【0004】
従来から、ソバ茶に含まれる酸性の水溶性画分(非特許文献5)、セリ科植物であるボタンボウフウ(非特許文献6)、プロアントシアニジン(特許文献1)、杜仲葉水抽出物(特許文献2)、ホップ(特許文献3)、ムラサキサツマイモの水溶性溶媒抽出物(特許文献4)に血管平滑筋を柔軟にする作用があることが知られている。
【0005】
しかし、かかる血管弛緩作用を有する物質が血管状態の改善に有効であるかは不明であり、心血管疾患リスクを低減するという目的を達成するためには、血管状態を改善する作用を有する物質の開拓が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schiffrin, Am.J.Hypertens., 17:395,2004
【非特許文献2】Takazawa, et al., Hypertension 32:365,1998
【非特許文献3】Boutouyrie, et al.,Hypertension 39:10,2002
【非特許文献4】London et al., Hypertension 38:434, 2001
【非特許文献5】伊藤園ニュースリリース「2006年5月10日ソバ茶に含まれる成分に、血管拡張作用があることを初めて確認:第60年日本・栄養食糧学会(5月20〜21日)にて発表」(平成21年9月20日検索)、インターネット<http://www.itoen.co.jp/news/2006/051001.html>
【非特許文献6】タカラバイオ株式会社ニュースリリース「セリ科植物ボタンボウフウに血管拡張作用があることを確認、2009.8.26」(平成21年9月20日検索)、インターネット<http://www.takara-bio.co.jp/news/2009/08/26.htm>
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−123707号公報
【特許文献2】特開2006−137715号公報
【特許文献3】特開2005−104951号公報
【特許文献4】特開2001−145471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、血管の弾性力等を改善し血管年齢を低下させるなど、血管状態の改善を目的として用いられる経口組成物を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、高血圧症や動脈硬化症等の血管に関係する疾患の発症を有意に抑制すべく、血管状態改善効果に優れた経口組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題の解決を目指して検討を重ねていたところ、松樹皮抽出物、還元型コエンザイムQ10および杜仲抽出物を組み合わせて含有する組成物が、血管の弾性力等を改善し血管年齢を低下させるなど、血管状態を改善させる効果に優れていることを見出し、これらの成分を含有する組成物が血管状態改善剤として、心血管系疾患の予防や改善に優れた効果を発揮しえるものと確信した。
【0010】
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものであり、下記の態様を包含するものである。
(1)松樹皮抽出物、還元型コエンザイムQ10および杜仲抽出物を含有する経口組成物。
(2)松樹皮抽出物1重量部に対して、還元型コエンザイムQ10を2〜10重量部、杜仲抽出物を1〜10重量部の割合で含有する(1)に記載する経口組成物。
(3)血管状態改善組成物である(1)または(2)に記載する経口組成物。
【発明の効果】
【0011】
松樹皮抽出物、還元型コエンザイムQ10および杜仲抽出物を含有する本発明の経口組成物は、これを経口的に継続的に摂取することで、血管の弾性力等を改善し血管年齢を低下させるなど、血管状態を改善させる効果に優れている。このため、本発明の経口組成物は加齢に伴う血管状態を改善することで、健康の保持および増進に役立つだけでなく、高血圧症や動脈硬化症などの心血管系疾患の予防や改善に有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実験例1において被験者14名を対象として、(a)末梢血管健康度を、1.摂取前、2.摂取から2週間目、3.摂取から4週間目、4.摂取終了後から2週間目にそれぞれ測定して、本発明の経口組成物(カプセル)による血管状態への影響を示した図である。
【図2】実験例1において被験者14名を対象として、(b)血管老化速度を、1.摂取前、2.摂取から2週間目、3.摂取から4週間目、4.摂取終了後から2週間目にそれぞれ測定して、本発明の経口組成物(カプセル)による血管状態への影響を示した図である。なお、図中、*は5%の危険率で有意差があることを示す(図3及び図6においても同様)。
