経皮的送達デバイスの最終滅菌法
副甲状腺ホルモン系物質を送達するように適合された最終滅菌された経皮的デバイスを提供するための方法及びシステム。複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材を、PTH系物質の充分な効力を保ちながら、PTH系物質の配合物でコーティングし、充分な放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌する。マイクロプロジェクション部材は、不活性雰囲気及び低い含水量を有するパッケージ内に密封することが好ましい。滅菌放射線はガンマ線又はe−ビーム線であってよく、約5〜50kGyの範囲の線量で送達することが好ましい。照射は−78.5〜25℃で実施することがさらに好ましい。好ましい実施形態では、3.0kGy/hを超える割合で放射線を送達する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、経皮的な物質送達システム及び方法に関する。より詳細には本発明は、副甲状腺ホルモン物質を送達するように適合された経皮的デバイスの滅菌法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野でよく知られているように、骨粗鬆症は、典型的には股関節部、脊椎及び手関節の骨折の危険性の上昇を個体にもたらす進行性の骨量減少によって特徴付けられる骨の障害である。30歳と40歳の間で典型的には始まる進行性の骨量減少は、骨折が生じるまで主に無症候性であり、患者の高度の罹患率及び死亡率をもたらす。骨粗鬆症にかかる人の80パーセントは女性であり、近年の研究に基づくと、閉経の開始後6年間で、女性はその骨質量の3分の1を失う。
【0003】
さらに当技術分野でよく知られているように、副甲状腺ホルモン(PTH)は、身体中のカルシウム及びリン酸塩の代謝を制御する副甲状腺によって分泌されるホルモンである。PTHには、骨形成を促進し、したがって骨折の発生を劇的に低下させる能力があるため、骨粗鬆症の治療において多大な関心がある。大規模な臨床試験が、PTHは骨粗鬆症を有する女性において、脊椎及び非脊椎骨折の割合を有効且つ安全に低下させることを示している。
【0004】
PTH系物質(PTH−based agents)は、骨の治癒を加速させるその能力のため、(男性と女性の両方で)骨折の治療においても多大な関心がある。
【0005】
この目的のために、以下で論じるように従来の送達手段である皮下注射用に再構成することができる、PTH系物質の様々な安定状態の配合物が開発されている。例示的な配合物は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,563,122号(「安定状態の副甲状腺ホルモン組成物(Stabilized Parathyroid Hormone Composition)」及び米国特許出願公開第2002/0107200号(「安定状態のテリパラチド溶液(Stabilized Teriparatide Solutions)」で開示された配合物である。
【0006】
現在承認されている注射用PTH系物質は、組換え型ヒト副甲状腺ホルモン(1−34)、(rhPTH(1−34))を含む、FORTEO(商標)(rDNA由来のテリパラチド注射溶液)である。FORTEO(商標)は典型的には、医師の評価に基づいて、骨粗鬆症による骨折の病歴を有する女性、骨折に関する多数の危険因子を有する人、又は以前の骨粗鬆症療法に失敗しているか或いは耐性がなかった人のために処方される。骨粗鬆症を有する閉経後の女性において、FORTEO(商標)は骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、脊椎及び非脊椎骨折の危険性を低下させることが見出されている。
【0007】
FORTEO(商標)は、骨折に関する危険性が高い一次性又は性機能低下性骨粗鬆症を有する男性において、骨質量を増大させることも見出されている。これらは骨粗鬆症による骨折の病歴を有する男性、又は骨折に関する多数の危険因子を有する人、又は以前の骨粗鬆症療法に失敗しているか或いは耐性がなかった人を含む。一次性又は性機能低下性骨粗鬆症を有する男性において、FORTEO(商標)はBMDを増大させることが同様に見出されている。
【0008】
皮下注射以外に、PTH系物質を送達する他の手段も研究されている。例えば、様々な肺送達(即ち吸入)法が、「骨障害のための薬剤の肺送達(Pulmonary Delivery of Drugs for Bone Disorders)」、「最新の薬剤送達の総説(Advanced Drug Delivery Reviews)」、Vol.42、Issue3、pp.239〜248(2000年8月31日)、Patton、「肺送達ペプチド及びタンパク質:−インターフェロン、カルシトニン及び副甲状腺ホルモンの生物学的利用能(Bioavailability of Pulmonary Delivered Peptides and Proteins:−Interferon、Calcitonins and Parathyroid Hormones)」、Journal of Controlled Release、Vol.28、Issues1〜3、pp.79〜85(1994年1月)、Patton、et al.、「ラット肺由来の副甲状腺ホルモン(1−34)の吸収に対する肺送達の配合物及び方法の影響(Impact of Formulation and Methods of Pulmonary Delivery on Absorption of Parathyroid Hormone (1−34)from Rat Lungs)」、Journal of Pharmaceutical Sciences、Vol.93、Issue5、pp.1241〜1252(2004年5月)、Codrons、et al.、「ラットにおける吸入用乾燥粉末を使用する副甲状腺ホルモン(1−34)の全身送達(Systemic Delivery of Parathyroid Hormone(1−34)Using Inhalation Dry Powders in Rats)」、Journal of Pharmaceutical Sciences、Vol.92、Issue5、pp.938〜950(2003年5月)及びPfutzner、A、et al.、「テクノスフェア/PTH(1−34)を用いたパイロット試験−副甲状腺ホルモン(1−34)の有効な肺送達のための新たな手法(Pilot Study with Technosphere/PTH(1−34)−A New Approach for Effective Pulmonary Delivery of Parathyroid Hormone(1−34))」、Horm.Metab.Res.、Vol.35(5)、pp.319〜23中で論じられている。
【0009】
PTH系物質の能動的経皮送達の様々な方法は、「カルシウム制御ホルモンのEontophoretic Eransdermal送達に対するエレクトロポレーションの影響(The Effect of Electroporation on Eontophoretic Eransdermal Delivery of Calcium Regulating Hormones)」、Journal of Controlled Release、Vol.66、Issues2〜3、pp.127〜133(2000年5月15日)、及びChang、et al.、「ヒトPTH(1−34)の拍動式経皮イオン導入投与による卵巣切除ラットにおける骨量減少の予防(Prevention of Bone Loss in Ovariectomized Rats by Pulsatile Transdermal Iontophoretic Administration of Human PTH(1−34))」、Journal.of Pharmaceutical Sciences、Vol.91,Issue2、pp.350〜361(2002年2月)中でも論じられている。
【0010】
骨粗鬆症などの傷害の治療においてPTH系物質が有効であるにもかかわらず、開示された従来技術の、特に皮下注射によるPTH系物質の送達法に関する、幾つかの欠点及び不都合が存在する。主な欠点は、皮下注射は困難且つ厄介な手順であり、患者のコンプライアンスの低下をもたらすことが多いことである。
【0011】
PTH系物質をin vivoに連続的に注入することによって、能動的な骨再吸収をもたらす。一日一回の皮下注射が原因である有効性に基づくと、PTH送達の任意の代替経路により、皮下注射されるPTHより速くPTHの血中濃度が得られるはずである。したがって、PTH系物質を拍動式に投与することは非常に重要である。
【0012】
したがって、最小限の侵襲性のPTH系物質の投与を容易にする物質送達システムを得ることは望ましい可能性がある。さらに、皮下投与後に観察されるそれと類似したPTH系物質の薬物動態プロファイルをもたらす物質送達システムを得ることが、望ましい可能性がある。
【0013】
マイクロプロジェクションシステムを使用するhGHなどの物質の皮内投与は以前に文書化されており、皮下投与後に観察されるそれと類似したhGHの薬物動態プロファイルをもたらしている。例えば「コーティングされた微小突出部を有する経皮的薬剤送達デバイス(Transdermal Drug Delivery Devices Having Coated Microprotrusions)」という表題の、Cormier、et al.、米国特許出願公開第2002/0128599号を参照のこと。
【0014】
したがって経皮的送達は、そうしなければ皮下注射又は静脈内注入によって送達することが必要となる、PTH系物質を投与するための実行可能な代替である。本明細書で使用する用語「経皮的」は、外科用ナイフによる切開又は皮下注射針による皮膚の貫通などの皮膚の実質的な切開又は浸透を伴わない、皮膚から局所組織又は全身循環系への、活性物質(例えば、PTH系物質などの治療用物質、又はワクチンなどの免疫活性物質)の送達を指す一般用語である。したがって経皮的物質送達は、受動的拡散による皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びに電気(例えばイオントフォレシス)及び超音波(例えばフォノフォレシス)などの外部エネルギー源に基づく送達を含む。
【0015】
より一般的である受動的経皮的物質送達システムは、高濃度の活性物質を含む薬剤リザーバを典型的には含む。リザーバは皮膚と接触するように適合されており、これによって患者の皮膚及び身体組織又は血流中に物質を拡散させることができる。
【0016】
当技術分野でよく知られているように、経皮的な薬剤の流動は、皮膚の状態、薬剤分子の大きさ及び物理的/化学的性質、並びに皮膚中の濃度勾配に依存する。多くの薬剤に対する皮膚の低い浸透性のために、経皮的送達は限られた用途を有している。この低い浸透性は、脂質二重層に囲まれるケラチン繊維が充満した平坦な死細胞(即ち、ケラチン生成細胞)からなる、角質層、最外殻皮膚層に主に原因がある。脂質二重層のこの高次構造は、角質層に比較的不浸透性である特徴を与える。
【0017】
受動的経皮的な拡散物質の流動を増大させる1つの一般的な方法は、最外殻皮膚層に機械的に浸透して皮膚中に微小経路を作製することを含む。最外殻皮膚層を機械的に浸透又は粉砕して皮膚中への経路を作製するために開発された、多くの技法及びデバイスが存在している。例示的なものとして、米国特許第3,964,482号中に開示された薬剤送達デバイスがある。
【0018】
経皮的な物質の送達を増大させるために小さな貫通型構成要素を使用する他のシステム及び装置は、いずれもその全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,879,326号、米国特許第3,814,097号、米国特許第5,250,023号、米国特許第3,964,482号、再発行番号25,637号、及びPCT公開番号WO96/37155、WO96/37256、WO96/17648、WO97/03718、WO98/11937、WO98/00193、WO97/48440、WO97/48441、WO97/48442、WO98/00193、WO99/64580、WO98/28037、WO98/29298、及びWO98/29365中に開示されている。
【0019】
開示されたシステム及び装置は、様々な形状及び大きさの貫通型構成要素を利用して皮膚の最外殻層(即ち、角質層)を貫通させる。これらの参照文献中に開示された貫通型構成要素は一般に、パッド又はシートなどの薄くて平らな部材から垂直に伸びている。これらのデバイスの幾つかの貫通型構成要素は非常に小さく、幾つかの貫通型構成要素はわずか約25〜400ミクロンのマイクロプロジェクション長、及びわずか約5〜50ミクロンのμmのマイクロプロジェクション厚を有する。これらの小さな貫通型/切断構成要素は、そこを通じた経皮的な物質送達を増大させるための、小さなマイクロスリット/マイクロカットを角質層中に相応じて作製する。
【0020】
開示されたシステムはさらに、物質を保持するためのリザーバ、及びデバイス自体の中空タインなどによってリザーバから角質層へ物質を移動させるための送達システムも、典型的には含む。このようなデバイスの一例はWO93/17754中に開示されており、これは液体物質リザーバを有する。しかしながら、リザーバを加圧して、液体物質を小さな管状構成要素及び皮膚中に向けなければならない。このようなデバイスの欠点には、加圧式液体リザーバを加えることに関する追加的な複雑性及び出費、並びに圧力駆動型送達システムの存在による複雑性がある。
【0021】
参照として完全に本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/045,842号で開示されたように、送達する活性物質を物理的リザーバ中に含める代わりに、マイクロプロジェクションにコーティングすることも可能である。これによって別の物理的リザーバ、及びリザーバに特異的な物質の配合物又は組成物の開発の必要性を排除する。
【0022】
言及されているように、PTH系物質は現在、静脈内経路によってのみ送達されている。したがって、PTH系物質並びに他の副甲状腺ホルモンの経皮投与を容易にする物質送達システムを提供することが望ましいはずである。
【0023】
PTH系物質などの非経口医薬品は、滅菌性の厳しい標準を満たさなければならない。滅菌品を保証するための1つの従来法は、無菌製造法である。しかしながら、製造プロセスを通じて滅菌環境を維持する要求は、時間を浪費し、労力を要し、非常に高価である。
【0024】
無菌製造法に対して考えられる魅力的な代替法は、製造プロセスの最後に生成物を滅菌することである。最終滅菌は、安定した小分子に通常使用される。残念ながらこの方法は、より不安定な生物医薬品に関する重大な課題を呈する。特に、PTH系物質などの複雑な生物分子構造体は、電子の転位が原因の損傷、共有結合の切断、立体配座の変化、フリーラジカル及び酸化が原因の化学的攻撃を被る。したがって、このような活性物質は劣化から保護して治療活性を保たなければならない。
【0025】
米国特許第6,346,216号及び米国特許第6,171,549号中でKentは、様々な生物分子を滅菌するための低い照射率の使用を開示している。しかしながらこれらの教示は、副甲状腺ホルモン又は経皮的送達デバイス用に調整した特異的条件を述べていない。Kentはさらに、生成物の安定性に対するパッケージの影響に関する如何なる議論も与えておらず、室温での照射に焦点を合わせている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって本発明の目的は、PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを都合よく滅菌するための方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらに他の目的は、無菌製造法よりコスト効率がよい、経皮的送達システムを滅菌するための方法を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、経皮的送達に適合されたPTH系物質を最終滅菌するための方法を提供することである。
【0029】
本発明の他の目的は、滅菌中のPTH系物質の安定性を最適化するように適合された、経皮的送達デバイスに関するパッケージ条件を提供することである。
【0030】
本発明のさらに他の目的は、PTH系物質が相当な程度の活性を保持するようにPTH系物質を送達するための経皮的デバイスを、最終滅菌するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前述の目的、及び以下に言及し明らかになるはずである目的によれば、経皮的送達デバイスを最終滅菌するための方法及びシステムは、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有する生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含む。マイクロプロジェクション部材は、マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に密封することが好ましい。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。
【0032】
本発明の一態様では、乾燥剤をパッケージ内に密封することによって、パッケージ内の含水量を減少させる。或いはマイクロプロジェクション部材を、パッケージ内にマイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング(retainer ring)上に取り付ける。好ましい実施形態では、乾燥剤と予め乾燥状態にしたリテーナリングの両方を使用して、密封パッケージ内の含水量を減少させる。
【0033】
本発明の他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材を密封する前に、不活性ガスでパッケージをパージする。パッケージは、乾燥窒素でパージすることが好ましい。
【0034】
本発明は、照射を行う温度を調節することによって、滅菌中のPTH系物質の分解を抑制させることも含む。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0035】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材は約5〜50kGyの範囲にある線量の放射線を受ける。一実施形態では、線量は約7kGyである。他の実施形態では、線量は約21kGyである。
【0036】
他の実施形態では本発明は、約3.0kGy/hを超える割合でマイクロプロジェクション部材を放射線に曝すことを含む。
【0037】
本発明の他の実施形態では、10−6の滅菌保証レベルを得るのに充分な放射線にマイクロプロジェクション部材を曝す。
