説明

経穴検出装置、これを用いたレーザ光型刺激装置および経穴検出方法

【課題】経穴の位置を高精度に検出するとともに、検出された経穴に正確にレーザ光を照射することができる装置を提供する。
【解決手段】プローブ101およびグランド電極102を生体200に当接した状態で、測定電圧発生部103が0.2〜0.5ボルトの電圧パルスを順次出力する。測定部104は、このときの電圧・電流測定結果信号Sv,Siを順次出力する。負性抵抗特性判定部106は、信号Sv,Siの関係が負性抵抗特性を示したときに、経穴検出信号Sdを出力する。経穴検出信号Sdがトリガ出力部109に入力されると、トリガ信号Stがレーザ発信部110に送られ、経穴刺激用レーザ光の出力が開始される。レーザ光は、光ファイバ111およびプローブ101を伝搬して経穴に照射される。電圧0.2〜0.5ボルトの範囲内で経穴が負性抵抗特性を示すことを利用して経穴を検出することにより、検出精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人間や動物等の生体に鍼灸治療等を行うときの刺激点である経穴(すなわち、ツボ)の位置を検出する装置および方法に関し、さらには、該装置を用いたレーザ光型刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
東洋医学の一分野である鍼灸治療や指圧治療では、まず、治療対象となる生体(人間または動物の身体)の経穴位置が特定され、その後で、その経穴を刺激する処置が施される。
【0003】
経穴位置を特定する方法としては、鍼灸師等の経験的判断に基づく方法に加えて、電気的な検出法が知られている(下記特許文献1〜6および非特許文献1参照)。
【0004】
電気的な検出法では、経穴の電気抵抗が非経穴部分の電気抵抗よりも低いことを利用する。しかし、経穴や非経穴部分の電気抵抗値は、個人差が大きく、さらに、皮膚の発汗状態やプローブの押圧力等にも依存する(例えば、特許文献1の段落0003参照)。このため、電流(したがって電気抵抗)の絶対値を用いるのではなく、経穴の電気抵抗と非経穴部分の電気抵抗との相対的な関係を利用して経穴位置が検出される。
【0005】
例えば、従来の検出器として、測定した電気抵抗値を過去の測定結果の平均値と比較することによって、経穴検出の精度向上を図っているものがある(例えば、特許文献1の段落0029〜0046、図7および図8、特許文献2の段落0015等参照)。
【0006】
また、他の従来の検出器として、電気抵抗に加えて押圧力をも測定することにより、経穴検出精度の向上を図っているものがある(例えば、下記特許文献3参照)。
【0007】
さらに、従来の別の検出器では、皮膚インピーダンスの周波数特性を測定し、この特性の複素平面上での分布を用いて、その測定点が経穴であるか否かの判断を行っているものがある(例えば、特許文献4、5参照)。
【0008】
一方、検出後の経穴に刺激を与える方法としては、鍼灸や指圧、器具による押圧、振動等の方法に加えて、レーザ光を照射する方法が知られている。レーザ光を照射する方法としては、レーザ光の熱エネルギーによって血流を増加させる方法(例えば、下記特許文献6の段落0017参照)や、レーザ光によって自律神経系を刺激する方法(例えば、下記非特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平7−284515号公報
【特許文献2】特開平10−33631号公報
【特許文献3】特開平9−234235号公報
【特許文献4】特開2004−337349号公報
【特許文献5】特開2006−296809号公報
【特許文献6】特許第1992528号明細書
【非特許文献1】平井紀光、他7名、「半導体レーザ不連続パルス光を用いた経穴刺激による脳波反応の検討」、臨床神経生理学、日本臨床神経生理学会、平成17年10月1日、33巻5号、p460−461
