説明

経皮的薬物送達のための方法および組成物

本発明は、少なくとも1種類の生理学的に活性な薬剤(例えば、ブスピロンまたはフェンタニルまたはアンドロゲン(例えば、テストステロンなど))、少なくとも1種類の揮発性溶媒(例えば、イソプロパノールまたはエタノール)、および少なくとも1種類の粘度調整剤(例えば、PVP)、好ましくは浸透促進剤(例えば、サリチル酸オクチルなど)の経皮的薬物送達組成物であり、これは、好ましくは、腋窩に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生理学的に活性な薬剤の経皮的送達のための方法および組成物に関する。本発明は、発汗しやすい領域における薬剤の送達に対する特定の、しかし排他的でない適用を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生理学的に活性な薬剤の効率的な経皮的送達は、疾患の処置においていくつかの臨床的利点および患者の利点をもたらす。
【0003】
注射による薬物送達は、従来的には、全身循環に対する最速の投与経路であるが、多くの場合、作用の持続時間は短期間であり、その送達様式は侵襲性で有痛である。経皮的薬物送達は、全身循環への活性な薬剤の放出のための制御された経路を提供する投与レジメン(regime)の能力より次第に注目されてきている。
【0004】
しかしながら、経皮的薬物送達は、皮膚は天然のバリアとして挙動するという事実により理解し難い。その結果、経皮的送達系の成功は、多くの場合、組成物が皮膚の角質層に浸透し、それにより皮膚を通過して活性な薬剤を輸送できる能力に依存する。
【0005】
経皮的送達に伴う問題は、特に、薬物が皮膚を介して吸収されるのが遅い場合、または相対的に高用量の薬物が吸収される必要がある場合に生じる。このような状況では、多くの場合、必要とされる用量を達成するために、経皮用組成物を皮膚の大きな領域に適用することが必要である。
【0006】
この問題の一例は、テストステロンなどのアンドロゲンの投与において見られる。最近の推定では、米国でほぼ1300万人の男性がテストステロン欠損症であり、10%未満がテストステロン欠損症の状態の処置を受けていることが示されている。テストステロンレベルを正常範囲内に維持するのに必要とされる日用量は、比較的高い(典型的には5〜10mg/日)ため、経皮的送達には課題をもたらす。同様の問題がプロゲステロンでも起こっている。例えば、性腺機能低下症の処置において、以前に使用されたテストステロンの局所的投与は、身体の広範な領域へのゲル剤またはクリーム剤の適用が必要とされ、適用領域を被覆したままにすることを要するものである。広範な領域への組成物の適用は、患者からパートナーまたは子供に移行するリスクの増大が深刻であり、したがって、家族構成員などの人は、偶発的な薬物の投与に供され得る。これは、深刻な結果となり得る。
【0007】
また、一部の薬物の経皮的投与は、望ましくない副作用を伴い得る。例えば、テストステロンは、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素5−α−レダクターゼの存在下で、発汗の増大および発汗の発生に関連する臭いの原因である。陰嚢の皮膚は、比較的高レベルの5−α−レダクターゼを有し、テストステロンの連続的な経陰嚢的送達により、正常より4〜5倍大きいDHTレベルおよびDHT/テストステロン比がもたらされる。かかる異常なレベルおよび比により、望ましくない副作用が生じ得る。
【0008】
また、問題は適用位置でも生じ、該位置に副作用を伴い得る。アーメド(Ahmed),S.R.ら(ジャーナル オブ クリニカル エンドクリノロジジー メタボリズム(
J Clin Endocrinol Metab)(1988)66:546−557)およびフィンドレー(Findlay),J.C.(J Clin Endocrinol Metab(1989)68:369−373)では、性腺機能低下の男性において60cmのALZA経陰嚢的系により約3.7mg/日を送達し、低〜正常のテストステロンレベルがもたらされることが報告されている。かかる投薬量は、内因的生成を模倣するのに必要とされる量(5〜10mg/日)よりいくぶん少ないと考えられる。
【0009】
テストステロンの経陰嚢的送達はまた、高いジヒドロテストステロン(DHT)およびDHT/テストステロン比レベルと関連するが、内因的生成を模倣するレベルのテストステロン送達を提供しない。さらに、陰嚢の皮膚は敏感であり、上記のように面積が限定的であり、不快症状およびこの送達モダリティの不充分な患者許容性がもたらされ得る。
【0010】
多くの経皮用組成物では、皮膚を通過する医薬用活性剤の送達を補助するために、浸透促進剤が使用される。皮膚の血流の増大およびその後の熱の発生もまた、補助されることが報告されている。米国特許第6,743,448号には、亜酸化窒素の生成を助長し、血管拡張を増進させると言われているアルギニンを含む局所的テストステロン製剤が記載されている。
【0011】
しかしながら、特に、皮膚の血流が増大している領域、例えば腋窩などで局所的に誘導される血管拡張およびその後の熱発生は、かかる領域に存在する汗腺の数が多いことにより、過剰の発汗および不快症状を引き起こし易い。これは、一部の医薬用活性剤の経皮的送達が制汗剤および/または脱臭剤の使用によって障害が起き得るという理由で、被験体にとっては問題であり得る。このことは、送達が発汗によって障害が起き、一貫性のない送達がもたらされ得るため、および/または患者の許容可能性やコンプライアンスが、発汗が促される薬物送達とともに制汗剤もしくは脱臭剤を使用しないように指示されることにより妨げられるため、望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、迅速で一貫した送達を提供し、適用領域を最小限にするのを可能にするとともに、被験体が使用するのが簡便であり、望ましくは、被験体および該被験体と接触する他者に対する副作用が低減される経皮的投与のための方法および組成物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本出願人は、活性な薬剤の迅速な送達を可能にし、患者における望ましくない副作用のリスクを低減させる経皮的投与のための方法および組成物を開発した。送達は、患者に時間をほとんど要しないという意味で「迅速」である。例えば、一実施形態において、経皮用組成物は3分以内に乾く。薬力学的には、活性剤の送達は、いったん活性剤のレザバーが皮膚内に確立されると、実質的に「定常状態」である。レザバーは、日用量の組成物によって維持される(すなわち、「補給される」)。定常状態は、送達プロフィールの実際的な記載であるが、用量間で送達速度にある程度の変動がある(しかし、驚くほどわずかである)。したがって、本発明は、活性な薬剤の迅速な送達を可能にし、患者における副作用のリスクを最小限に抑える投与方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本出願人は、驚くべきことに、本発明の経皮用組成物が、制汗特性および/または脱臭特性を有することを観察した。したがって、組成物は、活性な薬剤が迅速に送達されるのを可能にするとともに、発汗および/または臭いの低減も可能にする。このため、本発明
の使用により、そうでなければ活性剤の送達を妨げ得る通常の制汗剤/脱臭剤製品を使用しないという患者の不便さを伴わない(患者のコンプライアンスに重要である)、経皮的薬物送達のために腋窩などの領域の使用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
そこで、少なくとも1種類の生理学的に活性な薬剤;および少なくとも1種類の揮発性溶媒;および少なくとも1種類の粘度調整剤を含む経皮的薬物送達組成物を提供する。好ましくは、粘度調整剤はゲル化剤または増粘性薬剤である。粘度調整剤は、増粘性薬剤であり得、適当な増粘性薬剤としては、ポリビニルピロリドンが挙げられる。一部のある実施形態において、増粘性薬剤は制汗剤であり、または組成物は、制汗剤および/または脱臭剤をさらに含むものである。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲において、用語「粘度調整剤」は、得られる組成物全体の粘度を改変する組成物の一成分をいうために用いる。粘度調整剤の性質は、その薬剤自体だけでなく、存在する割合および他の成分の存在または非存在にも依存する。例えば、ゲル化剤は、ゲル化剤の活性化剤が存在するならば、粘度調整剤として作用するものであり得る。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が組成物中に活性化剤とともに使用され得、このとき、揮発性溶媒は、2%w/w前後の濃度の低級アルキルアルコールである。好適な活性化剤は塩化ナトリウムであり得る。濃度は、この例では、0.1%w/wでHPMCが異なる効果を有するため、重要であり得る。増粘性薬剤は粘度を増大させるものであり、多くの場合、無水物である。粘度調整剤は、以下にさらに説明する。
【0017】
さらに、用語「経皮的」は、皮膚に対する薬剤の適用の記載において、「局所的」と同一境界に使用される。用語「局所的」および「経皮的」はともに、本明細書において、動物(例えばヒト)の皮膚表面に対して薬物が皮膚組織を通過するような薬物投与を示す最も広い意味で用いる。特に記載または示唆のない限り、局所的薬物送達および経皮的薬物送達という用語は、互換的に用いる。厳密な薬物送達の観点からは、「経皮的」は、時として、皮膚を介した全身性送達のみをいうために用い、一方、「局所的」は、局所効果のための皮膚内または皮膚上への送達のみを必要とする。本明細書に記載の本発明は、経皮的送達様式および局所的送達様式の両方に等しく適用可能であり、本明細書では、単に便宜上のため「経皮的」と記載する。疑問の回避のため、本発明は、種々の実施形態において、経皮的適用として本明細書に記載のものに対応する局所的適用に適当な組成物および方法を提供する。
【0018】
典型的には、組成物は、ローション剤のような外観である。これに関連して、「ローション剤」は、活性剤の混合相または懸濁液をいうより具体的な配合的な(formulatory)意味ではなく、その広い説明的な意味で用いる。本発明の組成物は、多くの場合、真の溶液であるが、通常ローション剤が有するものとより類似するように増大された粘度を有する。組成物の粘度は、好ましくは、水より大きいが約300センチポイズ未満である。異なる実施形態における粘度は、10〜200センチポイズの範囲、20〜100または30〜50センチポイズである。
【0019】
別の実施形態において、少なくとも1種類の生理学的な活性剤、少なくとも1種類の揮発性溶媒、および少なくとも1種類の粘度調整剤を含み、浸透促進剤を含まない経皮的薬物送達組成物が提供される。
【0020】
異なる実施形態において、少なくとも1種類の生理学的に活性な薬剤、少なくとも1種類の揮発性溶媒、少なくとも1種類の粘度調整剤、および少なくとも1種類の浸透促進剤を含む経皮的薬物送達組成物が提供される。浸透促進剤は、少なくとも皮膚の外側層を介