【0038】
本発明の他の実施形態では、抗酸化剤をコーティング配合物に加える。適切な抗酸化剤にはメチオニン及びアスコルビン酸がある。
【0039】
本発明の方法は、PTH系物質が最初の純度の少なくとも約96%を保つように、マイクロプロジェクション部材を滅菌することも含む。PTH系物質は、最初の純度の少なくとも約98%を保つことがより好ましい。
【0040】
本発明の現在好ましい実施形態では、経皮的送達デバイスを最終滅菌するための方法は、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、予め乾燥状態にしたリテーナリング上にマイクロプロジェクション部材を取り付けるステップ、窒素でパージしマイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をe−ビーム線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成される生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含むことが好ましい。
【0041】
他の実施形態では、本発明の方法は、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を置くステップ、パッケージ内の含水量を減少させるステップ、前記マイクロプロジェクション部材を前記パッケージで密封するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成される生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含むことが好ましい。
【0042】
他の実施形態では本発明は、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有するマイクロプロジェクションが、マイクロプロジェクション部材上に配置されており、コーティングがその上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されているマイクロプロジェクション部材、及び不活性ガスでパージしマイクロプロジェクション部材周辺に密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的送達システムである。乾燥剤をマイクロプロジェクション部材と共にパッケージ内に密封することが好ましい。マイクロプロジェクション部材は、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付けることがさらに好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態では、パッケージを窒素でパージする。
【0044】
他の実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。
【0045】
他の実施形態では本発明は、PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、少なくとも1つのPTH系物質を有しマイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及び不活性ガスでパージしマイクロプロジェクション部材周辺に密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。
【0046】
他の実施形態では本発明は、PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され少なくとも1つのPTH系物質を有する固体フィルム、及び不活性ガスでパージしマイクロプロジェクション部材周辺に密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。固体フィルムは、少なくとも1つのPTH系物質、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製することが好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。
【0048】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又は類似の生体適合性材料から構成されている。
【0049】
他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ポリマー材料などの非伝導性材料から構成されている。
【0050】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。
【0051】
固形生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材に施すコーティング配合物は、水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明の少なくとも1つの実施形態では、配合物は少なくとも1つのPTH系物質を含み、これは生体適合性担体に溶かすか或いは担体に懸濁することができる。
【0052】
好ましい実施形態では、PTH系物質はhPTH(1−34)、hPTH塩及び類似体、テリパラチド及び関連ペプチドからなる群から選択される。本出願中、用語「PTH系物質」及び「hPTH(1−34)物質」は、組換え型hPTH(1−34)、合成hPTH(1−34)、PTH(1−34)、テリパラチド、hPTH(1−34)塩、hPTH(1−34)の単純誘導体、hPTH(1−34)アミドなど、及び密接に関連する分子、hPTH(1−33)又はhPTH(1−31)アミド、又は任意の他の密接に関連する骨形成ペプチドを非制限的に含む。合成hPTH(1−34)が最も好ましいPTH物質である。
【0053】
薬剤として許容されるhPTH塩の例は酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グリコン酸塩、グルクロン酸塩、3−ヒドロキシイソ酪酸塩、トリカルバリリク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピン酸塩、チグリク酸塩、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩、ヒドロアクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2−ヒドロキシイソ酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼン、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩を非制限的に含む。
【0054】
本発明の一実施形態では、PTHはコーティング配合物の約1〜30重量%の範囲を構成する。
【0055】
好ましくは、コーティング配合物中に含まれるPTHの量は約1〜1000μgの範囲であり、さらにより好ましくは約10〜100μgの範囲である。
【0056】
さらに好ましくは、経皮送達されるPTH系物質はテリパラチド(hPTH(1−34))を含み、生体適合性コーティングは約10〜100μg用量の範囲のPTH系物質用量を含み、PTH系物質の送達は一回の施用後に少なくとも50pg/mLの血漿Cmaxをもたらす。
【0057】
他の特徴及び利点が、添付の図面で例示する通り、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳細な記載から明らかになり、同じ参照符号は図中の同じ部分又は要素を一般に指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、詳細に例示した物質、方法又は構造に限られず、したがって当然ながら変わる可能性があることを理解されたい。したがって、本明細書に記載したものと類似する又は均等な幾つかの物質及び方法を、本発明を実施する際に使用することができるが、好ましい物質及び方法を本明細書に記載する。
【0059】
本明細書で使用する用語は、単に本発明の個々の実施形態を記載する目的のものにすぎず、制限するものではないことも理解されたい。
【0060】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0061】
さらに、本明細書に引用する全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記のいずれも、その全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0062】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容が他のことを明らかに示さない限り複数形を含む。したがって、例えば、「1つのペプチド」への言及は2つ以上のこのようなペプチドを含み;「1つのマイクロプロジェクション」への言及は2つ以上のこのようなマイクロプロジェクションなどを含む。
【0063】
定義
本明細書で使用する用語「経皮的」は、局所又は全身療法用の皮膚中への且つ/又は皮膚を介した物質の送達を意味する。したがって用語「経皮的」は、受動的拡散による皮膚中且つ/或いは皮膚を介したワクチンなどの物質の皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びにエネルギーに基づく拡散送達、イオントフォレシス及びフォノフォレシスなどを意味し、それらを含む。
【0064】
本明細書で使用する用語「経皮的流動」は、経皮的送達の割合を意味する。
【0065】
本明細書で使用する用語「同時送達」は、PTH系物質を送達する前、PTH系物質の経皮的流動の前及び最中、PTH系物質の経皮的流動の最中、PTH系物質の経皮的流動の最中及び後、且つ/或いはPTH系物質の経皮的流動の後のいずれかに、補助物質を経皮的に投与することを意味する。さらに、2つ以上のPTH系物質をコーティング及び/又は配合物に配合し、PTH系物質の同時送達をもたらすことができる。
【0066】
本明細書で使用する用語「PTH系物質」及び「hPTH(1−34)物質」は、hPTH(1−34)、hPTH塩、hPTH類似体、テリパラチド、84アミノ酸ヒト副甲状腺ホルモンのN末端34アミノ酸(生物活性領域)配列と同じ手段によって機能するペプチド配列を有する、密接に関連するペプチド及び物質を非制限的に含む。したがって用語「PTH系物質」及び「hPTH(1−34)物質」は、組換え型hPTH(1−34)、合成hPTH(1−34)、PTH(1−34)、hPTH(1−34)塩、テリパラチド、hPTH(1−34)の単純誘導体、hPTH(1−34)アミドなど、及び密接に関連する分子、hPTH(1−33)又はhPTH(1−31)アミド、及び密接に関連する骨形成ペプチドを非制限的に含む。
【0067】
適切なhPTH塩の例は酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グリコン酸塩、グルクロン酸塩、3−ヒドロキシイソ酪酸塩、トリカルバリリク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピン酸塩、チグリク酸塩、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩、ヒドロアクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2−ヒドロキシイソ酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼン、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩を非制限的に含む。
【0068】
示したPTH系物質は、遊離塩基、酸、帯電又は非帯電分子、分子複合体の要素又は非刺激性の、薬理学的に許容される塩などの様々な形であってもよい。
【0069】
2つ以上のPTH系物質を本発明の物質源、配合物、及び/又はコーティング及び/又は固体フィルム中に取り込ませることができること、及び用語「PTH系物質」の使用は、決して2つ以上のこのようなペプチドの使用を排除するわけではないことは理解されよう。
【0070】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション」又は「マイクロプロトゥルージョン」は、生きている動物、詳細には哺乳動物、及びより詳細にはヒトの皮膚の角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層に貫通又は横断するように適合された貫通型構成要素を指す。
【0071】
本発明の一実施形態では、貫通型構成要素は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有する。他の実施形態では、貫通型構成要素は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクションはさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅(図1中に「W」で示す)及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有する。マイクロプロジェクションは、ニードル、ブレード、ピン、パンチ、及びこれらの組合せなどの異なる形に形成することができる。
【0072】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション部材」は、角質層を貫通させるためのアレイ中に配置された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクションアレイを一般に意味する。薄いシートから複数のマイクロプロジェクションをエッチング又はパンチングし、及びシートの平面からマイクロプロジェクションをホールディング又はベンディングして、図1中に示す形状などの形状を形成することによって、マイクロプロジェクション部材を形成することができる。その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,050,988号中に開示されたように、マイクロプロジェクション部材は、ストリップの各端に沿ってマイクロプロジェクションを有する1つ又は複数のストリップを形成することなどによって、他の知られている方法で形成することもできる。
【0073】
本明細書で使用する用語「コーティング配合物」は、マイクロプロジェクション及び/又はそのアレイをコーティングするために使用する、自由に流動する組成物又は混合物を意味し、それらを含むものとする。PTH系物質は、その中に配置される場合、配合物の溶液又は懸濁液であってよい。
【0074】
本明細書で使用する用語「生体適合性コーティング」及び「固体コーティング」は、実質的に固体状態である「コーティング配合物」を意味し、それらを含むものとする。
【0075】
前に示したように、本発明は一般的に、製造プロセスの最後に経皮的送達システムを最終滅菌するための方法を含む。本発明は、滅菌済みの送達システムも含む。経皮的送達システムは、角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクション(又はそのアレイ)を有するマイクロプロジェクション部材(又はシステム)を含む。マイクロプロジェクション部材(又はシステム)は、PTH系物質(即ち、生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物又は固体フィルム)の少なくとも1つの源又は送達媒体も含む。充分な放射線に曝して所望の滅菌保証レベルを得ることによって、経皮的送達システムを最終滅菌する。
【0076】
放射源としてコバルト−60を使用することなどによる従来の方法によって、ガンマ線を送達することができる。市販のコバルト−60滅菌装置は、約0.3Gy/h及び9.6kGy/hの範囲の照射率をもたらすことを、当業者は理解しているはずである。アメリシウム−241を使用することもでき、約0.3mGy/hを超える割合で一般に照射される。他の同位体を使用して、所望の割合でガンマ線を送達することもできる。e−ビーム線はガンマ線より実質的に高い割合、約100kGy/hなどで従来発生させている。好ましい実施形態では、所望の滅菌レベルに到達するのに充分な線量を得るのに必要とされる処理時間を最小にするために、線量の割合は3.0kGy/h以上である。
【0077】
最終滅菌に必要とされる放射線量は、従来の方法によって決定することができる。例えば、10−6の滅菌保証レベル(SAL)を得るための線量要件は、微生物学及び製造に関する考慮事項から評価することができる。一実施形態では、低い線量はゼロの微生物負荷(ISO11137方法2Bを使用する8.2kGy)及び四期の線量検査中の滅菌失敗に関する1つの増強値(15kGy)に基づく。+10%の処理能力を加えることによって、これらの計算によって16.5kGyの線量を得る。
【0078】
したがって、PTH系物質を充填したマイクロプロジェクション部材の最終滅菌は、e−ビーム線又はガンマ線でシステムを照射することによって実施する。適切な線量は約5〜50kGyの範囲、より好ましくは約10〜40kGyの範囲である。幾つかの実施形態では、線量は少なくとも約7kGyである。他の実施形態では、線量は約14kGyである。さらに他の実施形態では、線量は約21kGyである。
【0079】
本発明の他の実施形態では、アプリケータと共に使用するためにリテーナリング上にマイクロプロジェクション部材を取り付ける。
【0080】
システムは、マイクロプロジェクション部材の最終滅菌を容易にするように適合されたパッケージも含むことができる。
【0081】
示した実施形態では、マイクロプロジェクション部材周辺の不活性の、低含水量雰囲気を保つことが好ましい。したがって、マイクロプロジェクション部材を含むパッケージは、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスでパージすることが好ましい。他の実施形態では、パッケージを真空にして、PTH系物質の劣化を最小にするのを手助けすることができる。他の実施形態では、パッケージ中の酸素の量を減らして、酸化による劣化を最小にする。
【0082】
さらに、パッケージ中に吸湿乾燥剤を含めることが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、乾燥剤は3〜4Åの孔径を有するMinipaxモレキュラーシーブを含む。他の代表的な吸湿材料には、アルミナ、ボーキサイト、無水硫酸カルシウム、吸水性粘土、活性ベントナイト粘土、シリカゲル、又は他の同様の材料があるが、これらだけには限られない。乾燥剤は、乾燥剤がそれ以上使用できなくなるときを示すための塩化コバルトなどの湿感性の着色指標を、場合によっては含む。乾燥剤は、マイクロプロジェクションシステムのプラスチック要素からの任意の残留水分を吸収するのに充分な量で存在しなければならない。例えば、約0.5g〜5gのモレキュラーシーブ乾燥剤の範囲の量が、典型的なマイクロプロジェクションシステムに充分である。
