説明

経皮吸収製剤

【課題】本発明は、経皮吸収性に優れ、安全性及び使用性の高い、骨粗しょう症、骨ペイジェット病等の骨カルシウム代謝疾患治療に適したテープ型経皮吸収製剤を提供する
【解決手段】ビスフォスフォネート及び酸化防止剤を含有することを特徴とするテープ型経皮吸収製剤である。酸化防止剤はビスフォスフォネートに起因する皮膚炎症を抑制するために加えるのであり、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸水素ナトリウム、大豆レシチン、メチオニン、グリチルレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、メルカプトベンズイミダゾールが有効である。粘着剤組成物は、アクリル酸を50重量%以上含むアクリル系共重合体と多価アルコールからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨カルシウム代謝疾患治療に好適な経皮吸収製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療にはビスフォスフォネートの経口投与製剤又は注射剤が使用されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、ビスフォスフォネートの経口投与製剤を経口投与した場合の吸収率は1〜2%と極めて低く、食事と同時摂取した場合は更に80〜90%低下するという欠点があった。又、ビスフォスフォネートは胃及び食道に対して強い粘膜障害を有しており、経口ビスフォスフォネート製剤は、副作用として胃の不調や食道の炎症、糜爛を引き起こす。この粘膜障害を予防するには服用後30分間は臥位を避ける必要があるが、臥位を避ける姿勢は骨粗しょう症の70%を占める高齢者にとっては大きな負担であった。又、注射剤として注射器で医師や看護士に注射してもらうには時間と経費が必要であり、注射の際に消毒しないと細菌感染する、注射した時に急激にビスフォスフォネートの血中濃度が不必要に高くなる等の欠点があった。
【0004】
そのため、ビスフォスフォネートを寝たきりの高齢者であっても容易に投与することができ、投与後に臥位を避ける姿勢をとる必要のない製剤の開発が待たれていたが、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、パップ剤、テープ剤等の経皮吸収製剤(皮膚外用剤)についての開発はあまりなされていなかった(特許文献2−4)。開発が不活発であった理由として、皮膚外用剤におけるビスフォスフォネート製剤における皮膚刺激が原因であろうと思われる。特許文献4においては皮膚刺激を低減するためにゲラニオール/グリチルリチン酸/その塩、を用いることが記述されているが、本発明における発見である抗酸化剤の使用により皮膚刺激が著しく低減されることに関する記載はない。
【0005】
経皮吸収製剤(皮膚外用剤)としては、テープ型経皮吸収製剤、バッチ型経皮吸収製剤、パップ型経皮吸収製剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、口腔剤、点眼剤、座薬等が従来より公知である。中でもテープ型経皮吸収製剤およびパップ剤が好ましい。
上記テープ型経皮吸収製剤、バッチ型経皮吸収製剤、パップ型経皮吸収製剤等は、一般に、基剤に薬剤成分を溶解分散して得られる組成物を支持シートの一面に積層したものである。テープ製剤の粘着性組成物として、アクリル系共重合体に多価アルコールを加えた組成物が有効なことはすでに知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【0006】
【特許文献1】特公表2000−517324号公報
【特許文献2】特開2004−250330号公報
【特許文献3】特開2004−250423号公報
【特許文献4】特開2006−213658号公報
【特許文献5】特開2006−290858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、経皮吸収性に優れ、安全性及び使用性の高い、骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療に適した経皮吸収製剤を提供することにある。
【0008】
本発明者は、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、パップ剤、テープ剤等の経皮吸収製剤に有効成分としてビスフォスフォネートを含有させると、ビスフォスフォネートが経皮吸収され、骨カルシウム代謝疾患治療用の経皮吸収製剤として使用できることを見出すと同時に強い皮膚刺激性を伴うことをも見出した。
ビスフォスフォネートを経皮投与すると、薬剤の経皮吸収性の増大とともに皮膚の遅延性の皮膚炎症が認められた。本発明者らの実験によると、製剤貼付後24時間ではがした場合、皮膚の赤みの増大、水泡の発生といった皮膚炎症が認められたが、この副作用は剥した直後でなく剥してから2日目(48時間後)が最も激しかった。
【0009】
