説明

経皮吸収シート及びその製造方法

【課題】患者皮膚への貼り付け時間の短縮と、投薬開始直後の薬剤の放出性とを両立することができる経皮吸収シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】経皮吸収シートは、薬剤を含む先端部14Aと、生体内での溶解速度が先端部14Aよりも大きい根元部14Cと、薬剤を含み、先端部14Aと根元部14Cとの間に配置される中間部とを備えるニードル部14と、ニードル部14を支持するシート部12とを含む。この経皮吸収シート10が患者皮膚に貼り付けられると、患者体内に挿入されたニードル部14のうち根元部14Cが優先的に溶解して、薬剤を含む先端部14A及び中間部14Bが患者体内に残留する。これにより、経皮吸収シート10の貼り付け時間を短縮することができる。また、中間部14Bは、生体内での溶解速度が先端部14Aよりも大きいため、投薬開始直後の薬剤の放出性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を含む針状凸部がシート部上に形成された経皮吸収シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロニードルやマイクロピラーなどの高アスペクト比の針状凸部が表面に形成された高アスペクト比構造シートは、機能性膜として様々な分野で応用されている。例えば、高アスペクト比構造シートに機能性物質を添加すれば、高アスペクト比構造の特性を生かした様々な機能が発現する。
【0003】
特に、医療技術分野では、機能性物質としての薬剤が添加された高アスペクト比構造シートを用いることで、患者の皮膚表面又は皮膚角質層を介して、薬剤を患者に効率的に投与する経皮吸収システムが知られている。この経皮吸収システム用の高アスペクト比構造シートは、一般に、経皮吸収シートと称される。
【0004】
経皮吸収シートは、患者への負担を軽減する観点から、患者皮膚への貼り付け時間を短縮することが望まれている。そこで、経皮吸収シートの針状凸部が患者体内に挿入された後、薬剤を含む針状凸部のみを患者体内に残留させることが考えられる。
【0005】
例えば、特許文献1は、薬剤を含む先端部と、当該先端部よりも生体内での溶解速度が大きい根元部とにより構成される二層構造のマイクロニードルを有する経皮吸収シートを開示している。
【0006】
この経皮吸収シートを患者皮膚に貼り付けると、患者体内に挿入されたマイクロニードルのうち根元部が優先的に患者体内に溶解するので、マイクロニードルのうち先端部だけを患者体内に残留させることができる。そして、患者体内に残留した先端部が少しずつ溶解するのに伴って、当該先端部に含まれる薬剤が患者体内に徐々に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−194288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された経皮吸収シートでは、患者皮膚への貼り付け時間を短縮するため、先端部の溶解速度が根元部よりも十分に小さい二層構造のマイクロニードルを採用している。
【0009】
しかしながら、薬剤を含む先端部の溶解速度が比較的小さいことから、薬剤の迅速な投与が要求される場合に好適であるとはいえない。
【0010】
特に、投薬すべき薬剤の種類によっては、投薬開始直後に薬剤を迅速に放出しなければならない場合があり、患者皮膚への貼り付け時間の短縮と、投薬開始直後の薬剤の放出性とを両立することができる経皮吸収シートの開発が望まれていた。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、患者皮膚への貼り付け時間の短縮と、投薬開始直後の薬剤の放出性とを両立することができる経皮吸収シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る経皮吸収シートは、薬剤を含む先端部と、生体内での溶解速度が前記先端部よりも大きい根元部と、前記薬剤を含み、前記先端部と前記根元部との間に配置され、生体内での溶解速度が前記先端部よりも大きく、前記根元部よりも小さい中間部とを備える針状凸部と、前記針状凸部を支持するシート部とを含むことを特徴とする。
【0013】
上記経皮吸収シートでは、針状凸部の根元部は、先端部に比べて、生体内での溶解速度が大きい。このため、患者体内に挿入される針状凸部のうち根元部が優先的に患者体内に溶解するので、薬剤を含む先端部及び中間部を患者体内に残留させて、患者皮膚への貼り付け時間を短縮することができる。
【0014】
また上記経皮吸収シートでは、針状凸部の先端部と根元部との間に、薬剤を含み、生体内での溶解速度が前記先端部よりも大きく、前記根元部よりも小さい中間部が設けられる。これにより、患者体内に残留した中間部が迅速に溶解して、当該中間部に含まれる薬剤が患者体内に放出されるので、投薬開始直後の薬剤の放出性を向上させることができる。
【0015】
上記経皮吸収シートにおいて、前記針状凸部の前記中間部は、前記先端部を構成する第1のポリマーと、前記根元部を構成する第2のポリマーとの混合物を含むことが好ましい。
【0016】