する生理学的に活性な薬剤の取込みを補助し、典型的には、皮膚内に活性剤のレザバーを形成する。本発明における使用に適した典型的な浸透促進剤を以下にさらに記載する。
【0021】
揮発性溶媒(時として、「揮発性担体」または「ビヒクル」ともいう)は、典型的には、80%w/w以上などの高濃度で存在する。揮発性溶媒は、薬理学的に適当な任意の溶媒であり得、かかる溶媒の多くは当該技術分野で知られている。揮発性溶媒または揮発性担体を含めることの利点の一例は、組成物の迅速な乾燥が助長されること、活性な薬剤の吸収が可能になること、および皮膚の小面積、好ましくは腋窩に投与が限定されることにより他者に偶発的に投与されるという問題が回避されることである。好ましくは、揮発性溶媒は、常圧および通常の皮膚温度32℃で35mmHgより高い蒸気圧を有する。
【0022】
好ましくは、溶媒は、低級アルキルアルコールまたはかかるアルコールの混合物である。好適な溶媒としては、エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、アセトン、ギ酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタンおよびクロロホルムまたはその混合物(組成物の約40〜99%v/vの範囲、好ましくは、50%より多く、60%、70%または80%)が挙げられる。エーロゾル噴射剤、例えば、ジメチルエーテルまたはR134aなどもまた、本発明の目的の揮発性溶媒を構成するものであり得る。
【0023】
好ましくは、本発明の組成物は、最も広い意味で、組成物が皮膚に捕捉されない、または皮膚上の適用部位に長期間保持される貼付デバイス、固定レザバー、適用チャンバ、テープ、包帯、絆創膏などによって皮膚が大気に対して触れさせないという点において非密封性である。かかるデバイスは、着用者にとって不快である傾向にあるか、または格好が悪いまたは目障りなものであり得る。
【0024】
粘度調整剤は、一般的には、増粘性薬剤またはゲル化剤であり得る。これは、多くの場合、生理学的に活性な薬剤を含む揮発性溶媒の溶液を含有する組成物の粘度増大させるために使用される。揮発性溶媒の性質を考慮すると、溶液は、典型的には非常に低い粘度を有する。粘度調整剤の目的は、組成物が適用領域付近に、部位での生理学的に活性な薬剤取込みの増大が可能となるように短時間保持されるように、溶液の粘度を増大させることである。粘度調整剤は、典型的には、粘度を典型的なローション剤(例えば、サンスクリーン)程度まで増大させるが、組成物がゲルになる点までは増大させない。典型的には、本発明による経皮的薬物送達組成物の粘度は300センチポイズ未満であり、多くの場合、約150センチポイズである。
【0025】
粘度調整剤は、本発明の組成物のその他の成分との関連において、その活性を保持するものでなければならない。特に、増粘性薬剤は、この環境において活性で安定な状態を保持するものでなければならない。例えば、組成物が高いアルコール含量を有する場合(例えば、揮発性溶媒が80%v/vより多くのアルコールを主として含む場合)、増粘性薬剤は、高いアルコール性環境にて有効なものでなければならない。このような要件を考慮すると、当業者には、当該技術分野で知られたものからいくつかの増粘性薬剤が選択できよう。望ましくは、増粘性薬剤はまた、適用部位の皮膚内への活性な薬剤のいわゆる「溶媒バースト」が促進されるように溶媒の蒸発割合を抑制するものである。
【0026】
当業者には、必要とされる増粘性薬剤の量が程度の問題であり、他のパラメータとの折衷であることが認識されよう。また、多くの増粘性薬剤は、ある特定の濃度でピーク活性を有すること、および濃度の割合がわずかに高くなるか、またはわずかに低くなると、活性が大幅に低下し得ることが知られている。例えば、組成物が80%を超えるアルコールを含み、使用された増粘性薬剤がPVPである好ましい一実施形態では、PVPの望ましい濃度は1〜3%であり、その活性は、この範囲外で大幅に低下する。
【0027】
ゲル化剤は、マトリックス形成剤であり、これは、いったん活性化されると、これが内包されている組成物内およびその周囲でマトリックスを形成することにより作用する。増粘性薬剤は、通常、組成物の粘度を増大させる無水の薬剤である。一実施形態において、増粘性薬剤が使用される。増粘性薬剤は、薬物送達組成物用の制汗剤および/または密封性の薬剤であり得る。別の実施形態において、脱臭剤と制汗剤の両方を、少なくとも1種類の活性な薬剤および皮膚浸透促進剤を含む組成物中に存在させる。好適な増粘性薬剤としては、ポリビニルピロリドンまたはPVP(PovidoneTM)が挙げられる。制汗剤は密封性の薬剤であり得、また、密封性の増粘性薬剤が、制汗効果も有するものであり得る。
【0028】
本発明の組成物の固有の制汗特性および/または脱臭特性にもかかわらず、組成物は、任意選択で、活性剤を妨げない脱臭性添加剤および制汗性添加剤とともに投与され得る。別の形態では、少なくとも1種類の生理学的に活性な薬剤;および少なくとも1種類の揮発性溶媒;および少なくとも1種類の制汗剤または脱臭剤を含む経皮的薬物送達組成物が提供される。
【0029】
制汗剤は、発汗の発生を低減または抑制する任意の適当な物質であり得る。場合によっては、制汗剤は、脱臭の利点もまた提供するものであり得る。好ましくは、制汗剤は、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛の無機塩もしくは有機塩またはその混合物からなる群より選択される。
【0030】
一実施形態において、制汗剤は、一般式:
Al(OH)・wH
(式中、Qは塩素、臭素またはヨウ素である;
xは2〜5である;
x+y=6(式中、xおよびyは整数である必要はない;ならびに
wHOは可変水和量を表す)
を有するアルミニウム塩である。
【0031】
別の実施形態において、制汗剤は、下記一般式:
ZrO(OH)2n−nz・wH
(式中、
zは、2n−nzの値がゼロまたは正数となるような0.9〜2.0の範囲の変数である;
nはBの原子価である;
Bは、塩化物基、他のハライド基、スルファミン酸基、硫酸基およびその混合物からなる群より選択される;ならびに
wHOは可変水和量を表す)
ジルコニウム塩である。
【0032】
好ましい実施形態において、制汗剤は、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート(chlorohydrate)、アルミニウムクロロハイドレックス(chlorohydrex)ポリエチレングリコール、アルミニウムクロロハイドレックスプロピレングリコール、アルミニウムジクロロハイドレート、アルミニウムジクロロハイドレックスポリエチレングリコール、アルミニウムジクロロハイドレックスプロピレングリコール、アルミニウムセスキクロロハイドレート、アルミニウムセスキクロロハイドレックスポリエチレングリコール、アルミニウムセスキクロロハイドレックスプロピレングリコール、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレックスGly、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレックスGly、アルミニウムジルコニ
ウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレックスGly、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレートおよびアルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレックスGlyからなる群より選択される。これらの制汗剤は、米国食品医薬品局官報に基づく認可されたリストである。
【0033】
また、本発明では、他の制汗剤も使用され得ることが想定される。このような制汗剤の例としては、アルミニウムブロモハイドレート(bromohydrate)、塩化アルミニウム、クエン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アンモニウムミョウバン、アセチルメチオニン酸コバルト、カリウムミョウバン、ナトリウムミョウバンおよびクロロヒドロキシ乳酸アルミニウムナトリウムが挙げられる。
【0034】
別の実施形態において、本発明の組成物は脱臭薬剤を含む。脱臭薬剤は、細菌の作用によりもたらされる臭いのマスキングまたは中和において脱臭性の利益を提供する任意の適当な物質であり得る。一般的に、脱臭薬剤は、発汗の発生を妨げない。脱臭薬剤の代表例としては、限定されないが、臭化セチル−トリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウム、N−ラウリルサルコシンナトリウム、N−パルミチンサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシン(satcosine)、N−ミリストイルグリシン、カリウムN−ラウリルサルコシン、ステアリル、塩化トリメチルアンモニウム、アルミニウムクロロヒドロキシ乳酸ナトリウム、塩化トリセチルメチルアンモニウム、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、ジアミノアルキルアミド(例えば、L−リシンヘキサデシルアミドなど)、クエン酸塩、サリチル酸塩およびピロクトース等の重金属塩、特に亜鉛塩、及びそれらの酸、ピリチオンの重金属塩、特にピロチオン亜鉛、およびフェノール硫酸亜鉛の1種類以上が挙げられる。他の脱臭薬剤としては、限定されないが、臭い吸収物質、例えば、アルキル金属炭酸塩および重炭酸塩などの炭酸塩および重炭酸塩、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウムの炭酸塩および重炭酸塩、特に、ナトリウムおよびカリウム塩、または上記の任意の組合せが挙げられる。
【0035】
好ましい実施形態において、組成物は、制汗剤と脱臭薬剤の組合せを含む。
制汗剤および脱臭薬剤は、組成物中に、有益な制汗効果および/または脱臭効果を提供する任意の量で存在させ得る。制汗剤または脱臭薬剤は、組成物の約0.05〜60重量%、好ましくは約1〜40重量%、より好ましくは約5〜30重量%、さらにより好ましくは約8〜15重量%の量で存在させ得る。本発明の組成物が制汗剤と脱臭薬剤の組合せを含む場合、これらの薬剤を合わせた量は、好ましくは、上記の好ましい範囲内である。
【0036】
組成物は、皮膚の任意の領域に適用され得る。好ましくは、皮膚の血流が増大している皮膚領域、例えば、腋窩、陰嚢、足指間、鼡径部、足底動脈弓または手掌等に適用される。他の適当な領域としては、適当に浸透可能な皮膚がある部分が挙げられる。特に、必要とされる用量の活性な薬剤がなお有効に送達しつつ、これらの領域のたった1ヶ所またはそれ以上に適用することが望ましい。また、皮膚の一部の領域は、他の領域より活性な薬剤の浸透可能性が比較的高いことが知られている。本発明は、活性な薬剤をこのような領域のみを介して送達するために有用に用いられ、したがって、有効用量の活性な薬剤を送達するために組成物を適用しなければならない皮膚の総面積が限定される。