ビスフォスフォネート経皮吸収製剤の普及のためには、上記皮膚炎症の低減化が不可欠である。その皮膚刺激性はビスフォスフォネートの経皮吸収性の増大とともに増大することから、製剤に起因するものではなくビスフォスフォネート自身の皮膚毒性によるものであることを見出した。本皮膚炎症はビスフォスフォネートの皮膚への浸透に伴うものであって、活性酸素と関連していることは経口ビスフォスフォネート製剤の副作用から類推できる。よって本発明者等は、種々の酸化防止剤を製剤に併用して皮膚刺激の抑制を試み、皮膚毒性は製剤中に抗酸化剤を配合することにより著しく軽減されることを発見し本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のテープ型経皮吸収製剤は、医薬的に有効量のビスフォスフォネートと、ビスフォスフォネートに起因する皮膚炎症を抑制するための酸化防止剤と、アクリル酸を50重量%以上含むアクリル系共重合体と多価アルコールからなる粘着性組成物と、を混和してなる粘着剤層が支持シートの一面に積層されていることを特徴とする。
【0011】
上記ビスフォスフォネートは、従来から骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療に使用されている薬品である。代表的なビスフォスフォネートとしては、アレンドロネート、インカドロネート、エチドロネート、オルバドロネート、クロドロネート、ゾレドロネート、チルドロネート、ネリドロネート、バミドロネート、リセドロネート等が挙げられる。
【0012】
粘着性組成物中のビスフォスフォネートの濃度は0.1〜10重量%が好ましく、特に好ましいのは0.5〜5重量%である。濃度が0.1重量%以下であると医薬的な有効性を発揮しにくく、10重量%以上であるとビスフォスフォネートの経皮吸収量が多すぎて皮膚刺激性が高くなり経皮吸収製剤として不適となる。
【0013】
抗酸化剤のなかでも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸水素ナトリウム、大豆レシチン、メチオニン、グリチルレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスタキサンチン、トラネキサム酸、ポリフェノール、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、メルカプトベンズイミダゾール、等がビスフォスフォネート製剤の皮膚刺激低減に効果があった。
【0014】
なかでも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸水素ナトリウム、大豆レシチン、メチオニン、グリチルレチン酸、BHT、BHA、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、メルカプトベンズイミダゾールが皮膚刺激低減に著しい効果があった。
さらに、大豆レシチン、BHT、BHA、ビタミンE及びその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、メルカプトベンズイミダゾールが皮膚刺激低減に最も効果があった。
【0015】
これらの抗酸化剤は単独で、あるいは二種以上を組合せて用いることができる。また、酸化防止剤の添加量は、少なすぎると皮膚刺激低減効果が向上せず、多すぎると粘着性が低下するので、粘着剤組成物100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。
【0016】
上記粘着剤組成物中に経皮吸収促進剤を添加してビスフォスフォネートの経皮吸収を促進することも可能である。しかしながら一般に経皮吸収促進剤の添加は皮膚刺激の増大を招き易く注意して使用する必要がある。上記経皮吸収促進剤としては、例えば、メンソール等のアルコール類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル;ラウリン酸ジエタノールアミド等の酸アミド;コレステロール、ポリエチレングリコールジラウリルエーテル、ドデシル硫酸ナトリウム等の中性界面活性剤などが挙げられる。
【0017】
なお、酸化防止剤や経皮吸収促進剤は、粘着剤組成物の製造後にビスフォスフォネート等と共に粘着剤組成物に加え,混和して粘着剤層を形成する。したがって、酸化防止剤や経皮吸収促進剤は、粘着性組成物重合時のラジカル生成防止等の機能は有しない。
【0018】
上記支持シートとしては、特に限定されず、従来からテープ型経皮吸収製剤、バッチ型経皮吸収製剤、パップ型経皮吸収製剤等の支持シートとして一般に使用されているシートを用いることができる。例えば、酢酸セルロース、エチルセルロース、ABS樹脂、SIS樹脂、SEBS樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルミニウム等のシートが挙げられる。又、これらのシートは、上記材料の繊維の織布又は不織布であってもよいし、これらのシート、織布及び不織布の積層シートであってもよい。
【0019】