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、経穴の位置を精度よく検出する技術として、様々なものが提案されている(特許文献1〜5参照)。しかしながら、これらの技術では、十分な位置精度を得ることができず、経穴(直径2〜3mm)からずれた位置を経穴位置であると判断してしまうおそれがあった。
【0010】
特に、経穴刺激方法としてレーザ光による自律神経系の刺激を採用する場合には、熱や押圧、振動による刺激方法と異なり、刺激位置が経穴から少しでもずれると効果がなくなる。このため、経穴の中心付近に、正確にレーザ光照射を行う必要がある。しかし、従来の経穴位置検出技術では、高精度の経穴位置検出を行うことができなかったので、レーザ光による良好な刺激を行うことができなかった。
【0011】
また、従来の技術では、汗腺の位置を経穴であると誤判断する場合があった。汗腺は、非汗腺部分よりも電気抵抗値が小さいからである。
【0012】
この発明の課題は、経穴の位置を高精度に特定することができる経穴検出技術と、この技術を用いたレーザ光型経穴刺激装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の発明者は、経穴位置を高精度に行うための研究を鋭意行ったところ、生体へ印加する電圧を連続的に変化させると、この電圧に応答して生体に流れる電流が、非経穴では線形的に変化するが、経穴では負性抵抗特性を示すことを発見した。この発明は、このような発見に基づくものであって、以下のような構成を有する。
【0014】
(1)第1の発明に係る経穴検出装置は、生体に当接されて該生体に電流を供給する経穴検出用電極と、経穴検出用電極が供給した電流を生体から放電する放電電極と、経穴検出用電極へ電圧を印加する可変電圧電源と、経穴検出用電極が生体に印加する電圧と該経穴検出用電極から生体に供給される電流とを測定する測定部と、該測定部が測定した電圧と電流との関係が負性抵抗特性を示したときに経穴検出信号を出力する判定部とを有する。
【0015】
第1の発明において、可変電圧電源は複数個の電圧パルスを、電圧値を変化させつつ順次出力し、且つ、測定部は前記電圧パルスの電圧と電圧パルスが印加されたときに生体に供給される電流を測定することが望ましい。
【0016】
第1の発明において、生体が人体である場合、可変電圧電源から経穴検出用電極に印加される電圧を、0.2ボルト以上0.5ボルト以下または−0.5ボルト以上−0.2ボルト以下の範囲内で変化させることが望ましい。
【0017】
(2)第2の発明に係るレーザ光型刺激装置は、生体に当接されて該生体に電流を供給する経穴検出用電極と、経穴検出用電極が供給した電流を生体から放電する放電電極と、経穴検出用電極へ電圧を印加する可変電圧電源と、経穴検出用電極の電圧と該経穴検出用電極から生体に供給される電流とを測定する測定部と、該測定部が測定した電圧と電流との関係が負性抵抗特性を示したときに経穴検出信号を出力する判定部と、経穴検出信号を入力したときにトリガ信号を出力するトリガ出力部と、トリガ信号を入力したときにレーザ光の出力を開始するレーザ発信部と、レーザ光を経穴検出用電極が検出した経穴に導くための光伝搬路とを備える。
【0018】
第2の発明では、経穴検出用電極が導電性光ファイバを用いて構成され、且つ、光伝搬路がこの導電性光ファイバを含むように構成されることが望ましい。
【0019】
(3)第3の発明に係る経穴検出方法は、生体に経穴検出用電極と放電電極とを当接する第1ステップと、経穴検出用電極の印加する電圧を変化させるとともに経穴検出用電極の電圧と経穴検出用電極から生体に供給される電流とを測定する第2ステップと、測定によって得られた電圧と電流との関係が負性抵抗特性を示したときに経穴検出用電極の当接位置を生体の経穴であると判断する第3ステップとを含む。
【発明の効果】
【0020】
(1)第1の発明に係る経穴検出装置は、生体に当接した経穴検出用電極と放電電極との間に電圧を印加し、このときの電圧と電流との関係が負性抵抗特性を示したときに、経穴検出用電極の当接位置を経穴であると判断する。上述のように、本発明者の知見によれば、生体の電圧−電流の関係は、経穴においては所定電圧範囲内で負性抵抗特性を示すが、経穴以外で負性抵抗特性を示すことはないと考えられる。このため、第1の発明によれば、経穴の位置を高精度に特定することができるとともに、非経穴部分を経穴であると誤判断するおそれがない。