【0037】
さらに、本発明は、皮膚の発汗しやすい領域、特に、他の領域と比べて発汗の割合が高い領域に、活性な薬剤の経皮的送達のための方法を提供する。かかる皮膚領域は、患者が制汗剤および脱臭剤の使用が維持され得る望ましさのため、典型的には経皮的送達に好ましくなかった。好ましい形態において、方法は、最大限の全身性吸収を提供する皮膚領域に、活性な薬剤を含む組成物の投与を提供する。これは、少なくとも一部は、皮膚の血流および熱の増大のためと考えられる。このような領域は、腋窩、陰嚢、鼡径部、足底動脈
弓、手掌または額の1ヶ所以上であり得る。好ましくは、領域は少なくとも一方の腋窩である。これらの領域は、適用された場合、特に、組成物の制汗効果および/または脱臭効果から大いに利益を被り得る。
【0038】
別の形態において、本発明は、1ヶ所以上の腋窩への活性な薬剤の適用による患者への全身性の活性な薬剤の送達方法を含む。活性な薬剤は、好ましくは、本明細書に記載の経皮的薬物送達組成物中に存在している。好ましくは、投与は、本質的に腋窩に対してのみである。別の形態において、投与は、腋窩、陰嚢、鼡径部、足底動脈弓、手掌および額からなる群より選択される領域に対するものである。一形態において、該方法は、被験体の上腕、肩または腹部への組成物の適用または投与を回避するものである。本発明の経皮的薬物送達組成物は、皮膚の一領域に適用されると、治療有効量の活性な薬剤を全身循環に送達できるものである。
【0039】
組成物は、足底動脈弓、外側踝、手掌、上腕、腹側前腕、背側前腕、背部、胸部、大腿部、腹部、鼡径部、頭皮、腋窩、額、背下部、臀部または陰嚢の1ヶ所以上から選択される被験体の皮膚の任意の領域に適用され得る。組成物は、好ましくは、皮膚の血流および熱の増大により最大限の全身性吸収が提供される皮膚領域に適用される。このような領域は、腋窩、陰嚢、足底動脈弓、手掌または額の1ヶ所以上であり得る。好ましくは、領域は、少なくとも一方の腋窩である。これらの領域は、適用された場合、特に、組成物の制汗効果および/または脱臭効果から大いに利益を被り得る。
【0040】
本発明による組成物のさらなる利点は、治療有効量が最小限の表面積に適用され得、したがって、大量の組成物を大表面積に適用することに伴う不快な副作用および患者の不便さが最小限となり得ることである。好ましくは、組成物が適用される皮膚の一領域は500cm未満である。望ましくは、領域は、300cm未満、100cm、50cm、20cm、10cmおよび5cmである。
【0041】
本発明の一部のある実施形態で達成可能な重要な利点は、活性剤の流量の増大であり、それにより、ある用量でより多くの割合の活性剤が患者に送達可能となり、利用される皮膚の領域がより小さくなる。場合によっては、必要とされる領域は、これまでに使用されていたものよりずっと小さくなり、その結果、患者の許容可能性およびコンプライアンスが改善される。これは、特に、本発明の場合以外の活性剤が不充分なまたは低い流量を有する場合、高い全身性用量が望ましい場合および/または高速での作用の発現が所望される場合に適用可能である。
【0042】
浸透促進剤は、時として、「吸収」促進剤とも呼ばれる。いくつかの浸透促進剤が使用され得、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、グリコールおよびグリコールエステル、1,3−ジオキソランおよび1,3−ジオキサン、少なくとも12個の炭素原子を含有する大環状ケトン、オキサゾリジノンおよびオキサゾリジノン誘導体、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカン酸エステル、(N,N−二置換アミノ)−アルカノールアルカン酸エステル、サンスクリーンエステルならびにその混合物が挙げられる。最も好ましくは、皮膚浸透促進剤は、オレイン酸、オレイルアルコール、シクロペンタデカノン(CPE−218TM)、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸グリセロール、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、2−n−ノニル1,3−ジオキソラン(SEPATM)、ドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネート(DDAIP)またはその塩誘導体、2−エチルヘキシル2−エチルヘキサノエート、ミリスチル酸イソプロピル、ジメチルイソソルビド、4−デシルオキサゾリジノン−2−オン(SR−38TM、TCPI,Inc.)、3−メチル−4−デシルオキサゾリジノン−2−オン、ジメチル−p−アミノ安息香酸オクチル、p−メトキシケイ皮酸オクチル、サリチル酸オクチルおよびその混合物を含むリストから選択さ
れる。
【0043】
好ましい浸透促進剤は、本発明者らの米国特許第6,299,900号(その内容は、引用により本明細書に組み込まれる)に開示された化合物などのサンスクリーンエステルである。促進剤としては、式:
【0044】
【化1】

【0045】
(式中、Rは、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ハライド、ヒドロキシまたはNRである;
は長鎖アルキルである;
およびRは、各々独立してハロゲン、低級アルキルであるか、またはRおよびRは一緒になって、これらが結合している窒素原子とともに
5または6員環の複素環を形成している;
nは0または1である;ならびに
qは1または2である)
の安全な皮膚耐容性エステルサンスクリーンである化合物が挙げられる。
【0046】
好ましい浸透促進剤は、p−アミノ安息香酸長鎖アルキル、ジメチル−p−アミノ安息香酸長鎖アルキル、ケイ皮酸長鎖アルキル、メトキシケイ皮酸長鎖アルキルまたはサリチレート長鎖アルキルを有するエステルであり、最も好ましくは、浸透促進剤は、ジメチル−p−アミノ安息香酸オクチル(「パディメートO」)、p−メトキシケイ皮酸オクチルおよびオクチルサリチレート(USPの「サリチル酸オクチル」)のうちの1つまたはその混合物である。
【0047】
吸収/浸透促進剤の濃度は、活性成分の重量に対して吸収/浸透促進剤が10〜10,000重量%の範囲であり得る。活性成分に対する浸透促進剤の比は、かなり異なり得、何よりも、達成される必要がある薬理学的結果に支配される。原則的に、できるだけ少ない吸収促進剤を使用することが望ましい。しかしながら、通常、浸透促進剤は、全組成物の0.01〜15%の範囲である。
【0048】
熱もまた、浸透促進剤とともに、または独立して活性な薬剤の浸透を促進する機能を果たし得る。熱は、それ自体では「浸透促進剤」とみなされない。理論または作用様式に拘束されないが、熱は、皮膚内の脂質構造を破壊および/または流動化させ、浸透を促進し得ると考えられる。したがって、一実施形態において、本発明は、少なくとも1種類の生理学的に活性な薬剤、および熱の存在下で適用される少なくとも1種類の粘度調整剤を提供する。好ましくは、組成物は、皮膚浸透促進剤もまた含む。
【0049】
熱は、患者の自身の体温を利用して皮膚を中心体温(皮膚の外側層は、多くの場合、その温度未満である)まで加温することに起因するものであり得る、および/または熱は、外部供給源由来のものであり得る。かかる外部供給源としては、慣用的なヒートパック(例えば、治療用または理学療法的用途のもの)、放射熱(例えば、熱ランプ)、発熱性化学反応またはその場での熱の生成が挙げられる。
【0050】
熱は、皮膚浸透性、体液循環、血管壁浸透性、律速膜浸透性および薬物溶解性を増大させることにより、種々の薬物の経皮的送達を促進することが示唆されている。したがって、組成物の適用時点のあたりで熱が適用されていようと、いなかろうと、経皮的組成物の適用は、好ましくは、皮膚の血流が増大し、したがって、より加温された皮膚領域に対するものである。かかる領域としては、限定されないが、足底動脈弓、手掌、腋窩および陰嚢が挙げられる。しかしながら、熱が上がった領域では、発汗および発汗に関連する体臭が増大する。したがって、経皮用組成物が制汗剤および/または脱臭剤でもある場合が望ましい。制汗剤は、汗腺を封鎖することにより発汗の発生量を低減させるものである。脱臭剤は、香料または皮膚上の臭いの原因細菌を低減させる抗菌成分のいずれかを用いて発汗に伴う臭いをマスキングまたは覆うものである。制汗剤は、脇の下領域において間接的な脱臭効果を有するものであり得るが、脱臭剤は、制汗剤としての機能を果たすことができない。既知の制汗剤および/または脱臭剤は、薬物送達を阻害することなく組成物に添加され得る場合がさらに望ましい。
【0051】
なんら理論に拘束されないが、本出願人らは、組成物中の粘度調整剤および/または浸透促進剤は、発汗を最小限に抑える機能を果たし、揮発性担体は、細菌を抑制するため、担体の殺菌活性により臭いを抑制する機能を果たすと考える。
【0052】
一実施形態において、組成物は本質的に、各々が上記の1種類の生理学的に活性な薬剤;1種類の揮発性溶媒;および1種類の粘度調整剤からなる。好ましくは、これは、上記の浸透促進剤をさらに含むものである。一実施形態において、粘度調整剤は制汗剤であり、組成物は、任意選択で脱臭剤もまた含むものである。これらの実施形態の各々は、水を含むものであってもよく、含まないものであってもよい。
【0053】
本発明はまた、被験体への活性な薬剤の経皮的送達のための医薬の製造における、少なくとも1種類の生理学的に活性な薬剤;および少なくとも1種類の揮発性溶媒;および少なくとも1種類の粘度調整剤の使用を提供する。医薬は、好ましくは、活性剤で処置可能または予防可能な状態の処置または予防のためのものである。
【0054】
本発明の別の実施形態において、組成物は、少なくとも1種類のさらなる活性な薬剤および/または少なくとも1種類のさらなる不活性な薬剤を含むものであり得る。異なる実施形態では、組成物は、生理学的に活性な薬剤としてであれ、その他としてであれ、ハーブエキス(または同様の成分)を含まない。
【0055】
本発明の経皮的薬物送達組成物は、皮膚の一領域に適用されると、治療有効量の活性な薬剤を全身循環に送達できるものである。したがって、一態様において、被験体の皮膚の一領域に上記の経皮用組成物を適用することを含む、活性な薬剤の経皮的送達方法が提供される。特に、方法は、活性剤の所定の血流中レベルまたは濃度が達成されるように所定量の活性剤および/または充分な活性剤を送達するために使用され得る。一部の活性剤(例えば、短い半減期を有するもの)では、送達された活性剤の量の他の測定値が適切である。
【0056】
組成物はまた、他の既知の局所的手法、例えば、ローション剤、ゲル剤、スプレー剤などによって投与され得る。これらは、活性剤に対して不活性であり、本発明で想定される活性な薬剤の送達のために組成物が皮膚上に充分に保持されるのを助長する適当な担体、賦形剤およびチクソトロピー剤を添加することにより製剤化され得る。
