説明

経皮持続送達ドネペジル組成物および該組成物を使用する方法

経皮持続送達ドネペジル活性剤組成物を提供する。本発明の該組成物の態様は、該組成物が対象に局所的に適用された場合にドネペジル活性剤の治療的有効量の該対象への数日間にわたる送達を提供するように製剤化されたドネペジル活性剤層を含む。該製剤を使用する方法、例えば、対象にドネペジル活性剤を投与する方法、および該製剤を含有するキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
35U.S.C.§119(e)に従って、本出願は2008年9月30日に出願された米国仮特許出願第61/101,412号の出願日に対する優先権を主張するものであって、その出願の開示は参照することによって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
イントロダクション
アルツハイマー病は、認知症、すなわち正常な老化から予想されうる程度を超えた認知機能の進行性の低下をもたらす退行性脳疾患である。最も一般的な症状は短期記憶喪失であり、後発的症状は、彼または彼女の感覚が低下するに従って、錯乱、怒り、気分変動、言語障害、長期記憶喪失、および対象の引きこもり(general withdrawal)を含む。アルツハイマー病には現在治療法がないが、その症状は活性剤、例えばアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、およびタクリンなど)ならびにN−メチルD−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト(例えば、メマンチン)などによって治療することができる。
【0003】
ドネペジルは、化学的に(±)−2,3−ジヒドロ−5,6−ジメトキシ−2−[[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]メチル]−1H−インデン−1−オンとして知られているが、アルツハイマー病の症状を治療するために用いられる可逆性アセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。典型的には、ドネペジルは経口投与用の錠剤形態にてドネペジル塩酸塩として提供される(例えば、アリセプト(Aricept(登録商標))、ファイザー、ニューヨーク)。
【0004】
経皮活性剤製剤(Transdermal active agent formulations)は、経皮パッチまたは皮膚パッチとしても知られているが、活性剤を含有する接着パッチであり、皮膚に貼られ、皮膚を通して活性剤を送達するものである。経皮パッチは経皮吸収によって活性剤を送達するが、これは無傷の皮膚を通じた物質の吸収である。経皮パッチが皮膚に適用された後、パッチに含有されている活性剤は皮膚を透過または浸透し、全身の血流を通じてその作用部位に達することができる。あるいは、経皮パッチは、パッチに含有されている薬剤が局所的に送達されるように所望の治療部位に貼られてよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概略
経皮持続送達ドネペジル活性剤組成物(transdermal extended-delivery donepezil active agent composition)を提供する。本発明の該組成物の態様は、該組成物が対象に局所的に適用された場合にドネペジル活性剤の治療的有効量の該対象への数日間にわたる送達を提供するように製剤化されたドネペジル活性剤層を含む。また、該製剤を使用する方法、例えば、対象にドネペジル活性剤を投与する方法、および該製剤を含有するキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本明細書で記載されている経皮活性剤製剤の実施態様の断面図を示す。
【図2】図2〜4は、下記の実験項にて報告する結果を図示したものである。
【図3】図2〜4は、下記の実験項にて報告する結果を図示したものである。
【図4】図2〜4は、下記の実験項にて報告する結果を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な記載
経皮持続送達ドネペジル活性剤組成物を提供する。本発明の該組成物の態様は、該組成物が対象に局所的に適用された場合にドネペジル活性剤の治療的有効量の該対象への数日間にわたる送達を提供するように製剤化されたドネペジル活性剤層を含む。また、該製剤を使用する方法、例えば、対象にドネペジル活性剤を投与する方法、および該製剤を含有するキットを提供する。
【0008】
本発明をより詳細に記載する前に、本発明は記載された特定の実施態様に限定されるものではなく、当然のことながら変形してもよいと理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で用いられている用語は特定の実施態様を記載する目的で提供されているに過ぎず、本発明を限定することは意図しないことも理解されたい。
【0009】