【0021】
第1の発明において、電圧−電流特性の測定は、電圧パルスを用いておこなうことができる。
【0022】
また、本発明者の知見によれば、第1の発明において、生体が人体の場合には、0.2ボルト以上0.5ボルト以下または−0.5ボルト以上−0.2ボルト以下の範囲内で変化させることにより、負性抵抗特性を検出することができる。
【0023】
(2)第2の発明に係るレーザ光型刺激装置は、第1の発明に係る経穴検出装置を用いて経穴を検出したときに、経穴検出用電極が当接された状態でそのまま経穴へのレーザ光照射を行うことができる。したがって、第2の発明によれば、レーザ光の照射位置を、経穴の検出位置と一致するように高精度に制御することができる。
【0024】
また、経穴検出用電極が導電性光ファイバを用いて構成し、且つ、光伝搬路がこの導電性光ファイバを含むように構成することで、経穴検出用電極が当接された位置とレーザ光を照射する位置とを完全に一致させることができ、レーザ光照射位置を非常に高精度に制御できる。
【0025】
(3)第3の発明に係る経穴検出方法によれば、生体の皮膚に当接した経穴検出用電極と放電電極との間に電流を流しつつ電圧を変化させ、このときの電圧と電流との関係が負性抵抗特性を示したときに経穴検出用電極の当接位置を経穴であると判断するので、第1の発明と同じ理由により、経穴の位置を非常に高精度に検出することができ且つ非経穴部分を経穴であると誤判断するおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0027】
図1は、この実施形態に係るレーザ光型刺激装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。図1に示したように、レーザ光型刺激装置100は、この発明の経穴検出用電極としてのプローブ101、この発明の放電電極としてのグランド電極102、この発明の可変電圧電源としての測定電圧発生部103、測定部104、感度調整部105、この発明の判定部としての負性抵抗特性判定部106、増幅部107、表示部108、トリガ出力部109、レーザ発信部110および光ファイバ112を有する。このうち、プローブ101、グランド電極102、測定電圧発生部103、測定部104、感度調整部105および負性抵抗特性判定部106が、経穴検出装置120に相当する。
【0028】
プローブ101は、生体200に当接して該生体200に電圧を印加するために使用される。この実施形態では、プローブ101を、導電性光ファイバを用いて形成する。プローブ101は、光入力端からレーザ発信部110の出力レーザ光を入力し、光出力端(生体200と接する側の端部)から該レーザ光を出力するように構成される。また、例えばプローブ101の側面には、測定電圧発生部103の出力電圧が、測定部104を介して印加される。プローブ101は、絶縁体によってレーザ刺激装置100の筐体(図示せず)に固定されたり、絶縁被膜される等して、他の部分から絶縁されている。
【0029】
グランド電極102は、プローブ101から生体200に供給された電流をグランドに放電するための放電電極である。
【0030】
測定電圧発生部103は、プローブ101への印加電圧を発生する可変電圧電源である。測定電圧発生部103は、プローブ101に印加する電圧を、所定範囲内で変化させることができる。この実施形態では、測定電圧発生部103が、複数個の電圧パルスを、電圧値を変化させつつ順次出力する(後述の図2参照)。
【0031】