【0083】
他の実施形態では、リテーナリングを構築前に乾燥させて、密封パッケージ中に導入されるリングからの水分を妨げる。
【0084】
本発明のさらに他の実施形態は、照射中にPTH系物質を安定状態にするのを助ける抗酸化剤を含む。適切な抗酸化剤はメチオニン、アスコルビン酸などを含む。抗酸化剤は、約1〜5%の範囲の量で加えることが好ましい。
【0085】
本発明の他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材の照射は定義された温度で実施して、PTH系物質を安定状態にする。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0086】
他の生物活性物質の最終滅菌に関する他の情報は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、2005年6月2日に出願された同時係属米国出願第60/687,635号、及び2005年6月2日に出願された第60/687,519号中で見ることができる。
【0087】
ここで図1及び2を参照すると、本発明と共に使用するためのマイクロプロジェクション部材30の一実施形態が示される。図1に示すように、マイクロプロジェクション部材30は、複数のマイクロプロジェクション34を有するマイクロプロジェクションアレイ32を含む。マイクロプロジェクション34は、示した実施形態において開口部38を含むシートから、ほぼ90°の角度で伸びていることが好ましい。この実施形態では、マイクロプロジェクション34は、薄い金属シート36からの複数のマイクロプロジェクション34のエッチング又はパンチング、及びシート36の平面からのマイクロプロジェクション34のベンディングによって形成される。
【0088】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材30は少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。好ましくは、物質が通過する単位領域当たりの開口部の数は、少なくとも約10開口部/cm2且つ約2000開口部/cm2未満である。
【0089】
示すように、マイクロプロジェクション34は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有することが好ましい。一実施形態では、マイクロプロジェクション34は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクション34はさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有することが好ましい。
【0090】
マイクロプロジェクション部材30の生体適合性を増大させるために(例えば、対象の皮膚への施用後の出血及び炎症を最小にするために)、他の実施形態では、マイクロプロジェクション34は好ましくは145μm未満、より好ましくは約50〜145μmの範囲、さらにより好ましくは約70〜140μmの範囲の長さを有する。さらに、マイクロプロジェクション部材30は、好ましくは100マイクロプロジェクション/cm2を超える、より好ましくは約200〜3000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有するアレイを含む。
【0091】
マイクロプロジェクション部材30は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金などの様々な金属、又は類似の生体適合性材料から製造することができる。
【0092】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材30は、ポリマーなどの非伝導性材料から構成されていてもよい。
【0093】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。記した疎水性材料及び関連ベース(例えばホトレジスト)層は、参照として本明細書に組み込まれる米国出願第60/484,142号中で述べられている。
【0094】
本発明と共に使用することができるマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,083,196号、第6,050,988号及び第6,091,975号中に開示された部材があるが、これらだけには限られない。
【0095】
本発明と共に使用することができる他のマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,326号中に開示された部材などの、シリコンチップエッチング技法を使用してシリコンをエッチングすることによって形成される部材、又はエッチングしたマイクロモールドを使用してプラスチックを成形することによって形成される部材がある。
【0096】
本発明によれば、宿主に投与するPTH系物質は、マイクロプロジェクション部材30上に配置された生体適合性コーティング中に含めることができ、或いはヒドロゲル配合物中に含めることができ、或いは生体適合性コーティングとヒドロゲル配合物の両方中に含めることができる。本発明のヒドロゲル配合物は、水系ヒドロゲルを含むことが好ましい。ヒドロゲルは、その高い水含量及び生体適合性のため好ましい配合物である。ヒドロゲルは、ゲルパックとして形成されることがさらに好ましい。
【0097】
マイクロプロジェクション部材が物質含有固体フィルムを含む他の実施形態では、PTH系物質を生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物又は固体フィルム配合物、又は3つ全ての送達媒体中に含めることができる。固体フィルムは、少なくとも1つのPTH系物質、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製することが好ましい。
【0098】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は少なくとも1つのPTH、好ましくはhBNP(1−32)を含む生体適合性コーティングを含む。マイクロプロジェクション部材を、所望の滅菌保証レベルまで最終滅菌する。皮膚の角質層を貫通すると、ペプチド含有コーティングが体液(細胞内液及び腸液などの細胞外液)によって溶かされ、全身療法用に皮膚中に放出される(即ち、大量送達)。20μgの大量用量のPTH系物質は、マイクロプロジェクション部材を15分以下適所に放置することによってパルス方式で送達することが好ましい。
【0099】
ここで図2を参照すると、PTH系物質の生体適合性コーティング35を含むマイクロプロジェクション34を有する、マイクロプロジェクション部材31が示される。本発明によれば、コーティング35はそれぞれのマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に覆うことができる。例えば、コーティング35はマイクロプロジェクション34上の乾燥パターンコーティングであってよい。マイクロプロジェクション34が形成される前又は後に、コーティング35を施すこともできる。経皮的PTH送達システムの使用に関する他の情報は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる同時係属米国出願第11/084,634号中で見ることができる。
【0100】
本発明によれば、様々な既知の方法によって、コーティング35をマイクロプロジェクション34に施すことができる。コーティングは皮膚を貫通する部分、マイクロプロジェクション部材31又はマイクロプロジェクション34のみ(例えば先端39)に施すことが好ましい。
【0101】
1つのこのようなコーティング法は、ディップコーティングを含む。ディップコーティングは、コーティング溶液中にマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に浸すことによって、マイクロプロジェクションをコーティングするための手段として記載することができる。部分的含浸技法を使用することによって、マイクロプロジェクション34の先端39のみにコーティング35を制限することができる。
【0102】
他のコーティング法は、マイクロプロジェクション34の先端39へのコーティング35を同様に制限するローラーコーティング機構を利用するローラーコーティングを含む。ローラーコーティング法は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国出願第10/099,604号(公開番号2002/0132054)中に開示されている。記した出願中で詳細に論じられたように、この開示されたローラーコーティング法は、皮膚貫通中にマイクロプロジェクション34から容易に除去されない平滑なコーティングを提供する。
【0103】
本発明によれば、マイクロプロジェクション34は、孔(図示せず)、溝(図示せず)、表面不整(図示せず)又は同様の改変などの、コーティング35の体積を受け入れる且つ/或いは増大させるように適合された手段をさらに含むことができ、これらの手段は、その上に多量のコーティングを配置することができる増大した表面積を与える。
【0104】
本発明の範囲内で利用することができる他のコーティング法は、噴霧コーティングを含む。本発明によれば、噴霧コーティングはコーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を含むことができる。一実施形態では、約10〜200ピコリットルの滴径を有するエアロゾル懸濁液を、マイクロプロジェクション34に噴霧し、次いで乾燥させる。
【0105】
パターンコーティングを利用して、マイクロプロジェクション34をコーティングすることもできる。分配する液体をマイクロプロジェクション表面上に配置するための分配システムを使用して、パターンコーティングを施すことができる。分配する液体の量は、0.1〜20ナノリットル/マイクロプロジェクションの範囲であることが好ましい。適切な正確な目盛り付きの液体ディスペンサーの例は、参照として本明細書に完全に組み込まれる米国特許第5,916,524号、5,743,960号、5,741,554号、及び5,738,728号中に開示されている。
【0106】
マイクロプロジェクションコーティング配合物又は溶液を、電場の使用によって一般に制御される、知られているソレノイドバルブ付きディスペンサー、任意選択の流体動力手段、及び配置手段を使用するインクジェット技術を使用して施すこともできる。印刷産業からの他の液体分配技術、又は当技術分野で知られている類似の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを施すために使用することができる。
【0107】
ここで、図3及び4を参照し、保存及び施用するために、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国出願第09/976,762号(公開第2002/0091357号)に詳細に記載されている通り、マイクロプロジェクション部材30は、接着タブ6によってリテーナリング40中で吊り下げられることが好ましい。
【0108】
マイクロプロジェクション部材をリテーナリング40中に置いた後に、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施す。その全容が参照として本明細書に組み込まれる同時係属米国出願第09/976,798号で開示されているインパクトアプリケータを使用して、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施すことが好ましい。前に論じたように、リテーナリング40はパッケージ前に予め乾燥させて、照射中のマイクロプロジェクション部材周辺の空気中の水分量を減らすことが好ましい。
【0109】
示したように、本発明の一実施形態によれば、固体生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材30に施すコーティング配合物は、少なくとも1つのPTH系物質を有する水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明によれば、PTH系物質は生体適合性担体中に溶かすことができ、或いは担体中に懸濁させることができる。
【0110】
好ましい実施形態では、PTH系物質は組換え型hPTH(1−34)、合成hPTH(1−34)、PTH(1−34)、テリパラチド、hPTH(1−34)塩、hPTH(1−34)の単純誘導体、hPTH(1−34)アミドなど、及び密接に関連する分子、hPTH(1−33)又はhPTH(1−31)アミド、及び任意の他の密接に関連する骨形成ペプチドを含めて、hPTH(1−34)、hPTH塩及び類似体、テリパラチド及び関連ペプチドからなる群から選択される。合成hPTH(1−34)が最も好ましいPTH系物質である。
【0111】
適切なhPTH塩の例は酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グリコン酸塩、グルクロン酸塩、3−ヒドロキシイソ酪酸塩、トリカルバリリク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピン酸塩、チグリク酸塩、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩、ヒドロアクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2−ヒドロキシイソ酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼン、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩を非制限的に含む。
【0112】
好ましい実施形態では、コーティング配合物はスクロース:hPTHの1:1配合物を含む。他の適切なアジュバントには、ヒトアルブミン、生物工学処理したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリスルファート、ポリアミノ酸、スクロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノース、スタキオース、デキストラン、可溶性デンプン、デキストリン、マンニトール及びイヌリンがある。本発明の方法及び組成物において使用するのに適した還元糖には、例えば単糖、例えばアピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、ケルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、タガトースなど;及び二糖、例えばプリメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソホロース、及びチュラノースなどがある。
【0113】
アジュバント、ヒトアルブミン、生物工学処理したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリスルファート、ポリアミノ酸、スクロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノース、スタキオース、デキストラン、可溶性デンプン、デキストリン、マンニトール及びイヌリンの量及び型は、滅菌中にPTHの安定性を最適化するように適合される。本発明の方法及び組成物において使用するのに適した還元糖には、例えば単糖、例えばアピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、ケルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、タガトースなど;及び二糖、例えばプリメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソホロース、及びチュラノースなどがある。
【0114】
一実施形態では、アジュバント又はアジュバントの混合物とhPTH(1−34)の比は、20:1と0.25:1の間である。好ましい実施形態では、アジュバント又はアジュバントの混合物とhPTH(1−34)の比は、10:1と0.5:1の間である。最も好ましい実施形態では、アジュバント又はアジュバントの混合物とhPTH(1−34)の比は、5:1と0.5:1の間である。
【0115】
本発明の一実施形態では、PTH系物質はコーティング配合物の約1〜30重量%の範囲を構成する。
【0116】
さらに好ましくは、マイクロプロジェクション部材上の生体適合性コーティング中に含まれるPTH系物質の量は、1〜1000μgの範囲、さらにより好ましくは10〜100μgの範囲である。
【0117】
コーティング配合物は、約500センチポイズ未満且つ3センチポイズを超える粘度を有することが好ましい。
【0118】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション表面から測定して、コーティング厚は25ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満である。望ましいコーティング厚は、必要とされる用量、及びしたがって、用量を送達するのに必要なコーティング厚、シートの単位面積当たりのマイクロプロジェクション密度、コーティング組成物の粘度及び濃度並びに選択するコーティング法を含めた幾つかの要因に依存する。マイクロプロジェクション34に施すコーティング35の厚さを適合されて、PTH系物質の安定性を最適化することもできる。例えば本出願人は、薬剤含有率が低下しスクロース含有量が増大すると、薬剤安定性が高まることを見出している。
【0119】
いずれの場合も、コーティングを施した後に、コーティング配合物を様々な手段によってマイクロプロジェクション34上に乾燥させる。本発明の好ましい実施形態では、コーティングされたマイクロプロジェクション部材30を周囲室温条件で乾燥させる。しかしながら、様々な温度及び湿度レベルを使用して、マイクロプロジェクション上にコーティング配合物を乾燥させることができる。さらに、コーティングされた部材を加熱、真空下又は乾燥剤で保存し、凍結乾燥させ、凍結乾燥又は同様の技法を使用してコーティングから残留水を除去することができる。
【0120】
皮膚障壁を介した薬剤輸送を容易にするために、広く様々なイオントフォレシス又は電子輸送システムに関して本発明を利用することもできることは、当業者によって理解されるはずである、何故なら本発明は、この点において決して制限されないからである。例示的な電子輸送薬剤送達システムは米国特許第5,147,296号、米国特許第5,080,646号、米国特許第5,169,382号及び米国特許第5,169,383号中に開示されており、これらの開示はその全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0121】