テープ型経皮吸収製剤の粘着性組成物は皮膚に対して粘着性が優れ、薬剤の溶解性に富み、かつ糊残りなく剥離できることが必要なので、アクリル系粘着性基剤が好適に使用される。しかしながら、本発明おけるアクリル系粘着剤性基剤は、汎用されているアクリル粘着剤とは異なる。汎用アクリル粘着剤はアクリル酸を4−10重量%含むアクリル系共重合体が多いが、そのような粘着剤は極性が低くビスフォスフォネートとの親和性が悪く不適である。本発明の比較例に示すように、汎用アクリル粘着剤を用いるとビスフォスフォネートが粘着剤中で拡散することがなく、粘着剤から皮膚へのビスフォスフォネートの供給が少なく経皮吸収性が極めて低い。同様な理由でゴム系粘着剤も好ましくない。適切なアクリル系粘着性基剤はアクリル酸を50重量%以上含むアクリル系共重合体に多価アルコールを添加してなる基剤である。多価アルコールと共存させないとアクリル酸を50重量%以上含むアクリル系共重合体は硬く、皮膚粘着性を有しない。
【0020】
上記アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーと極性モノマーとの(共)重合体を好適に使用できる。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、等が挙げられるが、アクリル酸2−エチルヘキシルが粘着性の観点から特に好ましい。アクリル酸2−エチルヘキシルよりアルキル鎖長の短いアクリル酸アルキルエステル、例えば、アクリル酸ブチルを使用した場合、アクリル系共重合体の疎水化が不十分となり、乾燥皮膚に対する粘着性が低下するので適当でない。逆に、アルキル鎖長の長いアクリル酸ドデシルを使用した場合、疎水性が強くなりすぎてアクリル酸との均一溶液を生成し難く、良好なアクリル系共重合体を得ることが困難となる
【0022】
上記官能性モノマーとしては、アクリル酸が最も好ましいが、メタアクリル酸でもよい。
上記極性モノマーとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド等が挙げられ、N−ビニル−2−ピロリドンが好ましい。これらは単独で用いられても併用してもよい。
【0023】
粘着剤組成物に官能性モノマーが多量に含まれていると、水溶性であるビスフォスフォネートやその誘導体はより均一に溶解され、経時結晶化が起こりにくくなる。従って上記アクリル系粘着剤は、アクリル酸を多量に含む粘着剤であることが必要である。粘着剤組成物の好ましい組成は、アクリル酸50〜100重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル0〜40重量%及び極性モノマー(アクリル酸を除く)0〜40重量%よりなるアクリル系共重合体100重量部と、多価アルコール100〜800重量部である。
【0024】
上記アクリル系共重合体における官能性モノマーであるアクリル酸の比率が50重量%未満になると疎水性が強くなり、高極性化合物であるビスフォスフォネートとの親和性が低くなり不適である。上記アクリル系共重合体における極性モノマーは粘着性の改善、薬物溶解性の改善などの効果がある。しかしその比率が40重量%を超えるとアクリル系共重合体の極性が高くなりすぎ、皮膚に対する濡れ性が低下し、適当な粘着性が得られなくなるので、0〜40重量%が好ましい。
【0025】
上記アクリル系共重合体の合成方法は特に限定されず、水性重合、溶液重合、懸濁重合等従来公知の重合方法のいずれでもよい。共重合モノマーとして多量のアクリル酸を含み、本発明の経皮吸収製剤を製造する際には水溶性のビスフォスフォネート又はその誘導体を均一に溶解できるのが好ましいので、アクリル酸、アクリル酸2−エチルヘキシル及び極性モノマーを均一に溶解しうる溶媒を用いて重合するのが好ましい。具体的には、これらを均一に溶解しうるように、水とアセトンを混合した水−アセトン混合溶媒を用いるのが好ましい。
【0026】
上記アクリル酸を50重量%以上含むアクリル系共重合体単独は硬すぎて良好な粘着性を有しない。粘着性を付与するために、上記アクリル系共重合体100重量部に対し、多価アルコールを50〜800重量部添加する必要がある。多価アルコールを添加することにより乾燥、湿潤両面に良好な粘着性を有し、しかも十分な凝集力を有する粘着剤が得られる。多価アルコールの添加量が50重量部未満であると可塑化作用が小さく粘着性が弱くなりすぎ、800重量部を超えるとアクリル系共重合体が過剰に可塑化され、凝集力と粘着力のバランスを取りにくくなる。
【0027】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、これらは単独で用いられても併用されてもよい。この中でもグリセリンが特に好適である。
【0028】
更に、アクリル系共重合体は架橋されるのが好ましい。架橋が無い状態で皮膚貼付すると皮膚の水分を吸収し柔らかくなり製剤を皮膚から剥す際に糊残り(粘着剤が皮膚に一部残る現象)を起こすことがある。架橋は金属キレート化剤で後架橋するのが好ましい。適度の凝集力と粘着性を得るためには、金属キレート化剤をアクリル系共重合体100重量部に対し0.05〜2.0重量部添加するのが好ましい。
【0029】