測定部104は、プローブ101が生体200に印加する電圧と、プローブ101から生体200に供給される電流とを測定する。但し、これらを直接測定するのではなく、測定電圧発生部103の出力電圧および出力電流を測定することによって、生体200への印加電圧および供給電流を検出する。プローブ101の電気抵抗や生体200への供給電流は非常に小さいので、通常はプローブ101の電圧降下量を無視することができ、測定電圧発生部103の出力電圧は生体200への印加電圧と実質的に一致する。なお、この電圧降下量が無視できない場合には、プローブ101の抵抗値を予め測定して、該電圧降下量による誤差を補正すればよい。この実施形態では電圧パルスを用いるので、測定部104は、測定電圧発生部103が出力する電圧パルスの電圧と、該電圧パルスが生体に印加されたときの電流値とを測定する。測定部104は、電圧値を示す信号Svと電流値を示す信号Siとを、感度調整部105に送る。この実施形態では、信号Sv,Siともに電圧信号とする。
【0032】
感度調整部105は、信号Sv,Siを増幅して出力する。信号Sv,Siの増幅率は装置設計者の任意であり、負性抵抗特性判定部106の感度に合わせて決定すればよい。
【0033】
負性抵抗特性判定部106は、感度調整部105から信号Sv,Siを入力する。そして、負性抵抗特性判定部106は、電流Sv−電圧Siの関係が非線形であれば経穴であると判断し(後述する図3の曲線α参照)、線形であれば経穴ではないと判断する(同図の曲線β参照)。負性抵抗特性判定部106は、ハードウエア的にも構成でき、また、マイクロプロセッサを用いてソフトウエア的に判定を行ってもよい。経穴であると判断した場合、負性抵抗特性判定部106は、経穴検出信号Sdを出力する。
【0034】
増幅部107は、負性抵抗特性判定部106から出力された経穴検出信号Sdを増幅して、表示部108およびトリガ出力部109に送る。表示部108への出力信号の増幅率とトリガ出力部109への出力信号の増幅率とは、同一であってもよいし異なっていてもよく、設計条件に応じて設計者が任意に決定し得る。
【0035】
表示部108は、経穴検出信号Sdを入力したときに、その旨を表示する。表示部108は、必要に応じて設けられる。表示部108は、例えば発光ダイオード等の発光素子であってもよいし、液晶パネルのごときであってもよい。経穴の検出を利用者に告知できる手段であれば、表示部108として使用できる。また、例えばブザーのように音声を発する手段を、表示部108の代わりに或いは表示部108と併せて使用してもよい。
【0036】
トリガ出力部109は、経穴検出信号Sdを入力したときにレーザ照射用のトリガ信号Stを生成・出力する。通常、トリガ信号Stは、1個のパルス信号でよい。
【0037】
レーザ発信部110は、トリガ信号Stを入力すると、レーザ光の生成・出力を開始する。レーザ光源としては、例えばネオアーク株式会社のLDP-6935MA等、公知のものを使用することができる。この実施形態では、レーザ光の波長、出力、パターン、出力時間等を、経穴の自律神経を刺激することができるように設定される(後述)。
【0038】
次に、この実施形態に係るレーザ光型刺激装置100の動作および原理について、図2〜図4を説明する。
【0039】
まず、生体200に、プローブ101およびグランド電極102を当接する。例えば、グランド電極102を一方の手で握った状態で、経穴と思われる付近の皮膚にプローブ101の先端(光出力側)を接触させればよい。
【0040】
次に、測定電圧発生部103が、図2(A)に示したような電圧パルスを出力する。ここで、図2(A)は、測定電圧発生部103が出力する電圧パルス波形の一例を示す概念図であり、縦軸は電圧(ボルト)、横軸は時間(秒)である。この実施形態のレーザ光型刺激装置100では、生体200に流れる電流と印加電圧との関係が、オーム特性を示すのか或いは負性抵抗特性を示すのかを検出する必要がある。このため、測定電圧発生部103は、複数個の電圧パルスを、電圧値を変化させつつ順次出力する。図2(A)は、パルス電圧が、正電圧であり、且つ、0.2ボルトから0.5ボルトまで0.1ボルトずつ上昇する場合を示している。図2(A)において、パルス幅は0.2秒であり、周期は0.4秒である。但し、各パルス電圧の電圧差、パルス幅および周期は、これに限定されず、オーム特性/負性抵抗特性の区別を精度よく検出できるように任意に設定し得る。