用語「電子輸送」は一般に、例えば皮膚、粘膜、爪などの身体の表面を介した有益な物質、例えば薬剤又は薬剤前駆体の移動を指す。物質の輸送は電位の印加によって誘導又は増大され、物質を送達するか或いは物質の送達を増大させる、或いは「逆」電子輸送に関しては、物質をサンプリングするか或いは物質のサンプリングを増大させる電流の印加をもたらす。ヒト身体中への、或いはヒト身体からの物質の電子輸送は、様々な方法で実施することができる。
【0122】
1つの広く使用されている電子輸送法であるイオントフォレシスは、帯電イオンの電気誘導型輸送を含む。非帯電又は中性電荷分子の経皮的輸送(例えば、グルコースの経皮的サンプリング)に含まれる他の型の電子輸送法である電気浸透は、電場の影響下での膜を介した溶媒及び物質の移動を含む。さらに他の型の電子輸送法である電気穿孔法は、電気パルス、高電圧パルスを膜に施すことにより形成された孔を介した物質の移動を含む。
【0123】
多くの場合、2つ以上の示した方法を異なる程度で同時に実施することができる。したがって用語「電子輸送」は、その最も広い考えられる解釈で本明細書において与えて、物質が実際に輸送される特定の機構とは無関係に、少なくとも1つの帯電又は非帯電物質、或いはその混合物の電気誘導型又は増大型輸送を含める。さらに、超音波療法又は圧電デバイスなどの他の輸送増大法を、本発明と共に使用することができる。
【実施例】
【0124】
以下の実施例を与えて、当業者に本発明をより明確に理解させ本発明を実施させることができる。以下の実施例は本発明の範囲を制限するものとして考えるべきではなく、単に本発明の例示として示すとして考えるべきである。
【0125】
(実施例1)
確認用逆相及びサイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(それぞれRP−HPLC及びSEC−HPLC)を使用して、滅菌放射線への曝露が原因のPTHの酸化を定量化した。20%w/wのhPTH、20%のスクロース、0.2%のポリソルベート20及び0.03%のEDTAを含むhPTH(1−34)の配合物を調製した。PTHの配合物はマイクロプロジェクションアレイ上にコーティングし、次いでガラスバイアル中に封入した。コーティングしたアレイは、ドライアイス又は周囲温度下で、ガンマ線又はe−ビームからの7、14又は21kGyの放射線量で照射した。図5に示すように、ガンマ線とe−ビームの両方への曝露によって、対照配合物と比較してPTHの純度が低下した。表1及び2は、それぞれガンマ線及びe−ビームに関する純度及び劣化品に対応するデータを示す。
【表1】
【表2】
【0126】
表1及び2に示すように、劣化品の最大の増大は3つの異なる形の酸化PTHに対応する相対保持時間(RRT)で生じた。酸化のレベルは一般に放射線量及び温度と共に増大したが、21kGYの線量、特に周囲温度でより低い劣化を被った。
【0127】
前述のデータは、他の劣化経路は顕著な役割を果たしていないことも示す。例えば、照射した配合物の脱アミド化産物は対照配合物に匹敵した。さらに、図6に示すように、照射後の凝集は比較的低度であった。
【0128】
この実施例は、e−ビーム線滅菌はガンマ放射線より幾分低い劣化、高い放射線量において約5〜10%低い劣化を引き起こすことを実証する。さらに、ドライアイス下での7kGyの低い放射線量は、最小限の純度の消失をもたらした。
【0129】
(実施例2)
実施例1で述べたのと同様にhPTH(1−34)の配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。前に論じた標準1:1スクロース:hPTH配合物以外に、5%w/wメチオニン又は3.3%w/wアスコルビン酸を選択したサンプルに加えることによって、抗酸化剤の影響を評価した。コーティングしたアレイは、窒素でパージしヒートシールしたフォイルポーチ又はガラスバイアル中に置いた。さらに、サンプルの1つに比較としてエチレンオキシド滅菌を施した。残りのサンプルには、ドライアイス又は周囲温度下において7、14又は21kGyのいずれかの線量のガンマ線を施した。前に論じたように、PTH配合物の純度及び劣化は、RP−HPLC及びSEC−HPLCを使用して評価した。表3には照射プロトコルを要約する。
【表3】
【0130】
照射したマイクロプジェクションアレイにおけるhPTHの純度を図7に示す。図に示すように、周囲温度でガラスバイアル中にパッケージしたアレイに送達した21kGyの線量以外、ガンマ線照射がhPTHを著しく劣化させることはなかった。ガンマ放射線を与えた他のサンプルは、対照の純度に匹敵する純度を保持していた。おそらくこの滅菌法に付随する高い相対湿度条件及びhPTHの吸湿性のために、エチレンオキシドによって滅菌したサンプルは相当な劣化を経た。さらに、エチレンオキシド滅菌したサンプルの形態は実質的に変化した。
【0131】
図8に示すように、大部分の劣化は酸化に原因がある可能性がある。さらに、ガラスバイアル中にパッケージし周囲温度で照射したサンプル、及びエチレンオキシドによって滅菌したサンプルに関して、劣化は重度であった。フォイルポーチ中にパッケージした照射サンプルは、おそらく密封ポーチ内の不活性且つ比較的乾燥した雰囲気のために、最小限の酸化を示した。脱アミド化及び凝集劣化産物は顕著でなかった。
【0132】
(実施例3)
実施例1で述べたのと同様にhPTH(1−34)の配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。数個のアレイを、ポリカーボネート製リテーナリング及び接着剤を用いて構築した。窒素又は周囲空気でパージしたフォイルポーチ中、又はガラスバイアル中にアレイを密封した。アレイはドライアイス又は周囲温度下において14又は21kGyのガンマ放射線に曝した。前に論じたように、PTH配合物の純度及び劣化を、RP−HPLC及びSEC−HPLCを使用して評価した。
【0133】
図9に示すように、窒素でパージしたフォイルポーチ内にパッケージしながら21kGyで照射したコーティングアレイは、対照と比較して重大な純度の消失を被らなかった。周囲温度で全体の酸化率の4%未満の増大、及びドライアイス下で全体の酸化率の2%未満の増大があった。したがって、hPTH(1−34)をコーティングしたマイクロプジェクションアレイは、ガンマ放射線を使用して最終滅菌する。
【0134】
図10は、窒素でパージしたフォイルポーチ又は窒素でパージしたガラスバイアル内にパッケージしながら、周囲温度において21kGyで照射したコーティングアレイを比較することによって、パッケージの影響を示す。図9中の結果と一致して、ポーチ内の照射したサンプルはわずか約2%の酸化の増大を経た。対照的に、ガラスバイアル内にパッケージしたサンプルは、同じ照射条件下で約40%の酸化を被った。この結果は、ガラスバイアルは照射前及び最中の空気/窒素交換を妨げるための有効な障壁ではないことを示唆する。
【0135】
窒素でパージしたフォイルポーチの保護的側面を評価するために、窒素又は周囲空気でパージしたフォイルポーチ内で、ドライアイス及び周囲温度下において、14kGyで、コーティングしたアレイを照射した。図11に示すように、両方の温度において、窒素でパージしたポーチ内のサンプルは対照に匹敵する純度を保った。対照的に、周囲空気で密封したサンプルは両方の温度において多大な酸化を被った。これら結果は、フォイルポーチ自体よりも不活性気体媒体が、照射による劣化からhPTHを保護する際の重要な要因であることを示唆する。したがって、照射中にコーティングアレイ周囲の気体媒体中の酸素及び湿度を最小にすることが、おそらく劣化を妨げる際に重要な役割を果たす。
【0136】
次に、ポリカーボネート製リテーナリング及びアクリレート接着剤を用いて構築したコーティングアレイを、窒素でパージしたフォイルポーチ内にパッケージし、ドライアイス下において14及び21kGyで照射した。図12に示すように、両方のサンプルが照射後に充分な安定性を有していた。
【0137】
(実施例4)
この実施例では、20%w/wのhPTH、20%のスクロース又は40%のスクロース、0.2%ポリソルベート20及び0.03%のEDTAを含むhPTH(1−34)の配合物を調製した。アレイはポリカーボネート製リテーナリング及び接着剤を用いて構築した。アレイは窒素でパージしたフォイルポーチ内に密封した。幾つかのサンプルは、4Åのモレキュラーシーブ乾燥剤を含んでいた。アレイはドライアイス下、2〜8℃又は周囲温度で15kGyのガンマ又はe−ビーム放射線に曝した。前に論じたように、PTH配合物の純度及び劣化を、RP−HPLC及びSEC−HPLCを使用して評価した。
【0138】
図13に示すように、e−ビーム滅菌は同じ温度でのガンマ線照射より低度の劣化を引き起こす。さらに、乾燥剤を含まないサンプルは最大の劣化を被り、照射中のコーティングアレイ周囲の環境中の含水量を最小にする重要性が強まった。これらのサンプルに関する純度の変化率は図14中に示す。
【0139】
図15は、ガンマ又はe−ビーム照射後の、1:1及び2:1スクロース:hPTHの配合物の純度を比較する。これらの結果は、コーティング配合物中のスクロースの量は、照射中のhPTH(1−34)の安定性に対して有意な影響がなかったことを示す。
【0140】
前の実施例及び考察によって示されるように、PTH系物質を含むコーティング配合物を有するマイクロプロジェクション部材を、本発明の方法を使用してわずかな化学純度の低下のみで、ガンマ線照射又はe−ビーム処理のいずれかによって最終滅菌することができる。マイクロプロジェクション部材のパッケージを適合されて、最終滅菌プロセス中に比較的低い湿度を有する不活性雰囲気を与えることが好ましい。例えば、乾燥窒素でパージし乾燥剤を含む密封フォイルポーチは、有意な安定効果を有する。マイクロプロジェクション部材は、パッケージの前に予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付けることがさらに好ましい。
【0141】
さらに、温度を調節すること又は滅菌線量を低下させることによって、最終滅菌プロセス中の生成物の劣化を減らすこともできる。
【0142】
本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、当業者は本発明に対するさまざまな変形及び変更形態を作製して、さまざまな使用及び条件にそれを適合されることができる。このように、これらの変形及び変更形態は、正確に、公平に、以下の特許請求の範囲の均等物の全範囲内に存在すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】マイクロプロジェクション部材の一例の一部分の斜視図である。
【図2】本発明による、マイクロプロジェクション上に配置されたコーティングを有する、図1中に示すマイクロプロジェクション部材の斜視図である。
【図3】本発明による、その上に配置されたマイクロプロジェクション部材を有するリテーナの側断面図である。
【図4】図3中に示すリテーナの斜視図である。
【図5】本発明による、様々なガンマ線及びe−ビーム線レベル及び温度におけるPTHの純度を示すグラフである。
【図6】本発明による、様々なガンマ線及びe−ビーム線レベル及び温度におけるPTHの凝集を示すグラフである。
【図7】本発明による、選択した環境条件下においてガンマ線照射したPTHの純度を示すグラフである。
【図8】本発明による、選択した環境条件下においてガンマ線照射したPTHの酸化を示すグラフである。
【図9】本発明による、ガンマ線照射したPTHの純度に対する温度の影響を示すグラフである。
【図10】本発明による、ガンマ線照射したPTHの純度に対するパッケージの影響を示すグラフである。
【図11】本発明による、様々な温度での選択した環境条件下における、ガンマ線照射したPTHの純度を示すグラフである。
【図12】本発明による、様々な温度及び照射レベルでの特異的環境条件下における、ガンマ線照射したPTHの純度を示すグラフである。
【図13】本発明による、様々な温度における様々なガンマ線及びe−ビーム線レベルでのPTHの純度を示すグラフである。
【図14】本発明による、図13中に示したサンプルに関する対照に対する変化の割合を示すグラフである。
【図15】本発明による、様々な温度における様々なガンマ線及びe−ビーム線レベルでの、PTHの純度に対する配合物組成物の影響を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、経皮的な物質送達システム及び方法に関する。より詳細には本発明は、副甲状腺ホルモン物質を送達するように適合された経皮的デバイスの滅菌法に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野でよく知られているように、骨粗鬆症は、典型的には股関節部、脊椎及び手関節の骨折の危険性の上昇を個体にもたらす進行性の骨量減少によって特徴付けられる骨の障害である。30歳と40歳の間で典型的には始まる進行性の骨量減少は、骨折が生じるまで主に無症候性であり、患者の高度の罹患率及び死亡率をもたらす。骨粗鬆症にかかる人の80パーセントは女性であり、近年の研究に基づくと、閉経の開始後6年間で、女性はその骨質量の3分の1を失う。
【0003】
さらに当技術分野でよく知られているように、副甲状腺ホルモン(PTH)は、身体中のカルシウム及びリン酸塩の代謝を制御する副甲状腺によって分泌されるホルモンである。PTHには、骨形成を促進し、したがって骨折の発生を劇的に低下させる能力があるため、骨粗鬆症の治療において多大な関心がある。大規模な臨床試験が、PTHは骨粗鬆症を有する女性において、脊椎及び非脊椎骨折の割合を有効且つ安全に低下させることを示している。
【0004】
PTH系物質(PTH−based agents)は、骨の治癒を加速させるその能力のため、(男性と女性の両方で)骨折の治療においても多大な関心がある。
【0005】
この目的のために、以下で論じるように従来の送達手段である皮下注射用に再構成することができる、PTH系物質の様々な安定状態の配合物が開発されている。例示的な配合物は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,563,122号(「安定状態の副甲状腺ホルモン組成物(Stabilized Parathyroid Hormone Composition)」及び米国特許出願公開第2002/0107200号(「安定状態のテリパラチド溶液(Stabilized Teriparatide Solutions)」で開示された配合物である。
【0006】
現在承認されている注射用PTH系物質は、組換え型ヒト副甲状腺ホルモン(1−34)、(rhPTH(1−34))を含む、FORTEO(商標)(rDNA由来のテリパラチド注射溶液)である。FORTEO(商標)は典型的には、医師の評価に基づいて、骨粗鬆症による骨折の病歴を有する女性、骨折に関する多数の危険因子を有する人、又は以前の骨粗鬆症療法に失敗しているか或いは耐性がなかった人のために処方される。骨粗鬆症を有する閉経後の女性において、FORTEO(商標)は骨ミネラル密度(BMD)を増大させ、脊椎及び非脊椎骨折の危険性を低下させることが見出されている。
【0007】
FORTEO(商標)は、骨折に関する危険性が高い一次性又は性機能低下性骨粗鬆症を有する男性において、骨質量を増大させることも見出されている。これらは骨粗鬆症による骨折の病歴を有する男性、又は骨折に関する多数の危険因子を有する人、又は以前の骨粗鬆症療法に失敗しているか或いは耐性がなかった人を含む。一次性又は性機能低下性骨粗鬆症を有する男性において、FORTEO(商標)はBMDを増大させることが同様に見出されている。
【0008】
皮下注射以外に、PTH系物質を送達する他の手段も研究されている。例えば、様々な肺送達(即ち吸入)法が、「骨障害のための薬剤の肺送達(Pulmonary Delivery of Drugs for Bone Disorders)」、「最新の薬剤送達の総説(Advanced Drug Delivery Reviews)」、Vol.42、Issue3、pp.239〜248(2000年8月31日)、Patton、「肺送達ペプチド及びタンパク質:−インターフェロン、カルシトニン及び副甲状腺ホルモンの生物学的利用能(Bioavailability of Pulmonary Delivered Peptides and Proteins:−Interferon、Calcitonins and Parathyroid Hormones)」、Journal of Controlled Release、Vol.28、Issues1〜3、pp.79〜85(1994年1月)、Patton、et al.、「ラット肺由来の副甲状腺ホルモン(1−34)の吸収に対する肺送達の配合物及び方法の影響(Impact of Formulation and Methods of Pulmonary Delivery on Absorption of Parathyroid Hormone (1−34)from Rat Lungs)」、Journal of Pharmaceutical Sciences、Vol.93、Issue5、pp.1241〜1252(2004年5月)、Codrons、et al.、「ラットにおける吸入用乾燥粉末を使用する副甲状腺ホルモン(1−34)の全身送達(Systemic Delivery of Parathyroid Hormone(1−34)Using Inhalation Dry Powders in Rats)」、Journal of Pharmaceutical Sciences、Vol.92、Issue5、pp.938〜950(2003年5月)及びPfutzner、A、et al.、「テクノスフェア/PTH(1−34)を用いたパイロット試験−副甲状腺ホルモン(1−34)の有効な肺送達のための新たな手法(Pilot Study with Technosphere/PTH(1−34)−A New Approach for Effective Pulmonary Delivery of Parathyroid Hormone(1−34))」、Horm.Metab.Res.、Vol.35(5)、pp.319〜23中で論じられている。
【0009】
PTH系物質の能動的経皮送達の様々な方法は、「カルシウム制御ホルモンのEontophoretic Eransdermal送達に対するエレクトロポレーションの影響(The Effect of Electroporation on Eontophoretic Eransdermal Delivery of Calcium Regulating Hormones)」、Journal of Controlled Release、Vol.66、Issues2〜3、pp.127〜133(2000年5月15日)、及びChang、et al.、「ヒトPTH(1−34)の拍動式経皮イオン導入投与による卵巣切除ラットにおける骨量減少の予防(Prevention of Bone Loss in Ovariectomized Rats by Pulsatile Transdermal Iontophoretic Administration of Human PTH(1−34))」、Journal.of Pharmaceutical Sciences、Vol.91,Issue2、pp.350〜361(2002年2月)中でも論じられている。