これにより、先端部と中間部との間における針状凸部の破損や、根元部と中間部との間における針状凸部の破損を低減することができる。
【0017】
上記経皮吸収シートにおいて、前記針状凸部の前記先端部は、ゼラチンを含むことが好ましい。
【0018】
ゼラチンは、水溶性であり、生体内での溶解速度が比較的小さいため、針状凸部の先端部を構成する材料として好適である。
【0019】
上記経皮吸収シートにおいて、前記針状凸部の前記根元部は、糖類を含むことが好ましい。
【0020】
糖類は、水溶性であり、生体内での溶解速度が比較的大きいため、針状凸部の根元部を構成する材料として好適である。
【0021】
上記経皮吸収シートにおいて、前記針状凸部の直径が50μm以上250μm以下であり、前記針状凸部部の深さが100μm以上2000μm以下であることが好ましい。
【0022】
上記経皮吸収シートにおいて、前記針状凸部の直径Dと高さHとを用いてA=H/Dで定義される前記針状凸部のアスペクト比が2以上10以下であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る経皮吸収シートの製造方法は、モールドの針状凹部に、薬剤と第1のポリマーとを含む第1の溶解液を充填する工程と、前記針状凹部に充填された前記第1の溶解液を半固化する工程と、前記第1の溶解液が前記針状凹部内で半固化された前記モールドに、前記第1のポリマーよりも生体内での溶解速度が大きい第2のポリマーを含む第2の溶解液を充填する工程と、前記第1の溶解液が固化した先端部と、前記第2の溶解液が固化した根元部と、前記先端部と前記根元部との間に配置され、前記第1の溶解液と前記第2の溶解液との混合液が固化した中間部とを備える針状凸部が前記モールドの前記針状凹部に形成されるように、半固化状態の前記第1の溶解液と前記第2の溶解液とを固化する工程と、前記針状凸部を支持するシート部が形成されるように、第3のポリマーを含む材料を前記モールドに重ねる工程と、前記針状凸部と前記シート部とにより構成されるポリマーシートを前記モールドから剥離する工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
ここで、第3のポリマーを含む材料をモールドに「重ねる」とは、例えば、シート部の材料となる第3のポリマーを含む溶解液をモールド上に付与して、当該溶解液をモールド上で固化することや、第3のポリマーを含み、既に固化したシート部を針状凸部に接着することを意味する。
【0025】
上記経皮吸収シートの製造方法によれば、針状凸部の根元部を構成する第2のポリマーが、先端部を構成する第1のポリマーに比べて、生体内での溶解速度が大きい経皮吸収シートを製造することができる。この経皮吸収シートを用いれば、患者体内に挿入される針状凸部のうち根元部が優先的に患者体内に溶解するので、薬剤を含む先端部及び中間部を患者体内に残留させて、患者皮膚への貼り付け時間を短縮することができる。
【0026】
また上記経皮吸収シートの製造方法によれば、第1の溶解液が半固化された状態で、第2の溶解液が充填されるため、第1の溶解液と第2の溶解液との混合液が固化した中間部を備える針状凸部が形成された経皮吸収シートを製造することができる。この経皮吸収シートの中間部は、薬剤を含むとともに、生体内での溶解速度が前記先端部よりも大きく、前記根元部よりも小さい。したがって、患者体内に残留した中間部が迅速に溶解して、当該中間部に含まれる薬剤が患者体内に放出されるので、投薬開始直後の薬剤の放出性を向上させることができる。
【0027】
上記経皮吸収シートの製造方法において、半固化された前記第1の溶解液のうち、前記モールドの前記針状凹部からはみ出した部分を回収する工程を含むことが好ましい。
【0028】
これにより、第1の溶解液のうち、モールドの針状凹部からはみ出した部分を回収して、当該回収した部分に含まれる薬剤を抽出することにより、薬剤を再利用することができる。
【0029】
上記経皮吸収シートの製造方法において、前記第1の溶解液を充填する工程では、前記モールドの前記針状凹部が形成された領域を囲むように、前記モールド上に枠を固定した状態で、前記枠の内部に前記第1の溶解液を充填することが好ましい。
【0030】
このように第1の溶解液のモールド上での濡れ広がりを制限する枠を用いることで、針状凹部からはみ出す第1の溶解液の割合を減らして、高価な薬剤の使用量を最小限に抑えることができる。
【0031】
上記経皮吸収シートの製造方法において、前記針状凹部の開口部はテーパー形状を有することが好ましい。
【0032】
このように針状凹部の開口部がテーパー形状であるモールドを用いることで、針状凹部からはみ出す第1の溶解液の割合を減らして、高価な薬剤の使用量を最小限に抑えることができる。また、底面積が大きい針状凸部が形成されるため、針状凸部の根元部の強度を改善することができる。
【0033】
上記経皮吸収シートの製造方法において、前記モールドはシリコーン樹脂を含むことが好ましい。
【0034】
剥離性に優れたシリコーン樹脂を用いることで、ポリマーシートをモールドから容易に剥離することが可能になる。
【0035】
上記経皮吸収シートの製造方法において、前記第1のポリマーは、ゼラチンを含むことが好ましい。
【0036】