【0041】
図2(B)は、測定電圧発生部103が出力する電圧パルス波形の他の例を示す概念図であり、縦軸は電圧(ボルト)、横軸は時間(秒)である。このように、負電圧パルス(したがって負電流)を用いても、オーム特性/負性抵抗特性の区別を検出することができる。本発明者の知見によれば、生体200の個体差等により、正電圧パルスよりも負電圧パルスの方が経穴を精度よく検出できる場合もあり、逆に、負電圧パルスよりも正電圧パルスの方が精度よく検出できる場合もある。したがって、正電圧パルスを用いた検出と負電圧パルスを用いた検出とを両方行ってもよい。また、複数回の検出を繰り返し行い、この結果に基づいてオーム特性/負性抵抗特性の判定を行うこととしてもよい。
【0042】
本発明者の知見によれば、生体200が人体の場合、経穴における電圧−電流の関係が負性抵抗特性を示すのは、一般に、電圧0.2〜0.5ボルト付近および−0.2〜−0.5ボルト付近である(後述の図3参照)。加えて、本発明者の知見によれば、1ボルト以上或いは−1ボルト以下の電圧を人体に印加すると、神経細胞の脱分極による活動電位が発生する(すなわち、神経の興奮が起こる)。そして、この活動電位(興奮)が経穴周辺の神経細胞に伝わることにより、経穴で負性抵抗特性が出現しなくなって、その後の経穴検出ができなくなる場合がある。また、生体200が人体の場合、安全性のために、体内を流れる電流は10マイクロ・アンペア以下とすることが望ましいが、パルス電圧を0.2〜0.5ボルト或いは−0.2〜−0.5ボルトとすれば、体内を流れる電流を10マイクロ・アンペアよりも十分に小さい値に抑えることができる。このような理由から、生体200が人体の場合、測定電圧発生部103からプローブ101に印加される電圧は電圧0.2以上0.5ボルト以下の範囲内或いは−0.5ボルト以上−0.2以下の範囲内とすることが望ましい。
【0043】
なお、図2(A)、(B)に示した例は、生体200が人体である場合の標準的な例にすぎず、人体毎の個体差や動物の種類ごとの差が存在する。したがって、測定に用いるパルス電圧値の範囲は、これらの差を考慮して決定することが望ましい。但し、上述のような理由から、活動電位が発生しない範囲内とすることが望ましい。
【0044】
測定部104は、上述のようにして、プローブ101から生体200(ここでは人体)への印加電圧および供給電流を測定し、この測定結果を示す信号Sv,Siを出力する。信号Sv,Siは、感度調整部105で増幅された後、負性抵抗特性判定部106に入力される。図3は、信号Sv,Siの関係を示すグラフであり、横軸は電圧(ボルト)、縦軸は電流(マイクロアンペア)である。また、図3において、αはプローブ101の当接位置が経穴である場合、βは経穴でない場合である。図3から判るように、プローブ101が経穴に当接されたときはパルス電圧0.2〜0.5ボルト付近で電流−電圧の関係が負性抵抗特性を示すが、経穴以外に当接されたときは全領域にわたってオーム特性を示す。言い換えれば、非経穴の場合はパルス電圧が上昇していくと電流値も増大していくのに対し、経穴の場合は電圧0.2〜0.5ボルト付近でパルス電圧の上昇に伴って電流値が減少していく。したがって、パルス電圧0.2〜0.5ボルト付近で、電流値の増大/減少を調べることにより、経穴/非経穴の区別を判定できる。例えば、電圧信号値Sv=0.2,0.3,0.4,0.5ボルトのときの電流信号値SiをI2,I3,I4,I5として、I2>I3>I4>I5、I2>I3>I4<I5、I2>I3<I4<I5、I2<I3>I4>I5、I2<I3>I4<I5、I2<I3<I4>I5の何れかであれば経穴と判断し、I2<I3<I4<I5であれば非経穴と判断し、他の場合は判断失敗(再測定)としてもよい。また、負性抵抗領域の曲線の傾き等を考慮して、プローブ101の位置が経穴位置に完全に収まっているか否かを判断してもよい。例えば、プローブ101の位置が経穴と非経穴との境界に跨っているような場合には、負性抵抗領域の曲線の傾きが緩やかになると思われる。