値の範囲が提供されている場合、文脈において明確に別段の指示がない限り下限値の単位の10分の1まで(to the tenth of the unit of the lower limit)、その範囲の上限値と下限値の間の各中間の値、およびその示された範囲のいずれかの他の示されたまたは中間の値が、本発明の範囲内に包含されると理解されたい。これらのより狭い範囲の上限値および下限値は、より狭い範囲に独立して含まれてよく、これらも本発明の範囲内に包含され、示された範囲内でいずれかの明確に除外された境界値(limit)に従う。示された範囲が境界値の一方または両方を含む場合、含まれる境界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0010】
本明細書における特定の範囲は、用語「約」の後に続く数値によって示されている。用語「約」は、その後に続く正確な数についての文字によるサポートのみならず、該用語の後に続く数に近い数またはおおよその数を提供するために本明細書で用いられている。ある数が明確に示された数に近い数またはおおよその数であるかどうかを決定する際、その近いまたはおおよその示された数は、それが示されている文脈において、明確に示された数の実質的な均等物を提供する数であってよい。
【0011】
特に定義しない限り、本明細書で用いられている全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同一意味を有する。本明細書で記載されているものと類似または均等ないずれかの方法および物質も本発明の実施または試験に用いられてよいが、代表的な例示的方法および物質は以下で記載される。
【0012】
本明細書で引用している全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照することによって援用されるために具体的かつ個々に示されているかのように参照することによって本明細書に援用され、該刊行物が関連するものとして引用されている方法および/または物質を開示および記載するために参照することによって本明細書に援用される。いずれかの刊行物の引用は出願日前の刊行物の開示のために提供されているのであって、本発明が先行発明を理由として該刊行物に先行しないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行物の日付は、独立して確認を要しうる実際の刊行日と異なっているかもしれない。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられている単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈において明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲はいずれかの任意の要素を除外するように起案されてよいことにもさらに留意されたい。それ自体、この記載は特許請求の範囲の要素の記述(recitation)に関連した「もっぱら(solely)」および「のみ(only)」などの排他的な用語の使用、または「否定的な」限定の使用のための先の記載としての役割を果たすことを意図する。
【0014】
本開示を読んだ当業者にとっては明らかなことであろうが、本明細書で記載および例示されている個々の実施態様は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他のいくつかの実施態様のいずれかの特徴と容易に区別または組み合わせうる別々の構成要素および特徴を有する。いずれかの示された方法は、示された事象の順序または論理的に可能ないずれかの他の順序にて実施することができる。
【0015】
本発明のさまざまな実施態様をさらに記載するに際し、第一に経皮ドネペジル組成物の態様をさらに詳細にレビューし、次いで該組成物を使用する方法を詳細に記載し、該経皮製剤を含むキットをレビューする。
【0016】
経皮抗認知症活性剤製剤(TRANSDERMAL ANTI-DEMENTIA ACTIVE AGENT FORMULATIONS)
上記で概要を述べたように、経皮ドネペジル組成物を提供する。本発明の組成物はドネペジル活性剤層を含み、ここで該ドネペジル活性剤層は該組成物が対象に局所的に適用された場合にドネペジル活性剤の治療的有効量の該対象への数日間にわたる送達を提供するように製剤化されている。数日間にわたる送達は、該組成物が対象の皮膚部位に適用された場合に、一定期間、すなわち2日間以上、例えば3日間以上、例えば5日間以上、例えば7日間以上、例えば10日間以上対象に治療的有効量を提供するように該層が製剤化されていることを意味する。治療的有効量は、該組成物が対象の皮膚部位に目的の適用期間、例えば7日間以内適用された場合に、所望の治療活性を提供するドネペジルの全身量を提供することを意味する。いくつかの実施態様では、該組成物は、1週間(すなわち、7日間または168時間)にわたって5mg/日以上、例えば1週間にわたって10mg/日以上、例えば1週間にわたって15mg/日以上のドネペジルの標的投与量の送達を提供する。本発明の実施態様の活性剤組成物は、高皮膚浸透速度(例えば下記の実験項にて報告する皮膚浸透アッセイを使用して決定される)を提供するように製剤化されている。特定の実施態様では、1.5μg/cm/hr以上、例えば2.5μg/cm/hr以上、例えば3.5μg/cm/hr以上の皮膚浸透速度が該組成物によって提供される。