ゼラチンは、水溶性であり、生体内での溶解速度が比較的小さいため、針状凸部の先端部を構成する第1のポリマーとして好適である。
【0037】
上記経皮吸収シートの製造方法において、前記モールドは、前記針状凹部が形成されたモールドユニットを複数個含むことが好ましい。
【0038】
モールドユニットを複数個含む大面積のモールドを用いることで、経皮吸収シートを効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、針状凸部の根元部が、先端部に比べて、生体内での溶解速度が大きいため、患者体内に挿入される針状凸部のうち根元部が優先的に患者体内に溶解して、薬剤を含む先端部及び中間部を患者体内に残留させることができる。したがって、患者皮膚への貼り付け時間を短縮することができる。
【0040】
また針状凸部の先端部と根元部との間に、薬剤を含み、生体内での溶解速度が前記先端部よりも大きく、前記根元部よりも小さい中間部が設けられる。これにより、中間部に含まれる薬剤が患者体内に迅速に放出されるので、投薬開始直後の薬剤の放出性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る経皮吸収シートを示す断面図である。
【図2】経皮吸収シートの薬剤の放出速度の経時変化の一例を示すグラフである。
【図3】投薬開始からの時間と、薬剤の積算放出量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る経皮吸収シートの製造方法を示す図である。
【図5】第1の溶解液を針状凹部に充填する加圧充填装置を示す図である。
【図6】経皮吸収シートの製造方法の他の例を示す図である。
【図7】複数のモールドユニットを含む大面積モールドを示す断面図である。
【図8】針状凹部からはみ出した第1の溶解液を示す断面図である。
【図9】第1の溶解液の濡れ広がりを制限する枠を用いて、第1の溶解液を充填する様子を示す断面図である。
【図10】テーパー形状の開口部を有する針状凹部が形成されたモールドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0043】
図1は経皮吸収シートの構造例を示す断面図である。同図に示すように、経皮吸収シート10は、ニードル部14がシート部12上に配列した構成を有する。
【0044】
経皮吸収シート10のニードル部14は、薬剤を含む先端部14Aと、生体内での溶解速度が先端部14Aよりも大きい根元部14Cと、薬剤を含み、先端部14Aと根元部14Cとの間に配置される中間部14Bとを備える。また中間部14Bの生体内での溶解速度は、先端部14Aの生体内での溶解速度よりも大きく、根元部14Cの生体内での溶解速度よりも小さい。
【0045】
上記構成の経皮吸収シート10が患者皮膚に貼り付けられると、患者体内に挿入されたニードル部14のうち根元部14Cが優先的に患者体内に溶解して、薬剤を含む先端部14A及び中間部14Bが患者体内に残留する。これにより、経皮吸収シート10の貼り付け時間を短縮することができる。
【0046】
また患者体内に残留した先端部14A及び中間部14Bが患者体内に溶解することで、先端部14A及び中間部14Bに含まれる薬剤が患者体内に放出される。ここで、中間部14Bは、生体内での溶解速度が先端部14Aよりも大きいため、中間部14Bに含まれる薬剤が患者体内に迅速に放出される。したがって、投薬開始直後の薬剤の放出性を向上させることができる。
【0047】
図2は、経皮吸収シート10の薬剤の放出速度の経時変化の一例を示すグラフである。図2に示すように、ニードル部14が患者体内に挿入されてから、中間部14Bが完全に溶解するまでの間(0≦T<T)は、先端部14Aの溶解と、中間部14Bの溶解とが同時に起こっており、ニードル部14全体としての薬剤の放出速度Vは、先端部14Aの薬剤の放出速度Vと、中間部14Bの薬剤の放出速度Vとの合計値になる。一方、中間部14Bが完全に溶解してから、先端部14Aが完全に溶解するまでの間(T≦T<T)は、先端部14Aの溶解のみが起こっており、ニードル部14全体としての薬剤の放出速度Vは、先端部14Aの薬剤の放出速度Vと略一致する。このように、薬剤を含むとともに、生体内での溶解速度が先端部14Aよりも大きい中間部14Bを設けることにより、投薬開始直後の薬剤の放出性を向上させることができる。
【0048】
ニードル部14の先端部14Aを構成する材料は、生体内で分解されやすい材料(生分解性材料)であるとともに、生体適合性を有する材料(生体適合材料)であることが好ましい。具体的には、ゼラチン、アガロース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アルギン酸、でんぷん、セルロースなどのゲル化性を有するポリマー(ゲル化性ポリマー)や、アクリルやポリスチレンなどのポリマーを使用することができる。これらの中でも、水溶性であり、生体内での溶解速度が比較的小さいゼラチンを用いることが好ましい。
【0049】