【0010】
骨粗鬆症などの傷害の治療においてPTH系物質が有効であるにもかかわらず、開示された従来技術の、特に皮下注射によるPTH系物質の送達法に関する、幾つかの欠点及び不都合が存在する。主な欠点は、皮下注射は困難且つ厄介な手順であり、患者のコンプライアンスの低下をもたらすことが多いことである。
【0011】
PTH系物質をin vivoに連続的に注入することによって、能動的な骨再吸収をもたらす。一日一回の皮下注射が原因である有効性に基づくと、PTH送達の任意の代替経路により、皮下注射されるPTHより速くPTHの血中濃度が得られるはずである。したがって、PTH系物質を拍動式に投与することは非常に重要である。
【0012】
したがって、最小限の侵襲性のPTH系物質の投与を容易にする物質送達システムを得ることは望ましい可能性がある。さらに、皮下投与後に観察されるそれと類似したPTH系物質の薬物動態プロファイルをもたらす物質送達システムを得ることが、望ましい可能性がある。
【0013】
マイクロプロジェクションシステムを使用するhGHなどの物質の皮内投与は以前に文書化されており、皮下投与後に観察されるそれと類似したhGHの薬物動態プロファイルをもたらしている。例えば「コーティングされた微小突出部を有する経皮的薬剤送達デバイス(Transdermal Drug Delivery Devices Having Coated Microprotrusions)」という表題の、Cormier、et al.、米国特許出願公開第2002/0128599号を参照のこと。
【0014】
したがって経皮的送達は、そうしなければ皮下注射又は静脈内注入によって送達することが必要となる、PTH系物質を投与するための実行可能な代替である。本明細書で使用する用語「経皮的」は、外科用ナイフによる切開又は皮下注射針による皮膚の貫通などの皮膚の実質的な切開又は浸透を伴わない、皮膚から局所組織又は全身循環系への、活性物質(例えば、PTH系物質などの治療用物質、又はワクチンなどの免疫活性物質)の送達を指す一般用語である。したがって経皮的物質送達は、受動的拡散による皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びに電気(例えばイオントフォレシス)及び超音波(例えばフォノフォレシス)などの外部エネルギー源に基づく送達を含む。
【0015】
より一般的である受動的経皮的物質送達システムは、高濃度の活性物質を含む薬剤リザーバを典型的には含む。リザーバは皮膚と接触するように適合されており、これによって患者の皮膚及び身体組織又は血流中に物質を拡散させることができる。
【0016】
当技術分野でよく知られているように、経皮的な薬剤の流動は、皮膚の状態、薬剤分子の大きさ及び物理的/化学的性質、並びに皮膚中の濃度勾配に依存する。多くの薬剤に対する皮膚の低い浸透性のために、経皮的送達は限られた用途を有している。この低い浸透性は、脂質二重層に囲まれるケラチン繊維が充満した平坦な死細胞(即ち、ケラチン生成細胞)からなる、角質層、最外殻皮膚層に主に原因がある。脂質二重層のこの高次構造は、角質層に比較的不浸透性である特徴を与える。
【0017】
受動的経皮的な拡散物質の流動を増大させる1つの一般的な方法は、最外殻皮膚層に機械的に浸透して皮膚中に微小経路を作製することを含む。最外殻皮膚層を機械的に浸透又は粉砕して皮膚中への経路を作製するために開発された、多くの技法及びデバイスが存在している。例示的なものとして、米国特許第3,964,482号中に開示された薬剤送達デバイスがある。
【0018】
経皮的な物質の送達を増大させるために小さな貫通型構成要素を使用する他のシステム及び装置は、いずれもその全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,879,326号、米国特許第3,814,097号、米国特許第5,250,023号、米国特許第3,964,482号、再発行番号25,637号、及びPCT公開番号WO96/37155、WO96/37256、WO96/17648、WO97/03718、WO98/11937、WO98/00193、WO97/48440、WO97/48441、WO97/48442、WO98/00193、WO99/64580、WO98/28037、WO98/29298、及びWO98/29365中に開示されている。
【0019】
開示されたシステム及び装置は、様々な形状及び大きさの貫通型構成要素を利用して皮膚の最外殻層(即ち、角質層)を貫通させる。これらの参照文献中に開示された貫通型構成要素は一般に、パッド又はシートなどの薄くて平らな部材から垂直に伸びている。これらのデバイスの幾つかの貫通型構成要素は非常に小さく、幾つかの貫通型構成要素はわずか約25〜400ミクロンのマイクロプロジェクション長、及びわずか約5〜50ミクロンのμmのマイクロプロジェクション厚を有する。これらの小さな貫通型/切断構成要素は、そこを通じた経皮的な物質送達を増大させるための、小さなマイクロスリット/マイクロカットを角質層中に相応じて作製する。
【0020】
開示されたシステムはさらに、物質を保持するためのリザーバ、及びデバイス自体の中空タインなどによってリザーバから角質層へ物質を移動させるための送達システムも、典型的には含む。このようなデバイスの一例はWO93/17754中に開示されており、これは液体物質リザーバを有する。しかしながら、リザーバを加圧して、液体物質を小さな管状構成要素及び皮膚中に向けなければならない。このようなデバイスの欠点には、加圧式液体リザーバを加えることに関する追加的な複雑性及び出費、並びに圧力駆動型送達システムの存在による複雑性がある。
【0021】
参照として完全に本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/045,842号で開示されたように、送達する活性物質を物理的リザーバ中に含める代わりに、マイクロプロジェクションにコーティングすることも可能である。これによって別の物理的リザーバ、及びリザーバに特異的な物質の配合物又は組成物の開発の必要性を排除する。
【0022】
言及されているように、PTH系物質は現在、静脈内経路によってのみ送達されている。したがって、PTH系物質並びに他の副甲状腺ホルモンの経皮投与を容易にする物質送達システムを提供することが望ましいはずである。
【0023】
PTH系物質などの非経口医薬品は、滅菌性の厳しい標準を満たさなければならない。滅菌品を保証するための1つの従来法は、無菌製造法である。しかしながら、製造プロセスを通じて滅菌環境を維持する要求は、時間を浪費し、労力を要し、非常に高価である。
【0024】
無菌製造法に対して考えられる魅力的な代替法は、製造プロセスの最後に生成物を滅菌することである。最終滅菌は、安定した小分子に通常使用される。残念ながらこの方法は、より不安定な生物医薬品に関する重大な課題を呈する。特に、PTH系物質などの複雑な生物分子構造体は、電子の転位が原因の損傷、共有結合の切断、立体配座の変化、フリーラジカル及び酸化が原因の化学的攻撃を被る。したがって、このような活性物質は劣化から保護して治療活性を保たなければならない。
【0025】
米国特許第6,346,216号及び米国特許第6,171,549号中でKentは、様々な生物分子を滅菌するための低い照射率の使用を開示している。しかしながらこれらの教示は、副甲状腺ホルモン又は経皮的送達デバイス用に調整した特異的条件を述べていない。Kentはさらに、生成物の安定性に対するパッケージの影響に関する如何なる議論も与えておらず、室温での照射に焦点を合わせている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって本発明の目的は、PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを都合よく滅菌するための方法を提供することである。
【0027】
本発明のさらに他の目的は、無菌製造法よりコスト効率がよい、経皮的送達システムを滅菌するための方法を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、経皮的送達に適合されたPTH系物質を最終滅菌するための方法を提供することである。
【0029】
本発明の他の目的は、滅菌中のPTH系物質の安定性を最適化するように適合された、経皮的送達デバイスに関するパッケージ条件を提供することである。
【0030】
本発明のさらに他の目的は、PTH系物質が相当な程度の活性を保持するようにPTH系物質を送達するための経皮的デバイスを、最終滅菌するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前述の目的、及び以下に言及し明らかになるはずである目的によれば、経皮的送達デバイスを最終滅菌するための方法及びシステムは、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有する生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含む。マイクロプロジェクション部材は、マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に密封することが好ましい。一実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。
【0032】
本発明の一態様では、乾燥剤をパッケージ内に密封することによって、パッケージ内の含水量を減少させる。或いはマイクロプロジェクション部材を、パッケージ内にマイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング(retainer ring)上に取り付ける。好ましい実施形態では、乾燥剤と予め乾燥状態にしたリテーナリングの両方を使用して、密封パッケージ内の含水量を減少させる。
【0033】
本発明の他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材を密封する前に、不活性ガスでパッケージをパージする。パッケージは、乾燥窒素でパージすることが好ましい。
【0034】
本発明は、照射を行う温度を調節することによって、滅菌中のPTH系物質の分解を抑制させることも含む。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0035】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材は約5〜50kGyの範囲にある線量の放射線を受ける。一実施形態では、線量は約7kGyである。他の実施形態では、線量は約21kGyである。
【0036】
他の実施形態では本発明は、約3.0kGy/hを超える割合でマイクロプロジェクション部材を放射線に曝すことを含む。
【0037】
本発明の他の実施形態では、10−6の滅菌保証レベルを得るのに充分な放射線にマイクロプロジェクション部材を曝す。
【0038】
本発明の他の実施形態では、抗酸化剤をコーティング配合物に加える。適切な抗酸化剤にはメチオニン及びアスコルビン酸がある。
【0039】
本発明の方法は、PTH系物質が最初の純度の少なくとも約96%を保つように、マイクロプロジェクション部材を滅菌することも含む。PTH系物質は、最初の純度の少なくとも約98%を保つことがより好ましい。
【0040】
本発明の現在好ましい実施形態では、経皮的送達デバイスを最終滅菌するための方法は、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、予め乾燥状態にしたリテーナリング上にマイクロプロジェクション部材を取り付けるステップ、窒素でパージしマイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をe−ビーム線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成される生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含むことが好ましい。
【0041】
他の実施形態では、本発明の方法は、マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を置くステップ、パッケージ内の含水量を減少させるステップ、前記マイクロプロジェクション部材を前記パッケージで密封するステップ、及びマイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップを含む。マイクロプロジェクション部材は、少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成される生体適合性コーティングを有する、複数の角質層貫通型マイクロプロジェクションを含むことが好ましい。
【0042】
他の実施形態では本発明は、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有するマイクロプロジェクションが、マイクロプロジェクション部材上に配置されており、コーティングがその上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されているマイクロプロジェクション部材、及び不活性ガスでパージしマイクロプロジェクション部材周辺に密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的送達システムである。乾燥剤をマイクロプロジェクション部材と共にパッケージ内に密封することが好ましい。マイクロプロジェクション部材は、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付けることがさらに好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態では、パッケージを窒素でパージする。
【0044】
他の実施形態では、パッケージはフォイルポーチを含む。
【0045】
他の実施形態では本発明は、PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、少なくとも1つのPTH系物質を有しマイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及び不活性ガスでパージしマイクロプロジェクション部材周辺に密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。
【0046】
他の実施形態では本発明は、PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクション部材、マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され少なくとも1つのPTH系物質を有する固体フィルム、及び不活性ガスでパージしマイクロプロジェクション部材周辺に密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、経皮的システムである。固体フィルムは、少なくとも1つのPTH系物質、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製することが好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。
【0048】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、又は類似の生体適合性材料から構成されている。
【0049】
他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材は、ポリマー材料などの非伝導性材料から構成されている。
【0050】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。
【0051】
固形生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材に施すコーティング配合物は、水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明の少なくとも1つの実施形態では、配合物は少なくとも1つのPTH系物質を含み、これは生体適合性担体に溶かすか或いは担体に懸濁することができる。
【0052】
好ましい実施形態では、PTH系物質はhPTH(1−34)、hPTH塩及び類似体、テリパラチド及び関連ペプチドからなる群から選択される。本出願中、用語「PTH系物質」及び「hPTH(1−34)物質」は、組換え型hPTH(1−34)、合成hPTH(1−34)、PTH(1−34)、テリパラチド、hPTH(1−34)塩、hPTH(1−34)の単純誘導体、hPTH(1−34)アミドなど、及び密接に関連する分子、hPTH(1−33)又はhPTH(1−31)アミド、又は任意の他の密接に関連する骨形成ペプチドを非制限的に含む。合成hPTH(1−34)が最も好ましいPTH物質である。
【0053】
薬剤として許容されるhPTH塩の例は酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グリコン酸塩、グルクロン酸塩、3−ヒドロキシイソ酪酸塩、トリカルバリリク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピン酸塩、チグリク酸塩、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩、ヒドロアクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2−ヒドロキシイソ酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼン、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩を非制限的に含む。
【0054】
本発明の一実施形態では、PTHはコーティング配合物の約1〜30重量%の範囲を構成する。
【0055】
好ましくは、コーティング配合物中に含まれるPTHの量は約1〜1000μgの範囲であり、さらにより好ましくは約10〜100μgの範囲である。
【0056】
さらに好ましくは、経皮送達されるPTH系物質はテリパラチド(hPTH(1−34))を含み、生体適合性コーティングは約10〜100μg用量の範囲のPTH系物質用量を含み、PTH系物質の送達は一回の施用後に少なくとも50pg/mLの血漿Cmaxをもたらす。