【0017】
経皮組成物の大きさ(すなわち面積)は変動してよい。特定の実施態様では、該組成物の大きさは、活性剤の所望の経皮流動速度および標的投与量を考慮して選択される。例えば、経皮流動が3.4μg/cm/hrであり、かつ標的投与量が5mg/日である場合、経皮組成物は約43cmの面積を有するように選択される。または、例えば、経皮流動が3.4μg/cm/hrであり、かつ標的投与量が10mg/日である場合、経皮パッチは約87cmの面積を有するように選択される。特定の実施態様では、該組成物は、皮膚部位に適用された場合に、10〜200、例えば20〜150、例えば40〜140cmの範囲の皮膚の面積を覆うように選択された大きさを有する。
【0018】
該組成物のドネペジル活性剤層の厚さは変動してよい。いくつかの例では、活性剤層の厚さは、25〜250、例えば50〜200、例えば100〜150μmの範囲の厚さを有する。
【0019】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物はドネペジル活性剤層、バッキング層および剥離ライナーを含む。例えば、図1は本発明の実施態様の組成物1であるが、該組成物1はバッキング層2、ドネペジル活性剤層3、および剥離ライナー4を含む。これらの層の各々は、以下でより詳細に記載される。
【0020】
ドネペジル活性剤層
本発明の組成物のドネペジル活性剤層は、ドネペジル活性剤を含む。ドネペジル活性剤は、ドネペジル遊離塩基またはその塩、例えば、ドネペジル塩酸塩を意味する。ドネペジル遊離塩基は実験式C2429NOおよびIUPAC名(±)−2,3−ジヒドロ−5,6−ジメトキシ−2−[[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]メチル]−1H−インデン−1−オンを有する。ドネペジルは下記の化学構造を有する:
【化1】

【0021】
ドネペジルの塩は塩酸塩などを含んでよい。ドネペジル塩酸塩、またはドネペジル−HClは、実験式C2429NO・HClおよびIUPAC名(±)−2,3−ジヒドロ−5,6−ジメトキシ−2−[[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]メチル]−1H−インデン−1−オン塩酸塩を有する。ドネペジル−HClは下記の化学構造を有する:
【化2】

【0022】
該ドネペジル活性剤層中に存在するドネペジル活性剤の量は、対象の皮膚部位に適用された場合に、対象にドネペジルの所望の持続送達を提供するのに十分な量である。特定の実施態様では、該ドネペジル活性剤層は、10%〜35%(w/w)、例えば15〜30%(w/w)、例えば20〜25%(w/w)の範囲の量のドネペジル活性剤を含む。特定の実施態様では、該ドネペジル活性剤層は、固体および不溶解のドネペジル活性剤を含まない。これは、該ドネペジル活性剤層が結晶もしくは他の固体形態のドネペジル活性剤、または該組成物中に存在しないドネペジル活性剤を含まないことを意味する。
【0023】
ドネペジル活性剤に加えて、該ドネペジル活性剤層の実施態様は経皮吸収促進剤を含む。該組成物の実施態様に使用される経皮吸収促進剤は、対象の皮膚によるドネペジル活性剤の吸収を促進する。従って、経皮吸収促進剤は、活性剤の経皮吸収のみならず、対象の皮膚を通じた活性剤の経皮浸透をも促進しうるため、経皮透過促進剤と呼ばれてもよい。
【0024】
経皮吸収促進剤として興味深いのはアルコールのポリオキシエーテル、例えば8〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和高級アルコール、例えばオレイルアルコールおよびラウリルアルコールを含む脂肪族アルコールのポリオキシエーテルなどであり、これらに限定されない。特定の実施態様では、経皮吸収促進剤は式:
2m+1(OCHCHOH
[式中:
mは8〜22の範囲の整数、例えば8〜18であり;かつ
nは2〜25の範囲の整数、例えば2〜23である]
によって記載される。
【0025】
興味深い具体的な経皮吸収促進剤は、ラウレス−4およびラウレス−23、ならびにその組み合わせを含む。
【0026】
場合によっては、該ドネペジル活性剤層は2%〜25%(w/w)、例えば10%〜25%(w/w)、例えば15%〜25%(w/w)の範囲の量にて経皮吸収促進剤を含有し、ここで15%(w/w)は特定の実施態様中に存在するものである。
【0027】
特定の実施態様では、本発明の経皮ドネペジル組成物は、接着フォーマット(adhesive format)、例えば接着テープまたは接着パッチにて提供される。これらの実施態様のいくつかにおいて、ドネペジル活性剤層は接着層であるため、該組成物が皮膚表面に適用された場合に、皮膚表面への活性剤層の接着力によって該組成物が皮膚表面に接着する。
【0028】