【0057】
本発明の経皮用組成物および本発明の方法において使用される組成物は、例えば、限定されないが、被験体の腋窩に一連の形態のいずれかで適用され得る。好適な形態としては、例えば、ローション剤、ゲル剤、フォーム剤、ペースト剤、軟質固形剤、硬質棒状剤、
液剤、スプレー剤、エーロゾル剤、ロールオン剤などが挙げられ、これらは各々、本発明の異なる形態を表す。組成物は、密封性または非密封性の様式で適用され得る。組成物は、非密封性様式で適用されることが好ましく、最も好ましい実施形態では、組成物は、ローション剤、エーロゾル剤またはスプレー剤として適用される。
【0058】
本発明の経皮用組成物および本発明の方法において使用される組成物は、被験体の腋窩への適用に適した形態へのその調製を助長するさらなる成分をさらに含むものであり得る。さらなる成分の例としては、限定されないが、界面活性剤、緩衝剤、溶媒および噴射剤が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物および本発明の方法において使用される組成物は、接着剤、接着パッチ、接着包帯またはフィルムで覆わずに適用されることが特に好ましい。かかるデバイスは、着用者にとって不快である傾向にあるか、または格好が悪いまたは目障りなものであり得る。本発明により、被験体が衣類着用下で腋窩に、経皮用組成物による生理学的に活性な薬剤の非密封性の投与が可能になる。
【0060】
本発明の組成物の適用において、制汗剤および/または脱臭剤は、組成物としてほぼ同時に適用され得る。好ましくは、制汗剤および/または脱臭剤は、本発明の組成物の適用後に適用される。上記のように、本発明の一部のある実施形態において、制汗剤および/または脱臭剤が組成物内に組み込まれ得、したがって、患者に適用される必要がある物質は1種類のみである。制汗剤および/または脱臭剤は、薬物送達機構を妨げないものから選択される。好ましくは、添加される制汗剤および脱臭剤は、上記の経皮的薬物送達組成物自体の自然な制汗特性および防臭特性補足する。
【0061】
本発明はまた、上記の所定用量の経皮的薬物送達組成物を患者に適用することを含む、経皮的薬物送達方法を提供する。後述のように、本発明の好ましい形態は、組成物を少なくとも一方の腋窩に適用することを伴う。本発明の組成物では、本発明を、経皮的薬物送達組成物が適用されると、制汗剤および/または脱臭剤が腋窩領域にほぼ同時に適用される方法に拡張する。好ましくは、制汗剤および/または脱臭剤は、経皮的薬物送達組成物が少なくとも一方の腋窩領域に適用された後に適用される。
【0062】
本発明の方法において、組成物は、好ましくは、接着性包帯、パッチまたは投与領域に付着される他の物理的バリアで覆わずに投与される。好ましくは、経皮用組成物は、皮膚の一領域への適用の3分以内、より好ましくは約1分以内に指触乾燥状態になる。
【0063】
組成物の制汗特性および/または脱臭特性は、生理学的に活性な薬剤が、被験体におけるテストステロン欠損症を処置するためのテストステロンまたはその誘導体である場合、特に好都合である。テストステロンは、5−α−レダクターゼの存在下では、ジヒドロテストステロン(DHT)へのテストステロンの変換により、発汗の増大および発汗の発生および発汗に関連する臭いの原因である。したがって、生理学的に活性な薬剤が、アンドロゲン系化合物(例えば、テストステロンまたはその誘導体など)の少なくとも1種類またはそれ以上から選択される上記の組成物が提供される。したがって、生理学的に活性な薬剤は、テストステロンから合成により誘導され、かつ同じまたは類似の生理学的活性をもたらすことがわかっているアンドロゲン系化合物から選択され得る。かかる化合物としては、限定されないが、酢酸エステル、エナント酸エステル、シピオン酸エステル、イソ酪酸エステル、デヒドロエピアンドロステロン、プロピオン酸エステル、ウンデカン酸エステルおよび酢酸シプロテロンなどのテストステロン塩が挙げられる。他の実施形態では、以下の1種類以上:5−α−レダクターゼ阻害薬(例えば、フィナステロイド、テュロステライド、LY−191704およびMK−386など)が含まれる。他の適当な化合物としては、メチルテストステロン、酢酸クロステボル、ドロスタノロン、フラザボール
、ナンドロロン オキサンドロロン、スタノゾロール、酢酸トレンボロン、ジヒドロ−テストステロン、17−α−メチル−19−ノルテストステロンおよびフルオキシメステロンが挙げられる。
【0064】
テストステロンの活性から予測され得ることとは反対に、本出願人らは、テストステロンが、被験体を悩ませる発汗および臭いを誘導することなく迅速な送達を提供するために本発明に従って投与され得ることを見出した。当該技術分野で確認された許容され得ないレベルのこのような副作用は、高テストステロンの存在に起因していた。
【0065】
本発明のこの態様の好ましい実施形態において、本発明は、
テストステロンまたはその誘導体の少なくとも1種類から選択される生理学的に活性な薬剤;
揮発性担体;
少なくとも1種類の皮膚浸透促進剤;および
少なくとも1種類の粘度調整剤
を含む経皮用組成物を、被験体の皮膚の一領域に局所的に適用することを含む、被験体におけるテストステロン欠損症の処置方法を提供する。
【0066】
一実施形態において、担体がイソプロピルアルコールであり、浸透促進剤がサリチル酸オクチルであり、活性な薬剤がテストステロンであり、増粘性薬剤がポリビニルピロリドンである。これらは、下記の割合:
30%v/vの担体;
8%w/vの促進剤;
1%w/vの活性剤;
2%w/vの増粘剤;
10%v/vの滅菌水;および
平衡エタノール
であり得る。
【0067】
別の実施形態において、本質的に上記の割合での6成分からなる経皮的薬物送達組成物が提供される。本発明の別の形態では、これらの割合での6成分は、被験体、特に(particular)、活性剤での処置を必要とする被験体の処置のための医薬の製造に使用される。例えば、テストステロン血中レベルの減少に悩む被験体が、活性剤が上記のテストステロンまたは関連アンドロゲン系薬剤またはテストステロン誘導体である組成物で処置される。
【0068】
さらなる実施形態において、本発明は、エストロゲンおよび/またはプロゲスチン欠損症の処置方法、慢性疼痛の処置方法、および不安関連障害の処置方法を提供する。後述の他の活性剤もまた、本発明での使用に想定される。
【0069】
一実施形態において、テストステロンを活性な薬剤として含有する組成物が患者の腋窩に、テストステロンを送達し、少なくとも所定量の血中レベルをもたらすために適用される。一実施形態において、所定量は正常範囲である。テストステロンの場合、達成されるその血中レベルは少なくとも200ng/dL、好ましくは300〜1000ng/dLである。好ましくは、組成物は腋窩のみに適用される。
【0070】
本発明の経皮的薬物送達組成物に使用され得る生理学的に活性な薬剤としては、本発明の浸透促進剤と適合性であり、かつ皮膚を介して、特に所望の効果を達成する皮膚浸透促進剤補助を伴って送達され得る任意の局所用または全身用の活性な薬剤が挙げられる。これらの活性な薬剤は、好ましくは治療剤であり、下記のものが挙げられる(治療剤の類型
によって群分け)。
【0071】
(a)消化器系の薬剤、例えば、ジフェノキシラート、ロペラミドおよびヒヨスチアミンなどの止しゃ薬。
【0072】
(b)心臓血管系の薬剤、例えば、
(i)降圧剤、例えば、ヒドララジン、ミノキシジル、カプトプリル、エナラプリル、クロニジン、プラゾシン、デブリソキン、ジアゾキシド、グアネチジン、メチルドパ、レセルピン、トリメタファンなど;
(ii)カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ジルチアゼム、フェロジピン(felodopine)、アムロジピン、ニトレンジピン、ニフェジピンおよびベラパミルなど;
(iii)不整脈治療剤、例えば、アミオダロン、フレカイニド、ジソピラミド、プロカインアミド、メキシレチン(mexiletene)およびキニジンなど;
(iv)抗狭心症薬、例えば、三硝酸グリセリル、四硝酸エリトリトール、四硝酸ペンタエリトリトール、六硝酸マンニトール、ペルヘキシリン(perhexilene)、二硝酸イソソルビドおよびニコランジルなど;
(v)β−アドレナリン遮断薬、例えば、アルプレノロール、アテノロール、ブプラノロール、カルテオロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、ナドキソロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロールおよびマレイン酸チモロールなど;
(vi)強心配糖体、例えばジゴキシンなど、ならびに他の強心配糖体およびテオフィリン誘導体;
(vii)アドレナリン作動薬、例えば、アドレナリン、エフェドリン、フェノテロール、イソプレナリン、オルシプレナリン、リメテロール(rimeterol)、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、ドブタミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、偽エフェドリンおよびドパミンなど;
(viii)血管拡張薬、例えば、シクランデレート、イソクスプリン、パパベリン、ジピリマドール(dipyrimadole)、二硝酸イソソルビド、フェントラミン、ニコチニルアルコール、コ−デルゴクリン、ニコチン酸、三硝酸グリセリル、四硝酸ペンタエリトリトールおよびキサンチノールなど;ならびに
(ix)偏頭痛用調製物、例えば、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、メチセルギド、ピゾチフェンおよびスマトリプタンなど。
【0073】
(c)血液および造血組織に影響を及ぼす薬物、例えば、
(i)抗凝固剤および血栓溶解剤、例えば、ワルファリン、ジクマロール、低分子量ヘパリン(エノキサパリンなど);ストレプトキナーゼおよびその活性誘導体など;ならびに
(ii)止血剤、例えば、アプロチニン、トラネキサム酸およびプロタミン。
【0074】
(d)中枢神経系に影響を及ぼす薬物、例えば、
(i)鎮痛薬;
(ii)解熱薬、例えばオピオイド鎮痛薬、例えば、ブプレノルフィン、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、フェンタニル、アルフェンタニル、サフェンタニル、ヒドロモルフォン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、パパベレタム、ペンタゾシン、ペチジン、フェノペリジン、コデインおよびジヒドロコデインなど;ならびに
(iii)その他としては、アセチルサリチル酸(アスピリン)、パラセタモールおよびフェナゾンが挙げられる。
【0075】
(e)睡眠薬および鎮静薬、例えば、バルビツール酸系、アミロバルビトン、ブトバルビトンおよびペントバルビトンなど、ならびに他の睡眠薬および鎮静薬、例えば、コラー
ル(choral)水和物、クロメチアゾール、ヒドロキシジンおよびメプロバメートなど。