【0057】
他の特徴及び利点が、添付の図面で例示する通り、本発明の好ましい実施形態の以下のより詳細な記載から明らかになり、同じ参照符号は図中の同じ部分又は要素を一般に指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、詳細に例示した物質、方法又は構造に限られず、したがって当然ながら変わる可能性があることを理解されたい。したがって、本明細書に記載したものと類似する又は均等な幾つかの物質及び方法を、本発明を実施する際に使用することができるが、好ましい物質及び方法を本明細書に記載する。
【0059】
本明細書で使用する用語は、単に本発明の個々の実施形態を記載する目的のものにすぎず、制限するものではないことも理解されたい。
【0060】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0061】
さらに、本明細書に引用する全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記のいずれも、その全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0062】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容が他のことを明らかに示さない限り複数形を含む。したがって、例えば、「1つのペプチド」への言及は2つ以上のこのようなペプチドを含み;「1つのマイクロプロジェクション」への言及は2つ以上のこのようなマイクロプロジェクションなどを含む。
【0063】
定義
本明細書で使用する用語「経皮的」は、局所又は全身療法用の皮膚中への且つ/又は皮膚を介した物質の送達を意味する。したがって用語「経皮的」は、受動的拡散による皮膚中且つ/或いは皮膚を介したワクチンなどの物質の皮内、皮膚内及び表皮内送達、並びにエネルギーに基づく拡散送達、イオントフォレシス及びフォノフォレシスなどを意味し、それらを含む。
【0064】
本明細書で使用する用語「経皮的流動」は、経皮的送達の割合を意味する。
【0065】
本明細書で使用する用語「同時送達」は、PTH系物質を送達する前、PTH系物質の経皮的流動の前及び最中、PTH系物質の経皮的流動の最中、PTH系物質の経皮的流動の最中及び後、且つ/或いはPTH系物質の経皮的流動の後のいずれかに、補助物質を経皮的に投与することを意味する。さらに、2つ以上のPTH系物質をコーティング及び/又は配合物に配合し、PTH系物質の同時送達をもたらすことができる。
【0066】
本明細書で使用する用語「PTH系物質」及び「hPTH(1−34)物質」は、hPTH(1−34)、hPTH塩、hPTH類似体、テリパラチド、84アミノ酸ヒト副甲状腺ホルモンのN末端34アミノ酸(生物活性領域)配列と同じ手段によって機能するペプチド配列を有する、密接に関連するペプチド及び物質を非制限的に含む。したがって用語「PTH系物質」及び「hPTH(1−34)物質」は、組換え型hPTH(1−34)、合成hPTH(1−34)、PTH(1−34)、hPTH(1−34)塩、テリパラチド、hPTH(1−34)の単純誘導体、hPTH(1−34)アミドなど、及び密接に関連する分子、hPTH(1−33)又はhPTH(1−31)アミド、及び密接に関連する骨形成ペプチドを非制限的に含む。
【0067】
適切なhPTH塩の例は酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グリコン酸塩、グルクロン酸塩、3−ヒドロキシイソ酪酸塩、トリカルバリリク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピン酸塩、チグリク酸塩、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩、ヒドロアクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2−ヒドロキシイソ酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼン、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩を非制限的に含む。
【0068】
示したPTH系物質は、遊離塩基、酸、帯電又は非帯電分子、分子複合体の要素又は非刺激性の、薬理学的に許容される塩などの様々な形であってもよい。
【0069】
2つ以上のPTH系物質を本発明の物質源、配合物、及び/又はコーティング及び/又は固体フィルム中に取り込ませることができること、及び用語「PTH系物質」の使用は、決して2つ以上のこのようなペプチドの使用を排除するわけではないことは理解されよう。
【0070】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション」又は「マイクロプロトゥルージョン」は、生きている動物、詳細には哺乳動物、及びより詳細にはヒトの皮膚の角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層に貫通又は横断するように適合された貫通型構成要素を指す。
【0071】
本発明の一実施形態では、貫通型構成要素は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有する。他の実施形態では、貫通型構成要素は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクションはさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅(図1中に「W」で示す)及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有する。マイクロプロジェクションは、ニードル、ブレード、ピン、パンチ、及びこれらの組合せなどの異なる形に形成することができる。
【0072】
本明細書で使用する用語「マイクロプロジェクション部材」は、角質層を貫通させるためのアレイ中に配置された複数のマイクロプロジェクションを含むマイクロプロジェクションアレイを一般に意味する。薄いシートから複数のマイクロプロジェクションをエッチング又はパンチングし、及びシートの平面からマイクロプロジェクションをホールディング又はベンディングして、図1中に示す形状などの形状を形成することによって、マイクロプロジェクション部材を形成することができる。その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,050,988号中に開示されたように、マイクロプロジェクション部材は、ストリップの各端に沿ってマイクロプロジェクションを有する1つ又は複数のストリップを形成することなどによって、他の知られている方法で形成することもできる。
【0073】
本明細書で使用する用語「コーティング配合物」は、マイクロプロジェクション及び/又はそのアレイをコーティングするために使用する、自由に流動する組成物又は混合物を意味し、それらを含むものとする。PTH系物質は、その中に配置される場合、配合物の溶液又は懸濁液であってよい。
【0074】
本明細書で使用する用語「生体適合性コーティング」及び「固体コーティング」は、実質的に固体状態である「コーティング配合物」を意味し、それらを含むものとする。
【0075】
前に示したように、本発明は一般的に、製造プロセスの最後に経皮的送達システムを最終滅菌するための方法を含む。本発明は、滅菌済みの送達システムも含む。経皮的送達システムは、角質層から根底表皮層、又は表皮及び真皮層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクション(又はそのアレイ)を有するマイクロプロジェクション部材(又はシステム)を含む。マイクロプロジェクション部材(又はシステム)は、PTH系物質(即ち、生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物又は固体フィルム)の少なくとも1つの源又は送達媒体も含む。充分な放射線に曝して所望の滅菌保証レベルを得ることによって、経皮的送達システムを最終滅菌する。
【0076】
放射源としてコバルト−60を使用することなどによる従来の方法によって、ガンマ線を送達することができる。市販のコバルト−60滅菌装置は、約0.3Gy/h及び9.6kGy/hの範囲の照射率をもたらすことを、当業者は理解しているはずである。アメリシウム−241を使用することもでき、約0.3mGy/hを超える割合で一般に照射される。他の同位体を使用して、所望の割合でガンマ線を送達することもできる。e−ビーム線はガンマ線より実質的に高い割合、約100kGy/hなどで従来発生させている。好ましい実施形態では、所望の滅菌レベルに到達するのに充分な線量を得るのに必要とされる処理時間を最小にするために、線量の割合は3.0kGy/h以上である。
【0077】
最終滅菌に必要とされる放射線量は、従来の方法によって決定することができる。例えば、10−6の滅菌保証レベル(SAL)を得るための線量要件は、微生物学及び製造に関する考慮事項から評価することができる。一実施形態では、低い線量はゼロの微生物負荷(ISO11137方法2Bを使用する8.2kGy)及び四期の線量検査中の滅菌失敗に関する1つの増強値(15kGy)に基づく。+10%の処理能力を加えることによって、これらの計算によって16.5kGyの線量を得る。
【0078】
したがって、PTH系物質を充填したマイクロプロジェクション部材の最終滅菌は、e−ビーム線又はガンマ線でシステムを照射することによって実施する。適切な線量は約5〜50kGyの範囲、より好ましくは約10〜40kGyの範囲である。幾つかの実施形態では、線量は少なくとも約7kGyである。他の実施形態では、線量は約14kGyである。さらに他の実施形態では、線量は約21kGyである。
【0079】
本発明の他の実施形態では、アプリケータと共に使用するためにリテーナリング上にマイクロプロジェクション部材を取り付ける。
【0080】
システムは、マイクロプロジェクション部材の最終滅菌を容易にするように適合されたパッケージも含むことができる。
【0081】
示した実施形態では、マイクロプロジェクション部材周辺の不活性の、低含水量雰囲気を保つことが好ましい。したがって、マイクロプロジェクション部材を含むパッケージは、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスでパージすることが好ましい。他の実施形態では、パッケージを真空にして、PTH系物質の劣化を最小にするのを手助けすることができる。他の実施形態では、パッケージ中の酸素の量を減らして、酸化による劣化を最小にする。
【0082】
さらに、パッケージ中に吸湿乾燥剤を含めることが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、乾燥剤は3〜4Åの孔径を有するMinipaxモレキュラーシーブを含む。他の代表的な吸湿材料には、アルミナ、ボーキサイト、無水硫酸カルシウム、吸水性粘土、活性ベントナイト粘土、シリカゲル、又は他の同様の材料があるが、これらだけには限られない。乾燥剤は、乾燥剤がそれ以上使用できなくなるときを示すための塩化コバルトなどの湿感性の着色指標を、場合によっては含む。乾燥剤は、マイクロプロジェクションシステムのプラスチック要素からの任意の残留水分を吸収するのに充分な量で存在しなければならない。例えば、約0.5g〜5gのモレキュラーシーブ乾燥剤の範囲の量が、典型的なマイクロプロジェクションシステムに充分である。
【0083】
他の実施形態では、リテーナリングを構築前に乾燥させて、密封パッケージ中に導入されるリングからの水分を妨げる。
【0084】
本発明のさらに他の実施形態は、照射中にPTH系物質を安定状態にするのを助ける抗酸化剤を含む。適切な抗酸化剤はメチオニン、アスコルビン酸などを含む。抗酸化剤は、約1〜5%の範囲の量で加えることが好ましい。
【0085】
本発明の他の実施形態では、マイクロプロジェクション部材の照射は定義された温度で実施して、PTH系物質を安定状態にする。一実施形態では、約−78.5〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。ドライアイス条件下において−78.5℃の温度で、マイクロプロジェクション部材を照射することができる。他の実施形態では、約0〜25℃の範囲の温度でマイクロプロジェクション部材を照射する。他の実施形態では、約20〜25℃の範囲の周囲温度で、マイクロプロジェクション部材を照射する。
【0086】
他の生物活性物質の最終滅菌に関する他の情報は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、2005年6月2日に出願された同時係属米国出願第60/687,635号、及び2005年6月2日に出願された第60/687,519号中で見ることができる。
【0087】
ここで図1及び2を参照すると、本発明と共に使用するためのマイクロプロジェクション部材30の一実施形態が示される。図1に示すように、マイクロプロジェクション部材30は、複数のマイクロプロジェクション34を有するマイクロプロジェクションアレイ32を含む。マイクロプロジェクション34は、示した実施形態において開口部38を含むシートから、ほぼ90°の角度で伸びていることが好ましい。この実施形態では、マイクロプロジェクション34は、薄い金属シート36からの複数のマイクロプロジェクション34のエッチング又はパンチング、及びシート36の平面からのマイクロプロジェクション34のベンディングによって形成される。
【0088】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション部材30は少なくとも約10マイクロプロジェクション/cm2、より好ましくは少なくとも約200〜2000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有する。好ましくは、物質が通過する単位領域当たりの開口部の数は、少なくとも約10開口部/cm2且つ約2000開口部/cm2未満である。
【0089】
示すように、マイクロプロジェクション34は1000ミクロン未満のプロジェクション長を有することが好ましい。一実施形態では、マイクロプロジェクション34は500ミクロン未満、より好ましくは250ミクロン未満のプロジェクション長を有する。マイクロプロジェクション34はさらに、約25〜500ミクロンの範囲の幅及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有することが好ましい。
【0090】
マイクロプロジェクション部材30の生体適合性を増大させるために(例えば、対象の皮膚への施用後の出血及び炎症を最小にするために)、他の実施形態では、マイクロプロジェクション34は好ましくは145μm未満、より好ましくは約50〜145μmの範囲、さらにより好ましくは約70〜140μmの範囲の長さを有する。さらに、マイクロプロジェクション部材30は、好ましくは100マイクロプロジェクション/cm2を超える、より好ましくは約200〜3000マイクロプロジェクション/cm2の範囲のマイクロプロジェクション密度を有するアレイを含む。
【0091】
マイクロプロジェクション部材30は、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金などの様々な金属、又は類似の生体適合性材料から製造することができる。
【0092】
本発明によれば、マイクロプロジェクション部材30は、ポリマーなどの非伝導性材料から構成されていてもよい。
【0093】
或いはマイクロプロジェクション部材は、Parylene(登録商標)などの非伝導性材料、又はTeflon(登録商標)、シリコンなどの疎水性材料、又は他の低エネルギー材料でコーティングすることができる。記した疎水性材料及び関連ベース(例えばホトレジスト)層は、参照として本明細書に組み込まれる米国出願第60/484,142号中で述べられている。
【0094】
本発明と共に使用することができるマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,083,196号、第6,050,988号及び第6,091,975号中に開示された部材があるが、これらだけには限られない。
【0095】
本発明と共に使用することができる他のマイクロプロジェクション部材には、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,326号中に開示された部材などの、シリコンチップエッチング技法を使用してシリコンをエッチングすることによって形成される部材、又はエッチングしたマイクロモールドを使用してプラスチックを成形することによって形成される部材がある。
【0096】
本発明によれば、宿主に投与するPTH系物質は、マイクロプロジェクション部材30上に配置された生体適合性コーティング中に含めることができ、或いはヒドロゲル配合物中に含めることができ、或いは生体適合性コーティングとヒドロゲル配合物の両方中に含めることができる。本発明のヒドロゲル配合物は、水系ヒドロゲルを含むことが好ましい。ヒドロゲルは、その高い水含量及び生体適合性のため好ましい配合物である。ヒドロゲルは、ゲルパックとして形成されることがさらに好ましい。
【0097】
マイクロプロジェクション部材が物質含有固体フィルムを含む他の実施形態では、PTH系物質を生体適合性コーティング、ヒドロゲル配合物又は固体フィルム配合物、又は3つ全ての送達媒体中に含めることができる。固体フィルムは、少なくとも1つのPTH系物質、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製することが好ましい。
【0098】
一実施形態では、マイクロプロジェクション部材は少なくとも1つのPTH、好ましくはhBNP(1−32)を含む生体適合性コーティングを含む。マイクロプロジェクション部材を、所望の滅菌保証レベルまで最終滅菌する。皮膚の角質層を貫通すると、ペプチド含有コーティングが体液(細胞内液及び腸液などの細胞外液)によって溶かされ、全身療法用に皮膚中に放出される(即ち、大量送達)。20μgの大量用量のPTH系物質は、マイクロプロジェクション部材を15分以下適所に放置することによってパルス方式で送達することが好ましい。
【0099】
ここで図2を参照すると、PTH系物質の生体適合性コーティング35を含むマイクロプロジェクション34を有する、マイクロプロジェクション部材31が示される。本発明によれば、コーティング35はそれぞれのマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に覆うことができる。例えば、コーティング35はマイクロプロジェクション34上の乾燥パターンコーティングであってよい。マイクロプロジェクション34が形成される前又は後に、コーティング35を施すこともできる。経皮的PTH送達システムの使用に関する他の情報は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる同時係属米国出願第11/084,634号中で見ることができる。