これらの実施態様のいくつかにおいて、該ドネペジル活性剤層は感圧接着剤を含む。用語「感圧接着剤(pressure-sensitive adhesive)」、「粘着剤(self adhesive)」、および「粘着剤(self-stick adhesive)」は、圧力が適用された場合に接着剤を表面と接着するための結合を形成する接着剤を意味する。いくつかの例では、該接着剤は、接着剤を活性化するのに溶媒、水、または熱を要しないものの1つである。
【0029】
興味深い感圧接着剤はアクリレートコポリマーを含み、これに限定されない。興味深いアクリレートコポリマーは、「ソフト」モノマー、「ハード」モノマー、および任意に「機能性」モノマーであってよいさまざまなモノマーのコポリマーを含む。同様に興味深いのは、該コポリマーを含む混合物である。アクリレートコポリマーは、バイポリマー(すなわち、2つのモノマーで製造される)、ターポリマー(すなわち、3つのモノマーで製造される)、もしくはテトラポリマー(すなわち、4つのモノマーで製造される)、またはさらに多数のモノマーから製造されるコポリマーを含むコポリマーで構成されてよい。アクリレートコポリマーは架橋および非架橋ポリマーを含んでよい。ポリマーは、所望のポリマーを提供するために既知の方法によって架橋されてよい。
【0030】
アクリレートコポリマーの原料となるモノマーは、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリレート、コポリマー化できる二次モノマー(copolymerizable secondary monomers)または官能基を有するモノマーを含む群から選択される少なくとも2つ以上の典型的な構成要素を含む。興味深いモノマー(「ソフト」および「ハード」モノマー)は、メトキシエチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルブチルアクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、アクリロニトリル、メトキシエチルアクリレート、およびメトキシエチルメタクリレートなどを含み、これらに限定されない。アクリル接着剤モノマーのさらなる例は、Satas, "Acrylic Adhesives," Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology, 2nd ed., pp. 396-456 (D. Satas, ed.), Van Nostrand Reinhold, New York (1989)に記載されている。
【0031】
興味深いのは、極性機能性モノマー残基を含むアクリレートコポリマーである。特に興味深いのは、−COOH官能基を提供するモノマー残基である。−COOH官能基を提供する有用なカルボン酸モノマーは約3〜約6個の炭素原子を含有してよく、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸などを含んでよい。アクリル酸、メタクリル酸およびその混合物は、特定の実施態様で使用される酸である。機能性モノマーは2wt%以上、例えば3〜10wt%の量にてコポリマーの特定の実施態様中に存在する。
【0032】
いくつかの実施態様では、接着剤はDuroTak(登録商標)87−2852(National Adhesives、Bridgewater、NJ)の組成と同一または実質的に同一の組成を有してよい。本明細書で用いられている用語「実質的に同一」は、有機溶媒溶液中のアクリレート−ビニルアセテートコポリマーであり、本明細書で記載されている機能性を提供する組成物を指す。いくつかの実施態様では、アクリル感圧接着剤はDuroTak(登録商標)87−2852である。
【0033】
いくつかの実施態様では、接着剤はDuroTak(登録商標)87−2054(National Adhesives、Bridgewater、NJ)の組成と同一または実質的に同一の組成を有してよい。本明細書で用いられている用語「実質的に同一」は、有機溶媒溶液中のアクリレート−ビニルアセテートコポリマーであり、本明細書で記載されている機能性を提供する組成物を指す。いくつかの実施態様では、アクリル感圧接着剤はDuroTak(登録商標)87−2054である。
【0034】
いくつかの実施態様では、接着剤はDuroTak(登録商標)87−2196(National Adhesives、Bridgewater、NJ)の組成と同一または実質的に同一の組成を有してよい。本明細書で用いられている用語「実質的に同一」は、有機溶媒溶液中のアクリレート−ビニルアセテートコポリマーであり、本明細書で記載されている機能性を提供する組成物を指す。いくつかの実施態様では、アクリル感圧接着剤はDuroTak(登録商標)87−2196である。
【0035】
興味深いポリアクリレートに基づく接着剤の他の例は下記の通りであり、製品番号で同定されており、National Starch(DURO−TAK(登録商標)はNational Starch adhesivesの登録商標である)によって製造されている:87−200A、87−2353、87−2100、87−2051、87−2052、87−2194、87−2677、87−201A、87−2979、および87−2074。