【0076】
(f)抗不安剤、例えば、ベンゾジアゼピン系、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロラゼパート(chlorazepate)、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、テマゼパムおよびトリアゾラムなど。
【0077】
(g)神経安定薬および抗精神病薬、例えば、フェノチアジン系、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペリシアジン、パーフェナジン、プロマジン、チオプロパゼート、チオリダジンおよびトリフルオペラジンならびにブチロフェノン系、ドロペリドールおよびハロペリドールならびに他の抗精神病薬、例えば、ピモジド、チオチキセンおよびリチウムなど。
【0078】
(h)抗鬱薬、例えば、三環系抗鬱薬アミトリプチリン(amitryptyline)、クロミプラミン、デシプラミン、ドチエピン、ドクサピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリンおよびトリミプラミンなど、四環系抗鬱薬、例えば、ミアンセリンなど、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、例えば、イソカルボキサジド、フェネリジン、トラニルシプロミンおよびモクロベミドなど、ならびに選択的セロトニン再取込み阻害薬、例えば、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、フルボキサミンおよびセルトラリンなど。
【0079】
(i)CNS刺激物質、例えば、カフェインなど。
(j)抗アルツハイマー剤、例えば、タクリン。
【0080】
(k)抗パーキンソン剤、例えば、アマンタジン、ベンセラジド、カルビドパ、レボドパ、ベンズトロピン、ビペリデン、ベンズへキソール、プロシクリジンおよびドパミン−2作動薬、例えば、S(−)−2−(N−プロピル−N−2−チエニルエチルアミノ)−5−ヒドロキシテトラリン(N−0923)など。
【0081】
(l)抗痙攣薬、例えば、フェニトイン、バルプロ酸、プリミドン、フェノバルビトン、メチルフェノバルビトンおよびカルバマゼピン、エトスクシミド、メトスクシミド、フェンスクシミド、スルチアムおよびクロナゼパムなど。
【0082】
(m)制吐薬、制嘔吐剤、例えば、フェノチアジン系、プロクロペラジン、チエチルペラジンおよび5HT−3受容体拮抗薬、例えば、オンダンセトロンおよびグラニセトロンなど、その他、例えば、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、
メトクロプラミド、ドンペリドン、ヒヨスチン、ヒヨスチン水素臭化物、ヒヨスチン塩酸塩、クレボプリドおよびブロムプライド(brompride)など。
【0083】
(n)筋骨格系、例えば、
(i)非ステロイド系抗炎症剤、例えば、そのラセミ混合物または個々のエナンチオマー(適用可能な場合)、例えば、イブプロフェン、フルビプロフェン、ケトプロフェン、アクロフェナク、ジクロフェナク、アロキシプリン、アプロキセン(aproxen)、アスピリン、ジフルニサル、フェノプロフェン、インドメタシン、メフェナム酸、ナプロキセン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、サリチルアミド、サリチル酸、スリンダク、デスオキシスリンダク、テノキシカム、トラマドールおよびケトロラック(ketoralac)など;
(ii)皮膚浸透促進剤との組合せで製剤化され得るさらなる非ステロイド系抗炎症剤としては、サリチルアミド、サリチル酸、フルフェニサル、サルサラート、トリエタノー
ルアミンサリチレート、アミノピリン、アンチピリン、オキシフェンブタゾン、アパゾン、シンタゾン、フルフェナム酸、クロニキセリル、クロニキシン、メクロフェナム酸、フルニキシン、コルヒチン、デメコルチン、アロプリノール、オキシプリノール、塩酸ベンジダミン、ジメファダン、インドキソール、イントラゾール、塩酸ミムバン、塩酸パラニレン(paranylene)、テトリダミン、塩酸ベンズインドピリン塩、フルプロフェン、イブフェナク、ナプロキソール、フェンブフェン、シンコフェン、ジフルミドンナトリウム、フェナモール、フルチアジン、メタザミド、塩酸レチミド、塩酸ネキセリジン、オクタザミド、モリナゾール(molinazole)、ネオシンコフェン、ニマゾール(nimazole)、クエン酸プロキサゾール、テシカム、テシミド、トルメチンおよびトリフルミダートが挙げられる;
(iii)抗リウマチ剤、例えば、ペニシラミン、アウロチオグルコース、アウロチオマレイン酸ナトリウム、メトトレキサートおよびオーラノフィンなど;
(iv)筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、ジアゼパム、塩酸シクロシクロベンザプリン、ダントトレン、メトカルバモール、オルフェナドリンおよびキニーネなど;ならびに
(v)痛風および尿酸過剰血症に用いられる薬剤、例えば、アロプリノール、コルヒチン、プロベネシドおよびスルフィンピラゾンなど。
【0084】
(o)ホルモンおよびステロイド類、例えば、
(i)エストロゲン、例えば、エストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、メストラノール、スチルボエストロール、ジエノエストロール、エピエストリオール、エストロピペートおよびゼラノールなど;
(ii)プロゲステロンおよび他のプロゲスターゲン、例えば、アリルエストレノール、ジドロゲステロン、リネストレノール、ノルゲストレル、ノルエチノドレル、エクロメトリン(eclometrine)、ノルエチステロン、酢酸ノルエチステロン、ゲストデン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロンおよびメゲストロールなど;
(iii)抗アンドロゲン、例えば、酢酸シプロテロンおよびダナゾールなど;
(iv)抗エストロゲン、例えば、タモキシフェンおよびエピチオスタノール、ならびにアロマターゼ阻害薬、エキセメスタンおよび4−ヒドロキシ−アンドロステンジオンならびにその誘導体、アンドロゲンおよび蛋白同化剤、例えば、テストステロン、メチルテストステロン、酢酸クロステボル、ドロスタノロン、フラザボール、ナンドロロン オキサンドロロン、スタノゾロール、酢酸トレンボロン、ジヒドロ−テストステロン、17−α−メチル−19−ノルテストステロンおよびフルオキシメステロンなど;
(v)5−αレダクターゼ阻害薬、例えば、フィナステロイド、テュロステライド、LY−191704およびMK−386など;
(vi)コルチコステロイド、例えば、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、21−リン酸デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルメタゾン、フルオシノニド、フルオシノニドデソニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオコルトロン、ハルシノニド、ハロプレドン、ヒドロコルチゾン、17−吉草酸ヒドロコルチゾン、17−酪酸ヒドロコルチゾン、21−酢酸ヒドロコルチゾンメチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、21−リン酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなど;
(vii)さらなるステロイド系抗炎症剤、例えば、コルトドキソン、フルオラセトニド(fluoracetonide)、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオルゾン、フルランドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよび他のそのエステル、クロロプレドニゾン、クロルコルテロン(clorcortelone)、デシノロン、デソニド、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルコルトロン、フルオロメトロン(fluoromethalone)、フルペロロン、フルプレドニゾロン、メプレドニゾン、メチルメプレドニゾロン、パラメタゾン、酢酸コルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、酢酸フルドロコルチゾン、フルランドレノ
ロンアセトニド、メドリゾン、アムシナファル、アムシナフィド、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、酢酸クロロプレドニゾン、酢酸クロコルトロン、デシノロンアセトニド、デスオキシメタゾン、酢酸ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、ピバル酸フルメタゾン、酢酸フルニソリド、酢酸フルペロロン、吉草酸フルプレドニゾロン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾラマート(prednisolamate)、プレドニバル、トリアムシノロンヘキサセトニド、コルチバゾール、ホルモコルタールおよびニバゾールなど;
(viii)下垂体ホルモンおよびその活性誘導体または類縁体、例えば、コルチコトロフィン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)および性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)など;
(ix)甲状腺ホルモン、例えば、カルシトニン、チロキシンおよびリオチロニン、ならびに抗甲状腺剤、例えば、カルビマゾールおよびプロピルチオウラシルなど;ならびに
(x)他の種々雑多なホルモン剤、例えば、オクトレオチドなど。
【0085】
(q)下垂体阻害薬、例えば、ブロモクリプチンなど。
(r)排卵誘発剤、例えば、クロミフェンなど。
【0086】
(s)血糖降下剤、例えば、インスリン、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、トラザミド、トルブタミド、ロシグリタゾンおよびメトホルミン。
【0087】
(t)泌尿器生殖器系の薬剤。
(u)利尿薬、例えば、サイアザイド、関連利尿薬およびループ利尿薬、ベンドロフルアザイド、クロロチアジド、クロルタリドン、ドパミン、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、メフルシド、メチクロチアジド(methycholthiazide)、メトラゾン、キネサゾン、ブメタニド、エタクリン酸およびフルセミドならびにカリウム保持性利尿薬、スピロノラクトン、アミロリドおよびトリアムテレンなど。
【0088】
(v)抗利尿薬、例えば、デスモプレシン、リプレシンおよびバソプレシン(その活性誘導体または類縁体を含む)など。