【0100】
本発明によれば、様々な既知の方法によって、コーティング35をマイクロプロジェクション34に施すことができる。コーティングは皮膚を貫通する部分、マイクロプロジェクション部材31又はマイクロプロジェクション34のみ(例えば先端39)に施すことが好ましい。
【0101】
1つのこのようなコーティング法は、ディップコーティングを含む。ディップコーティングは、コーティング溶液中にマイクロプロジェクション34を部分的或いは完全に浸すことによって、マイクロプロジェクションをコーティングするための手段として記載することができる。部分的含浸技法を使用することによって、マイクロプロジェクション34の先端39のみにコーティング35を制限することができる。
【0102】
他のコーティング法は、マイクロプロジェクション34の先端39へのコーティング35を同様に制限するローラーコーティング機構を利用するローラーコーティングを含む。ローラーコーティング法は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる、米国出願第10/099,604号(公開番号2002/0132054)中に開示されている。記した出願中で詳細に論じられたように、この開示されたローラーコーティング法は、皮膚貫通中にマイクロプロジェクション34から容易に除去されない平滑なコーティングを提供する。
【0103】
本発明によれば、マイクロプロジェクション34は、孔(図示せず)、溝(図示せず)、表面不整(図示せず)又は同様の改変などの、コーティング35の体積を受け入れる且つ/或いは増大させるように適合された手段をさらに含むことができ、これらの手段は、その上に多量のコーティングを配置することができる増大した表面積を与える。
【0104】
本発明の範囲内で利用することができる他のコーティング法は、噴霧コーティングを含む。本発明によれば、噴霧コーティングはコーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を含むことができる。一実施形態では、約10〜200ピコリットルの滴径を有するエアロゾル懸濁液を、マイクロプロジェクション34に噴霧し、次いで乾燥させる。
【0105】
パターンコーティングを利用して、マイクロプロジェクション34をコーティングすることもできる。分配する液体をマイクロプロジェクション表面上に配置するための分配システムを使用して、パターンコーティングを施すことができる。分配する液体の量は、0.1〜20ナノリットル/マイクロプロジェクションの範囲であることが好ましい。適切な正確な目盛り付きの液体ディスペンサーの例は、参照として本明細書に完全に組み込まれる米国特許第5,916,524号、5,743,960号、5,741,554号、及び5,738,728号中に開示されている。
【0106】
マイクロプロジェクションコーティング配合物又は溶液を、電場の使用によって一般に制御される、知られているソレノイドバルブ付きディスペンサー、任意選択の流体動力手段、及び配置手段を使用するインクジェット技術を使用して施すこともできる。印刷産業からの他の液体分配技術、又は当技術分野で知られている類似の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを施すために使用することができる。
【0107】
ここで、図3及び4を参照し、保存及び施用するために、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国出願第09/976,762号(公開第2002/0091357号)に詳細に記載されている通り、マイクロプロジェクション部材30は、接着タブ6によってリテーナリング40中で吊り下げられることが好ましい。
【0108】
マイクロプロジェクション部材をリテーナリング40中に置いた後に、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施す。その全容が参照として本明細書に組み込まれる同時係属米国出願第09/976,798号で開示されているインパクトアプリケータを使用して、マイクロプロジェクション部材を患者の皮膚に施すことが好ましい。前に論じたように、リテーナリング40はパッケージ前に予め乾燥させて、照射中のマイクロプロジェクション部材周辺の空気中の水分量を減らすことが好ましい。
【0109】
示したように、本発明の一実施形態によれば、固体生体適合性コーティングを形成するためにマイクロプロジェクション部材30に施すコーティング配合物は、少なくとも1つのPTH系物質を有する水性及び非水性配合物を含むことができる。本発明によれば、PTH系物質は生体適合性担体中に溶かすことができ、或いは担体中に懸濁させることができる。
【0110】
好ましい実施形態では、PTH系物質は組換え型hPTH(1−34)、合成hPTH(1−34)、PTH(1−34)、テリパラチド、hPTH(1−34)塩、hPTH(1−34)の単純誘導体、hPTH(1−34)アミドなど、及び密接に関連する分子、hPTH(1−33)又はhPTH(1−31)アミド、及び任意の他の密接に関連する骨形成ペプチドを含めて、hPTH(1−34)、hPTH塩及び類似体、テリパラチド及び関連ペプチドからなる群から選択される。合成hPTH(1−34)が最も好ましいPTH系物質である。
【0111】
適切なhPTH塩の例は酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、レブリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グリコール酸塩、グリコン酸塩、グルクロン酸塩、3−ヒドロキシイソ酪酸塩、トリカルバリリク酸塩、マロン酸塩、アジピン酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、イタコン酸塩、メサコン酸塩、シトラマル酸塩、ジメチロールプロピン酸塩、チグリク酸塩、グリセリン酸塩、メタクリル酸塩、イソクロトン酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、クロトン酸塩、アンゲリカ酸塩、ヒドロアクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、2−ヒドロキシイソ酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、ピルビン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ベンゼン、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩を非制限的に含む。
【0112】
好ましい実施形態では、コーティング配合物はスクロース:hPTHの1:1配合物を含む。他の適切なアジュバントには、ヒトアルブミン、生物工学処理したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリスルファート、ポリアミノ酸、スクロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノース、スタキオース、デキストラン、可溶性デンプン、デキストリン、マンニトール及びイヌリンがある。本発明の方法及び組成物において使用するのに適した還元糖には、例えば単糖、例えばアピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、ケルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、タガトースなど;及び二糖、例えばプリメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソホロース、及びチュラノースなどがある。
【0113】
アジュバント、ヒトアルブミン、生物工学処理したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリスルファート、ポリアミノ酸、スクロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノース、スタキオース、デキストラン、可溶性デンプン、デキストリン、マンニトール及びイヌリンの量及び型は、滅菌中にPTHの安定性を最適化するように適合される。本発明の方法及び組成物において使用するのに適した還元糖には、例えば単糖、例えばアピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、ケルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、タガトースなど;及び二糖、例えばプリメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソホロース、及びチュラノースなどがある。
【0114】
一実施形態では、アジュバント又はアジュバントの混合物とhPTH(1−34)の比は、20:1と0.25:1の間である。好ましい実施形態では、アジュバント又はアジュバントの混合物とhPTH(1−34)の比は、10:1と0.5:1の間である。最も好ましい実施形態では、アジュバント又はアジュバントの混合物とhPTH(1−34)の比は、5:1と0.5:1の間である。
【0115】
本発明の一実施形態では、PTH系物質はコーティング配合物の約1〜30重量%の範囲を構成する。
【0116】
さらに好ましくは、マイクロプロジェクション部材上の生体適合性コーティング中に含まれるPTH系物質の量は、1〜1000μgの範囲、さらにより好ましくは10〜100μgの範囲である。
【0117】
コーティング配合物は、約500センチポイズ未満且つ3センチポイズを超える粘度を有することが好ましい。
【0118】
本発明の一実施形態では、マイクロプロジェクション表面から測定して、コーティング厚は25ミクロン未満、より好ましくは10ミクロン未満である。望ましいコーティング厚は、必要とされる用量、及びしたがって、用量を送達するのに必要なコーティング厚、シートの単位面積当たりのマイクロプロジェクション密度、コーティング組成物の粘度及び濃度並びに選択するコーティング法を含めた幾つかの要因に依存する。マイクロプロジェクション34に施すコーティング35の厚さを適合されて、PTH系物質の安定性を最適化することもできる。例えば本出願人は、薬剤含有率が低下しスクロース含有量が増大すると、薬剤安定性が高まることを見出している。
【0119】
いずれの場合も、コーティングを施した後に、コーティング配合物を様々な手段によってマイクロプロジェクション34上に乾燥させる。本発明の好ましい実施形態では、コーティングされたマイクロプロジェクション部材30を周囲室温条件で乾燥させる。しかしながら、様々な温度及び湿度レベルを使用して、マイクロプロジェクション上にコーティング配合物を乾燥させることができる。さらに、コーティングされた部材を加熱、真空下又は乾燥剤で保存し、凍結乾燥させ、凍結乾燥又は同様の技法を使用してコーティングから残留水を除去することができる。
【0120】
皮膚障壁を介した薬剤輸送を容易にするために、広く様々なイオントフォレシス又は電子輸送システムに関して本発明を利用することもできることは、当業者によって理解されるはずである、何故なら本発明は、この点において決して制限されないからである。例示的な電子輸送薬剤送達システムは米国特許第5,147,296号、米国特許第5,080,646号、米国特許第5,169,382号及び米国特許第5,169,383号中に開示されており、これらの開示はその全容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0121】
用語「電子輸送」は一般に、例えば皮膚、粘膜、爪などの身体の表面を介した有益な物質、例えば薬剤又は薬剤前駆体の移動を指す。物質の輸送は電位の印加によって誘導又は増大され、物質を送達するか或いは物質の送達を増大させる、或いは「逆」電子輸送に関しては、物質をサンプリングするか或いは物質のサンプリングを増大させる電流の印加をもたらす。ヒト身体中への、或いはヒト身体からの物質の電子輸送は、様々な方法で実施することができる。
【0122】
1つの広く使用されている電子輸送法であるイオントフォレシスは、帯電イオンの電気誘導型輸送を含む。非帯電又は中性電荷分子の経皮的輸送(例えば、グルコースの経皮的サンプリング)に含まれる他の型の電子輸送法である電気浸透は、電場の影響下での膜を介した溶媒及び物質の移動を含む。さらに他の型の電子輸送法である電気穿孔法は、電気パルス、高電圧パルスを膜に施すことにより形成された孔を介した物質の移動を含む。
【0123】
多くの場合、2つ以上の示した方法を異なる程度で同時に実施することができる。したがって用語「電子輸送」は、その最も広い考えられる解釈で本明細書において与えて、物質が実際に輸送される特定の機構とは無関係に、少なくとも1つの帯電又は非帯電物質、或いはその混合物の電気誘導型又は増大型輸送を含める。さらに、超音波療法又は圧電デバイスなどの他の輸送増大法を、本発明と共に使用することができる。
【実施例】
【0124】
以下の実施例を与えて、当業者に本発明をより明確に理解させ本発明を実施させることができる。以下の実施例は本発明の範囲を制限するものとして考えるべきではなく、単に本発明の例示として示すとして考えるべきである。
【0125】
(実施例1)
確認用逆相及びサイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(それぞれRP−HPLC及びSEC−HPLC)を使用して、滅菌放射線への曝露が原因のPTHの酸化を定量化した。20%w/wのhPTH、20%のスクロース、0.2%のポリソルベート20及び0.03%のEDTAを含むhPTH(1−34)の配合物を調製した。PTHの配合物はマイクロプロジェクションアレイ上にコーティングし、次いでガラスバイアル中に封入した。コーティングしたアレイは、ドライアイス又は周囲温度下で、ガンマ線又はe−ビームからの7、14又は21kGyの放射線量で照射した。図5に示すように、ガンマ線とe−ビームの両方への曝露によって、対照配合物と比較してPTHの純度が低下した。表1及び2は、それぞれガンマ線及びe−ビームに関する純度及び劣化品に対応するデータを示す。
【表1】
【表2】
【0126】
表1及び2に示すように、劣化品の最大の増大は3つの異なる形の酸化PTHに対応する相対保持時間(RRT)で生じた。酸化のレベルは一般に放射線量及び温度と共に増大したが、21kGYの線量、特に周囲温度でより低い劣化を被った。
【0127】
前述のデータは、他の劣化経路は顕著な役割を果たしていないことも示す。例えば、照射した配合物の脱アミド化産物は対照配合物に匹敵した。さらに、図6に示すように、照射後の凝集は比較的低度であった。
【0128】
この実施例は、e−ビーム線滅菌はガンマ放射線より幾分低い劣化、高い放射線量において約5〜10%低い劣化を引き起こすことを実証する。さらに、ドライアイス下での7kGyの低い放射線量は、最小限の純度の消失をもたらした。
【0129】
(実施例2)
実施例1で述べたのと同様にhPTH(1−34)の配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。前に論じた標準1:1スクロース:hPTH配合物以外に、5%w/wメチオニン又は3.3%w/wアスコルビン酸を選択したサンプルに加えることによって、抗酸化剤の影響を評価した。コーティングしたアレイは、窒素でパージしヒートシールしたフォイルポーチ又はガラスバイアル中に置いた。さらに、サンプルの1つに比較としてエチレンオキシド滅菌を施した。残りのサンプルには、ドライアイス又は周囲温度下において7、14又は21kGyのいずれかの線量のガンマ線を施した。前に論じたように、PTH配合物の純度及び劣化は、RP−HPLC及びSEC−HPLCを使用して評価した。表3には照射プロトコルを要約する。
【表3】
【0130】
照射したマイクロプジェクションアレイにおけるhPTHの純度を図7に示す。図に示すように、周囲温度でガラスバイアル中にパッケージしたアレイに送達した21kGyの線量以外、ガンマ線照射がhPTHを著しく劣化させることはなかった。ガンマ放射線を与えた他のサンプルは、対照の純度に匹敵する純度を保持していた。おそらくこの滅菌法に付随する高い相対湿度条件及びhPTHの吸湿性のために、エチレンオキシドによって滅菌したサンプルは相当な劣化を経た。さらに、エチレンオキシド滅菌したサンプルの形態は実質的に変化した。
【0131】
図8に示すように、大部分の劣化は酸化に原因がある可能性がある。さらに、ガラスバイアル中にパッケージし周囲温度で照射したサンプル、及びエチレンオキシドによって滅菌したサンプルに関して、劣化は重度であった。フォイルポーチ中にパッケージした照射サンプルは、おそらく密封ポーチ内の不活性且つ比較的乾燥した雰囲気のために、最小限の酸化を示した。脱アミド化及び凝集劣化産物は顕著でなかった。
【0132】
(実施例3)
実施例1で述べたのと同様にhPTH(1−34)の配合物を調製し、マイクロプロジェクションアレイ上にコーティングした。数個のアレイを、ポリカーボネート製リテーナリング及び接着剤を用いて構築した。窒素又は周囲空気でパージしたフォイルポーチ中、又はガラスバイアル中にアレイを密封した。アレイはドライアイス又は周囲温度下において14又は21kGyのガンマ放射線に曝した。前に論じたように、PTH配合物の純度及び劣化を、RP−HPLC及びSEC−HPLCを使用して評価した。
【0133】
図9に示すように、窒素でパージしたフォイルポーチ内にパッケージしながら21kGyで照射したコーティングアレイは、対照と比較して重大な純度の消失を被らなかった。周囲温度で全体の酸化率の4%未満の増大、及びドライアイス下で全体の酸化率の2%未満の増大があった。したがって、hPTH(1−34)をコーティングしたマイクロプジェクションアレイは、ガンマ放射線を使用して最終滅菌する。
【0134】
図10は、窒素でパージしたフォイルポーチ又は窒素でパージしたガラスバイアル内にパッケージしながら、周囲温度において21kGyで照射したコーティングアレイを比較することによって、パッケージの影響を示す。図9中の結果と一致して、ポーチ内の照射したサンプルはわずか約2%の酸化の増大を経た。対照的に、ガラスバイアル内にパッケージしたサンプルは、同じ照射条件下で約40%の酸化を被った。この結果は、ガラスバイアルは照射前及び最中の空気/窒素交換を妨げるための有効な障壁ではないことを示唆する。
【0135】