【0045】
なお、図3は、正電圧パルスを用いた場合(図2(A)参照)に相当するが、負電圧パルスを用いた場合(図2(B)参照)の場合も同様にして経穴/非経穴の区別を判断できる。
【0046】
経穴/非経穴の判定結果は、経穴検出信号Sdとして、増幅部107に送られる。増幅部107は、上述のように、経穴検出信号Sdを増幅して、表示部108およびトリガ出力部109に出力する。
【0047】
表示部108は、上述のように、増幅部107からの信号入力に応じて、経穴/非経穴の判定結果を表示する。この実施形態のレーザ光型刺激装置100では、プローブ101の当接位置が経穴であると判断された場合はそのままレーザ照射も行うので(後述)、この表示はレーザ表示が行われることの表示にもなる。また、この表示は、例えばレーザ照射の終了直後に、自動的に終了するように設定してもよい。
【0048】
トリガ出力部109は、経穴検出信号Sdを増幅部107から1回入力する度に、レーザ照射用のトリガ信号Stを1回出力する。
【0049】
レーザ発信部110は、トリガ信号Stを入力すると、レーザ光の生成・出力を開始する。図4は、経穴の自律神経を刺激するように設定した場合の、レーザ出力光パターンの一例であり、縦軸は光強度、横軸は時間である。例えば、レーザ波長は690〜700nm、出力30mW程度である。また、このレーザ光は、生体200の心拍に同期した周波数(人間の場合は約1〜1.2ヘルツ)のパルスで変調し、さらに、3〜5キロヘルツ程度のパルスで変調されている。このようなダブル変調光を用いることにより、自律神経を効果的に刺激することができる。1回のレーザ光照射時間は、例えば数秒間である。
【0050】
レーザ発信部110から出力されたレーザ光は、光ファイバ111およびプローブ(導電性光ファイバ)101を伝搬して経穴に照射され、当該経穴の自律神経を刺激する。この実施形態では、プローブ101を導電性光ファイバで形成したので、経穴の検出とレーザ光の照射とを同じプローブ101で行うことができ、したがって、プローブ101の当接位置が経穴であると判定された場合に当該当接位置にそのままレーザ光を照射することができる。
【0051】
以上説明したように、この実施形態によれば、経穴の電圧−電流の関係が負性抵抗特性を示すことを利用して経穴検出を行うので、検出結果が発汗状態や押圧力等に影響されない。また、負性抵抗特性は、経穴の位置から少しでもずれると検出されなくなる。したがって、この実施形態によれば、経穴の位置を非常に高精度に特定することができるとともに、非経穴部分を経穴であると誤判断するおそれが非常に少ない。
【0052】
さらに、経穴と非経穴との測定結果を比較する必要がないので、上記特許文献1、2の技術と比較して、短時間での経穴検出が期待される。
【0053】
また、この実施形態によれば、プローブ101の当接位置が経穴であると判定されたときに、プローブ101が当接された経穴にそのままレーザ光を照射することができるので、検出された経穴とレーザ光の照射位置とを完全に一致させることが可能である。このためこの実施形態によれば、レーザ光照射位置を非常に高精度に制御できる。
【0054】
なお、この実施形態では、経穴の自律神経を刺激する方式の装置を例に採って説明したが、例えばレーザ光の熱エネルギーによって血流を増加させる方式等、他の経穴刺激方式の装置にも、この発明を適用できる。但し、経穴の自律神経を刺激する方式では、血流を増加させる方式等と比較して、経穴の位置(すなわちレーザ光照射位置)を非常に高い精度で特定する必要があるので、この実施形態に係る経穴検出技術を利用するメリットは特に大きい。
【0055】
また、この実施形態では、生体200が人体である場合を例に採って説明したが、経穴が存在する動物であれば、他の動物の身体にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施形態に係るレーザ光型刺激装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】(A)、(B)ともに、図1に示した測定電圧発生部が出力する電圧パルス波形の例を示す概念図である。