【0089】
(w)産科用薬剤(子宮に作用する薬剤を含む)、例えば、エルゴメトリン、オキシトシンおよびゲメプロストなど。
【0090】
(x)プロスタグランジン、例えば、アルプロスタジル (PGE1)、プロスタサイクリン(PGI2)、ジノプロスト(プロスタグランジンF2−α)およびミソプロストールなど。
【0091】
(y)抗菌薬、例えば、
(i)セファロスポリン系、例えば、セファレキシン、セフォキシチンおよびセファロチン;
(ii)ペニシリン系、例えば、アモキシシリン、クラブラン酸を伴うアモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、ベンザチンペニシリン、ベンジルペニシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、メチシリン、フェネチシリン、フェノキシメチルペニシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリンおよびアズロシリンなど;
(iii)テトラサイクリン系、例えば、ミノサイクリン、クロルテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリンおよびオキシテトラサイクリンなど、ならびに他のテトラサイクリン型抗生物質;
(iv)ミノグリコシド、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシンおよびトブラマイシン。抗真菌剤、例えば、アモロルフィン、イソコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、ビホナゾール、アンフォテリシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、フルコナゾールおよびフルシトシン、サリチル酸、フェザチオン、チクラトン、トルナフテート、トリアセチン、亜鉛、ピリチオンおよびピリチオンナトリウムなど;
(v)キノロン系、例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシンおよびノルフロキサシンなど。スルホンアミド系、例えば、フタリルスルフチアゾール、スルファドキシン、スルファジアジン、スルファメチゾールおよびスルファメトキサゾールなど;
(vi)スルホン系、例えば、ダプソン;ならびに
(vii)他の種々雑多な抗生物質、例えば、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンエチルカーボネート、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシングルセプテート、エリスロマイシンエチルスクシネート、エリスロマイシンラクトビオネート、ロキシスロマイシン、リンコマイシン、ナタマイシン、ニトロフラントイン、スペクチノマイシン、バンコマイシン、アズトレオナム、コリスタチンIV、メトロニダゾール、チニダゾール、フシジン酸およびトリメトプリム;2−チオピリジンN−オキシドなど;ハロゲン化合物、特に、ヨウ素およびヨウ素化合物、例えば、ヨウ素−PVP複合体ならびにジヨードヒドロキシキン;ヘキサクロロフェン;クロルヘキシジン;クロロアミン化合物;過酸化ベンゾイル
(z)抗結核薬、例えば、エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピシンおよび クロファジミンなど。抗マラリア薬、例えば、プリマキン、ピリメタミン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、キニーネ、メフロキンおよびハロファントリンなど。
【0092】
(aa)抗ウイルス剤、例えば、アシクロビルおよびアシクロビルプロドラッグ、ファムシクロビル、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、ザルシタビン、サクイナビル、インディナビル、リトナビル、n−ドコサノール、トロマンタジンおよびイドクスウリジンなど。
【0093】
(ab)駆虫薬、例えば、メベンダゾル、チアベンダゾール、ニクロサミド、プラジカンテル、ピランテルエンボネートおよびジエチルカルバマジンなど。
【0094】
(ac)細胞傷害剤、例えば、プリカマイシン、シクロホスファミド、デカルバジン、フルオロウラシルおよびそのプロドラッグ[例えば、インターナショナル ジャーナル オブ ファーマシューティックス(International Journal of
Pharmaceutics) 111,223−233(1994)に記載]、メトトレキサート、プロカルバジン、6−メルカプトプリンおよびミコフェノール(mucophenolic)酸など。
【0095】
(ad)代謝剤、例えば、食欲抑制薬および減量剤、例えば、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、ジエチルプロピオン、マジンドールおよびフェンテルミン。
【0096】
(ae)高カルシウム血症に用いられる薬剤、例えば、カルシトリオール、ジヒドロタキステロールおよびその活性誘導体または類縁体など。
【0097】
(af)呼吸器系の薬剤、例えば、
(i)鎮咳薬、例えば、エチルモルヒネ、デキストロメトルファンおよびフォルコジンなど;
(ii)去痰薬、例えば、アセチルシステイン、ブロムヘキシン、エメチン、グアイフ
ェネシン、トコン(ipecacuanha)およびサポニンなど;
(iii)充血除去剤、例えば、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミンおよび偽エフェドリン;ならびに
(iv)気管支攣縮弛緩薬、例えば、エフェドリン、フェノテロール、オルシプレナリン、リミテロール、サルブタモール、ツロブテロール、クロモグリク酸ナトリウム、クロモグリク酸およびそのプロドラッグ[例えば、International Journal of Pharmaceutics 7,63−75(1980)に記載]、テルブタリン、臭化イプラトロピウム、サルメテロールならびにテオフィリンおよびテオフィリン誘導体など。
【0098】
(ag)アレルギーおよび免疫系の薬剤、例えば、
(i)抗ヒスタミン薬、例えば、メクロジン、シクリジン、クロルシクリジン、ヒドロキシジン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、デクスクロフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルアミン、ドキシラミン、メブヒドロリン、フェニラミン、トリポリジン、アザタジン、ジフェニルピラリン、メトジラジン、テルフェナジン、アステミゾール、ロラチジンおよびセチリジンなど。
【0099】
(ah)局所麻酔薬、例えば、ブピバカイン、アメトカイン、リグノカイン、シンコカイン、ジブカイン、メピバカイン、プリロカインおよびエチドカインなど。
【0100】
(ai)角質層脂質、皮膚バリア修復の改善のための、例えば、セラミド、コレステロールおよび遊離脂肪酸[マン(Man)ら ジャーナル オブ インベスティゲイティッブ デルマトロジー(J.Invest.Dermatol.),106(5)、1096、1996]など。
【0101】
(aj)神経筋遮断薬、例えば、スキサメトニウム、アルクロニウム、パンクロニウム、アトラクリウム、ガラミン、ツボクラリンおよびベクロニウムなど。
【0102】
(ak)禁煙剤、例えば、ニコチン、ブプロピオンおよびイボガインなど。
(al)殺虫剤および局所もしくは全身性適用に適した他の農薬。
【0103】
(am)皮膚用薬剤、例えば、ビタミンAおよびE、酢酸ビタミンEおよびソルビン酸ビタミンEなど。
【0104】
(an)脱感作用のアレルゲン、例えば、イエダニアレルゲンなど。
(ao)栄養剤、例えば、ビタミン類、必須アミノ酸および必須脂肪など。
【0105】
(ap)ケラトリス、例えば、α−ヒドロキシ酸、グリコール酸およびサリチル酸など。
【0106】
(aq)精神賦活薬、例えば、3−(2−アミノプロピル)インドール、3−(2−アミノブチル)インドール、など。
【0107】
(ar)抗座瘡剤、例えば、イソトレチノイン、トレチノインおよび過酸化ベンゾイルなどを含有するもの。
【0108】
(as)抗乾癬剤、例えば、エトレチナート、シクロスポリンおよびカルシポトリオールなどを含有するもの。
【0109】
(at)抗掻痒剤、例えば、カプサイシンおよびその誘導体、例えば、ノニバミド[ツ
ァイ(Tsai)らドラッグ ディベロップメント アンド インダストリアル ファーマシー(Drug.Dev.Ind.Pharm.),20(4)、719、1994]など。
【0110】
(au)抗コリン剤(腋窩の発汗の抑制および汗疹の抑制に有効なもの)。制汗活性剤、例えば、硝酸メタトロピン(methatropine)、臭化プロパンテリン、スコポラミン、臭化メトスコポラミンおよび新しい類型のソフト制汗剤、第4級アシルオキシメチルアンモニウム塩[例えば、ボドー(Bodor)ら、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(J.Med.chem.)23、474(1980)および英国特許明細書第2010270号(1979年6月27日発行)にも記載]。
【0111】
(av)他の生理学的に活性なペプチドおよびタンパク質、小型から中型のペプチド、例えば、バソプレシンおよびヒト成長ホルモン。
【0112】
好ましくは、活性な薬剤は、アンドロゲン、好ましくはテストステロン;エストロゲン、好ましくはエストラジオール;プロゲステロンおよび他のプロゲスターゲン;気管支拡張薬;抗不安薬、好ましくはブスピロン;および中枢神経系の薬剤、好ましくはフェンタニルである。
【0113】
別の実施形態において、組成物は、組成物に使用のさらなる利点をもたらす第2の活性な薬剤をさらに含んでいてもよい。第2の活性な薬剤は、上記のものの任意の1つ、あるいはハーブエキスおよび/または化粧用薬剤(例えば、しみおよび角質繊維除去剤、老化防止剤、抗酸化剤およびヒドロキシ酸など)であり得る。
【0114】
好ましくは、第2の活性な薬剤は、抗真菌剤である。真菌感染は、熱生成および発汗が多い身体領域によく見られる。
【0115】
また別の実施形態において、組成物は、1種類以上の不活性な薬剤をさらに含むものであり得る。かかる不活性成分は、「添加剤」とも呼ばれ得る。かかる添加剤の例としては、限定されないが、湿潤剤、脱臭薬剤、制汗剤、pH調整剤、保存剤、乳化剤、密封性の薬剤(例えば、限定されないが、貼付剤および被膜形成剤)、可溶化剤、着色剤および界面活性剤(例えば、限定されないが、アニオン界面活性剤)が挙げられる。
【0116】
本発明の方法は、テストステロン不足ならびにこれと関連する状態および疾患の処置に特に好適である。
【0117】
本発明は、一連の活性な薬剤および一連の状態の処置に適用され得る。これらとしては、エストラジオール、プロゲスチン、ADHD剤およびフェンタニルの送達が挙げられ、これらは、他の投与経路による処置が既に知られている種々の適応症を処置するために使用され得る。