【図3】実験例1において被験者14名を対象として、(c)加速度脈波の平均波形タイプを、1.摂取前、2.摂取から2週間目、3.摂取から4週間目、4.摂取終了後から2週間目にそれぞれ測定して、本発明の経口組成物(カプセル)による血管状態への影響を示した図である。縦軸は、波形タイプの数値(I〜VI)を被験者で平均したものであり、数値が低いほど血管年齢が若いことを示す。
【図4】実験例1において被験者14名を対象として、(d)微分脈波指数を、1.摂取前、2.摂取から2週間目、3.摂取から4週間目、4.摂取終了後から2週間目にそれぞれ測定して、本発明の経口組成物(カプセル)による血管状態への影響を示した図である。
【図5】実験例1において被験者14名を対象として、(e)拍出強度を、1.摂取前、2.摂取から2週間目、3.摂取から4週間目、4.摂取終了後から2週間目にそれぞれ測定して、本発明の経口組成物(カプセル)による血管状態への影響を示した図である。縦軸は、自律神経分析加速度脈波計で測定した各自の拍出強度(グラフ表示:-20〜-120)を被験者で平均した値の絶対値を示す。このため、数値が大きいほど血管状態が良好であることを示す。
【図6】実験例1において被験者14名を対象として、(f)動脈血管弾性度を、1.摂取前、2.摂取から2週間目、3.摂取から4週間目、4.摂取終了後から2週間目にそれぞれ測定して、本発明の経口組成物(カプセル)による血管状態への影響を示した図である。縦軸は、自律神経分析加速度脈波計で測定した各自の動脈血管弾性度(グラフ表示:-150〜+20)を被験者で平均した値の絶対値を示す。このため、数値が低いほど血管状態が良好であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の経口組成物は、松樹皮抽出物、還元型コエンザイムQ10および杜仲抽出物を含有するものである。
【0014】
(1) 松樹皮抽出物
松樹皮抽出物は、松樹皮から抽出される天然の機能性素材であり、プロシアニジンを始め有機酸やその他の生理活性成分を約40種類も含有するものである。ここでプロシアニジンとは、カテキンの重合体で、ほとんどの植物が有している二次代謝産物の1つである。プロシアニジンは重合することによって、その有用生理活性が高くなり、さらに単量体であるカテキンにはない有用生理活性が生じる。
【0015】
松樹皮としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮を挙げることができる。好ましくは、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松であるフランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮である。
【0016】
松樹皮抽出物は、松樹皮からプロシアニジンを多く含む画分を抽出する方法で調製され、この限りにおいて特に限定されないが、例えば、溶媒抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0017】
溶媒抽出法は、松樹皮を水または有機溶媒で抽出することで実施される。水を用いる場合には、温水または熱水を用いることが好ましい。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。好ましくは、水、熱水、エタノール、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。なお、抽出効率を向上させる点から、抽出液には塩化ナトリウムなどの塩を添加することが好ましい。
【0018】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体(超臨界流体)を用いて抽出することで実施される。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などを挙げることができるが、好ましくは二酸化炭素である。
【0019】
松樹皮抽出物の調製は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などを行うことで行うこともできる。
【0020】
松樹皮抽出物は、必要に応じて濃縮および/または凍結乾燥などを行うことにより得られる濃縮液、粘稠物質または固体として使用することができる。
【0021】
斯くして調製される松樹皮抽出物は、プロシアニジンを35重量%以上含有していることが好ましい。より好ましくはプロシアニジンを60重量%以上含有する松樹皮抽出物である。
【0022】
なお、かかる松樹皮抽出物は商業的に入手することができ、例えば、東洋新薬株式会社などから販売されている市販品を使用することができる。