ニードル部14の根元部14Cを構成する材料は、生体内で分解されやすい材料(生分解性材料)であるとともに、生体適合性を有する材料(生体適合材料)であることが好ましい。また第2のポリマーは、水溶性であり、生体内での溶解速度が比較的大きいことが好ましく、例えば、糖類材料を使用することができる。具体的には、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類や、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロース等の二糖類や、デキストリン、デンプン、プルラン等の多糖類を使用することができる。
【0050】
ニードル部14の中間部14Bは、先端部14Aを構成する材料(第1のポリマー)と、根元部14Cを構成する材料(第2のポリマー)との混合物を含むことが好ましい。これにより、先端部14Aと中間部14Bとの間におけるニードル部14の破損や、根元部14Cと中間部14Bとの間におけるニードル部14の破損を低減することができる。
【0051】
先端部14Aの材料と、根元部14Cの材料との混合物を含む中間部14Bは、後述するように、先端部14Aの材料(第1のポリマー)を含む半固化状態(ゲル化状態)の第1の溶解液と、根元部14Cの材料(第2のポリマー)を含む第2の溶解液とを混合させることにより形成することができる。この場合、第1の溶解液のゼリー強度を調節して、中間部14Bの幅X(図1参照)を変化させることで、所望の薬剤の放出性を実現することができる。
【0052】
図3は、投薬開始からの時間と、薬剤の積算放出量との関係を示すグラフである。図3中、中間部14Bの幅がXの場合の薬剤の放出性を示すのが曲線Aであり、中間部14Bの幅がXの場合の薬剤の放出性を示すのが曲線Bであり、中間部14Bの幅がXの場合の薬剤の放出性を示すのが曲線Cであり、X<X<Xの関係が成立する。
【0053】
図3に示すように、中間部14Bの幅をXに設定すると(曲線Aの場合)、投薬開始直後から投薬終了までほぼ一定の速度で薬剤が放出される。中間部14Bの幅をXよりも大きいXに設定すると(曲線Bの場合)、投薬開始直後の薬剤の放出速度が大きくなる。中間部14Bの幅をXよりも大きいXに設定すると(曲線Cの場合)、投薬開始直後の薬剤の放出速度はさらに大きくなる。このように、中間部14Bの幅Xを調節することで、所望の薬剤の放出性を実現することができる。
【0054】
図1に示すシート部12の膜厚tは、患者皮膚の形状に合わせて柔軟に変形可能なフレキシブルな経皮吸収シート10を形成する観点から、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
ニードル部14の形状は、例えば、円柱や角柱などの柱形状や、円錐または角錐などの錐形状や、柱形状と錐形状とを組み合わせた形状(「錐柱形状」と呼ぶ。)や、これらに準ずる形状であってもよい。図1には、錐形状の先端部14Aと、柱形状の中間部14B及び根元部14Cとを有する錐柱形状のニードル部14を例示している。
【0056】
ニードル部14は、患者に与える痛みを軽減する観点から、先端が鋭く尖った高アスペクト比の構造体であることが好ましい。例えば、ニードル部14の幅(直径)は50〜250μmであることが好ましく、ニードル部14の先端の曲率半径は10μm以下であることが好ましい。ニードル部14の高さは100〜2000μmであることが好ましい。また、ニードル部14のアスペクト比は、患者皮膚への穿刺を容易にする観点から2以上であることが好ましく、ニードル部14の成形を容易にする観点から10以下であることが好ましい。ここで、ニードル部14の高さはシート部12の表面からの突起長さHを意味し、ニードル部14のアスペクト比Aは、ニードル部14の高さ(突起長さ)Hと幅(直径)Dを用いて、A=H/Dにより定義される。
【0057】
次に、上述の構成を有する経皮吸収シートの製造方法について説明する。
【0058】
図4は、経皮吸収シートの製造方法の一例を示す図である。
【0059】
まず、図4(a)に示すように、針状凹部22を有するモールド20上に、薬剤と第1のポリマーとを含む第1の溶解液30を付与する。
【0060】
針状凹部22は、モールド20の平坦部26に比べてくぼんだ領域であり、針状凹部22の形状は、所望の形状のニードル部が得られるように決定されることが好ましい。例えば、先端が鋭く尖った高アスペクト比のニードル部を形成する観点から、針状凹部22の幅(直径)を50〜250μmにして、最深部24の曲率半径を10μm以下にすることが好ましい。また、針状凹部22の深さは、100〜2000μmであることが好ましい。
【0061】
モールド20の材質は特に限定されないが、ポリマーシートの剥離時の損傷を防止する観点から、シリコーン樹脂等の剥離性が良好な樹脂を用いることができる。
【0062】
第1の溶解液30の付与方法として、バー塗布、スピン塗布、スプレー塗布などの塗布方式や、ディスペンサを用いて第1の溶解液30を滴下する方法が挙げられる。
【0063】
第1の溶解液30の付与量は、第1のポリマーにより構成される先端部がニードル部の所望領域に形成されるように、第1の溶解液30における第1のポリマーの濃度を考慮して、適宜調節される。
【0064】
第1の溶解液30は、薬剤と、固形成分としての第1のポリマーとが、水やアルコール等の溶媒に分散又は溶解した溶液である。
【0065】