上記金属キレート化剤としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムグリシネート、水酸化アルミニウムゲル等が挙げられ、これらは単独で用いられても併用されてもよい。
【0030】
アクリル酸100%からなるアクリル樹脂にグリセリン、水を添加した皮膚用粘着剤はパップ剤組成である。その際は周知の水溶性樹脂を添加してよい。
上記水溶性樹脂としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキメチルシスターチ、などの半合成ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、などの合成ポリマーが挙げられる。
【0031】
パップ型経皮吸収製剤に含まれる水の量は、水の含有量が少ないと薬物の吸収が遅くなる傾向がある。逆に多くなると、水溶性ポリマーの流動性が大きくなり、製剤の形状を保持するのが困難になる傾向があるので、一般に組成物中の20〜90重量%であり、好ましくは40〜80重量%である。
【発明の効果】
【0032】
本発明のテープ型経皮吸収製剤の構成は上述の通りである。本発明のテープ型経皮吸収製剤は、酸化防止剤を加えることにより、ビスフォスフォネートによる皮膚刺激を軽減若しくは皆無とすることができた。投与後に臥位を避ける姿勢をとる必要がないので、寝たきりの高齢者であっても皮膚に貼付して容易に投与でき、使用性が高い。本製剤は経皮吸収性が優れているので、ビスフォスフォネート又はその誘導体を長時間にわたり、血中濃度を一定に保ちながら安全に且つ速やかに皮膚刺激なく供給できる。そのため骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療に適している。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0033】
次に、本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
粘着剤Aの合成
パラオキシ硫酸カリウムとピロ亜硫酸カリウムの2:1混合物0.3gを30mlの水に溶解して触媒水溶液を得た。攪拌機付きの3000mlの反応容器に、水−アセトン1:1(容積比)の混合溶媒2000ml、アクリル酸500g、アクリル酸2−エチルヘキシル60g及びN−ビニル−2−ピロリドン60gを仕込み、攪拌及び窒素置換をしつつ温度を上昇させた。温度が75℃になった時に前記触媒水溶液10mlを添加して重合を開始した。その後、2時間間隔で前記触媒水溶液4mlづつ添加した。温度を75℃に保ちつつ重合を進め計10時間で重合を終了して粘着剤A溶液を得た。
【0034】
粘着剤Bの合成
得られた粘着剤A100gにアルミニウムアセチルアセトネートのTHF溶液を粘着剤固形分100gに対しアルミニウムアセチルアセトネートが0.15gになるように添加して架橋された粘着剤B溶液を得た。
【0035】
粘着剤Cの合成(比較粘着剤)
攪拌機付きの500ml反応容器に、酢酸エチル300g、アクリル酸2−エチルヘキシル90g、アクリル酸10g及びアゾビスイソブチロニトリル0.005gを仕込み、反応容器内を窒素置換した後、75℃で15時間重合を行って粘着剤C(固形分25重量%)溶液を得た。
【0036】
(実施例1〜10、比較例1〜4)(テープ剤の作製)
表1に示した所定量(重量部)の粘着剤A〜C溶液、多価アルコール及び酸化防止剤各種とを混合した後、表1に示した所定量(重量部)のアレンドロネート、インガドロネート、を10重量部の水に溶解した溶液を添加し、次いで、厚さ40μmのポリエステルフィルムに塗布乾燥して厚さ100μmの粘着剤層が積層されたテープ型経皮吸収製剤を得た。
【0037】
(実施例11)(パップ剤の作製)
ポリアクリル酸(8g)(分子量25万、和光純薬製)、グリセリン(30g)、水酸化アルミニウム(0.1g)、酒石酸(0.15g)、水(62g)、アレンドロネート(1g)、BHT(0.3g)を均一に攪拌した。得られた攪拌物を、ポリエステル製の不織布(日本バイリーン株式会社製貼付薬用基布)に塗布展延した後、塗布面にポリプロピレンフィルムを貼りあわせ、所定の大きさに裁断して試験片とした。
【0038】
【表1】

【0039】
得られたテープ型経皮吸収製剤、パップ型経皮吸収製剤を用いて状況観察試験、薬物経皮吸収性試験及び皮膚刺激性試験を実施し、結果を表2に示した。
【0040】
性状観察試験
得られた製剤より直径2cmの円形部分を打ち抜き、粘着性の有無、表面ブリード性などを観察し、粘着性製剤としての適否を判断した。この試験で不適となった製剤に関しては以下の試験を実施しなかった。
【0041】
薬物経皮吸収性試験
ひと皮膚を37℃の水を循環させたフランツ型拡散セルに挟み、レシーバー(真皮)側にPBS緩衝溶液(pH7.4)を供給し、マグネティックスターラーにより攪拌した。ドナー(角質)側には得られた経皮吸収製剤を適用し、透過試験を行った。4時間後、8時間後及び24時間後にレシーバー中の混合液を採取して、その中の薬物濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により測定し、皮膚を透過した累積薬物量を求めた。