【0023】
本発明の経口組成物中の松樹皮抽出物の含有量は、制限されないが、固形物換算で3重量%以上含むことが好ましい。好ましくは3〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
【0024】
(2)還元型コエンザイムQ10
コエンザイムQ10には、酸化型と還元型の2種類の形態がある。そのうち、本発明では還元型コエンザイムQ10が好適に使用される。
【0025】
還元型コエンザイムQ10は商業的に入手することができ、例えば株式会社カネカから販売されている市販品を使用することができる。
【0026】
本発明の経口組成物がより高い効果を発揮するために、当該還元型コエンザイムQ10は、経口組成物に配合される上記松樹皮抽出物1重量部(固形物換算)に対して、2〜10重量部の割合で配合されることが好ましい。より好ましくは2〜8重量部、特に好ましくは3〜6重量部である。
【0027】
これを松樹皮抽出物中に含まれているプロシアニジン1重量部に対する割合に換算すると、還元型コエンザイムQ10の配合割合は、プロシアニジン1重量部に対して2.5〜20重量部、より好ましくは2.5〜16重量部、特に好ましくは3.5〜10重量部である。
【0028】
(3)杜仲抽出物
杜仲抽出物は、トチュウ(Eucommia ulmoides)の抽出物であり、その部位は特に限定されないが、収量が多く得られる点から葉を用いることが好ましい。
【0029】
杜仲抽出物の抽出法は特に限定されないが、例えば、溶媒抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0030】
溶媒抽出法は、杜仲を水または有機溶媒で抽出することで実施される。水を用いる場合には、温水または熱水を用いることが好ましい。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。好ましくは、水、熱水、エタノール、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0031】
杜仲抽出物の調製に使用する杜仲葉は、栽培により生産されたものであっても天然より採取されたものであってもよい。例えば、当年葉で落葉前の生葉を用い、採取時期は4月から10月、好ましくは5月から8月、より好ましくは6月から8月までの生葉を用いることができる。水抽出に使用する杜仲葉は、収穫後乾燥前の杜仲生葉であってもよく、または杜仲生葉を加工することにより調製される杜仲葉を使用することもできる。本発明で用いる杜仲抽出物は、好ましくは、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を揉捻する工程;杜仲葉を水により抽出する工程;および、当該抽出液を濃縮する工程を含む製造方法により調製される。すなわち、本発明に用いられる杜仲葉は、杜仲生葉を蒸熱する工程、および杜仲葉を揉捻する工程を含む方法により調製される杜仲茶葉であってもよい。
【0032】
ここで杜仲生葉の蒸熱工程は、市販されている蒸し機またはオートクレーブなどを用いて、当該技術分野で通常行われている方法により実施することができる。例えば、ネットコンベア上に杜仲生葉を広げ、ボイラーから供給される無圧蒸気を充満させた処理室を通過させることにより、杜仲生葉を蒸熱処理することができる。蒸熱温度は、特に限定はされないが、例えば杜仲葉の大きさに応じて90〜120℃の範囲で適宜選択されうる。また蒸熱時間も、10〜240秒間の範囲で適宜選択されうる。また、使用する蒸気量は、例えば200〜70L/分の範囲で適宜選択されうる。蒸し葉の処理量は、生葉の水分率に応じて、特に限定はされないが、例えば3〜10kg/分の範囲で適宜選択されうる。この蒸熱工程は、杜仲葉を褐色に変色させる酵素が失活することにより杜仲生葉の成分が保たれやすくなる;および、杜仲葉が柔らかくなることで、その後の揉捻工程の実施が容易になる、などの効果をもたらす。
【0033】
また揉捻工程は、例えば市販されている揉捻機、粗揉機または中揉機を用いて行うことができる。例えば市販の揉捻機としては、株式会社寺田製作所製、揉捻機60Kg型などを用いることができる。本工程により、余分な水分を取り除きつつ杜仲葉中の水分が均一に整えられ、さらに杜仲特有の成分が抽出しやすくなる。本工程は、必要に応じて加熱下で行うこともできるが、好ましくは加熱せずに行われる。また本工程に要する時間は、特に限定はされないが、例えば10〜80分間の範囲で適宜選択されうる。揉捻葉の処理量は、特に限定はされないが、例えば水分率に応じて25〜40kgの範囲で適宜選択されうる。本工程を経て得られる杜仲葉の水分量は、例えば乾量基準で25〜40%である。
【0034】