本明細書において、「薬剤」とは、人体に対して何らかの有利な作用を及ぼす効能がある物質を総称するものであり、例えば、インシュリン、ニトログリセリン、ワクチン、抗生物質、喘息薬、鎮痛剤・医療用麻薬、局所麻酔剤、抗アナフェラキシー薬、皮膚疾患用薬、睡眠導入薬、ビタミン剤、禁煙補助剤、美容薬等を指す。
【0066】
第1の溶解液30に含まれる固形成分としての第1のポリマーは、生体内で分解されやすい材料(生分解性材料)であるとともに、生体適合性を有する材料(生体適合材料)であることが好ましい。具体的には、ゼラチン、アガロース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アルギン酸、でんぷん、セルロースなどのゲル化性を有するポリマー(ゲル化性ポリマー)や、アクリルやポリスチレンなどのポリマーを使用することができる。これらの中でも、水溶性であり、生体内での溶解速度が比較的小さいゼラチンを用いることが好ましい。
【0067】
なお、第1の溶解液30における第1のポリマーの濃度は、成形性を損なわずに短時間で溶媒を揮発させる観点から、10〜50重量%であることが好ましい。
【0068】
また、第1の溶解液30は、薬剤及び第1のポリマー以外にも種々の添加剤を含んでいてもよい。例えば、患者体内に薬剤をより効率的に吸収させる観点から、薬剤と併せてアジュバンドを第1の溶解液30に添加してもよい。
【0069】
次に、図4(b)に示すように、モールド20上の第1の溶解液30を、モールド20の針状凹部22に充填する。
【0070】
第1の溶解液30を針状凹部22に充填する方法として、第1の溶解液30をモールド20上に付与した後に第1の溶解液30を加圧充填する方法や、第1の溶解液30を減圧下でモールド20上に付与した後に大気圧に戻す方法などが挙げられる。第1の溶解液30は、溶媒の種類等によっては、減圧下で沸騰して、ポリマーシートの内部に気泡が混入してしまうこともあるため、加圧充填による前者の方法が好ましい。第1の溶解液30を針状凹部22に加圧充填する方法については、後で詳細に説明する。
【0071】
次に、図4(c)に示すように、針状凹部22に充填された第1の溶解液30を半固化する(ゲル化させる)。ここで、「第1の溶解液30を半固化する(ゲル化させる)」とは、任意の手法により、第1の溶解液30のゼリー強度(JIS K6503)を200〜2000g(ブルーム)にすることを意味する。半固化状態の第1の溶解液30のゼリー強度を調節することで、ニードル部14の中間部14Bの幅X(図1参照)を調節して、所望の薬剤の放出性を実現することができる。
【0072】
第1の溶解液30を半固化する(ゲル化させる)方法として、第1の溶解液30を自然乾燥する方法に加えて、加熱、送風、減圧などにより、第1の溶解液30を強制的にゲル化させる方法が挙げられる。
【0073】
特に、第1の溶解液30のゲル化を迅速に行う観点から、第1のポリマーのゲル化温度以下の温度の低湿空気を第1の溶解液30に送風することにより、第1の溶解液30の含水率を減少させるとともに、第1の溶解液30をゲル化させることが好ましい。
【0074】
次に、図4(d)に示すように、第1の溶解液30が針状凹部22内で半固化された(ゲル化した)モールド20上に、上記第1のポリマーよりも生体内での溶解速度が大きい第2のポリマーを含む第2の溶解液32を付与する。
【0075】
第2の溶解液32の付与方法として、バー塗布、スピン塗布、スプレー塗布などの塗布方式や、ディスペンサを用いて第2の溶解液32を滴下する方法が挙げられる。
【0076】
第2の溶解液32の付与量は、第2のポリマーにより構成される根元部がニードル部の所望領域に形成されるように、第2の溶解液32における第2のポリマーの濃度を考慮して、適宜調節されることが好ましい。
【0077】
第2の溶解液32は、固形成分としての第2のポリマーが、水・アルコールなどの溶媒に分散又は溶解した溶液である。
【0078】
第2の溶解液32に固形成分として含まれる第2のポリマーは、生体内で分解されやすい材料(生分解性材料)であるとともに、生体適合性を有する材料(生体適合材料)であることが好ましい。また第2のポリマーは、水溶性であり、生体内での溶解速度が比較的大きいことが好ましく、例えば、糖類材料を使用することができる。具体的には、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類や、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロース等の二糖類や、デキストリン、デンプン、プルラン等の多糖類を使用することができる。
【0079】
第2の溶解液32は、第2のポリマー以外にも種々の添加剤を含んでいてもよい。例えば、患者体内に薬剤をより効率的に吸収させる観点から、アジュバンドを第2の溶解液32に添加してもよい。
【0080】
次に、モールド20上の第2の溶解液32を、モールド20の針状凹部22に充填し、半固化状態(ゲル化状態)の第1の溶解液30と第2の溶解液32とを固化する。これにより、図4(e)に示すように、第1の溶解液30が固化した先端部14Aと、第2の溶解液32が固化した根元部14Cと、第1の溶解液30と第2の溶解液32との混合液が固化した中間部14Bとを備えるニードル部14がモールド20の針状凹部22内に形成される。