【0118】
活性な薬剤がテストステロンまたはその誘導体である本発明の好ましい方法は、男性および女性におけるテストステロン欠損症ならびにこれに起因する状態および疾患を処置するために使用され得る。組成物は、テストステロンまたはその誘導体を含むものであり得る。上記のように、テストステロンから合成により誘導され、かつ同じまたは類似の生理学的活性をもたらすことがわかっているアンドロゲン系近縁化合物が数多くある。
【0119】
男性および女性ともに、テストステロン生成は年齢とともに自然に減少する。テストステロン欠損症は、ホルモン分泌およびテストステロン生成を抑制する視床下部、下垂体または精巣に対する疾患または損傷に起因し得、性機能低下症としても知られている。年齢
に応じて、不充分なテストステロン生成は、筋肉および骨の発達異常、生殖器の発育不全ならびに男らしさ、性的衝動および/または欲求の低下をもたらし得る。
【0120】
男性におけるテストステロン欠損症(性機能低下症)は、出生時に存在し得るか(先天性)または後に発現し得る(後天性)。これは、視床下部−下垂体−性腺軸に沿ったその原因の位置によって分類される。
【0121】
・1次、精巣における破壊
・2次、下垂体における破壊
・3次、視床下部における破壊
最も一般的な先天性の原因は、クラインフェルター症候群である。この状態は、X染色体が多いことによって引き起こされ、不妊、薄い顔髭や体毛、異常な胸部肥大(女性化乳房)および小さい精巣をもたらす。
【0122】
先天性のホルモン障害、例えば、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)欠損症およびゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)欠損症(例えば、カルマン症候群)もまた、テストステロン欠損症の原因となり得る。
【0123】
他の先天性の原因としては、精巣の非存在(無精巣症;後天性でもあり得る)および精巣が陰嚢に下降しないこと(停留睾丸)が挙げられる。
【0124】
テストステロン欠損症の後天的な原因としては、化学療法;下垂体、視床下部または精巣が関与する手術中に起こる損傷;性腺機能不全;視床下部に影響を及ぼす頭部外傷;感染(例えば、髄膜炎、梅毒、流行性耳下腺炎);孤立性LH欠損症(例えば、妊性宦官型症候群);放射線;精巣外傷;および下垂体、視床下部または精巣の腫瘍が挙げられる。
【0125】
女性におけるアンドロゲン欠損症は、いくつかの試験において性の問題または愁訴の割合の増大と関連している。このような問題は、卵巣摘除した女性および他の原因のアンドロゲン欠損症を有する女性において高頻度に見られる。女性における性的欲求低下障害(HSDD)は、性的行為またはその受容力に対する性的空想、思考および/または欲求の永続性または再発性の欠損症(もしくは非存在)であり、これは、個人的苦悩をもたらす。原因は、生理学的または心理的または両方の組合せのいずれかであり得る。一般的な生理学的病因としては、ホルモン欠乏症、薬物治療および外科的介入が挙げられる。これらの病因によって引き起こされる女性ホルモン環境の任意の破壊が、性的欲求の低下をもたらし得る。性的欲求の欠如または低下はまた、不充分な性的刺激および応答、または性的行為に伴う痛みに副次的であり得る。別の要因は、充分な性的興奮を獲得または維持できないという困難(女性性的興奮障害(FSAD)としても知られる状態)であり得る。
【0126】
本発明の方法はまた、男性および女性.における性機能障害の処置においても使用され得る。
【0127】
正常な青年男性における正常な毎日のテストステロン生成は、3〜10mg/日の範囲であるが、日周的変動を伴う(最大はほぼ午前7時であり、1日を通して減少する)。男性におけるテストステロン療法の目的は、生理的量のテストステロンを全身循環に送達し、健常男性の正常範囲内の血清テストステロンレベル(例えば、300〜1000ng/dLまたは10〜35nM)をもたらすことである。
【0128】
いくつかの臨床試験で、女性性機能障害などの状態において、テストステロンレベルを正常な生殖レベルまで回復させることを目的とするテストステロン投与が性機能の改善に有効であることが示されている。これまでの試験で、1日150μg〜300μgの範囲
の用量の全身性投与は、アンドロゲン欠乏女性において、テストステロンレベルを中程度から高い閉経前のレベルまで戻すのに充分であり得ることが示されている。
【0129】
本発明は、テストステロン療法に応答性の広範なさまざまな状態、例えば、性機能低下症(原発性および続発性)、AIDS消耗症候群、小陰茎症、成長ホルモン分泌停止、男性更年期、男性更年期、または成人男性におけるアンドロゲン欠損症(ADAM)、腎透析または慢性腎臓疾患由来の貧血、良性前立腺過形成、座瘡、糖尿病、不妊、性的衝動、歯周病、蛋白同化作用後のステロイド乱用、ドライアイ、糖尿病性網膜症、網膜症、ならびに紅斑性狼瘡骨密度減少(すなわち、骨粗鬆症)、高脂血症、前立腺癌、心臓疾患、狭心症および高血圧に対する素因などの処置に使用され得る。
【0130】
本発明の組成物および本発明の方法において使用される組成物が揮発性溶媒を含む場合、本発明の好ましい実施形態の有意な利点の一例は、迅速に乾き、活性な薬剤(特に、テストステロン)の吸収を可能にし、腋窩への投与に限定されることにより他者に偶発的に投与されるという問題が回避されることである。本発明の経皮用組成物および本発明の方法に従って使用される組成物は、被験体の皮膚上での他の物質または製品の適用および使用を妨げない。
【0131】
最も好ましい実施形態において、本発明の経皮用組成物および本発明の方法において使用される組成物は、皮膚上で適用の3分以内に乾くように製剤化されたローション剤、スプレー剤またはエーロゾルとして適用される。このようにして、本発明者らは、組成物が皮膚内に誘導され、テストステロン組成物が皮膚内にレザバーを形成することを見出し、これは、腋窩を介して、この領域で高い局所皮下テストステロンレベルに伴う望ましくない作用なく、血中レベルの向上に特に活性であることを見出した。
【0132】
本発明の方法において使用される組成物は、好ましくは、3分未満の乾燥時間を有する。乾燥時間は、インビトロまたはインビボ試験によって決定され得る。適当なインビトロ試験は、10μLの試料を室温で(ほぼ20℃)清浄なガラススライド上に配置し、および少数点以下4桁の化学天秤を使用することを伴い、ビヒクルが蒸発を終えるのに要した時間を測定する。3回の反復試験で得られた乾燥時間が平均され得る。
【0133】
インビボ乾燥時間の測定では、3例の被験体の掌側前腕(32℃)に10μLに適用し、乾燥時間を、指触および目視確認(表面にビヒクルまたは光沢が見られない)によって測定する。
【0134】
次に、本発明を以下の実施例を参照しながら説明する。実施例は、本発明の例示の目的で示すこと、および本発明の範囲をなんら限定しないことを理解されたい。
【0135】
実施例
実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0136】
この実施例では、健常女性において、(a)内腕および(b)腋窩への定量用量のテストステロンローション剤の単回用量の適用後のテストステロンの単回用量の薬物動態を比較する。
【0137】
この実施例では、組成物(ここでは「組成物1」という)は、下記の成分を、規定の重量基準の量で含むものとした。
【0138】
【表1】

【0139】
非盲検の2期間試験を12例の健常閉経前の女性において行なった。
各期間で、1mLの定量用量テストステロンローション剤を単回用量として、無作為化計画に従って内腕または腋窩のいずれかに適用した。試料を各被験体について72時間にわたって採取し、続いて、テストステロン含量について解析した。
【0140】
2例の女性は、第1の投薬期間前に、試験から除外した。10例の女性が試験を完了し、結果を、図1に示すグラフに示す。腋窩および内腕からのテストステロン取込みを比較するベースライン補正データは、腋窩が内腕に対して、おおよそ2倍の取込み増大を有することを示す(AUC0〜72は、腋窩では5610.34ng/dL/時であるのに対し、内腕では2975.08ng/dL/時であった)。不都合な発汗または臭いは報告されなかった。
【実施例2】
【0141】
この実施例では、脱臭スプレー剤適用後、インビトロでのヒト皮膚を通した累積テストステロン透過を調べた。
【0142】
有限用量インビトロ拡散試験を、切り取ったヒト男性の腹部の皮膚を用いて実施し、ここで、脱臭剤を、5μL用量のテストステロンローション剤(実施例1に従って製剤化)の局所的適用後に、皮膚表面に所定回数適用した。これらの実験は、24時間にわたって、セルの拡散領域を1.0cmに増大させて改変した以外は、既報(クーパー(Cooper),E.R.ジャーナル オブ ファーマシューティカル サイエンス(J.Pharm.Sci.)1984,73,1153−1156)に基づくステンレス鋼製の流入拡散セルを用いて行なった。製剤は、臨床投薬条件を模倣する有限用量手法(フランツ(Franz),T.J.カレント プロブレムズ イン デルマトロジー(Curr.Probl.Dermatol.),1978,7,58−68)を用い、5μL/cmの適用投与容量で適用した。1片のステンレス鋼ワイヤメッシュを直接皮膚下の拡散セルの受容チャンバ内に配置し、皮膚下の受容溶液の乱流を維持した。拡散セルは、マイクロカセット蠕動ポンプ(Watson Marlow 505S UK)によってほぼ1.0mL/cm/時の流速に維持した。セルをヒーターバーによって32±0.5℃に維持し、試料を、自動フラクションコレクター(Isco Retriever II,Lincoln,NE)上の適切な大きさのバイアル内に指定の間隔で回収した。受容溶液(0.002%w/vのNaN中20%v/vのEtOH)は、皮膚下のシンク状態を維持した。
【0143】
テストステロンローション剤の適用後の指定された所定の時点で:
・脱臭剤の1回の噴霧(イソブタン、変性アルコール、プロパン、クエン酸トリエチル、パルファム、ブタンおよび水を含有)を、皮膚表面にほぼ1秒間、セルの供与区画の上面から約10cmの一定間隔を離して適用した;または
・3μLのエタノール(脱臭剤の1秒間の噴霧中に存在する推定量エタノール)
を適用した。
【0144】
皮膚を透過したテストステロンの量を、有効なHPLC法を用いて定量した。
局所的テストステロンローション剤の適用後の異なる時点での脱臭剤の噴霧の適用は、インビトロで、ヒト表皮を通したテストステロンの透過に対して有意な効果(増強または阻害性)はなかった。テストステロンローション剤投与後のニートエタノール(EtOH)の適用でもまた、インビトロでのヒト表皮を通したテストステロンローション剤の透過に対する有意な効果は示されなかった。
【0145】