【0042】
皮膚刺激性試験
ウイスター系雄性ラット(体重240−280g)の腹部をシェイバーで除毛し、テープ型経皮吸収製剤を直径2cmの円形に打抜き腹部に貼付し、その上をガムテープで固定した。24時間後にテープを剥離した。剥離後48時間後の皮膚刺激性をドレイツの判定基準に従って評価した。表2中の数値は3個体の平均値である。
ドレイツの判定基準の評点は次の通りである。0:紅斑なし、1:非常に軽度な紅斑、2:はっきりした紅斑、3:中程度ないし高度紅斑、4:高度紅斑からわずかな痂皮。
【0043】
【表2】

【0044】
表2において、比較例1は粘着面が硬いため、比較例2は粘着面に液体ブリードがあるため皮膚接着性がなかった。また、比較例3は、汎用アクリル粘着剤ではビスフォスフォネートの経皮吸収性が小さくなる例である。比較例4は、抗酸化剤を含まないため皮膚刺激性が高い。
【0045】
表2に示されるように、実施例1−10の経皮吸収製剤は、ビスフォスフォネート透過性が高くかつ皮膚刺激性が小さい。本発明のテープ型経皮吸収製剤は皮膚刺激性が小さく皮膚吸収性がよく、長期にわたって安心して使用できることが示された。
実施例11のパップ剤についても同様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬的に有効量のビスフォスフォネートと、
酸化防止剤と、
アクリル酸を50重量%以上含むアクリル系共重合体と多価アルコールからなる粘着性組成物と、
を混和してなる粘着剤層が支持シートの一面に積層されていることを特徴とするテープ型経皮吸収製剤。
【請求項2】
上記酸化防止剤が、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸水素ナトリウム、大豆レシチン、メチオニン、グリチルレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、メルカプトベンズイミダゾールからなる群より選ばれた1種以上の酸化防止剤であることを特徴とする請求項1に記載のテープ型経皮吸収製剤。
【請求項3】
上記酸化防止剤が、大豆レシチン、BHT、BHA、ビタミンE、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、メルカプトベンズイミダゾールのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のテープ型経皮吸収製剤。
【請求項4】
粘着剤組成物の組成が、アクリル酸50〜100重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル0〜40重量%及び極性モノマー(アクリル酸を除く)0〜40重量%よりなるアクリル系共重合体100重量部と、多価アルコール50〜800重量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載のテ−プ型経皮吸収製剤。
【請求項5】
粘着剤組成物の組成が、アクリル酸50〜100重量%、アクリル酸2−エチルヘキシル0〜40重量%及び極性モノマー(アクリル酸を除く)0〜40重量%よりなるアクリル系共重合体100重量部と、多価アルコール50〜800重量部であり、ビスフォスフォネートの含有量が粘着性組成物に対し0.1〜10重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のテ−プ型経皮吸収製剤。
【請求項6】
極性モノマーが、N−ビニル−2−ピロリドン、酢酸ビニル、アクリル酸メトキシエチル及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群より選ばれた1種以上の極性モノマーであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のテープ型経皮吸収製剤。
【請求項7】
多価アルコールが、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群より選ばれた1種以上の多価アルコールであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のテープ型経皮吸収製剤。
【請求項8】
アクリル系共重合体が、アルミニウムアセチルアセトネート、水酸化アルミニウムゲル及びアルミニウムグリシネートからなる群より選ばれた1種以上の金属キレート架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のテープ型経皮吸収製剤。

【公開番号】特開2010−285412(P2010−285412A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156166(P2009−156166)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(501296380)コスメディ製薬株式会社 (42)
【Fターム(参考)】