【0036】
バッキング層(Backing Layer)
上記で概要を述べたように、本発明の組成物はバッキング層を含んでよい。バッキングはある程度の可動性を有してよく、皮膚表面と密接な接触をしてよい。特定の実施態様では、バッキングは活性剤を吸収せず、活性剤をバッキングサイド(backing side)から放出させない。バッキングは、不織布、織物、フィルム(シートを含む)、多孔質体、発泡体(foamed bodies)、紙、不織布または織物上にフィルムを積層することによって得られる複合材料、およびこれらの組み合わせを含んでよく、これらに限定されない。
【0037】
不織布は下記のものを含んでよく、これらに限定されない:ポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン;ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートおよびポリエチレンナフタレート;さらに、レイヨン、ポリアミド、ポリ(エステルエーテル)、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、およびスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンコポリマー;ならびにこれらの組み合わせ。織物は綿、レイヨン、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせを含んでよく、これらに限定されない。
【0038】
フィルムは下記を含んでよく、これらに限定されない:ポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン;ポリアクリル樹脂、例えばポリメチルメタクリレートおよびポリエチルメタクリレート;ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートおよびポリエチレンナフタレート;さらに、セロファン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、フルオロ樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエン、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリアミド、およびポリスルホン;ならびにこれらの組み合わせ。
【0039】
紙は含浸紙、コート紙、上質紙(wood free paper)、クラフト紙、和紙、グラシン紙(glassine paper)、合成紙、およびこれらの組み合わせを含んでよく、これらに限定されない。複合材料は、上記のフィルムを上記の不織布または織物上に積層することによって得られる複合材料を含んでよく、これらに限定されない。
【0040】
剥離ライナー(Release Liner)
いくつかの実施態様では、剥離ライナーはドネペジル活性剤層の上、特にバッキング層(存在する場合には)から遠位の(すなわち反対側)にある活性剤層の表面上に提供される。剥離ライナーは活性剤層の保護を促進する。剥離ライナーは、ポリエチレンでコーティングした上質紙、ポリオレフィンでコーティングしたグラシン紙、ポリエチレンテレフタラート(ポリエステル)フィルム、またはポリプロピレンフィルムなどの片側を、シリコン処理によって処理することによって製造してよい。
【0041】
接着性オーバーレイ(Adhesive Overlay)
任意に、皮膚に適用した場合に組成物の接着力を増加させるために、接着性オーバーレイが用いられてよい。接着性オーバーレイは、バッキング材料、例えば多孔性、非多孔性、閉塞性、または通気性のあるバッキング材料上に存在する接着剤の層を含んでよい。接着性オーバーレイの大きさは所望の機能性を提供するように選択され、いくつかの例では、大きさは、接着性オーバーレイが活性剤製剤上に適用された場合に、活性剤製剤の1つ以上の側面の外側にある程度広がる(extends some distance)ように選択される。いくつかの例では、接着性オーバーレイの面積は、活性剤製剤の面積を5%以上、例えば10%以上、例えば20%以上超える。使用の間、接着性オーバーレイは患者もしくは介護人によって適用されてよく、またはキット内に組み込まれてよい。
【0042】
方法
対象にドネペジル活性剤を投与する方法も提供する。特定の実施態様では、該方法は、対象の皮膚部位に本発明の経皮ドネペジル活性剤組成物を適用すること、および、例えば、上記で詳述したように、ドネペジル活性剤を該対象に送達するのに十分な一定時間、該対象の皮膚部位に該組成物を保持することを含む。経皮活性剤組成物は、対象の皮膚、例えば角質化した皮膚部位などの皮膚部位に適用されてよい。経皮活性剤組成物は、該組成物が皮膚表面への活性剤層の接着力によって皮膚表面に接着するように、所望の皮膚部位の皮膚表面に適用されてよい。
【0043】