窒素でパージしたフォイルポーチの保護的側面を評価するために、窒素又は周囲空気でパージしたフォイルポーチ内で、ドライアイス及び周囲温度下において、14kGyで、コーティングしたアレイを照射した。図11に示すように、両方の温度において、窒素でパージしたポーチ内のサンプルは対照に匹敵する純度を保った。対照的に、周囲空気で密封したサンプルは両方の温度において多大な酸化を被った。これら結果は、フォイルポーチ自体よりも不活性気体媒体が、照射による劣化からhPTHを保護する際の重要な要因であることを示唆する。したがって、照射中にコーティングアレイ周囲の気体媒体中の酸素及び湿度を最小にすることが、おそらく劣化を妨げる際に重要な役割を果たす。
【0136】
次に、ポリカーボネート製リテーナリング及びアクリレート接着剤を用いて構築したコーティングアレイを、窒素でパージしたフォイルポーチ内にパッケージし、ドライアイス下において14及び21kGyで照射した。図12に示すように、両方のサンプルが照射後に充分な安定性を有していた。
【0137】
(実施例4)
この実施例では、20%w/wのhPTH、20%のスクロース又は40%のスクロース、0.2%ポリソルベート20及び0.03%のEDTAを含むhPTH(1−34)の配合物を調製した。アレイはポリカーボネート製リテーナリング及び接着剤を用いて構築した。アレイは窒素でパージしたフォイルポーチ内に密封した。幾つかのサンプルは、4Åのモレキュラーシーブ乾燥剤を含んでいた。アレイはドライアイス下、2〜8℃又は周囲温度で15kGyのガンマ又はe−ビーム放射線に曝した。前に論じたように、PTH配合物の純度及び劣化を、RP−HPLC及びSEC−HPLCを使用して評価した。
【0138】
図13に示すように、e−ビーム滅菌は同じ温度でのガンマ線照射より低度の劣化を引き起こす。さらに、乾燥剤を含まないサンプルは最大の劣化を被り、照射中のコーティングアレイ周囲の環境中の含水量を最小にする重要性が強まった。これらのサンプルに関する純度の変化率は図14中に示す。
【0139】
図15は、ガンマ又はe−ビーム照射後の、1:1及び2:1スクロース:hPTHの配合物の純度を比較する。これらの結果は、コーティング配合物中のスクロースの量は、照射中のhPTH(1−34)の安定性に対して有意な影響がなかったことを示す。
【0140】
前の実施例及び考察によって示されるように、PTH系物質を含むコーティング配合物を有するマイクロプロジェクション部材を、本発明の方法を使用してわずかな化学純度の低下のみで、ガンマ線照射又はe−ビーム処理のいずれかによって最終滅菌することができる。マイクロプロジェクション部材のパッケージを適合されて、最終滅菌プロセス中に比較的低い湿度を有する不活性雰囲気を与えることが好ましい。例えば、乾燥窒素でパージし乾燥剤を含む密封フォイルポーチは、有意な安定効果を有する。マイクロプロジェクション部材は、パッケージの前に予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付けることがさらに好ましい。
【0141】
さらに、温度を調節すること又は滅菌線量を低下させることによって、最終滅菌プロセス中の生成物の劣化を減らすこともできる。
【0142】
本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、当業者は本発明に対するさまざまな変形及び変更形態を作製して、さまざまな使用及び条件にそれを適合されることができる。このように、これらの変形及び変更形態は、正確に、公平に、以下の特許請求の範囲の均等物の全範囲内に存在すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】マイクロプロジェクション部材の一例の一部分の斜視図である。
【図2】本発明による、マイクロプロジェクション上に配置されたコーティングを有する、図1中に示すマイクロプロジェクション部材の斜視図である。
【図3】本発明による、その上に配置されたマイクロプロジェクション部材を有するリテーナの側断面図である。
【図4】図3中に示すリテーナの斜視図である。
【図5】本発明による、様々なガンマ線及びe−ビーム線レベル及び温度におけるPTHの純度を示すグラフである。
【図6】本発明による、様々なガンマ線及びe−ビーム線レベル及び温度におけるPTHの凝集を示すグラフである。
【図7】本発明による、選択した環境条件下においてガンマ線照射したPTHの純度を示すグラフである。
【図8】本発明による、選択した環境条件下においてガンマ線照射したPTHの酸化を示すグラフである。
【図9】本発明による、ガンマ線照射したPTHの純度に対する温度の影響を示すグラフである。
【図10】本発明による、ガンマ線照射したPTHの純度に対するパッケージの影響を示すグラフである。
【図11】本発明による、様々な温度での選択した環境条件下における、ガンマ線照射したPTHの純度を示すグラフである。
【図12】本発明による、様々な温度及び照射レベルでの特異的環境条件下における、ガンマ線照射したPTHの純度を示すグラフである。
【図13】本発明による、様々な温度における様々なガンマ線及びe−ビーム線レベルでのPTHの純度を示すグラフである。
【図14】本発明による、図13中に示したサンプルに関する対照に対する変化の割合を示すグラフである。
【図15】本発明による、様々な温度における様々なガンマ線及びe−ビーム線レベルでの、PTHの純度に対する配合物組成物の影響を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有するマイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項2】
前記マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、前記マイクロプロジェクション部材を密封するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージ内に乾燥剤を密封するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、不活性ガスで前記パッケージをパージするステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガスが窒素を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを約−78.5〜25℃で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを周囲温度で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約5〜50kGyの範囲の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約21kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約3.0kGy/hを超える割合での放射線の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記滅菌保証レベルが10−6である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティング配合物に抗酸化剤を加えるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
窒素でパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材及び乾燥剤を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビーム線からなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項18】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7〜21kGyの範囲の線量の放射線の送達を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを約25℃までの温度で行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PTH系物質が最初の純度の少なくとも約96%を保つ、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記PTH系物質が最初の純度の少なくとも約98%を保つ、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をe−ビーム線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項24】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に該マイクロプロジェクション部材を置くステップ、
該パッケージ内の含水率を低下させるステップ、
該パッケージで該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項25】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項26】
前記パッケージ及び前記マイクロプロジェクション部材内に密封された乾燥剤をさらに含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記マイクロプロジェクション部材を予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付ける、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記パッケージを窒素でパージする、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記PTH系物質がhPTH(1−34)を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含む上記マイクロプロジェクション部材、
少なくとも1つのPTH系物質を有し、該マイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及び
不活性ガスでパージし前記マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項32】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含む上記マイクロプロジェクション部材、
該マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され、少なくとも1つのPTH系物質、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製される固体フィルム、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項1】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有するマイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項2】
前記マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、前記マイクロプロジェクション部材を密封するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージ内に乾燥剤を密封するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、不活性ガスで前記パッケージをパージするステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガスが窒素を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを約−78.5〜25℃で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを周囲温度で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約5〜50kGyの範囲の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約21kGyの送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約3.0kGy/hを超える割合での放射線の送達を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記滅菌保証レベルが10−6である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティング配合物に抗酸化剤を加えるステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
窒素でパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材及び乾燥剤を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビーム線からなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項18】
前記パッケージ内に前記マイクロプロジェクション部材を密封する前に、予め乾燥状態にしたリテーナリング上に前記マイクロプロジェクション部材を取り付けるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップが約7〜21kGyの範囲の線量の放射線の送達を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロプロジェクション部材を放射線に曝す前記ステップを約25℃までの温度で行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PTH系物質が最初の純度の少なくとも約96%を保つ、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記PTH系物質が最初の純度の少なくとも約98%を保つ、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に、該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をe−ビーム線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項24】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的デバイスを最終滅菌するための方法であって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材を提供するステップ、
環境条件を調節するように適合されたパッケージ内に該マイクロプロジェクション部材を置くステップ、
該パッケージ内の含水率を低下させるステップ、
該パッケージで該マイクロプロジェクション部材を密封するステップ、及び
該マイクロプロジェクション部材をガンマ線及びe−ビームからなる群から選択される放射線に曝すステップであって、該放射線が所望の滅菌保証レベルに達するのに充分であるステップ、
を含む上記方法。
【請求項25】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを有するマイクロプロジェクション部材であって、生体適合性コーティングを有する該マイクロプロジェクションが、該マイクロプロジェクション部材上に配置されており、該コーティングは、その上に配置された少なくとも1つのPTH系物質を有するコーティング配合物から形成されている上記マイクロプロジェクション部材、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項26】
前記パッケージ及び前記マイクロプロジェクション部材内に密封された乾燥剤をさらに含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記マイクロプロジェクション部材を予め乾燥状態にしたリテーナリング上に取り付ける、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記パッケージを窒素でパージする、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記パッケージがフォイルポーチを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記PTH系物質がhPTH(1−34)を含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含む上記マイクロプロジェクション部材、
少なくとも1つのPTH系物質を有し、該マイクロプロジェクション部材と結合しているヒドロゲル配合物、及び
不活性ガスでパージし前記マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【請求項32】
PTH系物質を送達するように適合された経皮的システムであって、
患者の角質層を貫通するように適合された複数のマイクロプロジェクションを含む上記マイクロプロジェクション部材、
該マイクロプロジェクション部材の近辺に配置され、少なくとも1つのPTH系物質、ポリマー物質、可塑剤、界面活性剤及び揮発性溶媒を含む液体配合物をキャスティングすることによって作製される固体フィルム、及び
不活性ガスでパージし該マイクロプロジェクション部材周辺の密封された環境条件を調節するように適合されたパッケージを含み、
該密封パッケージを放射線に曝してマイクロプロジェクション部材を滅菌している、上記経皮的システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−545491(P2008−545491A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514934(P2008−514934)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/021587
【国際公開番号】WO2006/130868
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506353677)アルザ コーポレイション (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/021587
【国際公開番号】WO2006/130868
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506353677)アルザ コーポレイション (23)
【Fターム(参考)】
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