【図3】経穴および非経穴の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図4】図1に示したレーザ発信部の出力レーザ光を概念的に示すグラフである。
【符号の説明】
【0057】
100 レーザ光型刺激装置
101 プローブ
102 グランド電極
103 測定電圧発生部
104 測定部
105 感度調整部
106 負性抵抗特性判定部
107 増幅部
108 表示部
109 トリガ出力部
110 レーザ発信部
111 光ファイバ
120 経穴検出装置
200 生体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に当接されて該生体に電流を供給する経穴検出用電極と、
前記経穴検出用電極が供給した電流を前記生体から放電する放電電極と、
前記経穴検出用電極へ電圧を印加する可変電圧電源と、
前記経穴検出用電極が前記生体に印加する電圧と該経穴検出用電極から該生体に供給される電流とを測定する測定部と、
該測定部が測定した前記電圧と前記電流との関係が負性抵抗特性を示したときに、経穴検出信号を出力する判定部と、
を有することを特徴とする経穴検出装置。
【請求項2】
前記可変電圧電源が、複数個の電圧パルスを電圧値を変化させつつ順次出力することにより、前記経穴検出用電極への電圧印加を行い、
前記測定部が、前記電圧パルスの電圧と、該電圧パルスが印加されたときに前記生体に供給される電流を測定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の経穴検出装置。
【請求項3】
前記生体が人体であり、且つ、前記可変電圧電源から前記経穴検出用電極に印加される電圧を0.2ボルト以上0.5ボルト以下または−0.5ボルト以上−0.2ボルト以下の範囲内で変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の経穴検出装置。
【請求項4】
生体に当接されて該生体に電流を供給する経穴検出用電極と、
前記経穴検出用電極が供給した電流を前記生体から放電する放電電極と、
前記経穴検出用電極へ電圧を印加する可変電圧電源と、
前記経穴検出用電極の電圧と該経穴検出用電極から前記生体に供給される電流とを測定する測定部と、
該測定部が測定した前記電圧と前記電流との関係が負性抵抗特性を示したときに、経穴検出信号を出力する判定部と、
前記経穴検出信号を入力したときにトリガ信号を出力するトリガ出力部と、
前記トリガ信号を入力したときにレーザ光の出力を開始するレーザ発信部と、
前記レーザ光を前記経穴検出用電極が検出した経穴に導くための光伝搬路と、
を備えることを特徴とするレーザ光型刺激装置。
【請求項5】
前記経穴検出用電極が導電性光ファイバを用いて構成され、且つ、前記光伝搬路が該導電性光ファイバを含むことを特徴とする請求項4に記載のレーザ光型刺激装置。
【請求項6】
生体に経穴検出用電極と放電電極とを当接する第1ステップと、
前記経穴検出用電極の印加する電圧を変化させるとともに、経穴検出用電極の電圧と該経穴検出用電極から前記生体に供給される電流とを測定する第2ステップと、
該測定によって得られた前記電圧と前記電流との関係が負性抵抗特性を示したときに、前記経穴検出用電極の当接位置を前記生体の経穴であると判断する第3ステップと、
を含むことを特徴とする経穴検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−142543(P2009−142543A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324679(P2007−324679)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(392001863)光学電子株式会社 (1)
【Fターム(参考)】