経皮活性剤組成物は、対象にドネペジル活性剤を送達するのに十分な時間、皮膚部位に適用されてよい。場合によっては、経皮活性剤組成物は、対象にドネペジル活性剤の有効量を送達するのに十分な時間、皮膚部位に適用されてよい。用語「有効量」は、所望の結果を提供するのに十分な投与量を意味する。例えば、有効量は、本明細書で記載されている方法に従って皮膚部位に適用された場合に、アルツハイマー病および/または認知症と関連する対象の症状が、完全に減少するとまではいかないにせよ、少なくとも測定可能な程度(例えば、いずれかの便利な当該分野で認められているアッセイを使用することによって決定される)軽減されるのに十分な、組成物中に存在するドネペジル活性剤の量であってよい。
【0044】
いくつかの実施態様では、経皮活性剤組成物は、対象に一定期間活性剤の標的用量を送達するのに十分な時間、皮膚部位に適用されてよい。送達される標的用量は、標的疾患、例えば、アルツハイマー病に対して所望の活性を提供するのに十分な活性剤の全身レベルを提供する用量であってよい。例えば、活性剤の標的用量は、5mg/日以上、例えば10mg/日以上、例えば15mg/日以上などであってよい。場合によっては、経皮活性剤組成物は、1日間〜14日間、例えば3日間〜10日間、例えば7日間〜10日間の範囲の期間、皮膚部位に適用されてよい。ある場合には、経皮活性剤組成物は7日間(すなわち1週間)皮膚部位に適用されてよい。
【0045】
経皮活性剤組成物が所望の時間(すなわち、活性剤の標的用量を対象に一定期間送達するのに十分な時間)皮膚部位に適用された後、該組成物は皮膚部位から除去されてよい。同一または異なる皮膚部位に新たな経皮組成物が適用されてよい。新たな経皮組成物は、前の適用部位で皮膚炎および/または皮膚感作が発生する可能性を減少させるために、異なる皮膚部位に適用されてよい。
【0046】
特定の実施態様では、本明細書で記載されている方法は診断ステップを含んでよい。対象方法(subject methods)を実施する前に、各個人は対象方法(subject methods)を必要としていることをいずれかの便利なプロトコールを使用して診断されてよく、例えば、彼らが標的疾患に苦しみ、または標的疾患に苦しむ危険性があると決定されれば、一般的に対象方法(subject methods)を必要としていることが分かる。
【0047】
アルツハイマー病および認知症の診断または評価は、当該技術分野で確立している。評価は下記に基づいて実施してよく、これらに限定されない:患者病歴;縁者の病歴(collateral history from relatives);診断テスト、例えば行動の臨床所見;記憶、言語、知覚能力、注意力、建設的能力(constructive abilities)、見当識(orientation)、問題解決能力および機能的能力を含み、これらに限定されない認知機能の精神状態テスト;身体検査;神経学的検査;例えばコンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、および単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などでこれらに限定されない脳画像診断法;など。
【0048】
有用性
経皮活性剤組成物は、対象が、例えばドネペジルなどでこれに限定されない抗認知症活性剤の投与によって利益を得るであろういずれかの適用にて利用法がある。特定の実施態様では、該組成物は状態の治療に使用される。「治療」は、対象を苦しめる状態と関連する症状について少なくとも改善が達成されることを意味し、ここで改善はパラメーター、例えば治療される状態と関連する症状の大きさを少なくとも減少させることを指すように広い意味にて用いられている。それ自体、治療は、病的状態、または少なくともそれと関連する症状を完全に抑制、例えば発生を防ぎ、または停止、例えば終結させ、それによって該対象がもはや該状態、または少なくとも該状態を特徴付ける症状に苦しまない状況も含む。
【0049】
一般的に、対象方法(subject methods)に従うドネペジルの投与は、アルツハイマー病および認知症などを含み、これらに限定されない疾患または状態を治療するために用いられてよい。経皮活性剤組成物は、対象にドネペジルを投与するために用いられてよい。これらの場合において、該方法は、本明細書で記載されている経皮活性剤組成物を対象の皮膚表面に適用することを含む。該方法は、活性剤を対象に送達するのに十分な一定時間、活性剤組成物を該対象の皮膚上に保持することをさらに含む。興味深い対象はヒトを含む。
【0050】
特定の実施態様では、経皮活性剤組成物は接着パッチとして提供され、皮膚表面に適用され、それによって該組成物の活性剤が皮膚を通じた経皮浸透によって投与されうる。経皮活性剤組成物が皮膚表面に適用された場合、活性剤はパッチと接触した皮膚に浸透し、全身の血流を通じて作用部位に達する。
【0051】
キット