杜仲葉の調製方法は、揉捻工程の後に杜仲葉を焙煎する工程を含んでいてもよい。杜仲葉を焙煎する工程は、特に限定はされないが、例えば市販されている焙煎機を用いて行うことができる。本工程における焙煎方法は、特には限定されないが、例えば、有限会社横山製作所製、熱風式回転乾燥火入機などにより行われうる。また本工程に要する時間は、特に限定はされないが、30〜50分間の範囲で適宜選択されうる。また本工程の焙煎温度は、特に限定はされないが、例えば100〜140℃の範囲で適宜選択されうる。本工程を経て得られる杜仲葉の水分量は、例えば乾量基準で8%以下である。
【0035】
杜仲抽出物を得る工程において、杜仲葉1kgに対して、例えば5〜50kgから適宜選択される量の水が用いることができる。杜仲葉の水抽出は、例えば85〜105℃、好ましくは90〜95℃の熱水による抽出であってもよく、または、杜仲葉粉砕物を含む水に、より低温(例えば、25〜50℃、好ましくは30〜45℃)で超音波を照射することにより行うこともできる。
【0036】
斯くして調製される杜仲抽出物は、必要に応じて濃縮および/または凍結乾燥などを行うことにより得られる濃縮液、粘稠物質または固体として使用することができる
本発明の経口組成物がより高い効果を発揮するために、当該杜仲抽出物は、経口組成物に配合される上記松樹皮抽出物1重量部(固形物換算)に対して、固形物換算で1〜10重量部の割合で配合されることが好ましい。より好ましくは1〜7重量部、特に好ましくは2〜4重量部である。
【0037】
これを松樹皮抽出物中に含まれているプロシアニジン1重量部に対する割合に換算すると、杜仲抽出物の配合割合は、プロシアニジン1重量部に対して1.2〜20重量部、より好ましくは1.2〜14重量部、特に好ましくは2.5〜7重量部である。
【0038】
(4)その他の成分
本発明の経口組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記の成分に加えて、さらに必要に応じて、他の成分を含有することができる。例えば、ソバ茶に含まれる酸性水溶性画分(非特許文献1)、セリ科植物ボタンボウフウ等の植物抽出物(非特許文献2)、クロロゲン酸誘導体とアルギニンとのエステル結合体(特開2006-298802号公報)などの血管弛緩作用が知られている成分を挙げることができる。
【0039】
また、他の成分は、本発明の経口組成物の適用用途および形態に応じて、適宜設定することができる。例えば、飲食物や経口医薬品として用いる場合は、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、滑沢剤、湿潤剤、懸濁剤、着色料、香料、および栄養成分などの成分を目的に応じて配合することができる。
【0040】
(5)経口組成物
本発明の経口組成物は、上記の各成分を当業者が通常用いる方法によって混合し、各種の経口投与若しくは経口摂取される形態にすることで調製することができる。
【0041】
本発明の経口組成物は、医薬組成物として調製することができる。かかる医薬組成物は、種々の剤形、例えば、経口投与形態として、錠剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル)、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤等とすることができる。かかる医薬組成物は、一般に用いられる各種成分を含むことができ、例えば、1種もしくはそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、コーティング剤等を挙げることができる。また本発明の医薬組成物は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
【0042】
かかる医薬組成物の投与量は、投与経路、患者の体型、年齢、体調、疾患の度合い等により、適宜選択することができる。制限はされないが、一般に松樹皮抽出物中に含まれるプロシアニジンの投与量に換算して0.01〜30mg/日/成人、好ましくは1〜20mg/日/成人の用量で使用されうる。また還元型CoQ10の投与量に換算して0.02〜300mg/日/成人、好ましくは2〜200mg/日/成人の用量で、また杜仲抽出物の投与量に換算(固形物換算)して0.01〜300mg/日/成人、好ましくは1〜200mg/日/成人の用量で使用されうる。当該医薬組成物の投与は、1日当たり単回投与または複数回投与であってもよい。
【0043】
本発明の経口組成物は、食品組成物として調製することができる。なお当該食品組成物には飲料が含まれる。当該食品組成物は、そのまま機能性食品として使用できるほか、飲食物、医薬品、医薬部外品、飲食物等の成分、食品添加物等として使用することができる。
【0044】