図2は、製剤への脱臭スプレー剤の適用後に得られたテストステロン透過プロフィールを示す。図3は、組成物1製剤へのエタノール(3μL)の適用後に得られたテストステロン透過プロフィールを示す。療法の場合において、制御ラインは、調べた時間の間では有意に異ならないことがわかる。
【0146】
脱臭剤の噴霧または有限用量のニートEtOHいずれかの適用は、5μL用量のローション剤での皮膚テストステロンの透過に対する効果を有しないようであった。したがって、テストステロンローション剤の適用後の皮膚への脱臭剤の適用は、テストステロンの経皮的浸透を妨げないと結論付けた。
【実施例3】
【0147】
この実施例では、市販の脱臭剤に含めた場合の、インビトロでのヒト皮膚を通した累積テストステロンおよびエストラジオール透過を調べた。
【0148】
有限用量インビトロ拡散試験を、熱分離したヒト女性の腹部の表皮を用いて実施した。これらの実験は、これらの実験は、24時間にわたって、セルの拡散領域を1.0cmに増大させて改変した以外は、既報(Cooper,E.R.J.Pharm.Sci.1984,73,1153−1156)に基づくステンレス鋼製の流入拡散セルを用いて行なった。製剤は、臨床投薬条件を模倣する有限用量手法(Franz,T.J.Curr.Probl.Dermatol.,1978,7,58−68)を用い、5μL/cmの適用投与容量で適用した。1片のステンレス鋼ワイヤメッシュを直接皮膚下の拡散セルの受容チャンバ内に配置し、皮膚下の受容溶液の乱流を維持した。拡散セルは、マイクロカセット蠕動ポンプ(Watson Marlow 505S UK)によってほぼ1.0mL/cm/時の流速に維持した。セルをヒーターバーによって32±0.5℃に維持し、試料を、自動フラクションコレクター(Isco Retriever II,Lincoln,NE)上の適切な大きさのバイアル内に指定の間隔で回収した。受容溶液(0.002%w/vのNaN中20%v/vのEtOH)は、皮膚下のシンク状態を維持した。
【0149】
・組成物2:100%v/vの脱臭剤(男性用「ドライ」制汗脱臭剤スプレーのRexona Essentials、ユニリーバ、オーストラリア、BN:6030 10793)に対して1%w/vのテストステロン、5%w/vのサリチル酸オクチル、32%v/vのEtOH
・組成物3:100%v/vの脱臭剤(Rexona Activreserve「Classic Silk」制汗脱臭剤スプレー、ユニリーバ、オーストラリア、BN:6
054 11280)に対して0.5%w/vのE2エストラジオール、5%w/vのサリチル酸オクチル、52%v/vのEtOH
からなる2種類の製剤を使用した。
【0150】
注:サリチル酸オクチルを混和性を維持するため、各製剤において余剰のエタノールが必要とされた。使用した脱臭剤が異なったため、エタノールの量は製剤間で異なった。
【0151】
皮膚を透過したテストステロン(TES)およびエストラジオール(E2)の量を、HPLC法を用いて定量した。
【0152】
インビトロでのヒト表皮を通したTESの透過は、薬物をサリチル酸オクチル(OS)(EtOH溶液)とともに市販の脱臭剤に添加した場合、浸透促進剤を含まないエタノール性溶液でのその透過と比べて変わらなかった。図4は、対照の適用と比べた組成物2の適用で得られたTES透過プロフィールを示す。得られた曲線に有意差はなかった。組成物3では、インビトロでのヒト表皮を通したE2の透過は、薬物をOS(EtOH溶液中)とともに市販の脱臭剤に添加した場合、浸透促進剤を含まないエタノール性溶液でのその透過と比べて有意に改善された。図5は、対照の適用と比べた組成物3の適用で得られたE2透過プロフィールを示す。
【0153】
透過の改善は、わずか4時間後に明白となり、差は、時間とともに、特に投与から16時間後により有意となる。
【0154】
したがって、OSおよび市販の脱臭剤から構成されるエタノール性溶液でのTESまたはE2のインビトロ皮膚透過は、薬物単独で構成されるエタノール性溶液でのその透過より高くはないにしても、同等であった。これは、市販の脱臭剤に典型的に見られる成分を製剤に添加することは、経皮的テストステロンまたはエストラジオールの透過を阻害しなかったことを示す。
【実施例4】
【0155】
制汗剤または脱臭剤の添加なしでの、組成物1の制汗特性および脱臭特性を評価するための試験を行なった。この試験では、16例の男性志願者に、組成物1を腋窩(1ヶ所または複数)に実施例1と同様の様式で適用し、また、組成物1を施した腋窩(脇の下)での他の脱臭剤または制汗剤の使用を控えることを依頼した。しかしながら、被験体には、発汗の症状に悩まされた場合には脱臭剤を適用し、かかる適用を報告するよう指示した。興味深いことに、いずれの被験体でも、組成物1を腋窩に適用した場合、脱臭剤または制汗剤の使用の必要性の報告はなかった。
【0156】
最後に、種々の他の修正および/または改変が、本明細書に概略を示した本発明の精神から逸脱することなく行なわれ得る。本明細書に開示および規定した本発明は、本文または図面に記載した、またはこれらから自明の2つ以上の個々の特徴のあらゆる択一的な組合せに拡張される。このような異なる組合せはすべて、本発明の種々の異なる態様を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、経皮的適用後の経時的なテストステロンの血中レベル変動を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による組成物への脱臭スプレー剤の適用後に得られたテストステロン透過プロフィールのグラフである。
【図3】図3は、図2の本発明の同じ実施形態へのエタノール(3μL)の適用後に得られたテストステロン透過プロフィールのグラフである。
【図4】図4は、本発明の異なる実施形態の適用で得られたテストステロン透過プロフィールを対照の適用と比べたグラフである。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態の適用で得られたエストラジオール透過プロフィールを対照の適用と比べたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の生理学的に活性な薬剤;および
少なくとも1種類の揮発性溶媒;および
少なくとも1種類の粘度調整剤
を含む、経皮的薬物送達組成物。
【請求項2】
浸透促進剤をさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項3】
粘度調整剤がゲル化剤または増粘性薬剤である、請求項1に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項4】
300センチポイズ未満の粘度を有する、請求項1〜3いずれか1項に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項5】
溶媒が常圧で35mmHgより高い蒸気圧を有する、請求項1〜5いずれか1項に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項6】
溶媒が低級アルキルアルコールまたはかかるアルコールの混合物である、請求項1〜6いずれか1項に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項7】
浸透促進剤が、ジメチル−p−アミノ安息香酸オクチル、p−メトキシケイ皮酸オクチルおよびサリチル酸オクチルのうちの1つまたはその混合物である、請求項1〜6いずれか1項に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項8】
揮発性溶媒がイソプロピルアルコールであり、浸透促進剤がサリチル酸オクチルであり、活性な薬剤がテストステロンであり、増粘性薬剤がポリビニルピロリドンである、請求項1〜7いずれか1項に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項9】
8%w/vの促進剤;
1%w/vの活性剤(active);
2%w/vの増粘剤;
10%v/vの滅菌水;および
平衡の溶媒、例えば、30%イソプロパノールおよびエタノール
を有する、請求項1に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項10】
制汗剤および/または脱臭剤をさらに含む、請求項1〜9いずれか1項に記載の経皮的薬物送達組成物。
【請求項11】
1ヶ所以上の腋窩への活性な薬剤の適用による患者への活性な薬剤の全身への送達方法。
【請求項12】
1ヶ所以上の腋窩への揮発性溶媒との活性な薬剤の適用による患者への全身性の活性な薬剤の送達方法。
【請求項13】
活性な薬剤が請求項1〜10のいずれか1項に記載の経皮的薬物送達組成物中に存在している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
投与が本質的に腋窩に対してのみである、請求項11または13に記載の方法。
【請求項15】
制汗剤および/または脱臭剤が組成物としてほぼ同時に適用される、請求項11〜14いずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アンドロゲン化合物;および
揮発性担体;および
少なくとも1種類の皮膚浸透促進剤;および
少なくとも1種類の粘度調整剤
を含む経皮用組成物を被験体の皮膚の一領域に局所的に適用することを含む、被験体への経皮的アンドロゲン系化合物の送達方法。
【請求項17】
アンドロゲン系化合物がテストステロンまたはその誘導体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
皮膚の一領域が腋窩であり、テストステロンが、少なくとも所定量の血中レベルをもたらすように送達される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
組成物が1日1回以下で適用される、請求項16〜18いずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
活性な薬剤がアンドロゲン系化合物である、請求項11〜19いずれか1項に記載の方法によるアンドロゲン系化合物の送達を含む被験体のテストステロン欠損症の処置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−542306(P2008−542306A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513872(P2008−513872)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000763
【国際公開番号】WO2006/128255
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(503196558)アクルックス・ディ・ディ・エス・プロプライエタリー・リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】ACRUX DDS PTY LTD
【Fターム(参考)】