【0081】
半固化状態(ゲル化状態)の第1の溶解液30及び第2の溶解液32を固化する方法として、第1の溶解液30及び第2の溶解液32を自然乾燥する方法に加えて、加熱、送風、減圧などにより、第1の溶解液30及び第2の溶解液32を強制的に乾燥する方法が挙げられる。
【0082】
ニードル部14の中間部14Bの幅X(図1参照)は、第1の溶解液30のゼリー強度を変更することで、適宜調節することができる。例えば、第1の溶解液30のゼリー強度を比較的低い値(例えば、200〜500g)にすることで、より幅の広い中間部14Bを形成することができる。
【0083】
この後、ニードル部14が針状凹部22に形成されたモールド20上に、第3のポリマーを含む第3の溶解液を付与して固化する。これにより、図4(f)に示すように、ニードル部14がシート部12上に支持された構成のポリマーシート34が得られる。
【0084】
シート部12は患者体内に侵入するわけではないため、シート部12を構成する第3のポリマーは生分解性材料や生体適合材料に限られず、任意の材料を使用することができる。
【0085】
最後に、ポリマーシート34をモールド20から剥離することで、図4(g)に示す経皮吸収シート10が得られる。
【0086】
ポリマーシート34の剥離の態様として、例えば、片面に接着層を有するシートをポリマーシート34の裏面に付着させて当該シートごと剥離する方法や、ポリマーシート34の裏面に吸盤を吸着させて剥離する方法などが挙げられる。
【0087】
以上説明した方法により、ニードル部14がシート部12上に配列した構成を有する経皮吸収シート10が得られる。この経皮吸収シート10のニードル部14は、薬剤を含む先端部14Aと、生体内での溶解速度が先端部14Aよりも大きい根元部14Cと、薬剤を含み、先端部14Aと根元部14Cとの間に配置される中間部14Bとを備える。また中間部14Bは、生体内での溶解速度が先端部14Aよりも大きく、根元部14Cよりも小さい。
【0088】
次に、第1の溶解液30をモールド20の針状凹部22に加圧充填する方法について説明する。
【0089】
図5は第1の溶解液を針状凹部に充填する加圧充填装置を示す図である。同図に示す加圧充填装置50は、流入口58及び排出口60を備える耐圧容器52と、耐圧容器52の内部に設けられた台座54と、耐圧容器52に加圧流体を送り込むコンプレッサー56とを含む。この加圧充填装置50を以下の手順で動作させることで、第1の溶解液30を針状凹部22に充填することができる。
【0090】
第1の溶解液30を注型したモールド20が台座54に載置された状態で、コンプレッサー56により、流入口58を介して耐圧容器52に加圧流体を送り込む。
【0091】
加圧流体は、気体又は液体を用いることができる。加圧流体として使用可能な気体には、空気を挙げることができるが、第1の溶解液30への加圧流体の溶解を防止する観点から、第1の溶解液30に対する溶解率が低い気体を選択することが好ましい。
【0092】
第1の溶解液30の揮発による粘度上昇を防止する観点から、第1の溶解液30の溶媒と同種の液体を耐圧容器52の内部に予め溜めておき、耐圧容器52の内部が当該液体の蒸気で飽和した状態にすることが好ましい。
【0093】
上記の手順に従って、加圧充填装置50を動作させることにより、第1の溶解液30が針状凹部22に迅速に充填される。また、加圧充填装置50を上記と同様な手順で動作させることで、第2の溶解液32をモールド20の針状凹部22に充填することもできる。
【0094】
以上、本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0095】
例えば、上述の実施形態では、ニードル部14が形成されたモールド20に、第3の溶解液を付与して固化することで、ニードル部14を支持するシート部12を形成する例について説明したが、以下で説明するように、既に固化しているシート部12をニードル部14に貼り付けてもよい。
【0096】
図6は、経皮吸収シートの製造方法の他の一例を示す図である。なお、図6では、図4と共通する構成要素には同一の符号を付している。また、図6(a)〜図6(d)に示す手順は、図4(a)〜(d)に示す手順と共通するため、ここではその説明を省略する。
【0097】
第1の溶解液30が針状凹部22内で半固化された(ゲル化した)モールド20に、第2の溶解液32を付与した後、図6(d)に示すように、第2の溶解液32を針状凹部22に充填し、半固化状態(ゲル化状態)の第1の溶解液30と第2の溶解液32とを固化する。これにより、図6(e)に示すように、第1の溶解液30が固化した先端部14Aと、第2の溶解液32が固化した根元部14Cと、第1の溶解液30と第2の溶解液32との混合液が固化した中間部14Bとを備えるニードル部14がモールド20の針状凹部22内に形成される。このとき、図6(e)に示すように、ニードル部14と同時に、薄膜16が、ニードル部14の根元部14Cと一体的にモールド20上に形成されることが好ましい。
【0098】