本発明の食品組成物、特に食品または飲料の例としては、血管状態改善効果を有する機能性食品(特定保健用食品が含まれる)、健康食品、一般食品(ジュース、菓子、加工食品等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)等が含まれる。また本発明の食品組成物には、錠剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル)、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤などの経口投与製剤形態を有するサプリメント等が含まれる。
【0045】
なお、食品組成物の推奨摂取量は、上記医薬組成物の投与量に準じて決定することができる。また当該食品組成物は、1日あたり単回摂取してもよいし、また複数回摂取してもよい。
【0046】
本発明の食品組成物の使用により、血管状態改善作用を有する飲食物を日常的に且つ継続的に摂取することが可能となり、血管硬化に伴う各種の疾患、例えば高血圧症、動脈硬化症等の各種の心血管系疾患の発症を予防することが可能となる。
【0047】
本発明の経口組成物は、上記の作用から、食品分野および医療分野において、専ら血管状態改善を目的として、それを用途として用いることができる。
【0048】
ここで「血管状態」とは、例えば加速度脈波の波形、微分脈波指数、拍出強度、動脈血管弾性度、およびこれらを基準として算定される末梢血管健康度および血管老化速度を指標として評価できるものであり、「血管状態改善」とは、加速度脈波の波形タイプの向上、微分脈波指数の上昇、拍出強度の低下、動脈血管弾性度の上昇、および末梢血管健康度の向上、血管老化速度の低下を意味する。
【0049】
なお、これらの血管状態を示す指標は、例えば自律神経分析加速度脈波計(APG:Accelerated Photoplethysmography)「Pulse Analyzer Plus/TAS9(YKC group製)」を用いて好適に数値化することができ、これを指標として評価することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」を意味するものとする。
【0051】
実験例1 血管状態改善効果の評価
(1)経口組成物の調製
還元型コエンザイムQ10 60部、松樹皮抽出物20部、杜仲葉水抽出物(特開2006-137715号公報の実施例1の方法に従って調製)40部を植物油157部に溶解し、これにグリセリン脂肪酸エステル13部、及びミツロウ10部を加え、これをカプセル内容物とした。調製した内容物が1個あたり300mgになるように、ソフトカプセル製剤の製法に関する定法に従ってゼラチン皮膜内に封入し、1個あたり475mgの経口組成物(ソフトカプセル)を作成した。
【0052】
(2)試験方法
摂取前の末梢血管健康度が、100ポイント満点中、65ポイント以下と、血管状態が悪いと判断された被験者14名を対象として、上記(1)で調製したソフトカプセル(475mg/個:松樹皮抽出物約20mg、還元型コエンザイムQ10 60mg、杜仲葉水抽出物40mg)を1日1カプセル、1ヶ月間摂取してもらい、血管状態に与える影響を確認した。
【0053】
血管状態に与える影響の確認には、自律神経分析加速度脈波計(APG:Accelerated Photoplethysmography)「Pulse Analyzer Plus/TAS9(YKC group製)」を用いて、指尖容積脈波と加速度脈波の波形タイプから、 (a)末梢血管健康度、(b)血管老化速度、(c)加速度脈波の平均波形タイプ、(d)微分脈波指数、(e)拍出強度、および(f)動脈血管弾性度を測定した。測定は、摂取前、摂取2週間目、摂取4週間目、摂取終了後2週間目の4回行った。
【0054】
なお、自律神経分析加速度脈波計のマニュアルには、上記(a)末梢血管健康度、(b)血管老化速度、(c)加速度脈波の平均波形タイプ、(d)微分脈波指数、(e)拍出強度、および(f)動脈血管弾性度について下記説明がされている。
【0055】
(a)末梢血管健康度
・0ポイントから100ポイントの範囲で表示
・濃い緑色(グラフの右側)に近いほど良好
・被験者の波形を分析して点数化。
【0056】
(b)血管老化速度
・被験者の平均波形タイプを、心拍、年齢などを考慮して数値化
・通常は約1.0〜1.2が適正域
・1.0以下は実際の加齢速度より末梢血管の老化速度が遅く、数値が高くなるほど老化が早いことを意味する。
【0057】
(c)加速度脈波の平均波形タイプ
・被験者の波形と最も近いタイプの波形を表示
・6段階に区分する。「I II III IV V VI」波形タイプで分類される。
・それぞれ20歳代、30歳代、40歳代、50歳代、60歳代、70歳代で多く見られる代表的な波形だが、個人差はある。