本明細書で記載されている方法の実施に使用するためのキットも提供する。特定の実施態様では、キットは、例えば上記の経皮ドネペジル活性剤組成物を含む。特定の実施態様では、キットは上記の接着性オーバーレイを含む。特定の実施態様では、キットは対象方法(subject methods)を実施するための説明書または説明書を得るための手段(例えば、説明書を提供するウェブページにユーザーを導くウェブサイトURL)をさらに含むであろうが、これらの説明書は基質上に印字されていてよく、基質は添付文書、パッケージング、および試薬容器(reagent containers)などの1つ以上であってよい。対象キット(subject kits)において、1つ以上の構成要素は、都合に応じて、または所望であれば、同一または異なる容器中に存在する。
【0052】
下記の実施例は例示目的で提供されているのであって、限定目的で提供されているのではない。特に、下記の実施例は本発明を実施するための具体的実施態様である。実施例は例示目的にのみ提供されており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0053】
実施例
I. 材料および方法
A. 活性剤リザーバー層の製造
製剤は、有機溶媒中の各混合物成分のストック溶液(典型的には酢酸エチル、メタノールおよび/またはエタノール中の30〜60wt%固形分)を混合し、次いで混合プロセスを経て製造した。均一な混合物が形成された時点で、溶液を剥離ライナー(2〜3ミル(mils)のシリコン処理したポリエステルシート)上に流し、65〜80℃で10〜90分間乾燥した。接着フィルムをPETバッキング(PET backing)に積層した。
【0054】
B. 経皮流動テスト
ヒト死体皮膚を用い、表皮層(角質層および表皮)を皮膚膜として全層皮膚から分離した。サンプルをアーチパンチ(arch punch)でダイカット(die-cut)し、約2.0cmの最終直径にした。剥離ライナーを除去し、薬物接着層が角質層に面するように表皮/角質層の上層にシステムを貼った。接着層と角質層の間に優れた接触をもたらすために軽度の圧力を適用した。フランツセル(Franz cell)のドナーおよびレセプター側を固く締め(clamped together)、リン酸緩衝液pH6.5を含有するレセプター溶液をフランツセル(Franz cell)に加えた。実験の間、セルを33℃に維持した。レセプター溶液のサンプルを一定の間隔で取り、活性剤濃度をHPLCによって測定した。除去したレセプター溶液を新たな溶液と交換し、シンクコンディション(sink conditions)を維持した。流動は、時間プロットに対するレシーバーコンパートメント(receiver compartment)内の薬物の累積量の勾配から計算した。
【0055】
C. 具体例
C.1 促進剤添加の効果
前記の一般的方法を使用して、0〜15%のラウレス−4を含有する一連の経皮システムを製造した(詳細は下記の表に示す)。ヒト死体皮膚を通じた定常状態流動は、ラウレス−4の添加を0〜15%に増加すると、0.5μg/cm.hr〜3.3μg/cm.hrに増加すると見積もることができた。結果は下記の第1表に提供しており、さらに図2に図示している。
【0056】
【表1】

【0057】
C.2 促進剤構造の効果
前記の一般的方法を使用して、異なる促進剤を含有する一連の経皮システムを製造した。結果は下記の第2表に提供し、さらに図3に図示している。
【0058】
【表2】

【0059】
C.3 異なる接着剤中の流動
前記の一般的方法を使用して、異なる接着剤を使用する経皮システムを製造した。結果は下記の第3表に提供し、さらに図4に図示している。
【0060】
【表3】

【0061】
本明細書で引用している全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照することによって援用されるために具体的かつ個々に示されているかのように参照することによって本明細書に援用される。いずれかの刊行物の引用は出願日前の刊行物の開示のために提供されているのであって、本発明が先行発明を理由として該刊行物に先行しないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0062】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で、説明および例示のために多少詳しく記載されたが、当業者であれば本発明の教示を考慮して、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく多少の変化および修正がそれになされてよいことを容易に理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドネペジル活性剤層を含む持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物であって、該組成物が対象に局所的に適用された場合にドネペジル活性剤の治療的有効量の該対象への数日間にわたる送達を提供するように該ドネペジル活性剤層が製剤化された組成物。
【請求項2】
該ドネペジル活性剤層が:
(a) 該ドネペジル活性剤;
(b) 経皮吸収促進剤;および
(c) 感圧接着剤
を含む、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項3】