次に、ニードル部14及び薄膜16が形成されたモールド20上に、粘着シートからなるシート部12をニードル部14に圧着する。これにより、図6(f)に示すように、ニードル部14がシート部12及び薄膜16により支持された構成のポリマーシート34が得られる。なお、樹脂シート等からなるシート部12を、接着剤により、ニードル部14に接着してもよい。この後、ポリマーシート34をモールド20から剥離することで、図6(g)に示す経皮吸収シート10が得られる。
【0099】
また上述の実施形態では、一個のモールド20を用いて経皮吸収シート10を製造する例について説明したが、複数のモールドユニットを含む大面積モールドを用いて経皮吸収シートを製造してもよい。
【0100】
図7は、複数のモールドユニットを含む大面積モールドを示す図である。図6に示す大面積モールド100は、針状凹部112を有する複数のモールドユニット110が、接着剤層114を介して基板116上に固定された構成を有する。大面積モールド100を用いて経皮吸収シートを製造すれば、生産効率が大幅に向上する。
【0101】
また、上述の実施形態では、モールド20に付与された第1の溶解液30を針状凹部22に充填した後、第1の溶解液30を半固化する例について説明したが、この手法によれば、図8に示すように、第1の溶解液30の一部(第1の溶解液30a)が、モールド20の針状凹部22からはみ出てしまう場合がある。針状凹部22からはみ出た第1の溶解液30aは、経皮吸収シート10の品質に何ら影響するものではないが、ニードル部14に薬剤を選択的に添加する観点から、第2の溶解液32を付与する前に除去されることが好ましい。なお、除去された第1の溶解液30aに含まれる薬剤を抽出することにより、薬剤を再利用することも可能である。
【0102】
また、針状凹部22からはみ出した第1の溶解液30aを少なくするために、モールド20上での第1の溶解液30の濡れ広がりを制限する枠を使用してもよい。
【0103】
図9は、第1の溶解液の濡れ広がりを制限する枠を用いて、針状凹部に第1の溶解液を充填する様子を示す図である。図9(a)に示すように、針状凹部22が形成された領域を囲む制限枠40がモールド20上に配置された状態で、第1の溶解液30が滴下される。これにより、第1の溶解液30のモールド20上での濡れ広がりが制限枠40により制限されるので、図9(b)に示すように、針状凹部22の内部だけに第1の溶解液30を充填可能である。
【0104】
あるいは、針状凹部22からはみ出して形成される第1の溶解液30aを少なくするために、図9に示す制限枠40を使用する方法に代えて又はこれと組み合わせて、針状凹部22の開口部をテーパー形状にしてもよい。
【0105】
図10は、テーパー形状の開口部を有する針状凹部が形成されたモールドを示す断面図である。同図に示すように、モールド20の針状凹部22の開口部22bをテーパー形状にすることで、第1の溶解液30が針状凹部22の内部に滑り落ちて溜まることから、針状凹部22からはみ出す第1の溶解液30aを少なくすることができる。また、図10に示すモールド20を用いれば、底面積が大きいニードル部14が形成されるので、ニードル部14の根元部分の強度を改善することができる。
【実施例1】
【0106】
本実施例では、上述の実施形態に係る方法により、以下に示すように経皮吸収シートを作製した。
【0107】
<第1の溶解液の充填>
針状凹部を有するシリコーンゴム製のモールドに、第1の溶解液を1ml滴下し、当該モールドを、ジャケットにより内部を40℃まで加熱された耐圧容器の中に投入した。この耐圧容器の内圧を、コンプレッサーからの圧縮空気で0.5MPaとして、3分間保持することで、第1の溶解液をモールドの針状凹部に充填した。この後、針状凹部からはみ出した第1の溶解液を、ブレードにより拭って除去した。
【0108】
<第1の溶解液の半固化(ゲル化)>
第1の溶解液が針状凹部に充填されたモールドを上記耐圧容器から取り出し、オーブンに投入して、10℃で10分、さらに40℃で1時間の乾燥処理を行った。これにより、第1の溶解液が、針状凹部内でゲル化した。このときの第1の溶解液のゼリー強度(JIS K6503)は、約1500g(ブルーム)であった。
【0109】
<第2の溶解液の充填及び第1の溶解液と第2の溶解液との固化>
上記と同様な方法で、第2の溶解液をモールド上に1.5ml滴下した後、加圧充填装置で充填した。この後、第2の溶解液が充填されたモールドをオーブンに投入して、50℃、2時間の乾燥処理を行って、第1の溶解液及び第2の溶解液を固化した。これにより、第1の溶解液が固化した先端部と、第2の溶解液が固化した根元部と、第1の溶解液と第2の溶解液との混合液が固化した中間部とを備えるニードル部が、モールドの針状凹部内に形成された。
【0110】
<ポリマーシートの剥離>
モールドに積層・接着したシリコーンシートを、モールドごと取り外した後、ポリマーシートの裏面に粘着テープを貼りつけて、当該粘着テープごとモールドから剥離して、経皮吸収シートを得た。以上説明した手順により、ニードル部がシート部上に配列した構成を有する経皮吸収シートが得られた。この経皮吸収シートのニードル部には、第1の溶解液と第2の溶解液との混合液が固化した中間部が形成されており、この中間部の厚さは約0.2mmであった。
【実施例2】
【0111】