・被験者の年齢に対する平均波形より和解波形が理想的。
【0058】
(d)微分脈波指数(a波):DPI(Differential Pulsewave Index)
・心臓が収縮する瞬間
・波形を観察する時に比較しやすくするための基準値として使用
・血管の老化の程度と関係があり、老化が進行するほどこの値は低くなる
・年齢と相関関係はない。
・100以上が望ましい(グラフ表示:0〜150)。
【0059】
(e)拍出強度(b波):SP(Stress Power)
・心臓の初期収縮期(陰性波)
・心拍出強度を表す、a波のはね返りでb波が表れる
・動脈内圧の変化に敏感に適応(動脈硬化に反応)
・加齢により増加
・値が低いほど(グラフ表示:-20〜-120)血管の状態が良好
(f)動脈血管弾性度(d波):BVT(Blood Vessel Tension)
・心臓の後期収縮期(再減少波)
・動脈内圧の変化に敏感に適応(動脈硬化に反応)
・血管の柔軟性を表す
・加齢により減少
・値が大きいほど(グラフ表示:-150〜+20)血管の状態が良好。
【0060】
(3)試験結果
(a)末梢血管健康度、(b)血管老化速度、(c)加速度脈波の平均波形タイプ、(d)微分脈波指数、(e)拍出強度、および(f)動脈血管弾性度の結果を、それぞれ図1〜6に示す。
【0061】
被験者全体(n=14)において、(b)血管老化速度、(c)加速度脈波の平均波形タイプ、(d)微分脈波指数、(e)拍出強度、および(f)動脈血管弾性度の全ての項目で、格段の改善効果が見られた。一方、摂取終了後2週間目の測定では、摂取中に比べて、ほぼ全ての項目で悪化傾向が見られた。このことから、本発明の経口組成物は、継続的に投与または摂取することで、血管状態を改善し、またその効果を持続できることが確認された。
【0062】
これらの結果より、本発明の経口組成物は、経口的に摂取することで、末梢血管健康度、血管老化速度、加速度脈波の平均波形タイプ、微分脈波指数、拍出強度、動脈血管弾性度の改善に効果があり、血管の老化予防や血管の若返り効果が期待できることが示唆された。
【0063】
なお、血管状態が悪い被験者のみならず血管状態の悪くない被験者をも対象として上記と同様の試験を行ったところ、被験者全般にわたって上記と同様の効果が認められた。
【0064】
処方例1〜4
下記に記載する処方に従って、還元型コエンザイムQ10と松樹皮抽出液と杜仲葉水抽出物を組み合わせて含有する本発明の経口組成物を調製した。
(処方例1:カプセル剤)
1.還元型コエンザイムQ10 30部
2.松樹皮抽出物 10部
3.杜仲葉水抽出物 20部
4.結晶セルロース 38部
5.グリセリン脂肪酸エステル 2部
成分1〜5を混合し、硬カプセルに200mg充填してカプセル剤を得た。
【0065】
(処方例2:錠剤)
1.還元型コエンザイムQ10 6部
2.松樹皮抽出物 1部
3.杜仲葉水抽出物 1部
4.カルボキシメチルセルロースカルシウム 50部
5.コーンスターチ 40部
6.タルク 2部
成分1〜6を均一に混合して打錠し、1錠あたり250mgの錠剤を得た。
【0066】
(処方例3:錠菓)
1.還元型コエンザイムQ10 2.0部
2.松樹皮抽出物 0.2部
3.杜仲葉水抽出物 2.0部
4.乳糖 53.0部
5.還元麦芽糖水飴 40.0部
6.ショ糖脂肪酸エステル 2.7部
7.香料 0.1部
成分1〜5を混合して、10%の水を結合剤として加え流動層造粒し、成形した顆粒に成分6及び7を加えて混合し、打錠して1錠あたり500mgの錠菓を得た。
【0067】
(処方例4:飲料)
1.還元型コエンザイムQ10 1.0部
2.松樹皮抽出物 0.1部
3.杜仲葉水抽出物 1.0部
4.ショ糖 10.0部
5.クエン酸 1.0部
6.香料 0.5部
7.精製水 86.4部
成分7に成分1〜6を加えて攪拌溶解し、加熱殺菌してガラス瓶に充填し、1本あたり20mLの飲料を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮抽出物、還元型コエンザイムQ10、および杜仲抽出物を含有する経口組成物。
【請求項2】
松樹皮抽出物1重量部に対して、還元型コエンザイムQ10を2〜10重量部、杜仲抽出物を1〜10重量部の割合で含有する請求項1に記載する経口組成物。
【請求項3】
血管状態改善組成物である請求項1または2に記載する経口組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74021(P2011−74021A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227581(P2009−227581)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】