該ドネペジル活性剤層が50〜200μmの範囲の厚さを有する、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項4】
該組成物が対象に局所的に適用された場合にドネペジル活性剤の治療的有効量の該対象への7日間以上にわたる送達を提供するように該組成物が製剤化された、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項5】
該ドネペジル活性剤層がドネペジル活性剤を10%〜25%(w/w)の範囲の量にて含む、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項6】
該ドネペジル活性剤がドネペジル遊離塩基である、請求項5記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項7】
該ドネペジル活性剤層が固体および不溶解ドネペジル活性剤を含まない、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項8】
該経皮吸収促進剤がポリオキシエーテルアルコール(polyoxyether alcohol)である、請求項2記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項9】
該ポリオキシエーテルアルコールが、式:
2m+1(OCHCHOH
[式中:
mは8〜18の範囲の整数であり;かつ
nは2〜23の範囲の整数である]
によって記載される、請求項8記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項10】
該経皮吸収促進剤がラウレス−4である、請求項9記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項11】
該経皮吸収促進剤がラウレス−23である、請求項9記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項12】
該感圧接着剤がアクリルポリマーを含む、請求項2記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項13】
該アクリルポリマーがアクリレートコポリマーである、請求項11記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項14】
該アクリルポリマーがカルボン酸官能基を含む、請求項13記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項15】
該感圧接着剤がDURO−TAK 87−2852(登録商標)感圧接着剤と実質的に同一または同一である、請求項14記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項16】
1.5μg/cm/hr以上の該ドネペジル活性剤の皮膚浸透速度を提供するように該組成物が製剤化されている、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項17】
2.5μg/cm/hr以上の該ドネペジル活性剤の皮膚浸透速度を提供するように該組成物が製剤化されている、請求項16記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項18】
該組成物がバッキング層をさらに含む、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項19】
該組成物が剥離ライナーをさらに含む、請求項1記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物。
【請求項20】
対象にドネペジル活性剤を投与する方法であって、
(a) 請求項1〜19のいずれかに記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物を該対象の皮膚部位に適用すること;および
(b) 該活性剤を該対象に送達するのに十分な一定時間、該組成物を該対象の該皮膚部位で保持すること
を含む方法。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載の持続送達経皮ドネペジル活性剤組成物;および
接着性オーバーレイ
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504163(P2012−504163A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530087(P2011−530087)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/055542
【国際公開番号】WO2010/039381
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(502346286)テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド (26)
【Fターム(参考)】