実施例1と同様の条件で第1の溶解液をモールドの針状凹部に充填した後、このモールドをオーブンに投入して、60℃で20分間の乾燥処理を行った。これにより、第1の溶解液が、針状凹部内でゲル化した。このときの第1の溶解液のゼリー強度(JIS K6503)は、約300g(ブルーム)であった。
【0112】
そして、実施例1と同様の手順で、第2の溶解液の充填及び第1の溶解液と第2の溶解液の固化を行った後、シート部を形成して、経皮吸収シートを得た。の経皮吸収シートのニードル部には、第1の溶解液と第2の溶解液との混合液が固化した中間部が形成されており、この中間部の厚さは約0.3mmであった。
【符号の説明】
【0113】
10…経皮吸収シート、12…シート部、14…ニードル部、14A…先端部、14B…中間部、14C…根元部、20…モールド、22…針状凹部、24…最深部、26…平坦部、30…第1の溶解液、32…第2の溶解液、34…ポリマーシート、40…制限枠、50…加圧充填装置、52…耐圧容器、54…台座、56…コンプレッサー、58…流入口、60…排出口、100…大面積モールド、110…モールドユニット、112…針状凹部、114…接着剤層、116…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を含む先端部と、
生体内での溶解速度が前記先端部よりも大きい根元部と、
前記薬剤を含み、前記先端部と前記根元部との間に配置され、生体内での溶解速度が前記先端部よりも大きく、前記根元部よりも小さい中間部とを備える針状凸部と、
前記針状凸部を支持するシート部とを含むことを特徴とする経皮吸収シート。
【請求項2】
前記針状凸部の前記中間部は、前記先端部を構成する第1のポリマーと、前記根元部を構成する第2のポリマーとの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収シート。
【請求項3】
前記針状凸部の前記先端部は、ゼラチンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の経皮吸収シート。
【請求項4】
前記針状凸部の前記根元部は、糖類を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の経皮吸収シート。
【請求項5】
前記針状凸部の直径が50μm以上250μm以下であり、前記針状凸部の高さが100μm以上2000μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の経皮吸収シート。
【請求項6】
前記針状凸部の直径Dと高さHとを用いてA=H/Dで定義される前記針状凸部のアスペクト比が2以上10以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の経皮吸収シート。
【請求項7】
モールドの針状凹部に、薬剤と第1のポリマーとを含む第1の溶解液を充填する工程と、
前記針状凹部に充填された前記第1の溶解液を半固化する工程と、
前記第1の溶解液が前記針状凹部内で半固化された前記モールドに、前記第1のポリマーよりも生体内での溶解速度が大きい第2のポリマーを含む第2の溶解液を充填する工程と、
前記第1の溶解液が固化した先端部と、前記第2の溶解液が固化した根元部と、前記先端部と前記根元部との間に配置され、前記第1の溶解液と前記第2の溶解液との混合液が固化した中間部とを備える針状凸部が前記モールドの前記針状凹部に形成されるように、半固化状態の前記第1の溶解液と前記第2の溶解液とを固化する工程と、
前記針状凸部を支持するシート部が形成されるように、第3のポリマーを含む材料を前記モールドに重ねる工程と、
前記針状凸部と前記シート部とにより構成されるポリマーシートを前記モールドから剥離する工程とを含むことを特徴とする経皮吸収シートの製造方法。
【請求項8】
半固化された前記第1の溶解液のうち、前記モールドの前記針状凹部からはみ出した部分を回収する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項9】
前記第1の溶解液を充填する工程では、前記モールドの前記針状凹部が形成された領域を囲むように、前記モールド上に枠を固定した状態で、前記枠の内部に前記第1の溶解液を充填することを特徴とする請求項7又は8に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項10】
前記針状凹部の開口部はテーパー形状を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項11】
前記モールドはシリコーン樹脂を含むことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項12】
前記第1のポリマーは、ゼラチンを含むことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の経皮吸収シートの製造方法。
【請求項13】
前記モールドは、前記針状凹部が形成されたモールドユニットを複数個含むことを特徴とする請求項7乃至12のいずれか一項に記載の経皮吸収シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate